長期低炭素ビジョン小委員会(第14回)議事録

日時

平成29年3月16日(木)10時00分~11時30分

場所

都市センターホテル コスモスホール

東京都千代田区平河町2-4-1 都市センターホテル3階

議事録

午前10時03分 開会

○名倉低炭素社会推進室長

あと数分でスティグリッツ教授が来られると思いますので、もう少々お待ちください。

ただいまから、中央環境審議会地球環境部会長期低炭素ビジョン小委員会の第14回会合を開始いたします。

本日は、ご到着が遅れておられる委員もいらっしゃいますが、委員総数18名中11名の委員にご出席いただく予定であり、定足数に達しております。

なお、本日はご欠席の日本経済団体連合会の根本委員の説明員として、池田様にお座りいただいておりますので、委員の皆様にはご承知おきいただきますようお願いいたします。

また、既に地球環境部会長決定とされております本委員会の運営方針において、原則として会議は公開とされていることから、本日の審議は公開といたしております。

また、本日、同時通訳が入っておりまして、チャンネルの1番が日本語、チャンネルの2番が英語となっております。

では、以降の議事進行は浅野委員長にお願いいたします。

○浅野委員長

それでは、議事を進めさせていただきます。

まず、冒頭でございますが、伊藤忠彦環境副大臣がいらしゃっておいででございますので、一言ご挨拶をいただきます。

○伊藤環境副大臣

会場の皆様方、こんにちは。

そして、スティグリッツ教授、ようこそお出かけをいただきました。

中央環境審議会地球環境部会長期低炭素ビジョン小委員会の皆々様方、ご苦労さまでございます。浅野委員長を初め委員の先生方には、この度長期低炭素ビジョンを取りまとめいただきましたことに、まず心から感謝を申し上げる次第でございます。

気候変動対策をきっかけにしたイノベーションを連続的に生み出すことで、国内での大幅削減と経済成長や地方創生等を同時に実現するとともに、世界全体の排出削減に最大限貢献していくという、長期大幅削減に向けた基本的な方針を示していただけたものと受け止めさせていただいております。

本日は、世界的に著名なスティグリッツ教授にお越しをいただきました。教授から、まさにこのビジョンでお示しを皆様方にいただきましたような「同時解決」のための道筋について、ご示唆をいただけるのではないかと期待をいたしているところでございます。委員の皆様方におかれては、意欲的、積極的なご議論をぜひお願い申し上げたいと存じます。

環境省といたしましても、この長期低炭素ビジョンをベースといたしまして、パリ協定の目標達成に向けて長期的に、戦略的に、我が国打って一丸となって取組を進めてまいりたいと考えているところでございます。

今後とも、皆様方のご指導をよろしくお願い申し上げまして、一言のご挨拶にさせていただきます。

ありがとうございます。

○浅野委員長

伊藤副大臣、どうもありがとうございました。

それでは、続きまして、事務局から、本日の配付資料の確認をしていただきます。

○名倉低炭素社会推進室長

配付資料の確認をさせていただきます。最初に議事次第がございます。その次に配付資料一覧がございます。資料1として、この小委員会の委員名簿がございます。資料2として、スティグリッツ教授の資料がございます。また、資料3として、資料番号はついておりませんけれども、長期低炭素ビジョンの冊子がございます。

資料の不足等がございましたら事務局までお申しつけください。

○浅野委員長

よろしゅうございましょうか。

それでは、早速議事に入ります。本日は、既にご案内申し上げておりますように、コロンビア大学のジョセフ・スティグリッツ先生にお越しいただいておりまして、ヒアリングをしたいと思います。

スティグリッツ先生、どうぞよろしくお願いいたします。

○ジョセフ・スティグリッツ教授

今日は、私が、この全世界にとって非常に重要だと考えている問題について、お話をする機会を与えていただき、ありがとうございます。

皆様方、将来に向かっての日本のビジョンをおつくりになりましたことに敬意を表します。この問題というのは、どこであれ市民にとって非常に重要な問題です。私のお話のこのタイトル、この環境と経済、その同時達成に向けてということなんですが、これは、すなわち私がお話しするその中心的なテーマを示唆しております。つまり、よい環境政策というのは経済にとってもよいということです。その両者の間には対立はなく、相互補完的であるということを申し上げたいと思います。特に、日本が現在いる状況にとっては、特にそれが重要であるということをお話ししたいと思います。

最初に強調したいのが、炭素の排出やその他の温室効果ガスの排出を削減することが非常に喫緊に必要です。

2015年12月、パリでの成果というのは、非常にすばらしいことでした。200近い国々が、世界的な平均気温上昇を、産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追及することということに合意をいたしたわけです。こうした数字、これは恣意的に選んだものではなく、非常に膨大な、科学的なエビデンスを背景にして合意された数字であります。そして、気温が上昇したときに、1.5℃以上、あるいは2℃以上上がったときにどうなるかについてのエビデンスがあります。

そしてまた、これが単に気温が上昇するだけではなく、この気候の変化、そして海洋、そして地球全体に、さまざまな影響を与えます。ですので、気温についてお話をするときは、実際には、それはこの地球の環境全体のことを指し示しています。

私は、『Making Globalization Work』という本の中で書きましたけれども、もしも、この千の惑星があれば実験ができるわけですね。この地球上で実験ができます。では、どうなるだろうかと。もしもこうした科学的な、そのエビデンスを無視したらどうなるだろうかと。非常に正確であるとは言えないとしても相当程度正確である、そういう科学者の予測があって、もしも、この大気中に温室効果ガスを排出したらどうなるのかについて、実際は、もう過去に起きたことでわかっているわけなんですね。そして、科学者らがそういったエビデンスを出している。そして、実際にこの温室効果ガスを測定できなかったとしても、その結果どうなるかについては計測することができているわけです。

で、私は理論家ですから、この理論が、まさに予測したことが、今、現実となっているということを、大変私はこれはすばらしいことだと思うんです。ですから、問題なのは、もし千個の惑星があれば、いろんなところに行って実験ができます。そうなれば、科学が正しかったということがわかるでしょう。そして、地球がその影響を受けて別の地球に移動しなくちゃいけなくなるわけなんですが、私たちにとっては別の地球はありません。唯一の地球です。大切にしなくてはなりません。ですから地球を危険にさらすようなことはしてはなりません。

この二つの惑星があって、そして、その外宇宙に二つの地球があって、一つの惑星には笑顔だと、もう一つのほうはしかめっ面をしている。そして、しかめっ面のほうに聞いた、「一体何が問題なんだ」と。そうすると、しかめっ面をした惑星が、「人が問題なんだよ」と言う。そして、もう一つのほうは、「大丈夫だから、もうあまりもたないから、心配するな」と言われたということ、そういうジョークがあります。ですから問題なのは、つまり自分たちの行動を非常に慎重に考えなくてはならないということです。

