中央環境審議会地球環境部会第5回国際環境協力専門委員会議事録

開催日時

平成17年4月5日(火)14:30~17:20

開催場所

経済産業省別館825会議室

出席委員

(委員長) 浅野 直人
(委員) 青山 俊介  長谷川 雅世
石田 耕三  廣野 良吉
小林 悦夫  山瀬 一裕
園田 信雄  和気 洋子
高橋 一生  

議題

1. 環境技術に関するヒアリング及びプレゼンテーション
  (1) 株式会社タクマ:プラント事業統括本部 国際事業本部 本部長 武内豊氏
  (2) 株式会社同和鉱業:エコビジネス&リサイクルカンパニー
リサイクル事業部長 島田和明氏
  (3) 石田専門委員
  (4) 長谷川専門委員
  (5) 園田専門委員
  (6) 青山専門委員
2. その他

配付資料

資料1 ヒアリング等資料:(株)タクマ
資料2 ヒアリング等資料:(株)同和鉱業
資料3  ヒアリング等資料:石田専門委員
資料4 ヒアリング等資料:長谷川専門委員
資料5  ヒアリング等資料:園田専門委員
資料6 ヒアリング等資料:青山専門委員
参考資料1  Environmental Industry Project Report (Part One:Introduction
and Summary of the Findings and Recommendations)

議事録

午後2時30分開会

○田中環境協力室長 それでは、定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会地球環境部会国際環境協力専門委員会の第5回会合を開催させていただきます。
 本日は、全委員13名中10名の方々のご出席をいただくという予定になっておりますが、和気委員と、長谷川委員、それから園田委員、少し遅れて見えられるようであります。
 加藤委員、黒川委員、中村委員からは、今回は欠席という連絡をいただいております。
 それでは、浅野委員長、よろしくお願いいたします。

○浅野委員長 それでは、本日もお集まりいただきましてありがとうございました。
 本日は、環境技術に関するヒアリング及びプレゼンテーションでございます。本日、予定よりも15分程度、終了時間が超過することになるかと思います。終了時間が17時15分ぐらいという予定でございますが、どうぞご了承いただきたいと思います。
 それでは、ヒアリングにご参加いただいている方々のご紹介と、本日の資料の確認を事務局からお願いいたします。

○関谷環境協力室長補佐 それでは、ご紹介申し上げます。
 初めに、株式会社タクマ、プラント事業統括本部国際事業本部本部長の武内様です。

○武内(株式会社タクマ) 武内でございます。

○関谷環境協力室長補佐 続きまして、同和鉱業株式会社、エコビジネス&リサイクルカンパニーリサイクル事業部事業部長の島田様です。

○島田(株式会社同和鉱業) 島田でございます。

○関谷環境協力室長補佐 それでは、引き続きまして資料の確認をさせていただきます。
 お手元の議事次第の紙の裏側に資料一覧がございます。
 資料1から6、それから参考資料が1つございます。
 まず、資料1でございますが、パワーポイントの資料で、株式会社タクマさんの資料でございます。それから資料2が同和鉱業さんからのプレゼンテーションの資料でございます。資料3が石田専門委員からのプレゼンテーションの資料でございます。資料4が長谷川専門委員からのプレゼンテーションの資料でございます。それから、委員の皆様のお手元には長谷川様からの配付資料ということで、パンフレットの類が何種類かございます。それから資料5が園田委員からのプレゼンテーションの資料でございます。同じく園田委員からのパンフレットの配付がございます。それから資料6が青山専門委員からのプレゼンテーションの資料でございます。それから参考資料1がEnvironmental Industry Project Reportというタイトルの英文の参考資料でございます。
 以上です。

○浅野委員長 それでは、議事に入りたいと思います。
 本日は6名の方々に環境技術についてご説明をお願いしております。
 まず、最初にご出席いただきました企業の方々からご意見をいただきまして、その後、企業関係の委員でいらっしゃいます石田委員、長谷川委員、園田委員、青山委員から順にご説明を伺うということにしております。それぞれ25分の時間を予定しておりますが、最初に15分でご説明をいただきまして、その後10分程度、委員からの質疑に応じていただきたいと存じます。
 まず最初に株式会社タクマのプラント事業統括本部の国際事業本部長、武内豊さんからお願いいたします。
 どうぞよろしくお願いいたします。

○武内(株式会社タクマ) ご紹介いただきました株式会社タクマの武内でございます。私、タクマの国際事業本部の本部長をやっており、現在ベルリンに住んでおりますが、たまたまこちらの方に帰国する機会がございまして、今日お呼びいただきまして、ありがとうございました。時間も余りございませんので早速ご説明の方、させていただきます。
 お手元に配付しております資料でございますが、環境技術を活用した海外への事業展開の現状ということで申し上げますと、私どもがやっております事業分野のビジネス分野の中で、海外事業展開している環境関連技術は2つございまして、1つがごみ処理技術でございます。ごみの燃焼技術による熱電エネルギーリサイクルと書いておりますが、熱供給と発電を両方見据えた格好でのエネルギーのサーマルリサイクルでございます。これは、一般廃棄物、産業廃棄物ともに展開しておる分野でございます。ご承知のように、ごみ処理の技術もかなり多様化してきておりますので、単なるマスバーンからRDF、あるいはガス化という分野での展開でございます。
 それから、2つ目の技術といたしまして、バイオマスの発電技術でございます。これは林産・農産・畜産バイオマスを活用した、同じく熱電エネルギーリサイクルという格好で、林産で申しますと、各種の木材チップ、発生源は合板工場であったり製材工場であったり、あるいは間伐材であったり、家屋の解体廃材であったりいたします。農産でいきますと、製糖工場から発生します砂糖の搾りかす、バガス、あるいはライスミルから発生いたしますライスハスク、それからパーム椰子のオイルを使っているところから発生しておりますパーム椰子の殻、小麦のストローでございます。このあたりを農産の分野ではやっております。それから畜産の分野でございますが、これは家畜し尿、これのバイオガス化ということで今展開している最中でございます。
 本日は、私どもがやっています分野について、東南アジアあるいは東アジアを中心といたしました分野でどういう事業展開をやっているかということをご説明するとともに、そこで直面しております私どもの問題点、あるいは課題を地域別に書かせていただきました。
 2ページでございます。
 まず、東南アジアでございますが、私どもがプレイしております分野と申しますのは、タイ、インドネシア、マレーシア、フィリピンでございます。
 環境協力と申しますと、技術と資金と経営手法の三位一体のバランスのとれた技術の移転ということが、現地化のテーマでございますが、タイにおきましては、エンジニアリング会社に投資いたしまして、エンジニアリング会社を保有しております。インドネシアにおきましては、ボイラーの製造会社への技術供与、これを継続しております。それからマレーシアにおきましては、発電設備機器を製造する会社への部分投資というような格好でございます。フィリピンにおきましては、エンジニアリング会社を立ち上げまして、そこに投資して保有するというような格好で、技術の移転、資金投入、それから立ち上げました会社の運営手法、これらの3つの分野で何とか関与してきているのが現状でございます。
 東南アジアにつきましては、主といたしまして、やはり農産バイオマスを中心とした発電プラントビジネス展開ということになっております。したがいまして、現地のエンジニアリング会社設立投資・保有による現地製作比率の拡大と移転技術というようなことでございます。ごみ、廃棄物につきましては、東南アジアは、まだ焼却までなかなかきておらず、都市ごみの処分は当分埋め立て処分が続くだろうという見通しをしており、当面は農林・畜産等を主体としましたバイオマス発電技術の方に主体を置いております。
 各市場で技術供与と申しましても、これは当然、資金それから経営手法の融合が絶対的に必要なことでございますので、私どもの視点といたしましては、いかにそこで資金、あるいは技術、経営手法を投入して、それをビジネスとリンクして継続できるかということが最大の主眼でございまして、ここに書いてありますように、各市場においてビジネスの継続性の確保と維持と現地化の融合ということで、もちろんバイオマスの市場も非常にコスト競争の激しい世界でございますので、コストパフォーマンスを求められる市場の中で、現地化というスタンスで技術の現地移転、その保有、維持、それからそれをさらに将来へのビジネス市場として展開していける基盤、これをもって初めて技術の国際環境協力ということが実現できるのではないかというふうに考えております。
 そこで、問題点・課題といたしまして、東南アジア、ここはやはりエンジニアリング、製作製造面でも、なかなか当初期待したような完全な現地化、コストパフォーマンスの実現ということは、我々も努力はしておるんですがなかなか道半ばでございまして、技術の現地化を明確に志向する我々を含めましたビジネスグループに対する相互国家間での何らかの支援政策であるとか、非常に税制が複雑な国もございますので、その辺も国家間でのいろいろな支援方法とか、あるいは一番問題になります保有しているエンジニアの研修であるとか、雇用問題であるとか、そういったことも国家間での何らかの支援というものが部分的にはやはりございますが、それをさらに進めていただけるような方策はないものかということを常々思っております。
 それから、東アジア、特に中国、韓国、台湾でございますが、中国がメインになろうかと思いますが、中国、韓国、台湾におきましては、ごみ処理焼却発電設備による資源回収リサイクル、先ほどの熱電リサイクルですが、これを今展開している最中でございます。特に中国に今取りかかったところでございまして、これも同じように、技術、資金、それから経営手法、この3つを一体とできるような志向を持ったエンジニアリング会社を設立いたしまして、そこに部分的に投資しておるということでございます。
 それから、韓国につきましては、ボイラー製造会社への技術供与・産業用ボイラーの技術供与、これらを継続している最中でございます。
 台湾は、ボイラー製造会社への部分投資、エンジニアリング会社設立投資というような格好で、いずれにしましても現地化という視点から、あるいは国際環境協力の中での技術移転という視野から現地にエンジニアリング会社を創設して、可能な限りの現地化をし、コストパフォーマンスを上げていくということでございます。
 簡単に、韓国の事例をちょっと申し上げますと、韓国は1990年から1995年にかけまして、都市ごみ処理技術の技術供与が、怒涛のごとく日本を含めまして国際的に発生いたしました。1995年でほぼ技術供与が完了いたしまして、それから大体どちらも10年程度を規模に技術供与しておるんですが、その間、都市ごみブームがございまして、韓国でも廃棄物処理の発電施設ということが展開されました。ただ、2005年現時点で焼却率はまだ25%程度に留まっているという現状がございます。その反面、片や技術供与いたしました期限も10年を経過しまして、もう既に期限が切れて、韓国の廃棄物処理の事業分野におきましても、また再統合がされているような最中でございまして、韓国については技術供与、あるいは技術移転、これはほぼ第一世代は終わったのではないかと。これからさらにそれを足場にして、日本がさらなる新技術を持って韓国との技術の共同参入といいますか、第二世代でございますので、日本がメインのプレーヤーになれるとは思ってはいないのですが、韓国との新技術、新処理技術に対する展開ということが第二世代としてこれから出てくるのではないかと思っています。
 それから、台湾でございますが、台湾は1987年に新しいごみ焼却プラントの建設計画が出されまして、現在で18年経過しておりますけれども、既に21プラントのごみ焼却プラントができておりまして、これでもう80%のごみ焼却率を達成しております。したがいまして、これは民設民営という方向でいっているのですが、既に80%というごみ処理率でございますので、市場としてはかなり飽和感が見られる市場でございます。ここへの技術移転という分野におきましては、ここではかなり成功した例ではないかというふうに感じております。1980年当時、私どもが市場参入いたしまして、当地にエンジニアリング会社を設立いたしました。それが現在もまだ生きておりまして、オーバーホール、メンテナンス、あるいは廃棄物分野での部分的なエンジニアリング業務も行えるようになってきておりますので、継続性を持った技術移転、あるいは資金投資、経営手法の移転ができてきたのではないかという事例でございます。ただ、市場としては、台湾はこれからは産業廃棄物、あるいはバイオマスの分野に向かうのではないかと考えております。
 中国の事例でございます。中国は2000年代に入りまして、沿海部大都市において、やはり都市ごみ問題が都市問題として顕在化してきております。特に経済特区におきまして、その顕在化が顕著でございまして、上海では既に大規模なごみ発電プラントを2プラント持っております。これはスペイン、あるいはフランスの借款で実現しておるプラントでございます。あるいは広州、その近辺の寧波であるとか、もちろん深セン、この辺も含めまして、当面自治体の資金投資ということで建設されてきております。ただ、資本力のある政府でしたらそういった政府主導の公設公営ということが可能なんですが、最近の中国のごみ処理プラントの動向といたしましては、民設民営でございまして、今私どもがやっております天津あるいは北京におきましても、これは民設民営でございます。そこで、今後とも市場としては民設民営が8割、公設公営は2割程度になるのではないかと思います。
 ここで、中国の技術移転、あるいは技術を移転して、環境技術の移転ということになるんですが、中国という国はどちらにしましても技術レベルは既に宇宙ロケットを打ち上げたり、もちろん原子力発電もやっているようなところで、原動機、ボイラーあるいはタービンにつきましても国産性を持っております。そういった基幹産業と呼べる技術は既に獲得していると我々は見ておりまして、特に発電にかかわる、今ブームでございますが、発電タービン、ボイラーを含む製造技術、これは既に国内で使用する分については非常に体力があるであろうと思っております。ただ、こういった廃棄物分野の技術ということは経験不足でございまして、やはりエンジニアの不足ということが非常に顕著にあらわれております。今我々がエンジニアリング会社を立ち上げて、何とか現地化していこうという分野の中で、やはり環境技術に関連した技術者というのは非常に層が薄うございまして、この分野で何とか技術移転ができないかなということで現地のエンジニアリング会社を通しやっている最中でございます。
 問題点と課題ですが、技術の相互共有のあり方、私どもがプラントを実用しましたある分野は、これは自分たちでやると言って、例えば図面だけ欲しいとか、具体的な話をしたらそういうことがございます。それに対しまして、例えば製作図面とか、そういったものを例に挙げますと、それは当然ついてくるものだというふうに思っておりますので、その図面の価値への認識であるとか、そこへ含まれているノウハウへの認識であるとか、そういったことに非常に乖離がございます。そこが、いろいろなトラブルを起こしがちなところでございます。さらに資金面での投資活動に対する法令の未整備、ほとんどが采配、裁量主義でございまして、法律もいろいろな解釈がございまして、私どもは今エンジニアリングを立ち上げておりますけれども、そういったソフトを担当する会社ですら、なかなか難しい面がございます。やはり経営手法においては相当の努力を必要とするのではないかと感じております。
 今後ともそういった問題を解決するということになりますと、継続的な国際交流ということがやはりベースになって、相互が理解できてということが基盤になるのではないかということでございます。
 現時点で実行していることと言いますと、私どもは、今具体的な受注案件をベースにエンジニアリングの現地化への投資、あるいは投資することでの企業としてのビジネスの継続性を担保していきたいなと思います。そういった考え方でビジネスを展開しているということでございます。
 今、総括的に東、あるいは東南アジアの状況をちょっと述べさせていただきましたが、私どもの海外戦略の中のスキームといたしまして、日本の基礎、基盤技術というのがございまして、先ほど申しました環境エネルギー、廃棄物の処理、あるいはバイオマスを活用したリサイクルエネルギー、未利用エネルギーの活用ということでございます。3Rイニシアチブにベースを置いたリサイクル技術もその中に含まれており、それらのエンジニアリングソフト、あるいはそれらを流通させるビジネス、こういったものへの日本の基盤技術は移行していくのではないだろうかと。もちろん基礎的なものづくり技術の確保というのは、重要でございます。
 それと、右下に書いております東・東南アジア市場への潜在力、ここではやはり環境・エネルギーの市場というのは拡大してくるであろうと。それに対して、さらに廃棄物市場、あるいはバイオマス資源につきましては、非常に供給能力が大きい市場でございますので、それを活用したエネルギーへの技術移転、そういったものが必要だと。
 さらには、今私どもEU、中東欧を目指した事業分野も拡大してきておりまして、こちらには既にバイオマス、あるいは廃棄物に関連した、日本で得られない技術といいますか、そういったものも潜在的に持っております。そちらへの投資をすることによって、日本、EU、あるいは中東欧、このあたりとの技術をリンクいたしまして、東・東南アジアへの展開、あるいは中東欧もこれから廃棄物エネルギー分野につきましては、拡大基調の市場でございますので、それらに向かってグローバルな中での技術の活用等、移転、現地化、コストパフォーマンスの確立ということを目指した総合的なビジネス戦略を考えておるというような現状でございます。
 以上、15分でございます。

