中央環境審議会大気・騒音振動部会 石綿飛散防止小委員会(第2回)議事録

1.日時

平成30年11月21日(水)1000~1205

2.場所

環境省 第一会議室

3.出席者

(委員長)

大塚 直

(臨時委員) 

大迫 政浩

島  正之

高岡 昌輝

谷口 靖彦

山神 真紀子

(専門委員)

浅見 琢也

出野 政雄

笠井 賢一

神山 宣彦

小坂  浩

高澤 彰裕

外山 尚紀

廣田 善夫

本橋 健司

渡辺ゆかり

(環境省)

田中水・大気環境局長

上田審議官
庄子総務課長
高澤大気環境課長
青竹大気環境課課長補佐

4.議題

1)
大気汚染防止法関係者からのヒアリング(中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会及び全国労働安全衛生センター連絡会議、(一社)JATI協会、(一社)建築物石綿含有建材調査者協会、(一社)日本建設業連合会)
2)
その他

5.配付資料

資料1
中央環境審議会環境審議会大気・騒音振動部会石綿飛散防止小委員会委員名簿
資料2-1
中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会提出資料
資料2-2
全国労働安全衛生センター連絡会議提出資料
資料3
(一社)JATI協会提出資料
資料4
(一社)建築物石綿含有建材調査者協会提出資料
資料5
(一社)日本建設業連合会提出資料
参考資料1
石綿飛散防止に関する法令(抜粋)
参考資料2
石綿飛散防止の現状と課題について(第1回石綿飛散防止小委員会資料4)
参考資料3
第1回石綿飛散防止小委員会(平成30年10月18日)議事録

6.議事

【高澤大気環境課長】 それでは、定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会大気・騒音振動部会第2回石綿飛散防止小委員会を開催いたします。

 委員の皆様方におかれましては、ご多忙中にもかかわらずご出席いただき、誠にありがとうございます。私は本日の司会を務めさせていただきます大気環境課長の高澤でございます。

 本日の会議は小委員会の運営方針に基づき、公開とさせていただいております。

 本日の委員の出席状況でございますけれども、委員19名中現在16名の委員の方にご出席をいただいておりまして、定足数に達しているとのご報告をさせていただきます。なお、武林委員より少々遅れるとのご連絡を受けております。

 本日は、勢一委員、中村委員はご欠席でございます。

 まず、議事に先立ちまして、水・大気環境局長の田中から一言ご挨拶を申し上げます。

【田中水・大気環境局長】 皆様おはようございます。水・大気環境局長の田中でございます。よろしくお願いいたします。

 まず本日は、皆様大変ご多忙の中ご出席を賜りまして、厚く御礼を申し上げます。

 今回と次回の2回にわたりまして、大気汚染防止法の関係者からのヒアリングを実施させていただければと思っております。

 今回ですけれども、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会、全国労働安全衛生センター連絡会議、一般社団法人JATI協会、一般社団法人建築物石綿含有建材調査者協会、一般社団法人日本建設業連合会のこの五つの団体の方々にお越しいただいております。改めまして、ご多忙の中お越しいただきましたことについて、感謝申し上げたいと思います。

 本日のヒアリングにおきましては、現場の実情ですとか、日ごろご苦労いただいている中で、いろいろ気づかれた点などもあるかと思いますので、そういったことについてご紹介をいただきたいと思っております。

 また、現場の声ということで、今後の石綿飛散防止の在り方について検討を進めていく上で、大変示唆に富む貴重なご意見、あるいは情報をいただければと考えております。

 本日のこのヒアリングの結果をしっかりと今後の議論に生かしていければと思っておりますので、前回に引き続きまして活発なご議論をいただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【高澤大気環境課長】 それでは続きまして、配付資料の確認をさせていただきます。

 議事次第に配付資料の一覧を記載しております。

 環境省では環境負荷削減の観点から、審議会等の資料のペーパーレス化に取り組んでおります。委員の皆様におかれましては、本日はタブレットを使用して資料をご覧いただきます。

 なお、資料5につきましては修正が入ったということで、差し替えの資料をご持参していただきましたので、それを紙で配らせていただいております。こちらにつきましては、後ほど環境省のホームページの資料のほうも修正させていただきます。

 タブレット上の資料をご覧になる際には、ダブルクリックしてデータをお開きください。なお、タブレットの不調や資料データの不足、操作上の不都合等ございましたら、お近くの事務局の者までお申しつけください。

 なお、ヒアリングの説明資料については、前方のスクリーンのほうでも、ちょっと見づらいかもしれないんですけれども、ご覧いただけるようにしております。

 傍聴の皆様におかれましても、前日までに環境省ホームページに掲載いたしました資料について、お持ちのノートパソコン、タブレット等の端末に保存し、ご覧いただくなど、ペーパーレス化へのご協力をお願いしているところでございます。ご理解のほど、よろしくお願いいたします。

 また、今回の小委員会より、委員の皆様へのペットボトルなどワンウェイプラスチックを使っての飲み物の提供を控えさせていただいております。近年、プラスチックごみによる海洋汚染が世界中で深刻な問題となっております。これを受けて、まず隗より始めよとの原田環境大臣からの号令のもと、省を挙げて取り組んでおります。その中で審議会や検討会など、環境省のあらゆる会議において、今後、ストロー、カップ、かき混ぜ棒など、ワンウェイプラスチックを使用しないこととしております。委員の方々には、今後はマイボトルでの飲み物持参についてご理解とご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

 なお、本日は事前の周知が直前になりましたこともございますので、委員の皆様にはコーヒーをお出ししておりますが、今後は水筒などのご持参をよろしくお願いいたします。

 報道の関係者の方におかれましては、恐縮でございますが、カメラ撮りは会議の冒頭のみとさせていただいておりますので、これ以降のカメラ撮りはご遠慮いただきますよう、ご協力をお願いいたします。

 それでは、これ以降の会議の進行につきましては、大塚委員長にお願いいたします。よろしくお願いいたします。

【大塚委員長】 それでは議事に入りたいと思います。

 まず議題(1)でございますけれども、大気汚染防止法関係者からのヒアリングについてでございます。本日お越しいただきました5団体の皆様、どうぞよろしくお願いいたします。

 各ヒアリングにつきましては、1コマ30分程度です。まず15分程度お話を伺って、その後、質疑応答の時間を15分ほど設けたいと思います。

 まず初めに、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会の平田様、全国労働安全衛生センター連絡会議の古谷様からご説明をお願いしたいと思います。時間が短くなってしまって申し訳ございませんけれども、お二方あわせて30分のこまの中でお願いできればと思います。それではどうぞよろしくお願いいたします。

【中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会 平田会長】 皆様、おはようございます。私、「中皮腫・アスベスト疾患患者と家族の会(患者と家族の会)」の会長と尼崎支部世話人を兼任しております平田忠男と申します。今日は、患者と家族の会の会長として、また私自身胸膜プラーク患者として、また、さらに4歳違いの弟を41歳で悪性胸膜中皮腫によって亡くした家族・遺族として、アスベスト健康被害者の立場から思うところの一端を述べさせていただきます。

 私たち「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」は2004年2月に発足しました。当時の会員は60人でした。前回、大気汚染防止法が改正された2013年には650人、現在は900人となっております。アスベストの被害が拡大する中で、会員も急増しています。同時にアスベストへの一般の皆さんの関心も高まってきています。

 会の発足の2年前である2002年に、中皮腫で家族を亡くされた遺族がはじめて集い、環境省、厚生労働省と日本石綿協会に対して申出を行っておりますが、遺族たちは厳しい病気で家族を失った経験から、このような被害が今後起きないように「早くアスベストの使用を禁止してほしい」と訴えてきました。しかし、厚生労働省と日本石綿協会は非道にも「これからもアスベストを使用し続ける」と回答してきました。日本石綿協会は「アスベストは管理して使えば大丈夫である」とする「管理使用」によって安全に使うことができると主張し、政府もそれを受け入れてきたのです。しかし2年後2004年に政府は、建材への使用を禁止し、事実上アスベストの使用を禁止しました。もっと早く禁止していれば、もっと被害を少なくすることができたことは忘れてはならないと思います。

 患者と家族の会が発足した翌年、2005年6月にクボタショックが起きました。クボタ旧神崎工場周辺の中皮腫被害者の発見がそのきっかけになりましたが、当時5人の中皮腫の患者を発見し工場と結びつけたのは患者と家族の会の元会長です。私自身はクボタ旧神崎工場の道路ひとつ隔てた旧郵政省の職員宿舎「角田寮」に昭和25年(1950年)から18年間住んでいました。ちょうど工場で最も発ガン性の高い青石綿が使われていたときにほぼ重なっております。当時、寮には、入れ替わりはあっても常時130人ほどの親世代、子世代、あわせて生活していました。半分近くが学齢期の子どもたちでした。私も昭和25年、満6歳から18年間ずっとその寮で生活してきました。その子どもたちの中から何と私の同学年の二人を含め6人の中皮腫患者が出ています。直近では昨年、私の一学年下の男性が腹膜中皮腫を発症してしまいました。昭和45年(1970年)に老朽化のために寮が閉鎖されてから47年もの時間がたっているのにです。かくも曝露から発症まで潜伏期間があるとは、なんとも言いようがありません。角田寮の被害者の場合、職歴で石綿に関わる仕事に携わっていなかったことを年金記録などから証明せねばなりません。また、実際に寮に住んでいたことがわかる資料の提出を求められます。何十年もたってから当時の証人、隣人を探すのは難しいことです。時が経過すればするほど患者本人も高齢化して、証人探しは困難となってきます。このことは、角田寮の被害者に限らず、全国の被害者にも、石綿救済法に関し同じことが言えます。私や私の弟や幼なじみ、また今までの世話人活動を通じてお見送りさせていただいた多くの方の無念を思うとき、これ以上つらい、悔しい思いをする人が出ないようにと願っています。

 当初、クボタ周辺の被害は5人でした。半年後85人と報道されました。今年の6月末現在では339人に上っています。世界最大級の周辺住民の被害が発生しており、これはまさに公害です。環境省が対策をとらなければならないということであります。クボタのようなアスベスト工場はもうありません。しかし、アスベストの除去や建物の解体の現場ではアスベストの飛散や漏えいは続いており、大きな問題となっています。これらが小さなクボタの工場となって被害が発生するおそれは十分にあります。

 アスベストの使用が禁止されている現在、今、一番気がかりなことは、やはり建築物の解体によるアスベストの飛散防止と廃棄物処理の徹底管理であります。街を歩いていると建物の解体現場をよく見かけますが、シートで覆われて中は見えません。石綿の掲示さえされていない現場も多く見かけます。きちんと飛散防止が行われているか周囲の人々は知ることができないのです。