今日、私がお話をするのが、カーボン・プライシングが中心になります。私は、ニコラス・スターン卿とともに、カーボン・プライシングに関する国際委員会の共同議長を務めています。つまり、カーボン・プライシングが、パリ協定の目標を達成するために重要な役割を果たし得るということについて議論を続けています。で、私がお話をする内容は、この委員会での議論に基づいています。このIMF/世界銀行の会合が、来月ワシントンDCで行われますが、そのときに発表される予定です。私が現在、このお話の中でお話をするのは私の個人的な見解ですが、しかしながら、実際その見解は、この委員会の報告書の草案から多くをよっております。ただし、もちろんその文言が正確に一致しているわけなんですが、私の考え方は、随分この国際委員会の議論に影響されているということです。

申し上げたように、パリ協定のこの目的、目標というのは、この地球を守るということ、そしてまた、経済的にも、社会的にも、生態系的にも、非常に大規模な、潜在的にスケールの大きな規模で損害が出るということにより、そういった懸念により、こうしたパリ協定があるわけです。そして、そのためには、例えば発電や産業プロセス、交通システム、エネルギー消費の分野における劇的な転換などを含む経済活動の転換が必要になります。つまり、新たな経済、グリーン経済に移行しなくてはなりません。それは簡単ではありません。

例えば、中には、転換をするときには、何か一つのことから別のことに転換をするわけですから、産業界の中には、それで損害を受ける、あるいは、私がこれからお話しすることに反対する人もいるでしょう。それは確かに認めなくてはなりません。すなわち、個人でもやっぱり損害を受ける人がいるということも認めなくてはなりません。こうした転換のこの移行をきちんと管理しなくてはならないというのが過去からの教訓です。

そして、どのようなグループであれ、その悪い影響については、いかにそれを緩和するかということをマネージしなくてはなりません。しかしながら、この転換が非常に重要であるということ、例えば石炭産業、石油産業、鉄鋼業あるいはガス産業であれ、もちろん懸念するでしょう。しかしながら、重要なのが、地球を救うということです。特定の産業を救うよりも、そのことのほうが重要であるということを心にとめておかなくてはなりません。

私がお話をするのは、特に、この炭素価格の重要性ということであります。この効率的に排出削減を実行するためには、そして、パリで同意した目標を達成するためには、そしてまた、潜在的な利益を、グリーン経済の利益を十分に現実のものにするためには、注意深い制度設計が不可欠となります。申し上げたように、私は、炭素価格が、こうした制度設計の一部として強調するものでありますけれども、そのほかにも必要な要素があります。

しかし、中でも注力をしたいのが、炭素価格というのは、この効率的な方法で排出量を削減するための戦略において絶対に必要な項目であるということです。ほとんどの経済学者は同意をしておりますが、人々が、例えば働かせるためにも、あるいは貯蓄をするためにも、何らかのインセンティブが必要です。ですから、人々が炭素を排出しないようにするためにもインセンティブが必要です。炭素価格がなければ、正しいインセンティブが付与できない。つまり、市場経済を信頼している人は、炭素価格が必要だと誰もが信じています。

そして今日、先進国のほうでは市場経済を信じていない人を見つけるのは難しいでしょう。市場経済というのが、この生活水準を引き上げてきたわけです。これは、全く野放しの経済ではなくて、管理された自由経済、市場経済なわけです。私たちが望むような形で、形づくってはいますが、それでも市場経済です。市場経済においては排出を削減するためには炭素価格を導入することが必要です。穏当な炭素価格を導入することによって、低炭素経済が達成され、実質的な歳入をもたらします。日本にとっては、炭素価格が特に望ましいと思われます。それをお話しする前に、一般的な形で、なぜ炭素価格が特にすぐれた手段なのかをご説明したいと思います。

まず、配分効率の向上と同時に、経済成長を強化することができます。企業や家庭に排出削減のインセンティブを与えます。また、イノベーションに向けてインセンティブを与えます。それによって排出を削減することができるでしょう。価格がなければ、この排出を削減しようとするインセンティブがありません。ですから、炭素価格がイノベーティブな経済の一部となるわけです。それによってイノベーションが生まれ、イノベーションが、将来の日本の経済成長の基礎となります。日本はイノベーションと技術に関しては、常に最先端を走ってきました、ですから、この分野において日本はリーダーシップをとれると考えます。

基本的な経済原則というものがあります。私は、公共財政を教えているんですが、これは教科書に入っている原理なんですけれども、よいものよりも悪いものに課税するほうがよいということです。よいものに課税すると、例えば労働に課税すると人は労働しなくなる、貯蓄に課税すれば貯蓄をしなくなる。しかしながら、汚染に課税をすれば、汚染をしないようにする。まさに、私たちが狙っているのがそれなんですね。ですから、これが唯一この歳入を増やしながら、私たちが望まないことを減らすことができる唯一の税制なわけです。

それから、また主たるその気候の外部性という市場の失敗に対応するものでもあります。というのも、ほかの国もそうですけれども、日本も排出をしている。そうすると、世界中にその影響が広がります。この炭素の分子というのは、パスポートとかビザは持っていません。日本からほかの国に行くのに、そういったものは要らないわけです。アメリカの排出された炭素が、ここにやってくるときにもパスポートが要らないのと同じです。ですから、これは、大気というのは世界中を覆っているわけです。ですから、お互いに影響し合う、それが炭素排出なわけです。これが、言うところの外部性ということです。炭素の外部性については、対処をグローバルなスケールでしなければなりません。

先ほども言いましたように、炭素税のメリットというのは歳入が上がるということ、そして、その税収によっていろいろな目的に使えます。例えば、ほかの税を下げることもできるでしょう。あるいは、いろいろな関税のひずみをなくすことができるでしょう、先ほど言いました。それから、また投資を促進することができます。研究開発への投資、グリーン経済への投資を促進することにもなります。それから、公平性を高めることにもなります。そしてまた、好ましくない配分、そういったものも直すことができると考えております。

実際にこれを考えていきますと、多くのその税を、課税しないということによってメリットをこうむる人というのは豊かな人なんです。大きな車に乗るお金持ちなわけです。そして、影響をこうむるのは公共交通を使う貧しい人たちということになります。ということで、炭素のいわば補助金みたいなものなんです。つまり、税を賦課しないということは、結局は、助成金を豊かなお金持ちの人たちに与えるみたいなものです。で、もちろんコストがあるということで、そこの部分を求めないというのは補助金ということになります。ですから、その課税をすることによって好ましくない所得配分に対応することもできると考えます。

