長期低炭素ビジョン小委員会(第6回) 議事録

日時

平成28年10月13日(木)10時00分~12時30分

場所

TKPガーデンシティ永田町 バンケットホール1A
東京都千代田区平河町2-13-12 東京平河町ビル1階

議事録

 1時0分 開会

〇低炭素社会推進室長
定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会地球環境部会長期低炭素ビジョン小委員会の第6回会合を開始いたします。
本日は、ご到着が遅れておられる委員もいらっしゃいますが、委員総数18名中10名の委員にご出席いただく予定であり、定足数に達しております。
なお、本日は、ご欠席の日本経済団体連合会の根本委員の説明員として池田様、電気事業連合会の廣江委員の説明員として小川様にお座りいただいておりますので、委員の皆様にはご承知おきいただきますよう、お願いいたします。
また、既に地球環境部会長決定とされております本委員会の運営方針において、原則として会議は公開とされていることから、本日の本日の審議は公開といたしております。
では、以降の議事進行は浅野委員長にお願いいたします。

〇浅野委員長
おはようございます。それでは議事を始めさせていただきます。
事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

〇低炭素社会推進室長
一番上に議事次第がございます。2枚目に配付資料一覧というのがございます。資料1といたしまして、小委員会の委員名簿。資料2といたしまして、小宮山先生の資料。資料3といたしまして、天野先生の資料。資料4といたしまして、森先生の資料。森先生と天野先生の連名になっております。資料5といたしまして、中上会長の資料がございます。
なお、資料4の10ページ目でございますけれども、取り扱いに注意が必要ということで、委員の皆様にお配りしているもの、それから前に写し出すものについては、中身が入っておりますけれども、傍聴者用にウエブサイトに掲載したものについては、白抜きにさせていただいております。ご了承ください。
資料の不足等ございましたら、事務局までお申しつけください。
カメラはここで退席をお願いいたします。

〇浅野委員長
それでは、本日もヒアリングを行いますが、事務局からヒアリングについてもご紹介をお願いいたします。

〇低炭素社会推進室長
2回から実施しておりますが、引き続き11月ごろまで関係者へのヒアリングを実施してまいりたいと考えております。ヒアリングは委員の皆様のご議論に資するよう、世界の潮流・海外の動向・長期的戦略の策定状況、科学的知見、技術、温暖化の影響、ライフスタイル、建物、移動、ビジネス、エネルギー供給、都市・地域・地方創生、金融システム、その他の多様な分野について行ってまいりたいと考えております。
本日のヒアリングですが、お一人目として、2050年80%削減は可能であるというタイトルで、株式会社三菱総合研究所の小宮山宏理事長よりご説明いただきます。
また、お二人目には、次世代超スマート社会を支える窒化物半導体デバイスについて、名古屋大学未来材料・システム研究所未来エレクトロニクス集積研究センターの天野浩センター長兼教授よりご説明いただきまして、続けて三人目には、超高効率GaNパワー・光デバイスの技術開発とその実証について、大阪大学大学院工学研究科電気電子情報工学専攻、名古屋大学未来材料・システム研究所の森勇介教授よりご説明いただきます。
さらに、四人目としまして、家庭の省エネ行動の促進について、株式会社住環境計画研究所の中上英俊代表取締役会長よりご説明いただきます。
4名の方々には、本日貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございます。委員の皆様につきましても、忌憚のないご議論をどうぞよろしくお願いいたします。

〇浅野委員長
それではヒアリングに入ります。
本日はいつとちょっと違いまして、小宮山先生のご発表の後、質疑応答いたします。その後、天野先生、森先生、お二方に続けてご発表いただきまして、その後、質疑応答。最後、中上先生の後に質疑応答ということにしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
発言をされるときには、いつものとおりでございますが、ネームプレートをお立てくださいますようにお願いいたします。
それでは、早速でございますが、小宮山先生、どうぞよろしくお願いいたします。

