長期低炭素ビジョン小委員会(第15回)議事録

日時

 平成29年6月12日(月)15時00分~17時00分

場所

 全国都市会館 大ホール

 東京都千代田区平河町2-4-2 全国都市会館2階

議事録

午後3時00分 開会

名倉低炭素社会推進室長

 定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会地球環境部会長期低炭素ビジョン小委員会の第15回会合を開始いたします。

 本日は、委員総数18名中12名の委員にご出席いただく予定であり、定足数に達しております。

 なお本日、ご欠席の日本経済団体連合会の根本委員の説明員として、池田様にお座りいただいておりますので、委員の皆様には、ご承知おきいただきますようお願いいたします。

 また、既に地球環境部会長決定とされております本委員会の運営方針において、原則として会議は公開とされていることから、本日の審議は公開としております。

 最初に、中央環境審議会地球環境部会長期低炭素ビジョン小委員会の委員に交代がありましたので、ご報告いたします。名簿については、参考資料1にございます。

 足立委員が辞任され、下間京都市環境政策局地球環境・エネルギー担当局長が新たに就任されました。

下間委員

 「下」に「間」と書きまして、これで「しもつま」と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

名倉低炭素社会推進室長

 また、桜井委員が辞任され、本日ご欠席ですけれども、加藤日本気候リーダーズ・パートナーシップ代表代行が新たに就任されました。

 次に、審議に先立ちまして、冒頭、環境省地球環境局長の鎌形よりご挨拶させていただきます。

鎌形地球環境局長

 環境省地球環境局長の鎌形でございます。

 今日は、お忙しい中、お集まりいただきましてどうもありがとうございます。

 3月に、この委員会で長期低炭素ビジョンをおまとめいただきました。長期大幅削減に向けた取組を一層推進していくと、このために、引き続き委員の皆様方からご指導を賜りたいと、このように考えてございます。

 まず、最近の動きとして、アメリカの動向について一言触れさせていただきます。

 米国は、トランプ大統領がパリ協定からの脱退という意思を表明されたということでございます。ただ、まだ米国はパリ協定を手続の上で脱退したというわけではございません。パリ協定の締約国であるという位置づけは、まだ続いているということであります。

 アメリカのスタンスというのは、長い目で見ていく必要もあるのではないかというふうに考えています。と申しますのは、米国内でも州のレベル、あるいは企業、そして都市、こういったレベルでは、気候変動対策あるいはパリ協定に対して、前向き、積極的な動きが思った以上に広がっていると。こういうようなことでございまして、そういったことをしっかりと受け止め、留意していく必要があるのではないかと、このように考えております。

 先般、G7サミットがございました。安倍総理からは、アメリカに向けて、パリ協定は雇用・成長、そして脱炭素、こういったものを両立できる、こういうものであるんだということ、そして、アメリカが引き続き気候変動についてリーダーシップを発揮していく、こういったことが決定的に重要であると、こういうようなことを日本の立場という形で明確に伝えたということでございます。

 現在、イタリアのボローニャでG7の環境大臣会合が開かれております。我が国からは山本環境大臣が出席しているということでございますが、環境大臣からも、同様の日本政府の考えを伝えているというようなことでございます。会議の間に、アメリカのEPAの長官のプルイットプルイットさんと山本環境大臣が、バイで会談もされました。今申し上げたような日本のスタンスというのは、しっかり伝えたということでございます。まだ詳細は実は私どものほうにも報告が来ていなくて、概略というところでございますけども、プルイットプルイット長官のほうからは、気候変動に対してはしっかり取り組んでいくという趣旨、あるいはパリ協定から脱退ということは気候変動対策からの撤退を意味するのではないと、こういうようなことも言われたようですし、気候変動枠組条約のもとでCO2削減について取り組んでいるんだと、こういうような、枠組条約の中にはいるんだというようなことについての言及はあったというような報告は受けてございますけども、今、会議も続いておりますので、会議としての取りまとめの成果文書というものの調整が、今、議長国イタリアを中心を行われていると。こういうことでございます。

 という状況でございますけども、言うまでもなく、パリ協定というのは脱炭素社会に向けた転換点となる歴史的な合意だというふうに私どもは考えます。そして、世界は既にこのパリ協定のもとで脱炭素化に向けて舵を切っているということで、先ほどアメリカの企業や州などの動きも申し上げました。こういった大きな流れは変わらないんだというふうに私どもは考えます。そういう中で、我が国としては、パリ協定を踏まえて、気候変動対策にしっかり取り組んでいくと。具体的には、今、地球温暖化対策計画で、2030年度の26%削減、そして、さらに2050年80%削減も目指すと。こういう目標を掲げてございますけども、こういった気候変動対策にぶれることなく、引き続きしっかり取り組んでいく。これが日本のスタンスということで申し上げておきたいと思います。

 さて、小委員会で引き続き議論いただく内容でございますけども、パリ協定では長期戦略を提出するようにということが求められております。地球温暖化対策計画の見直しなど、国の政策を初め、あらゆる主体に長期大幅削減を見据えた投資や行動判断に係る方向性を示す、こういったものを長期戦略として整理していくと。こういうことが必要になりますと。

 先般まとめていただいたビジョンですが、今後の大幅削減に向けた基本的な方針、大きなコンセプトとしては、気候変動問題を含む複数の課題の同時解決と、こういうようなコンセプトをまとめました。そして将来の絵姿、部門別でどういうような将来像を目指すべきなのか、そして施策の方向性、カーボンプライシングなどについても議論をいただきました。こういった大きな方向性を示した長期戦略の土台になるものと、こういうふうに位置づけております。

 長期戦略策定のためには、こういったビジョンのという土台に加えて、さらに長期大幅削減の実現に向けてどういった道筋をたどるべきなのか、そういった道筋を示していく必要があるというふうに考えてございまして、この点につきましては、議論を深めるよう、大臣からも指示を受けているというところでございます。

 こうしたことで、今年度、この委員会では、長期低炭素ビジョンを踏まえつつ、定量的な議論も可能な限り含めて、長期大幅削減に向けた道筋についてのご議論をいただきたい、このように考えまして、引き続きのご指導をお願いしたいということでございます。

 委員の皆様方におかれましては、引き続き、闊達なご議論をよろしくお願いいたします。

 よろしくお願いいたします。

名倉低炭素社会推進室長

 では、以降の議事進行は浅野委員長にお願いいたします。

浅野委員長

 それでは、私からも、3月までの長期ビジョンの検討について、委員の先生方に大変ご協力をいただきまして、何とかまとめることができたことについて心からお礼を申し上げたいと存じます。引き続き審議を依頼されておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、まず、本日の配付資料の確認をお願いいたします。

名倉低炭素社会推進室長

 議事次第の次に配付資料一覧がございます。資料1としまして、諸外国の長期戦略の概要がございます。資料2としまして、今後の検討についてがございます。参考資料1としまして、長期低炭素ビジョン小委員会委員名簿がございます。参考資料2としまして、離脱表明を受けた国内外の動向等がございます。参考資料3としまして、平成29年版環境白書についてがございます。参考資料4としまして、「カーボンプライシングのあり方に関する検討会」の設置についてがございます。

 また、委員の皆様の机上には、環境白書の本体、それから、本日ご欠席または遅れていらっしゃる高村先生からご意見をいただいておりますので、それを配付しております。

 資料については以上でございます。資料の不足等ございましたら、事務局までお申しつけください。

 カメラは、ここで退席をお願いいたします。

浅野委員長

 それでは、議事に入ります前に、前回の小委員会から今日に至るまでの主なことについて、事務局から報告をいただきたいと思います。

 どうぞ、木野室長。

木野国際地球温暖化対策室長

 そうしましたら、お手元の参考資料2をご覧いただきたいと思います。

 前回以降で、大きな国際的な流れとして、冒頭の局長の鎌形より、もう既にエッセンス、ポイントはご紹介いただきましたが、米国がパリ協定の脱退について表明したということがございます。資料はちょっと長くなっておりますけども、もう既に報道等でもされておりますので、ごくポイントのみご紹介させていただきます。

 まず、1ページにつけさせていただいているのが、米国の脱退表明を受けまして、日本政府として出しているステートメントでございます。

 まず1パラのところでは、我が国は、先進国がリーダーシップを発揮し、パリ協定を着実に実施していくことが重要であるということで、基本方針はぶれないということを書かせていただいております。

 一方で、受け止めとしては、二つ目のパラグラフであるとおり、今般の米国のトランプ政権がこの脱退を表明したことについては残念であるという表現になってございます。後ほど山本大臣が表明されたステートメントについてはご紹介いたします。

 あと、3パラにつきましては、米国のこの分野での重要性を述べつつ、我が国として、引き続き米国と協力していく方法を探求していく、あるいはパリ協定の締約国と同協定の着実な実施を進めることで、積極的に取り組んでいくということでステートメントを出してございます。

 2ページ以降で、今回の米国の脱退方針の発表を受けた米国あるいはほかの国、国内の反応を書いてございます。

 2ページ目ですけれども、冒頭で発表内容とございますが、ポイントとしては2点かと思っております。米国がパリ協定から脱退するという方針を明確に述べたこと、それに加えて、米国はパリ協定のもとでのNDCの実施、GCFへの拠出を含めて、この実施をやめると言っていることでございます。

 ただ、これらについて、3ページ目の冒頭で「気づきの点は以下のとおり」とさせていただいておりますけども、パリ協定、協定に基づけば3年以上まだ手続は要するんですけども、今後、米国がどういったスケジュールでそれを進めていくとかということについては、現時点で明言はございません。

 また、先ほど鎌形から山本大臣とプルイットプルイット長官とのバイ会談の様子をご紹介させていただきましたが、米国は気候変動枠組条約からの脱退については言及しておりませんで、引き続き、条約のもとでのCO2削減は進めるということを言っているところです。

 また、パリ協定の再交渉ということもトランプ大統領は言っておりますが、どういう形で行うかということについては、現時点では見通しは不明でございます。

 あと、少しめくっていただきまして、5ページからは主要国等の反応ということですけども、詳細は省略させていただきますが、現時点で確認できている限りは、各国ともパリ協定しっかり取り組んでいくということで、追随する動きはないということで認識してございます。

 続きまして、8ページ、9ページで、米国内の動きということでまとめてございます。

 例えば8ページの冒頭のポツで述べておりますのが、これはブルームバーグ氏が主導しているということなんですけれども、米国内の州や市の首長さん、あるいは大企業のCEO等が、我々はパリ協定のもとでしっかり取り組むと。「WE ARE STILL IN」という名目のもとで、しっかり取り組んでいくということが5日付で公表されております。

 また、米国の世論調査によれば、全体としては、今回のトランプ大統領の離脱の表明、これについて、離脱に反対したという方が全体の中では約6割いたということで、脱退支持をする約3割よりも大幅に上回ったということがございました。ただ、政党別に見れば、民主党支持者の中では、今回の大統領の決定に支持をしている方が上回っているということで、こういった点も、引き続き注目して見ていかなければいけないと捉えているところです。

 あと、続きまして、10ページ、11ページ、ここでは日本国内の産業界の方からの声明ですとか、あるいはNGO、自治体からの声明ということ、さらに、12ページでは主要な国内の各社さんの関連の社説を抜粋させていただいておりますが、いずれにせよ、国内でも米国の動きにとらわれずしっかりやっていくという論調かと認識してございます。

 あと、13ページに、山本環境大臣が、アメリカのパリ協定脱退表明を受けて、翌日(6月2日)に会見したときの様子でございます。

 1.で、発言要旨ということでございますが、政府としては、先ほどの方針で述べておりますけども、大臣からは、今般のトランプ政権の協定の脱退については失望しておりますということで言っていただいているのと、あと、下から10行目辺りでしょうか、質疑のやりとりの中では、大臣として、京都議定書からの脱退と、そういう経験をしてきたけども、そのときに比べれば、比べ物にならないほどの失望感を覚えていると。パリ協定というのは、ここまでやってきた人類の英知、そういうパリ協定に背を向けたということで、大変な失望を覚えていると。そういう表現で、山本大臣からはコメントを出していただいているところです。