 私たち被害者は被害の救済だけでなく、今の石綿の被害防止対策にも大きな関心を持っております。尼崎支部では、毎年尼崎市と話し合いを行っており、その中で解体現場3,300件のうち1割以上の380件でアスベスト含有建材の見落としがあったことが明らかになっております。報道もされました。クボタショックがあり、対策に力を入れているとされる尼崎市でさえこのような状況です。

 アスベストの調査や分析、管理、除去は大変難しいことですけれども、適切な資格制度やライセンスが現在ありません。誰でもできてしまう状況です。現在使用されている建物のアスベスト除去を監視する気中濃度測定の義務さえありません。きちんと除去されたかどうか確認することもされていません。罰則も最大罰金50万円では軽過ぎます。抜本的な規制強化が必要と考えます。

 今、世間では、クボタショックはもう終わったと言われる方もおられます。しかし、クボタショックはまだ終わってはいないのです。クボタショックが終わっていないということは、今現在、尼崎支部にも、クボタの旧神崎工場由来のばく露による石綿被害の相談が絶え間なく続いております。このことを最後に申し上げまして、私の今日の意見を終了させていただきます。本日は患者と家族の会にお時間をとっていただき、ありがとうございました。

【全国労働安全衛生センター連絡会議 古谷事務局長】 続けさせていただきます。古谷と申します。簡単に自己紹介が書いてありますけれども、1990年にできた全国労働安全衛生センター連絡会議の事務局長、それとそれより前、1987年につくられた石綿対策全国連絡会議の事務局長を1996年から、また、平田さんからありましたように、患者と家族の会が2004年につくられてから相談役、さらに新しいところで、2008年にアジアアスベスト禁止ネットワークというものをつくって、そこのコーディネーターとして、今、とりわけ日本の正反の教訓を伝えながら、アスベスト被害を何とか予防したいということで、毎年多分5カ国から10カ国ぐらい、アジアを訪れている状況です。

 下の2枚目のスライドも自己紹介の続きみたいなものですけれども、そんな中で、昨年、ある国際科学ジャーナルで、アスベストを達成できた各国の経験を伝えようという特集の中で、日本の経験について書かせていただいたり、ひょんなことから、世界でアスベスト禁止を求めているキャンペーナーたちに対する国際スパイ事件にも巻き込まれたことにふれた英文記事をちょっと載せてあります。

 それで、めくっていただいて最初に、予防可能な疾病の負荷を推計することによって対策を促進させるということを目的にした、世界疾病負荷、GBD推計というものがありますけれども、ここ3年間毎年更新されています。一番新しくは今月11月9日に更新されているのですけれども、そのデータによる日本におけるアスベストによる死亡者数の推計、最新の推計値です。石綿肺、中皮腫、肺がんに加えて、卵巣がん、喉頭がんの死亡も推計されています。また恐らく、皆さん救済や補償の数字をご存じでしたら、この肺がんの数字の大きさに非常に驚かれると思います。本小委員会の本題に入るやっぱり前提として、アスベストによる健康被害というものはどういうものなのか、平田会長の話も含めて、ぜひやっぱり常に基本にしていただきたいということでお示ししています。

 さて、下のスライドは、これは今、アジアで何よりもアスベストを早く禁止しましょうという話をしているわけですけれども、禁止は重要な一歩ではあるけれども最初の一歩にすぎない。アスベスト被害をなくしていくためにはまだやらなきゃいけないことがあるということで、とりわけ、禁止を実現した後の共通の課題として掲げている内容をそのまま日本語に訳してみました。禁止の執行、遵守ということもがありますし、アスベストのない環境/社会の実現、これは特に既存アスベスト対策に関わることです。また被害者・家族に対する正義の実現、あるいはそれらを世界的に実践すること。

 ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、この写真にありますもの、ILOとかWHOが、今、アスベスト関連疾患を根絶するための国家計画、NPEADというものを各国でつくろうということを促進しています。またその中で、National Asbestos Profileをつくるべきだというようなことも言っているわけですけれども、直接のいわば目的は、まだアスベストを使い続けている国に、早くやめる努力をさせようということが目的ですけれども、実はアスベストを既に禁止した国であっても、こういう国家計画が必要だということを最初にお伝えしたい。

 ちなみに、禁止した後にNational Asbestos Profileをつくっている国としては、ドイツとかオーストラリアがあります。

 どんな議論がなされているかというと、下のスライド、英語で恐縮ですけれども、2013年に欧州議会が採択した決議では、アスベストのない欧州を2028年までに達成するという問題を提起しています。同じ年、オーストラリアでは、アスベストのないオーストラリアを2030年までに実現することを目標に掲げた国家戦略計画及び法律をつくって新しい国家機関を立ち上げました。ちょうど5年目の今見直しがなされているところです。さらに2015年には、欧州の委員会で同じような意見が採択されています。

 先ほどの欧州議会の決議の中では、そういうアスベストのない社会を実現するという目標を持って実行している国は、ヨーロッパの中ではポーランドだけだという、ポーランドではやっているというふうに書かれています。あるいは、イギリスで超党派の国会議員団が、やはりイギリスでもそういう戦略目標を持つべきだという議論がされています。全てのアスベストということではありませんけれども、オランダでは、アスベストを含有した屋根材を2024年までになくすという制度が既に動き出しています。お隣の韓国では、全国の学校をノンアスベストにするという計画を先の政権でつくって、そのときの目標は2033年だったんですけれども、今の新しい政権になってから、無石綿化の実現時期を2027年に前倒ししています。

 新たなアスベストの使用がなくなっても、私たちの身の回りに残されているアスベストを安全に除去することなしには、アスベスト関連疾患をなくすことはできない、アスベスト被害をなくすことはできないということを考えれば、いつまでにそういう社会、そういう環境を実現する目標を立てて、ロードマップを持ってやっていくということが、今、世界共通の課題であるということを、ぜひ訴えたいというふうに思っているわけです。

 そういう脈絡から考えると、全てのアスベストを今一気に除去することなどできないわけですから、イギリスの2012年規則を多少抜粋していますけれども、原理原則の一番のところは、アスベストが使われているか、使われていないのか、どのような状態なのかを調べて、リスクアセスメントが行われ、全て一気に除去できないわけですから、除去するまでの間どのように管理していくのかという計画が立てられて実行されていなければならない。そういう建物でなければ、除去工事を行ってはならないというのが基本的な考え方ですね。

 それに対して、今の日本の大きなところでの実態は、解体等作業を行うということになって初めて調査をする。当然そこでは、アスベストが見つかればコストが高くなるだとか、アスベストがないほうがいいという選好が働くということが考えられるわけですから、いろんな問題が起きている根っこの一つにそういう問題があると思います。そういう意味ではパラダイムを変える、そういうことがちゃんと調査管理なされている建物でなければ解体等作業をしてはならないという発想が必要だろうと思うんですね。

 その点では、国土交通省が発足され、今新たに3省共管で動きだそうとしている調査者の制度に、調査だけでリスクを評価するだとかリスクを管理するという中身が一切すっぽ抜けているということは非常に違和感があります。

 また、クボタショックの直後も含めて、過去何回か、とりわけ公共建築物にアスベストの調査というのはやられているわけですけれども、かつてはその調査結果が捨てられて、継続されないで、間違った工事が行われてしまう。今は継続したことにはなっているけれども、果たしてその当時の調査がどうだったのか、やはり新たな調査の仕組みができるのであれば、改めてしっかりした調査がなされるべきですし、やりっ放しではなく、そこで見つけたアスベストに対してどうしていくのか、関係者に知らされていることを含めて体制が整えられていくべきだというふうに考えています。

 確かに、建築物等というのは莫大な数があります。そんなことは無理だということもあるかもしれませんが、一つの事例として考えられるのが、2009年に香港で採択されたシップリサイクル条約、これを批准するための国内法が今年の6月28日に公布されていますけれども、仕組みとしては、アスベストを含めた有害物のインベントリがあらかじめつくられている船舶でなければ解体してはならないという発想だと思いますね。この条約をやられたころの当時のいろんな議論の中で、例えばアスベストについてはこんなことで調べていくと言われています。今既に事業として始まっていて、私自身その事業の中身を云々すべき立場にはありませんけれども、やはり膨大な数の建築物等についても、やはり先ほど申しましたようなパラダイムの変換ということが考えられないか。

 今日せっかくの機会にどういう話をしようかと思ったんですけれども、せっかくの機会ですので、やはりちょっと大きな話をまず最初にさせていただきました。

 最後の1枚に、それ以外に、仮にそうしたことに直ちに着手できなくても、今回の小委員会でぜひ真剣に取り組んでいただきたい論点をそこに挙げています。4番目から読みますと、除去作業にライセンス制度を導入すること、除去作業中のリスクアセスメントの実施、あるいはその結果に基づく措置の義務付け、除去作業が適切に完了したことの確認の義務付け、いわゆる「レベル3」建材の問題、罰則の問題、さらには、制作決定の透明化及び適正化ということを挙げておいて、細かくはふれませんが、ぜひ真摯な検討が行われることを期待しております。どうもありがとうございました。

【大塚委員長】 平田様、古谷様、どうもありがとうございました。

 では、ただいまの説明につきましてご質問がございましたらお願いいたします。札を立てていただければと思います。いかがでしょうか。

 外山委員、お願いします。

【外山専門委員】 外山です。古谷さんにお聞きしたいんですけれども、最後のスライドで検討が必要な対策のまとめということで、ざくっとまとめられているんですけれども、その中で、最後の政策決定の透明化及び適正化という辺りは、具体的にはどんなことをおっしゃっているのかというところを説明していただけたらと思います。

【全国労働安全衛生センター連絡会議 古谷事務局長】 平田会長のほうからも幾つか話がありましたけれども、やはり今このようなアスベスト被害が顕在化している中で、やはり加害者の立場というか、アスベスト産業に関わった人間がこういう問題に関わるということは、やはり被害者とともに歩んでいる立場として、違和感どころかやはり反対です。

 そして、今回の小委員会については公開されていますけれども、その前提となるような作業、あるいは資料についても、ぜひ早目に公開して透明化を図っていただきたい。加えて、最初との関わりでいくと、むしろ被害者の団体の代表をヒアリングという形だけではなくて、やっぱり委員として加えるというようなことも必要だろうというふうに考えています。

