産業構造審議会・総合資源エネルギー調査会自主行動計画評価・検証制度小委員会中央環境審議会地球環境部会自主行動計画フォローアップ専門委員会合同会議議事概要

日時

平成20年3月17日(月)10時00分~12時00分

場所

虎ノ門パストラルホテル「葵」

出席委員

茅委員長、大塚委員長、秋元委員、丸田代理(逢見委員)、柏木委員、渡邊代理(勝俣委員)、橘川委員、
木元委員、河野委員、佐久間委員、島川委員、鈴木(正)委員、片桐代理(千葉委員)、名尾代理(張委員)、
工藤代理(内藤委員)、中上委員、岸本代理(中村委員)、石橋代理(中山委員)、森代理(野村委員)、
本田代理(馬田委員)、早川委員、福川委員、湛代理(町田委員)、三村委員、米本委員、
橋爪代理(渡委員)、浦野委員、小林委員、平井委員、藤江委員、増井委員、三浦委員、森口委員

概要

1.経済産業省及び各省庁所管業種の自主行動計画の最近の進捗状況について

 経済産業省から資料1、日本チェーンストア協会から資料2-1、日本フランチャイズチェーン協会から資料2-2、日本百貨店協会から資料2-3、日本建設機械工業会から資料2-4、環境省から資料2-5、総務省から資料2-6、財務省から資料2-7-1及び2-7-2、文部科学省及び全私学連合から資料2-8、国道交通省から資料2-9、石油連盟から資料2-10、警察庁から資料2-11、全日本遊技事業協同組合連合会から資料2-11、全日本アミューズメント施設営業者協会連合会から資料2-12、金融庁から資料2-13、厚生労働省から資料2-14、日本医師会から資料2-15、農林水産省から資料2-16、日本フードサービス協会から資料2-17、日本経済団体連合会から資料3について説明が行われた。