〇小宮山理事長
おはようございます。80%削減は可能である、ということでお話をさせていただきたいと思います。可能であるというのは、もちろん技術的にも可能であるし、経済的にも可能であるという意味です。2030年ももうすぐ来ますし、2050年も近い未来です。未来を考える場合、いわゆるラーニングカーブ的なものを組み合わせるだけでは適切ではありません。きちんとした論理に基づいて、要所を抑えた包括的な検討が必要です。来週発刊予定の「新ビジョン2050」という本で、80%削減は可能であるということをきちんと書いたつもりでおりますが、今日はそのさわりの部分を20分でお話しさせていただきたいと思います。
この図は、横軸は1000年でして、ここに3本の線を書いています。一つはご承知のとおりCO2の大気中濃度ですが、これと非常に相関するのは、世界の一人当たりGDPの平均値と世界の平均寿命です。1900年の寿命は31歳でしたが、今、世界の平均寿命は既に71歳になっております。人類のここ1万年の歴史で考えても、緩慢な変化が続いていたところ、産業革命が起こりその効果が一般の人に一気に広がったのが20世紀でして、人類が豊かになって、地球環境を変え始め、長寿も楽しめるようになったというのが今の時代です。今まさに、我々は特別な時代を生きているわけです。
ここ半世紀の日本のエネルギーとGDPの変遷を示したのが次の図です。最近は少しでこぼこもありますが、GDPは棒グラフでまだ増えてきています。赤がエネルギーです。1973年にオイルショックがあり日本中で省エネが始まったわけですが、そのときから12年間はエネルギーが増えていない時代です。エネルギーが増えずにGDPを増やすというのは、日本が1973年から世界に示したことです。
エネルギーが赤、電力が青ですが、最近の10年間を見ますと、毎年エネルギーが1.6%、電力が1.5%減っています。GDPはこの間、平均0.65%で成長しています。次の図ですがこのデータを用いて、1973年を1として規格化してみます。そうすると、日本の変化が非常によくわかります。73年のオイルショックまでは、GDPとエネルギーと電力が一体として増えてきています。いわゆる重化学工業中心の発展の時代で、現在の中国はまだこの時代です。そして、73年に省エネが始まります。73年のGDP200兆円ですが、これが12年後に330兆円になります。GDP1.65倍になる一方、その間エネルギーが増えなかったというのが省エネの効果です。エネルギー問題で一番重要なのは省エネです。
それ以降、徐々にGDPは増えますが、主体は第3次産業に移ってきています。今は、第3次産業の比率が既に70%を超えていますが、第3次産業がGDP1稼ぐのに必要とするエネルギーは第2次産業が必要とするエネルギーのほぼ3分の1です。ですから、GDPが増えてもエネルギーはそれほど増えていきません。私は以前から主張していますが、そうしてついに、有限の地球、有限の日本の中で人工物が飽和します。人工物とは何かというと、自動車であり、ビルであり、家です。そういうものが飽和して、効率は上がっていきます。人工物の飽和とエネルギー効率の向上によってエネルギー消費は減るというのが年来の主張でしたが、そういう時代に入り、エネルギー消費は今後もどんどん減っていきます。
これはIEAが中国のエネルギー需要を予測した図です。先ほどの図と比較してみれば、まさに中国が日本の後をたどっている状況です。前の図で日本は1973年以降、GDP200兆円から500兆円へ2.5倍になりましたが、エネルギー消費は23%しか増えていません。現在のエネルギーや電力の消費量は、既に1990年代の消費量にまで減ってきています。GDPはその間、増えてきているのです。この需要と構造の理解が極めて重要ですが、現状ではその理解がなされていないようです。
GDP3倍で、エネルギー消費は30%増えるだろうというのがIEAの予測ですが、これは日本をトレースしているだけで過去の話です。日本は今後もGDPが増えてエネルギー消費が減っていくわけですから、GDP3倍になろうと何倍になろうと構いませんが、中国でもエネルギー消費を減らす必要があります。日本の今までの軌跡に加えてさらに分析を行えば、中国に対して何を言うべきかというのも決まってくるわけです。
皆さんご存じだと思いますが、もう一つの背景として再生可能エネルギーの強烈なコスト低下が挙げられます。既に世界の風力発電のコストはこのように激烈に下がっています。太陽電池に至っては、1977年以降300分の1にコストが低下しています。我々は、こういった状況を予測していましたが、一般的にはそうではなく日本の感度は非常に低いと言わざるを得ません。
次は、世界の電源別の投資額を表した図です。一番上が大規模水力を除く再生可能エネルギーで、下から2番目の濃い線が大規模水力ですが、この二つの再生可能エネルギーに対する投資が既に全体の3分の2です。原子力は5%弱であり、世界ではマイナーな投資先といえます。今の日本は、原子力の議論に足を引っ張られて焦点が定まらない状況ですが、これは世界との対比で見れば明確です。
皆さんご存じかもしれないですが、次が資源別の発電量を示した図です。一番上の緑色が風力、太陽電池といった新しい再生可能エネルギー、青が水力、その下が原子力、褐色系の色が化石資源で、まだ70%近くあります。次の表は、世界の一次エネルギー総供給の内訳を1995年から2015年まで比較したものですが、まだ75%近くが化石資源です。残り25%ぐらいが非化石資源、CO2を出さないエネルギーですが、その内訳は大きく変わってきています。世界の原子力は2005年ぐらいでピークを打ち、今、少しずつ減ってきている状況です。1995年の6.3%が現在4.8%になっています。水力はあまり増えないと思われていましたが、実はまだ増えています。薪の比率は減ってきています。新規の再生可能エネルギーは2015年、つまり昨年には原子力を抜いています。
今日は、私から最初にエネルギーの需要の話を申し上げて、恐らく後ほど中上さんが家庭や業務の省エネの話をされると思いますが、エネルギーをどこでどのように使っているのかを考えることが大事です。エネルギーを中心に議論しているのは、ほとんど供給サイドの産業界です。もちろん需要も対象にしないことはないのですが、十分に分析できていないと思います。
エネルギー需要といえば、例えば運輸です。ここを一番よく知っているのは車をつくっているメーカーです。トヨタは、「トヨタ環境チャレンジ2050」を発表したのですが、ご覧になってください。
2050年には自動車からCO2が排出されません。電気自動車が中心でそこに水素自動車が加わることになると思いますが、電気や水素をどのようにつくるかにもよりますが、電源の8割を2050年に再生可能エネルギーにするというのは極めて合理的な目標ですから、自動車からはほとんどCO2が出されず、運輸からの排出はほぼゼロになるという可能性が極めて高いと考えています。
このように、エネルギーをどこに使うかということをきちんと見ていかないと、判断を誤ります。ラーニングカーブから需用を予測するような方法ですと、誤ってしまうわけです。
今の時代は、飽和がキーワードだというのが私の意見です。人口は飽和しています。私が学生のころ、50年ぐらい前は人口爆発、人口爆発と大変だったんですが、恐らく人類は人口爆発の危機は乗り越えています。2005年に出生数は1回ピークを打っています。生まれる子どもの数は、13,000万人でピークを打ちました。ところが、また増え出しました。アフリカで出生数が増えたことが理由ですが、アフリカを除く世界の人口はいずれ減ります。文明が発達すれば出生数は減っていきます。ブラジルの出生率は既に1.7、メキシコはまだ2を超えていますが、それでも2.2です。タイに至っては1.4です。アフリカを除く世界の国の多くは、既に人口減少と闘っています。子どもの出生数が飽和することは、人口が21世紀中には飽和することを意味します。
寿命が延びていくので、まだ人口は増えますが、いずれ人口は飽和、その中で人工物も飽和していきます。既に日本の車は6,000万台で飽和、家の数も6,000万軒で飽和しています。また、ビルの床面積もほとんど飽和しています。飽和がキーワードです。エネルギーを使う場所が飽和して、かつエネルギー効率が上がるのに、なぜエネルギーが増えていくと考えられるのでしょうか。そうではありません。今、時代は非常に大きな変革期に入りました。考え方を変える必要があります。
これが飽和を表すデータの一つで、鉄に関するものです。赤い線が日本の鉄鋼の蓄積量で、ビルや橋や自動車などを作るときに使われた鉄です。この総量は14億トンに向かっており、これが日本の飽和値といえます。一人当たり11トンです。青い線が日本社会において毎年何トン鉄が増えたかを示したものです。1970年ごろから90年ごろまで、日本では大量にビルが作られ、人々も車を急速に持つようになったわけです。その間、日本では鉄の量が増え、ほとんど飽和しました。東日本大震災の後で多少は増えましたが、基本は新しくは増えていない状況です。
次は、私が昔、地球持続の技術という岩波から出した本に書いた図です。横軸は年代で、縦軸は、一般的に採掘される資源です。鉄鋼、あるいは銅でもレアアースでも構いません。鉄であれば、鉄鉱石を掘って、酸化鉄を還元して、鉄を蓄積していくということになります。鉄はだんだん飽和していき、採掘資源は減ります。その分リサイクルが増えます。今、日本ではビルや自動車、大型の家電などは全て回収していますから、鉄の廃棄量と鉄が新たに使用される量は、日本の国内では既にバランスしています。
次は、2050年がどういう時代であるかを示すための図です。この図は中国を除いています。中国は、鉄の需要が急速に増えてきて、まだスクラップが出ていません。都市鉱山がゼロという中で、一気に成長してきた国です。ですから中国を除いて見てみます。中国以外の世界がどうなっているかを見ると、さきほど申し上げたことにまさに対応する図になっています。リサイクルの鉄が増えてきて、銑鉄がピークを打って減っています。つまり高炉が減ってきています。減ってきてリサイクルが行われることで、都市鉱山、鉄鋼、自然の鉱山の3つがバランスしています。これは電炉と高炉と言いかえても構わない話で、今は電炉と高炉がほぼバランスしています。今後、高炉が減ってきて蓄積が進むので、リサイクルがさらに増えていきます。
