長期低炭素ビジョン小委員会(第8回) 議事録

日時

平成28年11月11日(金)14時00分~16時00分

場所

TKPガーデンシティ永田町 バンケットホール1A
東京都千代田区平河町2-13-12 東京平河町ビル1階

議事録

午後2時01分 開会

〇低炭素社会推進室長
定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会地球環境部会長期低炭素ビジョン小委員会の第8回会合を開始します。
本日は、ご到着が遅れておられる委員もいらっしゃいますが、委員総数18名中14名の委員にご出席いただく予定であり、定足数に達しております。
また、既に地球環境部会長決定とされております本委員会の運営方針において、原則として会議は公開とされていることから、本日の審議は公開といたしております。
では、以降の議事進行は浅野委員長にお願いいたします。

〇浅野委員長
それでは、議事を進めさせていただきますが、本日は、COPが始まっておりまして、環境省地球局の幹部がおりませんが、どうぞご了承ください。
それでは、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

〇低炭素社会推進室長
配付資料の確認をさせていただきます。初めに、議事次第がございます。その次に配付資料一覧がございます。資料1としまして、委員名簿がございます。資料2としまして、東京大学の野城先生の資料がございます。資料3としまして、日産自動車の朝日エキスパートリーダーの資料がございます。資料4-1としまして、グリーン連合の藤村共同代表の資料がございます。資料4-2としまして、同じくグリーン連合さんの縦書きの資料がございます。資料5-1としまして、気候ネットワークの平田理事の資料がございます。資料5-2としまして、同じく気候ネットワークさんの縦書きの資料がございます。資料5-3としまして、FoE Japanさんの資料がございます。資料5-4としまして、WWFジャパンさんの資料がございます。資料5-5としまして、環境エネルギー政策研究所さんの資料がございます。
資料の不足等がございましたら事務局までお申しつけください。
カメラはここで退席をお願いいたします。

〇浅野委員長
それでは、議事に入ります。本日は一つの議題でございまして、引き続いてヒアリングを行うことになっています。
最初に、本日のヒアリングについて事務局からご紹介いただきます。

〇低炭素社会推進室長
第2回目から実施しておりますが、引き続き今月まで関係者へのヒアリングを実施してまいりたいと考えております。ヒアリングは、委員の皆様のご議論に資するよう、世界の潮流・海外の動向・長期的戦略の策定状況、科学的知見、技術、温暖化の影響、ライフスタイル、建物、移動、ビジネス、エネルギー供給、都市・地域・地方創生、金融システム、その他の多様な分野について行ってまいりたいと考えております。
本日のヒアリングですが、お一人目として、「イノベーションとは何か―気候変動抑制及び適応への変革を念頭に」と題して、東京大学生産技術研究所の野城智也教授よりご説明いただきます。
また、お二人目には、「持続可能なクルマ社会を目指して―日産自動車のチャレンジ」と題して、日産自動車株式会社企画・先行技術開発本部技術企画部の朝日弘美エキスパートリーダーよりご説明いただきます。
三人目には、「長期低炭素ビジョン作成に対する期待と要望~主に経済的手法の導入とNPOの実質的な参加を~」と題して、グリーン連合の藤村コノヱ共同代表よりご説明いただき、続けて、四人目としまして、「長期低排出発展戦略に対する意見~2050年までの明確な道筋づくり」と題して、気候ネットワークの平田仁子理事より説明いただきます。
4名の方々には、本日貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございます。委員の皆様につきましても、忌憚のないご議論をどうぞよろしくお願いいたします。

〇浅野委員長
それでは、ヒアリングに入りたいと思います。
今回は、まず、野城教授、それから朝日リーダー、このお二方からは、ご発表いただいた後、それぞれにご質問を差し上げることにしたいと思います。
三人目と四人目の藤村さんと、それから平田さんと、お二方については、まとめてご発表いただいた後、質疑応答をしたいと思います。
ご発言の際は、いつものとおりお願いいたしますが、お手元のネームプレートを立てていただいて、ご発言をいただきたいと思います。
ご発表くださった方へのご質問は、一わたり全部まとめて差し上げますので、その後、それはまとめてご回答いただくという形でお進めいただくようにお願い申し上げます。
それでは、まず、野城教授からご発表いただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
恐れ入ります。ちょっと準備が手間取っているようです。お待ちください。

〇野城教授
どうも失礼いたしました。東京大学生産技術研究所の野城でございます。座らせていただきまして、発表させていただきます。
事務局の方から、イノベーションということについて話せということでした。今日のメンバーを拝見いたしまして、釈迦に説法でございますけど、今日の主題に多少は関わりがあるということを最初に自己紹介させていただいた上で、主題についてご説明させていただき、それについてどう取り組んだらよいかということを話すという流れでお話をしていきたいと思います。
私のバックグラウンドは建築でございまして、四半世紀ほど前からサステナブル建築の研究をしております。また、ISOで国際規格のコンビナーをしております。また、UNEPの活動にも参加しておりまして、Zero Energy Buildingの開発の経験をした経験、あるいは国際規格でCarbon Metric Of Buildingの国際規格をつくった経験がございます。ちょっと、そのことを最初にまずお話ししたいと思います。
これが私どものキャンパスにございます理想の教育棟というZEBの事例でございます。今日、かなりソフト的なことが大事だということを終始お話しすると、あいつは技術とかいうことをおろそかにしているんじゃないかという誤解があるといけないので、私も技術開発をしていますということで言い訳的に申し上げております。
この建物では、地下水のヒートポンプが非常に大きな効果を生み、あるいは今で言うIoT的な手法で、日照調整した方法がかなりうまくいきまして、現在のところベンチマークに対して3分の1ぐらいの実績を出して、もう少し運用改善していけば、本当にZEBも夢ではないという射程まで入ってきています。これが自己紹介事例の一つでございます。
それと、もう一つは、ISO16745という国際規格でございます。これは実は昨年ひっそりとできたのですけども、大変重要だと思っております。UNEPの皆さんと一緒につくった規格でございます。作業立ち上げ時点では、EUのほうから幅寄せをされて、かなり大変だったのですが、この規格は、LCAのような複雑な方法ではなくて、開発途上国でもエネルギーの簡単な計量データをもとに、評価できる建物の運用段階でのパフォーマンスを図るための計算方法と報告方法、及び、監査の方法について定めた規格でございます。
内容については省きますけども、要はこういった国際的にCO2がどれだけ減ったかということについての境界条件その他について、合意をつくっておけば、スライド資料に書いてございます、特にベースラインをつくる、Cap and tradeを国際間でやる、あるいはCDMを国際的にやっていくことの基礎になるということでございます。また、NAMAをつくる基礎にもなるということでございます。
こういったようなことを踏まえて本題に入ります。イノベーションとは何かということなのですが、今日私がご指名いただいたのは、(スライドに映写した)この本を環境省の事務局の方が読んでくださったご縁によります。本に書いておりますけども、私はこういう(スライドに映写したように)サイエンスがあるイノベーションを生むというカースは、ある意味では、イノベーションの一丁目一番地だと思います。けれども、これだけでイノベーションを理解していることが、この国に災いを生んでいるというふうに考えております。ですから、(スライドに映写したように)こういった単線型のプロセスは確かにございますけども、それだけではないと思います。このサイエンス・プッシュ型は、実は人為的につくられたモデルでして、くどくど話しませんけれども、第二次世界大戦の直後に、Vannevar Bush先生が、引き続き戦争中続けて大きな巨大改装をするということを念頭につくられたモデルだということが今では明らかになっております。
では、現代のイノベーションとは何かということですけども、やはり一言で言えば、繰り返しで集積的だと、collectiveでdistributed innovationだということが現代のイノベーションの本質だと思います。これは意訳しますと、分担協調型イノベーションということになりますけども、平たく言えば、皆さんで神輿をかつぐイノベーションということになります。それは、プロセスというのは、決して単線ではなくて、行きつ戻りつですね。また、やりながら学ぶ、learning by doingが非常に大事なプロセスであるということになります。
それをモデル化すると、例えばスライドに映写したように)こういう円のように、ぐるぐる回る、あるいは行ったり来たりするグラフに描くことができるということなのですが、要はこの中のどれもが出発点になるのです。別に科学的な発見だけが出発点になるわけではないということを申し上げたいモデルでございます。
イノベーションとは何かということですけども、一言で言えば、この(スライドに映写した)赤字でございます。(スライドの)トップにございますように、創造的な破壊、非連続的な変化をするという、Schumpeter先生の100年前の定義というのは揺るぎないと思います。けれども、これを現代的に解釈いたしますと、例えば皆さん、こういった(映写したスライド中の)公衆電話があったことを覚えていらっしゃるかもしれません。当時モバイル通信をちょっとやっていた私としては大変便利な電話だったのですが、これは全く普及しなかったわけです。技術はすぐれていても、携帯電話というものが出てきた瞬間に、このすぐれた技術は意味を持たなかったというように、技術というのは、コンテクストの中でそれが本当に社会を変えるかどうかは決まってくる、ということを示した好例だろうと考えます。
そういう意味では、公衆電話を幾ら改良しても携帯電話は生まれませんし、携帯電話を幾ら改良しても、その平板な発想では今日のスマートフォンは生まれてきませんでした。恐らく近い将来、同じようなことが、スマートフォンを幾ら改良してもXXXは生まれませんでしたよねというように、将来XXXをつくった人が次のイノベーションを起こすということになろうかと思います。
ですので、Schumpeter先生のイノベーションの定義を現代風に解釈いたしますと、何らかの新しいinitiativeを行って、そして、私の造語でございますけども、豊益潤福を増進して、それで、社会が変わっていくことを指すということであるとして、今日はお話していきたいと思います。
ですから、よく手段が革新的かどうかということを問われるんですけども、イノベーションは結果が問われていると。結果の革新性が重要だということを申し上げたいと思います。
豊益潤福ですけど、私の造語ですが、この「豊」という字と「益」という字は、誰しもがイノベーションを思うときの目標になってまいりますが、現代のベーションと言われている事象を分析いたしますと、これだけではなくて、日本語で言えば、漢字で言えば潤い、あるいは幸せということを実現しているイノベーションがあります。ということで、日本のイノベーションの一つの行き詰まりは、この(スライド画像の)上の豊益ばかりに発想が偏っている、むしろ(スライド画像の下の)潤福も含めて考えればいろいろな発想が出てくるということを申し上げておきたいと思います。
例えば、frugal innovationという言葉がございます。意訳すれば、ほどほどのイノベーションです。決して最先端技術ではございませんが、これは、Origami顕微鏡と言われております、1ドルで買えるのですが、こういう実際に切り取り式になっている顕微鏡でございます。1ドルで売れるのですけど、これを使うと十分に、次のスライドでお示しできますように、アフリカで猖獗を極めているさまざまな病気の初期診断には十分使えると。これがあるか、ないかで、非常にその大きな変化をこのコミュニティに与えているわけです。
また、同じように、インドで爆発的に売れているこのChotukoolという、日本語でもすごくわかりやすい、クールボックスでございますけども、これも正規の冷蔵庫ではございませんけども、2日間食料が腐らないという条件設定の中でつくられた製品で、これも大きな変化をもたらしています。
あと、先ほどイニシャチブから始まると申し上げましたけど、これは科学技術だけではなくて、例えば新たな規範をつくるということが出発点になっている例もございます。この部会に則しますれば、例えばサステナブル・コンシューミングということでもあると思いますけども、例えばこのフェアトレードは非常に有名な事例でございます。まさにフェアにトレードしなければならない商品に、フェアに、収奪的な片務的な契約ではない、あるいは持続可能な農業の結果生まれた作物であると、あるいは製品であるということが第三者の団体にアプルーバルされますと、この(スライドに示した)マークが張られ、消費者がこれを識別して買っているという運動でございます。(スライドに示した)この売り上げをご覧になると、もうこんなに売り上げが増えたら、日本の企業の方はうらやましいなと思うぐらいに、大変な伸びを示しております。これはもう、立派なイノベーションと言ってよろしいかと思います。
そういう意味では、次のスライドでございますけれども、科学技術ではなくて、新たな行動原則や取引の枠組みやサービスの開発、あるいは自主的な行動を促進する社会運動、あるいは立法、第三者の介入による規制といった、こういったこともイノベーションの出発点になるということでございます。釈迦に説法でございますけれども、クールビズは、そういう意味では好例だということだと思います。
あと、新しい意味をつくるということもイノベーションの出発点になります。このウォークマンはもう、40年前の、多分これをお使いになった年齢の方も今日は多いと思いますけども、これは世界中のイノベーションの教科書に出ている事例として取り上げております。これは単なる再生機に対して音楽を持ち運ぶという新しい意味をつくったということで、意味の開発によるイノベーション事例だということで、大変示唆的な事例だと言われております。
また、同じように、私どもスマートフォンというから、本質を見誤っておりますけども、実際にこのスマートフォンというのは、インターネットやサービスを持ち運ぶ端末であるということで、その中のone of themの機能が電話だということですから、これも全く意味を変えたということで、新しい意味を発生させたことによるイノベーションということになります。
今日は特にこのことを申し上げたいんですが、私ども新たな機能創造をする、私もエンジニアの端くれですから、そちらの機能創造のほうで技術が先導していくイノベーションばかり考えております。けれども、むしろ新しい意味を創造するといったようなイノベーションが多くございます。特にこの右側の(意味創造の)領域ついての取り組みが弱いがために、日本のイノベーションが停滞しているといっても過言ではないというように私は思っております。
では、今のような理解に基づきまして、特に私の身の周りの建築に関します、この地球規模でお気候変化あるいはそれに対するアダプテーションに関するイノベーションについてどう考えられるかということを申し上げておきたいと思います。
一つは、建築の環境レーティングでございます。申し上げたいことは、いろいろ私も試みてみますと、climate changeやadaptationを最初に考えたようなイノベーションはうまくいかなくて、むしろ経済社会の中でのイノベーションの推進を考えますと、まず世界に受け入れられいる大きな変化を考えて、結果としては、それが地球温暖化ガスの排出に役立ったという考え方をすべきではないかということを申し上げたいわけです。

