長期低炭素ビジョン小委員会(第20回)議事録

日時

 平成29年12月19日(火)13時00分~15時26分

場所

 都市センターホテル オリオン

 東京都千代田区平河町2-4-1 都市センターホテル5 階

議事録

午後1時00分 開会

木野低炭素社会推進室長

 それでは、定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会地球環境部会長期低炭素ビジョン小委員会の第20回会合を開始いたします。

 本日は、ご到着が遅れている委員もございますけれども、委員総数18名中15名の委員にご出席いただく予定であり、定足数に達しております。

 なお、既に地球環境部会長決定とされております本委員会の運営方針でございますが、原則として会議は公開とされているところ、本日の会議も公開といたしております。

 なお、本日ですけれども、浅野委員長が飛行機の関係で少し遅れて来られるということになってございまして、当委員会の運営方針によりまして、委員長代理であります安井委員より冒頭、議事進行お願いすることにしております。

 では、よろしくお願いいたします。

安井委員長代理

 安井でございます。座長代理でございます。よろしくお願い申し上げたいと思います。

 それでは、議事を進めさせていただきます。

 まず本日は、中川大臣にお越しいただいております。ぜひ一言ご挨拶をいただければと思います。よろしくお願い申し上げます。

中川大臣

 環境大臣の中川雅治でございます。本日はお忙しい中、お集まりいただきまして感謝申し上げます。開会に当たり、一言ご挨拶を申し上げさせていただきます。

 先月、ボンで開催されましたCOP23に参加いたしました。COPにおきましては、パリ協定の長期目標達成に向け、世界全体の温室効果ガス削減に関する進捗状況を把握するための、タラノア対話の進め方が決定され、地球温暖化対策において長期的な目標を見据えた、戦略的な取組の重要性を改めて強く感じたところでございます。

 帰国後、こうした問題意識を背景に、経済産業省と合意の上で、政府全体としての長期戦略の検討を来年度の早い段階で開始できるよう、政府部内で必要な調整を進める方針をお示ししたところでございます。

 さて、中央環境審議会におかれましては、本年3月に長期低炭素ビジョンを取りまとめていただくとともに、6月の審議会では長期大幅削減に向けた道筋についてのご議論をいただきたい旨、お願いしたところでございます。これまで世界的なエネルギー情勢、電力系統やCCSといった大幅削減に不可欠な要素について知見を深めるとともに、英国の戦略の検討状況についてもヒアリングを行っていただきました。本日は各国の長期戦略から得られる示唆、及びこれまでのヒアリングから得られた知見等を、事務局より整理して説明いたします。

 各国とも長期大幅削減を実現する大胆なビジョンを示すことにより、気候変動対策を契機として、さらなる成長を実現する戦略としているようでございます。我が国としても未来への発展戦略として、長期戦略の策定が不可欠と認識いたしております。そのためには、政府全体での議論の土台の一つとなる長期低炭素ビジョンに加えて、長期大幅削減を実現していく道筋の検討が必要であると考えております。

 環境省及び政府全体の今後の検討をさらに充実させる観点から、ご審議をいただきますよう、お願い申し上げます。どうぞよろしくお願いします。

安井委員長代理

 大臣ありがとうございました。

 続きまして、事務局から配付資料の確認をお願いしたいと思います。

木野低炭素社会推進室長

 その前に、中川大臣ですけれども、次の公務があるため、ここで中座させていただきます。

(中川大臣 退室)

木野低炭素社会推進室長

 それでは、資料の確認をさせていただきます。

 一番上に議事次第、置いてございますけれども、その下に配付資料一覧とあります。今回、資料1、2、3ということで、左とじのものが三つございます。あと参考資料として参考資料1、2、3、4、4種類用意してございます。あと前回小委員会、また懇談会のヒアリング資料に関しまして、後日追加でいただいた委員のご意見を、委員の皆様の席上には配付しておりますので、ご確認ください。

 資料の不足等がございましたら事務局までお申しつけください。よろしくお願いいたします。

浅野委員長

 それでは、本日は私、飛行機が遅れたため到着が遅れて、申し訳ございません。ではこれから進行役を交代し、議事に入りたいと思います。

 今日の議事はアジェンダにありますように、三つということになっておりまして、まず1、各国の長期戦略における大幅削減に向けた示唆についてということで、各国の戦略の概要とそこから得られる示唆として、事務局からおまとめになったもの。さらにまた有識者のヒアリングの概要について、事務局からまとめてご報告をいただきます。

木野低炭素社会推進室長

 それではご説明いたします。今委員長からございましたとおり、まず三つの資料、資料の1、2、あと参考資料2ということで、続けてご発表させていただきます。

 なお、本資料の内容に限らない、例えば最近の時流を踏まえたご意見等含めまして、環境省及び政府全体、今後の検討をさらに充実させる観点から、例えば我が国の戦略を特徴づけるようなもの、あるいは強化すべきもの、あるいは留意すべき点、そういったことをぜひご指摘、ご議論、後ほど賜りたいと考えております。

 資料1のご説明に入ります前に、今年6月の第15回の小委員会で増井委員と池田説明員から諸外国の長期戦略の策定プロセスについてご質問がありましたので、その後確認できた範囲で、まず冒頭回答を差し上げたいと思います。

 これについてはすみません、資料はお手元にございません。策定プロセスでございますけれども、各国さまざまではございますが、例えばドイツ、フランスといったところでは、ドラフトの作成前に市民、自治体、各種団体等から意見を聞きつつ、ドラフトを策定して、その上でさらに政府内外での議論を経て決定されております。特にドイツにおかれましては、市民からの提案、あるいは自治体、各種団体からの意見を受けた上でドラフトの策定に入ったとされてございます。

 あとイギリスですけれども、まだ国連に正式に長期戦略が出されてございませんので、ここでは割愛させていただいて、あとアメリカ、カナダでございますけれども、アメリカは大統領府の環境評議会、CQがドラフトを作成してエネルギー省、国務省、環境保護庁が中心となって調整を進めたとのことでございます。あとカナダにつきましては、環境省がドラフトを作成いたしまして、他省庁あるいは州政府との調整を進めたということでございまして、特に市民団体との関係についての言及はございませんでした。

 ということで、確認できた範囲で不十分な点はございますけれども、いずれにせよステークホルダーからあらかじめ意見を聞く、あるいは関係省庁と連携して、政府全体の長期戦略を策定していくといった点が示唆されるものと認識してございます。今後、我が国の長期戦略策定に当たりましても、関係省庁と連携しつつ、また多くのステークホルダーのご意見を聞きながら、丁寧なプロセスを踏むことが重要と認識してございます。

 続きまして、資料の説明に入らせていただきます。

 まず資料1の構成でございますけれども、本年6月にお示しいたしました資料をベースにいたしまして、このビジョン小委でもヒアリングいただいておりますが、イギリスよりClean Growth Strategyというものが、今年10月に策定してございますので、そういった情報も含めまして、あるいはカナダの情報も拡充しまして、G7各国について比較整理できる形でまとめてございます。

 また2ページに当たる部分で、今回長期戦略の位置づけを整理するとともに、その後、各部門の主要な絵姿を3ページ~7ページにまとめていると。その上で前回資料と同様ですけれども、8ページ~17ページまでに長期戦略の主要な要素を整理して、それ以降のページは参考に、各国の長期戦略概要ということでおつけしてございます。

 それではまず2ページ、ご覧いただければと思います。

 まずここで示しているのは、「戦略の位置づけ」ということでございますけれども、各国はいろいろ表現は違いますけれども、長期的な方向性を示す基本方針ですとか、包括的な政策提案、あるいは戦略的枠組みという位置づけをしてございます。あと今後道筋の検討というところで、特に今回整理してございますのは、戦略を示すに当たって、それぞれ目安となる数値が対策の欄に載ってございます。

 これが、この下の欄にございます定量的評価、定量的分析、そういったものを経てございまして、さらにそれの分析のための何らかの対策を仮定したシナリオ、これを置いた上で検討しているという状況が見てとれます。なお、この定量分析から出てくる数値の受け取り方でございますけれども、例えば英国ですと多様な将来に共通する対策・技術、あるいは不確実性を特定するためのものであるとか、あるいはカナダの欄を見ていただきますと、課題と機会を抽出するためのレビューであると、そういった位置づけでございまして、これが必ずしも将来予測であるとか、あるいはアクションプランに相当するものではないといったことは留意が必要だと思ってございます。

 その定量的分析をするために、シナリオ分析がございますけれども、それぞれ立て方は各国さまざまでございますが、一つ例として英国のものはご確認いただければと思います。このページの59ページ、ちょっと先ですけれども、59ページを見ていただきますと、英国のクリーン成長戦略を策定するに当たって、2050年の経路として三つのシナリオということで紹介されています。

 一つが再エネ、あるいは原子力起源の電力が主要なエネルギー源となる「電化シナリオ」、二つ目が暖房あるいは自動車で水素を積極的に利用する「水素シナリオ」、さらにバイオマス発電とCCUSを利用する「排出除去シナリオ」、この三つが提示しておりまして、それぞれのシナリオ、いずれも2050年に8割減の排出量となるような形で分析をしているというものでございます。

 例えば電化シナリオの結果を見てございますと、まず特徴的なのが発電量です。発電量がこの三つのシナリオの中では、電化シナリオが一番大きくなっています。また業務部門ですとか産業部門、それぞれ電気利用という割合が大きくなっているという特徴がございます。水素シナリオから得られる分析結果としては、それぞれの部門で水素利用が多くなっておりますけども、特に運輸部門を見ていただきますと、電化シナリオが100%電気自動車を想定しているのに対して、水素シナリオですと100%燃料自動車と、こうした形でこのシナリオに応じた結果が出てまいってございます。

 あと一番右の排出除去シナリオですと、それぞれの電気・水素の配分は中庸的になってございますけれども、一番特徴的なものとして発電部門、ここからの排出量が-22Mtということで、いわゆるベクスの技術を使ってネットマイナスと、ここが対策のとり方で一番特徴が出ております。

 これは一例ですけれども、こうした特定の対策シナリオに応じて、定量的な分析というのがそれぞれやり方の差異はあるが、あるということでございます。

 続きまして3ページに戻っていただきまして、ここ以降で、五つの部門についてそれぞれ各国がどのような2050年の主な絵姿として書いているかということを、まず整理してございます。

 まずはエネルギー部門ですけれども、それぞれ見ていただいてわかるとおり、基本的には再エネを拡大するというのが基本路線になってございます。さらに従来型の石炭火力等の火力発電につきましては、段階的に削減する、あるいはCCSを導入する、そうしたことが絵姿として出てございます。あとエネルギー貯蔵ですとか送電網、そこの柔軟性強化というところもございます。

 その一番下に日本ということで欄を設けてございますが、政府としての長期戦略、まだこれからですので、本委員会でおまとめいただいた長期低炭素ビジョンで該当する絵姿をどう示しているかということを、それぞれの部門で参考にお示ししてございます。

 あとその右側に、シナリオにおける数値ということで、参考となる数値をつけてございます。例えば先ほどご紹介しました英国ですけれども、三つのシナリオに応じて、それぞれ目標達成のための目安となる、この部門からの排出量ということで、数値が出てございます。あと例えば米国ですと、排出量ということではなくて、目安となる削減比、あるいはクリーン電熱の比率、そうした数値が出てございます。

 おめくりいただきまして4ページです。ここでは「2050年の産業部門の姿」ということで、主な姿を載せてございます。各国共通的に見られるのは、一つはリサイクル材、産業用途でリサイクル材の再利用、利用を推進するということ。あるいは電化という方向性、あるいは燃料の低炭素化、そういったことが言及されてございます。あとやはり産業部門でどうしてもCO2の排出量が不可避なプロセスというのもございますが、この産業部門でCCS、あるいはCCUの推進というのも共通的に見られるものでございます。

 次のページ、5ページです。ここでは「運輸部門の姿」ということで整理させていただいてございます。共通的に見られることとしては、乗用車については電気自動車であったり、燃料電気自動車、そういったものに転換していく、あるいは燃料を使うものについてはバイオ燃料等への転換、そうしたことが挙げられてございます。またカーシェアリングですとかモーダルシフト、移動における徒歩・自動車、そういったことも国によっては言及されているという特徴がございます。

 続きまして6ページ、こちらでは「家庭・業務部門の姿」ということで整理させていただいてございます。

 まず一つは建物について断熱性能を向上する。また家庭業務部門で使うエネルギーについては電化の方向性あるいは低炭素燃料へ転換する、再生可能エネルギーを利用する、そうしたことでこの部門ではゼロエミッションに向かうという方向性が、ほぼ共通的に見られるということでございます。

 続きまして7ページになりますけれども、ここは「農林水産部門」ということで整理してございます。幾つかの国で見られるのは、例えば化学肥料の削減、家畜の管理ということで、メタンを初めエネルギー起源CO2以外の対策について言及されていますし、あるいは森林面積の拡大のような吸収源効果の維持向上、こうした記載もここで見られるということでございます。

 こうしたことで、各部門についてお示しいたしましたが、8ページ以降につきましては、6月の小委員会からお示ししたような、同じ項目について中身は整理しながら整理させていただいておりますので、少し駆け足でご紹介させていただきます。

 まず、「気候変動対策と経済成長等」ということで、各国とも、気候変動対策によりまして経済成長を実現していくということが書いてございます。あわせて例えば社会、外交、SDGsの実施というような、気候変動以外のところの多くの便益、マルチベネフィットも認識しながら、気候変動に取り組むといったところが示唆される、特徴づけられるかと思います。

 9ページでございます。「長期目標の達成に向けた認識」とタイトルつけさせていただいておりますけれども、さまざまな研究ですとか、あるいはシナリオ分析というところから、長期目標の達成は可能だとしておりまして、ここに書いているような関連の記載も戦略中に見てとれます。

 続きまして10ページです。ここでは「イノベーションの必要性」というタイトルで整理させてございますけれども、従来の見えている技術だけではなくて、各国ともに脱炭素社会の実現のためにはイノベーションということが不可欠であって、さらにそれを後押しする施策が必要であるといったことがさまざまな表現で記載されているというご紹介です。