【大塚委員長】 ありがとうございました。

 ほかにはいかがでしょうか。

 では笠井委員、お願いします。

【笠井専門委員】 日本建設連合会の笠井と申します。古谷さんのご説明の資料の最後のページの、ポチ(点)でいうと五つ目の除去作業中のリスクアセスメントの実施という書き方がありますが、具体的にどのよう意味合いでおっしゃっているのか理解ができないのですが、そもそもリスクアセスメントをするということは、除去作業の前にリスクアセスメントをして、それをもとにしたリスク低減措置を盛り込み、しっかりとどういう対策工事やモニタリングをやるのかということだろうというのが私の理解ですが、この除去作業中のリスクアセスメントというのはどういうことでしょうか。

【全国労働安全衛生センター連絡会議 古谷事務局長】 まさに三つの段階があると思うんです。作業を計画する段階と、それと今ここで指摘しているのは、むしろ作業実施中の話ですね。それと後者でも指摘がございますが作業の完了という三つの段階があると思うんですけれども、とりわけ、作業中のリスクアセスメントということについては、やはり作業をやっている中で濃度測定を実施して、ちゃんと漏れない作業が確保されているのかどうかということを作業の前とか後ではなくて、作業中の課題として入れるべきであるという議論です。

【大塚委員長】 よろしいですか。

 では高岡委員、お願いします。

【高岡臨時委員】 直接的な作業のことには関わらないんですが、今回、古谷様のほうからお示しされた中で、アスベストのない環境ということで、最終的には廃棄というかディスポーザルのところがあると述べられています。そこは例えばイギリスとかほかのところでは、最終的な廃棄のところはどうされているかということの情報をお持ちでしたら教えていただきたいと思います。

【全国労働安全衛生センター連絡会議 古谷事務局長】 そんなに多くの情報を持っているわけではありません。とりわけ廃棄については、仕組みとしては日本も似たようなところだろうと思います。

 ただ、その遵守状況及び罰則の適用については、遙かに進んでいる国が幾つもあるというのがあります。ただ、これ自体は非常に大きな課題で、とりわけ日本のような狭い国土の中でどうするか。よりちょっとうかつに、こうやれば完全になるよというふうに言いにくいところがあって、幾つか考えはあるんですけれども、むしろ無責任なことは言えないかなという感じがしています。ただ、本当に大事な問題、特にばく露が大きい場面でもありますので、やっぱりうろんなアプローチかもしれませんけれども、違反に関する厳罰というのは、やっぱり日本ではとりわけ重要だろうというふうに考えています。

【大塚委員長】 では出野委員。

【出野専門委員】 解体業連合会、出野と申します。

 ちょっと一般的な質問で申し訳ないんですけれども、新しい制度、仕組みをつくるとか、あるいは実際に施行、除去作業をするとか、そういう段階があると思うんですけれども、それぞれについて費用が必要になると思います。この費用を誰が負担するか。もっと大きくいえば、ここまでアスベスト問題を大きくした責任は誰がとるのかとか、そういう問題があろうかと思いますけれども、費用に限りますと、例えば、除去作業をする、例えば解体費用が100万であれば、アスベストがあったら200万になってしまう、2倍ぐらいになってしまうと、そういう現実があるわけですけれども、こういう費用負担については、最終的には誰が負担すべきかと。生産者か受益者か、あるいは行政か、オール国民か。その辺りの、個人的な意見で結構ですけれども、お答えいただければ。

【全国労働安全衛生センター連絡会議 古谷事務局長】 私でよろしいですか。

【出野専門委員】 ええ。お答えいただければ。参考的にお答えいただきたいと思いますが、よろしくお願いします。

【全国労働安全衛生センター連絡会議 古谷事務局長】 まずは費用の問題がネックになって、規制がおろそかになったり緩くなることがあってはならないということが前提ですけれども、例えば、さっき紹介した中で言うと、オランダの屋根については政府が補助金を用意して促進するという体制がとられています。それと、韓国についてもかなりその部分があるのかなという感じがしています。両面あって、おっしゃるような、そもそも被害を拡大した責任という立場からと、あともう一つは、現実に係る費用をどうするかという意味で、私は国が応分の負担をするということは道理があることだと私自身は考えていますし、今、国土交通省さんが幾らか制度はあるんですけれども、見ていて使いにくいし使えていないという面も含めて考えると、より安全な作業を担保できる形での財政の仕組みというのは有意義なことだと思います。

【大塚委員長】 小坂委員、お願いします。

【小坂専門委員】 質問ではなく意見なんですが、先ほど笠井委員の質問がありましたが、除去作業中のリスクアセスメントということのお話がありましたが、実は私、兵庫県立公害研究所に勤めていましたときに、1995年から退職する2007年までの間、解体工事現場で工事開始から30分間サンプリングをして、それを集じん機排気口の直近の濃度と出入り口の濃度測定を行って、現場で顕微鏡観察をして、漏えいしている場合はすぐに工事をやめさせるということをずっとやっていました。

 ですから30分間は漏えいが続くわけですが、できるだけ早くとめるということは可能だと思っています。ちょっと自身の体験から意見として申し上げました。

【大塚委員長】 ありがとうございます。

 では神山委員。これで今立っていませんので、終わりにさせていただきます。

【神山専門委員】 平田さんのほうにちょっとご質問させていただきます。

 角田寮ですか、そこに偶然住まわれて大変被害を受けられて同情に堪えません。本当に大変だと思います。

 それで、ここに書かれている職歴を探すというのは、労災のほうで必須のことで、かなり大変なことで、過去の職歴を証明するのは大変だというふうにも伺ったり、見たりして大変だと思うんですが、石綿救済法の場合、そのすき間を埋めるという立場からできた法律なので、割と職歴がなければ全部中皮腫の場合は100%現在のところは認められていると思いますが、それに関しての手続がかなり大変だとおっしゃっていることについて、もうちょっと詳しくお伺い、本当に大変な状況であれば直さなくちゃいけないと思うんですが、ちょっとお伺いしたいと思います。

【中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会 平田会長】 私の見聞きする範囲では、救済法の申請についても、職歴で石綿で携わっている仕事に関与しておれば労災のほうでやってくれと、そういうことをまだ言われるケースもあると。

 今までの私の知る被害者では、労災に係る人はほとんどいませんね。角田寮の私の幼なじみでは。ほとんど関係のない仕事についております。それを証明するには、やはり年金記録でどこそこの会社に何年から何年まで勤めていたと、そういう証明が要ります。それとまた、実際に角田寮に住んでいたかどうか、これもまた厳しく、年がたてばたつほど、そういう厳しい審査になってくるんです。これはクボタに救済金を申請するときも一緒なんです。クボタショックの直後は、比較的スムーズに認められたことも、もう年月がたてばたつほど、だんだんと、本当だろうかと、そういう信頼感というのでしょうか、やっぱり不信がだんだん芽生えてくるんですよね、不思議なことに。時間がたてばたつほど。そしてまた本人も高齢化する。それから家族ももう親世代はいない。それから子世代、子世代も兄弟もまた別々にほとんど今は生活していますよね。親がおれば一緒に生活する。ということは、もう兄弟の中でもなかなか連絡が取りにくいケースもあると。まして、角田寮が閉鎖されてからもう半世紀近くになります。だからその間のやはり誰が隣人に、隣に住んでおられたか、それを探すのも大変なんです。個人的に交際のある家族とはやりとりはやっていますけれども、もう限られた数ですよね。

【神山専門委員】 わかりました。要するに中皮腫であると。それで職歴が全くわからないし、ないかわからないしという場合は、もう救済法は100%認めているということと、手続がちょっと大変だということなんですね。その辺のギャップが、私は100%簡単に認められているというふうに理解していたんですが手続が大変だということですね。

【中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会 平田会長】 100%というのはちょっと私には信じがたいんですけれども。

【大塚委員長】 どうもありがとうございました。

 では平田様、古谷様、どうもありがとうございました。

 では続きまして、一般社団法人JATI協会です。こちらは浅見委員からご説明をお願いいたします。

【一般社団法人JATI協会 浅見氏】 おはようございます。JATI協会の浅見と申します。今日は石綿含有建材の成形板等について、いわゆるレベル3プラスアルファ、大防法でいう特定建築材料以外についての話をしたいと思います。

 まずJATI協会とは、よくわからない名称ですので簡単に紹介させていただきますと、Japan Asbestos Abolition Technology & Information Associationということで、石綿を除去といいますか、なくしていこうということに関して、技術研究、確立と情報発信、収集などについて行っている団体です。

 今日の話としましては、建材の種類、あるいは含有量の推移、あと無含有建材のこと、それと解体時の飛散防止、それぞれ時間の関係で非常に短く簡単にかもしれませんけれども話を進めてまいります。

 まず種類ですけれども、石綿含有建材、一般的にはいわゆるレベル1、2、3と分類されています。ただし、法的にはレベルという用語は使用されておりません。

 これは平成17年に石綿則ができたときに、建設業労働災害防止協会さんの、ここに書いてございますマニュアルの中で使用された言葉、あとは特別教育のテキストにも同時に出たのかなという感じがいたします。当初は作業レベルとしていましたが、平成21年の改訂版から、建材のレベルということになっています。

 それと各レベルの製品ですけれども、ご存じだと思いますが、このような形でレベル1、レベル2、レベル3、大防法の施行令の第3条の3で見ますと、ここでいうレベル1とレベル2の建材、吹付け材、断熱材、保温材、耐火材が特定建築材料に該当するということですので、大防法の改正につきまして、やはり検討していくのは、これ以外の材料ということだと思います。

 あと、参考でございますけれども、我々もいつも話をしているのですが、発じん性についてですね、レベル1が著しく高い、レベル2は高いですよ、レベル3は比較的低いですということをよく言われています。ただし、これは厚生労働省の石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアルにも昨年から出ておりますけれども、解体の方法、劣化状況、あるいは石綿含有割合によっては、やはりたとえレベル3であってもレベル2、あるいはレベル1ぐらいの発じん性に匹敵する場合がありますよ、解体時にも総合的に考えてはいけませんよということを示している絵でして、我々はいつもよくこのような話をしております。

 その特定建築材料以外の主な製品ですけれども、その前に、これは資料にはございませんけれども、レベル3の製品を非飛散性と言うことがありますが、実は飛散性という言葉が誤訳と聞いております。飛ぶ方の「Fly」ではなくて、砕けやすいということの「Friable」を聞き間違えて飛散となってしまった。吹き付け材などは飛散もしやすいだろうということで、その辺りのイメージがぴったりだったのかもしれませんけれども、そういうことがあって非常に広まったのかもしれません。

 ただ、問題は非飛散性なんですね。私どもにも、やはり時々話をしているとありますのが、非飛散性というのは飛ばないと。何をやっても飛ばないとまではいきませんけれども、恐らく飛散が非常にしにくい、あるいは全くしないということで、大丈夫なんだろうとお考えの方が時々いらっしゃるということで、そういうことも含めまして、非飛散性という言葉をなるべく使わないようにということは、いろんなところで話をしております。

