長期低炭素ビジョン小委員会(第13回) 議事録

日時

平成29年3月1日(水)10時00分~12時30分

場所

海運クラブ 2階ホール
東京都千代田区平河町2-6-4 海運ビル2階

議事録

午前10時00分 開会

○低炭素社会推進室長
定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会地球環境部会長期低炭素ビジョン小委員会の第13回会合を開始いたします。
本日は、委員総数18名中14名の委員にご出席いただいており、定足数に達しております。
なお、既に地球環境部会長決定とされております本委員会の運営方針において、原則として会議は公開とされていることから、本日の審議は公開といたしております。
では、以降の議事進行は浅野委員長にお願いいたします。

○浅野委員長
それでは、議事を進めさせていただきます。
まず、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

○低炭素社会推進室長
配付資料の確認をさせていただきます。一番初めに議事次第がございます。2枚目に配付資料一覧がございます。資料1としまして、委員会委員の名簿がございます。資料2としまして、長期低炭素ビジョン(案)がございます。資料3といたしまして、長期低炭素ビジョン(案)概要がございます。資料4としまして、長期低炭素ビジョン(案)参考資料集がございます。また、参考資料としまして、一部の委員の方から意見、本日の意見に使用するということで、ご意見をいただいているのを添付しております。
資料については以上でございますけれども、資料の不足等がございましたら事務局までお申しつけください。
カメラはここで退席をお願いいたします。

○浅野委員長
それでは、議事に入ります前に、前回、第12回の、この委員会の資料に関して、後から追加でいただきました委員からのご意見について、ご報告をいただきます。

○低炭素社会推進室長
委員の皆様の机上には、前回小委員会の資料に関しまして、後日追加でいただいた意見を委員の皆様の机上に配付してございます。
また、2月10日の第135回地球環境部会におきまして、長期低炭素ビジョンの素案をご報告し、委員の皆様からご意見をいただいたところです。こちらにつきましても、議事録を委員の皆様の机上に配付してございます。
事務局からのご報告は、以上です。

○浅野委員長
では、ありがとうございました。
早速、議事に入りたいと思います。
前回まで、いろいろご意見いただきましたので、そのご意見については極力反映させるべく事務局にも努力をしていただきましたが、ただいまから30分程度だと思いますが、この長期低炭素ビジョン(案)について説明をいただきます。

○低炭素社会推進室長
では、主に資料2に基づきまして説明させていただきます。
まず、表紙の表題につきまして、前回、素案となっていたものを案というふうにしております。
また、目次につきましては、修正が加わっておりますけれども、後で中身をご説明する際に説明させていただきます。
めくっていただきまして、今回、「はじめに」というところについて記載をお願いして記載させていただいております。「はじめに」の中では、まず、世界の取組の動きとか流れについて。それから、このビジョンについては、我が国の役割を明らかにする理念ですとか目指すべき将来像についてまとめたものということであって、戦略そのものですとか具体化するためのプログラムについては、このビジョンを参考に策定されることを期待するというふうにしております。また、このビジョンについては、科学的知見を重視して、長期の視点を大切にしたということを書いております。また、長期的な目標としての2050年の目標、それから2030年の目標の性格の違いについて記載をしております。さらに、イノベーションですとか同時解決にも資するものというようなことで記載をいただいているところです。
また、5ページ、6ページ、7ページにつきましては、議論のサマリーでございますけれども、本文の修正を反映させたものでございますので、本文の修正で説明させていただきます。
8ページでございます。表題のところ、副題を削っておりますけれども、大きな項目で副題をつけたりつけなかったりしているところがございましたので、基本的に副題はつけない方向で今回修正をしております。「科学に基づく取組を基本とする」ということについては、本文の中に入れております。
その下のほうで、影響として海洋酸性化という意見もこれまでございましたので、記載をしております。
また、それぞれ、例えば参考資料集何ページに関連するデータが載っているということを、それぞれ記載をしております。
めくっていただきまして10ページでございますけれども、気候変動の影響の経済的側面についての記述について意見がございましたので、最近の情報としてシティグループの情報なども入れております。さらに、我が国の気候変動の影響について記載すべきとの意見を踏まえまして、中央環境審議会の意見具申の内容を記載してございます。
それから11ページ目につきまして、カーボンバジェットに係る表題について適正化をしております。
それから、その下のほうについてですけれども、パリ協定においての規定等を引いてきております。
また、脚注のところですけれども、11番の脚注としまして、温室効果ガス削減のためには幾らでもコストをかけていいわけではないというご意見がございましたので、それを記載しております。ただ、コストというのはリスクの程度に応じて変わるということで、「具体の対策・施策の検討に当たっては、丁寧な議論を進める」というようなことで記載をしてございます。
めくっていただきまして12ページ目でございますけれども、上のほうで、我が国が国際社会を主導する役割を果たしていくというようなことを記載しております。
下のほうでございますけれども、パリ協定の遵守に係る規定を記載しております。
それから、次のページでございますけれども、13ページのところでございますけれども、パリ協定の中でも自国が決定する貢献についての記載を記載しておりまして、脚注として、そのパリ協定の本文には含まれずに各国が決定して更新・提出する構造となっているということを記載しております。
めくっていただきまして、14ページ目でございますけれども、上のほうで、それぞれの部門の排出量を記載をしております。また、農業部門と産業部門の二、三の業種で、今の2割に達するのではないかというようなご指摘もいただきましたので、産業部門のうちの多量排出業種がどれぐらい出しているか。それから、下のほうの脚注では、農業部門でどれぐらい出しているかということについては記載をしております。これらの将来については、また後のところで記述することとしております。
それから、15ページのところでございますけれども、2030年の目標と2050年の目標については性格が違うのではないかという指摘をいただいておりますので、2030年の目標について、より詳しく説明を追加しております。
次のページ、16ページでございますけれども、表題の副題のところから「約束された市場への挑戦」というのを削っております。また、約束された市場につきましては、さまざまなご意見いただいておりますので、「いわば約束された市場」ということで、注釈で、どういうものを意図しているかということについては記述を加えております。
また、この市場に参入すれば確実に収益を上げられることを保証されるのかというようなご意見もございましたので、そういうことを意味するものではないという記載をしております。
17ページのところの冒頭ですけれども、再生可能エネルギーの世界的な発電コストについての情報を入れております。
それから何ページか飛んでいただきまして、22ページでございます。22ページの上のところですけれども、使い道がないといった消極的な理由で企業の現預金の積み増しが起こっているというところについてご意見いただきましたので、この記載のもとになりました平成27年度の年次経済財政報告の中でどう書かれているかというのを、その前段も含めて引用をしております。
次のページ、23ページでございますけれども、イノベーションの停滞ですとか、「よりよい」ではなく「より安い」ということについてご意見をいただきましたので、内閣府の検討専門チームの中間報告を引用する形にしております。
次、また少し飛んでいただきまして、26ページのところでございます。第4章の基本的考え方ですけれども、我が国がどのような役割を果たさないといけないのか、また我が国が目指すべき将来像というのをしっかり記載すべきだというご意見をいただきましたので、記載を追加しております。
その下、27ページの下のところですけれども、環境については将来にわたって維持されなければ人間の活動は成り立たないという点に記載をしております。経済成長の重要性についてのご指摘をいただいておりますので、それについても記載をしております。
また、46番の脚注で、企業活動についても自己の事業継続がかかった課題であるという認識を持つべきだとの意見もございましたので、それを記載しております。
次のページ、28ページでございます。企業が保有する現預金の増加について、データを最新のものにしております。
また、脚注の49番でございますけれども、固定価格買取制度の賦課金についてのご意見がございましたので、それについて記載をしております。
29ページのところですけれども、デカップリングについて、これ、現象ということで、そういう状況を示しているということですので、そういう記述にしております。
めくっていただきまして、30ページですけれども、真ん中辺りで「有形固定資産の役割が低下している」という部分については、ご意見もいただきまして、この文脈では不要ではないかということで削除しております。
それから、脚注の54番、このページの下のところですけれども、ライフサイクル全体で削減への貢献を見える化することが重要というご指摘をいただいておりますので、それを記載しております。
31ページですけれども、地域のエネルギーについて、それぞれの地域で状況がさまざまであるというご指摘をいただいていますので、それを記載しております。また、自立分散型エネルギーの強靭さについては、既存の電力系統も重要性について指摘を受けておりますので、それを記載しております。
次のページ、32ページでございますけれども、気候安全保障について、国際的な議論がされているということについての記述。また、我が国においてもさまざまな被害が起こっているということについても記述をすべきだというご意見いただいておりますので、それを記載しております。
33ページですけれども、(2)で、副題的に「国内対策が大前提」というふうに書いていたのを、「国内対策に加え」という形にしております。国内において、国際競争力の強化に、国内対策を進めることが国際競争力の強化に直結するということについて記載を追加しております。
また33ページの下のほうから次のページにかけて、国内での長期大幅削減とあわせて世界全体の排出削減に貢献していくことの重要性について記載をしております。
また、次のページ、35ページでございますけれども、国内の技術のイノベーションについて、国内の多種多様な産業の集積を生かしたイノベーションについて記載をしております。
また、経済社会システムのイノベーションのところでは、ICTの進展を初め変化が著しいということで、柔軟に対応できるような制度面におけるイノベーションについて記述をしております。
また、ライフスタイルのイノベーションについて、新たな需要を生んでいるということについて記載をしております。
次のページ、36ページ、冒頭のところで64番の脚注を加えておりますけれども、今でも頑張っているということで、これから頑張るわけではないだろうというようなご指摘をいただいておりますので、これまでも頑張ってきているんですけれども、さらに取組の加速することが必要だということについて記載をしております。
また、その下のところ、カーボンバジェットにつきまして、累積排出量の観点というのが重要であるということについて記載をしております。
それから、その36ページの下のところ、環境政策の原則の観点でございますけれども、未然に防がれるように行うということ。それから、予防的な取組についてを講じていくことについて記載を併記しております。また、汚染者負担の原則についてもご意見いただいておりますので、それを記載しております。
さらに37ページの脚注で、65番の脚注ですけれども、汚染負担の原則についてご意見をいただいておりますので、それを記載しております。
次のページ、38ページでございますけれども、「各国に対して先行を許したものの」という部分については、この文脈では不要ではないかということで削除しております。
39ページの下のところでございますけれども、この大幅削減の社会像について、さまざまなシナリオを考えるべきだというご意見等もいただいておりますけれども、ここについては、その位置づけをはっきりして、絵姿を示すことで、そこに至るための課題や対策等を検討するきっかけという性格であるということを記載をしております。
また、その次のところからは、あらゆる部門、業種において取組を進展させていくことが必要で、現状の生産量やエネルギー使用量を前提とするものではないということを記載をしております。
それから、技術的側面というところについて、68番の脚注を加えておりますけれども、これも先ほどのさまざまなシナリオというのに関連しまして、経済影響とか産業構造とか電源構成などですとか技術の見通しの観点も踏まえて検討の必要性が指摘をされておりまして、今後の検討に当たっては留意が必要だということを記載をしております。
少し飛んでいただきまして、45ページのところでございますけれども、「電力網の強化」のところでございますけれども、強化も含めてさまざまな方法というのを考えないといけないということで、「最適化」ということにさせていただいております。
それから、そのページの下のほう、再エネのところで、水力については中小だけではないのではないかということも踏まえまして、必要な修正をさせていただいております。
その次のページのところでございますけれども、CCS、CCUのところで、長期的に二酸化炭素を固定させるというのは、CCUについて、ちょっと誤解を招くのではないかというご意見をいただいておりますので、記述を削除しております。
その下のところですけれども、化石燃料について、一部の産業や運輸等で、「限られている」というのも、という表現について適正化をしております。また、自家発電について、「大半が石炭火力発電だ」ということについては違うのではないかということで、ご意見を踏まえて削除をして表現を適正化しております。
次のページ、47ページのところでございますけれども、廃棄物の焼却だけではないのではないかということで、「処理」にさせていただいております。
それから少し飛んでいただきまして、50ページのところでございますけれども、イノベーションについて「需要を生み出し」という表現を入れております。
それから、その次のページ51ページ目のところで、「後れをとりつつあると認めざるを得ず」というところについて、「加速度的に進めることで同時解決を実現していく必要がある」というふうな表現にさせていただいております。
また、そこの脚注でございますけれども、データ関係については一国全体として見た場合というものであるというような脚注を加えさせていただいております。
その下の3のところの表題については、あらゆる施策について「有効なあらゆる施策」とさせていただいておりますし、その下のところ、あらゆる政策への織り込みについても「関連する多領域への織り込み」というふうにさせていただいております。また、「良好な環境」についても、「存続の基盤である環境」というふうな形にさせていただいております。
めくっていただきまして、53ページでございますけれども、「エネルギー政策へのインプット」については、「緊密に連携し」という形にさせていただいております。
また、その下(2)でございますけれども、主要な施策の方向性として、「柔軟性と実効性をあわせ持つ形で進めていくことが望ましい」という形にさせていただいております。
53ページの下のほう、カーボンプライシングの意義については、ご意見を踏まえて表現を直させていただいております。
その次のページ、54ページでございますけれども、温室効果ガスの排出を削減する観点からは、炭素排出量に比例した価格付けをすることが最適とされているということについて、OECDの記載から引用をしております。また、暗示的な価格について、これが進んでいたら石炭火力の新増設が相次ぐという現状にはならないんではないかという指摘もあったので、それを記載しております。
次のページ、55ページでございますけれども、イノベーションを阻害するという指摘もなされておりますので、記載をしております。
また、その55ページの真ん中辺りでございますけれども、温室効果ガス排出量の際に影響を与える可能性があるものとして、各国における違いなどというのを上げておりまして、脚注などでも、それぞれ、こちらのほうでわかる範囲で分析をしたものを記載をしております。
また、次のページでございますけれども、炭素生産性を伸ばさないといけないということについては記載を加えております。
そのページの下のほう、「なお」というところにつきましては、これは場所の移動でございまして、後ろのほうに持ってきたので削っております。
それから、次のページ、57ページのところですけれども、より安いものも求めているというようなご指摘もありましたので、「より安いではなく」というところについて削らせていただいております。
それから、その次のページでございますけれども、96番の脚注でございますけれども、無形資産についてもデータベースの維持管理など比較的排出量が多いものもあるのではないかというご指摘をいただいておりますので、それを記載をしております。
59ページのところについては、かなり色が塗られているんですけれども、その下のほうにあった記述を上のほうに持ってきているというものと、それに加えて、ご意見を踏まえた記載を加えているものでございます。
それから、その下のほう、59ページの下のほう、「なお」ということで、それ以外にいただいているご意見について記載を加えているものでございます。
それから60ページの真ん中辺りよりちょっと下ぐらいですけれども、サプライチェーンについて、すぐに取り入れることができないこともあるのではないかという指摘をいただいておりますので、当面どうするか、将来的にそういうことが考えられるということ。それから、脚注でも関連する制度との整合性も含めた対応の必要性について記述しております。
めくっていただきまして63ページでございますけれども、全ての主体による自主的な取組について、企業の取組、それから地方公共団体の重要性についてご指摘をいただいているので加えております。
また63ページの下のほうで、教育・人材育成・市民参加について、価値観ですとかライフスタイル、ワークスタイルについて、新たな需要を生んで、それがイノベーションにつながるというご指摘をいただいておりますので記載をしております。
また64ページでございますけれども、人々の理解度、行動が重要である旨記載をしております。
65ページのところですけれども、海外の削減について、我が国の技術的な強みを見える化することの重要性について、ご意見を踏まえて記載を加えております。
次のページ、66ページのところですけれども、進捗管理のところにつきまして、「進捗管理」にかえて「着実な取組の推進」ということにさせていただいておりまして、カーボンバジェットの存在を踏まえつつ、累積で削減していくということが重要だというような記述に全体としてさせていただいております。
それから、最後、69ページのところに、「おわりに」というのもつけ加えておりまして、アラン・ケイの言葉なども引きながら記述をさせていただいております。
こういう形で案にさせていただいておりますけれども、第1回目のご意見も踏まえまして、この案にさせていただいております。また、あわせて資料の3、4の概要、それから参考資料についても必要な修正を加えております。これらについては技術的な理由から変更履歴は残しておりませんけれども、本文の修正に対応した修正、その他必要な修正を加えているものでございます。
説明については、以上でございます。

