中央環境審議会土壌農薬部会(第16回)議事録

日時

平成16年 10月12日(火)14:00~16:58

場所

中央合同庁舎5号館共用第8会議室

出席委員

部会長
部会長代理
委員
臨時委員
 松本 聰
 須藤 隆一
 藤井 絢子
 大塚 直
 岡田 齊夫
 亀若 誠
 黒川 雄二
 嶌田 道夫
 高橋 滋
臨時委員  谷山 重孝
 中杉 修身
 福島 徹二
 細見 正明
 眞柄 泰基
 森田 昌敏
 関沢 秀哲
 若林 明子
 渡部 徳子

(欠席は、浅野委員、桝井委員、村岡委員、河内臨時委員、櫻井臨時委員、鈴木臨時委員、中野臨時委員、西尾道徳臨時委員、岸井臨時委員、北原専門委員、米谷専門委員、井上達専門委員)

委員以外の出席者

環境省: 甲村水環境部長、谷企画課長、鏑木土壌環境課長、早川農薬環境管理室長、更田農薬管理室室長補佐、神谷農薬管理室室長補佐

議題

(1)土壌残留及び水質汚濁に係る農薬登録保留基準の改定について
(2)水質汚濁に係る農薬登録保留基準の運用の見直しについて
(3)その他

配布資料

資料1中央環境審議会土壌農薬部会委員名簿
資料2中央環境審議会土壌農薬部会(第15回)議事要旨(案)
資料3中央環境審議会土壌農薬部会(第15回)議事録(案)
資料4土壌残留及び水質汚濁に係る農薬登録保留基準の改定について
(農薬専門委員会報告)
資料4-参考1農薬の登録申請に係る試験成績について
資料4-参考2新規科学物質等に係る試験の方法について
資料4-参考3委員からのコメント
資料5水質汚濁に係る農薬登録保留基準の運用の見直しについて
(農薬専門委員会報告)
参考資料1中央環境審議会土壌農薬部会農薬専門委員会名簿
参考資料2「土壌残留及び水質汚濁に係る農薬登録保留基準の改定について」 (中央環境審議会土壌農薬部会農薬専門委員会報告)に対する意見募集結果について
参考資料3水産動植物に対する毒性に係る改正登録保留基準の施行に必要となる試験法等の検討
参考資料4土壌汚染対策法のしくみ
参考資料5土壌汚染対策法施行状況について
参考資料6土壌汚染対策セミナー「土壌汚染とリスクコミュニケーション」
参考資料7農用地土壌汚染に係る細密調査結果及び対策の概要
参考資料8平成17年度水環境部概算要求・要望の概要
参考資料9「こどもホタレンジャー」活動事例の募集について

議事

(鏑木土壌環境課長)
 定刻となりましたので、ただいまから第16回中央環境審議会土壌農薬部会を開催させていただきたいと思います。
 私は、ことしの7月1日付で土壌環境課長を拝命いたしました鏑木と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、本日の委員の出欠についてご報告を申し上げます。浅野委員と村岡委員、それから河内臨時委員、岸井臨時委員、櫻井臨時委員、鈴木臨時委員、西尾臨時委員、それと中野臨時委員、それから専門委員は井上専門委員と北原専門委員と米谷専門委員から、ご欠席というご連絡をいただいております。したがいまして、本日は委員の総数27名中19名のご出席が予定されておりまして、現時点では17名ご出席をいただいております。というわけで、定足数14名になりますが、これを満たしておりますことをまずご報告をさせていただきます。
 前回の土壌農薬部会は、本年の3月に開催をさせていただいたわけでございますが、その後、水環境部長を初めといたしまして、私どもの事務局側の異動がございましたので、ご紹介をさせていただきたいと思います。
 甲村水環境部長、それから谷企画課長でございます。まず、恐縮でございますが、水環境部長より一言ごあいさつをさせていただきたいと思います。
 
(甲村水環境部長)
 水環境部長の甲村でございます。よろしくお願いします。ことしの7月1日付で、少し新聞にも出たのですが、いわゆる各省庁の交流ということで、もとは国土交通省におりましたけれども、今回、環境省の水環境部長を拝命いたしました。委員の皆様方には、今後ともいろいろお世話になることがたくさんあると思いますので、よろしくお願いいたします。
 さて、本日の土壌農薬部会では、2つの農薬専門委員会報告についてご審議をお願いいたしたいと思っております。1つ目は、土壌残留及び水質汚濁に係る登録保留基準の改定についてでございます。これまで、農薬専門委員会におきまして、4月から3回にわたりPOPs条約や諸外国における農薬規制の取り組みなどを踏まえつつ、農薬の登録保留基準の設定に当たりまして、環境中における残留性ですとか、生物蓄積性を今後どのように考慮していくべきかという観点からご審議をいただいた結果を取りまとめたものでございます。
 2つ目は農薬専門委員会で提起された課題を踏まえまして、水質汚濁に係る登録保留基準の基準値設定に関する今後の運用の見直しについてでございます。具体的には水質汚濁に係る登録保留基準の規制対象として、有機リン農薬の分解性生物でございますオキソン体をどのように扱うべきかの方針を取りまとめたものでございます。部会長初め委員の皆様方には、何とぞ慎重かつ活発なご審議を賜りますよう、よろしくお願いします。
 そのほか、前回の3月の部会から予算等を含めまして幾つかの報告事項がございますので、後ほどご紹介させていただきたいというふうに思います。
 最後になりますが、土壌及び農薬をめぐる行政課題、多々ございます。環境省といたしましては、委員の皆様方のご指導をいただきながら、積極的に取り組んでまいりたいと思いますので、何とぞよろしくお願いいたします。よろしくお願いします。
 
(鏑木土壌環境課長)
 では、議事に入っていただきます前に、本日の配布資料について、ご確認をいただきたいと思います。
 
(更田農薬管理室長補佐)
 では、資料の確認をお願いいたします。お配りしております資料の一番上に座席表がございますが、それをめくっていただきますと、本日の第16回中央環境審議会土壌農薬部会の議事次第と配布資料一覧のペーパーがございます。資料1が土壌農薬部会の委員名簿でございます。資料2が土壌農薬部会(第15回)の議事要旨(案)でございます。資料3が第15回土壌農薬部会の議事録(案)でございます。それから資料4といたしまして、土壌残留及び水質汚濁に係る農薬登録保留基準の改定について(農薬専門委員会報告)という資料でございまして、この資料には参考資料が3つございまして、まず参考1が、農薬の登録申請に係る試験成績について。これは農林水産省が農薬の登録申請の際に出していただく試験のガイドラインとして通知しているものでございます。それから、参考2が新規化学物質等に係る試験の方法について。これは化学物質審査規制法のテストガイドラインでございます。それから、参考3が委員からのコメントとありますが、これは本日ご欠席ではありますが、河内臨時委員からペーパーで意見をいただいていますので、それをお配りさせていただいております。それから、資料5といたしまして水質汚濁に係る農薬登録保留基準の運用の見直しについて(農薬専門委員会報告)でございます。
 それから、参考資料が1から9までございまして、参考資料1が土壌農薬部会農薬専門委員会委員名簿でございます。それから、参考資料2が「土壌残留及び水質汚濁に係る農薬登録保留基準の改定について」のパブリックコメントを実施しました結果の資料でございます。それから、参考資料3としまして水産動植物に対する毒性に係る改正登録保留基準の施行に必要となる試験法等の検討という資料でございます。それから、資料番号はついてございませんが、土壌対策汚染対策法のしくみという冊子をお配りさせていただいております。それから、参考資料5といたしまして、土壌汚染対策法施行状況についてという資料でございます。それから、次も資料番号はついていませんが、土壌汚染対策セミナー「土壌汚染とリスクコミュニケーション」というパンフレットをお配りさせていただいております。それから、参考資料7といたしまして、農用地土壌汚染に係る細密調査結果及び対策の概要ということで、これはクリップどめしている資料でございます。それから、参考資料8が、平成17年度水環境部概算要求・要望の概要という資料でございます。それから、最後になりますが、「こどもホタレンジャー」の設置についてと、これもクリップどめした資料でございます。
 一応、お配りしている資料は以上でございます。
 
(鏑木土壌環境課長)
 もし足りないものがございましたら、事務局までお申しつけくださいますようにお願いいたします。特にございませんでしたら、議事に入っていただきたいと思います。
 松本部会長、以後よろしくお願いいたします。
 
(松本部会長)
 本日は皆様、大変ご多用のところをご出席いただきまして、ありがとうございます。本日の部会は議事次第にもございますように、農薬関係の議案となっております。また、そのほかにおきまして、報告事項もあるとのことでございます。ご審議の点、どうぞよろしくお願いいたします。
 早速、議事次第に沿って議事を進めていきたいと思います。
 まず、議事に先立ちまして資料2の第15回土壌農薬部会議事要旨(案)と資料3の議事録(案)の確認でございます。議事要旨(案)、議事録(案)、ともに委員の先生方のご了解を得られれば、本部会の運営方針に基づきまして公開の手続をとることになりますので、この場でご確認をお願いしたいと思います。
 まず、議事要旨については、いかがでしょうか。よろしゅうございますか。
 
(異議なし)
 
(松本部会長)
 それでは、議事要旨については特にご指摘がございませんので、お認めいただいたことにさせていただきます。
 次に議事録でございます。議事録につきましては、事前に事務局から配付をいただき、ご確認をいただいていることと思いますので、これでお認めいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 
(異議なし)
 
(松本部会長)
 では、特にご指摘がございませんので、お認めいただいたことにさせていただきます。
 それでは、議事に入ります。議題の1でございますが、議題1は土壌残留及び水質汚濁に係る農薬登録保留基準の改定についてでございます。事務局から、この案件についてご説明をお願いいたします。
 
(早川農薬環境管理室長)
 去る8月3日に第18回の農薬専門委員会が開催されまして、この土壌残留及び水質汚濁に係る農薬登録保留基準の改定についてご審議いただき、農薬専門委員会報告という形で取りまとめられましたので、恐縮でございますけれども、農薬専門委員会の委員長でいらっしゃいます須藤臨時委員からご紹介いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 
(須藤部会長代理)
 かしこまりました。それでは、私の方から今のご紹介いただきましたように、専門委員会の委員長をお預かりしておりますので、本審議事項に関する農薬専門委員会の検討結果の報告をさせていただきます。どうぞ資料の4をごらんになってください。少し分厚い資料でございますが、後で詳しく事務局から説明をさせますので、とりあえずはそれをお手元にお開きいただきたいと思います。
 まず、新環境基本計画にもございますように、化学物質対策の推進については国内外において蓄積した知見や国際的な取り組みを考慮して、リスク管理施策の充実を図っていくということが必要になってきております。近年の国際的な取り組みでございます「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」、すなわちPOPs条約や諸外国の農薬規制においても、農薬の環境中における残留性や生物濃縮性の観点が重要視されているところでございます。このような動向を踏まえ、農薬取締法に基づくリスク管理措置であります農薬登録保留基準について、その運用の充実を図る観点から農薬専門委員会におきまして4月6日、6月8日、8月3日と3回にわたってご審議をいただき、その結果を先ほど申し上げました資料4の報告書としてまとめさせていただきました。
 なかなか難しい問題も多うございまして、審議もいろいろな観点からなされたわけでございますが、新環境基本計画等も踏まえ、農薬について国際的な動向等を考慮し、現状より少しでも前進しようとして精力的に検討を重ねてきた1つの結果でございます。詳細につきましては、事務局から紹介していただく方がよろしいと思いますので、先生方におかれましては、どうぞ事務局の報告の後、よろしくご検討のほど、お願い申し上げます。
 簡単でございますが、委員長としての報告はこの辺にとどめさせていただきます。
 