炭素税というのは、とりわけメリットがあるのは日本にとってということなんです。なぜかというと、日本は、その経済成長に今、懸念を抱いています。炭素税が経済成長を推し進めることができると思っています。日本の中心的な課題は、ほかの国もそうですけれども、総需要が足りないということです。そして、そういった意味において、ほかの税と炭素税は違います。ほかの、例えば付加価値税とか消費税の場合は需要を抑制してしまいます。そして、つまり総需要が足りないという問題をかえって悪化させてしまうわけなんです。そして一部の人は、この設計がうまくされていない税制というのは供給の面で悪影響があると。ですけれども、炭素税は投資を促進します。なぜかというと炭素税、先ほど説明をしましたように、それを受けて企業は、やり方を変えなければいけないわけです。

つまり、例えば発電するような会社は、電力の発電の仕方を排出しないような形に変える、そのための投資が必要です。それからまた、家庭においては生活のあり方を見直して、やはり排出しないようにするということで、そこにも投資が生まれます。ですから、さまざまな投資を社会全体としてしなければならないのです。つまり、新しい炭素価格に対応するために必要になります。新しい炭素価格によって、かなりの投資が生まれるということです。もちろん、需要を生むということになります。需要が足りないというのが、まさに今、問題となって、経済成長ができない状況です。

刺激策として、これが行われますと、ほかの税からの、例えば付加価値税からの歳入も増えます。そこは補完性があるわけです。相互補完をしているということで、倍々で、そのプラスの影響があるということです。炭素税というのは、特に日本には適していると思う理由があります。四半世紀近く、なかなかその総需要が伸びないということで成長してこなかったというのが日本です。そして、日本はGDPに対する債務の高さを大変懸念しています。で、歳入をもっと上げるということが重要であり、財務省は、何とか税収を上げようとしているわけです。つまり、付加価値税、あるいは消費税のようなものを賦課しているわけですけれども、それによって経済が鈍化してしまう。これが、この20年繰り返されてきたと思われます。

しかし、炭素税は、実は経済を刺激することができます。どの国にとっても、その生産が下がることは問題ですけれども、特に日本にとってはそうです。税を高めるというのは、一つは債務削減のためなんですけれども、GDPが減ってしまいますと、結局は税収が減ることにもなってしまいます。日本というのはデフレを懸念している国です。ほかの国はインフレの影響のほうを炭素税との関連で心配します。それほどすごく心配しているということではないかもしれませんが、日本の場合は、デフレ環境ということで、マクロ経済的なメリットもある、これは前向きな取組と言えます。

では、次に、いろいろな炭素価格の設定政策にまつわる問題を見ていこうと思います。

まず、効率のよい炭素価格のトラジェクトリーというのは、パリ条約の目標を同時に満たすためには、まず、今、高い炭素価格を設定する必要があります。炭素に関する政策が何であれ、いずれ調整が必要になるということはわかっています。さらなる情報も必要でしょう。科学のほうから、いろいろなデータが出てきます。私自身、IPCCのパネルに1995年にメンバーとして加わっておりました。それ以降起こったことを考えますと、我々は1995年当時、この問題の深刻さを過小評価していたということがわかりました。20年しか、まだたっていませんけれども、そこから学んだのは、やはり思った以上にこの状況は悪くなっているということを認識するようになりました。そして、もちろん、一番いい情報を最大限活用して取り組むわけですけれども、どのような合理的なプログラムも、やはり高い炭素価格を今設定することから始まります。

それから、二つ目は、必要な変化を進めるのに十分高い炭素価格を長期にわたって維持するという信頼できるコミットメントが必要だということです。主たる投資として必要なのは長期にわたる投資です。ここで言わんとしているのは、まちづくりですとか、あるいは公共の輸送機関の設計、あるいは発電、発電所、これらは40年、50年操業するわけです。ですから、長期にわたる投資が必要になります。だからこそ、信頼できるような長期のコミットメントが必要なんです。これは何も今日の炭素価格のことだけを言っているわけではなくて、長期的な炭素価格のことを言っています。もちろん調整は必要でしょうけれども、まずは、強い炭素価格といったものをやっていくんだというコミットメントが今必要です。

このような炭素価格というのは、効率的な形で必要な投資変更、それから、生産あるいは消費パターンを変えることにつながります。そして経済活動を進めて、そして技術的な前進を進めて、そして将来的な削減費用を下げることにもつながるというふうに考えています。

ここまで強調してまいりましたのは炭素価格ですが、炭素価格だけが唯一の手段ではないということです。併せてほかの手段も講ずる必要があります。炭素価格設定とあわせてです。その理由は、グリーン・グロースと呼ばれるような環境に優しい成長の欠如、グリーン・エコノミーの維持に必要な投資に関する複数の市場の失敗があるからなんです。例えば、失敗としては、近視眼的な資本市場だったり、あるいは情報の欠陥、公共財に関する研究開発やいろいろな外部性、さまざまなものがあります。ですので、そういった中で使える手段としては、効率水準だったり、標準だったり、この効率の標準として、アメリカが車に課している燃費効率、これはうまくいっていると思います。アメリカがそれを戻すというのは好ましくない、正しくないと思います。というのが、これがきっかけになってイノベーションが促進されたからです。

そしてまた、まちづくりも考えなければなりません。まちづくりというのは、そのあり方によってエネルギーの利用に大きな影響を与えます。それからまた、土地及び森林利用にも影響があります。排出の2割は森林伐採に関連しています。そしてまた、土地及び森林管理のあり方というのが、その森林伐採あるいは森林の減少に影響を及ぼします。グリーンな生態系というものを進めていく必要があります。そして、技術をさらにイノベーションしていくということにも、これはつながると思っております。

こういった排出削減のターゲットというのは、より低い炭素価格で達成できることになるかもしれません。それからまた、ほかのセクターに対するコストも下げることが、複数の手段を使うことによって可能になると思います。

もう一つ取り上げたい市場の失敗がありますが、関連のいろいろな手段が必要です。金融マーケットに関する市場の失敗があり、十分な資金手当てといったものが公共金融の分野で必要です。炭素価格が成功するためには大がかりな投資が必要です。これは、公共及び民間セクター、両方でです。民間のセクターの投資はお金が必要です。そして企業や個人もお金を借りなければならない。そして金融市場は、しかしながら市場の失敗という状況に直面しています。というのが、より広いこのグリーン投資といった投資を重視してこなかったわけです。2008年にあの金融危機がありました。大変短視眼的なアプローチだったがゆえで、そしてまた、長期的な影響といったものをあまり考慮していなかったために、ああいったことが起こりました。

