中央環境審議会土壌農薬部会(第7回)議事録

日時

平成14年1月25日(金)15:00~16:00

場所

全共連ビル 本館4階 中会議室

出席委員

部会長
部会長代理
委員

臨時委員
 松本 聰
 須藤 隆一
 浅野 直人
 村岡 浩爾
 岡田 齊夫
 亀若 誠
 黒川 雄二
 櫻井 治彦
 嶌田 道夫
臨時委員 鈴木 英夫
 高橋 滋
 谷山 重孝
 福島 徹二
 西尾 道徳
 眞柄 泰基
 山口梅太郎
 渡辺 徳子

委員以外の出席者

環境省: 環境管理局長、水環境部長、水環境部企画課長、土壌環境課長、農薬環境管理室長、事務局
オブザーバー:国土交通省、経済産業省、農林水産省、厚生労働省、総務省、一般傍聴者、その他

議題

(1)今後の土壌環境保全対策の在り方について
(2)その他

配布資料

資料1中央環境審議会土壌農薬部会委員名簿(平成14年1月25日現在)
資料2中央環境審議会土壌農薬部会(第6回)議事要旨(案)
資料3中央環境審議会土壌農薬部会土壌制度小委員会「今後の土壌環境保全対策の在り方について(報告)」
資料4中央環境審議会土壌農薬部会土壌制度小委員会「今後の土壌環境保全対策の在り方に対する考え方の取りまとめ案」等に関する国民の皆様からの意見募集結果について

議事

(土壌環境課長)
 ただいまから中央環境審議会土壌農薬部会の第7回を開催する。
 本日は、委員総数27名中17名の出席で定足数を満たしている。

(事務局)
 まず、配布資料の確認をさせていただく。
 (配布資料の確認)
 それでは、部会長に議事進行をお願いする。

(松本部会長)
 それでは、議事次第に従い議事を進める。
 まず、今後の土壌環境保全対策の在り方に対する考え方の取りまとめについてである。これについては、10月18日付で諮問され、この部会に付議された今後の土壌環境保全対策の在り方について、これを10月23日の第4回土壌農薬部会において設置した土壌制度小委員会で審議がなされ、今般取りまとめられたということなので、報告をしていただきたい。
 村岡小委員長、お願いする。

(村岡委員)
 それでは、御報告申し上げる。
 10月23日の第4回土壌農薬部会において設置が承認されたこの土壌制度小委員会では、11月16日の第1回小委員会開催以来、委員各位の御協力のもと、ほぼ1週間に1回のペースで精力的に審議を進めてきた。12月20日の第5回小委員会においては、それまでの4回の議論をもとに「今後の土壌環境保全対策の在り方に対する考え方の取りまとめ案」を作成した。また、本取りまとめ案等について、12月25日から今年の1月15日までの間、国民からの意見募集、いわゆるパブリックコメント手続であるが、これを行った。
 この間の審議の経緯等については、12月26日の第6回土壌農薬部会のときに私から報告させていただいたとおりである。
 パブリックコメントの手続を行った結果については、産業界、大学、地方公共団体、市民など、67の関係者から延べ464件もの意見をいただいている。昨日1月24日に第6回小委員会を開いて、このようなパブリックコメント手続の結果及びこれまでの委員から提出された多数の意見等をもとにして、再度取りまとめ案を整理する形で審議を行い、小委員会報告として最終的な合意を得るに至った。小委員会の報告の具体的な内容についても、後ほど事務局から説明していただくが、この小委員会においては、非常に短い期間ではあったが、専門知識をお持ちの委員、あるいは各界代表の委員から多くの意見をいただいて、可能な限り委員の意見を取りまとめ、疑問点や意見に答える形で議論を尽くしてきた。特にこの制度を円滑に運用するためには、事業者を含む関係者に対して十分な周知に努めることが必要であること、それから、適切なリスク・コミュニケーションこそこの制度を成功させる一つの鍵であることなど、特別の全般的な意見もいただいている。
 このような経緯を踏まえて、この取りまとめ案について、御審議いただきたい。

(松本部会長)
 それでは、資料3に基づいて、事務局から説明をお願いする。

(事務局)
 (資料3に基づいて説明)

(松本部会長)
 ただいま説明いただいた土壌制度小委員会報告について、質疑応答の時間に入りたい。
 新たに幾つか具体的に追加修正がなされたわけであるが、いかがか。