(松本部会長)
 それでは、事務局どうぞ。
 
(更田農薬管理室長補佐)
 それでは、資料4、土壌残留及び水質汚濁に係る農薬登録保留基準の改定について(農薬専門委員会報告)につきまして説明させていただきます。
 1枚めくっていただきますと、この今回の検討の背景でございます。環境行政のマスタープランは環境基本法に基づく環境基本計画でございますが、平成12年に改定されました新環境基本計画におきまして、化学物質対策というものにつきましては、「将来にわたって持続可能な社会を構築していくためには、一方で生活や経済活動において用いられる化学物質の有用性を基盤としながら、他方でそれらの有害性による悪影響が生じないようにすることが必要」とされております。
 また、その化学物質対策の施策の基本的方向としましては、平成4年の地球サミットにおいて採択されました、環境を保護するために予防的方策を広く適用すべきであるという原則を踏まえつつ、化学物質対策に資する知見の集積やリスク削減のための取り組みを促進するということが挙げられています。別添1に環境基本計画の抜粋をつけてありますが、説明は省略させていただきます。そして、国内外において蓄積された知見や国際的取り組みを考慮してリスク管理の施策というものの充実を図っていく必要があるわけでございますが、近年の国際的な動きとしましては、平成13年5月に採択されました「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」、POPs条約と呼ばれておりますけれども、こういったものがございます。POPs条約は、環境中で分解されにくく、生物体内に蓄積しやすい物質、これをPOPsと呼んでいるのですが、こういったものにつきましては、いったん環境中に排出されますと、地球上で長距離を移動して人の健康や環境に悪影響を及ぼすおそれがあるということですので、このような物質の使用につきましては、国際的に協調して規制していこうという枠組みでございます。10ページの別添2にその概要をおつけしております。
 背景は今申し上げたとおりでございます。2001年、平成13年5月22日に採択されまして、本年の平成16年5月17日に発効しているということでございます。条約の目的は、ここにありますように予防的アプローチというものに留意しまして、残留性有機汚染物質から人の健康の保護と、それから環境の保全を図るということでございまして、加盟国各国に義務づけられている対策としましては、[1]としまして、アルドリン、クロルデン等の物質につきましては製造、使用の原則禁止。DDTにつきましては原則制限ということでございます。それから、[2]としましてダイオキシン、ジベンゾフラン、ヘキサクロロベンゼン、PCBといった、非意図的生成物質の排出を削減していこうということでございます。
 それから、[3]にありますPOPsを含む製品等につきましては、その在庫ですとか廃棄物を適正に管理し処理していくということが求められています。このような[1]から[3]の取り組みをどう進めていくかというものにつきましては、各国で国内実施計画というものをつくって進めていくということになっていまして、その他の措置として、条約に記載されている12物質あるわけですが、これと同様の性質を持つ他の化学物質の製造・使用を防止するための措置ですとか、POPsに関する調査研究、それから途上国に対する技術・資金の援助の実施と、こういったものが対策として義務づけられるということになっております。
 本文に戻っていただきまして、背景の最後のところでございますけれども、このようなPOPs条約がありまして、また、諸外国の農薬の規制においても、そういった環境中における残留性ですとか生物濃縮性の観点が重視されているといったことを踏まえまして、農薬取締法に基づくリスク管理措置であります登録保留基準の設定につきましても、このような観点、残留性ですとか生物濃縮性の観点を考慮して充実を図っていく必要があるということでございます。
 2番目の環境中における残留性や生物濃縮性の観点からの化学物質及び農薬の規制に関する国内外の動向に移らせていただきます。
 まず(1)としまして、POPs条約があります。条約の目的ですとか概要は先ほどご説明したとおりですが、POPsの定義は、条約において明確にはされていないのですけれども、新たに他の物質を条約の規制対象として追加検討する際の、POPsのスクリーニング基準というものが、附属書D基準として添付されております。したがいまして、この附属書D基準に該当するものがPOPsに該当するものなのだろうと解されております。
 この附属書D基準が11ページ、別添3におつけしてあります。これはPOPs条約に規制対象物質を追加するためのスクリーニング基準でありまして、残留性としまして、次のいずれかの情報を提供するとあり、その中に水中半減期ですとか、土壌中の半減期というものの具体的な数値のクライテリアが出ているということでございます。それから、生物蓄積性としましては、生物蓄積計数が5,000を超えることと、またはオクタノール/水分配係数の常用対数値が5を超えることの証拠というようなものが出ております。それから、dとしまして長距離移動性にかかる規定ですとか、eとしまして悪影響と、こういったものがスクリーニング基準として記載されているところでございます。
 本文に戻っていただきまして、1ページ目の最後のところですが、附属書D基準のうち、環境中における残留性及び生物濃縮性の数値基準としましては、先ほどご説明しましたように、残留性ありとされる基準としまして土壌中半減期が6カ月を超えることなど。それから、2ページにいきまして、濃縮性ありとされる基準が生物濃縮係数5,000を超えると、こういったものがありまして、これらの基準に該当する物質はPOPsとして規制される可能性があると考えられるということでございます。
 続きまして2番目、諸外国の農薬規制の現状ということでございまして、諸外国におきましても環境中における残留性や生物濃縮性の観点から厳しい措置がとられているということでございます。例えばEUでは、植物防疫剤の販売に関する理事会指令というものの附属書VIに基づきまして、環境中における残留性として位置づけられている土壌への残留性と、それから濃縮性につきまして規制がされているということでございます。これは、13ページの別添4に基づきまして説明させていただきたいと思います。
 まず、土壌残留性でございます。まずEUですけれども、対象となるリスクが後作物を通じた人への健康リスク、それから農作物に対する薬害となっておりまして、提出を要求される試験としましては、室内試験で好気的分解試験、それから嫌気的分解試験というのを挙げております。そこで、室内の半減期ですとか、室内の90%消失期間というものを求める試験が課されます。
 その下に圃場試験とありますが、まず土壌消失試験ですが、これは野外での半減期と、90%消失期間を求めるための試験でして、この試験が要求されるのは、室内での半減期が60日を超える場合ですとか、寒冷地の場合は90日を超える場合はこういった土壌消失期間が求められるということになっています。
 それから、2番目の土壌残留試験ですが、これは野外での収穫時または後作物の播種時もしくは植え付け時の土壌の残留量を算定するための試験でして、これも室内の半減期が散布から収穫までの期間の3分の1を超える場合であって、かつ後作物による吸収が生じる場合に試験が求められるということになっています。ただしということで、求められない除外規程はございますが、一応そういうことでございます。
 それから、[3]としまして、土壌蓄積性試験というものがございまして、これは野外条件下で有効成分、代謝物、分解生成物などの残留蓄積性の可能性を評価するための試験でして、これは野外での90%消失期間が1年を超える場合で、かつ栽培期間中または翌年以降に、その農薬の連用が考えられる場合は、土壌中での残留蓄積性の可能性、それから平衡残留量についての試験が要求されるということでございます。ただし、モデル計算などにより信頼できる情報が得られる場合を除くとなっています。
 1枚めくっていただきまして、14ページでございますけれども、その土壌残留の観点から登録保留基準としましては、有効成分などが野外試験における90%消失期間が1年を超える、かつ半減期が3カ月を超える場合に登録保留となっています。それから、「または」ということで、室内試験において100日後に初期農薬量の70%を超える量の非抽出性残留物が形成され、100日間の無機化率が5%未満である場合に登録保留となっております。登録保留基準ではこうなっていますが、「ただし」ということで、除外規定がございまして、後作物が許容できない残留物が生じたり、後作物に薬害影響が出たり、環境に対して許容できない影響が及ぶような濃度で、土壌中に蓄積しないことが科学的に実証される場合を除くということになっております。
 一応、これがEUの土壌残留にかかる規定でございまして、ドイツ、英国、スウェーデンはみんな同左ということになっています。
 15ページにオランダの例がございますが、これも提出を要求される試験としましては、まず室内試験がございまして、それから圃場試験での土壌消失試験、それから土壌残留試験、それから土壌蓄積性試験というものが求められます。
 登録保留基準としましては、16ページでございますけれども、室内での半減期が90日を超える場合と、あるいは室内試験において100日後に初期農薬量の70%以上の土壌結合残さが形成され、100日間の無機化率が5%未満である場合となっております。ただし、除外規定がございまして、例えばフィールドでの半減期が90日未満、かつ圃場試験において100日後に初期農薬の70%以上の土壌結合残さが形成されず、100日間の無機化率が5%以上になることを登録保持者が示すというような場合には登録される道があるということでございます。
 それから、フィールドでの半減期が90日を超える場合、あるいは、圃場試験において100日後に初期農薬量の70%以上の土壌結合残さが形成され、100日間の無機化率が5%未満である場合というものも登録保留になっております。これも「ただし」ということで、当該植物防疫剤の使用及びその分解生成物が許容できない土壌に蓄積を引き起こすことなく、非標的生物の多様性、肥沃性に影響を与えない場合には登録されるということになっています。
 それから、カナダでございますが、カナダの方は右に登録保留基準とありまして、これは土壌だけでということではないのですけれども、有害物質管理指針等がございまして、そこで、ここにありますように土壌における半減期ですとか、水中半減期、底質中半減期、大気中半減期というものがございまして、こういった例えば土壌における半減期であれば、182日を超える場合はその残留性ありというふうになるわけでございます。この有害物質管理指針では、16ページの括弧書きでございますが、残留性、生物蓄積性、毒性、当該化学物質の環境中濃度が人の活動によるものかどうかの4つの観点から評価を行いまして、すべてに該当する場合は、Track1物質としまして、実質的には使用できないというような運用がされているところでございます。
 続きまして、17ページで生物濃縮性でございます。これもEUの基準でございますけれども、対象となるリスクは、水生生物への影響ということでございまして、魚類における生物濃縮性試験、BCFを算出するための試験が求められるということでございます。試験が要求されるのは、logPowが3を超える場合ということになっていまして、ただし生物濃縮が起こるような曝露が生じ得ないことを実証する場合は除かれるということでございます。
 登録保留基準ですが、生物易分解性の有効成分については、BCFが1,000を超える場合、易分解性でない有効成分につきましては、100を超える場合には登録保留となっています。一応、「易分解性」と「易分解性でない」の区分は、17ページの括弧内に整理させていただいております。ただし、適切なリスクアセスメントにより、圃場条件下で申請された使用方法に基づき使用した場合に曝露される生物種の生存能力に許容できない影響が生じないことが実証できる場合は除くということでして、一応、除外規定もあるということでございます。ドイツ、英国、スウェーデンは、いずれも同左でございます。
 それから、1枚めくっていただきまして、オランダも同左でございまして、カナダにつきましては、先ほどご説明しました有害物質管理指針に基づき、BCFが5,000を超えるという場合には、生物蓄積性ありというふうになるということでございます。
 そして、管理指針では先ほど申しましたように4つの残留性、蓄積性、毒性、それから環境中での濃度が人の活動によるものかどうかという4つの観点から見て、4つ該当する場合は事実上使用できないということになると、こういった農薬の規制がなされているということでございます。
 本体資料の2ページにまた戻っていただきまして、2ページの(2)の諸外国の農薬規制の現状というところですが、今ご説明しましたように[1]土壌への残留性では、原則としまして圃場試験において農薬の有効成分が90%を消失する期間が1年を超え、かつ半減期が3カ月を超える場合に登録保留、濃縮性につきましては、生物易分解性の場合は濃縮係数が1,000、そうでない場合は100を超える場合に登録保留となっているということでございます。
 それから(3)の他法令における規制の現状でございます。我が国における化学物質を規制する制度としましては、農取法のほかに「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」、いわゆる化審法がございます。化審法では、自然的作用による化学変化が生じにくい(難分解性)。それから体内に蓄積されやすいといった高蓄積性。それから継続的に摂取される場合に人の健康を損なうおそれ(人への長期毒性)、それから動植物の生息または生育に支障を及ぼすおそれ(動植物への毒性)と、この3つの観点から化学物質の事前の審査を行いまして、その性状に応じまして、製造・使用等の規制を行っているということでございまして、環境中における残留性、濃縮性の観点が考慮されています。
 その難分解性ですとか高蓄積性の判断基準は、別添5の19ページにおつけしております「監視化学物質への該当性の判定等に係る試験方法及び判定基準」ということでございまして、この法律は厚生労働省、経済産業省、環境省、3省の共管の法律がございまして、それぞれの所管部局名で公表されているものでございます。
 1枚めくっていただきますと、20ページに試験成績に係る判定基準というものがありまして、分解度試験につきましては、まず良分解性というのは、3つの試験容器のうち2つ以上でBODによる分解度が60%以上であり、かつ3つの平均が60%以上であることというような場合に良分解性となりまして、難分解性は「良分解性でないこと」とされております。
 それから濃縮度試験でございますが、高濃縮性と判断されますものは、濃縮倍率が、5,000倍以上であること。高濃縮性でないものにつきましては、濃縮倍率が1,000倍未満であること、それからオクタノール/水分配係数の対数が3.5未満であることというような場合は高濃縮性でないとなっておりまして、[3]でございますけれども、濃縮倍率が1,000倍以上、5,000倍未満の場合は必要に応じまして、排泄試験とか、部位別の濃縮倍率というものを見まして、総合的に高濃縮性かどうかを判断するというような仕組みになっているということでございます。
 また、あっち行ったりこっち行ったりで恐縮でございますが、本体の資料に戻っていただきまして、資料の2ページの終わりからでございますが、今申し上げましたように、化審法では難分解性、それから高濃縮性というものの判断を、審査しておりまして、今ご説明しましたように高蓄積性ありという判断基準は、POPs条約を踏まえまして現在は5,000倍以上ということになっております。
 それから、現行の農薬登録保留基準の運用上の課題でございます。これにつきましては、 24ページの別添6からご説明させていただきたいと思います。24ページに農薬の登録制度と農薬登録保留基準についてという資料がございます。農薬につきましては、農林水産大臣の登録を受けなければ製造・加工・輸入をしてはならないとされていますが、その登録に当たりましては農林水産大臣が申請者の提出した資料に基づきまして、登録検査を行っています。そして、ここに1)から10)まであるわけですけれども、これに該当する場合は登録が保留されます。そのうち4)、5)、6)、7)につきましては環境大臣が基準を定めて告示するということになっていまして、これがいわゆる農薬登録保留基準でございます。4)につきましては、申請書の記載に従って農薬を使用した場合に、その農薬が有する農作物についての残留性の程度から見て、その使用に係る農作物等の汚染が生じ、かつ、その汚染に係る農作物等の利用が原因となって人畜に被害を生ずるおそれがあるとき、これがいわゆる作物残留にかかる登録保留基準です。
 それから、5)につきましは、申請書の記載に従って農薬を使用した場合に、当該農薬が有する土壌についての残留性の程度から見て、その使用に係る農地等の土壌の汚染が生じ、かつ、その汚染により汚染される農作物等の利用が原因となって人畜に被害が生ずるおそれがあるときとなっております。
 それから、6)が水産動植物被害ですけれども、これは一般的に農薬を使用した場合に、水産動植物に対する毒性の強さ及びその相当日数にわたる持続性から見て、多くの場合にその使用に伴うと認められる水産動植物の被害が発生し、その被害が著しいものとなるおそれがあるときというものでございます。
 それから、7)でございますが、これはその申請書の記載に従い一般的に使用される場合に、多くの場合、その使用に伴うと認められる公共用水域の水質の汚濁が生じ、かつ、その汚濁に係る水と、その水の汚濁により汚染される水産動植物の利用が原因となって人畜に被害が生じるおそれがあるときというふうになっています。これが水質汚濁に係る登録保留基準でございます。
 一応、今回の環境中の残留性ですとか、濃縮性というようなものは、ですから土壌残留ですとか水質汚濁の登録保留基準で見られるということになると思います。
 1枚めくっていただきまして、26ページに別添7というものがございまして、これは土壌残留に係る登録保留基準の告示で規定されているものの抜粋でございます。まず、この2号というのは土壌残留に係る登録保留基準ですが、イ、ロ、ハと3つありまして、まずイにつきましては、当該農薬の成分物質等が土壌中において2分の1に減少する期間が圃場試験及び容器内試験において1年未満である農薬以外の農薬であって、その使用に係る農地において通常栽培される農作物がその当該農地の土壌の当該農薬の使用に係る汚染により汚染されることとなるもの。括弧内に除外規程がございますが、原則的にこういった場合には登録保留になるということでございます。
 ロにつきましては、2分の1に減少する期間が圃場試験及び容器内試験によって1年未満である農薬につきましては、その使用に係る農地においてその使用後1年以内に通常栽培される農作物の汚染が生じ、その汚染に係る農作物または加工品の飲食用品が食品衛生法第 11条第  1項に規定に基づく規格に適合しないものとなることということになります。ですから、半減期の長さによって規制の程度が、イとロで若干異なっているということでございます。
 ハにつきましては、これは家畜、えさの基準でございますが、2分の1に減少する期間が圃場試験及び容器内試験において1年未満であり、かつ、家畜の体内に蓄積される性質を有する農薬につきましては、その飼料作物に当該農薬の成分物質等が残留してはならないということになっているということでございます。
 3ページに戻っていただきまして、今、環境大臣が定める登録保留基準と土壌残留に係る登録保留基準の内容と現行の運用についてご説明しましたところでございますが、(1)のイ、ロ、ハの下にこの基準の運用においてというところがありますが、この基準の運用におきましては、土壌中の半減期、1年以上の農薬については、原則として登録を保留するというような運用がなされてきたわけでございますが、POPs条約の附属書D基準の環境中における残留性の基準が半減期は6カ月となっています。またEUにおける登録保留基準では、半減期が3カ月を超える場合となっておりまして、近年の環境中における残留性に関するクライテリアの傾向を踏まえまして、特にPOPs条約が発効したということを契機に、その土壌残留に係る登録保留基準について再検討をする必要があるのではないかということでございます。