 続きまして、17ページですね、ここで「経済財政運営と改革の基本方針」、いわゆる骨太の方針ということで、9日付で閣議決定されたものですけれども、この中でも、地球環境への貢献ということで、気候変動の脅威に対して世界全体で取り組むためにということで、パリ協定のもと、日本としてミティゲーション、「地球温暖化対策計画」のもとでしっかりやっていく、あるいは適応についても、「気候変動の影響への適応計画」、このもとでしっかり推進するということで、改めて方針を決定しているところですので、全体を要約すれば、先ほどの鎌形からの紹介のとおり、日本政府としてはしっかりぶれないというところを各所で確認しているところでございます。

 説明としては、以上でございます。

浅野委員長

 それでは、続いて山田計画官、どうぞ。

山田環境計画課計画官

 それでは、説明させていただきます。

 平成29年版環境白書についてということで、参考資料3について、簡単に説明させていただきます。

 こちらの資料は、環境白書についてということでございますが、6月6日に、ここの下の四角囲いにございますけれど、環境白書と、あとは循環型社会白書と、それから生物多様性白書、いずれも法定白書でございますが、こちらを一括して閣議決定させていただいたということでございまして、そちらの報告ということでございます。これは平成28年度の報告ということになってございます。こちらの概要につきましては、環境省のホームページにアップしているものがございますので、ぜひ、そちらのほうもご覧いただければというふうに思っております。

 1枚おめくりいただきまして、平成29年版環境白書のテーマということでございます。

 平成29年版の環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書、これ、通称して「平成29年版環境白書」というふうに呼びますが、この白書では、「環境から拓く、経済・社会のイノベーション」といったものをテーマに掲げさせていただきました。

 構成といたしましては、4章構成ということでございまして、最後の第4章は東日本大震災や熊本地震の話でございますが、その上の3章は、第1章が「地球環境の限界と持続可能な開発目標SDGs」につきまして、第2章が「パリ協定を踏まえて加速する気候変動対策」、第3章が「我が国における環境・経済・社会の諸課題の同時解決」ということで、SDGsですとかパリ協定など、世界の大きな流れがある中で、環境政策によって環境問題を解決すると同時に、社会経済のイノベーションを創出し、経済・社会の課題をも解決していくための方向性を提示するということで作成させていただきました。

 このコンセプトは、長期低炭素ビジョンのコンセプトの中にもあります、「気候変動問題の解決を通じた我が国の経済・社会的課題の同時解決」の考え方にも合致したものではないかというふうに考えてございます。そのため、この白書には、長期低炭素ビジョンの考え方が随所に取り入れられることとなったということでございます。

 その次のページ以降に、長期低炭素ビジョンでの書きぶりと、環境白書の書きぶりということで、対照表になっているものがございます。時間の都合もありますので、詳しい説明はいたしませんが、脱炭素社会の定義に関するものですとか、あとは科学的知見の取り扱い、未然防止の原則、これはコラムで紹介してございます。

 それから、4ページに行きまして、カーボンバジェット、炭素予算ということですが、と累積排出量につきましては、これもコラムで紹介してございます。

 5ページは、国内における長期大幅削減と世界全体の削減への貢献。

 さらには、主要排出国としての役割、炭素生産性、環境・経済・社会の各分野のイノベーションの必要性、環境・経済・社会の諸課題の同時解決、投資機会の創出と経済成長、高付加価値化:「量から質による経済成長」、カーボンプライシングなど、これもコラムでの紹介となっておりますが、というのがもろもろ書かれているという状況でございます。

 今回の環境白書は、先ほども申し上げましたとおり、SDGsと並んで、パリ協定を一つの大きな柱というふうに考えておりまして、そのパリ協定が、単なる気候対策というだけでなく、経済・社会にも好影響を与える可能性があるということで、紹介をもろもろさせていただいております。既に公表されているものでございますので、特に概要版につきましては、先ほども申し上げましたとおり、皆さん、ぜひご覧になっていただいて、いろいろと考えるきっかけにしていただければというふうに思っております。

 簡単でございますが、以上でございます。

浅野委員長

 どうもありがとうございました。

 それでは、議事に入りたいと思います。

 本日の議題は二つございまして、一つは、今後の検討のまず前提になります、諸外国がどのような長期戦略をつくっているかということについての概要のご説明を伺う。それから、今後、どのような手順で検討を進めるか。この2点について、本日はご議論いただくということでございますが、まず、1の諸外国の長期戦略の概要について、事務局からご説明をいただきたいと思います。

名倉低炭素社会推進室長

 では、資料1に基づきまして、ご説明をさせていただきます。

 資料をめくっていただきましたところ、2ページ、3ページで、各国の長期戦略についての状況を載せております。

 これは、これまでにもこの小委員会の中でお出ししたものでございますけれども、2ページに載っておりますのは、国連に提出済みの主な国というのを挙げております。ドイツ、アメリカ、カナダ、メキシコ、フランスといったような国が、既に国連に提出をしているという状況でございます。

 また、3ページのところは、国連には未提出でございますけれども、こういう長期的な戦略、ロードマップといったようなものをつくっているところとしまして、EUですとか、英国というのがございますので、載せているという状況でございます。

 それぞれについて、概要を次のページ以降で記載してございます。

 4ページ、5ページのところには、ドイツの「Climate Action Plan 2050」を載せております。

 4ページのところの概要のところに記載してございますけれども、このドイツのプランにつきましては、全ての関係者に必要な方向性を示すものという位置づけでつくられているものでございまして、2050年のビジョンとともに、2030年のマイルストーンですとか、対策、部門別の排出目標等を書いているというようなものでございます。左下のほうをご覧いただきますと、2030年の部門別削減目標というようなものが数字で記載されているというものでございます。

 次のページ、5ページにまいりまして、おもだった章の構成というのを記載しております。左のほうに章を記載しておりまして、右のほうに主な内容というのを書いております。前文がございまして、導入がございまして、2ポツとしては、経済の近代化戦略としての気候変動対策ということで、気候変動対策と経済との関わりについて記載がされているというものでございまして、3ポツところでは、国際的な状況について記載をしております。4ポツのところでは、温室効果ガスニュートラルなドイツの実現の道筋ということで、道筋についての記載がございます。また、5ポツのところでは、目標と対策ということで、各部門ごとの対策について記載がございまして、また、6ポツのところでは、進捗のモニタリング等々についても書かれているというものでございます。

 めくっていただきまして、6ページ、7ページのところが、フランスの戦略についてでございます。

 フランスにおきましては、根拠法として「グリーン成長のためのエネルギー移行法」というものがございまして、この法律に基づきまして、国家低炭素戦略と、あとカーボンバジェットの制定が位置づけられております。このフランスのカーボンバジェットについては、何年かごとにここまで減らしていくというような枠を示したものでございまして、右下の図に載せておりますけれども、排出枠の将来の推移というのを載せております。

 7ページのところには、フランスの戦略についての章立てというのを載せております。1章、2章がございまして、3章のところでは、公共政策に関する戦略ということで、3.2のところでは部門の横断的な戦略というのが記載されておりまして、3.3のところでは部門固有の戦略ということで、各部門についての戦略が載っているというものでございます。それから、右側に行きまして、第4章のところでは、カーボンバジェットですとか、モニタリング指標といったようなことが書かれております。第5章以降は、附属報告書とか附属書ということでございますけれども、例えば施策のインパクト、経済的なインパクトの分析や社会的なインパクトの分析などもされているというものでございます。

 めくっていただきまして、8ページ、9ページのところが、米国の脱炭素に向けた長期戦略を載せております。

 米国につきましては、シナリオ分析などをしまして、2050年の80%削減を達成する複数の道筋を提示しております。この中に、一つの道筋については、かなり確度の高いものとして載せられております。概要のところの二つ目のポツでございますけれども、2050年までに80%以上削減するということでございまして、低炭素なエネルギーシステムへの転換ですとか、森林等やCO2除去技術を用いたCO2隔離、CO2以外の排出削減の3分野で取組を推進していくというようなことになっております。左下のほうに、このベンチマークのシナリオにおける要因別の削減量といったようなことも記載がされているというものでございます。

 次のページ、9ページが、章の構成が記載されておりまして、2ポツのところでは温室効果ガス排出と傾向というのがございまして、3ポツのところでは2050年のビジョンと。これはMCSと書かれているのが、上のほうに書かれておりますMid-Century Strategyというようなものでございます。それぞれの分野別、分野横断的なことについても記載をされているというものでございます。

 めくっていただきまして、10ページ目が、カナダの長期の低排出発展戦略について載せております。2050年に向けまして、各部門でどれぐらい減らしていくか、シナリオの分析結果というのが載せられております。幾つかシナリオがございますけれども、一つのシナリオについて、その下半分で書いておりますけれども、各部門でどれぐらいの排出量にしていくのかといったようなことが記載されているというものでございます。

 それから、次のページ、11ページのところで、イギリス(英国)の炭素計画について記載をしております。これにつきましては、気候変動法で定められているもので、カーボンバジェットなども含めて決められているというものでございますけれども、このイギリスの計画については、まだ国連のほうには提出はされていないというものでございます。

 めくっていただきまして、12ページはEUですね。EUにつきましても、ロードマップ2050ということで、ロードマップにつきまして、EU27カ国のロードマップについて、例えば真ん中辺りを見ていただきますと、各部門につきましても、幅を持ったようなロードマップを描いているというものでございます。

 13ページ目以降が、幾つかのおもだった長期戦略につきまして、幾つかの観点で、どういうふうに記載されているかというのを書いているというものでございます。

 13ページのところですと、気候変動対策と経済成長ということについて書いておりまして、各国とも、気候変動対策に取り組まないことによる不利益、経済ですとか、社会ですとか、生態系などの不利益を認識して、排出削減と経済成長を同時に実現するというようなことで位置づけているというものでございます。例えばドイツでも、気候変動対策は経済、開発、外交、安全保障政策の成功に必須の条件であるといったようなことが書かれております。また、フランスでも、戦略を定めて、中長期的に経済、持続的にGHGを削減するための取組を規定するといったようなことが書かれておりますし、米国につきましても、高炭素社会の追求、つまり現状維持は将来の米国並びに世界経済に大規模かつ壊滅的なダメージを与えるとか、下のほうでは、低炭素技術の拡大は経済的な機会につながるといったようなことも書かれております。

 めくっていただきまして、14ページのところでは、カーボンリーケージでございますけれども、ドイツ、フランス、アメリカともに、カーボンリーケージに関する記述がございます。ドイツですとか、フランスにつきましては、リーケージ防止のための施策の必要性とその具体的な方策というのが記載されておりますし、米国では、世界全体での取組によりリーケージを回避することができるというようなことが書かれております。ドイツにつきましては、下のところに線を引いておりますけれども、経済競争力は、排出、投資及び雇用を外国に移転させることなしに、いかに早く経済を脱炭素化させられるかにかかっているとかということが書かれておりますし、フランスについても、外国移転を招かないようにする必要があるといったようなことが書かれているというものでございます。