○浅野委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、10分程度ということでございますので、大変恐縮ですが、ご質問がおありの方は簡潔に質問だけお願いいたします。
 和気委員、どうぞ。

○和気委員 2点だけお伺いしたいんですが、1点はCDMの、いわゆる京都議定書の中で京都メカニズム、例えば中国プロジェクトとか、台湾プロジェクト、この辺のCDMの案件として何か可能性のあるようなものを模索しておられるのかが1点と、それからもう一つは、例えば中国へいろいろな形でビジネス展開をするときに、他の国の企業、例えば韓国の企業とか、あるいは台湾の企業とか、そういった他の国との企業の連携を通じて、例えば中国へ進出するとか、そういう可能性というか、実際におありになるのかどうか、その点だけちょっとお伺いします。

○武内(株式会社タクマ) わかりました。

○浅野委員長 質問を先に全部さしあげますので、その後にお答えください。
 廣野委員どうぞ。

○廣野委員 どうもありがとうございました。
 私の質問は、特に、対中国との関係なんですが、中国に対するいろいろな環境技術の輸出の問題、環境設備の輸出の問題という中で、一つ私自身、いろいろ気がついている点は、中国の場合には各省によってかなり省内の企業を優先するという、そういう政策をとっているものですから、それとの関係でどういうような問題にぶつかっているのか、そういう点。

○浅野委員長 青山委員どうぞ。

○青山委員 タクマさんの場合には、ボイラーという基幹技術をお持ちです。海外展開をしたときに、非常に大きい旧来からの基盤をお持ちだと思うんですけれども、そのことがどう活きているのか、お教えいただきたい。

○浅野委員長 関連することとしては、さっき韓国との関係で、それぞれ得意なところとおっしゃっていましたが、具体的にちょっとなかなか見当がつかないので、韓国はどういうところの部門が得意で、日本だったらどこが得意で、ジョイントの場合はどういうことができるんだろうか。この点もおふれいただければ幸いです。
 ほかにご質問はございませんか。小林委員どうぞ。

○小林委員 環境面だけで考えた国際協力ということと、環境ビジネス、これとの関連なんですけれども、国際協力の延長線上にビジネスがあると私たちは考えて、各企業の皆さん方に国際協力について協力してほしいということを声がけするんですが、ほとんどのところで国際協力はビジネスに繋がらないという解釈で、ほとんど協力を得られないというのが実情なんですが、これは別にタクマさんだけに聞く話ではないんですが、私ども兵庫県は、ちょっとタクマさんと関係があるものですから、どういうふうにそれを評価されておられるのかなというのをお聞きしたいです。

○浅野委員長 それでは、以上を簡単にお答えいただいて、あともしコメントの追加があれば、書面なりでいただきたく存じます。

○武内(株式会社タクマ) まず和気委員からのご質問でございます。
 CDMの展開でございますが、これは今、タイで部分的にゴムの木発電というのをやっておりまして。ただ、これもCDMで最初トライしておるんですが、なかなかタイ国政府の認知が得られませんので、認知といいますか、彼らもいろいろな行政的な面があろうかと思うんですが、自国内の資源を活用して、それをCDMに展開するということは、もちろんグローバル的には意味のあることなんですが、日本がCDMでやるCO2排出権を獲得するということについては、まだ彼らは国内でできることがあるのではないかという視点がございまして、なかなかCDMとして、将来もう少し時間をかければどうかわかりません。今やっておるのは、CDMを最初狙ってやった案件であるにもかかわらず、まだ獲得できていないということが一つございます。
 中国はCDMに対しましては鮮明な態度といいますか、一応現状を維持しておるということでございまして、前もちょっと向こうの政府の方にもお聞きしたことがあるんですが、CDMに展開できる未利用エネルギー源、こういったものは非常にあると思います。ですから私どもは、そういった分野での技術をスキームとともに持って行って、そちらで事業展開してCDMに繋げないかなという視点は持っておりますが、現実的に私どもがやっておる分野の中で、今CDMと直接繋がっている部分というのは、獲得した結果として得られたものはまだございません。ただ、可能性は非常にある。
 それから、中国ビジネスの展開……

○和気委員 他の国の企業とのコラボ、連携。

○武内(株式会社タクマ) 私ども、先ほどちょっとご紹介いたしましたが、台湾では、中国鋼鉄等、そういったところとの環境部門とのコラボをやっておりまして、それを中国で、あるいは台湾のコンサルタント会社もあるんですが、そちらとの協調の可能性はございます。特に中国につきましては、中国語が堪能でございますので、台湾につきましてはちろんそうでございます。その辺の協調の可能性はございますし、そういった話も出てきております。ですから台湾で蓄積したリレーションを持って、それで中国に乗り込むという可能性はございます。ただ、今のような中国、台湾の関係でございますので。企業ベースでは結構いける可能性はあるのではないかなと思っておりますし、そういった話もございます。
 それから、廣野さんの中国に対する各省内の展開、私ども今、天津と北京でしかちょっとプレイしておりませんので、そういった問題に特別、省内企業の融合とか、そういったことには直接的には今対面しておりません。物も中国だけではなくて、他国からも機器は海外調達しておりますので、今の私の経験範囲では、今のところ省内でのそういった阻害要因というのはまだちょっと感じていません。

○廣野委員 かなり、例えば上海でつくられた金とかの輸入についてはかなり関税をかけるんですね。国内でも関税をかけているんですね。

○浅野委員長 すみません、時間がありません。

○武内(株式会社タクマ) それから、小林委員の国際協力の……

○浅野委員長 ビジネスになるかということですね。

○武内(株式会社タクマ) 先ほども、ちょっとここに書いておるんですが、当然私どもの技術移転と申しますと、当然ビジネス展開を継続的に求めるということが基盤でございまして、それが唯一今実現できておりますのは台湾でございます。これは既に18年、台湾で我々はプレイしておりまして、私どもが納めた、あるいは他企業で納められたものに対するオーバーホール事業であるとか、アフターサービス事業であるとか、あるいは部分的な改造事業であるとか、そういった分野は、私どもがプレイを開始した時点に設立した会社が継続的にそれを維持しておりまして、それは100%子会社なんですが、そこで18年間、面々生きておると。技術移転をして、既に現地化が済んでおりまして、そこでプレイしてくれているという事例が一つございます。ただ余り大きくないんですけれども。
 当然、私どもは、資金、あるいは経営手法をどんどん資金を入れてエンジニアリング会社を設立して、何とかそこで我々の技術を使っていただいて、なおかつそこで現地化していただいて、これが技術移転だと思うんですが、そこでさらに何らかの基幹技術はやはり我々が保有して、あるいは開発という部分もあると思うんですが、そういったものでのビジネスの継続性を維持するという視点で、今、エンジニアリング会社に投資したり、いろいろなことをやっているんですが、台湾が一つの事例で、うまくいっただろうと思われるケースでございます。

○浅野委員長 青山委員から基盤的な技術についてご質問がありましたね。

○武内(株式会社タクマ) 基盤的な事業はボイラーでございます。

○浅野委員長 技術を持っておられることがどう生きたか、というご質問だったと思いますが。

○武内(株式会社タクマ) 今私ども、ボイラーにつきましては台湾に1つの会社、それから韓国に技術協力先が1つございます。ただ、韓国、台湾も、ボイラーの製造という分野につきましては、既にコスト高の分野になってきておりまして、特に台湾は既にコスト高になっております。韓国はかなり競争力をまだ維持しておるというような現状でございます。ボイラーにつきましては、今、私どもは日本でつくる分野はほとんどございません。フィリピン、インドネシア、あるいは東欧、こちらを視野に入れた製造ということを今トライしております。これはすべてコストパフォーマンスの問題でございますので、韓国はコストパフォーマンスを結構維持してくれているんですが、ボイラーにつきましては、そういったような現状でございます。
 それから、韓国でございますが、先ほど申しましたように、1990年、それから1995年ぐらいから日本企業も含めまして、基幹技術を持っている、都市ごみ焼却技術を持っておりますメーカー、欧州も含めまして、怒涛のごとく技術提携を各社といたしまして、それが10年間続きました。ところが2005年現在に至っても、なかなか廃棄物のビジネスというものが韓国では成長が鈍化しておりまして、また、反面、技術供与が終了しておるということで、韓国での韓国のプレイしておる企業が再編成を今しておりまして、各技術が入り乱れて使われておるというような現状でございます。既に韓国は、それらをエンジニアリングする能力は、その10年間でかなり確保して、獲得してきておりますので、韓国の場合は、技術提携という格好で技術移転がなされたというふうに解釈しております。今後は、日本でまた進められている処理の多様化、あるいはパイロシスの問題であるとか、あるいはさらなる高度の熱回収、そういった技術を単独に新たな枠組みで共同実施、共同実施というのはJIではございませんけれども、協同でやっていくというような格好になるので、むしろ技術移転というよりも、コンソーシアム・ベースとか、そういった格好の方が強くなるのではないかなと思っております。
 以上でございます。