そして、この金融危機の後、いろいろとバーゼルIIIですとか、米国やその他の国々も関わった形での改革がされてきましたけれども、少しおかしいと思うのは、とにかくこの金融市場が社会のほかの部分に害を及ぼさないようにということだけを目指していました。つまり、そのやるべきことを実はしてこなかった。つまり、大事な投資を本来しなければいけない。ですけれども、そこには目が行かないということで、やはり、この資金手当てをきちんとしていくことが求められています。

それからもう一つ、規制の範囲ということで言いますと、少し外れるかもしれませんけれども、民間のこの金融マーケットというのは、リスク評価の部分、特にカーボンに関わるところをきちんとしてこなかった、うまくできてこなかったと言えます。例えば石油会社の炭素価格、今のままですと、その際には、将来に何が起こるかを勘案していません。私が思うところ、グローバルな動きとして、炭素価格を設定するようになり、そして、燃料の消費が減ります。そうなりますと、資産として座礁してしまう。使えないような資産が残ってしまうということになります。ということで、なかなか、そういう状況になると非常に難しいことになります。

で、こういう近視眼的な市場が、それに気づきますと価格は下がってくると思われます。そして、価格が下がりますので、短期間で下がりますと、かなりのストレスを金融市場に与えることになります。グローバルな金融市場というのは相互に連携しています。つながっています。例えば、油価、石炭の価格、それからガスの価格が下がりますと銀行にも影響があります。それからまた、銀行に貸しているところにも影響が出ます。そして、こういった金融の分野の相互依存性といったものが、2008年の金融危機のときにもよく見えました。

そして、金融規制当局が大体において、このリスクを評価するに当たって、十分に適切に行ってきませんでした。こうした、この炭素の再調整、そして座礁資産についての評価を適切に行ってきませんでした。これは規制当局の問題です。規制の問題です。ですから、特別のこの貸し出しに対する、炭素資産に対する貸し出しに対して、特別な規制が必要です。例えば、この石油火力発電、あるいは石炭火力発電施設など、そして企業がこの炭素集約型のテクノロジーを使うような場合、これは金融リスクがあるわけです。これは炭素リスクだけではなく、金融のリスクも抱えているわけですね。イングランド銀行がこうした事柄の重要性を強調し始めました。そして金融安定化委員会の中で指摘しています。

しかしながら、こうしたリスクというのが十分に勘案されてはいません。ですから、不可避的に、こうした状況ではマクロ経済に影響をもたらすでしょう。これから民間セクターが十分に、迅速に対応していく社会的なニーズ、投資の社会的ニーズに対応していくのは難しいでしょう。ですから、このシステムの安定性のための規制的な役割だけではなく、政府によるグリーン・ファンドの創出が必要です。特にこれは、家庭や中小企業のためのグリーン投資についてはそうですし、長期的な投資への資金、特に研究開発に対する投資という意味でも、政府の役割が重要です。

もう一つ私が強調したい点が、成長について議論するとき、これまでのやり方というのはどうだったかというと、いかに私たちが成長を計測するかというのが非常に重要だということです。一般的に言って、どのように計測するかによって、私たちがどう考えるかに影響を与えます。そして、計測の仕方が間違っていると考え方も間違っていってしまいます。私は、この経済的パフォーマンスと社会的前進の計測についての委員会の議長を務めております。これは、本当にノーベル賞を受賞したような方々などの専門家、そして、いろんな統計学者などに委員に入っていただいていますけれども、そこで私たちが一致しているのが、GDPというのは経済成長の指標としてはよくないということです、例えば、それは資源枯渇や環境劣化を反映していません。環境・社会・経済における持続可能性も反映していませんし、誰がこの経済成長から利益を得るのか、つまり所得分配の問題を反映していません。

私が、この経済諮問会議、クリントン政権下で議長を務めておりましたが、そのときに私は、グリーンGDPとよばれるイニシアティブをやろうとしました。そこで私はGDPの新しい計測の仕方をつくろうとしました。資源枯渇、環境劣化を反映しようとしたわけです。例えば石炭産業が環境劣化に、いかに寄与しているかということがわかると、この石炭の産出に関して見方が変わります。つまり、石炭産出というのは、社会のほかの部分に対して、どのようなコストを生んでいるかということがわかるようになるわけですね。

だから、重要なのは、アメリカの議会が、このプロジェクトに対して予算づけをしないというふうにおどしてきたんです。つまり、そこの時点で石炭産業が、いかにこれの計測が重要、正確な計測が重要かということを理解して、私たちがそれを正確に計測できないようにというふうに働きかけをしたわけです。ですので、私たちは、そのことをまず認識しなくてはなりません。そして、それに対して対処し、そして、反対論があるからといって、それが、反対論が正しいという意味ではないということを心にとどめなくてはなりません。

特に、この問題について、この成長を計測するときに、従来型のGDPを用いるべきではなく、私が今申し上げたような、グリーンGDPのような評価基準を用いるべきだと思います。何を測定するか、どのように計測するかというのが、もちろんその人の行動に影響します。もし測定が間違っていれば、誤った判断が下されることになります。ある政策を行うときに、その汚染を減らすための政策を行おうというときに、本当に、このGDPを正確に計測しなくてはなりません。そして、不正確なGDPの計測であれば、トレードオフの関係になるかもしれません。従来的なGDPの計測の仕方でも、炭素税というのはよいことだと思います。しかし、GDPを正確に計測すれば、さらに炭素税は、よりよいものだということが言えます。グリーンGDPはこの炭素税、その他の環境行動を、より説得力のあるものにもします。

結論に入る前に、幾つか、より広範な、世界的な対応についてお話をしたいと思います。最初に申し上げたように、基本的な問題というのは、大気は世界的な公共財であるということです。世界で誰もがそこから恩恵を受けます。そして、恩恵を受けたいと思っています。でも、誰も費用を払いたくはないという問題です。だから重要なのが、いかに負担を共有するのか、分担するのかということなんですね。そして、金持ちの国々が過去に排出のほとんどを、これまでの累積排出量のほとんどを排出してきた。そして、アメリカは1人当たりのこの排出量では世界で最大の排出大国です。中国が今、トータルでは排出量は最大です。というのは、人口では5倍だからですね。でも、1人当たりではアメリカが依然としてトップです。

こうした悪影響というのは、しかしながら途上国のほうで、より表れる可能性がある。ですので、この地球的な観点から見ると、炭素税というのが非常に重要な分配の影響をもたらす。そして、グローバルな世界的な構成という意味で言っても非常に重要な帰結をもたらすわけです。

