中央環境審議会 水環境部会 総量削減専門委員会(9次)(第3回) 議事録

議事次第

1.開会

2.議題

(1)水質総量削減制度に係る取組の実施状況について(関係者からのヒアリング)

(2)その他

3.閉会

配付資料

  • 資料1 総量削減専門委員会委員名簿
  • 資料2 製紙業界の水質総量規制への対応状況
  • 資料3 東京湾の漁業と漁場環境
  • 資料4 東京湾(千葉県)における総量削減の現状等及び漁業の状況
  • 資料5 東京都における汚濁負荷削減対策と水質改善の取組について
  • 資料6 愛知県における海域環境改善の取組と課題
  • 資料7 きれいで豊かな伊勢湾再生に向けた三重県の現状と課題
  • 資料8 大阪湾(大阪府)における総量削減の現状と課題
  • 資料9 兵庫県における水質総量削減の現状と課題
  • 資料10 干潟・藻場の保全・再生と連携の推進に向けて
  • 資料11 浄化槽による生活排水処理の取組について
  • 参考資料 総量削減専門委員会におけるヒアリングの予定

議事録

午後2時00分 開会

【事務局】 定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会水環境部会第3回総量削減専門委員会を開会いたします。

 委員の皆様におかれましては、お忙しい中、御出席いただき誠にありがとうございます。

 本日は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、WEB会議での開催とさせていただいております。委員の皆様には御不便をおかけしますが、会議中、音声が聞き取りにくい等、不具合がございましたら、事務局までお電話、またはWEB会議のチャット機能にてお知らせください。

 なお、本日の会議は、中央環境審議会の運営方針に基づき、公開とさせていただいており、環境省公式動画チャンネルのサブチャンネルでライブ配信を行っております。

 議事中、マイク機能は委員長及び発言者以外はミュートに設定させていただきます。

 なお、御発言の際は、お名前横にある挙手アイコンをクリックしてください。青色に変わりますと、お名前横に挙手した状態になりますので、御発言の意志はこのマークで確認します。委員長からの御指名後、マイクのミュートを解除していただき、御発言いただきますようお願いいたします。御発言後は挙手アイコンを忘れずにクリックし、黒になるよう操作願います。挙手アイコンは事務局でオン・オフを操作できないため、御協力をよろしくお願いいたします。

 本日の出席状況でございますが、委員16名中、15名の御出席を頂いております。

 なお、古米委員からは遅れて御出席との御連絡を頂いております。

 委員につきましては、お手元にお配りしております委員名簿をもって御紹介に代えさせていただきます。

 続きまして、今回の議題(1)でヒアリングを予定している関係省庁、産業界、関係都府県、環境団体の方々をヒアリング順に御紹介いたします。

 日本製紙連合会環境管理小委員会委員長の小川様です。

 千葉県漁業協同組合連合会副参事兼指導部長の鶴岡様です。

 千葉県環境生活部水質保全課の小泉副課長です。

 東京都環境局自然環境部水環境課の清野課長です。

 愛知県環境局環境政策部水大気環境課の松下課長補佐です。

 愛知県水産試験場副場長の蒲原様です。

 愛知県漁業協同組合連合会副会長の黒田様です。

 三重県環境生活部大気・水環境課の国分係長です。

 大阪府環境農林水産部環境管理室環境保全課の奥田課長です。

 兵庫県農政環境部環境管理局水大気課の上西課長です。

 NPO法人海辺つくり研究会の古川理事です。

 環境省環境再生・自然循環局廃棄物適正処理推進課浄化槽推進室の相澤室長です。

 また、事務局に異動がありましたので、御紹介いたします。

 大臣官房審議官の正林が異動となり、後任に森光が着任しております。

【森光審議官】 どうぞよろしくお願いします。

【事務局】 続きまして、資料の確認をさせていただきます。

 事前に御案内のとおり、議事次第のほか、資料1が委員名簿、資料2から11までがヒアリング資料です。資料2が製紙業界関係、資料3が水産業界関係、資料4と5が東京湾関係で、資料4が千葉県分、資料5が東京都分、資料6と7が伊勢湾関係で、資料6が愛知県分、資料7が三重県分、資料8と9が瀬戸内海関係で、資料8が大阪府分、資料9が兵庫県分、資料10が環境団体関係、資料11が浄化槽関係となっております。

 参考資料が、第2回会議でもお示ししました総量削減専門委員会におけるヒアリングの予定となっております。

 以上が本日の資料でございます。

 なお、資料につきましては、WEB会議システムの資料共有システムにより、事務局より画面に掲載いたしますが、事前にお送りしております資料電子媒体においても、必要に応じお手元で御参照願います。

 それでは、この後の議事の進行につきましては、細見委員長にお願いしたいと思います。細見委員長、よろしくお願いいたします。

【細見委員長】 皆様におかれましては、大変御多用の折、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。

 また、ヒアリングに参加していただいている多くの方々に感謝申し上げたいと思います。

 本日は17時の終了を目途に議事を進めていきたいと思いますので、ぜひ、御協力のほどお願いいたします。

 早速ですが、議事に入りたいと思います。

 最初の議題は水質総量削減制度に係る取組の実施状況についてとなっております。前回と同様に、各御担当者の方からの発表時間はそれぞれ10分程度として、関連するヒアリング対象者ごとにまとめて質疑応答という形で進めていきたいと思います。質疑は一応5分ということで、一つの大きな枠としては15分ごとにまとめていきたいと思います。

 それでは、まず、製紙業界関係について説明をお願いいたします。説明後に質疑応答を行います。

 お手元の資料2について、日本製紙連合会の小川様より説明をお願いいたします。

【小川氏】 御紹介、ありがとうございました。日本製紙連合会の小川と申します。所属は王子ホールディングスです。

 それでは、日本製紙連合会から製紙業界の水質総量削減の取組について御説明いたします。資料は6枚、準備しております。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず初めに、御存じのとおり、製紙業界は大量の水を使用しております。その水はほとんどが冷却水などではない工程水であり、排水処理が必要なCOD負荷の高いものとなっております。その結果、全産業系の中でも非常に多くCODを排出している業種の一つであると言えます。

 製造工程で使われる大量の水資源は、一部は蒸発などして失われますが、排水処理により浄化して、取水しました90%以上を再度、河川や海の水として戻すことで水リスクの観点からもリサイクル、負荷削減の取組を行っております。

 それでは資料に基づいて御説明します。資料1枚目を御覧ください。まず、過去からのCODの排出状況についてです。この数値は環境省の集計データを使用しております。緑の棒グラフが排出負荷量、オレンジの点線が削減率を示しております。閉鎖性3海域合計排出量は、規制導入の79年対比、直近の2017年で約58%の削減となっており、削減傾向を維持しております。3海域とも同様な傾向を示しています。しかしながら、これ以降、更なる削減は容易ではないと考えています。

 主な削減対策としましては、CODの発生負荷を下げるためのパルプ製造方法の見直し、CODの発生負荷減少と回収率を上げるための漂白方法の変更が挙げられます。更に排水のクローズド化により使用する水を削減し、回収効率を上げています。

 排水の系外処理ですが、凝集沈殿処理と活性汚泥処理を組み合わせる手法で処理を行っております。

 資料2枚目を御覧ください。続いて窒素、りんについて、CODと同様なグラフを作成しております。製紙工場では、原料である木材チップ由来の窒素、りんもありますが、排水処理における活性汚泥の栄養剤として窒素・りんを使用しております。良好な生物処理が維持できる範囲で添加量を削減、生物処理工程後の残窒素、残りんを把握することで、窒素については55%、りんについては48%の削減をしてきております。これも3海域とも同様な傾向を示しています。

 それでは、資料4枚目を御覧ください。この資料は紙パルプ製造の一般的な製造工程及び排水処理工程を示しております。大きく三つに分けております。1.パルプ製造工程、2.調成・抄紙工程、3.排水処理工程です。上段左から木材チップを原料としパルプ繊維を取り出し、その繊維を漂白する化学パルプ製造工程、その下には古紙を原料とし溶解して漂白する古紙パルプ製造工程です。ちなみに現在の紙原料は約60%が古紙パルプ由来、残り40%が化学パルプ由来となっております。右側にはパルプから紙を抄造する抄紙工程です。一番下段に排水を処理する工程を示しております。水色の線が排水の流れとなっております。

 パルプ製造工程からの排水はCOD負荷が高く、処理として活性汚泥処理の後、クラリファイアー、凝集沈殿処理をしております。COD負荷の比較的低い抄紙工程からの排水は、クラリファイアー処理のみの工程となっているのが分かると思います。

 木材からパルプを製造する方法は、過去にはいろいろありましたが、現在ではクラフトパルプ法が主流です。クラフトパルプ法の特徴は、木材中の約半分を占めるパルプ繊維、セルロースを取り出し、残りの半分は抽出廃液、これを黒液と呼んでおりますが、これを濃縮してボイラーの燃料とすることができ、エネルギー利用と合わせて薬品回収もできるという利点があります。

 このパルプを製造した後の漂白工程からもCOD負荷の高い排水が流れます。この図の漂白工程にあるとおり、初めに酸素漂白装置があり、ここで出た排水は前工程へ回収、再使用され、最終的には廃液と一緒にして濃縮、燃焼することでCODの回収につなげています。酸素漂白導入前は塩素、二酸化塩素を主体に漂白しておりました。塩素は腐食性が強いため、前工程へ戻しての回収、燃焼させることができず、それを全て排水処理しておりました。酸素漂白を導入することで大幅にCOD負荷が削減されました。

 それでは資料3枚目に戻ってください。閉鎖性海域に排水する紙パルプ事業所は、3海域でおよそ三十数か所ありますが、ここでは東京湾からA工場、伊勢湾からB工場、瀬戸内海からC工場をピックアップし、水質総量削減対策、投資費用についてまとめております。

 まず、東京湾のA工場ですが、94年、CODの負荷の高いケミグラウンドパルプの製造をやめ、首都圏から発生する古紙を原料とする古紙パルプ主体の工場になりました。総量規制導入以降、CODとしては最大負荷時の88年から直近までに約91%削減しており、水質改善設備は全体で約28億円を投資しております。最近の10年間では約1億円をかけて前段のクロフタ、これは加圧浮上を新設しまして、そのほか、5,000万円で老朽化工事を実施しております。また、排水処理に係るランニングコストは、年間約2.3億円と聞いております。

 B、C工場は、パルプから紙まで生産する大型の一貫工場で、B工場の場合、総量規制導入以降、順次発生源対策と排水処理設備の増強を行っております。CODとしましては、最大負荷の88年から直近までに52%を削減し、設備には約152億円を投資しております。2000年にクラフトパルプのECF化を実施、主な目的は、大気、排水へのクロロホルム、ダイオキシン類の排出削減でしたが、塩素系薬品を削減することで排水の回収率向上と活性汚泥が安定化し、CODの削減にもつながっております。最近は大きな投資は行っておりません。排出処理に係るランニングコストは年間8~9億円と聞いています。

 C工場は、以前は排水処理がしにくいサルファイトパルプの生産設備があり、総量規制導入時は31.5tのCODを排出しておりました。それをクラフトパルプへ切替えを進め、90年以降、設備を更新いたしました。また、2004年からはB工場同様、漂白設備のECF化を行っております。C工場の場合、全体でCODは69%の削減となっております。C工場ではパルプ設備、漂白設備等の更新も含め、その設備投資額は335億円となっております。最近の10年間では約1億円の投資となっており、排水処理に係るランニングコストは年間約5億円と聞いています。

 製紙産業は、これまで御説明しましたように、工場によって大小差はありますが、COD、窒素、りん共に大幅に削減し、その努力を継続しております。規制値の遵守は当然ですが、規制値の内側に自主管理値を設け、日々工程管理を行い、現在の削減結果を導き出しております。

 ここ数年来、排水処理方法に関して大きな投資や新技術のトピックはございません。収益が厳しく、生産量の下がっている製紙産業といたしましては、現状設備を最大限有効に活用する、老朽化対策を徹底することで規制値の遵守と排水負荷の削減を達成している状況です。裏を返せば、これ以上の規制強化には非常に大きな投資が必要になるとも言えます。

 資料5枚目では製紙業界の環境への取組事例について幾つか御紹介いたします。

 環境への取組は、業界では原材料として木材チップを使用しておりますので、使ったら育てるという植林活動、森林の健全化を担う間伐作業等を継続しております。森林を健全に管理するということは、土砂災害の防止や森林の緑のダムとしての機能を保持し、水を蓄えたり、浄化した水を河川、海へ戻すという役割があります。また、もちろん、CO2の吸収の効果もございます。

 その他、地域の河川の清掃や下草の除去、トラブルを想定した漏えい対応訓練など、地域社会に迷惑をかけない、地域と共生し豊かな水環境を守る、という取組を継続しております。

 資料6枚目を御覧ください。最後に、工場が立地している周辺、ここでは瀬戸内海の生態系調査結果について御紹介いたします。2009年~2011年の調査で、少し古い資料ではありますが、御了承願います。

 工場排水の放流口で生物多様性について近隣漁港との比較を行いました。結果、瀬戸内海の呉市に立地するF工場の付近では、自然の河口と同様な魚類の種類が豊富に確認され、アマモが生育するなど、良好な藻場の形成が確認できています。この背景には、工場排水に問題がないことはもちろん、海水との交換が活発に行われるような海水交換型防波堤同様の底層の形状が鍵となっています。

 当該工場付近の海域における指定項目の環境基準は、この調査を行った期間を含め、CODが2010年頃から、窒素は1990年頃から達成できている状況が続いています。このような場所でも更に一律に総量削減を強化する必要が本当にあるのか、議論していただきたいと思います。現状に応じて問題が生じていれば、その部分に絞って対策を行うべきではないでしょうか。

 ここの資料にはございませんが、紀伊水道の徳島県阿南市周辺の工場でも同様に環境基準を達成しつつ、豊かな生態系環境が確認されている例もございます。いたずらに規制強化を行うのではなく、汚染のメカニズムを明らかにしていただき、今後の在るべき姿を示していただきたいと願っております。

 以上で日本製紙連合会からの報告を終わりにします。御清聴、ありがとうございました。

【細見委員長】 ありがとうございました。

 それでは、ただいまの資料2に基づく説明に関して、御意見、御質問等をお願いしたいと思います。5分を目安にしておりますので、御質問、御意見は、できるだけ的確に短く、よろしくお願いします。どうぞ、挙手ボタンをお願いいたします。

 吉住委員から挙がっていますので、どうぞ。

【吉住委員】 経団連の吉住でございます。産業界を代表して、今の説明について少し補足をさせていただきます。

 今の日本製紙連合会からの説明や、あるいは、前回二つの業界団体からの説明にあったとおり、企業全体として汚濁負荷削減に対する投資を大いに重ねてきており、結果としてCOD、窒素、りん等の排出による汚濁負荷量は着実に減少しています。当然のことながら、今後とも我々は汚濁負荷削減に努力をしていこうと思っております。

 ただ、説明にもありましたとおり、環境基準の達成に必ずしも結びついていない水域があるということ、貧酸素水塊の発生や、栄養塩類の減少によるノリの色落ちなどの問題が残っているということも現実としてあります。

 次回の会合から第8次の負荷削減の実施状況のレビューや水質の将来予測を行うと認識しておりますけども、先ほどの日本製紙連合会からの説明にありましたとおり、納得感を持って水環境の改善に向けた取組ができるように、それぞれの水域の実情に応じた汚濁負荷量の削減対策の効果について、科学的な検証と合わせて、ぜひ議論をすべきではないかと思っております。

 そのために、関係省庁とも連携して、必要なデータの提供や、これまでの対策の効果の説明もお願いしたいと思います。

 最後になりますが、もともと取り組むべきは豊かな海の創生でございます。日本製紙連合会からの説明にあった森づくりや清掃活動、あるいは、産業界として前回紹介した鉄鋼スラグによる藻場の再生やプラスチックごみの流出防止など、水環境の向上に資する技術の面でも、経済界として、ぜひ貢献していきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 以上でございます。