○浅野委員長
どうもありがとうございました。
それでは、ただいま案についての事務局の説明いただきましたので、これについてご意見をいただきたいと思います。早目に席を立たなくていはならないという事前の通告を受けておりましたので、まず、髙村委員に、ご発言をいただきます。

○髙村委員
ありがとうございます。申し訳ありません、今日、学生の学位審査の報告をしなければいけませんで、この後すぐ帰らないといけないもので、先に退席をさせていただきます。
まず、ヒアリングや、あるいは小委員会の議論を受けて、いろんな意見があるのをうまくといいましょうか、苦労してまとめていただいているというふうに思っておりまして、もちろん細かな言葉の使い方とか、こうしたらいいんじゃないかと思うところがないわけではありませんけれども、私自身は、基本的にこれ了としたいというふうに思っております。ただ、もし、退席しちゃいますので、この後、議論の中で大きな文言なり書きぶりの変更がある場合には、委員長のご判断に一任をしたいというふうに思います。
とはいえ、三つほど申し上げたいところがございます。
若干細かいところから大きなところまでありますが、一つは、細かなほうから参りますけれども、13ページのところの注の17です。これを書く必要があるかどうかというの、パリ協定の条文の解釈といいますか理解の上で必要があるのかどうかというふうに思っているからなんですけれども、つまり、パリ協定本文に含まれてはいませんけれど、当然、出したNDCというのは本文のところにありますように、それを達成するための国内措置を遂行する義務というのは明確に定められているわけで、これは交渉の過程からも、どこに目標が書かれているかということが重要ではなくて、本文で、どのような義務の規定ぶりがされているかが重要であるという議論がされてきたという理解をしております。
そういう意味では、17の注というのは、本文に含まれていないというのは事実でありますし、各国が決定して更新・提出する構図となっているのは間違いないんですけれども、それ自身が何らかの法的な意味合いが変わると思わないものですから、この点がどういう、付する意味がないのではないかというふうに思っております。
もし、どうしても付す必要があるということでしたら、今、申し上げました、いずれにしても提出をしたNDCの目的を達成するために国内訴訟を遂行する義務があるということを、もう一度確認をする文言を付すのが、法的な理解としては正しいと思っております。
二つ目でありますけれども、経団連さんから、今日、出していただいた意見のところで、カーボンバジェットのところです。これ、前回も議論があった点だと思いますけれども、書いてくださっているように、私自身も、硬直な進捗管理を行うという趣旨で、ここで議論をしている長期のビジョンではないというふうに思っています。これは、冒頭の「はじめに」という、いわゆるこのビジョンの位置づけのところにもそういう趣旨で書かれていると思いますし、進捗管理、後半のところでもそういう趣旨になっていると思っているんですけれども、ただ、一つ、やはり明確に本文のカーボンバジェットの記載のところ、必要だと思っていますのは、決して科学に照らしても、パリ協定の合意に照らしても、排出そのものに不確実性が、その幅があるからといって上限がないかのような書きぶりをしないほうがいいというふうに思います。
カーボンバジェットの意味というのは、多分、そこを表現するのに使われているというふうに理解をしていまして、カーボンバジェットが決め打ちで何トンというのは、これは誰も多分考えていないと思いますが、繰り返しになりますけれども、排出そのものに上限がないかのような、ある意味で、理解をしてしまうような表現ぶりをある意味ではきちんと正すという意味のカーボンバジェットという言葉を使っている趣旨だというふうに思っておりますので、この点は、私は、本文は明確にそれを維持していただいたほうがいいと思います。決め打ちのカーボンバジェットのトン数は書かれていないというふうに理解をしています。
最後でありますけれども、ちょっと中身について、言わないと言いながら、二つ申し上げてしまいましたが、ちょっとフォワードルッキングな観点から一つ申し上げたいと思っております。
今回、長期ビジョン、いろんな議論がある中でも、何とか形にしてきて、昨日の総合政策部会でも、やはり社会が変わっていくのに、あるいは、低炭素技術がきちんと市場化されていくためのインフラがつくられるためにも、クリアな長期ビジョンが必要だということを何人かの委員、経済界の委員も含めておっしゃっていたというふうに思っております。
その意味で、この長期ビジョンは非常に重要な意味を持っていると思います。特にエネルギーインフラとか交通インフラのように、転換に必要な時間が長いものについては、長期のビジョンというのが非常に重要だというふうに思います。
ただ、やはりまだクリアでないところですとか、あるいは、意見が分かれている、つまり、課題ははっきりしているけど、そこをどうタックルするかという方法については、意見が分かれているところがあるのは間違いありませんので、2020年の期限より十分先駆けてという、伊勢志摩サミットの合意がありますけれども、長期の戦略に向けてどういう手だてをとっていくかということについては、今後の課題としてきちんと検討いただきたいと。
もし、今、お答えがあればいただきたいところでありますが、そのために、ぜひ検討いただきたいと思いますのは、特に中で意見が分かれているもの、つまり、課題はあるけれども、どこをどうたどり着くかというところの意見が分かれているものについては、個別具体的に検討を深めていくことが必要ではないかと。
もう一つは、これは荻本先生がずっと何回もおっしゃっていますが、やはり全体としてのロードマップをつくる作業というのは、少しずつでも始めたほうがいいんではないかというふうに思います。
それが最後、前向きな発言で終わりたいと思います。以上です。

○浅野委員長
どうもありがとうございました。
それでは、ご発言をご希望の方は、名札をお立ていただけますでしょうか。
よろしゅうございますか。つまりは全員ですね。わかりました。
それでは、前回は左側からお願いいたしましたので、今日は大塚委員からお願いいたします。

○大塚委員
はい。どうもありがとうございます。
非常に力のこもった報告書というか、になっておりまして、基本的に私もこれでいいと思っておりまして、関係者の方々のご努力に敬意を表したいと思っています。
この中に、特に、いろんな点がありますけども、やはりカーボンバジェットを打ち出して、それから道筋を示していくと。で、累積排出量をとにかく重視するというところが打ち出されたというところが、一つの大きな特徴かなと思いますし、もう一つは、カーボンプライシングについてかなり書き込んであるというところも、積極的に評価したいと思っています。
カーボンプライシングについては、どうしても温暖化対策にはお金がかかるということがありますので、社会的費用が少ない形で、効率的に社会を誘導していくということが非常に重要になってまいりますので、長期的な視点から非常に、このカーボンプライシングが重要だというふうに考えられるわけでございますし、さらに、低炭素に投資をすると、いわゆる、いわば約束された市場という書き方がされていますが、をすることによって、現在、我が国で投資が少なくなっているというところの問題を同時に解決するという点でも、非常に注目されると考えています。
1点だけ、ちょっと問題かなと思うところがありますので、それについて指摘させていただきますが、37ページの注の65でございます。この汚染者負担原則について、本文でお書きになっていただいていることに関しては、前回、私が発言させていただいたところでもございますし、大変よかったというふうに思っているわけですけども、汚染者負担原則について、環境基本法の中でも、37条という条文があることはあるんですけれども、37条という条文は、行政法学上の原因者負担について規定しているだけでございまして、これは、公害防止事業費事業者負担法のような汚染者負担を考えているわけですけれども、OECDで言っているものに近いような、いわゆる汚染者負担原則は、むしろ8条の1項とか、21条の1項とか、22条の2項とかに書いてあることが関連しますので、もし条文を書くのであれば、そういうのも書いていただければありがたいということと、それから、注の65については、これは何か消費者が汚染者だというようなことが書いてあるんですけれども、温室効果ガスの排出は、環境負荷の排出になりますので、まさに公害と同じように、汚染であるCO2を排出しているところの方が汚染者ということになりますので、消費者が汚染者ということになると、これは、例えば海外に売ると、海外の人が汚染者ということになるのかもしれませんが、そういう話はちょっと聞いたことがないので、ちょっとここは、注の65の文は、学問的にちょっとどうかというところがあるかと思うので、その扱いについてはお任せしたいと思いますけれども、ちょっとこれが残っていると、この文章全体の価値がどうなるのかなというような心配もありますので、一言申し上げておきたいということでございます。
以上でございます。

○浅野委員長
ありがとうございました。
大野委員、どうぞ。

○大野委員
私も、3点、4点申し上げたいと思うんですけども、まず一つは、大塚先生と共通するんですが、やっぱり今回の報告書で、カーボンバジェットの考え方が明確に書かれたというのは非常によかったんじゃないかなというふうに思います。
これまでの気候変動対策の議論の中では、ややもすると将来の革新的技術の導入を待って、それから対策をとったほうがコスト的にいいんだというふうな議論もありましたけども、そうではなくて、累積の排出量、累積の削減が大事なんだということになりますので、やはり既存の技術、使えるものから導入をしていって、早く大幅な削減を進めるということの重要性が明確になりますので、そういうような意味でもカーボンバジェットの考え方をしっかりと書かれたということは、非常によかったんじゃないかなと思います。
それから、2点目は、それとの関連ですけども、そこから出てくるのは、やっぱりそのカーボンバジェットがあるわけですから、その有限な排出枠を、大量に、しかも無料に、ただで出していいわけはないということになるので、そういう文脈でも、カーボンプライシングについて早期に制度の検討を始めるべきであるということが入ったのも、非常によかったんじゃないかなと思います。
そこに関連して、ちょっとこれは編集上のミスかなという気もするのですが、1点だけあれすると、55ページの第1段落の最後に、「他方で、企業の研究開発の原資を奪い、イノベーションを阻害するとの指摘があったということに留意が必要だ」と書いてあるんですけども、59ページの一番下にも、同じ趣旨の文章があるんですよね。ですから、ここはちょっと、2回、これを、一部の委員の方の意見を書くのは必要ないんじゃないかと思っていて、編集上の問題かなと思うんですけども、ここは一部の意見ということで統合されたほうがいいんじゃないかなというふうに思いました。
それから、以上2点はカーボンバジェットの話とプライシングの話はいいことなんですけども、もうちょっと、一つだけ、不十分じゃないかなと思う点があるので、それを最後に申し上げさせていただきたいと思います。
33ページなんですけども、33ページに、「国内対策に加え」というところで、「国内においては、特に、民生部門や運輸部門等では大幅削減の余地が大きく」云々という記述があります。もちろん、民生部門と運輸部門で非常に大きな削減の余地があるということは、私も全く異議はないんですけども、ここで、ほかの部門に比べて大きいというのは、ちょっと書き過ぎじゃないかなという気がいたします。
それに関連するんですけども、14ページに、これはそもそもの温室効果ガス排出量の推移を書かれている部分なんですが、これは間接排出の数字ですよね。これは、私、第1回のこの委員会でも申し上げて、委員長からも、これについては既に直接排出も書くようにしていますというお話をいただいたんですけども、ここでは相変わらず間接排出の数字だけを書いていると。こういうことをやるから、やっぱり、産業部門ではなくて家庭分野、業務部門が特に大きいみたいな勘違いが出ちゃうと思うんですよね。
やっぱりこの長期ビジョンが、さっき髙村委員からもあったように、今後の検討のいろいろな素材になっていく大事なものなので、もちろん、間接排出を書かれても結構なんですが、参考として事実が、意見の問題ではなくて、何がどうなっているかが明確にわかる上で、やっぱり直接排出の数字も入れるべきじゃないかと思います。
これは、資料集を見ても、16ページですけども、やはり間接排出しか書いていないと。これはやっぱり直接排出の数字を入れていただければ、エネ転部門で非常に大きな排出削減の余地があるということも明確になると思います。自然エネルギーについては、まだ日本では15%しか入っていない。ということは、逆に言えば、そこで大きな削減の余地がある。石炭火力がまだ3割ぐらいですか、発電をしていると。ガス火力についても、コンバインドサイクルになっていないのが、たしか半分ぐらいあるんじゃないでしょうか。
そう考えれば、やはりエネルギー転換分についても非常に大きな排出余地がありますので、一つは、だから、必ず直接排出のデータも入れることと、それから、33ページについては、少し表現を見直していただいたほうがいいんじゃないかなというふうに思いました。
それから、もう一点、最後に、37ページの注の65なんですけれども、これ、私も意見を申し上げようかどうしようと思っていたんですが、大塚先生がおっしゃったので、ちょっと加えて申し上げますと、もちろん、これ、一部の委員がこういうふうに言われたということはどうも事実らしいので、そういう表現は、それを指摘すればいいじゃないかという考え方もあると思うんですが、やはりそれにしても、「最終的な汚染者はそうした製品を使用する消費者と考えるべきで」というのは、ちょっとやっぱり、なかなか受け入れがたい表現じゃないかなというふうに思います。
もちろん、工業製品だけでなくて、あらゆる活動をすればエネルギーを使いますから、CO2が出ていくわけですけども、どの程度出るか、どういうふうに減らしていくかというのは、その企業の選択にかかっている部分ですよね。例えば、この委員会でも紹介されましたけども、もう既にRE100というふうに、使う電気は全部自然エネルギーに変えていこうという企業もどんどん現れてきているわけです。これはサービス産業だけではなくて、例えばアメリカでは、GMのような大手の自動車メーカー、まさに製造業の代表ですよね、ここもRE100、自然エネルギー100%にしていこうと言っているわけですよね。
ですから、商品をつくれば必ず排出が出るから、それは消費者のものだと、ちょっとやっぱりこれは、幾ら何でも言い過ぎというか、妥当ではないと思うので、この記述についてはご検討いただいたほうがいいんじゃないかなと思います。
以上、4点申し上げました。