こうして考えると、日本は既に鉄の蓄積量が14億トンでほぼ飽和しておりますが、中国の飽和は2020年ぐらいでしょう。今既に中国の蓄積量が95億トンあって、7億トンが毎年蓄積されているということを考えると、あと5年ぐらいで一人当たり11トンという日本での蓄積量と同じになります。ですから、2020年ぐらいに中国ではインフラが飽和します。同じように考えていくと、100%の飽和ではないですが、世界がほぼ飽和するのが2050年。仮に2050年で100%飽和したとすれば、世界の鉄鉱山は全部閉山になります。人類が地下資源を掘って、これをメタルにして蓄積していき、廃棄されるとそれをもう一回利用するというリサイクルの時代に移っていくのが21世紀です。非常に大きな転換点です。寿命も飽和、人口も飽和、人工物も飽和という時代であり、もともと資源がない日本にとっては良いことです。これを日本が先導すべきと思います。
人工物の飽和の最終段階においては、はじめが道路の飽和によるセメントの再利用、次に鉄の飽和、それから銅などの飽和、最後に自動車の飽和だと思います。自動車は高くてなかなか買えないので、最後が自動車ですね。もちろんスマホもありますが、物量的にはそれほど大きな意味は持ちません。
日本を例にとれば、先ほど申し上げたように、車の数は6,000万台で一定であり、二人に1台です。各国ともこの二人に1台という数値で、不思議と飽和します。先進国は全てそういう状況で車の数は飽和しています。日本は6,000万台の車があって、12年間で大体廃車になりますから、6,000万台÷12年、1500万台というのが日本の車の内需です。これはもう増えません。
結局、毎年500万台が廃車されて、500万台新車が売れます。つまり、一定量の6,000万台が日本にあることになります。買いかえるたびに燃費はよくなりますから、ガソリンの消費量はコンスタントに減ってくるという構造です。
中国やインドなど、まだ飽和していないところに売ろうというのは正しい戦略です。しかしながら、それほど長くは続きません。中国は2007年にはまだ100人に2台しか持っていなかったのが、2014年には9台、現状時点でもう11台持っています。1年に1,500万台が売れている状況です。したがって、人工物の飽和は遠い話ではありません。
既に先進国では人工物が飽和しており、都市鉱山で必要十分な状況です。飽和すれば、必然的にそうなります。レアアースも要りません。今、日本では自動車は完全にリサイクルされています。戻ってきた自動車から、小さい磁石まで全て回収しています。海外に出ていく自動車もあるのでその分はまだですが、海外もやがて飽和するのでリサイクルされるようになるでしょう。それが2050年です。そうすると、レアアースが輸入できないといった恐怖感はなくなります。レアアースの鉱山が潰れることになります。
次が、省エネの話です。横軸が自動車の重さ、縦軸が燃費の逆数で1キロ走るのに何リッターを使うかです。自動車は摩擦に対抗して走っていて、摩擦はタイヤと地面との間で生まれますから、原理的には車の重さが2倍になれば、ガソリンは2倍必要です。ですから、メーカーは一生懸命、軽量化しているわけです。点線で書いたのが1999年のガソリン車の平均で、その下の茶色が現在のガソリン車の平均です。同じ重さの車で、エネルギー消費が1999年から2016年で30%減り、さらに軽量化により同じ大きさの車で、重さが大体20%減っていますから、この17年で、同じ型式の車の燃費は40%近く良くなっています。この程度、ガソリンの売り上げは減っているはずです。
ハイブリッド車では、大体半分になります。また、電気自動車、燃料電池車は、燃えているところがないので、鉄ではなくカーボンファイバーなどの軽量材がどんどん利用されるようになり、同じ大きさの車では重さが半分になるのではないでしょうか。そうすると、燃料消費が4分の1になり、重量が2分の1になるので、1台当たりの燃料消費は8分の1ぐらいになります。しかもその燃料に再生可能エネルギーが8割入っていれば、自動車からのCO2の発生というのはほとんどゼロになります。これが「トヨタ環境チャレンジ2050」の本当の意味です。世界最強で、しかも慎重なトヨタが宣言したことなので、達成可能ではないかと思います。
世界も省エネが進んでいます。自動車などを除くと、日本の省エネはちょっとピッチが落ちています。もう少し真面目に取り組まないと、海外に遅れてしまうのが懸念です。
次の図は、創エネルギーハウスです。例えば一条工務店というベストテンに入っている工務店が建てる家は、家で消費する電気の3倍ぐらいの電気を太陽電池で発電します。要するに、屋根が全部太陽電池、太陽電池が屋根材です。既にそういう時代に入りつつあります。太陽電池を屋根に乗せると、恰好が悪い場合もありますが、今後は屋根が太陽電池になります。ですから、例えば、お寺の屋根を全部太陽電池にすべきです。太陽電池による美しい瓦屋根、そういう時代に入ります。
日本の家屋の弱点は断熱ですので、断熱化も重要です。今の断熱のガラスは、私が十数年前に家に使った二重ガラスの倍の断熱効率があります。こういった断熱は、建築基準法の改正で対応していく必要があります。また、冷蔵庫に至っては、ここ20年ぐらいで5分の1程度にエネルギー消費は減っています。
家でのエネルギー消費は、ゼロになってもおかしくありません。ゼロというのは、発電量と消費量とがバランスするという意味です。14年前につくった私の家でさえ、バランスしています。一条工務店は3倍のエネルギーを出しているわけです。また、ビルは3階建まではゼロエネルギービルディングにできるというのが、最近のゼネコンによる研究の実績です。
太陽電池がどんどん安くなりますから、壁を太陽電池にすれば良いのです。そうすると4階、5階建までゼロエネルギーのビルディングにすることができます。これは決して負担ではなく、費用は回収できます。例えば、古い冷蔵庫は自然と買い替えますが、20年ぐらい使った冷蔵庫であれば、買い替えると34年ぐらいで初期投資が回収できることと同じです。省エネ投資をコストであると考えることがおかしいのです。
次は太陽光発電システムのコストですが、これが重要です。コスト計算は、我々はラーニングカーブでは行いません。今後、どういう技術が入るかについてかなり慎重に検討します。夢のような技術、天野先生がノーベル賞をとるような技術というのは、とりあえず想定しない前提です。今の技術に対する改良を積み重ねて設計しています。ですから、極度の長期間でなければ、概ね当たります。もちろん、予想できない革新的な技術が生まれれば、それはそれでラッキーだという計算です。
2015年で太陽光発電システムが126円/Wだとすると、2030年で60円ぐらい、つまりコストが半額になりますというのが、我々の計算です。日本でも、再生可能エネルギーは安い、量も十分にあるといえると思います。今、LNG火力が中核かと思いますが、LNG火力は13.7/KWhです。太陽光は、2013年で既に16/KWhです。十分に安くなっていますし、量もたっぷりとあります。
確かに太陽光と風力は、お日様任せ、風任せですけれども、地熱、小水力、バイオガス、バイオマス、これらは安定電源です。
KWhあたり12円とか16円とか申し上げているコスト表示ですが、太陽電池はざっと言うと、どこでつくってもコストは同じです。コストは同じですが、どこに置くかによって発電量が変わります。今の価格は東京の日照で年間1,000時間を前提としていますが、宮崎であれば5割ぐらい安くなります。割引率ですが、企業の方はすぐおわかりになりますが、システムの設置費に対する割引率を10%としていますので、さほど過小評価したコストではありません。今、海外では、ドバイやカリフォルニアですと、KWhあたり3円、4円で太陽電池の電力を売っています。これほど安い理由ですが、日照が年間2,000時間で、投資回収が早いので、割引率も低く抑えられ、5%としているものもあります。日照が2倍で割引率が半分だとコストは4分の1になります。コストはKWhあたり3円で、それを4円で売っているので極めて合理的です。我々のコスト計算は、世界のいろいろな状況を見る限り、極めて信頼できる値と考えています。
申し上げたような太陽電池、蓄電池、燃料電池などのコスト計算をベースに、今後、日本で再生可能エネルギーを中核にして80%削減を行う場合に、電力コストはどうなるのかを計算しました。次の図は、1990年ごろから2030年までの太陽電池のコストの予測です。1991年に行った予測も、かなり現状を反映しております。点線が土地代金等を含むシステムコストです。実線が太陽電池自体のコストであり、システムコストはこれの大体倍ぐらいになります。赤が日本のモジュール価格で、緑が中国のモジュール価格です。中国のモジュール価格は、2010年時点でコストを割っております。すなわち、ダンピングです。したがいまして、アメリカ、ヨーロッパは中国のパネルに対して、最低25%、最大100%ぐらいのダンピング課税をかけました。これは合理的です。本当は、日本もかけるべきと思います。こういう分析をやっていないから日本はかけられない、というような状況です。
次の表は、このことの証明になるのですが、太陽電池を設置して電気を売っているところは、大変儲かっています。特に、電気をkWhあたり42円で買ってくれたころにつくられた太陽電池は大変儲かっています。ですが、太陽電池をつくっているメーカーは、全然儲かっていません。赤字です。SunpowerJA SolarJinkoTrina Solar、それからCanadian SolarYingli、この中で中国メーカーが4つありますが、全部赤字です。