例えば建築の環境レーティングですが、ご存じのように、日本にはCASBEEがありLEEDがあります。私もCASBEEの開発に参加しておりますけども、なかなかLEEDとの国際競争に勝てずにいます。いろんな原因がございます。
一つは、先ほどのご紹介したCarbon Metricもそうでございますが、この国際的に認知されたMRVの原則、つまり測定可能で、報告可能で、しかも監査が可能だといったことがあると初めて経済取引の中で取り入れていただけるかと思いますが、CASBEEは、ほとんどが現状ではまだ自己評価でございまして、第三者評価は非常に少のうございます。加えて、これはアメリカでLEEDが爆発した原因だと思っておりますけども、このレーティングが高い、プラチナのレーティングをとると、知的生産性が上がると。かつ、賃料も上がり、空室率も下がるということを、括弧つきです、括弧つきですけど、「実証」いたしました。これを皆さんが信用し始めて、経済的な、皆さんがこのLEEDの高いレーティングの建物を求めるようになっているという現象が起きております。
実際、光熱費の削減した額と、知的生産性が上がった場合の人件費の効率を考えますと、企業経営者にとってみれば、残念ながら光熱費が下がることよりは、知的生産性が上がる、あるいは空室率が下がる、賃料が上がるほうが、まずは魅力的です。もちろん、しかし、そういうことでレーティングが高い建物が増えていけば、結果的には、地球温暖化のガスの削減にも結びつくというところでございます。そういう意味では、日本でもこのCASBEEについても同様の、ある意味開発をする必要があると考えております。
二つ目はグリーンリースでございまして、これはテナントとビルのオーナーが共同的に省エネルギー投資をするというスキームでございます。私も今、実は環境省から進められているこのリースのお手伝いをさせていただいておりますけれども、便益が、省エネルギーだけだと、なかなか普及が進みません。やはりこのグリーンリースというスキームを使って解消することによって、賃料、入居率が、あるいはアメニティの向上でございますが、このことも、インセンティブの仲間になります。テクニカルなことでございますけれども、どのぐらい省エネ改装した場合の省エネの余地があるのか、それがもし実現しなかった場合、契約上どういうリスクを背負うかといったようなこととの両方を、ある意味では行ったり来たりしながら検討し合意を作っていくことで、初めてこのグリーンリースというのは我が国のほうに根づいてくるというふうに考えます。
三つ目は、HEMSでございます。これは、今日、委員の荻本先生と一緒にさせていただいているものでございますけども、普及のボトルネックがあります。一つのボトルネックになっているところは、導入費用が10万以上かかりますけども、光熱費が月1万程度で、最大10%程度の光熱費の節減見込みであると、あまりインセンティブとしては弱うございます。そこで、私どもが今試みておりますのは、これはIoTの一種であると考えまして、ほかにもこのHEMSのインフラが使え回せないかということを試みております。つまり、不謹慎な言い方かもしれませんけど、ついでと言いましょうか、まず、家の中にIoTが入ってきて便利だということが最初にあり、それをやっていると、ふと気がつくと10%のグリーンハウスガスの削減がなされているというような、そういった流れでございます。
実際に、こういった(スライドのような)アプリケーションをつくっておりますが、恐らく皆さんのほうの配付資料にはございませんけども、(スライドの)左に書いてあるような大きな会社の方々が、HEMSのインフラをつくっていらっしゃいますけども、この前の(スライドの)ページのこういったアプリをつくるのはなかなか大き過ぎる会社でございます。やはりゲームのソフトなどをつくっている、アプリをつくっている皆さんにもご参加いただくような機会を私どもがつくりまして、それが(スライドに示した)こういったテストベッドを提供し、この実験住宅に入れたHEMSシステムを使って、どれだけ生活が便利になるアプリが作れるだろうかということを試みています。
例えばここにございますように、暑苦しい夜に、皆様が暑苦しくて窓を開けたり、クーラーをつけたり、扇風機をつけたりしたご経験があるかと思いますけども、今見ていただいたような(スライドの)図式を、今持っている(HEMAの)インフラでつくることは十分射程かなと思っております。むしろ安眠できますよというような価値がまず最初にあって、しかし、その安眠ができると、実は省エネルギーにもなっているといったようなアプローチが必要であろうかと考えております。
ですので、非常に大事なことは、今のような試みをすることが、前に進んでいきますよというプロトタイピングという進め方でございます。企業の方とつき合っていますと、稟議があって、プロトタイピングさえできないといったようなことすらありまして、これは行けるぞということが示せないことがよくございます。けれども、私ども、先ほどのようなテストベッドを使って、これがどういう意味があるのか、技術的に可能なのかといったことを、それぞれの立場で見ていくプロセスを回していくことによって、イテラティブ、繰り返し回しながら、それぞれの人たちが分担しながら、イノベーションを起こしていくことができるのではないかというように思います。
ですので、例えばセンサーも、センサー屋さんに任せますと、非常に精度の高いセンサーをつくってしまうのですけれど、私どもが欲しいのは、そこそこの精度を持ったセンサーを家の中にばらまきたいんのですね。そうすると、(スライドに示しているように)やはりこういうようなサービスをつくりだしたいといったようなことと、それは技術的に可能だということを、プロトタイプの機会を通じて、ぐるぐる回していく必要があるだろうと考えております。
ですので、イノベーションを起こしていくためには、ちょっと変な図でございますけども、ぐるぐるぐるぐる回すプロセスを動かしていくためには、ネットワーキングが必要で、ネットワーキングにいろいろな技術や知識を持っている人を巻き込んでいくためには、やはりコミュニティというものをつくっていく必要があるというふうに考えられます。
このスライドが最後でございますけども、繰り返しになりますけども、やはりこの地球温暖化、あるいはアダプテーションに関するイノベーションを考えますと、この機能創造というアプローチだけではなく、意味を創造していくといったことが非常に重要だと思っております。
今日は時間がなくてお話ししませんでしたけども、世界中では、建築関係ですと、ミティゲーションだけではなくて、アダプテーションについてもかなり研究やイノベーションが始まっておりますけども、より何をアダプテーションとして考えるかということについては、この意味、インプリケーションということを大いに考えていく必要があるわけでございます。
そういう観点にたてば、イノベーションをこう考えて捉えた上で、地球温暖化問題に取り組むべきではないかということを申し上げたいがために、いろいろと駆け足になりましたけども、沢山のスライドを紹介させていただきました。
どうもご清聴ありがとうございました。

〇浅野委員長
どうもありがとうございました。大変要領よくまとめていただきまして、感謝いたします。
それでは、ご質問、ご意見がございましたらお出しください。
いつものように名札をお立ていただければと思いますが、いかがでございましょうか。
それでは、一番最初に札をお立てになりましたのは、大野委員ですね。

〇大野委員
大変興味深いお話をありがとうございました。
日本の中で、気候変動対策の進め方を議論するときに、よくある議論というのは、一方で排出量取引とか、あるいはゼロ・エミッションの規制とか、そういう規制をすべきだ、制度を変えるべきだという議論がある一方で、いや、そうではなくて、やっぱり革新的技術を開発することが一番大事なんだと、これが優先なんだと、二つの対立するような議論があるんですが、今日の先生のお話を伺って、むしろそういう制度を入れることも、ある意味、意味をつくって、むしろそういう技術のイノベーションも促進していくと、そんな関係にあると捉えていいのかなと思ったんですが、その辺の先生のご意見をお聞きしたいと思います。

〇浅野委員長
それでは、続いて、桜井委員、どうぞ。

〇桜井委員
どうも、いろいろとありがとうございました。
非常に勉強になりましたけども、一つご質問したいと思うんですが。確かにイノベーションは、要するに手段側の話よりも、むしろ結果側のことですね。その結果も、今、私たちが非常に問題視しているのは、炭酸ガスあるいは温室効果ガスを排出するということが温度の上昇につながると。これを何とか防ぎたい。ということは、目的が温室効果ガスの削減にあります。その削減のためには、ご承知のように二つの手段があります。一つは省エネ、そしてもう一つはエネルギーの脱炭素化ということですね。提示いただいた省エネの例についてお伺いしたいのですが、33ページ。最初から省エネを狙ってというよりも、利便性を目的に、こつこつこつこつやっていくことによって、それが同時に省エネにつながるということというのは、わからなくもないんですけどね。このやり方ってはっきり言うと、悠長なやり方だなという感じがしてしようがないんだけども。むしろ本当の活動目的は、利便性と温室効果ガス削減の同時実現を狙った活動なのだとすることが大事なのではないでしょうか。

〇浅野委員長
では、末吉委員、どうぞ。

〇末吉委員
どうも、目の覚めるお話をありがとうございました。
実は、パリ協定に関連して質問があります。私の理解では、パリ協定の発効によって、温暖化対応の基本軸が、低炭素化から脱炭素化に移ってしまったという理解をしております。世界もそういう理解だと思いますけれども。そうした場合に、低炭素と脱炭素、ゼロ・エミッションですね。これは、このイノベーションの視点から見たら、どう違うのかですね。私なんか、素人考えでいくと、低炭素と脱炭素化は、取り組む技術のレベルとか方向性とか、全くさま変わりになるんじゃないかと思っておりますので、先生のお考えを少しお聞かせいただければと思います。

〇浅野委員長
ありがとうございました。
では根本委員、どうぞ。

〇根本委員
簡単に、二つだけ教えていただきたいです。
国際標準をつくるときに、ヨーロッパが抵抗していてというお話がございました。その理由だけ教えていただければということが一つ目。
二つ目が、イノベーションは結果ではかるというお考えは、Schumpeter以来の考え方なので、私としては腑に落ちるところなのですが、その意味で、建物系で言うと、ペンシルビルとか木密とか、要するに町とかエリアとか、面的な展開をどうするのかと。建物単体のお話は十分によくわかりますが、面的なところをやらないと、結果が出ないので、その部分をどうするかというお考えはございますでしょうか。

〇浅野委員長
増井委員、どうぞ。

〇増井委員
どうもありがとうございます。2点ございます。
最初にご説明いただきました理想の教育棟につきまして、従来のやり方での初期コストに対して、この理想の教育棟というのはどれぐらい初期コストが増えているのかお伺いしたいのが1点目です。
2点目は、今回お話しいただきましたイノベーションについてのところなんですけれども、今回は、どちらかというと、理論的な観点でお話しいただいたと私自身理解したんですけれども、いろいろと挙げていただきました例を取りまとめた事例集みたいなものですね、より具体的にこういうイノベーションがあって、これぐらい温室効果ガス、あるいはエネルギーが削減できたという、そういう事例集のようなものがあれば、我々も議論しやすいのかなと思ったんですけれども。そういう事例集のものを先生のほうでおまとめになられているのかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
以上です。

〇浅野委員長
崎田委員、どうぞ。

〇崎田委員
はい、ありがとうございます。よく我慢ではなくて、新しい暮らしを創造するんだと言われますが、それはどういう暮らしかという点がいつも抽象的で困っていたんですが、非常に明確に今日はお話しいただいて、ありがとうございます。
今日この最後のページで一つ質問したいのは、新しい意味の創造というときに、その意味を創造する際に、結果的にそうなるんだけれども、実は大事な価値は温暖化対策で、その対策が結果的にはそこに繋がっていくんだということを明確にしておかないと、結果的にはそうなっていかないんじゃないかと思うんです。その辺の目標を明確に持っていくということは必要ないのかどうか、その辺、先生のお考えの中でどう感じておられるのか、教えていただきたいと思います。

〇浅野委員長
では、最後に、手塚委員、どうぞ。

〇手塚委員
はい。三ポツのところで、如何に取り組めばよいか、ついでの重要性というご指摘があって、これは非常に納得性があるんですけども。逆に言うと、これはつまり目的の部分に排出削減とか省エネとかを掲げるんではなくて、サイドベネフィットがあるものを先に掲げて、結果的にそういうふうに、それを達成するということだと思うんですけども、なぜ排出削減とか省エネとかが表に出てきてしまうとうまく進まないと思われるか、あるいはそういう現象が起きるのかということについて、何かご見解があったらと思います。
イギリスのオックスフォード大学やLSEの研究とかでも、Wicked problem、要するに消費者が結果をすぐに実感できないようなたぐいのこういう環境政策みたいなものというのは、なかなか直接的に目的を掲げても、行動には行き着かないんで、回り道、迂回路を通ってやるんだというような話があったというのを私は記憶しているんですけど。そのような考えでおっしゃっているのかどうかというのをお伺いできればと思います。すみません。

