中央環境審議会水環境部会総量削減専門委員会(第5回) 議事録

議事録

午後2時31分 開会

【山田係長】 定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会水環境部会第5回総量削減専門委員会を開会いたします。

 委員の皆様におかれましては、お忙しい中ご出席いただき、誠にありがとうございます。

 本日の出席状況でございますが、委員16名中、現在のところ13名のご出席をいただいております。委員につきましては、お手元にお配りしております委員名簿をもってご紹介に代えさせていただきます。本日、中村委員からはご欠席とのご連絡をいただいておりまして、阿部委員、長﨑委員からは遅れて来られるというご連絡をいただいております。

 続きまして、今回の議題でヒアリングを予定しております関係団体の方々を発表順にご紹介いたします。

 一般社団法人日本経済団体連合会環境本部の酒井上席主幹でございます。

【酒井上席主幹】 お願いします。

【山田係長】 一般社団法人日本鉄鋼連盟環境エネルギー政策委員会環境保全委員会土壌・水質分科会の丸山主査でございます。

【丸山主査】 丸山でございます。よろしくお願いいたします。

【山田係長】 一般社団法人日本化学工業協会環境安全部の紫竹部長でございます。

【紫竹部長】 紫竹でございます。よろしくお願いします。

【山田係長】 NPO法人海辺つくり研究会の古川理事でございます。

【古川理事】 古川です。どうぞよろしくお願いいたします。

【山田係長】 続きまして、資料の確認をさせていただきます。議事次第、配席図の次、資料1が委員名簿、資料2から5までがヒアリング資料で、資料2が経団連分、資料3が鉄鋼業界分、資料4が化学業界分、資料5がNPO団体分となっております。その後に、資料6及び長﨑委員より提供いただいた資料をつけております。

 不足がありましたら、事務局までお申しつけください。よろしいでしょうか。

 なお、本日の会議は、中央環境審議会の運営方針に基づきまして、公開とさせていただいております。プレスの方は、これ以降の写真撮影等はお控えいただきますよう、よろしくお願いいたします。

 それでは、この後の議事進行につきましては、岡田委員長にお願いしたいと思います。岡田委員長、よろしくお願いします。

【岡田委員長】 はい、かしこまりました。

 委員の皆様、それから、ヒアリングをお願いしました関係団体の皆様方、大変ご多用の折、ご出席いただきまして、誠にありがとうございます。

 本日は、17時ぐらいを終了ということで、目処に議事を進めさせていただきますので、ご協力のほどをよろしくお願いいたします。

 早速ですが、議事に入りたいと思います。最初の議題は、水質総量削減制度に係る取組の実施状況についてとなっております。まずは、事務局から本日のヒアリングの進め方についてご説明をお願いいたします。

【石川室長補佐】 今回は、産業界の取組として3件、NPO団体の取組として1件の計4件を予定しております。各団体からの発表時間は10分程度、各発表の後に、それぞれ5分程度の質疑応答という形で進めていただければと思います。なお、一番初めの経団連さんの発表につきましては、時間は5分程度と伺っておりまして、特に質疑時間は設けずに、そのまま鉄鋼連盟さんの発表に移るということでお願いできればと思います。もし質問などございましたら、全体の質疑時間などにお願いできればと思います。それでは、よろしくお願いいたします。

【岡田委員長】 ということですが、進め方について、何かご質問、ご意見等ございますか。よろしいですね。

 それでは、今の進め方に従って、ヒアリングを行いたいと思います。よろしくお願いいたします

 まずは、資料の2になります。経団連の酒井様からご説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【酒井上席主幹】 岡田委員長、ありがとうございます。経団連事務局の酒井と申します。

 本日は、産業界にこのような機会をいただきまして、誠にありがとうございます。では、座らせていただきます。

 第7次までの期間中の具体的な取組につきましては、後ほど関係の業界からご説明をいたしますので、私からは総括的に発言をさせていただきます。

 産業界は、閉鎖性海域のステークホルダーとして、これまでの7次にわたる総量削減に対応し、可能な限りの設備投資を行うなど、排水管理を強化し続けてまいりました。各工場では可能な限り水を循環利用しており、排水につきましては、汚濁負荷量を低いレベルに抑えるよう適切に処理した上で、公共用水域に排出しております。この結果、産業系のCOD負荷量は、資料2ページのとおり、大幅に削減され、これ以上の削減は困難なレベルに至っております。

 また、3ページのとおり、これまで一貫して目標値を下回っております。産業系のCOD発生負荷量は、東京湾、伊勢湾、瀬戸内海の各海域内で一定割合を占めており、産業界は閉鎖性海域において責任ある立場にあると自認しておりますので、産業界はこれまでの努力を真摯に継続してまいりたいと考えております。

 このような中、さらに規制を強化されるようなことがあるのであれば、規制の科学的根拠が必要なのではないかと存じます。規制が強化されますと、新たな設備への投資及びその運転のためにコストが増加することとなります。専門委員会の場ではございますが、我が国産業界の国際競争力についてもご考慮に入れていただければ、大変幸いに存じます。

 次に、4ページをご覧ください。陸域からのCOD負荷量が大きく減ってきたことは既にご説明いたしましたが、環境基準の達成率は、グラフにあるように横ばいです。陸域からの負荷量の削減だけでは閉鎖性海域の水質改善の効果に限界があるのであれば、海域の対策をとっていただく必要があるのではないかと存じます。環境基準の達成という観点だけではなく、青潮や赤潮による漁業被害や、におい、景観といった問題を解決するためにも、海域の対策は有効とされております。陸域からの総量規制を維持しつつ、各海域の課題を認識した上で、それらの課題を直接解決することができる海域の対策が、今、求められていると存じます。

 海域の対策としましては、閉鎖性海域中長期ビジョン、海域のヘルシープランにおいて、藻場や干潟の造成、深掘りの埋め戻しなどが挙げられております。これらを防災対策との両立を確保しつつ、各省の連携のもとで、水域ごとに推進していただくことを期待いたします。

 これらの対策を推進するため、陸域からの総量削減のあり方より、むしろ豊かな海の創生活動のあり方といった観点からご検討いただいてはいかがかと存じます。

 それでは、これまでの取組の具体的内容につきまして、関係の業界からご説明いたします。よろしくお願いいたします。

【丸山主査】 本日は、鉄鋼業の総量削減の取組につきまして、説明するお時間を頂戴いたしましてありがとうございます。私、日本鉄鋼連盟土壌・水質分科会の主査をさせていただいております丸山と申します。それでは、すみませんが、座ってご説明させていただきます。

 鉄鋼業におきましても、総量削減計画のもと、率先して対策を講じてまいりました。資料番号1を使いまして、まずは私どもの取組を説明する前に、鉄鋼業の製造工程につきましてご説明させていただきます。

 鉄を製造する際ですが、鉄鉱石や石炭といった原料を海外から輸入しまして、高炉という設備を用いまして、鉄鉱石に含まれる酸化鉄を、コークスを用いて還元して銑鉄を製造いたします。このときには1,500℃~1,600℃という高温になりまして、こういった設備の保持をするためにも水が必要になります。また、つくりました銑鉄につきましては、次工程の転炉に持ち込みまして、炭素分を除去し、あるいは成分調整をして鋼というものをつくります。つくりました鋼を加工いたしまして、板ですとか、パイプを製造するというのが製造工程になってございます。

 鉄の製造工程は非常に高温の溶融物を取り扱うということもありまして、設備の冷却に水を使いますし、また、製品を製造するに当たっても、直接高温の鋼材に水をかけるといった冷却の使用もございます。したがいまして、水の使用量は年間で約137億トンと膨大な量になってございます。と申しましても、一回使用しました水につきましては、全量排水してしまうのではなくて、循環使用に心がけております。循環使用率は90%となっておりまして、残りの10%も全てが排水となるというわけではなくて、一部は蒸発してなくなっているという部分もございます。

 製造工程の中では、コークス炉から発生する工程水、こちらは全窒素とCODの濃度が高く、また、製品の表面をきれいにするために酸洗という工程がございますが、この工程で硝酸を使うということもありまして、全窒素が高い工程水が発生するということでございます。

 また、製鉄所の中では多くの者が仕事に携わっておりまして、それらの者の生活排水を処理するといったところも重要な対策の一つになるということでございます。

 2ページ目を見ていただきまして、マクロではございますけれども、設備投資とCOD負荷の推移をご説明させていただきます。こちらに関しましては、3海域を合計した数値になっております。総量規制前の累積の投資額といたしまして550億円ございました。それから、1次から7次まで設備投資を継続いたしまして、合計といたしましては667億円といったものになっております。設備投資だけではなくて、そのほか、操業改善や設備補修等コストを使いながら、こういった対策の効果を維持あるいは改善しているという状況でございます。その効果といたしまして、昭和54年度で23.7トン/日であったCOD負荷量は、平成21年には10.3トン/日というところまで下がっております。陸域からの負荷量低減につきまして、可能な限り努力しているという状況でございます。

 資料の3番目をご覧ください。こちらの表にはCODの負荷量削減対策を記載させていただいております。下から2番目、1番目、6次・7次の特徴といたしましては、既存の排水処理設備に対しまして、設備、装置を追加することで、負荷量を減らしたり、あるいは設備をより安定的に操業できる処理方法へと改善しているというところが特徴でございます。

 また、自動測定器を排水口だけではなく、工場直近に設置いたしまして、傾向監視をすることによって設備の劣化を早期に発見し、漏えい量を少なくするといったような対策も実施してございます。

 また、浄化槽につきましても、高度処理化、あるいは単独浄化槽から合併浄化槽へ更新しているというところも進めているところでございます。

 ページ4番目になりますが、COD対策の一例でございます。従来ありました含有排水処理設備の後段に活性汚泥処理設備を追加することによりまして、総負荷量を減らしているような事例になってございます。

 次に、5ページ目でございますが、これにつきましては、コークス炉に設置しております活性汚泥の後段に、やはり高速ろ過設備、それから活性炭吸着設備を追加することによって、負荷量を下げていったといったような事例でございます。

 次に示させていただいておりますのは、全窒素の対策になります。枠番号6でございます。全窒素につきましては、平成12年度以前の対策といたしましては、28億円の設備投資を実施しておりました。5次から7次の間に68億円の追加対策を実施しております。負荷量につきましては、平成11年度で51トン/日であったものを21年度には27.7トン/日へと低減してございます。COD同様に、陸域からの負荷量削減に可能な限り努力をしているという状況でございます。

 次のページを見ていただきまして、全窒素対策の経緯を示させていただいております。個別の説明につきましては、後ほど説明させていただきますが、コークス炉の工程水を処理するためのアンモニアストリッピング設備、これに対しまして、設備を増強している、あるいは酸洗工程で発生する水に対する設備を増強しているというような状況でございます。

 次のページに詳細を示させていただいております。コークス炉の工程水中にはアンモニアが含まれております。この除去をする技術でございます。既存のアンモニアストリッパ設備がございますが、これに対しまして、赤文字で示させていただいております装置を追加することで、アンモニアの除去効率を上げているという事例でございます。具体的には、工程水に水酸化ナトリウムを添加いたしましてpHを上げます。また、加温することによりまして、よりアンモニアを気化させて、工程水から除去いたします。除去したアンモニアにつきましては、ガス精製設備へ送りまして回収しているということになります。アンモニアを除去しました工程水は、中和、活性汚泥でさらに処理されまして、COD、窒素を低減してから排水するという工程になります。