〇浅野委員長
先生、恐れ入りますが、もう40分近くなります。大変興味深く伺っていますが。

〇小宮山理事長
ちょっと時計を見間違えておりまして、すみません。
次の原子力などのコストですが、資源エネルギー庁で出しておられる数値を使っております。現実に上がっていくことは誰が見ても当然ですが、2050年までコストは変わらないという前提で考えました。幾ら上がるのかわからないので、とりあえず、例えば原子力は2050年でも8.8/kWhという想定です。そのほかに関しては、我々が評価したコストを使っていますが、2050年の計算では2030年のコストを使っております。
次の表はリチウムイオン電池ですが、これも大変安くなります。シャープ、Panasonic、エリーパワー、NECなど日本の会社は、Whで価格を見ると200円以上で売っていますが、同じものをTesla41円で売っています。この技術はPanasonicの技術です。コストからするとWhあたり15円のものを41円で売っておりますから、Teslaは儲かります。こんなことをやっていると、日本は本当にガラパゴスになります。
ガバナフリー、あるいは電力の安定性を言われる方がおられることも考慮して、負荷変動や太陽電池の発電カーブなどにも留意した検討結果が次の図です。蓄電池も2030年の価格で評価した結果、相当量が入ってきています。発電のための水素ガスタービンは、電気分解して水素をつくる想定です。我々の予測では、毎年電力の1.5%が減っていくとしており、2050年での電力需要は、650TWhになります。資源エネルギー庁は1,000TWh程度の需要としていると思いますが、需要予測を間違うときちんとした議論が出来ないことに留意する必要があります。
我々は、700TWhを標準として複数の計算をしました。ただし、上下に振っています。省エネが進む600TWhのケースですと楽々供給できるので、供給側の計算は一つです。むしろ、多くなるとどういう問題が起きてくるかを計算しております。答えだけ申しますと、80%減らす場合には、需要が700TWhであれば今の発電コストよりも小さく、10.8/kWhというコストでできます。需要が1,000TWhぐらいまでは無理をしなくても、コスト的にもある程度のことができます。ただし、1,000TWhになると、地熱をある程度入れて、安定化させる必要も出てきます。もちろん原子力でもコストはほとんど同じになります。
最後はGDPです。2050年のGDPをどの程度にするのかというのは、大変重要な議論です。表に示すように、いろいろな部門のCO2GDPがどれぐらいで、GDP当たりのCO2排出量がどの程度かなどできる限りのことを行いました。この結果を図示したのが次の図です。左側から点を打ってあり、それぞれ一つが産業に対応しています。左側の点とその次の点との差が、GDPに対する寄与です。
この一番右の点の端、赤ですと横軸の523兆円のところにありますが、これが2013年のGDPであり、線の下の面積がCO2排出量になります。CO2の排出量を80%カットするということは、面積を8分の1にする必要があります。では、何をなすべきかというと話は単純で、要するに左側が重厚長大産業です。一番左に来るのが鉄鋼、その次が化学、その次はといったように続きます。そういった産業の省エネが極めて重要になってまいりますし、これらの省エネはできるというのが我々の結論であります。
今後、伸びる産業、すなわち、情報・通信、医療・福祉、宿泊・飲食サービス、卸売・小売、金融・保険、生活関連・サービス・娯楽、教育といったようなサービスが伸びてくるわけですが、これらでGDPを増やしていくというのが、社会が望むところでしょう。もう一台車が欲しいという人はほとんどおらず、これからやはりもっとクオリティーの高い生活をしたいというのがほとんどの先進国の普通の市民の希望です。したがって、そちらに向かって行くことでGDPCO2とがコンプロマイズできるというのが私たちの結論です。
次のスライドですが、日本は資源自給国家を目指すべきだと思います。今後、経済その他が保護主義化して、トランプのような人たちが出てきて、ブロック化していく可能性は極めて高いわけです。こういった中で、エネルギー、鉱物資源、食料、木材、水など基本的なものを自給しておくというのは極めて重要です。日本は、次のスライドが示すように公害克服の経験があります。大好きな話なのですが、三島市に行くと、三島の駅から歩いて10分ぐらいで蛍の群舞が見られます。三島はもともと富士山の美しい伏流水のあったところですが、めちゃくちゃに汚してしまったものを、今、また本当にきれいにしました。結果、何が起きたかというと、観光客が10年で倍に増えています。また、三島市には空き店舗がありません。ですからエコロジーと地域の発展は共有できるのです。以上を詳しく書いたのがこの「新ビジョン2050」ですので、ぜひ委員会のほうでもご参照いただければと思います。
長くなってしまいまして、どうもすみません。

〇浅野委員長
どうもありがとうございました。申し訳ないのですが、天野先生たちのご予定がございまして、質疑応答、ほとんど不可能です。どうしてもという方、本当にお一人、お二人ぐらいしかお受けできないんですが、聞きたいことは山のようにあるのはよくわかるのですけれども、いかがでございましょうか。
では、早い者勝ちで、髙村委員、どうぞ。

〇髙村委員
座長の隣にいた特権でございますけれども、どうも小宮山先生、ありがとうございました。やはり特にこのエネルギー分野というのは非常に大事だと思っておりまして、先生がおっしゃっていたデカップリングの経済成長とエネルギー需要、CO2の排出のデカップリング傾向とか、再エネのコスト低減、これは本当に顕著だと思います。
ご質問は、世界的に見れば、そして日本の観点から見ても、技術的な利用可能性、経済コストからも可能だというのが先生のメッセージだったと思うんですが、これを現実化する、あるいは今起きている変化を加速するための戦略、あるいは今打つべき政策というのを何か先生のほうからご示唆いただければと思います。

〇小宮山理事長
私は、そのためにほとんど全ての活動をささげているようなものなので、なかなかアイデアはございません。ですが、今一番重要なのは、世界の動きを知ることではないでしょうか。パリ協定は重要です。パリ協定が、恐らく成立するだろうというのは、私はずっと申し上げておりました。なぜかというと、中国とアメリカ、すなわち世界一の排出国の中国と第二の排出国のアメリカでCO2が減り始めているからです。その事実を知っただけでも、恐らく中国、アメリカは参加するので、協定には合意できるだろうと考えたわけです。一番したたかなフランスが議長国ですし、協定が成立する可能性は極めて高いと考えていました。したがって、発効も当たり前といえます。このような世界の常識を持っておく必要があります。心配しているのは、石炭火力発電所といった座礁資産と言われ出しているものです。以上のような世界の動きをみんなで少しずつ英語を読んで共有し合うというプロセスが重要だと思います。そうしないと、ガラパゴスになります。情報鎖国です。

〇浅野委員長
ありがとうございます。桜井委員、どうぞ。

〇桜井委員
非常に勇気づけられましたけれども、本当にやってほしいことというのは、今、二つ上がったなと思うんですよ。要するに、人口にしても、あるいは人工物にしても、飽和状態に来るんだということをしっかり捉えたほうがいいと。
それからもう一つは、今、COP21のパリ協定というのは、結局、できることを積み上げていって、対策を打っていこうということでは、とてもじゃないけどだめだよと言われているわけですよね。
だから、できることではなくて、気温上昇を2℃、1.5℃という目標を達成するに必要な削減量をおよび削減方法を、飽和状態があることを十分考慮した上で、探ろうということですよね。
となると、いわゆる今後の計画、戦略をつくる人たちは、もっと現実を見詰め直したほうがいいということを言っておりますね。具体的には何を変えなければならないのでしょうか。

〇小宮山理事長
民間が主導しても政府が主導してもいいと思いますが、おそらく、少なくとも相当の数の企業なり人が動き出す、1割ぐらいのところが目立った動きをし出すというのは重要なのではないでしょうか。この本で、私はトヨタの内山田会長と対談をしていますが、「トヨタ環境チャレンジ2050」はその一つであって、極めて頼りになると考えました。

〇浅野委員長
どうもありがとうございました。まだまだご質問はたくさん差し上げたいんですが、後がございますので、小宮山先生、どうもありがとうございます。
では、天野先生と森先生から、続けてご発表をいただきますので、よろしくお願いいたします。