 続きまして11ページになります。「カーボンリーケージ」という観点ですけれども、各国カーボンリーケージの回避、あるいは各産業の国際競争力への配慮、こうしたことはどうした保護方策をとるかというのはさまざまですけれども、こうした配慮についての記載は共通して見られるところでございます。

 続きまして12ページです。ここでは「国内削減」とタイトルをしておりますけれども、各国とも、大幅削減の目標を掲げておりますけれども、その達成に向けて国内削減、これに取り組む戦略として記載がございます。

 13ページになります。「国外での削減」ということについてもパリ協定、目標達成には当然重要でございまして、各国、例えば国際的な基金支援、カーボンフットプリントへの取組ということですとか、あるいは技術等でパリ協定の目標達成に、海外的にも貢献するといったことも記載がございます。

 あと記載はさまざまですけど、例えば海外における削減率について、カナダですと、パリ協定に基づくものであれば短・中期的には自国の削減目標に活用する、あるいはイギリスですと、パリ協定に基づくものでなければ削減貢献の効果を示すということで、そのような記述も見てとれるところでございます。

 続きまして14ページです。ここでは「カーボンプライシング」に関する、各国の記載を整理させていただいております。それぞれ書き方はいろいろありますけれども、必要性ですとか施策のことが示されてございます。あとここにはすみません、書いてございませんけど、フランスなどは段階的に、どのくらいまでレベルを引き上げるといったことも、戦略中に記載している国もございます。

 あと続きまして15ページになります。「エネルギー政策との関係性」ということで、これにつきましては、各国とも長期戦略においてエネルギーの費用効率性ということに言及されています。あるいは気候政策とエネルギー政策は密接に関わるですとか、インフラ・エネルギー投資に必要な長期的な計画に低炭素な道筋を示すものとなると、長期戦略の位置づけをそう書いたりして、各国、エネルギー政策との関係性についても、それぞれ記載があるというところでございます。

 続きまして16ページです。ここでは「地方との関係」というタイトルで整理してございますけれども、地域レベルでの温暖化対策の推進、あるいは地方にとどまらず経済界、社会、市民、そうした各ステークホルダーとの参加ですとか、あるいはそうしたところがそれぞれが重要な役割を担う、そうしたことでステークホルダーと一体となってしっかりやっていくという姿勢が長期戦略にも書いてございます。

 あと最後17ページになります。「フォローアップの方法」ということになります。これも各国書きぶりはさまざまですけれども、長期戦略を策定してからの進捗管理ですとか、あるいは定期的な見直しの実施、そうしたことについて記載がございます。こうしたところが各国共通して見られる部分の整理ということで、あと、以下の参考資料ということで、各国の長期戦略に当たるプラン等について、もう少し詳しく整理を試みたものをつけてございますけれども、ここでの説明は省略させていただきます。

 続きまして、資料2をお手元にご覧いただければと思います。1枚表紙めくっていただきまして、2ページですけれども、各国の長期戦略からの示唆ということで、各国の長期戦略、横串的に見たときに、共通して得られる示唆ですとか、あるいはあぶり出される内容、そういったことについて整理してございます。

 まずポイントごとに触れていきますと、最初に長期戦略の位置づけということで整理してございますけれども、各国ともに大幅削減に向けた政策の枠組み、あるいは取組の基本方針を示すものとして位置づけてございまして、さらに長期戦略によって方向性を示すことで投資の予見可能性を高める、あるいは大幅削減に向けた移行を成長の機会にしていくと、そういったものとして策定してございます。

 あと長期目標との関係でいいますと、各国とも積み上げによらず、意欲的な目標を掲げている。なので、今、2050年をターゲットにしたような長期目標については、方向性を示すものということで捉えていると考えられます。

 3ページに移ります。長期大幅削減に向けた基本的な考え方ということで、いろいろな記載がございますけれども、特徴的なものとして一つは気候変動対策、これを経済成長の機会として捉えるということですとか、先ほどもご紹介しましたが、社会、外交、SDGs、そうした多くの便益を認識しながら取り組む。あるいはイノベーションが不可欠であるということ。国内削減を原則としつつ、国外の削減にも貢献していくという姿勢が示されている。また各国とも長期目標の実現という方向性は一つであるんですけれども、その方向性をどう実現するかということについては、それに整合する削減の方策、あるいは道筋はさまざまな可能性があるということで、柔軟性を持たせているということが考えられるところでございます。

 めくっていただきまして4ページになります。長期大幅削減に向けた対策・施策の方向性ということですけれども、先ほどご紹介したような定量的なシナリオ分析というところを使いながら、分野ごとの目標ですとか、取組の方向性を示したりしています。そうしたことを通じて得られる知見を参考に、必要な対策ですとか施策の方向性を示す、あるいはそういったことに役立てているといったことが見てとれます。

 さらに次のページですけれども、それぞれの分野ごとに見ていきますと、エネルギー部門ですと、エネルギー利用の効率化、あるいはエネルギーの低炭素化、低炭素化したエネルギーの電力利用、電化といったところが要素として挙げられてございます。また、再生可能エネルギー、これを主力電源とするということで、それを可能とするための取組の必要性、これが各国で示唆されているところでございます。

 また石炭等を使う火力発電につきましては、段階的削減ですとか、CCSによる低炭素電源化、そうしたことの記載がございます。あとはディマンドレスポンス、あるいはエネルギー貯蔵、power to gas、送電網の整備、こうした将来の情報デジタル技術の進展ということも踏まえながら、需要側も含めたシステムの柔軟性の確保、その重要性も指摘されているところでございます。

 すみません、めくっていただきまして、産業部門です。これは素材産業、例えば鉄とかセメント製造が代表かと思いますけれども、循環資源を活用していく。あるいは環境負荷の低い製造プロセスに移行していく、そうしたことがありまして、循環資源を利用した高付加価値材などで、市場ニーズを満たしていくことの重要性というところが、各国の記載から見てとれるところでございます。

 また先ほどもご紹介しましたが、抜本的な削減技術としてはCCS/CCU、CCUS、それを推進するといったこともございまして、実装に向けた技術開発、あるいは適地調査、制度整備、こうしたことの必要性も示唆されるものになってございます。あと省エネ対策とともに電化、低炭素燃料の活用といったところ。あと運輸部門ですと電気自動車、あるいは燃料電池車のようなモーター駆動による乗用車、この普及を前提として、電化が困難なところは内燃機関の燃費改善、これをさらに挙げるといったところがございます。

 次のページです、7ページ。家庭・業務部門ですと、まず電化を進める絵姿というものが見てとれます。さらに暖房等の熱需要に関しましては、電化もございますけれども、水素ですとかバイオマス由来の燃料、そうした低炭素燃料の実用化の重要性が示されてございまして、この分野の今後のイノベーションの重要性というところが示唆されます。また住宅・建物、断熱性の能力向上というところも挙げられてございます。あと農林水産業、肥料、家畜の管理といったところ、あるいはバイオマスのエネルギー利用、こうしたところが共通して見られるところでございます。

 続きまして8ページのところでは、部門を横断して示唆されるところを幾つか並べてございまして、最初にやはり革新的な技術開発、これは必要といったことが見てとれます。またスマートメーターによるエネルギー利用などの情報通信技術、これの利活用、この重要性も見てとれます。さらに投資を含めて環境金融、そこの重要性が各国認識されておりまして、その推進についても示されているというところがございます。

 さらに費用対効果、あるいは民間投資の促進との観点から、カーボンプライシングの必要性、あるいはエネルギーの費用効率性などの重要性ということで、長期大幅削減と整合的なエネルギー政策の方向性というところが示されております。またさらに適切な財・サービスの選択、あるいは投資のために環境情報の提供、適切な機会とかリスクを含めた提供、それを促す仕組みの必要性についても示されてございます。

 最後9ページですけれども、都市構造、あるいは大規模施設などのインフラにつきましては、長期にわたって排出量が高止まりするロックイン効果の回避、この指摘が見てとれますのと、あとコンパクトな都市構造の重要性ですとか、あるいは適切な行動を促すための教育ですとか、研究開発を担う人材育成の必要性、そうしたところも方向性として見てとれます。

 最後5.です。着実な取組の推進という観点で、地域、市民の取組を推進・強化するということ、また戦略主体をレビューして、状況の変化に応じて策定していくと、こうしたことが見られるということになってございます。

 資料2は以上になりまして、もう一つ、参考資料2のご説明をさせていただいて、説明を終えたいと思います。

 参考資料2でございますけれども、本小委員会で第16回~第19回、延べ5回にわたりまして有識者からのヒアリングを実施していただいてございます。詳細については環境省のホームページでスライド、議事録ともご確認いただけますが、この資料ではざっと概要について環境省で取りまとめてございます。

 まず電源の低炭素化というところで何人かの有識者にヒアリングしてございます。最初海外電力調査会の相澤様には、「海外のエネルギー事情」ということで、2回にわたりヒアリングさせていただきました。国内の再エネの大量導入の実現ということに関しましては、低コスト化ですとか、認可制度、分散型の供給システム構築等に、さらなる改善の余地があるといったような指摘をいただいているところでございます。

 A.T.カーニーの笹俣様からは、「電力自由化の推進と電源ミックス等への影響」ということでご説明いただきまして、足元の状況変化として電源開発への卸売市場価格の影響拡大、あるいは資源価格の低下に着目すべきというポイントについてご指摘いただくとともに、将来の資源価格と原発比率が電源ミックスに及ぼす影響については留意が必要という考察をお示しいただきました。

 また、スプリント・キャピタル・ジャパンの山田様からは、「低炭素社会のエネルギー・ビジョン」というテーマでご発表いただきまして、低炭素社会に向けてはエネルギー供給システムに新たなパラダイム構築が必要であること。また、環境エネルギー・ビジョンとしてのキーワードは、低炭素化に加えてオール電化、コスト競争力、分散型システムということにあると。また今後の変化として人口減少、低炭素化、自由化、分散化、デジタル化ということに対応するために、システム設計ですとかビジネスにおいて柔軟性が求められるというご指摘をいただいているところでございます。

 さらに東京電力パワーグリッドの岡本様からは、「低炭素化に向けた電力システムの方向性と課題」ということでお話しいただきましたけれども、自由化・分散化・脱炭素化・デジタル化ということを契機に、長期にわたるエネルギーシフトがグローバルに需給両面で進むということですとか、その変革を支えるプラットホームとして、電力システム改革の必要性、あるいは今後の電力需要に対応するための低炭素電源供給手段の多様化としての指摘、また再エネ導入のための三つの課題ということで、ここに書いているようなことをご指摘いただいたところでございます。

 また京都大学の経済学研究科、安田様からは、「再生可能エネルギーの系統連系問題はなぜ日本で顕在化するのか?」というテーマでお話いただきまして、世界で再エネ導入が加速化するのは、費用便益が大きいためであって、この費用ということには隠れたコストも含めるべきである。あるいは新規市場参入者である再エネ事業者に関する系統連系の問題のほとんどが、技術的な問題ではなくて、制度的要因に帰するので、運用方法における変革が今後必要ではないかというご見解をいただいたところでございます。

 またグローバルCCSインスティテュートのペイジ様からは、「世界のCCSの動向」ということで、パリ協定の2℃目標の実現のためにはCCSが世界で実装が見込まれる主要分野の一つであること。またそのためには強力な施策、技術革新、コストの低減化等が必要であること。また、火力発電所のみでなくて、産業部門での利用ですとか、CCSと組み合わせた水素ガスの製造等にも展望があるといったような見通しをいただいたところでございます。

 めくっていただきまして一番上です。同じくグローバルCCSインスティテュートのオンブストレット様からは、「ノルウェーにおけるCCS活動」ということでご紹介いただきました。ノルウェーでは20年を超えるCCSの経験があるということで、国際レベル、国レベル、地域レベルの関連規制がある。さらに推進には国営機関が関与しているということ。また、炭素税が実施インセンティブになっていると、そうした実態をご紹介いただいたところでございます。

 また、英国の気候変動委員会のバロネス・ブラウン様からは、「英国の気候変動戦略」ということでご紹介いただきました。英国においては気候変動法というのがありまして、2050年80%削減を目指している。さらに達成のための道筋としてカーボンバジェットを5年ごとに設定して管理している。またその設定に当たってはエビデンスの収集、さまざまなステークホルダーとの対話、あるいは産業競争力への配慮ということを実施しているということでありました。

 また近年は、カーボンプライスフロアという炭素価格の導入によりまして、電力分野、特に石炭火力からの排出が大幅に削減できているという実態と、あと産業向けにはカーボンリーケージ、リスク回避のために炭素価格負担への補償の仕組みもあるといった状況についてご説明いただいたところです。

 あと最後のテーマ、「海外エネルギー事情」ということですけれども、冒頭にご紹介いたしました相澤様からは、海外の電力事情ということでご紹介いただきまして、各国の状況によって、あるいは歴史的な経緯、資源がどれだけあるかということによって、エネルギー戦略は異なるということで、背景ですとか、近年の政策の動きということも含めてご紹介いただいております。

 また電力の安定供給ですとか、低コスト化、再エネ導入の観点から送配電網の増強ですとか、あるいはアンシラリーサービス市場の拡大、こうした世界的な動きについてもご紹介いただきました。また、原子力政策という観点では、福島第一原発の事故後に各国の原発に関する政策動向、ここもやはり国によって、事情によってさまざまであるということ。そういった政策判断にはエネルギー・セキュリティーの論点に加えて、社会情勢も大きいといったことをご指摘いただきました。

 最後になります。笹川平和財団の田中様からは、「嵐の中のエネルギー・地球環境戦略」というタイトルで、特にアメリカのトランプ政権による影響について、考察をご説明いただきまして、エネルギー地政学の観点からは世界情勢は一層不安定になっている。日本は引き続き中東リスクを抱える状況である。そうした中でエネルギー安全保障の観点からは、電源に多様性を持たせておくこと、あるいはグリーンな電力の安定供給ということが重要ではないかと。また、再生可能エネルギーの活用ということについては、地域分散型のシステム思考が必要だといったこと。さらに原子炉の技術の状況として、今、世界では第4世代というところの開発が進んでいて、特に統合型の高速炉に革命的進化が見られると、そういったようなご紹介をいただきました。