 それから、次のページ、15ページ目では、国内削減について書かれておりまして、それぞれパリ協定を踏まえて、国内削減により長期目標を達成するというようなことが書かれております。ちなみに、フランスにつきましては、国内排出量の削減に加えまして、カーボンフットプリントの考え方というのを部門別の対策にも取り入れていくというふうなことで記載がございます。ドイツのほうにつきましては、パリ協定で合意された義務をドイツにふさわしい範囲で実行していくということも書かれておりますし、ロックイン効果等の回避のために、将来を見据えた近代化政策を現時点で開始しなければならないといったようなことも書かれております。フランスにつきましても、炭素リーケージを防止しつつ国内排出量の削減(カーボンバジェットの順守)を優先課題として取り組むとか、「併せて」ということで、消費に係る、消費者に対して必要な情報等を提供する、カーボンフットプリントにも取り組むというようなことが書かれております。米国につきましては、野心的な国内対策は、国際社会のリーダーシップにおいて必須の条件だということも書かれております。

 めくっていただきまして、16ページ目でございますけれども、国外での削減について書かれております。ドイツの長期戦略には、ドイツの産業が有する技術が世界の温室効果ガス排出の削減に貢献することが記載されておりますし、フランスの長期戦略には、消費を通じた世界での排出削減に対する配慮の必要性というのも記載されております。アメリカの長期戦略には、世界規模での低炭素技術に対するイノベーション誘発が、世界・米国の双方にとって有益であるというようなことが記載をされております。その下、見ていただきますと、ドイツでは、パリ協定で合意された長期的な温室効果ガスニュートラルという世界の目標の達成に貢献するといったようなことが書かれております。フランスでは、先ほども申し上げましたカーボンフットプリントについて、各部門及び各地域レベルでそれぞれ考慮されるべきであるといったようなことも書かれておりますし、その一つ下には、「スコープ3」の要素も考慮に入れるということが書かれているというものでございます。

 それから、次のページ、17ページ目では、長期目標の達成に向けた認識というのが書かれておりまして、それぞれ、さまざまな研究ですとか、シナリオ分析から、長期目標の達成は可能だというふうに書かれておりまして、各国ともイノベーションの重要性というのを認識していると。研究開発、技術的なイノベーションを主に、社会的・経済的なイノベーションなども含めた取組が必要というようなことが書かれております。例えばドイツでも、二つ目のポツでございますけれども、温室効果ガスニュートラルなドイツへの変換を成功させるためには、技術的、社会的及び経済的なイノベーションを目指した、一貫した効率的政策が決め手となるといったようなことも書かれておりますし、そういったことを進めるために、マイルストーンとか、一貫した道筋、戦略的対策というのが重要だといったようなことも書かれております。それから、フランスのほうでも、下線を引いた部分でございますけれども、R&Dとイノベーションに関する幅広い取組が必要だということで、※で書いておりますけれども、主要な課題として、社会的な側面とか、技術的な側面についての例示などもございます。米国につきましても、ますます意欲的な脱炭素化政策とイノベーションの継続に対する支援が必要といったことですとか、クリーンエネルギーイノベーションがあれば、費用削減と低炭素エネルギーへの転換を早期化させ、世界にも貢献するといったようなことも書かれております。

 また、次のページ、18ページ目でございますけれども、イノベーションの必要性ということについても書かれておりまして、それぞれ脱炭素社会の実現のためにはイノベーションが不可欠であると。さらに、それを後押しする施策が必要であるということが記載をされております。ドイツのほうでは、新たなパラダイムシフトをもたらすイノベーションを起こすには、設定した目標に向けてテクノロジーにオープンな姿勢を保ち、革新的で市場に沿った研究を支援していく必要があるといったようなこともございますし、その下には、そういう転換の原動力となるのは、変化を機会と捉え、積極的かつ戦略的に転換を図るための総括的な近代化戦略であるといったようなことも書かれております。フランスのほうでは、「低炭素」社会への移行に必要な抜本的変革には、破壊的イノベーション及び個人消費者から製造業の設計者に至る行動様式の変化等の複雑な組み合わせが必要といったようなことも書かれております。また、米国では、イノベーションは、コストを引き下げ、低炭素エネルギーへの転換を早期化させる、また、諸外国における排出削減を推進するといったようなことも書かれております。

 次のページでございますけれども、19ページ、エネルギー起源CO2排出削減のための要素ということで、それぞれエネルギー起源CO2排出の削減のため、エネルギー利用の効率化、エネルギーの低炭素化、それから、低炭素化した電力利用というのを主たる要素というふうに挙げております。それぞれ記載されておりますけれども、ドイツですと、二つ目のポツなどでは、再生可能エネルギーをさまざまな分野で直接利用していく必要がある、残りのエネルギー需要は、二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギー起源の電力で賄うといったようなことが言われております。また、フランスにおきましても、グリーン経済の実現に向けて、全部門における省エネ、運輸・暖房・産業における脱炭素エネルギーの利用なども言われておるというものでございます。米国におきましては、一つ目では、エネルギー浪費の削減というのもございますけれども、二つ目のポツでは、電力システムの脱炭素化といったようなことで、再生可能エネルギーとか、原子力ですとか、二酸化炭素回収・利用・貯留(CCUS)などへの言及もございます。

 めくっていただいたところ、20ページでございますけれども、カーボンプライシングについて、それぞれカーボンプライシングの必要性ですとか、施策というのが記載をされているというものでございます。ドイツにおきましては、気候保護目標を達成するため、2050年までの税・公課制度の段階的な発展を検討するといったようなことが書かれておりまして、EU-ETSについての記載がございまして、EU-ETSがより効果的なものとなるよう、欧州レベルで取り組んでいくといったようなことが言われております。フランスにおきましても、炭素価値を内部化し、排出量の削減と排出回避のための投資に報いることを目的とする温室効果ガスに対する適切な価格設定が必要といったようなことが書かれておりまして、その下のほうには、具体的な目標、金額というのをトン当たり何ユーロから何ユーロまで引き上げるといったようなことも書かれております。米国につきましても、温室効果ガスの排出価格設定は、費用効果の高い排出量削減の促進、並びに低炭素エネルギー供給技術に対する民間投資の推進という、二つの目的にかなうといったようなことが書かれております。

 次のページ、21ページでございますけれども、エネルギー政策との関係性ということで、それぞれエネルギーの費用効率性について言及をしているというものでございます。ドイツとかフランスの長期戦略においては、コストのほか、安定供給などを含めた、エネルギー政策との関係の重要性について記載をされているというものでございます。ドイツなどでは、エネルギー供給の安定性とコストが現実的で競争力を維持できるエネルギー価格を実現することは、ドイツの排出削減目標を達成することと同等の重要性を持つといったようなことが書かれておりますし、一番下のポツのところでは、およそ2050年までに再生可能エネルギーを基盤とした電力供給への転換を達成し、同時に安定したエネルギー供給を維持することは技術的に可能だと。この際、常にエネルギーの需給バランスを維持し、同時に消費者にとって現実的な電力コストを保証することが中心的な課題となるといったようなことが言われております。また、フランスにつきましても、エネルギー分野においては、政府のエネルギー戦略「エネルギー複数年計画」というのと「両立」の関係が求められると。エネルギー、その計画については、長期戦略の方向性や規定に直接反する方策を講じることはできないといったようなことが書かれております。また、その二つ下のポツですけれども、長期戦略については、当該ミックスの構成を具体的に規定することは目指していないというふうなことが書かれております。

 それから、その次のページ、22ページでございますけれども、地方との関係ということが書かれておりまして、それぞれ地域レベルでの温暖化対策の推進が必要ということが記載をされております。ドイツでは、気候保護計画のレビュー及び改定は、州、自治体、経済界、社会及び市民の幅広い参加のもと、公共の対話プロセスを通じて行うといったようなことが言われているところでございます。また、フランスにおきましても、二つ目のポツでございますけれども、地域及び地元の関係者は、長期戦略の実施に当たり重要な役割を担っているというようなことが書かれております。また、米国については、冒頭でございますけれども、連邦政府の対策は、州及び地方レベルでの政策によって補完されるといったようなことが書かれているというものでございます。

 また、次のページでございますけれども、フォローアップの方法というのも書かれておりまして、ドイツとかフランスの長期戦略には進捗管理や定期的な見直しの実施について、それから、アメリカにおいてもそれらの必要性について記載をされているというものでございます。ドイツにおいては、パリ協定のNDCの5年ごとのレビューに従って、Climate Action Planのレビュー・改定を行うと。初回の改定は、新しいNDCを提出する2019年末まで、遅くとも2020年の初めまでに行うというようなことが言われておりまして、一番下のポツでございますけれども、政府はClimate Action Reportを毎年作成すると。連邦議会に定期的に報告を行うというようなことが書かれております。また、フランスの1ポツ目でございますけれども、低炭素戦略、5年置きに全面的な見直しが行われ、その機会に次の2期分のカーボンバジェット対象範囲を必要に応じ調整すると。また、2年ごとに報告書を作成し、これを欧州委員会に提出するといったようなことが書かれております。また、米国につきましては、一つ目のポツの途中からでございますけれども、類似した継続的取組に着手するとともに、少なくとも5年ごとにその世紀中ごろ戦略の見直しと進捗評価を行った上で可能な限り目標を高めることを、全ての国に対し奨励するといったようなことが書かれております。

 横断的に見ておりますけれども、それぞれの計画につきましては、それ以降の参考資料というところに載せておりまして、ドイツのアクションプランですと、25ページ、26ページは先ほどと重複しますけれども、それがずっと続きまして、40ページまで、どういうことが記載されているかというのを書いております。

 また、フランスについては、41、42ページについては、先ほどと同じものでございますけれども、細かくどういうことが書かれているかということについては、その後、54ページまで記載をしております。

 米国についても、55、56は同じでございますけれども、それ以降ですね、さまざまなシナリオを記載されておりますので、そういったことについても、ずっと続きまして、77ページまで、部門ごとのシナリオの考え方なども書いております。

 それから、78ページからは、カナダの戦略につきまして記載をしておりまして、カナダもさまざまなシナリオというのを載せておりますけれども、それが91ページまで記載をしております。

 それから、92ページのところからは、イギリスの炭素計画について記載をしておりまして、それが94ページまで。

 それから、EUの低炭素経済ロードマップ2050について、95ページと96ページで記載をしているというものでございます。

 ちょっと雑駁でございましたけれども、各国の長期戦略につきまして、ご報告をさせていただきました。

浅野委員長

 どうもありがとうございました。

 それでは、ただいまのご説明について、ご質問なりコメントなりをいただきたいと思います。なお、この後、もう一つの議題として、我が国で今後どのように検討するかということについての事務局の説明を受けて、それについての意見交換もしたいと思いますので、できましたら、この部分では、各国の長期戦略についてのコメント、あるいはご質問にとどめていただきたいと思います。なかなか切り離せないので、本来なら全部説明を聞いてからと思ったのですが、やはりこういうふうにやれというシナリオですから、シナリオどおりいたしましょう。

 それでは、ご発言をご希望の方は、いつものとおりですが、名札をお立ていただけますでしょうか。

 よろしゅうございましょうか。では、後出しはお断りということで、ご勘弁ください。

 では、大塚委員からどうぞ。

大塚委員

 どうもありがとうございます。

 後から発言させていただくようなこともございますので、ここでは簡単にさせていただきますが、まず一つは、これは長期戦略を考えていくということが今日の議題ですので、それで構わないんですけども、グローバル・ストックテイクの5年前の「2018年の促進的対話」というのがございますので、そのときにNDCを各国はまた出し直すということがあることはありますので、ちょっとそこがやや忘れられているような気もしますので、我が国も、その問題は出てくる可能性があるということをちょっと明記しておく必要があるかなと思いますので、一言、まず申し上げておきます。

 今ご説明いただいた各国の既に出されている長期戦略に関しては、いろいろ参考になるところが多かったと思います。特にフランスとかに関しては、税を毎年どういうふうに上げていくかということについてまで、エネルギーの移行の法律の中で、あるいは税法を実際につくるんだと思いますが、シグナリング効果を狙っているような対策をとっているというところが非常に重要だというふうに思いました。