○浅野委員長 どうもありがとうございました。
 では、次に株式会社同和鉱業の島田さんにお願いいたします。

○島田(株式会社同和鉱業) 同和鉱業の島田でございます。本日はこのような機会をいただきまして、大変ありがとうございました。
 今日は、貴金属リサイクル事業と関連環境技術の普及・移転ということでお話を申し上げたいと思いますが、専ら私どものアクティビティーは中国中心で行ってございますので、中国のお話ということで聞いていただければ結構かと思います。
 まず、貴金属、それから非鉄金属のリサイクルを一体どのようにしているのかということをご理解いただきたいということで、私どもの国内の例を示しております。こういった多様なリサイクルの原料を元にいたしまして、いろいろな処理拠点がございます。こういったところで、例えば前処理をしながら最終的に製錬所におきまして、電気銅や純金にするとかといったようなことをやるわけでございまして、結果的にここにございますような16種類の元素で回収するということをやっています。
 ぜひ知っていただきたいのは、こういった多様なものを処理するためには、いろいろなリサイクルのネットワークを使いながら処理をしなければならないということでございまして、後ほどご説明をいたします中国におきまして、私どももやりたいと思っておりますが、こういったリサイクルのネットワークを構築すること、これが非常に重要だろうと思っております。
 それで、リサイクル原料の周辺部分といたしまして、産業廃棄物、あるいは汚染土壌がございます。例えば低品位電子基板、こういったものにつきましては、逆有償になりますので、産業廃棄物処理の一環としていったん焼却をいたします。焼却をいたしますと、中に含まれております銅の品位が高まりますので、これを製錬所に持っていって製錬原料として扱えるというようなことでリサイクルをやれる。あるいは汚染土壌でも、例えばクレー射撃場の鉛散弾を含んだ土壌、こういったものも処理施設を介しまして鉛をリサイクルするといったようなことができるわけでございまして、リサイクルや、それから産業廃棄物等々の処理関連部分、こういったものの一体整備というのが重要になってくるわけでございます。
 今、リサイクルの世界は、中国を核といたしまして急速に変わりつつございます。従来、例えば日本であれ、東南アジアであれ、中国に持っていくための生産財としまして、例えば電子部品を大量に生産いたしまして、中国に行って組み立てをして、その製品を日本なり米国、欧州に持ってきているという流れであったわけでございます。そうしますと、基本的にリサイクルの原料になります各種スクラップというのは、日本ではプロダクションスクラップと使用済製品がスクラップとして発生をし、中国で多少のスクラップが発生をしておったと、こういうのが従来の流れでございますけれども、今後、中国の中で相当高度な生産財までつくれるような状況になってきており、プロダクションスクラップの急増が見込まれます。
 世界の産業構造の転換とそこに書いてございますが、米国の工場につきましては、既に20年から10年前にアウトソーシングということで中国に出ていった、あるいは台湾にいったん出ましたけれども、台湾の工場がさらに中国に展開を始めているというようなことでございまして、今、日本の工場もかなりの規模で中国に進出し、非常に高度なものをつくり始めているということでございますので、従来日本なり東南アジアなり、米国で発生しておりましたプロダクションスクラップ、これが中国の方で発生をします。さらに中国で、今、猛烈な経済成長、それに伴い一人一人の所得が上がっております。そういう意味で、使用済み製品スクラップが大量に排出されるということで、近い将来、中国が世界最大のスクラップ発生国ということになるであろうというふうに私どもは考えております。
 一方で、中国のそういったことで、旺盛な資源需要がございます。資源需要を満たすために、今、世界中のリサイクル資源、これが今、中国の方に引っ張られてきております。さらに、世界の鉱山開発といったようなことにつきましても、非常に彼ら自身も関心を持ってございまして、現実に中南米、あるいはオーストラリア等々に進出を始めているという状況になってございます。したがいまして、将来中国でリサイクルビジネスの大きな需要があるであろうというようなこともございまして、私ども今、積極的に中国展開を考えているところでございます。
 一例としまして、私どもがつくりました会社の概要ということでまとめてございますが、江蘇省の蘇州市というところでつくってございます。蘇州市は、日本のIT関連企業が非常に集中しておりまして、約200社以上ございますけれども、そういう意味で、私どもの仕事にとってスクラップ原料を集めやすい場所であるということでございます。それから出資形態としまして、私どもが90%、それから地元の会社が10%ということでございます。中国の法律では、特に100%ではいかんというような規制はございません。私どもとしまして、こういった許可をとるということで、ぜひ地元のお力添えが必要ではないかというような判断のもとで、10%の比率で持っていただいたということでございます。こういった仕事をする上で、非常に大きな問題といたしまして、日本の産業廃棄物関連の許認可に相当します、危険廃棄物経営許可、あるいは特殊固体廃棄物経営許可、これは環境保護当局から取得をするものでございます。
 それから、シアンの取り扱いをする必要がございますので、危険化学品経営許可、これは公安当局からの許可を取得するわけです。こういった取得に非常に手間隙かかると。こういったものをクリアしながらスタートをいたしてございます。
 ここの工場では、貴金属関係のリサイクルを主として行うということでございまして、2つのプロセスがございます。湿式処理工程は、例えば金メッキのついたようなものを王水、あるいはシアン系の薬剤で処理をしまして、最終的に金を電解回収をするというようなことでございます。これは、従来中国でも一般的に広く行われております方式ですが、公害防止に関してはいろいろ問題があるように聞いています。私どもはきちっとシアンの処理をする、あるいは発生するガスを処理するという意味で、非常に環境保全に留意をしました。公害防止に万全を期した設備を持って行ったということでございます。
 それから、乾式処理というのは、ロータリーキルンの中で、電子基板等々を焼きまして、中に含まれれている銅でありますとか、金の品位を高めた上で、製錬原料として製錬工程に送るというプロセスでございまして、熱分解設備によってリサイクルを行うということで、恐らく中国で最初のプロセスではなかろうかということでございますが、これは今建設中で今度の夏に完成する予定でございます。
 これは、原料・製品がどんなものかということで、ちょっと写真が小さくて見にくいかと思いますが、例えばリードフレームでありますとか、あるいはパッケージ基板でありますとか、電子基板、こういったものを処理する、これが乾式処理の対象になります。この写真は湿式処理工程で出てまいりました金99.9%、スリーナインレベルの金でございますが、これを加工して金の延べ棒にして出荷をするという格好になります。
 中国の金属リサイクルの状況ということで、冒頭申し上げましたように、銅でありますとか、鉛でありますとか、貴金属でありますとか、そういったものの製錬プロセスの連携がまず必要でございますけれども、それ以外に技術的にもさまざまな問題点がございます。先ほど委員の方からも出されましたような省を越えたような問題でありますとか、あるいは税金の問題でありますとか、そういった問題がいろいろあります。また、先ほど申しましたように、中国の貴金属リサイクル処理が環境に不適切な部分もあるというようなことでございまして、日系企業の場合は、中国の企業にはなかなか任せられない、きちっと処理してくれるところがなかなか付近にないというようなことで、工場内でそのまま抱え込んでしまっているといったような例もございます。
 技術的な面から見てまいりますと、例えば環境保全技術全体にいろいろ問題があるわけでございますけれども、特に熱分解等の前処理技術、排ガスを浄化する、排水処理を適切に行うといったような処理の技術、それからどれくらいの金属が含まれているかといったようなことを分析・評価する技術、こういったものは基本的にレベルが低いのではないかというように見ております。そういった中で、私どもが取り組むべき方向としてどんなことが考えられるのかということでございますが、一つは今申し上げましたようなリサイクル工程全般にわたりますような排ガス、あるいは排水処理技術、これは日本で一般的なものをそのまま持って行きましても、向こうの水準でいえばかなり高度なものになろうかと思います。
 そういった環境保全技術、あるいは先ほどタクマの武内さんからも少し話が出たわけですけれども、例えば焼却炉自体の製造技術はありますが、焼却炉を安定的に適正に維持し、運転していくというような点では不十分であるというようなことでございます。したがいまして、炉はあるけれども、停止をしてしまったという産業廃棄物焼却炉が現実にございます。
 最終処分につきましても、まだ不十分な点があろうかと思います。先ほど申しましたような環境分析、例えばダイオキシンの分析というのは、中国では基本的にはまだ数カ所でしか測定できないというような状況と聞いています。また一般的な測定装置等々も不十分であるというようなことでございます。
 将来の可能性といたしましては、先ほども申し上げましたような、いろいろな環境ビジネスを私どもは展開いたしたいというふうに考えておりまして、そのための活動を各地で行っているところでございます。ただ、中国で仕事を進めていく上で、やはり基本的な部分で乖離がございます。特にこういう環境関係につきましては、環境保全コストを負担するという考え方がないと、環境ビジネスもなかなか困難です。採算性を確保できないわけですけれども、環境保全コストを負担する意識はまだ希薄な状況ではないかと見ております。
 したがって、例えば逆有償で廃棄物を処理してもらう、そのための収集システム、あるいは家電リサイクルをするといったような回収システムを整備することが困難な面があります。加えて、技術体系が違うということですね。中国では人件費が安いということで、かつ熟練した人たちが、例えば廃プラスチックを種類ごとに分別というようなことで、99%近い選別効率で選別できるというのが普通に行われております。日本国内におきましては、機械等々使ってやりましても、とてもそんな効率化にはならない、かつコストがかかるというようなことでございまして、ただ、やはり中国においてやるためには、この部分を相当配慮したプロセスを考えていかなければいけないのではない。
 それから、教育・人材については、例えば従業員に対して基礎的な科学知識を教育することが必要です。さらに経験豊かな第一線技術者ということになりますと、全くいらっしゃらないということでございます。また、一般的には、懸念事項としまして、事業の収益性の確保、あるいは技術が不正に流出していくのではないかというようなところが懸念をされるということでございます。
 国が果たす役割について記載してほしいということで、簡単にまとめてございますが、一つは、私どもが出ていく上で、当然中国のいろいろな法律がございます。中国の法律は、日本も含め、先進国のいろいろな制度を組み合わせたような制度もございます。そういった法制度、技術基準といったようなところで支援をしていただく必要があるのではないかなということでございます。
 それから、中国の考え方といたしまして、今家電リサイクルでありますとか、あるいは危険廃棄物処理プロジェクトというのを国家プロジェクトとして整備をしております。この模範プロジェクトというのは、理想の拠点を整備しつつ、中に教育でありますとか、あるいは資格養成でありますとか、あるいは青少年に対する教育効果といったようなものも織り込んだプロジェクトでございます。したがいまして、先ほど申し上げましたようないろいろな問題点につきまして、こういった模範プロジェクトに対して支援することによりまして、効率的な協力がやれるのではないかなということでございまして、このあたり、少し考慮いただければありがたいのかなというふうに思っております。
 それから、途中でご説明申し上げました、スクラップの国際的な需給状況が、中国を核として非常に大きく変わりつつございます。したがいまして、国際資源循環の観点からも少し活用できるのではないかなということでございまして、今申し上げましたように、中国のリサイクルキャパシティーというのが圧倒的に不足しております。一方、日本国内におきましては、かなりのキャパシティーがございます。さらに、日本国内のリサイクル原料というのは、これから減少に向かっていくだろうということで、国内の有効活用ということも図りながら、こういった資源循環を行うことによって、日本から中国への人材育成、あるいは技術移転というような活用の仕方もできるのではないかなということでございます。
 これに関連して、中国の家電リサイクルにつきましては、本年中に法律をつくるというようなことで現在聞いておりますが、有価で古い電化製品を買った上で、それを修理できるものは修理して有価で売る、できないものだけ処理をしようというようなことでございますけれども、当初のスケールメリットがでない間工場運営費が大変になってまいります。このため、海外からの廃家電を輸入することによって、それをうまく活用して、経済的なメリットを出してやりたいという中国地方政府の考え方もあるようでございまして、こういった取り組みも有効ではないかなというふうに思っております。
 これは別のところでご説明しました資料でございますが、国際循環の観点から取り囲む方式としまして、先ほど申しましたような観点のほかに、例えば不適正移動の防止では、今経産省でありますとか、国土交通省でもいろいろな展開を考えておられますが、そういったこととも組み合わせまして、それぞれの強み、弱みを相補完するような形で、何かこういう仕組みができ上がれば非常におもしろいのかなということで考えております。
 以上、簡単でございますが、私のプレゼンを終わらせていただきます。

○浅野委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、先ほど同様に、ご質問があればまとめて伺います。
 いかがでございましょうか。
 高橋委員、どうぞ。

○高橋委員 5ページ目の下の方、[2]のところなんですが、我が国政府が果たすべき役割の模範プロジェクトに対する戦略的取り組みというところに対しての、何かいいお知恵があったらぜひお教えいただきたいということなんですが。これはやはり中国のような巨大な国を相手にしたときには、面でやっていっても大変ですので、やはりうまくいけばそれを中国の人たち自身が何々に倣えというようなことでやっていけるようになれば一番いいと思うんですが、問題は国際協力、特に日本との協力との場合には、そのプロジェクトでうまくいったときには、日本との協力ゆえにうまくいったというふうには、とても中国サイドとしては言えないんだろうと思うんですね。そうすると、模範プロジェクトを特定し、それに協力し、それが成功しそうになったら姿勢を低くしていくという芸当が必要になってくると思うんです。ところが日本の方では常に顔を見せるだとか何とかというのが、こういう協力のときの常のスタンスとして出てくるので、その間に非常に大きなギャップがある。そうすると、模範プロジェクトというのは、一方で日本に対して顔を見せるようなスタンスをとりながら、もう一方で中国に対しては成功しそうだったらローキーにしていくという芸当をするためには何が必要なのか、その辺りのお知恵があったらお教えいただけたらと思います。

○浅野委員 石田委員、どうぞ。

○石田委員 向こうで分析技術がやはり余り十分整っていないというお話があったんですが、実際にはこういうビジネスの場合、回収製品に対する担保として、そういう定量的な評価というのが非常に大事だと思うんですが、具体的に、特に中国の市場で、そういう計測分析した結果を担保していくシステムはあるのでしょうか。あるいはそういうことは、例えば日本に持って帰って分析されるとか、どこか分析できるところを探して、保障を依頼されるとか、そういうことを具体的にやっておられるのでしょうか。

○浅野委員長 ほかにご質問はございませんか。
 小林委員、どうぞ。

○小林委員 2点あるんですが、1点は、廃棄物という定義の問題なんですが、現在、たしか国際法上の廃棄物という考え方と日本の廃棄物処理法の廃棄物というのはずれがあるんですよね。そういう意味で、中国で言われる廃棄物と日本における廃棄物の解釈はやはりずれがあるんでしょうかという点、これはバーゼル条約とも絡んでくるんだと思うんですが、それが一点。それから同じ問題で、最後のところにありますいわゆる国際資源循環のイメージ、これが廃棄物処理法上、どういうふうに整理をされるのかなというのが、どうお考えなのかなということなんですが。

○浅野委員長 ここのご質問はなかなか難しいかもしれませんが、その手前のところぐらいまでご説明いただければ幸いです。

○島田(株式会社同和鉱業) それでは、最初、高橋委員の方から模範プロジェクトについてご質問がございましたが、中国の北京の環境保護総局の考え方としまして、家電リサイクルは今4カ所から5カ所、それから危険廃棄物処理プロジェクトは31カ所につきまして整備をするという考え方ですが、そこに外資系が参入をしてこういった仕事をやるという際には、必ずレベルを落とさないでベストの条件でやってくれというようなことが条件になろうかと思います。したがいまして、生半可な技術レベルというようなことではできないと思います。中国の場合は、模範プロジェクトとして国際水準の拠点をまずつくって、それから少しずつそれを普及していこうというような考え方でございまして、そういったことを前提としてやっていくとすれば、例えば人材教育でありますとか、そういったところで、日本に同様のところがあれば、そうしたところとのリンケージを考えるとか、そういう補完的な部分でやっていけるのではないかなと考えております。
 それから、石田先生のご質問の分析につきましては、私どもの蘇州の会社の場合は、分析設備は整備をしております。例えば、ICPといった測定器につきましては、向こうの大学でもまだほとんど入っていないというような状況でございまして、私どもの場合は、日系企業の関係はきちっと分析して対応するということで現地で行っております。それから中国系の会社につきましては、分析結果をもとにスクラップの価値を理解をするという慣習はございませんので、一目幾らというようなやり方をしてございまして、そういう意味では先ほど申しましたような商慣習というのが全く違っているということでございます。
 それから、小林先生の廃棄物の定義は、日本と多少違います。中国の場合は、基本的にはバーゼル条約の考え方といいますか、それに沿った流れという格好になろうかと思います。それから、国際循環においての前提条件としまして、バーゼル条約にのっとったやり方というのは当然ですが、現実問題としてバーゼル条約の手続をきちんと踏んだ格好で、中国から多少ですけれども、貴金属関係のスクラップが出ているというような事例もございますし、そういったことで、越えられないという部分ではないですね。したがって実績を積みながらやっていくと、現実的な太さのパイプになっていけるのではないかなと思っております。

○浅野委員長 ありがとうございました。
 役所が想定しているよりもはるかに現実の動きの方が早いようです。日本に廃棄物が輸入されることはまずないだろうという前提で政策体系ができてしまっているのですが、どうもそうでもないらしいということがわかりました。
 時間が限られておりますので、ごく簡潔にご質問ください。

○廣野委員 よく議論されているのは、知的所有権の問題ですね。貴金属リサイクルとか廃棄物処理とか、これはやはり何らかのパテントを持っているんですか。それで、もし持っているとしたら、利用について中国でどういうふうな処理をしているのか。

○島田(株式会社同和鉱業) 先ほどご紹介した部分につきましては、パテントは持っておりません。ただ公害防止等々の関係につきましては、当社独自のノウハウを持っております。中国の知的所有権の保護の関係につきましては、思っているよりもしっかりしているのではないかという見方もしていまして、別のもので保護すべき部分については、中国の方で今手続を進めている部分もございます。

○浅野委員長 ありがとうございました。
 それでは、時間が限られておりましたので、十分にご意見を伺うことができませんで申しわけございませんでした。これから後は、委員の皆様方の中からご説明いただきたいのですが、時間がありません。身内のよしみでお許しいただくこととし、まず石田委員、それから長谷川委員に先に説明していただいて、質疑を二人分まとめて行うという形にさせていただきますので、よろしくお願いします。