(西尾臨時委員)
 調査の契機のところで、土壌汚染の可能性が高いと考えられる云々のところ、ここのそういう可能性の判断基準は、やがて作られると思うが、その可能性がないと判断して調査をしなかったようなケースが出たらどうなるのか。というのは、「土地の改変時に土壌汚染の可能性の有無にかかわらず、すべての場合に調査を行うことを義務付けることは、国民に過重な負担を求めることとなり、適切でないと考えられる」というわけで、これはきちんと義務としてやらねばならぬケースはどういうケースなのか。それをあえてやらなかったものが出た場合にはどうするのか。

(浅野委員)
 義務付けるということである以上、調査を今後ともきちんとしていただくべきものと定められた場合に、一般的な常識からいうと、義務に反した者に対してしかるべき制裁が働くことは当然含むことになる。ただし、制裁を含むということにするならば、どういう場合に調査をしなければいけないかをより明確に、詳細に、誤解のないように決めなければいけないから、相当細かく規定を決めないと罰則を働かせることはできない。どこまで細かくするかについては、小委員会として突き詰めて答えを出すことは難しいので、「例えば」という形で書いているが、水濁法では、特定施設における有害物質を既に法律で決めている。それと同じように政令などでこういうものが有害物質であると決めて、それをどういう施設でどう扱ったかを決めるというところまで決まっていないと、多分罰則つきの義務付けは無理だろう。
 小委員会が一番危惧しているのは、西尾委員が言われるように、調査義務があるのに調査しない者がいる場合はどうするかということも問題であるが、土壌汚染の可能性が高い場合を網羅できるかどうかが問題である。しかし、制度を仕組む以上、ある意味では二律背反のようなところがある。およそ危なそうなケースをずっと幅広くカバーしようとすると、あまり細かい罰則までは決めにくい。罰則まできちんと決めるとすると相当厳密に規定しないといけない。そこは、小委員会としては法律を作る人に委せることになる。そして、少なくとも我々が考えたのはその枠組みの決め方であり、誰か土地所有者や占有者がよそから持ってきて捨てたであろう土壌汚染物質まで調べよということは、差し当たりはあきらめざるを得ない。しかし、土壌汚染の危険がある物質を扱っている業種でそういう仕事をしておられて、危険のある施設を持っていた以上は、かなり調べたが大丈夫だということにしていただいた。
 もう一つの枠があって、自ら調査をする義務はないが、地下水の汚染という状態が生じたときには、都道府県知事が、あなたは調査しなさいという命令をして土地の周辺から推定される汚染原因について所有地の中に攻め込む手だてを一つ用意しているわけで、不法投棄型のものもその形で周囲の地下水に汚染を起こすようなことがある場合には、そのやり方で踏み込めるということになっており、およそ問題がありそうな場合を大体網羅できるのではないかというのが小委員会の発想である。御理解いただければと思うが。

(眞柄臨時委員)
 大変適切な委員会のまとめをいただき、敬服している。国が技術的な基準を定めることになっており、この土壌汚染の問題というのは、かつてのカドミ、クロムの時代からトリクレン、パークレン、最近は有機化学物質までと、まさに日進月歩、その技術的な基準を定めるときには、定期的な見直しを是非制度の中で盛り込んでいただきたいということが1点。
 それから2点目は、調査について国が登録要件を定めて、国または都道府県の登録を受けた事業者による云々という制度が発足するわけだが、これに関しては、いわゆる規制緩和の観点からいうと、それぞれの都道府県に登録を受けなければ、その都道府県の調査しかできないのか、あるいは例えば、東京都で登録を受けたら大阪でも調査ができるのか、そういう登録の仕組みを、いわゆる規制的な登録の仕組みにならないように、是非配慮をいただきたい。これは事業者であり、具体的に調査を行う技術者については何のコメントもされていない。先程一番最初に申したように、かなり専門的な知識と経験を要する技術的な背景というか、力を要求されることであるので、登録の要件を定める際には、是非施設や設備や資本金とかということではなくて、人的な資源の観点も是非要件に含めていただきたい。

(松本部会長)
 ただいまの眞柄委員からの御指摘に対して、何か事務局、小委員会で意見はあるか。

(水環境部長)
 先程眞柄委員からの御指摘の必要に応じての見直し、それから規制緩和の流れに反しないようにというのは当然のことである。また、その調査の能力の中で、施設だけがあれば良いとは当然ならないので、そういう点に配慮して対応していきたいと考えている。