 続きまして、水質汚濁に係る登録保留基準でございます。4ページでございますが、この基準は農薬により水質汚濁が生じ、その汚濁した水と先ほど申しましたように、その汚濁により汚染される水産動植物の両方の利用が原因となって人畜に被害を生ずるおそれを防止する観点から定められております。ですから、この農薬により汚染された水による水の摂取というもののみならず、汚染された水により水産動植物が汚染される、要は水産動植物に濃縮されていくといったことによる人畜への悪影響も考慮するような仕組みになっていたということでございます。これまでの運用におきましては、飲料水経由の悪影響のみを考慮したわけですけれども、濃縮性の観点というものが重視され、かつ国際的にも具体的にはクライテリアというものが明確になってきたことも踏まえまして、水質汚濁に係る登録保留基準につきまして農薬が魚の中で濃縮されて、その魚を利用することによる人畜への悪影響についても考慮していく必要があるのではないかということでございます。
 4番目に農薬登録保留基準の改定の考え方というものがございます。まず、土壌残留でございますが、その現行の半減期のクライテリアにつきまして、POPs条約とかEUとか、あるのですけれども、一応、国際的に合意されましたPOPs条約の附属書D基準を重視しまして、現行の1年から180日にするということでございます。
 それから[2]でございますが、現行は圃場試験及び容器内試験と2つの試験結果を併用していたわけでございますが、いずれか一方で、例えば1年を超えれば、それは先ほどの告示イに該当するということになったわけです。同等に試験の結果を評価したわけでございます。ただし、これまでやられた試験によりますと、容器内試験といいますものは時間が経過していきますと微生物活性が衰えるということでして、半減期が実際よりも長く出るという、実態と乖離した試験結果になるおそれがあるということが指摘されております。一方、圃場試験におきましては、若干実環境ということで、試験結果がばらつく傾向があるのですけれども、実環境に近い条件で行われていることから、その圃場試験の結果を重視しまして、その結果のみに基づいて半減期を算出するというふうに見直してはどうかということでございます。
 それから5ページにいきまして、現行の登録保留基準の運用では1年を超える農薬については登録保留をしてきましたので、先ほどご紹介しました告示の本文に書いてありました「当該農薬を使用した場合に、その使用に係る農地において通常栽培される農作物が当該農地の土壌の当該農薬の使用に係る汚染により汚染されたことになるもの」の判断基準というものが、これまで明確ではなかったということでございます。今回1年から180日に見直すということに伴いまして、このリスク評価の部分の規定につきましては、現行のまま置いておくのですが、その汚染されることとなるものの判断基準は明確化させることが必要であるということでございます。では具体的にどうするかということでございますけれども、後作物残留性試験と、これは注1にありますように、農林水産省の農薬登録申請に係る試験成績についての中で、既にガイドライン化された試験でございますが、この後作物残留性試験を行いまして、原則として後作物から被験物質が食品衛生法第11条3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める人の健康を損なうおそれのない量を超えて検出された場合は、汚染されたことになるということに該当すると考えることが適当ではないかということでございます。
 注2にありますように、食品衛生法は昨年改正されまして、すべての農薬につきまして食品規格ができていくというポジティブリスト制に移行されることになっていますが、環境経由の非意図的な残留ということも想定されますので、諸外国の事例を参考に「人の健康を損なうおそれのない量」という一律の基準を設定するという新たな規定が設けられていまして、厚生労働省で検討されている一律基準を、その汚染されるというものの判断基準に活用してはどうかということでございます。
 なお、別途「当該農薬の毒性が極めて弱いこと」もあるのですが、こちらはちょっとまだ明確化していなく、登録検査の中での判断になると思いますが、汚染の程度が微弱とか、毒性が極めて弱いという場合には除くというような規定は残していくということにしたらどうかと思っております。
 (2)の水質汚濁でございます。これにつきましては、現行、水田の水中における150日間の平均濃度と登録保留基準値を見比べて登録の可否が判断されてきたわけですけれども、今回、この150日間の平均濃度から公共用水域の水中における濃度に変更するということでございます。その際、公共用水域の水中における予測濃度が基準値を上回るといった場合に登録が保留されるということでございます。この予測濃度の算出法につきましては、来年4月から施行します水産動植物に係る登録保留基準の方で既に短期のPECというものができておりますので、これを参考にしつつ長期曝露というものを考慮して算定することとするということでございます。
 それから[3]でございますが、現行の基準では水田使用農薬についてのみを対象としていたのですけれども、別添9の環境省で実施しています化学物質環境調査等の結果では、水田で使用されていない農薬についても水質から検出されているということですので、その非水田使用農薬も規制対象にしてはどうかということでございます。
 若干この別添9をご説明しますと、28ページでございますが、これが公共用水域等における農薬の検出状況ということでございまして、農薬名のところに色つきの例えばCAT、シマジンですが、これは検出があったものでございます。水田使用というものは、水田で栽培される作物、水稲ですとか、いぐさなどに農薬の適用があって、水質汚濁の可能性がある農薬に丸印を付してあります。それから非水田使用というのは、水田以外で栽培される農作物に適用がある農薬です。これは環境省の方で調べて丸印をつけているというものございます。それから、公共水域における基準等につきましては、これは単位はμg/Lですけれども、(監)(環)(登)(環)とあるのですが、(環)は、これは環境基準の健康項目があるということです。(登)は水質汚濁に係る登録保留基準があるものでして、これは水田水中の150日間の平均濃度の基準値として設定されておりますので、公共用水域の濃度に換算する場合は、その登録保留基準値を10分の1にする必要がありますので、10分の1にした値を(登)として載せているということです。それから(監)というのがありますが、これは要監視項目の指針値であります。それから(評)というのは、公共用水域における農薬の水質評価指針値、これは平成6年の環境庁水質保全局長通知で示したものですが、その基準値を載せているということでございます。
 実施年度のところで、黒四角がついていますものは、環境ホルモン戦略SPEED'98関連の環境残留実態調査の結果でして、それ以外は化学物質環境調査(黒本)のデータであります。こういったデータを見ますと、例えばIBPは、例えば魚類の方でも検出されておりまして、内水面と沿岸海域、これは有明海ですが、こういったところで検出されている事例があるということでございます。
 それから29ページに行きましても、イソプロチオランとか、これも魚から検出されていますし、ペルメトリンも魚から検出されている事例があるということでございます。それから31ページの方に行っていただきますと、例えば真ん中の方にケルセンという農薬がありますが、これにつきましても魚から検出されています。これは水田使用の欄に丸がないものですから、非水田、畑使用の農薬であるということでございます。
 それから32ページにトルフルラリンというのがありまして、これも非水田使用農薬ですけれども、魚から検出されており、あと水からも検出されているというような検出状況になっているということでございます。
 本文の方に戻っていただきまして、こういったことから非水田の使用農薬も規制の対象にしていく必要があるということでございます。
 それから6ページの[4]でございますが、生物濃縮性の高い農薬については、魚類体内の農薬の含有量を基準値Xと同一の水中濃度に生物濃縮係数を乗じた値として求めまして、従来の飲料水及び作物由来の摂取とあわせて曝露量を評価してADIの範囲内にするようにするということでございまして、この式がありますが、基準値×国民1日当たりの飲水量、これが飲料水経由の当該農薬の1日摂取量でして、これは従来から設定しているものと同じでございます。その下に魚介類経由の農薬の1日摂取量というのがありますが、これは基準値に濃縮係数を乗じまして、内水面のものはそのまま濃縮係数を乗じます。その値と、基準値に海域における希釈倍率5分の1と、濃縮係数、それから海面漁業・養殖業由来の魚介類摂取量0.045キログラムを乗じた値の両者を足し合わせることで、魚介類経由の当該農薬の1日摂取量が求まります。それが、その下にありますように飲料水につきましては、ADI×平均体重×10%これはADIの水への配分が従来から10%でしたので、10%ですが、その下に新たに魚介類経由へのADI配分ということで、一応5%というものを設定しまして、飲料水、魚介類経由のADIの摂取量がこのADIの15%以内におさまるようにするということから、基準値をその下にありますような算出式で求めることとするということにしたらどうかということでございます。
 注についてご説明申し上げますが、まず、魚介類の摂取量です。先ほど申し上げましたように黒本調査では、農薬が内水面だけでなく、海域の魚介類からも検出されていますので、魚介類経由の農薬の曝露量の考慮に当たりましては、内水面だけでなく、海面漁業、養殖漁業由来の摂取量のうち、遠洋沖合魚介類を除いたものを対象とするとなっています。これは、海面の海の魚といいましても、それをすべて対象にするのではなく、遠洋で漁獲されるものにつきましては、陸地で使用される農薬が悪影響を及ぼすということは、とりあえず考慮しないでいいだろうということで、その遠洋沖合魚介類を除いたものを対象とするということにしております。
 どのようにやったかということでございますが、34ページに別添10がございます。内海内湾の魚と遠洋沖合魚ということで、このPCBの規制をした時のやり方を参考にしたということでございます。具体的には、別添10の右の方の「別紙」とある部分に、遠洋沖合魚と、それから内海内湾魚が例示されています。こういった魚種の区分をした前例がございますので、これを参考にしまして今回も内海内湾魚と遠洋沖合魚の摂取量というのを試算したということでございます。その次の35ページに別添11「曝露評価対象魚介類の算出について」という資料があります。これは先ほど申しましたPCB規制値設定時に遠洋沖合魚介類として、リストアップされた魚がございますので、この魚介類分につきましては、ここにありますように漁業、養殖業、生産統計年報の海面漁業の漁獲高から、そのリストアップされた漁獲高を遠洋沖合魚介類として別途集計しまして、残ったものを内海内湾魚介類としまして、この[1]、[2]、[3]、[4]、内海内湾魚介類、それから海面養殖業、内水面漁業、内水面養殖業と、この4つにつきまして曝露評価の対象の魚介類の摂取量に使う数字として用いたということでございます。一応、3カ年の平均でとりまして、割合としましては50.5%、これに年次別の1人当たりの魚介類の摂取量が93.4グラムですので、1日当たりの摂取量としましては海面漁業・養殖業経由が45グラム、それから内水面が2.1で、曝露評価の対象魚介類経由としましては、47.1グラムとなっています。
 8月3日に農薬専門委員会でご説明したときは、遠洋沖合魚介類というものが、PCBの時にポジティブリストでリストアップされまして、それ以外が内海内湾魚介類となっていたものですから、その農林水産省の統計から遠洋沖合魚介類にリストアップされたものだけを遠洋沖合魚介類にしまして、その他は内海内湾魚介類として、とりあえず整理したのですが、内海内湾魚介類として分類されたものの中にも、沖合いのものもあるのかもしれないということで、いろいろ委員会でもご指摘いただきまして、内容を精査しました。合計の欄に括弧しまして藻類、おきあみ類、その他水産動植物を除くとなっていますけれども、このおきあみとか、その他水産動植物というものは、例えばえさに使用したりするもので、人間が直接口にしないということでしたので、今回、曝露評価の対象魚介類から除いたということで前回から変わっております。それから内海内湾魚介類の中に例えば「赤いか」というものは、結構遠洋にいるという文献もありましたので、これを遠洋沖合魚介類の方に再区分したといった修正を行いました。この結果、曝露評価の対象魚介類の割合は前回53.2%であったものが、今回50.5%になっています。それから摂取量につきましても海面漁業・養殖業の欄は前回47.6gであったものが45gに変更されております。こういった見直しを行って、専門委員長のご了解を得てつくり上げたというものであります。
 続きまして、また6ページに戻っていただきまして、今、注1をご説明しました。ですからくどいようですが、例えば本文の中で海面漁業・養殖業生産量を占める割合を算出したところ、それぞれ2.3%及び48.2%となったのですけれども、例えばこの48.2%は、前回は51%としててあったとか、そういったところで数字が変わってきているということでございます。
 それから海域における希釈倍率ということですが、これは海域においては、内水面に比べまして農薬濃度が希釈されると考えられるので、その点を考慮すべきというご指摘、ご意見を踏まえまして、希釈倍率というものをこの基準値を算出する際に考慮していこうということになったわけであります。この希釈倍率の出し方ですけれども、これにつきましては東京湾、伊勢湾、尾鷲湾、瀬戸内海のデータというのがありまして、これが化学物質で川と海と両方あるデータを用いまして、 5倍ということにしたわけでございます。
 データにつきましては36ページからの、別添の12でございます。これにつきましては、例えば東京湾といいますものは、東京都が調査したものでして、その調査のうち、いずれかの水域、河川か海かで検出があった物質を記載しております。平均希釈倍率は河川で明確な検出があったもののみを用いて検出しているということがございまして、例えば一番左側にベノミルというのがありますけれども、これは例えば荒川で0.4、東京湾で0.2となっています。ですから河川で0.4、この単位はμg/Lですが、湾で0.2ということですので、希釈倍率としては括弧にもありますように2倍となります。こういった計算をしまして、例えばそのほかにも東京湾がN.D.であっても河川で検出されていた場合は、N.D.の2分の1の数字を置きまして、希釈倍率を出しているということでございまして、そういった物質ごとの希釈倍率の平均をさらに湾全体の平均に計算しますと、東京湾で4.1倍となります。
 次のページ、それから38ページも東京湾のデータでして、39ページが伊勢湾のデータであります。それから40ページが尾鷲湾、それから41ページが瀬戸内海ということでして、42ページに東京湾、伊勢湾、尾鷲湾、瀬戸内海における希釈倍率というものの平均が4.46になったということであります。この希釈倍率につきましても、農薬専門委員会でいろいろご論議ありました。専門委員長より、いろいろ他のデータも考慮して再検証した上で、数字を置くことにしましょうと前回専門委員会でおまとめいただきましたので、事務局でも例えば塩分濃度における推計ですとか、海水交換状況なんかも検討しましたが、希釈倍率につきましては、この対象となる海と河川をどのように選定するかによりまして、さまざまな数値を置き得るものであります。この基準は人の健康を保護するものでありますので、安全側に立って、ほとんどの海域において通常見込んでも差し支えない希釈倍率をすることが適当と考えられます。特に今回の基準値算定式では、魚を多く食べる集団への影響ですとか、特定海域の魚を食する集団への影響、それからえさとか、底質経由の魚への曝露というものが考慮されていないこと。それから海域の直近でも圃場が存在しているというようなことから、安全サイドに立って、5倍というふうにしたわけであります。
 ただし、前回の8月3日の農薬専門委員会の資料から伊勢湾と尾鷲湾のデータが変わっております。これは例えば39ページの伊勢湾のデータでスチレンモノマーとか、ビスフェノールAというところで、トレースというのがあります。これは痕跡程度検出されたことを示すというものでございますけれども、前回は河川でトレース、海域でトレースであった場合も希釈倍率1倍として数字をおいて全体の平均値を算出したのですが、須藤委員長ともご相談しまして、この両者ともトレースの場合は平均値の算出から除こうということになりまして、例えば42ページの伊勢湾の平均値は、前回1.55倍だったものが今回2倍へと、尾鷲湾につきましては、前回2.59倍だったものが4.02倍ということでして、全体は前回3.97倍だったものが4.46倍に見直したということでございます。そこの数値が変わっているということでございます。
 6ページに戻っていただきまして、注2の希釈倍率につきましては、4.46倍のデータをもとに約5倍としてあります。前回の8月3日の農薬専門委員会資料の時は4倍だったのですけれども、データの取扱いを見直して、数字が5倍に変わっておりますが、この5倍を係数として用いることにしてはどうかということでございます。
 それから7ページの注3でございますが、先ほど魚介類経由のADIの配分を5%と置いたのですが、これにつきましては、従来作物経由は80%を見るという運用をしていまして、その作物の摂取量が大体941グラム程度、魚につきましては47.1グラムを考慮するということですので、この比を案分しまして約5%と算出しています。作物のADIの配分80%もいつも上限まで使っているものではございませんので、余裕がある場合はそのうち5%を魚経由に配分するというようなことにしてはどうかということでございます。
 それから[5]の「生物濃縮性を考慮する対象農薬について」でございますが、生物濃縮性のクライテリアにつきましても、その附属書D基準を考慮しまして、生物濃縮係数が、5,000を超える場合という場合にしてはどうかということでございます。さらに現行の「試験ガイドライン」では、濃縮性の試験の成績を提出するよう義務づけていませんが、化審法ではlogPowが3.5未満である場合は「高濃縮でない」となっていますので、こういったことも踏まえましてlogPowが3.5以上の農薬につきまして生物濃縮性に係る試験成績の提出を義務づけると、このようにしてはどうかということでございます。
 それから、告示改正後の施行に向けた課題ということでございます。その告示改正・施行に向け以下の点について検討する必要があるということでございますが、「なお、生物濃縮性の高い農薬に適用する基準値の算出式において用いる希釈倍率等については、現時点における知見に基づき設定したものであるが、改正告示の施行後においても知見の集積に努め、必要に応じて当該数値の見直しを検討する」とのなお書きがあります。これは先回の農薬専門委員会資料では入ってなかったのですけれども、農薬専門委員会の審議の結果を踏まえまして、このような一文を追加しているということでございます。
 施行に向けた具体的な課題ですが、まず(1)としまして、生物濃縮性を考慮した水質汚濁に係る登録保留基準値との比較に用いるPECの算出法の検討です。このPECにつきましては、環境水中の農薬濃度については、散布直後に高くなってその後減衰することですとか、その散布時期についてもいろいろ異なっていること。それから、今回の水質汚濁に係る登録保留基準は人の健康保護に係る環境基準に対応する項目であることから、PECを算定するに当たっては、そういったものを考慮しまして例えば小河川等を含む公共用水域を広範に含めるというようなこととして、検討していく必要があるだろうということでございます。