〇天野教授
皆さんおはようございます。名古屋大学の天野です。本日は、小宮山先生のすばらしい話を久々に聞かせていただきました。感激いたしました。
我々やっていることは、小宮山先生のお話ですと、飽和する人工物、この効率をいかに上げるかという取組になるかと思います。半導体、今、シリコンが主流ですけれども、それを窒化物にかえることによって、80%削減のうち、どれぐらい貢献できるかということを取り組ませていただいております。特に環境省ではもう実際に使ってみて、本当に使えるものかどうかというのを確認するというような作業をさせていただいております。
具体的な成果に関しましては、森先生のほうからご紹介いただくとして、私のほうはこの窒化物というのがどんなものかという概略を最初に紹介させていただきます。
これはLEDで大変有名になったんですけれども、15億人、特に電力グリッドにアクセスできない方々に明かりを提供したということで、世の中に認めていただきました。これがどれぐらい省エネの効果があるかということで、ご存じの方、多いと思いますけれども、環境省がまとめられている発電量と、それからCO2の排出量のグラフです。2011年前までは約30%が原発でしたけど、現在ほとんど止まっております。ということで、火力発電の割合が90%近くなっております。それに伴って、グラフの上ですけれども、CO2の排出量が非常に上がってきている。2030年の目標は2013年の26%減、あそこの赤い線が目標です。2050年になりますと、それを80%まで下げるという目標です。
この政府目標に対して、LEDがどれぐらい貢献できるかということと、それから環境問題に関しては、COP21114日からもう実際に施行化されるということが決まっているということで、この省エネ効果、LEDの省エネ効果の試算をしてみますと、2020年までに一般照明のうち約70%はLED照明にかわるだろうということを、富士キメラ総研が試算しています。これに基づく省エネ効果というのは、発電量全体の7%、電力料金にしますと1兆円程度の節電ということになります。
これは、LEDの別の利用の仕方ですけれども、現在、皆さんが使っているスマホ、このPCもそうですし、テレビもそうですけれども、液晶を使ったディスプレー、液晶とLEDの組み合わせのディスプレーが使われています。
この液晶というのは、実は非常に効率が悪くて、光っているうちの5%しか光が出てきていません。我々利用しているのは5%だけです。ですから、これを全部LEDにしてしまえば、その光は全部使えるわけですね。ですから、全てのピクセルをLEDにすれば、効率はもう簡単に4倍以上に上げられます。
現在、家庭の電化製品の中でテレビの占める割合というのは大体9%ぐらいですから、それを3%以下まで下げることができます。
続きましては、この省エネとちょっと違って、水の問題なんですけど、現在、ユニセフのレポートによれば、6億人以上の方がまだ安全な飲み水にアクセスできない。それから、24億人もの方々がきれいなトイレを使えないという状況です。それに対して、この青色LEDの材料を利用しますと、紫外線のLEDができます。実際、既に水の殺菌装置というのは市販することができるようになっていまして、家庭用のもの、それから産業用のものまでできるようになりました。この市場規模ですけれども、毎年6割以上のスピードでこの紫外線の小型殺菌装置というのが増加していくというふうに予測されております。
現在、この環境省を初めとして取り組ませていただいているのが、エネルギー問題の解決です。先ほど小宮山先生のお話にもありましたとおり、我々もエネルギー自給率、あまりにも低いと、4%しかない、2013年度でも6%しかない、これはもう非常に危険な状態だと思っております。
これを、現在シリコンが用いられていますけど、それを窒化ガリウムのトランジスタに変えますと、損失を5%から0.75%以下まで減らすことができる。もしもシリコンのトランジスタを全てこの窒化ガリウムのトランジスタに置きかえたとすると、発電量のうちLED、先ほど7%と言いましたけど、さらに9.8%削減することができます。
この材料、実は通信用としても非常に有望で、この次世代の5Gとか6Gと言われますけど、その次世代の通信用のトランジスタ、これはこの窒化ガリウムでないとできないというふうに考えられています。これが整備されますと、例えば、今、地方では過疎化の問題がありますけれども、一番心配なのは最先端の医療が受けられないということが大きいと思います。これも大規模なネットワークが完備されれば、地方に住んでも安心して最先端の治療が受けられる。そういったバックボーン、ネットワークの基礎のデバイス、これがこの窒化カリウムでできるんじゃないかと考えています。
我々は取り組んでいるのは、従来、LEDをつくっていた結晶というのは、実はもう欠陥だらけの結晶で、それでもLEDというのはよく光っていたんですね。ですけれども、トランジスタに用いようとしますと、トランジスタというのは一旦壊れるともう、例えば車ですと事故が起こって非常に危険なので、壊れちゃいけないわけです。ですから、非常にきれいな結晶を使わなければいけないということで現在取り組んでおります。
ということで、この窒化ガリウム、もしこの世の中に送り出すことができたら、省エネ、環境、非常に優しい社会、安心安全な社会、スマート社会、これらを実現できるその基礎になると思っております。
ということで、実際、いつまでにどんなものを開発しなければいけないかということも、もう詳細に検討を始めていまして、多分、この時期にはこんなデバイスができて、これをもし世の中に送り出したら、先ほどご紹介しました、こんな未来社会が実現できていくだろうという絵を描いて我々は取り組んでおります。
現在、どういう成果が出ているかということに関しては、大阪大学の森先生に詳しくご紹介いただこうと思います。