 その特定建築材料以外の主な建材、大きく二つに分けてここではお話ししたいと思います。

 まず成形板ですね、成形板を見てもこれだけございます。この「…」と書いてあるのが、右側が略称、通称などで使われていると。要するに調査するときに、図面などにはこのような名称もあり得ますよということで示しております。

 あと、上から二つ目、スレートボードですけれども、これはフレキシブル板、平板などと書いてありますけど、これ以外に軟質板と軟質フレキシブル板の4種類が以前のJISですとございます。この4種類は非常に見分けるのが難しいので、通常はスレートボードというような考え方でいいのではないかなと個人的には思っております。

 もう一つのグループ、石綿含有成形板以外の製品ということで、紡織品、これもかなり使われていると思います。建築物の中でも幾つかこれらは使われていると思います。あと接着剤、これにつきましては、最初に2004年に製造等禁止に早目になっておりますので、成形板と同じような感覚で取り扱われているかもしれません。あとジョイントシートなどがございます。

 さらに、建築用仕上塗材ですね。これは最近話題で、私どもの協会にも問い合わせは結構来ています。これはJISを見ますと主要5種類に分かれております。

 最後、このスライド及び資料で一番下だけ、軽量骨材仕上塗材、これは非常に以前から石綿含有量が多くて、レベル1ということで取り扱われているものです。上の四つは時期的なもの、あと石綿含有量を考えますと、施工時にほとんど、あるいは全く石綿含有材料には該当していなかったということが考えられます。その後、法の改正によって、今ではありと、石綿含有製品として取り扱わなくてはいけないわけですけれども、その点辺りがなかなか現場に浸透させていくのが大変なのかもしれません。

 次に、用途ですけれども、やはりレベル3建材、成形板につきましては、いろいろ幅広く使われているのが実際です。特定建築材料は、この表では除いております。建築物で言うと、外壁・軒天、あと屋根ですね、内壁・天井、床、煙突、ダクト、配管。ダクト、配管は、建築物以外、工作物のプラントなどでもこの辺りは結構使われているものがあると思います。

 例えば、一般住宅の外装でいうと、軒天にけい酸カルシウム板第一種とかスレートボード。あと外壁につきましてはスレートボードあるいは窯業系サイディング。

 キッチン、これは壁、火の周りということで不燃建材を使わなくてはいけないという場合もございますので、石綿含有製品が結構使われていると考えられます。けいカル板の第一種スレートボードなど、また吊戸棚も使われているものがあります。この調査に当たっての問題点ですけれども、化粧板とかあるいはタイル張りの下地になっていて、表面からもスレートとかけい酸カルシウム板のそのものが見えない、あるいは見えにくいということがありますので、この辺りは注意が必要な点でございます。

 あとビル内装。ビルの内装は本当にいろいろ、天井、壁、巾木、床と使われています。これ以外にも壁ですと、例えば壁紙とか、そういうものもございますし、ビルで防火区画となりますと、その部分にパテが使われているようなものになります。ビルは結構非常に使われている可能性があるのかなというような印象を持っています。

 続いて工作物ですけれども、ここに典型的な工作物でよく使われている例を幾つか挙げています。水道管、鉄道。これは遮音板というのは、例えば鉄道関係の防音壁ですね、そこに使われているものもあります。あと駅の屋根の波板、これはよくご覧になっている方もいらっしゃると思います。あとトンネルの、特に高速道路を走っていただくとよくわかるのですけれども、トンネル内の両側の白い壁のようなものにスレートボードなどが使われている例があります。あとプラント、先ほどもちょっと言いましたけれども、プラントやボイラーのシール材、あるいは紡織品、このようなものがございます。工作物も建築物も、ここに挙げたのはごく一部とまではいきませんけれども、全部ではございませんので、これ以外にも結構使われているものがあるかと思います。

 石綿含有成形板の出荷量についてです。これは1970年~2001年の調査結果をまとめたものです。大体全部で4,200万トンくらい、これで成形板全てではないんですけれども、かなりの製品については網羅していると思います。特に量的な部分ではかなりを占めていると思います。

 こうやって見ますと、スレート波板と住宅屋根用化粧スレート、これが非常に多くて、両方とも、全体の約3分の1ぐらいを占めているということです。先ほども廃棄物の話が出ましたけれども、この二つの製品は、きちんとした解体工事をやると、分別解体もしやすいんですよね。この波板、あるいは化粧スレートだけを分別して回収もできる、そのようなことをしていくと、将来的に無害化の手法が確立してくれば、非常に有効に、解体から廃棄、廃棄といいますか再利用までできる可能性が考えられます。

 次は、けい酸カルシウム板第一種の出荷量の推移ということで、これをちょっと示します。けい酸カルシウム板第一種は建材の中では比較的早目といいますか、一番早く、無含有建材として発売されたものです。最初は1986年ころから販売されていました。メーカーの立場からしますと発売していたということでしょうけれども、まだ性能的によくなかったというよりも、まだ価格が高かったというのがあったと思います。

 それで、無含有建材はあまり伸びず、この辺り、90年までは、微増でだんだん出荷量が増えておりますけれども、この辺りはバブル期で、やはり全体的に新築されるものが多かったということで伸びています。

 ところが91年から93年にかけて、がっと相当この石綿含有建材の出荷量が減っています。これはけい酸カルシウム板の出荷が減ったということではなくて、無含有のけい酸カルシウム板がこの辺りで急に増えています。ちょっとその数値、本当はここに一緒に比較で載せられればよかったのでしょうけれども、準備不足もあって完全にはできていませんけれども、とにかくその辺りで増えています。

 その要因といたしましては、1991年に当時、二つの協会が団体規格をつくりました。それによって一応、品質の確保ということもできるだろうということでユーザーさんが、ここでかなり無含有建材を使い始めたということだと思います。最終的には、1995年にJISになっています。ただ、この辺りで増えたといいましても、やはり石綿含有時代と全く同じような製品ができたわけではなくて、やや物性的に落ちる、あるいは価格も高いというのが、この90年代前半はまだそのような状況でありました。

 ここで話が変わりますけれども、私どもの協会で、石綿無含有建材一覧表、これは昔の日本石綿協会がやったものをまとめていたものですけれども、4条件をつけて各メーカーに出しました。ここは長くなりますので、詳細は省略いたしますが、この4条件というものをやって、これを満足するものでないとだめですよ。しかも、この4条件は、無含有とするには非常に高いハードルのものということが言えます。

 ただ、あるとき一つ問題があって、全製品、全データの見直しをしたところ、条件に適合しない製品、これは石綿が絶対入っていることではなくて、4条件に適合しないものがあるということで、その後、これは公開を中止しております。

 最後に、解体時の飛散防止。先ほどもお話ししました、波板と住宅屋根用の化粧スレートは、特に葺き替え工事では非常に丁寧にやって、作業後の片付けも含めて、まず割らないような工法で葺き替え工事自体は以前からやられています。ということで、石綿の粉じんの飛散が非常に少ない。どのぐらいが少ないかということがありますけど測定しますと分析の限界まで行かない程度、測定できないレベルまでの場合のところが多いというような状況です。

 それと、鳥取県のパンフレットにございますように、撤去する部分の高さまで以上に周りの養生シートをしておけばかなり飛散は防げる、外部への飛散は防げるのかなという感じがいたします。

 今のものは飛散しない、させにくい方法がありますよということですが、逆にどうしても割ったりしないとできないようなものがあります。

 ここに挙げていますロックウール吸音天井板の捨て張り工法、これは石膏ボードをまず留め付けてから、ロックウール吸音天井板を接着すると。外部からビスが見えなかったりすることがありますので、これはある程度破砕しないとできない。ビニル床タイルでも同じようなことがあるかと思います。

 ということで、工事のときには全部目張りをする、外部に空気が行かないように、確認までは行きませんけれども目張りをする。

 もう一点は、集じん機を中に入れて、粉じんもできるだけ取る。さらに、作業後に粉じんの持ち出しには非常に注意が必要ですよということで、この辺りによってかなり飛散が、当然限界はありますけれども、今のような状況に比べますとかなり低減できるのかなというようなことが考えられます。

 あと、建築用仕上塗材、これも今話題になっていますけれども、これは日本建築仕上材工業会さんのホームページに石綿粉じん飛散防止処理技術、技術指針を出しておりますので、その辺りを参考にしていただければと思います。

 以上で終わります。

【大塚委員長】 どうもありがとうございました。

 ではご質問、ご意見がございましたらお願いいたします。札を立てていただければ。

 大迫委員、お願いいたします。

【大迫臨時委員】 ありがとうございます。

 基本的なところでちょっと知識がないところを教えていただきたいんですが、今のご説明の中で、JISの品質規格のお話がございまして、石綿の無含有の製品といったところの関連でお話がありましたが、お聞きしたいのは、JISの品質規格の中に石綿含有に関する品質基準があるのかどうかということと、それって、今後いろんなレベル3建材に関して、石綿が入っているかどうかということを判断できるような例えばJISの表示とか、そういったもので判断できるのか、あるいは安全サイドで、そこら辺はもうかなり種類として判別していかないと、安全サイドで判別して、その対象を決めていくというような議論をしないといけないのか、その辺の相場観を教えていただきたいのですが。

【一般社団法人JATI協会 浅見氏】 その辺りも非常に詳しく話をすると相当長くなっちゃいますので簡単にお話ししますと、まず、これは石綿含有建材データベースの参考資料にも載せておりますけれども、以前は石綿を入れていないとJISの認定がもらえないという製品がかなりありました。例えば、石綿スレート、スレートボードなどは、ある年までは石綿を入れるのが必須でした。その石綿が入っているかどうかの判断基準で、aマークというのがありました。それは必ず石綿がありなんですけれども、今ではaマークがないもので入っているものが多くなってしまいました。そういうことまで考えていきますと、裏面にマークが幾つかありますので、その組み合わせによって判断できるものも幾つかございます。ただ、非常に見るのが大変だということがあります。

 それとあと、スレート波板というのは、2004年の9月まではほぼ全部、例外はありますけれども、ほぼ全部が石綿を使っていましたので、2004年9月までに施工されたものであれば、あとの葺き替えとかがなければ、石綿は全部入っていると見なすということも可能といいますか、効率的だとは思っています。見なし自体は石綿則で認められておりますので、判断としてはそのようなものもあると思います。