 次のページをご覧ください。こちらにつきましては、高効率の窒素除去装置でございます。酸洗工程の排水には硝酸が含まれております。硝酸は中和あるいは沈殿といった形での無機的な処理が困難な物質でございます。本脱窒素技術につきましては、嫌気性条件下でメタノールを水素供与体として添加することで、硝酸を窒素ガスにまで還元する設備になってございます。ですが、この設備ですが、夏場には水温が高くなることで微生物の活性が低下しまして、効率が落ちる現象が見られました。こういった微生物の活性化を落とさないということで、工水を添加することによって温度調整して、除去効率を高位に安定させるというものを、今回、7次で追加しているという状況でございます。一度導入しました技術に対しても、より効率を高くするための改善を継続的に進めております。

 次のページをご覧ください。窒素対策の最後の事例でございますが、これは酸の回収設備を設置いたしまして、硝酸を回収して、回収した酸は再度使用するということで、排水へ漏えいする酸の量を低減することで、負荷量を減らすという技術でございます。

 今までに説明しましたように、鉄鋼業におきましても、さまざまな負荷の低減対策に加えまして、運転のための溶液、労務、それから設備の補修等のコストを投じまして、負荷量の低減に可能な限り努めてきたところであります。

 豊かな海を実現するために、陸域からの負荷量低減だけではなく、本当に有効な対策が何か、海域への対策を含めて検討をこれから進めていただければと考えております。また、こういった(総量負荷低減)技術につきましては、情報を鉄連の中の会員企業とも情報共有化しまして、なるべく広めている状況でございます。

 続きまして、海域別の状況を少しご説明させていただきます。東京湾につきましては、COD負荷量はほぼ横ばいという状況になってございます。全窒素につきましては、低下傾向という状況でございます。

 次のページには、伊勢湾の状況を示させていただいております。CODの負荷量につきましては、若干の減少傾向、窒素につきましては、一旦増加しましたが、設備投資後、低減しているという状況になってございます。

 次のページでは、瀬戸内海でございます。COD、窒素ともに、負荷量は低減しているという傾向になってございます。また、大阪湾のCODのデータにつきましては、第7次の専門委員会の資料からデータを引用させていただいておりますけれども、瀬戸内海のデータとしては内数になっておりまして、負荷量的には少ないといったようなところが見られます。

 最後になりますが、鉄鋼業の意見を述べさせていただきます。鉄鋼業は、7次にわたる総量規制に対応して、設備投資、管理強化を進めました。また、汚濁負荷物質の排出量の抑制に努めております。

 第8次の総量削減のあり方に関しましては、「豊かな海」をどのように構築していくかという観点から、「陸域からの汚濁負荷低減」だけではなくて、「栄養塩類の適切な管理」方法や、「藻場・干潟・深掘の修復」といった海域への直接的な働きかけをぜひ検討いただきまして、有効な手段としていただければと思っております。

 以上でございます。

【岡田委員長】 経団連の酒井様、それから、ただいまの鉄鋼連盟の丸山様、ご説明ありがとうございました。

 それでは、ただいまのご説明に関しまして、ご意見、ご質問等がございましたらお願いいたします。どうぞ。

【平沢委員】 鉄鋼の8ページ目のアルカリストリッピングのアンモニアの回収ですが、これは何%くらいのアンモニア水が回収できるんでしょうか。

【丸山主査】 こちらは、アンモニア水の回収というよりは、アンモニアを気化してガス化するという設備になってございます。もともと排水に含まれているものを100といたしますと、既存の設備ですと6割ぐらい、それを改良することによりまして、8割ぐらい排水中のアンモニアを削減できるという技術になっています。

【平沢委員】 ありがとうございます。それから、もう1つ、10ページの酸回収ですが、先ほど聞き漏らしちゃったのですけども、酸の回収について、硝酸とか、塩酸とかあると思うんですけども、例えば硝酸の回収はやられているでしょうか。

【丸山主査】 こちらの酸の回収は硝酸の事例でございます。

【平沢委員】 手法は秘密なのかもしれませんけど、例えば電気透析とか、蒸留とか、その辺の技術なのでしょうか。

【丸山主査】 膜ろ過になります。

【平沢委員】 膜ろ過、電気を使うと。

【丸山主査】 イオン膜によるものです。

【平沢委員】 そうですか。わかりました。どうもありがとうございます。

【岡田委員長】 ありがとうございました。

 ほかにございますでしょうか。どうぞ。

【長田委員】 農業系のほうの処理を担当しております長田と申します。

 誠に立派な除去のやり方と、総量規制に対する対応というのを感心してお聞きいたしました。その上でお聞きしたいんですけども、まず4ページのほうにございます2次処理の事例で、従来の方法にさらに生物処理を加えて、COD負荷を低減すると。私どもの考え方としては、生物処理よりも物理処理のほうが高度に除去できるのかなと思いつつ、この濃度レベルというのはどの程度のものを想定しておられるのか、教えていただければと思います。

【丸山主査】 すみません、ちょっと詳細のデータは手持ちにはございませんが、一般的なお話をさせていただきますと、まずは前段のものに関しましては、水に溶けにくいといいますか、油を除去する設備になっております。ただし、どうしても製造工程の中でエマルジョンのようなものになりまして、水の中に溶け込んでしまうというか、浮上しなくなるようなものがございます。それを除去するために、後段で生物処理をかけているという、追加したという対策になってございます。

【長田委員】 かなり高い濃度のものを除去するということになりますでしょうか。CODの濃度の話です。

【丸山主査】 すみません、ちょっとそこはデータの持ち合わせなく、申し訳ありません。

【岡田委員長】 よろしいですか。

【長田委員】 はい。

【岡田委員長】 ほかにございますか。

 じゃあ、私のほうから、5ページですが、コークス炉みたいなところで活性炭設備なんかを増強したということですが、コークス炉は日本全国にあると思いますが、ほぼ全てのところがこういう装置を設けた処理プロセスをとっているのか、こういうプロセスもあるということなのか、せっかくの技術開発がどのくらいの普及率なのかというところを、簡単に教えていただければと思います。

【丸山主査】 凝集沈殿の後に活性炭の設備を導入するというのは、比較的めずらしい対策ではないということです。すみません、ちょっと導入率までは把握はできておりませんが、少なからずこういった活性炭の設備を入れていると考えております。

【岡田委員長】 わかりました。ありがとうございました。

 ほかにございますか。

 よろしければ以上にさせていただきます。どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして、資料4になります。日本化学工業協会の紫竹様からご説明をお願いいたします。

【紫竹部長】 ただいまご紹介いただきました、日本化学工業協会環境安全部の紫竹でございます。本日は、このような機会を設けていただきましてありがとうございます。着座にて説明いたします。

 私からは、資料4に基づいて、化学業界における水質総量削減への取組状況と今後の課題について説明いたします。

 2ページ目をご覧ください。本日は、以下のとおり、化学業界の総量削減に対する取組状況と今後の総量削減に対する課題と要望の大きく2点についてご説明いたします。

 3ページ目をご覧ください。まず、過去から直近までの化学業界における排出量の推移、COD、窒素、りんでございますが、それについてご説明します。

 日化協では、CODについては平成7年から、窒素及びりんにつきましては平成13年から、会員のデータを毎年収集していますが、指定水域ごとの集計はしていませんので、このグラフは全体の傾向としてご覧いただきたいと思います。棒グラフが年間の総排出量になります。そして、折れ線グラフは、その量を売上高で割った、いわゆる原単位と称しておりますが、それを示しております。COD、窒素、りんは、ともに本専門委員会の第1回、環境省様からご説明があった汚濁負荷量の状況の報告と同様に、過去から近年にかけて削減傾向を示しており、特に特記事項としましては、平成20年~21年、ここの排出量が、その前後に比べて極端に減少しております。これはリーマンショックによる影響ではないかと考えておりまして、水質とは直接関係ありませんが、先日、環境省様から公表されましたPRTRの排出量も同様の傾向を示しており、産業界の全体に言えることではないかなと推察しております。

 それから、もう一点、特記としまして、平成25年、一番最近のデータでございますが、その原単位が総排出量に比べて向上しています。折れ線グラフとして下に下がっているという意味でございますが、これはアベノミクス効果による現れではないかと推察しております。

 それでは、4ページ目をご覧ください。このフローは、化学製品の製造プロセスと排水処理のフローの一例を示したものですが、日化協の会員の製品は、素材製品から加工製品、ひいては一般消費者向けの商品といった非常に長いサプライチェーンを持っており、必ずしも本フローに合致したものではない点をご了承願います。しかしながら、排水処理については、幾つかの前処理の後、最終処理として、下水道と同様に、活性汚泥による生物処理の後、間接冷却水などと一緒に公共水域へ放流されている点は共通かと思います。

 次、5ページ目をご覧ください。ここでは、第6次までに大型投資として負荷削減のために実施してきた対策を負荷の発生源対策と系外処理の点から列挙したものです。これはその時々の国の規制基準より一段厳しい自治体条例あるいは協定を遵守するために対応してまいりました。これらの内容につきましては、過去のあり方専門委員会の本日と同様の場で詳細を説明してまいりましたので、ここでは省略しますが、全体で数千億円の規模の投資をかけて負荷削減をやってきたというのが現状でございます。

 6ページ目をご覧ください。これは今申し上げました主な負荷削減対策施設を、先ほどの既存のフローにどのように追設あるいは増強してきたかというものを示したものでございます。ご参考までにご覧いただければと思います。

 次に、7ページ目をご覧ください。これは、ここ最近、5年間で実施してきた主な排水管理対策を示したものです。大きな流れとしては、負荷量を大幅に削減するよりは、いかに安定化させて処理効率を向上させるか。末端の処理から発生源対策を強化し、負荷変動の際の対応とシステムの強化が中心です。

 一つ目の活性汚泥処理効率の向上には、負荷量の高位安定化、監視装置の充実や、施設の老朽化対策と新たな処理技術の導入です。

 二つ目の発生源対策は、源流管理を強化し、下流への負荷を安定化させることを目的としています。これらの対策にも、各社、数億円規模の投資をかけていると聞いております。

 8ページ目をご覧ください。これは前のページでご説明しました発生源対策、その中での源流管理強化の一例です。化学工場には、化学製品のユニットごとに多くの製造プラントを有し、これらから個別排水が集約して、活性汚泥装置や公共水域へ排出されます。個々の排水水質は、個別プラントの稼働率や経時的な機器の汚れ、あるいは自然環境、気温、雨量といった変化により変動することがあります。そして、自主管理値を外れた場合、これを早期に検出、遮断、回収して、最終排水処理や公共水域への流出を防止するシステムを構築しております。

 次の9ページをご覧いただければと思います。これは今まで申しました対策というよりは、排水に限らず環境データを管理する上でのソフト面の対策を強化したものです。環境データは、法、条例、協定等により、自治体によって個別の基準値や測定頻度が定められていますが、これらの測定計画から分析結果に至るまでのデータを一元管理し、必要な承認手続を簡素化し、傾向管理もできるシステムです。また、過去に発生した産業界での環境管理に係るコンプライアンス問題への対応の一環としても有効とされています。