〇浅野委員長
ご質問は以上のようなことでございます。
野城先生、似たような質問がありましたので、まとめてお答えいただいても結構でございますから、よろしくお願いいたします。

〇野城教授
大野先生からお話がございました新しい意味の創出が技術を引っ張るかということについては、そのとおりでございます。全くそのとおりだと思っておりますので、むしろ技術として意味のあるものをつくるためには、今みたいなぐるぐる回すプロセスが必要だと考えております。
それと、桜井先生がおっしゃいましたことに対しましては、私の認識は、とにかくホリスティック・アプローチが必要です。もちろんパンチのある非常に量的な効果があるものに集中投資する政策がとれればいいんですけれども、一方では、この特に私のような建築をやっている者からしますと、非常に細かいものを積み上げて、アグリゲーションしてようやくマッシブな削減効果が出てくるという感覚を持っているものですから、むしろあの手この手、ホリスティック・アプローチをしていく方法の一つとして、今日お話をしたシナリオがあるというふうにご理解賜ればと思います。
あと、末吉先生の脱炭素、低炭素については私も見識はございません。ただ、ZEBをやっていますと、どんどん私どもがやっている周辺で、最初はNEDOの実は補助金をもらってやっていたのですけども、世の中どんどん勇ましくなっていって、EUは全部ネットをゼロにすると言っているのですけども。最近になると、やっぱりそうだろうと、ニアリー・ネット・ゼロというふうに、言葉がちょっと先に走り過ぎています。それはとてもいい方向なのだけど、技術屋の私としては、これ、そんなに簡単なことではない。いや、だから、諦めるというわけじゃなくて、だから、チャレンジングなのですけれども。ただ、言葉が先行している傾向がありますので、もしかしたらそういう面もないわけじゃないかなというふうに思います。
それと、国際比較については、これはヨーロッパの尻尾を踏んだのは、LCA屋さんです。ヨーロッパの地域規格も国際規格も、LCAの人たちがかなりたくさんいらっしゃいまして、彼らから見ると、非常にアバウトな素人っぽいものだからということで、新たな国際規格の作業開始に反対されました。ただ、規格づくりにはかなり熱心に協力してくれました。私どもは、オペレーションの段階だけのスナップショットなのだと。だから、ライフサイクルとは関係ないぞということを言って規格化作業を開始し、国際規格にさせていただきました。
イノベーション、木密、その他の面的なものもございますけども、私もそれは必要だと思いますが、例えば私どもコンビニエンスストアの省エネもお手伝いしていますけども、あれは面的に広がらなくても、大規模施設を1軒やるよりも、コンビニについてある仕込みを埋めたほうが、量的な効果があるなと思います。もちろん面的にその地域の中でのエネルギー輸送をするような仕組みというのも大変大事だと思います。それを否定するものではございませんが、小規模な施設をアグリゲーションしていきながら効果を出していくということもアプローチとしてはあろうかと思っております。
あと、事例集を私はつくっておりません。むしろその事例の一つか二つになるようなものを、私はプレーヤーとして作らせていただいているような段階でございます。
それと、我慢ということなのですけども、省エネについて、私、すごく不満があるのは、我慢というイメージが定着していることです。例えば省エネ、コンビニの省エネのお手伝いをさせていただいたときに、目に見えない無駄がたくさんあったのです。例えば冷蔵庫のセンサーがセンシティブ過ぎて、コンビニ1店全部が自分の冷蔵庫だと思って、一生懸命働く一方で、もっと効率のいい空調機が怠けていたんですね。ですから、私どもがやりましたのは、空調機のほうにもっと働けという調整をしたことです。センシングに基づき運転負荷の調整をする形で、随分エネルギーの使用効率を高めていきます。そういうように、まず我慢する前に、実は、今日ご紹介したような方法を使っていくと、まだまだ目に見えないところに、人間を苦しめる前に、無理、無駄がたくさんあるということで、それを、さっき申し上げたように、ホリスティック・アプローチの一つとしてやっていく必要があるのかなというふうに思っております。
それと、あと、LSEのレポートのWicked 問題等々でございます。私、思いますのは、私もCASBEEのレーティングが高いといいということを信じてやってまいりましたが、まだマーケットプレースでは、公共の事業ではCASBEEでSランクをとるべしというのが来るのですけれども、民間のマーケットの中ではなかなかそれが起きてこない。そうすると、角度を変えて、LEEDがやっているように、むしろ賃料が上がることを前面に出して、普及させていけば、結果的には同じ結果を生むのではないかというような発想が必要と、最近思っているところでございます。
またHEMSについても、確かにいいことはいいんですけども、HEMSだけだとすると、多分今日申し上げましたインセンティブが弱いので、HEMSのついでなのか、むしろついでのほうが消費者の方からご覧になれば重要であれば、例えば安眠をするほうが重要なのであれば、それはそれでも結果的にはHEMSの仕組みが働いて、10%の排出減があればいいじゃないかなというような、そんなような発想で申し上げた次第でございます。

〇浅野委員長
ありがとうございました。
野城先生はお急ぎで、この後、席を立たれてしまいます。さらにというご質問がもしございましたら。よろしゅうございましょうか。
今日、先生は適応についてはあまりお触れになりませんでしたが、もし何か適応について今日言い残されたことがありましたらお願いいたします。

〇野城教授
要は、ミティゲーション、1枚だけではなくて、やはり海外ですと、例えば集中豪雨があったときにどう建物を維持するかというと、現在の東京のビルなども、非常にそういったゲリラ豪雨があったりすると、機能が停止するような建物もたくさんございます。地球温暖化防止にはなりませんけども、やはりこれから私の分野では、今日のような主題を大きく捉えた場合は、ミティゲーションだけではなくて、アダプテーションをしていくという必要性も非常に強く感じておりますし、私が属している国際的なリサーチ・コミュニティの皆さんは、そちらのほうもかなり盛んになってきております。それだけちょっと申し上げられればと思います。

〇浅野委員長
ありがとうございました。
よろしゅうございましょうか。
それでは、どうも、先生、お忙しいところありがとうございました。
それでは、続きまして、日産自動車の朝日エキスパートリーダーからご発表いただきたいと思います。

〇朝日エキスパートリーダー
ご紹介にあずかりました日産自動車技術企画部の朝日と申します。本日はこのような機会をいただきまして、誠にありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
私のほうからは、今日の主題といたしましては低炭素ということではございますが、一自動車企業の視点から見て、ちょっと広い持続可能性というところからお話をさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
では、着席させていただきます。
まず、弊社のビジネスの概要でございます。売上高で大体12兆円ぐらいということで、従業員数が、グローバルで15万人と、世界に研究開発拠点、デザイン拠点、車両生産拠点と、グローバルに拠点を持っておりまして、右側が販売台数の内訳になります。これを見ていただいてわかるように、日本が11%で、それ以外が90%近くと。中でもアメリカ、特に中国というところが非常に大きいというのが弊社のビジネスの概要となります。では、持続可能性ということで、車を取り巻く課題ということで、実にさまざまな課題がございます。大気汚染から気候変動、エネルギー、そして渋滞、交通事故まで、そういった課題に対して取り組まなければならないというのが、まさに今、自動車メーカーが直面しているところでございます。
それに対して日産自動車といたしましては、二つのビジョンを持っております。一つが今日の主題であるゼロ・エミッションであります。もう一つがゼロ・フェイタリティ、死亡事故ゼロということに取り組んでいます。それに対する技術的なアプローチとして、電動化、そしてもう一つが知能化ということになります。
知能化については、いわゆる自動運転につながるところでございますけれども、交通事故の原因を調べてみると、9割以上がドライバー、人為的であるということがわかってきています。それに対して、車を操作するには、認知して、判断して、操作するという手順を踏むわけですけれども、そのそれぞれを機械に変えることによって、人が判断するよりも正しい判断ができるということで、結果として事故が減らせる。さらには、渋滞が減るということになるかと思います。
それに向けて、弊社といたしましては、今年の夏に、日本でセレナに、同一車線自動運転技術プロパイロットを採用いたしました。これは高速道路において、先行車両との車間距離を一定に保つよう制御するものです。その後、そういったシステムを、複数レーンであったり、あるいは市街地であったりというように、そういった技術を受け入れる社会の受容性、運転されるお客様の受容性も見ながら、徐々に拡大していきたいと考えております。
続いて、今日の主題である電動化です。
パリ協定がまさしくこの小委員会の主題であると思いますが。私自身の見方から見て、やはり中でも、今世紀の後半に、人為的な吸収と人為的な排出を均衡させなければいけないとなったということは非常に影響が大きいと理解しております。
というのは、この左側のグラフは、自動車の使用エネルギーを表しておりますが、90%が石油を使っております。その結果として、右側がCO2の排出量になりますが、自動車も含めた運輸部門ということでは、23%のCO2を排出しております。
車からのCO2を削減するにはということを、簡単に表すと、このような形で表すことができます。一つは、エネルギー中の炭素量を減らすこと。2点目として、効率を上げること。効率には、エネルギーの使用効率と移動の効率と二つあると思います。最後に、全体の活動量を減らすことということかと思います。
今までの自動車会社の対応というのは、ガソリン車の燃費の改善ということで、エネルギー効率の改善に取り組んでまいりましたが、今後、脱炭素を目指すということになりますと、エネルギーの転換、より低炭素のエネルギーに変えていくということ、あるいは車の使い方であったり、乗り方も転換していくことにも取り組んでいかなければいけないということを指し示しているのだと理解しております。
ここでご紹介したいのは、弊社のCO2削減ビジョンです。弊社は、新車のCO2排出量を、2000年に対して、2050年まで90%削減するというビジョンを持っております。このビジョンを策定したのは、今から約10年前になりますが、ちょうどIPCCの第三次報告書が出たころで、そのころヨーロッパを中心として車のCO2を下げなければいけないというプレッシャーが非常に大きくて、その中で、どこまで本当にやらなければいけないんだろうかみたいな疑問がありまして、IPCCの報告書を勉強したところ、やはりCO2を排出している限りは、温度の上昇は抑えられないということがわかりました。では、この先どのようなペースで削減していければいいのかというのを試算してみた結果がこの90%削減というビジョンであります。
ここでわかったことが三つあります。一つは、90%削減という世界を考えると、内燃機関ではもう対応はできないということ。2点目としては、ただ、そうはいっても、いきなり電気自動車とか燃料電池車というような車を増やすことはできませんので、当面はやはり内燃機関、ハイブリッド化も含めた内燃機関の効率を究極まで改善することが非常に重要であるということ。それから、3点目として、ここの新車のCO2排出量というのは、車の使用段階だけではなくて、エネルギー製造時も含めたWell to Wheelですけれども、Well to WheelでやはりCO2をゼロにしていかなければならないと。そうなると、自動車会社だけではなくて、再生可能エネルギーの活用のような業界を超えた連携が必要であるということがわかりました。
あと、もう一つ申し上げたいのは、これはよく、コミットメントなんですかと聞かれますが、弊社ではコミットメントというのは必達目標ですけれども、これはコミットメントではありません。将来的な方向性を示すビジョンというふうな位置づけでおります。
このような考え方に基づいて、2010年12月に電気自動車、日産リーフの販売を開始いたしました。こちらが、リーフの走行データをキャッチしているものなんですけれども、これを見ていただいてもわかるように、大体地図ができるくらい、いろんなところでリーフをお使いいただいているということがわかるかと思います。日本の地図が薄っすらとわかるような形になってきております。こちらがアメリカになります。アメリカは東海岸、それから、あと、西海岸で多いのと、アメリカはやはり都市に限定されているということがわかるかと思います。ということで、7月までに23万台を販売し、世界中のお客様に使っていただいております。
そういったリーフのお客様の評価を見てみますと、大体75%ぐらいの方が、もう一度買いたいと言ってくださっています。これは、普通の車に比べてもかなり高い数値になっています。その理由としては、ランニングコストであったり、静粛性、加速性能というような従来の内燃機関の車にはないよさというのをわかっていただいている。一方で、やはり25%の方は、もう買いたくはないと。理由としては、航続距離、充電時間、充電器の設置数が少ないと、そういったことを挙げられております。
ランニングコストを見てみますと、これは弊社の試算ではありますが、1kmを走行するのに必要な費用が、ハイブリッド車で大体4.5円ぐらい、普通のガソリン車で7.5円ぐらい。燃料電池車は水素の価格をどう置くかによりますが、岩谷産業さんが発表されている㎏当たり1,100円に置くと、大体7円ぐらい。それに対して、電気自動車であれば2円と、ランニングコストについては、安いということになるかと思います。
あと、もう一つ、今まで23万台の車をお売りしてまいりましたが、発火というようなバッテリーの重大不具合は発生しておりません。リーフのバッテリーは、ラミネート型になっており、1台当たり192個のセルを用いていまして、トータルで4,435万セルをお使いいただいています。こういった形態であることが安全であるということと、あと、もう一つ、リーフのデータは全てグローバルデータセンターにつながっておりまして、バッテリーに何か不具合が起きそうになると、そういったデータをキャッチして、それをお客様にフィードバックして、未然に事故を防ぐというようなこともやった結果、お陰さまで事故を起こしていないということになっております。
そういった電気自動車でありますけれども、やはり今までの内燃機関にはない新たな価値があるのではないかと考えております。先ほど申し上げた自動運転とつなげるということもありますし、あるいはここのニューモビリティーとあるような二人乗りの車で新しい使い方、カーシェアリングのようなものに使うということもあると思いますし、これからの車自体が、いろいろつながってくる、コネクテッドというようなところでも、電気自動車が生み出す新たな価値というのはあるだろうと思います。
さらには、エネルギーマネジメント、Vehicle to home、Vehicle to gridというところで、車は今まで走っているときしか働いていないんですけれども、止まっているときも働くというようなことができてくるのではないかと考えております。
そのエネルギーマネジメントの一つの例をご紹介したいと思います。2010年、ちょうどリーフを販売するときと同時に、弊社では、住友商事さんとともに、フォーアールエナジーという会社を設立いたしました。この会社は、バッテリーの二次利用事業の検討を開始するということで立ち上げたものです。フォーアールというのは、再利用、再販売、再製品化、リサイクルの四つのアールからとってきております。
そのフォーアールが行っている事業の一つとして、薩摩川内市と住友商事さんが、2015年11月から、大型蓄電システムの共同実証実験というのを開始いたしまして、そこに電気自動車のリユース蓄電池を供給させていただいております。これは環境省さんの補助事業ということで、実施しております。
この薩摩川内市の甑島というのは、鹿児島県の西側にあります島で、人口5,000人ぐらいの島です。やはり離島というのは、再生可能エネルギーを入れようとすると、変動してしまうので、なかなか入れにくいところがありますけれども、ここは新たに100Kwの太陽光発電所を設置するのとともに、リユース蓄電池の大型蓄電システムを導入し、それを専用通信線で火力発電所とつなげて、再生可能エネルギーの利用が最大化するような仕組みをつくりまして、今、実証実験を進めているところであります。これによって、離島の再生エネルギーの導入モデルというものができればと考えております。
さて、そのように進めている電気自動車ではありますが、まだまだ台数的には大きくはないというのが事実だと思います。これは、IEAのレポートから持ってきたものですが、2015年初めて電気自動車だけではなくて、プラグインハイブリッドも含めた電動車両の台数が保有台数で100万台を超えたということになりますが、一方、IEAがいわゆる2℃シナリオで置いている必要な台数というのが、2030年に1億4,000万台ということを考えると、このギャップというのは非常に大きいと言わざるを得ないと思います。
こういったギャップをどうやって埋めていくのかというのが、まさに今直面している課題だと思います。もちろん自動車会社としては、技術のイノベーションを進めていきたいと考えております。先ほどの野城先生のお話からすると本当の意味のイノベーションではなくて、まさに日本の企業が好きな技術のイノベーションなんですけれども、特に、航続距離につきましては、リーフの航続距離は、販売開始した2010年の200kmから、徐々に最新のモデルで280kmまで伸ばしてきておりますが、それをさらにさまざまな技術の積み重ねを行うことによって、内燃機関と同じような距離まで、しかも同じコストで実現したいというのが、私たちの目指しているところであります。
ただ、やはり先ほどのお話にもありましたが、そういった技術のイノベーションだけでは変革というのは起きないと思いますし、やはり一事業者、自動車会社だけの力ではなく、業界あるいは業界を超えた産業界、さらには政府、さまざまなステークホルダーの方、国全体がやはり一つのビジョンのもとに進んでいく姿を描いて、その中で企業が取り組んでいくということが必要なのではないかと。やはり一番重要なのは、車を使っていただくお客様の意識をどう変えるかというところでありますので、それに向けて、私たちも微力ながら取り組みを進めていきたいと考えております。
最後に、私、先週、アライアンスパートナーであるルノーを訪問してまいりまして、金曜日の夜、仕事が終わった後に、ルノーの友人がパリ見物に連れていってくれました。そのときにエッフェル塔が緑だったんですね。彼女が、「あら、みどりのエッフェル塔ってあまり見たことがないんだけど」と言って、近くに行ったら、パリ協定が発効されましたと、フランス語で書いてあることが判りました。私もちょっとそういったことに関わっているので、非常にうれしく思ったんですが、世界がパリ協定に向かって進んでいるのではないかなということを感じ入りました。
以上、ご清聴ありがとうございました。