 それから生物濃縮性5,000以下の農薬につきましても、例えば1,000以上5,000以下の農薬につきましては、一般環境中の魚介類の体内に農薬が蓄積していないかというようなモニタリングを行いまして、検出状況によって必要な対策を講じることを検討するといったことを課題として整理しているということでございます。
 資料4の説明は以上でございますが、これにつきましては事前に土壌農薬部会の委員の先生方に資料をお送りさせていただきましたところ、本日ご欠席でありますが、河内委員から意見をいただいておりまして、それを資料4の参考3として、一枚紙をお配りさせていただいております。ご意見は3点ございまして、まず「農薬の海域における希釈倍率について」ということでございます。これは希釈倍率を5分の1としているが、その根拠となるデータは閉鎖性の高い場所で河口付近であることから、全国一律の値とするには疑問を感じる。従って妥当な希釈倍率とすることについては、今後の課題とすべきであるとのご意見です。
 それから「2.生物濃縮性について」ということでございまして、農薬の河川濃度は、季節により大きく変動する。したがって、農薬の生物濃縮性については、その環境動態を反映した評価法の導入を今後の課題とすべきであるとのご意見です。
 それから3番目ですが、「既登録農薬への水質汚濁に係る登録保留基準の適用について」ということでございまして、既登録農薬につきましては、河川や魚体中の実際の濃度をモニタリングすることが可能ですので、環境予測濃度だけの規制でなく、その実環境のデータも考慮して規制すべきと考えると、こういったご意見をいただいているところでございます。 以上、河内委員からの意見をご紹介させていただきました。
 続きまして、この農薬専門委員会報告を8月3日に取りまとめいただきまして、その後、パブリックコメントを実施しております。その実施した結果が参考資料2ということで、お配りさせていただいております。これにつきましても、ざっと紹介させていただきたいと思います。実施期間が8月16日から9月14日まででございまして、提出意見の数がファクスで1件、電子メールで4件の計5件いただいております。その1件の中にも多くの意見とか質問が入っておりまして、整理した結果、土壌残留に係るものにつきましては11件、水質汚濁に係るものが28件、その他で1件となっております。おめくりいただきますと、そのご意見の概要と、それから意見に対する考え方ということでまとめてございます。
 まず、1つ目は土壌残留に係る登録保留基準の改定に対するご意見ですが、そのクライテリアとしまして、EUの方が望ましいと思うが、その基準を採用しなかった理由は何ですかというご質問につきましては、POPs条約の基準が国際的に合意されたものですから、その附属書D基準を重視することとしたということでございます。
 それから、2番目ですが、登録保留基準を1年から180日に変更されたことにより、登録保留になるおそれのある農薬成分名を挙げてくださいというふうにありますが、それにつきましては、180日を超えただけで登録保留になるのではなくて、その当該農薬の土壌の当該農薬の使用に係る汚染により汚染されることとなることも評価することになっていまして、登録検査を行った結果、どの農薬が該当するかということにつきましては、現時点では明らかになっていませんということでございます。
 それから、3番目で食品衛生法に基づく食品規格というものを土壌残留の登録保留基準に活用していますけれども、一律基準は科学的に安全と証明されていないのではないか。それからポジティブリスト制のもとでは、基準値が緩和されていることなど問題もあるので、後作物の農薬が検出されないことを原則とすべきですというご意見があります。それにつきましては、不検出とすることも一つの考え方でありますけれども、分析技術の向上によって不検出だったものが検出されることも生じる場合もあります。一方、食品衛生法に基づきますおそれのない量につきましては、厚生労働省が食品安全委員会の意見を聞いて、さらに薬事・食品衛生審議会の意見も聞いて検討されるということですので、その検討の過程で十分安全性の評価がなされるのではないかと認識しているということで、このおそれのない量というものを活用したい。また食品規格も活用したいというふうにしております。ディルドリンのことが書いていますが、ディルドリンにつきましては、既に販売禁止農薬に指定されていますので、国内登録が行われることはないということも書いてございます。
 それから、4番目ですが、このおそれのない量という一律基準を汚染されることの判断基準として用いるとなっていますが、現行の登録保留基準では「汚染の程度が微弱であること、毒性が極めて弱いこと等の理由」から「有害でないと認められるものを除く」というふうになっていますので、曝露評価により汚染の程度が低く有害でないとする考え方を導入することの方が、農取法の規定に照らして適切ではないかという意見があります。これにつきましては、土壌残留に係る登録保留基準は、前作に使用した農薬が後作物を非意図的に汚染した場合のリスクを考慮するものです。土壌に残留している農薬につきましては、後作物栽培時にはコントロールできないので、残留性の高い農薬のリスク管理措置であるイ号での汚染の有無の判断基準については、そのおそれのない量というものが適当ではないか。ただし毒性が極めて弱いことは汚染が微弱であることと並列で規定されていますので、汚染の程度が微弱ではなかったとしても、毒性が極めて弱いという場合は登録されるという場合もあり得るのではないかというふうにしております。
 それから、5番目ですが、圃場試験はばらつきが多いと、多様な使用条件に応じた登録保留基準を決めるべきではないかということにつきましては、一応、登録保留基準につきましては、ご説明しましたような一律の基準を考えていると。こういった圃場試験のデータのつくり方といいますか、そういった点につきましては、登録検査の中で考慮されていくことになるのではないかというふうにしております。
 それから、6番目でございますけれども、農薬の分解物なども基準に反映させるべきではないかということがあります。土壌残留に係る登録保留基準は先ほど申し上げましたように、一律の基準として設定するということになっていますが、告示において当該農薬の成分物質等が土壌中において2分の1に減少する期間となっていまして、その等には、「その物質が科学的に変化して生成した物質も含む」とされていますので、代謝物は考慮されているというふうに説明しております。
 それから、7番目ですが、補助成分というものにつきましても基準を設定すべきではないかとなっていますが、農薬の登録申請に当たりましては、圃場試験、後作物試験と、製剤を用いて行うことになっていまして、その登録検査の中で補助成分を含めて製剤としての安全性について考慮されているというふうに認識しているということでございます。
 それから、8番目ですが、山口県で大根に使用したホスチアゼートが、基準を超えて残留していたが、これは土壌残留の試験法に問題があったのではないかということについてですが、これにつきましては、山口県庁にも問い合わせをいたしまして、その農薬につきましては、本来全面土壌混和して使用すべきところ、大根を植えつける畝の部分だけで混和していたとの使用方法の誤りが原因であって、ラベルに記載された使用方法どおりに守って使った場合は、残留基準を超える農薬は検出されていなかったというふうに聞いております。
 それから、9番目、ディルドリンのような農薬により汚染されている土壌では、後作物の栽培を禁ずるべきということにつきましては、これは直接の意見募集の対象ではないのですけれども、一応、ドリン類を吸収しやすい、きゅうり等の農作物の栽培を行わないように農政担当部局において指導の徹底に努められているということでございます。
 それから、10番目、人畜だけではなく土壌中のミミズや昆虫などへの影響の評価もなされるべきではないかにつきましては、ミツバチ、カイコなどのものにつきましては、登録段階で試験が実施されて、必要に応じて使用上の注意事項が記載されておりますが、そのご指摘のミミズや土壌微生物などの広範な陸域生態系保全対策については、今後の課題ですので、調査・検討を進めていきたいというふうにしております。
 それから、11番目につきましては、基準設定された後に環境汚染状況の調査を義務づけ、基準の見直しをすべきではないかということでございます。これにつきましては、まず土壌残留に係る登録保留基準は個別農薬毎に設定することではなくて、一律の基準になっている。さらに、登録保留基準は、使用方法を遵守することで担保されているものですので、登録保留基準に該当するような事態が生ずるおそれがあると考えられる場合は、使用方法の改善を図るということが優先されるのではないかということでございます。
 続きまして、6ページで水質汚濁に係る登録保留基準の改定に対するご意見です。まず12番からですけれども、150日間平均濃度から公共用水域の水中濃度へ変更された場合、基準値はどうなるかということですが、これにつきましては、今後濃縮性の試験成績ですとか、また農薬専門委員会の審議を踏まえて決定されていくものですので、現時点では不明ですとしてあります。
 それから、13番目、水道法による水道水につきましては、ADI×体重50キロとしている。一方、水質汚濁の登録保留基準には53.3キログラムとしている。水道水との基準との整合性はとれているのだろうか。それから、排水濃度基準の10分の1を公共用水域としてきた従来の算出方式との整合性はどうなりますかというご意見です。これにつきましては、水質汚濁に係る登録保留基準は、従来より国民栄養調査に基づく値を活用しておりまして、現行では53.3kgを用いており、昨年6月に基準値もつくっているということでございます。一方、水道水質はWHOの飲料水ガイドラインの60キロから日本人の体重を考慮して50キログラムとしているというふうに聞いております。その生物濃縮の高い農薬については、水質汚濁に係る登録保留基準の算出式は、従来の150日間の平均濃度のADI×体重×0.1÷2×10と10倍にしたわけですけれども、今後は公共用水域の水中濃度としては、このうち「×10」がないので、特段整合性に問題はないというふうに考えております。
 それから14番目の、ADIの配分は、魚介類の残留農薬基準とか、大気に基準が設定された場合どのようになるのかについてですが。そういった場合は、関係機関とも連携してADIを超えないようにやっていきたいということでございます。
 それから、15番目、すべての農薬で濃縮性試験を義務づけて、濃縮係数を加味した基準値を設定すべきというご意見ですが、今回の見直しはPOPs条約や諸外国の規定を踏まえて、動向を踏まえてやっていこうというものでして、国際的に合意されたPOPs条約の濃縮係数5,000というものを考慮してやっていきたいということでございます。
 それから、16、17、18番がPECのところですけれども、例えば16番は農薬の水系汚染は使用時期に高く、冬期には低いので、通年平均でなく使用時期の高い濃度を採用すべきというご意見。それから17番は、ADIを用いてやるので、評価期間を1年とすべきとのご意見。それから18番ですが、BCFに基づいて設定される基準値算定には、安全率が加味される。またPECにおいても安全率が加味されるので、安全率の過剰導入がなされないように要望するというご意見でして、厳しくしろという意見と、厳しくしすぎるなという意見がございます。3つまとめまして、お答えとしましては、予測濃度の算出方法については、適切な安全率というのを考慮しつつ検討していきたい。評価期間につきましては、農薬濃度の季節変動や現行基準との整合性を考慮して、長期間の曝露評価を適切に行い得るよう設定したいということです。なお、現行の水田水中の150日間の平均濃度、これもADIに基づいて設定してきたものですが、150日間平均濃度とADIに基づいて設定した値を比較する方法であったことの継続性にも配慮する必要があるというふうにしております。
 それから、19番からですが、今回のPECは水産動植物の短期曝露とどのような差違があるのかということですが、これにつきましては、まず水産PECの方は、モデル地点の河川水中の農薬濃度を予測するということにしております。一方、水質汚濁の長期PECにつきましては、その農薬散布場所に近い上流の小河川も含む広範な公共用水域を評価対象にしているというところが相違ですと。それから曝露評価期間も水産につきましては、曝露評価期間が2~4日、一方、水質汚濁の方は長期というものを検討していきたいということですが、具体的な算出方法については今後の検討ということにしております。
 それから20番ですけれども、水産動植物の毒性に係る登録保留基準の方が、水質汚濁の登録保留基準より低い例があったら教えてくださいということですが、これは水産動植物の基準値について今後、魚類、甲殻類、藻類に対する毒性値の試験成績をもとに、学識経験者の意見を聞きながら設定していくこと。一方、水質汚濁につきましても、これも今後も設定していくということですので、現時点では明らかになっていないということでございます。
 それから、21から26まで、まとめておりますが、まず21番で今回は魚、淡水魚で2グラム、海水魚で48グラムとなっていますが、もっと魚好きな人もいるので安全性が保証できるのかというご意見。
 それから水系の底質中に残留している農薬や代謝物の魚介類濃縮については、現行の濃縮性試験では評価が不十分ではないかというご意見があります。
 それから23番からは、これは希釈倍率を求めるに当たっては、モニタリングを実施した上で決定すべきではないか。
 24番につきましては、海域における希釈倍率の算出については、前回、農薬専門委員会で検討された塩分の海水と河川水との混合割合を求める方が最適ではないかというご意見。
 それから25番ですが、5倍と推定しているが、広範囲なモニタリングを実施して希釈倍率を決定すべき。
 それから26番につきましては、これは本文の6ページにあったものですけれども、河川の河口沖における当該濃度と比較したところになっている。この河口沖でなくて、もっと河口から何キロも離れたところが沿岸地点として設定するに適切ではないかというご意見があります。
 これらにつきましては、お答えとしまして、希釈倍率ということにつきましては、8月3日に開催した中環審農薬専門委員会でお示しした塩分の濃度ということですと、最大30倍となる地点もあるという結果が得られていますが、今回の基準算定式では、魚を多食する集団への影響ですとか、餌生物や底質経由の曝露による魚類の農薬の蓄積性などが考慮されていないことから、海域における平均的な希釈倍率ではなくて、より安全側に立ち、ほとんどの海域において通常見込んでも差し支えない希釈倍率として、5倍に設定したということでしております。
 それから27番につきましては、ホルモンの測定結果はデータの対象とするのに不適切ではないかということですが、ホルモンにつきましても化学物質であり、陸域に排出源があると考えられることから、指標の設定の際に考慮したということとしてあります。
 それから28番は界面活性剤の共存化で、魚介類への生物濃縮係数が高まるということもあるので、そういったものも評価すべきではないかとのご意見ですが、お答えとしましては、濃縮性試験におきましては、既にOECDなどでテストガイドライン化されています。農薬の登録申請のデータも国際的な調和が求められていますので、そのOECDのテストガイドラインに準拠してデータの提出を求め、基準値を設定することとしたいというふうにしております。
 29番目ですが、これは式で基準値をつくるのは、水中濃度の変化と魚体中濃度はタイムラグがあるので、何か過剰規制になるのではないかというご意見でございます。これにつきましては、濃縮性試験は28日から60日間の曝露期間を設けて算出されるということになっています。さらに環境中予測濃度の算出方法では、長期曝露を考慮するということとしていますので、ご指摘のような懸念は生じないと考えているとしております。モニタリングにつきましては、モニタリングをした結果、登録保留基準に該当するというおそれがある場合は、農取法12条の規定に基づく農薬を使用するものが遵守すべき基準の見直しですとか、水質汚濁性農薬の指定に関する検討に用いていきたいというふうにしております。
 それから30番で、logPow=3.0以上の農薬名をお示しくださいということがありますが、これにつきましては、今回の基準改定後に、その運用の中でデータを整理したいというふうにしております。
 それから31番ですが、これも土壌と同じですが、補助成分についても見るべきではないかとのご意見でして、お答えとしましては、その水質汚濁性試験のデータでも製剤でやられているので、その登録検査の中で製剤の安全性が評価されているということを認識しているということでございます。
 それから32番目で、その沿岸域に生息する魚種でも輸入されているものは、計算の際に考慮すべきであるということでございます。これまで作物残留に係る登録保留基準も一応、理論最大摂取量がADIの80%以下になるようにリスク管理を行ってきたところですが、その際には国産のみならず外国産も含めた摂取量の数値を用いておりますので、こういったもとの整合性のとれた運用を行うこととしたいということにしております。
 それから33番ですが、厚生労働省の農薬残留基準で魚介類というもので、新たな方策が提示された場合は調整する仕組みは残すべきというご意見ですが、ご指摘のような事態が生じた場合には、関係機関とも連携してやっていきたいということでございます。
 34番ですが、汽水域に生息する魚介類は内水面、海面どちらに入るのかということですが、今回は内水面と海というふうに分けて区分したので、汽水域の区分は設けられるような検討はしてこなかったということでございます。
 それから35番ですが、登録された農薬の公共用水域における農薬汚染調査ではサンプリングというものは、非常に限定的というか、調査回数が少ないので、その環境汚染状況の調査を義務づけて、基準の見直しを実施すべきということでございますが、お答えとして、確かにモニタリング調査をすることは大切ですので、環境省としても適切に対応していきたい。ただし、その登録保留基準は使用方法を遵守することで担保されるということですので、基準に該当するような事態が生じるおそれがある場合は、使用法の改善を優先してやっていきたいというふうにしております。
 それから36番、野鳥や哺乳類などの食物連鎖の上位にあるものへの影響はどのようになるのかとのご意見ですが、陸域生態系への悪影響を評価する仕組みにつきましては、今後の課題であり検討していきたいということでございます。
 それから37番ですが、今回新しい基準値というのが設定された場合に、各地域で監視調査を行うでしょうが、長期の曝露といいますか、そういったものでも基準値ですので、その調査対象地域に対する考え方をよく周知してほしいということですので、それにつきましては、考え方を周知していきたいということであります。
 それから38番がその他でございますけれども、別添4に記載されている欧米の登録保留基準では、国内における登録保留基準値の考え方は存在せずに、段階的に評価精度を向上していくために追加試験を要求する判断基準というふうに理解している。従って、報告書本文の記述では欧米にも国内と同様に登録保留基準が存在し、一律、基準に該当した場合は登録不可になるといった誤解を与えるため、基準に該当した場合は、さらに詳細にリスクアセスメントに必要なデータを申請者が提出し、懸念されるリスクが許容する範囲内であれば、登録は認可されるという表現に改めるべきであるというご意見がありましたが、EUの別添4のクライテリアは、許可は付与されないことと規定されていますので、登録保留基準に該当すると考えております。なお、ご指摘の規定につきましては、別添の4にはその旨明記していますし、本体資料につきましても原則としてというふうにいってありますので、例外的な場合もあり得る記述にしていることから、誤解は生じ得ないと考えているというふうにしております。
 一応、以上が駆け足で大変申しわけございませんが、パブリックコメントを行った結果であります。資料4と、それから欠席委員のコメント、パブリックコメントをあわせてご説明させていただきました。
 以上でございます。
 