(松本部会長)
 先程西尾委員の質問で浅野委員から説明をいただいたが、西尾委員、それでよろしいか。

(西尾委員)
 8ページのその他の課題の[3]のところを説明いただきたい。「浄化が困難な低濃度の汚染土壌の拡散を防止し」というところはわかるが、「当該汚染土壌を活用する方策」という、これは私の中でつながらない。これは何か土の移動を伴うような話だとすると、かえって危ない話にもなりかねない。この話はない方が良いのではないか。

(事務局)
 これはパブリックコメントでいただいている意見で、後半の部分、今委員から御指摘のあった「当該土壌汚染を活用する」というのは、要は、単純にこれは基本的な浄化ができれば良いし、またはそこで封じ込めを適切にやっていくわけだが、どうしても掘削をし、除去をしなければいけないときに、何もしなければ、処分場へ行ってしまわざるを得ない。ただ、そういうものばかりではなくて、うまくそれを使っていけないだろうか。別にそれは放っておくという意味ではなくて、処分場ではないところで、例えば、不溶化の処理をするとか、何かうまく処理を絡めながらそれを活用する。そこは例えば、ここで言うリスク管理地になるかもしれないが、何か単純に処分場へ行って処分すれば良いということ以外の方策を考えたらどうか、今後、一つの課題として考えていったらどうか。特に低濃度の汚染土壌は、今後、かなり出てくる可能性がある。濃度の高いものについては、当然、適切な措置が必要になると思うが、わずかに超えているようなケースが出てきたときに、相当大量のものが出てくる可能性もあるという御指摘だったと思う。その辺については、いろいろな方策を考えるときの一つの方法として、例えば、ここで御指摘のあるようなものも含めて私どもとしては検討していく必要がある。前回御議論いただいて、このような記載をしていただいていると思っている。つまり、どこかへ持っていったら良いということではなくて、そういった大量の土壌をどう処理をしていけば良いか。ただ単純に処分するだけではない何か方策はないだろうか。純粋に目の前に何か具体的なものがあるわけではないが、そういう観点で御議論いただいたのではないか。

(西尾委員)
 つまり、この対象とする健康リスクのある土壌ではない、それ以下の濃度という意味なのか。

(事務局)
 基準について、例えば、10倍は超えていないが、2倍、3倍のものについては、どこか一括して適切に管理できるような場所をリスク管理地にして、それを逆に有効に利用する方法はないだろうかというパブリックコメントの意見であった。その辺は、検討に値するものだということで、取り上げていただいた。ここの低濃度というのは、基準は超えている。ただ、例えば、溶出基準をわずかに超えたようなものを全部拾い上げると相当な量になるかもしれない。前にあるように、「適切なリスク管理ができる場所で」ということなので、例えば、そこは多分リスク管理地になると思う。

(西尾委員)
 そうすると、それを適切に管理するのは誰なのか。

(事務局)
 この制度で言えば土地の所有者になる。だから、リスク管理地となれば当然それを管理する者が明確になる。例えば、あるリスク管理地みたいなところがあって、何かある特殊な用途に使われる部分について、そこを管理するという前提でその低濃度の土砂を集めてきて、何か有効に活用する方策ができないだろうかと、こういうことだろうと思う。まだ、ここで説明できるほどの具体的な方策がないため、そういうものだと理解している。

(西尾委員)
 これが土地所有者の土地の範囲であれば問題ないが、そこからよその公共の方がそういうリスク管理をやってくれという話になると、そういうふうに受け取られると、ちょっと尻抜けになってしまうのではないか。

(浅野委員)
 ここは実は、「土壌」という言葉しか役所の言葉がないところに最大の悩みがある。つまり、委員もお気づきのとおり、サイエンスの世界では、土壌という言葉には確固たる定義がある。しかし、土壌環境課で扱う土壌とは、サイエンス世界での土壌と土との両方が一緒になっていて、この部分で問題にしているのはどちらかというと土の部類である。汚染されても直ちに基準まで浄化しなければならないレベルではないかもしれない。しかし、変な用途で使われては困るし、地下水汚染の原因となることでもないような場合に、それを適切に利用することによって、変なことにならないようにすることも必要だから、完全に全部を使用禁止にしてしまうことばかりでは、多分お手上げになるだろうということを考えて、このような表現をとっている。つまり、資源としてその土壌をどうにかするというのがあれば、それも一つの方法かもしれないが、実は土壌という言葉の持っている二面性がある。これは前から気になっていることだが、ここで「土」と書くわけにいかないため、こういう表現になる。