 これ以降で参考といたしまして、もう少し詳しく各回のヒアリングでご指摘いただいたことをまとめておりますけれども、今日の説明では省略をさせていただきます。

 事務局からの説明は、以上となります。

浅野委員長

 どうもありがとうございました。各国で既につくられている長期戦略、これには、まだ国連に登録されていないものもありますが、その整理をしていただき、さらにこれまでのヒアリングでどういうお話を承ったかということについての整理をいただきました。

 この小委員会としては、以前ビジョンを既に3月に発表する前に、かなり時間をかけて多くの方々からのヒアリングをいたしまして、その記録も全部残っております。それを補完するという意味で、もう少し重点的に聞いておかなくてはいけないという部分について、今回のヒアリングで埋めたというつもりでありますので、最近になってこの委員会の検討の様子をご覧になりはじめた方の中には、これぐらいのヒアリングしかやっていないのかと思われますとこれは困りますので、そうでないということを確認をしておきたいと思います。

 そういう形で、いろんな方々のご意見を承ってまとめましたビジョンにもとづいいてこれをさらに、今度は国の戦略に持っていくために、どういう考え方をとったらいいのかについての取りまとめをしなくてはいけない段階に今、来ているわけでございますが、今日はその検討のキックオフということになると思います。

 事務局の整理をおききになられた方のうちには、一方的な整理だと思われる方がいらっしゃることは重々承知なんですが、事務局はこういうふうに読んでいる、こういうふうに聞いたということでありますから、今のうちにそんな聞き方はおかしいとか、そんな読み方はおかしいということを言っておいていただかないと、これが固定化していきますので、そのことを十分意識した上で、今日はご自由にご意見をお述べいただきたいと思います。ご発言ご希望の方は、どうぞ名札をお立ていただけませんでしょうか。

 前回の19回のときは大塚委員からご発言いただましたので、今日は反対側の席からお願いいたします。では、増井委員、どうぞ。

増井委員

 おまとめいただきましてどうもありがとうございます。非常に網羅的に取りまとめていただいて、大まかに言えば多分技術的には、8割減とか、あるいはさらにそれより多い削減というのは可能なんだろうと。それをいかに実現していくのかということに、各国とも苦心されているんだろうなというようなことが、この資料から読み取れるわけなんですけれども、2点ほど質問があります。

 まず1点目は、それぞれの国でいわゆる行動変容について。エネルギー供給側からはこういった対策があるといったことや、イノベーションがあってということで、非常に詳細に書かれているんですけれども、技術を実際使う側について何か意見といいますか、記述がなかったのかということが1点目です。

 それとも関連するんですけれども、2点目なんですが、いわゆる各国の国民の皆さんの認知度といいますか、認識度についてです。こういうそれぞれ長期の戦略ができているわけなんですけれども、それぞれの国で世論調査といったものが行われて、国民のどれぐらいの方々がきちんと認識されているのか、この辺りも、もし情報がございましたら、教えていただければと思います。

 以上です。

浅野委員長

 ありがとうございました。ご質問に対するお答えは後でまとめてお願いいたします。それから多分ご質問の内容によっては、現段階で事務局とても答えようがないとか、そういうのは環境省の環境研究総合推進費による研究でやっているかもしれないので、そちらの報告書をご覧いただいたほうがいいというものもあるかもしれませんが、その点はよろしくお願いいたします。

 それでは根本委員、どうぞ。

根本委員

 各国の長期戦略を体系的におまとめいただきまして、ありがとうございました。戦略のあり方の観点から、資料2について数点ご意見申し上げたいと思います。

 基本的な認識としては大臣が冒頭ご発言になられましたように、長期大幅削減は地球規模の話だということを前提に発言をさせていただきたいと思います。

 1点目は、長期戦略の位置づけです。2ページに記載されているとおり、各国は、長期戦略目標を、達成すべきものである中期的な戦略目標とは明確に分けていることを確認しておきたいと思います。長期ビジョン策定の際にも申し上げてきましたが、長期戦略目標はあくまで一つの方向性や、あり得る経路、パスを示すものにすぎません。2050年目標を厳格に捉えて、バックキャストして硬直的な管理をするものでないことを、再度この時点で確認をしておきたいと思います。

 2点目は柔軟性の確保です。これは極めて重要です。3ページに、削減方策、あるいは道筋については、各国とも柔軟性を持たせているとありますように、複数シナリオで多様な道筋を想定する方法がとられていますし、削減手段に非常にオープンな形でされています。将来の不確実性は、さまざまな分野でさまざまな形でありますので、それに柔軟に対応できるような方法をとっておかないと、後で非常にほぞをかむことになりかねないと考えています。

 3点目は、各国の削減のやり方を参考にするのはいいのですが、それぞれ国情が違いますので、日本ならではの対策、あるいは方向性を検討していかなければいけないということです。5ページ以降に、分野別の対策や施策の方向性について、いろいろ記載されていますが、マクロ経済環境や地理的条件、産業構造、エネルギー構造等々を踏まえて、丁寧に議論を進めていく必要があると思います。

 産業構造一つとっても、基本的に今、中東全面依存のような形のエネルギーの状況もあります。製造業、炭素リーケージの話がいろいろ出ていましたが、製造業の将来をどのように考えるのか、日本の産業構造をどう考えるのか、絵姿をよく考えながら議論することが必要だと思っています。

 3ページに戻りまして「国内削減を原則としつつ」とありますが、冒頭申し上げたとおり、長期大幅削減は、あくまでもグローバルな話だということを忘れずに、対策を行っていく必要があると思います。日本の場合には、むしろこれまで培ってきた省エネ技術があり、グローバルなバリューチェーンの中で、日本の強みを生かすことのほうが、地球規模の削減に大きく貢献できるという事実を直視すべきだろうと考えています。

 誤解を恐れずに申し上げますと、各国は、自国の強みを踏まえて長期戦略を上手に打ち出しているように見えます。国際交渉ですので、国益と国益がぶつかるという話でもあります。それぞれの産業競争力、国民経済、これをどのようにマネージしていくかの力量が問われる場でもありますので、我々としてもしたたかに戦略を練り、グローバルに貢献をしていくべきだろうと考えています。

 以上です。

浅野委員長

 ありがとうございました。手塚委員、どうぞ。

手塚委員

 3ポイント指摘させていただきます。最初にまず各国の長期戦略ですが、基本的には積み上げではなくて方向性を示すものであり、かつ環境と経済成長を両立させるということが書かれている。これは非常に納得するところなんですけれども、一方で策定プロセスは先ほどご紹介ありましたように、各国とも環境省、それに相当する省庁だけではなくて、政府のさまざまな分野、あるいは社会のステークホルダーとの会話の中で、こういうものをつくったというご紹介があったと思いますが、一方で、私がいます鉄鋼業界では、世界鉄鋼連盟の環境委員会の中で、各国の2050年でなくて2030年のNDCの策定プロセスに、鉄鋼産業はどういうふうにコンサルテーションを受けたかという話を確認したところ、受けたところは日本ぐらいで、ほとんどないという事実がございます。

 つまり、恐らく各国とも環境経済、あるいはエネルギーの専門家の学識経験者、そういう方々にヒアリングはされたんでしょうけども、実際に個別の産業セクターにヒアリングをして、こういうものをつくられているわけでは恐らくないのだろうと、2030年ですらそうなんですから、ましてや2050年はないのだろうと思います。

 そういう意味で、実際にはいろいろやっていく中で、試行錯誤が出てくる。現実にメルケル首相はCOP23のプレナリーのスピーチの中で、2020年の目標すらドイツは達成が極めて困難であるということをはっきりとおっしゃっておるわけで、あれだけいろいろ環境対策がやられているドイツでもやはり目先の目標、必達目標ですら達成できないような、いろいろ政策的困難さが伴っているというのが実情でございますから、ぜひこれは方向性を示すものとして長期ビジョンを位置づけて、その途中では技術開発の進展度合いや、あるいはさまざまな政策の実績なり成果なり、こういうものによって柔軟に見直していくというようなプロセスを組み合わせて取り組んでいくのが望ましいのではないかというのが1点です。

 2点目は、各国の取組の中に出てくる個別の対策として、これは多分例示が書かれていると思うんですけども、挙げられている技術が基本的に現状の延長のものが書かれているんです。再エネであったり電気自動車であったり省エネであったり。ですけど、35年先の2050年の話というのは、果たして技術は現状の延長なのかという問題があって、これは予断を許さないと思います。むしろ現状よりもはるかに進んだ安価で安定的な、クリーンなエネルギー技術といったものを開発していって、そういうものが実際に戦力になっていくということで、2050年の長期戦略というのは達成されていくんではないかという気がいたします。

 ちなみに電気自動車は、今ブームになっていますけども、ある資料を見てわかったんですが、1917年のアメリカの交通分野における電気自動車のシェアは38%です。それがわずか数年後にほぼゼロまで落ちるわけです。これは何が起きるかというと、当然異なる技術がぶつかり合って、どっちが勝つかという戦いが起きて、実際はガソリン自動車が勝って今日に至っているわけですから、今度逆の革命がこれからどういうふうに起きるかということは、予断を許さない状況にあるということだと思いますので、あまり技術に対して予断、あるいは予見をしないで、さまざまな可能性を残した政策を積み上げていくということ、そういう可能性に研究開発のサポートを含めて、政府として力を注いでいくというのが重要じゃないかと思います。

 最後に、各国とも国内削減が中心だと言いつつ、一方でリーケージに対する対応も記述しています。いろいろな意味で苦慮されているんだろうと思うんですけども、ここに書かれている長期戦略を掲げた国の排出量は、全部積み上げても、恐らく100億tはいかないんです。世界全体の排出量500~600億tのうちの、5分の1もいかないわけで、これらの国が仮にゼロになっても、実際世界全体で2050年半減するためには、もう数百億tの削減をどこかこれ以外の国で行わなければいけない。

 そういう意味で国内対策も重要ですけども、圧倒的に重要なのは、これから人口も増え、エネルギー消費も増えるであろう途上国が、いかにしてこれらと同等、あるいはこれに近い形での対策をしていくような環境をつくっていくかと、こういうことにあると思います。それは温暖化対策の解決に向けての重要なポイントであるということは、ぜひご考慮をいただきたいと思います。

 以上です。

浅野委員長

 ありがとうございました。高村委員、どうぞ。

高村委員

 ありがとうございます。今回、各国の長期戦略の概要と共通点といいましょうか、そこを踏まえたときの整理をしていただいていて、これ大変おもしろいというか、いいまとめをしていただいていると思っております。というのは、少なくともここに上がっている主要先進国が、パリ協定の長期目標に向けて脱炭素に向かうときに、何が重要事項であり、どういう方向に向かうべきかということの共通認識、少なくとも相場感というのを示しているという点でおもしろいというふうに思います。

 もう一つは、先ほどからもありましたように、いろいろなグローバルな市場をめぐってビジネス、競っていらっしゃると思うわけですけれども、それも含めてどういうふうにこれから市場が変わっていくのかという方向性も透けて見えてくるという意味で、大変おもしろいというふうに思います。

 幾つか書かれていること、大筋そんなに違和感はないんですけれども、そういう意味では細かなことで申し上げたいと思うんですけれども、今後整理をしていただくときに、共通のものを洗い出していただいたのはよかったと思うんですけれども、他方で、やはり特徴的なところなり、変えているところもあるように思っていまして、一つは先ほどからございましたように、今検討会で検討をしている国際的な戦略というところは、国によってはあまりなかったりもするわけですけれども、これは日本としても必要なところだろうと思います。

 ただ、もちろん特に国際戦略どういう議論をするかと、どういうふうにつくっていくかというところもありますけれども、特にそれが日本の産業が外に出ていって、グローバルな市場でやっていくということになると、マザー市場としての日本でどういうふうに低炭素化、脱炭素化に迎えるかという課題は同時に伴うので、同時に国内の削減と切り離すことはできないと思います。ただ一つ、今言った国際戦略というところは、必ずしも共通しては出てきていないかもしれませんけども、一つ取り上げるところかなと思います。

 もう一つフォローアップといいましょうか、戦略をつくるときの柔軟性というところです。私も特に長期の2050といったようなスパンでいくと、きちんとそれぞれの技術の変化、社会の変化、進捗状況を見ながら軌道を修正していく、戦略を修正していくような対応をきちんとする必要があるというふうに思います。

 これはフランス、実際上イギリスはカーボンバジェットでやっていると思いますが、このフォローアップの仕組みというのは、私はやはり戦略についても必要ではないかと思います。2030年の進捗管理とは違う意味で、先ほど言われた世の中の変化を踏まえたときに、しかしながら何が足りていないのか、むしろ方向転換を図るところがどこなのかということをしっかり見ると。

 幾つかの国は、やはりパリ協定の5年のサイクルでそれをやろうとしているところがあると思っていまして、フランスがそうだと思いますし、さっき言いましたイギリスは独自のカーボンバジェットを持っていますから、5年のサイクルにあわせやすいんだと思いますけれども、恐らくそれは日本の長期戦略にも必要なところではないか。まさにフレキシビリティ、戦略の柔軟な見直しを可能にするという意味でも重要じゃないかなというふうに思います。

 あと一つは大変細かいところで恐縮ですけれど、フランスに関して言うと、今年の7月にカーボンニュートラルを2050年にマクロン政権で今、大統領でもって出し直していると思うんですが、今度は多分詳細がまだ出ていないからだと思いますけれども、それについては、しかし言及をしておいていただくのがよいのではないかと思います。

 以上です。

浅野委員長

 ありがとうございました。安井委員、お願いします。

安井委員

 ありがとうございます。このドイツ、フランス、英国、カナダ、米国、大変参考になってよろしいんですけれども、実際には欧州と日本の違い、あるいは米国大陸と日本の違いというのは非常に大きくて、今私のところでも皆さんと一緒になって、大幅削減のシナリオを検討しているんですけど、日本の場合にはエネルギーの需給率というのがどう考えたって50%超えてどこまで上がるかなぐらいしかいかないんです。