【大迫臨時委員】 ありがとうございます。

【大塚委員長】 では外山委員、お願いします。

【外山専門委員】 JATI協会ということで、アスベストを除去する技術の協会というご紹介でしたが、ホームページを拝見すると石綿協会から移行されたということで、石綿製品製造メーカーの方がたくさん入っているというふうに理解していますので、それを前提としてお聞きしたいんですけれども、スライド14ページのスレート板を、フックボルトを解除して破砕せずに撤去するということで、これはもっともそのとおりで、簡単そうに書かれていますけれども、実際には高所に足場を組んだりとか、ローリングタワーを使い、湿潤化もしなければなりませんし、あとは改修した建材もブルーシートでくるんだりとか、それを手で運ぶというような、非常に手間がかかる作業です。私も実際現場を見たことがあるんですけれども、ミンチ解体と比較すると5倍以上の手間がかかると、費用もかかるというようなことをお聞きしました。

 次のページも内装材ですね、破砕してしまうような場合が確かにあります。真ん中辺りに、作業後の粉じんの持ち出しにも注意が必要ということで書かれていますけれども、この軽天の写真がありますよね。ここに付着したりしている石綿の残骸とか、ほこりを撤去するという、これも膨大な手間がかかる費用で、これも容易ではないわけですね。そういう数倍の費用がかかるものをやはり解体に求めるということは非常に無理があるというふうに思います。

 でも、それでもやらなければいけないということで、現場の方から聞くと、あと施主さんからすると、何でこんなものをそもそも売ったんだという話も聞きます。法律で規制するということももちろん必要なんですけれども、教育ですとかPR、中小業者さんへの支援なんかも当然必要だと思うんですね。

 メーカーを代表するJATI協会さんにお聞きしたいのは、やっぱり売ってしまった責任というものはやっぱりあるだろうと思うんですね。

 ですので、そういったことを、今日の情報提供だけじゃなくて、費用負担とか、最終的には国がそういう費用負担ということを考えなきゃいけないと思うんですが、メーカーとしてそういったことを考えられているんでしょうか。

【一般社団法人JATI協会 浅見氏】 今、協会もメーカーがもう半分以下になってしまいまして、そのような状況です。ということで、まだそこら辺の議論はあまりしていないのが実際です。

【大塚委員長】 ほかには。外山さん、いかがですか。よろしいですか。

【外山専門委員】 今のところ検討されていないということですかね。ぜひそこはやっぱり検討されたらいかがかと思います。

 以上です。

【大塚委員長】 では神山委員、お願いします。

【神山専門委員】 ケイカル板が1991年過ぎから無石綿化したということで、その前後、二つ質問なんですけれども、一つはそのころはまだ1%というのが無石綿、あるいは石綿フリーの規制だったと思うんですけど、1%以下のケイカル板はないというふうに理解していいのかどうかというのが1点と、もう一つは、それ以前と以降で何か現場で解体するとか何かに使えるマーカーは、目印、以前のものだ、以降のものだという目印はないんでしょうか。

【一般社団法人JATI協会 浅見氏】 まず一つ目ですけれども、ちょっと先ほども話をすればよかったんですけれども、原料として石綿を、ここで言う無含有建材は直接入れてはおりません。

 ただ、併産していますので、まず製造ラインの問題と、あと端材ですね、端材を入れたりしていますので、1%以下のものがかなりあると思います。いろんな資料を見て、写真を見て、無石綿という表示があっても、これよく見るとやはりわからないねというものが結構あります。

 あと二つ目は、目印は非常に難しいと思います。ありのほうは、先ほど言いました簡単なんですけれども、それ以外のもので入っている、入っていないの区別につきましては、非常に一言で言えないくらい難しい状況で、幾つか、先ほど申しましたけれども、組み合わせたり、あるいはメーカーがわかればメーカーに聞くと。メーカーに聞いても0.1というレベルでいうとわからないものもありますけれども、そのような状況です。

【大塚委員長】 よろしいでしょうか。ほかにはいかがでしょうか。よろしいですか。

 じゃあ小坂委員、お願いします。

【小坂専門委員】 今の神山先生の質問に対する回答をお聞きして、要するにケイカル板については1%以下も含めて入っているという前提で全部対処しなければならないというふうに私には感じられたんですが、そうですね。

【一般社団法人JATI協会 浅見氏】 原則、裏面にいろいろ表示しているんですが、その表示を見て判断するというところがかなり困難で、まだそこまでの実際今、教育といいますか、いろんな講習でも、なかなかされている例はないと思います。それをやれば少しぐらいはわかるのが出てくるかもしれません。

【小坂専門委員】 基本的にはあると考えて、分析をして、確認するということが少なくとも必要だと思うんですが。

【大塚委員長】 マイクを通してください。

【小坂専門委員】 すみません。基本的には、ケイカル板については全て分析をして、なしを確認するということが必要だと、私は今までの話を聞いて考えたんですが、そういうことですね。

【一般社団法人JATI協会 浅見氏】 なしということで言うと、やはり多くの場合、あるいはほとんどの場合、やはり分析が確実です。あるいはもうメーカーに聞いてみるということぐらいだと思います。

【大塚委員長】 よろしいでしょうか。

 外山委員はまだありますか、どうぞ。

【外山専門委員】 

 質問ですが、表示を見てもわからないという状況で、管理使用という形が平田さんから出ましたけれども、今でも管理使用はこれでできているというふうにお考えでしょうか。

【一般社団法人JATI協会 浅見氏】 管理使用というのはあれですね。解体時が今は中心かと思いますけれども、管理という面では、製造時の管理はよかった、十分できていると思うんですけれども、今の段階では非常にそういう意味では難しいかもしれません。個人的にはそう思っています。

【大塚委員長】 ありがとうございました。よろしいでしょうか。

 どうもありがとうございました。

 では続きまして、一般社団法人建築物石綿含有建材調査者協会の姫野様からご説明をお願いいたします。

【大塚委員長】 よろしくお願いします。

【一般社団法人建築物石綿含有建材調査者協会 姫野副理事】 建築物石綿含有建材調査者協会の副理事であります姫野です。今日は解体現場における事前調査の実施ほか、説明したいと思います。

 これは石綿の原石、こういうふうになっています。これはYouTubeで「邪悪な塵-アスベストの歴史」の抜粋です。含有石綿を実際に割るとこのように綿みたいになっています。ぜひアスベストに関わる方は、このYouTube、過去にいろんな製品をつくった動画も載っていますので、ぜひ見ていただきたいと思います。

 なぜ、解体現場に事前調査が必要か。石綿は不燃性、強度、親和性に優れた性質を持ち、安価であるため戦後の建設ラッシュに合わせていろいろな建材が工業製品に使用されました。火災防止、産業の発展に寄与してきました。

 ただし、健康被害に、特に発がん物質として生じることがわかり、我が国では昭和50年から規制が始まり平成24年に石綿製品の製造が全面禁止になりました。石綿の輸入量約1,000万トン、石綿の含有建材の製造四千数百トンと言われております。今後20年~30年、これらの石綿含有建材を有する建物、これの解体、建て替えがピークを迎え、解体に際しての石綿粉じんによる健康被害が心配されております。

 石綿の事前調査ですが、第一段階として、事前調査は設計図書による図面を調査し、図面に記載されている建物別、あるいは部位別等、レベル1~3までの疑義建材、これを洗い出し、例えば、断面図、金ばかり等でどういうふうに施工されているか、こういうことも調べます。

 第二段階では、図面で洗い出した疑義建材、これを現場に行って確認する。特にレベル1・2の疑義建材については、石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアルに基づきサンプリング・分析を前提に行います。レベル3に対する疑義建材、これは種類が多いので分析するのも大変ですので、施主と打ち合わせしながら分析する数、こういうものを決めて、ほかは見なしで含有ありというふうに思います。大体80%以上が見なしで行っているのが実情です。

 これがどういうところにアスベスト建材が使われているか、国土交通省で出したものです。

 一般住宅にも使われております。

 これが石綿建材の大体量です。

 これが見落としの例です。仕上げ材、あるいは中のアルミとかそういうところで見えないようにして、それをはぐるとアスベスト建材が出てくるという例です。同じようなことがあります。

 これは含有のロックウールが石綿の上に非含有のロックウールを吹き付けた例です。

 改善の工夫ですが、石綿被害を防止するためには、アスベストのPR、それと強制力のある法制度の整備、これしか方法はないと思います。特に、石綿の事前調査についての問題として、現在、石綿の調査の表記、これが非常に紛らわしくて、解体工事前に事前調査するようにという項目になっております。

 そのため、一部地方自治体などでは、落札金額、落札前の、落札条件として、石綿含有があれば適正な処理をして、工期内に終わらせることというような入札条件をかけて入札工事を行っております。そうすると実際に落とした業者さんは、落とそうとすればアスベストの処理工事費、入れると落ちないわけですね。だから落とした業者さんはどうするかというと、落とした後、調査をする、アスベストがある、そうすると適切な処理ができない、適切な工期が守れない、適切な工事じゃなくていいかげんな工事でやっている、これが地方に行くと結構見られます。できればここにいらっしゃるメンバーの方、あるいは環境省の方、何らかの対策を早急にする必要があると思います。

 事前調査を行う者の知識として、建物の図面を見る能力、それから現場に行けば石綿含有建材が何ゆえ、どのような場所に何の目的で使用されたか、図面だけじゃなくて現場でそういうことがわかる、そういう知識が必要です。あと、石綿含有のサンプリング方法や分析に関する知識、調査、分析結果を整理し、含有建材の有無、リスト表をまとめる能力、客先との調整能力、こういうものが必要になってきます。

 これは協会でやっている研修制度です。後でお読みください。

 これは見落としの写真ですが、一番左側は、柱の解体をした後、柱のモルタル下に吹き付け石綿があった例です。同じようなことが、天井を解体しなければアスベストがあることがわかりません。

 それから、先ほどレベル3のボードの印字、これは解体しなければわかりません。

 それから、先ほどちょっと出てきたんですが、レベル3建材の話ですが、レベル3建材の含有、これは過去のデータはクリソタイル・アモサイト・クロシドライト、この3石綿の調査しかしていません。だから、トレモライトとかそういうものが入っているかどうか全くわかりません。それから、メーカーによっては閉鎖した会社もあり、その建材資料は残っていません。

 それから一番問題なのは、石綿含有建材、無石綿だよといって生産した天井岩綿吸音板、こういうものにもコンマ1%以上の石綿が含有している場合があります。これは無石綿と石綿含有建材をつくっていた時代、同じラインでつくっているわけですね。そうすると、今日は石綿含有建材をつくるんだと。そうすると機械の中に残渣として石綿が残るわけですね。それで次に無石綿をやると、無石綿の中にコンマ1%以上の石綿建材の製品が出てくる。これを無石綿としてメーカーは保証して、保証書を出してやっている。だから非常にメーカーさんの保証自体もちょっと心配、こういう現実もあります。

