有害大気汚染物質健康リスク評価等専門委員会(第4回)議事録

1.日時

平成30年5月24日(木)10:00~12:00

2.場所

環境省第1会議室

3.出席者

(委員長)  新田 裕史

(委 員)  青木 康展    上田 佳代    内山 巌雄    大久保 規子

       片谷 教孝    上島 通浩    川本 俊弘    武林  亨

       田邊  潔    長谷川 就一   山崎  新

4.委員以外の出席者

(事務局)  早水環境省水・大気環境局長

       杉井環境省水・大気環境局総務課 課長補佐

       萩原環境省水・大気環境局総務課 課長補佐

       前田環境省水・大気環境局総務課 課長補佐

       嶋田環境省水・大気環境局総務課 主査

5.議題

(1)第3回専門委員会における指摘事項とその対応について

(2)トリクロロエチレンの大気環境基準の再評価について

(3)その他

6.配布資料

資料1    中央環境審議会大気・騒音振動部会有害大気汚染物質健康リスク評価等専門委員会委員名簿

資料2    第3回専門委員会における指摘事項及び対応

資料3    トリクロロエチレンの健康リスク評価について(案)

参考資料1  中央環境審議会関係法令等

参考資料2  今後の有害大気汚染物質対策のあり方について(諮問)

参考資料3  トリクロロエチレンに係る環境基準専門委員会報告(「今後の有害大気汚染物質対策のあり方について(第三次答申)」抜粋)

参考資料4  「今後の有害大気汚染物質の健康リスク評価のあり方について」の改定について(「今後の有害大気汚染物質対策のあり方について(第十次答申)」抜粋)

参考資料5  トリクロロエチレン健康リスク評価作業部会等の検討経過

参考資料6  IARC Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans,Vol.106(トリクロロエチレン部分抜粋)

参考資料7  IARC Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans,Vol.106の概要(原文)

参考資料8  トリクロロエチレンの有害性に関する文献の概要【修正版】

参考資料9  トリクロロエチレンの大気環境基準の検討経緯について(第1回専門委員会資料3-1)

参考資料10 トリクロロエチレンの大気環境基準の再評価の進め方について(案)(第1回専門委員会資料3-2)

参考資料11 発がん性以外の健康影響に係る実験動物の知見の追加的な文献レビューの手順について(第3回専門委員会資料4-1修正)

参考資料12 中央環境審議会大気・騒音振動部会有害大気汚染物質健康リスク評価等専門委員会(第3回)議事録

7.議事

【萩原課長補佐】 それでは、ただいまから、中央環境審議会大気・騒音振動部会(第4回)有害大気汚染物質健康リスク評価等専門委員会を開催いたします。

 委員の皆様方におかれましては、ご多忙中にもかかわらず、ご出席いただきまして大変ありがとうございます。

 本日の司会を務めます、環境省水・大気環境局総務課長補佐の萩原でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず初めに、本日の会は、中央環境審議会の運営方針に基づきまして公開とさせていただいております。

 次に、お手元の配付資料の確認をさせていただきます。議事次第の裏面に配付資料一覧を記載しておりますので、ご覧いただければと思います。まず資料1、これは本委員会の名簿です。資料2、第3回専門委員会における指摘事項及び対応です。資料3は、トリクロロエチレンの健康リスク評価について(案)というものです。参考資料につきましては、1から7、9から10は、前回の専門委員会と同じ資料をつけております。こちらのほうは、説明を割愛させていただきます。そして、参考資料8は、これはタイトルは同じですが、内容を前回から修正しております。また、参考資料11、これは、同じく第3回専門委員会の資料4-1の修正したものです。参考資料12は、第3回の議事録となっています。

 以上、確認をお願いいたします。

 また、環境省では、環境負荷削減の観点から、審議会等の資料のペーパーレス化に取り組んでおります。傍聴の皆様には、前日までに環境省ホームページに掲載いたしました資料について、お持ちのパソコンやタブレット等の端末に保存の上、当日、ご持参いただくなど、ペーパーレス化へのご協力をお願いしているところです。そのため、既に公開済みの資料である資料1から3、並びに参考資料の1から6、及び8から10については、傍聴の皆様には紙での配付はしておりません。ご了解ください。環境省ホームページ上でご確認をいただくようにお願いをいたします。

 また、委員の皆様の参考資料につきましては、お手元の青いファイルの中にとじております。必要に応じてご参照いただきたいと考えておりますが、今後も継続して使用する予定にしておりますので、会議の終了時には、机の上に残してご退出いただきますようお願いいたします。

 資料の不足等がございましたら、事務局にお申しつけください。

 続きまして、本日の委員会の出席状況ですが、島正之委員、鈴木規之委員におかれましては、ご欠席です。したがいまして、本日は委員14名のうち12名のご出席となっておりますことをご報告いたします。

 続きまして、報道機関の方におかれましては、恐縮ですが、カメラ撮りは会議の冒頭のみとさせていただいておりますので、これ以降のカメラ撮りはご遠慮いただきたいと思います。どうぞ、ご協力をお願いいたします。

 それでは、これ以降の進行につきましては、新田委員長にお願いいたします。

 どうぞよろしくお願いします。

【新田委員長】 おはようございます。新田でございます。

 皆様、ご多忙のところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。前回に引き続きまして、トリクロロエチレンの大気環境基準の再評価について、議事を進めてまいります。

 それでは、まず初めに、議事の1でございます。前回、第3回専門委員会における指摘事項とその対応についてでございます。

 事務局より説明をお願いいたします。

【嶋田主査】 それでは、資料2、それから、一部資料3を用いまして、前回の専門委員会におけるご指摘いただいた事項と、そちらへの対応についてご説明いたします。

 資料2に沿いまして、順にご説明いたします。

 まず、資料2の委員指摘事項の欄、第3回専門委員会資料3に関する内容でございます。

 まず、図2のトリクロロエチレンのGST経路による代謝のスキームの中で、代謝物の構造式が誤っていると川本委員からご指摘をいただきまして、今回の4ページの図2を正しい図に差し替えております。

 続きまして、発がん性及び遺伝子障害性に関してですけれども、腎臓がんに係る疫学知見の曝露評価のうち、Zhaoら(2005)の曝露評価の記載の箇所に、相対リスクとの関連性の記載があるため、適切な内容にすべきというふうにご意見をいただいてございまして、今回の資料3の9ページでございますけれども、最終的には、この研究の中で、曝露-反応関係をどのように考えるかということを述べたものでございまして、それが伝わるように、今回、文章を修正しております。9ページの赤い文字になっているところでございます。

 続いて、③番ですけれども、Hansenら(2013)のプール解析について、SIRでは、肝臓がんではリスク増加が見られる一方、腎臓がんについて有意なリスク増加が見られないと読めるが、それを踏まえた委員会としての評価がそれと矛盾しているように読めるので、意味が通るように修正すべきというふうに島委員からご意見をいただいてございます。こちらにつきまして、前回、新田委員長に整理いただきましたのは、肝臓がん、それから腎臓がんの評価書案の結論部分は、Hansenらの知見も含む全ての知見を踏まえた上での結論でありまして、この評価自体には問題がないと考えているということですが、一方で、そのHansenらの知見に関する記載というのは、肝臓がん、腎臓がんのパートで書き方を整理して誤解がないように修正をしたいと整理いただきまして、今回の資料で、資料3で修正をしております。右側ですけれども、Hansenら(2013)の腎臓がん、肝臓がん、それから非ホジキンリンパ腫のプール解析結果及び著者らの考察等を再確認しまして、各腫瘍の相対リスクを記載するとともに、解析上の問題点等を追記してございます。

 具体的には、今回の資料3の11ページ以降になりますけれども、赤字で書いたところになります。11ページが腎臓がん、11ページから12ページの頭のところにかけてが腎臓がんの記載です。また、非ホジキンリンパ腫については13ページの赤字のところ、それから、肝臓がんについては14ページの赤字のところに修正をした箇所がございます。

 また、参考資料8ということで、こちらは毎回、この評価書案に登場する主な文献について、論文の内容をもう少し詳細に書いてある資料ですけれども、そちらも今回、同様に修正をしております。

 続いて、④番ですけれども、非ホジキンリンパ腫、肝臓がんについても、正の相関があるとIARCの評価書には書いてありますけれども、それに対して、資料3の書きぶりはかなり後退していると。非ホジキンリンパ腫、肝臓がんについても、正確に評価をする必要があるとご指摘を島委員からいただいてございまして、事務局としましては、IARC記載の参考にしつつ、12ページから14ページにかけてですけれども、表現ぶりを修正してございます。

 こちらの記載、本日、島委員ご欠席でございますけれども、事前にこちらの記載については内容を見ていただきまして、概ねご了解をいただいてございます。

 続いて、資料2の2ページに行きまして、⑤番でございますが、「(4)まとめ」のうち、21ページの11行目からの「発がんリスクの増加に濃度依存性が明確には観察されなかったこと、遺伝子障害性において発がん性の閾値の有無が判断できなかったことを考え合わせると、少し省略しますが、発がん性に係る量-反応関係の推定は困難と考えられた。」という論理構成は、一見すると全く違う要素を考え合わせて量-反応関係の考察をしているように読めるため疑問があると鈴木委員からご指摘をいただきまして、こちらに関しまして、専門委員会として、これらの要素を考え合わせて、量-反応関係の推定は困難という結論を出したと理解していると青木委員からご意見をいただいたところでございまして、この一連のそのご議論を踏まえまして、次の議題で主にご説明しますが、5章の量-反応関係の評価のところにおいて整理をしてございます。

 端的に申し上げますと、腎臓がんの発がんリスクの増加に濃度依存性が見られないことから、このデータを使用して量-反応関係を推定することは適切ではないと。あわせて考慮すべき情報として遺伝子障害性、変異原性の情報を示して、肝臓がんのデータを用いた発がんリスクの評価は行わない旨というのを50ページ以降に記載をしてございます。次の議題で、詳細につきましてはご説明いたします。

 前回の資料の28ページ以降、免疫系への影響ということで⑥番でございますが、30ページの15行目、「量的な変化」という記載について、免疫グロブリンなどの数値の変化を指しているのか、別のことを指しているのか判然としないと武林委員からご意見をいただいております。そちらを受けまして、今回の資料の30~31ページにかけて赤字になっておりますが、この量的な変化というのは、免疫グロブリン等の免疫パラメータの濃度を指しているということでございますので、それがわかるように修正をしてございます。