【細見委員長】 ありがとうございます。ただいまのは要望という形で次に進めたいと思います。質問として小川委員から挙がっているようです。小川委員、どうぞ。

【小川委員】 小川です。COD、NPの実態については理解できたのですが、SSの実態は把握されているんでしょうか。といいますのは、数年前に静岡県富士市の製紙工場の排水が主として流下する岳南排水路の排水量が田子の浦港に流出している状況を見ると、かなり濃度が高い排水が流入しているという調査結果を得たんですが、その点、いかがでしょうか。お願いいたします。

【細見委員長】 では、小川様、よろしく。

【小川氏】 今回、御紹介したデータは環境省からのデータを引用させていただいたので、個別のSSのデータということであれば、まとまったデータはないんですけれども、資料を調査することはできると思います。ただ、静岡県の話が先ほど出ましたように、今回、閉鎖性水域という話になりますと、なかなか総量規制がかかっている、かかっていないという問題もございますので、データの精査や集計はできると思いますが、どこまでの説得力があるかというところは、少し疑問があると思います。

【小川委員】 分かりました。今回の検討対象である3海域とは違うところの実態だったんですが、SSも十分把握されていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

【細見委員長】 それでは、続いて田中委員から挙手があります。どうぞ。

【田中委員】 どうもありがとうございます。88年から負荷はかなり一所懸命削減されているというお話なんですが、最初に言われたように、この業界はかなり水をたくさん使われるということですよね。それは水の環境から水を多量に取られて、それで負荷は削減されていると思うんですが、回収率が88年からどのように、今、下がってきていて、ある程度の限界に来ているとすると、その辺はどういうところに問題があるのか、この理由、もし変化がこれ以上難しいということであれば、その理由も含めて補足いただけると有り難いんですが、よろしくお願いします。

【小川氏】 水の回収率ということなんですけれども、特にそれぞれの個別のデータまでは持ち合わせていないんですが、大型工場の場合は取水権というのを持っておりますので、ある意味、水を十分使える。その水を回収して排水量を下げるということをやれば、そういうことも多分に可能なんだと思いますが、その場合、濃度のほうが高くなるということで、総量規制上はあまり改善にはならないと考えております。

【田中委員】 ただ回収を進めるということは、何らかの処理をしますよね。そうすると、その段階で単純に物質だけが残るのではなくて、出ていく水量が減って、規制の値が決まるとすると、全体の負荷量としては下がるはずですよね。そういう今求められている持続可能なシステムにこれから変えていくときに、単に負荷量がどうかということだけではなくて、水も含めた全体の利用と排出というように業界として考えられるようなこともお願いしていきたいんですが。実態的に、今、回収率がどうなっているかという情報がなければ、後ほどその情報を出していただけると有り難いと思います。

【小川氏】 承知しました。

【細見委員長】 ぜひ、小川様におかれましては、回収率の情報が分かれば、また事務局から問合わせをさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 それでは、ほかの質問の方がなければ、次の話題に移りますが、よろしいでしょうか。

【小川氏】 先ほどの回収率の件なんですけれども、これは取水に対する排水量という考え方でよろしいんでしょうか。

【細見委員長】 田中委員、どうでしょうか。

【田中委員】 そうですね。マクロに見てどう変わるかということで結構だと思います。

【小川氏】 分かりました。ありがとうございます。

【細見委員長】 よろしくお願いいたします。

 これは私からの要望なんですが、最後のスライドで2011年のデータのように見えるんですが、もう10年近く前のデータなので、最近やられた情報も、もしありましたら、こういう調査というのは非常に確かに貴重だと思いますので、今後ともよろしくお願いしたいという要望でございます。

【小川氏】 この件、実は紙パルプ研究所というところが調査をやっておりまして、既にもう解散してしまっております。それで、これ以上の生物多様性のデータを収集するというのは、現段階では非常に難しいと考えています。

【細見委員長】 はい、分かりました。ありがとうございました。

 それでは、続いて水産業界の関係について御説明をお願いしたいと思います。同様に説明後、質疑応答を行います。

 資料3について千葉県漁業協同組合連合会の鶴岡様より御説明をお願いいたします。

【鶴岡氏】 千葉県漁業協同組合連合会で参事兼指導部長をしております鶴岡でございます。

 本日は本委員会におきまして東京湾の漁業、漁場環境について御説明させていただく機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。

 私は、千葉県漁連の職員ではありますが、東京湾は、千葉県、神奈川県、東京都の1都2県が共有する海面でありますので、この後、説明させていただきますが、この度、設立した東京都関係漁連・漁協連絡会議の事務局の立場で御説明させていただきます。

 まずは東京湾の漁協と漁場環境の1枚紙、表紙を御覧いただきたいと思います。これは東京湾の象徴的な漁業の一つでありますノリ養殖のノリ網の様子を写したものです。通常は左の写真のようにノリ網に黒々としたノリ芽がついておりますが、栄養塩が低下すると、右の写真のように薄茶色に色落ちしたノリになってしまい、製品価値のないノリになってしまいます。このような状況を踏まえて、東京湾の現状を漁業者の立場から資料に基づいて御説明させていただきます。

 次のページ、目次に書いてございますが、本日は、このことについて漁業の変遷、漁場環境の変遷、漁業の現状、漁業者の取組、漁業者の思いと要望、東京湾関係漁連・漁協連絡会議の6項目を柱に御説明させていただきます。

 1ページに、東京湾における漁業の変遷について記載してございます。

 東京湾は豊穣な海であり、江戸時代より漁業生産の場として利用されてきました。また、東京湾で漁獲される魚介類は「江戸前」と呼ばれ、種類の豊富さと味の良さから大きなブランドを形成してきました。現在、東京湾では、ノリやワカメなどの藻類養殖、アサリやハマグリなどの採貝漁業、スズキやカレイなどの漁船漁業が営まれています。

 このような中で、漁業就業者については、漁業センサスによると、左上段の東京湾内の漁業就業者数の推移のグラフで分かりますとおり、東京湾の1都2県の漁業者数は年々減少しております。具体的には統計上把握が可能となった1968年には2万3,454人いた漁業者が2008年度の調査では4,516人にまで減少しております。

 また、漁獲量につきましては、戦後急速に増加し1960年代には18万7,928tを記録して以降減少に転じ、1970年代当初には激減して4万t代、現在では2万tを下回る水準にあると推測されております。

 左下の東京湾内の魚介類漁獲量のグラフを見ていただければ分かりますとおり、特に藻類養殖と採貝漁業の漁獲量が急速に激減しております。この要因として、干潟・浅場の喪失や人為的な環境変化が影響しているのではと考えられ、東京湾漁業の長期低迷や更なる縮退が懸念されております。

 2ページは、東京湾の漁場環境の変遷について記載しております。

 一つとして、埋立による干潟・浅場の消失についてです。東京湾はかつて多種多様な魚介類を対象として、主に5m以浅の干潟・浅海域で漁業が営まれていました。1960年~1970年代に沿岸部で大規模な埋立が行われて、干潟・浅海域漁場の多くが失われました。このことは左側中段のグラフのとおりでございます。

 また、湾の面積の2割に当たる約2万6,000haが埋め立てられ、干潟面積は約8,000haが失われ、1950年代と比べると8分の1に減少しています。このことは右側の図のとおりで、黒く色が塗っておりますが、埋め立てられた場所となっております。これは特に湾奥で顕著に見られております。

 この大規模な埋立が行われた背景には、経済活動の活発化や人口増加といった要因があり、このことにより産業排水や生活排水の増加などにより赤潮や貧酸素水塊が頻発し、魚介類の弊死や漁獲量の減少を引き起こしてきました。

 3~5ページにかけて貧酸素水塊について記載しております。

 貧酸素水塊は多くの閉鎖性水域で恒常的に見られる現象ですが、東京湾においては深刻で、重要な漁場環境問題となっております。この貧酸素水塊の発生の仕組みを3ページに記載しておりますが、このことにつきましては、先生方には既に御承知のことと思いますので、詳細な説明は割愛させていただきますが、簡単に説明すれば、赤潮などにより斃死したプランクトンが海底に沈み、それをバクテリアが分解するときに酸素を消費するため、海底に貧酸素水塊ができます。それが風の影響等を受けて底層から表層に沸き上がった状態、これが青潮となります。

 4ページの右側に月別の貧酸素水塊の規模のグラフを載せてありますが、この貧酸素水塊の発生は気温が上がる夏場から初秋にかけて規模が大きくなります。

 また、5ページには東京湾の季節別の貧酸素水塊発生状態の図を載せてあります。この図を見ても分かりますとおり、気温の上昇とともに溶存酸素量が少ない青色の部分が増えており、特に湾奥で顕著になっております。それにより魚の生育域が分断され、移動も制限されます。東京湾において貧酸素水塊の影響は大変大きいものとなっております。

 6ページに東京湾の漁業の現状を記載しております。

 東京湾では、1都2県の漁業者が操業しておりますが、主な漁業種類としましては、ノリ養殖業、採貝漁業、潜水器漁業、漁船漁業の巻き網漁業、小型底引き網漁業、アナゴ筒漁業などが営まれています。

 7~11ページにかけて、それぞれの漁業種類別の現状を記載しております。

 初めに7ページです。千葉県のノリ養殖の現状でございます。

 令和元年度時期の生産実績ですが、枚数としては8,400万枚で、例年4割減、金額につきましては13億5,000万円で、前年比3割減となり、5年連続の不作で、枚数・金額とも過去最低を更新している状況でございます。

 また生産者数は152名で、15年前の3分の1以下となっており、今年度の漁期におきましても廃業される方が複数名いると聞いております。

 また、1人当たりの生産量は、平成26年度までは、生産性の向上もあり、増加傾向にありましたが、平成27年度以降は不作になり80万枚程度に減少し、令和元年度は55万枚と、悪かった前年比の3割減となってございます。

 8ページを御覧ください。ノリの不作の原因につきましては、いろいろな要因が複合して起きていると考えられますが、主な要因として、栄養塩不足による色落ち、漁期中を通じての高水温、クロダイ等による食害が考えられます。この中でも栄養塩不足につきましては、ノリ漁場付近で漁期後半、2月、3月、4月頃まで漁期が続きますが、その後半において特に顕著になっております。そのため、後半にはこの写真のような、ノリの色落ちなどを引き起こす原因となってございます。

 9ページに、採貝漁業の中でも主体となるアサリ漁業の千葉県の現状を記載しております。

 令和元年度漁期の生産量は66t、金額にして2,700万円となっております。長期的に減少傾向も平成16年までは約8,000tありましたが、以降は大きく減少し、近年では更に減少して最低レベルになっております。

 アサリの減少要因につきましては、海域環境の変化、カイヤドリウミグモの寄生、食害の拡大など、複数の要因が絡んでいるものと考えられております。

 10ページに漁船漁業の現状を記載しております。

 東京湾では、小型底引き網、まき網、アナゴ筒、定置網漁業などが営まれ、スズキ、カレイ類、マアナゴ、マダコなどが漁獲されております。

その中でも隻数の多い小型底引き網漁業者では、神奈川県の同業者と協調して資源管理に努めていますが、資源管理計画を策定して取り組んでいても、漁獲の回復には至っていないというのが現状でございます。

 11ページは神奈川県の漁業を記載しておりますが、神奈川県におきましても、魚類の漁獲量の減少は著しく、カレイ類やシャコ、アナゴ類など底生生物を餌にしている魚種の減少が著しいようです。それと水産資源の餌料環境が大幅に悪化したことも懸念されており、夏季の貧酸素との関連も指摘されているところでございます。

 12ページは、漁業者の取組について記載しております。

 漁業の現状のところでお話ししましたとおり、東京湾の漁業は全ての漁業種類において大変厳しい状況にあります。そのため、漁業者も自分たちでやれることをやっていこうという思いで、いろいろな取組を行っております。囲い網や被覆網の設置によるアサリ等の稚貝の保護・育成やクロダイ等による食害被害対策、カイヤドリウミグモ・ツメタガイの駆除、アオサ駆除、秋冬季の稚貝保護のための砕石覆砂、海底耕うんや放流事業、河川から流れてくる流竹木も異常なほどの量で、操業に支障を来しているため、その撤去も漁業者自身で行っております。稚魚の育成場を作るアマモ場の造成も行っております。

 このような取組はかなりの労力を使うため、漁業者の高齢化や減少により、その活動も今は大変厳しい状況となっております。

 13ページにこのような現状を踏まえして、これからの東京湾漁業を支えていく漁業者の思いと要望を記載してございます。

 一つ目は、海がきれいになったが、魚が獲れないということです。漁業者の実感として、確かに東京湾は昔に比べてきれいになったと思います。しかしながら、きれいになったことで魚やタイやノリが生息、生育するような豊かな海ではなくなってしまった、海の生産力として落ちているのではないかと考えます。多様な生物をはぐくむ海にしてほしいというのが思いです。

 二つ目は、迅速な対策をお願いしたいと言うことです。海の生産力の低下は、既に限界まで来ていると感じています。このままいけば、漁業は廃業せざるを得ない漁業者がたくさん出てきます。河川から流れてくる下水処理排水、栄養塩類、残留塩素など、また、高水温の影響など様々な影響が考えられると思いますが、豊かな海に向けての環境基準や管理手法、効果的な対策を早急に講じていただき、浅場造成などの現在の取組も含めて進めていただきたいと思います。

 こういった漁業者の思いを受けまして、下段でございますが、東京湾に接する1都2県の漁連と関係漁協を構成員とする東京湾関係漁連・漁協連絡会議を令和2年4月に設立いたしました。この組織を中心に東京湾の環境に関する現状や課題など、情報を共有しつつ、豊かな海の実現を目指し、漁業者からの情報発信力を強化、対策に向けた取組を推進していきたいと考えております。

 本日御出席の委員の皆様には、これまで説明してきました漁業者の思いをぜひとも汲み入れていただければと思っております。

 簡単ではございますが、説明は以上とさせていただきます。御清聴、ありがとうございました。

【細見委員長】 どうもありがとうございました。

 ただいまの資料3の説明に関しての御意見、御質問をお願いいたします。

 三浦委員、どうぞ。

【三浦委員】 全漁連の三浦でございます。ただいま千葉県漁連さんからのヒアリングがあったところでございますけれども、この問題というのは、東京湾だけではなくて、伊勢湾、三河湾、そして瀬戸内海でも栄養塩の減少によるものと思われるノリの色落ちですとか、それから、アサリ、マアナゴ等々の漁獲量の減少というものが、近年、大きな問題となっているところでございます。

 そうした中、特に伊勢湾では沖合の透明度の上昇に伴ってノリの色落ちの発生が多くなってくるとか、それから、イカナゴ等々につきましては、近年、漁獲量が大幅に減少し、4年間連続禁漁措置と厳しい状況が続いているところでございます。

 改めて陸域負荷、栄養塩が、海の生物の多様性ですとか、それから生産性にどのような良い影響を与えているのか、そしてまた、どのような悪い影響を与えているのか等々整理をしていただいた上で、どの程度の、COD、そして全窒素、全りんの負荷量が望ましいのかを含めまして、総量削減の議論をお願いしたいと、漁業界から思っているところでございます。

 そして、また、必要があれば、陸域の栄養塩等々の負荷と、それから海の生物との関係性に詳しい専門の方々の意見を聞く、そのような場を設けるなどの対応もお願いしたいと考えているところでございます。

 以上でございます。

【細見委員長】 今のは質問というよりは要望ですので、次の質問に移りたいと思います。いかがでしょうか。

 西村委員、手が挙がっています。

【西村委員】 西村です。どうも御説明、ありがとうございました。8ページのノリの養殖不作の原因について伺いたいんですが、要因として栄養塩不足の次に高水温というのを挙げられていますけれども、水温がノリの不作に直接的に影響を及ぼすとお考えになっているのか、あるいは、恐らく、東京湾の以前の研究では水温が上昇して珪藻の赤潮が発生して栄養塩不足になったというような研究もあったかと思うんですが、水温の影響について、実感的なものでも結構なんですが、どのように海の生態系に影響を及ぼしているとお考えになっているか、教えていただければと思います。