 次の10ページ目をご覧ください。これは今申し上げました環境データ管理システムの概要を図示化したものです。データの入力を極力自動化させ、データ修正も上司承認がないとできないシステムとし、従来は担当から公害防止管理者までの書類回覧によって承認をしてきた測定計画あるいは分析結果等を各自のパソコンで電子承認することにより、作業を迅速化するとともに、効率を上げ、データを転記せずに行政報告書などを自動作成するシステムです。また、施設ごとの数値の傾向管理もグラフ化などにより監視もでき、変動への早期アクションにも結びつきます。

 ここまでが今までの取組の状況でございますが、11ページ目をご覧ください。ここからは今までの取組に対する課題、懸念事項及び本専門委員会への要望事項です。

 まず、課題についてですが、系外処理である活性汚泥処理については、微生物相手の処理であるため、いかに原水の水質を安定に保つか、また、稼働率や自然環境などの変化による水質変化にいかに迅速に対応するかがポイントです。これは小さな子供が風邪やインフルエンザにかかり、発熱、嘔吐、下痢をして、体力が低下するのと同じことが言えます。特に高負荷排水処理には、設備投資だけでなく、多くのコストをかけている点もご理解いただきたいと思っております。

 12ページ目をご覧ください。したがいまして、今後、さらなる排出規制が必要となると、業界としては、科学的に必要性が認められる場合は、これからも真摯に取り組んでまいりたいと存じますが、今までいろいろ対策を打ってきて、コスト的にも、処理能力の点でも限界に来ており、かつ、施設の老朽化対策、更新を考える時期に来ております。特に活性汚泥装置は、主流が表面曝気システムであり、下水処理場をご覧いただければご理解いただけると思いますが、広い用地確保が必要です。工場を停めて建設することはできず、スクラップアンドビルドする上では、既存施設を動かしながら建設する。そのためには、多額の投資と用地確保が必要な点をご理解いただきたいと思います。

 13ページ目をご覧ください。最後となりますが、本専門委員会においては、今まで指定海域隣接の各自治体から、あるいは本日、経団連様あるいは日本鉄鋼連盟様からのご説明にもありましたように、環境基準の達成率の改善や、豊かな海を目指す上には、陸域からの総量削減だけでは限界があり、汚濁に係るさまざまな因子の因果関係を科学的に解明、検証いただき、海域側の対策も加速することが必要と感じております。そのため、本専門委員会では、総合的な評価結果に基づくあり方を検討いただくよう切に希望します。

 以上で説明は終了しますが、最終ページに主な汚濁負荷削減技術の用語解説を載せましたので、ご参照ください。ありがとうございました。

【岡田委員長】 紫竹様、どうもありがとうございました。

 それでは、ただいまのご説明に関しまして、ご意見、ご質問等がございましたらお願いいたします。

【平沢委員】 5ページ、6ページのところの負荷削減で、今までに結構やられているところもあるのですが、湿式酸化とか、液中燃焼とかというのが大分出てきて、これは生産工程で出てくる高負荷の部分もうまく切り分けて処理するというイメージでの対策なのでしょうか。

【紫竹部長】 はい、おっしゃるとおりで、一つのプロセスの中でも高負荷の排水が出てくるユニットがございますので、そこだけ切り分けて、湿式酸化、あるいは液中燃焼ですから、完全に有機物質を燃焼させてしまうということでございますが、そして最終的な排水につなぎ込むやり方で、高負荷の部分を対象としているということでございます。

【平沢委員】 どうもありがとうございます。もう一点よろしいでしょうか。12ページ目、今後の課題ですが、今の活性汚泥の設備がほぼMaxであるというお話がありましたけれども、それは、今後CODが排水処理に入る側で増えてくると対応できないという意味なのか、あるいはCODの質が変わって処理しにくいのか、その両面ということなのでしょうか。

【紫竹部長】 詳しいことは、ちょっと私もわかりかねる部分がありますが、両方の面が言えるかと思います。いわゆる化学産業というのは、年々というか、あるインターバルでいろんな製品のスクラップアンドビルド、あるいは新しい製品という開発が行われています。直近ですと、石化ではエチレンが余っているので、エチレンセンターをとめるといったようなことも各地区で行われていますので、それぞれのエリアごと、そのCOD負荷等も変化はしていると思います。したがいまして、結局、活性汚泥は、微生物ですので、その排水に含まれている含有物に順応させなければいけないと。そういった意味で、全体として、ほぼMaxに近い状態まで来ているという意味合いでございます。

【平沢委員】 どうもありがとうございました。

【岡田委員長】 ありがとうございました。

 どうぞ、松田委員。

【松田委員】 詳しいご説明ありがとうございました。スライドの7ページ目と8ページ目の、源流管理の強化のところについてちょっとお伺いしたいのですが、8ページ目のほうは、個別プラントごとに監視して、もし問題があればすぐ遮断するというのはよくわかりました。一方、7ページ目の下のほうには、排水口の統合ということが書いてありますが、これは公共用水域への出口という意味でしょうか。この統合の意味がわからなかったので、どのような意味かを教えていただきたい。よろしくお願いします。

【紫竹部長】 おっしゃるとおりでして、排水口ですので、公共用水域、いわゆる湾、あるいは海洋につながる河川にたくさんの排水口が出ておりますと、それぞれ、分析、管理をする上で非常に苦労します。そういう意味で、工場内のその排水口を統廃合して、極力公共用水域に出る口を減らすことをやって全体で管理をしやすくする。いわゆる水質の大きな変動を与えないようにすると言ったらよろしいでしょうか、そういう対策を打っているという意味合いでございます。

【松田委員】 ありがとうございました。

【岡田委員長】 ありがとうございました。

 ほかにございますか。どうぞ。

【長田委員】 たびたび細かいことを聞いて申し訳ありません。松田先生と同じ7ページ、8ページのところですけども、第7次の排水管理対策の中で、活性汚泥処理効率の向上、安定稼働というところがございます。この安定高位といった場合の高位というのは容積負荷で、例えばCOD、窒素で、どの程度のものを指すのかなというのがお聞きできればと思うのですが。

【紫竹部長】 具体的な数値という意味合いでしょうか。

【長田委員】 はい。

【紫竹部長】 各社、恐らく活性汚泥に入る前、あるいはその前後にいろんな処理装置を追加している部分もございますので、一概に、例えば数百ppmオーダーですということもちょっと言い切れないんですが、どのようにお答えすればいいのでしょうか。

【長田委員】 絶対濃度ではなくて、恐らく効率という意味では、例えば1立米なり、何立米なりの容積の中で、どの程度のCODを処理しているかという効率の問題だと思うのですが、そうではないのでしょうか。

【紫竹部長】 ここで言っています処理効率の向上というのは、その上流側、いわゆる活性汚泥装置に入る水質が高かったり低かったり不安定な状態ですと、その後、微生物がその負荷を分解してくれるわけなんですけども、その変動が大きいがゆえに、後ろにもその変動がそのまま出てしまう。すなわち、極力高いレベルで安定化させて、活性汚泥にかけてあげるということが効率の向上につながるという意味合いを書いたものです。

【長田委員】 わかりました。容積負荷の高位ではなくて、安定化のほうの高位ということでごすね。ありがとうございます。

【岡田委員長】 どうぞ。

【高澤委員】 経団連の高澤でございます。今のご質問につきまして、ちょっと補足を私のほうからさせていただきたいなと。

 今おっしゃられたとおりで、活性汚泥の安定のための手続というか……

【長田委員】 前処理の。

【高澤委員】 はい。いわゆる化学プラント、連続系のものはそう大きい変動はないのですけども、工場によってはバッチプラントがございまして、非常にCODの負荷の差の大きい排水を出すということがございます。銘柄によっても違うというようなことがございまして、そういう場合に、非常に濃いCODがどんと活性汚泥に入りますと、活性汚泥が非常に影響を受けまして、弱る、非常に不安定になるというようなことで、例えば前に何千立米という大きいバッファのピットをつくりまして、その中に全部一回入れまして、それを均質化した後に濃度と流量を見ながら、活性汚泥の負荷を調整するというようなことをいろいろとやっているというようなところが、この安定稼働対策でございます。

【長田委員】 どうもありがとうございました。

【岡田委員長】 ありがとうございました。

 じゃあ、よろしいですね。どうもありがとうございました。

 それでは、以上にさせていただきまして、続いて、今度は資料5になります。海辺つくり研究会の古川様よりご説明をお願いいたします。

【古川理事】 改めまして、海辺つくり研究会の古川でございます。本日は、発言の機会をいただきまして誠にありがとうございます。

 早速ですが、説明に移らせていただきます。短い時間の発表ですので、お伝えしたいことを最初にまとめてございます。1枚めくっていただきますと、まとめと大きく出ています。私たちの海辺つくり研究会が目指しておりますのは、海辺と人の関係を再生することでございます。自然を賢く使う知恵を取り戻して、末永く海の恵みを得ることを目標としています。水質はその際の重要な要因でありまして、その利用者として感じていることを、本日、発表させていただきます。

 以下に活動のご紹介をしていこうと思っています。アマモ場の再生というのを行っていまして、水質を含めた環境と生物のつながりの強さということを強く感じます。それを正しく知って行動することというのが必要なのですが、わかっていることが非常に少ないのです。水質と生き物との関係について、もっともっと知らないといけないなと感じております。

 また、東京湾のお台場では、海苔作りにチャレンジしている小学生を応援しています。海苔作りにおいては、ある程度であれば、水質などの環境の変動に合わせて順応させる、適応させることができます。ある幅を持った中で水質を順応的に管理していくというような考え方もあるのではないかというようなことを、こういう経験から感じております。

 また、私たちの団体は、みんなでやる楽しい調査というものを得意としておりまして、江戸前ハゼを釣るというような調査ですとか、みんなでスコップを持って干潟に出ていく調査ですとか、そんなことをしています。その中で見えてくるものとして、貧酸素水塊の動向ですとか、運河を含めた河口の環境の大切さ、そこに注目することの大切さでございます。そうした特定の水質や水質項目、局所的な状況をつぶさに見るということが、湾内全体の環境の変動も推し量ることができるような、そういう働きかけになっているのではないかというふうに感じておるところです。

 それでは、中身を時間の限りご説明していきたいと思います。次のページ、3ページ目のところに文字が書いてございます。この文字と、次の4ページ目の写真がセットになってございます。主に写真のほうを見ながら、お話を聞いていただければと思っています。

 最初は、海辺と人の関係の再生ということでございます。昔より海辺は、人の身近にありました。例えばですが、アサリの稚貝が湧く干潟を村人総出で耕して、次の年に備える。漁師たちが海の祭りで、町内ごとに船を仕立てて競い合い、海への感謝をささげる。遠浅の海で脚立釣りを楽しむ。そういった釣りといえば、ハゼ釣り。東京湾ではハゼ釣りが非常に盛んで、昭和30年ごろにはハゼの集まる水深に沿って釣り舟が並んで、河口には肩触れ合わんばかりに釣り人が並んで、その水面の中にはアマモが生えて、その海域でそっと網を引くために、帆かけ舟、打瀬舟で網を引くといったような、海辺に人が寄り添って恵みを享受していた。そんな海辺と人間の関係というのがあった。そういう海域の再生に関わるような取組をしていきたいというふうに思ってございます。

 次に、アマモ場の再生の活動のご紹介をいたします。こちらももう1枚めくっていただきますと、6ページに写真がございます。とりわけ、人々が海から多くの恩恵を受けてきた場がアマモ場でございます。現在、消滅、衰退の危機にあると言われており、日本各地でその再生に向けた取組が進んでおります。