 ⑦番、36ページ、4行目以降の患者の曝露濃度(トリクロロエチレンの気中濃度)の推定が可能であり、健康影響の定量的な検討が可能と考えたという記載について、それ以外の部分と矛盾があるのを適切に修正するべきと武林委員からご意見をいただいております。こちらにつきましては、免疫系への影響のまとめの部分を修正する一環で、一旦その該当の部分というのは削除しまして、全体的に修正を試みてございます。31ページ~32ページにかけて、赤字にはなってございませんが、基本的には、27行目以降のパラグラフにそういったことを整理してございます。

 ⑧番ですけれども、第2回専門委員会でご紹介しました過敏症症候群についての上島先生の論文ですけれども、2月に受理をされていると、量-反応関係に基づく健康影響の定量評価は困難というふうに前回の委員会の資料でもなっておりますが、過去の文献の範囲では、その記載は正しいものの、新しい知見も踏まえて検討することが重要と上島委員からご意見をいただいてございまして、こちらにつきまして、今回の資料3で言うと、29ページ以降の赤字の部分でございます。Nakajimaら(2018)がこの該当の論文でございますけれども、こちらにつきましても、委員長にレビューをしていただきながら、今回、評価書案に溶け込ませている状態でございます。この後の議題で、併せてご説明申し上げまして、ご審議いただけると幸いでございます。

 続いて、資料2の3ページに参りますが、第3回専門委員会資料の4-1、これは追加文献レビューの手順について書いたものですけれども、動物実験の知見の中で、腹腔内投与の実験について、どのように扱うかということにつきまして、上田委員、それから鈴木委員、さらには青木委員から、ご意見、コメントをいただいたところでございますが、基本線としましては、吸入曝露を基本的には優先するものの、なかなか、吸入曝露実験に関しては制約もあるということでございますので、腹腔内投与であっても、検討に資するものがあれば採用するべきというふうに青木委員からご意見がございましたので、それが後から読んでわかるように、今回、その参考資料11に挟ませていただいておりますが、追加文献レビューの手順の資料に追記をしてございます。

 それから、第3回専門委員会資料6、論点整理(案)ということでお示ししたものでございますけれども、こちらに関しまして、①番、腎臓がんについて、資料3では「リスクが増加する」としているが、資料6では「腎臓がんが発生しうる」という強い書き方になっていると、全体としての書き方に整合が取れていないので、よく注意するようにと武林委員からコメントをいただいております。

 また、「腎臓への影響」について、定性評価が腎機能の影響の指標として用いることは困難としているにもかかわらず、定量評価の可否を検討しているが、定性評価が難しいものは定量評価もしないということではないかというご指摘をいただいております。

 また、神経系をエンドポイントとすることにつきまして賛同するが、他の影響と比較した上での最終的な位置づけを考えてほしいというふうに鈴木委員からもコメントをいただいてございます。

 これらのご意見を踏まえまして、今回、その評価書案に、とりわけ5章以降、量-反応関係の評価以降を新たに書き起こしてございまして、そちらについては、また次の議題でご議論いただければと思いますが、3章、健康影響評価の記載と5章以降の記載を整合させるように、事務局でできる限り努力しまして、今回、資料を作成した次第でございます。

 ざっとご説明申し上げました。以上でございます。

【新田委員長】 ただいまの前回の専門委員会において、委員の皆様からご指摘、ご質問内容と、それに対する事務局での対応案について説明いただきました。

 ただいまの説明に関しまして、ご意見、ご質問がある方は名札を立てていただければと思います。いかがでしょうか。委員の先生方。

 ここで、特にご質問、ご意見がなければ、重要な点は資料3の修正として、まとめの部分を含めて反映されておりますので、次の議題の中で、ご意見、ご質問いただければと思います。

 では、この対応案の説明については特にございませんでしょうか。

 それでは、次の議題に進ませていただきます。

 続きまして、議題2、今日の一番重要な議題になりますけれども、トリクロロエチレンの大気環境基準の再評価についてでございます。先ほど、事務局のほうから説明ありましたように、前回の専門委員会において、私から提案させていただきましたように、上島委員が関わっていらっしゃる免疫系の影響についての論文、具体的には、先ほどの資料、説明の中にありました免疫影響に関するところのNakajimaら(2018)という論文でございます。これにつきましても、私のほうでレビューいたしまして、資料3に追記してございます。

 それから、今回の資料は、最終的な評価書案のたたき台ということで、有害性の評価と曝露評価について統合するとともに、幾つかこれまで論点、ペーパー的なものを別の資料としておりましたけれども、一つの資料として統合して、今回の資料3では、5章の量-反応関係の評価以降につきまして、これまで3回の専門委員会の審議経過を踏まえて作成したものでございます。

 それでは、事務局から説明をお願いいたします。

【前田課長補佐】 それでは、資料3について説明を行います。

 まず、本資料の構成でございます。目次をご覧いただきたいと思います。委員長からも説明がありましたとおり、これまでご議論いただきましたトリクロロエチレンの有害性について、ここでいえば1章から3章の3-2まで、曝露評価、4章になりますけれども、一つの資料にまとめております。それに加えまして、3-3に諸外国での定性・定量評価の事例。これにつきましては、第1回の専門委員会でご紹介したものを追記をしておるというところでございます。さらに、5章に量-反応関係の評価、6章にリスク評価値の算出、7章につきましては、6章までの評価のまとめを書いたものになっております。今後は、これをたたき台としまして、評価書案としてつくり上げていくということになります。

 なお、前回までお示しした資料の中で、発がん性及び発がん性以外の健康影響につきましては、それごとに量-反応関係に係る評価というのも記載をしておったところではございますが、この量-反応関係に係る評価については、第5章にまとめて記載をしております。

 では、資料3の本文でございますけれども、まず、1章、2章につきましては、これまでの説明から大きく変わったところはございませんので、割愛させていただきたいと思います。

 第3章の健康影響評価についてでございます。

 先ほどの委員意見への対応でも説明がありましたとおり、まず、Hansenの論文については、書きぶりが少し変わっております。全体の評価としましては、12ページ目でございます。32行目ですね、これらの知見を総合的に考えということで、腎臓がんのリスクについては増加するということを判断したところでございます。また、非ホジキンリンパ腫、肝臓がんにつきましては、関連性を示す幾つかの報告があるものの、一貫したものではないというふうな判断をしております。

 続いて、16ページからの遺伝子障害性に係る部分ですけれども、遺伝子障害性の有無、発がん性の閾値の有無については、これまでと評価内容は変わっておりませんので、説明のほうは割愛をさせていただきます。

 20ページ以降が、発がん性以外の健康影響ということで、まず急性影響、急性毒性についてと神経系への影響、さらに、腎臓への影響につきましては、評価内容については前回から変わっておりませんので、割愛をさせていただきたいと思います。

 それから、28ページからでございますが、免疫系への影響でございますが、先ほども説明がありましたけれども、上島委員が関わっていらっしゃいますNakajimaら(2018)について追記をしております。29ページからになりますけれども、これについて説明をさせていただきます。

 29ページ、32行目からでございます。この研究ですけれども、中国の工場で同じようにトリクロロエチレンに曝露した方のことなんですけれども、曝露して、過敏症症候群を発症した患者と発症しなかった健康な労働者を対象とした研究となります。

 35行目ですけれども、そのうち、過敏症症候群が発症された患者の中で、曝露の終了日(勤務終了日)から2週間以内に尿を採取した78人について、勤務終了時の尿中TCA濃度というのを推定されております。で、発症者のTCA濃度につきまして、平均が83mg/L、95%予測区間が9.6-720mg/Lでございました。

 次のページに参ります。一方、トリクロロエチレンに曝露したんですけれども、発症しなかった健康な労働者38人の尿中TCA濃度を測定いたしまして、幾何平均で127mg/L、最小値が9.9mg/L、最大値が1,617mg/Lということでございました。両者の尿中TCA濃度に基づきますと、発症した患者の曝露レベルは、発症しなかった健康な労働者の曝露レベルと重なるものということでございました。著者らは、尿中TCA濃度10mg/Lに対応する曝露環境においても、過敏症症候群が発症するということが示唆されるというふうにしております。

 31ページに参ります。今回、追記した知見もあわせて、免疫系への影響についてまとめておりますけれども、まず、免疫グロブリン、サイトカイン及び末梢血リンパ球サブセット等への影響については、明確でないということを判断をさせていただいております。

 過敏症症候群につきましては、12行目からの記載でございます。新たに追加した知見を含めまして、17行目ですけれども、過敏症症候群はトリクロロエチレンの曝露によって引き起こされたものというふうに判断をいたします。

 さらに、27行目からですけれども、得られた知見、疫学知見で4編について、患者の症状や曝露状況を調査することを目的としたものでございますので、曝露していない対照群は設定していないということで、相対リスクとの関係、有病率については報告はされていないというものでございます。

 さらに、33行目ですけれども、発症とその曝露レベルとの関係を見ますと、先ほども説明しましたが、発症した患者と発症しなかった健康な労働者と、曝露レベルが重なっているということ、そのほかの知見も合わせまして、32ページの5行目からですけれども、現在の一連の知見からは過敏症症候群の発生に濃度依存性があるとは判断できないということでございます。

 続きまして、生殖器系への影響、さらに、最後の発生影響については、どちらの疫学知見においても関連性は明らかでないというふうに判断をいたしております。これは、評価は変わっておりません。

 続きまして、36ページからでございますけれども、先ほど説明しましたように、諸外国での定性・定量評価の事例について記載をしております。これについては説明は割愛させていただきます。

 で、40ページから曝露評価について記載をしております。曝露評価につきましても、内容はほぼ変わっておりません。

 で、1点だけご確認いただきたいところがありまして、46ページでございます。46ページ、24行目からですけれども、群小発生源調査、燕市と三条市等で行った調査について評価を記載しているところでございます。ちょっと読み上げますけれども、トリクロロエチレンを扱う事業所周辺において、より詳細な実態把握を行うため、PRTRによる排出量の届出情報を参考にして、複数の地域で調査を行った。その結果が資料1ということで、資料1というのが、一番最後の81ページから83ページにつけているものです。これにつきましても、前回からの資料とは変わってはおりません。もうその資料1のとおりで、一部の地域では有害大気汚染物質モニタリング、常時監視の固定発生源周辺のモニタリング地点の濃度と比べて、高濃度となる地点が確認されているということです。

 47ページに参りますけれども、本調査は環境基準の達成評価に必要とされる頻度で測定はしておらず、季節変動や社会経済活動による変動が平準化されていないということで、この測定結果は環境基準とは単純に比較評価できるものではないと。しかしながら、このような地域では、トリクロロエチレンを多量に取り扱う事業所周辺における住民への曝露に留意する必要があるというふうに記載をしております。