【鶴岡氏】 今の水温の高水温のことでございますが、やはり、ノリというものは生産期は寒い時期のものでございますので、水温が上がるということは、それに伴う病気の発生ということにつながっております。昨年度も年末に病気が蔓延してノリが駄目になったというような現状がありますので、今の高水温というのは一つの病気等の原因と考えられております。

【細見委員長】 西村委員、よろしいでしょうか。

【西村委員】 はい、どうもありがとうございます。

【細見委員長】 ほかに質問、御意見ございますでしょうか。

 田中委員、どうぞ。

【田中委員】 どうもありがとうございます。1点だけ教えてください。13ページ目に要望事項の中で(2)で、突然、残留塩素のお話が入っているんですが、これはどういうことが問題と考えられて、具体的に何に影響が出ていると考えられているか補足をお願いします。

【鶴岡氏】 残留塩素につきましては、今回の話とは少し別な角度になってしまうかもしれませんが、東京湾につきましては、いろいろな周りに企業さんなり生活圏もありますので、こうしたことでの排水という意味につきましては、ほとんどが塩素殺菌という形で殺菌されていると思います。その塩素の水が海に流れることによって、それが生物に悪影響を及ぼすのではないかということが、今、県内で大きな問題の議論の一つとなっておりまして、できるだけ、我々としては、なかなか難しいですけど、塩素殺菌ではなくて紫外線殺菌だとか、いろいろもう少し別の殺菌方法を考えられないかとか、そういった考え方を今持っているところでございます。

【田中委員】 ありがとうございます。分かりました。

【細見委員長】 ほかに質問はありますでしょうか。

 黒木委員、どうぞ。

【黒木委員】 水産研究・教育機構の黒木でございます。漁業者の思いと要望というところに関連してお伺いしたいんですけれども、海がきれいになってきたけど魚が獲れないという部分に関し、御紹介いただきましたアナゴとかシャコとかカレイ類、非常に減少が著しい中で、タチウオであるとか、スズキといった増えている魚種もあるかと思うんですけれども、そういうものも含めて全体として獲れないという認識で間違いないかということをお伺いしたいと思って質問しました。よろしくお願いします。

【鶴岡氏】 確かに今、お話がありましたとおり、タチウオとか、獲れている魚種もありますが、永続的にこれが獲れていくのかというと、今後不確定な状況でございます。総体的に見れば、ほとんどの魚、貝、ノリも含めて、水揚げが悪いというのが現状でございますので、そこがこういった環境問題につながってくるんじゃないかと考えております。確かに獲れているものもありますけど、これが果たして環境と関係ないのかどうかということも分かりませんし、一時的なものではないかということとして我々は整理しております。

【黒木委員】 ありがとうございました。トータルでこれから調べていかなければいけないということで、我々も認識しております。ありがとうございました。

【細見委員長】 どうもありがとうございました。

 私からもぜひ、減った魚種ばかりではなくて増えた魚種、あるいは貝類も、アサリは極端に減っているかもしれませんけれども、増えた貝類も恐らく千葉県の漁港に行くと、あるような気もしますので、その辺の情報を提供していただければ有り難いと思うんですけれども、そういうのは無理でしょうか。

【鶴岡氏】 実際に細かい品目別とか、それは調べることはできます。

【細見委員長】 ぜひ、よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。

 次の東京湾の関係都県から御説明をお願いしたいと思います。

 千葉県と東京都と2件続けて御説明していただいた後にまとめて質疑、応答をしたいと思います。まず、資料4の千葉県の小泉副課長より御説明をお願いいします。

【小泉副課長】 千葉県水質保全課の小泉と申します。よろしくお願いいたします。

 私からは、資料4、東京湾における総量削減の現状等及び漁業の状況について御説明いたします。

 千葉県は三方を海に囲まれておりまして、東京湾、それから太平洋側九十九里、南房総の海域では重要な漁場となっているほかに、海水浴場、それから東京オリンピックのサーフィン会場となっております釣ヶ崎海岸などの海岸では、様々なレクリエーションの場として、県民のみならず首都圏から多くの方々に利用されているところでございます。

 東京湾は、大きく富津岬を境に北側は内湾、南側は内房海域と呼んでおりまして、内湾につきましては、先ほど東京湾関係漁連・漁協連絡会議さんからもお話がありました、昭和30年度以降、大部分の干潟・浅海域が埋め立てられておりまして、現在は三番瀬とか盤洲、富津に干潟が残っているという状況でございます。

 これらの漁業の現状、取組につきましては、先ほど、東京湾関係漁連・漁協連絡会議さんから詳細にお話がありましたので、私からは水質汚濁の現状、それから、取組を中心にお話しさせていただければと思います。

 資料1枚目に、東京湾のうち千葉県における総量規制の現状についての表をまとめさせていただいております。

 本県では昭和55年3月に第1次の総量削減計画としてCODを対象として、平成14年7月の第5次の総量削減計画からは窒素、りんを追加いたしまして、現在、平成29年6月に策定いたしました第8次の計画に取り組んでいるところでございます。

 この表につきましては、千葉県域から流入する上からCOD、窒素、一番下がりんの削減の削減目標と平成30年度の汚濁負荷量をまとめております。

 経年変化につきましては、4枚目の左上に参考という括弧で書いてあるグラフを御覧ください。上のグラフはCODの負荷量の推移でございます。第1次計画の終期である昭和59年度が1日当たり65.1t、直近のデータは平成30年度でございますが、29.9tまで減少している状況でございます。

 内訳を見ますと、一番下の白い囲みの部分が生活系で、下水道や合併処理浄化槽の普及等に伴いまして大幅に減少しているという状況でございます。それから、その上、真ん中の赤い点の部分が産業系となっております。生活系ほどではありませんが、こちらも徐々に減少している状況にございます。

 最初の総量削減計画が策定されたのが昭和55年でございますので、それ以前からも水質汚濁防止法の上乗せ規制や、京葉臨海コンビナートの企業さんとは環境保全協定を締結して、既にCOD削減に取り組んできたということでございまして、この部分は緩やかな減少というような形になっているのかなと考えております。

 真ん中のグラフ、窒素でございますが、1日当たり53tから30t、下のグラフはりんでございますが、同じく第1次のときの1日当たり4.1tから1.8tと、いずれも半減している状況でございます。

 内訳を見ますと、産業系は平成11年から16年にかけて大きく減少しているというようなところでございまして、総量規制の効果が出ているのかなと考えられます。生活系につきましても、白い部分ですが、下水道の高度処理化などによりまして順調に下がってきているということがうかがえます。

 このようなことから、これまでの濃度規制に加えて、汚濁物質の排出を総量で削減していった取組を東京湾流域の自治体で一斉に実施した結果、一定の効果が得られているのかなと考えております。

 (2)の海域の水質経年変化を御覧ください。このグラフは上からまた同様にCOD、窒素、りんの経年変化でございます。千葉県沿岸の代表的な測定地点をプロットしておりまして、東京湾の奥側から青、赤、黄緑色の位置関係になっております。それぞれ青色は京葉コンビナートの北側、千葉市の沖のところ、それから赤色が東京湾内湾のほぼ真ん中、黄緑のところはアクアラインと赤の地点の中間になります。全ての地点で長期的に見ますと改善傾向にあるということですが、CODについては最近では少し横ばいの状況が続いているのかなということでございます。

 次のページ(3)といたしまして、東京湾の環境基準達成率の推移でございます。平成18年度からまとめておりますが、CODの達成率はほぼ5割前後で推移しているということ、それから窒素、りんにつきましては、近年はほぼ環境基準を満たしている状況にございます。

 続きまして、その下の表でございます。赤潮・青潮の発生状況でございますが、赤潮につきましては毎日測定しているということではございませんが、年間を通じて水質測定計画に基づく調査であるとか、県の環境研究センターの調査に併せて確認をしております。昨年度は延べ47日間調査しまして、そのうち13日で赤潮が確認されております。割合は28%となっており、近年ほぼ横ばいの状況でございます。

 その下が青潮になりますが、先ほど東京湾関係漁連・漁協連絡会議さんの説明中でもグラフがありました。ここでカウントしているのは一部の港とか航路よりも少し広い範囲で青潮が発生した回数をまとめております。発生回数は変動がありますが、過去から継続して発生している状況でございます。

 大きな漁業被害につきましては、直近では平成26年8月に発生した青潮でアサリの被害の報告がありました。

 それから、県の水産総合研究センターでは、関係機関と協力いたしまして、貧酸素水塊の状況を調査して、週1回、速報として情報提供しています。これに加えまして、貧酸素水塊の予測システムで推計された貧酸素水塊の分布状況につきましては、6時間おきに情報提供しているところでございます。

 まとめますと、8期にわたる総量削減計画によりまして、東京湾の水質というのは、長期的には改善の傾向にあるということで、CODの環境基準の達成率は、残念ながら40~60%の推移ということと、依然として青潮の発生が確認されている状況でございます。

 次に、総量削減計画の主な取組としまして、3点ほど。

 一つ目としましては、生活排水対策です。これは、他都県さんも同様に行われているということではございますが、下水道の整備促進や高度化を進めているということでございます。処理人口の推移は、表にまとめさせていただいております。

 それから、より高性能な高度処理型合併処理浄化槽、いわゆるN10型の設置に関しましては、県の独自の上乗せ補助などを行いまして、高度処理型合併処理浄化槽の整備の促進を図っているところでございます。

 産業系の排水対策につきましては、先ほど申し上げましたが、上乗せ条例を制定しまして、生活項目の上乗せ基準を適用し、また、水濁法で規制される排水量の規模を30立米/日に引き下げたりするなど、そういった取組も行っております。

 それから、総量規制地域に指定されています東京湾流域の21市町の特定事業場の数ですが、30年度末では、511事業場で、その30年度には、延べ330程の事業場に立入り調査を実施しているところでございます。

 また、千葉市から富津にかけて京葉臨海コンビナートには、鉄鋼、電力、石油精製、化学工業を中心としました企業群が立地しておりますので、今現在52社60工場さんと環境保全協定を締結しまして、法や条例より厳しい排水基準を遵守していただいているというところでございます。

 あと、水濁法の特定施設にならない飲食店につきましては、小規模事業場の指導マニュアルというものを県の環境研究センターと作りまして、適切な排水対策の確保を図っているところでございます。

 最後のページ、先ほど資料の報告がありましたけれども、ここでは、東京湾内湾の内房の干潟、浅場、藻場の位置関係を図として載せてあります。今、東京湾の内湾の北から主に三番瀬、盤洲干潟、富津干潟、それから内房沿岸での浅場、岩礁性の藻場というところと、図に書かせていただいております。アサリやノリ漁場、魚類の産卵場、育成場としての重要な役割を担っているということで、囲みに入れさせていただいております。上の表は、トータルになりますが、平成21年度以降の漁獲量を載せてございます。年による変動は大きいのですが、減少の傾向にあるのかなというところです。

 まとめとしましては、東京湾は以前と比べまして、かなりきれいになってきたというところではございますが、CODの環境基準の達成には至っていないということで、依然として赤潮、青潮の発生が確認されている状況となっております。東京湾再生推進会議の全体目標であります、快適に水遊びができて、江戸前をはじめ多くの生物が生息する親しみやすく美しい海を取り戻し、首都圏にふさわしい東京湾を創出するという目標をベースといたしまして、水質の改善を引き続き進めていただくこととともに、生産力の高い豊かな海を実現する効果的な取組も推進していただけたらと考えております。

 以上でございます。御清聴ありがとうございます。

【細見委員長】 どうもありがとうございました。続いて資料5について東京都の清野課長から御説明をお願いいたします。

【清野課長】 東京都環境局自然環境部水環境課長の清野でございます。東京都における汚濁負荷削減対策と水質改善の取組について、資料5に基づきまして、御説明させていただきます。

 資料2ページを御覧ください。東京都は、島しょと相模湾に注ぐ境川流域である町田市の一部を除いた全域が、いわゆる東京湾流域でございます。また、その人口は、都全体では推計で約1,400万人に達しております。その汚濁負荷を削減する取組のうち、生活排水対策といたしましては、まず下水道の整備等についてです。下水道普及率は、既に概成100%を達成しているところではございますが、引き続き未普及地域における普及促進を図るとともに、下水処理場における施設の維持管理の徹底等により、排水水質の安定及び向上に努めているところです。

 そして、窒素及びりんの汚濁負荷量の更なる削減を図るため、高度処理等を導入するほか、既存施設において設備改良と運転管理の工夫により、窒素、りんを除去する処理方式、準高度処理、国では段階的高度処理という名称ですけれども、これの導入を順次進めております。

 また、雨天時の合流式下水道からの越流水に起因する汚濁負荷を削減するため、降雨初期の特に汚れた下水を貯留する施設の整備などを進めており、区部において平成30年度末の段階で累計約120万立方メートルの貯留施設の整備が完了しています。このほかの生活排水対策といたしましては、下水道に接続できない地域におきましては、合併処理浄化槽等の生活排水処理施設の整備、処理の高度化及び施設の適正な維持管理、一般家庭からの生活排水による汚濁負荷量を削減するための普及啓発等を引き続き推進しております。

 資料3ページを御覧ください。続いて、産業排水対策についてですが、まず総量規制対象事業場に対する対策といたしましては、排水水質の実態、排水処理の技術水準等を考慮して、総量規制基準を設定しております。そして、その遵守を求め、水質汚濁防止法及び条例、これは都民の健康と安全を確保する環境に関する条例、略称として環境確保条例と申しますけれども、これに基づいて立入検査等を行い、基準への適合状況の確認・指導等を実施しております。

 都内には、約100の総量規制の対象事業場がございますが、立入検査はその排水量や状況等に応じて適宜、頻度や内容に強弱をつけて実施しております。例えば、施設の変更の有無や稼働状況、自動計測器の管理状況の確認、水質検査の実施による規制基準への適合確認などを実施し、排水処理施設の維持管理の徹底を指導しています。なお、基準超過時には原因となる状況及び改善措置について報告を求めるなどの指導を行っております。

 また、指定地域内の総量規制基準が適用されない小規模特定事業場等については、水質汚濁防止法及び環境確保条例に基づき、立入検査等により濃度規制の徹底を図っています。

 その他の汚濁発生源に関わる対策につきましては、それぞれの法令等により削減に努めているところでございます。

 資料4ページを御覧ください。水環境の改善を推進するためには、施設の整備や事業者への規制といった対策のみならず、関係自治体が広域的に連携するとともに、都民及び事業者の皆様の御理解、御協力を得ることも不可欠です。都内の河川や東京湾の水質などの状況を監視するため、東京都においても水質汚濁防止法第16条の規定に基づき、国土交通省、八王子市、町田市と分担して、水質測定調査を実施しており、その結果を取りまとめて環境基準の達成状況やデータ等をホームページで公表しています。

 東京湾では、春から秋にかけて赤潮が発生いたしますが、東京都で実施しております赤潮調査結果につきましても、速報をホームページ上で随時更新するとともに、取りまとめ結果をホームページに掲載するなどして、積極的に情報を発信しています。

 また、九都県市首脳会議の環境問題対策委員会の水質改善専門部会では、千葉県、東京都、神奈川県、横浜市、川崎市が実施した東京湾の底質調査や、浚渫の実施状況、そのほかについて東京湾の底質調査結果として取りまとめるとともに、東京湾の現状を知ってもらい、どうすればきれいになるかを目的とした広報資料を作成し、普及啓発などにも努めています。このほか、様々な主体と連携して、広域的な取組も推進しています。

 5ページを御覧ください。東京湾岸に面する1都2県16の市、一つの町及び六つの特別区の26自治体で構成する東京湾岸自治体環境保全会議では、千葉県、東京都及び神奈川県が実施した水質測定調査の結果などを取りまとめた東京湾水質調査報告書をホームページに掲載したり、住民への環境保全に係る様々な普及啓発を実施しています。こちらの写真は、昨年度東京湾大感謝祭に出展したときのものです。東京湾再生推進会議では、東京湾の再生に向けて国の関係省庁、流域の関係地方公共団体が連携し、陸域や海域ごとに検討を重ね、構成メンバーが取り組むことをまとめた「東京湾再生のための行動計画」を策定し、取組を推進しています。