 そこがEU系ですと、実を言うと多分それぞれの国の需給率はあまり問題じゃなくて、彼らは電力でもってエネルギーをやりとりできちゃうんですけど、日本は外国からエネルギーを輸入しようと思うと、物で輸入しなきゃいけないので、そこが非常に大きくて、ですからこういうシナリオと日本のシナリオをどうやって突き合わせて、どうやってロジカルに解析をするかって、結構難しいです。ですからその辺を含めて、どうしたらいいかというものを考えていきたいというふうに思うわけです。

 それであと、CCSも同じでございまして、CCSもどうしても日本でやっていくと、昔からそんなことをずっと言い続けていますけど、というか皆さん解析をおやりいただいている方が何人かおられて、それでそのデータですけど、大体10億t/yearぐらいのCCSをやらないと、大抵だめだというシナリオになるんですけど、その辺りはひょっとするとEU辺りも参考になっている。どこにどうやってそれだけCCSをやる気なのか。日本に大体CCSのキャパはどこまであるのかみたいなことを比較していかないと、なかなか日本の特殊事情というのが、こういう外国のデータを見たときに、どうしても一つの阻害要因になってしまうという、そんな気がしております。

 以上でございまして、これ大変参考になりますけど、やっぱりもう少しかみ砕かないと使い物にならないかなという感じがします。

浅野委員長

 ありがとうございました。それでは末吉委員、お願いいたします。

末吉委員

 ありがとうございます。幾つか申し上げます。私自身の見方でいけば、各国の長期戦略下の示唆は、底辺に次のような思想が流れていると思います。第1に法律によって長期的方向性を担保する、こういうことです。これはイギリスの気候変動法が非常に典型例だと思います。それから二つ目は縦割りではなくて、総合的な法律、政策を打ち出していると、国全体でということであります。これは中国やフランスなどを見ると、まさにそうだと思います。先ほど中川大臣がご挨拶で、「政府全体として」とおっしゃったことが、今の縦割りを排除するんだということであれば、大変結構なことだと思っております。それからもう一つ、3番目に、そのうちに司法が出てくるんじゃないかと。これ、いろんな意味で訴訟が起きます。多分第2のたばこ産業になるという言い方もありますので、ですからこういったことも念頭に置いて、長期戦略を考えていく必要があると思います。

 それで私の見方でいけば、世界はそういった長期戦略をビジョンないしプランだとすれば、もうとっくにDoの段階に入っている。現実のほうが本当に成功している。昨日トヨタが2025年までにエンジン車を廃止するという発表をされたそうです。非常に驚きました。皆さんご記憶あるとおり、トヨタは2015年10月14日に「環境ビジョン2050」と発表されて、ガソリンエンジン、エンジン車が消えるとおっしゃったんですけど、そのときのタイミングは2050年でした。それからわずか2年でトヨタが25年も前倒ししました。これは何も2050年の話じゃないという話です。目の前の話です。あのトヨタですら読み違えたというと大変失礼なので、さすがトヨタ、2年で25年も前倒しできるんだと、そうしたことを申し上げます。

 それから11月にシーメンスが火力発電部門で6,900人の人員削減をするという報道がありました。私が驚いたのは、あのシーメンスがこう言っているわけです。火力発電部門のマーケットが我々の想像を超えるスピードと規模で起きてしまった。事業が破壊された。Destructionだと言っています。あのシーメンスですら読み切れないスピードと規模で、マーケットの変化が起きているということです。12月に入ると同じ分野で人員が1万2,000人の削減をすると、こういったことがもう現実に起きているわけです。

 それから先週行われましたOne Planet Summitで、これは金融が中心ということだったので、金融上のいろんな話が出てきているんですけども、私が一番驚いたのは世界銀行です。ご存じのとおり2019年以降来年、再来年、実質来年ですけども、それ以降はオイルとガスのアップストリームには融資しないと決めたという、こういう話であります。石炭は既に進んでいたわけですけども、ついに全ての化石燃料に世界銀行がもう金を出さないんだと、こういったことを一体誰が想像できたでしょうか。

 それからアクサ、アリアンツ、それから三井住友信託も名前が入っているようですけど、世界の224の金融機関、運用資産26兆ドルという、非常に大きなグループが、日本企業を含む100社にCO2を減らせという要求を出しました。金融が非常に動いております。アクサのトップが何といったかというと、4℃も上がるような世界は保険が成り立たない。Uninsurableと言っております。私はもともと銀行ですから、銀行がなくても世の中成り立つと思います。金を出す人いっぱいいると思います。でも損害保険のない社会というのは、あり得ないと思います。損害保険のないビジネスはあり得ません。現実は、こういうようなところに来ているわけであります。

 この問題は、個別企業、個別金融機関の死活問題になってきていると思います。ですから、ビジョンがいいとか悪いとかという話ではなくて、今日の問題、明日の問題としての個別企業のビジネスの生き残りの話になってきていると、私はこういう認識が非常に重要であると思います。ですから、2050年のビジョンがどうのこうのという話ではなくて、本当に日本の経済や産業や日本の社会がどうなっていくのか。もう今日の問題だと、そういう認識が非常に重要だと思います。

 最後に申し上げますけども、最近の日本の新聞を見ますと、「遅れ」のオンパレードです。日本があらゆるところで遅れ始めた。特に「環境後進国」というシリーズ物の記事が出る時代です。COP23では日本は批難の的でありました。こういう現実をよく認識して、日本のビジョンをつくっていく、計画を立てていく、その実効性を確保していく、そういったことをやっていく必要があるのではないでしょうか。

 以上です。

浅野委員長

 ありがとうございました。崎田委員、お願いします。

崎田委員

 ありがとうございます。私は主に暮らしとか地域の視点でずっと取り組んできているんですが、そういう視点から見ても、今回いろいろまとめていただいた中で、2030年の温暖化対策というのは、私たちは積み上げ方式でやってきましたけれども、それだけではなく、しっかりとした大きな行動変容とかを起こすような形で、2050年はしっかりとしたイノベーションを想定して考えていかなければいけないと強く思います。

 そういうときに、どういうふうに考えるかというときに私は、今、エネルギーのことと地域の社会システムと、自治体のことと三つ申し上げたいんですが、特にエネルギーに関しては、国や自治体の水素戦略づくりに参加をしてきたんですけれども、例えば日本は自給率が低いという中で、将来は水素もしっかりと活用するという方向をもっているわけですが、家庭用燃料電池や燃料電池自動車だけでなく、発電とか産業界に大量に活用していくという道筋の先に、CO2Free水素、再生可能エネルギーを活用した水素を早く取り入れたいというような絵を描いているわけですので、そういうようなことも考えながら、できるだけ早く、しっかりと社会に定着させるにはどうしたらいいかという戦略を立てていただきたいと思っています。

 社会システムのことに関しては、先ほど消費者・市民の行動変容はできているのかというご意見もありました。実は日本は市民の環境行動のアンケートをとると、関心は非常にあり80%~90%、と高いんだけれども、じゃあ環境配慮商品を買っていますか、行動していますかというと、10%~20%に落ちるというのが、大変大きな特徴で課題と言われているわけです。けれども、もう一つ別の視点からアンケートをとって、ではその行動を変えたくないですかと聞くと、「変えたくない」と答える人は3%ぐらいしかいないんです。ですから新しいシステムが提案されれば、環境学習がしっかりできている世代も増えている社会の中ですし、定着するというふうに考えていますので、思い切ったことをやっていくというのが大事だと思っています。

 最後に地域のことを考えたときに、こちらのまとめにもいろいろありましたけれども、自治体に、しっかりと自分たちの地域の将来を考えてもらいながら地方創生を含めて戦略を立てていく。あるいは地域の分散型エネルギーシステムをどう構築するかなど、モデル事業ではなくすべての自治体がしっかり考えていくような、そういう政策も打っていくということが大事だというふうに思っています。

 なお、先日クールチョイスアワードの受賞者が発表されて、私もその審査に関わらせていただいたんですけれども、結構おもしろいのがたくさんあって、窓枠を工事しないで二重窓にできるような新しい製品とか、地域で低炭素交通で多くの高齢者の方にも乗っていただけるような低速バスを運営する会社とか、つい消したくなるデザイン性の高いスイッチとか、とてもおもしろいものがいっぱいありました。せっかくああいうアワードをやっていただいているわけですので、社会にどんどん発信をして、社会の関心を高めながらこの長期ビジョンを検討していくという、そういうような社会の温度感を高める作戦もしていただければありがたいと思っております。よろしくお願いします。

浅野委員長

 ありがとうございました。加藤委員、お願いします。

加藤委員

 各国の長期戦略のきちんとしたまとめをいただきまして、わかりやすくありがとうございました。

 ただここには政府レベル、国レベルのかなり戦略、施策だったと思うんですけれども、もう一つ参照する項目として加えていただきたいのは、グローバル経済、今、末吉委員のほうからもお話ございましたけれども、グローバル経済の動き、それからビジネス、各業界、各企業の戦略、こういったものもぜひ理解したうえで考慮の中に入れていただきたいなと。

 なぜかというと、日本の長期戦略というものが、ただ単に日本固有の課題、日本固有の問題を配慮するというわけにはいかない。日本がグローバルで存在しているわけですから、グローバル社会の中で日本の国の戦略という形で環境問題、長期戦略を捉えるべきではないかなと。日本の施策がまずい施策になっていますと、グローバルでは認められない。

 ですから、ガラパゴス化してはいけないんではないかなと。世界の動きにしっかりと見詰めた戦略にすべきである。さもないと日本がグローバルの経済、あるいはグローバルのサプライチェーンの中で国際競争力を失い、日本がはじき出されるという危機感も抱いておりますので、グローバルで事業を営む企業群の代表としましては、そういうことをぜひ考慮していただきたいなというところがあります。ですから、日本固有の問題として捉えないということを、ぜひ考えていきたいなというふうに思います。そういった中では、再生エネルギーですとかさまざまな革新的な技術、イノベーションというものを次世代のために、日本の技術をそこに総力を注ぐというようなイノベーションの戦略というものも、気候変動問題の長期戦略の中には織り込むべきかなというふうに思います。

 以上でございます。

浅野委員長

 ありがとうございました。大野委員どうぞ、お願いします。

大野委員

 私も3点、申し上げたいんですけども、一つは3月に策定した長期ビジョンの中では、目標として2050年に電源の9割は低炭素化するというふうになったわけですけども、その内訳については再生可能エネルギー、原子力、CCS火力というふうに三つになっていて、その内訳は書いていないんです。ですから、今度大幅な削減をつくっていくという点では、まず電力についてはこれをどんなふうに実際やっていくのかという辺りを詰めていくことが大事だろうというふうに思います。

 そういう観点から資料2を見て、各国の長期戦略なんですけども、5ページのところに幾つか括弧で書いてあるところがあるんですが、これを見ても再生可能エネルギーが主力電源となっていると、これは確かにそのとおりだろうと思うんですけども、原発についてはどんなふうな位置づけになっているのかとか、必ずしも整理がされていないし、それからCCSについても何か大事だとか、重要だというようなヒアリングがあったという話があるんですが、これも一方では世界では本当に火力発電に実用化されているCCSは、ほとんどないという話もありましたから、この辺のところも詰めていくことが大事じゃないかなというふうに思います。これが1点目です。

 2点目は、国内対策と国外、世界で減らすことの重要性ということです。ご指摘ございましたように、確かにまさに気候変動問題、世界全体の問題ですから、世界全体で減らしていく、海外の削減に協力していくことは非常に大事なことは間違いないんですけども、ただやはりそこで忘れていけないのは、海外に本当に貢献できるようにするためにも、国内の対策をしっかりやらなきゃいけないと。

 あたかも日本には冠たる省エネ技術があって、これを日本でそんなに深掘りしなくても、世界に輸出できるんだというような感じではないと、現在も思うんです。そこも加藤さんからも発言がありましたけども、むしろ日本の企業のいろんな再生可能エネルギーであったり、あるいはエネルギー効率化の取組が遅れているゆえに、日本の企業が世界のサプライチェーンから外されてしまうかもしれない。

 だから、日本の企業が本当に世界に売れるような、貢献できるような、そういう対策がとれるような、そういう国内の枠組みをつくっていかないと、世界で減らせばいいといっても、日本の企業が世界の削減に貢献できない、もうそうなってしまうと思うんです。そういう意味であれば、我々の包括は、ここでは国内の仕組みをどう変えて、国内の削減をどうやっていくかと、その辺を第1に考えなきゃならないと思います。

 それから3点目は、今回よくまとめていただいたんですが、ちょっとわからないなと思ったのが、気候変動CO2削減、温室効果ガス削減をやっていくことと、やっぱりエルイーエスの目標ともう一つよく言われるように、LE安全保障とか、自給率の問題というのがありますから、それがどんなふうに各国のビジョンや戦略の中で位置づけられているのかというのも、整理をしておいていただきたいなというふうに思います。

 日本の自給率、なかなか50%ぐらいが限界だというようなお考えもあるようなんですけども、しかし実際にはこれは自然エネルギーを活用していくことによって、十分にエネルギー自給率を高めていくという方法があるし、そのことがむしろ求められているところじゃないかと思うんです。国内の資源エネルギーを活用することによって、相当自給率も高めることもできるし、あと特に2050年みたいなロングスパンで考えると、日本が海外の送電網とつながっていないということを前提にする必要はないんだと思うんです。

 日本と韓国、わずか距離で200kmぐらいしかございません。海底送電線というのはこの間非常に技術が進歩していて、600km、700kmの海底送電はざらにといいますと言い過ぎですけど、そのくらいにはありますし、長いものは1,000kmぐらいのものもつくられています。実際コストも、今いろいろと我々も計算をしているんですけども、数千億円ぐらいの額ですので、必ずしもロングスパンで考えたときに、2050年なんてそんな先を考えなくても、やる気になってやればできないことはないということだと思いますので、必ずしも日本が、国際的に電力網が孤立しているという状態をいつまでも前提に考える必要はないんじゃないかというように思っております。