〇浅野委員長
どうもありがとうございました。
それでは、朝日さんに対するご質問がございましたら、どうぞお出しください。
それでは、増井委員からどうぞ。順番にこちらにお願いいたします。増井委員、谷口委員、末吉委員、この順番でお願いいたします。

〇増井委員
どうもご発表ありがとうございました。1番目の発表を受けての質問なんですけれども、17枚目のスライドで、リーフのお客様評価というのがございます。これについて、意外だったと言いますか、自動車としての機能の評価ではなくて、それ以外の面での評価といった、そういうお声がもしあれば、教えていただきたいと思います。以上です。

〇浅野委員長
谷口委員、どうぞ。

〇谷口委員
どうもありがとうございます。14ページなんですけれども、電気自動車のCO2排出量比を、再生可能エネルギーを通じてかなり下げられるという図なんですが、具体的にどういうふうな形で再生可能エネルギーを持ってこられるかということですね。例えば各家庭の太陽光のパネルをイメージされているのか、どこから持ってくるんだろうかということですね。
それと関連して、リーフは非常にいい車だと思うんですけれども、家庭で主婦の方が、例えば昼間の買い物とかに使うんであれば、全然航続距離は大丈夫だと思うんですが。これを例えば家庭の一台目に置き換えるような戦略で考えておられるのかどうかですね。どこで充電するのかということと、その戦略は多分セットになってくると思っていて、家庭でやるにしても、昼間太陽光でやるとすると、その時に主婦が買い物に行きたいとか、行動がバッティングするとかというふうなことも起こったり、場合によってはしてくるんですけれども、その辺りですね。どこからこの再生可能エネルギーを持ってこられることを考えているかということと。2台目戦略から1台目戦略に持っていかれるまで、頑張られる予定かどうかですね、その辺りを教えていただければと思います。

〇浅野委員長
末吉委員、どうぞ。

〇末吉委員
ありがとうございました。実は、先週サンフランシスコの飛行場で、大変驚いたんですけども、タクシーがほとんどいなくて、ウーバーでした。ニューヨークで日産の車がいっぱいタクシーとして走っておりましたけれども、たしかOECDの研究によると、AIとウーバー的なものがくっつけば、車のニーズが9割ぐらい減っちゃうというような話があるんですけれども、その個社の話と同時に、車の使い方がこれからどういう具合に変わっていくのか。車の台数も含めて、何かあったら教えてください。

〇浅野委員長
では、崎田委員、どうぞ。

〇崎田委員
ありがとうございます。先ほど電気自動車に対するで、再生可能エネルギーをどういうふうに供給するのかというご質問がありました。私も同じことを質問したかったのと、もう一つ、22ページにありますように、こういう島などでの蓄電システムの研究をしておられるということは、全国的にも供給スタンドなどの整備とか、そういうところまで考えておられるのではないかと思いました。そういうような全体的な戦略を教えていただければありがたいと思います。

〇浅野委員長
荻本委員、どうぞ。

〇荻本委員
電気自動車についてなんですけれども、自動車というのは非常にたくさんの種類がある、または、同じ種類の車であっても、業務用に使ったり、家庭用で使ったりしているということで、車輪があって、エンジンがついて動いているもの全体を見渡したときに、今日おっしゃったようなものがどう将来展開し得るのか、または日産さんが会社としてどのように考えているかというところを教えていただきたいのが1点と。
もう一つは、どうしても近場、どこまで行ってもバッテリーの限界はどこかにあるということなんですけれども、レンジエクステンダー型というような発電専用の内燃機関を積んだ車があって、これだったら富士山のてっぺんまで登れるかもしれないと、こんなこともあると思いますから、必ずしも電気自動車だけではないけれども、電気自動車の隣に何がありそうなのかというのが二つ目です。

〇浅野委員長
大野委員、どうぞ。

〇大野委員
私も二つご質問させていただきたいと思います。
環境自動車をつくっていくというのは、いろんな方向性の議論があって、ハイブリッド化とか燃料電池とか、それからディーゼルの効率向上があったんですけども、今あったように、目標が低炭素化、脱炭素化になることによって、電気自動車の比重というのが、本命として非常に強くなってきたと、そういう意味で、日産さんの先見性があったんだなということを感じているんですけども。今後、経済が脱炭素化を目指していく中で、日本の今の企業とか産業の立ち位置というか、こういう脱炭素化を目指す方向の中で、日本経済にはどんな意味があるんだろうか、この中でプラスにしていけるんだろうかって、その辺の見通しというかお考えをお聞かせできればというのが1点と。
それから、もう1点はコストなんですけども、最近のブルームバーグの予測で、電気自動車は、2020年代の半ばには内燃機関にほぼ対峙するだろうというような、ほぼ同じくなるだろうという予測が出ているようなんですが、この辺の見通しについてお考えをお聞かせいただければと思います。

〇浅野委員長
大塚委員、どうぞ。

〇大塚委員
すみません。ちょっと、4点もあるんですけど。
一つは、充電器に関して少ないという問題が指摘されていましたが、これは全国的にどのぐらい必要だというふうにお考えなんでしょうかというのが一つでございます。
それから、二つ目でございますけども、先ほど自動運転との連携の話がございましたけれども、ちょっと、ここは全く技術的な話でお伺いしたいんですが、ほかのガソリン車とかにも比べて、自動運転のときに、電気自動車だとどういうメリットとか、何かやりやすさがあるのかということについて聞きたいというのが二つ目。
それから、三つ目ですけども、スライド22にあった、さっきの甑島のプロジェクトでございますけれども、こういうふうに蓄電池を再生可能エネルギーについて活用することは結構大事なことになってくるかと思いますけども。これはコスト的に見て、離島以外でもやっていけるような話になりそうなのかどうかという辺りを、ちょっとお伺いしたいというのが3点目です。
それから、4点目ですが、これは日産さんの戦略の話だから、ちょっとどのぐらいお話しいただけるかわかりませんが、電気自動車に関しては、今までの内燃機関がある自動車に比べて、途上国などでもすぐにつくりやすいという話がございますが、日本として、自動車産業としてどうやっていくかという問題が多分出てくると思いますけども、その点に関しては、電気自動車にシフトしていくことが日本の自動車会社にとってどうなのかという問題があり得るかもしれませんので、その点についてちょっと教えていただければと思います。

〇浅野委員長
足立委員、どうぞ。

〇足立委員
京都市でございます。日ごろからリーフ、公用車で愛用させていただいています。ありがとうございます。
やはり夏場、エアコンをかけたときに、航続距離等で、正直、ちょっと不安になるケースがありますけども、本当に乗り心地もいいし、すばらしいと思います。私ども自治体は、自動車分担率を下げる、つまり公共交通機関へ、もっと言えば、自転車で行けるところは自転車に、もっと言えば、歩けるところは歩いてと、こういうまちづくりをやっていますので、メーカーさんから見ると、んん?ということだと思うんですけども。
いろんな取り組みの中で、小型化をしていく、先ほどありました小型モビリティーですね、こういった方向が、随分いろんな売り込み等でも私どものほうを訪れるところがありますので、こういった方向性がこれから非常に大事かなと思います。人生90年時代で、通院、買い物ぐらいがまずはこなせたらということで、それを全部バスで行けというのもなかなか難しいんです。Door to doorへ、そして、免許の返上運動とかを今やっていますので、高齢者は本当に移動ができなくなってくると。こういう中で、手軽な目的地をプリセットしたような小型モバイルが進んでいけば、非常に環境にもいいなというふうに思っております。もしそういう方向性についてお話しできることがあれば、お願いいたします。