(松本部会長)
 ありがとうございました。
 それでは、あと残りの時間、この課題にかけました時間は約30分程度、先生方からご意見をちょうだいしたいと思います。ご質問、ご意見のある方、どうぞお願いいたします。
 どうでしょうか。どうぞ。
 
(高橋臨時委員)
 私は本来、土壌の方から出ている者なので、農薬の問題については余り知見がないのでお教えいただきたいのですけれども、要するに今後この基準が変更されたことによって、既存の農薬についても登録保留基準との関係で問題になるものが出てくる可能性があると。それについて、このパブリックコメントへのお答えでは、多分それは使用方法を検討することで対処するというようなことをお考えになっているようなのだというふうに理解したのですが、それでよろしいかということと、それから今後、該当する可能性があるものについて、どういうふうな対応を考えられていこうとされているのかということについて、ちょっとお教えいただきたいのですが。
 
(松本部会長)
 それでは、この2点についてはどうでしょう、事務局からご回答お願いします。
 
(更田農薬管理室長補佐)
 お答えさせていただきたいと思います。登録保留基準につきましては、基準値が数値として設定されるわけですが、それと比較するデータというものは、例えば土壌中の土壌残留の試験ですけれども、後作物試験とかをして、それが作物から検出された場合に登録保留となるということでございまして、例えば使用回数とか使用量を減らすということをすれば、その後作物から検出されないとか、たとえ検出されても基準値以下になるとかということも考えられますので、そういった対応もとれるということでございます。
 具体的には、どういったものが出てきてということは、パブリックコメントにも書いてありますように現時点ではわからないのですけれども、もし該当する場合は、登録検査の中で登録保留になるのか、またはその使用方法を変更して引き続き登録されるのかといった対応がなされるのではないかというふうに考えております。
 
(松本部会長)
 それでよろしゅうございますか。
 
(高橋臨時委員)
 つまり個別に問題になった事例について対応していくということ、検査などでひっかかった場合について対応していくという、こういうことでございますか。

(更田農薬管理室長補佐)
 はい。
 
(高橋臨時委員)
 わかりました。それから、私は当該法律に詳しくないのでよくわからないのですが、登録の際に保留するというのが登録保留の考え方なので、登録されたものについて、後にこういう問題が起きたときにどういうふうに対応するのかということは、農薬取締法そのものにちゃんと規定があるのでしょうか。ちょっとそこの辺を教えていただきたいです。
 
(更田農薬管理室長補佐)
 農薬の登録期間は、一応、3年間になっていまして、3年たつと更新を迎えますので、その際に評価なされるということでございます。
 
(松本部会長)
 よろしゅうございますか。
 そのほか、どうぞ。
 
(藤井委員)
 大変初歩的なというか、質問で、直接専門にかかわることではないのですが、去年1年かかって市民レベルで全国の水道原水と水道水のチェックをしていく中で、宮城県、それから滋賀県のそこのところで農薬が検出されたということで、ことし第2弾をやることになっているのですが、そういうことについても大変農薬には関心があります。こういう改定が実際に農薬を使う人に、どのような流れできっちり伝わるのか。つまり先ほど、パブリックコメントの中に外国の話が出ていましたが、その扱い方が間違わなければ、こういうことは起きないのだというようにありますが、実際は全国でみんな、お百姓さんが農薬を使っているわけで、JAの人たちの話を見ていても、きっちり伝えているとは思えない、使い方もそう、それからこの農薬はもう使えないという農薬が自分の倉庫にある場合に、それを全部使わないかというとそういうふうにもなっていない。さらにもう使えなくなったら、ひどい場合には河川の河川敷に捨ててあるなんていうこともあって、そういう現場は大変そんなところにあるわけですよね、ややこしいところに。
 そういう中で、この改定というのは実際にどういう流れで伝わる、そしてそのモニターなんていっても、そんな多くの地点でモニターできるわけはないわけで、基本的にはその地域のチェックシステムがきっちりできていないと、先ほどの私たちの市民レベルの調査の中でも、そういうものが出てくるというのは、全国の水系でこういうことが起きるのではないかという、大変懸念しております。そこをどうお答えいただけるかよくわからないのですが、そういう初歩的なことについて少しお聞かせいただけたらと思います。
 
(松本部会長)
 それでは、どうぞ。
 
(早川農薬環境管理室長)
 お答えいたします。今、藤井委員がおっしゃった話は、先ほどの高橋委員のお話にも関連するのですけれども、この基準が改正されますと登録に反映されます。例えば基準値に抵触するような場合は使用方法を変更して、それをクリアするような方法になる。ということは、その農薬のラベルに書いてある使い方、使用回数とか使用量とか、そういったものが変更されて、厳しくなるわけですね。ですから農家で使用される方はそれを見て、新たな方法、使用回数が減ったり、あるいは使用量が減ったりする形で使うと基準値をクリアできるということ。それが反映するかというのは、そういう形で使用方法が今この基準値を受けてこういうふうに変わったよというのは、今非常に厳しくなっていますので、できるだけ速やかに末端まで反映するようになっています。それはなぜかといいますと、一昨年の農取法の改正により、それまでももちろん使用方法遵守は当然だったのですけれども、それが一層厳しくなりまして、今は罰則がかかります。ですから基本的にラベルのとおりに使っていないと使用基準違反、これは3年以下の懲役、または100万以下の罰金という直罰なのです。
 ですから、この改正後、ものすごく現場でももうシビアにとらえていまして、多分農薬関係なり、県のそういう農業関係のホームページを見ていただくと、ちょっとでも使用方法を間違えていたとか、あるいはラベルにない作物に使ってしまったということになると、もうその作物は回収、安全性にすぐに問題が出るとは思えないような事例であってもすぐ回収という形でとって、すごく末端では厳しく運用されていますので、そういった形では藤井委員のおっしゃるようなご懸念はないといいますか、かえって現場ではそれ以上にぴりぴりしてやられています。
 また、そういう登録内容が変わったという情報も、今や農林水産省の方を通じて、速やかに末端にまで伝わるシステムを、例えばホームページに載せるとか、そういうことをやっておりますので、そういうことで、まずご懸念はないというふうに思います。
 
(松本部会長)
 何か藤井委員、よろしゅうございますか、どうぞ。
 
(藤井委員)
 ならば、3年以下の懲役を受けた人たち、100万以下の罰金というのに該当する人は、この間に出てきているのでしょうか。非常に厳しいから、そういう人が出るはずもないほど、きっちりできているのかどうか。どうも現場で、琵琶湖、私は随分たくさんの百姓とつき合っていますが、今おっしゃったような答えは現場に、その懸念がないといって、そうですねという答えはちょっと現場感覚と違うなという印象ですが、印象ですから、そこをどう伝えるかというのは数字的にいうことができない、大変私の方ももどかしい思いをしながら意見を申させていただきます。懸念がないということであれば大変うれしいです。
 
(早川農薬環境管理室長)
 藤井委員も滋賀県の現場で、もし近くのJA、農協さんになんかにも聞いていただくと、それは2年前と全然違う対応だと思います。こういう変更、特に使用方法が厳しくなったという情報は、農水省のホームページ等ですぐわかるし、都道府県自身も指導する立場の都道府県の普及所なり防除所、さらにJAといったところも非常に注目していて、指導が古い使用方法のとおりに指導してしまって、何か例えば問題があったということになると、それぞれの指導機関の責任になってしまいますので、現場でぴりぴりしてやっております。もし、また藤井委員の方で、サーベイする機会がありましたら、ぜひ行っていただければおわかりになると思います。それでもまだそれほどではないということであれば、またちょっと我々の方にもご意見いただければ、また農水省の方にも伝えますけれども、2年前と、全然違う現場感覚になっていますので、それはご理解いただきたいと思います。
 
(松本部会長)
 亀若委員、どうぞ。
 
(亀若臨時委員)
 先ほどの事務局のご答弁なのですが、この改定が行われたときには、使用基準への反映だけというふうにちょっと受け取れるようなご答弁なのですが、実際これは改定になった場合には、その基準を満たしていない農薬であれば、農薬としての登録ができないということでしょう。それが一方にあるはずなのですよね。ちょっとそこのところが何か抜けていたような答弁だったものだったものだから。
 
(早川農薬環境管理室長)
 すみません。意を尽くしたつもりなのですけれども、そのとおりです。登録保留基準というのは法律に基づくと、その基準に合致しなければ登録保留し、農林水産大臣は使用方法について改善命令をできるということで、例えば土壌残留であれば、先ほど答弁しましたけれども、半減期が180日だけではなくて、さらに後作物で検出したかしないかとか、こういったことまで踏まえて、そしてそれで後作物にも残留があるということになれば、これは登録できません。ただ、我々ちょっと先ほど申し上げましたのは、そうは言っても、それで使用量を落とすとか、そういう形で使用方法を変えることによってクリアできる場合は当然あるわけです。その一発勝負ではないわけですね。濃縮性を踏まえた水質汚濁に係る登録保留基準も、今までの使用方法どおりにやったらオーバーするけれども、そのかわり例えば水田の適用をやめるとか、例えば使用量を落とすとか、そういうように使用方法を変えることによって、新しく厳しくなった基準もクリアできるということがあるということで、そういうつもりで申し上げたのですけれども、ちょっと言葉足らずだったかもしれないのですが、その両面があると思うのです。それでも、例えば営農上、どうしてもこの程度の量を使わなければ、病害虫が防除できない、だけれどもその量を使うと基準がどうしてもクリアできないということになりますと、それはやはり登録できなくなってしまうという状態は最終的には生じると思います。
 ただ、今の現段階での登録の使用方法で、新しい基準をクリアできないからといって、それで直ちにその農薬はもう登録できなくなるかというと、今申し上げたように、効果がある範囲内でリスクを落としてクリアできれば、それはやはり使えるという、そういうつもりで申し上げました。
 
(松本部会長)
 よろしゅうございますか。
 
(亀若臨時委員)
 もう一つ。今、藤井委員のご質問と、それからご当局からのご答弁もありましたのですが、私の身近なところで、今どういう形でこの使用方法なんかについて遵守しているかという例をちょっと申し上げておきたいと思います。
 それは、農家がある作物をつくって、それを共同出荷なんかする場合には、必ず一筆というか、一つの圃場ごとにノートを持たされるのですね。そして、実際の面積はどれだけで、それの呼称は何と言っているかとか、いろんな細かいことを全部書いた上で、それに日誌風にすべてどういう農薬を使いましたというのを列記をしていくことになっているのですね。そして、その結果をその出荷するJAならJAのところへ持って行って、それでこの成分のものは確かに4回しか使っていません、つまりあれは商品名だけではないのですね。成分として4回なら4回というところまでチェックを受けて、判こを押してもらって、それで初めて出荷できるのです。大体そういうシステムで基本は動いているようであります。
 したがって、今2年ほど前とおっしゃられたけど、確かに随分変わっているのではないかなというふうに思います。ちょっと私の知っている具体的な例ですが。
 
(松本部会長)
 ありがとうございました。
 そのほか、どうぞ。ございませんか。事務局さん。
 
(更田農薬管理室長補佐)
 先ほどの藤井委員からご指摘のあった現場への周知なのですが、パブリックコメントの37番のところで、今回の基準の改正について、十分周知すべきというご意見がありまして、それは周知していきたいと考えているというふうにお答えしたのですが、そういった中で藤井委員のご懸念のようなことが生じないようなことにも配慮してやっていきたいと思っております。
 
(松本部会長)
 どうぞ、そのほかご意見求めます。どうぞ。
 
(高橋臨時委員)
 私は行政法なので、こういうふうに基準がより厳しい形すなわち事業者等に不利益に変更されたときに、いわゆる既存利益とどう調和させるのかというところは、いつも行政の悩ましいところで、先ほど私が利用方法を変えることによって、基本的に対応していけるかというふうにしていくおつもりかとお聞きしたのは、まさにその調和方法として、全面禁止にならないような形で多分やられるので、即時にこの基準を適用されてもいいのだろうなというふうにお考えだったのだろうというふうに推測したわけです。
 仮に即時にこの基準を適用するということに、多分なるのだと思うのですけれども、そのときに今までの既存の農薬、かなり大規模に販売していて、ところが使用方法の対応との関係でも、それでクリアできなくて、結局売れなくなるという可能性はある、もちろん、あまり有り得ないことを考えてもしようがないかもしれませんけれども、そういうときにはちょっとやはり、ある種の配慮といいますか、やはり法的な検討というのは要るのではないかなということを一応申し添えておきたいと思います。
 
(松本部会長)
 そのほか。この点についても結構ですし、ほかのことで結構でございますが、ありましたらどうぞ。
 
(早川農薬環境管理室長)
 高橋委員の今のご懸念についてちょっとお答えいたしますと、まずこの基準は即時適用かどうかというお話なのですけれども、これはちょっと明確に申し上げませんでしたけれども、施行期間は1年程度見る予定です。というのは、例えば水質汚濁の登録保留基準であれば、先ほどの濃縮性試験というのは、今は申請者の提出が義務になっていませんから、logPowが3.5を超えるようなものについては、新たに濃縮性試験をしなければいけないとか、あるいは環境中予測濃度の手法の検討もあるので、1年程度の施行期間は必要かなと思っておりまして、その上で新たにそういうデータをつくって、それで申請者の方で検討することになります。さらに、それは即時にすべての農薬一気にというのではなくて、実態上は先ほど申しましたように農薬の登録の有効期間は3年でございますので、3年たったら再登録の申請をするというふうになっております。そのタイミングで、逐次申請されてきたものについて基準をつくり、農林水産省の方で登録検査をするという形で、新たな基準の反映をさせていくということです。一気に、あしたから即時にすべての農薬に適用という形ではないということでご理解いただければと思います。
 