 これは石綿建材の私なりの分類の仕方です。

 それで、注文者が事前調査の依頼に関わる契機としてはやっぱり法律、こういうものがだんだん強くなった。それで調査をすることが多くなっております。

 これは事前調査に要するモデル的な見積もり。ただし、資料採集、これは現場によって違いますので、1建材当たりの費用だけ出しております。旅費、交通費は別途精算です。

 次に、アスベスト行政の問題点として提起させてもらいました。これは2005年、朝日新聞の記事からです。環境省が「アスベスト、5年で死者1.5万人超も 環境省が初試算」というような試算をしたことがあります。これは1995年の500人から、2004年には953人に倍増したが、60年代に石綿輸入量が増えたことから、今後死者はさらに増加、2006年以降は毎年1,000人以上、2010年以降は1,500人になり、5年間に6,000人が死亡するとしております。同省は、法規制や行政指導などの効果が出て11年以降は志望者が減少する傾向をたどるとしているが、効果がなければ、その後も死亡者が増え続ける可能性があるとしております。

 これは中皮腫の統計です。左側の表は、2004年953人、5年後1,156人、10年後1,376人、去年が1,555人、まさしくデータどおりですね。

 右のグラフは、青い線が日本のアスベストの輸入量、黒い方がイギリスの輸入量、そうするとタイムラグが、イギリスと日本では12年から15年のタイムラグがあります。輸入量に至っては、イギリスの倍の輸入量があります。それから棒グラフのほうですが、黄色がイギリスの中皮腫の死亡者数、黒が日本の死亡者数。2014年ではイギリスは2,500人の死亡者、日本では1,500人の死亡者。観光省の資産から10年が経過したが、中皮腫による死亡者数は増加傾向にあります。イギリスと日本の石綿使用量と死亡者数を比較すると、まだまだ増える可能性が十分にあります。

 これはイギリスの安全衛生庁のデータです。

 英国の安全衛生庁では、石綿の除去及び既存建物からの飛散防止処置が行われているので、新たな石綿障害の発生はなく、既存ばく露者の年齢とともに、新たな中皮腫患者の死亡数が減少するとされております。要するに、中皮腫の死亡者数のピークは一つの山で終わると言っております。

 一方、日本ではイギリスに比べて12年から15年のタイムラグがあります。そうすると、2028年から2030年がピークになりますが、中皮腫の死亡者数が5,000人超えということもあり得ると思います。使用量がイギリスの倍、それで処理技術、法整備は英国の10年前のレベル。除去作業員のばく露、作業所からの飛散、処理した場所からの再飛散、日本では石綿処理に伴う二次石綿災害の発生が懸念されます。中皮腫死亡者数のグラフで二つの山になった場合、現在の石綿行政、関係者の責任は厳しく批判されると思われます。

 これが日本とイギリスの石綿規制の比較です。日本の処理技術、法整備は、英国の10年前のレベルと言われております。

 次に、石綿調査の問題点。石綿調査には二つの調査があります。一つは建物調査、一つは改修・解体の事前調査。解体・改修工事の調査でも二つに大別できます。工事発注前の現状調査、これをやって初めて入札時の金額、工期、こういうものがわかります。それから、工事着手前の調査、これは施工調査です。

 現状では、事前調査1と事前調査2の仕分けが発注者側に理解されておりません。工事発注後の金額・工期が決まった時点で発注業者にアスベスト調査を行わせる条件を課して入札させる、このようなことがまかり通っております。こういう不適切な石綿処理の温床に、こういうことはなっております。本来、自治体工事は民間の範とするべき工事です。

 作業フローはこのグリーンのところを加える必要があると思われます。

 これは実際にあった発注者の例です。後はお読みください。

 それとあと、石綿含有調査者の新調査者と旧調査者の違いですが、石綿調査は、石綿調査の個人の力というのですか、能力、これが大きく影響します。わからない新調査者が、大型現場、あるいは特殊現場をすれば調査漏れ、こういうものが出て、工期の延長とか、コストの追加とか、そういうトラブルの原因になると思いますので、調査の範囲の仕分けが必要になると思います。

 これが一つの案です。求められる法規制として、1番から6番までは今まで皆さんたちが言っていたことで終わりにしますが、7番、石綿測定業者のライセンス制または登録制と罰則。要するに最初にすることとすれば、飛散事故の実態、飛散状態、含有建材の有無等、正確な情報がなければ現状の把握、対策もできません。ぜひ調査業者の規制、これは絶対必要だろうと思われます。

 すみません、時間を超過しまして。

【大塚委員長】 どうもありがとうございました。

 では、ご質問がございましたらお願いします。札を立てていただければと思います。

 谷口委員、お願いします。

【谷口臨時委員】 どうもありがとうございました。

 2点ほどお伺いしたいんですけれども、お名前ですね。石綿含有建材調査者協会ということなんですけれども、この調査者というのは、具体的にどういう人たちの集まりなのか。すなわち、こういう経験を持った人とか、こういう技術・能力を持った人とか、こういう資格を持った人とか、何かそういうことが何か決められているとかいうのであれば教えていただきたいのが一つです。

【一般社団法人建築物石綿含有建材調査者協会 姫野副理事】 この協会のスタートは、去年までというのですか、つい最近まで、国土交通省さんが石綿の調査を行う人を育てるというか、資格を与えるということで、国土交通省さんが決めたルールで。

 例えば、石綿の作業主任者を取って5年以上の経験があったり、それから、いろんなそういう規制の中で、そういう経験を持った方が座学、それから現場の実習、それから試験、こういうものを合格した中で、有志が集まった協会です。1,000人の合格者に対して、約250名近くが現在、石綿含有調査者協会に所属しております。

【谷口臨時委員】 ありがとうございます。

 もう一つお伺いしたいことがありまして、その250名の方々は事前調査を誰から受けているのか。それから、その調査の結果を誰に報告するという、どういうシステムなのかというのをお伺いしたいんです。

 といいますのは、あちこちに石綿がありますよというのは、ある意味、工事の発注者からすれば不都合なことだろうと思うんですけれども、それをやっぱりしっかり言っていかないといけないということで、立場上、なかなか難しいところがあるんではないかなと思うんですけれども、その辺の事情を教えていただければなということです。

【一般社団法人建築物石綿含有建材調査者協会 姫野副理事】 国土交通省の石綿含有調査者を育てる講習の中で、公正明大ということがまず第一にうたわれております。調査を依頼するところはシ種々あります。例えば、一般のビルオーナー、これは自分のところのビルにアスベストがあるかどうか、それから、どういうような管理をすればいいかという方から、実際に工事が始まるので見てくれ、それでどういうところにどういう建材がどういう状態であるか、これを調査してくれ、こういうような問い合わせもあります。基本的には大きくはこの二つですね。あといろんな形でありますし、それから、現在、地方自治体とかそういうところからも、そういう見方を教えてくれとか、そういう講習等もやっております。よろしいでしょうか。

【谷口臨時委員】 ありがとうございました。

 ということは、34ページのスライドでいうと、ここで言うと、入札前の石綿建材現状調査というところの業務が基本的に多いという理解でよろしいのでしょうか。

【一般社団法人建築物石綿含有建材調査者協会 姫野副理事】 残念ながら、その前の33ページを見ていただきたいんですが、これが事前調査の内容です。ちょっと読ませていただきます。「事前調査、建築物の書いた工事、改造、補修工事を行うときは、あらかじめ石綿含有吹付け材、石綿を含有する断熱材・保温材・耐火被覆材の使用状況を調査し、これらの材料が使用されている場合は飛散防止対策を行う必要がある。」要するにこれから言うと、この文面どおり行けば、工事をやる前に誰がしようがいいんです。その調査をしなさいとうたっているだけなんです。そうすると、先ほど言った、私がグリーンのところが必要ですよというのは、地方自治体の人たちが工事を発注するとき、工事前にすればいいんだから、入札した業者が調べればいいんだと、そういう設定で入札するわけですね。それで入札条件の中で全て工期、それから、工期は決められた中でやりなさい、工事費は落とした金額でやりなさい。あったらどうするのか。追加は一切払いませんよ、工期もちゃんと守ってくださいね。不平等なちょっと契約ですよね。これがまかり通っているというのが地方では現状です。

【谷口臨時委員】 すみません、何度も申し訳ないんですけども、今のお話であれば、事前調査を誰から受けるのかという点について言うと、元請の業者さんから受け取っていることじゃないかなと思うんですけれども。

【一般社団法人建築物石綿含有建材調査者協会 姫野副理事】 いえ、いいお客さんは事前に調査チェックしてくれというところはありますよ。設計事務所もありますし。

【谷口臨時委員】 どうもありがとうございました。

【大塚委員長】 ありがとうございます。

 では島委員、お願いします。

【島臨時委員】 今お話しいただいたことですけれども、一部の地方自治体で、落札金額内、一定の期間内で、調査も含めてやらなきゃいけないというお話がありましたけれども、実際にそういう条件での入札というのはどのぐらいの割合であるものなんでしょうか。

【一般社団法人建築物石綿含有建材調査者協会 姫野副理事】 僕らが今、教育のために地方を回っているんですね。そうすると、地方業者さんとお話しすると、そういうことを言い始めるのが何件かありますので、恐らく二、三割はあるんじゃないですか。特に地方に行くほどひどいです。

 というのが、発注者側が石綿調査を何のためにするか、これを理解していないわけですね。ただ、この今の大防法の文面から言うと、工事前に調査すればいいわけですよ。だからその辺をかみ砕いて、法律をちょっと書き加えるというのですか、そういうことが必要じゃないかなと思われます。

【島臨時委員】 一部の地方自治体でそういうことがあるというお話でしたけれども、民間ではそういう条件はあるんでしょうか。

【一般社団法人建築物石綿含有建材調査者協会 姫野副理事】 民間は、ちょっと書いていますけど、はっきり言えば、解体工事なんていうのはほおかぶりしてやっちゃえ、どうせ壊すんだから証拠はなくなく、それがまかり通っています。特に零細企業、それから小さな発注者というのですか。さすがに大手の不動産会社さんとかそういうところは、コンプライアンスの問題でひっかかりますので、そういうところはするんですが、やはり圧倒的に中小は多いですね。

【島臨時委員】 ありがとうございました。

【大塚委員長】 どうもありがとうございます。

 では笠井委員、お願いします。

【笠井専門委員】 笠井でございます。事前調査につきまして、少し補足いたしますと……。

【大塚委員長】 今立っている先生で終わりにします。

【笠井専門委員】 事前調査は、大防法では元請業者、あるいは自主施工者に実施の義務があり、ほとんどの場合、元請業者が行っているのが実態だと思います。従って、直接、発注者が調査者の方に事前調査を工事の発注前に独自に依頼しても、元請会社が工事を受注すれば、もちろん、このようなデータや分析結果を参考にはするものの、もう一度事前調査をやらないといけない法律になっています。このことが入札時には正確な除去費用を盛り込めない問題があるのではないかと思います。