〇浅野委員長
大変わかりやすい報告をいただいたので、質問がいっぱい集まってしまいましたが、可能な限りでお答えいただければ結構でございます。

〇朝日エキスパートリーダー
はい。ちょっと、できるだけお答えしていきたいと思います。
まず、今の最後のご質問にも関係しますが、やはりこれからいろいろな多様化が進むのだろうなというふうに思います。それは、今ご指摘があったような小型も含めて、あるいはEVだけではなくて、レンジエクステンダーであったり、燃料電池であったりという意味で、いろいろな多様化が進んでいく中で、それぞれの使い方、それぞれの地域において最適なものを使うという形になっていくことが、今、モビリティーというか、車に対して求められているのだろうというふうに考えております。
そういう意味では、荻本委員のご質問にもありまし、業務用とか商業用みたいなところも含めてどういうような展望を持っているのかということでは、やはりそれぞれの用途に合わせて使い、合ったものを使っていくという形になっていくのではないかというふうに思います。そういう意味で、弊社の考え方として、全ての車が電気自動車になるということが究極だとは思ってはおりません。よくマスコミの方が究極のエコカーは何かということで、電気自動車か燃料電池かとおっしゃるんですけども、それは何か一つではないじゃないかなというふうに思っております。使い方、あるいは地域によっても変わってくる中で、そういった多様性というのがこれからますます車に求められてくるのだと思います。
そういう意味では、最近ちょっと、電気自動車のほうに風が向いてきたみたいな声もありますけれども、電気自動車が全てになるという世界を必ずしも目指しているかというと、そうではないというふうに考えております。あと、その隣に何があるかということでは、そういうふうにいろいろな多様性があると思うんですけれども、弊社では最近、ノートのほうにレンジエクステンダー型というか、シリーズハイブリッド型のEパワーという車を出したりもいたしておりますので、そういう意味で、いろいろな技術を導入しながら、低炭素、さらには脱炭素を進めていきたいというふうに考えております。
あとは、充電器に関してご質問を大塚委員のほうからいただきましたが、充電器の数が日本で少ない、十分なのかということについては、補助金をいただいて、充電器の数、今、非常に増えてきておりまして、実は私自身リーフに乗っておりますが、ナビで充電器を探すともう、そこら中に充電器があるんですね。なので、もちろん高速道路の急速充電器が渋滞するというようなことはありますので、そういう使い方によっては、急速充電器を増やしていくようなことが必要なんだろうなと思うんですけれども、乗っていない方はわからないと思うんですが、かなり日本は充電器があるなというのが私の実感であります。
あとは、お客様の嗜好ということで、こちらのお客様の評価で、車の性能以外に何か評価があったかということで言うと、やはり排気ガスが出ない車に乗るのが非常に気持ちがいいというような、非常にエモーショナルな評価でありますけれども、そんな声を聞いたりすることはございます。ただ、ここにもありますが、充電器ということでは、乗っていない方は特に、やっぱり充電器の数が少ないから電気自動車は買えないということはあるんじゃないかなというふうに思います。
ご質問にもあったように、やっぱりどういう使い方をするかによって、どういうところで充電するのかというのも考えていく必要があるというふうに思っております。弊社の場合は、オフィスに、事業所に充電器が非常にたくさん設置してありまして、私自身も充電は会社で充電しております。もちろん自宅に充電器はあるんですけれども。なので、会社の電気を使いながら、環境にも優しくお財布にも優しいと、そんなことをしております。
あと、再生可能エネルギーと組み合わせてどう進めていくのかというご質問がございました。特に、こちらのグラフはどういう使い方をするかというよりも、一般的な電力ミックスからどのぐらいになるのかということで、数値としては置いております。ただ、崎田委員からご指摘もありましたように、再生可能エネルギーをどのように広めていくこととセットでやるのかというのがまさしく非常に重要なところだと思っております。特に、これからは車もIoTのようなものがますます進んできますので、そういう中で、スマートな充電、さらにはスマートなリニューアブルエネルギーの充電みたいなものをVehicle to homeあるいはVehicle to gridという形の中でやっていくことに取り組んでいきたいというふうに考えております。
あとは、1台目か2台目かということですけれども、弊社として目指しているのは、やはり1台目になりたいというふうに思っております。そういう意味では、航続距離を伸ばしていくことが非常に重要だと思っておりますので、それに対する技術開発をまさに進めているところであります。
最後のほうのご質問で、そういった、EVにシフトしていくということが国としての競争力を損なうのではないかと。確かにそういう考え方もあります。やはりEVは内燃機関に比べると、つくるのは簡単です。つくるのは簡単ですし、今いろんな方がやっているのを見ると、誰でもつくれると。ある意味、ガソリンエンジンというのは、自動車会社の権益だったんですけども、そこが一般に、でもつくれるようになるというのは事実だと思います。ただ、一方で、じゃあ、世の中の流れを考えると、やはり脱炭素という方向に進まなければいけないということからすると、それに対して抗うのではなく、やはり自動車会社のつくった電気自動車として、どういう価値をもたらすことができるのかということを私たちは考えていきたいというふうに思っております。
自動車会社ならではの車の乗り心地であったり、あるいは運転する楽しさみたいなところをぜひぜひ遡及していき、ほかの方々と差別化をすることができるのではないかなというふうに思っております。
あとは、末吉委員からご指摘のあった、車のニーズが減るのではないかというところは、ウーバーとかが広がって、車の台数が減るのではないかというところは、まさしくそういう傾向は否定できないのではないかと思います。特に、中国とかは、これから車の台数が増えてしまうと、もう国自体、石油供給も含めて、渋滞もひどいですし、空気も汚いですしという意味で、これ以上台数を増やしていくときに、やはりああいうカーシェアみたいなものをかなり入れていかなければならないというようなことを考えていると聞いております。
ということを考えると、やはり今まで世界中に車がちょっと増え過ぎたのかもしれませんけれども、そういったことも、車の台数がいずれ制限になるということも視野に入れながら、では、私たちのビジネスというのはどうしていくべきなのかということを考えていかなければいけないのではないかなというふうに思っております。
すみません、ちょっと、ご質問に全て答えられたかどうかあれなんですが。

〇浅野委員長
どうもありがとうございました。
毎回のことですが、全ての質問に答えてくださいというのは時間的にも無理な面があります。率直にお答えいただいて、大変参考になりました。ありがとうございました。
それでは、朝日さんからのご発表は以上で終わらせていただきまして、次に、藤村共同代表、それから平田理事から、それぞれご発表いただきたいと思います。
時間は最初少し厳し目に制限をいたしましたが、お陰さまでかなりゆとりがございますので、当初の予定時間より長くお話になっても構いません。

〇藤村共同代表
ただいまご紹介いただきましたグリーン連合共同代表の藤村と申します。
最初に、本日このような機会を与えてくださいましたことを感謝申し上げます。
座らせていただきます。
グリーン連合というのをご存じの方もいらっしゃるかと思いますけれども、昨年の6月5日、環境の日に、日本の環境NPO、NGOの連合組織として設立されたもので、現在約80団体ほど全国に会員さんがいらっしゃいます。分野は、気候変動のみならず、さまざまな分野にまたがっております。その目的は、気候変動など、ますます深刻化する中で、やはりこれらの環境問題を克服し、環境を基軸にした持続可能な市民社会を築くために、互いにつながり、結集して、強く政治や社会に働きかけようということで設立されました。
みんなそれぞれの団体がありながらの活動なので、思うように進んでいない部分もございますけれども、一応いろんなことをやっております。その一つといたしまして、市民版環境白書、私たち、グリーンウオッチと呼んでおりますけども、その発行もいたしております。これは、やはり政府とは違う目から見た環境の評価というのが必要ではないかということでやっております。
昨年も第1号をこのように発刊いたしましたけれども、その中で、最初だということもありまして、なぜ日本の環境政策がうまく進まないのかということを取り上げました。
その理由といたしましては、ここに書いてございますように、本来ならば、環境政策に対しましては、中長期的な視点というものが非常に不可欠だというふうに思うわけですけれども、現在はどうも短期的経済性のみが重視されている、この点が非常に問題ではないかということ。
2点目といたしましては、やはり力のある人が大きな影響力を持って、市民の意見がなかなか反映されない政策形成過程に問題があるのではないかということ。それから、予防原則、世界では随分進んでおりますけども、日本ではなかなか予防原則の取り組みが進んでいないこと。そして、今回も、平田さんのほうからも出ると思いますけども、こういう気候変動問題などにつきましては、ビジョンに基づいた戦略的な環境政策が必要であるにもかかわらず、今の日本の政策というのは、目先の問題に対応する対策行政が主導になっていること。そして、市民参加、市民参加と言われますけれども、形式的で、実効性のないものが非常に多いのではないかということで、こういうことが日本の環境政策がうまく進んでいない大きな要因ではないかと指摘しております。
今回お手元に配っております提案、並びにこれから私がお話しさせていただくことも、こうした考え方に基づくものでございます。
私たちの基本的な考え方といたしましては、このパリ協定というものは、本当に気候変動の克服に向けた希望の光であり、この歴史的な合意というものを歓迎しているという立場です。よかったなと、みんなで拍手をした次第です。
ただし、これを確実に実施していくには、やはり従来の体制や政策の不十分さというのをまずは認めた上で、抜本的に見直すことが非常に重要ではないかというふうに考えております。その理由といたしましては、日本も一生懸命、私たち市民も企業の方も、温暖化防止するために一生懸命やった。しかし、やったというものの、実際温室効果ガスの排出量というのは、1990年レベルから、上下はありますが、むしろ増加しているんじゃないかということ。さらに、2030年の目標は、世界からも言われますけども、到底目標には到達しない、不十分なものであるということ。そして、石炭火力の新設というものは世界の動きに逆行するものでありますし、何より2050年、80%削減という目標と矛盾するものであるということから、これはやはり抜本的に見直す必要があるだろうというふうに考えております。
3点目といたしましては、今日もいろいろ技術のお話がありましたけれども、そしてこれまでのヒアリングでもいろんな技術的な提案というのがなされていたように思いますけれども、実現に向けては、やはり技術だけでは不可能であろうと。中長期的な目標とかロードマップを伴った産業構造やエネルギー構造の転換が、さらに社会・経済システムの転換、そして私たちの価値観の転換など、あらゆる手段を講じることが不可欠であるし、まさに文明の転換期であるというふうに私たちNPOは捉えております。そして、全ての国民に行動してもらうための効果的な仕掛けをつくることが非常に重要ではないかというふうに考えております。
お手元の提案の中には、いろいろ具体的な提案をみんなで知恵を絞って書かせていただきましたけれども、今日は2点絞ってお話しさせていただこうと思っております。
お手元にお配りしたものの中には、規制などということも入っているかと思いますが、今日はちょっと違う視点からお話をさせていただこうと思います。
1点目といたしましては、できるだけ早い時期に地球温暖化対策税の大幅強化ないしは有効な炭素税の新設、排出量取引、エネルギー価格設定の見直しなど、経済的手法を導入して、目に見えるインセンティブを与えることが大切ではないかというふうに考えています。私の周りにも、本当に脱炭素社会に向けて地道に、でも、率先して取り組む中小の企業の方はたくさんいらっしゃいます。でも、彼らが一様に言うのは、もうどうも日本の政策が遅れていて、このままでは自分たち中小としては持ちこたえられないということをよく耳にします。それから、私の周りには、脱炭素に向けて一生懸命省エネをやっている市民の方々もたくさんいらっしゃいますけれども、これから先、これ以上何をやればいいのという話もよく聞きます。そうした声に応えるためにも、これまでのように、エネルギー多消費型産業の意向ばかりを重視するのではなくて、頑張っている企業、頑張っている市民がさらにやろうという気を起こさせるような、そういう経済的な手法の導入というのは非常に重要ではないかというふうに思っております。
環境行動の社会心理学、少し私も勉強したことがあるんですけれども、やはり関心を行動に持っていくためには、まず第一段階として、その問題の深刻さ、リスク、あるいは責任感、倫理観、あるいは行動にすることによって解決ができるという認知が非常に重要だというふうに言われておりますけれども、こういう認知を行動に持っていくためには、それなりの仕掛けが要ると。そうは言うけれどもねというところを行動に持っていくためには、やはり仕掛けが必要だというふうに言われています。
一つは、地域だとか職場から、いいことをやっているね、頑張ってねという、そういう期待だとか、一緒にやろうねというふうなこと。それから、こういう行動って結構制約があるんだ、難しいんだ、でも、この行動は簡単だねというような、そういう評価があること。さらに、やはり一番効くのは、行動による便益とコストということが明確に示されるということが、関心を行動に持っていく上で非常に大きな効果的なものだというふうに言われております。頑張った人が、よかったと思えるような経済的な仕組みというのは、やはり早急に入れていくことが非常に効果的なのではないかなと、私たち市民でさえも思っているところです。
税収につきましては、これまでもいろいろと使い道が言われ提案されてきたかと思いますが、私たちとしては、ぜひ将来世代への投資にも活用していただきたいなというふうに思っています。今、政府でも無利子奨学金の話等が出ておりますけれども、例えば気候変動奨学金のようなものを創設して、奨学金の返済に苦しむ若者を、そういうことではなくて、まさにこの気候変動のところに関心を持ってきていただく、あるいはそういう人材を育てるというようなところにも使っていただくといいのかなというふうに思っています。
ただ、その話とちょっと別に、家庭からのCO2排出、電気のところが非常に大きいわけですけれども、2030年目標として、家庭では40%削減ということが言われていますけれども、電源を全て再エネにしていただければ、家庭での40%達成はすぐにできますので、その辺の電源のところでの再エネ化というふうなこと、それが難しいようであれば、せめて2030年までには50%以上を再エネでという辺りもあわせてやっていただけると、税金だ、何だかんだいう前に、早く達成できるのかなと、素人考えとしては思うところもあります。
2点目といたしましては、環境政策をつくる段階から、実施・評価に至る全ての段階で、私たちNPO/NGOの実質的な参加の仕組みをつくっていただきたいのと、それを組み入れた上で、長期ビジョンの作成をしていただきたいということです。
リオ宣言の第10原則では、環境問題解決には全ての人の参加が不可欠だということが明記されております。それがなぜかということは、下に書いておりますが、もちろん専門知識の活用というものがございますけれども、何よりも環境政策の支持基盤の強化につながるというふうに思います。それに柔軟で有効な解決策の促進だとか、あるいは議論して合意することで、後々が続けやすいという効果もあります。
実際に、EUでは、環境・経済・社会の利益を適切に反映するために、環境NGOというのは、経済団体、労働団体と並ぶ利益団体として、環境政策形成に不可欠な柱として位置づけられております。
欧州環境事務局という、1974年に設立された、これは欧州最大の環境市民団体の連合組織なんですけども、これはまさにもう、EUの環境政策形成や実施などに非常に大きな影響を与えているというふうに言われます。OECD各国、それからOECD自体と環境NPOを結ぶ連絡役のようなこともやっておりますし、OECDのグリーン成長戦略のようなものの作成にも加わっているということで、非常に重要な役割を果たしております。
それに比べて、日本の場合は、環境政策形成の場、例えば今回のこの委員の皆さんの顔ぶれを見ても、学識者とか経済界のメンバーがほとんどで、NGOのメンバーというのは本当にわずかだというふうに思っております。ただ、パリ協定を実現していくためには、全ての人の参加が不可欠ということも言われておりますし、これからの社会、公平・公正、政策の実効性、市民社会育成の観点からも、例えばですけれども、審議会委員の公募制を導入するだとか、その中にはぜひ環境NGO、NPO枠というものも設定していただけるとうれしいなというふうに思っています。
これにつきましては、イギリスのパブリック・アポイントメント制度というのがあるんですけども、これはまさにその候補者を公募して、選考委員会で選考して、それをさらに下院の議員さんが、任命前聴聞ということを実施して、その結果を受けて、政府が任命するという、非常に複雑なプロセスを踏んでおります。ただし、これは、非省庁の公的機関の代表者の任命ですから、審議会のメンバーをそこまでやる必要があるだろうかということはもちろん議論はあるかというふうに思いますけれども、やはり正当性とか中立性、透明性とか公平性の確保、さらに、実力本位の人選という意味では、役に立つ方法ではないかなと思いますので、こういうことも検討が必要ではないかと思います。
それと、次のところでは、参加の制度ということで、ドイツとかスウェーデンとかイギリスでは、環境政策を形成する過程で、NPOの参加が制度として保障されているということを資料としてつくりましたけれども、このNPOはいいから入れようねというのは、ありがたいことではあるんですけども、担当者が変わった途端にそういうのはなくなったとか、何か政権が変わったことによって、そういうことがなくなったということがないように、やはりNGO/NPO枠というのをぜひ仕組みとして入れていただきたいなということがあります。
それから、もう1点目としては、自治体、NPOも巻き込んだ国民的議論の展開の仕組み、これも仕組みをつくっていただきたいというふうに思っています。幸い、前回ドイツの方から、非常に詳しい、この国民的議論のプロセスをご紹介いただきました。もう全く白紙のところから、市民、それから団体、自治体、州での議論ということでつくり上げたというお話を前回いただきましたけれども、あれを傍聴させていただきまして、ああ、これが日本でも実現すると本当にいいのにと、仲間とも話した次第です。
私たち市民というのは、自分たちでつくった政策には必ず協力します。それから、私自身の経験から言っても、こういう政策形成に関わることが、本当に効果的で、実質的な環境教育そのものになるというふうに思っています。
それに、たくさんの方を巻き込むことが、先ほども申しましたけれども、環境政策の支持基盤の強化にもなるというふうに思っておりますので、ぜひその辺りを、これから検討しながら、このビジョンづくりの中でも入れていっていただけるとうれしいなというふうに思っております。
最後にですけども、このビジョン策定に当たって、もう、できる、できないの問題ではないと、やらなければいけないことなんだという共通の認識を持って出発するということはとても重要だというふうに思っております。
あわせて、長年の科学の積み重ねというものを前提にすべきだと思います。アメリカの大統領が変わろうが、株価がどうなろうが、科学の積み重ねは変わりませんので、この辺のところはちゃんとみんな認識をして、議論を進めていく必要があるだろうということです。
それから、日本の企業・技術のポテンシャルを信じるということです。過去の公害の歴史の時からも、ずっと振り返ってみると、やはり厳しい環境の中で、日本の企業・技術というのは磨かれてきたように思います。先ほど日産の朝日さんのお話がありましたけれども、流れに抗うのではなく、積極的に挑戦というお話がありましたけれども、やはりそういうことで、まず日本の企業さんも、これは無理、あれは無理とかいうんじゃなくて、ぜひ挑戦の姿勢で一緒にやっていただけるとうれしいなと思っています。
それから、やはり地域での取り組みの重要性ということを考えると、自治体・NPOを巻き込むということはとても大事だと思っています。
そして、何よりも大事だと思うのは、2050年、80%削減は最低でも達成すべき長期目標とするなどして、将来世代を最優先にした長期ビジョンと戦略をぜひつくっていただきたいなというふうに思う次第です。
経済界の皆様方の中から、なかなか皆が納得するような制度というのは困難だよねというお話を時々伺います。確かに目先のことだけ考えていたのでは、利害が異なりますから、そうだろうなと思います。ただ、今回は長期ビジョンを描くというところが目的なわけですから、やはり脱炭素化した社会ってどんな社会なんだろうか、そこで求められる価値観、技術、制度、経済とはどんなものなんだろうかということを、同じ目で見て、ビジョンを描く。その上でそれを実現するための方策を、将来世代につけを残さないという共通の考え方で、削減量や省エネ目標などを明確にしながら、段階的、戦略的に組み立てていくことが非常に重要なのではないかなというふうに思っております。また細かいところは、この後、平田さんのほうから話があると思います。
どうもありがとうございました。