 また、東京湾再生官民連携フォーラムでは、公官庁、民間企業、NPOなど多様な主体が連携して、東京湾をテーマとして活動を行うとともに、東京湾再生に向けた総意を取りまとめ、先ほど述べました東京湾再生推進会議への政策提案を行っています。

 資料の6ページを御覧ください。このほかの東京湾の環境改善に向けた取組でございますが、1点目の取組といたしまして、底質汚泥による水質の悪化及び悪臭の発生を防止するため、東京港湾奥部の運河を中心に堆積有機物をはじめとする底泥の除去、汚泥浚渫などを実施しています。平成27年度から30年度にかけましては、江東地区、芝浦地区、羽田地区を中心に、年間2万7,000立方メートルから4万2,000立方メートルの汚泥浚渫を実施しております。

 2点目の取組といたしましては、水辺の自然環境の保全・再生についてです。水生生物をはじめとした多様な生物の生息環境を創出するため、海浜、浅場等の創出・整備を行

うとともに、自然の浄化機能を生かした水辺環境の保全・改善にも努めております。

 資料の7ページ、8ページに整備例をお示ししてございます。7ページ、上の左及び真ん中の写真は、狭い運河部の護岸上に設置したミニ干潟・磯場でございます。また、左側中ほどの写真は、大田区にある東京港野鳥公園の干潟でございます。こちらにつきましては、平成29年度に約11ヘクタールの干潟の拡張工事を完了したところでございます。

 一番右上の写真は、平成元年度に整備、開園した葛西海浜公園でございます。荒川と旧江戸川の河口に広がる場所にございまして、東西二つの渚がございます。東なぎさとその周辺海域は、平成30年に東京都で初めてラムサール条約湿地に登録されました。

 その下の二つの写真は、荒川河口の先にある若洲海浜公園と中央防波堤沖に整備した磯浜のものです。また、左下の写真は、羽田沖に整備した浅場の写真でございます。

 8ページに、前のページで紹介しました羽田沖浅場の写真を参考につけさせていただいております。現地調査した際には、アサリ、シジミ、ホンビノス貝等が確認されたとのことです。

 雑駁ではございますが、東京都における取組内容の説明は、以上でございます。

【細見委員長】 どうもありがとうございました。

 それでは、ただいまの資料4と5の説明に関する御質問、御意見をお願いしたいと思います。挙手をお願いいたします。

 平沢委員、どうぞ。

【平沢委員】 どうもありがとうございました。後半の東京都の方に一点お聞きしたいんですが、合流式下水道での汚水対策は非常に重要だと私は思っておりますが、平成30年度までに120万立米の貯留槽をつけたというお話でございましたけれども、その効果、どのくらいのCOD、N、Pの除去効果、あるいは東京湾への水質の影響、その辺の調査は、あれば教えていただきたいんですが。

【清野課長】 越流水の実態は一定の計算式に当てはめて考えることが難しいため、定量的には把握ができていない状況でございます。

【平沢委員】 大体どのくらいの負荷かという見積りもできないということですか。

【細見委員長】 清野様、恐らく担当が水環境と下水とは少し違うのかもしれないので、もし下水道の関連部局に今の平沢委員の質問に対して答えられることがあったら、調べていただくことは可能でしょうか。

【清野課長】 確認いたします。

【細見委員長】 よろしくお願いいたします。平沢委員、今すぐ即答するのは難しいと思いますので、御理解のほど、お願いします。

 あと、挙手があるのは、小川委員と風間委員で、まず小川委員からどうぞ。

【小川委員】 千葉県の資料について一点だけ質問させていただきたいと思います。この数年間、大分削減量が横ばい状態になってきており、生活排水がかなりの割合を占めているということは実態としても理解しております。その対策として、下水道浄化槽の高度処理化という計画を立てられているんですが、千葉県の場合、浄化槽の設置基数が非常に多いです。その中でも特に単独処理浄化槽がかなりウエートを占めていると思いますが、それに対する対策というのは、どのように立てられているんでしょうか。特に、今年度浄化槽法が一部改正されて、単独転換という部分について重点を置かれた内容が示されておりますので、その対応をしないとやはり未処理放流が続いている単独処理浄化槽に対しては、この生活排水に伴う負荷量削減にかなり大きな影響を及ぼすと思います。その点はどうなんでしょうか。よろしくお願いします。

【小泉副課長】 千葉県の小泉です。今お話しいただきました件ですが、先ほど少し資料の中で口頭でお話をさせていただきました。閉鎖性水域につきましては、より高性能な合併処理浄化槽の普及のため、上乗せ補助を行ったりとか、小川委員御指摘の昔設置された単独浄化槽もありますので、そういったものの転換につきまして、国の転換補助に併せて、県も転換補助を出すなど、そういう取組で、転換に向けて推進しているところでございます。

 あと、単独処理浄化槽や汲み取り便槽につきましては、30年度から転換の工事費だとか、配管費などの補助を出しておりまして、この後、環境省さんからもお話がありますが、国も補助を出すというような形で、そういった転換につきましても、工事費等につきましても、補助を出して推進しているというような状況でございます。

【小川委員】 ありがとうございました。何分にも設置基数が相当数あると思いますので、大変だと思いますがよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

【細見委員長】 それでは、風間委員どうぞ。

【風間委員】 風間です。東京都の方にお聞きしたいんですけども、先ほどの平沢委員のお話と類似の内容になりますが、雨天時越流水が総量削減の年間負荷に対してどの程度であるかということを東京都で把握されているかということをお聞きしたかったんですが、それは先ほど平沢委員もおっしゃったんですが、そのほかにそういった発生のほうではなくて、施策に対しての評価という視点で、モニタリングの視点から何らかの把握をなさった実績がおありでしょうか。ちょっとお聞きしたいと思いました。

【細見委員長】 清野さん、どうでしょうか。

【清野課長】 今そういったことがあるかどうか分かりませんので、確認して、またそちらについても回答させていただきたいと思います。

【細見委員長】 ありがとうございます。風間さん、それでよろしいですよね。

【風間委員】 お願いします。

【細見委員長】 今回も含めてですけれどもヒアリングをさせていただいて、いろいろ質問をされています。それで、担当者の方は全てを詳細に把握されているわけではないと思いますので、後ほど環境省も含めて事務局からまた問合せもして、質問事項で答えられるデータ等については、次回や、次々回のこの専門委員会で紹介させていただきたいと思いますので、本日は質問だけで終わるときもあるということで、御容赦願いたいと思います。

 ほかに、質問、御意見ございますでしょうか。

 ないということですので、どうもありがとうございました。

 続いて、伊勢湾の関係県から御説明お願いしたいと思います。愛知県と三重県です。2県続けて御説明していただいた後に、まとめて質疑を行います。

 それではまず、資料6について愛知県の松下課長補佐、黒田様、蒲原様より御説明をお願いいたします。よろしくお願いします。

【松下課長補佐】 愛知県環境局水大気環課の松下と申します。愛知県からは資料6、愛知県における海域環境改善の取組と課題について、これに基づきまして説明させていただきます。

 2ページ目を御覧ください。本日はここにお示しした内容について、順次説明いたします。なお、本県の課題の一つである水産生物関連については、まとめの後に補足事項として御説明いたします。

 3ページを御覧ください。まず、海域環境改善の主な取組です。主な施策の概要を示しております。陸域における汚濁負荷量の削減については、法規制対象の約1,600事業場に対して排出規制を行っております。また、生活排水対策として、下水道整備、合併浄化槽への設置、転換等を促進し、汚水処理人口普及率は、2018年度で91%となっています。

 また、海域環境の改善として、干潟、浅場の再生、覆砂、浚渫等を、啓発事業として、典型的な閉鎖性水域である三河湾について、地域における環境再生の機運向上のため、NPO、事業者、行政が一体となったプロジェクトを実施しています。これらについて、順次御説明いたします。

 4ページを御覧ください。COD、窒素、りんの総量削減の実績を御説明します。長期的に見ますと、汚濁負荷量の削減は順調に進んでいます。第8次計画の目標年度である2019年度は、現在集計中でございます。第8次計画期間中、CODは2018年度に、窒素は直近4か年度において計画の策定目標値を達成していますが、りんは目標値4.4tに対しまして、2018年度4.6tで未達成の状況となっております。

 5ページを御覧ください。次に、海域における環境改善事業です。海域の環境改善に重要な役割を果たす干潟・藻場は、開発によって1970年頃までに多く失われました。これは、左下グラフの示すように、干潟の場合、約2,600haがなくなり、右上グラフのとおり、この消失時期に合わせて赤潮が急増しております。干潟・浅場が海域環境の再生に必要不可欠であり、これらの再生事業が国・県として実施されてきました。

 6ページを御覧ください。この図は、干潟・浅場の造成事業の実績を示したものです。消失した干潟・浅場の造成には、シーブルー事業と県独自の事業により、これまで約690haの造成がされております。この効果については、底泥からの栄養塩類の溶出抑制等が図られ、底質改善と生物相の増加傾向が確認されています。

 7ページを御覧ください。次に、啓発事業として、地域が一丸となって海域環境改善の機運を盛り上げる取組の一つを御紹介します。本県では、三河湾環境再生プロジェクトを2012年から実施しています。地域固有の自然環境とともに、豊かな漁場、海水浴、潮干狩り等のレクリエーション、レジャーも盛んで、地域の宝となっている三河湾について、再生の目指すべき姿として、きれいな海、豊かな海、親しめる海をスローガンとして掲げています。2013年策定の行動計画を基に、企業、NPO、行政などから構成される三河湾環境再生パートナーシップ・クラブを設立し、これとは別に応援していただけるサポーター、約1,900名が参加して、環境再生の取組を促すものです。下の写真のとおり、毎年数千人規模のイベント開催をはじめ、各地での生き物とのふれあいイベント、環境学習会、PRイベントを開催し、多くの参加者に里海の大切さ、重要さを理解していただき、地域の取組の活性化を進めております。

 8ページを御覧ください。次に、水質等の現状でございます。グラフは、環境基準の達成率の経年変化を示しております。長期的には改善傾向でございます。最近5年間では、河川のBODは90%以上、海域ではCODは45から64%、全窒素は83%となっており、全りんについては、直近2年連続で達成しています。

 9ページを御覧ください。こちらは、伊勢湾、三河湾の測定項目別の推移でございます。最近10年間の傾向について申し上げますと、3項目はおおむね横ばいですが、伊勢湾のCODが緩やかな増加傾向、三河湾の全りんが緩やかな低減傾向が見られます。

 10ページを御覧ください。次に、水域ごとの窒素、りんの推移でございます。伊勢湾が上段、三河湾が下段となります。特に、右下に示した三河湾の全りんについては、3水域とも同様に、緩やかな低減傾向となっています。

 11ページを御覧ください。次は、伊勢湾、三河湾における赤潮、苦潮の発生状況です。左図に示すとおり、両方とも湾奥で発生していますが、青色で示した苦潮は、三河湾の湾奥で起こりやすい状況となっています。また、折れ線グラフで示す赤潮は、延べ日数では長期的には横ばいで、最近は増加傾向、青い棒グラフで示す苦潮の発生件数は、年により変動が大きい状況となっております。

 12ページを御覧ください。このような水質状況を踏まえた総量削減に関する現状と課題です。COD、窒素については、第8次計画の削減目標値を達成していますが、環境基準が未達成の地点が存在しており、達成率の向上が課題です。一方、りんについては削減目標値においては未達成ですが、環境基準は最近5か年度中、3か年度で全地点での達成がなされています。環境基準は、一つの指標ではありますが、目指すべき行政目標であり、特にりんについては負荷量の削減のみを重視した方針ではなく、総量規制の効果を詳細に検証した上で、削減目標量の検討が必要であると考えています。

 13ページを御覧ください。更にもう一つの課題として、水産資源の点でのアサリの漁獲量等の低下があります。全国有数の産地である本県産のアサリが、2017年度には2013年度の10分の1に、特に主要産地である三河湾の西三河地区は100分の1に大きく減少する事態となっております。この改善策としては、下の表に示すとおり、2017年度から県管理の広域下水処理場2か所において、秋・冬のりん濃度を増加させる試験運転を実施しております。こうした水産生物の状況については、後ほど補足事項を御説明させていただきます。

 14ページを御覧ください。まとめでございます。愛知県としては、伊勢湾、三河湾が豊かで、きれいな海を目指すという観点から、今後も地域一丸となって海域環境の再生に向けて取組を進めてまいります。こうした観点から、環境基準や赤潮、苦潮発生状況等の状況を検証し、科学的な知見を踏まえた汚濁負荷削減の効果的な施策の推進が必要と考えます。

 また、豊かな海の再生の点では、水産資源、漁場での必要な栄養塩濃度を確保するために、下水処理場の季節別運転管理等による栄養塩濃度の適切な管理を、更には、適切な栄養塩の管理を踏まえた総量削減目標量の設定が必要と考えております。

 続いて、水産資源の点から御説明いたします。

【黒田愛知県漁連副会長】 愛知県漁連の黒田でございます。以前のアサリは身入りがよくて、丁寧に扱わないと殻が割れるほどでございました。しかし、数年前から旬の春においても身が痩せるようになり、最近では冬に死んで漁場に残らないようになりました。全国一位の愛知県のアサリ漁獲量は、平成25年度に1万6,000tありましたが、平成29年には1,600tと10分の1になりました。生産額も46億円から8億円と激減をいたしました。漁場では、アサリの餌となるプランクトンが少ないことを実感をいたしております。ノリは栄養塩の低下により、色落ちが発生して、過去より終了時期が1か月早まる等が原因で、平成17年度から平成29年度の間に生産枚数が半滅をいたしました。イカナゴ漁は資源が減少しまして、今年で5年連続休業となっているのが現状でございます。また、陸からの窒素、りんが大幅に削減されていますが、我々の期待に反して、貧酸素の改善は見られておりません。

 一方で、栄養塩の低下により、様々な悪影響が漁業や養殖業に出ております。そのため、水質総量削減制度による伊勢、三河湾への流入負荷制限策の見直しが必要であると考えられます。窒素、りんに係る環境基準値と、海域区分の見直しが早急に必要であると思われます。最後に、栄養塩の供給による現在の干潟の活用と失われた干潟の再生が、貧酸素化の改善とともに漁業生産の向上の近道と考えられます。

 以上でございました。

【蒲原副場長】 引き続きまして、愛知県水産試験場の蒲原と申します。説明させていただきます。

 アサリ漁業の現状と課題です。アサリ漁獲量の現状については、黒田様から説明していただきました。アサリは、右上の円グラフにありますように、県内の3割の生産額を占めるほど主要な漁業でした。アサリ漁獲量の8割を占める西三河地区は、16ページ左下の一色干潟でアサリ漁業を営んでいる畜であります。この地区においては、右下の折れ線グラフにありますように、年々アサリの肥満度、身入りの具合が減ってきている状況にあります。

 次に水質の変化です。右下にありますように、西三河地区はⅡ類型に指定されています。Ⅳ類型から一つ飛んでⅡ類型の指定になっています。右上の折れ線グラフです。総りん、総窒素とも20年間年々減少してきまして、総りんについては39%、総窒素については27%の減少になり、現在はⅡ類型に達しているという状況にあります。クロロフィルについては、52%の減少になっています。左の図ですけれども、年代別の全りんの変化です。黄色い部分が年々増加して、Ⅱ類型の範囲が増加しているという状況が見えるかと思います。

 次にアサリの生育に必要な水質です。植物プランクトン量と水温をアサリの摂餌、成長、呼吸と生殖レベルへの配分から計算するアサリの成長モデルを使って計算したものです。上にある四つのグラフは、緑のラインがクロロフィルの量を表しています。年々、減少しています。この中で、赤い点線より下はアサリの軟体部重量がこれを下回ると生存が難しくなるという領域になっています。オレンジ色の線がアサリの軟体部重量の計算結果です。青い丸が、実測値になっています。計算結果は実測値とほぼ合っています。2011年は限界を下回ることなく、アサリは成長しましたけれども、2014年、2015年とたつに従って、アサリの生存限界を下回るようになってきています。ですが、右端のグラフのように、クロロフィル量を過去の1997年から2003年の1.5倍の量に増やしますと、アサリは生存限界を下回らずに生存できるという結果になっています。