では、一つの国が、炭素税を自ら、一つの国だけで導入できるかという質問をよく受けますが、それは非常に曖昧ではありますが、イエスというのが答えです。ある国が排出量を削減したい、そしてパリでも、その前にはコペンハーゲンでも合意が結ばれました。ですから、各国がこれを使えば、そして、独自に各国がこの炭素税の仕組みを使うことができます。私の個人的な見解では、グローバルなこの合意ができて、この炭素価格について合意ができて、そして、国際社会が、より強力なカーボン・プライシングを手段として使うということに合意できれば、よりよいと考えています。そうなれば、各国が協調して行動できます。

しかし、このようなグローバルな合意がなかったとしても、非常に効率的な手段であります。例えば日本が独自に使うということができます。そのほかの国々も、国内の政治的な問題があるからということで非効率な方法を追求したい場合があるでしょう、。それはその国の問題です。でも、日本が、この社会的なコミットメント、パリ協定の際になしたコミットメントに従っていくのであれば、炭素税というのは効率的で公平なやり方であると思います。特に、日本が抱えているニーズに応えることができる。つまり、持続的な経済成長というものを実現することができる効率的な手段だと考えます。

そして、中期的に言えば、世界各国の国々は何らかの炭素、この越境的な炭素に関わる調整策を導入して、まだ国際的な義務を果たしていない国々にもインセンティブを与えるという方策を考えたほうがよいかもしれません。私は、本の中でも言いましたけれども、こうした越境的な、国境を越えた炭素の調整について、本の中で、これはWTOのこの枠組みにも合致したものだというふうに述べております。すなわち炭素は、この生産に対する費用ですね。この炭素の排出に対する課税をするというのは、これは社会的なコストなんです。で、それをしない、課税しないというのは、実は補助金に当たるわけですね。つまり、労働については心配するなと、労働のコストは払うからと、で、その政府が、そのコストを払う、負担することになれば、これは補助金になってしまいますね。

そして、WTOのもとでは補助金は違法です。ですので炭素に、この炭素税を導入しないというのはWTOの違反になる可能性があります。WTOのもとでは、もし別の国が、ある国が、この炭素に対して、ちゃんと費用を支払っていないというふうに主張すれば、これを相殺するための対策をとれる、つまり、こうした潜在的な補助金に対して越境的な調整策をとることができるということになっています。ですから世界の全ての国々が、このパリ協定での合意を遵守するためには、こういう仕組みが必要になります。そして、また2℃、そして1.5℃にまで気温上昇を抑えるという、この目的を達成するためにも、こうした炭素税の仕組みを導入しなければ、全く達成できないわけです。ですから、長期的には、もっともっとこういったことをやらなくてはなりません。

私は、カーボン・リーケージの問題については、それほど心配していません。ただし、もしも、この炭素税を導入しない場合には、あるいは規制を導入しない場合には、答えは簡単だと思います。私たちは、それを許さないぞと言えばいいのです。そうした製品が日本に持ってこられるということは許さないと言えばいいのです。この問題については、ヨーロッパでも多くの人が支持しています。多くの国の指導が、既に提案をしています。ですから、これは実現します。ですから、これが、これからの枠組みの一部になるでしょう。全ての人が公平に分担をするということが望まれます。しかし、もしも主要国が、この合意したことをやらなければ、何らかの手段をとらなくてはならない。例えば越境的な炭素調整といった手段をとらざるを得ません。

ですので、結論になりますが、非常にシンプルです。グリーン経済を創出することは経済成長と両立するだけではなく、経済成長を促進することさえできるということです。特に、現在のように総需要が不足している場合にはそうです。グローバルなレベルでも、特に、ここ日本においては総需要が不足していますから、特にそれが言えます。そして、また成長を正確に測定した場合には、なおさらそのことが言えます。炭素税は、強いグリーン経済を創出するために効果的なツールで、同時に、総需要を増加させ、環境を改善し、そして配分効率を向上させ、そして、社会の望ましい多様な目的に利用できる歳入を確保できるわけです。これらを同時に実現できます。

日本でも、今、議論が始まっていますこの炭素税、そして、こうした手段についての議論が始まっていると聞いております。これから、このプレゼンの後に、ぜひ皆さんからの質問などを受けたいと考えています。

ありがとうございました。

○浅野委員長

スティグリッツ先生、どうもありがとうございました。

本日は、20分程度の質疑応答の時間が用意してございまして、先生は、その後のご予定がございますので時間を延ばすことができません。ご質問・ご意見、ご希望の方は、ちょっとお手元の名札をお立ていただけますか。

それでは、このくらいにさせていただきます。大塚委員からどうぞ。

○大塚委員

では、3点質問させていただきたいと思います。

一つは、現在のアメリカの状況と今後の状況の問題でございますが、先ほどご指摘いただきましたように、最終的にはカーボン・プライシングで、もしカーボン・リーケージを防ぐのであれば、国境税調整のようなことをしていく必要があるということですが、アメリカが、これを音頭を取っていただくとか、あるいは加わっていただかないと、世界的にはなかなか難しい状況になると思いますが、その辺についてはどうお考えかということを、ちょっとお伺いしたいと思います。

それから、二つ目でございますけれども、アメリカが必ずしも十分な温暖化対策をおとりにならない場合に、日本ではどうすべきかみたいな議論が、一部ではないわけではないのですけれども、今後、アメリカが、もし現在排出している量との関係で十分な責任を果たされないようなことが起きた場合に、後で、その穴埋めをしていただくようなことが必要になってくるのではないかと思いますが、そのような点について、どうお考えかということをちょっとお伺いしたいと思います。この点。

○浅野委員長

すみません、簡潔にお願いします。

○大塚委員

すみません、カーボン・バジェットの考え方とも関係しますが、世界的に、そのIPCCの考え方、カーボン・バジェットの考え方を前提にすると、やはり、たくさん排出したということに今後なると、その分、穴埋めを後でしていただくようなことが必要になってくるのではないかと、その分、たくさん削減することが必要になってくるということを世界的に認めていく必要があるんじゃないかということを考えておりますので、その辺について教えていただくとありがたいと思います。

それから、すみません、3点目ですけれども、先ほどおっしゃっていただいたように、カーボン・プライシングがイノベーションを促進するというふうに私も思っておりますが、この点に関しては、また逆な意見が日本では一部でございまして、炭素税によって、そのお金を取られてしまうので、企業はイノベーションにお金が使えなくなると、イノベーションのためにお金を使えなくなるということを言う意見がございますので、これに対する反論を先生のほうから教えていただければありがたいということです。

以上です。

○浅野委員長

では、スティグリッツ先生、どうぞよろしくお願いいたします。

○ジョセフ・スティグリッツ教授

ありがとうございます。

まず、このカーボン・バジェットの考え方を私は同意します。より多くの炭素を出してしまった国というのは、より大きな削減義務を将来的に持つことになるということです。これは、考え方として非常にいい枠組みだと思います。で、私自身も、ほかでもこれを推奨しているわけです。