(松本部会長)
 そのほか、どうぞ。
 
(若林臨時委員)
 専門委員会にもちょっと出席しなくて、的が外れているようなコメントかもしれないのですけれども、環境中での残留性みたいなことは、これ農薬については考慮されているのかなというのは、土壌以外の環境です。活性汚泥による残留試験は入らないですよね、これは。それで、POPsの絡みでちょっと気になりましたのは、長距離にわたる自然の作用による移動というあたりが、もしかしたら農薬については抜け落ちてしまうのかなと。要するに、水中で分解されずに海域に広がっていくようなことを押さえられるのかなと。それは5,000以下1,000以上のものについてのところにもちょっとかんでくるのですけれども、化審法では、これは原則として農地にしかまかなければ適用されませんよね。もし、そういう懸念があると認められるようでしたら、今後の課題なり何なりに入るかなというふうに思ったのですけど、いかがでしょう。
 
(松本部会長)
 この点について、どうお考えですか。
 
(早川農薬環境管理室長)
 若林委員のおっしゃることはごもっともですが、ただその長距離移動性というのが非常に漠としたクライテリアということもありまして、我々当面は濃縮性と残留性で、特に濃縮性のところは5,000ということで、化審法もそういうように変えたというふうに伺っておりますけれども、そういったところできっちり見ていって、さらに1,000から5,000の農薬で今回の基準が適用されないものについても、我々の方でモニタリングをしていって、いったん決めたらそれでおしまいということではなくてフォローしていくことにしています。5,000を超えたものは先ほど申し上げましたように、すごく基準値が小さくなるのですね、濃縮性を考慮すると。ですから環境中に今までよりも出ないように使用方法がうんと厳しくなるので、当然それだけ環境中に出る量が減りますので、そういったところで、ぎゅっと入り口を締めることになります。そういうふうに厳しくしたにもかかわらず、モニタリングしてみたらいろんなところでその基準を超えて出てきたという話になりますと、先ほどちょっとパブリックコメントの方で申し上げましたように、水質汚濁性農薬という別途の事後規制があり、面源規制ができるようになっているので、その規制を適用するとか、あるいはもう一度登録保留基準の方にはね返ってきてさらに使用方法を厳しくするとか、いろんな規制措置がありますので、まずそこできちっと対応をしていくべきなのかなというふうに思っております。
 
(松本部会長)
 須藤先生。
 
(須藤部会長代理)
 若林先生が土壌だけしか環境の中では見ていない、もしかしたら水の方も当然あり得るのではないかというようなご指摘だったのだろうと思うのですけれども、この改定の部分は先ほど3回ですか、やった中で、いっぱい意見が出ているのです、ごらんのように。出ているので、決してすべてがこれでもういいのですよと申し上げたわけではございません。今後の検討課題は残されておりますが、とりあえず安全サイドで見ておけばこの程度かなということと、それからまだ今後解決しなければいけない問題、多分、今の水の方の環境への広がりなんていうのも、多分そこに入るのだろうと思うのですが、とりあえずはまず土壌で見ておけば、まあまあよろしいのではないかというようなことであったということだけ申し添えます。
 
(松本部会長)
 どうぞ。
 
(若林臨時委員)
 それでは、モニタリングで補うということで理解すればよろしいですか。はい。
 
(松本部会長)
 よろしゅうございますか。
 どうぞ、そのほかございませんか。細見委員、どうぞ。
 
(細見臨時委員)
 先ほどの長距離移動性に関しては、我が国の中でも余り議論は十分できていないのかなとは、私個人は思っていて、大気中での半減期、2日というのがあって、その試験方法というのも、まだほとんど確立されていないと思いますし、モニタリングについても本当に広範囲で低レベルのやつを測定しないといけませんので、このPOPsのモニタリングについては、一応、議論はされて環境省の方でもいろいろ進められているのですが、各農薬についてどれだけプログラムがあるかということに関しては、少し私もよく理解していないところがあります。その2点について、一応、コメントということで。
 
(松本部会長)
 ありがとうございます。
 どうぞ。ご意見はありませんか。
 中杉委員。
 
(中杉臨時委員)
 今回のあれで、水質汚濁に係るという方は、私が大分騒いだことが、そもそもの縁になっているのかなと思いますけれども、ようやくこれは化審法とのバランスが少しとれてきたかなというふうに考えています。そういう意味では、若林委員が言われるような問題点は指摘があるとは思いますけれども、化審法の中でもその面に関しては全く考慮ができていないということから考えると、今回はこの段階のあれで、化審法と同じようなものについては、かなり条件が厳しくなる。ただ、農薬の特性として非常に低レベルで使うとか、管理ができるようであれば使えるという、そういう意味ではある程度バランスがとれた感じになってきているだろう。実質的にはそういうことができないもの、農薬については使用禁止していくという髙橋先生があれだと言われたけれども、ほかの並びで考えると、そんなおかしなことではないというふうに私は考えております。
 
(松本部会長)
 ありがとうございました。
 そのほか、亀若委員どうぞ。
 
(亀若臨時委員)
 私の方は専門委員会の方にも入らせていただいて、随分この議論に参画させていただいたのですが、今回のこの改定はPOPs条約の批准ということに端を発してきているのですけれども、ただその条約の方はちょっと先ほどのご説明でははっきりしなかった面があるのですが、要はD基準の4つの基準すべてに該当する場合は、これはもう排除するという考え方なのですけれども、今回のこの農薬への適合という面については、1つでも基準に当たっている場合には、それはもう登録を保留するのだという物の考え方に立っております。これはよく言われるように、andで結ばれて、すべてが該当する場合はだめよというのと、1つでもというのとで、その基準といいますか、きつさの違いといいますか、厳しさの違いというのは皆さん方もよくご承知だろうと思います。そういう面では、これはトータルとして見た場合に、それほど厳しい基準だという認識を私ども持って議論をさせていただいた。その厳しさというものを一応この今の状況の中では、やはり踏み越えてといいますか、それを是認しながら、これの具体的な課題としての土壌残留だとか、あるいは水質汚濁というような関係で、登録保留基準というものに適合させていくということで、いろんな議論をやらせていただいたということです。
 その際に数式上の問題、あるいは係数上のとり方、いわゆる諸元の見方、こういったものについて私どもの方からも、いろいろとご意見申し上げまして、その点は随分、環境省事務当局もご努力をいただいたというのが率直な感想です。こういうことの雰囲気が、この専門委員会の報告の7ページの5、告示改正後の施行等に向けた課題等というところに、万感の思いが入っていると、いろんな立場からの意見が入っているのだなというふうに、ここでご認識をいただければいいのではないかなというふうに思います。特にパブコメも今日初めて紹介されて、それに対する回答も含めて考えた場合に、やはりこの7ページのところが、これからさらなる知見の集積ということを含めて、これは私ども専門委員会でも努力するべきだろうし、また事務当局としても、その辺をよろしくお願いをしたいというふうに思います。
 特に私の立場は、今もちょっとお話がありましたように、農薬取締法改正によって、使用基準という形で細かく規制がなされる。その中で特に使用回数というふうなことになってまいりますと、1つの成分が4回とか5回しか使えない。それに違反した場合には罰金、あるいは懲役という次元になってまいります。そうすると、このこうした基準が厳しければいいのだという考え方もあるのでしょうけれども、それは過剰に厳しくていいのではないということを申し上げたいのです。生産者が生産する場合にやはり資材としての農薬、これの品ぞろえというものが、こういう回数が決められてまいりますとどうしても必要になってくるわけです。その品ぞろえが極めて厳しく制限されてしまう、対応する農薬がないような話になってまいりますと、そのことに伴って被害を出してしまうとか、場合によっては違法なことをやってしまうかもしれない。その辺はやはりよく考えていくべきだろうというふうに考えておりまして、パブリックコメントへの回答もありましたけれども、安全率の過度導入というようなことのないように、まさに適正な運用ということに向けて、これからこの数値の見直しだとか、あるいはモニタリングだとか実態に即したような形でこれを運用するような方向でひとつ検討してほしいというふうに申し上げたいと思っております。
 以上です。
 
(松本部会長)
 ありがとうございました。そのほか、どうぞ。岡田臨時委員、どうぞ。
 
(岡田臨時委員)
 今、亀若委員が申し上げたことと、それから河内委員が意見として3つ出しておられること、これは8月3日の専門委員会でも私。申し上げたところで、須藤委員長も発言させていただいたときにうなずいてくださったことですが、感想として申し上げておきます。数字が出ていないところ(海洋)はやりにくいというのは、よくわかりますけれども、閉鎖水域を中心に物事を考えてこられて、開放系の沿岸あたりのことは触れておられなかった。そういうふうなことを含めて、亀若委員が言われたこと、それから河内委員が3点書いておられるようなことについて、今後、なお一層のご考慮、ご努力をいただきたいと思っています。
 
(松本部会長)
 ありがとうございました。そのほか、ございませんか。
 
(な  し)
 
(松本部会長)
 それでは、ほかにございませんでしたら、委員の皆様、ご了解いただいたものとさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
 以上の審議結果の今後の取り扱いについてでございますが、これについて事務局から説明をお願いいたします。
 
(早川農薬環境管理室長)
 どうもありがとうございました。ただ今ご了解いただきました専門委員会報告についてですけれども、今後、食品安全基本法第24条第1項第2号の規定に基づいて、食品安全委員会に対して意見聴取を行うことになります。その後、農薬取締法第16条第2項に基づいて、農業資材審議会に告示改正について諮問し、答申をいただいた後に、さらに農薬取締法第16条の2第2項の規定に基づいて、厚生労働大臣に公衆衛生の見地から意見聴取を行い、それを経てやっと告示改正ということになります。食の安全の観点で、食品安全基本法、食品安全委員会の設置、あるいは食品衛生法の改正、農薬取締法の改正により、こういうリスク評価、リスク管理については、いろんな関係機関が関係してきますので、本日ご了解いただいた後、さらにそういういろいろな行政手続を経ることになります。なかなか先が長うございますけれども、本日いただいた意見を踏まえてやっていきたいと思います。どうもありがとうございました。
 
(松本部会長)
 それでは、続きまして議題2に移りたいと思います。議題2は、水質汚濁に係る農薬登録保留基準の運用の見直しについてでございます。事務局から、この件についてご説明をお願いします。
 
(早川農薬環境管理室長)
 経緯を申し上げますと、去る4月6日の第16回の農薬専門委員会で、水質汚濁に係る登録保留基準の運用の見直しということでご審議いただき、農薬専門委員会報告が取りまとめられました。これはある意味では長年の懸案だった案件でもございますけれども、ということで農薬専門委員会の委員長でおられます須藤臨時委員の方から、簡単にご紹介いただければと思います。よろしくお願いいたします。
 
(須藤部会長代理)
 かしこまりました。それでは、これにつきましても委員長をお預かりしています私の方から水質汚濁に係る農薬登録保留基準の運用の見直しについて検討結果の報告をさせていただきます。
 ただいま、室長が言われましたように、この問題、懸案でございまして、何回か委員会で議論され、提案をされたのですが、今まで真剣にそれを取りまとめたということではございませんでした。去る2月15日に開催されました第15回の農薬専門委員会において、EPN等の有機リン農薬に関する水質汚濁に係る登録保留基準の設定について審議を行った際、委員より農薬の本体に合わせて代謝物であるオキソン体についても、分析・評価の対象に加えるべきではないかとの指摘がございました。これを受けまして、私の方から有機リン農薬のオキソン体の扱いについて、改めて農薬専門委員会で議論して、方向性を出すことを提案いたしまして、4月6日に開催されました農薬専門委員会で議論をいたしました。
 その結果が資料5の報告書でございますので、それをどうぞごらんになってください。先ほど申し上げましたように、ここで初めてこの話題が出たわけではございませんで、回数は多分数回にわたるかと思いますが、このオキソン体を評価の対象に加えるべきであるというような指摘は、これまでの委員会で出されてきたわけでございます。内容につきましては、事務局から紹介をしていただく方が妥当だと思いますので、それをお聞きくださった後、ご検討のほど、よろしくどうぞお願い申し上げます。
 