2.委員の発言及び質疑

  • 国内の議論は、昨年一年間、本日説明頂いた産業界の努力について、激励し、刺激し、どのような手法でどこまで達成可能かという議論を行ってきた。ポスト議定書に向けて、役所の要請を受けてあくまでも業界が自主的にボトムアップで数字を考え、努力をしてきたという実績は重要。ポスト議定書を議論する論者の中には、自主行動計画を頭からNOとして、過去の話とする者もいる。しかしながら、日本の現実に即して言えば、このボトムアップ方式をこれからも活かしていくことしか、我が国には合意達成のプロセスがない。福田総理がダボス会議で表明したセクトラルアプローチについても、こうした方式を活かすとの発想がなければできない。
  • ポスト議定書の議論の9割は排出権取引の是非。まずは相対的な目標を設定し、それを達成するための経済的手法を議論するところから議論を始めるべき。排出権取引があたかも決定的な力を持つかのごとく議論することは誤り。
  • 技術をどこまで改善できるかが鍵。排出権取引に関して、各業界に対する締め付けの是非を議論することも重要だが、技術革新を促進するのか、または妨害するのかが問題。
  • 世界の流れに乗り遅れるとの議論があるが、間違ったバスに乗ったら大変なことになる。経産省は、世界の流れや制度について現地調査を行って、客観的な間違いを示してほしい。EUは議論を行っている最中であり、EUの制度が決定的な制度ではない。
  • スーパー、コンビニ等の深夜営業について、地球温暖化対策の観点から自粛をお願いしたい。昨年8月の内閣府の調査でも、夜間利用について70%以上が利用しないという結果が出ている。また利用すると回答した者のうち40%近くは、特に利用する理由はないが何となく利用しているとの回答となっている。昨年6月の経産省の報告書においても、小売業の経営の観点から、休日の増加、24時間営業の見直し等、営業時間の短縮も含めた企業の特色を生かした対応が必要、利益の確保を営業時間の長さで求めるのではなく質的な顧客サービスの向上に求める、オーナーの高齢化が進み24時間営業の一部廃止等を含めた取り組みが進められたとの記述がある。これらを踏まえ、深夜営業の見直しについては、消費者の視点から、見える行動ということで、是非検討してほしい。
  • コンビニ等における見える化の活動は、小売業にかかわらず製造業においても是非実施してほしい。自主行動計画により産業界の取り組みは進んでいるところ、民生・家庭系が問題との指摘を受けているが、この民生・家庭系でのエネルギーのムダ使いの一部を産業界も負っているのではないか。産業界の経営戦略の中で省エネを進めていくことは、家庭での省エネを格段に進めていく効果がある。家庭系の削減について、政府を責めるだけでなく、企業において商品の販売や経営戦略の中で低炭素社会の行動を誘発していくことが重要。最近、環境や省エネに触れたコマーシャルが多いが、企業のマスメディアによる宣伝効果は大きい。国民の環境行動を誘発するようなコマーシャルなどを自主行動計画のメニューに入れてほしい。削減の数字ばかりに議論を追い込むのではなく、環境指向型の戦略を会社の営業活動の中を行ってほしい。このことが、CSRとして、国民の信頼を勝ち取っていくことになる。
  • 資料2-1の日本チェーンストア協会、資料2-2の日本フランチャイズチェーン協会、資料2-3の日本百貨店協会において、目標を引き上げて頂いたことは結構だが、目標の設定が床面積×営業時間当たりの目標数値となっており、深夜営業の話もあったが、仮に深夜営業の見直しで時間を減らせても原単位の改善で捉えることができない。CO2排出総量での目標設定、あるいは売上高当たりの目標設定など、目標の設定の仕方を改良してはどうか。
  • 目標の改定を行う場合、これまでの実績で目標達成ができているため更に上積みを行うとの目標設定が多いが、長期的にどこまで可能かを見極めるため、業界内での原単位の分布、海外での原単位などをみながら目標設定を行うことも必要。
  • 日本建設機械工業会、日本百貨店協会、石油連盟、ビール酒造組合、たばこ製造業については、既に目標をクリアしている。更なる目標の引き上げを検討すべき。
  • 原単位を目標指標に設定している業界は、総量の目標設定を進めてほしい。また、総量を目標に設定している業界については、原単位ではどうなるのか、検討されるべき。
  • 様々な取り組みがなされていると思うが、ホームページ等を通じて国内外に情報発信すれば、より理解が得られるはず。
  • いくつかの業界で目標引き上げが掲げられているが、例えば、石油連盟では、更なる目標引き上げを検討するとしているが、実際に検討をしてほしい。個別企業の取り組みで業界団体を超える取り組みもある。
  • 目標の設定として、G8等でも排出量そのものの議論が強くなってきており、是非とも原単位だけでなく排出量そのものも検討してほしい。
  • 石油連盟に対して、バイオガソリンでETBE方式を上げているが、直接混合など、その他の技術革新を促進する芽を摘まないようにしてほしい。
  • 温暖化対策としてこの自主行動計画が機能するためには、原単位ではなく総量的な削減を目標に掲げる必要がある。特に時間当たりの原単位は改善してほしい。
  • 総量目標に関して、先日、イオングループがこれから5年間で30%削減するという意欲的な数字を出している。このような個別企業の努力が表に出るよう配慮してほしい。
  • チェーンストア協会はカバー率が低いのではない。十数%であったと思うが、カバー率をどのように広げていくのか、検討してほしい。
  • このような大きな会議、組織単位での取り組みは現場には見えにくい面がある。自主行動計画が地域でどのように機能しているのか見えてこない。それぞれの団体の地方支部などで地元地方自治体との協議を行う、店舗毎に掲げる目標について地元消費者に伝わる工夫を行うなど、現場に伝わる自主行動計画を進めてほしい。
  • 最近、G20などでもそうだが、キャップアンドトレードの排出権取引制度に乗らないと環境優良国でないとの風潮があり、また日本のマスコミも社会的なムードを作り上げようとしている。キャップアンドトレードの排出権取引制度は、サブプライムローンと同じ危うさを持っている制度である。炭素市場において、炭素のどの部分を取り出してどこに網を掛けていくのか、実態がはっきりしていない。キャップアンドトレードの導入をトップダウンで行うことは問題が多いということは、EU域外でもそのようなことが起こっていることからも明らか。EUが主張している2050年の目標は、先進国が排出をゼロに押さえても達成は不可能であり、途上国の賛同が必要。したがって、画期的な脱炭素を可能にする技術開発があって、その実用化ができること、更に途上国が賛同しなければ意味がない。極めて脱炭素効果の高い原子力を未だにCDMに加えられない条件のEU型排出権取引制度になぜ乗らないといけないのか。制度・枠組みで達成できると思うのは妄想。効率的な脱炭素技術の普及策を下から積み上げていくことが必要。いま行っている自主行動計画もその一つ。これを進めるためには、21世紀の基幹エネルギーである電気の脱炭素化が必要。抜本的な技術的なシナリオが必要であるが、日本の原子力立国戦略は立派なビジョンは示しているものの、実際にはその達成を妨げる過去のしがらみがある。社会的・政治的なリスクが高まり、一企業ではこれを負いきれなくなっている。日本全体でこれに取り組んでいく必要がある。
  • いまこの会議に出席している業界のデータは小売業界のデータの一部。データベースを揃えておかないと議論が偏ってしまう。
  • ベンチマークについて、90年をベース年にしているが、例えばコンビニでは90年時点でのコンビニの業態、店舗数は現在と全く異なっており、百貨店においては営業時間が3割は伸びている。ベース年を90年にすると、何が問題となっているのか見えなくなる。ベンチマークを決めることは困難であり、じっくり議論する必要がある。
  • 深夜のライフスタイルについて、特定の業界をねらい打ちにする印象になると、議論が別な方向に行く可能性がある。
  • 省エネルギー量とCO2削減量は意味が異なる。例えば百貨店協会では、2006年の実績値で基準年比10%削減しており、まだ3%余裕があると思うかもしれないが、2~3年前まではこれが僅か2~3%程度しか達成できなかった。省エネルギー量で減少しても、例えば原子力発電所の停止によりCO2原単位が悪化する場合、CO2排出量はそれほど減らない。電気を買う側からすれば如何ともしがたい事情。形式的に数字が減っていても、必ずしもその通りでない場合がある。この点、誤解のないように議論してほしい。
  • 消費者や一般家庭に見えるようにしてほしい。コンビニ、スーパーなど、我々の身近な企業が出てきたので、見える足がかりにはなってきた。クリーニング屋、アパレル企業などは我々が接する頻度の高い業界なので、これらも含めてほしい。
  • 企業の社員が家庭で行った省エネ・CO2削減努力を企業の実績に反映出来る方策があれば良い。