○浅野委員長
ありがとうございました。
小木曽委員、どうぞ。

○小木曽委員
私から、4点ほど話をさせていただきます。
最初に、まず、「はじめに」と「おわりに」がきちんとありまして、これを読んでから中身を読むとわかりやすいなということで、非常にすばらしいなというふうに思うのが1点です。2番目です。将来像の絵姿をきっかけにしてこれから議論するというところで、特に経済・社会システムとライフスタイルのイノベーションということ自体にも言及したというのは、非常に画期的なことかなと、大きく評価をしたいなというふうに思っています。
そもそも、経済・社会が第四次産業革命と言われていますけれども、そもそも根底が変わってしまうので、従来の延長上から考えるということ自体が無駄になるので、その意味では非常に画期的な記述かなというふうに思います。
それと3点目です。「はじめに」のところにも、今後、プログラムをつくっていく上で参考にしてほしいというふうに書いてありまして、今後のプログラムの策定になっていくと思います。その観点からは、やはり平成28年5月13日、閣議決定で、「地球温暖化対策と経済成長を両立させながら」と書いているところがまさに重要で、今後とる対策が、その観点から本当にそういう意味をなしているのかどうかということは、やっぱり不断にきちんと詳細を見ていかなきゃいけないなと考えます。
その意味で、11ページの11という脚注は、恐らく全体の章にかかっているという意味で書かれていると思いますが、まさにそうだと思います。先ほど、カーボンプライシングの話も、やらないという選択肢も含めて、導入の仕方によっても大分影響の度合いというのが変わってくるので、子細にシミュレーションもしながら、影響がどれぐらいあるのかというのを分析した上で、具体的なメリデメを示した上で、国民的議論をする必要があるかなというふうに思っております。
最後は、4点目です。イノベーションのところについて非常に言及があって、まさにおっしゃるとおりで、我々の団体も、イノベーションを創出していくベンチャー企業が多いので、ベンチャー企業への言及もあったので、そのことについては期待に応えていきたいなというふうに思っている次第でございます。p16の脚注の22のところにも、「イノベーションや成長の余地が大きく」と書いてありますし、p48~50のところに、破壊的イノベーションのところが出てきておりまして、民間企業で投資先がないからもっと投資したらどうかという趣旨が書かれていますけれども、そのときに、やはり投資環境の整備という意味では、規制改革などの大胆な措置というのも非常に必要となってきます。例えば、今、政府で進めようとしていますが、レギュラトリー・サンドボックスとか、まさにイノベーション全体が起こりやすい国づくり、環境整備というのが、全体として非常に重要なので、その視点がまさに必要かなというふうに思っております。
最後、ライフスタイルのイノベーションということで、関連で付言させてください。COOL CHOICEのキャラクターを、新経済連盟の理事の会社つくることに協力をさせていただきましたが、君の未来と君の今ということで、今のライフスタイルと将来のライフスタイルを比較して、ライフスタイルを変革していくための行動を起こす活動に関与していくことになります。そういうことについても、経済団体としても、より一層協力させていただければと思います。
以上です。

○浅野委員長
ありがとうございました。
荻本委員、どうぞ。

○荻本委員
先ほど、私の名前も出していただけて、ありがたかったんですが、今回は、極めて観念的なところが多い報告書になったんだろうと思います。この段階ですので、それに何も問題は全然ないと思うんですけれども、やはり将来を見通したときには、そのロードマップを書くとか、できれば足し算をして100になるのかどうかということを具体的に考えるというところを、ぜひ、次の課題として認識していただくとよろしいかなと思います。
あとは、あまり大したことないんですけど、やはり観念的というところから出てくるんですけれども、非常にいろんな言葉が使われているような気がします。いろんな言葉の中には、市民権を持った言葉もあれば、新しい言葉もあるということで、最初の委員長のご説明で、「いわゆる」とか、事務局の説明でつけていただいているということは、非常によかったと思うんですが、まだまだ、なかなか、これは一体どういう意味かなというものがたくさんまじっているので、これを、今は修正しましょうということより、それが本来どういう意味を持っているのかということを、次の段階で考えていくということに捉えていただければよいのかなと思います。
ちょっと、この説明が観念的だと思いますので、例を出すと、このレポートの中に、「自立分散型エネルギーシステム」とか、「電源」という言葉が出てきます。「じりつ」というのには、「自分で立つ」という話と、「自分で律する」という、二つの意味があります。「じりつ」を「自分で立つ」というふうにすると、厳しく見ると、自立型のシステムというのは、ほかと縁を切ったシステムということになって、お家が自立しているということは、配電線につながっていないということを指します。それがいいのか悪いのかということではなくて、このレポートにそう書いてあることは、一体、そういう中の何を意味しているのかということを、合意するのか、お互いに理解していくというプロセスが、私は、とっても大切だと思います。
日本人にとって、漢字を二セットくっつけて四文字熟語にするのはとっても容易なことなので、どんどんどんどん長くなって、意味が、掛け算で包含されていくんですね。そうすると、思ってもみないような意味を持っていくということになります。
そのとき、一つは、前も申し上げたかもしれないんですが、便利なことは、英語にしようと努力すると、どうしても英語にできないことが時々出てきます。例えば、その「自立」というのを、「自分で立つ」というものを、無理やり英語にしようとすると、autonomousという言葉になります。autonomousという場合は、山のてっぺんか、小さい島で、まさに自立しているんだということがautonomousという言葉で使われているということが出てくると、我々が「自立」と呼ぶのは、一体何をもって「自立」と言えばいいのかなということが、考える材料になるんだろうと思います。
ということですので、ぜひ、非常に便利な日本語を持っている我々なんですが、時々調整不能に陥ることもありますので、次の段階では、そのターミノロジーというのをぜひ、少しずつ整備していくということがいいかなと思います。
あと、最後は、これはとってもいいレポートなので、PDFで見ると、左側に目次が出てこないんですね。一つの文章の固まりにしか見えなくて、左側に出ません。既にワードでつくってあるので、これを、アウトラインレベルをしおりにするというものでPDFにしていただくと、きれいに左側に出ますので、ぜひそれをやっていただきたい。
それをやろうとすると、実は、ここのドキュメントの中の一部の章というタイトルは絵で入っていて、一部は字で入っています。絵のほうは目次に出しにくいので、わかります。ということで、目次に出そうとすると、このレポートがどういう構造になっているかというのが非常にビジュアルになってきて、ちょっとこの構造を変えたほうがいいなというふうに、私、思うところはあったんですが、あえて申し上げませんので、そういう目次というものをオートで出してみて、みんな読みやすい目次になっているかなというのは、最後にチェックいただければいいと思います。
すみません、もう一つだけ。さっき、33ページでしたか、ちょっと議論があって、私、もう一回見てみたんですけれども、この(2)は、「国内対策に加え」という言葉が足してあって、今度の場合、がばっと10行ぐらい足されているんですけど、この内容に、私、特に削れというつもりは全然なくて、ここにあるのがいいのかというのを、目次から見たときにはどうかなということは感じました。なので、全体の流れを見ていただいて、もう一回ブラッシュアップするチャンスはあるかなと思います。
以上です。

○浅野委員長
ありがとうございました。
大分気をつけたのですが、どうしても霞ヶ関文学というのが支配的でありまして、極力努力をいたします。
崎田委員、どうぞ。

○崎田委員
ありがとうございます。前回、発言したことなどかなり入れていただいているんですが、今日、3点ほど発言をしたいというふうに思います。よろしくお願いします。
最初はすごく文言の小さい話なんですが、10ページのところで、温暖化による気候変動の影響ということが、いろいろ文章で入っておりまして、特に赤字でずっと10行ぐらい入っているところの最後から2行目のところで、「災害リスクの増大、水質の悪化、さくらの開花時期」ということで、そこまで災害の話が来ていて、突然、さくらの開花時期に来ているんですね。その中間に、やっぱり食料生産の変化による、いろいろ、農業とか、そういう自然を仕事にしている方たちの変化というのが大きくあるはずですし、感染症なども危機が増大して、2年ぐらい前には東京でも、そういうのの感染症が、デング熱があったわけですので、何かそういう食料生産の話とか、感染症の話とか、もうちょっと丁寧に入れておいたほうが、私たちの身近なところで起こっているんだということが、社会にも明確に伝わるんではないかなというふうに思いました。
次の点が、35ページのところに、ライフスタイルイノベーションということで出ています。私も、こういうところが非常に大事で、一人一人の暮らし方、仕事の仕方、そういうことの変化を起こしていくというところが非常に大きく影響すると思っておりますので、こういうふうに入れていただいていいんですが、読んでみて、ふっと思ったのは、例えば自然、森・川・里・海、本当に今、自然資本をしっかりとつくっていこうという動きがありますけれども、そういうところと、まちに住んでいる人が交流しながら、例えば新しい住まい方をつくっていくとか、そういう、例えば具体的な現実のイメージというのを思い起こしていても、どうもこの文章で見ると、観念的なこと、理念的なことが書いてあって、これで何を変化させようとイメージして伝えようとしているのかというのが、あんまり伝わってこないんですね。
ですから、今書いてある第1段、第2段落は、このままでいいとして、3段落目ぐらいに、こういう流れの中で私たちが、住まいと住まい方とか、やはり自然豊かな地域とまちの暮らしというか、いろんなところをちゃんと交流させながら、しっかりと交流させていくとか、何かそういうキーワードをもう少し入れてはいかがかというふうな思いがいたしました。
二地域居住みたいな、具体的なところまで入れるとイメージが強過ぎるということでわざと避けているのなら、もうちょっと、やはり、まちで暮らしている人も、そういう自然環境豊かなところの自然再生に関わるような新しい生き方とか、そういうこともできるような働き方ができるといいとか、何かいろんな書き方はあるんじゃないかと思います。
3番目に、最後の人材育成とか環境教育という辺りと、63ページのところ、かなり書き込んでいただいて、私は、もっと前のほうにしっかり出してほしいという話をしましたが、ちょっとそこまで動かすのは難しかったというご連絡もいただいて、いろいろご検討をいただいたというところなんですが、これを見ながら、この段落の次の64ページの最後のところも、「今後も継続的に、幅広く意見を聴きながら取組を進めていくことが重要である」というふうにあるんですが、今やはり環境学習、環境教育がなぜ必要かと。結局、主体的に動く人たちを大勢育てていただきながら、地域のいろいろな動きに参加をする人が増えて、いろいろな取組が、社会の多様な主体が連携して取り組むような形を起こしていくんだと思うんですね。
ですから、単に教育ということをやろうという話だけではなくて、その人たちが主体的に行動をして、例えば地域や社会の中で、市民や事業者、NGOなどが、多様な主体が連携しながら関わっていくような社会をつくっていく、そのためにこういう教育も参加、いろいろな研修も、こういうことが必要なんだという、もうちょっと膨らませて、しっかりと書き込んでいただいたほうがいいんじゃないかというふうに思います。
やはり、これからの社会の変革をつくっていくのは人なわけですので、人間力、そして、その連携の力とか、やはり今キーワードになっていることは、別にぶっつり切れるわけではないですので、そういうことをやはりしっかり強調していくのが大事なのではないかなとちょっと思いましたので、もう少しこの辺を考えていただいたらいいのではないかと思いました。よろしくお願いします。