(松本部会長)
 それでは、ご説明、事務局の方からよろしくお願いします。
 
(神谷農薬管理室長補佐)
引き続きご説明させていただきます。資料の5を御覧下さい。水質汚濁に係る農薬登録保留基準の運用の見直しについてという報告でございます。
 資料を1枚めくっていただきまして、水質汚濁に係る農薬登録保留基準の設定において、分解生成物の扱い、これは今もお話がございましたように長年の課題でございました。今般、専門委員会において、有機リン農薬をオキソン体の扱いについて、従来の経緯、それから関係機関における取り組みなどを整理しつつ、今後の方針を取りまとめさせていただきました。
 経緯でございますが、この登録保留基準は平成5年から設定が開始されております。環境中での分解生成物、あるいは水道における処理生成物を考慮した基準を取り扱うべきだという議論は当初からございましたが、その試験ガイドラインが未整備であったというような理由で、従来、具体的な検討は行われてきませんでした。その例外が幾つかございまして、平成13年に審議されました有機リン農薬のアニロホスというのがございますが、これについてはオキソン体の生成を考慮した基準の設定が行われました。ただ、これ以外にはオキソン体の生成を考慮した基準の設定が行われた例はございません。
 それから、オキソン体以外の分解生成物の例としましては、環境中で急速にほかの薬効成分に変化して作用する農薬については、代謝物の濃度、または代謝物と親化合物の合計濃度によって基準が決められている例もございます。この例としましては、カルボスルファンについて、代謝物のカルボフランとの合計濃度で評価を行っています。
 他法令における取組みについて、2番でございますが、まず水道水質基準でございます。昨年の5月に水道水質基準が改正されまして、農薬につきましては、個別の農薬の水質基準がなくなった一方で、新たに水質管理目標設定項目ということで、農薬類を一括した指標値で管理する総農薬方式というのが導入されております。これにつきましては、資料の6ページをごらんいただきますと、この2番、農薬類についてというところでございますけれども、水道水中の各農薬の検出値を検出指標値で割りまして、それの各農薬の合計値、これが1を超えないようにするという形で目標値を設定するということになっております。ここで対象農薬につきましては、水道事業者等が地域の実情を勘案して選定しますが、その主たる対象になるものとして、7ページの別添2以降のところに101の農薬がリストアップをされております。実はこの中には有機リン農薬が含まれておりまして、そのうち、この7ページの丸をつけた各農薬につきましては、オキソン体も分析の対象に加えるということで、今検討が進められているところでございます。
 資料の1ページに戻っていただきまして、実際には有機リン農薬のうち標準物質が入手可能な 6農薬について、現在分析法を検討中でございまして、出来次第これを公表し、オキソン体を加えた形で、この総農薬方式での水質管理を行うという方針が示されております。
 それから、水環境行政における取組み、まず環境基準でございますが、要監視項目の中で有機リンの6農薬の基準が決まっておりますが、これらのオキソン体の測定・評価は行われておりません。それから土壌汚染の環境基準、それから水質汚濁防止法に基づく排水基準におきましては、有機リンの基準がございますが、これについてもオキソン体の測定・評価は行われていないという状況でございます。
 ここで問題を改めて整理させていただきますと、有機リンの農薬というのはオキソン体の形になったものの毒性が高いということで、製品化されるときにはチオネートの構造への置換が行われて製品となっている例が多いということでございます。この結果、環境中とか水道水中でオキソン体に転化する、こういった有機リン農薬について原体のみを測定して規制をしていると有害性を過小評価するおそれがあるということで、オキソン体を含めたリスク評価を検討する必要があるということになろうかと思います。
 こうした分解生成物の取扱いについて、実はテストガイドラインの整備がその後進められておりまして、そのご紹介を5番でさせていただいております。水田使用農薬の登録に際して、申請者はその水田水中の消長試験というものを実施してまいります。これに基づいて田面水中での150日間平均濃度が算出され、水質汚濁に係る登録保留基準への該非が判定されています。この試験の際、分解生成物の測定や評価は、先ほどのカルボフラン等の特殊な例を除いて、これまで原則として行われてまいりませんでした。これが平成12年11月に改定された試験ガイドラインによりまして、分解生成物の測定についての考え方が明示されております。すなわち、まず土壌中運命試験、それから水中運命試験といった実験室レベルでの試験をあらかじめ行いまして、その代謝分解物のうちから主要なもの(通常10%以上生成したもの)については、次のライシメーターを用いた水質汚濁性試験において分析を行うということとしました。また、水中運命試験としては、加水分解運命試験、それから水中光分解運命試験といった試験を課すと、このようにガイドラインが整備されております。この新たなガイドラインに基づく試験成績につきましては、新規の農薬は平成13年2月以降、それから再登録の農薬については、今年の2月以降の申請時に提出することとなっております。
 今後、このデータを用いた評価が可能ではないかというのが次の提案でございまして、まず環境水への影響評価ということでございますけれども、新ガイドラインでは、登録申請時に田面水中で生成する主要な分解物の濃度は報告されることになります。ここで、田面水中にオキソン体の生成が認められた場合、環境中におけるオキソン体の存在を考慮した評価を行うことが適当であろうと考えられます。
 次に問題になるのは、オキソン体の毒性をいかに評価するかでございますが、これを原体あるいは有効成分と別に試験・評価をするということになりますと、非常にコストもかかるということになります。一方、有機リン農薬というのは、代謝過程で生成するオキソン体というのが、その有効性と毒性の発現に実際には深く関与していると想定されますので、費用対効果を考えれば、改めて試験を行うまでもなく、原体の毒性試験結果に基づいて、オキソン体と原体の測定値の合計濃度によって曝露評価を行い、有害性を判断するのが合理的であろうかと考えられます。
 それから、次は水道水への影響評価でございます。環境水から、さらに浄水過程に入った場合、塩素やオゾン処理が行われるということで、環境水での濃度に比較して、オキソン体の存在比率が高まるのではないかということが想定されます。実際にどういった分解が起こるかということにつきましては、23ページを御覧いただきますと、これはEPNの代謝分解経路の例でございますが、真ん中上のあたりにEPN(A)という化合物が農薬原体でございます。このすぐ下のEPN-oxon(B)というのが、これがオキソン体でございます。この図ではWというのが加水分解の代謝経路でございますけれども、御覧のように、まずこの分解の第1段階でオキソン体が生成します。それが経時的にオキソン体の分解生成物、さらに小さな化合物、あるいはほかの化合物に変化していくということでございますので、このAの化合物とBの化合物の合計濃度で曝露評価をするという方針に立てば、たとえこのBの割合が増えていたとしても、経時的にA+Bの濃度は始めよりもどんどん減っていくだろうと想定されます。そこで3ページに戻っていただきまして、(1)の環境水への影響評価と同じ方法で評価をする限りは、水道水への影響評価というのも適切にされるのではないかと考えられます。つまり、原体とオキソン体の毒性が等価であるという前提に立てば、環境水への影響評価をもって水道水への影響評価も適切に行われているというふうにみなし得ると思われます。
 こういった方針で、今後新規に申請される農薬、それから既存の農薬についても評価を行っていきたいと考えております。今、既に水質汚濁に係る登録保留基準が定められている134の農薬がございますが、このうちチオネートの構造を持つ有機リン農薬というのが、合計10農薬ございます。これらにつきましては、今後3年以内の再登録時に逐次、試験ガイドラインに基づく分解物を含めた水質汚濁性試験の結果が提出されることになります。それを踏まえて農水省とも連携をしながら、当該試験結果を点検し、必要に応じてオキソン体を含めた基準を策定するということにしたいと考えております。それから、こういった農薬のオキソン体のモニタリングデータの収集にも努めていくとしております。
 EPNについては、この新ガイドラインに基づく試験結果が一部提出をされておりますので、これを用いて分解物、オキソン体の扱いをどうするかというケーススタディーをやっております。これを 25ページの別添4にお付けしております。まず水質汚濁性試験に先立ちましてビーカー試験があり、水中光分解運命試験と加水分解運命試験の2種類の試験が行われております。光分解運命試験の方でございますけれども、これの結果を見てまいりますと、処理後ゼロから120時間後の生成物を放射性同位元素で標識して追っていきましたところ、EPNオキソンの生成割合というのは、滅菌蒸留水の試験では最大3.5%、それから滅菌河川水の試験では最大2.3%ということで、いずれも10%に満たない、それ以外のEOA、ETAといった、より分解が進んだ形の化合物が主要な生成物となっているということが判明しております。
 それから加水分解運命試験の方ですが、これは水と酸素を遮断した条件での分解試験でございますけれども、これにつきまして結果を見ますと、まずpH4の緩衝液につきましては、EPNが極めて安定で、オキソンは最大で0.4%程度の生成、pH7の緩衝液につきましては、最大で0.2%程度の生成、それから26ページへまいりまして、pH9の緩衝液につきましては、最大1.2%ということでございます。いずれの試験におきましても、EPNオキソンというのが10%以上できていないということになりますので、この試験の結果からEPNオキソンは主要分解物とは認められないということで、水質汚濁性試験における測定とか、あるいは基準において加える必要はない、と判断されるということになります。
 それで、4ページへ戻っていただきまして、今後の課題でございますけれども、これで有機リンのオキソン体の扱いについては整理をしたわけでございますけど、これ以外にも環境水、それから水道浄水における農薬分解生成物の発生というのは想定されます。こういったものについては、特に毒性評価をどこまでするのかという、その在り方について整理が必要でございますので、今後、モニタリングのデータを収集しながら検討を進めたいと思っております。
 それから、この取組みを契機としまして、現在欧米で進められております古い農薬について最新の知見に基づいて再評価をするという作業を関係機関とも協力しながら始めていきたいと考えております。
 以上でございます。
 
(松本部会長)
 ありがとうございました。
 それでは、ただいまのご説明に対して、これから質疑応答の時間に入りたいと思います。
 どうぞ、ご意見、ご質問のある方、お願いいたします。
 眞柄委員。
 
(眞柄臨時委員)
 私を含め水道界のリスク評価をしている人間にとって、農薬の分解物というのは長年の課題でございましたが、環境省でこのような基準の運用について見直しをしていただきましたので、今後、環境あるいは水道分野一体となって、この方面の科学的な知見の集積に努めてまいりたいと思います。
 ただ、一言申し上げますが、先ほどの議論にありましたように、国際的に見ますと水田用除草剤は農薬の扱いを受けておりません。これはあくまでも農薬というのは、食物残留するものをどうリスク管理するかということで、水田用除草剤はJMPRでもリスク評価をしていないということでありますので、そういう意味では我が国のこういう制度、あるいは制度に基づいた知見は国際的に高く評価されるものだというふうに思っておりますし、そういう自信も持っておりますので、ぜひ環境省の方で今後とも、この方面の科学的な知見をできるだけ、できる範囲でと申し上げてもいいと思いますが、できる範囲で公表していただくようにお願いをしたいと思います。
 それから、もう一点は水田用の除草剤の多くは、その効果の観点から溶解度が非常に高い化学物質が使われております。先ほどの前段の部分の議論は、BCFの関係とオクタノール-水分配係数でありますが、そちらの方の化学物質、農薬は大変測定がしやすいのでございますが、こちらは公共用水域における水中濃度ということになりますと、親水性の高いものは大変濃縮が困難で、測定が難しい化学物質の範疇に入りますので、そういう分野については、ここにいらっしゃる森田先生から、いろんな形でご指導いただきながら試験法の開発にも努めていかなければいけないと思っております。
 以上、コメントを申し上げました。
 
(松本部会長)
 ありがとうございました。
 そのほか、ご意見、ご質問ありましたらどうぞ。
 いかがでしょうか、よろしゅうございますか。
 細見臨時委員、どうぞ。
 
(細見臨時委員)
 資料、別添4の25ページにあるEPNのケーススタディーですけれども、少しもしわかりましたら、照射の光の強度だとか、それは紫外線を使われたのか、多分紫外線だと思いますが、そういうちょっと情報をいただきたいなというふうに思います。私自身もいろんな農薬のこの光分解をやっていると、光の照射によって異なってくる場合もありますし、それから中間生成物を同定する際に処理後の時間とか、いろいろ多分これは1回の実験だと思いますけれども、幾つか方法として議論しておくところが必要かなとも思いますので、もし細かい情報がわかりましたら教えていただければと思います。
 
(松本部会長)
 それでは、光分解について、もしわかっておりましたらどうぞ。
 
(神谷農薬管理室長補佐)
 詳細については手元にございませんが、実際に作物が栽培される太陽光下での水中半減期を正確に測定できるような試験とする必要があるため、東京における日射量に相当する光条件下での影響を評価できるよう、人工光による試験データを補正しているということでございます。 
 
(松本部会長)
 今の説明でいかがですか。
 
(細見臨時委員)
 いいです。
 
(松本部会長)
 そのほか、どうぞ。
 森田委員どうぞ。
 
(森田臨時委員)
 3ページ目にオキソン体と、それから原体の測定値の合計濃度によって曝露評価を行い、有害性を判定するのが合理的であるというステートメントになっておりますが、前段に、例えば有機リンの毒性、農薬についてはオキソン体が農薬の有効性と毒性の発現に関与していると、想定されると、つまり毒性の本体はひょっとすると有機リンの場合、オキソン体ではないかというステートメントがあります。もしそうだとすると単なる合計によって曝露評価を行うのが合理的とは必ずしも言えないのだけど、実際に費用対効果を考えると、そういう選択肢ですというのは、妥当な判断かなという感じで、このあたりの文章をもうちょっと何というか、それが一番いいのだというわけではなくて、現実的な答えがそうなのだというふうなような感じに、少し改められないだろうかという感想がちょっとあります。感想ですので、少し事務局にお任せいたしますが。
 
(松本部会長)
 この点、可能であれば先ほどのご指摘のとおり、少し文面をお考えいただくということで、何かご意見ありますか、事務局の方で。
 
(神谷農薬管理室長補佐)
 表現を工夫できるか検討させていただきたいと思っております。
 
(松本部会長)
 どうぞ。
 
(早川農薬環境管理室長)
 ちょっと補足させていただきますと、これはどういうことかといいますと、有機リン本体が体内で、例えば毒性試験でも体内でオキソン体になると。毒性評価は、それを原体として食べさせて、体内でオキソン体になったものも含めた評価をしているということです。ですからこの文面はどういうことかといいますと、オキソン体そのものが、どのぐらい毒性があるかということは明確にはここのところでは決めないけれども、ただトータルとして、そこで安全性評価されているので、曝露評価もトータルとしてのオキソン体を含めた曝露評価をすべきであると、そういう趣旨です。
 その費用対効果云々というのは、要するにオキソン体だけ取り出して、それでオキソン体の毒性試験をしてみる、例えば慢性毒性試験をしてみるというようなことは、オキソン体のみの毒性がどのくらいかという知見を得るためには、もしかしたら、した方がいいのかもしれないのですけれども、ただトータルとすれば、それも込みでといいますか、本体とオキソンと両方で毒性試験をしているので、そこで例えばADI等を決めているので、そのような評価と考えればそれで実態上問題ないのではないかと。曝露評価も同じようにトータルで、込みでやれば問題ないではないかという、そういう趣旨でございます。ですから、これで不十分だという認識は我々ないのですが、我々の意図と違った表現になっているとすれば、ちょっと直すことも考えさせていただきますけれども、そういう趣旨でございます。 
 
(松本部会長)
 よろしゅうございますか。
 
(黒川臨時委員)
そういう議論は昔からたくさんありまして、今事務局がお答えになられたように、結局トータルとして見ているので、オキソン体だけの慢性毒性、これは大変です。普通の方はそれもやればいいのではないかと、よくおっしゃるのですけれども、それだけを単体として取り出して投与するというのは、費用対効果と書かれると、ちょっとかえって生々しいのですけれども、実際はそうなので、たまには急性毒性だけはして、そこを押さえておいて、あとは原体といいますか、トータルで毒性を見ているというのが、普通のこれまでの毒性、ほかの物質であってもそういうことです。 
 
(松本部会長)
 ありがとうございました。
 そのほか、ご質問、ご意見ございましたらどうぞ。
 ございませんでしょうか。
 
(な  し)
 
(松本部会長)
 それでは、特にございませんので、委員の皆様ご了承をお願いしていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
 今後は以上の審議結果を踏まえまして、基準の設定を行っていくこととしたいと思います。
 次の議題はその他ということになります。幾つかあると聞いておりますが、事務局から説明をお願いします。
 
(鏑木土壌環境課長)
 その他の報告事項として、参考資料の3から9までがございます。まず、参考資料の3について説明をさせていただきたいと思います。

(神谷農薬環境管理室長補佐)
 水産動植物に対する毒性に係る改正登録保留基準の施行に必要となる試験法等の検討ということでございます。水産動植物に対する毒性に関する登録保留基準につきましては、この資料の3枚目を見ていただきますと、平成14年の12月にこの部会でもご議論をいただきまして、15年の3月に基準の改正を行いました。内容としては、現行のコイの半数致死量に基づく一律の登録保留基準から、改正後は、藻類、甲殻類、魚類に対する影響を評価対象としまして、個別に農薬ごとに環境中予測濃度と急性影響濃度の比較によるリスク評価を行って登録の可否を判定をすると、それから畑地農薬についても適用とすると、こういった基準への改正を行っております。
 そのスキーム、より具体的には最後4ページ目のところでございまして、左側のカラムが環境中予測濃度の評価、右側が毒性評価に基づく登録保留基準値の設定ということでございます。このスキームを決めた際に網かけになっている部分につきましては、課題として残っております。この右側の毒性評価の方につきましは、通常、3点セットと呼ばれております魚類、それからミジンコ、それから緑藻に関する試験結果に不確実係数1から10を適用しまして、その最小値を登録保留基準値とするということになっておりますが、これに加え、より実環境に近い試験系による試験方法で国際的に整合性のとれたものが確立した場合は導入するという課題が残っておりました。
 それから曝露評価の方につきましては、この第1段階、第2段階、第3段階の順に、環境中での予測濃度を段階的に精緻に評価をしていくというアプローチをとっておりますけれども、この第2段階、第3段階で使うような、非水田、水田における予測濃度算出のための試験法がなく、これを確立するという作業が必要でございました。これらの検討を平成15年度行いまして、その結果について最初の2枚の紙でまとめております。
 1ページに戻っていただきまして、1つ目は毒性評価に関する試験法ということでございます。これにつきましては、昨年の後半に環境省の請負先検討会を設置しまして、若林委員に座長をお引き受けいただきまして検討を行いました。その結果、先ほど申し上げました標準的な試験法に加えて、以下の3種類の試験法、評価法を新たに導入するということで結論を得ております。
1番目としましては、生物種間の感受性差の評価ということで、追加生物種による試験の実施でございます。これは魚類につきましては、標準試験種に加えて、ニジマス等その他のOECDガイドライン推奨種の中から1種を選択して実施すると、甲殻類についてはミジンコに加えて、ヌマエビまたはヌカエビ、ヨコエビ、ユスリカ幼虫から1種または2種を選択して試験をするということになっております。 その評価法でございますけれども、標準試験種を含めて最小の急性毒性値に不確実係数を適用するということで、複数種について試験を行ってくれば、この10という不確実係数をより下げていける可能性があると。これを専門家が判断をして評価をするということにしたいと考えております。
 2番目としましては、異なる成長段階の感受性差評価ということで、標準種で対象としていない齢数の個体への影響というのも評価して、個体群といいますか、その生物種全体がどういう影響を受けるかをより的確に評価をしていくという試験でございます。具体的には甲殻類につきましては、標準種として生後24時間以内齢のものを使いますので、7日齢のものを用いた試験を行うと。魚類につきましては、これは逆にふ化直後のものについての試験が行われておりませんので、この試験を追加するということでございます。 2ページ目にまいりまして、評価法としましては、甲殻類については標準試験種と成体の急性毒性値の幾何平均値を、標準試験種による試験の影響濃度と読みかえて評価をすると。魚類については、仔魚と標準種の急性影響濃度のうちの小さい方のものを急性影響濃度とすると、こういったことでございます。
 それから3番目としましては、環境中で共存する有機物質の影響評価をするということで、通常の試験は蒸留水で行われることが多いわけでございますので、実際の環境中では共存する有機物質による影響を、フミン酸を添加した系における試験によって評価をしようというものでございます。これは我が国の主要河川における平均のTOC濃度であります1.5mg/Lに相当するフミン酸濃度における急性毒性試験を行いまして、得られた急性毒性値と標準試験の急性毒性値の比を毒性補正係数としまして、他の試験結果から算定された急性影響濃度にこの係数を適用して補正を行って基準値を出します。
この3つの試験の導入というものをこの検討会の中で決めてまいりました。これらの試験法については、申請者が必要に応じて試験を行って、試験データに追加することができるという運用をしていく予定でございます。
 2番目でございますが、これはその環境中予測濃度の計算のための試験法ということでございまして、これも昨年下半期に細見委員に座長を受けていただきまして、検討してまいりました。その結果、田面水、あるいは畑地からの農薬の流出に関する挙動を見る試験、あるいはドリフトによる挙動を見る試験、それから既登録農薬については、PECの代わりに評価に用いることができるとしました、実河川における農薬濃度のモニタリング方法、こういったことを取りまとめていただきました。
 今後の予定でございますけれども、来年の4月から改正登録保留基準が施行されますので、まず専門家による水産動植物の毒性評価体制を整備したいと。それから登録保留基準値の設定のためのケーススタディーなどを行って、この施行に備えたいというふうに考えております。
 先ほどの2つの検討会の結果につきましては、報告書にまとまっておりまして、それは既に事前に送付させていただいております。また、ホームページにもそれを公表させていただいております。
 以上でございます。
 