〇浅野委員長
どうもありがとうございました。では、続けて森先生にお願いいたします。

〇森教授
大阪大学の森でございます。先ほど天野先生がおっしゃったように、窒化ガリウムは非常にすばらしい素質を持っております。それを開花させて省エネルギーにつなげようということで、我々、環境省プロジェクトを実施させていただいております。その内容と現状と将来予測についてお話をさせていただければと思います。
それで、お手元の資料の順番を変えてご説明させていただいたほうがわかりやすいかと思って、ちょっと変えておりますが、適宜何ページ目になっているかというのはお話をさせていただきます。
天野先生がノーベル賞をとられた窒化ガリウムというのは非常に結晶をつくるのが難しい材料です。結晶とは、原子、分子がきれいに並んでいる状態ですが、1986年以前は、このように岩のような状態で、きれいな結晶をつくろうとしても、このごつごつとした多結晶と言われている品質の良くない結晶ができる状態でした。ほとんどの研究者、企業の方は、もうこれは結晶とは言えないレベルなので、青色に光るという素質はあったんですけど、綺麗な結晶が出来るか否か、先が全く見えないということで、皆さん研究開発をやめていったんですが、赤崎先生は素晴らしい先見性と不屈の精神力で研究開発を継続されて、とうとう低温緩衝層という大発見をされて、このサファイア基板の上に、綺麗な結晶ができるようになりました。このような綺麗な結晶ができるようになったことでLEDが光るようになったというところが、この窒化ガリウムの最初のイノベーションです。
このLEDでの省エネについては、天野先生がお話をされましたが、さらにこの窒化ガリウムは、もう一つの省エネルギーを実現できるという素質がございます。
それは何かと言いますと、このパワーデバイスと呼ばれるもので、一つは交流を直流に変えるとか、交流の周波数を変える、直流の電圧を変える、直流を交流に変える、ということをいたします。例えばコンセントまではこの交流が来ているんですね。パソコンとか、電池で動くものはみんななんか直流で動かしますので、交流を一旦直流に変えないといけません。今は、シリコンという材料を使っていますと、この1回変換するときに5%熱になります。これがエネルギー損失と言われているもので全くの無駄になっています。あと、コンセントからの電気でモーターを回す場合、周波数の最適化のために周波数を制御しないといけないということになります。
例えば太陽光発電で発電した電気でパソコンを動作させる場合を考えます。太陽光発電で得られた電気は直流ですから、家庭内で使うためにパワコンで交流に変えます。交流に変えた後は、コンセントから電気として使えますが、パソコン手前でスイッチング電源を使って交流を直流に変換します。パソコンの中では、DC-DC、コンバーターで電圧を12Vに降圧します。そして最後にポイントオブロードと呼ばれるコンバーターで12ボルトから1ボルトに降圧します。このように、パソコンに使うときだけでも4回パワーデバイスというものを使って電力変換しているということになります。変換時にエネルギー損失が必ずありますので、積み上げていきますと大きなエネルギー損失になります。
車でも同様で、ハイブリッドカーではエンジンがこのモーターの役割をして発電します。モーターで発電した電気は交流ですので、交流を直流に変えて、バッテリーに充電します。バッテリーの電気を使って、モーターを回すときは直流を交流に変えます。プラグインハイブリッドでは、コンセントからの電気でバッテリーに充電しますので、交流を直流に変換します。
どうやって変換効率を上げるのかですが、シリコンという材料を使っている限りは、必ず5%熱になります。これは物性で決まりますので変えられません。そこで、シリコンより省エネルギーに関わる物性の優れた窒化ガリウムを使うとエネルギー損失が10分の1程度になると理論的に予測されます。
例えば、シリコンの場合、82ワットの電気を太陽光で発電して、パソコン動作させる場合、60ワットしか使えず、4分の1はエネルギー損失になっています。窒化ガリウムを電力変換に使うことによって、そのエネルギー損失が3分の1以下になると試算されます。これは20%程度の省エネルギー化に相当します。
なぜそれが可能になるかと言いますと、窒化ガリウムを使った場合、シリコンよりもサイズが10分の1になるからです。サイズが10分の1になると、電気抵抗も10分の1になります。そうすると、エネルギー損失も10分の1となるという理屈です。では何故、窒化ガリウムではデバイスが小さくできるかですが、それは結晶が固く、電界に対して強いということです。高電界を印加しても、結晶が壊れないことが重要なのです。一方で、その固いということは結晶成長が難しいということに相当いたします。
窒化ガリウムは結晶をつくるのが非常に難しいと、天野先生も先ほどおっしゃいましたけれども、LEDはそんなに完璧な結晶じゃなくても良く光ります。LEDは転位とか電気が漏れるところが多少あっても、多少暗くなるなぐらいの程度で済むのですが、パワーデバイスのほうはそうはいかないです。パワーデバイスは、ダムの水門を上げ下げするような理屈で水を流したり止めたりしますので水門に穴があいていたら大変な事になると思って頂ければ分かりやすいかと思います。水門に凄い水圧がかかると最後は壊れてしまいますが、シリコンの水門は壊れやすく、水門を厚くしなければなりませんが、窒化ガリウムは丈夫なので、水門をすごく薄くできます。それが先ほど言いましたように、サイズが10分の1になるというポイントなのです。
しかし、固い材料といいますのは原子同士の結合力が強いので、逆に綺麗に並べて結晶をつくるのは難しくなってしまいます。皆さん、プラモデルをつくるときに、例えば接着力の強いアロンアルファでプラモデルをつくることを想像していただいたらいいんですけれども、ちょっとでも下手すると、もうとんでもないところに引っついていきます。そういう意味で、結合力が強い固い材料というのは、結晶育成が逆に難しいというデメリットがあります。そんな中で、窒化ガリウムの結晶が最近良くなってきているのでパワーデバイスの研究が進展しているわけです。
では、これから環境省プロジェクトの概要に話を移りますけれども、これは、まずは結晶がデバイスの土台として必要ですから、先ずは結晶を造るというところから始まります。Naフラックス法という特殊な液晶成長法を使って種結晶を作製し、この種結晶の上に気相法で大きな結晶を造っていきます。
この結晶から、ウエハという、この上にデバイスの土台を造ります。このような結晶成長の一連の作業は、農業的なセンスが必要で、日本人がすごく得意な分野です。窒化ガリウムの結晶成長技術は、世界で日本が一番進んでいるといっても過言ではありません。このウエハの上にデバイスというものをつくります。これで電気の流れを変えたり、電気を止めたり流したりという制御することなんですけれども、このデバイスを造って、それをパワコンやサーバー、モーターを動作させて省エネ効果を検証するということがプロジェクトの内容です。
デバイスのほうも、この環境省プロジェクトの中でいろいろな成果が上がってきております。パナソニックが造られたダイオードは、電流がたくさん流れます。デバイスは水門と例えましたが、水門は水がたくさん流れる方が良い水門となります。
また、立ち上がり電圧が低減したと記載していますが、電圧を加えても、最初、電気が流れないのですが、電気が流れないということは、絶縁体と一緒なので、すごく熱が発生します。ここの電気が流れない時間を如何に短くできるかというのが、低損失化のポイントになります。パナソニックの新しい工夫が優れたデバイスを可能にしています。
あと法政大学とサイオクスのデバイスは耐圧が強く、搭載する電気機器のエネルギー損失を7分の1ぐらいに低減することが期待できます。
LEDは先ほど天野先生もお話しされたように、かなり実用化されていますけれども、もっともっと効率よく光るようにできるということを、このプロジェクトで実証しようとしています。先ほど、LEDでは、それほど結晶の品質が良くなくても光ると言いましたけど、逆に結晶の品質が良ければもっと光りますので、その発光効率を向上させるために、品質のいいGaN結晶の上にLEDを造って、高輝度でかつ省エネのLEDを実現しようとしています。
例えば、家庭用の照明以外にもLED照明の使い方はいろいろございます。例えば、この街角の高所照明のように、遠いところに設置されるのでかなり輝度が要ります。こういう用途ではLEDが一番得意なものでございまして、そこをLED照明に変えていくことで省エネ効果を図ろうとしています。
あと、トンネルの中の照明もLEDにより、省エネ化が可能です。現在、日本には1万カ所ぐらいトンネルがございます。トンネル内は事故防止のために明るくしなければなりませんので、LEDが得意な領域です。LED化するだけで、消費電力が40%カットされますが、その経済効果は60億円と見積もられています。
パワコンでは、窒化ガリウムのデバイスによって、シリコンパワーデバイスよりエネルギー損失が4分の1から7分の1かになるということを実証しようとしています。
それ以外にも情報化社会では電力消費が問題視されていますサーバーの省エネも手掛けております。
また、電子レンジはマイクロ波を水に吸収させて温度を上げるのですが、マイクロ波の発生に窒化ガリウムのデバイスを使いますと、現状のマイクロ波を発生させるための装置であるマグネトロンよりも体積が100分の1になり、多数のデバイスが搭載できますことから、個々のデバイスのオンオフ制御により、場所選択的にマイクロ波は発生させること、すなわち必要な場所だけを加熱する選択加熱が可能になります。業務用の電子レンジやマイクロ波加熱ヒーターの化学プラントに適用しますと、大きな省エネ効果が期待できます。
環境省のプロジェクトでカバーしている電気機器等の全てに窒化ガリウムのデバイスが搭載されたと仮定しますと、この0.1億トンぐらいのCO2削減が期待できます。この量は現在の日本のCO2排出量の2%ぐらいです。
本プロジェクトが省エネに貢献できますように研究開発を発展させていきたいと思っております。
どうもご清聴、ありがとうございました。

〇浅野委員長
どうも、天野先生、森先生、ありがとうございました。
それでは、委員の皆様方からご質問がございましたらどうぞお出しください。名札をお立ていただけますか。
それでは、増井委員からどうぞお願いします。

〇増井委員
どうも貴重な説明、ありがとうございました。1点だけなんですけれども、こういった製品の実用化というのは大体いつごろ見込んでいらっしゃるんでしょうか。
以上です。

〇浅野委員長
それでは、恐縮でございます。質問を先にさしあげますので、よろしゅうございましょうか。
小川さん、どうぞ。

〇小川説明員
非常に興味深いお話をありがとうございます。
省エネには非常に効果もがありそうですけれども、増井委員と同じ質問になりますが、実際にLEDも、実用化されて普及するのにかなり時間がかかっているように見えており、これは普及にかかる時間としてこれくらいが普通なのか、もうちょっと短縮する方法があるのか、いい技術は早く普及するといっても、これぐらいの時間がかかってしまうのか、その辺についてコメントいただければと思います。

〇浅野委員長
では、池田さん、どうぞ。

〇池田説明員
文科系の私にも非常にわかりやすいご説明ありがとうございました。やはり省エネ低炭素化を進めるに当たって、技術革新、イノベーションが大事だなということを実感いたしました。イノベーションだと、それをいかに普及していくかということが大事かということを実感しました。
そういった意味で質問なんですけれども、日本でこうしたイノベーションを起こす環境を整備するためにどのようなことが重要かと、また政府はどのような政策をとるべきかと、何かご知見があれば教えていただければと思います。

〇浅野委員長
それでは、谷口委員、どうぞ。

〇谷口委員
私も専門外なんですが、非常に興味深く聞かせていただきました。
質問は、従来のLEDはちょっと結晶がよくなくても大丈夫、パワーデバイスのほうは結晶がよくないといけないということで、LEDも長寿命化されているという話だったんですけど、必ずしも最初の予想ほど長寿命じゃないというふうな議論も、LEDライトなんか出てきているんですが、パワーデバイスの場合、これだけ完璧なものをつくられたとしても、耐久性の面で、ちょっとでもどこかが悪くなってしまうと耐久性としては問題が出てくるのかどうか。
あともう一点だけ、途中で農業的センスが非常に大事だとおっしゃったんですが、大変興味深いので、どういうことなのか、もし時間があればもうちょっと教えていただけばありがたいです。