〇浅野委員長
続けて、平田理事にお願いいたします。

〇平田理事
気候ネットワークの平田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
同じくNPO法人でして、グリーン連合にも参加しておりますので、今の藤村さんのお話とちょっと重なるところもありますが、その辺は簡略化しながら、残り10分お話をさせていただきます。
着席させていただきます。
資料5-1に基づいてお話しさせていただきますが、発言原稿のような文書にしたものは5-2にございますので、そちらもあわせてご参照ください。
本日、私は、NPO法人気候ネットワーク国内の全国組織であります気候変動に取り組む団体の理事としてお話しさせていただきますが、あわせて、CAN Japanの代表としても発言させていただきたいと思っております。CAN、Climate Action Networkは、世界中の気候変動に取り組む団体のネットワークで、どんどん数が増えており、今1,100団体のネットワークになっております。その日本支部が、CAN Japanでございまして、現在14団体が参加しております。
あいにくそれぞれの団体が、このようにヒアリングに発言する機会がございませんことから、資料5-3以下、4団体からの長期ビジョンの議論に向けた提言を参考資料と添付させていただいておりますので、ぜひこちらもご参照いただけたらと思います。
私どもの現状認識ですが、パリ協定で掲げられた2℃目標、そしてさらには1.5℃を目指すという目標に対して、現状ははるかに遠く、それを上回るような気温上昇が予測されるという状況だと認識しておりまして、パリ協定のもとで今世紀後半には人為的排出を実質ゼロにする、ゼロ・エミッションにするために、大胆な取り組みの強化が必要だと考えております。
そんな中で、この長期ビジョンの委員会が企図しているのは長期戦略作りだと思いますが、この長期戦略は極めて重要な役割を持つと思っております。日本としてはこの2050年80%という既に持っている目標の達成に向けて、世界の国々とともに行動していく道筋を立てるという意味で、この戦略を位置づけることは非常に重要だと考えております。
長期戦略の策定に当たって、私たちが重要だと思っている視点をまず四つ申し上げさせていただきます。
一つ目は、明確な将来ビジョンの共有ということです。いいことわざを探しまして、見つかったような、見つかっていないような、なんですけれども、一つ書いてありますのは、Vision without action is a daydream. Action without vision is a nightmare.ということです。これから化石燃焼などに依存しない社会を目指していくということを、私たちの目下の目標として共有するということが重要であり、あわせて私たちはさまざまな社会問題を抱えておりますので、それを解決しながら、質の高い、豊かで希望のある社会をつくっていくと、そういったビジョンをつくっていくのがこの長期戦略をつくっていくプロセスで重要ではないかと思っております。
二つ目は、目標が達成される仕組みのビルトインということでございます。これまで日本の取り組みはよくボトムアップという言葉で表現されてまいりました。それは、できる範囲で、できる限り頑張って、下から努力していこうということであったと思います。しかし、これから先、パリ協定の明確な目標がある中では、目標水準まで確実に達成することを目指さなくてはなりません。そのためには、これから経年的に確たる成果を出し続ける、その仕組みをつくり上げていかなくてはなりません。
3点目は、先延ばしではなく、先回りの行動ということです。パリ協定は、単に環境条約ということだけではありません。これは新しい経済をつくり、新しい産業システムをつくり、そして新しい国づくりをするための基礎になるものであります。そんな中で、日本が脱炭素化に向かって、どのような役割を果たしていくのかということについては、先手を打って、日本が国際社会の中での地位、役割、そして存在感を示す、それを確かなものにしていくということが重要だと思います。
4点目は、革新的技術依存より、社会革新と書かせていただきました。必ずしも全ての革新的技術というものを否定するということでもないわけですけれども、これまで日本の気候変動対策は、技術によって解決するという立場をとってまいりました。そして、将来まだ見ぬ革新的技術に大きな期待を寄せて、今すぐ実行できる対策を先送りさせてきたという側面があると思います。しかし、これまで省エネの技術とさまざまに大変革新してきたところがございますので、今ある技術を用いてどのようにそれを活用できるのか、それをマネジメントできるのか、システムとして入れ込むということができるのかについて、社会革新、すなわち私たちを含めた市民団体の取り組みも含めた改善、そして取り組みが必要だと思っております。
次に、長期戦略に盛り込むべきことということで、ちょっと多いですが、7点申し上げさせていただきます。
まず、1点目は、2050年に向けた削減経路を描くことということです。直線で現在から2050年を引きますと、相当シャープな削減になります。これが90年から頑張って直線で引いていればもう少しなだらかではありましたが、これまでかなり横ばいの排出量あるいは上向きの排出を続けたために、これから80%削減への道のりというのは大変厳しいものです。しかし、2020年、2030年、現在置いている単年度目標は極めて緩やかな削減であって、2030年以降の取り組みのほうがさらに厳しいものになるということであります。80%の目標、ここに向かってどのような経路を描くのかというのが長期戦略の重要な要点であります。直線は確かに厳しいですけれども、もっと先に厳しいことを残すのではなく、直線で排出経路を描くことが重要だと思っております。
2点目は、5年毎の評価・見直しのシステムです。パリ協定では、5年ごとにストックテークして、目標を引き上げていくことを基本システムとして合意しております。それに見合うように、5年毎に目標・行動を策定して、また実施、レビューするというサイクルを日本の中にもビルトインすることが必要です。ここに、5年毎に階段のように描きますと、2020年、2030年は、相当に上ぶりをしていますので、20年、30年の目標も引き上げの検討が必要ではないかと思いますが、このような仕組みを長期戦略の中でしっかり入れ込んでいくということが重要かと思います。
3点目は、気候変動とエネルギー政策の統合ということでございます。これまで気候変動政策とエネルギー政策というのは、もちろんお互いを意識しながらも、分断して議論されてきたところがございます。また、しかし、気候変動問題はほとんどがエネルギー問題でありますし、また、経済の問題とも大きく関わります。これを、この先将来の目標に向かって、ビジョンに向かって統合的に議論していく仕組みをつくり上げていくということが重要です。そのためには、気候政策上にエネルギー政策を位置づけるということ、そして、それぞれの法律に基づく計画も統合的に策定するとことが重要であり、その上位に国家ビジョンとしてきちんと位置づけるということが必要かと思います。
4点目のエネルギー部門の脱炭素化は、中身がちょっと細かく、4点ほどあると思います。
まず、4-1は、ベースロード電源からフレキシブルな電源への転換ということです。こちらは、ドイツのアゴラ・エナギーヴェンデから拝借した表でありますけれども、こちらにあるのは、ベースロードとして最初に位置づけられているのは再生可能エネルギーで、灰色の部分が調整に回る火力等の電源であります。これからは再生可能エネルギーを優先的に利用する、そして、その調整電源として何を持ってくるのかということを考えていく、そのための柔軟性をどうやって実現していくのかということが重要かと思います。
2点目は、脱化石燃料のロードマップです。棒グラフの赤いのが私たちが確認している新規の石炭火力発電所の計画で、2,300万kwにものぼり、既存の発電所を大きく超えるような勢いで、日本全国が石炭火力発電所で埋め尽くされるような計画がございます。もちろんこれから新しく建てる石炭火力は、パリ協定には全く矛盾すると思います。これを早急に見直すことが不可避ですし、また、既存の発電についても、今は2020年、2030年にゼロにしようといううねりが先進国で起こっております。日本でもそうした議論をロードマップの中で位置づけていくことが必要です。
3点目は、脱原発の速やかな実現です。福島を経験した私たちは、今後原発に依存するという選択肢はないというのが世論の答えだと思っております。また、この図は、これまで原子力の設備を増やしながら、二酸化炭素が右肩上がりで増えてきた過去のトレンドを表しておりまして、原発を建てればCO2は減るということではなくて、消費側の需要を管理しなくてはならないし、また、原発の傍らで増えていく石炭などに対応をしないと減らないということを表しております。原子力発電の再稼働は温暖化対策になるという議論は、これまでのCO2が減らなかった構造に戻ろうとするものであって、私たちとしてはこれを支持することはできません。
4点目は、省エネのポテンシャルの掘り起こしです。乾いた雑巾ということをよく言われてまいりましたが、私たちが見ている省エネというのは、取り組みがほぼ自主的に任されているがために、さまざまに存在している省エネのポテンシャル、そして非効率な設備や事業というものの把握がまずできていないということであります。そして、省エネとして期待されるのは、大型の一部の部門の新規の技術導入ばかりが積み上げだけであり、本当の意味での省エネの掘り起こしがまだできていない、ここを掘り起こしていくことが重要です。以上が4点でした。
盛り込むべきことの五つ目です。適応に関することですが、気候変動リスクへの備えとリスクマネジメントの仕組みを盛り込むということです。気候変動はもちろん日本にとってリスクでありますけれども、これを安全保障のリスク、そして経済のリスクとしてもきちんと認識することが必要です。気候のリスクは国民の安全を脅かすセキュリティーのリスクであり、国内への異常気象などはもとより、諸外国での異常気象、あるいは災害といったものが私たちにもたらす影響も非常に大きいということをきちんと把握するということが必要です。また、経済リスクもあわせて非常に重要なポイントで、パリ協定はこれから高炭素型のビジネスを難しくするし、その転換を迫るものでありますので、どのような産業が私たちにとってこれから日本の繁栄をもたらすのかということをしっかり見定めることが必要です。適応計画は、経済リスクまでをカバーしないものであるかもしれませんが、日本としてのリスクをきちんと把握して、それに対処するという枠組みとしてこれを法定化して、やはり5年毎に見直し、横断的な対応をとるという仕組みを入れていくことが重要だと思います。
次の6点目です。世界の中での日本という視点ですけれども、途上国における温暖化対策は極めて重要でありまして、そのための日本の役割は非常に重要です。貧困や不公正、環境破壊が日本よりもはるかに深刻なレベルで進んでおります。そこに向けての日本の支援として、人材・技術、そして資金ということは非常に重要でありまして、これから資金額をきちんと確保し、コントリビュートするということが重要ですけれども、その中での注意点として二つ、これからは脱炭素を目指していく必要がありますので、前よりも高効率になった、しかし、CO2を出すというような高効率石炭に代表されるようなインフラ設備はもはや今すぐ再考が必要です、見直しが必要です。また、2国間のクレジット制度を日本は推進していますが、時にこれは批判の的となります。国連のもとで環境十全性をきちんと配慮し、ダブルカウンティングを回避するような指針のもとで世界の中の取り組みを支援するという視点が重要です。
最後に、二つのポイントですけれども、チェック&レビューのシステムと市民参加ということでございます。これまで日本の気候政策は、政府の中で、各省庁で見直しをするという域を超えませんで、国会での厳しい監視、そして市民あるいは外部のレビューということがございませんでした。それをきちんと実質的に行わせるということが重要でありまして、そのためには目標自体も法律に位置づけて透明性を高めるということが重要です。
また、関連して、これから私たち市民、私たちといってもたくさんのいろんな市民がいるわけですけれども、パリ協定をもとにさまざまな行動を展開していくと思いますし、既に行動しつつあります。再生可能エネルギーの地域での導入とか、省エネをコミュニティでの実践ですとか、そうしたことをますます活性化できるような支援の仕組みということが重要でありますし、活動における表現や活動の自由を保障するということも重要ですし、私たちがしっかり監視機能を果たせるという意味では、情報やデータへのアクセスを保障し、透明性を確保するということも極めて重要ですので、この点もきちんと取り込んでいただきたいと思います。
最後に、政策措置ですけれども、今日はビジョンの話でありまして、細かな政策措置を話す場ではないと思っておりますし、恐らくこの先、ビジョンが策定されたら、では、目下の10年、20年でどんな政策をとっていくのかという議論の場がまたどこかで設定されるであろうと思いますので、そのときにはもっと突っ込んだ議論をさせていただきたいと思いますが、今日は項目だけを挙げさせていただきます。重要だと思っている方向性です。
一つは、産業界の自主的取組からの脱却という点です。これは先ほどできる範囲から目標レベルまできちんと責任を持つことへの転換でありまして、社会的に責任ある行動を担保するために重要な点です。産業界の方にはもちろん引き続き自主的な行動に取り組んでいただいたらいいと思いますが、それをもって政策的に何もしないという、そんな時代は終わったのではないでしょうか。
そして、カーボンプライシングの導入、これは藤村さんもおっしゃったとおり、確実に成果が上げられる仕組みとして、さらに議論を進め、導入の検討を加速させていく必要があると思います。
再生可能エネルギーの普及については、課題がたくさんありますけれども、中立的な送電会社を設立し、また、優先的に接続し給電することを確保すること、また、関心のある消費者が選ぶことができるように、小売の電源構成ですとか再生可能エネルギーの割合、排出係数などをわかりやすく公表して、消費者が再生可能エネルギーを選びやすいように情報公開をすること、また、託送料金については、原発廃炉費用を上乗せすることで足を引っ張ることなく、電力システム改革を貫徹していただきたいと思います。
最後にフロンですけれども、2050年の脱フロンに向けて、使用禁止のスケジュールを導入していく必要があります。
もう一つつけ加えますならば、環境省に苦言を申すことになると思いますが、呼びかけばかりの国民運動は見直す必要があるのではないかと思っております。確かに普及啓発は、きっかけづくりとして重要ですけれども、今申し上げたような取り組みやすい仕組みと情報提供がなければ、気づきは得ても行動は持続しない、あるいは広がらないということです。私たちが本当に行動しやすい仕組みは何かということにもっと力を注いでいただくことがいいのではないかと思います。
私たちは18年間活動を続けている市民団体として、また、国際的に世界の市民団体と連携している組織として、パリ協定の発効を受けて、今申し上げたことを私たち自身が実施し、実践する主体として、さらにさまざまな主体の方々と協力して活動を展開すること、そして、その取り組みを全身全霊支援していくこと、そして牽引していくことをここでコミットさせていただきたいと思います。
どうもありがとうございました。