浅野委員長

 ありがとうございました。大塚委員、どうぞ。

大塚委員

 お伺いしておきたいことを最初に申し上げて、あと意見を若干申し上げますが、2点お伺いしたいことがございまして、一つはCCSのことを、私もお伺いしたかったんですけども、資料1の3ページのところでCCSの話は出ていますが、各国に関してより詳しくどういう状況になっているかをご教示いただければありがたいと思います。当然やっていかなくちゃいけないということだと思いますけども、強調の仕方が多分違ってくるかと思いますので、その点を伺いたいということです。

 それから私も国内削減をまずやらなくちゃいけないと思っていますが、一方で産業界のほうからは、日本の低炭素製品が輸出されることによって、世界全体でCO2が削減されるというようなこともお考えだと思いますけども、削減貢献量の話は13ページ辺りに関係してくると思うんですけども、多分非常に算定が難しいかなとは思うんですけども、もしそういう試みがあるのでしたら、ご紹介いただければと思います。イギリスのが近いかもしれませんが、多分違うんだと思うんですけど、ないということがわかるんだったら、それはそれで結構です。

 全体との話につきましては、先ほど末吉委員がおっしゃったこととか、崎田委員がおっしゃったことは、そのとおりだと思っていまして、多くの企業にとって今や投資とかバリューチェーンとの関係から取り残されないというために、温暖化問題、あるいは脱炭素対応というのは、死活問題になってきているということだと思います。ですから、今までは望ましいという話だった面もあるかと思いますけど、やらなければならない話に今、なってきているという中で、日本がその中で脱炭素に向かうイノベーションを強化していくために、カーボンプライシングというような、それを後押しするような政策が必要になっているということが明らかだと思いますので、その点は長期戦略においても重要な位置づけがなされると思っております。日本は技術があるけども、対策をとる勇気がないというお話がございますが、まさにそういうことを考えていかなければいけないということだ  と思います。

 以上です。

浅野委員長

 ありがとうございました。荻本委員。どうぞ。

荻本委員

 大幅な遅刻で申し訳ありませんでした。資料の説明には全く間に合っていない荻本です。ただ事前に読ませていただいて、もう一回今めくっておりました。

 この資料1に関して私が申し上げたい第1点は、日本は世界にいろんなことを学ばないといけないということは間違いないんですが、世界が(行っていることがそれぞれ)合っているとは限らない。間違っているとも限らない。どこが合っていて、どこが間違っているかというのを、我々どうやったら外の世界の情報から読み取れるのかということを、我々はもうちょっとスキルを磨いていかないといけないと考えます。

 昨日は別の委員会でも申し上げたことと同じなんですけど、何かやりたいことがあると、そこにマッチしたところをどうしても抜いてきてしまう。これは人間のさがであると思います。なので、国というものが相手だとすると、それは今までのご発言にあったように、いろんなことを考えて、戦術、戦略を練った上で、こういうレポートができているんだろうというふうに思うわけです。ということは、我々そのレポートを見るときには、それがどのような成り立ちでつくられたのかということを、誰か一人ぐらいは考えておかないといけないんではないのかなというふうに思うわけです。

 それが、全然資料を批判するつもりはないんです。ですが、とりあえず言わせていただくと、各分野に各国がこのように書いてあるという表ができてしまうと、どうしても忙しい方はここから始まるんです。ここから始まってしまうと、自分が一番読みたいページにいって、この国がこういうことを言っています。これでどんどん話が進んでいってしまう。そうではなくて、例えば非常に限られた情報なんですけれども、この資料のいいところは「目次」というのが示してございまして、目次はページ数が書いていないのが残念なんですけれども、並びとか構成、ここに非常に、いろんなことを考えた人たちの工夫が出ているはずなんです。ですから目次だけ見ても、何か読み取れるんではないかというような姿勢をやっていかないといけないのかなというふうに思うわけです。

 2番目のところに参りますと、何人かの方がおっしゃったように、今や日本から発信できる技術は非常に減ってしまっています。私が専門にしているエネルギー、電力の世界で言うと、太陽光発電のパネル産業というのは、ほとんどグローバルに見たときには、もう消滅して日本にはありません。実はPVの価値を発揮する道具であるインバーターというものがあります。これはパネルはじっとして動かないんですけども、インバーターはそこからどういうふうに電気を取り出すかという工夫をするところなので、無限にノウハウのあるところです。なのですが、残念ながらここも世界から遅れてしまっていて、海外の見本市に行くと、日本のインバーターが各社と世界のコンペティターと並んで展示されているという状況は、昔はあったんですけど、このごろは非常になくなっています。こればかり言うつもりはないんですが、こういう例でわかるように、日本に売りがない(少ない)ということをよく考えないといけない。売れるものが減っている。

 なんですけど、ちょっと辛口に申し上げますと、ここのこういうとても立派な委員会に出てきますと、各分野の代表の方が出てくるので、どうしても守りというところがあって、攻めがしにくい。攻めるということは、それは足元が揺らいでリスクをとるということなので、非常にやりにくい。逆に攻めやすい人というのは失うものを持っていないというようなところもあるんだろうと思います。

 ですから、そんなに批判をするつもりではなくて、でもそういう欠点がこういう会議体にはあるんだということを認識した上で、じゃあどういう情報をどのように処理して、我々は議論して、よりよい道を考えられるのかということを、ディフェンディングな議論ではなく見つける必要があるかなと思います。

 最後に、それをやる一つの手段としては、いろんな分析、解析評価です。そのときの前提をなるべくはっきり書いて、それを共有することで結果を見ていくというところが非常に重要だろうと思います。算術、コンピュータもありますので、どんな解析でもできるといえばできます。どんな答えでもインプットデータをいじればできないわけではない。なんですけれども、そのときにどういうデータを前提にしたから、この結果が出たんだということをわかっている人が多ければ多いほど、結果として正しいところに私は行くんだろうというふうに信じております。

 不確実だということに、最終的には対応していかないといけないわけですが、我々が毎回戦略、またはいろんな政策をどういう道筋で考えたのかが明確な記録に残っていれば、「状況が変わったときには、それを変えればいいんだという、これは大きなヒントになる」ということもあると思います。なかなか各国はいろんなことを言って日本に売りがないという問題はあるものの、我々がここでいろいろ考えて検討するプロセス、または前提をはっきり残すことで、より持続的で継続的な改善ができる戦略づくりになるんではないかなというふうに思うわけです。

 以上です。

浅野委員長

 ありがとうございました。

 ほかに、さらに追加的なご発言は、特にございませんか、よろしゅうございますか。

(なし)

浅野委員長

 それではただいま出されました意見について、今後事務局はしっかり考えてくださいということになりますが、中央環境審議会の文化は、よその審議会の文化と少し違うと私は昔から確信を持って考えています。それは言いたいことを言ったら、後は事務局が適当にまとめてくれるだろうから、だから言っておけばいいというような審議会ではないのです。やはりここはかなりいろんなタイプの意見が入り得るという構造になっているので、最後はここできちっと答えを出していかなきゃいけない。

 それを今まで中央環境審議会はやってきたというふうに、私は自負心を持っておりますので、例えば今、外国のものを出して、いいとこ取りでぱっとまとめて日本のものをつくるのはまずいぞというお話がありましたが、それは当然のことだというふうに思っております。この中には多分そんなことを思っている人は一人もいないと思いますし、ただ日本の状況をどこまでどう考えるかということについて、さまざまご意見がありました。私が聞いている限り、そんなにみんなが違うことを言っているわけじゃないなというのを思いながら聞いておりましたので、そのことは委員長としてはいつも心にとめながら、事務局に対しても厳しく物を言うつもりでおりますので、今後とも次の会までの準備は大変だと思いますが、事務局としては大いに頑張っていただきたいと思います。

 それではご質問について、もしお答えいただけるものがありましたら。今日、何も無理にとは言いませんがどうぞ。

木野低炭素社会推進室長

 ご質問に対してということでお答えしますと、最初の増井委員から行動変容、使う側の意見ということなんですけども、これについては後ほどわかる範囲で触れさせていただきます。

 あと大塚委員からCCS、各国の事情どうかということでありましたけれども、わかる範囲ではカナダ・米国では、既に操業中の大規模CCSプロジェクトが進んでいますので、この2カ国は確実に進んでいると思います。ドイツはいろいろ聞いていると、CCSはそれほど積極的でないという印象を持っていますが、・・。

大塚委員

 今の状況というか、長期戦略の中でということです。

木野低炭素社会推進室長

 そういうことで言いますと、例えば資料1の3ページですとか4ページを見ていただきますと、各国エネルギー部門、あと産業部門でCCS、あるいはCCUSということでは記載がございまして、強度の違いはありますけれども、それぞれ視野には入れているということが、まずございます。あと海外の貢献度、イギリスはどうかということですけども、今ご紹介した以上に詳細はわかりませんので、またわかり次第、ここでもご報告させていただきたいと思います。

安陪低炭素社会推進室室長補佐

 増井委員からございましたに行動変容について補足をさせていただきます。

 行動変容についても各国もさまざま考えられていると思いますけども、特にフランスは非常に明記してございまして、本日の資料で申し上げますと、6ページ目、家庭・業務部門のフランスのところで、価格シグナルや普及啓発による行動変容ということが主な方向性として掲げられております。もう少し詳しく申し上げますと、情報の提供ですとか、模範的な行動の周知、それから価格シグナル、こういったものを行うことで行動に左右される消費電力などを抑制するといったことが書かれているところでございます。

浅野委員長

 よろしいでしょうか。ほかにお答えいただくことはございませんか。根本委員、先だっていただきました経団連の低炭素社会実行計画の点検報告を、拝見していますと、ここには電気・電子業界での2030年断面でのグローバル排出抑制後継ポテンシャル推計というデータを出しておられますが、これは他の業界もこういうような試みを今後、なさるという可能性があるのでしょうか。報告書では22ページ、23ページに大変おもしろい絵が出ていて、ああよくやっておられるなと思ってみたのですが、いかがでしょうか。

根本委員

 低炭素社会実行計画の中の四つの柱の一つとして、海外貢献分を見える化する作業に今、取り組んでいます。その一環として、今回試験的に出させていただいたものが今、委員長からご指摘のあった部分です。他の業界において、どのような形で見える化できるか検討していただいているのが現状です。この後、きちんとした形でお出しできるかどうかも含めて、検討を進めたいと考えています。

木野低炭素社会推進室長

 そうですか。大変役に立つと思いますので、是非お願いいたします。

根本委員

 マイクをいただいたところで、先ほど事務局からお話があるかと思って黙っていましたが、先ほど委員からあったトヨタさんの電動車に関するご発言について、2025年までに全車電動型にするという発表ではありませんので、ぜひそこはご訂正いただければと思います。

 それから世界への貢献部分につきまして、省エネや、いわゆるエネルギーマネジメント、プロセス技術につきましては、現状の日本の技術は世界に冠たるものがあります。これを輸出、あるいは採用いただくだけでも、全世界の排出量が相当程度に下がることは、自明になっていると認識していることをつけ加えたいと思います。

 以上です。

浅野委員長

 地球部会ですとトヨタの方がいらっしゃるので直接お答えいただけるのですが、新聞報道の限りでは電動車両のない車種はもうなくなるということでしたか。

根本委員

 解説させていただいてよろしいでしょうか。いえ、2030年の時点で、グローバル販売台数における電動車を550万台以上、ゼロエミッション車であるEVとFCVを合わせて100万台以上にします。2025年というのは、グローバルで販売する全車種を、電動専用車もしくは電動グレード設定車とするという発表であったと記憶しています。プレスリリースも出ておりますので、ぜひ事務局において確認をいただければと思います。

浅野委員長

 それでは次の議題に移りたいと思います。カーボンプライシングのあり方の検討会の検討状況について、ご報告いただきます。

鮎川市場メカニズム室長

 それではカーボンプライシングのあり方に関する検討会の検討状況について、資料3に基づきましてご説明をさせていただきたいと思います。私は、地球環境局市場メカニズム室長の鮎川でございます。

 資料3を1枚おめくりいただきますと、2017年の6月から、2ページにご覧の有識者の方々で構成をさせていただいておりますカーボンプライシングのあり方に関する検討会を設置し、検討を進めていただいております。これについてはご案内のとおり、ビジョン小委でおまとめになられました、長期ビジョンの中でカーボンプライシングについての位置づけがされたことから、それについての議論、検討を深めるという趣旨で設置をさせていただいております。

 ここにつきましては、3ページのところで経緯申し上げますが、有識者だけではなくて経済界からのご意見もお聞きしつつ、長期大幅削減と経済・社会的課題の同時解決に資するという観点で、我が国のカーボンプライシングの活用のあり方について、大局的な見地から論点を整理するという形で検討を始めていただいております。

 3ページの開催実績というところでございますが、これまでの開催実績といたしまして6月2日、第1回を皮切りにいたしまして、最初の3回ぐらいで基本的なカーボンプライシングの意義、効果・影響あるいは炭素税と排出量取引という、それぞれのアプローチについて、基本的なところの整理をし、10月の2回では経済界の方、あるいは有識者の方などからのヒアリングをした上で、11月24日に第7回といたしまして、この活用のあり方についてというところで、一定議論を進めたところでございます。

 おめくりいただきまして、資料4ページからがその最後の第7回、11月24日の検討会の資料2としてお出しした、第7回のメーン資料になりますので、そちらを引用してございます。資料の構成といたしまして、まずこの4ページのところで、まずは基本的考え方というところで3点整理をしてございます。まず1点目は長期大幅削減に向けたイノベーションを促す必要があるという観点からの論点、基本的な考え方でございます。

 1番目の四角でございますが、現行施策の延長線上では、2050年80%削減、さらには今世紀後半実質ゼロといった長期大幅削減というのは極めて難しいという基本認識を押さえた上で、その一つの実現のための施策として、カーボンプライシングによる価格シグナル、これを広く社会全般に与えるということで、先ほどのご議論にもありましたが、イノベーションといったものを、社会隅々まで促していくといったような観点から、カーボンプライシングというものを考えていくというのが、第1点目の基本的な考え方でございます。