〇浅野委員長
それでは崎田委員、どうぞ。

〇崎田委員
大変わかりやすく、ありがとうございます。
それで、生活者の目線で質問させていただくと、LEDのランプなどは、初期費用は高いけれども長く使えるので、結果的には非常にコスト的にもリーズナブルだという理解でいると思うんですけれども、この新しいガリウムナイトライドが入ったものに関しても同じような性質と考えれば、いわゆる費用は、初期費用は高いけれどもという、その辺の価格への影響を教えていただければと思います。よろしくお願いします。

〇浅野委員長
よろしゅうございましょうか。それでは、ただいまご質問ございましたので、どうぞ。どちらからお答えいただけますでしょうか。

〇森教授
製品化時期と、先ほどのLED照明の低コスト化と初期導入費用の関係は、深く相関がございまして、結局、コストは製品がたくさん出れば確実に下がりますが、最初は卵・鶏の関係になってしまいます。LED照明も、当初、高額でしたが、それは販売数量が少なかったからです。それで、この数量が増えるキッカケが何時、どのように起こるかということが非常に重要になってくると思っています。これは良いキッカケとは言えませんが、LED照明が広まったのは、東日本大震災だったそうです。震災以降は製造される照明が全てLED照明になりました。そうなりますとコストが下がり、結果的に益々売れるようになる。このように何かのキッカケで製品の導入が始まり出すと、急にコストが下がり出します。
パワーデバイスでは、耐久性や信頼性が一番重要になります。今、シリコンが主流ですけれども、シリコンというのは元素が一つしかありませんので、とても結晶を造りやすい材料です。窒化ガリウムという材料は、原子間の結晶が強いことで結晶が難しく、品質に関してまだまだ課題がありますが、安全な材料で何とかなるという良い面もあります。例えば、ダイヤモンドは固いといっても、何かあるとグラファイトに相転移する可能性がある。そういう問題があると安定とは言えないんですね。窒化ガリウムはそういう点ではすごく安定なので、LEDが実用化できたんじゃないかと思います。パワーデバイスのように本当にハードルの高い信頼性が求められる分野では、この窒化ガリウムは素質的に優れているのではないかと考えております。
農業的センスの意味ですが、結晶成長には丁寧さと根気強さが必要で、お百姓さんがお米や野菜を育てるときに我が子を育てるような感覚を持って結晶を育てることが重要になってきます。海外の結晶成長に関わる研究者を見ると、結晶は物であるという扱い方をしています。一方、日本では、結晶を我が子のように育てているように感じます。シリコン結晶に関しても、日本メーカーがすごく頑張っていますし、窒化ガリウムの結晶でも日本がリードしていて、他の国が追随できてないというのは、そういう感覚の違いが根本にあるのではないかと思っています。

〇天野教授
普及のご指摘がありましたけれども、これは例えばLEDの場合、最初何が普及したかというと、スマホなんです。特に女子高生がいっぱい買ってくれたということで、スタートのときに非常にうまくスタートできたんです。交通信号機、あれはもうLEDにするほうがいいに決まっているんです。ただ、既存のランプメーカーとの、何というか、言い方を考えなきゃいけないんですけど、ということがあって、それをうまくやっていくということがLEDの普及には重要でした。かなりそこでは時間がかかりました。
それから、整備するためにはどうしたらいいかというご質問がありましたけれども、これはやっぱり実際、物としていいのは頭ではわかっていても、実際使ってみると、いろいろ不具合が出てくる、問題が出てくることがあるんです。ですから、いろいろ試す場を整備するということが重要かなと思います。LEDのときも、やっぱりいろいろな方々が試して、ここはいい、ここは悪いというのを、それでも比較的短期間に出したので、普及が進んだということもありますので、いろいろ試す場ということが重要かと思います。
耐久性の問題、LEDも最初長寿命と言っていて、あまり寿命は長くないんじゃないかと、問題が多いんじゃないかと言われる時期がありましたけども、実はほとんどの問題はLED自体、チップ自体ではなくて、LED周りの電源回路とかの問題、特にコンデンサーが実は壊れていたとかということが多いんです。
パワーデバイスに関しては、これは扱う電圧、電流が桁違いに違うので、これは実際使ってみて試さないとわからないという点はあります。
私のほうからは以上です。

〇森教授
イノベーション創出の環境をどう整備していくかのお話をいたします。イノベーションは大きく分けて2種類あると思っています。1つは、皆が困っている課題を何とかしようというパターン、もう1つは全然人が考えないことをポンと思いつくことです。後者の例では、フェースブックとか、ヤフー、グーグルとか、明確な課題を解決すると言うよりも、面白そうで始めたものが世界を席巻するようなイノベーションです。窒化ガリウムのLEDなんかは、課題は明確であるがどうしようもなかった難題を解決した、天野先生のイノベーションは前者のパターンです。課題解決型のイノベーション創出では早く解決しないといけないというプレッシャーがドンドン強くなっていきます。一方でプレッシャーが強いほうが逆にイノベーションは産まれやすくなるとも言われています。そのときに、重要なのは、プレッシャーの中でも楽しんで頑張れるかです。天野先生がすごいのは、1,500回実験に失敗されても、めげるどころか、その過程を心から楽しんで1,501回目で成功されたことかと思います。そのような心の状態をどうやって保てるのかというところがイノベーション創出には重要と思います。
私はトラウマを解消するためのプロジェクトを実施しています。そのトラウマを盲導犬の例えで説明します。盲導犬はその任務がとても難しいので非常に厳しい訓練を受けます。その盲導犬を育てるときに、生後1年間は凄く可愛がらないとならないそうです。その1年間の中に不当に殴ったり、いじめたりすると、それがトラウマになって、安心感がなくなり、その後の訓練に耐えられなくなります。人間も同じで、例えば小さいころに自分の失敗を両親や友人に酷く怒られたり、からかわれたりされると、それがトラウマになって自信を失ってしまい、困難に直面したときに、どうせ自分には出来ないと諦め、イノベーション創出に至らなくなります。
困難な時に、どうやったら解決策を見出して、イノベーション創出に繋げる確率を増やせるかというと、実施する手数を増やすしかありません。今までやっていないことをとにかくやると。そうすると、当たる確率が増えるんです。天野先生は1,500回以上、手数を変えて実験を継続されました。今もおっしゃるんです。とにかく楽しかったと。僕らだったら絶対1,500回もの実験はできません。天野先生は1,500回を失敗と思っていなかったというぐらい、ある意味、気軽にいろんな挑戦をされたんですけども、そういう心の状態をどうやって育んでいくかということが重要です。
イノベーション創出のための環境としては、失敗を容認することが必要と思います。例えば、親御さんが子どもにリスクを負わせない家庭が増えています。受験戦争に勝って、良い学校に行かせて、良い会社、良い役所に行かせたほうが安全だという育て方をすると、リスクをとったら危険ではないかというメッセージが子どもに伝わってしまいます。先日、東大の先生と、東大発ベンチャーの件数が中々伸びないというお話をしていました。留学生はそういう活動にとても熱心だそうですが、日本人は少ないそうです。東大に合格するためには親御さんがかなり教育熱心な方が多いと思われます。そうしますと、試験でも解ける問題から解くというように、無意識のうちにリスクをとるよりは安全の方を選ぶことに繋がってしまうのではないでしょうか。やはり、イノベーションは一番の難問に挑戦するようにリスクをとっていかないと生まれにくいと思うんです。
やはり、入学制度を変えるとかしないと、親御さんの考え方が変わりませんので、そういうところから取り組んでいくことが、イノベーション創出の環境造りには必要ではないでしょうか。

〇浅野委員長
ありがとうございました。
ほかに何かございますか。事務局から何かお尋ねしたいということがございますか。
中上先生、いかがですか。大丈夫ですか。
どうもお忙しいところ、ありがとうございました。