 右下の表です。該当する期間の全りん・全窒素の量を示したものです。赤字で示しているところが、1997年から2004年の範囲で、全りんにつきましてはⅢ類型の高程度、全窒素につきましてはⅢ類型の中程度の濃度となっています。ちなみに、水産用水基準ではアサリはⅣ類型に分類されています。

 次に水質の経年変化です。右上の二つのグラフにありますように、クロロフィルと全りん・全窒素の関係を見ますと、全りんとの関係のほうが相関が高く、りん制限になっていることがうかがえます。左のグラフは場所による変化です。K4の河口域のほうが湾央より減少傾向が強く46%の減少になっています。また、各湾奥の底層においてもりんは減少しています。右下のグラフは酸素濃度に対するりん酸態りんの濃度です。過去の青線に比べて最近の赤線は下がっていますので、同じ酸素濃度でも底層から溶出するりん酸態りんの濃度が減少していることがうかがえます。

 したがいまして、陸からの負荷が減っている、なおかつ湾内で循環しているりんが減少していることがうかがえます。

 次に干潟、浅場の消失と再生です。左図のように、干潟、浅場は消失していますが、右上のグラフのように当面1,200haの造成面積を目標に造成しているところです。右下のグラフにありますように、例えばダム堆積砂を使って造成しますと、アサリの生息密度が増加していることも結果が出ています。

 次に下水道管理運転の効果です。2017年から管理運転を実施しています。左上の三つの図ですけれども、それぞれりん酸態りん、溶存態無機窒素、クロロフィルとなっています。栄養塩が放流された先で、クロロフィルが高くなり、増えている状況が確認されています。下の三つのグラフ、餌に対するアサリの軟体部重量を計算したものです。ステーション1に見られるように、放流口に近いほうがクロロフィルが多く、アサリの軟体部重量も生産限界を下回らないという結果になっています。右上のグラフ、冬季には河川から放流される負荷量に相当するりんが下水道からも放流されたことが確認されています。

 次にアサリの成育に必要な負荷量です。上のグラフですけれども、1997年から2004年度の全窒素・全りんの濃度が必要ですが、少なくとも第6次の実績であります平均負荷量に向けて、段階的な増加の検討がこれから必要になると考えています。

 下のグラフです。下水道からの排水ですけれども、現在は2019年度の緑のラインに抑えられている状況にあります。今後は、総量削減計画と連動を図りながら、増加する検討が必要になってくると考えています。

 次はノリ養殖業です。ノリ養殖の状況をノリの製品の写真を撮って紹介したものです。

 次は参考です。左が全窒素の年代別の変化で、年々Ⅱ類型の範囲が増加している状況にあります。右側がクロロフィルの年代別の変化です。クロロフィルは年々減少しております。

 以上です。ありがとうございました。

【細見委員長】 それでは、三重県の国分係長からお願いします。

【国分係長】 三重県環境生活部大気・水環境課の国分です。よろしくお願いいたします。今日は、きれいで豊かな伊勢湾再生に向けた三重県の現状と課題ということで、お話しさせていただきます。

 次のような内容でお話しさせていただきます。まず、伊勢湾の特に三重県側の、三河湾は含まない伊勢湾にフォーカスしてお話しさせていただきます。その伊勢湾の環境基準達成状況です。

 次に示しますのが、三重県における環境基準の達成状況になります。見てみますと、河川のBODは、平成16年度以降90%以上を達成しているという状況で、海域のCODにつきましては、近年40~60%程度で推移していたんですが、昨年度は100%を達成したというような状況です。

 一方、海域の窒素やりんを見てみますと、近年全ての水域で100%を達成しているというような状況で、かなり水質としては改善してきているというような状況です。

 さらに、全窒素と全りんにつきまして、各類型の濃度の変化というものと発生負荷量というものを棒グラフで示したものです。全りんにつきましては横ばい傾向なんですが、近年少し下がってきており、いずれも各類型の基準に当てはまっていますし、全窒素におきましても、同じように近年は減少しているんですけども、全て基準を達成しているような状況で改善が確認できています。特に湾の南側のⅡ類型の部分につきましては、かなり窒素のレベルというのは低くなってきているような状況です。

 それに対して、次は伊勢湾の貧酸素水塊の面積と赤潮の発生件数の変化なんですけども、赤潮に関しましては、先ほどの窒素、りんの減少とも関連するかもしれませんが、かなり減少してきています。

 一方、貧酸素水塊は、これは平均の面積を示していますが、近年徐々に増加しているというような状況であり、いまだ貧酸素水塊は拡大しているというような状況です。

 次にこれは伊勢湾の生物の生息場の状況ということで、干潟・藻場の変化を示しています。1950年代では、干潟では約4,900ha、アマモ場では1万1,400haあったんですけども、2000年には1,800haで、アマモ場では100haと、ほぼ6割、それからアマモ場では99%ぐらいなくなってきているというような状況で、かなり生物生息環境は伊勢湾では悪化しているという状況にあります。

 それに関連しまして、伊勢湾の中の漁獲量の変化になるんですけども、大きく伊勢湾では、栽培漁業のアサリとノリ養殖、それからイカナゴ漁というのが代表的な漁業になってくるんですけども、アサリを見てみますと、1980年代には1.4万tぐらいあったのが、2018年では4tで、近年成熟度の減少なども見られます。クロノリにつきましても、近年色落ちの増加と色落ちが早く起きる早期化なども起きていますし、イカナゴは2016年から禁漁になっているというような状況です。

 このようなことを踏まえ、先ほど漁業関係者の方からもありましたけども、実際、三重県におきましては、漁業者の方や、あと議会などから海域への栄養塩を供給してくれないかというような要望が近年増えてきているというような状況があります。

 次に伊勢湾のきれいさと豊かさの現状と課題というのを簡単にまとめさせてもらいますと、このような状況を見ると、伊勢湾では水質が改善されて、きれいにはなりつつあるんですけども、やはり依然として貧酸素水塊の拡大や漁獲量の減少が起きているということで、まだ豊かにはなってないのではないかというような認識でいます。

 この下の図で海域環境の、貧酸素水塊のメカニズムを示したイメージ図を描かせてもらったんですけども、貧酸素水塊には、やっぱり栄養塩の増加というものと生物生息環境の減少、干潟や藻場の減少というものが関係してくるというのが考えられます。これまできれいさを求めて、陸域からの流入負荷というのはかなり抑えられてきてはいるんですけども、やはり海での浄化能力といいますか、分解力のようなものが、まだ復活できていないということがありますので、貧酸素水塊がまだ依然として続いているのではないかというような印象です。今後は、特に干潟・藻場の再生、豊かさの部分の施策に重点を置いて進めていかなければならないのではないかと考えています。

 このような状況を受けて、伊勢湾では多様な関係の部局が連携して、様々な再生の事業の取組を行っています。特に県の環境とか農林、建設とかの部局だけではなく、NPOの方や、あと国の中部地方整備局の方とも連携してやっています。少しずつ見ていきたいと思います。

 まず、ここは伊勢湾の窒素、りん、CODの流入負荷量の削減というような部分です。三重県では、特に生活排水アクションプログラムというものを制定しまして、下水道の整備率、それから農業・漁業集落排水、合併浄化槽等の生活排水の処理を推進してきています。これは順調に整備率も伸びてきているんですけども、近年では、平成30年度では、三重県でも85%ぐらいの整備率になってきているというような状況です。

 もう一つは、海岸の漂着ごみに関してです。伊勢湾においても、漂着ごみというのは、かなり大きな問題になっておりまして、これに対しては、三重県の海岸漂着物対策推進計画や、あとはNPOや地域の住民の方々などの協力を得まして、伊勢湾森・川・海クリーンアップ大作戦などを実施して、発生抑制や回収・処理などを進めているというような状況です。

 さらに、伊勢湾の再生、最近では栄養塩や貧酸素の原因を究明するために、県で環境部局だけでなく農林水産部局と、あとそれぞれの研究所、地域の三重大学や四日市大学とも連携しながら共同研究を行い、このように貧酸素水塊の原因究明だとか、水産生物に適正な栄養塩類の濃度はどのぐらいか、という研究も進みつつあります。

 次は、伊勢湾内における干潟・藻場の再生の事業なんですけども、これは農林水産部が中心になって漁場環境再生事業を行っています。一応、三重県と愛知県で長期的な再生の目標を定めた「伊勢・三河海域干潟ビジョン」というものを、平成29年に策定しまして、それに基づいて伊勢湾の沿岸域で干潟・アマモ場再生、それから底質改善なんかの取組も行っています。これまでに実施した面積というのは次に示してありますが、干潟再生で14ha、アマモ場再生で2ha、底質改善、海底耕運や作澪、覆砂などで3,000haあまり行われています。

 近年では、漁業関係者の方々や議会からも、栄養塩を海域にもう少し出してもらえないかというような要望を受けて、それに応えるということで、下水道部局で県内の下水処理場において窒素、りんの管理運転に向けた試験の検討も、平成30年から行っています。

 特に、今、窒素につきましては、高度処理槽への循環率の制御をしたり、りんでは凝集剤であるPACというものを制御するようなことで、放流基準内で窒素、りんをどのようにコントロールできるかというような検討も実施していただき、本年度より、特にりんについては、クロノリ養殖期の10月から3月ぐらいまで試験運転を実施するという予定でいます。

 次に今後の取組になりますが、これは中部地方整備局が事務局になって進めてもらっている、伊勢湾再生推進会議というものです。ここには県の関係機関、NPO、企業、大学等が協働して入っています。この中で、特に伊勢湾シミュレーターという、伊勢湾の環境をコンピューターの中で数値モデルで表現するというようなことで、シミュレーターを開発しています。その中で、豊穣な伊勢湾を取り戻すために、伊勢・三河湾の環境変化のメカニズムの解明と、再生に向けどのような施策が有効かという検討も行っております。

 一例を表に示させてもらったんですが、シミュレーターによる改善施策の効果予測としまして、窒素、りんを現状の2割ぐらい削減した場合と、干潟・アマモ場再生をそれぞれ1,500ha、1,300ha程度再生した場合、効果として貧酸素水塊の面積はどの程度変わるかというようなことも予測をしていただいたりしています。

 その中で、結果として、それぞれ同様に貧酸素水塊の縮小の傾向はあるんですけども、やはり湾内の生物生産量で差が出てきておりまして、窒素、りんを削減すると、やはり貧酸素水塊が減少するんですけども、湾内の生物生産も減少してしまうということで、豊かさを維持していくためには、これ以上の栄養塩の削減ではなく、干潟・藻場の再生が有効だというようなことも、示唆していただいているような状況です。

 最後に、まとめになります。我々としましては、今後、総量削減ではなく、総量管理という観点をということで、特に伊勢湾を見てみますと、環境基準、特に窒素、りんは達成し、漁獲量もかなり減少している現状で、やはりこれ以上の削減というのはなかなか難しいという認識でいます。特に、これ以上の削減というのは、産業界の新たなインフラとかの負担にもなりますし、また、湾内の生物生産の減少のリスクも考えられるということで、生物生産に望ましい栄養塩濃度というものを定め、一律削減ではなく、管理する観点というのが今後必要になってくるのではないかと思っています。

 さらに、きれいさと豊かさの施策を総合的にということで、従来、きれいさの部分の水質の保全や自然環境の保全にという部分は、かなり進んできていると思うんですけども、やはり生物生息環境の保全、再生、水産資源の持続的な利用と確保という部分は、やはり両輪で今後も力を入れてやっていくべきではないかと思っています。それにあわせて、やはりきれいさだけではなく、豊かさを評価するための指標などの設定も検討していただけると、有り難いと思っています。

 最後になりますが、総合的沿岸域の管理へということなんですけども、環境部局だけでは到底やっていくことはできませんので、多様な関係者と連携して、目標を共有してやっていきたいなと思っています。

 以上になりますが、三重県の今後、その沿岸域の関係者と連携、目標を共有して、きれいで豊かな海の伊勢湾の再生に向けて努力していきたいと考えています。
 以上です。ありがとうございました。

【細見委員長】 どうもありがとうございました。手短な質問等がありましたら、お願いしたいと思います。

 三浦委員からありますが、どうぞ。

【三浦委員】 全漁連の三浦でございます。愛知県庁の方に質問なんですけども、愛知の資料の23ページを見ていただきたいんですが、その中でノリ養殖のところで、下水道管理、冬期に栄養塩を増やしたと思うんですが、管理運転の影響を受けたということで、②番と⑤番の漁場のノリが黒くて10回次まで出荷できたというのは、10回まで共販が行えたという理解でよろしいんでしょうか。

【蒲原副場長】 共販自体は11回まで行われていますが、②から⑤につきましては、終了近くの10回まで出荷が行われたということです。

【三浦委員】 ありがとうございます。長きにわたって、行えたということなんですね。

【蒲原副場長】 そうです。共販への出荷が長く実施されました。

【細見委員長】 よろしいでしょうか。

【三浦委員】 大丈夫です。

【細見委員長】 伊勢湾の関係で、愛知県、三重県の方に伺いたいんですが、漁獲量で減っているというデータを示していただいてますけれども、東京湾についてもそうだったんですけれども、全てがそうなのか、増えた魚種もあるのかないのかとか、そういう情報がありましたら、ぜひ提供していただければと思います。関係者の皆様、よろしいでしょうか。

【蒲原副場長】 愛知県です。アサリについては、漁獲量が激減しています。イカナゴについても、同じことが言えます。内湾の漁獲量は全体に減少しています。中には、増えている魚種もありますが、全体的には減少しているという状況にあります。

 以上です。

【細見委員長】 そういった情報を、後で事務局で伺いたいと思いますので、また提供方、よろしくお願いいたします。三重県の方にもよろしくお願いしたいと思います。

 そのほかに、委員の方で質問等ありますでしょうか。

 質問が一応ないということですので、伊勢湾の関係者の皆様、ありがとうございました。

 続きまして、瀬戸内海の関係府県から説明をお願いしたいと思います。大阪府、兵庫県と2件続けて御説明いただいた後に、また同様に質疑応答をお願いしたいと思います。

 まず、資料8について、大阪府の奥田課長からよろしくお願いいたします。

【奥田課長】 大阪府の環境保全課長の奥田でございます。

 それでは、早速ですけれども、資料8に基づきまして、大阪府の総量削減の現状と課題としまして、府が課題として考えておりますことと、今後の方向性についての御提案を、3点ほど御説明させていただきたいと考えております。

 1点目は水環境の総合的な評価と管理方策、2点目が大阪湾の湾奥部の水質改善、3点目が合流式下水道の雨天時越流負荷量の正確な把握、この3点について順次説明させていただきます。

 2ページ目を御覧ください。まず、大阪湾の水質の現状についてですけれども、環境基準の達成状況でございますけれども、CODにつきましては、湾口部や湾央部のA類型の水域で達成できていないという状況が続いております。

 一方、全窒素、全りんにつきましては、近年、継続して環境基準を満足しているという状況でございます。

 3ページですが、CODは、長期的には各海域とも1990年代前半までは減少しましたけれども、近年は横ばいという状況になっております。

 次に、4ページの全窒素、全りんの状況ですけれども、上が全窒素の経年変化でございます。全窒素と全りんは、長期的には全ての海域で減少傾向が見られております。全窒素につきましては、Ⅱ類型海域の湾南部の一部の基準点では、オレンジのラインが引いてありますけども、水産用水準の0.2に近づいてきているというような状況がございます。

 5ページがCOD、全窒素、全りんの表層の分布図を描いたものでございます。水平分布の状況です。いずれも見ていただいたら分かりますように、湾奥部が高くなっておりまして、湾央部、湾口部が順に低くなっておりまして、特に全窒素、全りんにつきましては、埋立地間の非常に狭い海域、閉鎖性海域の濃度勾配が非常に高くなっております。

 次に、6ページは大阪府が埋立地間の海域において、全窒素の状況を測定したものでございます。全窒素につきましては、埋立地間の海域の濃度が直近の府の常時監視の地点の濃度よりも2~4倍程度高くなっておりまして、Ⅳ類型の環境基準値、1mg/Lを超える値が確認されておりまして、2倍以上という状態が、埋立地間では見られるという調査結果でございます。