○浅野委員長
ありがとうございました。
桜井委員、どうぞ。

○桜井委員
最初にお礼を申し上げたいと思うんですが、私、意見書を出して、何点か非常に重要な、私としては非常に重要だというふうに思っているところは、まず、ビジョン小委員会のこのまとめとしては、何としてでもやはり、前からも言っていますけども、理念と、そしてビジョンというものを、短い単語で結構ですけども、それを入れてほしいと。これが、要するに最終的な我々の役割であり、我々の目標であり、そして戦略の基本になる考え方なんだと、ここが明確にしてないと非常に、できる、できないの話になって、あれはおかしい、これはいいという話だけになって、何に基づいての話か、ここの起点というのをしっかりしようということで、ページ27に四角囲みで入れていただいたと。文章について、あるいは、こういう理念、ビジョンについての原点的なところというのは、議論の的にもなると思うんですが、もしご意見があればぜひ議論して、明確にすることが非常に大事だと思っています。改めて、御礼を申し上げたいと思います。
それから、次に、カーボンバジェットの件です。IPCC第5次報告書によれば産業革命以前に比べ気温上昇を2℃未満に抑えるためには、産業革命以降の累積炭酸ガス排出量を約3兆トン以下に抑える必要があり、既排出量約2兆トンを差し引けば残りは約一兆トンということになる。
これがカーボンバジェットであることはご承知のとおりだ。カーボンバジェットの信頼性も、対応策の選択に大きく影響することからも重要と思うが、IPCC第5次報告書の科学的知見に基づくカーボンバジェットを削減目標とする「温室効果ガス低排出発展戦略」明確にし、必要な革新的な経済・社会革新が求められていることも不可避の事実だ。
それから、カーボンプライシングの件です。これは55ページに、以下の様なことが述べられています。上から10行目ぐらいですか、「他方で、企業の研究開発の原資を奪い、イノベーションを阻害するとの指摘がなされている」ということですが、これは、ここに記されていても結構だと思うんですが、この意見というのはどうもよくわからない。要するに、カーボンプライシングによって必要な技術革新やノベーションに当てる費用や資金の先食いされてしまうという意味でしょう。
僕は、今たまっている資金、あるいは、これから集める資金の無駄遣いになるという感覚よりも全く反対で、カーボンプライシングは、それらの資金を有効に使うための方法であり制度であるんだと確信しています。我々企業が技術革新を起こしたり、新事業を起こしたりするときには、当然のことながら、投資が、資金が必要なわけですね。その資金を、今後の新しいニーズ、新しい社会の動き方、方向性に対して投資していこうと。ニーズの無い、予測できないものに投資は出来ません。その新しい方向性、新しいニーズというものを浮き彫りにするのがカーボンプライシングであるのです。カーボンプライスの目的や意味が理解されていないと、この制度による負の側面だけが抽出されてしまうことになります。
カーボンプライシングをもう一度、ちょっと一言、繰り返しますと、我々企業経営者というのは、今後の社会の動き方、そしてニーズの動き方というのを、懸命に調査・予測するわけですね。このCOP21で初めて明確化された、我々グローバルな社会が温室効果ガスの削減目標を決め、現実の経済・社会の大変革をもって低炭素社会・脱炭素社会の構築を目指そうという動きが明確になったんですから、そのためには経済社会のルールや制度を変えなければならない。その中心的存在が新しい価値基準を付加するカーボンプライシングであると。それによって新しい価値を付加した経済合理性の評価ができれば、私たちは益々低炭素化・脱炭素化への投資の促進を図り、技術革新、社会革新を促進させることになるでしょうね。
この「留意が必要である」というのは要らないんじゃないかというふうに私は思うんです。
それから、次に、「バックキャスト」についてというのが、ずっと探していると、全然ないですね。私が見つけられないのかもしれません。前回までのまとめ編には、あったと思うんですが。
COP21で世界各国が合意した野心的、歴史的パリ協定の求める低炭素・脱炭素社会の実現は単なる技術革新のみならず、資源・エネルギーの変革、産業構造の変革、政治・行政の変革、ライフスタイルの変革、価値観の変革、経済社会の制度や構造やシステムの変革などなど、国際社会では通常化し常識(当たり前)となった価値観や制度の大変革への挑戦開始宣言でもある。
この大挑戦は、一に、従来から継続して続く総排出量の増加から一転して減少へ転換しようとするもの。二に、経済成長の維持と削減との同時実現(デカップリング)しようとするものそして、三に挑戦(または脱炭素目標)は不可避であることを肝に命じておかねばならない。したがって、削減戦略や実施計画は、現在を起点とした何ができるかの積み上げるフォワードキャストと、将来(ゴール)を起点として現在何をすべきか具体化するバックキャストの融合計画が必要となろう。

○浅野委員長
ありがとうございました。
末吉委員、どうぞ。

○末吉委員
どうもありがとうございます。幾つか申し上げたいと思います。
まず一つ目は、今回のビジョンの名前ですけど、「長期低炭素ビジョン」とあるんですけど、本当は、「長期脱炭素ビジョン」じゃないかなと思うんですけども。
まず、それを申し上げた上で、幾つかなんですけど、例えば、10ページ目に、温暖化のもたらす経済的被害として、GDPの数字が、シティのが出ているんですけども、これはこれで結構なんですけど、もう少しいろんな数字を入れないと、あまりこのインパクトが伝わらないんじゃないかと。
例えば、このシティのあれでいくと、2.5℃シナリオと4.5℃では、被害が増えるのが28兆ドルですよね。これ、25年間で28兆ドル、被害が増えるということは、1年に1兆ドルの損失です。これが本当にインパクトの大きさを表しているのかとすると、「何だ、1年に1兆ドルぐらいか」なんて思う人がいるかもしれません。というのは、カーボンバブル、この「カーボンバブル」という言葉が、この中でミッシングのように思いますけれども、いろんな試算を見ていると、20兆ドル~30兆ドルぐらいのカーボンバブル、座礁資産が発生するという試算があります。こういった数字を見ると、やっぱり局所的にも、物すごい被害が発生するんだと、そういったことも少しバランスよく、幾つかの数字を重ねたほうがいいような気がします。
それから、11ページ、脚注に、「幾らでもコストをかけていいわけではない」ということ、それは確かにそうなんでしょうけども、温暖化問題で、我々が一番ベースに置かなければいけないのは、温暖化の被害を最小限にするためには必要なコストは払うんだ、そういう覚悟が始まったということではないでしょうか。
ですから、必要なコストは払うというのは、私は、ノーチョイスになってきたんだと。ただし、どういうコストの払い方がより賢いのか、より少ないコストで済むのか、その選択が始まったんだということではないでしょうか。コストをかける、かけないの選択は、もうないんじゃないでしょうか。それが、パリ協定がいうゼロエミッションの方向性なのではないでしょうか。
ですから、多くの方が言うとおり、早くやるほうが、やっぱり安いんだと、そういったような基本的な物のコストに対する考え方を、高いからやめるというふうにもとれるような言い方は、私は、適切ではないと思います。
それから、ページ3と4のところなんですけれども、これ、簡単にここの要約をしますと、世界の潮流は、「約束された市場」の創出が始まっていると。その「約束された市場」は、成長戦略に直結する。だから日本も、その約束された成長戦略の競争に入るんだと書いてあります。と読めます。
私は、これはこれで正しいと思いますけども、ただ、一方、ページ16の、「約束された市場」の定義、これ、脚注ですよね。いわゆる「約束された市場」の定義なんですけども、私なりに読むと、これは、一つの市場が生まれるという定義のように思います。それが定義だと言えばそれまでなんですけども、とすれば、やはり「約束された市場」では、これから起き得る変化はカバーし切れてないんじゃないかと。一つの投資市場の話にすぎないんじゃないでしょうか。
私の見方では、今、起きていることは、例えば産業構造の大転換が始まるということですよね。あるいは、ビジネス慣行がどんどんどんどん修正されて変わっていくと。180度転換を始める。金融のあり方も大きく見直しがされるし、もちろん消費者もどんどんどんどん変わっていくんだと。つまりこれは、OECDが言っている経済モデルの、経済そのもののあり方、それの大きな転換が始まっている、というのが今の状況じゃないでしょうか。とすれば、「約束された市場」、ここで言うような定義は、その中の、私は、一部にしかすぎないような気がします。
単純に行けば、今ある産業やビジネスや消費者のあり方のストックが大きく入れかわるという作業だって、非常に大きいインパクトがあるんだと思うんですね。新しいアディショナルなプラスアルファのマーケットが生まれる、それも非常に重要なんですけども、と同時に、今、経済の大宗を占めている部分のストック部分の見直しをしなきゃいけないんだと思うんです。例えば銀行で行けば、日本が、今、商業銀行が四百数十兆円、お金を貸していますけども、そのローンが一体どこに行っているんだと。今のままの出し手で、使い手でいいんでしょうか、という見直しが始まるんだろうと思います。
ですから、非常に大きな意味での変化なわけですから、私は、世界の潮流をもっと広く見て、それであるがゆえに、日本は全体で本当に何をしていかなきゃいけないのか。これは金融だけでもない、ビジネスだけでもない、社会だけでもない、政治だけでもない、全体が統合して取り組まなきゃいけない、非常に大きな作業が待っているんだと、そういったことがやはり、私は、出てくる必要があるのではないかと思います。ですから、そういったことに日本はどういう覚悟で臨むべきなのかとか、そういったことがもう少しあったほうがいい。
一つだけ言いますと、盛んに言葉として使われるSDGsを本当に実践するとしたら、一つの試算によると、2030年までに90兆ドルの資金が必要だというわけですよ。年間5兆ドル~7兆ドルです。とすれば、そのSDGsを実践する日本は、この90兆ドルのどれぐらいを負担するつもりでいるんだと。逆に言うと、ビジネスチャンスですよね。投資なわけですから。例えばそういったこともちゃんと議論するようなベースを持ったビジョンで、私は、あってほしいなと思います。これが本当に日本が、今始まっている国際競争に勝っていく、最初の重要なステップじゃないかなと思います。
それから、最後になんですけれども、「はじめに」と「おわりに」、大変すばらしいものを書いていただいて、正直言って、私も非常に安心しておりますけれども、それを申し上げた上で、一つだけ追加で申し上げたいのは、このビジョンを一体誰が責任を持って実行していくのか、実践していくのか。あるいは、日本の社会をリードして、ガイドして、あるいは叱咤激励していくのか。このビジョンの実行の主体をもう少しビジョンの中で、こういったふうにやるべきではないのか、ビジョンの実践に当たって、こういう具合にすべきじゃないのかといったところを、もう少しつけ加えていただけると、このビジョンの中身がもっともっと日本の社会の中に生きてきて、反映されていくと。ですから、道筋の検討が重要ということを書いてあるんですけど、じゃあ誰がその道筋をつくって、誰がやるんだというようなところが、非常に重要ではないかと思います。
いずれにしましても、こういう貴重な議論の場に参加させていただいて、大変感謝しております。ありがとうございます。