○石田委員 それでは、私の方から環境測定技術における国際貢献という形で報告させていただきます。
 間接的にも、直接的にも、考えてみますと、分析計測というのは非常にベーシックな技術でございまして、産業のマザーツールと言われるぐらい、非常に幅広いわけですが、ここでは特に直接的に環境計測に関わるところでお話しさせていただきたいと思います。
 大体大きく分類しますと、海外にいろいろODA国際協力として輸出されているものが手分析装置、あるいは簡易測定装置、それから研究用の計測装置、先ほどのICPなんかも含まれるわけですが、それに加えまして、常時観測ということで、大気観測、河川、海域等の水質汚濁観測装置、それに加えまして、土壌等もありますが、これは今後測られる分野と思われます。それから4は固定発生源ですね。工場のボイラー、発電所等から出される排ガス、これらの固定設置形、可搬形の装置、それから移動排出源、これは自動車の排ガス測定で代表されるものと思います。
 これは、今まで時間がなくてすべて調べ切れていないんですが、何社さんかのデータを入れさせていただいて、今まで出た実績例ですが、研究室用の計測器で、緑色で示す国に、こういうところに一応ODAで出されているということでございまして、設置の状況ですが、雰囲気的には、こういうふうな、これは少し古いですが、モンゴルの例です。それから、このような可搬型の水質計測器、こういうのもよく使われているということで、特に湖沼関係に広く使われていると思われます。それから、先ほど示したガス、液クロ、イオンクロマト、GC/MS等のこういう機器がラボに設置されているという状況にあります。
 赤色で示すところが常時用の監視計測システムでして、これも非常に世界じゅうに広がっているわけで、すべて拾い切れていないと思います。これはいろいろな理由があるわけですけれども、そういうことで常時の監視用システムというのがかなり広く使われていると思われます。
 これは、こういう大気の測定局、それから大気の移動測定車の例、これは東ヨーロッパの関連で、特に弊社から入れさせていただいている装置でございます。こういうふうなネットワーク、こういうものも我々の仕事の一部としてやらせていただいております。
 それから、これは工場のいわゆる固定排出源からの分析装置ということで、こういうものが民間のテレメータで繋がれて、排ガスが常時監視されています。それから、左側にありますような移動して測れるような機器も多く輸出されております。
 それから、ブルーのところが自動車排ガス測定システムでして、今までご説明申し上げたのは、日本の国としては非常にシェアが低うございますが、自動車排ガス測定に関しましては、一応世界で80%のシェアということで、世界のデ・ファクト・スタンダードになっています。ここに挙げさせていただいている国は、どちらかというと政府の機関で使われているということで、ほとんどが自動車メーカー、あるいは関連の部品メーカーさん等で使われていまして、世界中で非常に多く使われております。もちろんトヨタさんにも、たくさん使っていただいております。
 ということで、一つのテストラボの一例ですがこういう形で、ラボの中で自動車をある一定の条件で走らせて、そこから出てくるCOだとか、窒素酸化物、あるいは炭化水素等をはかるという装置でございます。
 測定の目的ですけれども、環境測定がODAの対象国で、環境政策の基本事項として当然位置づけられているということは測定装置を納入するに当たって重要であると思われます。その上で、やはり計測技術と政策が一体となって事業が推進できる体制がないと、なかなか効果が得られないと言えるかと思います。その中で重要なのは、それぞれの国に合った、やはり測定の目標というものをきちっと法の整備との関係で明確にすることで、行政面の指導も非常に重要です。ただ単に高精度の製品を入れるということがその国の環境行政に非常に有効かというと、必ずしもそうでないということで、測定の精度を決定するということは非常に大事な項目でございます。
 それから、そのために当然のことですけれども、その精度を維持するための諸施策というのが非常に重要でございまして、実はこういう部門がODA等の仕事では十分サポートし切れていない部分ではないかと思います。
 測定値の公的な計測結果を常に正しく出すため、それをいかに継続、そして普及させるかということがこの中の取り組みで最重要な課題ではないかと認識いたしております。
 それから、当然測った結果のデータの評価、その確定がまた一方で非常に重要でございます。観測データがベースとなって、結果的に環境行政、各地域へのいろいろな環境データの提出、公開にともなって、新たな施策を順次打っていくというふうなベースとなる必要があるわけですので、こういう点と、ここまできちっと体制が整備できるということが、ODAの作業の中に入っておく必要があるのではないかと思います。
 そういうことで、環境測定というのは、当然のことですが、継続、そして普及というのが非常に重要であるということは言うまでもありません。
 従来の我々の取り組んできたODAのイメージなんですが、実はODA関連の仕事をやって、せっかく何人かその仕事の初めのときには教育されて、装置も動かしてくれるんですが、少し技術レベルが上がると、すぐほかの仕事にとられてしまって、継続した環境計測に対しては手薄になってしまう。もう一つはODAの予算が、やはり測定装置を入れるに当たって、場合によっては1年間だけの運転の経費というふうなことで打ち切られるということですね。その後の、保守とか人材の確保というものが非常に難しくて、実はそのようなサービスメンテナンスの問題は全部メーカーに戻ってくる。場合によってはそれを納入したメーカーさんの信頼性を落としてしまうということもあって、次の話があるときには入らせていただけない、実はそういうことが欧米のメーカーと順繰り、順繰りで起こっているわけですね、ODAの世界では。どこかでやはり断ち切って、もう少しきちっと信頼のあるサポート支援をできる環境を整えていく必要があるのではないかということであります。当然相手国のオーナーズマインドというか、いわゆる自主性というのが非常に重要でありますが、この辺についてもそれぞれの国の状況によって、十分援助は得られないということも現実の状況ではないかと思います。
 それからもう一つ、冒頭に示しましたような、非常に高度な研究室用の計測装置、特にそういうものは微量の有害元素とか、そういうものの測定に使われるわけですが、今さっきのお話にもあるとおり、ほとんど利用できる技術者が育っていないということで、一応我々が見学に行ったらきれいに磨いて動いているようには見えるのですけれども、ほとんどの場合動いていないというのが現実ではないかと思っています。
 特にこういう分析の場合は、手分析からちゃんと理解して積み上げた経験が必要だということで、そういうものをきちっとフォローしていく仕組みがないと、結果的にいろいろな意味で宝の持ちぐされとなりますし、維持経費も大変だという状況になります。
 そういうことで、我々はいろいろやってくるんですけれども、正直それをやったという喜びとか実感というのがなかなか得られないという、これは我々自身の取り組みの問題もあると思うんですが、ただ唯一、クウェートに納入した、これは我々の計測器だったんですが、女子学生が実はちゃんと動かしてくれていまして、ときどき思い出したように部品の要求がヨーロッパの我々のオフィスの方に来るのです。そ特に湾岸戦争で油田が破壊されたとき、SO2の濃度が大きく上がったデータを送ってきてくれたのですが、これは非常に感激させていただいた一成功事例ではないかと思います。いずれにしても、いろいろなルートがございまして、なかなか我々、メーカーサイドで全体の像が正しくやはりつかめない。後どのようにフォローしていったらいいかというようなことがなかなか難しい状況にございます。
 そういうことで、環境計測の国際協力におけます課題ということで少しまとめますと、もう一つ課題としては、こういう環境計測の場合、認証制度というのが諸外国にはございまして、EPAだとか、TUVとか、中国もSEPAがやっております。その中で日本は環境計測器に関しては認証制度がないということで、実は今の計量法だけでは世界に持っていけないという事情があり、そういうこともあって、実は連続モニターは非常に日本の海外でのシェアが低いというふうなことも言えます。認証取得には非常に時間とお金がかかるわけです。自動車の方は、たまたまデ・ファクト・スタンダードになっているということで、不思議なことに認証制度も逆にないんですね。そういうことで、世界的に普及してしまっているので、余りそういう問題はないんですが。せっかくそういう協力をするにしても、これを日本がやることがいいかどうかというのはまた別の課題ですが、そういう問題があると。それから、精度管理、維持管理者に関してもなかなか技術の伝承が行えないという課題があります。
 それともう一つは、標準物質がなかなかサポートしていけないということでございます。これも大きな課題ではないかと思います。それから、先ほど申し上げましたいわゆる連続的に維持管理していくための予算とか体制、それから検証を行う体制、さらにはやはり人の問題が一番大きくございますので、この辺の人の支援、強化、活性化というところで、どういう形の支援ができるかということも一つ課題として考えていく必要があるのではないかと思います。
 それからもう一つ、これは我々の事情なんですけれども、ODA案件を取りまとめるのは商社さんだとか、コントラクターさんがおられて、計測器はどうしても後からついていくというような形でございまして、できれば現在私もやらせていただいていますけれども、分析計測関連のメーカーの集まりの技術協会のようなところで、こういうODAへの積極的なコンサルだとか、トータルとしての計画をサポートできる体制を整えることができると思いますので、ぜひご利用いただければというふうに思っています。
 そういうことで、それぞれの会員の各国におけるアクティビティーを通じて、いろいろなサービスが提供できるのではないかと考えております。やはり成功のポイントとしては、ODA推進に精通したリーダーとちゃんと話をした上で、特に長期的なバックアップ体制に重点を置いた施策、交渉というのが非常に重要ではないかということです。ぜひ環境計測が、環境行政の中でかなめであり、ODAによる投資が非常に貴重なリソースということを認識し、その損失が起こらないような取り組みをぜひ目指したいと思っています。
 以上でございます。

○浅野委員長 どうもありがとうございました。
 どうもお聞きしていますと、この分野は昔からの我が国のODAの問題点がそのまま集中的にあらわれているという印象です。
 大変申しわけありませんが、質疑は長谷川委員のお話を伺ってからまとめてお願いいたします。

○長谷川委員 それでは、自動車メーカーの環境技術ということでお話をさせていただきます。
 現在、世界中では7億台以上もの自動車が生活や産業の場で使用されておりまして、その普及は今後も発展途上国を中心に広がっていくと予想されます。そのような観点からもこの環境技術についてお話をさせていただきたいと思います。
 本日は、まず自動車産業界の行動指針を少し触れさせていただいて、あと環境負荷と自動車技術の仕分けた考え方を述べさせていただきまして、それから少し個別技術の主な例を紹介させていただきます。ハイブリッドですとか、DPNR、それから交通流を中心としました走行距離あたりの二酸化炭素、NOxの削減のこと、車検制度のこと、そして今後、途上国への技術移転について考えましたことについてお話をさせていただきます。
 これは読み上げませんけれども、日本自動車工業会と自動車メーカーは、資料に記載しておりますような行動指針とを掲げ、環境への負荷の少ない製品を通じて、よりよい社会の構築に努力をしているところでございます。
 そういった中で、環境負荷と自動車技術につきまして、少し整理をしてみた次第です。縦には、二酸化炭素を中心とします気候変動、それから大気汚染、化学物質、リサイクル・廃棄物というふうに仕分けまして、横の方に、開発・設計分野、実際の自動車単体の技術、それから生産分野、すなわち工場での技術、使用段階での技術、使用済み段階の技術ということで、仕分けました。
 まず開発・設計分野で、気候変動、二酸化炭素、燃費の向上という観点で申しますと、詳細は別紙でお示ししますが、ハイブリッドなどの技術がございます。
 別紙に先にいきますと、自動車の燃費向上技術としましては、エンジンの効率の向上ということで、熱効率の向上で、リーンバーンとか直接筒内噴射、可変機構とか、摩擦損失の低減とか、あと空気抵抗の低減、車両の軽量化、ころがり抵抗の低減、駆動系の改良などいろいろあります。そのほかに、電気パワーステアリング、アイドリング・ストップ、ハイブリッド車などがございます。
 前ページに戻りまして、大気汚染では、三元触媒ですとかDPNR、NOx吸蔵還元触媒などがあったり、化学物質では、鉛、水銀、六価クロム、カドミウム使用量の削減の技術、それからリサイクル・廃棄物では、解体性の向上、リサイクルしやすい材料への変更などがあります。
 生産分野でいきますと、上から非稼動時の電力消費量の低減する技術、グリーン電力の購入とか、大気汚染では、VOCの抑制-ボディ塗装の水性塗料化をしたり、また排煙脱硝装置をつけたり、化学物質のところでは、PRTR対象物質の低減、それからリサイクル・廃棄物では、水資源の節約、ゼロエミッションに向けた廃棄物の低減の技術などがございます。
 使用段階のところになりますと、交通流の改善による二酸化炭素の排出量削減ですとか、NOxの削減、それからエコドライブ、後付けアイドリング・ストップ、また点検・検査・メンテナンス、車検など、このあたりが二酸化炭素排出削減の技術というふうに考えております。あと、大気汚染のところでは、燃料性状の改善ということが必要な技術となってまいります。
 使用済み段階のところでは、フロンの回収・破壊、それから化学物質やリサイクル・廃棄物の項目では、解体技術の開発やリサイクル技術の開発といったようなことが求められている次第でございます。
 ここで赤く示しておりますところを少し詳しくご説明してまいりたいと思いますが、個別技術の主な例として、まずハイブリッド・システムを説明いたします。これはご存じの方もいらっしゃると思いますけれども、ある負荷状態まではエンジンが止まっており、負荷が高くなったときにエンジンが回りはじめます。そうすると、必要なエネルギー量が不足するので、この不足しているエネルギーをバッテリーから供給させます。定常運転のときはもう少し効率のいい運転状態でエンジンを回しておきます。そうするとエネルギーが余るわけで、それをまたバッテリーにためる。減速のときは、今までの車は運動エネルギーを熱エネルギーに変えて車を止め、その熱は、通常は、大気中に拡散しているわけですが、ハイブリッドシステムの場合、それを電気エネルギーという貯蔵・再生可能なエネルギーに変えて一時期バッテリーにためておくわけです。これにより、トータルのエネルギー、エンジンは最高効率でしか動きませんから、少ないエネルギーで大きな必要エネルギー分の仕事をさせるという、技術です。
 エンジンとバッテリーが補完し合って、相乗効果を上げて動くのがハイブリッド・システムということであります。
 そうした中で、ではハイブリッドは大変いいから、世界中でこれを普及すればいいではないかという話になりがちなわけですけれども、やはり新しい技術というのは高くつくわけでございます。それで、この私どもの試算で、ごく普通のガソリンエンジンの車からハイブリッドの車、電気自動車、それから燃料電池車というふうに見ていきますと、この二酸化炭素の削減率、燃費はどんどんどんどん右の方へいくとよろしくなるんですが、そこでコストアップが出てくる。これを技術がますます開発されていって、もっと低いコストで生産できるようになれば、世界中に普及できるわけですけれども、なかなかそこに至るのに時間がかかってくるわけですから、やはりお金のかかる新しい技術、特に二酸化炭素の排出など、どこかの地域の環境問題として、地域的に解決しなければいけない大気汚染のようなこととは違いまして、グローバルにトータルで見られる二酸化炭素などに関しましては、まず市場原理が働きまして、お金持ちの国でこのような高い車がまず売れていき、どんどん新技術のコストダウンの方向へ進めていくのが好ましいのではないかというふうに考えております。
 それから、排気ガスに関しましては、このDPNRというシステムがございます。Diesel Particulate - NOx Reduction Systemの略なんですけれども、PMやNOx、炭化水素、一酸化炭素を一つの触媒で同時に低減していけるもので、DPFというのは、ディーゼル・パティキュレイト・フィルターなんですが、これにNOx吸蔵還元型三元触媒をくっつけて使うものでございます。信頼性と量産性にすぐれたシンプルな構成ではあるんですけれども、そして燃料添加剤も不要なんですが、ただしコモンレールによる燃料噴射の電子制御が必要だったり、燃料中の硫黄分が50ppm以下であることが必要というようなことで、世界中のどこにでもDPNRが今すぐそのまま持っていけるというようなわけではなくて、やはり燃料性状などのことがきちっとしていないと、DPNRを途上国に持って行っても使えないというようなことがございます。
 そして、車単体の技術も大事なんですけれども、やはり交通流がきちっとうまく動いていかないと、幾ら固体の燃費がよくても効率が図れません。これは、時速10キロのときに排出いたします二酸化炭素やNOxの量を100としますと、これが時速20キロ、時速30キロになったときにどのように低減されていくかという図でございまして、やはり固体の技術とそれからこのような交通流のうまい流し方と、それからお一人お一人の車の運転の仕方の三位一体が整ってこそ、二酸化炭素やNOxの排出の低減が得られるという例を示しました。
 それから、車検制度についてちょっと触れさせていただきます。車検といいましても、一般的には、定期点検と継続検査をあわせたものを日本では車検と呼んでおりまして、これが法的に定められております。検査といいますのは、その時点で保安基準に適合しているということで通るもので、これだけですと、今日は大丈夫だけれども、明日はひょっとしてその車が安全かどうか、それから環境に優しい車であるかどうかというのが分からないというようなことがあります。定期点検といいますのは、自動車各部の劣化や磨耗の度合いを確認しまして、必要な整備を行っていって、次回の点検まで安全に、また環境に配慮して運転できるようにしておくということです。
 車は、これはイメージ図なんですけれども、新規購入されましたときから時間を経るにしたがって、何もせず、整備を未実施の場合は、どんどんどんどん車の品質、環境保護対応、排気ガスの排出対応、安全性も落ちていく。これを定期的に点検・整備をすることによって劣化を緩めていくことができる。世界中に、定期点検と継続検査をあわせて車検というふうに言っているのは、日本が稀な例だそうでございまして、欧米でも検査というのはあるんですけれども、それから途上国でも検査というのはあるんですけれども、検査と点検が一体化されていないそうです。これが日本のように検査と点検とが一体化されていきますと、車のよりよい安全性、環境保護を目指した走行が期待できるということになります。
 私ども、以上のような観点から本日の途上国への技術移転について考察いたしました。もちろん私たちはグローバルに車を製造・販売させていただいておりますので、先進国も途上国も同じ観点で開発もしているし、生産もしていると言えます。そういう中で自動車会社は各社、連結ベースで対応しておりますので、世界には大ざっぱに申しますと、10とか12社の自動車会社があるという中で、このような技術開発、それから工場での生産技術につきましては、民間による対応が可能ではないかというふうに考えております。大気、それから二酸化炭素の排出基準の適切な誘導というのが大事で、それで進めば、先進国の技術のノウハウを途上国に移転していけると。そして、そのためには、大気の状況の把握というのが大事でございまして、大気モニタリングやシミュレーションをしていって、適切な自動車技術や適切な燃料を選んでいけるようにしていくのが大切といえます。例といたしまして、JCAPというプロジェクトがございます。これは石油業界と自動車業界が共同して実施しているもので、大気改善のための自動車燃料等の技術開発プログラムというものです。こういったような手法が途上国でも実施されていって、そこで適切な自動車技術や燃料が取り上げられていくのが望ましいかと思います。
 そして、使用の段階で、先ほども強調しておきましたけれども、点検や検査、これをきちっとしていくことで、とりわけ自動車の保有年数の多い途上国では環境対応がしていけるのではないかというふうに考えております。測定や分析をする機器の寄附ですとか補助とか、それからODAなどを用いて、こういうことをきちっと途上国に伝えるようにしていっていただいたり、そしてちょっと青字で書いておりますのが、お手元の資料を画面では少し修正した箇所がありますが、〔注記:資料(p11)修正前:自動車・生産技術者等人材育成(研修、教師派遣)→資料修正後:自動車整備メカニック等の人材育成(研修用テキスト、教師派遣)〕
 そういうことを実施できる自動車整備のメカニックなどの人材の育成や、人材育成に用いられます研修用のテキストや教師の派遣、こういったようなところにODAが使われていくと、非常に国際協力が推進されていくのではないかと思っております。
 交通流の改善のところでは、やはり信号管制ノウハウ、それからITS(インテリジェント・トランスポート・システム)こういったようなノウハウが自動車産業界だけではなかなか移転できないものですから、政府の援助によりまして、技術移転されていくことが大変望ましいのではないかと思っております。
 それから、燃料性状の改善ということで、これはやはりグローバルに基準を調和させて、世界中に環境保全の施策ができていることが重要で、法整備、名ばかりでなくて、きちっとした法整備がなされていくようなことが望ましいかと思っております。
 使用済みの段階では、やはり実態調査の後に実効のある実施、すなわちリサイクルが可能ということで、日本が今年開始いたしました自動車リサイクル法などの例もございますので、実態をよく知ってからこういったようなことに着手していけば実効が上がるのではないかと思っております。
 以上、簡単ではございますが、説明をさせていただきました。