楽観的な視点で言うと、アメリカの政権は、今日、あまりコミットしていないという状況ですが、個々の州は炭素に関する政策を設定する自由度があります。いいニュースとしてはカリフォルニア州、これはアメリカ経済の15%を占めています。それから東は、ニューヨークは私の出身地ですけれども、この二つの沿岸の州はパリの目標を達成することにやる気があります。ということで、アメリカにおいては、かなりの部分、これから先、かなりアグレッシブに炭素の政策を打ち出してくると思われます。そしてまた、炭素に関するイノベーションについて非常に強力な見方を持つことになります。イノベーションの中心に、シリコンバレーがありますけれども、グリーン・イノベーションに大変力を入れています。ということで、私は、そういった意味では楽観的に考えています。

一方で、確かに、がっかりするのはアメリカの政権が炭素に関してコミットしていないことです。今、先生がおっしゃったことと違う意見だと思うのは、ほかの国々が協力して、アメリカに対してこう言うべきです。「アメリカよ」と、「パリでの合意の目的を達成しなければ、炭素調整を課すようにします」というふうに言うべきなんです。つまり、インセンティブを与えなければいけないわけです。

けれども、ここ7年、ルールベースの国際的な秩序といったものをつくってきました。そして、結構それはうまく機能してきたんです。その一部のルールというのは気候に関するルールでした。それから、このステップは、これからも歩み続けなければいけないと思います。WTOにこれは準拠しているからです。ですので、これは貿易戦争にはならないと思います。ヨーロッパの高官と話をしたりしますと、大体この考えに賛同してくださいます。ですので、特にこういったその越境調整といったものが重要だと思います。特に、大きな国が国際的なルールを守っていない、ルールベースのシステムに従っていない場合は、それが重要だと思います。

それから、最後に聞かれた質問はイノベーションに関してでした。炭素税というのはイノベーションのインセンティブになります。おっしゃったように、そこでは、資金といったことが問題になります。二つ側面があります。まず第1に、先ほども強調しましたように、政府にとっては、その資金を提供することが好ましく、また必要であると。というのも、社会的なリターンといったものは、こういった投資から得られるものは非常に高いからです。大きなリターンがあります。かなりのリターン、見返りを実際に太陽光のエネルギーの部分で得ることができました。これはグローバルな経済にもプラスでした。ですので、補助金も含めた政府の財政手当てが必要です、これは公共の利になるものですから。知識も含めてです。ですから、政府のほうがイノベーションを後押しすることが、資金面でも必要です。

二つ目の側面として、例えば、特別な企業、特定の企業、あるいは特定の分類、企業個々ではなくて、そのカテゴリーでいったときに、確かにその全体の税率とのトレードオフがあるかもしれません。つまり、その法人税とそれから炭素税、この間にです。いろいろなその歳入の上げ方がありますけれども、好ましい振る舞いを促進するのが炭素税なわけです。いろいろなプラスの影響があります、そのインセンティブとして。イノベーションというのもまさに一つのインセンティブとして出てくるものです。例えば、グリーン投資のために研究開発をすれば税控除が得られるとか、イノベーションについては二重にインセンティブが働くというようなことも考えられます。

○浅野委員長

ありがとうございました。

それでは、廣江委員、それから池田委員、手塚委員の順にお願いいたします。スティッグリッジ先生、まず、3人の方からご質問をいたしますので、その後、先生から、お答えください。

○廣江委員

ありがとうございます。スティグリッツ教授に質問をさせていただいて、大変光栄でございます。

質問したい、お聞きしたいことが1点でございます。それは、この炭素税が国際的に導入するのが望ましいけど、場合によっては、日本のように総需要の不足している国であれば、率先して、もう導入してもいいんじゃないかと、副次的効果も得られるではないかと、こういうお話だったように理解いたしました。心配いたしますのは、日本だけが率先して仮に入れた場合には、これは為替レートを引き上げたのと同じような効果があると思いますので、短期的に、少なくとも短期的には輸出を抑え、総需要を減らすのではないかと。おっしゃっているのは長期の話かもしれませんが、短期的に見れば、少なくとも総需要を減らしてしまう効果があるのではないかということを心配しております。この辺りについてのご見解を伺いたいと思います。

 以上でございます。

○浅野委員長

池田さん、どうぞ。

○池田説明員

先生の講演を直接お伺いすることができ、大変うれしく思います。ありがとうございました。

先生のスライドを読んで、うまく設計されたカーボン・プライシングというのが効率的な排出削減に重要であるという指摘は、理論的にはもっともな面があるかと思いますけれども、現実には、グローバル経済が浸透し、各国の経済・産業構造を含めた国情が異なる中でうまく設計するというのが、非常に多くの課題があるのではないかというふうに思いました。その上で、2点ご質問させていただきたいと思います。

第1点目でございます。カーボン・プライシングの一つの手法に排出量取引というのがございます。先生は、直接言及されませんでしたが、それに関するお考えをお伺いしたいというふうに思っております。排出量取引は、諸外国において必ずしも期待された成果が上がっていないのではないかと。

○浅野委員長

すみません。質問を簡潔にお願いします。

○池田説明員

はい。

と思っています。典型的な政府の失敗の事例と思われますけれども、見解を伺いたいというのが1点目でございます。

2点目ですけれども、OECDによれば、カーボン・プライシングについては、炭素税といった明示的なエクスプリシットなものだけではなくて、エネルギー価格ですとか、エネルギー諸税といった暗示的なものもあるというふうに言われております。例えば、税額を含めたエネルギー価格を日本とアメリカで比較した場合に、アメリカは産業用天然ガスで、ギガ重量当たりアメリカが4ドルとなっているのに対して、日本は22ドルと5倍ぐらい高いと。産業用電力についても、アメリカが69ドルに対して、日本は162ドルと2倍以上の価格の開きがあるということでございます。そういうデータがございます。国民や企業の変革を促す上では、炭素含有量にひもづけられた税の水準だけではなくて、こうしたインプリシットなものも含めたカーボン・プライシングを考慮することが重要ではないかと思いますけれども、先生のお考えを伺いたいと思います。