○浅野委員長
ありがとうございました。
手塚委員、どうぞ。

○手塚委員
ありがとうございます。
さまざまな意見が出ている、この委員会の中で、それを適宜酌み取っていただきまして、本文ないしは脚注も含めて、いろいろと展開していただきまして、全体的にまとまったものにしていただきまして、事務局の皆様の労多しと、感謝いたします。
先ほど来から、一部の脚注の部分とか本文の記述とかで、これはちょっと気に食わないとかいう議論が出ているんですが、この委員会の私の理解は、外部ヒアリングを行って、そのQAを行っていますけども、ここに来ている各委員の間での議論というのは、特にこの委員会の場ではなされていませんので、それぞれの考え方をこの場で開陳し、それを事務局が酌み取っていただいて、こういう最終的なビジョンとしてまとめ上げていいただいたわけでして、そういう意味で、両論併記も含めてつくられているものだというふうに考えますので、いろいろご批判が出るのも当然なのかなと思います。
逆に言うと、そういう両論があるということを含めた形でのビジョンが、大きな方向として示されているというふうに理解しているんですけども、ただ、1点だけ、37ページの脚注65についてですが、これは、何回か前の委員会で私が申し上げた点なんですけれども、これについて、ちょっと追加のコメントをさせていただきますと、これは、書かれている場所が、「環境政策の原則の観点」という項目の中にこれが書かれてしまっているんで、大変大きな誤解を生んでいるんじゃないかと思います。私から究極的な汚染者は消費者ではないかということを申し上げたのは、カーボンプライシングの議論をしている場でございまして、つまり、カーボンプライスというのは、炭素消費に対して価格をつけることによって、その消費を抑制していくという制度でして、それであるがゆえに有効であるという議論の中で、例えば企業が汚染者としてカーボンプライスをかけられて、その活動に制約がかかったとしても、最終製品に価格が転嫁されていかないと、最終的な消費者の行動変化にはつながらないわけです。企業は利益が落ちて、消費者は行動が変わらないという現象が起きるんじゃないですかと指摘させていただいたわけです。実際、消費者自身が車を運転したり、石油ストーブをたいたり、冷凍食品を食べたりと、こういうことでカーボンを排出するという行為を行っているのだと思いますけれども、そういう意味で、最終的にコンサンプションベースで見たときに、その消費行動をどう変えるかというところまで議論しないと、この温暖化対策、あるいはCO2削減ということにつながっていかないんではないかという、そういう観点でこれを申し上げたつもりだったんですね。
そういう意味では、ここに書かれていることが、ちょっと誤解を生んでいるのかもしれないと思いまして、同じような記述が、例えば「カーボンプライシングのあり方」みたいなところに記載されるほうが適切だったのかもしれないなと思いました。
以下、このとりまとめ全体に対するコメントを幾つか述べさせていただきたいと思います。
最初に、カーボンバジェットに関する議論、これは髙村先生が先ほどもおっしゃっていただいているんですけども、2℃に抑えるために累積排出量に上限があるということは確かだと思います。ただ、それが、1兆トンなのか、何トンなのかということに関しては、必ずしも科学的なコンセンサスは、IPCCを含めて、存在していないというのが私の理解でございます。といいますのも、この1兆トンのカーボンバジェットの計算というのは、IPCCの第5次報告書の中で想定されている、気候感度1.5℃~4.5℃という中で、最適推計値が、コンセンサスが得られなかった結果、第4次報告書に戻りまして、66%の推計値で2.0~4.5℃の範囲に気候感度が存在するという、ここから出してきている数字だというふうに認識しております。
そうしますと、実は本当の意味で、この気候感度がどうあるべきかということに関する、あるいはその確率分布がどうなっているかという合意は、科学者の間ではコンセンサスが得られていませんので、1兆トンにこだわるということは適切ではないわけです。先ほど、髙村先生も、絶対的な数値にはまだまだ不確実性があるとおっしゃっていましたけれども、そのとおりだと思います。
そういう意味で、記述の中で、科学の要請に基づいて、世界のカーボンバジェット1兆トンの中で日本の対策を自己規定して、総量管理した上で対策を強化していく、場合によっては、バックキャスト的に強化していくという考え方は、ちょっと行き過ぎではないかとおもいます。累積排出量に上限があるということを参考にしつつ、対策を強化していくということぐらいにとどめたほうがいいじゃないかというふうに思います。
それから、それと関連してなんですけれども、環境政策の予防原則、36ページだと思いますけども、ここでも、1兆トンのカーボンバジェットを仮定して、さらにこれが66%で2℃を達成するための限界であるというようなことを前提に、我が国の温暖化対策を強化していくということと、国民の環境保全上の支障が未然に防がれるように対策するということをつなげようとすると、なかなか無理があるんじゃないのかと思います。といいますのも、実際にそれを、仮に世界が共有したとしましても、各国がこれをどういうふうに実施していくかということには、政治的な不確実性がさらに上乗せされるわけでございまして、そういう観点で、どういう確率で我が国国民の環境保全上の支障を未然に防ぐことにつながるかということに関しては、非常に慎重な検討を要するんじゃないかと思います。
一言で言いますと、温暖化対策はグローバルな課題でございますので、国内法の枠の中だけで、国民の環境保全上の支障を未然に防ぐことは難しい、不可能だということですので、この予防原則とあわせまして、国際的な協調と同調の中でバランスをとった国内対策の強化を図っていくということが必要だという観点に行き着くのではないかというふうに思いました。
それから、53ページ~60ページに、カーボンプライスに関して、非常に多くのページを割いて論考を展開していただいておりますけども、この中で、59ページに、できるだけ早く、早期に効果あるカーボンプライスを導入することが期待されると書かれております。一方で、54ページ辺りでは、暗示的な炭素価格の存在、あるいは実効炭素価格といった概念が紹介されているんですけども、現実に我が国には、エネルギー諸課税、あるいは省エネ法等のさまざまな暗示的な炭素価格制度が既に存在しているわけでして、その件についても、一部記述がなされております。また、税率が小さいとはいいましても、平成24年から、地球温暖化対策税も既に導入されているわけですね。そうしますと、早期に導入することを期待する以前に、まず、既にある明示的、あるいは暗示的炭素価格が、我が国の温室効果ガスの排出削減、あるいは省エネ投資、あるいはエネルギー効率化等に、どのような効果をもたらしてきているのか、あるいはもたらさなかったのかということを評価するのが先ではないかと思います。また、それを今後上乗せ強化するときに、どのような限界的な効果の上乗せにつながるのかについても分析が必要です。また、国際的な比較のもとで産業競争力を維持するためのイコールフッティング、あるいはレベルプレイングフィールドといったものの確保が可能なのかといったことを、きちんと定量的に分析・評価した上で、導入・強化の是非を慎重に議論するべきだというふうに考えております。
地球温暖化対策税の効果につきましては、参考資料の151ページに書かれているんですけれども、これは、以前の委員会でも指摘しましたけども、この費用対効果の数字に関しましては、ここに書かれている数字と、資源エネルギー庁が省エネ小委員会で出された数字に大きな乖離がございまして、必ずしも政府の中できちんと統一された評価がなされているとは見受けられません。そういう意味で、きちんとカーボンプライスによる価格効果、あるいは財源効果を含めた定量的な評価を行うことが、拙速な導入議論よりも先に来るのが、論理的には筋ではないかと思います。
それから、カーボンプライスは、経済理論的には正しいと思うんですけども、あくまで、全てのセクターに共通に賦課され、市場内で自然調整が図られる場合に、それが有効に機能するわけです。また、交易のある経済圏全体で、同水準のカーボンプライスが導入された場合に、有効に機能する話だと思われます。そういう意味で、EUのエミッション・トレーディング・スキームなどは、域内の交易が6割に達していますので、それなりに機能することが期待されると思いますけども、現実の世界では、今申し上げたような条件が必ずしも満たされないために、期待された効果が発現していないケースが多い、あるいは、理論的に期待された費用効果を失っているというようなことが、IPCCの第5次報告書、ワーキンググループ3、第15章に縷々指摘されております。IPCCの科学の要請に従うということを原則としますと、こうした科学的評価も真摯に受け止めて、慎重な検討をしていただくことを期待したいと思います。
日本の交易はアジアと北米が7割を占めておりまして、仮にカーボンプライシングを導入、強化するということであれば、こうしたアジア、北米地域とのレベルプレイングフィールドを確保することを前提とした水準にする、そういうことでないと、我が国の産業競争力が棄損するだけではなくて、カーボンリーケージをもたらして、地球規模の排出増加につながりかねず、我が国国民の環境保全上の支障を未然に防ぐことにつながらないのではないかというふうに危惧いたします。
次に、54ページ、56ページ辺りに、炭素生産性に関するさまざまな分析、指摘がなされております。参考資料のほうにも幾つかこういうものがグラフで描かれていますけども、参考資料に出ている文言を引用しますと、実効炭素価格が高い国は炭素生産性が高く、1人当たり排出量も少ない傾向にある、というふうになっているんですけども、これは、2012年度の単年度の各国の炭素価格と生産性の相関図を示して、こういう記述がなされているというふうに理解しています。ここは、相関関係があることは見えましても、因果関係が必ずしもあるということは指摘できないんだろうと思われます。
実際に因果関係があるかどうかということを見ようとしますと、炭素価格が導入された、あるいは強化された後の炭素生産性の改善率を各国で比較、あるいは見ていくという必要が出てくると思いますけども、この資料等で優等生とされています北欧諸国等の炭素税が導入されたのは90年以降なんですけども、90年~2014年までの実効炭素価格と炭素生産性の改善率の間には、全く相関が見られません。また、EUで排出権取引が導入された2005年以後に、2014年までの、同じ炭素生産性の改善率を見ますと、これも実効炭素価格との間で相関は見られません。つまり、炭素価格を導入したから炭素生産性が改善したのではなくて、何か別の理由でもって炭素生産性が改善したということが示唆されるわけでございます。
そうしますと、今後、日本が大幅に炭素生産性を上げていかなければならないということは事実だと思いますけども、そうすると、こういった国々でどういった要因で改善がなされてきたのかということを、精査・分析することが非常に重要なテーマであり、これもカーボンプライス導入に慎重な検討が必要なテーマの一つかと思います。
最後に、この報告書で、気候変動問題への対処をきっかけとした、社会・経済問題の同時解決を図っていくということが記述されております。これは、非常にすばらしい概念だと思いますし、現実に我が国が抱えている問題いろいろある中で、この気候変動対策と同時に解決が図れれば最も理想的な姿だろうと思います。ここが強調されていることは非常に高く評価したいと思いますが、一方で、気候変動対策という条件がなくても、この社会経済問題、少子高齢化、地方過疎化、経済の低迷といった問題は大きなチャレンジなわけでして、温暖化対策という複雑な課題をさらに上乗せして同時解決を図るのは、極めて大きなチャレンジになるだろうというふうに認識いたします。場合によっては、この幾つかの課題の間でトレードオフの関係が生じる懸念もありまして、例えばカーボンプライシングの強化が無理な温暖化対策の強化ということになってしまいますと、生活コストが増えてしまい、あるいは失業を招き、経済再生の足を引っ張るだけではなくて、福祉財源を奪ってしまったり、何よりも本ビジョンが冒頭で述べられている将来世代を守るという点に関して、そもそもその将来世代が生まれてこなくなるという悪循環に陥りかねないと思います。ここで提言されている同時解決を実現するためには、現状を大きく上回るような革新的な省エネ技術の開発・普及、あるいは化石燃料よりも安価で安定供給可能な低炭素エネルギー創生技術が必要になるわけなんですけれども、残念ながら我々はいまだそうした技術を持ち合わせてはいないと思います。現実に、低炭素エネルギーがいまだ高コストであるということは53ページ以後でカーボンプライスが必要であるということが記述されていることからも、本ビジョンの中では共有されていると思いますけども、そういう意味で同時解決を可能とする革新的な創エネ・省エネ技術、あるいは社会運営、消費行動を含めましたイノベーションを一刻も早く起こすこと、これが大きな政策的な課題だと思いますし、いまだ高コストな技術を未熟な段階で無理に政策的に導入して社会に負担をかける、あるいはFIT制度のように長期にわたってそのコストを固定化する、ロックインするといったような政策はあまりとるべきではないんじゃないかというふうに思う次第でございます。そういう意味で、この概要版のほうで5ページにわたってイノベーションに関わる紹介がなされているといことは、方向性としては非常に正しいと思っておりますけども、この概要版のほうでもカーボンプライシングが方向性として重要ということが書かれていますけども、これについては有効性、必要性に関して、あるいは限界的な効果に関して慎重に検討を進めるという記述にしていただくか、あるいは注記として異論もあるということも併記していただきたいというふうに考える次第でございます。
私からは以上です。