 もう一つが先ほども申し上げましたが、我が国の経済・社会的課題との同時解決に貢献をするという意味で、カーボンプライシングといったものを一つのきっかけにして、低炭素あるいは大幅削減に資するような投資機会の創出、あるいはそういった視点からの高付加価値化・生産性の向上といったものに寄与するのではないかという視点がございます。

 あともう一つ、カーボンプライシングに伴って生ずる収入というものを、多様な政策に活用するという観点からも、経済社会的課題との同時解決というところに貢献するのではないかというのが二つ目の基本的考え方でございます。

 三つ目が、もちろんカーボンプライシングだけで全てが解決するわけではございませんので、それ以外の、例えばまちづくりの政策、あるいはインフラ関係との連携といったものも必要ではないかという視点が議論をされてございます。

 続きまして下の5ページでございますが、これから先は数ページが、これまでの検討の中で委員、あるいはヒアリングでいただいたご指摘、これをそれぞれの視点ごとに整理をしたものでございますので、それぞれどなたかがこういったことをおっしゃっているというような指摘のエッセンスをまとめたものでございます。

 まず5ページが、これまでの指摘があった中で、カーボンプライシングの意義・効果といったところに関する指摘が、こういったものがございましたというものでございます。まず一つは、あらゆる主体の創意工夫を促すというところで、効率的・長期的な行動変化を促す意義があるのではないかというご指摘。もう一つは、同じ炭素排出量に対して、より高い付加価値を生み出すという方向性を追求するドライバーになり得るのではないかというご指摘。あとは削減目標に向かって最も費用効率的な手段であろうというご指摘。さらには無料で排出していたCO2、これは本来コストがかかるんだということを認識していただくことができると。あとこれは委員ではなくて、ヒアリング対象者からのご意見でございますが、本格的な技術革新のための破壊的なイノベーションのインセンティブになるという意味で有効であるというご指摘をいただいております。さらには先ほども申し上げましたが、収入を、経済・社会的課題の解決に活用することができるというご指摘もございました。

 続きまして6ページでございます。おめくりいただきまして、次はそれぞれの論点ごとにご指摘をまとめております。

 まずはカーボンプライシングの「手法」につきましてのご指摘でございます。

 まず価格アプローチ(炭素税)といったものは、非常に幅広い主体を対象とすることが比較的容易なので、カバー率を高くすることができる施策ではないかというご指摘。他方でもう一つの数量アプローチ(排出量取引)につきましては、排出削減の確実性が比較的高いのではないかというご指摘。これはそれぞれの二つの明示的カーボンプライシングの施策の手法についての、それぞれの特徴のご指摘でございます。

 他方で、こういった施策を導入する上で、運用上の人的リソース、あるいは行政コストといった観点から、実現の可能性についてもきちんと見ておく必要があるのではないかというご指摘。さらには、先ほど基本的考えと申し上げましたが、カーボンプライシングだけではなくて、他の施策とのミックスが重要ではないかといったご指摘もございました。

 続きましてカーボンプライシング施策の「対象」でございますが、基本的な考え方として、対象は幅広くする。先ほども申し上げましたが、社会の隅々にまでイノベーション、価格シグナルを与えることでイノベーションを促すという観点からは、この対象を幅広くすることが望ましいのではないかというような基本的考え方がある一方で、制度の対象となる直接の対象者数、これは上流、すなわち素材ですとかエネルギーのもとの部分に対象にするほど、対象者数としては少ない。下流、消費者のところに行けば行くほど多くなるという点も、これは主に先ほどの手法のところで出ました人的リソース、行政コストといった観点も含めてではございますが、こういった点も踏まえるべきではないかというご指摘がございました。

 その次の「対象」の議論でございますが、これは石炭火力の新増設計画が多数あるという点、あるいは日本の直接排出全体の4割を占めるという点から、電力部門が当面の低炭素化の意味では喫緊の課題であるとのご指摘がございました。

 続きまして7ページでございますが、「収入の活用方法」についてのご指摘でございます。

 まず一つは、法人税減税あるいは社会保障料負担の軽減、所得税減税ということに用いれば、経済成長との同時実現につながる可能性があるのではないかというご指摘がございました。さらにそこ一歩進めて税収中立的な設計といったようなご指摘もございました。またさらにはもっと対象を広げまして、一般財源として徴収ということも検討すべきではないか。

 他方で、いわゆる特定財源的でございますが、低炭素対策に充てる選択肢というものもあるのではないかという、さまざまなご指摘をいただいております。さらにその中の一つの例として、一定割合を送電網の整備に活用すれば、再エネの普及、電力の低炭素化に貢献し得るのではないかというご指摘もございました。

 あともう一つ、これはヒアリング対象ではございますが、排出削減に資する技術の活用を促すインセンティブを与えるためには、これはカーボンプライシングが必要だと。その収入はイノベーションの加速に活用すべきではないかというご指摘もいただいております。

 続きましておめくりいただきまして、8ページでございます。こちらからは今度はカーボンプライシングを考えるに当たって、特に考慮すべき事項といったものについて、多数ご指摘をいただいておりますので、こういった形でまとめてございます。まずこれはヒアリングの対象の方からいただいたご意見でございますが、追加的に炭素価格を引き上げ、企業にコスト負担を課すということであると、製造業等に悪影響を与える。それが我が国経済に深刻な打撃になるというおそれがあるのではないか。明示的なカーボンプライシング施策の導入は、日本国内のみ人為的にエネルギーコスト、電力コストをさらに上昇させる行為なのではないかというご指摘をいただいております。

 その中で、幾つか個別にいただいておりますが、その下の丸ポツでございます。

 まず一つは、理想としては世界全体で限界削減費用を均等化させるということではありますが、その実現可能性は極めて低いのではないかということで考えると、競争環境の国際的なイコールフッティングといったことをきちんと考慮した上で、検討すべきであるというようなご指摘。さらには企業に直接的な経済負担を追加的に課すということで、経済活力を損ない、研究開発の原資、あるいは社会の低炭素化に向けた投資意欲、これを逆に奪ってしまうのではないかというご指摘もいただいております。

 さらには、所得の低い世帯ほど、家計におけるエネルギー関係の消費支出が占める割合が高くなりますので、炭素税導入によると、家計負担は逆進的に大きくなるのではないかというご指摘。さらには国際面という意味で申し上げますと、日本のLNG、あるいは石炭の輸入平均価格、これはもう既に高水準であると、電気料金も各国に比べて高いレベルでありますので、大型炭素税・排出量取引の導入によって、家計・産業に与える影響はさらに増大するのではないかというご指摘も個別にはいただいております。

 続きまして、またこれもヒアリングからいただいた、電力業界に特化したご指摘でございますが、これは「2月合意」と書いてありますが、昨年の2月に環境大臣と経産大臣で合意をした、電力の低炭素化についての枠組みでございますが、これに基づいて取組を進めているんだと。なので、明示的な炭素価格に固執をすることで、事業者による合理的な投資が制限され、本来果たすべきエネルギーミックスの達成が非効率になるのではないかというご指摘もいただいております。

 さらにその下でございますが、明示的なカーボンプライシング施策というのは、高機能鋼材製造時のCO2排出量の増加にもコストを負荷することになるということで、カーボンプライシングというものが、かえってバリューチェーン全体、社会全体での最適化を阻害するのではないかという、これは鉄鋼製造の面からのご指摘でございます。

 続きまして、今度は委員の方々からのご指摘でございますが、産業界が適切に価格転嫁を行っていく。これは産業で例えば上流のほうでカーボンプライシングをすることを導入しても、それを消費者のままで、価格転嫁を行うという意味でございますが、それを行うことで消費者の意識が変わる。そうすればおのずと供給側も低炭素社会に向かっていくのではないかというご指摘をいただいております。

 さらには、海外でカーボンプライシングの導入が進み、CO2を排出する企業の製品が購入されないということになると、逆に日本企業が競争力を失うリスクがあるのではないかというご指摘もいただいております。さらには先ほどご指摘の中で逆進性の話がございましたが、この逆進性の問題については、カーボンプライシング単体で考えるのではなくて、社会政策全体の中で対処していく必要があるのではないかというご指摘をいただいております。

 続きまして、下の9ページでございますが、炭素リーケージの起こるリスクについてのご指摘をいただいております。続きまして価格水準ということでございますが、現状の温対税による税率は非常に低いということで、カーボンプライシングの本格導入に当たっては、今後の大幅削減に向けた水準にする必要があるということと、あとさらには長期的に上昇していく見通しをつくるといったことが必要ではないかというご指摘をいただいております。

 最後10ページでございますが、ここの部分につきましては、その次の11ページ以降につながるような、明示的カーボンプライシングの施策を、こういった方向性で議論、検討をしていくべきということにつながるようなご指摘をまとめてございます。

 まず一番上は、石炭火力からの排出の抑制という観点から、電力部門を念頭に排出量取引を活用すべきだということでありますが、この電力部門に加えて、産業部門も加えた制度とすべきであると。これはナショナルレベルの制度としてこういったものを入れるべきと。他方で業務部門については、東京都で排出量取引制度が既に導入されているということを念頭に、地方レベルで同じような排出量取引制度を導入する。それでカバーし切れない部門については、炭素税といったようなハイブリッドな形で政策導入をすべきであるといったご指摘をいただいております。

 あともう一つは、同じハイブリッドではありますが、電力部門につきましては排出量の4割を占めているということ、さらには全てのほかの部門の基礎となるというところから、特に確実性が必要であるというといったような観点から、排出量取引制度を入れるための必要性が高いという意味で、電力部門を排出量取引とし、ほかの部門は炭素税でカバーをするといったようなご指摘もございました。

 他方、三つ目でございますが、社会的コストの高さ、排出枠の設定の難しさ、公平性の担保の難しさといった観点から、排出量取引ではなくて、現状では炭素税からカーボンプライシング施策を始めることが有用といったようなご指摘もいただいております。さらには炭素税を入れる際には、「累進炭素税」といった言葉をお使いになっておりますが、より炭素排出量が大きいものに「重課」といったことも、考えられるのではないかというご指摘をいただいております。

 さらにもう一つ、ここは課税の仕方でございますが、我が国の消費税と連動する形で納税してもらう、「仕向地主義炭素税」という言葉をお使いになって提案をされていますが、要するに消費税と連動するような形で、消費側で課税をするという方式をご提案されているご指摘もございました。最後でございますが、政府と業界が協定を結んで、その協定参加者に排出量取引を認めるという形のご提案もございました。

 こういったようなことも踏まえまして、11ページではカーボンプライシングの活用についての検討の方向性というものをまとめてございます。

 まず一つはAとして炭素税単体で入れるというパターン。Bが排出量取引、多量排出量事業者に対して、確実な排出削減を求めるという観点から、排出量取引を入れた上で、先ほどの10ページのところで申し上げましたが、排出量取引でカバーしていない部門について、炭素税をハイブリッドで入れるという方向性もあるのではないかと。さらにはA・Bの代替策、あるいは併用する形、両方とも考え得るものとして、直接規制というものを並べてございます。これにつきましては、長期大幅削減の達成に向けた新たな規制という観点から、このCというものを載せてございます。

 続きまして12ページ以降は、それぞれのA・B・Cについてのメリット・デメリット、さらにより詳細な制度設計に向けた論点という形で整理をしてございます。こちらにつきましては、これまでご説明してきたところの重複になりますので、簡単に紹介だけしたいと思います。炭素税のメリットは、カバー率の高さというものでございますが、他方でデメリットといたしましては、価格は決めるけども、その価格にシグナルによってどれぐらい排出削減がなされるかといったものの見通しは必ずしも確実ではないといったような形で、デメリットというものを整理してございます。

 さらには制度設計をするに当たって、こういったことをきちんと考慮して詰めていきながら、制度設計をすべきという観点から、論点が幾つかございまして、例えば三つ目の国際競争にさらされている業種についての、カーボンリーケージの発生を防ぐといったような措置が必要であるとか、あるいは下から2番目の逆進性の問題についてきちんと対処していく必要があるといったような、さまざまな論点があるというところでございます。

 続きまして13ページでございますが、排出量取引制度を多量排出事業者に課す。それ以外は炭素税というところでございますが、排出量取引制度のメリットといたしまして、排出削減量を確実性をもって見通すことができる。総枠を決めますので、当然そういうことになりますが、総量削減の実現の蓋然性が高いというようなことでございます。他方でデメリットといたしまして、着実に削減を進めるためのキャップの設定、排出枠の割り当てといったような行政コスト、行政運営上の課題があるということでございます。

 より詳細な制度設計に向けた論点という意味では、排出枠の割り当て方法について有償・無償に大別される中で、さらにそれをフェーズを進めるに当たって、いろいろ変えていくといったようなこと。あるいは運営上の人的リソースや行政コストを考慮しながら、制度設計を行う必要がある。あるいは大量排出事業者の定義はどこまでかといったようなこと。さらにはカーボンリーケージへの配慮、あるいは電力コスト上昇による家計や産業に与える影響といったものをきちんと留意すべきではないかといったようなご指摘をいただいております。

 最後14ページでございます。直接規制、この検討会はカーボンプライシング検討会ですので、実はあまり直接規制について具体的な検討がたくさんなされているわけではございませんが、先ほど申し上げたように、まずこの検討会の大前提として、長期の大幅削減を実現すると。

 それは従来の延長線上では到底困難であるといったような前提のもとで、このCというものを立てておりますので、具体的な方策といたしましては、産業部門、業務部門、電力部門についての、例えば温室効果ガス原単位の改善、これを義務化する。あるいは電力、火力発電や産業部門においてCCS設置を義務づけるといったようなこと。さらには運輸部門については、車体規制の抜本的強化といったような形、これは幾つかは諸外国では既に例のあるところでございますが、こういったような新たな規制といったようなものも、カーボンプライシングの代替、あるいは補完的な施策として考えられるといったようなことを整理してございます。