 あと、進捗管理に関しても、各国はこの長期目標との関係で考えているということも大変参考になると思いましたので、コメントとして申し上げておきたいと思います。

 以上でございます。

浅野委員長

 ありがとうございました。

 では、大野委員、どうぞ。

大野委員

 私も感想だけなんですけども、今、拝見して、各国の長期戦略、それぞれ個性はあるんでしょうけども、共通しているのは、一つは気候変動対策を進めていくことが経済にもメリットがあるんだというふうな認識が、やっぱりどこでも共通しているかというふうに思いました。

 それから、二つ目に、やっぱりカーボンプライシングの炭素の価格づけの必要性なんかについても、かなり認識をしているという点かなと思います。

 それから、あと3点目には、特に、当然、脱炭素化をしていくんですけども、やっぱり電源の部分については先にやるという認識がかなり強いのかなというふうに思いました。その電源の脱炭素化というのが、ドイツなんかは明確に再生可能エネルギーというふうに言っているし、そうでない国も、原子力とかというふうなところもありますけども、いずれにせよ電気の部分の、エネルギーの中でも電気の部分の脱炭素化を先にやっていくということは、かなり一致しているのかというふうに思いましたが、こういう点を日本でも今後つくっていく長期戦略の中で重視をしていく必要があるかなというふうに思いました。

 以上3点、感想です。

浅野委員長

 ありがとうございました。

 では、末吉委員、どうぞお願いいたします。

末吉委員

 ありがとうございます。

 大変ためになる論策、本当にありがとうございました。勉強になりました。

 一望しての感想ですけども、非常に強い政治的ウィル、国家としての意思を強く感じました。

 その理由は、押しなべてみんな長期的視点から総合的な、しかもサイエンティフィックなアプローチをしているということがまず第1点。

 それから、ビジネスに関して言えば、国内にグリーンな需要をつくり出すということに非常に注力していると。ドイツでしたっけ、これはディインダストリアライゼーションではなくて、リストラクチャリング・インダストリーだと言っている、まさにそういうことなんだろうなと思っております。

 それから、お金の面、金融、特に年金基金などをずっと動かしていくと。こういった政策も包括的に入っているのは、大変いいことだと思っております。

 それで、結局のところ、総括して言えば、経済や社会を変革するんだという強い意志を感じております。トランスフォーメーションですよね。そのプロセスで始まっているのが、国としての戦略とか政策の競争ではないかと思っております。お互いこういったことをやり合う中で、切磋琢磨して向上する流れが始まっていると。とすれば、やはり日本もですね、こういった競争の場にぜひ日本もとどまらなきゃいけないというより、入り込まなきゃいけないんだということを強く感じました。

 以上です。

浅野委員長

 ありがとうございました。

谷口委員、お願いいたします。

谷口委員

 2点ございます。

 一つは非常に素朴な疑問なんですが、私、研究とかをやっていて、CO2を算出しようとすると、誰の研究のどの式を使ってとかというふうに特定してやるわけですけれども、各国の間で、CO2の算出方法というのは、ちゃんと統一がとれているんだろうかというふうなことがまず一つ素朴な疑問です。当然、これは横並びで将来いろいろ見ていくということが生じると思うので、その辺り、どうなっているんだろうかということです。

 あと、もう一点は、次の議題に関係してしまうんですけれども、やっぱりこう並べるということは、我が国はどうするのかというのが、やっぱり考え方として表にあってほしいところです。平均的なことをほかの国と比較しながら考えるのか、実はそうじゃなくて、ほかの国とは違うことがかなりあると思います。具体的には、欧米と比べまして生活の質という観点で、例えば通勤電車だと、かなり混雑していて、クオリティが低いんだけれども、CO2の1人当たり排出量は低いという問題があります。クオリティ、すなわち生活の質ですね。イノベーションのことは結構議論されてきたんですが、このようなクオリティの面というのは、ほかの海外の国は当然満たされているので、そういうことがこの表には項目としてそもそも書かれていないんです。このような状況の中で、我が国はどう議論していくのかということが一つのポイントかなと思いました。

 以上でございます。

浅野委員長

 ありがとうございました。

 それでは、池田さん、どうぞ。

池田説明員

 各国の長期戦略について、体系的かつ詳細に整理していただきまして、ありがとうございます。

 簡潔に1点確認をさせていただきます。長期戦略の策定においては、エネルギー政策や科学技術政策、インフラ政策といった、他の重要施策との整合性の確保が重要だと思いますが、各国において、他の関係省庁や、経済界などのステークホルダーとの調整をどこまで行って、どのような配慮がなされたのでしょうか。ドイツの事例には多少記述がありますが、他省庁やステークホルダーとの調整等、策定プロセスについて、つけ加えることがあれば、ぜひ教えていただきたく思います。

 以上です。

浅野委員長

 ありがとうございました。

増井委員、どうぞ。

増井委員

 どうもありがとうございます。

 取りまとめ、どうもありがとうございます。取りまとめていただいた上で、2点ほどコメントがございます。

 1点目は、今回、長期戦略の成果といいますか、各国の成果というのが示されているわけなんですけれども、こういう長期戦略というのをどういうふうに策定されたのか、そのプロセスというのも、もし情報としてまとめられているのであれば、教えていただきたいと思います。まさにこれから議論していく中で、長期戦略の成果として、こういう構成になっているということ以外に、どういうプロセスで行われたのかというところも参考になるかと思いますので、ぜひお願いしたいと思います。

 2点目は、こういう長期戦略に関しまして、前提となっている社会経済の状況というのがどういうものなのか、先ほど谷口委員のほうから、生活の質というようなコメントもございましたけれども、生活の質だけではなくて、所得分配ですとか、様々な観点から、どういうことを前提として、こういう数字というのが積み上がったのかといったところも、もし情報として取りまとめられているのであれば、ぜひ紹介していただければと思います。

 以上です。

浅野委員長

 ありがとうございました。

 ご質問が幾つかありました。増井委員のご質問の前半部分は、部分的には、前にヒアリングをやったときにかなり丁寧に説明を聞いています。ですから、それはもうみんなわかっているので、それ以外のところについて情報があればという質問だと考えてください。多分、今すぐ答えるのは無理だろうと思いますから、これについてのお答えは次回以降で構いません。でも、今すぐ答えられることもあると思いますのでその点と、谷口委員からのご質問、それから池田さんからのご質問について、事務局からお答えください。

名倉低炭素社会推進室長

 まず、CO2の算定方法ということにつきましては、恐らくどこの国もインベントリとかをつくっておりますので、概ね共通した方法で算定しているのではないかというふうに考えております。細かい部分につきまして、どれぐらいの違いがあるのかというのはわからないんですけれども。ということでございます。

 あと、さまざまな条件につきまして、実際にこの戦略の中等でわかっている部分はございますので、今後、またそういった比較については続けていきたいというふうに考えております。

 それから、各エネルギーとほかの政策との関係につきましては、例えば21ページのところには、エネルギー政策との関係について記載をさせていただいておりますけれども、中身としましても、ほかの政策に関係しそうなところというのを参考資料の中で書いたような部分もございます。ただ、調整をどういうふうにしているかについては、恐らくこれまでのヒアリングとかの中で幾分説明されている部分もあろうかと思いますけれども、わかる範囲で、また今後とも調べてみたいというふうに考えております。

 それから、増井先生がおっしゃった前提となる社会経済の状況につきましても、これも中で書いている部分もございますし、調べればわかるという部分もございますので、また今後に向けて整理を進めていきたいというふうに考えております。

浅野委員長

 それでは、宿題になった部分については、どうぞ今後情報をまた提供してください。とりわけ、他の政策との調整というのは、割合大事な点で、まずエネルギーが決まらないと何も決まらないのは国なのか、それともエネルギーの話をするときはちゃんと環境の話をそこにもう同時に入れているのかと、この辺は非常に重要だと思うのです。ですから、ぜひはっきりさせていただければと思います。

 それでは、今日の本論になると思いますが、今後の検討の進め方についてということで、考え方及び重視すべき事柄、それから、当面、ヒアリングをまずやりたいということを事務局は考えておられますので、その3点についてのご説明をいただきまして、これについて、今日は委員の皆様方から忌憚のないご意見、コメントをいただきたいと思います。

 では、事務局、お願いいたします。

名倉低炭素社会推進室長

 では、資料2に基づきまして、ご説明させていただきます。

 資料2としまして、今後の検討についてということでございまして、今おっしゃっていただいたように、3部構成になっております。

 一つ目としまして、長期戦略策定に当たっての視点ということでございまして、これまで長期低炭素ビジョンをまとめていただきまして、今、諸外国の長期戦略についてもざっとご覧いただきましたけれども、我が国が、今後、長期戦略を策定するに当たっての視点ということで、こういう視点が必要ではないかということを書いているというものでございます。長期ビジョンの観点からしますと、これまでやったことのおさらい的なことが書かれているというものでございますけれども、説明させていただきます。

 1としまして、パリ協定に基づくものであることと書いておりまして、パリ協定の規定に基づいて作成する長期戦略については、パリ協定に整合的なものとなるように策定する必要があるということでございます。

 一つ目としましては、パリ協定の目標達成に資するものであることということで、気候変動枠組条約におきましては、究極の目標ということで、大気中の温室効果ガス濃度の安定化に向けて、パリ協定において、いわゆる2度目標ですとか、人為的な排出量と除去量の均衡の達成という目標が合意されているというものでございます。

 我が国の長期戦略は、こうしたパリ協定の目標達成に向けて、我が国が目指すこととしている長期目標を達成する場合の絵姿ですとか、道筋というのを内容とするというのが適当であるというふうに考えております。

 丸2番でございますけれども、パリ協定の枠組みに沿うということを前提とするものというものでございます。

 パリ協定は、目標達成に向けて、各国のNDCの見直し、報告・レビュー、世界全体の進捗点検のPDCAサイクルで、前進・向上させていくという枠組みであるということで、全ての締約国が取り組むものということでございます。

 締約国の取組につきましては、それぞれNDCを作成し、その目的を達成するために緩和に関する国内措置を遂行するということとされております。

 それから、他国への貢献につきましては、自国の取組を一層野心的なものにすることを可能にする任意の協力として位置づけられておりまして、二重計上の回避など確固とした計算方法を適用するというふうにされているところでございます。

 我が国の長期戦略につきましても、これらの点を踏まえて、パリ協定の枠組みに整合的なものとする必要があるということでございます。

 それから丸3でございますけれども、責任ある主要排出国としての対応が必要であることということでございまして、我が国、パリ協定を踏まえて、主要排出国の一つとして国内における長期大幅削減に取り組み、さらに、我が国の優れた技術やノウハウを生かして世界全体の排出削減にも貢献していく立場にあるということでございます。

 先ほどご説明させていただきましたけれども、アメリカのパリ協定脱退方針の表明を受けた政府の方針というのは、先ほどご説明のとおりでございますけれども、温対計画において掲げた2030年度26%削減、2050年80%削減を目指して、パリ協定の実施を通じた気候変動対策にぶれることなく引き続き取り組んでいくという方針に何ら変更はないというふうに考えております。

 また、G7の伊勢志摩サミットにおいて、2020年の期限に十分先立って長期戦略を策定し、提出することをコミットしているということも踏まえる必要があるということでございます。

 それから(2)としまして、科学的知見に基づくものであることということで、気候変動問題、科学的事実でございまして、長期戦略の策定を含む気候変動対策の取組に当たっては、科学的知見に基づくことが前提ということでございます。

 丸1としまして、取組の必要性に不確実性は存在しないということでございまして、気候変動による深刻な影響を回避し、人類の存続の基盤である環境が将来にわたって維持されるためには、人為起源の温室効果ガスの排出削減が必要だということ。この知見について不確実性は存在しないということでございます。