 最後の角つきの括弧でございますけれども、前回、鈴木委員のほうからご意見がありまして、最終的なハザード評価が終わってから文言を決定すればいいのではないかということで、現在、確定ではなく、仮の表現というふうにしております。

 それでは、50ページをご覧ください。第5章の量-反応関係の評価でございます。

 まず、発がん性に関する量-反応関係の評価でございます。発がん性につきましては、腎臓がんのリスクの増加があるというふうに判断をしておるところでございます。発がん性の定量評価に関して、WHO欧州地域事務局及びUS.EPAのほうが発がん性に閾値がないということでユニットリスクを算出し、それぞれガイドライン値及び参照値ということで設定しております。本委員会では、両機関の評価も含めまして、腎臓がんのリスク増加に関して、曝露レベルや影響に見られた気中濃度等の情報が得られた疫学知見4編、さらに、遺伝子障害性及び変異原性に関する知見とともに、量-反応関係では推定が可能かどうかというのを検討を行いました。なお、非ホジキンリンパ腫、肝臓がんについては関連性が一貫したものではないということで検討は行わないということとしました。

 まず、Mooreら(2010)、Zhaoら(2005)の2編についてですけれども、これにつきましては、群分けされたカテゴリカルデータを用いてリスク評価が行われていること、さらに、16行目ですけれども、Zhaoら(2005)では交絡因子に関して調整がなされていないということから、これら2編については、量-反応関係を検討するには不十分な知見というふうに考えました。

 19行目でございます。Charbotelら(2006,2009)の2編の論文につきまして、個人の累積曝露量については推定をされておりますけれども、腎臓がんのリスクの増加が高曝露群に限られておるということで、累積曝露量に依存した発がんリスクの増加はなかったということでございます。したがって、そのようなデータを用いて量-反応関係を推定することは適切ではないというふうに考えました。現時点では、これ以上の知見はないということで、複数知見による比較検討はできないと、これ以上の考察はできないということでございます。さらに、遺伝子障害性の検討において、発がん性の閾値の有無については、本委員会では判断できないとしたことも考え合わせますと、Charbotelら(2006,2009)のデータを用いた量-反応関係の推定自体を行わないこととしたところでございます。

 また、WHO、US.EPAの評価についてですけれども、51ページになりますけれども、3行目からですが、閾値なしの発がん性としてユニットリスクを推計、これ、動物実験を用いた疫学知見によるデータを低濃度域に直線外挿しているような推計なんですけれども、本委員会では、閾値の有無が判断できないとしたことと、Charbotelらの知見を用いて推定をするということは適切ではないというふうに考えたことから、このユニットリスクの推計については採用できないというふうに判断をいたしました。

 続きまして、発がん性以外の健康影響に関する量-反応関係の評価でございます。まず、神経系の影響について、15行目でございます。自覚的神経症状に関する疫学研究で、症状の報告に一貫性があること、曝露状況についても比較的広範囲にわたるデータがある、また、濃度依存性も確認されているということで、有病の症状とあわせて量-反応関係の推定は可能であるというふうに判断をいたしました。

 なお、三叉神経の末梢神経系と神経行動機能への影響につきましては、関連性は明らかでないという判断をしましたので、検討は行わないこととしました。

 続いて、25行目から免疫系への影響でございます。過敏症症候群に関する疫学研究で、労働者を対象とした過敏症発症者の曝露濃度や尿中TCA濃度に関する報告はございます。ただ、相対リスクが不明であるということと、トリクロロエチレン曝露の相対リスクとの関係が不明であるということと、濃度依存性があるとは判断できないということ、さらに、発症者の曝露濃度の下限値を、影響が見られると考えられる最小濃度かどうか、それがそうでないかということにつきましては、今まで、これまでに行ってきました評価値算出の考え方とは異なるということで、まだ、十分な検討が必要であるというふうには考えており、現時点では、量-反応関係の評価において考慮することは適切ではないというふうに考えました。

 そのほか、腎臓への影響、生殖器系への影響、発生影響については、影響を示す証拠が不十分、もしくは曝露データ、量-反応関係を示すデータが不十分ということで、今回は量-反応関係の検討を行わないということにいたしました。

 52ページですけれども、以上のことから、当委員会的は、エンドポイントとして神経系への影響である自覚的神経症状を用いて量-反応関係の推定を行うと、その上でトリクロロエチレンのリスク評価値を算出するということが適当というふうに考えました。

 続きまして、6章のリスク評価値の算出でございます。

 まず、定性的に見られる健康影響の考慮についてということで、今回、再評価を行う過程で得られた疫学知見で、現行基準において根拠とした知見以外に、その量-反応関係の推定が可能な知見が得られなかったということで、改めてリスク評価値を算出するということはできませんでした。一方で、定性的に影響が見られる知見が幾つか得られているということで、これらの知見がリスク評価値を算出する際の総合的な係数の設定においてどのように考慮されるかによって、環境基準の値が変わる可能性があるというふうに考えられたところです。

 今回、定性的に影響が見られると判断できるとものとして、腎臓がんのリスクの増加と過敏症症候群の知見が得られたということで、リスク評価値を求める際には、これらの影響について考慮が必要であるというふうに考えました。

 なお、発生影響につきましては、飲水投与による動物実験で心臓奇形の発生による健康影響が観察されているところで、食品安全委員会(2010)では、これを発がん性以外の有害性評価の中で重要な知見とはしておるところです。しかしながら、当委員会では、疫学知見でトリクロロエチレンと発生影響の関係が明らかでない、また、吸入曝露による動物実験では胎児への影響が観察されたものがないということで、発生影響に関しましては、今回のリスク評価値の算出の際には考慮に含めないということとしました。ただし、今後も留意が必要な影響であると考えております。

 (2)番のリスク評価値の算出でございます。まず、評価値の算出においては、出発点を検討するということで、28行目ですけれども、自覚的神経症状において広範囲の研究がなされておりますので、それらを参考に評価値算出の出発点(POD)となる影響が見られると考えられる最小濃度レベルというのを検討いたしました。で、現行基準についての自覚的神経症状に関する研究結果から、濃度レベルを検討しているということで、環境基準専門委員会、健康基準を設定したときの環境基準専門委員会においては次のように述べられております。内容については、ちょっと割愛させていただきますけれども、結果としましては、53ページの7行目になりますが、LOAELに相当する気中濃度は200mg/m3前後に濃度域が存在すると考えることが妥当であるというふうにしております。

 この専門委員会報告以降、曝露濃度の情報が報告されている自覚的神経症状に関する知見というのが得られなかったということもありまして、専門委員会報告で根拠とした同じ知見をもとにPODを検討するということにしました。具体的には、そこに記載しております幾つかの知見を参考にはしますけれども、専門委員会報告にある考え方を否定するという理由もありませんので、同じ考え方によりまして、PODとなる影響が見られると考えられる最小濃度については、200mg/m3前後の濃度域に存在するというふうに考えます。

 なお、疫学知見から得られた濃度データに関する不確実性について触れておりますけれども、ヒトへの曝露濃度と気中濃度との関係、尿中代謝物濃度と、それから推定される気中濃度との関係については、当然ですけれども、不確実性を有することが前提ということでございます。

 次に、不確実係数等の設定でございます。環境基準専門委員会報告では次のように述べております。これも結果ですけれども、35行目ですが、総合的な係数として1,000を用いるということが適当というふうにしております。

 なお、この1,000の内訳なんですけれども、専門委員会報告において、はっきりと数字が出ているわけではありませんので、恐らくこうだろうということで、中央環境審議会でつくりました有害大気汚染物質健康リスク評価のあり方についてと、通称ガイドラインと呼ばれているもので、参考資料4につけておりますけれども、そのガイドラインに準じて、内訳を考えますと、最初のポツの高感受性者の存在も考慮した係数ということであれば10という係数が当てはまります。二つ目のポツ、労働環境での断続曝露と一般環境での連続曝露の状況の違いということで5。三つ目のポツですけれども、NOAELではなくLOAELを用いるということで、これに関して係数は10。閾値のある発がん性としての考慮ということで、これについて2ということで、全てを掛け合わせて1,000というふうに考えられるということでございます。

 37行目です。今回も不確実係数等については、不確実係数を含む総合的な係数として設定をしたいというふうに考えております。その際、下記の点を考慮するということで、次のページに参ります。

 四つ挙げておりますけれども、まず、1番目が労働環境における断続曝露から一般環境の連続曝露への換算の話。次に、高感受性者の存在のこと。三つ目が、より、その不確実性の話なんですけれども、疫学研究で得られるデータですので、その曝露濃度を制御して行う動物実験で得られるようなNOAELとかLOAELというのは、まず困難であるということを含めて、不確実性があるということに対する考慮が要るということと、最後、腎臓がんのリスクの増加と過敏症症候群との関連性があるというふうに考えられるということを考慮しまして、総合的な係数としては1,000を用いるということが適当と考えております。これを適用しますと、リスク評価値については0.2mg/m3というふうになります。

 なお、このリスク評価値につきましては、現行基準と同じ値ということで、IARC(2014)における評価も含めまして、新たに得られた知見を加えた上でも、同じ値としたことについて考察をしております。

 17行目からですけれども、発がん性に関しましては、現行基準設定当時、疫学的証拠は必ずしも十分とは言えないというふうに考えられておりました。証拠は疑わしいものの、発がん性については除外できず、閾値はあると考えられ、それが考慮されて、当事の総合的な係数には既に含まれていたというものでございます。今回、当委員会では、新たに腎臓がんのリスクの増加を認めるというふうに判断しましたけれども、得られた知見によれば、リスクの増加は高曝露群においてのみというふうに限られている。他方、IARC(2014)では、腎臓を標的とするGST経路による代謝物の有害性の評価において、その代謝物の量的な違いを根拠として判断することには注意が必要としているところですけれども、疫学知見において曝露濃度等との関係から判断いたしますと、このリスク評価値であれば、高曝露群において観察された発がん性に係る過剰リスクについては抑えることが可能というふうに考えております。

 免疫系への影響(過敏症症候群)に関しましては、知見が4編ありますけれども、そこに記載されている曝露濃度や尿中TCA濃度等から、過敏症症候群が発症する下限値というふうに推定されておりますけれども、それを気中濃度に換算した値が26mg/m3程度ということでございました。

 32行目ですけれども、過敏症症候群については、現時点で、その相対リスクとの関係が不明ということ、また、濃度依存性の判断ができないということと、種々の濃度推定に関しては限界があるということを前提とした上での考察になりますけれども、本リスク評価値であれば、その下限値として推定された26mg/m3程度で見られる発症については抑えることが可能というふうに考えました。

