中央環境審議会 自然環境部会議事要旨(第31回)

1.開催日時

平成28年6月20日(月)16:00~18:00

2.開催場所

航空会館 501・502会議室

3.議事

(1)やんばる国立公園(仮称)の新規指定について【諮問】

(2)第四次環境基本計画の進捗状況の点検について(生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する取組)【審議】

(3)グリーン復興プロジェクトの進捗状況について(集中復興期間の総括)【報告】

(4)その他

4.議事経過

 諮問・審議事項すべてについて審議がなされ、それぞれ適当であるとの結論に至った。そのほかの議事については事務局説明に基づき、議論がなされた。なお、主要な発言は以下のとおりです。

(1)やんばる国立公園(仮称)の新規指定について

<公園区域、保護規制計画について>

○委員:川や渓流は保護の対象になると思うが、ダム湖の水面というのは保護の対象になるのか。

⇒事務局:国立公園の区域に入れているダム湖と入れていないダム湖がある。国立公園に相応しい利用がされている場合は含めるが、調整の結果、公園に含めることが難しいダム湖については除いている。

委員:南側に空白部分が非常に多く、公園区域に含まれていないが理由は何か。

⇒事務局:塩屋湾周辺のことだと思うが、まとまりのある森は塩屋湾から北側に多く分布しているためである。

南側については、慶佐次のマングローブ林やター滝周辺など、公園利用の拠点となる場所を公園区域に含めている。

○委員:公園面積に対して特別保護地区が少ない。生態的な連結性、コリドーを考え、稜線部分をつなぐような保護規制を要望する。

⇒事務局:今回の区域案には国有地だけでなく公有地や私有地を多く含んでおり、今後、地域の方々と一緒に保護していくうえで考えたのが今回のゾーニングである。

○委員:沖縄海岸国定公園のうち、3ヵ所については森を中心とした考え方でやんばる国立公園に編入し、残りの部分については海を中心とした考え方で残すとのことであるが、必ずしもそのように分ける必要はないのではないか。

 現在環境省では森・里・川・海の連携について議論しているのだから、将来的にでも良いので、国定公園の海岸線をやんばる国立公園に編入することについて検討してはどうか。

⇒事務局:国立・国定公園の指定については、風景形式により整理している。やんばる国立公園は亜熱帯の森が特徴であり、一方、沖縄海岸国定公園は海岸線の景観が特徴の公園というように分けて考えているが、大事な視点であると思うので、国立公園の指定拡張等にあたってはご意見を参考にさせていただきたい。

<外来種対策について>

○委員:外来種であるマングースの防除の状況について伺いたい。

⇒事務局:平成26年度に約150匹を捕獲している。年間600匹を超えるような時期もあったが、年々減少していることから、マングースの防除事業については効果が出てきていると考えている。

○委員:マングースは道路を通って北上するため、いかにして道路を閉鎖するかが問題だということを聞いているが、国立公園になり多くの人々が利用することにより、道路の閉鎖はどうなるのか。

⇒事務局現在、塩屋湾と平良、また、福地ダムの辺りにマングース北上防止柵を張り巡らせ、主要な幹線道路以外からは進入できないようにしている。

 また、一部封鎖できていない幹線道路付近には毛を採取できる罠を仕掛け、マングースの通るルートを検討しながら、もし封鎖できていない抜け道を多く利用しているのであれば、そうしたところに重点的に力を入れていきたい。

<林道、ロードキル対策について>

○委員:ここ数十年間で数多くの林道が整備されたと思うが、国立公園に指定されることで交通量が増え、ロードキルも起こると思うので、林道の長期的な管理方針を定めたほうがよいと思う。

○委員:ロードキルについて、ヤンバルクイナは配慮されていると思うが、むしろ、小動物、は虫類、両生類などが鋪装道路を横切ることができず道路上で死んでしまうと、それを食べに来たヤンバルクイナが轢かれてしまうというように、鋪装道路にはこうした背景がある。

 今更鋪装道路を無くすことは難しいと思うので、鋪装道路の価値は残しつつ、小動物にも配慮された道路構造などを検討して欲しい。

○委員:やんばる地域に行く人は車を利用すると思うのだが、野生動物の観点から、車利用による課題について教えていただきたい。

⇒事務局:現在は、交通量が多い幹線道路を中心にロードキル対策を重点的に行っている。

 林道は誰でも利用できる状況ではあるが、林道は林業を目的に整備された道路であるため、今回、林道については公園計画の利用施設計画には位置付けていない。

 一方、国立公園や世界自然遺産というものを見据えた際の林道のあり方については地元での検討が始まっているので、林道の主要部分においても幹線道路と同様の対策のほか、さらに踏み込んだ対策について、地域と一緒に決めていきたいと考えている。

○委員:道路照明に虫が引き寄せられ、それらを食べに動物が道路に出てきて車に轢かれてしまうおそれがあるが、道路照明への配慮について考えていることはあるか。

⇒事務局:国道には街灯があるが林道には街灯はなく、今後、街灯を増やすような話しも特にない。道路管理者との調整次第ではあるが、場所によっては林道を封鎖してもよいのではないかという意見が地元で出ているので、引き続き、林道の扱いについて検討していきたい。