 こうした科学的な知見ですとか、パリ協定及び被害の未然防止とか、予防的取組方法の原則を踏まえ、我が国においても長期大幅削減を目指す必要性というのは不変であるということでございます。

 ただ、実態把握ですとか、予測等の精度向上に向け、今後も引き続き科学的知見の集積は必要ということでございます。

 また丸2番でございますけれども、長期大幅削減を目指して、累積排出量の低減を図ることということでございます。

 2度目標の達成には、累積排出量を一定量以下に抑える必要があるということでございまして、我が国においても、利用可能な最良の科学に基づき迅速な削減を進めていくことによって累積排出量の低減を図っていく必要があるということでございます。この点については、長期戦略においても前提となる科学的知見であるということでございます。

 丸3ですけれども、長期大幅削減に必要な方向性を示すものであることということで、長期戦略については、あらゆる主体に長期を見据えた投資や行動判断に係る方向性を与えるものということでございまして、長期戦略は、既存の科学的知見や定量的な分析等を通して、各部門における長期大幅削減を実現する具体的な絵姿や定量的な分析結果を示すことが必要であるということでございます。

 (3)ですけれども、同時解決の視点に立脚するものということでございます。

 大幅削減の実現や経済、社会的諸課題の解決に当たっては、いずれも現状の取組の延長線上ではないイノベーションが必要であり、これらの課題を同時に解決するという視点を持つということが必要であるということでございまして、丸1として、イノベーションによる解決を最大限に追及すること。

 革新的技術の開発ですとか、それを普及させる経済社会システムやライフスタイルなどのあらゆるイノベーションによる解決を最大限に追及する必要があると。この点、我が国の長期戦略においても位置づけが必要だということでございます。

 現状の延長線上でないイノベーションを必要とする長期大幅削減の実現に向けた長期戦略の検討・策定に当たっては、「できることの積み上げ」の視点のみならず、「何をなすべきか」という視点が不可欠だということでございます。

 丸2番としまして、気候変動対策による国内投資を促し、国際競争力を高めることということでございまして、科学に基づき必要とされる気候変動対策は、長期にわたり継続的かつ大規模な投資が必要であるということが予見されますので、これを我が国のさらなる成長につなげていくという視点をもって長期戦略に盛り込む必要がございます。

 政府として目標をぶれることなく示し、大幅削減に向けた政策を的確に講じていくことにより、国内投資を促し、イノベーションの創出につなげていく姿勢を示すことが重要ということでございます。

 また、さまざまな課題や制約がある中で、我が国の技術・ノウハウを初め、ライフスタイルや経済社会ステムといったあらゆる対応によりいち早く大幅削減を実現することというのが国際競争力の源泉となります。

 海外における削減への貢献を長期にわたって継続していくためにも、炭素生産性等の指標も活用しつつ、国内において同時解決を念頭に置いた大幅削減をいち早く実現することが重要ということでございます。

 また、先ほども関連するご発言がございましたけれども、関連分野と連携することということでございまして、長期戦略に示される方向性というのは、次回以降の温対計画の見直しはもとより、関連する他領域においても織り込まれることになると。

 この点を踏まえながら、エネルギー政策等の関連分野と緊密に連携しつつ、パリ協定に沿った対応を進めていく必要があるということでございます。

 その後、4ページ、5ページ、6ページの上までは、関連する規定等を載せております。

 それから、6ページの2ポツでございますけれども、長期低炭素ビジョンにおきましても、今後検討が必要というふうにされた部分がかなりございますので、その部分をそれぞれ抜粋しております。

 6ページのビジョンのはじめにの部分でも、このビジョンは今後の政策の方向を示したものであるということで、今後このビジョンの考え方を政策に十分反映させるとともに、これに沿って今世紀末をも視野に入れた中長期の取組の戦略とその具体化のためのプログラムが早急に策定されることを求めるというふうにしております。

 また、7ページでございますけれども、第1章におきましては、目標を達成するためには、できることの積み上げの視点のみならず、何をなすべきかという視点を加えた検討が必要になるというふうなことが言われておりますし、第5章、7ページのところで抜いております第5章の中では、注書きの中で経済影響とか、産業構造、電源構成や現時点における技術の見通し等の観点も踏まえた検討の必要性も指摘されており、今後の検討に当たっての視点の一つとして留意が必要だということも言われております。

 また、第6章の中では、現状に照らして、対策・施策に過不足がないか、環境、経済、社会を統合的に向上させながら大幅削減を実現できるかどうかの試算や検証を行うとともに、何を成すべきかという視点を持ち、いつまでにどのような対策をするか、将来像へ至る道筋の検討が重要であり、今後の課題として認識する必要があるというようなことが言われておったところでございます。

 また、おわりにでも、政府は今後、パリ協定において招請されている今世紀半ばの温室効果ガス低排出型発展のための長期戦略の策定検討に当たるべきといったようなことも言われておりまして、次のページでございますけれども、長期戦略の策定に当たっても、さまざまな意見を踏まえ、丁寧に議論しながら検討を進めていくべきといったようなことが言われておったところでございます。

 8ページ目の3ポツでございますけれども、この長期低炭素ビジョン小委員会において今後ご議論いただきたい点というのを挙げておりますけれども、長期低炭素ビジョンにおける指摘を踏まえて、今年度は長期大幅削減に向けた道筋、この中には定量的な議論も含まれるというふうに考えておりますけれども、そういうご議論をいただきたいというふうに考えております。

 こうした道筋の議論のためには、当面まずは大幅削減に不可欠と考えられる技術の見通しですとか、世界の動向についてのヒアリングを実施することとしたいということでございまして、諸外国の長期戦略においても、エネルギー分野の脱炭素化というのが重要というふうに示されておりまして、こうした知見を踏まえれば、例えば以下のような分野におけるヒアリングが考えられるのではないかということで、ヒアリングの例として、例えばネットワーク、これは特に電力のネットワークですけれども、系統ですとか、調整力ですとか、需要面の取組とか、あと蓄電池とか水素等についても入っておるというふうに考えております。

 それから、再エネとか、火力につきまして、発電設備とか、調整力に関することが入るというふうに考えております。また、CCSとか原子力発電、世界の取組状況ですとか、今後の技術的な動向等が入るというふうに考えておりますけれども、こうしたもののヒアリングというのが考えられるのではないかというふうに考えております。

 資料2については、以上でございます。

浅野委員長

 ありがとうございました。

 高村委員、ひょっとすると遅れてこられるかもしれませんが、書面をいただいていますので、栗栖さん、これ読み上げてくださいませんか。

栗栖低炭素社会推進室長補佐

 それでは、高村委員から小委員会の意見ということで頂戴してございますので、私のほうから代読させていただきます。

 6月12日の長期ビジョン低炭素小委員会会合における議論に当たり、次のとおり意見を提出いたします。

 1、今後の検討課題ということで、世界全体の排出削減に貢献する日本の国際戦略の検討と策定。

 1ポツ、この3月の長期低炭素ビジョンにおいて取りまとめたように、気候変動の脅威に対して長期的に日本の温室効果ガス排出量を大幅に削減することが不可欠であるが、「国内での長期大幅削減と併せて、JCMや製品ライフサイクルを通じた削減への貢献も同時並行的に進めることによって、世界全体の排出削減へ貢献していくことが重要である」。

 2ポツとしまして、先行して策定された諸外国の長期戦略においても、国内での大幅削減にむけたより具体的な道筋とそのために必要な施策とともに、世界全体の排出削減に貢献する方向性と必要な施策が盛り込まれている。

 3ポツとしまして、世界全体の排出削減への貢献のより具体的な方向性と必要な施策を策定し、それに基づく施策を実施することは、気候変動分野での日本の国際貢献とその意思を明確に示し、国際社会における存在感を高めることはもちろん、国内だけでなく国外においても低炭素の製品、サービス、技術の市場を拡大し、「規模の経済」による排出削減全体のコストの低減やイノベーションの加速をもたらし、そして、世界全体の排出削減の加速をもたらしうる。また、適切な施策をとることによって、日本企業が強みを持つ低炭素の製品、サービス、技術を生かし、拡大する市場における国際競争力を強化することにもつながりうる。

 4ポツとしまして、上記の理由から、国内での大幅削減にむけたより具体的な道筋とそのために必要な施策の検討を進めるとともに、世界全体(とりわけ途上国)の排出削減に貢献するより具体的な方向性と必要な施策の検討もあわせて進めることが必要と考える。

 以上でございます。

浅野委員長

 というご意見をいただきました。

 それでは、今日の残りの時間で、ただいままでの事務局の説明について、いろいろとご意見がおありかと思います。それから、ヒアリングについて、今試案としてこんなところというのを書いてありますが、どうせ呼ぶならこういうところというようなご意見もあるかもしれませんので、それらを含めてご発言をいただければと思います。

 どうぞ、ご発言をご希望の方は名札をお立てくださいますように。ほぼ全員ですね。

 それでは、今度は増井委員から順番にお願いいたします。

増井委員

 どうもありがとうございます。3月に出されました長期ビジョンの中にも、この長期戦略の中に盛り込むべき内容というのは多く示されているかと思いますので、具体的に示されたものをどう道筋として示していくのか、当てはめていくのか、そういうところが今回課題になっているんだろうなと思っております。

 そういった中で、具体的な姿、一般の方の関心が高まるように、できるだけ具体的な姿を示さないと、なかなか実現というのは難しいのではないかなとも感じております。

 ただ一方で、もうこれだ、これしかないというふうに断言するのは、ある意味危険ですし、長期戦略として示すのは不適切かもしれないので、最終的に共有する将来像についてのバランスというのは、非常に重要になってくるかと思いますが、そういった中で、できるだけ具体的な姿というのを提示していく必要があるだろうと思っております。

 具体的には、例えば議論でもあります炭素生産性というのは、どこまで改善していくのかとか、あるいは産業構造をどう変えていく、さらに、その実現に向けてどういうふうにソフトランニングさせていくのかとか、あと2050年という目標ではあるんですけれども、その途中途中でどういうふうに中間的な目標というのを設定していくのかという、こういったところがかなり重要になってくるだろうなと思っております。

 そういう中で、ヒアリングの対象というようなものも、私自身どういったところが具体的にヒアリング対象がいいのか現時点で案はないんですけれども、考えていただきたいと思っております。

 以上です。

浅野委員長

 ありがとうございました。荻本委員が途中で退席されるご予定なので、ちょっと順番を飛ばして、荻本委員、どうぞ。

荻本委員

 ご配慮いただき、ありがとうございます。

 資料の説明をお聞きして感じたことをコメントします。

 まず、今から我々が策定する長期戦略には、一体何が書いてありそうなのかというのを早い段階で、できればヒアリングをする前に何か想定できないのかな。目次をつくるというのは、かなり難しいことだと思いますが、何を書こうと思うかがわからないと、ヒアリングのしようもないということはあると思います。ですから、仮置きでもどんなことでもいいと思いますから、これからつくろうとするものに一体何が書いてありそうなのかというのを少しずつ出していって進めていただけないかというふうに思います。

 そのコンテンツの中に、先ほど――それで、そのコンテンツを考えるときには、先ほど国外の各国の例というもので目次でもう出していただいていますから、あれは非常に参考になるはずです。だから、あそこに書いてあるから当然含まれるものもあるでしょうし、あそこに書いてなくても入れないといけないものがある、そういうものを今回ご説明いただいたような資料をもとに少し整理できないかなというふうに思います。