 左上のところは、市民が力を合わせて移植をして増やした神奈川県横浜市野島海岸のアマモ場です。白く見えるところが海岸線で、その地先、少し水の中に入ったところに帯状に色が濃くなっているところが再生されたアマモ場です。当初はほとんど何も見られなかったところが、これだけになりました。ただ、浅いところは波で乱されます。深いと光が届きません。そんなわけで、非常に狭い水深帯のところにアマモが生えているということになっています。そこでは、絵にあるように、実に多くの稚魚、魚、エビ、カニ、イカ、貝、ナマコとかといったようなものが見られます。

 このアマモ場は、2003年に、実は赤潮が原因と考えられている無酸素水が襲来して壊滅的な被害を受けました。まるで漂白剤を使ったかのようにアマモが脱色し、大量の魚、魚介がへい死した様子というものが目に焼きついています。今ではまた回復してきて、もとの形に近いところまで戻ってきておりますけれども、なかなか自然の変動というのは大きいなと思っています。

 下の段に参りまして、アマモを増やすとき、苗を植えるような方法ですとか、種をまく方法がございます。横浜では苗を植える方法が主に使われておりますけれども、岡山県備前市日生町では、漁業者が中心となって、種をまく方法でアマモ場の再生が行われています。約30年前から間断ない努力が払われ、ほぼ消滅してしまったアマモ場が再生しつつあります。日生ではカキの養殖が盛んですけれども、アマモ場がカキの生育を助けているというようなことがあるようです。2年前の高水温のとき、周りのカキ養殖が軒並み打撃を受ける中、日生のカキが無事でした。こんなアマモ場の再生を通して、水質を含めた環境と生物のつながりの強さを感じております。それを正しく知って行動することが必要ですが、繰り返しますが、なかなかわかっていることが多くございません。水質と生き物の関係について、もっともっと知らないといけないなというふうに感じております。

 次の事例が、お台場での海苔作りです。こちらも写真を見ていただきたいと思いますが、8ページ目になります。東京湾の湾奥の環境は大変厳しい状況にあります。この下の段に、赤潮の状況、また、青潮の状況があります。こんな状況で、実はお台場で小学生が海苔作りをしたいというふうに相談を持ちかけられました。誰もが「無理ではないか」というふうに考えました。ただ、実際にやってみると、驚くほど良質な海苔がとれるようになっています。種つけをした網を千葉の漁師さんに持ってきていただいて、お台場学園の目の前の海面に竹の柵を立てて育て、それを子供たちが手づみで収穫し、それを刻み、枠に流して、板状に干して、板海苔をつくっていく。こんなことを毎年やってございます。自然相手ですから、収穫は年ごとに異なります。不作のときもあります。そんなときに、子供たちに説明するために、水質と成長の度合いの関係などを調べるというふうなこともしてきました。水温、栄養塩、日照、海苔網の高さ、食害など、さまざまな要因の関係を調べますが、はっきりしたことはわかりません。

 今年度は、実は水温があまり下がらなかったということで、当初、大分心配しました。そして、この海苔作りに携わっているメンバーが潮が引く夜に集まって、毎週のように網の高さを変えたり、鳥よけの網を張ったり、お世話をして、無事に今年も豊かな収穫を得ることができました。

 水質や環境が海苔の成長に与える影響の科学的なメカニズムの探求も大切ですけれども、それだけに頼らず、海苔を育てる側の気遣いといったようなものも大切なんだと感じております。限界はありますが、ある程度であれば、ある水質に対して環境の変動に人々のほうが適応していくというようなこともできるのではないかというふうに思うようになりました。水質を管理するというような視点で、順応的に管理していく考え方、ある幅を持って管理する考え方もあるというようなことを思いついておりますけれども、ご検討いただければと思います。

 最後が、調査のお話です。江戸前ハゼや多摩川河口の調査ということで、最後のページにハゼ釣りの調査の様子、干潟での調査の様子というのをご覧いただいております。ハゼが川で大きくなっています。何で大きくなっているのだろうというのをこの調査で調べてみましたらば、どうやら地先の海水面の中に貧酸素水塊があって海に出ていけないということで、各地の川の中、運河の中でハゼが大きくなっているということがどうも見られるようです。大きなハゼが釣れたからうれしいということだけではないということを感じました。

 また、河口干潟の調査では、市民が100人、スコップを持って調査をしようということで、SCOP100と称して市民によるモニタリングを実施しています。シジミとアサリが狭いところですみ分けている。ヨシの広がりと地形の変化などが連動している。そういった自然の変化というのが見てとれます。我々ができているのはほんの一地点、非常に細かい点や、ある限られた水質項目ですけれども、そういったものを、局所的な状況をつぶさに見ることで、湾内全体の環境がどんなふうに変わっているのかということを推し量ることができるのではないかというふうに感じるようになってきました。ぜひ、人と海への関係の修復にもご配慮いただき、多様な観点から水質を順応的に管理するというような視点でのご検討をお願いしたいと存じます。どうもありがとうございました。

【岡田委員長】 どうもありがとうございました。

 それでは、ただいまの古川様のご説明に関しまして、ご質問、ご意見等がございましたらお願いいたします。

【平沢委員】 大変一生懸命の努力を理解できまして、うらやましいというか、いい試みだなと思ったんですけども、5ページのアマモ場の再生の中で、せっかく再生しようとしたところで、赤潮が原因で壊滅したという話、これはいつごろの話なのかというのと、具体的に、その赤潮で無酸素水だという、皆さんのとられたデータはあるのでしょうか。

【古川理事】 ありがとうございます。実際に発生しましたのは2003年の夏の終わりぐらいだったと思います。ちょっと日付はきちんと覚えておりません。東京港のほうで比較的大きな赤潮のブルームが出て、真っ赤になりました。それが恐らく死にながら沈降していく。大きいものですから、ゆっくり沈降してくるので、水中の水柱の真ん中の辺りに貧酸素水塊が発生して、それがずっと東京湾の循環流に乗って、東京から横浜側にぐるっと流れてきた結果ではないかというようなことがありました。

 ただ、残念ながら、モニタリングポイントが全部あったわけではないので、みんなの知見を寄せ集めるとどうもそんなことではないかということで、断片的なデータで論文を書かせていただいています。

【平沢委員】 わかりました。もう一つ、7ページですが、海苔の話で、最近は結構話題になっているんですけども、水温低下とか、栄養塩不足とか、これも何かデータをとられて、何か統計的に見てられるのでしょうか。

【古川理事】 この取組が始まって10年になります。データをとり始めたのが、始めてから4~5年経ってからなもので、データも年に1回しかとれないということもあって、まだまだデータの蓄積はできていません。ただ、海苔をつくるときに、その海苔柵に水温計ですとか、照度計ですとか、私たちが使えるような水質計をつけて、少しずつその勉強をしておるというところです。

【平沢委員】 どうもありがとうございました。

【岡田委員長】 どうもありがとうございました。

 ほかにございますか。どうぞ。

【足利委員】 ありがとうございました。私たちも同じNPOで干潟の保全に取り組んでいて、海辺つくり研究会さんのようになりたいなといつも思いながら活動しているのですけれども、自分たちがその海を毎日歩いて、漁業者の方とかと話をしたり、その環境の変化を、小さな変化をいつも見て、感じて、それを何とかデータとしてまとめて、行政にわかっていただきたいというところがあります。ただ、なかなかそれを伝えて、例えば順応的な管理とか、政策に反映していただくというところが、私たちはすごく下手でうまくいかなくて、すごく課題となっているのですけれども、その辺りはどのようにされていらっしゃるのですか。

【古川理事】 ありがとうございます。大変難しいことですが、きっと行政の方も特別な人たちではなくて、私たちがわかることであれば、きっとわかっていただけるという信念でやっています。そのときに、自分たちがわかりやすいものは何だろうということを考えて、例えば水質と関係があるということですけれども、海苔の出来高だとか、または、釣ったハゼの大きさだとか、目に見えるものにしていくと、比較的わかっていただけるということがあるのかなと思っています。

 実は、護岸工事で、工事をした後、深掘りが残った場所と、埋め戻した場所、浅場に戻していただいた場所でハゼ釣りをすると、決定的に釣果が違います。それを水中カメラで見ていて、ハゼが寄ってくる様子みたいなものを撮りますと、数字のデータではないのですが、とてもよくおわかりいただけるというようなことがあります。だから、自分たちがまずわかるということを第一に心がけております。

【足利委員】 ありがとうございました。

【岡田委員長】 どうぞ。

【松田委員】 どうもありがとうございます。9ページ目の多摩川河口の市民参加型のモニタリングや調査など、非常に興味深く聞かせていただきました。多摩川でかなりアユの遡上が増えているということを伺って、アユは、ご承知のように、川と海を行き来する魚ですが、今、全国的に見ると、日本の多くの川であまり調子がよくないのですが、その原因の一つには、海に下ったときの河口域辺りの環境が、非常にアユにすみにくくなっているということも挙げられています。一方、一般的に見ればかなり厳しそうな東京湾の、この多摩川の河口で、ここには「ダイナミックな自然の変化が観測されています」と書いてありますが、その稚アユの遡上に具合がいいような環境の変化とか、そういったことは何か観測されているのでしょうか。

【古川理事】 ありがとうございます。直接それにつながっているかはわからないですけれども、東京湾の中で、多摩川の河口というのが唯一残されたと言っていいほどの大型の河口干潟でございます。その土砂がたまっている領域というのがかなり大きいということ、それで、海の影響をバッファとして和らげてくれている影響というのが、例えば貧酸素水塊が上がってくるというようなところも、浅場が河口域にかなり広がっていますので、そこら辺でブロックしているというようなことが、もしかしたら助けになっているのかなという気がいたします。

【岡田委員長】 いいですか。

【松田委員】 ありがとうございます。一般にはアユの稚魚の生息に、浅場というか、遠浅の海というのが非常に必要というふうにも言われているので、そういう意味では、非常に具合がいいのかなというふうに思いました。ありがとうございます。

【岡田委員長】 ありがとうございました。

 ほかによろしいですか。

 それでは、古川様、どうもありがとうございました。

 それでは、今まで4件、ヒアリングをさせていただきましたが、全体を通じて、何かご意見、ご質問がありましたら。じゃあ、細見委員、どうぞ。

【細見委員】 ご説明どうもありがとうございました。特に経団連の方、あるいは鉄鋼業、化学工業会の方で、これまでも水管理において多額の費用を投資されてきたということのご説明を受けました。コメントとして、もちろん設備投資は当然かかるわけですけれども、その設備投資をすることで、環境に関わる人の人件費が減る例として、自動制御管理によって作業者の数が減るといったメリットもどこかであると思うんですね。そういったものを含めて、累積投資額というグラフとともに、例えば累積の産業生産高とかを並べて、例えばですよ、今はこの累積投資額が伸びていますけれども、生産高はもっとぐっと伸びているとすれば、ある意味、生産高に応じた適切な生産のための投資かもしれない。要は、この設備投資額だけが書かれているので、もうちょっと他の数値とか何かがあれば、より理解しやすいかなというふうに思います。人件費も含めると非常に難しいかもしれませんけれども、何かそういうデータがあると、より説得力があるような気がします。もし可能でしたら、そういう資料があればいいかなと思いました。

【岡田委員長】 もしよろしければ、どうぞ。

【丸山主査】 鉄鋼業につきましては、生産高は、例えばリーマンショックもあったときには減る等はございますけれども、ほぼ一定の状況になっているというのが現状でございます。また、少し資料を追加できるようであれば、検討させていただきたいと思います。