 55ページでございます。1行目からでございます。現時点で得られた知見をもとに総合的に判断し、以上のように考察をしましたけれども、腎臓がん、免疫系への影響(過敏症症候群)については、今後も留意すべき影響であるということ、新たな知見が加われば、再度、評価・点検を行うべきである。また、発生影響、生殖器系への影響につきましても、現時点では明確ではないというふうに考えておりますが、次世代への影響の観点から、今後も留意すべき影響であるというふうに考えております。

 最後、7章でございますが、これにつきましては、6章までのまとめを書いておりますので、説明は割愛をさせていただきます。

 最後、62ページでございます。(6)のところでございます。指針としての環境濃度の提案ということで、トリクロロエチレンの長期曝露に係る指針としては、年平均値0.2mg/m3以下の環境濃度というのを提案してございます。

 説明は以上でございます。

【新田委員長】 ありがとうございました。

 ただいまの説明につきましては、特に5章、6章、これまでの審議内容も踏まえて、事務局が作成した案でございます。ここで、特に本専門委員会に与えられた課題でありますトリクロロエチレンの環境基準再評価というところの最終結論に関わる部分でございますので、時間をかけて議論をしたいというふうに考えております。最後に、説明がありましたリスク評価値について、事務局案で、数字も案としてたたき台を示されておりますけれども、これでよいか、変えるべきかというようなことも含めて、ご意見を伺えればというふうに思います。

 それでは、委員の皆様からご意見、ご質問いただければと思います。名札を立てていただければと思いますが、いかがでしょうか。

 どうぞ、内山委員。

【内山委員】 今日出てきた資料を拝見させていただいて、今までと違うなと思うところは、もう既に数字が入っているということです。あくまでも、この専門委員会で今までやってきた議論を踏まえて、最終的にどう考えるかと出すのは、この専門委員会のミッションの一つだと思っています。事務局が出してきたものを妥当かどうかというのとは、今まではそういうやり方はやってこなかったと私は思っています。

 それから、委員長は、この数字を変えるかどうかということを含めると言われましたけれども、これにとらわれることなく、まず議論していただいて、これが、その結果、それに落ちつくのであれば、それはそれで構わないと思うんですけれども、先入観を持ってやることはないと思います。私としては、今までの専門委員会としては、そういうことはやってこなかったと思います。最終的にはここが空欄になっていて、委員会でこの数字を入れるというふうに、事務局が準備していただくのはわかるんですけれども、これはあくまでも委員会の一つのミッションで、十分議論していただいて、この数字を入れるというのが今までですし、これからもそうしていただきたいというふうに思います。

【新田委員長】 内山委員からのご意見、私も、今回の資料については事前に目を通した上で、これで委員長として了承したところでございます。これまでのこういう専門委員会での議論の仕方は、内山委員ご指摘のとおりだと思います。ただ、今回はトリクロロエチレンの環境基準の再評価ということで、既に環境基準が設定されているものの評価ということでありますので、これまでは具体的な数字は議論した上で埋めていたということですが、環境基準は現に存在するということで、そこを議論のスタートという意味で、ここに、今日はお示ししたものをたたき台としたということでご理解いただければと思います。

 いかがでしょうか。

【内山委員】 はい、いいです。以前の数値はこうだったと書いてあるんだったら、別に問題ないですけれども、これを委員会の結論として書かれると、ちょっとこれは違うんじゃないかなという感じがします。

【新田委員長】 そこの趣旨は、結論というよりはリスク評価値の算出で、point of departureという、ちょっとこれまであまり使ってこなかった表現がありますけれども、そこのところと同じような趣旨で、議論の出発点ということで、数字をお示しさせていただいておりますので、それを前提に、最後はちょっと、これでよいかどうかというところは少し、委員長として、表現、行き過ぎたところがありますので、そこはちょっと訂正させていただいて、ここを議論の出発点ということでご理解いただいて、議論を進めていただければというふうに思います。

 それでは、そういう前提でということで、ご意見、ご質問いただければと思いますが。

 大久保委員、どうぞ。

【大久保委員】 すみません、今、内山委員からご指摘がありましたので、ちょっと言おうと思っていたことの先に、この全体の構成なんですけれども、これは「はじめに」とか「おわりに」とかいうのがつかないんですね。何で、この評価をやっているのかとか、現行基準はどうなっていてとか、そういう話がちょっと、そもそもなくて、現行基準と変わらないことになるがみたいな話が最近出てくるので、これはあったほうがいいのかなと。

【前田課長補佐】 すみません、おっしゃるとおり、最後、専門委員会報告として完成させるところでは、「はじめに」と「おわりに」というのを書かせていただこうというふうには考えております。

【大久保委員】 それでは、引き続きまして、ちょっとお伺いしたいのは、53ページ、54ページのところで、結局、結論に関わってくるのは不確実係数といいますか、総合的な係数をどうとるかという話というふうに理解をしたんですけれども、それで、これ、前の報告書にも関わることなんですけれども、すごいベーシックな質問で恐縮なんですけれども、不確実係数等というのと総合的な係数というのが出てきて、それから、不確実係数というのが出てくるんですけれども、この使い分けなんですけれども、どの部分が不確実係数、このヒトの労働環境を一般環境に変える部分だけが不確実ではなくて、その他の係数で、残りが不確実係数という理解なんでしょうかというのを、まず、すみません、最初に教えていただければと思います。

【新田委員長】 ちょっと私のほうから、今日、参考資料がついております、いわゆるガイドラインですが、参考資料4でございます。それの26ページに、発がん性以外の有害性及び閾値のある発がん性に係る評価値の動物実験の知見に基づく算出ということがございます。その中に評価値の算出、それから、不確実係数等の設定という、そこは「等」が入ってございます。その後に、(a)から(f)までが不確実性係数に関わるもので、その27ページの、その(f)の後に書いている部分で、重大性の評価というところをあわせたものが不確実係数等になっていると、その(a)から(f)までが不確実性係数のそれぞれの要素で、その項目外にある重大性の評価、今回の資料でいきますと発がん性、免疫影響が当たるかと思いますけれども、そこは不確実係数そのものではなくて、その「等」で重大性に関する係数というような、そういう整理かと思います。で、それを「等」というところも含めて総合的係数と今回は書き換えているというか、言い換えているというふうにご理解いただけると思いますが、事務局、その私の解釈でよろしいですか。

【内山委員】 つけ加えさせていただいていいですか。以前は、労働環境から一般環境へも不確実係数の中に入るというような考えで最初は始まっていたんですが、それは、最近はもう、これは換算係数という、不確実係数には入れないということもありますので、この労働環境から一般環境へも不確実係数の中には、その中には入れないほうがいいのではというふうに、私、実は考えています。それでよろしいですね。

【青木委員】 はい。

【内山委員】 それで、今回の、今、委員長から説明あったのは、動物実験のガイドラインなんですが、ヒトでも、大体このような不確実係数が考えられるということで、数値としてある程度決められるのが(a)から(f)で、その下のまた書きで書いてあるのが重大な影響とかですね、それ以外の係数ということで、アメリカ等ではmodifying factorと言って、修飾係数とかいろいろ訳されて、不確実係数とはちょっと別な名前で呼ばれているものなんですけれども、その、あまりいい訳がないものですから、また以下で、それを書いていると。

【新田委員長】 青木委員、どうぞ。

【青木委員】 今の内山委員のご説明のとおりで、全くそのとおりなんです。

 一つ、若干の補足をさせていただきますと、今のガイドラインの23ページのところですね。そこに曝露時間補正というのを行うということで、ある程度具体的なやり方は書いてありますが、これはあくまでも動物実験からの外挿のときに採用しているものでございますので、そこはもうちょっと柔軟な議論をしていただけるようなものではないかというふうに考えております。

 以上でございます。

【新田委員長】 ありがとうございます。その曝露のところも、今回のその資料3の評価書の案でも、今回のそのpoint of departureのところのエンドポイントは労働者のデータ、疫学データということで、やはり曝露濃度については、動物実験のように完全に濃度をコントロールされた実験とは違う誤差もあるということで、その辺りは、このガイドラインには明確に不確実係数とかって書き込まれておりませんが、そこも含めて、総合的にというふうなことでお考えいただければというふうに思います。

 いかがでしょうか。どうぞ、内山委員。

【内山委員】 別の質問で。

【新田委員長】 はい。

【内山委員】 今、議論になっているのは、結局、その不確実係数等を従前と変えるかどうかということが一つの議論になっていると思うんですが、その一つとして、上島先生がちょうどいらっしゃるのでお聞きしたいんですが、一つは、この調査の対象者は入院している方という解釈でよろしいんですか、この過敏症で、入院中のとここに書いてあるんですけれど、入院しているほど重症になっている方というふうに考えてよろしいんですか。あるいは、過敏症というのは、入院しない程度の皮膚炎等を起こしている方は、もっとその裾野にいると考えてよろしいんでしょうか。

【新田委員長】 上島委員、いかがでしょうか。

【上島委員】 ありがとうございます。

 この調査の、そのそもそものところは、このトリクロロエチレン職場で働いている人が、非常に重篤な皮膚障害、肝障害を伴う皮膚障害を発症して、致命率、亡くなる方も非常に多いというところからスタートした研究なんです。我々が、その調査をやっていた中国の病院は、職業病防治院という、日本で言うと労災病院に当たる医療機関です。そこに来る患者さんというのは、工場から直接、患者さんが搬送されてくることもありますが、地域のクリニックや、一般の医療機関で手に負えなくなった人がかかってくるような病院なんですね。ですから、そこの我々が見ていたのは、そういう意味では、非常に入院が必要な方の割合が極めて高かったということは言えると思うのです。

 では、今の内山先生のご質問の、もっとその軽い人が職場でいたのかどうかと、これはすごく大事な点ですけれども、そこについては、そういう調査は我々としてはまだやってないというかできないので、そこは厳密に言うとはわかりません、ただし、これは、この病気が非常に重篤だというのは、現地では非常によく認識されていまして、それで、日本で言うと労働基準監督署ですとか保健所に当たる機関が、非常によく工場に対して指導をしております。そして、実際にこの職場について、トリクロロエチレンを使う工場に就職をして、大体その1カ月前後で皮膚障害が出たり、あるいは、感冒様の風邪症状、熱が出たり喉が痛かったりということが初発症状のこともあるので、そういう場合はすぐに、その地域の監督署、保健所に連絡をして、また、医療機関にかかるように言われていますので、そういう意味では、調査としては見ているところは限られているんですけれども、現地では、かなりよく拾い上げているのではないかというのは言えるかなと思います。