〇浅野委員長
どうもありがとうございました。
それでは、ただいま藤村さん、平田さん、お二方からご意見が述べられましたので、これについてご質問がございましたら、どうぞお出しください。
それでは、桜井委員から、どうぞ。

〇桜井委員
どうもありがとうございました。産業界の一人として、これ、ほとんど異存がありませんので、私の話をご安心してもらいたいと思うんです。
私、本当に今度のCOP21のパリ協定、これの合意というのは、大変な歴史的な合意で、皆さんが言われるように、できることをやる時代からやるべきことをやると、ここへの転換なんですよね。この実現は、急激にゼロ・エミッションまで持っていく大変なことですよね。これ、そう簡単にできるもんじゃないと思う。これ、みんなが責任をもって、やらなきゃいけないんだという、要するに、政治の世界、そして産業界、そして地方自治体、そして国民、市民という、このレベルで本当にやるべきなんだと、やらなきゃいけないんだということが理解できないと、動かない話なんですよね。
そういう意味で、市民を代表するNPOの方々にちょっとお聞きしたいんですけども、産業界でも、まだIPCC報告書であろうが、あるいはパリ協定の中身であろうが、あるいはこれからの目標達成のステップについてもあまりご理解されていない方々も多いわけですね。市民レベルになったら、僕はほとんどがよく理解していないというふうに思うんです。ですから、市民のレベルの、何ていうかな、おどしをかける訳ではありませんが、やはり正しい気候変動の実態と影響、取るべき対策などをもっともっと日本は市民に対して説明しないとだめだと思うんですね。第1回のこのミーティングの時に、僕はアメリカの例をお話ししたんですが、相当PRもしているし、それからイギリスの例もそうです。ところが、日本の場合、マスコミも含めて、この辺はあまりPRしていない。この辺の状況についてどう思いますか。

〇浅野委員長
一わたり質問を差し上げます。たくさん質問が出そうなので、メモをおとりおきください。
大塚委員、どうぞ。
すみません、時間がもう、残りがあまりないので、簡潔にお願いいたします。

〇大塚委員
二つ、じゃあ、質問します。平田さんにですけど、スライド5のところで、2050年に向けて直線での排出経路を描くことが必要というふうに私も思っていますが、その理由をちょっと、もし何か補強していただけたら、説明していただけたらありがたいと思います。
それから、ちょっと細かいですけど、スライド13との関係で、2国間クレジットの次、ダブルカウントのことをおっしゃいましたが、多分環境省はダブルカウントしてもいいとは考えていないと思うので、そこはもうちょっと、何か詳しくお話しいただけたらと思います。基本的に賛成のことが多かったので、そのぐらいです。

〇浅野委員長
大野委員、どうぞ。

〇大野委員
平田さんにお聞きしたいんですけども、今日全般的にお話をいただいたんですが、平田さんは気候ネットワークの石炭火力の問題に非常に力を入れていらっしゃると思うんですが、日本が石炭火力を進めようとしていることについて、世界からどんなふうな評価が与えられているのか、あるいはこれから日本が進めていくことによって、どんなふうな問題を日本が抱えることになるかという辺りを、もう少し補足して説明していただければと思います。

〇浅野委員長
増井委員から、順次、増井委員、廣江委員の順番で、最後に末吉委員ということでお願いいたします。

〇増井委員
どうもありがとうございます。1点だけなんですけれども、平田さんのご発表の中でいろいろご紹介いただきましたけれども、特に欧米で一体どういうような環境NPOが、こういう長期ビジョンにおいて、どういう役割、どういう働きかけというのを行っているのか、もしご存じであれば、教えていただきたいと思います。

〇浅野委員長
廣江委員、どうぞ。

〇廣江委員
ありがとうございます。2点お聞きいたします。
昨年我が国はエネルギーミックスというのを出しました。このときに三つのクライテリアがありまして、一つは自給率。現在エネルギーの自給率はわずか6%しかない、何とかそれを二十数%に上げたい。それから、電力コストも相当上がってしまいました。これは本当に申し訳ないと思いますが、それを何とか避けたい。さらには、パリ協定を目指してではございましたけど、CO2の国際的に遜色のない削減率というのを提示したい。こういうことで議論が始まりました。結果的に、大変厳しい省エネの目標が入りましたし、再エネあるいは原子力、石炭、天然ガス、それぞれの目標値が出て、これの達成は非常に難しいと思っていますが、私はこの議論は非常によかったと思っていますし、これに向かって頑張らないといかんと思っています。
その点で、本日の藤村共同代表のご指摘の中に、経済最優先で短期的な経済性のみが重視されていると、このようなご指摘がございますけども、今回のこのエネルギーミックスの議論をどのように評価していらっしゃるのかというのが1点目の質問でございます。
それから、2点目でございますが、これは平田理事さんのほうに対する質問でございまして、先ほど、10ページにCO2の排出量と原子力の容量のグラフがございました。細かな話で恐縮です。ここに載っておりますCO2の排出量、これは多分、電気事業のCO2の排出量だと思います。単位が書いてございませんが、多分「×100万トン」でこれは記載がされているんだと思いますが、確かに電気事業のCO2の排出量がここまで増えてまいりました。が、実は原子力がこれだけ増えたことによりまして、1億トン程度は削減効果があったことは事実でございます。ここの3億トン程度というのが最終年度の数字でございますけども、その3分の1程度、実は原子力が下げる努力をしていたということだと思います。もちろん省エネの努力は大変重要だと思いますが、こういった原子力の貢献、それからもしこれを再生可能エネルギーで代替するとなると、この5、6倍の容量が必要になってくると思いますが、この辺りをどのようにお考えになっておられるのかというのが2点目の質問でございます。
以上でございます。