○浅野委員長
ありがとうございました。
根本委員、どうぞ。

○根本委員
ただいまの手塚委員の意見と重なる部分もありますが、そこはできるだけ省略させていただきます。
案文作成に当たりまして、さまざまな意見を取り入れていただきましたことに、まず感謝を申し上げます。ただ、さらに反映していただきたい点がございますので、経団連から、意見書という形で、前の素案に対するコメントを資料としてお配りしております。七つに論点を絞っておりますが、本日提示された案に沿って、さらに修正いただきたい点を、コメントさせていただきたいと思います。
第1は、これまで再三申し上げ、手塚委員からも今ご指摘ございました、「環境と経済」の両立です。これが大前提と考えていますので、同時解決という文言で27ページに記入いただきましたことを評価したいと思っております。ただ、細かい点になりますが、その同じ項目の第2段落で「指摘があるものの」とつなげてしまっています。やはり両論あるので、「指摘がある」というところで文章を一旦切って、「そもそも」を「また」にかえて、二つの考え方があるということを、はっきり出していただきたいと思っております。
それから、16ページを初め、先ほどから幾つかコメントが出ておりますが、やはりこの「約束された市場」という言葉が気になります。「いわば」という言葉を加筆したり、補足説明を脚注に入れたりしていただいておりますが、市場規模の拡大が約束されているというイメージがやはり強過ぎ、ビジネスの観点からは非常に違和感を覚えます。「約束された市場」という言葉を使うのであれば、こうした観点からの意見もあったということを、ぜひ記載していただきたいと思います。
2点目は、カーボンバジェットです。これは、経済成長あるいはエネルギー安全保障といったものを考慮しない考え方であり、パリ協定の交渉においても合意を得られていない事柄であると理解しております。12ページの1行目で「残された1兆トン」云々と書かれておりますが、書くのであれば、国際交渉において合意が得られていないという事実、それから、これを使うことに対する私どもの懸念を併記いただきたい。8ページ、36ページ、66ページも同様な記述がございますので、それぞれの箇所で同様に併記をいただきたいと考えております。特に66ページの「大幅削減に向けた着実な取組の推進」という部分については、1兆トンを所与とした議論を展開しています。累積排出量の抑制は当然のことですので、カーボンバジェットをここで言わなくてもいいと思います。カーボンバジェットの文言は削除したらいかがかと思っております。
67ページ、第3段落ですが、「80%削減を目指すに当たっては」云々というところで、「試算や検証を行う」とありますが、このビジョンで提示された絵姿というのは2050年80%を所与としながらも、残念ながら2050年時点の日本のGDPがどうなるのか、産業構造がどうなるのか、その際の産業連関はどうなっているのか、あるいは電源構成はどうなるのかというような具体的な絵姿は示されませんでした。したがって、そういう検証はできない状況ですので、この部分の記載は削除したほうがいいと考えます。
それから、脚注の112で、これまで私どもが発言した内容を記載していただきありがたいと思う一方、二つの異なる考え方が連続して書かれている形になっています。112と113のような形で脚注を分けて書いていただくとありがたいと思います。
第3点目のグローバルな貢献の重要性につきましては、表現を改めていただき感謝申し上げます。温暖化は地球大の話なので、日本として省エネ・低炭素型の技術・製品・サービスを国内外に展開していくという考え方を、やはりビジョンの中心に据えるべきと考えております。
4点目は、長期目標の位置づけです。「はじめに」で、具体的な施策をボトムアップで積み上げて算定し、国連に登録した2030年度目標との違いについて書き分けていただいたことに対して感謝を申し上げたいと思います。「はじめに」のほか、5ページの第3段落とか、8ページの第3段落においても、字数の制限もあろうかと思いますので、性格が異なるということが分かるよう、表現を工夫していただけるとありがたいと思います。英語が本当に正しいのかどうかわかりませんが、ターゲットやゴールという言葉もあります。ただし、日本語にするとニュアンスが変わってしまうので、こうした言葉が適切かどうかはわかりませんが、端的に書き分ける工夫をさらに追求していただけるとありがたいと思います。この書き分けにつきましては、概要版、あるいは一番最初に出てくる枠囲いの中でもきちっと書き分けることが必要だろうと考えます。このビジョンが世の中に出たときは、概要版と最初のところしか読んでいただけないこともございますので、ぜひそういう部分でも明確な書き分けをお願いしたいと思います。
次に、5点目です。2050年の絵姿で、マクロの産業構造等が示されていないと申し上げました。定量的にマクロの絵姿が描けていない中で、45ページの4のエネルギー需給の項目に、唐突に「低炭素電源9割」という言葉が出てくると、数字だけがひとり歩きすることを強く懸念しております。なぜ低炭素電源が9割なのか、その内訳や、コスト、実現可能性はどうなのかといった、さまざまな論点の検討が必要であり、前提なしにいきなり9割というのは、やはり書くべきではないと考えます。
それから、非化石電源である原子力につきまして、45ページに5文字記載されているだけで、ほかに一切の記述がございません。閣議決定された地球温暖化対策計画でも、「安全性が確認された原子力発電の活用」という項目の中で、安全性が確認された原子力発電所の再稼働を進める方針が明記されておりますので、このビジョンにおきましても、温対計画と同様、原子力についての記述を追記すべきだと考えております。
それから、46ページ、中段の「化石燃料消費」の節で、「最終エネルギー消費の多くは電力によってまかなわれ」云々と書いてありますが、マクロの議論ができていない中で、「一部の産業や運輸」という表現はあまり適切ではないと思っております。「化石燃料は必要な分野で使用されている」といった表現の修正が必要になるのではないかと考えます。
6点目は、イノベーションです。これについては、やはりイノベーションのための環境整備が必要だろうと思っております。大幅削減における、イノベーションの重要性については、強調してもし過ぎることはないと考えておりますので、規制改革や政府研究開発投資の拡充など、そのための環境整備が重要と考えます。
61ページに、規制的手法では、規制がイノベーションを促すという記述がございますけれども、むしろ経済活動にブレーキをかけるような環境規制は技術革新を阻害するという考え方も記載していただきたいと考えております。
7点目は、カーボンプライシングです。これまでも様々ご議論が出ている論点ですが、我々の懸念についてさまざまな箇所で併記いただいたことには感謝を申し上げます。
54ページの最後の段落に、「経済学的には、炭素排出量に比例した価格付けをすることが最適」とあり、これはOECDの論文からの引用との注記もあるわけですが、標準的なミクロ経済学の考え方は、負の外部費用を適切に内部化することは望ましいということです。現在のところ、CO21トンの排出が地球全体にどれぐらいのコストをかけているのか、定量的なコンセンサスはございません。そうした中で、炭素排出量に比例した価格付けを行ったとしても、適切な負の外部費用の内部化ができなければ、結果として社会全体にとって最適な均衡も実現されません。そのため、「経済学的には」と言うには、論理的に飛躍があると考えます。単にカーボンプライシングには、明示的なもの、暗示的なものがあるという事実だけを中立的に記載してはどうかと考えます。
55ページから56ページに、「国内外におけるカーボンプライシングの動向とその効果」という節で、排出量取引制度についての東京都の事例の紹介があります。先ほど手塚委員からもご指摘がありましたけれども、EUあるいは韓国におきまして、取引市場が適切に機能していない事実も当然併記すべきと考えています。
55ページの下から3行目、「実効炭素価格が高い国の炭素生産性が高く」という記述があります。この部分、手塚委員から大分詳しい説明もありましたが、別の分析を行ってみると、相関が見られないという結果も出てきていますので、そういう全く別の研究成果もあるということを少なくとも記載をすべきと思っております。本来的には、この部分を削除するのがいいと思っておりますけれども、もし書くのであれば、きちっとそういう別の研究成果もあるということを書いていただきたいと思います。
それから、59ページの第2段落から第3段落に、カーボンプライシングについて、できるだけ早期の導入が期待されるとか、導入の是非をめぐる議論に終始するのではなく、というような書きぶりがあります。しかし、ここでの「カーボンプライシング」は、具体的な定義がないまま書かれており、また、残念ながら、カーボンプライシングの是非をめぐる議論というのも、この場であまりされていないと理解をしています。極めてセンシティブな問題であり、カーボンプライシングの導入を前提とした議論に、軽々に私どもとしては賛成することはできないということを申し上げたいと思います。閣議決定された地球温暖化対策計画においても、排出量取引は「慎重な検討を行う」とされています。浅野先生の言葉をかりれば、霞ヶ関文学で「慎重な検討」といったときの意味合いを、我々はこれまでも十分に承知しているところであり、閣議決定を踏まえた検討がなされることを私としては期待しています。これが書かれるということであれば、一部員の指摘であるということと、反対意見もあるということを書いていただきたいと思っております。
59ページの最後の段落で、反対意見を書いていただいたことに感謝します。冒頭の「なお、」は削除し、前段の意見と並列して書いていただいたほうが宜しいかと思います。
今後、政府として長期低排出発展戦略を検討していく際にも、いろいろ考えるべき論点があります。今回あるいは過去に私ども申し上げた点は、ぜひ反映していただきたいと思っております。
それから、先ほど申し上げましたが、なかなか世の中では、概要版や本文の要旨の部分しか読んでいただけないということもありますので、本文の脚注等々で、いろいろ工夫はいただいておりますが、概要版でも、ぜひ工夫をお願いしたいと思います。
最後に1点だけ追加で申し上げます。本文の40ページ「建物・暮らし」のところで、「我が国全体のストック平均でもゼロエミッションに近づいている」という表現がございます。この分野は、私は住宅政策も担当しているので、非常に気になります。ぜひ国土交通省と調整をいただければと思います。
以上です。

○浅野委員長
ありがとうございました。
廣江委員、どうぞ。

○廣江委員
ありがとうございます。2点申し上げます。
まず、1点目は、エネルギーミックスに関する今後の議論についての私どものお願いでございます。まず、本日のこのビジョンの案の40ページは、電源構成の検討が必要であるという記載がございましたし、さらに、53ページでは、温暖化政策を進めるに当たっては、エネルギー政策との緊密な連携が必要と、こういった追記をしていただきました。この点につきましては心から感謝を申し上げる次第でございます。ただ、80%削減の社会の絵姿という中に、先ほど根本委員からもご指摘がありましたが、低炭素電源90%というような記載がございますが、これにつきましては、この場でも詳細な議論をしたわけではございません。これはあくまでも仮に置かれた数字だろうというふうに認識をしております。したがいまして、まさにここの、先ほどの40ページの脚注にございますように、今後この電源構成等々につきましては、詳細な議論をどこかの場でしなければならないというふうに思いますが、その際には、やはりエネルギーという食料と並んで安定した国民生活にはなくてはならないものでございますので、もちろんビジョンや夢というのも大事ではございますけど、やはり現実的な、例えば再生可能エネルギーのコスト、あるいはその安定性とか、さらにはCCSの実現可能性といったところについては慎重に見極める必要があるだろうと思ってます。
一方、これも以前から申し上げてますが、原子力につきましては、今後とも、私ども精一杯延々と安全性向上の努力、これを続けていかないといけないとは思っておりますが、その上で申せば、やはり現在、私どもが手にしている経済性・安定性あるいは環境特性といった面では、全て特性を持った電源でございます。ぜひこのリプレイスあるいは新増設についても議論を深めていただきたいというふうに希望する次第でございます。
なお、石炭火力発電でございますが、これはご承知のように、供給の安定性あるいはLNGコストの低廉化という観点から、2030年のエネルギーミックスでは明確に原子力や再生可能エネルギー、あるいはLNGとともに位置づけられているところでございます。したがいまして、その高効率化というのは非常に大事でございますので、少なくともそのためにこの現時点における新たな建設ということにつきましては、これは十分に視野に入れておく必要があると思っております。低炭素化はもちろん大事でございますが、やはりそのエネルギーのコストの低廉化とか、あるいは安定供給、これは我が国の永遠の課題でございます。したがいまして、2050年のしっかりとしたエネルギーミックスがない段階で、直ちに石炭火力発電を否定するということは慎むべきではないかと考える次第でございます。
2点目は、カーボンプライシングについてでございます。もうこの辺につきましては、先ほど手塚委員、あるいは根本委員から詳細なご議論がございましたので、改めて重複をすることは避けますが、やはり私ども非常に問題も大きいというふうに考えておりますので、先ほども少し議論がございましたが、59ページから60ページのこの点につきましては、ぜひこの記載は残しておくべきだと思いますし、さらに申せば、参考の部分にございます、各国における排出量取引についての課題等も、むしろこれは本文のほうに記載をするべきではないかと考える次第でございます。
以上でございます。ありがとうございました。

○浅野委員長
ありがとうございました。
増井委員、どうぞ。

○増井委員
ありがとうございます。私も3点ございます。
1点目は、「はじめに」ということで全体の取りまとめというのを記載していただきまして、本当にありがとうございます。ただ、このビジョンというのが、誰に対するものなのかというところ辺りをもう少し明確にしてもいいのかなと考えています。桜井委員のほうから、冒頭、バックキャストがないというコメントもありましたけれども、やはり2050年、あるいはさらにその先からのバックキャスト、あるいはトランジションというものが必要になってくる。そのためには政府にだけ任せていていいというものでは決してなくて、消費者、企業あるいは政府も含めて、あらゆる主体がこのトランジションを実現していくことが必要であり、その具体的な内容としてイノベーションというようなものを追求していくという、そういう流れになっていくかと思いますので、ぜひトランジションが必要である、あるいはバックキャストという将来の明確な目標に向け、その目標やビジョンというようなものを実現していく必要があるんだということを明確に記述していただければと思っております。それが1点目でございます。
2点目は、それに関してカーボンバジェットということについて、これまでも議論がありましたけれども、先ほど手塚委員のほうからカーボンバジェットについて、その科学的なコンセンサスが得られていないというようなご発言もございましたが、そうではなくて、IPCCのAR5、第5次評価報告書のワーキンググループ1、第1作業部会の中で、本文でもそうですし、Summary for Policymakersあるいは技術的な要約、そういったところでも明確に示されております。もちろん数字そのもの、1兆トンかどうかという、そこの数字の正確性というところ、不確実性というところはもちろんまだまだ科学的に見て分析すべきところではありますけれども、全体の方向性として、科学的にはきちんとコンセンサスが得られているといえます。コンセンサスが得られていなければ、多分こういうIPCCの報告書の中でも取り上げられなかったであろうと思いますので、そこまでは、科学的なコンセンサスが得られていないというところまでは言い過ぎではないかなと思っております。また、実際、パリ協定の中には、こういうカーボンバジェットという文言は取り上げられていないわけなんですけれども、最終的に今世紀後半には排出量を正味ゼロにしていくということが明記されて、それが共有されているという、そういう事実からいきますと、カーボンバジェットでの考え方、取り上げられているような考え方というのが、十分このパリ協定の中にも反映されているのではないかなと思います。だから、そういう意味で大きな方向性、カーボンバジェットに関する大きな方向性というのは十分共有されているだろうと、反映されているだろうと言ってもいいのではないかなと思いますので、もちろんその数字そのものの正確性というところについては、若干問題はあるかもしれないですけれども、その議論の考え方の中心として、冒頭申し上げました、トランジションあるいはバックキャストの目標として捉えたときに、一つこういう考え方は重要であって、それに向けていろいろ変えていくところを変えていかないといけないといったところは明記しておいてもいいのではないかと思っております。
3点目がカーボンプライシングに関するところなんですけれども、そういうバックキャストあるいはトランジション、そういうことを実現していく上で、あらゆる主体が行動を変えていかないといけない。そういう行動を変えていく一つの手法として、やはりこのカーボンプライシングという手法というのは極めて重要であろうと私自身も認識しておりますので、そういう意味で、ここで記載されているということは非常に有効ではないかな、重要ではないかなと考えております。そういう意味で、そのカーボンプライシングの位置づけ等、特に消費者に対して行動を変えていく、見える化していく、そういった役割というものも、カーボンプライシングにはあるかと認識しておりますので、そういった点も含めて、カーボンプライシング全体の重要性ということをもう少し強調していただいてもいいのではと思っております。
以上です。