○浅野委員長 どうもありがとうございました。
 長谷川委員は、大分今日は抑えて発言をされているようでありまして、本当はまだトヨタはいろいろありそうな気もするんですが。
 それでは、今、石田委員と長谷川委員お二方からご説明いただきましたことについて、ご質問がありましたら、どうぞお出しください。
 いかがでございましょうか。
 それでは、まず廣野委員からどうぞお願いいたします。

○廣野委員 石田さんの説明に対する質問ですが、どうも聞いていると、先ほど委員長がおっしゃったように、通常のODAのいろいろな不満的なことが非常にあるんですが、ひとつお聞きしたいのは、ODAでやるこういう測定技術と、一般の実施によってやるものと、やはり2つあると思うんですが、やはり基本的にいわゆるODAから商業的なマーケットへという、そういう方向への転換が必要だと思っているんですが、その点いかがでしょうか。

○浅野委員長 高橋委員は、石田委員に対するご質問でしょうか。
 どうぞ。

○高橋委員 この9ページの上のODAのイメージというところなんですが、この測定機器は、主に私が今までこの分野のODA評価等々で関係した経験からしますと、いわゆる環境センターアプローチという、日本が得意としている分野の中のコンポーネントとして非常に大事なのはわかりますが、私が見た中で非常に大きな問題があるなと思いましたのは、環境センターのようなものをつくる話をしている段階ですと、これは政府セクターでやって、したがってODAでこれを行うと。ところが途上国はもうこの十数年、それから今後、さらにどんどんどんどん民営化していくと。そうすると、この環境センターが実際に機器も含め稼働し始めると民営化していくと。それで、自分で勝手に技術を買って、民間の商売を始める。それで、こういうことをどう考えたらいいんだろうかというような問題が出てきたと思うんですが、そういうことを既に経験しておられると思いますので、今後、恐らく日本はこの環境センター方式というのは得意だと言っている分野ですから、何らかの修正をしつつ、また展開していくことになるのではないかと思うんですけれども、環境機器という側面から見ると、一体そういう状況というのはどういうふうに考えていったらいいのか、その点のお知恵があったらよろしくお願いします。

○浅野委員長 小林委員も石田委員へのご質問ですか。

○小林委員 石田さんに質問ですが、先ほどのお話の中で、分析技術の移転というのは難しいというお話の中で、私どもも、もう10年以上大気の分析の技術指導をやっているんですが、指導を受けた人が帰って分析をやっておられない。また、もしやっていても、その人が次に変わられたときに、その次の人に全く指導されていない。ずっと繰り返しになっているんですが、その辺同じなのか、それに対してどうしたらいいのか。これは私どもJICAベースでやっているんですけれども、なかなかうまくいっていないという状況がございます。その辺、何かアイデアがあったら提案したいなと思うんですが。
 それから2つ目が、先ほど分析機器の認定制度がないというお話があったんですが、私個人的には、その分析機器ごとの技術者、取り扱い責任者の認定制度もないんですよね。これは逆にいうと、民間ベースで、例えば分析機器、メーカー側で何かできるのではないかなと思うんですが、その辺はいかがなんでしょうか。

○浅野委員長 ということですが、さて、石田委員、質問の趣旨はご理解いただけましたでしょうか。なかなか理解しにくい質問であったかもしれませんがよろしくお願いいたします。。

○石田委員 まず我々の会社としては、ODAの比率は非常に低うございます。売上全体からいくと1%ぐらい、いま弊社が大体1,000億弱でございます。それ以下かもしれませんね。その年によってかなり違います。この分野だけでいえばもう少し比率が上がると思いますけれども。
 それから、民営化の課題なんですけれども、これは日本の話というよりは、相手国という意味ですね。これは非常に難しい課題でして、やはりそこまで踏み込んで、我々がそこまでやりますということがなかなか言えない状況にあるというのが一般的ではないかと思います。国にもよるんですけれども、非常に距離があって届かないところというのはほとんど我々の場合、ノータッチになってしまうんですね。またインドネシアとかタイとか、比較的しっかりした形態ができているところは、我々の出先とか、そういうところはローカルの政府機関というんですか、そこの自治体の方と保守契約を結んで、そういう維持管理をするという形で、それは民営化ではなくて、委託されているという状況ではないかと思います。
 それから、小林委員の方のご質問は、非常に難しい課題でして、我々の方でできることというのは、やはりとにかく近くにあるところは我々はそういう形で継続した技術セミナーとか、そういうことを実行できるんですが、とにかく手の届かないところでのそういう継続性というのはいまだに課題でございまして、これからの課題ではないかと思います。それから認定制度につきましては、もちろん今ご提案のような内容のものもやろうと思えば多分できるんだとは思うんですけれども、まずその先に、各国が環境機器について認定を認め合うことができればと思います。半年も1年もかけて製品の性能評価をしたり、いろいろなことを自分のルールでやって、やっと市場に出せるというふうなことでして、その認定がないとほかの国例えばアジアの国に持って行っても、結局ヨーロッパのODAが先に入られるとか、その繰り返しになっていますので。たまたま我々はヨーロッパで営業活動ができる状況にありますから、そこから逆にヨーロッパのODAでそういう国に支援できるというケースはあるんですけれども。これでは、やはりこの事業ではなかなか正直儲からないということだけははっきりしておりますので、どちらかというとボランティアに近い形になっているということはご理解いただければと思います。
 ちょっと雑駁な答えになりましたけれども。

○浅野委員長 これは一言で簡単に理解できない面もあって、そもそも測定ということ、それ自体が直接に援助のターゲットになっている場合と、大きなプロジェクトの中にそれが入り込んでいる場合というのは、やはり違うんでしょうね。

○石田委員 そうですね。

○浅野委員長 しかし、技術者をしっかり育てておかないと、いくらパッケージの中に入れておいても動かないというのはおっしゃるとおりだろうと思うので、その辺のところは、むしろプロジェクト全体を考えるときに、ハードだけではなくてソフト面をきっちり中に組み込んで、それをプロジェクト化してやればかなり違うということになるのでしょうか。

○石田委員 例えば最低5年とか、10年のロングタームでどれだけやはり満足な措置ができるか。向こうの国がどれだけ出せるのかとかというふうな、やはりその辺はある程度評価しておく必要があると思います。

○浅野委員長 それと、例えばJICAの研修の場合には、技術者を養成するというプロジェクトがあって、それで技術者の人を連れて来るんだけれども、その養成された技術者が帰って、どこでどういうものと実際直面して仕事するのかを関係なしに、技術養成だけするものだから、結局その人が身につけた技術は具体のプロジェクトとは繋がらなくて、養成された人は大抵幹部職員か何かになって、デスクワークなんかをやって全然現場に行かないとか、場合によっては大学の先生になってしまうとか。それが切れてしまっているところに問題があるんですね。

○石田委員 そうですね。我々も何らかの形で一旦納めた責任という意味では、全部トレースしないといけないと思うんですが、やはり費用の問題とか人の問題、なかなかやはり最終的な状況というのは把握できていないというケースが多いです。

○浅野委員長 さっき、商社が窓口になるために情報がきめ細かく計測のメーカーの方に流れてこないとおっしゃいましたね。

○石田委員 そこでビジネスが切れるんですね、ぽんと渡したら。その後は本来、売られたところはそういうメンテナンスとかも多分契約もされてあるんですけれども、部品も言ってこないし、何も言ってこないから、多分動いていないのかなと、思ったりしています。

○浅野委員長 結局だからそれは詰まるところ、計測機器を入れるという発想でしかないものだから、計測というソフトそのものがそもそも商品なんだという意識を持てば違ってくるということですね。

○石田委員 むしろ後ろの方ですね、こちらの方を重点的にやっていかないといけない。

○浅野委員長 この辺のところは恐らく何もODAに限らず、自治体のプロジェクトを見ても、ソフトは全然予算がないし、動かないということと同じことが起こっているわけでしょうか。

○石田委員 それと、モニターというのは、どちらかというと生産性とか、そういうものをサポートするものではないですよね。やはりモニタリングで、排ガス計測装置というのはエンジンの性能を上げたり、燃費効率を上げたり、経済的にもプラス効果に働くのですが、同じ計測でも単なるモニタリングでは取り扱いの優先順位が落ちてくるといいますか、そういうふうなある程度宿命ではないですけれども持っています。

○浅野委員長 宿命という言葉はどうかとも思われますが。問題点ははっきりしてきました。
 和気委員、どうぞ。

○和気委員 今の議論に関係して、今地球観測サミットを契機として、特に日本の場合はアジアで、非常に伝統的な観測方法も含めて、あるいは最新の観測も含めて、現地でどんな観測が行われ、どんなモニターが行われてきたか、とりあえずまずざっとサーベイして、そしてそれを地球規模の環境対応なり、あるいは地域、アジアレベルでやるとか、そういうのが一応動き始めて、日本では文科省と内閣府が予算を含めてやっているわけですね。そのときにとても大事なのは、観測したデータがどう使われていくのかと、ユーザーサイドが見えるか見えないかで、随分観測サイド、する側のモチベーションも違ってくる。したがって、例えば観測機器がODAである国に行ったときに、まずモニターをする人がいて、このデータがどういう形でどういうふうに利用されるのか、つまり国内だけではなくて、もっとアジアレベルとか、地球規模、大げさに言えば、そういうものが利用されるんだということのシステムの中の一部としての認識があれば、もうちょっと地域レベルのいろいろな観測のアクティビティーがもっと価値が出てくるのではないかというような議論があったんですね。
 したがって、そんなにグローバルなスタンダードで高度のモニタリングでなくても、伝統的なものでも十分に意味のある観測もあるので、できるだけその仕組みを、a system of systemsという、それぞれ伝統的な観測の方法とか、測定方法もしながらやりましょうという方向らしいので、ぜひ今のような測定機器をODAにしろ何にしろ出す場合には、そういう全体のスキームの中に入っていかないものなのかなと思いつつ、今ちょっと難しい話のようでもあるし、何か新しい動きがあるような気もいたしますので、ちょっと今感じたことだけ。

○石田委員 今環境省さんが取り組んでおられる東アジア酸性雨ネットワークとか、非常にいいスキームだというふうに私は思うんですね。これはステーションの状況が全部掌握できているわけですね。日本がやはり主導権をとってやっている、それはちゃんと見られているわけですね。それに加えて例えば中国とか北東アジアから、こちらにいろんな公害ガスが飛んでくると、やはり発生源も全部ネットで繋げれば、すごいことだと思うんですけれども、そういう形に過去のものはなっていないという認識です。これからやはり通信の技術も発達していますから、どこにあってもモニタリングできるというシステムの中でいかにリーダーシップを取れるかということも考えていけると思います。