○濱邊経済産業省流通政策課長

  • 今回、日本百貨店協会、日本チェーンストア協会、日本フランチャイズチェーン協会が新年に入って目標を引き上げたが、我々からも強い要請を行ったところ。
  • 24時間営業、深夜営業の見直しについて、更なる検討が必要ではないかとのご意見があったが、基本的には個別企業の判断によって営業時間の伸縮はなされるものであり、業界団体として、また政府として一律の規制を設けるのは適切でないと考えている。24時間にわたって操業・営業を行っているのは小売業だけではなく、ライフスタイルの観点から国民全体の生活スタイルも考える必要があることから、小売業だけ率先して営業時間の制約を設けるのは適切ではない。
  • 目標として原単位ではなく総量を採用すべきとのご意見があったが、一部大手スーパーでは総量としての目標を打ち出しているものの、業界全体では規模や経営形態が異なり、トップランナーに揃えられるものではない。現在、省エネの店舗運営マニュアルなどを策定してもらっており、個別企業、個別店舗ベースでの原単位の改善を目指したい。
  • カバー率が低いのではないかとのご指摘について、日本チェーンストア協会の場合、全小売業の売上に占める割合が10%であり、非会員企業は対象外になるが、我々としても今回目標引き上げを行った以外の団体にも自主行動計画の策定を呼びかけている。例えば、日本ショッピングセンター協会では、新年度から新たに自主行動計画を策定する予定であるが、この協会だけでも200万トンの排出量がある。