○浅野委員長
ありがとうございました。
諸富委員、どうぞ。

○諸富委員
ありがとうございます。大変すばらしい形でまとめていただいたと思います。趣旨に関しては、もう特に私のほうから言うべきことはないんですが、イノベーションという言葉が何度も現れてきますように、イノベーションを起こしていく、そして、そのCO2を減らすだけではなくて、日本の経済自体を発展へ導いていくという点では、大方の合意が得られる内容かというふうに思います。そういう意味では、まず1点目はエネルギーですけれども、やはり日本の場合には、福島第一原発事故がございましたし、原発依存をやはり低減させながらどうやって、特に石炭火力を減らしていくかという、この狭いパスを通って省エネ・再エネを拡大していくというような方策をどうやってとっていくかということは非常に重要な課題だというふうに思うんですが、また困難な課題でもあるんですが、やはり、その点ではドイツの再生可能エネルギー政策という成功例がございますので、これについて多くの誤報があったわけですけれども、2014年のFIT法改正によりまして、コストの低減からある程度もう目処をつけまして、成功へ導こうという姿がほぼ見えてきたというふうに思います。そういう意味では、2023年にも賦課金トータルの負担がピークを打って、2023年以降は減少に向かうということがほぼ見えてきておりますし、それから、2025年には、現在のケイコウエコトスゲンのドイツにおいては太陽光もグリッドパリティに到達をすると、既存電源よりもコストが安くなってくる領域に入っていくし、また、陸上風力は既に、既存の陸上風力ですね、もうグリッドパリティに到達をしているということから見て、再生可能エネルギーというのは、もはやコストの面で他の既存電源よりもコスト高であるという、この発言も先ほどからございましたが、これについては現時点で見るのか動態的に見るのかということで、観点がやはり変わってくるかと思います。現在、我々が議論しているような中長期のスパンで見ると、やはり再生可能エネルギーというのは明らかにコストの面から見て有利であるということを認識する必要があるのではないかなというふうに思います。しかも2040年までとりますと、現在さまざまな研究、ドイツにおける研究を明らかにしてきておりますように、トータルで見ても現状のまま再生可能エネルギーを増やさないでいくよりも、再生可能エネルギーを大幅拡大するほうが結局はエネルギーコストは減少するというシミュレーション結果が複数出てきております。こういった形で、現時点のコスト、あるいは産業競争力に及ぼす影響ということを議論するのか、中長期のイノベーションも含めた、コスト削減も含めた経済影響で議論するのかということで、随分と絵姿は変わってくるのかというふうに思います。同じ観点はCO2の削減、炭素の問題でも同様のことがやはり言えるのではないかなというふうに思います。そういう意味では、例えば、これは桜井委員もご指摘されましたが、イノベーションを起こす観点でカーボンプライシングというものが本文の55ページに、資金を奪うんだと、研究開発のための資金あるいは投資の資金を奪うという批判が、留意しなければいけないということで書き込まれたわけですけれども、こういった事例が本当にあるのかどうか。私もいろんなアカデミックな研究を見ておりますが、カーボンプライシングが実際に原資を奪ってイノベーションを阻害したというような実証研究事例を示した論文というものに残念ながら当たっていないわけなんですね。こちらの証拠は本当にあるんでしょうかというのが、ちょっと私のここの文章に対する疑問であります。逆にカーボンプライシングがイノベーションを引き起こしてきたということを示す多数の実証研究が存在しておりまして、そういう意味では、ここの記述については桜井委員と同様、疑問符をつけたいというふうに考えております。
それから、カーボンプライシングが実際に炭素生産性を引き上げることに成功してきているのか否かに関して、しっかりした実証的な検証が必要であるということは全くそのとおりかというふうに思います。そういう意味では、ここにあるデータをさらに活用して検証を進めていかなければいけないと思うんですが、後ろの参考資料集のほうの最後の末尾に、さまざまな国のカーボンプライシングの導入時点とその後の推移ですね、GDPとCO2の排出量、あるいはエネルギー使用量・消費量に関する時系列的な推移がありますけれども、ざっと見たところ、やはりカーボンプライシング導入以降、GDPは上昇しているけれども、CO2の減少、エネルギー消費量の減少がやはり進行していると。これに対してどの程度カーボンプライシングが寄与したかというのは確かに実証的に確かめなければいけないところですが、もうカーボンプライシングを導入以後、やはり炭素生産性は上昇する方向にいずれの国も向かっているように見えます。そういう意味では、この点もう少し定量的にはっきりしたことを、今後さらに確かめていくということが、こういった議論、経済にとっても、それからCO2の削減にとってもカーボンプライシングが積極的に貢献をできるんだということを示す道になるかというふうに思います。
以上でございます。

○浅野委員長
どうもありがとうございました。
一当たりご意見をいただきましたが、さらに最初のほうにご発言を下さった方で、追加的なご発言ございますか。よろしゅうございましょうか。
はい、大塚委員、どうぞ。

○大塚委員
増井委員と諸富委員にいろいろお話いただいたので、私もそれに賛同していますが、先ほどちょっと申し上げた注の65のところは、ここではないところに移動するということは多分合意が得られたんじゃないかという気はしましたが、一言ちょっと申し上げておきますと、その価格転嫁をして、それが消費者のほうに、すみません、汚染者がカーボンプライシングで負担をして、それが価格転嫁をしないと消費者につながらないという問題というのは、いろんなところで議論はなくはないんですけども、これは経済学者と一緒に議論させていただいたことがございますが、それは、そういうのは価格転嫁をしていると言うんだというのが経済学者のおっしゃることではあるんですけども、いろんなケースが個々には確かにあり得ないわけではないと思いますが、全体として見ると、価格転嫁は結果的にはしていくというのがカーボンプライシングの基本的な考え方ですので、ちょっと経済学的な話を私がここでしてしまって恐縮ですが、そういうところも踏まえながら書いていただければというふうに思っております。
それから、幾つか議論が出ていましたけれども、これは前から私が申し上げていることではあるわけですけれども、この36ページ、37ページぐらいの辺りのお話というのは、カーボンバジェットを考えながら日本は3%はとにかく出しているので、その点については少なくとも責任を負うという考え方が背後にあるだろうと思いますが、先進国であるということはもちろんございますので、その点については、さらに考慮する必要もあるわけですけれども、やるべきことは少なくともやっていくということが非常に重要だと思っています。グローバル化していることは事実ですけども、グローバル化している場合には、海外で展開されている企業は海外でそれぞれ規制を受けられるとか、対応されるということになると思いますけども、国内については国内で考えていくということが非常に、日本の責任分は日本が果たすということは少なくとも非常に重要ではないかと思っています。
あと、石炭火力については、2050年についてのエネルギーミックスがはっきりしないというようなご指摘もございましたが、今まさに新増設されるものが2050年まで残っていくということが問題なので、そこのロックインがまさに大問題ですので、その点については気をつける必要があるということを申し上げておきたいと思います。
以上でございます。

○浅野委員長
末吉委員、どうぞ。失礼いたしました、先に名札が挙がってました。大野委員、どうぞ。

○大野委員
低炭素電源の話なんですけども、9割、確かにこの場ではあんまり議論をしてないので、あんまりこの場では議論しないという整理なのかなという理解をしているんですけども、一つは、80%削減ということを目標にしているわけですよね。温室効果ガス全体で80%削減ということを目標にしている以上は、電源については9割といわず、全てをやはり低炭素電源にしていかなければ実現しないんだと思うんです。そういう意味で、9割というのはある意味、同一の主要なものとして書かれているんじゃないかなという理解をいたしました。
それから、原子力についても確かに5文字しか書いてないという話が、確かに5文字しか書いてないと思うんですけども、もしこれについて記述を、先ほど廣江委員からもご発言がございましたけれども、何かを記述するのであれば、原子力発電については、最近では全くもう低コストとは言えないということは国際的な事例で明らかだと思うんです。東芝の事例もそうですけども、やはり建設費の高騰によっていろいろな経営問題を起こしている。日本だけじゃなくて、フランスを見ても、ETFについてもそうだと。これはもう高コストということは、この間のヒアリングの中でも何かの先生がおっしゃったと思いますけども、もし原子力について記述をするのであれば、そういうことについても、高コスト化が進んでいくことについても記述をすべきだというふうに考えます。

○浅野委員長
荻本委員、どうぞ。

○荻本委員
今の話題なんですけれども、ずっと聞いていて、やはり90%低炭素電源が可能であるかどうかということは、やっぱりちゃんと検討するしかないということだろうと思うんですね。私は、この場というのは、いろんな数字書いてあるけど、しょせん検証してないよねというふうに思って、一応全部スキップしました。で、次にやるときには、ぜひそこをちゃんと議論していただきたいと。自分でも議論したいと思っています。ここで申し上げたいことは、そのときによく起こるのは、検討の手法が適切なものはないからとか、外国の人がこれを使っているからとか、そういうやり方について極めて残念なことが起こりがちです。ですから、誰が使っているか、いいか悪いかではなくて、自分たちが自分たちの将来を見通すために必要十分な機能を持ったものを使って、かつ必要なデータを投入して、で、大切なのは、そういう道具が予言してくれるわけではなくて、我々自身がそれで議論を交わせるというようなものをやっぱり目指していただきたいかなと。そうしないと、やっぱり恐らく国民が見てて「何だ、あれは」というぐらいで終わってしまうと思います。例えば、今は妙な、非常に高いフィードインタリフのもとで、幾らバッテリーを置いてもペイする風力発電所ができたり、非常にいびつなものができています。この延長線上では何もない。もともと再生可能エネルギーだけで解決する問題ではないし、変動する再生可能エネルギーであるとすれば、電源だけではなくて、どうやってバランスをとるのかというところまでが大切だということを、ぜひその、これはもう工学的な、もっと言えばオームの法則ぐらいの話なんで物理法則まで行っても正しい話ですから、そこをフランクに議論できるようにやっぱりするんだというのが次にあるということにぜひしていただきたいと思います。妙なファイナンシャルなブームに踊るわけでもなく、自分たちの2050年の姿をどう考えるんだろうということだと思います。

○浅野委員長
末吉委員、どうぞ。

○末吉委員
ありがとうございます。2点申し上げたいと思いますが、こういったことを議論するときに大事な点は、価値判断の座標軸がどう変わったのか、あるいは価値観がどう変わったのか、大きな方向性がどう変わったのかということじゃないでしょうか。例えばカーボンバジェットで言えば、今まで無制限だったわけですよね。幾ら出そうが誰も何とも言いませんでした。でも今、無制限には出せなくなったと。しかも上限があるんだと。それはかなり低い上限になってきたんだと。そういう変化に対して、我々がどう対応するかですよね。1兆トンがいいのか、1.5兆トンだから悪いのか、0.5兆トンだからいいのかということではなくて、相当の厳しい制約が史上初めて生まれたんだと。我々は、カーボンのもう無制限に出す時代から大幅な制約の中で生きていく、そういう時代に大きく転換したんだと、こういったことをどう受け止めて、そのことを我々のこれからの10年、20年、30年、50年の国の政策、社会のあり方に反映させていくのか、そういう議論が大事ですよね。ですから、石炭火力発電所が、48基じゃなくて47基だからいいんじゃないのって、そんな話じゃないでしょ。石炭火力発電所そのものが、これから世界においてこういう時代の中にどういう位置づけになるのかですよね。ですから、いずれだめになるものに、今一生懸命やる必要が本当にあるんでしょうか。だって、その間に失われる機会コストというのをもっと考えましょうよ。今、我々が将来性があまりないものに、いろんな意味で取り組んでいく、そのことが我々が本来今やるべきことの何の機会コストを生じているのかですよね。そのことが私は非常に大きなコストに、日本になるような気がしてなりません。
それから、今、我々が取り組もうとしているのは、新しい制度や新しいものを取り入れようということですから、新しい制度そのものに完全性を本当に求めていいんでしょうか。それは逆説的に申し上げますと、今、我々がこの社会の中で使っているいろんな社会のシステム、単純にいけば、株式市場の制度でもいいですし、企業会計原則でもいいです。でも、それは本当に100%完全無比なものなんでしょうか。今だっていっぱい問題が起きてるじゃないですか。株式市場でいろんなフロードが起きて、じゃあ、そのことをとって、今の株式市場だめだからやめろという意見が出てきますか。そうではなくて、株式市場の持っているよさを今我々は、それを大事に思って使おう。でも、その持っている欠点については、少しでもいいから減らしていこうという努力をするわけですよ。そういうことをして、我々の今、生活が成り立っているわけ。とすると、新しくこれから本当に必要なものを入れていこうとするときに、その制度の持つ未完なところにだけ注目をして、そんなのおかしいじゃないか、あるいは先進的にそのことを覚悟して取り組んでいる人たちの小さなミスだけを取り込んできて、全体を壊すような議論というのは本当にしていいんでしょうか。全ての制度は、よさがあると同時に悪さがありますよ。悪さを持たない、よき制度ってないと思います。でも、その今必要なものは、このよさだから、その制度をみんなで取り入れようじゃないか。そのためにはどうしたらよりよくなるんだろうか、そういうようなことが社会の中で普通に行われている、あるいはそういうことをしていかなきゃいけないんだと思うんですね。ですから、ぜひそういったことでこれからの2050年、あるいは21世紀後半に向けて議論をしていかないと、まさに長期ビジョンであるから、もう本当に1年前のことが今は全くひっくり返っていることが現実でしょう。そういう大きな変化がある中で、あんまり今の足元だけを見たような議論をしていると、本当に私は大きな方向性の誤りが出てきそうな気がしてなりません。
以上です。