 次の7ページを御覧ください。これは大阪湾に流れ込む汚濁負荷量の流入状況について示したものでございます。少し小さいですけれども、主な河川であります淀川、神崎川、矢印の太さがその負荷量の大きさを示しておりますけども、淀川、神崎川、大和川などの流量の大きい河川での負荷量が多くなっているということで、特に湾奥部に集中して負荷が高いという状況でございます。

 8ページは底層DOの状況の年度の最小値を表している状況でございます。現在まだ環境基準の水域の類型というのは当てはめられていませんので、CODの水域の類型別に示したものでございます。青がA類型、緑がB類型、赤がC類型となっております。長期的に見ると、緩やかに増加傾向にあるという状況になっておりますけれども、特に湾奥部のC類型につきましては、無生物域を解消する水域の基準値とされています2mg/Lを下回っていると、このオレンジのラインよりも赤のラインが下に行っていることが分かると思いますけども、そのような状態になっておりまして、魚類の餌となるような底生生物が住めないような状況になっていると考えられます。

 次の9ページは今年の貧酸素水塊の発生状況について示した図でございます。4月は、まだ青い部分の溶存酸素が多い状態ですけども、6月ぐらいから湾奥部から徐々に貧酸素水塊が発生してきているという状況が確認できるかと思います。

 水質に関する説明は、以上になります。

 では、10ページで、これまでの大阪湾の現状から、一つ目の提案としまして、水環境の総合的な評価と管理方策について、御説明したいと思います。

 大阪湾は、水質総量規制の導入の当初というのは、湾全体でとにかく水質改善が必要という状況にありまして、汚濁負荷量の削減を中心に取組を推進してきました。その結果、現在では、海域によって水質の状況が大きく異なっているという状況になっています。具体的には、湾奥部、これは過度に栄養塩類が偏在しているということと、貧酸素水塊が発生するというような水質面の課題が多くあります。一方、基準が緩いということもありまして、COD、全窒素、全りん共に環境基準を達成しているというような状態がありまして、基準の評価と少し問題点が食い違っているというような状況があると思います。

 その一方で、湾口部では、水質改善というものは進んではいますが、CODの環境基準が2mg/Lという設定になっているため、環境基準を達成していないということで、水質自体の状況と環境基準の達成率というのは、少し感覚的に合わないという状況が出ております。

 そのために、湾全体としての水環境の評価というのは、今少し難しい状態になっておりまして、効果的な管理方策のどういった方法をやっていったらいいかというようなところは、まだ確立されていない状況になっているんではないかと思います。

 今後の方向性としましては、個々の項目の評価というものも今後もしていく必要はありますけども、複数の項目を組み合わせた水環境の総合的な評価の在り方、その評価を踏まえて、どのように今後管理をやっていくかという方策の検討が必要ではないかと考えております。

 11ページを御覧ください。二つ目の課題としまして、大阪湾の湾奥部の水質改善ということで、先ほども説明しましたけども、簡単に言うと、栄養塩類が多くて、底層DOが非常に少なく、貧酸素の状態になっているということです。湾奥部につきましては、魚類の主な生息場となっているんですけども、夏季の底層DOは、先ほど見ていただきましたように、2mg/Lを下回っておりまして、更なる水質改善の取組が必要な状況になっております。

 その一方で、湾奥部が栄養塩の湾全体への供給源となっているということも留意する必要があります。

 2025年の大阪・関西万博が、この地で湾奥部を会場として開催されますので、今後、都市地域に隣接する閉鎖性海域の水質改善技術、こういったものの実証実験を実施するなど、こういうところで世界から集まる方々に先進的な取組というのを御覧いただける、そういった絶好のチャンスではないかとも考えております。

 今後の方向性としまして、これまでの汚濁負荷量の削減を継続するのは必要なんですけども、こういった停滞性水域の流況自体を改善する方法という、汚濁負荷量以外の取組も必要と考えております。

 こういった取組を推進するためには、総量削減や瀬戸内海の計画に関係府省所管事業が予算措置も含めて位置づけられて実施する、そういった総合的な連携の取組が必要と考えております。

 12ページは実際に汚濁負荷量の削減以外の取組の例としまして、大阪湾で行われている例でございます。大阪府では、大和川の河口付近で人工干潟の整備などに取り組んでおります。

 もう一つ下のほうに、「豊かな大阪湾」環境改善モデル事業としまして、昨年度から実施しておりますけども、水質改善や生物生息の創出に寄与する環境改善モデル施設の設置につきまして、民間から公募を募りまして、その一部を補助するという事業をやっております。

 これにつきましては、写真で見えにくいかもしれませんけども、設置から約7か月に達した段階で、メバルの幼魚が生息していることが確認できます。

 次、13ページを御覧ください。これはもともと埋め立てるために、窪地が大阪湾では21か所存在しておりまして、全体で3,200万m3の容量があります。ここでは、夏場に貧酸素海域が出る状態になることから問題になっております。

 14ページを具体的に見ていきたいと思うんですけども、これの改善方法なんですけども、岸和田の沖にある阪南2区というところでは、赤の部分の窪地を浚渫土等によって埋め立てるということによって、貧酸素状態、赤色のところが数年で解消したということで、改善効果が見られております。

 では、15ページを御覧ください。最後に、先ほど東京都さんの発表の中にもありましたけども、合流式下水道の雨天時の越流負荷量の正確な把握が、これは大阪府としても必要と思っております。大阪府域は、特に合流式下水道が占める割合が約40%という高い状態にあります。今後、やはり地球温暖化等の関係で、大雨が増加するということで、この越流負荷の影響が非常に懸念されるところであります。

 今後は、この流入負荷をより正確に把握するために、どれだけの越流負荷があるのか、改善効果はどれぐらいというようなことの整備が必要と考えております。

 次のページに、これは一例なんですけども、水質の改善効果ということで示しております。ここでは高槻の水みらいセンターというところで、既設の沈殿池の一部を滞水池に改造しまして、一旦雨天時の下水を貯留しまして、晴天になれば通常の処理をして放流するということをやっております。これは平成27年10月の降雨時の状況なんですけども、下のグラフからは、処理場からの排水量を示しています。上の棒グラフに示す降雨によって増加して、黒塗りの部分が通常の処理能力を超えたということを示しています。このうち、赤線で囲った部分を一次貯留しまして、後に通常の処理を行っています。

 次のページ、試算の結果なんですけれども、汚濁負荷量の削減効果について、BODで考えた場合、ここにありますように、対策後と対策前を比較しますと、BODで111kg、約2,000人分の1日当たりの家庭用排水の相当量が削減されたという試算の結果になっております。

 次以降は、参考資料と考えておりますけども、18ページです。これまでの汚濁負荷量の推移がどうなったかということですけども、COD、窒素、りんについて、30年度に既に第8次の総量削減の31年度目標をクリアしているというのが、それぞれCOD、窒素、りんで達成されている状況が、このグラフから見て取れると思います。

 あとは参考で見ていただいたらいいかと思いますけども、最後に24ページです。大阪では、昨年の大阪サミットで「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が共有されまして、それに基づいて今年の7月に大阪府・大阪市でSDGs未来都市に選定されまして、今後、「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」の推進プロジェクトをやっていく中で、実行計画をつくっていくということになっておりますので、これらについても、併せて紹介をさせていただきたいと思います。

 以上でございます。ありがとうございました。

【細見委員長】 ありがとうございました。それでは、兵庫県の上西課長より御説明をお願いいたします。

【上西課長】 兵庫県水大気課の上西です。

 それでは、兵庫県の取組と課題につきまして、御説明をしたいと思います。

 次のページに本日お話しする内容を示しております。最初に、第8次総量削減計画の目標達成に向けた取組について、御説明をいたします。

 兵庫県のこれまでの負荷量削減に向けた取組について、説明をいたします。生活系排水対策につきましては、本県では「生活排水99%大作戦」と銘打ちまして、下水道を中心に整備を進めてまいりました。生活排水処理率は、平成30年度時点で98.9%となっておりまして、東京都に次いで全国2位となっております。

 産業系排水対策につきましては、排水量30m3/日以上の事業場に対して、上乗せ規制、総量規制など対策を進めてまいりました。

 その他系につきましては、農地からの負荷対策など、御覧の対策を進めてまいりました。

 次に、瀬戸内海の現況について、御説明をさせていただきます。

 まず、発生負荷量につきまして、お示しをいたしております。これもCODの発生負荷量の経年変化のグラフでございます。1979年に156tであったものが、2017年度では41tと、約7割の減少を見ております。

 次に窒素でございます。1994年度に95tあったものが、2017年度につきましては、49t、約5割減少としました。第8次の削減目標値が52tですので、2017年度時点で目標を達成しております。

 次にりんにつきまして、グラフで示しております。1979年度に11.3tであったものが、2017年度には2.3tと約8割減少いたしております。第8次の削減目標値が2.8tですので、2017年度時点で目標を達成しております。

 次ページにCOD、窒素、りんの発生負荷量の内訳を示しております。本県では下水道の処理人口の割合が高く、生活系のうち下水道からの発生負荷量が比較的多くなっております。また、瀬戸内海沿岸に鉄鋼業等産業が集積しておりますので、産業系からの発生負荷量が比較的多いことが特徴になってございます。

 一方、海域の状況について、次ページで御説明をしたいと思います。まず、COD濃度の経年変化でございます。見ていただきますとおり、A類型、B類型、C類型、いずれも海域ごとの平均値をグラフにしておりますけれども、横ばいの状況になっていることが見ていただけるかと思います。A類型、B類型の基準点で、一部未達成の地点がありますので、2018年度時点での環境基準達成率は73%になっております。

 次に窒素濃度の経年変化をお示しします。概ね減少傾向にありまして、近年10年ぐらいになりますけれども、全基準点で環境基準を達成している状況でございます。

 次ページにりん濃度の経年変化をお示しいたします。窒素と同様、概ね減少傾向にありまして、近年は全基準点で環境基準を達成している状況になってございます。

 次ページのグラフは、窒素につきまして、Ⅱ類型の基準点を取り出しまして、海域ごとに濃度の経年変化を示しております。1997年度以降、著しい低下傾向を示しております。特に2013年度以降は、Ⅱ類型の海域でございますけれども、Ⅰ類型の環境基準値である0.2mg/Lもほぼ下回っているような状況になっています。

 次に、同様に、りんのⅡ類型の基準点のみを取り出しまして、海域ごとに濃度の経年変化を示しております。窒素ほどではございませんけれども、1997年度以降、低下の傾向を示しております。

 次ページは海域別の、Ⅱ類型の指定水域における窒素濃度の経年変化と窒素の発生負荷量の関係を示したグラフになってございます。折れ線グラフが海域の窒素濃度、棒グラフは発生負荷量を示してございますけれども、陸域からの供給量減少に伴いまして、窒素濃度も低下する傾向が御覧いただけるかと思います。

 これらの状況を踏まえました兵庫県の取組について、紹介をさせていただきたいと思います。

 こちらは兵庫県の瀬戸内海の漁船漁業による漁獲量の推移をお示ししたものでございます。平成7年には7万9,513tあった漁獲量が、平成30年を見ますと約3分の1に減少しているのが見ていただけると思います。

 右に生態系ピラミッドの図を示していますとおり、食物連鎖の底辺を支え、第一次生産者である植物プランクトンの栄養として、窒素やりんは不可欠でございます。この漁獲量の急激な減少の要因として、窒素、りんの濃度の低下等が指摘されており、兵庫県の代表的な魚種でありますイカナゴを対象に、県の水産技術センターが調査研究を実施いたしました。

 次のページに示しております、兵庫県水産技術センターが開発したモデルシミュレーションにより、海域の貧栄養化がイカナゴ資源の長期的減少に大きな影響を与えているということを解明いたしました。

 左下のグラフで示しておりますとおり、播磨灘の溶存態窒素濃度とシンコ(イカナゴ)の漁獲量は、同じような減少傾向を示しております。そのほか、イカナゴの肥満度が低下していること、また産卵数が減少していることも分かりました。

 イカナゴは瀬戸内海で産卵・成長し、瀬戸内海で生活史が完結する種でございまして、プランクトンを食べますので、栄養塩との関係性が比較的強いということで、イカナゴは解析に適した魚種であると考えております。

 このように豊かな生態系を維持するためには、栄養塩類である窒素・りんの濃度を適切に管理することが不可欠であるとして、昨年10月に条例を改正いたしました。海域における良好な水質を保全し、かつ、豊かな生態系を確保する上で望ましい栄養塩類の濃度を定めています。そのほか、瀬戸内海再生に向けた基本理念、再生に向けた施策の実施、事業者及び県民の責務についても定めております。

 望ましい栄養塩濃度ですが、下限値を水質目標値といたしまして、窒素は0.2mg/L、りんは0.02mg/Lと定め、上限は水域類型に応じた環境基準値として、その幅で望ましい濃度を示しております。この下限値につきましては、公益社団法人の日本水産資源保護協会が設定した水質基準である水産用水基準を基に設定しております。

 水産用水基準では、閉鎖性内湾であって、全窒素0.2mg/L以下、全りん0.02mg/L以下の海域は生物生産性が低い海域であり、一般的には漁船漁業には適さないとされているところです。

 次に望ましい栄養塩濃度達成を目指した兵庫県の取組をまとめております。栄養塩の供給、モニタリング及び科学的・技術的な知見の蓄積、普及啓発の大きく三つの項目で取り組んでおります。

 栄養塩供給といたしましては、下水処理場での季節別管理運転、工場・事業場からの栄養塩供給の推進等に取り組んでおります。

 次のページで、まず、下水処理場の季節別管理運転について、御説明、御紹介をいたします。

 本県では、平成30年度に播磨灘流域別下水道整備総合計画を変更いたしまして、全国で初めて季節別の処理水質を設定いたしました。現在、本運用、試行を合わせて24処理場で、冬季に放流水の全窒素濃度を引き上げる季節別運転を続けているところでございます。実際に取り組んでいる処理場なんですけれども、この計画に位置づけられていない処理場も合わせまして、約14の処理場で季節別運転に取り組んでいる状況です。

 次ページでは工場・事業場にも栄養塩供給を促すために、基本的な考え方、実施手法、事例、留意点などを取りまとめましたナレッジ集を作成したということをお示ししております。

 基本的な考え方といたしまして、まず、対象工場ですけれども、海域に直放流する工場や最下流の環境基準点より下流に放流する工場を対象にしております。栄養供給の実施時期といたしましては、11~4月が望ましい、また、栄養塩供給を実施すると、窒素・りん以外にも負荷量が増加することが想定されますけれども、有害物質については濃度負荷量が増加しないことを求め、有害物質以外につきましても、増加に合理的な理由があること、また環境に悪影響がないということなど一定の条件を満たす限り、有害物質以外の濃度負荷量が増加する場合も実施を認めることとしております。原則的には窒素・りんの負荷量のみの増を前提としております。

 次に生物の生息・生育場である藻場・干潟の整備ということも重要であるといたしまして、地域団体等が行う藻場・干潟の再生・創出、ヨシ原の保全、河口干潟の保全など、水辺における活動の経費を補助をいたしております。今年度も3団体が活動をしております。年度末には、毎年報告会を開催いたしまして、活動団体の報告、また、そのほかにも漁協や他の活動団体も含めた情報交換の場等、引き続き継続的な活動を支援しております。

 最後に、県が考えております今後の課題につきまして、説明をさせていただきます。

 御説明申し上げてまいりましたとおり、瀬戸内海では、厳しい排水規制により大きく水質は改善いたしましたけれども、食物連鎖の底辺を支える植物プランクトンの栄養となる窒素・りんの濃度の低下が顕著な状況となっております。特に窒素・りんに関しましては、総量削減はもう十分達成されており、今後は海域の生態系を維持するため、栄養塩管理にかじを切らなければならないと考えております。

 そのためには、まず、総量削減制度の見直しが必要と考えております。瀬戸内海のように大きく水質が改善した海域につきましては、状況に応じて、例えばC値の上限を緩和する、第8次から第9次の計画削減目標を増加させるというような大胆な見直しがあってもよいのではないかと考えております。