○浅野委員長 長谷川委員のお話に対して何かご意見はありませんか。
 高橋委員、どうぞ。

○高橋委員 自動車の環境技術についての地域協力を通じて、東アジアでの協力体制というのが可能なのかどうかという視点があるかどうかということなんですが、15年ほど前になってしまうんですが、当時、これはASEANの中での協力体制というのがインダストリアル・ディビィジョン・オブ・レーバーとか、いろいろ言葉だけ踊っていて、実態がないというのがASEANの人たちの中で非常に問題になっていたんですが、そのときインドネシアのある経済学者ハジーさんなんですが、彼が分析しましたのが、自動車産業だったわけなんです。日本の自動車産業がASEAN諸国のそれぞれ比較優位を使って自動車をつくり上げて、それを欧米市場に売り渡しているというのが非常にはっきり出て、実はASEAN諸国の産業協力を推進しているのは日本ではないかというのが非常にはっきりそこに出てきまして、これは地域協力体制の中で非常に大きな要素だということで、それが直ちに外務大臣会合に上ったという、これが15年前の話であったわけなんですが。恐らくこの環境分野でも環境技術、先ほどの長谷川さんのお話の中で、ハイブリッドや何かのことがありましたが、それを例えば韓国、中国、日本、ASEAN、そこいらで何か企業が十数年前にやっていたのと同じような形で比較優位あるものを繋いでいって、これを世界市場に展開していくというようなことがもしあるとすれば、今、世の中でよく議論されている、東アジア共同体というのがプロモートできるのかどうかということに関して、またもう一度自動車産業が大きな役割を果たすような気がするのですが、そんなような構想というのが少し話し合われ始めているのかどうか。もしかしてそれは企業機密なのか、どうなんでしょうか。

○浅野委員長 ご趣旨はおわかりいただけましたか。恐らく自動車は世界の10社から12社ぐらいがほとんどシェアを占めていて、中国でもかなりヨーロッパの自動車会社も入り込んで、合弁でやっていますよね。だからどうも開発・設計・生産段階についてはほとんど問題がないので、むしろ今日、長谷川委員のお話の中で特に重要だと思うのは使用段階ですね。そこは恐らく自動車メーカー側がいくらやっても手が出ないところで、めちゃくちゃな使い方をされてしまえばどうにもならない。このあたりのところが技術移転としても大事な点なんだから、政府もしっかりそこはプッシュしなければいけないし、やるなら自動車会社も協力する気はあるよという趣旨だと思ってお聞きしていたのですが、今の高橋委員のご指摘も含めて、コメントをお願いいたします。

○長谷川委員 ありがとうございます。
 今、浅野先生に言っていただきましたので、もうそれ以上申し上げることはないんですが、実は、今日委員の方々にはお手元にお配りしておりまして、それから傍聴席におられる方々には、資料の最後にウェブサイトが載っておりまして、WBCSD、World Business Council for Sustainable Developmentのウェブサイト上に載っているレポートがあります。最後のページには参加しました会社12社が載っております内、8社が自動車会社でございます。フォード、ダイムラークライスラー、GM、ホンダ、日産、ルノー、トヨタ、フォルクスワーゲンということで、これは全部とは言いませんが、世界の主要な自動車メーカーが参加して実施したものでございます。今後取り組むべき課題というのが、大気汚染物質の削減、二酸化炭素、安全、騒音、渋滞など7つ示されまして、これは4年にわたるプロジェクトを経まして、「持続可能なモビリティ・プロジェクト」の最終報告書を出版して、さて、これから各社アクションプランを行いましょうよと言ったときに、まず第1には、やはり競争と協調という中で、まず自分たちがこれを踏まえて、それぞれに自分たちで今後も自己研鑽していくことが大事というのが一つのメッセージです。それからこういうことは、自動車産業や石油産業だけではできなくて、やはり社会システムがきちっと整わなければいけないし、人の価値観が変わらなければならないというような、ちょっと責任転嫁をしたような言い方ではございますが、技術だけではどうにもならないということも申しました。ただ、私たちは何かこれをせっかく12社一緒になって作ったのだから、何かこれから第2フェーズを協同で実施していきましょうよと言ったときに、どうしてもやはり競争が非常にしのぎを削っているところで、二酸化炭素削減等環境技術の課題では、どうしても一つのプロジェクトにまだ絞り込めずにおりまして、今実際に実施しておりますのは、安全のプロジェクトなんです。それから、その中で、やはり各社が一番興味があるのが中国だったりしますので、仲よく一緒にやっていけるというようなことを探していくためには、車検制度ですとか、交通流の改善とか、こんなようなところが一番やりやすいところかと思っております。

○浅野委員長 それでは、時間が限られておりますので、大変申しわけありません。
 この後、園田委員と青山委員にそれぞれ15分ずつお話をいただきます。
 よろしくお願いします。

○園田委員 園田でございます。
 ちょっと趣旨を勘違いいたしまして、私どもで取り組んでいる電気も代表すべしとか、技術の海外移転だとか、大それたことをご要望されていることも気がつかず、実は私どもが取り組んでいる技術ということで理解をして、少しお話しさせていただいて、最後は少し海外とか、そういうものを見たときに、どんなことが課題かなということで話をさせていただきたいと思います。

○浅野委員長 どうぞ、お座りください。

○園田委員 それではちょっと座らせてもらいます。
 少し会社の紹介みたいなことになっておりますけれども、実は我々の売上高、それから従業員数、もう既に松下グループとして2004年3月末時点で海外の方が多くなっているということで、多分私どもの事業を進める、それを海外でどんどんやっていくということが結果的な技術移転になっているのではないかなという、そんな理解でお話をさせていただきます。
 事業分野は、AVC系のネットワークの半分ぐらいで、アプライアンス、デバイスということで、その他、まだこの中には松下電工さんが入っておりませんでしたので、この日本ビクター以外に電工さんも入っておるというふうに理解をしてください。実は私どもの会社の大きな事業ビジョンが2つございまして、ユビキタスネットワーク社会の実現と、それと並んで、実は地球環境との共存ということで取り上げており、私ども環境関連の仕事をするものにとっては、大変な追い風が吹いているというふうに思っております。
 お手元に少しお配りした環境関連の考え方、ビジョンなりそれの行動計画ということで、そのページのどこかに載っておりますけれども、今から5年くらい前にこんなビジョンをつくりまして、実は7つの分野、その次の項目にこの7つの分野について、それぞれ2005年、2010年のターゲットを技術、それから製品の中で設けまして取り組んできたという、そんな歴史がございます。主に今日お話ししようと思っておりますのは、環境技術の中でも省エネルギーとか、例えばリサイクルとかをどんな形で取り組んでいるかというようなことを申し上げたいと思います。
 私ども、環境立社ということを申し上げておるんですが、これは日本国内だけではなくて、グローバルですぐれた環境配慮の製品・技術・サービスで世界の環境保全に貢献と、こんな骨子、大それたことを申しております。環境技術ということで、この電気製品の中に、いわゆる技術をどんどん取り入れていって、この環境、例えば省エネとかリサイクルとか、化学物質とか、こんなことに繋いでいくと、そんなことが私どもの企業活動が社会から信頼を得られる、そんなことを目指して活動を進めているわけでございます。国際競争力の強化と書いておりますけれども、一つだけ私ども、一番最後には申し上げますけれども、大きな意味のインフラがやはり日本発信でなければならない、そんなことを強く感じておるところでございます。
 これ私いつもよく使うんですが、実は私どもの各部門でのエネルギー消費、これは省エネの話の発端としますが、実は民生もどんどん増えていっております。その増える率が決して低いとは言えない。ただ、少し分析をしてみますと、この日本のエネルギー消費の中で、電機電子というのは、全体としては3ないし4%なんですが、私どもの例えば松下グループ、これで考えますと、一番下の方に少し書いておりますけれども、粗い概算をしますと、家電製品におけるエネルギー消費は、日本全体の約1.1%です。これは家庭が13%で、その中の電気エネルギーの占める割合が43.6でして、ちょっと松下2割というのは大き過ぎるんですが、これを見ていただきますと、1.1%ぐらいになる。工場における消費エネルギーというのは、実は実測で報告もさせていただいておりますが、日本全体の0.1%なんです。したがいまして、私どもの事業を進める中で、工場での省エネの取り組みというのは非常に大事なんですが、実はその10倍、1けたぐらい上で商品に関する省エネが責任がある、そういうふうに私どもは理解をしております。
 したがって、ファクターXという考え方を、ファクター4とか、いろいろなことを申し上げておりますけれども、実は限りなく環境への影響を減らしながら製品サービスの価値の向上、こういうことを目標に取り組んでいこうということで、私どもの特に環境への技術を進めているところでございます。その物差しとしてファクターXを使わせていただきます。
 例えば、ノンフロン冷蔵庫、国内販売100%達成いたしまして、これはファクターは90年比が主になんですが、91年比でいくと、断熱技術によりまして、91年比、2003年モデルだと思いますが、2004年モデルですね、5.2ということで、実は5.2分の1の電力で冷蔵庫が動くと、そこまできたわけでございます。中国等でもこういうものを発売し、またつくる方向で今取り組んでおるところでございます。
 食器洗い乾燥機、これも一つの例として出させていただきました。資源ということで、資源の効率を上げるファクターということも見てみますと、実はこれ、水の使用量、手洗いと比べて14分の1になります。今、多分お使いの方はよく分かっていただけると思います。水資源という観点からいえば、非常に有効なものと考えております。
 そのような技術を開発をして、ブラックボックス技術と呼んでおりますけれども、これは非常に私どもの社内的な言葉でして、他社にまねのできない技術をもっとどんどん環境のために開発しよう、そんな意味でそれぞれテレビとか断熱材とか、いわゆる電灯、蛍光灯に使う技術、薄型テレビ技術、ノンフロン冷蔵庫、無電極パルックボールという形で商品化をさせてもらっているわけでございます。
 ここからは少し宣伝になりますので省略しますけれども、実は家一軒で、本当に省エネが進んでいるんだろうかと。これは私ども非常に課題に思っておりまして、シミュレーションを一回してみました。93年と2003年ぐらいの一軒家、4人家族でシミュレーションしまして、今最新の技術を使えばどの程度省エネができているんだろうということで、これはあくまでもシミュレーションです。その結果をここにまとめました。省エネはかなり、40%ということでCO2排出量で削減することができると計算されました。ただ、資源は余り減っていないんです。実は22%ほど携帯電話とか、いろいろな機器は増えているんですけれども、省エネは進んだけれども、資源は22%の増加を吸収するのが精いっぱいだった、そんな結果が出ております。
 先ほどのファクターの数値を具体的な例でここに並べて、例えば一つ一つの製品のファクターをどんどん上げていくという取り組みをずっと進めて、さっき言いました家丸ごとで例えばファクターを3とか4とか、これを目指していこうというふうに取り組んでいるところでございます。
 こんな商品の紹介ばっかりしていたら、宣伝で申しわけないんですが、実は家庭用燃料電池コージェネレーションシステムということで、この2月に東ガスさんと一緒になって、何とか市場に一部でも導入をするということができました。家庭用のいわゆるオンサイトでの熱と電気の発生する新たなエネルギー源として、私ども今これに力を入れておるところでございまして、首相公邸のものが実際にもう動いたのか、動いてないのかというふうに今考えているところでございます。
 ファクトリーの方に、工場でどんな取り組みをしているかということで申し上げたいと思います。工場省エネの取り組みというのは、先ほど言いましたコンマ1%とはいえ、しかし私どもの責任は大きいなと。CO2の排出量、そんなに減っているわけではございません。工場省エネ、日本では、特にデバイス系の増加によって全体総量が増えていっている。私ども省エネの診断チームを特にこのデバイス系の事業に配置をして、努力はしておりますけれども、実際の総量の削減にはまだ繋がっていない。CDMの検討ということで、クリーン開発メカニズム、これも私どもの中で進めていかねばならないというふうに思っております。
 省エネの事例というのは、非常に泥臭いんですが、しかしやれば効果が出るというふうにプロは申しております。大体、電力ないしエネルギーの使用量の10%ぐらいは減るものだというふうに言われておりまして、省エネについて、例えばエアー系のノズルの工夫等で71%も削減したとか、それから電力を、無駄運転を排除する単なるソフトの改造で10%削減するということで、この工場省エネの技術というのは日本でやるとしても、それからデバイス系でやっていくにしても、大変なノウハウ、苦労は必要なんですが、やれば確実に効果が上がるというふうに考えております。
 これを私ども、特にアジアの工場、例えばマレーシア、ここにはマレーシアの例を挙げておりますけれども、実際のチームが参りまして、アジアの我々の工場のいわゆる省エネについて実際にやった例で、102件の省エネ対策を提案し、CO2排出削減率約1万7,000トンということで、投資も5.8年で回収できる、こんな結果もあちこちで出してくれております。
 次は、クリーンファクトリーの廃棄物の方でありますが、これはゼロエミッション、日本国内では98%以上のリサイクル率ということで、既に実現をしてゼロエミッションをやっておりますけれども、海外ではまだまだでございます。ただ、これは私どもの会社の中で、特にアジアの中でマレーシア、シンガポール等、ゼロエミッションを海外の工場で我々が声をかけて、号令をかけて、ぜひみんなでやろうということをやっていきまして、やっとここまで今きているということでございます。2003年度リサイクル率、ほかのところも含めて上がってきておるというようなことがお分かりいただけると思います。
 例えば中国における私どもの工場の中での廃棄物リサイクルの事例がございます。アジアとか中国、シンガポール、それぞれで非常に努力をしていただいて、先ほどのリサイクル率の向上に繋いでいただいているものだと思っております。
 リサイクル技術ということについては、先ほど同和様がお話しされておりますので、もう何度か話があったと思いますが、私どもも日本国内では兵庫県の社に、エコテクノロジーセンターという開発部隊を持つリサイクル工場がございます。エアコン、冷蔵庫、テレビ、洗濯機、こんな実績を上げておりますけれども、実際にブラウン管のリサイクル工程、先ほどバーゼル条約のお話が少し出ましたが、いろいろな技術がこの中に入っております。実はそれをやっていく、実現していくために、法的な整備も必要ですが、その技術の標準化みたいな、さらにはそれから出てくる、例えばブラウン管のガラスの品質の一定の基準、こんなものがこれから特に必要になってくるのではないかなと思っております。
 私が最後に課題として申し上げたいのを少し、ここには書いておりませんが申し上げますと、企業として進めていくというのは、私どものグローバルな事業をそれぞれ地道に私どもの海外の工場で広げていくというのが私どもの考え方ですし、またそれが限界ではないかなと。ただ一つだけ申し上げますと、今日お話ししていない中で、有害物質の対応の技術、これは電気業界ではRoHS、自動車さんではELVというんですが、これも1年後にはヨーロッパに対しては守らないといけない。実はつくっているのはグローバル、アジアでつくっているわけですから、遠いヨーロッパの話では決してありません。実際に中国でつくっている工場でそのRoHS対応をやっていかないといけない、そんな状況で、中国にある二、三千社の方々と一緒にサプライチェーンとして、いわゆる有害物質対応を含んでやっている、そのことを進めていること自体が中国への技術協力なり技術移転に繋がっているのではないかなというのが一つでございます。
 したがいまして、私ども企業として取り組む姿勢はそのように考えております。政府とか、どなたかにお願いするということではないんですが、できることなれば、大きな意味のインフラをぜひお願いしたいと思っています。例えばWTOに中国が加盟した、それが実際のものとして動ける、そんな商習慣の確立になってほしいと思いますし、技術移転ということであれば技術を守る知財、そんなことのインフラを確保して、何とかしていただきたい。
 それから、先ほどの技術の標準化の話でございますが、例えばブラウン管のガラスの品質そのものの標準化など、何かないと本当に使えるものにならない。それらからもう少し広げて言いますと、例えば政治・経済のインフラもございます。CDMという言葉を、私申し上げましたけれども、こんなものを実現していくときの日本の税制、それから海外との仕組み、やりとり、どんなふうなやり方を実際に進めていくか、非常にまだ不明な、全く決まっていないことが多い、そういう意味の大きなインフラをぜひ一歩でも二歩でも早く進めていただけたらなというのが、私の課題に対する意見です。資料はまとめておりませんでしたけれども、以上でございます。
 ありがとうございました。