○浅野委員長
廣江委員、どうぞ。

○廣江委員
先ほど大野委員から原子力発電が本当に低コストなのかという議論がありました。確かに、今回東芝さんがああいうことがアメリカで起こった。これはもう事実だと思います、まだ詳細はわかっていませんが。確かに、それからフランスの電力会社がフィンランドで建設をしている炉についても結構コストがかかっているという事実、これはあると思います。ここについてしっかりと分析する必要は私どもはあると思っていますが、ご承知のように、2年前のエネルギーミックスのときには、この議論を、この辺も一応、東芝の議論はもちろん起こっていませんでしたが、過去の我が国の、つい最近まで我が国の場合には新設の原子炉を持っていましたので、そういった事実も踏まえ、さらに安全対策費も入れて10円強というような数字が出たところであります。繰り返しになりますが、今回のアメリカの例、あるいはヨーロッパの例というのは、ちゃんとこれは分析をし、必要なものは本当に日本でも起こり得るという可能性があるならば、これはもちろん反映すべきだと思いますけども、あの事例をもって直ちに原子力が高コストになったというのは、これはもうかなり議論の飛躍がある。私が直感的に申せば、アメリカの例というのは非常にアメリカ的な特別な要因があるんだろうと思っていますけど、これも含めてしっかりと議論をした上でこの結論を出すべきであって、今、あの事例だけをもって高コストであるというのはあまりにも議論が飛躍しているというふうに感じます。
以上でございます。

○浅野委員長
手塚委員、どうぞ。

○手塚委員

先ほど、日本の企業が炭素価格、カーボンプライシングでもって研究開発の原資を奪われている論文は1本もないというお話だったんですけど、多分、研究対象としてあまりおもしろくないので、そういうことは研究されて発表されている学者の先生がおられないんじゃないかと思うんですけれども、事実だけ申し上げます。記憶にある数字だけなので、申し訳ないんですけども、正確じゃないかもしれませんが、例えば日本鉄鋼連盟の会員会社は、京都議定書の第一約束期間の間に、その目標達成のために、海外の京都クレジット1,000億円以上を購入しております。最終的には、それがリーマンショック等で生産量が落ちたというようなこともあって、必要なくなったのですけども、この1,000億のお金というのは、現在、我々が多分、年間省エネ投資等で行われている、総投資額に匹敵するような規模の金額だと思われますので、そういう制度がなければ、別なものに使われていた可能性はあったのだろうなというふうに思います。この場で急に出てきたお話なので、あまり裏づけのある数字とかを因果関係とかまではご説明できないのですけども。
あんまり暗い話ばっかりしていても何なので、現実問題を少しちょっとご紹介したいと思うんですけども、先週、私は、日本、インドの鉄鋼関係の技術協力の会議でインドに行っていたんですが、インドの鉄鋼省の局長さんから、インドは2025年までの発展計画の中で、太陽光パネルを大量に入れるということを発表しているんですが、一方で、高炉法による粗鋼生産を今の1億トンから3億トンに伸ばすということも国家目標として掲げているということをおっしゃってるんですね。2億トン粗鋼生産が増えるということは、CO2排出量で言うと4億トン近く増える。つまり日本の総排水量の40%ぐらいが新規にインドの鉄鋼業からだけで出てくるということが、インドの国家目標として入っているというふうにおっしゃっていました。我々ができることは何かということをいろいろ模索しているわけなんですけども、国内での対策で、今2030年までに鉄鋼連盟として掲げています削減目標は、BAUから900万トン下げるということになっています。今ある技術、プラス革新的な技術を最大限導入してできる2030年の目標だというふうな形でお示ししているんですけども、このインドで増える4億トンを10%、省エネ技術で改善するだけで4,000万トン減るわけですよ。そういうことが我々のなすべき使命だと考えて、過去6年間、私がたまたまその座長をやっているんですけども、インドの鉄鋼業に対して、どうやったらその10%の省エネができるか、CO2排出削減ができるかという、さまざまな技術のメニューを提示して、彼らも納得した上で、ぜひそういうものを導入しようという話まで、やっとこぎつけているわけですね。こういうことを積み上げていくことこそが、地球温暖化問題を抑止していく一番大きな、我々のできる貢献ではないかというふうに考えております。そういう意味で、この長期ビジョンの中で、技術のイノベーション、あるいは普及、それも国内だけではなくて、世界への普及ということをいろいろ書かれているのは我々としては非常に心強く思いますし、ぜひそういう方向での活動も、今後とも日本政府に支援していただきたいというふうに考えておる次第でございます。

○浅野委員長
はい。
諸富委員は、ご発言、ご希望ですか。

○諸富委員
先に、いいんですか。

○浅野委員長
どうぞ。

○諸富委員
手塚委員、お答えいただきありがとうございました。CERで1,000億円ということなんですが、じゃあ、仮にその1,000億円が払われなかった、下がらなくてよかったからといって、そっくりそのまま研究開発に向かったかどうかという点も含めて検証がやはり必要かというふうに思います。実際、今回の報告書の中でも各所で、例えば22ページの2段落目といいますかね、これは内閣府の経済財政報告を引用しながら、やっぱり企業の内部留保は必要に積み上がって、過去20年間ぐらい一貫して内部留保が右肩上がりで増加をし続けているわけですよね。それから、28ページには、1の節の2段落目ですかね、企業が保有する現預金が増加し続けていると。それから、その最後に50ページにも同様に、イノベーションの創出には原資が必要だけれども、近年の企業の投資行動を見ていると、現預金比率が高まる中で設備投資・キャッシュフロー比率は低下傾向を続けている、つまり投資が行われていない、現預金が積み上がっている。ということは、仮にその1,000億円払わなくてよかったとしても、イノベーションに向かっているのか、投資に向かっているのかということは過去20年間のやはり企業の投資行動を見たときに、そのままでは向かわなかったのではないのかと。これに対して、やはりここずっと行われているカーボンバジェットの議論、あるいはカーボンプライシングの議論というのは、やはり国内にどういうふうにして投資、そして、研究開発投資を促していくかという観点で、インドへの投資も大事なんですけれども、そのナショナルインタレストとしての経済成長ということを考えると、どうやって国内投資を活性化させ、経済成長させていくのかということは、国民経済としてやはり考えざるを得ないのではないかと。そういうことを考えると温室効果ガスを減らすことができ、なおかつそのイノベーションを生み出すことができる、こういったある種の転轍手としての役割としてのカーボンバジェットの考え方、あるいはカーボンプライシングという手段、これは非常に重要なものではないかなというふうに考えております。
以上です。

○浅野委員長
どうもありがとうございました。今ごろになって、だんだん議論が盛り上がってきていまして、これからまた一年ぐらいこの議論をやることになるのもちょっと困るわけでございます。もう時間がもうだんだんなくなってまいりました。
どうぞ一言ですね。桜井委員。

○桜井委員
今の議論でね、いや、僕がさっき言いたかったのは、カーボンプライスがつくから、要するに税あるいは取引価格で余分にお金がかかるというところが、このシステムの狙いであって、目的で、ね。そして、だからみんな、消費者も企業もそれを減らそうと、要するに価格を払うというのを減らそうということが低炭素化を進める意識になって、それで、その技術開発に、技術革新にどんどんそれが回っていくとか、生活スタイルの変革に回っていくということです。要するに余分なコストをかける、その金というのは、例えばさっき1,000億円とね。1,000億円というのが本当に投資に回るかというと、普通プライシングがなかった1,000億円というのはポケットマネーであるとすれば、そう簡単に低炭素化には行かないわけだよね。だけども、プライシングという制度のもとにやっていると、要するに無駄なプライシングでお金を払うよりも開発に回そうと。そして、プライシングでの支出をどんどんどんどん下げていこうというふうに、これがプライシング、取引制度にしても、あるいは炭素税にしてもね。ここのところが、我々、やっぱり大事だなというふうに考えたほうがいいと思う。
それから、もう一つはね、「約束された市場」というのは、僕もね、ちょっと言葉が悪いんじゃないかと思うんだ。あれ投資家が投資する市場とかね、というふうに狭く考えちゃうね。そうじゃなくて、約束されたニーズなんですよね。社会的なニーズなんですよね。だから、それはニーズをつくってくれたのはパリ協定なんだよね。だから僕は、あそこは「約束された市場」というよりも「約束された長期的ニーズ」だというふうに思う。

○浅野委員長
時間がもうないんですが、根本委員、できれましたなら一、二分でお願いします。

○根本委員
一、二分で申し上げます。価値観云々のお話もさまざまございましたが、私自身は、地球環境問題はやはり地球大で考えるべきという基本に立ち返りたいと思います。それから、コストは幾らかけてもいいわけでは決してありません。国民経済を守っていく義務が私たちにはあると思っています。経済を壊してまで地球を守るために対策を講じなさいという意見がもしあるとすれば、それには同意できません。
それから、国内投資を促進するという考え方には全面的に賛成いたしますが、プライシング、その他の規制によって起こり得ることは、国内投資ではなく、炭素リーケージであるということを、私たちは十分に認識しなければいけないと思っています。日本の国内でどれくらい生産活動を維持できるか、すなわち国民経済を守り得るかということを常に考えながら、最大限の長期的な対策を講じていくというスタンスに常に立ちたいと考えております。
炭素生産性の問題について、諸富委員からもご指摘がございました。先に手塚委員と私から申し上げましたけれども、炭素価格が高くても炭素生産性の成長率が改善しないという分析結果が出ています。すなわち、炭素価格によって炭素生産性の分母である炭素投入量が大きく減少するということが起こったといたしましても、それを打ち消す程度に分子のGDPの伸びが減少している、すなわち成長率が低下している可能性があるということですので、そういう分析も十分踏まえた報告が必要であろうということを、再度申し上げたいと思います。
以上です。

○浅野委員長
崎田委員、ご発言を、ご希望でしょうか。どうぞ。

○崎田委員
あの、30秒。いや、すみません、30秒。私、すみません、炭素プライシングとか、そういうことに関してあんまり発言してこなかったです。どうしてかといいますと、実はずっと電力システム改革で電力業界に厳しいことを言い続けてきておりまして、ここのところ本当に2030年のマイナス26%達成するための非化石価値取引市場44%を達成するためにいろいろな今制度改革していますが、その中で炭素に価格をつけるのに近い非化石価値取引市場が2017年から再生可能エネルギーは始まり、原子力などを含めると2019年から始まるという流れで来ています。やはりそういう現実はしっかり変わってきているので、しっかり対応していただきながら、これだけでは難しい2050年というのをどういうふうにみんなで考えるかというのがこの場ですので、やはりその辺に関しては産業界の皆さんもしっかりと、現実ご苦労されているのは十分承知の上で、やはり2050年というのをしっかりと考えていくという流れに一緒に立っていただくのが本当に大事なんではないかというふうに考えて、最後に一言お話をさせていただきました。よろしくお願いします。

○浅野委員長
どうもありがとうございました。
それでは、早くこのビジョンをまとめることを求められておりますので、できれば今日の議論をもって議論は終わりにしたいと思っております。今日出されましたご意見をもとに、さらに修正すべき点については修正をしたいと思いますが、やっぱり事はビジョンをつくるということであるという大前提がございまして、はしがきに書きましたような考え方でこのビジョンの目的、考え方をもってつくるということは皆さん、大体ご理解いただけていると思いますので、その線にとって必要な修正をしていきたいと思います。
取り扱い、取りまとめにつきましては、私にご一任をいただけますでしょうか。よろしゅうございますか。
ありがとうございます。
それでは、取りまとめについては一任をいただきましたので、また、関係の方にはご相談をしながら取りまとめをしていきたいと思います。
それでは、事務局から何かございましたらどうぞ。

○地球環境局長
地球環境局長の鎌形でございます。
途中ちょっと国会関係で中座いたしまして大変失礼いたしました。活発なご議論をいただき、本当にどうもありがとうございます。
振り返りますと、7月に第1回目の小委員会を開催いたしまして、今日まで13回ということでございます。その中ではヒアリング、多岐にわたる分野において多くの方々のヒアリング、地方のヒアリングにも先生方、行っていただくということもございました。
それから、ヒアリングのまとめ、あるいはビジョンのその案についてのご議論、10回から13回まで何回も回数を重ねてご議論いただきました。本当にどうもありがとうございます。
このビジョンは、まず今後の環境行政の進むべき一つの指針をお示しいただいている、こういうものとして受け止めたい等ございます。さらに、ビジョンにおいてご意見、ご指摘を頂戴したものにつきましては、来年度以降、さらなる論点の深掘りとか、政策の実施、そういったものにつなげていきたいと思います。
それで、具体的に、まず一つは、パリ協定で各国に長期戦略を出すようにということが調整されてございます。こういったものがこれからの作業になっていくわけでございますけども、こうした長期戦略にもつなげていきたい、このビジョンにつなげていきたい、このように考えているところでございます。
それから、このビジョン、一旦、座長のご指導のもとに取りまとめということになりますけども、小委員会では、今後もこういった長期の議論について、例えば有識者からのヒアリングをさらに重ねるとか、そういったようなことも含めてやっていただければというふうに考えてございます。
委員の皆様には引き続きお世話になりたいと、このように考えてございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
私からのご挨拶とさせていただきます。ありがとうございます。

○浅野委員長
どうもありがとうございました。
それでは、ただいま局長からもお話ございましたが、この小委員会はこれで幕引きということではないようでございまして、さらにまた今後、必要な議論をするために委員会を続けよということでございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、事務局からお知らせがございましたらどうぞ。

○低炭素社会推進室長
本日も委員の皆様におかれましては活発なご議論をありがとうございました。本日いただいたご意見等を踏まえまして、浅野委員長と相談し、必要な修正を行った上で取りまとめをさせていただきたいと思っております。
なお、次回の日程につきましては、3月16日木曜日、午前中を予定しております。
このビジョンにつきましては、今、局長からご挨拶いたしましたように、取りまとめた後につきましてもさまざまな有識者からヒアリングを行ってまいりまして、長期大幅削減に向けた施策の検討などに生かしていきたいと考えておりまして、その一環として開催させていただきます。よろしくお願い申し上げます。

○浅野委員長
それでは、本日は以上で閉会いたします。
どうもありがとうございました。

午後12時28分 閉会