【新田委員長】 今のお答えで、内山委員よろしいでしょうか。

【内山委員】 結構、日本で、それほど入院するような方が実際にいらっしゃるのか、武林先生等、労働現場をよくご存じの先生に逆に伺いたいんですが、逆に言うと、日本でも神経系の異常を示す方にはいらっしゃるんですけれども、日本の工場で入院するほどの過敏症患者というのは、あまり文献的にも見たことがなかったので、もっと、その下の段階で日本は抑えているのかというと、それがわからなかったものですから、お伺いをしたい。

【新田委員長】 今の最後の点につきましては、今回の資料の3の28ページに、日本では、事務局のほうで文献レビューした限りでは、Watanabeら(2010)というので1名の過敏症症候群発症者のケース、レポートが出されております。

【内山委員】 労災病院を調べたら、こんなに患者が来ているとは、ちょっと考えにくいです。

【新田委員長】 少なくとも、この一例は報告がございます。

【上島委員】 すみません、よろしいでしょうか。

【新田委員長】 はい。

【上島委員】 今、日本で出ている患者さんは、私、2007年にその文献レビューをしていますが、1960年代から症例報告は散発的にありまして、ですから、今まで十数例の症例が報告をされています。

 それで、この日本と中国のやっぱり一番の違いは、その曝露している人の数が違うというふうに思っています。日本の場合は、いわゆるどぶ漬け洗浄しているようなところでも人数は限られていますけれども、中国では、一工場に三桁ぐらいの人がいて、この曝露している人口が数万人、7万人とか10万人とかというふうに言われていますので、そこが、やっぱり母数が違うのかもしれません。

【新田委員長】 いずれにしても、この非常に症状が重篤だということを事務局、私も認識した上で、最後の不確実係数等のところで重大な影響に発がん性とともに免疫影響を含めた案を、今日お示ししておりますが、症状が重篤だというところが、ご質問が出たように、ちょっと評価書の中で明確でなかった部分もありますので、そこは追記をしておきたいと思います。

 武林委員、どうぞ。

【武林委員】 今の免疫系のところでもう少し教えていただきたいんですが、今、54ページのところの27行目からの議論かと思いますが、ここで、今回の記述では、発症する下限値として推定した気中濃度というのが、この尿中の9.6という数字からから26というふうに推定されているというふうに思いますが、これは、もとの論文のレビューを見ると、29ページから30ページのところに、今年になって報告をされたものに、これに基づいているということだと思いますが、ごくごく一般的に考えると、曝露群での最小値が9.6で、非発症群の最小値が9.9で、ほとんど同じところの範囲にあるときに、常識的には、トリクロロエチレンによってこれが起こったということは、普通は言いにくいので、症例が重なっているから起こっていることはわかると思うんですが、ここの、この定量的な情報としてここに挙げる意味がどれぐらい確からしいと考えていいのかというのが、ぱっとこの論文を拝見――で、最後のところに、その一つの可能性として、恐らくHLA型によって違いということを推定しているんだと思うんですが、ここには患者群しか割合が書いていないので、例えば、この患者、非患者群の割合が載っていて、大きく違っていれば、もしかしたらそこが重なると発症するのかなということがわかると思いますが、ここにある情報だけでは、濃度が全くオーバーラップしているので、この最後のリスク評価のところに、この数字の推定値を載せる意味がどれぐらいあるのかというのが、いま一つピンと来なかった。その辺はどういうふうに考えたらいいんでしょうか。

【新田委員長】 後ほど、上島委員のご意見も補足していただければと思いますけれども、

評価としては、ですから、今回、免疫影響においては、過敏症症候群を発症した方の濃度の下限が、この環境基準の議論の最終的なところのpoint of departureというように参照できるものではないという判断をした上で、この、先ほど議論がありましたように過敏症症候群が非常に重篤であるということから、ある程度、その発症している方の濃度を参考にしながら、最終判断をすることが適切だろうということで、最後のところに引用したということでございます。そこの点についても少し、今、数字を載せている趣旨は、今申し上げたところのとおりなんですけれども、そういう考え方についても、他の委員の先生にもご意見いただければと思いますが。

 上島先生、何か補足がございましたら。

【上島委員】 今の武林委員のご指摘は非常にリーズナブルな、ごもっともなご質問かと私は理解します。疫学的には、やっぱりそういう質問が出てくるのは当然でして、交通事故を起こした人たちの中で眼鏡の着用者を調べたら、そうしたら8割の人が眼鏡をかけていました。眼鏡をかけているのが交通事故の原因だというディスカッションができるかというのが今のご質問ですよね。それで、当然それは、我々は眼鏡が交通事故の原因にはならないというのはわかるのですが、これがトリクロロエチレンとこの過敏症症候群になったときにはどうなんだという話だと思うのです。

 これは一つの、やっぱりこの今回、ここに記述をされている個別の、一つ一つの論文で言うと今の武林委員のご指摘のとおりですけれども、じゃあHLAの論文については、ここにも出てくると思うのですが、2007年の中国のLiら(2007)の論文で、これは曝露している非発症者との比較においてオッズ比を求めて、そういう形で、そのHLA-Bのこの遺伝子多型と発症との関連が明確であると示されています。

 それから、じゃあ、トリクロロエチレンと、この発症との関連がどうかというところは、これの理解としては、一つの個別の疫学論文としてはないのですけれども、動物実験での感作の実験、それから、患者さんが発生している職場、していない職場全てにおいて、トリクロロエチレンを成分分析をしたのが2008年の研究であること、それからパッチテストでは、コントロールを置いたパッチテストがありますから、そういうことからいうと、その患者さんでのパッチテストをやっていますので、そういう点では、トリクロロエチレンが感作の原因になって発症すると、これは私は議論はないのではないかなと思います。

【武林委員】 この症候があるということ自身が比較的新しい話だと思うんですが、そこは全く異議がないと思いますが、それは総合的に判断をすれば、中国だけではなくて、いろんなところで起こっていますので、それに対しては全く。で、それを重大性の中に考慮するというのも全く反対していません。

 ただ、本来であればHLA-B型で層化をされて、あるタイプの人たちの患者群と非患者群の濃度の違いとか、それから、HLA-Bのある群の同じということが出てこないと、ちょっと濃度の議論は非常に雑になるので、たとえそうであっても、これを使うんであれば、そのことをもう少し書き込んでいただいて、最もその敏感でという群を想定できるならば、その濃度であることを書かないと、非常にこの流れでぱっと見ますと、いかにもこの濃度で起こるかのように見えるということが、まだ未確定なのではないかなと、まだそれほど、大分先生方が苦労されて集められたデータで、ここまでは見えてきましたけど、まだちょっと、ここの濃度と発症の関係づけにするにはかなと思ったので、非常に、最後のまとめの大事な点なので、もう少し記載を工夫していただきたいというのが、これに関する意見です。

【新田委員長】 ありがとうございます。その過敏症症候群がトリクロロエチレンの曝露によって引き起こされたものかという、そもそものところについても考察した上で、評価書では31ページのところの17行目、18行目辺りに、最終的に今、上島委員からのご説明があったような動物実験の結果、それから、その個別のパッチテスト等の結果も踏まえて、最終的にこの委員会では判断するという、こういう案を示させていただいた上で、その曝露濃度のことを記載しております。

 それから、武林委員のご指摘は最後の部分に、54ページのその最後のところに、リスク評価値を出した後のなお書きのところに数字が出てくるということが適切かどうかというご指摘かと思います。ただいまのご指摘も踏まえて、この推定された数字が単なる、ここの今の記載ですと発症した患者の曝露下限値という、ちょっとまとめですので要約した書き方になっておりますが、ここに少し、実際の状況のわかる文言を追加した形で、誤解のないように追記をさせていただければと思いますが、そんなことでよろしいでしょうか。

【武林委員】 はい、全く異存はありません。

 それからもう一つ質問をさせていただいてよろしいですか。

【新田委員長】 はい。

【武林委員】 今度、発がん性に関わる部分なんですが、50ページです。50ページの5行目以降のところに、WHOの欧州地域事務局とUS.EPAのことが書いてあると思いますが、今、確認をしたんですが、WHO欧州事務局の2010年のを読みますと、“While no guideline value was provided,the unit risk estimate might need”というふうに書いてあって、これはあくまでもユニットリスクであって、guideline valueと扱ってないと、もとに書いてありますので、もう少しこの記載は正確に、ここは単にユニットリスクを設定しているというふうに書かれたほうがいいと思いますし、それは、もっとたどっていくと37ページのところに、表に整理をされているところだと思いますが、ここも同じで、guideline valueというふうに書いてあります。これ、確かに2000年のほうを読むとわかりづらい、guidelinesというところに書いてあるので、あれなんですが、これは、あくまでもやっぱりユニットリスクとして扱っていて、WHOが言っているガイドラインとユニットリスクは大分違うと思いますので、そこの扱いをもう一度、ちょっと原典は当たっていただいて、確認をいただきたいと思います。

 全く同じ理由で、EPAについてなんですが、EPAもIRISのホームページをチェックすると、ここの参照値ということが、多分、reference concentrationだと思うんですが、これ、同じ、今度は38ページの一番上にあると思いますが、これは確かにreference concentrationとIRISに載っているんですが、これは非発がんの話のreference concentrationであって、この同じIRISのホームページ上で見ると、cancer assessmentについては、あくまでもユニットリスクと書いてありますので、いずれにしても、ここに記載するのは大事だと思いますが、両方とも単なるユニットリスクというふうに扱われていて、guideline valueではないと思いますので、もう一度精査していただいて、確認をしたほうがいいのではないかと思います。

【新田委員長】 ありがとうございます。ユニットリスクを算出し、それぞれガイドライン値を参照して設定しているというところの、ちょっと原点に戻って確認した上で、ユニットリスクを算出しというところまでは間違いないと思いますが、場合によっては、そこまでで止めて、正確に記載をしたいというふうに思います。ありがとうございます。

 山崎委員、どうぞ。

【山崎委員】 先ほど武林先生からのご意見があったところですが、上島先生の2018年の中国の論文のところ、29ページですけれども、この記載に係る改定方針は委員長がお示しされたとおりでいいんですけれども、1点上島先生にお伺いしたいのは、これはケースコントロール研究ではないのですか。

【上島委員】 違います。

【山崎委員】 この記載内容を読む限りにおいては、健常者の集団についても曝露情報を取っているので、トリクロロエチレン過敏症症候群の重篤な患者の方を症例として、健常な方をコントロールとしたケースコントロール研究を行ったというふうにも、ちょっと読めたんですが。