 それから、コンテンツの中の一つとして、一番最後にありましたフォローアップの点、つまり2050年までフォローアップをしながらPDCAを回しながらやっていくんだということは各国にも書いてあるということですから、私からの希望としては、その長期戦略の中にはフォローアップについてぜひ触れていただきたいと思いますし、それ(行われた施策の内容、その結果としての成果)を具体的にどう検証して、どの指標でチェックしてやっていくのかということが、同時にやはり長期戦略として出てこないと、戦略はつくって、後からそのフォローアップのやり方を考えますというんだと、ちょっとうまく整合しないかなというのが第2点目でございます。

 それから、この2ページ目の何々であることというふうなものをたくさん説明をいただくと、私大学の人間としては、何か結構縛られた中で限られたことしか考えちゃいけないのかなというふうにどうしても感じてしまいます。

 何が言いたいかというと、何でも自由にしてやれということではなくて、我々今からやろうとしている80%削減というのは、容易な目標ではなくて、それなりに難しいと。それなりに何が難しいのかということを考えていくためには、決め打ちの一ケースだけではなくて、それの手前、もっとやったケース、いろんなものをやって何が難しいのかということが計画の中で理解されること、またはそれが先ほどの言葉を借りますと、国民に伝わることというのが非常に重要だと思いますので、(80%ではない)ケーススタディーを拒むものではないということは、ぜひこの場で言っていただければ一番いいかなと思います。

 それから、その隣にあることなのですが、不確実性というのがどうしてもあります。なので、こういう技術が入ると、世の中が実現するはずだというものがたくさん含まれるかもしれません。しかし、それには一定の不確実性があるので、それはこの長期戦略の中でどのように扱うんだろうかということを少しやはり事前にお考えいただき、整理していただいて、それをぜひヒアリングの中で聞いていくというのがいいんではないかなと思います。

 そうすることによって、それなりに難しいものによりロバストな答えを持っていけるんではないかと思います。

 最後です。先ほどの最後のページにあるヒアリング対象の例というものを見ますと、どちらかというと、電源側、エネルギー供給側、どちらかというと、喫緊の課題である調整力というのを出していただいているような気がいたします。

 確かにこれは喫緊の課題なんですが、2050年までレンジを延ばしたときに何が一番重要かなというふうなことを私が思っていることは、需要側がどのように変わっていけるのか、これが一番難しい。供給側とか流通はお仕事としてやっている世界なので、変われと言われたり、経済性が変わればそれなりに変わっていくことができる分野です。これに対して、需要というのは、住宅であるとか、人のライフスタイルであるとか、またはいろんな持っている財産の構成とか、こういうものはなかなかinertiaがあって変わりにくい、そういう需要側というのが、どのように変えられるのかということは、ぜひ供給側ばかりにあまり力点がいくのではなくて、同時並行でご検討いただければというふうに思いました。

 以上です。どうもありがとうございました。

浅野委員長

 ありがとうございました。では、廣江委員、どうぞお願いいたします。お待たせいたしました。

廣江委員

 本日のこの資料の2で、今後の道筋を検討するために、特に技術的見通しや世界の動向等についてのヒアリングをすると、そしてその対象としては、電力のネットワークであったり、再エネ、火力、あるいはCCS、原子力、こういったものにしようという話でございます。

 私ども電気事業者といたしましては、三つのE、すなわち温室効果ガスをできるだけ減らす、さらには電力供給については動向をできるだけ抑える、できれば低廉化させていきたい。さらに申せば、日本のエネルギー自給率を上げ、その安全保障上の立位置をチェックすると、こういった三つのEを実現するための現状の課題、そしてそれを達成するための現在検討している対応策等々につきまして、委員の皆さん方のご認識を深めていただく大変貴重な機会だと思います。大変ありがたいことだというふうに考えております。

 できましたら、こういった機会を通じまして、私ども電気事業者の悩みを共有いただければ、さらにありがたいなというふうに思う次第でございます。

 その上で3点申し上げたいと思いますが、実は今回上がっておりますような対象について、環境省さん以外の省庁が所管をしていらっしゃる審議会等々でも議論がされているものも数少なからずあるように感じます。

 今後の議論を効率的に進めるためにも、そういった成果につきましては、最大限活用しながら必要なヒアリングを進めていくということが一つ必要じゃないかと思います。

 2点目は、今、荻本委員がおっしゃったとおりでございまして、やはり長期を考えた場合には、需要というのが非常に重要でございますので、あまり供給サイドばかりに偏った議論ではないのではないかなというのが2点目です。

 それから、3点目でございますが、先ほど電力を中心にまずは低炭素化だというようなお話がございました。確かにエネルギー起源のCO2が日本全体の90%を超えていたと思いますし、今後、電力化を進めていこうというお話が先般のビジョンの中にもあったことは十分認識していますが、とは言いましても、まだまだ最終エネルギー消費に占める電力の比率は20%程度でございますので、電力だけに偏るのではなく、やはり日本全体のエネルギーの消費・需要についての議論をしっかりやっていくということが必要ではないかなと考える次第でございます。

 以上でございます。

浅野委員長

 ありがとうございました。では池田さん、どうぞ。

池田説明員

 幾つか意見を申し上げたいと思います。第一に、地球温暖化対策計画では、2050年80%減という長期目標を掲げるに当たり、複数の条件が付されており、その視点は外せないと考えます。

 特に、環境と経済の両立は、長期戦略の根底をなすものであり、視点の中にいの一番に盛り込んでいただきたく考えます。

 2点目として、本年3月のビジョン報告書取りまとめに当たり、さまざまな意見を申し上げて、適宜報告書案に盛り込んでいただきましたが、そうした議論の成果が、このペーパーには正確に反映されていないのではないかと思われるところが散見されます。このペーパーを今後どのような形で使っていくのかわかりませんが、表現ぶりをもう少し丁寧にブラッシュアップしていただきたく思います。

 3点目として、アメリカのパリ協定脱退表明は、誠に残念だと経団連としても考えます。

 先ほど資料でご紹介いただきましたが、経団連としては6月2日に、脱退表明後すぐに榊原会長のコメントを公表し、経済界としても、低炭素社会実行計画の着実な推進を通じて長期目標の達成はもとより、地球規模の温室効果ガス削減に取り組むということを改めて表明したところであり、鋭意取組努力を継続していく所存です。

 しかし、温対計画で盛り込まれた2050年80%削減という長期目標については、閣議決定上、先ほど申し上げたように、条件や原則が付されており、アメリカのパリ協定脱退表明は、その条件の一つである「全ての主要国が参加する公平かつ実効性ある国際枠組み」を崩すことになるという事実を、いま一度認識すべきであると考えます。

 今回示された視点においても、2050年80%削減を目指すという記述がありますが、アメリカが脱退後、国際協調を維持するために何が必要なのか、いま一度議論をし、またアメリカの動向を見極めながら、日本の長期戦略を検討する必要があると考えます。

 2050年80%削減を所与として、そのための絵姿を描くという記述が散見されますが、複数のシナリオを描いた上で、環境と経済の両立の視点から改めて妥当性を検討、主張すべきだと考えます。

 細かな点で恐縮ですが、(1)②のNDCに関する記述について、これがどのような意図で記述しているのかが、よくわかりませんでした。意地悪く言えば、我が国が提出した約束草案に沿う形で長期戦略を策定する、つまり積み上げ型で長期戦略を策定するという見方もできるので、確認をさせていただきたく思います。

 (2)①の科学の不確実性について、地球温暖化対策が必要だということに不確実性がないと、あえて項目を挙げる必要があるのかと考えました。

 むしろ、先ほど荻本先生がおっしゃられたとおり、不確実性の時代とも言われる中で、気候感度等の科学的知見、技術革新、国際情勢等、不確実性の所在を明らかにして、どのように戦略的に対処していくのかという視点が問われていると考えます。

 また、エネルギー政策との連携が明記されたことは、高く評価をしたいと思います。本年度は、エネルギー基本計画の見直しが見込まれていますので、ぜひエネルギー基本計画の議論の結果を踏まえて、長期戦略の策定に当たっていただきたく考えます。

 最適なポリシーミックスは、国によって異なります。各国の地理的要因、エネルギー事情、経済、産業の構造、現存制度の状況等を分析して、日本への当てはめをどのようにしていくのかを考えていくことが大事だと考えます。

 最後に、7ページの大幅削減の絵姿の注書きは、非常に重要な指摘であると認識をしています。

 技術見通しについては、ヒアリングが予定されているようですが、その他経済影響、産業構造、電源構成といった点について、今後の検討、ヒアリングをどのように行っていくご予定なのか、現時点でのアイデアがあればお聞かせいただきたく思います。

 例えば、再エネ一つとってもさまざまな意見があると承知しています。環境省においては、技術的課題、経済的課題等を踏まえて、ぜひ中立的な立場から、一部の見方に偏ったものにならないようにご配慮をお願いしたいと考えます。

 以上です。

浅野委員長

 ありがとうございました。手塚委員、お願いいたします。

手塚委員

 はい、どうもありがとうございます。1点事実確認と、あとコメントを三つぐらいさせてください。

 事実確認は、最初の(1)丸2のパリ協定の枠組みに沿うことを前提とするものであることというところの3ポツ目に、他国への貢献はというのがあるんですけども、ここは自国の取組を一層野心的なものにすることを可能にする任意の協力として位置づけられというのはいいんですが、「他国への貢献は二重計上の回避などを確固とした計算方法を適用すること」とされているのは、ちょっとパリ協定の記述と違うかなと思います。というのは、一つ目の項目は、パリ協定6条の1項に書かれていることなんですけども、二つ目の二重計上の回避は、パリ協定6条の2項で、削減としてのインターナショナル イントランスファード ミティゲーション アウトカムというものを国際間で移転する場合には二重計上の回避をする方法をとりなさいということが書かれていまして、正確に言うと、貢献量ではなくて、国際間で移転する削減量については、二重計上の回避に確固とした計算方法を適用するべしというのが、パリ協定の正しい引用ではないかと思いました。

 それから、コメントですけども、まず1点目は、不確実性の存在、これは2ページ目の(2)の丸1、取組の必要性に不確実性は存在しないという点です。温室効果ガスには温室効果があり、それを大幅に削減しなきゃいけないということに関して不確実性は存在しないのは、そのとおりだと思います。

 ただ、これがどの程度の量が必要であるか、あるいはどこまで削減すると、それがいわゆる温室効果による被害を未然に防止できるかという部分に関しては、非常に大きな不確実性があるというのも事実だと思います。

 そういう意味で、例えば丸2のところに累積排出量を一定量以下に抑える必要、これもそのとおりだと思うんですけれども、この一定量がどれだけの量かという部分に関しては、例えば気候感度が0.5度違うだけでも莫大な量、100億t単位での差が出てきてしまうということが言われておりまして、この部分、どういう不確実性が今まだ残っていて、それがどういう対策の必要性等に影響するかというようなことも、ぜひこの場でも議論していただければいいんではないかと思います。

 ちなみに、4月末にIPCCの第6次報告書に関するエキスパートミーティングという準備会合がありまして、私もエチオピアのアジスアベバまで行ってまいりました。そこで、リードオーサーの方々といろいろ議論したんですけども、やはり彼らの中でも、このIPCCの報告書の取り上げられ方について、決定論的に取り上げられるというのは遺憾であると言っていました。そういうふうに必ずしも書いてない部分が一杯あるわけです。ただ一方で、不確実なものをどうやってコミュニケーションするかということに関しては、非常に大きな課題があり、第6次報告書の大きなテーマだというふうなことはおっしゃっておりました。そういう意味で、解決されていない問題だと思いますけども、そういう観点をぜひ入れていったらいいんじゃないかと思います。

 それから、何をなすべきかということ、これ3ページ目の一番上の丸1のところに、できることの積み上げの視点のみならず、「何をなすべきか」という視点が不可欠ということですけども、これはできることはいろいろ積み上げるんだと思いますけども、それだけ足りないこととして何があるかということなんだろうと思います。