○浅野委員長 ありがとうございました。
 それでは、青山委員、お願いします。

○青山委員 私は、説明する時間があまりないと思い、資料をかなり盛りだくさん入れてきました。
 今日は、企業による環境協力ということで報告しますが、この企業、事業活動を通じての環境協力というのが一番大きい部分になるだろうと思っています。そういう意味で、展開の切り口の可能性、それから取り組みの方向と政府の役割、この辺を端折りながらお話しさせていただきます。
 協力の視点をみると、移転できるのは経験・技術・システム、それと相互学習による現地化というのは今日も随分出ましたけれども、これを進めなければならない。4番目に、石化エネルギー・資源価格は途上国の方が高いということを認識すべきと思います。昨今豪州の石炭とか鉄鉱石の日本企業向けの値段が2倍近くになっているようですが、これは20年来一緒に共同開発をし、また、最大のお客である日本でさえ2倍になっているということで、新規参入組の中国はもっと高く買っていますし、小国の途上国になりますとマイナーなお客ですから、さらに高い値段で買わされるということです。分別とか、選別に関する人件費が安いということもあり、CP・省エネ・3R対応は、途上国の方がより進む、明らかにそうなってきていると私は思っています。それと、温室効果ガスの排出量のシェアが先進国と途上国で2020年代の後半ぐらいには逆転するとも言われています。例えば、多分数年後には日本全体のCO2排出量の3分の2は中国の鉄鋼産業だけで出てくるという時代になるということです。昨今の鉄鋼業界が中国と技術協定を結ぶということは非常に重要な協力だと思います。
 そういうことを前提に、展開の切り口を私は6つ挙げました。環境技術をベースとする産業・事業化というのは、これは主に今日タクマさんがお話しになったような話です。従来でいえば環境装置メーカーを中心に脱硝とか脱硫、あるいはいろいろな環境装置技術を提供してきているわけですけれども、それをベースにする環境協力がある。
 2番目に素材産業の進出や技術提携があります。こちらは同和さんのお話で出ました。これは鉄鋼、窯業、製紙、そのほか化学工業、こういう素材産業が進出していくことによって、その国へ後に技術移転が行われていく。それと今日の松下さん、トヨタさんのお話にあるような、製品製造業、流通業、商業進出、これは例えばイオンさんが海外に出ていくときには、イオンとして日本で高レベルの環境共生型のショップがあるわけですけれども、その水準に近いレベルで出ていこうとしています。今日、トヨタさんのお話にはなかったわけですけれども、トヨタさん、松下さんが連携している途上国の何千という会社に対して、多分日本と同じ規格を適用していくことで、日本の環境技術・経験の移転が進むわけですね。こうした産業進出による移転が非常に大きいと言えます。それから4のCP・省エネ・3R対応は、これでないと途上国は環境対策を進めようがないわけですが、実はこれらの技術は日本は非常にたくさん持っていると思っています。
 それから、都市形成分野での経験移転ということで、約20年から25年で都市人口が数倍になる、巨大な都市集中を経験したのは先進諸国では日本だけです。日本は今になって後悔していることもたくさん持っています。例えば、多摩ニュータウンのような大規模ニュータウンが今のような高齢者の非常に多い都市になるとは誰も思っていなかったし、これだけ省エネとか省資源が進んで、供給するインフラが余ってくるということも誰も予想していなかった、こういった教訓的なな経験を移転していくことも日本の役割であると思います。
 それとやはり一次産業の経験・技術移転、これは前回のお話でも随分出ましたけれども、この分野大きいということと、今日も出ました国際資源循環・CDMというものが非常に大きいウェイトを占めてくると思います。
 これらを1つ1つ見ていきますと、これは技術分野ですけれども、日本で展開された廃棄物処理において焼却処理を中心とした技術でこれから途上国にいくとは全く思っていないです。紙、プラスティック、あるいは厨芥類も含めて、明らかに3R型の資源循環体系がつくられていくでしょう。そういうものに対する技術移転、あるいは水道、下水道、地区循環体系、ごみも含めてですけれども、こういうものも日本の経験を生かした新しい事業体系を途上国に移転できるのではないかと思います。また、アジア諸国が膨大なバイオマスを持っているということも重要な視点となります。中国では、数千単位で大規模な勤労者用住宅団地がつくられようとしています。一方で電力や水が足りない状況の中で、計画地の周辺には30万頭の養豚場や100万羽の養鶏場というのがあるなど日本では全く考えられないようなバイオマスの集中的発生があるわけです。こういうバイオマスは明らかに電力や熱源として使われていきます。浄化槽、中水技術といった技術も日本の技術としてこれから中国に移転されていくと思っています。
 2番目として、製造業・流通・商業ということで、これはCSR的な対応、あるいはEPR的な対応を含めて、日本の企業が海外へ出て行くときに、関連企業を含めて、こうした対応をを進めるという流れになってくると思います。それから流通業や商業でも、環境対応は非常に重要なポジショニングを占めています。こうした対応は日本の企業が現地に出ていくときの基本的な姿勢として、ほとんどの企業が進めていくことになると思います。こうした対応をうまくサポートして活かしていくことによって日本の環境協力が大きく展開できるのと思っています。なお、素材産業は我が国の資源エネルギー、温室効果ガスの4割近く出していることからも、素材産業のウェイトはやはり非常に大きいということです。
 これは1970年のころの中小企業庁の調査結果ですけれども、既にこの段階で環境対策の多くが熱エネルギーの管理、材料歩留りの向上とかで、日本では1970年、80年代に多くのCP的な対応を進め、その蓄積はあります。エンド・オブ・パイプ型の対応というのは途上国で役立つと私は思っていませんけれども、こういう経験をもう少し丁寧に洗い上げて、その国に必要な、例えば食品産業、あるいは非鉄金属とか、表面処理産業とかに何ができるのかということを詰めていく。あるいはトヨタさんとか松下さんがやっているようなEPR的な関連会社に対する対応を公開して、他の企業にも伝播できるようにしていけば、方法は幾らでもその国にあるわけですね。先ほど、中国での松下さんのお話があったように、環境対応は国際水準で履行しなければいけないわけですから、当然、関連会社にもやってもらわなければいけないわけですね。そういう段階にきているということだと思います。
 次に、都市分野ではこういった大都市集中型・短期での都市膨張というのは日本独自の経験だということで、CP・省エネ・3R型のインフラ整備をしなければいけない、日本は、需要対応での供給・処理インフラ整備を進めたわけですが、こういうことを回避しなければいけないとか、そのためのシステムをどのように組み立てていけばよいか、こういう教訓や対応技術を日本は持っていると思っています。
 次に、自然環境、一次産業という中では、やはり水耕、あるいは灌漑、農地の土壌保全などいろいろな形での日本の対策経験があります。水産加工技術・経験移転ということで、例えば国内では今、健康食品産業が大きい付加価値を持つ産業になってきているわけですけれども、BSEがあった結果として魚類残さとか海草から生産したいといった意向が拡大しています。しかし、日本には大量の魚類残さがないんですね。ほとんどが輸入となってきているので、一次加工は海外でしてしまうのです。この加工残さ殻の生産を排水処理と併せて行うなどの形で、ある意味でウインウイン的に新しい産業を興しながら環境対策も進める。廃棄物を含めて途上国では公害対策的な対応の単なる対策コストで負担ということはなかなかできない。先ほど言いましたように、これだけ資源、エネルギー価格が高くなってしまいますと、対応がどんどん3Rの方にいくわけですね。例えば石炭が倍になるということは、炭化、炭をつくるのにコストが100かかり、売れるのは50だったのが、今は100、100になり、事業性が高まったことになります。
 次に、国際資源循環は特に中国での資源循環は大きいということ日本と中国の地理的関係からいっても、日本にとって重要となります。それと、日本の蓄積資源は、非常に集中的に出てくるわけですね。戦後30年で都市建設を押し進めましたが、日本の建物というのは三、四十年から四、五十年で建て替えるようなものにしかなっていませんので、これらの建て替えに伴い、集中的に出てくるということになります。多大な蓄積資源があるわけで、それを中国との関係でどのように活かしていくかが重要となります。CDMは、先ほど言いましたように、先進国と途上国との温室ガスの排出シェアが逆転するような時代に、緩和的措置という形のCDMではなくて、日本のCO2の削減になるということを超えたもう少し前向きな意味でのCDM的な対応が広がってくると思います。
 日本の粗鋼生産は今1億トン、我が国で排出されている温暖化ガス排出量の13%ということです。中国の粗鋼生産が約3億トンですけれども、二酸化炭素は現状では1生産量に対して1.5倍出しているということで、今は日本の4.5倍ぐらいのCO2を出しているということになります、年間生産量が4億トンぐらいになるのは時間の問題だと言われています。今のような日本の技術協力がない形でいきますと、すぐに、日本全体の3分の2のCO2排出量に相当するものが中国の鉄鋼業だけで出てくるという時代を迎えようとしているのです。一方、日本の鉄鋼産業は、国内の産業系排出量の3分の1を排出しているということで、強く削減を求められているわけで、CDM等を通じて、鉄鋼業として中国にこうした技術協力をしていくことは非常に重要な戦略だと位置づけられてきているのだと思います。
 世界の鉄鋼生産は約20億トンぐらいになると言われていますが、今約10億トンです。これの倍ぐらいに2050年にはなっているということですけれども、当面は中国で急増していますが、もし、その後にインディアなどが追うということを考えると、鉄鋼産業のみでもアジアで膨大な温室効果ガスが排出されることになります。
 日本の経験・システム・技術移転像というのは、日本の場合、これだけいろいろな蓄積があるのに、なかなか環境協力による移転のシナリオといいますか、移転像が描けないというのは、やはりシナリオを描いて、そこで活かせる経験・システム・技術をきちっと摘出することがおろそかにされているのではないでしょうか。先ほど言いましたように、例えば中小工場に対しては、どういう方法論があるのかと言えば、今、大手企業が出ていけば、当然そこに関連企業連動的に進出することがございますし、そういうものが横軸であるとすれば、縦にその国の何らかの組織を通じて現地化していくというふうな形の移転、あるいは、シナリオをを国・分野別により具体的に描き、組み入れていく。あと、やはり技術として明らかにCP・省エネ・3Rということがキーワードで、自然環境は別にして、やはりもう一回とらえ直していくことが必要です。
 代表的な技術を幾つかお見せします。これは廃油です。これも日本で特に発達した技術です。
 これは焼津の魚加工団地での排水処理・残さ資源化工場ですけれども、昭和45年に協業化して、今はほとんどのものが排水まで含めて有価で、お金がもらえるような形で事業をやっているものです。こういういろいろな再生商品をつくっています。
 あと、この三幾飼料という企業は、フィッシュミールなどをつくっているんですけれども、日本の水産廃棄物の15%を1社で1日で集めてその日のうちにフィッシュミールにしてしまうという、このような工場が6~7箇所あれば、日本中の水産関連残さの加工が全部できるという規模の工場で、埼玉にあります。
 これは、ルーマニアで、JICAの開発調査で実施されたメッキ工程の改善プロジェクト例です。これはCPですけれども、こうした改善を進めることで、こういうモデルをモデルとして実施して、研修をやっていただいて、技術普及を図るといったシナリオに繋がるものです。
 これは地中熱利用する技術で、今、万博の瀬戸日本館に入れているものですけれども、夏冬の温度差を利用するだけの非常に簡易なシステムですけれども、これだけでも住宅の空調エネルギーのかなりの部分を節減できるものです。
 その他、長久手日本館の竹ゲージもそうですけれども、あれは日本の木材の修正加工技術ですね。竹だけではなくて、いろいろな低品位の木材を材木に使えるようにするというような技術です。あとは省きますけれども、日本には非常に多くの蓄積があるということで、それをどのように活用するかをシナリオ化して、国別にでもどのように移転協力していくのかということを描くべきだということが私が今日、提起したかったところです。
 政府の役割というところでは、大きいのはやはり素材・製品製造業、流通業、商業での海外活動を重視すべきだと思います。やはりこうした産業活動を通じての環境協力が基本だと私は思っています。その中で、モデル的展開と現地化・研修活動などに対する広報・助成・奨励などを進めていただきたい。また、CSR的な対応を途上国で進めていることに対して、もう少し広報し、あるいは後押しをしてほしいということですね。
 それと、いろいろな意味でプラットホームづくりというのは現地の人的協力、あるいはCDM事業についても必要だということで、環境技術移転モデル事業とか、モデル対応に対する助成、これは研修でもそうですけれども、ぜひお願いしたい。また、やはり日本の環境技術の紹介の仕方が、何か余りしっくりしないというか、実際どういうふうに活用できるのかというところまでいけば、私は魅力的なものとして理解してもらえると思っています。
 これは、日本の廃棄物・資源産業はどのように展開すべきかを示したものですが、3Rを内部化したものと連携する、国際循環、世界標準・規格、非環境・資源収奪ということを組み込まない産業生き残れないというぐらいまで日本も来ているということです。ある意味で日本が今国内で求められていることを海外でも同時並行的にやるべきだと思っているということで、終わりにしたいと思います。

○浅野委員長 ありがとうございました。
 それでは、今のお二方について、ご発表にご質問、ご意見ありましたらどうぞお願いいたします。
 よろしゅうございましょうか。
 廣野委員、山瀬委員。