【上島委員】 ありがとうございます。本当は、そういう形にしようということも最初は検討したのですけれども、その曝露評価のやり方が違っているんですね。患者さんの場合は、作業終了時の採尿ができてないので、そういう意味では、非発症の作業の方は曝露終了時の採尿ができているというところ、そこが違うものですから、そういう症例対照研究にならないんです。

 ただ、この発症している職場では、じゃあ、どのぐらいの気中濃度かということ、それから、発症しない方がどのぐらいの尿中濃度の現場かというのは、現在のその労働環境やさまざまな基準値との比較の上では大切な情報ですので、この非発症の方の情報も併記をしているというのが、この論文です。

【山崎委員】 ということは、厳密にはトリクロロエチレン過敏症候群の患者集団の曝露状況と健常者集団の曝露状況を比較してはいけないというふうに考えていいんでしょうか。

【上島委員】 はい、曝露のその、この患者さんのその作業終了時の尿中濃度は、population pharmacokineticsの考え方に基づいて推定をしていますから、そういう意味では、その実際に作業終了時の採尿をしたという、ほか、さまざまな労働環境の基準値とは比較ができないのです。

【新田委員長】 山崎委員、よろしいですか。

【山崎委員】 はい。

【新田委員長】 まず、今の武林委員からのご指摘、上島委員のご説明を、その状況を理解した上で、本日の資料3の量-反応関係の評価のところ、例えば51ページ、似たような表現が免疫影響のまとめのところにも出てまいりますが、51ページの27行目辺りですけれども、過敏症発症に関するトリクロロエチレン曝露の相対リスクの関係は不明であるという書き方で、ちょっと、今の点のご議論をまとめているということでご理解いただければと思います。

 そのほか、大久保委員、どうぞ。

【大久保委員】 すみません、今のことと関係はするんですけれども、ここの54ページのなお書きの部分なんですけれども、なお書きより前に、総合的な係数としては1,000を用いることが適当と考えるという文言が出てまいりますが、その上のところを見ると、以前の報告書と比較して違うところは、NOAEL、LOAEL、両方とも相当に不確実性があるというふうになったところと、それから、がんのリスク、腎臓がんについては増加するというのと、それから免疫との関連性があるという部分で、ここを見ると、普通は、要素としては、何ですか、その係数が上がると見るべき要素なんだと思うんですが、それで、これが仮に、それで今回は、質問は二つあって、一つは、閾値が存在するかどうかが判定できないということでユニットリスクは算定しないということなんですけれども、これが、例えば、閾値が存在するから今回は判定できないになったわけなんですけれども、閾値がないということになると、さらにこれは係数が上がる要素なのかどうかというの、これは仮定の問題なんですけれども、一つ教えていただきたいのと、それから二つ目は、上がる要素があるんだけれども、いろいろ考えて1,000で用いていれば十分であるという根拠が、なお書き以下であるのであれば、このなお書きの話というか、この話があって、結論として総合的な係数としては1,000を用いていいという話になるのかなということで、ちょっと順番が違うのではないかということで。

 それで、今出てきた免疫の話について言えば、どっちにしろ、その免疫のそのリスクが最低であるとしても抑えられるというほうでの記述なので、問題がないといいますか、これが、あれのでこれをもっと厳しくするというほうだと、かなり慎重にしなきゃいけないんですが、それでも抑えられるという話なので、そこは別にいいのかなというふうに思います。

【新田委員長】 ご指摘、まず、なお書きのところ、確かに結論を書いてから、その説明をしているというような形になっておりますので、ここはちょっと本日の議論の全体のまとめも含めまして、少し事務局で論理、説明の構成は検討させていただければと思います。

 それから、その前の、その重大性のところにがんを評価をするに当たって、閾値あり、なしがそこに、判断に関わるかどうかについては、もし青木委員、何かご意見がありますか。

【青木委員】 閾値あり、なしの判断は、基本的には遺伝毒性のデータを吟味させていただいて、そこの判断はできないということでございますので、そういう観点から、こういうような記述になっているわけでございます。

 ただ、その閾値が、仮になんですが、ないとなった場合には、そこで発がんの、いわゆるモデルを使った直線外挿の考え方を用いたリスク評価が手法として可能になるということになるんですが、ただし、その場合、ドーズ・レスポンスのデータがちゃんとしたものがある、つまり、それだけ直線外挿のモデルを用いて行うことができるだけのものがあるかということは、また別の議論になってまいります。そういうことも総合的に考えると、ここで書いていただいたような記述になっているのではないかなというふうに思います。書きぶりはまたもう一回、事務局のほうで考えていただくとして、この辺のところを、文献を読ませていただいた者としては、妥当な書き方、もちろん説明はまた別にちょっと考えなくちゃいけない、今いただいたような疑問というのは当然出てくるものだと思いますので考えるとして、一応、妥当なものじゃないかというふうには思います。

【新田委員長】 よろしいでしょうか。少しここで、本日ちょっと議論を一旦整理をさせていただければと思います。これまでの議論は、どちらかといいますと不確実性係数に係るような、それから免疫影響に係るようなご意見、ご議論をいただいておりますが、まず、本日の資料3の重要な部分ですと、5の中で量-反応関係を評価した上で、第3次答申での環境基準専門委員会で判断と同様に、神経系への影響をエンドポイントとして、量-反応関係の推計を行うということで、そこはこれまでの環境基準と同様に、200mg/m3辺りの濃度ですね、の前後に、その第3次答申の言い方で言いますとLOAELに相当する気中濃度というようなことを、今回の再評価においても採用するというのがまず第1のステップでございます。

 その上で、不確実係数等を含めて総合的係数をどうするかというところで、まず、スタートの第1のステップのところの第3次答申の評価そのものの知見を踏まえた上でも、やはり神経系の影響で、200mg/m3のところを、今回の評価の書きぶりでいきますと評価値算出の出発点という、point of departureと書いてあるところとするというところについて、まず、各委員の先生方、ご意見、こういう事務局の案で進めるというスタートのところについてご異議がないかどうか、まず確認をさせていただければと思いますが、いかがでしょうか。その点は、異議なしということでよろしいでしょうか。

(は い)

【新田委員長】 それでは、次のステップで、今も議論がなされていたところで不確実性係数、事務局の提案では、これも第3次答申の環境基準専門委員会での報告書にありますような総合的係数も1,000と同じ値ということで、これも議論の出発点ということでございますが、これも議論で、このままで進めるということについて、免疫影響、それから発がんのところも前回の第3次答申時代とは少し内容的に異なる発がん性の評価ですね、大久保委員からもご指摘いただいたような閾値の判断、遺伝子障害性についても、研究の進展で判断が変わってきていると。それから、定性的にはIARCの評価も変わってきているというようなことと免疫影響、第3次答申のときには知見として得られていなかったものが得られているというようなことも踏まえつつも、1,000という値が適当というたたき台になっておりますが、この点について、もう少し踏み込んでご意見をいただければと思います。

 武林先生、どうぞ。

【武林委員】 最初に内山先生が指摘をされたように、やっぱり、この総合的係数が本当に1,000から、1,000でいいのかということは、数字のことは抜きにして、もう少し議論しなければいけないんじゃないかと思うんですが、というのは、53ページのところに、先ほど大久保先生が指摘をされたように、28行のところから、前回の係数1,000をとったときの理由が四つ載っていて、今回、次のページに四つ載っていますが、三つ目のNOAEL、LOAELのところは、表現は多少厚くなったとしても、前回と変わってないと思うんですね。

 そうすると、最後のところが、前回はヒトに対する発がん性は除外できないものの、トリクロロエチレンは発がん性には閾値が存在すると考えられると言っていたものが、今回は発がん、腎臓がんのリスクが増加されるとともに、過敏症症候群との関連性があると考えられると書いてあって、1,000で変わりませんというのは、やっぱり読んだ、我々、全部読んできたのでわかりますが、ここを読まれた方にとっては非常に違和感があって、一体どういうことだと。しかも、そのいきなり数字が出てくると、本当に結論ありきのように見えるので、先ほど大久保先生が指摘されたのは、まさにそこだと思っていますが、そのなお以下のところであることを、もう少し丁寧に、本当に発がんのことは明らかになったけれども、実際には指針値付近の数字のところで発がんは増えないんだということを判断するわけですから、そこがわかるようなきちんとした整理の仕方がないと、やっぱり、1,000から1,000に行くことには非常に違和感があるのではないかと思います。

【新田委員長】 ちょっと、ほかの委員の先生からのご意見も伺って、今の武林先生の意見も含めて議論を進めたいと思いますが、ほかの委員の先生、いかがですか。

【新田委員長】 では、長谷川委員、どうぞ。

【長谷川委員】 専門分野外なので、ちょっと適切でない部分もあるかと思いますが、今の武林先生の、武林委員のご意見、私も同感でして、やはり、この前回の53ページの4点、不確実係数等の設定の観点の4点と、今回の54ページの上の部分の4点の対応を考えてみますと、その四つ目の点が加わっているというふうに何か見えるので、その点の評価がどうなのかという点と、あと、これは、最終的には、これは影響しないとは思うんですけれども、この前回の4点のうちの1番目と2番目が、さきに高感受性の話で、2番目が労働環境の話が来ていますけれども、今回の4点挙がっているところでは、その順番が入れかわっておりまして、これが、結果的には係数としては変わらないとしても、その、いわゆる重要度といいますか、重みづけの評価が変わっているのかどうなのか、そういうふうにも読み取れるんですね。なので、そういった文脈といいますか、そういった面も含めて、ここの記述といいますか、説明書きを考えたほうがよろしいのではないのかなというふうに、素人ながら思いました。

【新田委員長】 では、内山委員、どうぞ。

【内山委員】 先ほど、武林委員がおっしゃったのは非常に同感なんですけれども、この書きぶりからいくと、以前は腎臓がんの疑いが、発がん性が疑われて、しかも閾値があると、あのときは判断したんですね。代謝経路に二通りあって、それが、一方がオーバーフローしたときに発がんの経路に行って発がんする可能性があると。ですから、一般環境のような低濃度では、その代謝経路がオーバーフローしないだろうから、発がんに行く、途中で発がん物質が出てくるものはできないだろうということについて、閾値があるというふうに、あのときは判断したと思っているんですね。それが、腎がんがある程度不確実性が出てきて、しかも、その代謝経路を見てみると、オーバーフローしなくても、その発がんを引き起こすような経路にも行っているのではないかということから、今は閾値がないと判断する機関と、それから、この委員会でははっきりしないと、そこまでは言えないのではないかということになったことを考えると、私の個人的意見としては、前と同じ係数というのはちょっとおかしいかなという感じがしていますし、それで、前は明らかに発がんの可能性はあるけれども、閾値があるというふうに結論したわけですね。ですから、神経系と同じような安全係数を掛けていく形でもいいだろうという形にしたので、今回は、少なくとも発がん性の閾値がはっきりしないということで、一つ、さらにそこで曖昧になって、閾値があるとは断言できないということになって、それから、腎がんを起こすということが、よりその後の疫学研究等で、以前よりはそういう証拠がだんだん増えてきているから、発がん分類のクラス1にしたんだということもあると思うんですね。そこら辺をちょっと考えたほうがいいかなというような気がいたします。