(松本部会長)
 農用地土壌ではないということか。

(浅野委員)
 普通サイエンスで言っている土壌とはかなり違った異質のものまで土壌と言っている。例えば、汚泥ではないが、建設廃土であると言われているようなものは、現在の環境行政の仕切りの中では「土壌」という言葉の中に入っているわけだ。

(松本部会長)
 事務局から追加で何かないか。

(土壌環境課長)
 さらにもう1点追加させていただく。これは検討課題というよりも、研究課題的なことだとは思うが、最近米国においても、ブラウン・フィールド関係の制度、これが一応でき上がっている。要するに、それほど高い汚染ではないが、ある程度の対策はできている。その辺りをもう少し活用するような方策というか、今日のこの話には直接関係ないが、その辺りの方向性も諸外国で出てきている。そういう意味で、多少汚染はしているけれども、きちんとリスク管理することによって、今後の都市などの有効利用に役立てていく方向性はある。

(鈴木臨時委員)
 誤解のないように産業の立場から言うと、いろいろな土壌をむしろ有効活用するということである。例えば、不溶化してブロックにして、仮に含有量が少しあっても、堤防の中込材に使うとか、そういうものはリサイクルの観点からも研究され、もしそれで人体に害がなければ、大いに有効利用したらどうか。最終処分場のスペースもすごく少なくなってきているから、最終処分場だけでこの土壌の問題を解決しようとするのは、現実的ではない。そういうことも含めて今後検討していただくと理解している。

(松本部会長)
 よろしいか。

(西尾委員)
 了解した。ただ、今、言われたケースだと、土地所有者は別の者になるわけで、その場合には勝手に持ち出してしまわないで、土地所有者間できちんとした協定があることが前提でなければ困る。

(鈴木臨時委員)
 受け入れ側と持ち出し側の一定のルールに基づいてやることになると理解している。

(松本部会長)
 村岡小委員長を初め、小委員会の皆様におかれては、大変御多忙のところ、非常に密度の濃い審議をいただき、報告を取りまとめていただいたことを大変感謝する。また、今後、土壌制度について審議する必要がないとも限らない。そのときにはまたお願いを申し上げたい。
 それでは、本日いただいた小委員会報告を昨年10月にこの部会に付議された「今後の土壌環境保全対策の在り方について」に対する土壌農薬部会として報告させていただきたい。
 それでは、議題の2に移る。議題の2はその他であるが、何かないか。
 なければ、今後の日程等について、事務局から説明をお願いする。

(土壌環境課長)
 今後のスケジュール等について、申し上げる。
 本日の報告については、本日付で中央環境審議会会長に報告し、会長より環境大臣に対して答申される予定である。
 なお、部会の次回の開催の予定については、既に事務局からも相談させていただいているが、次回は3月19日の火曜日、場所は環境省第1会議室で、農薬の関係の審議ということになる。委員の皆様におかれては、御多忙中とは存ずるが、よろしくお願い申し上げる。
 最後に、水環境部長から挨拶する。

(水環境部長)
 部会長を初め、委員の皆様方には、御多忙の中の審議、大変感謝する。
 本部会で取りまとめた答申案をもとに、土壌環境保全対策の法制度化を図っていきたい。引き続いて幅広い観点から、土壌環境保全行政、環境行政全般について、御指導、御鞭撻をお願いする。

(松本部会長)
 最後に、本日の資料の取り扱いについて、説明する。
 土壌農薬部会の運営方針では、審議中の答申、非公開を前提に収集したデータが記載されている資料など、公開することにより公正かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがある資料や、公開することにより特定の者に不当な利益もしくは不利益をもたらすおそれのある資料などは、部会長の判断に基づいて非公開とするとされている。本日配布した資料は、いずれもこれに該当しないことから、公開とする。また、今回の会議録については、事務局で調整した後に、出席委員の明示の了承を得て公開となる。
 それでは、本日の議事を終了させていただく。