○廣野委員 お二人ともありがとうございました。
 最初のご説明の中で一つお聞きしたいのは、松下電器の場合、サプライチェーンとか、その他いろいろなものについて確かに環境技術の全般で、その企業で全般により貢献していると思います。ただそれ以外に、ほかの方法を松下電器自身がとっているのかどうか。例えばその国の工業界とか、あるいは商工会議所とか、いろいろな呼び方があると思いますが、そこらあたりちょっと現実の姿がどうなっているか知りたい、これが一つです。
 それから、もう一つは、まさに最後の点なんですが、政府の役割ということでして、かなり幅広いいろいろこういうことで全体整備をやったらどうかという、そういうようなご提案があったんですが、例えば地球環境の保全という点からすると、一種の地球公共財的な意味から当然政府、いろいろな格好で果たす役割はあるんですが、やはりでも私が同時に、民間でできることは民間でやるという、こういう姿も必要で、そこらあたりで、16ページに政府の果たすべき役割と書いてあるんですけれども、やはりこれを見ると、基本的には一つは技術協力という格好で、これは当然政府の果たす役割が大いに重要だと。それから2番目に、ここに3と書いてあるんですけれども、日本の環境技術移転モデル事業・モデル対応に対する助成と書いてあるんですが、これは一体どの程度可能性があるのかなという点で、どうお考えになるのか、そこだけお聞きしたいなと、私の非常に関心あるテーマですので。

○浅野委員長 ありがとうございました。
 前半は園田委員、後半は青山委員あてのご質問だと思います。
 山瀬委員、どうぞ。

○山瀬委員 特にちょっと、青山さんの方にお聞きしたい。すごい日本の技術移転など、経験も含めてあるんですけれども、石田委員の発言にもあったんですけれども、要は、日本側がいくら親心というか、いろいろな気持ちを持っていても、相手がいる話ですよね。それで、その辺で相手側の評価といいますか、言ってみればこちらが一生懸命技術移転しようとしても、これは私たちがかかわっているんだと、電話線もないのにオンラインシステムを要求したり、それからパソコンをいじったこともない人間がそれこそワークステーションを要求したりとか、かなりそういう意味では先端情報は持っているけれども、実際には使えない、その辺の相手側の評価というのをどうするかという話。
 それから、園田委員のお話にあったんですけれども、例えば日本がかかわっている企業、現地ではすごくレベルが高くなっていると思うんですけれども、それ以外にも全然ローカルな会社とか、ローカル企業、そこの現地の社会とのかかわりといいますか、余り日本型でずっとやっていくと、浮いてしまうのではないかという感じがするんですけれども、その辺はどういうかかわりをされているのかどうか。その2点です。

○浅野委員長 園田委員、2つご質問がありました。

○園田委員 かかわりがあると、そういうふうに思いますが、現地との技術移転、具体的にどうかという、私ども大上段に振りかぶったCSRでやっていくというよりも、本当に私どもの事業を進めていくために、必要最小限の例えば鉛フリーのハンダをやったときも、現地の方々、サプライの方々へのセミナー、そういうものを現実的に、今もRoHS対応も含めてやっておって、それが数千社の、何千社という中国でもありますし、アジアでもそれと匹敵するぐらいの数の方々にいわゆるトランスファーなり、ノウハウの移転、こんな形でやらせてもらっています。
 それ以外のメーカーに対してはどうかというと、私どもそこからやはり一つそこで起点をつくって広げていくべきだろうなと。ビジネスと関係のあるところからやっていくと、我々の利益にもなるし、非常に現地のサプライにとっても現実的だなというふうに考えておりまして、できているかと言われると、できていないと答えるしかないんですが、そういうやり方が一番いいのではないかなというふうに考えています。
 以上です。

○浅野委員長 ありがとうございました。
 それでは、青山委員、どうぞ。

○青山委員 最初のご質問ですけれども、モデル的な対応ということでいいますと、例えば松下さんなどが現地で操業する際に、当然表面処理からメッキ工程から、いろいろなCPを取り入れている施設を組み込むことになります。こうした工場の協力を得て、これだけコストパフォーマンスとか資源施設がいいことを、現地で動いているものを見せて理解してもらう。省エネ、省エネ資源というのは、今明らかにそちらの方が安くなっているわけですから、彼らの方にとってみても導入の動機づけになります。私たちがルーマニアでパイロットプロジェクトとして実施した際に、実は国営工場と民営工場を対象としていたのですが、民営工場は全面的に組み込みましたが、国営工場では3分の2ぐらいに削減できたにとどまりました。相手方の熱意にも左右されますが、いずれにしても今は環境省エネ、省資源とか、CPというのは、導入した方が生産性は高まると思います。やはり設備投資が必要となるとか、ある過渡期的に改修に時間がかかるとかということもありますが、それらに対して若干の資金などの支援をミックスしてできるといいなと思います。また、日本の企業は進出していった際に、必ずCSR的な対応をやっていらっしゃるわけですね。そういうものを研修に活用していくなどのやり方であるとか、その際に、ODA資金を少し出して、研修や何かの業務を一緒にできるようにしていくとかという形で動かせばいいのではないかなと思います。

○廣野委員 ちょっとその点で、確かにそのとおりなんだけれども、例えば一番いい例を出すと大連が日本の例のモデル事業をやっていくのは、やはり問題があったのは、例えば経済産業省の方から、そういうことをやるのは結構だけれども、これはCPは基本的には生産性を高めるものであると。生産性を高めるんだったら、これは民間でやれるんだから、何も政府が資金を使う必要はないという、そういう考え方も経済産業省から出てきたんですよね。そこらあたりどうお考えですか。

○青山委員 私は日本が進めているツーステップローンの仕組みなどをうまくそういうところに活用できないかと思います。日本でも環境対策が進んだ当初団体では公的資金は随分投入されました。中小企業対応に、50%ぐらいの助成が入ったことがありました。そういうものをうまく使いつつ、基本的にはやはり民間が自助努力でやるべきだと思うんですね。最初に導入されたものは一つモデルとして、ODA資金でやってもいいと思うんですけれども、後はローンなどの協力をしていくようなものに結びつけられればいいと思います。
 それと、後のご質問に出たこれまでの評価ということですけれども、やはり分析とか、あるいは排水処理、廃棄別処理など、分析は違うかもしれませんが、従来、僕らが主にやっていたエンド・オブ・パイプ型の施設、設備整備での協力は、どちらかというと金がかかるものが多かったと思います。しかし、これからの話というのは、むしろトータルで見れば5年、6年、7年という期間で回収できるような環境対策というのは、環境対策とは言わずに、むしろ生産性工場に繋がる歩留まり向上とか省エネをやるという方向で動かしていけば、その企業にとっても非常に役立ちます。ですから、できるだけわかりやすい例をつくっていく、余り大きい工場でやるのではなくて、非常に単純なメッキ工程、表面処理、あるいは染色とか、そういう工場でモデル的な設備を導入して、そこで研修してもらうような形がとれればおもしろいのではないかなと思っています。

○浅野委員長 山瀬委員の関心と、今日のプレゼンテーションで出てきている企業の取り組みというのと、出発点にちょっとずれがあるようですね。そのために議論がかみ合っていないという気がしますが、今日時間がないので、むしろ企業が企業のベースで出ていくというのと、ODAで補助がぼんと出るというのとはちょっと違うんですね。今日はどちらかというと、企業が出ていくということを考えての議論ですから、これでご勘弁ください。
 高橋委員、簡潔にお願いします。

○高橋委員 時間が非常にありませんので、簡単に申し上げます。
 1点は感想、あと2点質問を簡単に青山委員にさせていただきます。
 感想としましては、今日全体で感じましたのが、やはり企業が環境協力、国際環境協力に関して非常に大事なアクターだということがよくわかりました。ただし、プレゼンテーションが、どうも途上国支援のところに何が使えるかというような視点があり過ぎるような、古典的に東西南北的な視点が強過ぎるような気がして、もっと恐らく企業はグローバルに動いているに違いないわけですので、今の時代に相当した企業そのものの構造がどういうふうにグローバルな協力関係に貢献しているかという視点がもっとあるとよかったかなというふうに思います。それは感想です。
 質問、青山委員のページ2、上の方の2、その[2]、この水道・下水道・地区代謝系事業、これはパッケージ化してかなり日本で進んでいるので、これがそのままある程度使えるのではないかというようなことがあったと思うんですが、今進んでいますのが世界全体でこの水の民営化ということが起こっていますが、その中で民営化できるのは水道なんですが、下水道に関してはまるっきりできません。そうすると、今までパッケージで動いていたものがパッケージ化できないのではないかというようなことが非常に大きな問題になっているわけなんですが、そのあたりのところ、先ほどのご判断との関係でどうなのかということ。
 それから、次の3ページ、4の[1]、都市形成、ここで、確かに都市形成、非常に重要な問題があるのですが、これ私がアジア諸国との関係でここに書いてあるそのコンテキストで考えてみますと、非常に大事なことは、日本がネガティブな要素として学んできた、我々が政策形成している間に都市化のプロセスが止まってしまったと。それで結果として、例えばダムその他の計画だけは動いていて、今でも必要のないダムをどんどんつくっているというような、例えばそういうようなことだと思うんですね。そうしますと、恐らくアジア諸国でも近いうちにそれは起こるに違いない。そうすると、どういうインディケーションで都市化のプロセスというのはそろそろ速度が弱まりますよと、さらにその先に止まりますよと、そうすると今プランしているのは、例えばダムその他のところでどういうことを考えたらいいのだろうかということを、多分かなり我々の失敗したレッスンから大事なものが出てくるのではないかと思うですが、そういうふうなところも含めて、こういうようなところのことを言っておられるのかどうか、その2点です。

○浅野委員長 それでは青山委員にお答えいただくべきですが、時間がございませんので、これは議事録に書き加えるという取り扱いにすることをお許し願います。
 まだほかにご質問、ご意見もあろうかと思いますが、大分予定の時間過ぎております。この後、廣野委員から参考資料1について10分間のご講義をいただくことになっていたんですが、時間がありませんので、一言、二言、コメントをお願いいたします。

○廣野委員 これは、IGESでやった例のアジア太平洋地域、日本、インド、中国、それから韓国、それからインドネシアの環境産業の過去を見て、それから現在の問題点、それと将来どういう方向でこれらの国の環境産業、それぞれ国々がどう果たすべきか、あるいは日本がODAを使ってどうやるべきか、あるいはまた民間企業がどういう役割を果たしているか、あるいは諸外国に民間企業がどれだけ果たしているかということで、かなり大がかりな研究プロジェクトでした。
 これは先日、MCED2005年のソウルで行われた会議でもちょっとご報告いたしまして、環境産業に対する非常に関心が強かったというのが一つの印象、それから2番目がやはりそうは言うものの、やはり途上国における環境産業というものと、先進国にとっての環境産業というのはやはり、時代のずれといいますか、発展段階の違いがありまして、かなり違ってきているなということで、特に私、非常に皆さん方の質問が多かった中で関心があったのは、これから環境サービスの面、環境サービスは環境マーケットで最も大きな、最も急速に伸びている部門なものですから、その部門で一体どういうような役割を果たせるかなということで、そこに非常に関心がありましたので、そこらもちょっと書いてありますので、よろしくお願いします。

○浅野委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、本日はこれで時間が過ぎてしまいましたので、最後に事務局からの連絡事項を、お願いいたします。

○田中環境協力室長 ありがとうございました。
 次回の委員会でございますが、次回は専門委員会報告の案の検討をお願いしたいというふうに考えております。日時でありますが、4月21日の木曜日、午前10時から12時までの2時間、合同庁舎5号館環境省のビルの共用第8会議室での開催を予定しております。
 また、本日の議事録については、事務局の方で取りまとめの上、後日委員の皆様に案を送付させていただきますので、ご確認をお願いいたします。
 それから、次回は、これから取りまとめに向けて、その案を示させていただいてご議論いただくことになりますが、今日のご議論も踏まえて、いろいろ書き込むべきことは書き込んで、その案をできるだけその前の週に一度見ていただいて、できましたら最初のレスポンスというのでしょうか、最初のご意見をいただいておいて、その上でご議論をいただけますように、できるだけ努力をしたいというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

○浅野委員長 どうもありがとうございました。
 それでは本日これで散会いたします。ありがとうございました。

午後5時20分閉会


高橋委員の質問に対する青山委員の回答【追加】

1.上下水道・廃棄物処理などの民営化で、下水道は難しいのではないか。

 民営化を「広義の民間活力導入」として捉えると、公設民営、民設民営、民設公営などの類型が考えられ、中国でどの類型が具体に展開するかはまだ分からない。しかし、アジア諸国では、廃棄物、上下水道ともにこれらの類型での民間参入の事例はある。
 私が想定しているのは、以下のような導入シナリオである。

[1] 廃棄物に関しては3R的な有価物回収・資源化が民営でも成立する可能性は、日本よりも中国の方が高い。中心市街地の高層マンションや商業業務ビル、更に郊外大規模住宅地区などで民営化事業の展開が想定される。
[2] 水道事業は、日本でも企業会計運営がされており、世界的に民営化(民設民営・公設民営)が進んでいる。中国でも既に事例がある。
[3] 下水道は、公設民営が主流となるが、中心市街地の高層マンション・商業業務地区開発では、開発者負担で下水道・中水道施設が整備され、地区内での中水道事業が展開する可能性が高い。この場合に下水道自体が公設民営で運営されるケースや、民間が整備した施設を公共事業側が引き受けて事業運営する「民設公営」的な事業展開も考えられる。
   一方、数千戸から1万戸単位での大規模住宅団地では、末端までの下水道幹線は公設であっても、開発地区内の下水道管やポンプ施設などは開発者負担となり、住宅の販売価格などに上乗せされ、更に民営的な事業手法が導入される可能性も高いと想定しており、その可能性の検討に私も関わっている。

2.日本の都市形成の過程での経験・教訓は重要な視点であるが、どの位で都市化のプロセスが止まるのか。また、都市化が収束したのにダムだけが残ってしまったという点をどう捉えているか。

 中国では、今後数十年で都市化のプロセスは収束すると考えられる。少子化政策もあり、2050年には高齢者率が50%を超えると予想されており、日本が1960年前後から1980年代までの20数ヶ年で都市集中が進んだことを考えると、都市化は、今後20年ほどで止まると考える。この20数年を極めて特殊な過渡期として捉えて、四半世紀を見通した都市基盤整備を進めることが肝要と言える。
 日本では、こうした人口集中が一過的なものであり、30年後での都市化の収束、その後の人口減少という人口推移プロセスを想定していなかった。また、計画需要を前提としてそれを制御するものとして扱わず(例えば、ごみ減量化や用水合理化・節水/ピ-ク対応など)、施設対応で臨み、硬直化した施設体系を形成し、次世代に大きな維持管理、更新などの負担を課してしまった。更に、公共事業での既得権、惰性的工事継続などがこの負担を大きく拡大した。
 もちろん、1970年代頃までのこれら事業の環境衛生面や水供給などに果たした役割は評価してもしきれないが、その後の硬直化した施設整備が今日、大きな負担となっていることを教訓として、特に、同じ都市化プロセスを経験しようとしているアジア諸国に伝え、移転していかねばならない。