<利用について>

○委員:日帰りの利用が7割ということだが、これは公園内の利用が7割ということか。7割というのはとても多いと思うので、どのような利用の構造になっているのか伺いたい。また、そうした利用構造を変えるような方針はあるのか。

⇒事務局:日帰り利用7割というのは、やんばる地域であり、国立公園内に限定したものではない。やんばる地域を訪れる人の多くは、やんばる地域というよりは名護市などに宿泊し、やんばるに車で来て戻ってしまうというのが現状である。国立公園や世界自然遺産を見据えた場合、できるだけやんばる地域に泊まっていただき、数日間かけて魅力を見てもらうということも重要な課題と考えているので、多くの方がここを訪れて宿泊してもらえるような仕組みは、現在、地域とともに考えているところである。

○委員利用は、横断的に利用する形ではなく、沿岸部の道路をたどりながら流域を遡る利用になるため、利用に際して小流域がユニットとして把握されると思うが、それに即した生物相の把握をしているか。

⇒事務局:必ずしも小流域と絡めたものではなく、種の保存法に基づき、ヤンバルクイナをはじめとする鳥類やオキナワセッコクをはじめとする植物の各種分布調査は行っている。

 利用に関しては、ハブがいることから利用客は山の奥深くまで入ることができないほか、地元でガイドを専業としている人も少なく、まさに今後の利用のあり方については、地元の方たちを含めて議論を進めているところである。

○委員:現在は景勝地めぐりやカヌー、登山、川遊び、生き物観察で利用されているようだが、こうした体験や景勝地などは、エコツーリズムという考え方のもとに利用されているのか、それとも、単に体験という形で利用されているのか教えていただきたい。

⇒事務局:沖縄県では、平成27年度からやんばる型の森林ツーリズム推進体制構築事業を実施しており、地域の主要な山村で主体となるような団体が、エコツーリズムをどのように行っていくかを現在検討している。地域が一体となって作り上げている最中なので、今後はエコツアーでの利用が発展していくものと考えている。

<名称について>

○委員:「やんばる」という言葉があまり知られていなかった頃から関わってきた者として、「やんばる国立公園」という名称については賛成である。

 「やんばる」という言葉が今回の公園の名称に入れば、自然が豊かな良い場所だというような、さらに良い方向への意味の理解が進むと思う。

<昆虫等の盗掘について>

○委員:ヤンバルテナガコガネは最近ほとんど見ることができなくなったと聞いている。国立公園になり人が増えれば増えるほど、ヤンバルテナガコガネだけでなく、様々な生物がいたずらに捕獲されてしまうのではないか心配である。

⇒事務局:ヤンバルテナガコガネが生息できるような太い木を保全する、また、一部の密猟に対しては、地域を中心にパトロールを行っているので、引き続き、地域の目で見守って保全していくことが重要だと考えている。

○部会長:諮問に添付された指定書および計画書、並びに変更書について異議なしでよろしいか。

⇒委員:異議なし。

(2)第四次環境基本計画の進捗状況の点検について(生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する取組)

○委員:資料2-1の2ページ目の課題②価値評価に朱書きで加えられている「社会的・経済的に利用し得るツールを開発していく」という文言について、具体的にはどのようなものか教えていただきたい。

⇒事務局:今現在、個別のこうした指標が欲しいという具体的な絵がある状況ではないが、ようやく生物多様性あるいは生態系そのものの価値を評価することが少し蓄積されてきた状況である。

 しかし、これを社会的な関係、いわゆる人の生活との関わりについて説明できるまでの形にはなっていないので、社会的な視点からそうした生態系あるいは生物の価値というものを見るツールを開発していく必要があると考えている。

○委員:資料2-3の11ページ目について、シジュウカラガンの増加に関しては、仙台市を中心としたガンを守る会の方々が、アメリカから個体を導入し、動物園等で増やし、それを野生復帰させたものであり、生態系の変化と捉えてよいものか疑問である。増加に至るまでの過程にこうした域外保全による増殖の効果があったということを記載して欲しい。

⇒事務局:モニタリングサイト1000から得られた結果ということで、このような記載にしている。

御指摘の通りではあるが、資料に記載するというのは難しいと考えており、書き方については検討させていただきたい。

○委員:資料2-3の37ページの最後、「近い将来種を存続させることが困難となるおそれがある種について、飼育下繁殖を実施するなど」という記載があるが、これで本当に間に合うかどうか議論されていない。

本来であれば、飼育繁殖が可能な種については、積極的に個体群を維持する方向へ向かうべきだと思うが、このことについてどのように考えているか教えていただきたい。

⇒事務局:37ページについては現状を記載しており、飼育繁殖については積極的に行っていく必要があると認識しているが、人的・予算的な問題もあるので、優先順位を付けて取り組むこととしている。

 現在、種の保存法の改正においても、動物園や植物園とどのように協力していくか検討していきたいと思っているので、このなかで今後の生息域外保全についても検討を進めていきたい。