【細見委員】 例えば、多分鉄鋼はそうだと思うんですけれども、設備投資によって、自動化が進み人を減らすことで、トータルの費用として減るかもしれない。ちょっとそこはよくわからないですけど、そういう努力も多分されていると思うんですね、当然。

【丸山主査】 はい。事例としましては、硝酸、酸の回収の説明をさせていただいたのですが、そこは人件費というわけではないですけれども、やはり投資することによって、使用する酸の量も減らせるといったようなところも、あわせて環境対策の中でやっているというところは実際にはございます。

【細見委員】 ありがとうございます。

【岡田委員長】 ありがとうございました。じゃあ、よろしくお願いいたします。

 ほかにございますでしょうか。よろしいですか。

 それでは、本日、ヒアリングでご説明いただきました関係団体の皆様方、大変重要かつ有益な情報をありがとうございました。今後の議論に生かしていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして、二つ目の議題、その他ですが、まずは事務局より資料6についてご説明をお願いいたします。

【石川室長補佐】 それでは、資料6についてご説明をいたします。資料6の位置づけとしましては、第1回委員会で提示をさせていただいた資料について、平成25年度のデータの更新を行ったものです。これによって、傾向に変化が生じたということはございません。また、これまでの委員会の中でご指摘をいただいたところも含めて整理をしたものでございます。今回、ボリュームが多いですので、変更のあった部分や、新たに加えたところについてご説明をさしあげたいと思います。

 それでは、33ページをご覧ください。環境基準の達成状況というところでございます。昨年末に平成25年度の環境基準の達成状況が公表されましたので、それに基づいて更新をしたものでございます。

 変化のあった部分は、まずCODですけれども、次のページのグラフがわかりやすいと思いますので、グラフのほうをご覧ください。全体として大きな変化はありませんで、一つ、大阪湾を除く瀬戸内海、このグラフで言うと黒の三角の部分ですけれども、79.3%だったものが77.3%と、少し下がっているというような状況でございます。

 それから、次のページの窒素及びりんですけれども、こちらも、36ページのグラフをご覧いただければと思います。こちらも変化があったのは1点のみで、伊勢湾、グラフで言いますと白の四角でございますけれども、平成24年度は57.1%だったところが85.7%に上がったということになっております。年度によって変化が大きいという傾向がありますけれども、平成25年度は85.7%になったというところでございます。

 それから、次は、40ページをご覧ください。これまでの委員会の中で、赤潮について、もう少し詳しく見るべきではないかといったご指摘をいただきました。そういったご指摘を踏まえまして、瀬戸内海に着目をしまして少し整理したものでございます。40ページの下のグラフは、平成23年~25年までの瀬戸内海の赤潮について、月別に整理したものでございます。これを見ますと、夏、7月~8月にやはり多くの赤潮が発生しておりまして、10月~4月、いわゆる冬季から春先にかけては少ないというような傾向が見てとれました。

 それから、41ページ目をご覧ください。こちらは瀬戸内海におけるプランクトンに着目をしまして、プランクトン別の赤潮の出現件数について、こちらも平成23年~25年の湾灘別に赤潮出現件数を整理したものでございます。表3(1)から表3(3)まで、年ごとに整理をしてございます。これを見ますと、Heterosigmaというのは毎年多く出現しているのですが、それ以外の種については、年ごとに出現件数に違いが見られるというような状況となっております。この表の見方ですけれども、表の升の上の数字は、湾灘別の出現件数、そして丸で囲ってある数字というのは、そのうちの漁業被害が発生した件数ということになっております。Heterosigmaというのは、真ん中辺りにあるものでございます。平成23年ですと、瀬戸内海で26件、合計で29という数字があるところがHeterosigmaというものでございます。それが3年分、24年、25年とありまして、44ページをご覧ください。こちらは、今度は平成25年度について、プランクトン別の月別の出現件数を整理したものでございます。Heterosigmaが多いというのは、先ほどご説明したとおりなですけれども、やはり全体として、夏に多くの種類が出ているというのがわかるかと思います。また、季節ごとに種類が異なっているというようなこともわかるかと思います。ここでのプランクトンは、その種類ごと、分類ごとに分けておりまして、Heterosigmaというのは、ラフィド藻という下のほうのところに分類されております。

 それから、45ページ目に移りまして、こちらは瀬戸内海関係のヒアリングのときなどにノリの色落ちに関する議論がございましたので、ノリの色落ちという観点で、瀬戸内海の赤潮を整理したものでございます。この下の表に、瀬戸内海におけるノリの色落ちに関する赤潮被害の発生状況というものを整理しております。これを見ますと、平成13年以降、今度はEucampiaというものを主構成種とする赤潮の発生で、ノリの色落ち被害が多く出ているということが見てとれます。

 それから、次のページ、46ページ目をご覧ください。こちらもそのEucampiaの続きですけれども、今度は播磨灘の表層について、1月~4月の月別の植物プランクトンの組成について、長期変動を整理したものが兵庫県の農林水産技術総合センターの西川さんの報告にございましたので、掲載をさせていただいたものであります。この図の見方としては、上から1月、2月、3月、4月となっておりまして、植物プランクトンの構成を経年的に表したものでございます。この凡例については、Skeletonemaというものがドットで描いてあり、先ほど出てきたEucampiaというものは真っ黒の四角、黒い四角の凡例になっております。これを見ますと、植物プランクトンの主な構成種は、先ほど申し上げたSkeletonemaという珪藻でございますけれども、近年はEucampiaというものの割合が増加する傾向が見られているということがわかるかと思います。

 続きまして、47ページでは、ノリの養殖を取り巻く水質環境の変化を見る上で重要な、冬場の栄養塩類濃度と植物プランクトンによる栄養塩類の消費について着目をしまして、瀬戸内海の播磨灘と備讃瀬戸という海域を対象に、冬季のDINやクロロフィルaなど、その関連の深いデータを整理したものでございます。48ページ、49ページにグラフを整理しておりますので、そちらをご覧いただければと思います。播磨灘、備讃瀬戸、それぞれに、上から冬季のDIN濃度、クロロフィルa濃度、このクロロフィルa濃度というのは植物プランクトンの量を推定するデータになりますけれども、その下に水温、そして赤潮発生件数の推移というものを並べてございます。

 なお、DIN濃度とクロロフィルa濃度、それから水温のデータは、環境省で調査しているものでございまして、年に1回、つまり、冬場1回の調査の結果ということになります。

 これを見ますと、DIN濃度は、播磨灘では昭和60年ごろから上昇しまして、平成10年ごろをピークに低下傾向が見られます。そして、近年の濃度レベルは、昭和60年ごろと同等程度となっております。備讃瀬戸では、変動の幅などは異なるものの、播磨灘とほぼ同様の傾向が見られております。

 一方で、その下のクロロフィルa濃度については、播磨灘と備讃瀬戸ともに、通観して、やや上昇傾向が見られておりまして、DINとはまた異なる挙動を示しているということがわかります。

 また、水温は、播磨灘では、30年ほどの間に、これは5カ年移動平均値でございますけれども、1.5℃以上上昇しておりまして、また、備讃瀬戸でも0.5℃ほど上昇しているということになっております。

 赤潮については、播磨灘では、平成14年以降、冬場に毎年のように赤潮が発生しておりまして、備讃瀬戸でも、播磨灘ほど頻度は高くないですけれども、冬場に発生するようになってきているというようなものでございます。

 今回は、冬場に環境省の調査結果を用いまして、それぞれ、ノリの養殖を取り巻く水質環境に関わりの深いデータとして整理をしたというところでございます。

 それから、55ページをご覧ください。こちらは貧酸素水塊の発生状況ということで、大阪湾の情報を追加しております。第1回委員会では紹介ができませんでしたけれども、大阪府さんから平成24年のデータの情報をいただきましたので、追加をしたものです。この図の見方ですけれども、底層水の酸素飽和度ということで、薄いハッチ、オレンジ色のハッチの部分が40%以下、それから濃いハッチ、赤色が10%以下を示すということになっております。これを見ますと、平成24年は7月末から9月初めごろに、この湾奥部で底層水の酸素飽和度が10%以下になる部分が見られているというような状況でございます。

 それから、60ページ目をご覧ください。こちらは少し訂正をさせていただきたいのですけれども、第1回委員会でお示ししていたクロロフィルa濃度の推移のデータが、年度平均値ということでお示しをしていたんですけれども、実は誤って夏季平均値のデータを示してしまっておりました。つきましては、今回、この平成25年度のデータの更新と合わせて、訂正をさせていただければと思っております。その各湾の変動というか、傾向については違いがございませんので、ここでは割愛をさせていただきます。

 次に、63ページをご覧ください。こちらも栄養塩類とクロロフィルa濃度に着目をして、関連のデータを並べたものでございます。このクロロフィルa濃度というのは、基礎生産力を示す目安として用いられていまする。一方で、赤潮発生の目安としても用いられているということもございますけれども、ここでは各海域における栄養塩類濃度(T-N、T-P、DIN、DIP)とクロロフィルa濃度というものの推移を並べて整理したものでございます。

 なお、1)の東京湾から3)の大阪湾までと、それ以降、4)の瀬戸内海(大阪湾を除く)とでは、各グラフの縦軸のスケールが異なりますので、比較する際にご注意いただければと思います。

 これを順番に見ていきますと、東京湾では、栄養塩類濃度は、全体的にやや低下~低下傾向が見られると。それから、クロロフィルa濃度は、年によって増減が大きいのですが、ほぼ横ばいで推移をしているというような状況でございます。

 次のページに行っていただきまして、伊勢湾ですけれども、こちらは窒素(T-N、DIN)はやや低下~低下傾向が見られるのですが、りんはほぼ横ばいで推移をしているというところでございます。クロロフィルa濃度は、やや低下傾向が見られるというような状況でございます。

 それから、その次のページの三河湾ですけれども、三河湾では、栄養塩類濃度は、全体的にやや低下傾向が見られると。一方で、クロロフィルa濃度は、年による増減は大きいんですけれども、ほぼ横ばいで推移をしているという状況でございます。

 次のページに、大阪湾の情報を整理しております。大阪湾では、栄養塩類濃度とクロロフィルa濃度のいずれも低下傾向が見られるというような状況になってございます。

 それから、次のページの大阪湾を除く瀬戸内海ですけれども、こちらは、この67ページの紀伊水道から77ページの響灘まで、湾灘ごとにグラフを並べているものでございます。これらのグラフを見ますと、湾灘ごとに、やはり栄養塩類の濃度とクロロフィルa濃度はそれぞれ傾向の違いが見られるというような状況になっております。そういったところで、データを整理して並べてみたというところでございます。

 それから、最後ですけれども、78ページになります。こちらは水産資源量と漁獲量についてということで、漁獲量についてもヒアリングで議論になりました。その中でも、漁獲量はさまざまな要因が影響するのではないかといった指摘もございましたので、今回は魚類の資源量というデータが、水産庁や水産総合研究センターで整理をされたものがございましたので、この瀬戸内海系群の4魚種5系群というものの、具体的には、この下にあるカタクチイワシ、サワラ、ヒラメ、マダイは二つの系統がございますけれども、瀬戸内海東部系群と瀬戸内海中・西部系群というものの資源量の推移を、漁獲量とあわせて整理をしております。