 また、瀬戸内海環境保全特別措置法に栄養塩の管理の考え方を明確に位置づけるということなども重要なのではないかと考えております。そのほか、窒素・りんの供給に関する調査研究や取組支援、モニタリングにより生物の多様性に与える影響を把握し、それを施策にフィードバックすること、藻場・干潟など生物生息場を確保すること、また普及啓発により機運を醸成することなども重要と考えております。

 以上でございます。ありがとうございました。

【細見委員長】 ありがとうございました。ぜひこの際質問しておきたいという方は、挙手をお願いいたします。

 黒木委員から挙手があります。どうぞ。

【黒木委員】 御説明ありがとうございました。兵庫県様からの御説明資料の16ページ、イカナゴと栄養塩濃度の関係性、この部分についてお伺いしたいと思います。

 イカナゴの漁獲量と栄養塩との関係が非常にクリアだというのをお示しいただいておりますけれども、気になりましたのは、イカナゴはもともと北方性の強い魚であるということを考えますと、水温はどうだったのかというのも気になります。海域では、陸域からの栄養塩のことを除けば、一般的には水温が低いほど栄養塩濃度が高いというような関係もありますので、水温の関係というのも、併せて見られていたのかという点について、もし分かれば教えていただきたく思います。

【上西課長】 ありがとうございます。このモデルシミュレーションにおきまして、現在より水温が1℃低い環境でのシミュレーションも、併せて行っております。水温の影響、栄養塩の影響、それぞれシミュレーションをかけましたところ、栄養塩の影響が最も大きく出たという結果が出ています。

【黒木委員】 ありがとうございました。兵庫県さんの施策として、栄養塩の供給というのを推進していくというようなお話もございましたけれども、水温がもし上がった状態でしたら、栄養塩を以前のレベルに戻しても、水温も以前の状態にあるというわけではないと思うので、もしかしたらそれによって例えば赤潮が出るだとか、そういうリスクも考えられるかと思いますので、いろいろな可能性、マイナスの可能性も考慮された上で、順応的に取り組んでいただければと考えました。これは意見でございます。よろしくお願いします。

【上西課長】 ありがとうございます。

【細見委員長】 16ページに関連して、私から少し。これは観測値ですよね、シミュレーションでどうしたという発言が今あったんですが、これは観測値であるとするならば、水温の観測値もぜひ一緒に入れていただいたグラフも作っていただければ有り難いと思います。

 また、このシミュレーションについて、もし何か情報がありましたら、資料の提供をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【上西課長】 ありがとうございます。シミュレーションにつきまして、結果をまとめたものがありますので、また、御提供差し上げたいと思います。

【細見委員長】 よろしくお願いいたします。

 そのほかに、中村委員、西嶋委員、西村委員から挙手がありますので、その順番にお願いいたします。

 中村委員、どうぞ。

【中村委員】 それでは、大阪府の方に御質問をさせてください。大阪府の御発表の中で聞き逃したかもしれませんが、前後の例えば兵庫県の播磨灘、あるいは伊勢・三河湾の取組の中では、漁業生産について現状の栄養塩レベルでは非常に厳しいレベルになっている、むしろ足りなくなっているという御説明があったんですけれども、大阪府の海域、特に大阪湾の中で同じような認識はないのか、あるいはもっと積極的に栄養塩削減ではなくて、管理に向かうべきだという動向は考えておられないのかどうかということを質問させてください。

【奥田課長】 大阪府の奥田です。この栄養塩の問題につきましては、説明が少し分かりにくかったかもしれませんけども、一部湾口部の大阪の南のほうになりますところで、今、全窒素が0.2㎎/Lに近づいているというところがあります。これについて、昨年度、そこの流域下水道のところで、この栄養塩の管理をするために、放流値を上げるというような検討もしたんですけども、現状ではまだ0.2㎎/Lに至っていないということ、それから今のところ、そこまで窒素の放流濃度を上げていくということまでは必要ではないという結論を、昨年度しております。

【中村委員】 ありがとうございました。

【細見委員長】 それでは、西嶋委員、どうぞ。

【西嶋委員】 西嶋です。兵庫県さんに質問させてください。兵庫県さんは、先進的な取組をされているんですが、今、季節別運転ということで、冬場、栄養の放出ということを実施されています。質問は、高水温期です。春から夏、秋に向かうところですが、そこに対しての栄養塩というのは、現状どのように認識をされているのかということを、質問させていただきたいと思います。冬のお話は、多分ノリだとか、主要な漁獲物であるイカナゴの生育期というところが中心なので、そこに今、栄養塩濃度を上げているということだと思うのですが、高水温期について、現状どのように認識されているかということを質問させてください。

【上西課長】 低水温期で、特に不足していると認識しておりまして、そのときに季節別管理運転をして供給をすべきだと考えております。ただし、高水温期の時期につきましても、栄養塩が不足しているということには変わりがないと考えてございます。

 ただし、先ほどからおっしゃっていただいているとおり、赤潮などの懸念もございますので、まずは冬季に栄養塩の供給を進めていき、モニタリングをしながら高水温の時期もどのように管理をしていったらいいかということを考えてございます。

【西嶋委員】 ありがとうございました。プラスの面、マイナスの面というのを考えたときに、季節的な部分というのを考えていかないといけないと思っています。全体を通じて、年間を通じてどういう管理をしていくかというのが非常に重要な視点だと思っております。ありがとうございました。

【上西課長】 補足でよろしいでしょうか。夏場は降水量が多いものですから、陸域からの供給も割と高めに出まして、少し濃度が上がるという状況がございます。失礼いたしました。

【西嶋委員】 ありがとうございました。

【細見委員長】 それでは、西村委員、どうぞ。

【西村委員】 どうもありがとうございます。兵庫県さんの16ページの資料の先ほどから議論になりました、栄養塩の濃度について質問したいんですが。この図を見ますと、DIN、窒素濃度が非常に長期的には下がったり上がったりというようなことを繰り返しながら、近年は大分低下していると。しかしながら、細かく見ますと、最近においても窒素、DIN濃度は倍半分ぐらい年によって変わるというような状況になっているようです。冬季の平均値がかなり変わるということについて、どのぐらいその理由が解析できているのか。私は少し分からないですが、多分赤潮珪藻とか、何かの発生との関連があるのかなと思ったんですが、もしシミュレーション等々で現象が分かっていましたら、教えていただければと思います。

【上西課長】 ありがとうございます。詳しいことは分かりかねる部分もあるんですけれども、ただ瀬戸内海が外洋にもつながってますので、その影響があるようには聞いております。詳しいことはまた調べまして、御提供できればさせていただきたいと思います。

【西村委員】 はい、どうぞよろしくお願いいたします。

【細見委員長】 それでは、瀬戸内海の説明、どうもありがとうございました。

 続きまして、環境団体関係について、御説明をお願いしたいと思います。資料10に基づいて、海辺つくり研究会の古川様よりお願いしたいと思います。

【古川氏】 海辺つくり研究会の古川と申します。

 この度は、このような機会を頂きまして、誠にありがとうございます。

 実は、2015年にも発表させていただく機会を得まして、そのときには海辺と人の関係性の再生というようなことで、自然を賢く使うこと、アマモ場の再生で正しく自然を認識すること、お台場のノリ作りなどを例に取って順応的に対応していく必要があること、更には、いろんな調査の事例を御紹介して、局所的な変化にも注目する必要があることなどを提言させていただきました。

 今回は、資料にお示ししていますような、四つのポイントでお話をできたらと思っております。

 第1番目のポイントです、私たちが注目している世界の動きとして、ブルーエコノミーというのがあります。その原動力は、自ら約束をするというコミットメントということにあるのだろうと思っています。

 これは東京湾臨海部の運河で先週撮影してきた水中映像ですけれども、温暖化の影響、富栄養化の影響、貧酸素の影響等々で、生き物がほとんど見えません。でも、諦めずに隠れて頑張っている生き物のために、いろんなことを考えていかなければいけないと思っています。

 この中で重要なことというのが、大きな指針となる法的な枠組み、この水環境のような法的枠組みです。さらに、政策やプロジェクトも重要です。その上で、各地で活動している漁業者、市民団体、教育関係者、子供たち、それを支える地方自治体、民間企業など、多様なステークホルダーの協働、参画というのが大切だと思っています。そういうみんなが頑張れる一つのやり方というのが、ブルーエコノミーということではないかなと思っています。

 大変見慣れてきたSDGsの考え方を表にした考え方ですけれども、構造的な様相を見ると、新たな発見があります。基盤となる環境があって、対象となる産業、サービス、そして我々の生活というものがその上に乗っかっている。ですから、水環境というのも、こうした基盤の一つとして重要であると感じています。

 基盤を維持・管理していくためには、規制だけではなくて、自主的なコミットメントをしていくということが、一つのやり方なのではないかと思っているところです。

 2番目が、藻場・干潟の再生の話です。環境団体としてのヒアリングに参加させていただくのは、今回、私たちだけなので、全国の例を紹介していきたいところですけれども、資料に名前を挙げるにとどめておきたいと思っています。

 今、我々が注目をしているのは、干潟の再生が多様化して、総合的な面積だけでは測れない、特に、このブルーカーボンに注目をしています。地球温暖化の緩和策の中で海でできることの一つとして、マングローブ林の再生、アマモ場の再生、藻場の再生等々、海の生態系を活用した炭素貯留・隔離ということがブルーカーボンという意味ですけれども、アマモ場では非常に差が大きくて、このときも3点で測って、この赤い矢印で示したぐらいの変動が空間的な変動もある、時間的な変動もある、どのように蓄積量・隔離量として測っていくのかということが学術的にも難しいんじゃないかと思っています。

 一方で、ワカメのブルーカーボンについては、横浜市さんが、その養殖に対してカーボンオフセットの証明書を出してくれています。これはワカメが直接炭素貯留をするということだけではなくて、地産地消によるCO2の削減効果を算定したというものであります。柔軟な頭で考えていくことが必要と思っています。

 そして、三つ目、地域の実情に応じた主体の連携ということで、主に東京湾の例をお話ししたいと思います。突然ですけど、去年と今年と、タコ、タチウオが非常に好調だと、カレイは少し何か産卵期の時期がずれているかもしれない、こういう水産資源の、もちろん先ほどから提示されていました専門的なデータもありますけれども、遊漁として昭和50年代には非常に多くの釣りものがあった、それがカレイだとか、ハゼだとかに集中してきて、更には、今は屋形船にその主体が移っているような、そういう状況にある、こんなこともデータとして見ていくということが大切だと思っています。

 東京湾再生官民連携フォーラムでは、関東地方整備局、また千葉県漁連、それぞれの方々と協力して、マコガレイの産卵場をつくるというチャレンジをして、実際にマコガレイの卵が見られたというような、そういう成果も上げてきています。

 今年は、横浜のアマモ場が非常に不調でした。それで千葉県から種をもらいに行こうということで、アマモの花枝の採取に伺いました。こうした活動の資金というのは、民間企業から出ています。CSRとしての取組ということだけではなくて、社員や関係者の福利厚生という面からも注目していただいています。

 このアマモ場の再生の調査に協力してくれた漁業者の方々は、沖の干潟で観光漁業としてスダテ漁なんかもされている、こういう多角的な取組というのも進んでいるというのが、特徴的かなと思っています。

 都市臨海部の再生において、ワカメの養殖イベントというのは非常に大人気です。この収穫のときには、有志が東京湾のワカメを与えて踊りました。

 お台場では、古米先生にも御協力いただきながら、水質予測モデルを駆使し、海岸の開放等々も試行しております。そういったことにも協力していますけれども、こういう試行をしていく中で、海の持つヒーリング効果というのを大変注目しています。海の中はバリアフリーですから、いろんな方が海の恵みを享受していける、そういう場でもあるわけです。水質がよければ、そういった活動がいろいろな角度で実施できるのではないかと思っています。

 今年、お台場では、1万m3を超える覆砂が実施されました。この効果の確認、影響の確認といったことで、ダイバー、研究者が月1回のモニタリングをしてくれています。今のところ、例年になく海底の状況が良いという情報が入ってきています。ハゼもいます。覆砂をしたときに入ってきたゴカイを詳細に見たところ、泥ではなくて砂に選好性のあるスピオだとか、イトゴカイが優先していたというような情報も頂きました。

 あと1件だけ、御紹介させてください。企業が取り組む干潟づくりです。目指したのは、昔の運河脇にあったような潮だまりなんですけれども、大型商業施設を整備したウォーターズ竹芝という、その地域の中にこんな断面で干潟ができました。それを支えているのは、近くの高校生たちが干潟部をつくって、そこで活動をするなどということも含めて、エリアマネジメントの一環として干潟づくりが進んでいるという、面白いデータとなっています。そこにはエビやハゼも来ていますし、運河の水の中にはアサリとおぼしき二枚貝の浮遊幼生もいました。

 まとめです。国際的なアジェンダ、国の政策に調和した地域の活動を推進するための総合的な取組として水環境政策を位置づけて、活動主体の人たちにコミットメントを求めるような、そういう進め方も一つあるのではないかということを提案したいと思っています。

 そして、そうした活動主体として、自治体だとか企業の方々に大いに期待を持っています。例えば、自治体が保有する施設を活用して研修をするということで、活動が下支えされていく、取組への公的評価をしていただくことで、活動を続けていくインセンティブが上がる、こんなこともあるのではないかなと思います。そうした変化を見ていくためには、まだまだ水環境に関する総合的なモニタリングの強化が必要だと思っています。例えば、海域・陸域を一体とした一斉調査ですとか、生物生態系に注目したモニタリング、こういったところでは、市民、企業、漁業者、そういった様々な主体の参画というのが有効であり、不可欠ではないかと思っております。そうしたことを御提言して、私からの発表とさせていただきます。御清聴ありがとうございました。

【細見委員長】 どうもありがとうございました。

 ただいま古川さんより御説明ありましたけれども、御意見、御質問があれば挙手をお願いします。

 吉住委員、どうぞ。

【吉住委員】 経団連の吉住です。たった今、地域の実情に応じて多様な主体が連携をすべきだという提言がありました。それに関して、経団連としても、海辺つくり研究会が現在取り組まれている夢ワカメワークショップも助成させていただいております。このような、例えば海藻を育てる体験を通して一般の方々に藻場を作っていただき、窒素・りん等の削減につなげるような取組が様々な場で広がるよう、多様な主体で連携することは、経団連としても非常に重要だと思っております。今後とも、このような場を行政が中心となって広げていただき、我々産業界もぜひ支援していきたいと思っております。

 以上です。

【細見委員長】 ありがとうございました。ほかに御質問。

 風間委員から挙手があります、どうぞ。

【風間委員】 風間です。2点教えてください。最後のところに活動主体自らのコミットメントを求めるような水質総量削減制度への転換という表現がありました。これは具体的にどのようなものなのでしょうか。コミットメントというのは、単なる口出しをする以上に責任を持って管理をすることということでしょうか。

 それから、もう一つ、一番最後のところで、生物生態系のモニタリングの強化、これも私もとても必要だと思うんですけど、多分法的に実施を促す、ぜひやってくださいというだけではなかなか進まないと思うんですけども、評価とか効果とか、一歩前進させるためのアイデアをお持ちでしたら教えてください。お願いします。

【古川氏】 御質問ありがとうございました。まず、一つ、コミットメントのイメージですけれども、法的な枠組みだとか政策というのは、基本的に、我が国の日本全体に押しなべて網をかけるということで、大きな方針を示していただくために必要なのだと思います。

 ただ、御存じのとおり、この環境は場所、時間、それぞれで、またそれを取り巻く人たちの活動の様子等々で、たくさんバリエーションができるということになります。ですから、その事情に合わせた自分たちの目標を変化させるということが、このコミットメントという形で自分たちが責任を持って約束をするということで、お示ししていただいたらば、一律な規制だけではない管理というのができるのではないかと思っています。

 例えば、三重県の志摩市さんが、排出規制の上乗せの規制をかけて、さらに自分たちの水辺はここまできれいにしなければいけないなんていうことを実施されている、そんなようなイメージのコミットメントです。