○藤原経済産業省環境経済室長

  • 産業界による自主行動計画の主としてメリットについてご説明があったが、第1約束期間において政府全体でこれを進めていくことは閣議決定されつつあるところ。自主行動計画の強化・拡大路線で全省庁努力していきたい。
  • ポスト京都について複数のご指摘があった。排出量取引、セクトラルアプローチなど、自主行動計画との関係も含め、総合的に検討したい。
  • 深夜営業については、昨年、重点項目として御議論頂いたところだが、目標達成計画案の60頁では「深夜化するライフスタイル・ワークスタイルの見直しに関し、国民の抜本的な意識改革に向け、諸外国の状況も踏まえ、総合的に検討する」とされており、流通業のみならず深夜ビジネス全般の記述がある。横断的施策として、引き続き目標達成に向けての議論を続けていきたい。
  • 企業の活動において環境指向型な戦略を進めるべきとのご意見については、基本的には業界において進める話であるが、政府においても何らかの後押しをしたい。具体策については今後、ご相談・ご提案頂きたい。
  • 目標指標の設定は、自主行動計画の肝の部分。これまでも申し上げたが、自主行動の「自主」の意味は目標設定の自由がある程度きくということであり、これについては原則産業界の判断に委ねられるべきと考えている。ただ、政府全体として、総量目標も合わせてお願いしているところである。
  • 実績以上に目標の引き上げを行うべきとのご意見については、ご指摘の通りであり、政府として働きかけを強めているところである。
  • 国内外への情報発信については、既にご紹介したが、第一歩として今年度のフォローアップの英語版を作成したところである。また、地域への発信も重要だと思っており、ご相談させて頂きたい。
  • データベースを整備すべきとのご意見については、温暖化対策推進法で今年から企業別、事業所別での取り組みを行っているが、自主行動計画のみならず様々な手法を用いて業界・企業の情報収集に努めていきたい。電力係数の変化が与える産業界への影響も含めて、我々として説明責任があると認識している。
  • クリーニング、アパレルの2業種についてご指摘頂いたが、アパレルは経産省所管であるが、一部化学業界で捉えている部分もある。精査したい。
  • 社員の努力を企業が積極的に評価する仕組みについては、企業、産業界で考えてほしいが、国としても経団連と相談して後押しを進めていきたい。

○大塚委員長

  • 実績以上に目標を引き上げてほしい。今回の場合、百貨店、建設機械の業種についてお願いしたい。石油連盟についても同様の問題がある。参考資料2の31頁の[4]で、建設機械と百貨店が掲げられているが、これを外して良いか否かは関連する問題である。
  • 総量目標を設定について、経産省からも説明があったが、難しいものの引き続き努力してほしい。流通3業種、放送・通信についてこのような問題がある。
  • 外食産業について、定量目標の設定に努力しているとのことだが、是非とも設定してほしい。
  • 私立学校及び病院について、私立学校は既に計画を策定したとのことで評価したい。病院についてはこれから策定するとのことだが、早急に策定してほしい。
  • 流通3業種について、関連する問題として、すべての商品でCO2排出量を表示するイギリスのフードマイレージのような制度の導入、ノンフロン冷蔵庫の導入などを御検討頂き、原単位を改善してほしい。

3.その他

○茅委員長

  • 本日、報告のあった業種については、その大部分が先月末の目標達成計画改定案に反映している。しかしながら、スーパー、コンビニ、百貨店、建設機械、ビール、学校については、各省庁の審議会等による確認が間に合っておらず、今後改定案に適切に反映するようにしたい。いずれにせよ、各省庁は、今後、目標の引き上げなど、自主行動計画の成果が上がるよう努力してほしい。

○藤原経済産業省環境経済室長

  • 茅委員長から御説明のあった6業種については、関係省庁と調整の上、目標達成計画の改定に間に合うよう適切に反映させたい。
  • 残された業種の課題についても事務局において関係省庁と協力して検討していきたい。
  • 本日の議事概要については、事務局しい取りまとめの上、数日中に、委員の皆様に案を送付致します。皆様に送付後、一週間で環境省及び経済産業省のホームページに掲載する予定。

(文責 事務局)