 最後、15、16ページは、先ほどたびたび出てきました収入の活用方法ということで、こちらはどれがよいということではなくて、例示でございます。こちらはCarbon Pricing Leadership Coalition(CPLC)の昨年に出た報告書の中から、収入の使途につきまして、ほぼそのまま訳しております。この順番も内容も含めてそのまま出しておりまして、これをもとに活用法についてご議論をいただいたという資料でございます。ここにございますように、他税の減税、家計への還元、企業への支援、公的債務・財政赤字の削減、一般財源化、気候変動対策への投資というふうに、六つのオプションとして考えられていて、16ページ最後、ご覧いただきますと、それぞれオプションごとに既に導入している例というものがあるといったようなご紹介でございます。

 こちらにつきましては、11月24日までの議論で、特に資料のほとんどはそのときに出たメインとなる資料でございます。また今後これをベースにして、さらにこのカーボンプライシング検討会において検討を深めていただくというようなことを考えております。

 以上でございます。よろしくお願いします。

浅野委員長

 それではただいま事務局からご説明、ご報告がありましたように、これは現在検討中の検討会の検討状況の中間的な報告を受けたということでございます。検討会でやられている議論の報告ということでありますので、事実関係について何か確認をしたいということがありましたら、それだけお受けをすることにしたいと思います。

 内容についての議論を始めますと、2時間、3時間幾らでも議論ができるのですが、それは検討会の報告が出てから、また改めてやればいいことかもしれません。とりあえずこの検討会の検討ということに関しての事実確認がありましたらお聞きしますが、いかがでございます。よろしゅうございましょうか。

 それでは根本委員、どうぞ。その後に廣江委員にお願いいたします。では、根本委員からどうぞ。

根本委員

 ありがとうございます。いろいろ意見は考えてきたのですが、事実確認に限定いたします。

 2ページ目でご指摘いただきました主な検討事項の2の中に、「暗示的な炭素価格も含む。」という表現があります。「カーボンプライシング」という用語と「炭素価格」という用語が混在していますが、この違いについて教えていただけたらと思います。

 その上で、これまでのご検討についてはexplicitなカーボンプライシングのみに終始しているように、今日の資料は拝見をいたしました。暗示的なカーボンプライシングについてのご検討のスケジュールについて教えていただければと思います。

 以上2点です。

浅野委員長

 それでは廣江委員、どうぞ。

廣江委員

 ありがとうございます。10ページの二つ目の矢尻でございます。これ事実関係の確認かと言われるとちょっとそうでないかもしれませんが、「電力部門、国際競争力に影響を直接は受けるわけではないと」と、こういう指摘があります。したがって炭素リーケージの問題になりにくいと。

 ただ、仮にカーボンプライシングによりまして、電力料金が上がれば、ただでさえ現在、再生可能エネルギーの導入によりまして、電力料金10%強、押し上げられているわけでありますけど、それにこれが加わるということになります。したがいまして当然電力料金が上がれば、これは貿易産業、国際競争をしている産業に対しての影響は、これは避けられないと思いますが、この辺り間接的な影響というものについても、きちっと議論をいただきたいと思うんで、そういうご要請があるかどうかというのを確認したいと思います。

 それからもう1点、これは先ほどの第1部のほうの話に関連します。先ほど火力発電が明日にもなくなってしまうようなご指摘がございました。ただ私どもから申せば、現在再生可能エネルギー、特に自然変動エネルギーといいますのは、火力発電があるがゆえに、私どもの系統の中にこれを受け入れることができているという事実がございます。

 ご承知のように自然変動エネルギーといいますのは、出力の調整ができません。したがいまして需要と関係なしに発電をされます。したがいまして非常に需要が低いときに大量に入ってきて、需要をオーバーするというようなことがありましたら、これは系統を壊してしまいますので、そのときには火力は徹底的に出力を絞って、これを受け入れることをしています。また、短時間でも非常に出力は再生可能エネルギー変動いたします。周波数の変動をもたらすわけであります。これにつきましても火力発電が持っておりますガバナフリーという機能で、これをカバーしているということがございます。すなわち、再生可能エネルギーというのは。

浅野委員長

 それについては、ちょっとその話はまたの機会で、簡潔にお願いします。

廣江委員

 があって、実は維持できているという点は十分にご認識をいただきたいと思いますし、ぜひそういった点についての検討もあわせてお願いをしたいと考えております。

以上です。失礼しました。

浅野委員長

 安井委員、どうぞ。

安井委員

 同じく10ページなんですけども、下から二つ目でございまして、「課税の累積」、これ累積なのかどうかもわからないんだけども、「国境調整ができない炭素税」と書いてありますけど、これはどういう根拠に基づくものかということです。

浅野委員長

 末吉委員、どうぞ。

末吉委員

 すみません。じゃあまず先ほどの私のトヨタの発言が事実誤認があったと根本さんからご指摘ありがとうございました。ただ私の理解では、オルタナティブがないEV等の車種は、もう売らないんだということですから、多分こういったトヨタの対応は実質非常に大幅前倒しをされ始めたのではないかというふうに私は理解しました。

 それから世界を見ても、英仏の2040年からパリ市は2030年にもエンジン車の乗り入れを禁止するというような計画を打ち出していますし、ノルウェーは2025年にやめると言っています。それからイギリスのメイ首相は、来年の秋にゼロエミッションビークルサミットを開くんだと、こういったことも言っておりますので、紆余曲折があっても前倒しの流れは変わらないんじゃないかと思っております。

 それからカーボンプライシングについて1点だけ、今後の議論の中でぜひしていただきたいことがありまして、ご承知のとおりTCFDというワーキンググループ、タスクフォースチームが、気候変動リスクを財務的情報として出すということで、具体的な準備を進めております。財務的な情報ということは、CO21tをお金でどう評価するのかと、それがない限りうまくいかないんだろうと思います。とすれば、そのことはキャップ・アンド・トレードの中でもプライシングのあり方、何にもって公平なプライシングをしていくのか、そういったことに非常に関わってきますので、ぜひ金融の新しい情報開示の視点からの議論も、お願いしたいと思っております。

浅野委員長

 ご注意ありがとうございました。崎田委員、どうぞ。

崎田委員

 ありがとうございます。10ページのところで二つほど教えていただきたいことがあります。1点目は、いろいろなカーボンプライシングが考えられていますが、自治体を対象にした家庭部門とか、あるいは業務や運輸も入れてでいいと思いますが、そういうカーボンプライシングの可能性というのは、議論の中に入っていないのかどうか、伺いたいと思います。

 もう一つは、電力部門なんですけれども、今電力システム改革で、例えば非化石価値取引市場の創設とか、高度化法での0.37の2030年達成に向けた共同取組とか、いろんな制度改革をしている真っ最中ですけど、この検討の話は2050年ぐらいを対象にしているので、あまりそこは影響がないのか、どういうふうな交通整理をして議論をしておられるのか、教えていただきたいと、この2点よろしくお願いします。

浅野委員長

 それでは鮎川室長、可能な限りお答えいただきます。簡潔にお願いします。

鮎川市場メカニズム室長

 ありがとうございます。まず根本委員からいただきましたカーボンプライシングと炭素価格の意味の違いということでございますが、カーボンプラスが炭素価格で、プライシングをするという意味でございますと、カーボンプライシングというのは炭素の価格づけという意味でございます。

 もう1点でございますが、あとは暗示的なカーボンプライシングというご指摘ございました。すみません、本当にエッセンスだけをまとめた資料でございますので、カーボンプライシング検討会、毎回10cmぐらいの資料が出ている検討会でございまして、その中で当然ながら暗示的なカーボンプライシングといったものもきちんと念頭に置いて検討していただいております。ただし排出される炭素に対してのトン当たりの価格というのが、カーボンプライシングでございますので、基本的には明示的カーボンプライシングというものが、施策としてはどうしても表に上がってきておりますが、当然ながら暗示的な炭素価格というものも視野に入れながら、検討を進めているということでございます。

 それから廣江委員からいただいたのは、これもご指摘ということで、それも踏まえながらということでやりたいと思います。

 あと安田委員からいただいているのは、税の担当の経済課から後ほどお答えいたします。それから末吉委員からいただいたのも、これもご指摘ということでございますので、それも踏まえながら今後検討したいと思います。

 あと崎田委員からいただいたご質問でございます。まず一つは自治体を対象としたものということでございますが、これは自治体の制度としてのカーボンプライシングということでございましょうか。あるいは。

崎田委員

 その地域が、きちんと減量に向かって努力している傾向がちゃんとあるかどうかを、きちんと評価できるような、自治体を主体にした地域間排出量取引のような形です。

鮎川市場メカニズム室長

 それは排除するものではないとは思いますけども、対象として入り得るとは思いますけども、今までの検討の中ではあまり出てきておりません。

 あともう一つが電力改革、おっしゃったように非化石市場も近々多分でき上がる、あるいはもう既に施行されています省エネ法に基づく共同実施もございます。

 これにつきましては、検討会の中でも非化石市場、あるいはFIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)といった、今既にあるエネルギー関係の諸制度との整合性みたいなご指摘はいただいておりますので、今後議論を深めていく過程で、そういった形のものも整理をしていかなきゃいけないとは思います。なので、もちろんビジョン小委からのスピンオフの検討会でございますので、長期大幅削減といったものがゴールではございますが、もちろんそれ以前の2030年までの取組というものも排除されずに検討がなされているという状況でございます。

奥山環境経済課長

 環境経済課長、奥山でございます。

 安井先生からのご指摘でございますけれども、課税の累積は国境調整できないといった課題、単純に例えば化石燃料のことを当てはめて言うと、あまりここの課題というのは、必ずしも克服できない課題ではないのかもしれませんが、他方でそういったものが製品の中で活用、使われるといったような話になってくると、いろいろ燃料が累積してくる。例えばサプライチェーンの中でいろんな燃料が使われてくる。あるいは運輸の中でかかってくるような燃料がプラスされてくると、そういったような形になってくると、どれだけのものがかかってくるのかもわからないし、それこそ国境調整の中でやることも調整ができなくなるという意味において、なかなか克服できない難しい問題ではないかということを、ここで申し上げているというものでございます。

浅野委員長

 よろしいですか。それではこの検討会の検討はさらにまた続けていただければと思います。

大塚委員

 環境省の答えが、ちょっと十分じゃない。

浅野委員長

 そうですか。答えが適切でないので、ちゃんと適切に答えるということですか。じゃあどうぞ。

大塚委員

 すみません。10ページの二つ目の点については、ご指摘のように電力部門についても価格が上がれば炭素リーケージの問題はもちろん間接的にはあり得るんですけども、間接的ということで、電力のほうで頑張って対処いただけると、炭素リーケージの問題が減るという点と、あとここではどのみち炭素税は、他の部門では行うことを前提にしていますので、カーボンプライシングをすれば、あらゆる場面で炭素リーケージの問題、もちろん起こり得ないわけではないんですけども、どっちかというと産業界の方は、炭素税以上に排出量取引はお嫌いでいらっしゃるので、そこは価格の上下があることがお嫌いだというところが多分あると思うんですけども、電力以外のところに関しては、その問題が特に炭素リーケージの問題に響く可能性がないわけではないですけども、電力さんについては申し訳ないんですけど、国内にいらっしゃるので、価格の上下という問題での排出量取引特有な問題は避けられるということがあるかなというのが1点。

 それからもう一つ、安井先生がよくおっしゃっていますけども、これは将来の話だと思いますけど、国境調整のようなことが仮に2050年までに考えられ得るとすると、そのときには炭素税のほうは国境税調整はまだ可能ですけど、排出量取引のほうはなかなか難しいという問題がございますので、今その点がここに関係してくるということでございます。恐れ入ります。

浅野委員長

 それでは次に議題3に移ります。

 報告でございますが、COP23と気候サミットの結果の報告、さらに平成28年度の温室効果ガス排出量の速報が出ましたので、この2点について続けてご説明、ご報告をいただきます。

竹本国際地球温暖化対策担当参事官

 国際担当参事官の竹本です。時間がございませんので、かいつまんで申し上げます。

 まず参考資料3-1、おめくりいただきますと枝番の参考資料3-1というのが出てまいります。COP23の結果概要です。

 その下の2ページをご覧ください。COP23は先月ドイツのボンで行われました。議長国はフィジーでございます。フィジーのキャパの関係でドイツで行われております。我が国からは中川環境大臣初めとして、関係省庁から出席をしております。

 主要議題は、事前に提出された議題は3点ございました。まずパリ協定の実施指針でございます。協定自体は既に発効しておりますけれども、これを動かすためのルール、実指針のCOP24、来年までに合意しなければいけないということで、そのための交渉が行われました。

 2番目は、2018年の促進的対話のデザインでございます。世界全体の排出削減の状況を把握して、各国の意欲の向上を検討するための対話、これの基本設計、方法に関しての議論が行われました。

 三つ目がグローバルな気候行動、これ政府に限らず、自治体、企業なども含めた全ての主体の取組の促進というものが、イベント等を通じて行われております。

 次の、おめくりいただきまして3ページ目です。それぞれの結果でございます。

 まず実施指針交渉でございますが、各種議題がございましたが、例えば緩和、これは2020年以降の削減計画に関するものでございます。それから透明性枠組み、これは各国の排出量などの報告評価の仕組みでございます。さらには市場メカニズム、いわゆるJCMも含んでおります。こういった指針の要素に関して、各国の意見を取りまとめた文書が作成され、交渉の度合いとなる技術的な作業が進展をいたしました。

 他方、会合を通じて一部の途上国が先進国と途上国の責任の差異を強く主張するという場面が多々ございました。

 続きまして促進的対話でございますが、これは議長国フィジーのイニシアティブによりまして、フィジー語で「開かれた対話」を意味する「タラノア対話」、タラノア対話というふうに命名されまして、来年の1月から各国さまざまな機会を捉えて開かれた対話、タラノア対話を行いまして、最終的には次のCOP24で閣僚級、政治的な対話が行われるという一連のプロセスが提示をされております。