 それから、もう一つ、免疫系に関しては、私の理解が甘いのかもしれないんですけれども、免疫系、いわゆる特にアレルギー反応だとすると、用量反応はないんじゃないかというふうに、用量反応が出る、濃度が高かったから、アレルギー反応を起こした人が増えるというような、そういうものでは、アレルギー反応というか、あるいは感作なのか、ちょっとよくわからないんですけれども、そういうものではなくて、一度感作してしまえば、それの濃度がどこであれ、その人が、その閾値を持っているのであって、高濃度になったら、じゃあ100%の人がアレルギーを起こすかというと、そういう発がんとか、あるいは神経影響ということとは違う感じがします。ちょっと免疫系、特にアレルギー反応というのは、用量反応はそう出るものではないので、それを理由に採用しないというふうにちょっと書いてあるところもあるのですが、これは青木先生とも、今、ガイドラインのところで、その他の指標というところで、今まで用いられてこなかった感作ですとか、アレルギー反応を、こういう慢性影響としての環境基準に、どのように考えて取り入れていったらいいかということは、いまだにまだ議論のあるところで、用量反応がないからこれを採用しないとか、曝露濃度がはっきりしないからというと、ちょっと違和感があるような感じもしています。そこはまたアレルギーのご専門の、あるいは免疫系のご専門の先生方にご議論していただきたいと思います。

【新田委員長】 ほかの委員の先生、あ、上田委員、どうぞ。

【上田委員】 あの、すみません、今のお話を聞いて、私も53ページのところ、54ページのところの、その不確実係数のところで少し気にはなったんですけれども、少し、ちょっと私、見当違いかもしれないんですけれども、こちらの参考資料の108ページを見ますと、不確実係数のところの考え方として見ると、(4)、参考資料3の専門委員会、過去のですね、それを見ると、「不確実係数としては、労働環境で得られたデータを一般環境に外挿すること、NOAELではなくLOAELを用いること等を考慮して」ということで、2点しか明示されていない。今回の出されているものでは四つ出されているというところで、ちょっと、その違和感があり、それはどうしてなのかと思いました。この追加の2点はどこから記載されたものかどうかというのが一つ質問があります。

 そして、もう1点は、これは私の見当違いのところかもしれませんけれども、過去の時点では、不確実な部分が多いために、かなり安全側の、その安全側に立ったその不確実係数をとったがために1,000となったという考え方もあって、それが、今回、確実に発がん性に関しての新たな知見が加わり、結局、安全側、厳し過ぎる、あえて言えば厳し過ぎるところから、少し、より現実的な不確実係数になったというふうな考え方もできないかと思いました。ただ、それは以前、内山委員からもご意見を、当時の議論をご存じの先生方からよくお話を聞かないと何とも言えないところなんですけれども、以上の2点になります。

【新田委員長】 最初のほうの――どうぞ、事務局。

【嶋田主査】 今の上田委員からのご質問の1点目のところなんですけれども、同じ資料の105ページのところに、この4点というのが実は書いてございます。最後の108ページのところは、本当の最後の大まとめでございます。少しこう、いろいろ縮めて書いてあるところなんですが、105ページのところに4点書いてございます。基本、ここを持ってきているということでございます。

【新田委員長】 その後の部分については、考え方はすごく重大なところと思いますが、先ほどから引用されているガイドライン、参考資料の4の27ページのその最後の部分ですね、なお書きで、不確実係数及び影響の重大性に関する係数はできる限り小さいほうが望ましいというのは、そういう趣旨の、文言はガイドラインにも入っております。ただ、ここをどう考えるかというのは非常に難しい問題ということで、ちょっと、その辺りも考慮した上で、最後、判断をしなければいけないんじゃないかというふうに思っておりますが、ほかはいかがでしょうか。

 片谷委員、どうぞ。

【片谷委員】 私も、医学的なことは専門外なので、少し的外れなことを申し上げるかもしれませんが、先ほど内山委員がおっしゃったように、不確実係数に関する考え方の記載内容が変わって、でも、係数は変わらないというのは、確かに若干違和感があります。で、ちゃんと説明ができるのであれば、恐らく問題はなくて、ただ、新しい知見が増えれば、必ずしも不確実係数は小さくなるわけではなくて、今までよりもっと範囲を離れたようなデータが出てくれば、不確実係数を大きくしなければいけないという可能性もありますし、逆に、もっと分布は狭いんだよということを示すようなデータがあれば、不確実係数は小さくなるはずですので、実際、今回調べたことによって、どういう動きがあったのかということが説明の中に記載されれば、1,000のままということに対しても説得力はあると思いますので、その辺の記載を少し評価できないのかなと、素人ながら感じたということです。

【新田委員長】 では、先に川本委員、どうぞ。

【川本委員】 この神経影響をベースとするということについては、もう異論はありませんけれども、最後に、この不確実係数のところなんですが、こういう評価をしていいのかどうかわかりませんけれども、他の環境基準値、他の物質の、それとか指針値を比べますと、どちらかというとトリクロロエチレンは高いという感じを持っていまして、というのは、同じ基準値でもジクロロメタン、これはグループ2Bだと思うんですけれども、これが150マイクロ、それからジクロロエタン、トリクロロエチレンよりは二重結合もなく、塩素も一つ少ないんですけど、指針値になるのですけれども1.6μg/m3ということで、後でできるものは少し厳しくなると思うので、その辺りも少し、考慮することがいいのかどうかわかりませんけれども、ちょっと念頭に置いてはと思います。

【新田委員長】 じゃあ、上島委員、先にどうぞ。

【上島委員】 総合的な係数で1,000がそのままでいいのかどうかということも少し議論になったので、私の感覚といいますか、考えをちょっと申し上げたいと思います。

 今のそのつくりのpoint of departureが200でと、そこは私も何の異論もありませんし、それから、その免疫に関する、このエビデンスの質から言って、これは疫学的には不十分なものがあって、量-反応関係の評価に使わないというのも、これも私は特に異論はありません。ただし、この病気が、その亡くなることも、死亡率も結構、1回発症すると亡くなる方が実際出ますから、そういうその病気を、やっぱり絶対に引き起こしてはいけないという認識は強く持っています。これは先生方も、委員の皆さんも同じかと思うんです。ですから、このなお書きの下のところで、この発症を抑えることが可能と考えるというところを、この病気の研究をしている私が自信を持って言えるかということが、やっぱり私は一つ、それだけはちょっとお話をしたいと思うんですね。

 Nakajimaら(2018)の論文で、その推定をしたトリクロロ酢酸10mg/Lでリスクがあるというのは、私は、これはトリクロロエチレンの研究者として確信を持っています。ですから、これよりは確実に下げないといけない、これは間違いありません。じゃあ、この濃度が、この尿中濃度に達するような気中濃度がどのぐらいになるかということを考えたときに、そこはやっぱり、いろんな大きな不確実性があると思うんですね。その職場、こういう労働衛生での環境調査の仕事のみんなに言えることなんですけれども、患者さんが発生してから、後追い的に後から調査に行った場合は、その職場でも非常に気をつけたりする意識が働いたり、また、単にその調査に行くというだけで、企業は、患者さんが出ていなくても、使っている量を普段より減らそうとか、そういうことをやるのは普通にありますので、ですから、まず、そこのところが論文中に記載されている濃度であっても、それが本当にそうかというのは、まず、そこに一つ不確実性があります。

 それから、今回のその過敏症症候群のことで言うと、尿中濃度は、私はこれは確信を持っていますけど、そこから、じゃあ気中濃度に持っていくときに、やっぱり、その代謝の個体差というのがあると思うのです。今回の報告書の何ページでしたか、Huangら(2015)、28ページですね、のパッチテストのところでの論文では、そのトリクロロエチレンとその代謝物でパッチテストを、その患者さんだった人と、それから発症してない人とでやっているのですが、患者さんで一番その陽性に出た物質が抱水クロラールだったんですね。そうすると、その抱水クロラールと、トリクロロ酢酸の間も代謝が絡んでいますし、ですから、そういうトリクロロエチレンを吸入してから、その抱水クロラールになるところ、それから、抱水クロラールからトリクロロ酢酸になるところ、それぞれその代謝の個体差があるので、ですから、そういうところも、その不確実、その尿中濃度から気中濃度を考えるときの不確実性をちょっと考えないといけないというのが私の考えです。

 それから、労働補正のところが、つまり、労働環境から一般生活環境での曝露に換算というところで、これは先ほど、内山先生から、今はもう換算係数だというお話をいただいていますけど、動物実験の場合はそれで、もちろん換算係数でいいと思うんですが、職場の場合は、その方がどういう働き方をしているかによって、やっぱり不確実なところがあるわけなんですね。この中国での、この我々、職場の調査では、1日8時間、週5日の40時間労働というのに近い職場もあれば、週7日労働という職場もありまして、いろいろあります。そこのところをどういうふうに考えるかというところも不確実なんですね。ですから、私、今回、このNakajimaら(2018)の論文で、発症しなかった、患者さんは出ているけれども発症していない人たちのその職場調査を併記したのは、そこについての情報を与えたいというような意図があったんですけれども、そこには幾何平均の濃度、職場のですね、それから、発症していない人の作業終了時の代謝物の濃度を記載してあります。

 で、そういった情報と、それから、あと、この代謝物と、それから気中濃度のその換算についても、日本産業衛生学会が出して使っているその25ppmと、トリクロロ酢酸50mg/Lという数字ですとか、あるいは、アメリカのACGIHが出している10ppmで15mg/Lとか、いろいろな数字があるのですが、そういうことも横目にしながら考えると、この1,000というのはちょっと、その発がんのその発がんの余裕ほどはないのじゃないかなという気が少ししております。私としては、やっぱりこの1,000はもうちょっと増やしたほうがいいんじゃないか、そこは幾つかというところは議論があると思うんですが、例えば1,500ぐらいというのは、私の感覚としては、感覚ですよ、これ、先生方にぜひご意見いただきたいんですが、というふうに思っていました。