よろしくお願いいたします。

○浅野委員長

手塚委員、どうぞ。

○手塚委員

今、池田委員から質問が出ましたけれども、先生がおっしゃっているこのカーボン・プライシングの有効性については、私は、全くそのとおりだろうと思っています。逆に言いますと、実は、日本というのは、このカーボン・プライシングを過去40年にわたって非常にうまく使ってきて今日に至っている国じゃないかと思うんですね。といいますのは、日本の場合は、上流に課税するFossil Fuel Taxとして石油・石炭税というのを1978年から導入しておりまして、現在、年間の税収が500ビリオン円、5,000億円くらいの規模になっています。毎年、これが税収として入ってきて、その半分を省エネ対策、あるいは研究開発の補助金等に使っております。であるがゆえに、日本の産業ベースで見たときには、企業の総合的なエネルギー効率は世界でもトップクラス、日本の自動車の燃費も世界でトップクラスを達成しているのではないかと思うんです。そういう意味で、日本は既にカーボン・プライシングが有効に機能している国なのではないかと思います。

で、問題は、現在、このエネルギー諸税、これに加えて、さまざまな税金が乗っかっていて、エネルギーにかかっている税収は4.8兆円、4.8トリオン円でございます。これをCO2排出量11億トンでエネルギー起源のCO2排出量で割り戻しますと、トン当たり4,000円のカーボン・プライスが、実は既に日本の社会にはかかっています。先生のおっしゃっているカーボン・プライシングですが、これをどこまで上げることによって、どれだけのさらに限界的なリターンがあるというふうにお考えか、つまり、かなりのところの省エネは日本はやってきてしまっている中で、限界的にどういうリターンを求めることができると思われるかということについて、見解を教えていただきたいと思います。

もう一つはですね。

v浅野委員長

すみません、そのぐらいにしていただけますか。

○手塚委員

はい、わかりました。

○浅野委員長

では、ステイグリッツ先生、お願いいたします。

○ジョセフ・スティグリッツ教授

はい、いい質問ですね。じゃあ、最後の質問から答えたいと思います。今、おっしゃったところは、幾つかのポイントを強調していらっしゃると思うからです。

今おっしゃったように、エネルギーに高い価格を、例えば石油に対しては高い価格を設定してきたということ、これに対して、その影響があったということで、炭素価格は機能したということです。ただ、これは、しかしながら、その全ての経済のセクターに満遍なく適用されるべきものなわけです。それがまず第1点ですね、この炭素価格というのは。

それから、炭素価格の一部は、道路への投資と結びつけられていました。つまり、公共輸送機関にではなくて、道路建設にひもづけられていたりしました。エネルギーを削減するための公共輸送機関にはならなかったということです。そして、必ずしも、そのインフラの部分がそれに対応するものでなかったということです。ですから、そこの、ひもづけられたものをやめて、そして、よりこの均一に、全体にこれが影響が行くようにしなければなりません。そして、価格としてはもっと高くしなければいけないと思っています。この文言については、まだ委員会のほうでも合意を見ていませんけれども、コンセンサスとしては、大体50から100ドルというのが1トン当たりの数字です。その辺り50ドルから100ドルというのをトン当たりで考えています。まあ、日本よりも少し高い数字でしょうか。

で、それがもう一つの点につながるんですけれども、日本が本当の意味での炭素価格の制度を入れるとなりますと、多分、もう既にここまでなさっている、7割、8割ぐらいまではもうやっていらっしゃるわけですから、ほかの国に比べたら、それほどやりにくい、苦しいことでもないかもしれないということです。で、もしかしたらほかの国にとって、模範になれるかもしれないと思います。

それから、この非明示的な価格というのも、重要な部分を、この全体のストーリーの中で果たしていると思います。その化石燃料というところ、そこが気になるわけで、やはり、その化石燃料の使用を何とかしたいという、それを減らしたいというのが我々の目的ですから。非常に日本では高いですよね、輸入しなければならないわけですから。それからまた規制もあります。また、暗示的な価格といったものもあったりします。例えば、よく議論するのが、例えば町の設計も、この暗示的な形で炭素価格を使っていると言えるかもしれません。というのも、そのまちづくりということによっては、例えば人口密度が高くなったりということになります。それから公共輸送機関、これも公共投資なわけで、考えてみると、結局人々が、より、個人の車ではなくて公共輸送機関を使うようにと促進をすることは、炭素の排出が減るわけです。

で、そのメリットとコストの費用便益の比較をしますと、公共輸送機関のほうがいいということです。つまり、非明示的なやり方ではありますけれども、これでも、結局はやりたいことにつながるわけですから、目的に近づくわけですから、いいことです。よりグリーンな経済へのビジョンを達成するために、この非明示的な形であってもいいと思います。というのも、民間の人々の振る舞いにそれが影響を及ぼすわけですから。ですから、そういった全体のバランスといったものを見失わないことが重要だと考えます。

また、いただいたご質問の中で、炭素税の総需要に対する影響というところに関してですが、どんな税であっても、その制度の中から、システムからお金を引っ張ってくるものです。例えば付加価値税であっても、消費税であっても、それは税が何であっても同じです。ですので、どんな税であってもそうなります。ただ、この炭素税というのは追加的なメリットがあります。これは確かにシステムからお金は引き出します。それからまた、民間企業、民間セクターがもっとお金を投資することになります。レトロフィットという形で、後になって、新しいこの価格構造に対応しなければならないということですので、その新しい価格というのが炭素価格です。で、これによって投資が増える。それによって当初引き出したお金が相殺されるということです。もしかしたら、その結果、こういった投資応答といった弾性がより小さいかもしれない。で、その場合は、政府は、ほかの手段を講じて経済を支援しなければならないかもしれません。

例えば、公共交通機関への投資を行う、グリーンな投資を行うということにもっと予算を利用するとか。つまり、経済を刺激するような形で、その歳入を使えるわけです。ですから、システムからお金を取ってくるんですけど、それをまた、システムのいい目的に使うということなんですね。ですので、炭素税というのは、総需要が刺激されて、そして成長が刺激されるということを確保できるようになるわけです。そのほうが、ほかの税よりも、もっともっと大きな効果があります。というのは、このインセンティブが含まれているから、で、これが正しい方向に向かうインセンティブになるからです。

ですので、私の考え方では、これが全ての税の中でも最善の税であると考えます。この、天からお金が降ってきているのであれば税を導入する必要がないわけですけれども、何らかの税は必要です。で、どのような税であるかということが問題で、税の中でも、これが最善の税だと思います。ですから、そのほかの税に比べて、この悪いものに課税せよというものではなくて、その理論にかないます。で、そのほかの税は、この労働者が、あるいは労働者、貯蓄、労働貯蓄とか、そういったものに対するインセンティブにならない税になっているんですね。ですから、炭素税は、そういったもののインセンティブになるということで、よい、最善の税だと思います。