〇浅野委員長
根本委員、どうぞ。

〇根本委員
はい。たくさんありますが、藤村様に1点だけおうかがいします。8ページので、「電源を全部再エネにすれば、家庭での40%は削減できます」との説明がありましたが、2030年時点だと、既にゼロ・エミッション電源が45%程度という根拠のもとに今の数字が出ているはずでございまして、50%やっても、どうしても届かないということなのではないかと思いますが、間違っていたらご指摘をいただけないでしょうか。
それから、平田様には、4ページで、重要な視点をご指摘いただき、非常に有益なご指摘だとは思いますが、残念ながら、京都議定書対象期間において、民生部門は全く削減できなかったどころか、数割増えてしまいました。この点をどう評価されているのかお伺いしたいと思います。
それから、次のページで、イノベーションのお話が一番最初にございましたけれども、リニアにはならないというのが通常の考え方ですが、それをリニアにすべきだというご指摘だったかと思います。どのような方法をもってリニアにできるのか、お考えがあれば教えていただきたいと思います。
11ページにつきまして、省エネのお話が出ていますが、私の理解が間違っていたらご指摘いただきたいと思います、省エネ法が機能していなかったと聞こえましたが、もしそうだとすれば、どういう部分、どういうエビデンスに基づいてそのようなご主張をされているのか、お伺いできればと思います。
それから、もう一度繰り返しになりますけれども、一番最後から2枚目、2番目、主な政策措置の方向性のところで、先ほど京都議定書対象期間と言いましたけれども、産業界は、自主的な行動で十数%削減いたしました。一方、先ほどご指摘しましたように、家庭部門は逆に増えてしまったということがございます。この考え方を貫きますと、家庭部門にも規制的な措置を入れていかないと効果が出ないということになりますが、そのようなお考えでございましょうかということでございます。

〇浅野委員長
手塚委員、どうぞ。

〇手塚委員
いろいろあるんですけれども、簡潔に。規制的な措置を何か導入しないと、これからの長期の扱いというのには足りないんじゃないかというお話があったんですけども、多分それは前提条件として規制的な措置あるいは強制的な措置のようなものを入れないと、コストが上がってやりたいという人が少なくなる、あるいは産業界もそういう直接的な規制がかからないと、そういう行動をしないという、つまりネガティブ・インセンティブをつけなければだめだということをおっしゃっているのかなと思うんですが。
一方で、先ほど野城先生のほうから、いろんな取り組みにベネフィットが見えないと皆さんやらないんで、副次的な効果として直接的なメリットがあれば皆さん行動するんですというお話があったんですね。つまりこういうWicked problemというのはどういうふうに対応するのが最も効率的かという部分なんですけども、公害であれば、恐らく規制的措置をとって、水をきれいにする、排出物をきれいにすれば、明らかにそこの住民はベネフィットが感じられる。ところが、二酸化炭素の排出というのは、規制的な措置でもって、ある地域で排出を削減しても、世界中で見たときには、GHGの濃度はどんどん上がり続けているというと、恐らく取り組んでいる人たちは、何で努力しているのにベネフィットがないんだろうという気になってしまうという問題があります。これはどういうふうにやっていったらいいのかというのが、多分共通の悩みなんだと思います。
一方で、先日、前回のこの場でドイツの方からプレゼンがありましたけれども、石炭は今やトレンドでないとおっしゃって、この場でも何回か出ていましたけども、日本の今の石炭の比率は30%ですけれども、ドイツは現実に42%で、しかもこの数年間増えていると指摘させていただきます。もし世界の趨勢に逆行している国があるとしたら、日本よりもドイツなのかなという気がしたりなんかするわけで、あるいは中国は2015年だけで少なくとも155基が新設の認可を受けていて、今27カ国で92基に新設をするプロジェクトを中国外でやられていて、しかも国のお金が250億ドルもついているというレポートが、キングスカレッジからつい先日発表になっております。
というようなことを考えたときに、要は、日本で規制を強化してもベネフィットがあまり感じられないんじゃないかと…

〇浅野委員長
恐れ入ります。まだ、あと3人おられますので。

〇手塚委員
そういうときに、この規制的措置を入れるということをどう国民の間で正当化できるのかというと、なかなか難しいんじゃないかというのが1点目です。
2点目、一つだけ。将来世代のことを考えたらば、あまり短期的なトレード…

〇浅野委員長
すみません、15分、時間を延長させてください。

〇手塚委員
それでは発言を終わりにします。

〇浅野委員長
15分延長、よろしゅうございましょうか。お答えをいただく時間が必要ですので。

谷口委員、末吉委員、崎田委員さの順にお願いいたします。

〇谷口委員
ありがとうございます。私からは、感謝とお願いという形になりますが、資料4-2で提案を下さっているんですよね、これ、藤村さんに対してなんですけれども。この4ページ目のところで、下から3分の1のところに、自治体都市政策ということで、その中に都市のコンパクト化とか都市内交通のグリーン化というのを記載していただいていると、これは大変ありがたいと思います。というのは、私はその専門分野なんですが、コンパクト化で都市の人口密度が倍になりますと、CO2、交通排出量は半分になります。物すごい効果があるんですけれども、ここを書いてくださるんなら、ぜひもう一歩踏み込んでいただきたいというお願いでございます。
それは、今日の藤村さんのご提案に、経済的手法をちゃんと導入して、率先して取り組む企業へ支援してほしいと。これは自治体に対しても同じ発想で提案を行ってほしいということです。実際問題として、今、手塚委員さんもさっきちょっとおっしゃいましたけれども、頑張っている自治体は、メリットがないんですよね。今、例えば地方でCO2が吸着してくれているような自治体というのは、地方交付税を実はもらっていて、実はそれは環境税みたいなものをもらうのに読み替えることが結構できるんですけれども、そういう意味づけ、および制度付けが大事になるんではないかということです。
あと、NPOでいらっしゃいますので、市民への影響力をお持ちだと思いますので、ぜひこういう都市政策、市民の方はあまり実は都市構想に興味をお持ちでないので、市民の無理解ということでなかなか進まないということがあって、これは実は、言い換えると、空間をリサイクルしましょうということなんですね。リサイクル運動だと一般にもご理解いただけますので、ぜひそのように一般の方々へのPRをお願いします。

〇浅野委員長
すみません。簡潔にお願いします。

〇谷口委員
はい。たくさんいらっしゃいますので、そのようにぜひお願いします。
以上でございます。

〇浅野委員長
末吉委員、どうぞ。

〇末吉委員
はい、ありがとうございます。私はかねてから強いNGOを持つ社会は幸せだと言っております。
そういった視点でお二人に改めて敬意を表します。今日は、政策提言と言うことだからだと思うんですけれども、本当に動かすに当たり、市民の持つパワー。特に消費者としてのパワーですよね。特に消費者としての市民ですよね。あるいは投票もできる、投票する市民。こういったところで、皆さんの政策提言を進めていくにはどうしたらいいのか、どういう具合にお考えになっているのか。教えていただければと思います。それからもう一つ預金者ですね。

〇崎田委員
ありがとうございます。生活者地域の目線で参加しているものとして、そういう視点の大事さというのをNGOの代表としてしっかりとお二人が明確にご発表いただいたとのこと、本当にありがとうございます。それで、一つずつ質問させていただきたいんですが、藤村さんは7ページのところで市民消費者の関心を行動に移すことが社会心理学上大事だというお話をされました。で、平田さんは最後のほうのページで、15ページで、呼びかけばかりの国民運動ではなくて行動しやすい仕組みにというご提案をいただきました。これがやはり社会、私たち市民社会を動かく大変重要なところだと思っています。この辺をもう少し具体的な制度提案という意味で、お話しいただければありがたいと思います。よろしくお願いします。

〇浅野委員長
という、大変多くのご質問がありましたがとても重要なご質問がたくさんありましたので、今の時間に全部お答えくださいというのはとても無理だと思います。大変申し訳ないことですけれども、書面でお答えをいただけませんか。特に産業界の方々からいろいろご質問がありましたこちにつきまして、丁寧にお答えいただくことは役に立ちますのでよろしくお願いいたします。それで今日は申し訳ないのですが、お一人5分ずつで総括的にお答えください。

〇藤村共同代表
はい、わかりました。どうもありがとうございました。こんなにたくさん質問が出るとは全然思っておりませんでした。ありがとうございました。
最初にやっぱり市民のレベルということを桜井さんおっしゃいましたけれども、確かにまだまだ日本の市民って、やっぱり地球環境問題は大変だと、何とかしなければいけない。責任感とか倫理観というのを日本人はすごく高いんですね。ところが、その次、じゃあそれに対して本当に知識があるのか、行動しているのかということになると、パーセンテージがどんどん減っていくという現状があります。ですので、やはり的確な情報ということをもっともっと私たちも伝えていかなければいけないなということは思いますが、ある段階にいったらさっきの崎田さんの話にもいくと思うんですけれども、でもやってもね、という、効果が見えづらいところをどう見せていくかというのは、とても大事だというふうに思っています。それでやはり国民運動だけではなく、ああ、こういうことをやると経済的にもいろいろいいのねというような仕組み、環境税のような形でもしかしたら市民にもかかってくるかもしれませんけど、それは必要性がわかればちゃんと払うと思いますし、原子力の何かよくわけのわからないところでどんどん膨らんでいる、電気料等を払うよりは多分市民の理解は得やすいのではないかなと私などは思っています。それと市民も頑張っているけれども、企業に対してもやっぱりこういう規制もかかっているのねというような、まさに規制と経済的手法と国民的な運動・啓発というようなところ、それはそろっていかないとなかなか全てが盛り上がっていかないだろうということは思っておりますし、私どもとしてその辺国民の声だけではなく、仕組みをつくるところでもNPOとして、大いにいろいろいっていかなければいけないなというふうには思っているところです。
末吉さんのような話もいろんなお金の面での効果というのもやっぱり市民ってすごく感じやすいところでもありますし、税金の話になればそれがまた、市民の投票行動に影響するでしょうし、ということで、その辺のところは非常に効果的なところではないかなと。お金お金というのはあまり好きではないんですけれども、倫理観、価値観で動く人は既に動いている、責任感で動く人は既に動いている。そうじゃない人を動かすためにはやはりここのところも非常に重要ではないかなというふうに思っています。

〇平田理事
では、書面で出させていただくということで、極めて簡単にだけお答えさせていただきます。まず、桜井委員と末吉委員の質問をまとめまして、どのようにパリ協定を実施して、あまり日本ではPRできていないのではないかということですけれども、反省も含めまして、やっぱり日本の市民社会が非常に弱いと思います。パリ協定を突き上げる市民パワー、NGOの力は欧米に比べると圧倒的に小さくて、世論形成にはまだまだ力が弱いということがあると思います。それの裏返しでもあると思いますけれども、政治が極めて無関心であることです。非常に強い問題意識を持って市民に浸透しているのは、その国のリーダーがこの問題について問題意識をもっている場合であり、それが一番、波及効果があると思いますが、日本ではそれが欠けていると思います。2点目は直線で線を引くことについて、大塚委員と根本委員のご質問ですけれども、真っすぐ直線で引くことは極めて難しいであろうと思いますが、そのためにできる政策はあると思います。一つはやはりカーボンプライシングです。期限を区切ってきちんと削減効果を見込める仕組みでありますので、それを担保する仕組みを入れれば相当程度効果が上がると思いますし、また、それをきちんと評価する仕組みがあると、どこにそれが難しさがあったのかということを、評価していくことができると思います。
3点目は省エネ法と家庭部門の排出に関する根本委員のご質問ですけれども、省エネ法は一部機能して、一部機能していないと思っております。機器の性能の省エネに関しては、極めて明確な規制で効率が向上したと思いますけれども、一方毎年の1%の工場や事業所の省エネの努力義務は機能していないと思います。また、省エネ法だけでは、中小企業に対してのインセンティブにはなりませんし、自治体にきちんと仕事をさせることもできていないと思います。また、家庭部門は確かに排出が増え、機器をたくさん増やしてきたという側面もありますけれども、全て家庭部門だけでとれる対策ばかりではなく、電源排出係数の問題を消費者側で対応することはできないということがあります。家庭部門の排出要因は何なのかをブレイクダウンして、それぞれの対策がどうなのかという議論が必ずしも突き詰められていないと思います。そうした議論した上で家庭部門での対策も進めていくことが必要だと思います。
最後に原子力のグラフですが、原発がなかりせばもっと排出は増えたであろうという議論はおっしゃるとおりかとは思いますけれども、これからは原発が増えたから、幾らか増えた分を抑制できたということを目指すのではなく、ゼロ・エミッションを目指していく必要があります。現在ほとんど動いていない原発を動かすことよりも今、動いている火力を減らして再生可能なエネルギー源で置き換えていく筋書きでこれからの未来を描きたいと思います。あとは、書面で回答させていただきます。ありがとうございます。

〇浅野委員長
意見の交換をするという機会ですので、本来ならばちゃんときちっとここで意見交換をしたいと思うんですが、残念ながら限られた時間でありますので、さきほどお願いいたしましたように、書面をお出しください。事務局がご質問者のご発言メモをすぐつくると思いますから、皆さん方のお二人のメモが不十分であるところは事務局のつくるメモを見てお答えをいただければと思います。よろしくお願いいたします。
それでは、本日はちょっと予定の時間をオーバーしてしまいましたが、この後事務局からお知らせがございます。よろしくお願いいたします。

〇低炭素社会推進室長
発表者の皆様におかれましてはご説明を、委員の皆様におかれましては活発な議論をありがとうございました。次回の日程については11月29日火曜日、13時から15時30分を予定しております。次回においても引き続き関係者へのヒアリングを実施する予定であり、ヒアリング対象者等の詳細につきましては、追って事務局より連絡を差し上げます。
よろしくお願い申し上げます。

〇浅野委員長
それでは、本日はこれで終了いたします。
どうもありがとうございました。

午後 4時09分 閉会