 調査者につきましても、今の制度では講習を受け、テストに合格すれば調査者になれますが、別にこれは国家資格でも免許でもありません。

 そういう意味では、例えば一級建築士のような資格とは少し性格が違います。事前調査が大切だということを考えると、もう少し調査者の資格制度の在り方についても見直す必要があるのではないかと率直に思います。

【一般社団法人建築物石綿含有建材調査者協会 姫野副理事】 ありがとうございました。

【大塚委員長】 ご意見でした。

 本橋委員、お願いします。

【本橋専門委員】 姫野副理事の指摘したこれなんですが、地方の団体でこういう工事の発注をすることがあるというのは、かなりショックです。全く考えは同じですが、姫野さんは建設分野ですから細かいことをお聞きしたいと思います。

 例えば、地方の役所が発注するとしても、彼らはあらかじめ予定価格を積算しているわけですよね。一応、入札をするわけですから。予定価格を積算するときにアスベストのことを全く考えてないということでしょうか。

【一般社団法人建築物石綿含有建材調査者協会 姫野副理事】 あるかどうかも調査せんでどうやって積算できますか。

【本橋専門委員】 そうなんですよ。だから積算していないということになるのではと思うのですが。

【一般社団法人建築物石綿含有建材調査者協会 姫野副理事】 結果的にはそうですよね。

【本橋専門委員】 すごいこれはセンセーショナルな話と思います。そういうことですか。何も積算しないで、値段の一番安いところで決めていると理解していいのでしょうか。

【一般社団法人建築物石綿含有建材調査者協会 姫野副理事】 そのとおりです。

【大塚委員長】 重要な問題をご指摘いただいたと思います。

 では、姫野様、ありがとうございました。

 最後になりますけれども、一般社団法人日本建設業連合会の川口様からご説明をお願いいたします。

【一般社団法人日本建設業連合会 川口氏】 一般社団法人日本建設業連合会でございます。今日はこのような発表の場をいただきまして、ありがとうございます。では発表させていただきます。

 なお、昨日インターネットで公開されました資料ですが一部不備がございまして申し訳ございません。修正した資料をお手元にお配りしましたのでこちらをご覧ください。

 本日のスクリーンに映しますスライドはインターネット版を使用させていただきます。相違点は軽微なものでありますので、このまま進めさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

 まず、本題に入る前に、建設業の全体的なイメージをお持ちいただきたいと思いまして、スライドを1枚入れさせていただきました。

 建設業というのは、許可業者が全国で約47万社あります。建設業の就業者は約500万人という規模の産業であるとご理解いただきたい思います。本日発表させていただいている日本建設業連合会加盟会社というのは、その中の140社でして、全体の0.03%というところです。社員数1万人を超えるような会社から、家族経営の会社までということで、非常に裾野の広い業者で構成される業界ということと、地元に根づいている業態ということもあり、なかなか全体的な周知徹底というのが難しい業界であることをご理解いただきたいと思います。本日の資料は、この中の大手5社のヒアリングをもとにまとめております。そのような前提の元の資料ということを踏まえながらお聞きいただければと思います。

 パワーポイントの資料等の中身につきましては、環境省から事前にいただきましたご質問の内容に即しまして、発言をさせていただきたいと思います。では早速始めます。

 事前の調査・除去完了検査確認は誰が行っているかということですが、事前調査・除去完了確認とも、これは協力業者の協力のもと、現場管理部門が行っているというような状態です。こういった完了調査、検査というものに対して主体的に関与しようということで進めているようなところであります。

 2番目です。これらの調査の作業記録、事前調査の記録といったものはどこに保管しているか、何年ぐらい保管しているかというようなご質問です。

 事前調査・除去調査とも社内のサーバーとか電子データといったものがありますので、こういった形での保存、または文書として保管しているというような状況であります。保管方法も一元管理、または事業所単位というようなことであります。例えば事業所とは、支店であったり営業所であったり、拠点の工事事務所であったりというようなことになるかと思います。

 除去作業につきましては、これらに加えまして、もともとの事業主による保管といったこともありますので、工事専門業者に保管しているというようなこともあります。

 なお、保管期間に関しましては40年というような年限を定めているところもありましたが、これを定めずに永年、または廃棄期限を定めていないなどということです。いずれも、長期保管をしているというような状況であります。

 保管の範囲ですが、元請としてはレベル1、レベル2の調査の作業に限定して保管している場合もあります。保管管理方法などもさまざまですが、いずれもこういった記録がありますので、できるだけ保管していくように努力しているというような状況であります。

 3番目です。5ページになります。石綿除去における下請(協力業者)との協力関係ということでありますが、情報の伝達、これは元請が持っている情報に関しましては、一次下請への情報伝達を心がけているというような状況であります。やり方についてはいろいろと各社とも異なるところもあります。いずれにしましても、こういった建設業というものは、請負関係が複数にわたることや、また重層化しているという産業構造になっています。すべての作業員まで確実に情報が伝わっているかどうかということは、残念ながら確認できていないというような状況かと思います。

 また、地域ごとに協力業者があり、その数も多く、かつ均質的ではないといったようなこともあります。一方では大きな現場になりますと新規受け入れ時に教育をすることもあります。そういった作業所個別の使用状況を、そのときに説明するというようなことをしているような事例もあります。

 協力業者の教育ですが、対応はさまざまありますが、教育支援はしているというようなことであります。以下一例ですが、示させていただいています。例えば一次下請指定制度、指定した一次下請け業者を使いましょうというように限定しているなどの場合ですが、このような場合は連絡・意見交換会というようなものが容易に行えますのでこのようなことを実施しているとか、あとは支店・事業所・作業所主体で教育を実施するということであります。

 また、一次下請以下の教育は一次下請の責任で実施しているため、どのように実施しているかということの状況確認するようなことをしているということであります。

 協力業者に関する課題ですが、意識とかスキルとか法規制の理解度などに、やはり差があります。特に石綿を取り扱うことを専門としていないような業種は差が起きやすいことになると思います。すなわち、日常的にアスベストを取り扱う会社の人たち、またはそうでない人たちというような違いになります。例えば、新築工事の作業を主な業務としている業者ですと、これは当然改修・解体工事の作業については不慣れということになりますので、差が起こりうるということであります。

 4番目、6ページです。石綿除去における発注者との関係であります。

 図面の提供に関しましては、基本的には発注者との関係は良好な関係が築かれているというような状況であります。設計図書が残っている場合は提供いただけることが非常に多いというような状況ですが、残念ながら、こういった設計図書というのは新築時の情報となりますので、改修履歴による図面のアップデートがされているものが残っているか、残っていないかというような状況もあります。改修履歴の反映がされていない場合も多く、そういった図面での状況把握ということだけではとても無理ということです。実際、ヒアリングなども行いますが、それだけでは情報が不十分な場合がありますので、施工者としての責任として現地調査が必須であるというようなことであります。

 除去等へのコストの理解についてですが、これは先ほどのいろいろなご発言もございましたけれども、発注者による理解は差があるかなというように思っています。やはり価格は安いほうがよいということがありますので、そのような判断がされることもあるということです。

 例えば、中には不十分な調査によって見積もりを出すという業者がいます。一方、十分な調査をして見積もりを出すという業者もいます。不十分な調査の場合は、その分、対策工事量が少なくなりますからコストは安くなります。例えば石綿除去工事一式というような項目で数字が入っていれば低い金額で示される、小さい数字で示されるということになります。そうしますと、発注者側として安いほうがよいという判断であれば、この判断基準で業者の選択をされるというようなこともあろうかと思います。

 続いて、7ページ目です。、調査結果・作業完了結果の報告であります。これについては、調査結果・作業結果といったものは書類として発注者側に報告するということが一般的であります。またそういった場合の説明の記録・保存、内容承認の記録といったものはどうかということでありますが、記録は一般的には実施しています。例えば打ち合わせ記録であったり、議事録という形だったり、さまざまですけれども、何らかの形で残っていることが一般的と思います。一方、この保存の要否、工事終了後も残しておくか、廃棄するかというような判断、または保存期間について5年、40年、いつまでも保管しておこうというような廃棄時期を無規定としているなど、さまざまであるという状況であります。また、発注者による報告実施の議事録やメモなどへの内容確認サイン、押印といったものは、一般的にはされていないというような状況であります。

 引き続いて、5番目です。8ページですが、レベル3建材が大防法規制の対象となった場合の課題ということであります。これはまだ大防法ではレベル3建材は規制の対象になっておりませんので、仮定した場合のことでございます。

 届け出の範囲・対象などについてですが、先ほど来のお話の中にもありましたように、建材の種類は非常に多岐にわたっています。またいろいろな部位も非常に広く使われていますので、これがどのように使われているかというようなことも含めて合理的な判断基準、届け出の必要な建物はどのようなものなのか、改修・解体工事等の規模、その他要件はどのようなものなのか、建材種類はどのようなものが届け出を必要とするのかなどの明確なルールが必要かと思います。レベル3建材として全部まとめてしまうと、今の区分ではその他の建材とされておりますので、非常に幅広い建材が入ってくると思います。

 ここに記載させていただいた合理的判断基準、工事等の要件等については、下に書いてありますが、例えば、合理的判断基準であれば、著しい大気汚染が合理的な試験施工などの実験結果等に裏付けられたデータに基づいて懸念される建材及び施工方法を限定するような判断となるような基準、この建材は、このような施工方法だとこのように飛散するリスクがあるからこのように届出が必要なものであるというようなことがお示しいただけるとありがたいと思います。

 届け出をする者でありますが、これは現在の規定と合わせますと発注者による届け出というのが一般的で合理的かと思います。

 続いて、9ページです。レベル3建材の除去方法、いわゆる工法のことですが、解体工事だけではなく、改修工事にも対応できるような工法が必要になります。解体工事というと重機等の使用も可能ですが、改修工事では手持ちの工具、小さい工具類などしか持ち込めないという状況になろうかと思います。こういった工具類による作業性のよい施工方法というのはどういうものなのかというのをお示しいただきたいというところであります。

 また、改修工事になりますと、アスベスト除去の専門業者というよりも内装業者などが内装工事と一緒にこのアスベストを含む建材をさわる作業となるかと思います。こういったことを想定しても施工できる工法というものが必要かと思います。