 この資源量の推定方向ですけれども、これも下に簡単に書いておりますけれども、「コホート解析」と呼ばれるような統計的手法が行われているようで、漁獲量調査ですとか、魚体測定というものから、その年齢別の漁獲尾数というものを推定しまして、さらに、それに漁獲係数ですとか、自然死亡係数、そういったものを推定することによって、その年の資源量を算出するというような方法で整理をされているものです。

 79ページがカタクチイワシになります。右上に分布域ですとか、産卵場、それから漁場の図を載せております。折れ線グラフが資源量になっておりまして、棒グラフのほうが漁獲量という形になっております。カタクチイワシについては、変態する前、変態のことを「カエリ」というそうですけれども、変態する前の個体をシラスというふうに扱って、それ以降の個体をカタクチイワシというふうに扱っております。

 それから、次のページからはサワラですとか、81ページにはヒラメを載せておりまして、82ページ、83ページには、マダイ、それぞれ、瀬戸内海の東部と中・西部のものを並べております。マダイを見ますと、東部のものについては、資源量は上昇傾向にあるというところですけれども、一方で、隣の中・西部の系群を見ますと、減少傾向が見られるというようなところでございます。

 このようなところで、資源量というものを今回紹介はしましたけれども、やはり魚種ごとに増減の傾向は異なる。例えば増加しているものもあれば、減少傾向にあるものもあったり、また、増減を繰り返しているものもあったり、さらに、マダイに見られるように、同じ種であっても、海域ごとにも異なるといったことが見られたというような報告をさせていただきます。

 長くなりましたが、以上です。

【岡田委員長】 ありがとうございました。

 それでは、ただいまのご説明に関しまして、ご質問、ご意見等がございましたらお願いいたします。どうぞ。

【河村委員】 45ページで、ノリの色落ちの被害の表があるんですけれども、これは、例えば平成25年の兵庫県の播磨灘でノリの色落ちというのは、これは1回なのか、あるいは何回かそういう現象が起きたのかとか、そういう詳細というのはあるんでしょうか。

【石川室長補佐】 詳細のデータは、年ごとにきちんと整理されておりますので、詳細は別途調べれば、水産庁さんが整理しておりますので、ございます。

【河村委員】 今回、ノリの色落ちなんかもかなり問題になっています。できたらもうちょっと詳しい情報のほうがいいのかなということでお願いします。

【岡田委員長】 じゃあ、よろしいですね。じゃあ、可能な限りお願いいたします。

 ほかにございますでしょうか。どうぞ。

【長屋委員】 今の45ページでございます。赤潮が発生するまでのメカニズムというのは、いろんな環境がどうでき上がるかによってさまざまだと思うのですが、結果として、その原因となるプランクトンの種類をこういう形でお示しいただけたということは本当にありがとうございます。やはりここでございますように、このEucampia、これが近年はほとんど占めているというところでございます。

 これまで、往々にして、赤潮というのは富栄養化で発生するということで、富栄養化の指標として用いられてきている部分はあるんだと思っています。Eucampiaが赤潮の原因のプランクトンになるということについては、確かに、Eucampiaも富栄養状態でも、貧栄養状態でも発生をするというふうには言われているわけでございますが、P.44の表の上のほうにございますような、ほかのプランクトンについては、これは富栄養化でなければ発生しないプランクトンというのもあるわけでございます。ぜひ、こういうふうな今回お示しいただいたものをベースに、この赤潮の発生と水質の状態、これを明らかにするということは、まだまだ難しい段階ではあるんだと思っておりますが、貧栄養でも発生をしているプランクトンが近年増えてきているんだということはしっかり押さえていただいて、今後も議論を進めていっていただきたいということを要望したいと思います。よろしくお願いします。

【岡田委員長】 ありがとうございました。これはまた後で、長﨑委員のほうからも関連するお話があるかと思いますので、そのときに、再度、ご意見等がございましたらお願いいたします。

 ほかにございますか。どうぞ。

【平沢委員】 ちょっとずれるかもしれないんですけども、今までの資料の中のデータに関してですが、やはり環境基準を達成しないと。どうしても、私、バックグラウンドというのがすごい気になっていまして、例えば、気がつかなかったんですけども、24ページのグラフ、これ、だんだんCODが削減されていって、水質がよくなるというデータなんですが、負荷をゼロにしても、CODは1.5くらいあるようなイメージですよね。だから、負荷が入っていなくても、このくらいの濃度があるものであれば、環境基準は、その辺を考慮すれば、クリアしてくるんじゃないかなと。窒素、りんについても、このデータが全て正しいわけじゃありませんけど、大体同じような線に載っているので、外挿値がどうかというところもちょっと気になるところで、意見でございます。

 もう一点、以前の第何次だか忘れてしまったのですが、私、気になって質問したやつで、外洋の負荷、要するに外から流れているCODの負荷が上がっているというデータをいただいたので、あれが、その後、どうなったのかというのがちょっとあると、いろんなものを考えるときに重要かなと思って、質問をいたしました。

【岡田委員長】 じゃあ、これは事務局から、どうぞ。

【石川室長補佐】 ありがとうございます。まず、2番目にあった外洋の負荷ですけども、今回の検討の中で、このCODとの関係、また、窒素、りんとの関係で、それぞれどういう負荷の寄与率というか、そういったものを整理する試みをしておりますので、この委員会の中でも、ご検討、ご議論いただくような形で、資料は用意したいと思っております。

 あとは、バックグラウンドについて、まず窒素、りんについては、改善傾向がCODに比べると見られます。グラフを見ても、例えば27ページに窒素でございますけれども、負荷削減をした分、海域の水質も応答しているというようなところが見られています。CODというのは、第6次ぐらいのときから課題となっておりまして、その辺りも含めて、現在、その負荷の関係と、先ほどの寄与率の関係を整理してございますので、この委員会の中でも、その辺り報告をさせていただいて、ご議論いただければと考えております。

【平沢委員】 どうもありがとうございます。

【岡田委員長】 よろしいですね。どうもありがとうございました。

 ほかにございますか。どうぞ。

【鈴木委員】 ご説明いただいた内容と直接関係しないのですが、言葉のことについて、確認というか、私の意見を申し上げたいと思います。

 先ほど、この資料6の24ページ、図9で使われている言葉ですけれども、「水域面積当たりの発生負荷量」、今までの自治体提供の資料でも、発生負荷量というのが、いわゆる水域への負荷量というように使われておりました。私、下水道のほうの人間ですので、発生負荷量というのは、通常は社会活動に伴って生じる負荷量のことを言い、それを削減した場合は、排出あるいは流出負荷量というふうに言っております。

 それと、気になったので水濁法も読んでみたら、「発生負荷量」という言葉は見られなくて、あるとすれば、「発生源別の削減目標量」というような言葉があるぐらいです。結局、ここで対象とする負荷量は、総量削減の努力をした後の負荷量なので、発生負荷量というのは、何か環境面だけから見た用語のような感じがしております。その辺り、もし可能であればご検討いただければと思います。

【石川室長補佐】 ご指摘も踏まえまして、検討させていただければと思います。

【岡田委員長】 じゃあ、これは整理してください。やはり誤解を生むと、鈴木委員おっしゃるように問題ですので、よろしくお願いいたします。

 ほかにございますか。どうぞ。

【古米委員】 60ページ以降、77ページまでのクロロフィルa濃度の推移ということで、図32は、前の資料は夏季のデータだったけれども、今度は年度平均ということで整理をしたという訂正をされたんですけども、広域総合水質調査は年4回やっていて、冬季と、夏季と、春と秋があります。こういった整理をするときに、年度平均で見ること自体がおかしいのではないのですが、何を議論するときには年度平均で、ノリの話をしたいんだったら冬場の濃度だとか、あるいは夏季の大きな赤潮の問題のときにはどうかというように、年4回の平均とることと、見たいと思う、解釈したいものに対してどれを使うかというスタンスを明確にしておかないと、単純におおよその傾向みたいなものしか把握できないのではないか。平成25年度までで、データとしては4×30何年のデータが、これだけのたくさんの地点に存在しているのに、こういった平均的な議論でやっていてはまずいのではないかと。そうすると、やっぱりこのデータ自身をどういう統計解析するのかという方法論を本格的に、私は専門的には少しはアドバイスできますけども、扱ったほうがよくて、水質と、あるいは4回のパターンだとか、そのときの発生している赤潮のタイプだとか、ノリの色落ちの話だとかをデータで類型化するなり、何か分類すると、ある因果関係みたいなものがモニタリングデータから出てくると。そうすると、ある漁業組合員の方がこう言っているとか、あの専門家はこう言っている、それは非常に有意義なんだけども、みんなを納得させるのは、やっぱり実際にとったデータと、実際にわかっている現象との因果関係を結びつけるような整理をすることが、本当にこの方向で行こうということを訴えられると思います。私も、もう少し頭を絞りますけれども、このデータをどう解析するのかということを深めていく必要があるのかなと思います。

【根木室長】 ご指摘ありがとうございます。そういう意味で、今回の資料では、例えば48ページ、49ページのところは、冬季のクロロフィルaを植物プランクトン、冬季の量ということを推定する観点で入れさせていただいております。60ページ、62ページのところが、少し確かに目的がはっきりせず、年度平均を載っけてしまっているというご指摘をいただいたかと思いますが、63ページからのところは、基礎生産力というところに着目して、年度平均ということで掲載させていただきました。また、いただいたご指摘も踏まえて、練り上げていければいいというふうに思っております。

【岡田委員長】 ありがとうございました。よろしくお願いいたします。

 ほかにございますか。どうぞ。

【足利委員】 今のノリの色落ちの63ページのところからの、各海域でのグラフの話ですけれども、もう一つ、ここに私は海水温を入れていただいたほうがいいのかなと思っています。ノリの色落ちだけではなくて、例えばあかぐされ病とか、とにかく冬の海水温が下がらないというのが、ノリ漁師さんたちが一番困っていらっしゃる部分なので、それも入ると、またちょっと違う視点があるのかなというのを思いました。

 あと、後ろのほうで、魚類とかの統計資料を入れていただいたんですけれども、多分魚だけではなくて、餌生物の、例えば底生生物みたいなものとか、そういったものも、ひょっとすると影響しているのかなとか、ベントス類が減ったことで、例えば魚、たんぱく質を食べるようなお魚類は、餌生物が減ったことで、漁獲が減っているという可能性もあるのかなと思うので、何か新たに調査してくださいということではなくて、もともといろんなデータが、例えば水産庁さんとかにもおありだと思うんですけれども、そういうのをもうちょっとうまく整理できるといいのかなと思います。

【根木室長】 ご指摘ありがとうございます。最初にご指摘いただいたのは、ノリのということで、60ページのということで、今おっしゃっていただいたかと。ノリという観点では、今回、どちらかというと、48ページ、49ページのほうで整理をさせていただいたということでありまして、ここには冬場の水温というものをグラフとして入れさせていただいたということでございます。

 あと、後段のご指摘につきまして、例えば63ページからが、まさに、そのクロロフィルaの今度は基礎生産力を示す目安ということに着目して、63ページからのグラフを湾灘ごとに記載させていただいたということでありまして、そういう意味では、まさにクロロフィルaが植物プランクトンということで、一番生態系の底辺を支えるところに着目をして、63ページからのグラフのほうは整理をさせていただいたというところではございます。今のご指摘のところ、受けとめさせていただければというふうに思っております。ありがとうございます。