○委員:資料2-3、22ページの文部科学省の名勝・天然記念物について、文化的なところではなく天然記念物の自然のところは、生物多様性保全条約ができる前から天然記念物の事業を行っていて、生物多様性の保全との齟齬が現場で起きているようなところがあるので、その辺を考慮していただきたい。

 資料2-3、23ページの国土交通省の水辺の取扱いに関する部分は取組が薄いと思う。

 資料2-3、23ページの「農林水産省の環境との調和に配慮した農業農村整備事業等の推進」の部分で、農業用排水路の整備に当たり生物の生息環境に配慮した構造とする取組を行っているということはありがたいのだが、用水路は長さで決めるため、440ヵ所増加したという記載ではわかりづらい。日本全国でどれくらいの進捗なのか全体像がわかるような記述にして欲しい。

 資料2-3、24ページの「内水面漁業新興対策事業」について、漁業推進の関する記載だけであり、どのように生物多様性に配慮するかということが何も書かれていない。淡水に関係する生き物の絶滅危惧種の割合が非常に高いので、生物多様性保全への配慮についてもう少し記載していただきたい。

⇒事務局:それぞれ取組の主目的があるため、どのような工夫ができるか検討しながら、対応していきたい。

○部会長:今回の審議を最終としたいため、今後の修正については私、部会長に預からせていただいてよろしいか。また、その他全般については、異議なしでよろしいか。

⇒委員:異議なし。

(3)グリーン復興プロジェクトの進捗状況について(集中復興期間の総括)

○委員:実施している内容は分かるが、その結果として復興にどれだけ貢献しているのかが分かる評価軸と実績を示していただきたい。

⇒事務局:利用者が戻ってくれば、それだけ復興が進んでいるのではないかということで、三陸復興国立公園の利用者数を指標としている。

 震災が起こる前の利用者数は、ピーク時で約700万人いたが、平成23年に震災が起きた際は46万人ほどに減少し、現在は250万人となっている。引き続き、この利用者数の推移を復興の成果の指標として使っていきたいと考えている。

○委員:「重要自然マップ」の作成は良いことだと思うが、今回の震災においてはタイミング的に十分活かせたとは言えない。こうしたものが震災復興の中で非常に良い使い道があるということをPRしていただき、情報がタイミング良く発せられる仕組みを考えていただきたい。そうすることで、復興の際に自然環境を活かすこともできるし、自然環境を壊さない復興も可能になると思う。

⇒事務局:早期に広報できるよう、自治体に配布することを考えている。このマップが震災からの復興の際に有効に活用してもらえるよう、引き続き自治体と情報共有を図っていきたい。

○委員:みちのく潮風トレイルについて、サイクリストの利用は考えているのか。外国の自然公園では歩行者とサイクリストが共存共栄しており、自然にあまり負担をかけない利用方法が開発されている。

⇒事務局:コンセプトとして「歩く」ということで路線決定をしているので、一部、自転車でも通れるような道はあるが、山道や砂浜をルートに設定しているため自転車の利用は難しい。

○委員:里山・里海フィールドミュージアムについて、どのように使うのか教えていただきたい。

⇒事務局:構想としては、この施設を自然体験の拠点となるような場所にしたいと考えている。博物展示施設というよりは、レクチャールームなどの自然体験ができるような施設を確保し、これを核として、公園内外を含めて自然体験のフィールドを拡げていきたいというのが趣旨である。

○委員:流域管理により湿地を創出するというのは、どの主体が、どのような形で高台移転の後の土地を決めようとしているのか。また、環境省としてどのように関わっていくのか。

⇒事務局:現在検討している牡鹿半島の祝浜では、関係市町村やNPOなどと一緒に役割分担を考えている。国立公園に編入することも検討しており、編入された場合は、整備については環境省と自治体、管理の部分はNPOの方々にお願いすることなどを考えている。

○委員:地域の方々に対し、環境省の枠組みに入ってきて、その中で意見を言ってくださいという取組だけでなく、地域で起こっていることに対して積極的に繋がりを持つ、また、そうした動きを取り入れていくことが必要であり、課題である。

⇒事務局:環境省が設定したフィールドに入ってきてもらうのではなく、その逆の流れというイメージだと思うが、フィールドミュージアム構想はその逆の流れに近いと考えている。フィールドミュージアムは、環境省が管理する国立公園の中だけの取組ではなく、区域外の取組と連携しながら自然体験ができる仕組みを作っていきたいという構想である。

○委員:エコツーリズムについて、モデル的に作られたわけだが、広報や販売に関してどのように考えているのか。

⇒事務局:プロジェクトを行ったモデル地区の体制が完全に自立しているわけではないため、まずはモデル地区を自立させることを考えている。予算は27年度で終了しているが、今後も情報提供や助言を行っていきたい。その後、このモデルについてはホームページなどで広報しながら、他の地域にも広めていきたいと考えている。

5.問い合わせ先

環境省自然環境局国立公園課(代表03-5521-8279 直通03-5521-8279)

課長   岡本 光之(内線6440)

課長補佐 河野 通治(内線6650)

専門官  小林  誠(内線6694)