 2番目の御質問で、モニタリングの強化、特に生物生態系のモニタリングの強化ということですけれども、モニタリングした成果を皆さんが見て、ああそうだと、こういう変化があったんだ、だからどうするんだという、その次のことが考えられるような、モニタリングした成果の共有や、活用といったことに工夫をすることが、もしかしたらもう一つの手かなと思っています。

 手前みそですけれども、東京湾の一斉調査も、もう10年続けてきています。そのときに一斉調査をした後、みんなでワークショップを開いて、その成果を持ち寄って、1枚のマップにして共有をする、そうするとその次の年もそういうことをしていこうというようなことができてくるのかなというようなことを考えていますので、この生物生態系の成果をうまく人に伝わるような形でまとめたり、共有できたりというような仕組みづくりというのが、もしかしたら一つのヒントにもなるのではないかと思っているところであります。

【風間委員】 どうもありがとうございました。

【細見委員長】 それでは、浄化槽の関係について説明をお願いしたいと思います。

【相澤室長】 環境省の相澤でございます。それでは、御説明をさせていただきます。

 まず、2ページ目を御覧ください。浄化槽とはというところの御説明になります。生活排水の処理能力、BODが20mg/L以下、除去率90%以上ということで、コンパクトながら処理能力が優れているというところと、あと最近ですと、4番目にある、地震のときに下水が止まりました、というときにでも、割合すぐに復旧して動くというので、災害が随分増えてきています、そんなところでも注目を集めているようなところでございます。

 次ページ、幾つかのタイプが出てきております。通常型というのは、先ほど申し上げた、BODが20mg/L以下で除去率90%以上というものでございますけれども、それに加えて、全窒素濃度が20mg/L以下になるような窒素除去型と呼ばれているものですとか、更にそれに加えて、りんについて1mg/L以下に処理をするというような、りんの除去型というものも出てきているところでございます。

 さらに言えば、BODについて、5mg/Lということで、より処理能力を上げた高度除去型というようなものがございます。徐々にやはり通常型から高度型というところが伸びてきているところではありますが、その伸びは、4ページを御覧いただければと思います。

 グラフに平成30年末までのデータで示させていただいておりまして、左側が設置基数、全体の基数でございます、右側が新規でございますので、廃止されていかないものについては、新設がどんどん左側のグラフに積み上がっていくという形でございます。

 やはり、見ていただくと、伸びているのが緑色が伸びてきておりますけれども、これが高度処理型でございます。窒素またはりんを除去するタイプでございまして、平成18年には大体6万基だったものが、今は約100万基ぐらいまで増えてきているというものでございます。

 高度処理以外という、いわゆる通常型は145万基ぐらいありまして、BODをより高度に処理する高度除去型ですとか、あとN、Pを両方とも除去するようなタイプは1万基ですとか、7,000基とかでございます。

 続きまして、浄化槽行政全体の課題というところを御説明をさせていただきます。その後、最後に少し、制度の最近の動きの御説明をさせていただきたいと思います。

 これは国交省さんも御説明されたと思いますけれども、簡単なポイントを申し上げると、いまだに処理施設が未普及のところが1,100万人ぐらいございますと。そういったところをしっかり対応していくというのが、排水処理の課題だと思っております。こちらについて、6ページを御覧いただければと思います。

 こちらも下水道の回に御説明があったと思いますけれども、割合人口が密集しているところは集合処理が有利だと思いますし、人口が密集していないところについては、浄化槽での個別処理が効率的であろうということで、その経済性を考えた上で、適切な役割分担のもとに浄化槽を進めるところは浄化槽を進めていきましょう、下水を進めていきましょうというような形で、都道府県に御判断いただくような、都道府県構想マニュアルということを策定して、それで地域の実情に応じて進めていきましょうということを進めて、基本的な考え方の基にして進めているところでございます。

 次にもう一つ大きな課題といたしまして、単独浄化槽というものがございます。これは、要するにし尿処理しかしない浄化槽でございまして、平成12年の浄化槽法改正で新設はなくなっているんですけれども、ここのグラフを御覧いただきますとお分かりいただけますとおり、いまだに大体浄化槽の基数の半分ぐらい、約400万基が単独浄化槽という状況でございます。

 こうしたところは、だんだん長くなってくると老朽化してきて、その水質改善というのが課題となっておるところでございます。

 次ページは、それをより細かく説明した資料です。先ほど申し上げました単独浄化槽は、し尿以外の生活排水を処理しないので、もともとその他の生活排水は流れてしまうということで、環境負荷が高いということです。

 さらに、2番目のポチにございますように、もう400万基存在していて、さらにその中で40年以上を経過したものが100万基あるということで、老朽化してきて、破損・漏水といったことがしてきますと、より環境影響が懸念されるというようなところで、こういったものの対策は必要になるだろうというところで、制度的な手当てをしたというのが、最近の動きでございます。

 9ページを御覧ください。令和元年に議員立法で浄化槽法の改正をしていただきまして、ちょうど今年の4月に施行をしたところでございます。いろいろ規定、改正をしておりますけれども、大きく幾つかポイントを御説明させていただきますと、一つは、先ほど御説明しました単独浄化槽です。単独浄化槽のうち、特にそのまま放置すれば生活環境の保全など公衆衛生上重大な支障を来す恐れがある状態にあるものを、特定既存単独浄化槽と位置づけまして、こちらについては指導・助言、さらに厳しい場合には勧告・命令ということで、こういった単独浄化槽で問題になりそうなものを、どんどん置き換えていくというようなことに対する指導の規定を盛り込んだというのが、一つ目でございます。

 二つ目は、第2、公共浄化槽というところに書いてありますけれども、公共浄化槽というのの定義をつくりまして、公共が中心になって管理をしていくような浄化槽というものを法的に位置づけたところでございますし、そのためには浄化槽を進めていく地域というのをきちんと定めていく必要があるだろうということで、浄化槽の処理促進という規定をしていくことができると。これは第2の一番上のポツの括弧の中にありますけれども、促進区域というのを定めて、そういうような公共浄化槽というのを進めていけるような規定を整備させていただいたというのが、大きな2番目でございます。

 もう一つ申し上げさせていただきたい、第4、浄化槽台帳の整備というものがございます。こちらはスライド飛ばしまして、12ページを御覧いただいてよろしいでしょうか。

 これは先ほどの単独浄化槽がどこにあるのかというのを把握するという、行政上の基礎情報をきちんと整備しないと、行政が実効性のある政策が打てないというのもありますし、また、右下にありますように、関係者のデータが集まることによって、ビッグデータというような形で、より管理を高度化して行えるであろうという、そういったいろいろなメリットがあるだろうということで、浄化槽の台帳というものを整備していくというような規定を入れさせていただいたというところでございます。

 以上、短くはありますけど、簡単に浄化槽とはというところと、浄化槽行政の課題と最近の法改正の動きについて御説明をさせていただきました。

 以上でございます。

【細見委員長】 どうもありがとうございました。それでは、ただいまの説明に関して、御意見、御質問をお願いいたします。

 東委員から挙手があります。どうぞ。

【東委員】 御説明、ありがとうございます。

 質問は、最後の浄化槽法の改正のデータベースに関する話です。こちら大変興味深いのですが、最終的にこちらの委員会で必要となるCODや窒素・りんの負荷量というのは、例えばある地域からの負荷量といったものが、このシステムから求めることは可能なものなのでしょうか。

【相澤室長】 御意見、ありがとうございます。

 お答えさせていただきますと、これは先ほど申し上げた中で、4月1日施行でございまして、浄化槽台帳というのは、法律に位置づけたのは今回の改正なんですが、その前につくっている自治体が幾つかございましたと。あと、全国一律について言いますと、4月1日施行で、今後3年かけて各自治体さん整備していってくださいというところでございまして、今これからつくっていこうというところでございます。

 そういった中で、地域事情とかも、ある程度うまく入れながらつくっていくという形になるかなと思っておりますので、今の段階でどこまでそういう情報が、どういう形で整備していくかというのは、まだ決まり切っているわけではなく、まさにこれからつくっていく段階ではあるんですが、例えば閉鎖性海域のある地域では、そういった情報も併せて管理していくような考え方はあり得るかなと思っております。

 以上でございます。

【細見委員長】 東委員、よろしいでしょうか。

【東委員】 ありがとうございます。そういうシステムをつくっていただくと、こちらの政策に活用できるかと思いますので、よろしくお願いいたします。

【細見委員長】 これは私からも、下水道に関してはいろんなデータが公表されたりしていますけれども、各地域の浄化槽に関する負荷というのは、実態というのがどうなっているのかというのが、なかなかデータを収集するのが難しいのかなと思いますので、できれば一括した管理の下でデータが集まってくるというような仕組みであれば、今後の浄化槽の効果的な運用とともに、社会制度に対しての貢献というのができるんじゃないかと思います。どうぞよろしくお願いします。

 何か、相澤さん、コメントございますでしょうか。

【相澤室長】 1点だけ。ぜひそういった形で、なるべく皆さんにいろんな要素に使っていただくようなデータを目指していくというのは、台帳の基本的な考え方だと思っております。

 ただ、やはり難しいなと思う面も幾つかございます。一つは、浄化槽を扱ってらっしゃる自治体さんは、職員が少ない自治体さんが多く、そういった自治体さんですと、システムに入れる情報はなるべく簡単なほうがいいという、データを入れる人からすると、なるべくデータを少なくしたいと、そのほうが実際ちゃんと使いますというのがある中で、データはリッチなほうがいいというのがあって、そのバランスと、あと窒素、りんなんか、やはり地域事情があると思いますので、地域事情でアドオンでこういう情報も自分たちがやるんだというところを受入れ可能にして、その地域地域によってなるべく使いやすく、長く使ってもらえる、役に立つシステムをつくっていくという、このバランスを考えていかないといけないと思って、今、システムの開発ですとか、そういったところをやっていこうというのが、現状でございます。よろしくお願いいたします。

【細見委員長】 ありがとうございます。田中委員から挙手があります。どうぞ。

【田中委員】 貴重な情報、ありがとうございました。なかなか単独浄化槽がどれぐらいの数残っているかという、なかなか手に入らない情報を頂きまして、ありがとうございます。

 言われるように、単独し尿浄化槽を合併浄化槽に、当然これは持っていかないといけないというのは昔からあったのが、こういう法律の施行で少しは進むことが期待されると思います。同時に、少し知りたい情報として、今日の特に千葉県の方からの話があったんですが、水域が特に漁業側から見て、残留塩素の話がやはり気になるという話があります。この総量規制とは直接関わらないんですけども、浄化槽における消毒槽の塩素がどのように管理されているのか。恐らくこれまでの私の知識だと、固型塩素による対応が中心だと思うのですが、いろんな漁業関係の方からの懸念もあり、何らかの対応をされ始めているのか。特に、一番最後に言われていた、BOD高度除去型の浄化槽だと膜分離されているので、今の規制されている大腸菌群に関しては、ほとんど膜が健全である限りはゼロになっていると思うのですが、このようなところもやっぱり消毒槽をつけられているのか、その辺の何か情報が少し、今お持ちでしたら、教えていただきたいんですけど。

【細見委員長】 相澤さん、どうぞよろしくお願いします。

【相澤室長】 御指摘の点は、先生のほうが詳しいかもしれないんですけれども、大腸菌群なんかは、指定検査のときに検査をされておりますし、あと、塩素消毒の部分に関して言うと、通常の維持管理の保守点検の過程で、強過ぎず弱過ぎずというか、殺菌をするんですけれども、ただ、あまり塩素濃度が高い状態で出てしまうと、実際に悪影響というのと、あとやはり塩素の消費が早くなってしまって、浄化槽の機能としてもよくないというか、そういうのもあって、維持管理のときに浄化槽の塩素消毒の上げ下げができるようになっているというのが普通の浄化槽ですので、それで調整していると聞いているところではあります。

【田中委員】 そうですか。そうすると、特別に何か構造上配慮を、新しい浄化槽から配慮するという形には、まだなってないということですね。それぞれの管理者、個人管理か、これから公共管理になるので、割とそこの部分は介入される可能性があるかもしれませんけど、現状のところは、管理者に任されているということですか。

 今よく分からなければ、また、別の機会か何かで少し教えていただけると、と思いますので、また、よろしくお願いします。

【相澤室長】 分かりました。後ほど御説明をさせていただくような形にさせていただければと思っております。管理者に任せるというか、維持管理のときに適切に管理していただくというのが、やはり設計上どうこうというよりは、むしろこれしっかり維持管理していくということが浄化槽は大事でございますので、そういった中でやっている話だと思いますけれども。ちょっとそこのところについて、ちゃんと御説明できるような資料にして、提出させていただきたいと思います。

【田中委員】 ありがとうございます。

【細見委員長】 小川委員から挙手があります。

【小川委員】 すみません、むしろ田中先生の御質問に対するコメントになってしまうと思うんですが、浄化槽の消毒に関しては、日常管理では残塩が検出されればオーケーという基準になっております。ただし、放流先が河川等で、アユの養殖等をやっている場合には、漁協関係者から紫外線消毒にするようにという申出があって、紫外線消毒に切り替えているという事例があります。ただ今回、3海域まで流下することを考えると、果たして残塩がそこまで残留しているかという点に関しては、極めて少ないと思います。

 以上です。

【細見委員長】 コメント、どうもありがとうございました。

 以上で、本日、ヒアリングの説明と御意見とか、あるいは質問については、一旦終わりにさせていただいて、全体を通じて何か御意見、特に御意見があれば、今、時間を2~3分設けたいと思います。いかがでしょうか、全体を通じて、委員の方から何か御意見等ありましたら、挙手をお願いいたします。

 三浦委員から上がっていますが、どうぞ。

【三浦委員】 今日のヒアリングを全体通して聞いていたところでございますけれども、総量削減制度の中では、各圏域に割り当てられた負荷量、栄養塩が上限となっているために、更にもっと栄養塩が必要と考えている瀬戸内海の湾灘地域ですとか、圏域も存在しているということから、適切な栄養塩管理に向けた研究調査の取組をもっともっとお願いをするとともに、それから愛知県ですとか、三重県、そして兵庫県さんなども発言されておりましたけれども、これ以上の総量削減は困難であるという中において、季節管理も含めた総量管理の視点も取り入れながら、過去の水準に戻ること、そういうことも視野に入れながら幅広い議論を行っていただきたいというのが、私の意見でございます。

 以上です。

【細見委員長】 ヒアリングに対してというよりは、これからの進め方についての御意見かなと思います。本日のヒアリング全体を通じて、ほかに御意見ございますでしょうか。

 それでは、続きまして、議題2、その他ですが、事務局からお願いいたします。

【濵名室長補佐】 環境省、濵名でございます。一点御説明させていただきたいことがございます。本日、チャット機能で平沢先生からの音声がよろしくないという御指摘もございまして、各委員の中でよろしくないとか、あるいは何かつながりが部分的に悪いとかという部分もあったかもしれません。御不明な点とか、あるいは改善の可能性が探れないかといったものにつきましては、次回までに、ぜひ我々でも事前の接続確認ですとか、そういったものを強化して対応してまいりたいと思いますので、音声や接続に御不安をお持ちの方は、出欠確認等の御連絡の際に、併せて接続確認・音声確認も御用命いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【細見委員長】 事務局、ほかに連絡事項ありましたら、お願いします。

【事務局】 本日の議事録についてですが、速記がまとまり次第、皆様にお送りいたしますので、御確認をお願いいたします。全員の御確認を頂いたものを、環境省ウェブサイトにて公開いたします。

 また、次回の日程につきましては、既に調整させていただきましたとおり、9月29日、火曜日の15時半からを予定しております。どうぞよろしくお願いいたします。

【細見委員長】 どうもありがとうございました。本日は、非常にヒアリングの中で各都県からいろんな強い要望もあったかと思います。それから、水質の実態というのも踏まえた上で、今後の議論につなげていきたいと思います。

 以上をもちまして、第3回の総量削減専門委員会を閉会とさせていただきたいと思います。本当にお忙しい中、長い間どうもありがとうございました。

午後5時23分 閉会