【岡田委員長】 ありがとうございました。よろしくお願いいたします。

 ほかにございますか。

 よろしければ、先ほど赤潮の話が出ました。続いて、長﨑委員より資料を提供していただいております。じゃあ、長﨑先生のほうから、この資料のご説明をお願いいたします。

【長﨑委員】 それでは、赤潮発生のメカニズムとその背後にある「必然」というタイトルで、目的は、まず、赤潮というのが一体どういうものなのかというのをイメージしていただいて、そして、いろんな分野のご専門の方々に最大公約数的に理解していただこうということで、多少ちょっと乱暴にしゃべる部分はありますけれども、ご理解ください。

 2ページ目ですが、地球上のあちこちで赤潮は普通に発生している。だから、赤潮というのは、非常に特殊なイベントではないということですね。そして、有害なものと無害なものがある。これは人間が海をフィールドとして産業を行っているわけで、それが水産業に対していい影響を持つか、そうでないのかというところで出てくるわけです。

 次のページをお願いします。3ページ目ですが、珪藻類というグループは、ガラスの殻の中に細胞が入ったような、非常に興味深いプランクトンのグループですけども、通常この珪藻がある程度きっちり繁茂している状態というのは、陸で例えると、牧草が非常に豊富に生えているような状態というふうにご理解いただければいいんじゃないかと思います。それが、そこにいる生態系、食物連鎖を上っていって、上位の栄養段階の生物に固定した光エネルギーを化学エネルギーとして供給するという形があれば、そこで基礎生産力が高いと言えるわけです。ですから、珪藻も赤潮としてカウントしますから、全ての赤潮が有害というわけではないわけです。

 ここで、赤潮の定義ですが、我々の世界では、赤潮というのは、こういう微生物が大量に発生して、水の色が変わるということで「赤潮」という言葉を適用しております。ですから、比較的、曖昧な言葉だとご理解ください。

 次のスライドですけれども、今、「珪藻」は「牧草」のような存在だというお話しましたけども、一方で、これまでの研究から、この種類のプランクトンが増えると、魚が死ぬとか、貝が死ぬとか、そういうふうな法則性というのはわかってきているわけです。こういうものが有害な赤潮プランクトン、カレニア、シャットネラ、ヘテロカプサ、コックロディニウム、ちょっとサイズがいろいろですけれども、一番大きいのがシャットネラで、0.1ミリぐらいあります。大きなプランクトンですね。カレニアは直径が、そうですね、20マイクロメートルですから、0.02ミリぐらいですかね。そういうものが被害を及ぼすわけです。

 次のページへ行きまして、植物プランクトンが増えるためには何が必要かといいますと、簡単に言うと、そこにそのプランクトンの「タネ」となるものが必要だし、それを増殖させる水温、塩分、日照の適性な条件というのが必要だし、そして、適度な栄養塩が肥料として必要なわけです。だから、植物と一緒なわけです。

 その下のを読みますと、例えばシャットネラというプランクトン、これは日本でも非常に大きな被害をもたらす赤潮プランクトンですが、こいつは、何というんですかね、半球のドーム型をしたタネをつくります。タネ細胞の状態で、珪藻の殻とかにくっついて、泥の中に埋まっているんですが、それが巻き上がったときに発芽して、その穴をぱかっと開けて、この右側のような細胞が出てくるわけです。ちょっと見ただけでは信じられないかもしれませんけど、実際にこういうことが起きているわけです。そして、出てきた細胞が、増殖するためのいろんな水温とか、塩分とか、日照という条件が必要になると。さらに肥料に相当するものが必要になると。栄養塩・ミネラル・ビタミンはどこに由来するかというと、陸からの流入もございますし、底泥からの供給もございますし、あるいは隣の海域から、外海からも入ってくるというふうなことで供給されるということです。

 次のページへ行きます。スプーン一杯の海水を汲んでも、実にその中に多種多様なプランクトンが存在しているわけです。数は少ないですけども、存在しております。そして、そういうものが、その場において、言ってみれば、チャンピオンになって、そこを乗っ取ろうということで、虎視たんたんと狙っているわけですけれども、ある海域で、ある日照、ある温度、そして、そういう条件が与えられたときに、その条件下において、早く分裂できる種類というのがやっぱり勝つわけですね。ですから、環境条件ごとに、それぞれ、得手、不得手がございます。ですから、年ごとに、非常に暑い年とか、ちょっと水温が低い年とかがあっても、それに応じて発生する種類というのがきちっと存在するのだということです。

 日本で、今、代表的な2種類の有害鞭毛藻をそこに並べました。カレニアとシャットネラです。カレニアというのは非常に我慢強いタイプのプランクトンで、日照が弱くても辛抱して、栄養が結構低く貧栄養であっても、そこそこ分裂するタイプのものです。ですから、そういう条件のもとでは、彼らは勝ち上がって、その場を占有することはできるわけですね。シャットネラというのは、これは典型的にぜいたくなタイプでして、光もたっぷり欲しがるし、栄養塩もたっぷり欲しがるということでございます。

 その下の絵は、例えばシャットネラ赤潮が起きた年を見てみると、やっぱり梅雨が終わって、すぐ猛暑になっているような年が多いし、そして、そういうときにシャットネラやカレニア赤潮が発生したら、魚類養殖に壊滅的な被害をもたらすと。生けすの上にブリが浮いている写真を示していますけども、こういう状態になってしまうということです。

 カレニア赤潮が起こりやすいのは、比較的、あまり晴れない年ですね。そして、日照が少なくても、結局、カレニアがしのいで勝ってしまうということかなと。そういう傾向があるということです。空撮写真を示しておりますが、カレニアも、こういうふうな非常に広大な範囲で赤潮を起こします。

 非常に乱暴な説明をしているというのはどういうことかといいますと、今、シャットネラとカレニアと対比させてお話ししていますけども、じゃあ、70年代から80年代の間に、瀬戸内でシャットネラだけが勝ち続けたかというと、そうではなくて、カレニアが勝った年もあるわけです。生物ですから、いろんなその要因が勝ち負けに関与していますから、そんなに簡単には決め打ちできないんですけども、大まかに言うと、そういう傾向があるとご理解ください。

 そして、その下の絵ですけども、先ほど申し上げたように、珪藻が鞭毛藻に先んじて繁茂してくれれば、比較的有害な赤潮が発生しにくいというふうに、鞭毛藻が発生しにくいと言えるかと思います。一節には、珪藻から、鞭毛藻の増殖を抑えるような物質が出されるという報告もあり、確かにそういう傾向は見てとれるようです。

 種類によって、自分の好きな塩分、温度、どこで早く分裂できるかというのは、生物種ごとに違っておりますので、それぞれの生物について、きちんと別々に扱って精査をしております。そして、例えばその下の絵ですけども、カレニアという種類ですと、窒素源として何が使えるのか。りん源として何が使えるのかと。概ね無機の窒素で言いますと、硝酸、亜硝酸、アンモニウムイオン、こういう辺りなんですけども、りん源に関して言うと、いわゆる単純な無機のりんではなくて、有機体のりんもかなり使えるということがわかります。

 次の模式図をご覧ください。栄養塩が非常に少ない環境で、低濃度でもそこそこ増殖できるタイプと、高濃度なら爆発的に増殖できるんだけど、低濃度は苦手という種類が、どっちが勝つかというと、それは左側の緑の種類が勝つわけですね。逆に、栄養塩が十分にあれば、右のほうが勝つ傾向にあるだろうということです。

 次のページめくっていただいて、じゃあ、無機の、要するに、もうばらばらになった状態の栄養塩か少なくて、有機の栄養塩、例えば窒素で言いますと、アミノ酸であるとか、そういうものが多いような環境ですと、いろんな有機の栄養塩を使えるタイプというのが、結局、こういう環境では勝つわけですね。無機ならたっぷり使って増えれるんだけども、有機だと使えないという種類は負けてしまうということです。ですから、それぞれの原因プランクトンの種の性質とか、あるいはタネ細胞の分布状況とか、あるいは栄養塩、気象などのいろんな環境要因との関係から、その場に優占する種類や、赤潮を起こす種類というのは、規模も含め、かなり必然的に決まるんだろうということです。ただ、その全てが解明されているわけではありませんが、水産庁事業等で、それぞれの種類の赤潮プランクトンについて、きちんとした性状精査を実施しております。

 皆さんもネットで簡単にアクセスできますのが、水産庁の開示しております瀬戸内海の赤潮、九州海域の赤潮等ですけども、赤潮の起こった期間、場所、種類、被害の有無、細胞密度等が、これは非常にすぐにアクセスすることが可能です。

 先ほど、赤潮発生件数の話が出ましたけども、確かに高度成長期の時代、300件、年間に起こったということで、それが今は100件ぐらいになっているというグラフを、よく我々も赤潮の説明で使うわけなんですけども、一つ、ちょっとコメントしておくならば、件数の経年変化データというのは、少し注意して読まないといけないということです。というのは、今は各自治体の方々がすごく熱心に赤潮を見張っておられます。ですから、そういう状態でありながら、100件というふうな数が出てきているということが一つ。それから、非常に広域に大被害をもたらすような赤潮も1件ですし、港で色がついていましたという報告でも1件というふうにカウントしますから、ちょっとその辺りは注意する必要があるということです。赤潮というものへの注目度は、やっぱり時代によって異なるから、恐らく、そうですね、まだ観測体制が整っていない時代は、300どころではなかったんじゃないかというふうに私は推測しています。

 ということで、説明にさせていただきます。以上です。

【岡田委員長】 長﨑先生、どうもありがとうございました。

 それでは、ただいまの説明に関しまして、ご意見、ご質問等がございましたらお願いいたします。

【長田委員】 長﨑先生、どうもありがとうございます。この数字の読み方で、漁業被害について、11ページの瀬戸内海における赤潮発生件数と、それから漁業被害というところを読み解く話として、ご説明いただいたシャットネラとカレニアの比較をされたんですけども、もう一つ、先ほど環境省さんのほうで少しデータを説明、加筆していただいた、25年度プランクトンの湾岸別の出現数を拝見いたしますと、主体として出てくるのがHeterosigmaという種類だったんだけども、Heterosigmaが見られるけれども、赤潮被害としては発生していないという。

【長﨑委員】 Heterosigmaは漁業被害を起こすことはありますけれども、頻度としては、そんなに多くはないですね。

【長田委員】 やはり一番問題なのはカレニアだというふうに読めばよろしいですか。

【長﨑委員】 カレニアとシャットネラですかね、鞭毛藻ですと。あと、ノリの色落ちに関しては、やっぱりEucampiaが一番とどめを刺すということですよね。ノリの操業自体を終わらせてしまいますからということだと思います。

【長田委員】 そうすると、カレニアをやっぱり指標として、優先的に見ていくということの重要さということを強調するということになりますでしょうか。

【長﨑委員】 そうですね。今日、こういうお話をして、だから、栄養塩の濃度をこうすべきだ、ああすべきだという、単純な話にはなかなかならないという、非常に複雑なバックグラウンドがあるということをご理解いただければと思ったんですけれども、非常に多様な種類がそこにいて、せめぎ合いの中で誰が勝ち上がってくるかということは決まってくるということだと思います。いずれにしても、栄養塩がそこにあれば、それを利用する生物は必ず出てきます。全く栄養塩がなければ、もちろん植物がそこは生えることができませんから、というふうにご理解いただければと思います。