 そういう意味で、何をなすべきかという視点に加えて、なすべきことに対して現在何が欠けているか。例えば、どういう技術が足りないか、どういうイノベーションが足りないかというようなことを明らかにしていくという、そういう意味での課題が見えてくるということが重要なのではないかなというふうに思いました。

 それから、その下の丸2のところの3ポツ目に、さまざまな課題や制約がある中で、我が国がいち早く大幅削減を実現することが国際競争力の源泉となるというふうに断定的に書かれていますけども、これは恐らく国際競争力の源泉となることもあるし、ならないこともあるということだろうと思います。

 逆に言いますと、国際競争力の源泉となるような形で大幅削減を実現していくようなノウハウ、技術を確立し、ライフスタイルや社会システムの変革を行っていくということではないかと思います。

 大きなタイトルが同時解決の視点で立脚することというふうに書かれておりますので、恐らくそのことも含意はされているんではないかと思いますが、大幅削減が国際競争力の源泉となるというふうに断定的に書かれているのは、ちょっと違和感を覚えたのでコメントさせていただきます。

 以上です。

浅野委員長

 ありがとうございました。谷口委員、どうぞ。

谷口委員

 何点かコメントさせていただきます。

 まず、大きな方針としては、これでよろしいのかなと思います。

 特にお願いしたいことは、低炭素ビジョンができて、それから長期戦略を考えるという時間の流れの中で、対応を迅速にお願いしたいということです。ヒアリングは大変勉強になってありがたいんですけれども、なるべく早く長期戦略に持っていくというふうなご努力、当然されていると思うんですけれども、あんまり間があかないようにしていただいたほうがいいということがまず1点目です。

  あと2点目は、荻本先生がフォローアップのことをご指摘されましたけれども、私もフォローアップ、大変重要だと思っていまして、これちょっと一見矛盾するコメントになるんですが、最初に頑張り過ぎないということが一つ大事です。

  というのは、実際にリオ+20の後に、先進諸国が持続可能性指標をいろいろ出して、フォローアップすると宣言していたんですけれども、例えばイギリスとかものすごく頑張って多くの指標を出していたのが、フォローし切れなくなって途中で大幅にトーンダウンししているんですね。ドイツとかは、非常に数少ない指標できちんとフォローアップを続けているというようなことがあって、大体失敗するのは、最初に頑張り過ぎると続かなくなって失敗します。将来のこともそういう意味で考えてあげて、全体の無理の無い戦略をつくっていただきたいというのが2点目です。

 あともう1点は、ドイツとか米国とか、ほかの国は既に国連に提出済みであって、ある意味、日本はちょっと遅れてスタートしているという理解であれば、それだけやっぱりよいものをつくらないといけないという役割があるのなと思っています。

 高村委員も書かれていたんですが、例えば途上国の排出削減にも貢献できるような考え方とか、あとアジアの中での考え方とか、そういうものも当然入ってくると思います。技術的なイノベーションの議論はやっぱりかなりされているんですが、社会的なイノベーションの部分、例えば予算配分の問題とか、公共交通がCO2削減に一定量貢献するというのは、定量的な事実なんですけれども、例えば日本ですと、公共交通のサポートには300億ぐらいしか予算がない、戦闘機1個買ったら大体それぐらいの値段になっちゃうという貧弱なものです。社会面でそういう配分をどう変えていくかという問題とか、そういう社会面でのイノベーションも実は必要になってきているということかと思います。

 あと生活の質を上げていこうと思うと、当然イノベーションが必要なんですけれども、それによって、例えば自動運転なんかの場合ですと、自動運転とシェアリングが同時に来ることを実際にシミュレーションしてみると、2割ぐらいの空走の運転が今より増えるんですね。つまりCO2は単純にやると増えてしまうんですけれども、そういう問題に対しても、例えば日本はカーメーカーさんがたくさんいらっしゃるので、事前にどういうふうに対応を考えるのかなということを、戦略の中にまで具体的には書き込めないかと思いますけれども、技術的イノベーションが来たときにセットで何が来るかということは想定すべきかと思います。あと社会的なイノベーションのメニューとしてそもそもどんなことがあるかということも含めて、先進的なものにぜひしていただければと思っています。

 以上です。

浅野委員長

 ありがとうございました。末吉委員、お願いいたします。

末吉委員

 二、三申し上げます。まず一般論ですけれども、年々年が経るに従って気候変動はどんどん悪化が進むとすれば、気候変動対策の中身が一層厳しくなるんだと、そういったことをまず前提として覚悟すべきだと思っております。

 それから、エネルギーに関連して申し上げれば、海外でエネルギー市場の大きな転換が始まっているようです。ぜひこういった海外動向を正しく共有化してほしいと思います。

 それから、もっと声を大にして申し上げたいのは、ビジネス、これは金融を含んで、そのビジネスの視点を忘れないでほしいということであります。

 今世界が目指しているのは、いわゆるデカップリングです。一部にはもう既に始まっております。そういった中で、温暖化対策はコストではなくて、投資だ、新しいビジネスチャンスをつくる投資だ。逆に申し上げれば、温暖化対策なきビジネスはもうあり得ないんだと、そういったような時代に入っているんじゃないでしょうか。

 そうした中で、もう少し具体的に申し上げると、温暖化対策をとることがビジネスルールになり始めたと、サプライチェーンに入れるか入れないかのゲートの役割を果たすようになってきた。これはその他のいろんな企業を取り巻く社会システムの転換を見ますと、日本企業の外堀がどんどん埋まり始めているというような私は強い危機感を持っております。

 ですから、ぜひこの日本のビジネスが、あるいは金融がですね、世界の中で本当の国際競争ができるような状況を日本でもつくっていく、こういったことが非常に重要だと思っております。

 言わずもがなですけれども、トランプ声明をテイクチャンスするようなことは愚かなことだと思っております。

 最後ですけれども、長期の意味をもっとみんなで議論して、しっかり共有すべきだと思います。長期というからには、目先の議論ではだめです。短期利益での議論はあり得ないと思います。長期利益での議論でありますし、現代世代だけがよくなる話ではあり得ないと思います。将来世代のことを考えていく。当然長期といえば、10年、20年、30年先のことでありますけれども、あえて申し上げれば、そのための競争がリードタイムも含めると、既に目の前で始まっているんだと。ですから、実際の競争は10年、20年、30年後に来るけれども、そのための準備はもう既に始まっているんだと、こういったこともぜひ強く認識しての議論を進めればと思っております。

 以上です。

浅野委員長

 ありがとうございました。下間委員、どうぞお願いします。

下間委員

 京都市の下間でございます。地方自治体の現場におりまして、感じた点、3点ほど申し上げたいと思います。

 まず1点目は、国の役割と同時に、地方政府の役割というのが、あるいは都市間の連携、自治体間の連携といったことがますます重要と考えております。

 資料にカリフォルニア州の削減目標の法案の話が出ておりましたけれども、はっとしたんですが、2030年までに1990年比で40%削減、実は京都市が条例で掲げている削減目標と、基準年も全く同じなんですね。やってみたらわかりますが、ものすごく高い目標でございまして、これをどうやって達成していかれるのか非常に関心のあるところでございます。

 パリ協定に関する資料に、門川京都市長のコメントもご掲載いただきまして、ありがとうございます。イクレイの地域理事も務めておりますけれども、先週、会長名でパリ協定の達成に向けて引き続き世界の自治体が連携して取り組もうと、こういった話をしております。

 また、各都市の特性に応じた取組が重要かと思っております。京都市につきましては、京都議定書の誕生の地、またパリとは60年来の姉妹都市でもございまして、ともにやっていこうということで、そういう象徴的な都市という都市特性も生かしながら、都市間の連携を促進する役割を果たしていきたいと思っています。

 2点目は、進め方の中にあります同時解決の視点というのが、地方行政にとっても非常に重要な視点でございまして、地方でも人口減少、長寿社会あるいはものづくり、産業振興、文化、観光、教育、福祉、いろんな行政をやっておりますが、私ども、あらゆる施策に環境という観点を据えて、普段からやっております。

 よく縦割りということが言われますけれども、地方の現場では、最終消費に近ければ近いほど、しっかり横串を通して、環境にいいことが全ての施策にプラスに働くと、こういった視点が重要かと考えております。

 3点目は、実質ゼロという目標、これまでの取組の延長だけでは行かない部分があるとまとめにも書いてあったとおりかと思います。そうした中で、なかなか地方の検討では手の届かないところがございまして、特にイノベーション、例えばエネルギーの低炭素化、本当にどういう技術がどれだけ可能性があるのか、なかなか先を見るのは難しいかもしれませんが、ぜひこの委員会で検討をいただければというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 以上でございます。

浅野委員長

 ありがとうございました。崎田委員、どうぞ。

崎田委員

 ありがとうございます。長期ビジョンを考えるときに、やはり全国への貢献と地域への貢献、そしてもう一つ世界への貢献と、この三つの視点を常に持っていたいというふうに思っています。

 やはりパリ協定、アメリカの脱退という非常に残念な報道を受けて、多くの人がどうなっちゃうんだと思っている方も全国に多いと思いますけれども、今日の一番最初のように、常に環境省あるいは関係者の方がしっかり取り組むんだということを明確に発信していただくことが、これからしばらく大事なんではないかなというふうに思っております。

  なお、全国地域世界の貢献に関して、ちょっと一つずつお話をしたいんですが、まず全国に関して、やはりエネルギー政策というのが大変大きなところだというふうに思っております。それで、今日いただいた資料で、ヒアリングのところで、かなりエネルギー関係のヒアリングをしていきたいということで書いてありますが、その中に、蓄電池、水素等というふうにあります。この水素なんですが、今、水素燃料電池戦略協議会に参加をさせていただき、私は社会の目線で参加をしているんですけれども、そういう中で、一番直近の会議で共有されたのが、水素発電のポテンシャルがどのぐらいあるかというのを事業者さんがどう考えているかという発表があって、水素発電に関して2030年ぐらいから本格的に実施して、2040年、2050年と考えたときに、ある事業者さんは、2040年のときに今の電力の10%はポテンシャルはあるんではないかという発表をされ、もう一つのグループは今の火力発電の11%ぐらいはあるんではないか、2040年ぐらいでというお話をされました。

 もちろんそういう中には、これからも技術革新であるとか、社会の受容性とか、いろんなことがないと困るわけですけれども、2050年を考えたときに、この水素に関して、もう少しきちんと情報共有していくというのが大事なんではないかというふうに思いました。

 水素だけではなく、もう一つ地域の目線でエネルギーを考えると、今の全国で地域にある自然を、自然環境を生かしながら、どれだけ地域エネルギーをつくれるかといういろいろなムーブメントが起こっているわけですが、これを本格的に取り組んでいったときに、どのぐらいのポテンシャルがあるかというのをやはり試算をしていくというのも大事ではないかというふうに思っております。

 太陽光、風力、バイオマス、地熱、いろんな視点、それぞれどのぐらいのポテンシャルかというのは、いろいろな省庁、風力だったら総務省のほうでいろんなデータが出ているのを見たことがありますけれども、いろいろなデータが自治体ごとに計上されていると思いますので、そういうのを一回しっかりとどのぐらいの発展可能性があるのかを見せていただくのがありがたいというふうに思っております。

 なお、地域の視点ということで、やはり都市計画をしっかり立てていくというのが今大事だというふうに思っておりますので、自治体の皆さんが取り組んでいただくことが大事なわけですが、技術的なシステムをしっかり入れながら、エネルギー源を、いわゆるエネルギーと廃棄物発電とか、下水道とか、そういうものと全部一緒に統合したような形でのエネルギーを考えていくという技術的なシステムの場合と、もう一つ、社会システムを変えていきながら、地域を都市計画をしていくというような考え方と二つあると思うんです。