排出量取引について話す時間がなかったのですが、排出量取引もまた、グローバルなこの気候変動に対する対応策の重要な一部であろうと思います。抽象的なレベルでは、排出を削減するということを考えたときに、この排出を削減した場合に、どの場所であれ、どのようなところであれ、この利点というのは同じなわけですね。その地球的な観点から見れば、この利点というのは同じなわけです。ですので、この人々が排出を削減、最も効率的な形で排出を削減できるような貿易システム、取引システムというのが奨励されるべきであります。そして非常に、十分に、よく制度設計された排出量取引というのは、その目的を達成できるでしょう。

しかしながら、ときにリーケージとか抜け道といったさまざまな問題があるので難しいんですけれども、それらの問題は解決しうると考えています。例えば、ある農家の人が排出を削減しても、隣家の人が排出を増やすうまくいかない。だから、それはマクロの観点からやっていくことが必要になってきます。

○浅野委員長

どうもありがとうございました。

末吉委員、恐れ入りますが、1分ぐらいでご質問を、崎田委員も1分でご質問をおまとめ、ください。

○末吉委員

そうですね、今日は先生、すばらしいご講演をありがとうございました。1分しかないので、じゃあ1問だけお伺いします。

カーボン・バブルについてですけれども、先生のおっしゃるとおり、バンク・オブ・イングランドの総裁などは大変警鐘を鳴らしておりますけれども、非常に残念なことに日本では議論がありません。非常に心配しております。でも、幸いなことに、G20が要求したFSBのTCFDが間もなく最終結論を出します。これは大きな前進だと思うんですけれども、私、非常に重要なのは、銀行のクレジット・プロセスを変えるためのバーゼルⅢの見直しが必要ではないかと思っております。銀行の与信判断にクライメートリスクが反映されるような見直しを進めるべきだと思っておりますけれども、いかがでしょうか。

○浅野委員長

崎田委員、どうぞ。

○崎田委員

はい、ありがとうございます。私は、もう簡単にコメントだけにいたします。

私は、消費者、市民、そしてまちづくりの視点で、この委員会に入っております。で、伺った中で、8ページに、まちづくりや交通機関のような影響が長期的に関わるものに対しては、強い炭素価格が必要だというお話がありまして、大変共感いたしました。そこに対して、額だけではなくて、いろいろな経済システムが必要なんだと思っています。先ほどのお答えの中にかなり出てきましたので、コメントだけにさせていただきます。やはり、そういうことを私たちもきちんと、社会の中で広げていく必要があるというふうに考えております。

ありがとうございました。

○浅野委員長

スティグリッツ先生、最初の質問についてだけ、お答えをいただければ結構でございます。よろしくお願いいたします。

○ジョセフ・スティグリッツ教授

はい、非常に重要だと思いますが、バーゼルIIIの活動、そして、この金融システムのこのシステミック安定性、これがカーボン・バブルを勘案することが非常に重要だと考えます。私は、この研究プロジェクトに関わっていまして、チューリッヒ大学の人たちとやっているプロジェクトなんですが、いかにこの相互に関係しているか、その金融システム全体が、いかに相互につながっているか、2008年、2009年にそれがわかったわけですね。非常に大きな結果になるということがわかりました。ですから、こうした、その相互のつながりというものを理解することが重要だということがわかったわけです。その銀行の一つ一つだけではなくて、金融システム全体を見なくてはなりません。

そこで、規制当局が、もっと積極的な役割を果たすべきでしょう。そして、そのうちの一つが、各銀行が、銀行自体がカーボンに対するエクスポージャーを持っていないことが重要です。もし銀行が、カーボン・エクスポージャーを持っていたならば、世界全体もカーボン・エクスポージャーを持っているわけなんですが、資産の中に隠されている間接的なカーボン・エクスポージャーを、通常は、私たちはあまりよく理解していません。これが重要な研究テーマになるでしょう。

研究の分析の観点からいえば、ネットワーク理論に関して非常におもしろい、刺激的な議論がありました。数学的なこのネットワーク理論をやっている人たちが、この状況について分析していました。そして、チューリッヒでも、そのような議論を聞きました。日本の規制当局も、もっとこの問題について認識をすべきだと思います。潜在的に、どのような結論が生まれ得るかということについて認識すべきだと思います。そして、この問題について、もっともっと認識を高めてもらうために、私の同僚も非常に大きな成果を上げております。

○浅野委員長

スティグリッツ先生、今日はお忙しい中、どうもありがとうございました。大変有益なお話を聞かせていただき、また、私たちの質問にも丁寧にお答えいただきましたことを心から感謝申し上げます。

どうもありがとうございました。

では、スティグリッツ先生は次のご予定がございますので、このまま退出されます。

それでは、本日の最後でございますが、ご報告でございます。

皆様方の机の上に、最初に事務局も申しましたが、前回の小委員会で私にご一任をいただきました長期低炭素ビジョンの取りまとめの結果を記しました報告書を置いてございます。委員の皆様方には、昨年7月以来ヒアリングにおつき合いいただきまして、また、意見の交換につきましても大変熱心にご参加いただきましたことを心からお礼を申し上げたいと思います。ビジョンという形で、目指すことが望まれる方向と姿を示すということが、十分ではありませんけれどもできたと思っております。もちろん、事柄の性質上、各委員の思いを完全に反映させた報告書ということには参りませんので、ご不満もおありかと存じますが、とりあえず取りまとめにご協力いただきましたことにお礼を申し上げたいと存じます。

また、ヒアリング終了後から今日までの間、事務局の皆様方には、委員をはじめヒアリングでお聞きしたさまざまなお考えを整理し、この報告書の形に整えるために大変なご努力、また調整の労をおとりくださいました。このことにつきまして、委員を代表いたしましてお礼を申し上げたいと思います。

このビジョンが、今後の政府の戦略の策定に生かされることができますように願っております。どうもありがとうございました。

それでは、そのほか、事務局からご発言がありましたら、どうぞお願いいたします。

○鎌形地球環境局長

環境省の地球環境局長、ビジョンの担当局長、鎌形でございます。

改めて御礼申し上げたいと思います。昨年7月から、大変密度の深い議論をどうもありがとうございました。大きな指針をお示しいただいたと思いますので、これに基づいてしっかりと、さらに議論を深めていきたいと思います。

また、小委員会の皆様方には、今後も、こういったビジョンをおまとめいただいたことを踏まえまして、さらに、さまざまな方々からのヒアリングとか国民のご意見を聞くと、こういうプロセスもやっていきたいと思いますので、引き続きよろしくご指導のほど、よろしくお願いいたします。

どうもありがとうございました。

○浅野委員長

これで完全に閉店ということではないようでございまして、局長からもその点のお話がございました。また、日程は改めてご相談申し上げますが、いずれ次のラウンドが始まりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

本日の議事は以上でございます。

ありがとうございました。

午前11時16分 閉会

ページ先頭へ