【長田委員】 ありがとうございます。

【岡田委員長】 よろしいですか。

 ほかにございますか。どうぞ。

【古米委員】 10ページの下のところ、いろいろなタイプの赤潮とか、プランクトンのタイプがあって、水産庁事業等で、それぞれきちんとした性状精査を実施中というのは、今出てきているデータより、さらに詳しい精査をされているという意味なのか、さらには、期待とすると、これだけデータがそろっているので、水質とか、水温だとか、いろんなことを関係づけながら、このタイプが出たのはこういうことじゃないかというようなレベルでの精査をされているのか、そこら辺はどういう状況なんでしょうか。

【長﨑委員】 両方あると考えていただいていいと思います。一つは、やはり方法論が、いろんな科学分野の発展に伴って、私たちもそれを導入することで、生物の性状も以前よりもうはるかに詳しく、あるいは短時間に見きわめたり、数えたり、見積もったりということができるようにはなってきています。

 それともう一つは、過去には問題にならなかった種類が、新たに赤潮を起こす問題種として注目されるようになってきている例もございますから、そういうのも含めて守備範囲を広げていかなきゃいけないと。両方の意味合いとご理解いただければと思います。

【岡田委員長】 よろしいですね。

 どうぞ。

【長屋委員】 1点ちょっとお伺いをしたいのですが、ここであるシャットネラとか、カレニアは、魚類養殖で、直接魚体について窒息死させたりするということで、非常に怖いプランクトンであるんですが、もう一つ、漁業者と話している中で、さきほど先生が言われた、ノリの色落ちを起こすEucampia等、大型の珪藻が増えてくると、いわばノリがとるべき栄養素を彼らはみんな先に持っていっちゃって、それでノリが栄養をもらえなくて、色が落ちていくというようなことが言われるんですが、この辺についての知見というのはあるのでしょうか。

【長﨑委員】 おっしゃるとおりで、なぜEucampiaがノリの色落ち原因種として注目されているかというと、かなり栄養塩が下がってきている状態でも、彼らは貪欲に栄養塩を吸収して増殖することができますし、その勝負において、ノリという競合者に対して勝つことで、ノリの色落ち原因種というふうに言われております。大型のCoscinodiscusですとか、ほかにも、栄養塩のレベルが下がっているケースには、短期の赤潮を起こすSkeletonemaとか、Chaetcerosが起きても、一時的に色落ちが起きたりしますので、そういうものを含めて考えなければいけないんでしょうが、やはり今おっしゃられたように、Eucampia、一番業者さんたちも嫌っておられる、恐れておられる種類だということで、事業等でもきちんと精査を継続しているところです。

【岡田委員長】 よろしいですね。

【長屋委員】 はい。

【岡田委員長】 ありがとうございました。

 ほかにございますか。じゃあ、どうぞ。

【阿部委員】 ちょっと教えていただきたいのですが、さっきのノリのところで、環境省さんの説明資料の46ページ、47ページのところで、無機態の窒素の濃度が、昭和60年ごろと、今と同程度になっているって書いてあり、そのころと今が、栄養塩濃度が同じくらいですけれども、やはりさっき言った、ノリにとって有害な珪藻というのは、昔はあまりなくて、今出てきているというような理解でよろしいんでしょうか。また、その栄養塩以外の原因など、いろいろ複雑ということでよろしいでしょうか。

【長﨑委員】 ノリの操業というのは、ある程度の回数、ノリを刈り取って、冬場、何回か刈り取ってもう色がつかなくなったら、これで一応終わりにしましょうというのが普通の操業のパターンですね。ところが、想定されている、そういう時期よりも早くに、Eucampiaであるとかが増えて、想定よりも早く色がつかなくなって、製品にならない、値段がつかないということになると、やはり被害という認識になるんだろうと思います。

 瀬戸内の香川県とか、兵庫県とかのお話を聞いていますと、やはりその時期の栄養塩濃度、瀬戸内の場合は窒素欠乏が原因でノリ落ちが起こるんですけども、彼らのお話では、やはりそういう窒素濃度というのは下がってきているということでございます。ただ、この47ページに記載されていますDINのデータのオリジナルのものと、彼らが示しているものとは、またちょっと違うのかもしれないですね。これはちょっと詰める必要はあるのかなとはいつも思ってはいるんですけども。

【岡田委員長】 よろしいですか。

 じゃあ、審議官、どうぞ。

【早水大臣官房審議官】 興味深いデータをありがとうございました。一つ、ご質問ですけど、赤潮の被害は、今ご指摘のように、いろんな被害があって、直接有害なプランクトンによるものとか、今はEucampiaの栄養塩の問題とかもありますが、もう一つ、プランクトンが増えることによって酸素を消費して、貧酸素になって被害が出るというのもあると思います。そういうのも一応この被害の中にはカウントされているということでよいのでしょうか。

【長﨑委員】 先ほど来、貧酸素水塊の話が出てきますので、ちょっと解説をさせていただきますと、植物プランクトンも、光が当たっているときは酸素をつくる側の生物ですけれども、光が当たっていない状態ですと、呼吸だけをするグループになります。ですから、当然その条件下で、生物というか、海の中の微生物というのは、あらゆる環境において、そこにエネルギーの塊、有機物があると、それを燃やそうとします。生物学的にゆっくりと分解しようとして、そのときに酸素を使いますから、そうすると、周囲の酸素濃度が、溶存酸素濃度が下がっていく。下がっていって、もういわゆる好気性細菌と呼ばれるグループのバクテリアが機能できないぐらいまで下がったら、今度は嫌気性な条件のもとで働けるバクテリアが頑張って、さらに分解しようとするわけです。でも、そういう非常に還元的な、要するに、酸素のない状態で分解が起こると、例えば窒素にはH(水素)がくっついてアンモニアになったり、あるいはS(硫黄)には水素がくっついてHSという非常に有毒な物質になるわけですね。というふうなプロセスを経て、非常に酸素濃度は低い上に、毒性の物質を持った塊になっている水というのを貧酸素水塊と言っていいと思います。それが、例えば岸寄りで、岸から沖に向けて風ががんがん吹いたときに、底のほうにあったその水が上がってきて、岸辺の生物に触れてしまうと、岸辺の生物はその毒性物質によってやられてしまい、いわゆる青潮とか呼ばれる現象になるわけです。ですから、ご質問に答えるならば、植物プランクトンも、そういう有機物の塊ではありますから、そういう原因にはもちろんなり得ると言っていいかと思います。

【岡田委員長】 ありがとうございました。

 ほかにございますか。じゃあ、どうぞ。

【長屋委員】 ちょっとお伺いしたいのですが、以前聞いたことがある話で、窒素とりんのバランスが崩れてくると、それがEucampiaとか、大型の珪藻の発生を動促す一つの原因になるんじゃないかと。ちょうど10年前に、この窒素とりんの規制が始まってから、どうもその辺との関連も言われるところがあるんですが、この辺については、何か知見というのはあるんでしょうか。

【長﨑委員】 プランクトンの組成を見て、レッドフィールド比といいまして、16対1の比率でNとPがあると、理想的な環境だという論文がずっと前に出て、それを、生物の種類によって若干変わりますけども、非常に重視する研究者の方ももちろんおられます。

 瀬戸内海に関して言うと、やはり窒素の欠乏が色落ちの原因になっているということなので、Nのほうが欠けて、比較的、Pのほうはある状態というふうに考えていいと思います。それがノリの色落ちの原因ですね。

 東京湾は、逆に、りん欠乏でノリの生育が悪くなるというお話を伺っております。その辺りのちょっと詳しい話を、私はこれ以上は知らないんですけども。

【岡田委員長】 じゃあ、最後にどうぞ。

【細見委員】 長﨑委員がおっしゃられたように、東京湾と瀬戸内海で違うのであれば、栄養塩の低下がノリの色落ちに直接関与しているという原因と結果が明確なデータがもしあったら、ぜひもう一度見せていただきたいなという気がします。それはなぜかというと、例えば、本日、48ページとか49ページに整理していただいた中に、もう水温が確実に上がっているというようなデータがあると。これは今まで、従来、窒素とりんだけを議論していたけれども、ノリの色落ちに対して水温もひょっとしたら影響があるのではないか。当然ノリも生物ですから、今、長﨑先生がおっしゃられたように、その生物の種によって、当然温度の特異性も違ってくるので、Eucampiaが、もしも、少し温度に対して非常に敏感に応答しているということであれば、またそちらからの説明が必要かもしれない。我々はやっぱり基本的にはデータに忠実でありたい。水温の影響だとか、窒素、りんの影響が、例えば本当にノリの色落ちとどう関係あるのか、それはどういうデータでそういうことが言えるのかということについて、事務局のほうでも準備していただいて、議論を進めさせていただければと思います。ありがとうございます。

【長﨑委員】 ノリに関する色落ちの研究というのは、かなり古くからやられていますので、瀬戸内みたいな比較的流れているところですと、3マイクロモーラーの窒素を切ると、色落ちが起きるということはデータとして古くから言われておりますね。そのぎりぎりの線にあるときに、先ほど申し上げたような短期の赤潮を起こす珪藻が増えても、色落ちが起きてしまうということで、そういうものも近年では問題になっているという理解をしております。おっしゃるように、温度等も非常に重要なファクターなので、継続して考えていく必要があると思います。

【岡田委員長】 ありがとうございました。今の件は、これから多分議論していくことになるかと思いますので、事務局で関連するデータの整理等をよろしくお願いいたします。

 よろしいですか。

 それでは、長﨑先生、いろんな資料をご用意いただきまして、どうもありがとうございました。

 本日の議題は以上でございますけれども、全体を通じて、何かご意見、ご要望等がございましたら承りたいと思いますが、何かございますでしょうか。どうぞ。

【古米委員】 先ほど長﨑先生からのお話で、赤潮の件数自体は、非常にフィルタがかかった形で出てきているというようなことがありましたが、そういったデータの取得のままでいっても、あと10年たっても、20年たっても、何が何やらわからんということであれば、環境省として、もっと新しい方法で赤潮の発生状況なりを見ることが必要ではないでしょうか。今は、衛星画像でMODISを使ってやれるとか、あるいは、その波長を持っている衛星画像があって、日本はそういうリモート・センシングのプロジェクトが進んでいるので、評価が高くない成果も出ていてなかなか難しいのかなと思いますが、やはり戦略的に、どれぐらいの時期に、どう広がっているのかというのを把握する方法論を早目に持っておかないと、いつまでたっても半定量的な議論になるのかなとちょっと感じましたので、ぜひそこら辺はご検討いただくといいかなと思います。

【岡田委員長】 どうぞ。

【根木室長】 ご意見、受けとめさせていただきます。水産庁などとも連携して、検討する必要があるのかと受けとめさせていただきます。

【岡田委員長】 ありがとうございました。おっしゃるとおりだと思います。よろしくお願いいたします。

 ほかにございますか。

 それでは、事務局から、あと何か連絡事項等ございますでしょうか。

【山田係長】 毎度のことになりますけども、本日の議事録につきましては、速記がまとまり次第、皆様にお送りいたしますので、ご確認をお願いいたします。ご確認いただいたものを環境省ウエブサイトにて公開いたします。

 また、次回の日程ですが、現在、皆様に、別途、日程調整をさせていただいております。決まりましたら、またご連絡いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【岡田委員長】 それでは、以上をもちまして第5回の総量削減専門委員会を閉会とさせていただきます。

 本日はどうもありがとうございました。

午後4時36分 閉会