 三つ目でございます。我が国からは「日本の気候変動対策支援イニシアティブ2017」を初めとしたさまざまな取組を紹介するイベントを多数開催をしております。で、石炭に関してはカナダ・イギリス主導によりまして、石炭発電の廃止を目指す脱石炭発電連合というものが発足いたしました。また、NGOでございますけれども、石炭火力発電の新増設や輸出の中止を求める動きがございました。

 続きまして4ページでございます。日本からの発信でございます。

 中川環境大臣、閣僚ステートメントで先ほどご説明したイニシアティブを中心に、我が国の世界の貢献、国内外における取組等々ご説明しました。特にいわゆる透明性に関しまして、2019年にIPCC総会を日本で開催する意向を示しております。この会議のときに、温室効果ガスのインベントリ方法論報告書が採択されるということでございます。

 関連して、途上国の民間セクターの排出量等の透明性向上を支援するためのパートナーシップの設立ですとか、500万ドルの資金拠出、これはGEFのCBITというプロジェクトに対する拠出でございます。また来年度、人工衛星「いぶき2号」を打ち上げて、世界の温室効果ガス排出量を観測するといったようなことを表明しております。また、米国を初め、各国代表との会談を実施しております。

 続きまして5ページでございますけれども、今後2018年~19年にかけて、いわゆるCOPのプロセス、あるいはG7、G20を初めとした、さまざまな重要な気候変動関連の会議が行われていくということになっております。残りは、この参考資料につきましては、省略をさせていただきます。

 また、縦になりますけれども、参考資料3-2がCOP23の政府代表団の概要と評価に関する公表資料。2枚めくりますと、参考資料3-3、気候変動対策イニシアティブの全体でございます。

 最後の3ページが、気候変動サミット、パリで行われましたOne Planet Summitの環境省が公表いたしました結果概要でございます。これはフランス、マクロン大統領のイニシアティブで開催されたものでございまして、日本からは河野外務大臣、とかしき環境副大臣が参加をしております。

 テーマは、主として民間の気候資金に関わるものでございます。12日のパネルセッションでは、河野大臣から先進的な技術力を生かしたイノベーションの力を、気候資金のスケールアップに活用するということを主張いただきまして、その中にはいわゆるSBTの日本企業の登録支援などもご紹介いただいております。

 とかしき副大臣は、関連イベントの中で、例えば12月11日に開催されました第8回機関投資家ハイレベル朝食会、こちらに出席をして、ESG投資の促進に向けた日本の取組などを発信していただいております。

 以上でございます。

浅野委員長

 ありがとうございました。それでは排出ガスの速報値をお願いいたします。

木野低炭素社会推進室長

 続きまして、参考資料4につきまして、木野より報告させていただきます。

 タイトル、2016年度温室効果ガス排出量(速報値)となっておりますけども、毎年このタイミングで速報値ということでお示ししているものでございます。

 結果ですけれども、温室効果ガスの総排出量というところを見ていただきますと、2016年度の我が国の総排出量、13億2,200万tとなってございまして、前年度との比較ですと0.2%減、また中期の削減目標の基準年度、2013年度、あるいは2005年度と比べると、それぞれ6.2%、4.6%減という結果でございます。

これについて簡単に要因をまとめたものが、このページの下に(参考)というところがございます。前年度、あるいは2013年度と比べて、排出量が減少した要因といたしましては、まず増加要因といたしまして、オゾン層破物質からの代替に伴って、冷媒分野で増えておりますHFCなどの、いわゆる代替フロン、この排出量が増加したということがございます。一方で、再生可能エネルギーの導入拡大、あるいは原発の再稼働という要因によりまして、エネルギー起源のCO2の排出量は減少したというところが概要でございます。

 1枚おめくりいただきますと、2ページ、上段でグラフがありますけれども、0.2%減ということですが、前年度は0.2%減、さらにその前の年からは3.4%減ということで、減少値が減っているということは、今後に向けて、必ずしも楽観的になれないという状況かと思ってございます。

 その下表1というところがありますけれども、16年度の結果は一番右側、「排出量と変化率」とありますけれども、ガス別に見ていただきますと、CO2については前年度からは0.5%減、13年度比からは7.2%の減ということなんですけれども、下のほうに代替フロン等4ガスというものがございます。これは右のほうの欄を見ていただきますと、15年度比でプラスで9.5%、あるいは13年度比でプラスで26.7%となっておりますので、ここの代替フロン等の廃棄時の回収率向上対策、しっかりやっていかなきゃいけないという状況にあります。

 あと一つだけ最後に触れますと、4ページです。4ページで、表3というところで、CO2の排出量、これの部門別の結果が載ってございますけれども、産業部門、運輸部門、業務その他部門というところで左側にありまして、その右側に16年度の変化率ございますが、産業部門ですとか、あるいはエネルギー転換部門、こういったところで前年度比でCO2増加しているというところがございます。

 詳しい要因分析は、今後確報値の公表に向けて行うことと、あと今後温対計画の進捗状況の点検ということを政府として進めてまいりますので、そういったことも含めまして、今後の一層の取組努力を進めていくという状況にございます。

 以上です。

浅野委員長

 それでは今、2点ご報告いただきました。これについても報告でございますので、コメントはできたらお避けいただいて、確認の意味でのご質問がありましたら、それのみをお願いをしたいと思います。議論はまた次回やれますので。

 それでは諸富委員、どうぞ。

諸富委員

 ありがとうございます。今回0.2%の減なんですが、期待していたほどではなかったというのが正直な感想なんですけれども、これはずっと減少の傾向が続いていて、デカップリングのような状況になるのかなと思ったんですが、そうでもない。その一番大きな原因の一つとして、代替フロン等の4ガスというのがございます。これどうなんでしょう、上のCO2の削減を打ち消して余りあるほど大きなプラス要因だったと言えるのでしょうかというのが一番大きな質問であります。

 それから、今後こういう傾向は、今年だけじゃなくて来年以降もこれが続くと、CO2のほうで削減しても代替フロンの増加というのが続くのかどうか、この要因がよくわからないので、もう少し教えていただきたいのが質問です。

 以上です。

浅野委員長

 それでは根本委員、どうぞ。

根本委員

 CO2の排出量の4ページで、産業部門が+1.6%というご報告の中で、ご説明がありませんでしたが、特定の産業部門で生産量が0.8%しか増えていないのに、排出量が62%増えたというような数値があるはずです。できればそうした点に触れていただきたかったなというのが残念なところです。恐らくその数値の評価をされていくと思いますが、質問は、この速報値についても改定のお考えがおありかどうかということです。

浅野委員長

 それは後でお答えします。確報値というのがまた改めて出てきますので、そこではもっと精査するということになると思います。

 高村委員、どうぞ。

高村委員

 2点ございまして、1点目は今お二人の委員からあった点に重なるんですけれども、確報値に向けて分析を進めていただくときに、お願いをしたいというふうに思っていますのは、使用炭のCO2排出原単位は下ってきているけれども、今回2016年度に関して言うと、先ほど根本委員からあったところでもありますが、産業部門が増になっている理由というのは、ぜひどういう原因かは見ていただければと思います。

 他方で、家庭部門と業務部門はかなり順調にといいましょうか、排出が減ってきている動向が見られますので、その原因についてもお願いをしたいと思います。諸富委員がおっしゃったHFCの点は、全く同感で、一番大きな、相殺をしているような効果があるように思いますので、その点についてもお願いをいたします。

 2点目は要望でございますけれども、One Planet Summitについて、先ほど末吉委員からも幾つかご紹介ありましたが、金融それから各国、例えば中国などですと、全ての企業に環境影響に関する企業情報開示をこれから要求していくというようなハイレベルのコミットメントなども出ておりまして、長期の戦略を考えていくときに、幾つか非常に大きな方向性を示す、一方的な制約ですけれども、動向が出てきていると思うものですから、こうした点についてもぜひご紹介、あるいはまとめてホームページなどでご紹介いただけないかと思います。

 以上です。

浅野委員長

 大野委員、どうぞ。

大野委員

 この速報のやつですけど、5ページにCO2の部門別排出量とありますけど、これはやっぱり電気・熱配分後と書いてあるので、やはりあれですよね、電気、火力発電所から出るCO2というのを各部門に割り振っている値ということですよね。これ前も私、何回かこの委員会で発言したんですけども、ここは誤解を招くし正確じゃないので、継続的にやるのに載せてもいいんですけど、配分前のやつも出さないと、業務部門、作業部門でもそうですが、部門の努力で増えたり減ったりする部分と、火力発電所部分がごっちゃになっちゃいますのでわからないんです。ですから国際的にこういうのでやったら極めて特異だと思うので、これは配分後を載せてもいいですけども、配分前を先に出すとか、少なくとも両方出すとかやっぱりしていただかないと、いけないんじゃないかなというふうに思っております。

浅野委員長

 末吉委員、どうぞ。

末吉委員

 すみません簡潔に。One Planet Summitの報告については、高村先生のおっしゃったとおりだと思います。

 それでCOP23なんですけども、これはアメリカの“We are still in”というのをぜひ触れてほしいんです。アメリカの動向を見誤らないためには、“We are still in”がどういう人たち、どういう企業が入って、何を目指しているのか、これ恐らくビジネスから見ると、アメリカの1,700を超える世界的企業を含む、彼らがこの方向で行くということですから、トランプ大統領の方針で、日本の企業がアメリカを見たら、私は大間違いになると思います。ですからぜひ何らかの形でアメリカはこうだというのを、私は国民にちゃんと知らしめるべきじゃないかと思っております。

 以上です。

浅野委員長

 それでは竹本参事官どうぞ。

竹本国際地球温暖化対策担当参事官

 高村先生、末吉先生、両委員のご質問、ご意見承りましたので、そのようにホームページですとか、何らかの機会を通じてご紹介させていただきたいと思います。

浅野委員長

 外務省はOne Planet Summit、河野大臣が行かれたことについて、環境省とは別の立場でこういうものをインターネットに載せておられるんでしょうか。

竹本国際地球温暖化対策担当参事官

 そうです。

浅野委員長

 わかりました。それでは木野室長どうぞ。

木野低炭素社会推進室長

 速報値に関して。まず諸富委員からご指摘のありました代替フロンのボーリングの考え方なんですけれども、先ほど資料の中でご紹介した、例えば2ページ、表1というのがございますけれども、この排出量についてはCO2換算した後の結果ですので、単純に与える影響としてはこの量の比較ということで見ていただければよくて、結果的にCO2の削減分を押し戻す効果が出ているということと、あと今後ということですけども、代替フロンが使われている機器の排出量というのは多くなると聞いておりますので、対策をしっかりしないと今後増えるという傾向にあると認識してございます。

 あと根本委員からのご指摘ありました産業部門の内訳なんですけれども、我々も資源エネルギー庁さんがつくっている総合エネルギー統計等、拝見しておりますけども、そうしたちょっとおかしいなという数値については、お互いに共有していまして、確報値までにそこはしっかり精査するということにしておりますので、今後、年度明け、4月に確報値ということでまとめますので、そのときには元統計から変更があれば、そこを反映した形で確報値を公表することになります。

 あとは大野委員から、電熱配分前のデータも要るのではないかというご指摘でした。毎年確報値のところでは、そうした表も載せてございます。今後速報値レベルではどうするかということは、また内部で検討させていただきたいと思いますが、確報値のときにはしっかりお示しする予定でございます。

浅野委員長

 確報値は要因分析という資料が丁寧についていますので、あれを見るとかなり細かくいろんなことが出ていますが、それがあるということについては、ぜひしっかりPRをしていただきたいと思います。

 馬場室長がおられますので、さっきのフロンの件について。

馬場フロン対策室長

 フロンですが、特定フロンが2020年生産全廃ということで、現在は、まだ特定フロンから代替フロンに一部移っているステージにございますので、代替フロンの排出量はこれからも当面増えていくことが見込まれますが、温対計画の中で上流、中流、下流と対策を打っておりまして、それで2016年速報値ですと4,330万tでございますが、温対計画で2030年までに上・中・下流の対策で2,160万tまで減らすことになっております。ただ、それが今、講じられている対策で十分かというところについて、まさに中環審のフロン小委でフォローアップをしていただいておりまして、先ほど出た廃棄時回収率の低迷の件も含めて、議論をしていただいているというところでございます。

浅野委員長

 今何とか法改正もできないものかというような議論をしてはいるんですが、なかなかうまくいかないんですけど、もうそうしないと多分今の制度の中には結構穴があいている。特に家電リサイクル法が十分に機能していないということが、かなりはっきりしてきていますので、そこをどう埋めるかという問題などがあるということは、たびたび申し上げているとおりです。

 さて、本日予定の時間は3時半まででございまして、あともう時間がございませんので、まだご発言ご希望の方がいらっしゃるかと思いますが、残念ながら次回以降にまたお願いをしたいと思います。

 それでは本日の議事はここまでにさせていただきますが、最後に事務局からご連絡いただきます。

木野低炭素社会推進室長

 まず委員の皆様方におかれましては、活発なご議論ありがとうございました。特に議題1のさまざまなご指摘は、今後しっかり踏まえて検討を進めていきたいと思います。

 次回の日程でございますけれども、来年2月ごろを予定しておりますので、また議題・日程等については、追って事務局よりご連絡差し上げたいと思います。また、本日は年内最後の委員会ですので、局長の森下より一言ご挨拶申し上げます。

森下地球環境局長

 本年最後の委員会ですので、ご挨拶、御礼申し上げたいと思います。

 今年は3月に長期低炭素ビジョンを取りまとめていただきましてありがとうございます。それに加えまして数多くの有識者の皆様にご参加いただきまして、ヒアリング等に、活発に取り組んでいただき、ありがとうございます。ヒアリングに参加された皆様、そして委員の皆様方、厚く御礼を申し上げたいと思います。

 冒頭、大臣からもご説明ありましたが、長期戦略は、政府全体として来年度の早い段階での検討開始できるよう、必要な調整を進めていくということでございます。しっかり取り組んでまいるつもりでございます。引き続きご指導、ご鞭撻いただければというふうに思っております。どうぞよろしくお願いいたします。今年はありがとうございました。

浅野委員長

 それでは、本日はこれで閉会いたします。ありがとうございました。

午後 3時26分 閉会