 特に、社会システムを変えながらつくっていくというほうに関しては、あまりまだいい事例が出てきてないように感じていますので、ぜひそういう事例が出てきたときにそれを共有していくということが大事なんではないかというふうに思っております。

 どういうことを言っているかというと、例えば団地の交通政策を考えたときに、例えば車の流入を制限するような団地をつくっていったときに、その中で、子どもたちが遊べるような環境を用意すると、若い家族がかなり大勢引っ越してくるとか、あとそういうところの建物を開発するときに、誰が住みたいかという人を先に募集して、高齢の方と若い方が一緒になってデザインをしていくとか、そういうような新たなまちづくりの発想の転換とか、いろいろな可能性があると思いますので、そういうところまで考えて、いい事例をしっかりと共有していくような都市づくりというのもあると思います。

 もう一つ最後……。

浅野委員長

 そろそろまとめてください。

崎田委員

 はい、わかりました。製品の世界貢献に関しては、ぜひそういうのを二重計上にしないというふうに書いてありますが、じゃあ日本はJCMとかCDMとか、いろいろなやり方でどういうふうにいろいろなものを定量化すると日本が発展しやすいのかというのをぜひ貢献いただければありがたいと思います。

 最後に一つなんですが……。

浅野委員長

 すみません、もうそろそろまとめていただけませんか。

崎田委員

 はい、やると決めたらしっかりやっていただくというのが大事なんだと思うんですけど、北京に行きましたら、昨年の8月からシェアサイクルが始まって、今もう半分以上の自転車はシェアサイクルになっているような状態で、もちろんあれは国の体制が違いますので、それがいいというわけではありませんが、やはりカーボンプライシングみたいなことをしっかりやりながら、日本の場合はやると決めたらやる方向をつくることが大事だと思います。よろしくお願いいたします。ありがとうございます。

浅野委員長

 ありがとうございました。

 それでは、大野委員、どうぞ。

大野委員

 それじゃ3点、一つは(2)のところで、この視点のところですけども、長期大幅削減を目指し、累積排出量の低減を図ることと書いてあるんですが、ここが非常に大事な視点かなというふうに思います。要するに、迅速な削減を進めていくと書いてございますけれども、累積排出量を減らすので早くやっていくということで、大幅な削減に早くカーブを切るということが非常に大事だという点は、この指摘は大事だと思います。

 2点目ですけども、関連分野と連携することということで、何人かの方からエネルギー政策の検討が非常に大事だというご指摘がありました。これは私も同感であります。

 そのときに大事なのは、このエネルギー政策の検討とそれから削減計画の検討、その関係だと思うんですよ。EUのやはり気候変動戦略なんかを見ると、EUの施策を見ると、気候変動の大幅削減の取組があって、それを実現するためにという観点でエネルギー政策がつくられているのではないかと思うんですよね。

 ややもすると日本では何かエネルギー基本計画というのが先にあって、それに整合性をもって温室効果ガスの削減計画を作る、という議論がよくあるんですけども、ちょっとこれは違うんじゃないかなと思います。

 じゃ何でそういうふうにEUで、気候変動対策位置づけが高いのかなというふうに思うと、日本のエネルギー基本計画で言ったのは、いわゆる3E+Sですよね。要するに、環境と経済とそれから安全保障か、安全とこうなっているんですけども、環境というのは、この3E+Sで一つの部分なんだというふうな理解があるのかなと思うんです。しかし今の気候変動の議論では、そういう議論ではなくて、まさに今日も話があったみたいに、気候変動の影響が経済そのものを規定するものになっていると、むしろ気候変動への取り組みが、経済成長を実現していくために必要なものになっていくということがあります。

 それから、安全保障を考えてみても、やっぱり気候変動の進行が世界の安全保障に非常に大きな影響を与えると。これアメリカの軍部なんかも含めて認識をしていることですよね。

 そういう意味でも、気候変動問題というのは、従来考えられているのは3E+Sのうちの一つの要素ではなくて、まさに全体を包括する問題なんだという認識があるからこそ、EU全体とか。EU内の国では、気候変動戦略を立てて、それとの整合性をもってエネルギー戦略を立てていくという関係なんじゃないかと思います。

 欧州の電力ネットワーク整備、国を超えた送電網整備をやっていますが、その送電網整備計画なんかも、やはり気候変動政策のもとにつくられているということだと思います。

 ですから、そういう観点でやっていく。先ほど何かエネルギー基本計画の結果の見直しを踏まえて、というようなご発言もちょっとあったんですが、少し違うんじゃないかなというふうに思いました。

 それから、3点目なんですけども、ヒアリングなんですが、これは大いにこういうことをやっていただくといいと思うんですが、その際、特に具体的にどういう方をお呼びするかということなんですが、一つは、やはり海外の知見をよく提供されるような、そういう直接海外の方をお呼びするということについても、ぜひご努力をいただきたいと思います。

 この長期ビジョンを作成するときにも、第1回にたしか中国の方をお呼びいただいたと思うんですが、非常に勉強になったし、そういう動向を把握するためにも、事務的には大変だと思うんですけれども、ぜひご努力をいただきたいと思います。

 それから、もう一つは、やっぱり企業の方ですね。海外の国際的な企業をやっている方についてどんどんご参加いただく、やはり経済との関係で世界的なビジネスがどんなふうに気候変動問題を捉えているかということ、生の個々の企業の方にご発言をいただくということも非常に大事じゃないかと思いますので、そういう点にご配慮いただけると大変ありがたいと思います。

 以上です。

浅野委員長

 ありがとうございました。大塚委員、どうぞ。

大塚委員

 3点大きいことがあって、あとその他でちょちょっと話しますが、どれも簡単に話しますけども、一つは先ほど申しましたように、フランス、あとイギリスもまだ出していませんが、大変注目されるのが、やはり累積排出量との関係を気にしているので、カーボン・バジェットの考え方を前提にして計画を立てているというところだと思います。

 この点は、我が国も極めて参考にすべきだというふうに思いますが、その上で、フランスは税に関しても、そのシグナリング効果を狙って、こういうふうに手を挙げていくということまで決めていますが、日本でそこまで行けるかどうかわかりませんが、シグナリング効果という点では、非常に重要だろうということを申し上げておきます。

 それから、アメリカの件ですけども、3年後に大統領選挙がアメリカがどうするか決めるときと、大統領選挙の4日後ぐらいですかね、3年後が来るということで、非常にアメリカ国内政治を狙ったことをトランプさんはやっていらっしゃるということですので、あまり振り回されることはないんじゃないかなというところはあるのではないかと思いますし、ほかの国が追随していない中で、我が国だけがそれに追随するようなことは、ちょっとすべきではないということを申し上げておきたいと思います。

 それから、三つ目ですけども、国際的な貢献の問題ですけども、高村さんも書いておられるように、国際貢献は重要なポイントだと思いますけども、ここに書かれているように、二重計上ですね、ダブルカウントの防止というのは、極めて重要だと思います。

 これは6条の話もあるんですけど、4条の13項は、これ国内の排出量についてのカウントの仕方のところで二重計上の監視のことを書いていて、各国の国内の排出量と国際貢献等の関係が問題になるので、そこでこの二重計上のことが書かれているのだろうと思います。

 CDMのような形でクレジットを発行するにせよ、しないにせよ、ダブルカウントをもし認めてしまうと、各国で今NDCで出しているものが、排出量をこれだけ減らすと言っていたら全然減らなかったというお話になりますので、それはやはりクレジットが出す、クレジットを発行しようがしまいが、やはりダブルカウントはしないようにしなければいけないということがあると思いますし、この点については、特に低炭素の製品を日本が輸出するというのは非常に重要だと思っているんですが、他方で、それに関して、購入国のほうでも自分のほうでカウントしたいというのが当然あると思いますので、そこでの世界標準というのをぜひつくっていくことを考える必要があるということを申し上げておきたいと思います。

 以上、3点ですが、簡単にあとちょちょっとだけしゃべりますが、迅速に計画を立てる必要があるということは、先ほど谷口さんがお話しになりましたが、私も賛成で、これ日本は、あとイタリアと競争しているような感じだと思いますけど、イギリスはまだ出していませんが、イギリスはいつでも出せると思いますので、G7の中では多分ビリ争いをしていくことになると思うんですけども、できるだけ早く出すというのは、パリ協定の締結のときも日本は結構遅れてちょっと残念でしたが、あまりそういうことはされないほうがいいかなというふうに思いますので、早く出すことはぜひお考えいただきたいと思います。

 あと進捗管理に関しても、萩本委員もおっしゃいましたけども、私も賛成でございます。

 それから、詳細なデータまでは必要でないということは各国、特にアメリカとか、カナダは、複数のシナリオ分析とかをもとにしているということでございまして、この複数のシナリオ分析が最終的に決まっている数値とどういう関係にあるかというのは、ちょっと今日じゃなくていいんですけど、もしご説明いただけたらありがたいですが、そういうことは結構緩やかにやっているので、とっても厳格にやる必要は必ずしもないということは、2050年ですので、我が国もそういう態度でやっていけばいいんじゃないかと思います。

 あとヒアリングに関しては、やはり2050年、9割電力はカーボンフリーにするということがございますので、電力の部分は電化していくということも含めてですけども、非常に重要だということを申し上げておかざるを得ないと思います。

 以上でございます。

浅野委員長

 はい、ありがとうございました。それでは、

 もうあと一つ、その他がございまして、これについての報告を受けて本日は委員会を閉じたいと思います。

成田市場メカニズム室長

 カーボンプライシングのあり方に関する検討会の設置についてご説明したいと思います。

 参考資料4をご覧ください。本委員会で長期低炭素ビジョンが取りまとめられまして、その中で、カーボンプライシングにつきましては、「長期大幅削減に向けたイノベーションを生み出す国内での取組を加速化する上で、いかなる制度のあり方が我が国にとって適しているか、具体的な検討を深める時期に来ている。」と記述されたところでございます。

 これを受けまして、本委員会でもカーボンプライシングについて、さらに議論を深めていただきたいと事務局は考えておりまして、その議論に資するように、有識者から構成されます「カーボンプライシングのあり方に関する検討会」を設置したところでございます。

 この検討会は、基本的には、学識者の方々にお集まりいただきまして、大局的な見地から論点整理をしていただきたいという趣旨で設置したところでございます。

 また、検討会の進め方については、学識者の方々だけで議論するだけではなくて、検討会の委員の方以外の学識者、あるいは経済界の方からもご意見を聴取しながら検討を進めてまいりたいと考えております。

 続きまして、裏をご覧ください。この検討会での主な検討事項について書いてございます。

 ①は、カーボンプライシングの意義や位置づけ。②は、各種手法の実効性、課題の評価。③は、カーボンプライシングによる経済・社会への波及効果・影響。④は、カーボンプライシングの活用のあり方です。これらについて検討を進めてまいりたいと考えております。

 まず、6月2日に第1回を開催いたしまして検討を始めたところでございますが、この検討会の検討がある程度煮詰まった適当な段階で、本小委員会に報告して、本委員会でも議論をしていただきたいと考えてございます。

 簡単でございますが、以上です。

浅野委員長

 それでは、ただいまご報告がありましたように、カーボンプライシングについての検討会の節目節目で当委員会にも報告いただけるということでございましたので、よろしくお願いいたします。

 それでは、本日議することは、以上でございます。

 事務局からお知らせがありましたら、どうぞ。

名倉低炭素社会推進室長

 本日は、委員の皆様におかれましては、活発なご議論をありがとうございました。

 次回の日程につきましては、調整の上、追ってご連絡いたします。

浅野委員長

 それでは、本日はこれで散会いたします。

 どうもありがとうございました。

午後5時00分 閉会