(松本部会長)
 ありがとうございました。
 それでは、ただいまのご説明に対して質問、あるいはコメントを受けます。どうぞ。
 ございませんか。
 
(な  し)
 
(松本部会長)
 ございませんでしたら、では次をお願いいたします。
 
(鏑木土壌環境課長)
 次は参考資料の4から8まで、まとめてお話をさせていただきたいと思います。参考資料4、これは土壌汚染対策法のしくみというパンフレットでございます。土壌汚染対策法の検討のときにも先生方にご指導をいただいているわけでございますけれども、これが新しいパンフレットでございます。この法律の施行状況が参考資料5でございまして、ここに法第3条関係とか、法第4条関係とかとありますが、これはパンフレットの4ページにあります土壌汚染対策法の概要でいいますと、有害物質を使用している特定施設の使用の廃止のときに、事業者の方に土壌汚染の調査をしていただくような、そういう法第3条に基づく調査、これが法第3条関係として、参考資料5に書いてある件数でございます。これ件数が並んでいるだけで、ちょっと無機的な資料なのですが、参考資料の5の裏ページに参考として、市街地における年度別の土壌汚染判明事例件数というのがございまして、最近調査の結果まとまった数字で、14年度の数字がこの表の中に入ってございます。まだ土壌汚染対策法ができる前ということになりますが、14年度でやはり土壌汚染の調査の件数は前年度に比べて非常に増えていて、超過の事例も増えていると、こういう新しい数値が入りましたので、参考資料の4と5をまとめてお手元に置いております。
 それから参考資料の6ですが、これは土壌汚染とリスクコミュニケーションということで、今後11月25日に経団連ホールをお借りして、環境省と財団法人日本環境協会が共催をいたしまして、日本経済団体連合会と土壌環境センターに後援をいただいて、「リスクコミュニケーションの成功の鍵を考える」という題でセミナーをやらせていただくことを計画しております。これはそのリーフレットでございます。
 それから参考資料の7でございますが、10月8日、つまり先週の金曜日に公表したものでございますが、毎年取りまとめて公表しております農用地の土壌汚染に係る細密調査結果と対策の概要ということで、私ども補助金を出して農用地の土壌汚染の常時監視というようなことをやっているのでありますが、都道府県に補助金を出して、その都道府県に調べていただいた結果、あるいは都道府県が独自にお調べになった結果、それらの合計した結果がここにまとまりましたので公表しましたというご報告であります。内容を簡単に申しますと平成15年度の細密調査という調査を行った結果、カドミウムにつきましては、農用地の中で汚染地域となっている地域のその周辺の1地域、銅については汚染のおそれがあるということを考えた地域のうちの1地域で、対策地域の指定要件基準値以上の汚染が検出されたわけでございます。基準値の超過といってもカドミウムでは、その基準値をちょっと超えたぐらいの数値なのですけれども、そういうところはあったというようなことでございます。
 銅の方は、これは農作物の生育阻害という観点から決めている基準なのですけれども、農作物そのものには、全然生育阻害の状況が見られなかったという地域が、その地域でございました。指定要件の基準値は超えていたのですが、農作物には問題がなかったと、こういう話でございます。
 それから参考資料8でございますが、この参考資料8は平成17年度の水環境部の概算要求・要望の概要ということでございます。前年度の予算額、つまり16年度の予算額は水部で52億円ほどでございましたが、17年度の概算要求・要望額は58億円ということでございます。主なポイントというのが、その下に主要新規要求事項等ということで表になってございますが、閉鎖性水域を中心とした健全な水環境の確保とか水環境に係るリスク管理とかと並びまして、良好な土壌環境及び地盤環境の保全の推進ということで。その後ろの方にそれぞれ、この表紙、参考資料8に書いてあります事項の内容について、一つ一つこんなことをやりたいという内容を書いてございます。この参考資料8の表紙の裏に、58億円と言っております要求・要望額の内容を並べているわけでございますけれども、ちょうどこの表紙の裏の真ん中あたり、土壌汚染防止及び農薬対策に必要な経費というのがございます。数字としては46から95と頭に書いてあるところでありますが、平成16年度の予算額が21億4,500万余りということに対しまして、17年度は25億8,500万余りという要求をしているわけでございます。
 土壌汚染対策は市街地とか農用地とかダイオキシンとか、それぞれの項目についてございますけれども、市街地が約11億円で、農用地土壌汚染対策が約2億円で、ダイオキシン類の関係が11億円と、農薬対策が2億3,000万という数字を要求・要望しております。
 実はこの中に非常に地味な、といいますか、ずっと続けてきております環境監視、先ほど来、環境モニタリングも非常に大事というお話をいただいたりしておりますけれども、環境監視のための都道府県への補助というのが、このそれぞれの水とか、土壌とかの中に入っております。土壌も市街地とか農用地とかダイオキシンにそれぞれ入っております。これがみんな実は三位一体の改革で、やめたらどうと言われている状況に今ございます。これはどうなるかというのはよくわかりませんが、一応、三位一体の改革でやめたらどうと言われている補助金も、この要求・要望額の中には入っております。入っておりますが、それは最終的にどうなるのかなというのは、よくわからないということなので、でき上がりが随分数字が変わってしまうかもしれませんけれども、今の段階での要求・要望額はこの額であるということでございます。
 土壌の関係では、後ろの方の11ページに農薬飛散リスク評価手法確立調査ということで、農薬環境管理室の目玉といいますか、重点的な要求をしているものがありますし、12ページには土壌環境課の射撃場の鉛汚染対策調査というのがありまして、13ページには土壌生態系基準検討調査、それから14ページには、これは農用地の話になりますが、カドミウム新基準対応費というのがございます。それから地盤沈下対策の検討という、こういうものを目玉にして、今、財務省にご説明をしているという状況にございます。
 以上、資料の8まででございます。
 
(松本部会長)
 それでは、ただいまのご説明に対しまして質問、ご意見ございましたらどうぞ。
 大塚委員どうぞ。
 
(大塚臨時委員)
 参考資料8についてでございますが、三位一体改革の中でということで、国と地方という大きな枠組みの中でのお話なのですけれども、この調査のための補助金等がなくなると、どういうことになるかというのをちょっとお伺いしておきたいのですが、地方分権で各都道府県、あるいは市町村等で環境関係がどのぐらい重視されているかというのは、場所によって大分違うだろうということが想像されますけれども、これで補助金がカットされると国にデータが上がってこないのではないかということが1つ非常に心配される、あるいは地方でもデータを本当にとり続けるのかどうかというところが、かなり心配されますけれども、例えばアメリカでも連邦と州との関係で、連邦がかなり補助金を出して水質関係の調査とかはしていますので、それは別に日本だけの問題ではないと思いますが、もしそこについてかなり懸念があるなら、ちょっと環境省におっしゃっていただきたいのと、もしそういう懸念があるなら、もっとPRしておっしゃらないと、多分だれもわかっていない問題ではないかと。つまり地方分権推進という旗印のもとに環境関係のこういう地味なところが失われていくと、多分将来的には大きな禍根を残すのではないかという感じがしますので、そういう正論はちゃんと言っておかなければいけないかと思いますので、ちょっと懸念しておりますので、お答えいただければ幸いでございます。
 
(松本部会長)
 この点について、それでは回答をお願いします。
 
(甲村水環境部長)
 水環境部長でございます。水質、それから土壌、地下水につきまして、都道府県に補助金でもって定期的な調査、あるいは臨時の調査をやっていただいております。来年の予算でいいますと、当部で約26億円ぐらいが該当しております。どうしても、この定期的な調査というのは地味な調査でもって、それで水質なりで問題がなければ、それは非常にいいことなのですが、問題がないがために余り注目されないということと、それともし問題があった場合は、その対策について大きな事前に規制しているよりも、しばらくずっと観測せずに突如わかった場合、物すごく対策のお金が要るという部分がありますし、また水なんかですと、みずからの行政区域にとどまらずに上流の汚染が下流まで及んでくるおそれがあるというようなこともあるかと思います。
 そういう広域的な性格であるということと、定期的に状況を監視して、いわゆる悪いことが起こる予防措置としてやっているという性格なものですが、それは従来補助金という形で私どもやってきて、そのデータがすべて国にも集まってきたわけですが、今回、全国知事会の方から三位一体改革の中で、これは私は多分、特に政策目的に注目したわけではなくて、補助金の形態に注目して出してこられていると思います。例えば奨励的補助金という財政上の仕分けがありまして、それに該当しているからという、マクロなところで出してきておられまして、その中に観測調査費が入っているということで、その観測調査がどういう政策目的でやっているかと、そこまで多分きっと議論されていない段階だと思います。
 我々としては、こういう環境の調査につきまして、こういう場面だから言うわけではないですけれども、要するに補助金が大事、大事ではないという話ではなくて、それが的確に調査されて、それが未然の対策防止、あるいは事後の対策にどうやって生かされるのかというシステムをどうつくっていくかが大事だと思っておりまして、今後全国知事会ともテーマを分けて意見交換がなされる予定でもありますし、その辺でその政策の中身につきまして、できれば知事さん方と非常に地味な話なので、かつ回数が少ないので、こういうところまで行くのかどうかわかりませんけれども、ご議論ができればと思っております。
 
(松本部会長)
 どうぞ。
 
(大塚臨時委員)
 そういうことで、状況はわかりましたが、環境問題というのは多くの場合、余り住民から見ても利益が上がらないということもありますので、もちろん住民の意識が高いところはそれに任せておけばいいのだと思うのですけれども、そうではないところもございますので、最初にカットされてしまうのではないかということが非常に心配されますので、ぜひ今の状況を、問題を従前ぐらいの調査は続けていただけるようにお願いしたいと思っております。
 以上です。
 
(松本部会長)
 そのほか、どうぞ。
 中杉委員。
 
(中杉臨時委員)
 今の大塚委員のご意見に関連ですけれども、多分環境のモニタリングというのは、一番コストの安いリスク管理というのが、汚染の管理の方策なのですね。例えば環境をモニタリングすれば、先ほど資料4の中でも環境の濃度を使ったのを反映しながら、いろいろ管理を緩めていく。緩めていくというとちょっと語弊がありますけれども、それに合わすような形でやろうということになるのですけど、実際にそこら辺ができないとなると、より厳しく安全サイドを見ていかなければいけない。非常に過剰な規制をやることになりかねない。そこら辺のところは非常に、一番コストが安いリスク管理の方策であるということをしっかり環境省の方もうたっていただく必要があるのだろうと思うのですね。これをやらないと、後で、先ほど部長が言われたように後で大きなお金を払うことになるし、逆に言えば、今も過剰に反応せざるを得なくなるという面を含めて、これは経済界の委員の方もおられますけれども、そういうことを主張していただいて、応援をしていただければというふうに思いますけれども。
 
(松本部会長)
 ありがとうございました。
 そのほか、どうぞ。そのほか、ご意見ございませんか。
 それでは、何かそれに対して。
 
(谷企画課長)
 次の議題へ行ってよろしいですか。
 
(松本部会長)
 ちょっと待ってください。
 そのほか、ご意見ございませんか。今の参考資料8までのもので。
 
(な  し)
 
(松本部会長)
 なければ、次お願いいたします。どうぞ。
 
(谷企画課長)
 今、先生方からおっしゃっていただきましたように、住民皆様、国民の水について、あるいは提出、土壌も含めました自然についてのご関心をもっと持っていただくということが、大変重要なことと考えております。参考資料9で、そのための1つの試みを始めます。「こどもホタレンジャー」活動事例の募集についてと書いてございます。こちらホタレンジャーという名前、「ホタル」という言葉と自然保護の「レンジャー」をつなげたものでございます。子供さん方にホタルを通じて、水環境についての関心を持っていただきたいという観点から、ホタルを通じた水保全の活動につきまして事例の募集をいたします。こうして募集した事例を1月20日締め切りをいたしまして、その後、審査委員会で審査をいたします。審査は文部科学省と一緒にやってまいりまして、これを3月の下旬、活動の報告会と表彰を行いたいと考えております。環境大臣の表彰を行いまして、広くこれを公表いたしまして、この次のホタルのシーズンには皆様方にもっとホタルという虫だけではなく、水の環境、生態というものに関心を持っていただくようつなげたいと思っております。
 以上でございます。
 
(松本部会長)
 ありがとうございました。
 ただいまのご案内に対しまして、ご質問ございましたらどうぞ。
 ございませんか。報告事項の説明は以上でございますか。
 そのほか何かございませんか。どうぞ。
 
(鏑木土壌環境課長)
 会議中に桝井委員から本日ご欠席というご連絡がございました。冒頭、本日ご欠席の委員のお名前を読み上げさせていただきましたけれども、桝井委員からのそのようなご連絡が来ております。
 以上でございます。
 
(松本部会長)
 それでは、本日の議題全体を通しまして、何かご意見がございましたら、この際承りたいと思います。どうぞ。
 岡田委員どうぞ。
 
(岡田臨時委員)
 今のホタレンジャーのことですけれども、言わなくてもわかっておられると思うのですけど、水だけではなくて、これは河川の状況が非常に大事で、えさのカワニナが住める環境というのがぜひ必要ですから、ホタルの水が流れている河川の状況についての評価というのをぜひ入れていただいたらいいのではないかなと。私どものいる研究所の前に地区自然観察の森がありますけど、そこはホタルの観察もよくできるところなのです。
 
(松本部会長)
 それでは、先ほどのコメントもぜひ加えてください。
 そのほかはございませんか。
 
(な  し)
 
(松本部会長)
 特にないようでしたら、最後に私の方から本日の資料の取り扱いについてご説明をさせていただきます。
 土壌農薬部会の運営方針では、検討中の答申、非公開を前提に収集したデータが記載されている資料など、公開することにより公正かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがある資料や、公開することのより特定のものに不当な利益もしくは不利益をもたらすおそれがある資料などは、部会長の判断に基づきまして非公開とされています。
 本日、配付した資料はいずれもこれに該当しないことから、すべて公開といたします。
 それでは、以上をもちまして本日の土壌農薬部会を閉会といたします。
 長時間にわたりまして、大変ご熱心な審議をちょうだいいたしまして、ありがとうございました。