 また、手ばらしの定義というものがありますが、これは非常に曖昧・不明瞭というようなことであります。先ほどもご説明がありましたビスでとめてある建材の上に捨て張り工法で岩綿吸音板が張ってあるというような事例などでは、当然ビスは見えません。ビスで止めてある下地の上に含有する建材が張ってあるという状況ですから、手で外すというようなことができません。ボードの継ぎ目の上にまたがって建材を張っていくというような重ね張りをしますので、そういったところからきれいに外すということは難しい作業になるというようなことであります。このような施工法により取り付けられた建材を外すという場合は、どうしてもある程度の破断というような作業が発生するというのは必要不可欠となります。このように建材の施行方法一つ一つの手順と工法に合わせたやり方が必要であるというようなことであります。

 建材に使われている石綿の種類によっては、飛散の度合いも違うといったことがわかっているようです。こういったことも考慮した工法の選択が必要ではと思われます。例えば、建材にはクリソタイルとアモサイト、クロシドライトが主に使われてきました。特にレベル3の建材ですと、クリソタイルとアモサイトが使われたものが多いかと思いますが、このような建材の含有量、また使っている石綿の種類などにより同じ工法で解体等を実施しても出てくる粉じんの量などが同じかどうか、このような検証も必要なのではないかと思います。

 このように、飛散の度合いに応じた解体・改修工事のルール化というものが必要になります。

 工法手順において湿潤化という言葉で示される作業がありいます。湿潤化の方法については、その効果の検証というものが必要ではないかと思います。例えばレベル3の建材というのは、屋外に使ったり、水が入っては困るといったようなところに使っている耐久性のある建材がございます。またはその上に塗装仕上げされている建材もあります。もともとは水が浸み込み易い建材であっても浸み込みにくい状態で使用されているというものもあります。このような建材に上から水で湿潤化しようとしても中に浸み込むというようなことは容易に考えにくいということがご理解いただけるかと思います。また、電気が来ているようなところの改修工事では、作業における水を嫌います。漏電・感電による事故のほうが非常に危険ということもありますので、そのような作業においては石綿の粉じんを吸い取るHEPAつきの掃除機などを用いる乾式の集じんもあるのではということであります。また、屋根や床面を湿潤化すると転倒の原因となるようなこともあり、画一的な湿潤化は難しい作業となります。

 その他制度化に向けて必要なものということはこちらに書いてありますが、レベルの違いがあります。こういったことによる差異をなくすような施策、制度設計といったようなもの、住宅業界・リフォーム業界の実情を考えたものが必要だということでございます。

 引き続き、その他の意見・要望です。

 一つ目は、行政の皆様方へのお願いということですが、改修工事というのは夜間・休日で行われることが多くあります。場合によっては、公共交通施設のように、わずかな夜中の数時間のみが作業できる時間ということもあり、こういった施工場所では除去から復旧までを非常に短い時間で完了させる必要があります。様々な要因で工程が遅延するとこのような作業がなかなかうまく進まないというようなことが起きます。

 また、調査するものの要件・人員の増強でございますが、現状、国土交通省の告示で進めました調査者育成では約1,000人規模でございまして、今のこの人数ではとても全国の調査作業に対応する人数を満たすことは無理だということであります。全国の工事を満遍なく対応するということであれば、それ相応の調査をする技術者の養成・育成といったものが非常に重要であるということであります。

 次に調査者や調査結果の責任範囲の限定でございます。調査漏れや誤調査の責任を調査者に負わせることは負担が大きいということであります。具体的に申し上げると、調査の漏れ、工期の遅れ、手戻り工事などが発生したという場合、工事は遅延します。あわせて工事費も増えるかと思います。こういったリスクがあります。

 そのほか、国や自治体における課題としては、自治体ごとにかなりルールが違うところがありますので、このあたりを対応していただければというところであります。

 最後、大気汚染濃度の測定ですが、測定頻度等が定められておりませんので、非常に混乱しています。現場が混乱することを打開するようなことをお示しいただければと思います。

 以上でございます。時間超過しまして失礼しました。

【大塚委員長】 ありがとうございました。

 では、ただいまのご説明につきましてご質問等がございましたらお願いいたします。札を立ててください。

 では外山委員、お願いします。

【外山専門委員】 ありがとうございました。

 2点ほどお聞きしたいんですが、3ページ目、完了検査には主体的に関与しようと努力しているということで書かれていて、これはまず、完了検査のスキームというか方法みたいなものが連合会の中で統一したものがあるのかどうかということと、この委員会では完了検査を法的な義務にすべきかどうかということを検討しているので、完了検査の法的な義務が必要なのかということと、あとそれに似た質問として、一番最後のスライドで大気濃度測定がありまして、現場で混乱していると、いろんなことが定められていないという趣旨だと思いますが、これについても、こういったルールを定める、方法を定めると同時に、法的な、統一的な義務化というのは必要だとお考えなのかどうかという、以上3点くらいになるんですが、いかがでしょうか。

【一般社団法人日本建設業連合会 川口氏】 まず完了検査の方法が標準化されているかということですが、これは、完了検査のやり方というものがはっきりと示されているという状況ではありませんので、それぞれの対応している会社ごと、または現場ごと、それぞれによっていろいろと考え方も違うことがあるかと思います。

 それから、大気の測定方法で現場が混乱をしているという状況のことについてですが、これは、今の現状では、大気中のアスベスト濃度を測ることを、どういうタイミングで実施するかということがやはり明確に示されていないと思います。施工期間中のどのタイミングで、どの場所で測定するのかといったことも、いろいろな考え方があるかと思います。これも施工業者としての考え、または自治体協議などの中で、このようにしてくださいというご指導をいただくこともありますが、それぞれに応じて対応するということで、かなり方法に開きがあるというところであります。何らかの定められた方法で、このタイミングで実施するということをお示しいただければ、画一化した測定ルールとなるのではないかと思います。

【外山専門委員】 そう示すということ以上に法的に、例えば、大気汚染防止法の中で完了検査なり気中の濃度測定の義務化をすべきかどうかという辺りのご意見はいかがでしょうか。

【一般社団法人日本建設業連合会 川口氏】 そういったルールが出されることについてそれが法として示されるのか、例えばガイドラインとかそういったものを含め、何らかの形でスタンダードの測定方法に関するある程度の方法が示され、それを実際の工事の中でできるということになれば、先ほど申し上げたような、業者間による測定のタイミングの違いであるとかの考え方の違いによる積算の違いへの影響が出にくくなると思われますので、標準化としてはあったほうがいいのではないかと個人的には考えております。

【大塚委員長】 ありがとうございました。

 では谷口委員。

【谷口臨時委員】 スライドの6ページですけれども、一番最後に、届け出のところで、発注者にかわり、ほぼ施工会社側で実施と、こうなっていますよね。

 ここの意味合いなんですけれども、発注者は届け出をしなければならないことは知っているけれども、中身、記載が非常に複雑とか、あるいは専門的だということで、施工会社側にかわりに書いてくださいねということなのか、それとも、届け出しないといけないことすら知らないで、でも手続は必要だからやむを得ず施工会社がやっているということなのか、どっちなんでしょうか。

【一般社団法人日本建設業連合会 川口氏】 発注者側の会社のいろいろな考え方や、アスベストに関する知識を持っていらっしゃるか、ないかといったようなことの違いということもあろうかと思います。基本的には、工事をどのように進めるかという計画を考えるのは施工会社側が担当します。その施工計画等は施工者側が作成し、その内容に沿って届出書類を作成します。届出書類の提出は発注者側でありますので、発注者は表紙に押印する作業があり、その段階で計画書の中身についてご説明し内容をご確認頂きます。このプロセスを省略しては押印はいただけないということになりますので、内容について確認されたうえで届出書を提出されているのではと思います。個別の事案については私も把握していないので、お答えはできません。

【大塚委員長】 私の不手際で申し訳ありませんが、時間が多少過ぎてしまって申し訳ないです。小坂委員。これで終わりにさせていただきたいと思います。

【小坂専門委員】 すみません、5枚目のスライドで、合理的判断基準による届け出の必要な建物・改修/解体工事等の要件等、建材種の明確なルールを希望と赤字で書かれている……。

【一般社団法人日本建設業連合会 川口氏】 5ページ目ですか。

【小坂専門委員】 5ページ目じゃないですか。

【一般社団法人日本建設業連合会 川口氏】5ポチ。

【小坂専門委員】 5ポチ、そうですね。ありますけれども、私、これだけ読んで、例えばPタイルが含まれているカリフォルニアのコアリンガ地方で採取される短繊維クリソタイルがあるんですが、それは何か影響があるとかないとかいう議論もあった、論文があったような気がするんですけど、そういうことを想定されておられるんですか。

【一般社団法人日本建設業連合会 川口氏】 私の個人的な考えで返答申し上げることになりますが、例えば、今お話がありましたビニル床タイルですが、こういったものの除去、実際にはいろいろな工法で行われているかと思います。例えば、機械でこのように作業したらこのようになります、ケレンによる作業ではこのようになりますなど、それぞれのやり方によってどのようなものがどのようになるかということを意識していると思います。すなわち、工法と作業している材料の違いなど、いろいろなことが複雑に絡み合います。やはりいろいろな現場の実績調査により得られたデータを踏まえて考えていくということの積み上げが非常に大事ではないかと感じております。

【大塚委員長】 ありがとうございました。

 ではこれで本日のヒアリングは終了させていただきたいと思います。5団体の皆様におかれましては、ご多忙の中お越しいただきまして、大変有益なお話をいただきましてありがとうございました。

 私どもはこれを参考にして、今後も審議を続けていきたいと思います。私自身は、特に解体の前にリスクアセスメントをするということとか、入札の際にアスベストを含有しているかどうかということがわかる状況にする必要があるとかという辺りが特に重要なご指摘だと思って伺いました。

 最後に議題の2、その他につきまして、事務局から何かございますでしょうか。

(なし)

【大塚委員長】 それでは、本日の予定された議題はこれで終了いたしましたので、進行を事務局にお返しします。連絡事項等あればお願いいたします。

【高澤大気環境課長】 本日は5団体の皆様におかれましては、丁寧なご説明をいただきましてありがとうございました。改めてお礼を申し上げます。また、委員の皆様におかれましても活発なご議論をいただきましてありがとうございました。

 本日の議事録につきましては、各団体の発表者の方及び各委員にご確認いただいた上で、環境省のホームページにて公開することとさせていただきます。

 次回の小委員会の開催日時についてですが、12月13日の木曜日、13時半からということで、本日と同じ場所になりますが、環境省第一会議室で開催する予定です。次回もヒアリングということで、予定といたしましては、公益社団法人全国解体工事業団体連合会、一般社団法人日本繊維状物質研究協会、山形県、熊本市のほうからお話をいただく予定としております。

 それでは本日の小委員会はこれで終了いたします。本日は誠にありがとうございました。