 以上です。

【新田委員長】 ありがとうございました。

 青木委員、どうぞ。

【青木委員】 先生方から、さまざまなご議論を伺って、改めて思ったんですけれども、やはり、さまざまな不確実性があるということで1,000で、もう20年以上前になりますね。そのときに決まったという経緯もよくわかります。なるほど、それだけ不確実性があるものだから、なかなか、この部分がこうだと、だから、こういう理由で1,000になったということがなかなか難しい、決めにくい、あるいは議論しにくいという経緯が、よくわかりました。確かに20年前は、そういう中でリスク評価の考え方もよく定まっていなかったし、いろいろな議論があったんだと思います。

 ただ、やはりこれだけ、前回のときからたちましたし、リスク評価の考え方もさまざまに、ある意味、合意事項ができてきたと状況があるんだと思います。それで、やはり、さらに、この場で随分時間をかけて先生方に議論いただいた、ある意味、この委員会の成果物というふうに考えたときに、やはりここで、それぞれの不確実係数、あるいは、ちょっといろいろなほかの言い方は、さまざまなターミノロジー、はあると思うんですが、やはりここで、それぞれの不確実性への係数をやはり明示していくことというのは、そろそろ必要なのではないか、つまり、その1,000より動かすにしろ、それを維持するにせよ、やはりどこのところを考え直したために変えたのか、あるいは変えなかったのかというのを、やはり明確にする必要があると思います。そういう点で、なかなかそこは難しいということをわかりつつ発言しているつもりではおりますけれども、やはりここで、それぞれの不確実係数をどのように考えたかということをできれば報告書に示す、そういうことがもう、やはりここでやるべきではないかというふうに考えている次第です。

 これ、ぜひほかの先生方のご意見もぜひ伺いたいところではありますけれども、いろいろご意見、ご議論を伺って、思った次第でございますが、いかがでございましょうか。

【新田委員長】 そろそろ時間も迫っておりますので、まとめに移りたいと思いますが、今、各委員の先生から、結論部分に至るところでご意見が出ましたので、もし、この場で追加のご意見ということがあればお受けしたいと思いますが、はい。

【内山委員】 先ほど申しましたように、労働環境から一般環境へは、最近は不確実係数に入れないというふうにしておりますので、今ですと、これは200ということになります、不確実係数がですね。ですから、最近の有害大気汚染物質の指針値等は、その5は入れないで不確実係数と書いてあるはずですので、そこら辺ちょっと考慮して、頭の隅に置いていただいて、1,500から、一応、不確実係数は3,000以下にとどめると、それ以上のものは不確実が大きいので、指針値をつくらないというようなガイドラインになっているわけですが、それは5を除いたものですので、それの考えから言えば、今このトリクロロエチレンで不確実係数と言っているのは200しかないということですね。個体差が10と、LOAELからNOAELの10と、それから、その他の重大性ということで2ということですから、200ということで、その1,000のうちの5は、最近はもう入れていないということですので、ここはちょっと1,500にしましょう、2,000にしますと、だんだん、だんだん不確実係数が大きくなって、それが環境基準ではまずいんじゃないんですかという議論なりご質問も出ると思うんですが、最近はそういう考えになっているということです。

【新田委員長】 青木委員、どうぞ。

【青木委員】 今の内山委員のご発言のとおりなんです。ただ、3,000とガイドラインで書いたのは、動物実験を基準にしたものですから、その中に種間外挿です。動物からヒトへの外挿の係数も入っておりますので、疫学で考えるときには、ちょっとこれは、ここから先は私の私見なんですけれども、もう少し低いところに、不確実係数、積の上限値というのもあるんじゃないかというふうには、個人的には考えております。

【新田委員長】 ほか、よろしいですか、大久保委員、どうぞ。

【大久保委員】 すみません、その係数の話と離れるんですけれども、これ、「おわりに」をつけるんですかといったこととも関係しているんですけれども、一つは、何度も出てきているように、このガイドラインそのものが20年以上たっているということで、今回のような新たな知見をもとに、きちんと、やはりガイドラインを見直すということもあり得るのではないかということを、どこかに書き込むことはできないのかということが1点と、それから、仮に今の基準を変えないとしても、基本的に、新たな有害性に関する知見が出てきたわけですから、この係数の問題とは別に、そこの部分については、きちんと関係行政機関、自治体を含めて関係行政機関、事業者、業界、そして幅広い国民に、きちんとその知見を提供していくという情報の普及ということについては、どこかにきちんと書き込んでいただきたいというふうに思います。

【新田委員長】 それでは……。

【内山委員】 大久保先生、誤解されているので、今、問題にしているガイドラインは毎年改稿していて、最新版ですので。

【大久保委員】 あ、はい。

【内山委員】 何十年前の物ではなく、参考資料の4ですね、毎年改定していまして、最新版ですので、1年前ですね。1年前のものでございます。

【大久保委員】 すみません。

【嶋田主査】 現行の資料4のガイドラインは平成26年が最終改定になってございます。その事務的に、その更新といいますか、改定に向けた検討というのは引き続きやってございますが、現行、この今、有効なものは平成26年の10次答申に附属しているものが最も最新でございます。

【大久保委員】 すみません、失礼いたしました。

 それで、ちょっと気になったのは、将来的に不確実係数というのは小さくしていくのがいいということで、それは、新たな知見の集積によってデータを得られればということで、この間の議論で、その不確実性が逆に増しているというような知見も出てきているわけですので、これ常に小さくするといっても、それはどういう場合のときにとか、その辺も含めて、最新のものであっても、ちょっと見直すところがあるんじゃないかと、そういう趣旨でございます、すみません。

【新田委員長】 よろしいでしょうか。

(は い)

【新田委員長】 それでは、ちょっと時間も迫っておりますので、本日の議論をまとめさせていただければと思います。

 まず、スタートラインのところをpoint of departureと呼んでおりますが、ここを神経影響で現行の第3次答申の判断と変わらないということについてはご異論ないということで、その後の不確実係数等の判断について、いろいろご意見いただきました。冒頭、議論の中で武林委員から1,000と、前回と同じものを用いるについては、もう少し十分な説明がないと説得力がないんじゃないかというご意見でした。この点について私の判断は、十分に事務局等とも議論しています。先ほどの評価書の中にありましたように、発がん性においても、量-反応関係で第3次答申時代から定性的なところは知見が追加されておりますが、定量的に新しい知見は参考になるものがないというふうなことでございます。

 それから、新しい知見で免疫影響ことをご議論ありましたが、ここについても、量的なところで不確実係数が1,000でよいというような、現行と変わらないという説明は、今日お示ししているもの以上の説明はなかなか難しいのではないかと。そうしますと、他の委員の先生方からのご意見を踏まえますと、やはり不確実係数1,000よりも少し大きいものというようなことが、この専門委員会のまとめとしては適当かなというふうに判断いたしましたが、まず、その点についてはご異議ございませんでしょうか。あ、どうぞ。

【武林委員】 議論のきっかけをつくった私が、もう少しだけつけ加えさせていただくと、私自身は別に1,000をもっと厳しくするかどうかは、ちょっと今日の資料ではと思います。というのは、明らかなことは労働環境の、しかも高濃度群では発がんがあることはわかったということだと思いますので、今、我々が議論しているのは、それとかなりオーダーの違う一般環境で起こるかということが一番リスク評価としては大事であって、指針としても大事であって、そこが今日の資料では高濃度群と書いてありますけど、どこの高濃度を議論しているのかさえ、やっぱり表現としては共有できないので、そこで1,000が妥当か、もっと厳しくかというのは、むしろ僕は、前回の表現の中で、前回のリスク評価をした委員会が非常に正しい判断をされて、発がんのことはよくわからないけれども、可能性があるので、少し評価をしておきましょうということで1,000になったと理解していますので、それが今回、多少なりとも評価が増えて、発がん性は明らかになったけれども、やはり非常に、労働環境の、しかも高い濃度だけで起こっていることがわかったとも考えられますので、そこをもう少し整理をすれば、ちょっと免疫系のことは除きますけれども、発がんに関しては、むしろ証拠が増えたことによって、どこで何が起こっているかがはっきりしましたので、それを不確実係数として、さらに高める、強い数字を使わなきゃいけないかということは、私自身はそういうふうに思っていません。

 ただ、今日の資料からは、とてもそこが読み取れませんでしたので、そこをもう少し整理をしていただいて、一体、我々がどの濃度レベルの議論をしているのかということをやっぱり明示しないと、これを特に読まれた一般の方たちはわかりにくいのではないかというのが私の趣旨です、質問の。

【新田委員長】 ありがとうございます。今、明確に武林先生、ご意見いただきました。

 今日のご議論いただいたものをまとめますと、今の点も含めて、発がん性の評価、定性的なものと定量的なものをどのように扱うのかについて、それから、免疫影響の重大性をどう考えるかというところについても、現時点で、ちょっと合意点を見出せてないというふうに判断いたします。

 したがいまして、今日のところは議論を委員長として引き取って、後日、皆様のご意見をさらに伺った上で、次回の会議で委員長からの案ということで、今日の議論を踏まえた案を提示させていただきたいと思いますが、それでよろしいでしょうか。

(は い)

【新田委員長】 個別に十分ご意見を伺って、方向としては、現状を変えないとすればこういうしかるべき説明が必要、下げるべきということに関してもしかるべき説明が必要ということかと思いますので、そこのそれぞれの説明の適切性を、これまでの議論を踏まえて私の見解として案をお示しして、十分にご意見を伺った上で、最終的に次回に提出したいというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、本日の議論、ここまでということで、もし時間、もう残りわずかですけれども、全体を通しましてのご意見、ご質問がございましたらお受けしたいと思いますが、いかがでしょうか。

 はい、ありがとうございます。それでは、進行を事務局にお返ししますので、連絡事項等、よろしくお願いいたします。

【萩原課長補佐】 本日は、長時間にわたりましてご審議いただきまして、ありがとうございました。

 次回の専門委員会につきましては、事務局から改めてご連絡をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 なお、本日の議事録につきましては、各委員にご確認をいただいた上で公開することとさせていただきたいと思います。

 また、本日、委員の皆様にお配りした資料につきましては、郵送をご希望の場合には、その旨を書きおいていただければ、後日、事務局よりお送りさせていただきます。

 また、お手元の青いファイルの中にとじている参考資料につきましては、今後も継続して使用する予定ですので、机の上に残してご退出ください。

 本日は、どうもありがとうございました。