〇森教授
どうもありがとうございました。

〇浅野委員長
それでは、最後になりましたが、中上さんからご発表いただければと思います。よろしくお願いいたします。

〇中上代表取締役会長
冒頭から小宮山さんから宿題が回ってきましたけれども、私は経済産業省の省エネ小委員会の小委員長をやっているものですから、そういう意味では省エネルギーに対しては全面的にレスポンシブルでなきゃいけないわけですから、ご批判、ご指摘はそのとおりでございますけれども、なにせ省エネルギーが扱う範囲というのはべらぼうに広くて、これは経産省でも申し上げているんですけれども、ほかの議論は大体専門性が絞られていますけれども、省エネルギーというと、全社会、全国民が対象でありますから、とても省エネ小委員会一つで全産業はなかなかカバーできない。今の先生のようなお話が議論に出てくることも全くないわけです。
そういう意味では、本当に組織的に抜本的に変えてもらわなきゃ困るというような愚痴を経産省の方に申し上げたりしているわけで、なかなか簡単に政府の機構は変わらないものでありまして、今日は環境省に出てきてお話をするということなので、多少はその辺もお含みおきの上、聞いていただければと思います。
今日、私に与えられたテーマが省エネ行動ということなんですけれども、実は冒頭からいろいろご指摘がございましたけれども、需要が最も基本になって、その需要をどう賄うかという上に、いろんな供給システムが乗ってくるわけですから、本当は需要のことをもっともっと掘り下げていかなきゃいけないんですが、なかなかそうないというのは、実はデータがあまりないんです。
今日後ほどご紹介しますけども、来年から本格的に家庭用のCO2の統計調査を政府の公式統計という形で環境省から公表されるわけでありますけれども、その事前の調査をやった結果をお見せしますけれども、こういったデータがないまま議論していると。
家庭用のエネルギーが増えているから、ある意味、けしからんというような目で見られている。だからここを省エネをすべきだとおっしゃるんですけれども、先ほど、小宮山先生のお話がありましたように、これもお見せしますけれども、実は家庭用のエネルギーは2000年前後から減少傾向に移っているわけです。どこを見て増えているかと言っていると、世帯数が増えているものですから、掛け合わせると総量はそんなに見かけ上は減っていないんですけれども、家庭用のエネルギーを減らすということは、1世帯当たりずつ減らしていかないと、世帯数を減らすなんていうことは、どんな強権的な指導者だってできないわけでありますから、世帯当たりのエネルギー消費に着目していただくと、ずっと早くから減少傾向に移っているわけであります。それをあたかも家庭用が増えている、業務用も増えているわけでありますが、だから民生を省エネしなきゃいけない、消費抑制しないといけないというのは、枕詞のようにおっしゃいますが、そういうお声が聞かれますが、そういった方は大体素人だと思っていただいて構いません。
あまり脱線しますと問題になりますので、スタートしたいと思います。
消費者行動って何かということなんですが、いろんな定義があるようですけれども、直感的には無駄を削減するということで、皆さんですと、暖房の温度を少し下げるとか、冷房の温度を上げるとか、少し使用を差し控えるとか、そういうふうに直接的な行動を思い浮かべられるかもしれませんけれども、実は無駄な削減だけではなくて、機器を買いかえるときに、より省エネ性の高いもの、CO2を出さないものに買いかえていくとか、そういう購買時の選択行動にかかってくるわけでありますし、それから、機器の使い方です。
私が消費者行動に興味を持ちましたのは、非常に行き届いた家電製品、商品が巷にあふれておりますけれども、それを本当にユーザーが使いこなしているんだろうかと。この辺の調査データを見たことがなかったんですが、たまたま情けないことにアメリカの友人が日本のビル用の空調システムでありましたが、エアコンをいろんなところに配って、果たして本当にユーザーが使いこなせているかというのをビデオに撮りながら検証しているわけです。もちろん日本の製品だけじゃなくて、ほかの国の製品も扱っているわけでありますけれども、間違いなく性能は日本がピカ一です。断トツにいいと。しかし、使い出すと、使いこなせない。最後、見せられたのは、日本の複雑なリモコンのパネルをユーザーが叩いているわけです、思いどおりにならないから。それを見せつけられて、こういう状況だぞと言われて、これは困ったなと。日本でもそういうことをやらなきゃいけないなと思ったんですが、これがなかなか難しくて、逐一現場で人がどう使っているかということを調べるというのは、物すごい手間暇がかかるわけです。家庭内エネルギー調査をする以上に大変なわけです。
ただ、若干、私が期待しておりますのは、いわゆるIoTというInternet of Things、これが今後かなりいろんなところに普及してまいりますと、にわかにそういった情報が明らかになってくる、しかも、そんなに無理をしなくても評価できる時代が来ると思います。
そうなるまで待っている時間はあまりありませんけれども、社会が進歩しているということは楽しみであります。
そういうことで、ここに書いてありますように、これまでの政策は、どちらかというと、基準とか、技術開発とか、もちろんこれは非常に重要ですし、先ほどの天野先生のお話しを拝聴しておりまして、まさにこういう技術が来れば、目覚ましい進歩が目の前にあるなと思いますが、さはさりとて、震災以降は、エネルギーの使い方への関心が極めて高まったわけです。後で環境省のデータをお見せしますけれども、LEDにつきましても、先ほど森先生からご指摘がありましたように、2011年以降、LEDに対する建物のつくり手の対応が全く変わっているわけです。あるいは消費者の行動が変わっているわけです。
こういったことをお話しする前に、心理学などの行動科学の知見を利用した行動変容を促す取組というのは、結構、アメリカ、ヨーロッパでは随分早くからやっているんです。早いと言っても10年ちょっとぐらいですから、そんなに大きなビハインドじゃないんですけれども。省エネ分野へは、こういうものをどんどん入れ込んでいくべきだろうと思っておりまして、それも若干後ほどご紹介してみたいと思います。
また、ご案内のように、資源エネルギー庁で長期エネルギー需給見通しを改訂したわけでありますが、その中にも消費者の省エネ行動活性化、エネルギー消費の見える化がという形で明確に明文化されたんです。この文が入るまでは、国民運動を何とかと書いてあったんで、国民運動なんて、そういう手あかのついた言葉じゃだめだから、この言葉にしてくださいと言ったら、私が言った言葉をたまたま入れていただいたんですが、まだまだそれが現実にはなかなかフィールドに定着しておりませんけれども、そういう背景があるわけであります。
これは復習になりますけれども、左側が家庭用のエネルギーの消費量の推移でありまして、色分けしてあるのは用途別でありまして、一番下の暖房から始まって暖房、冷房、給湯、照明・家電製品・その他となっておりますが、お手元の資料を確認していただいても結構ですが、大体95年以降、横ばいから減少傾向に転じているわけです。1世帯当たりのエネルギー消費です。
直近のここ20年ぐらいの動き、1995年から2014年まで見てみますと、ちょうど2005年、2010年を境にしまして、あらゆる用途が減少傾向に大きく振れてきているということであります。これは家庭用だけですから、あまりよくわかりませんが、先ほどの小宮山先生の資料の中に日本のエネルギー総量も減ったとありましたけれども、そのうち本当は着目しておかなきゃいけないのは、2008年のリーマンショックが非常に大きく効いているんです。省エネももちろん効いているんです。ポジティブに評価していい部分のエネルギーの減少傾向と社会的にはどちらかというとネガティブ、景気が不況になってしまって、社会活動が停滞してしまうということによってエネルギーが減るということは決していいことじゃありませんから、それは仕分けをして評価しないと、ただ単にデータだけを眺めていますと、全体がぐっと減ってきているように見えますけれども、若干注意が必要かと思います。ただ、そうは言いましても、家庭用は着実に下げてきている。
これは先ほどからお話ししている環境省の家庭からの二酸化炭素排出量の推計に係る実態調査全国試験調査、来年から本格調査に入りますが、全国試験調査という名前になっております。これはぜひ環境省にアクセスして、このデータにアプローチしてみてください。すばらしいデータがいっぱい集まっております。とても1時間、2時間じゃご紹介できないぐらいの情報量がございますので、ぜひ帰って見ていただきたい。その中から持ってまいりましたけれども、左側は2011年以降に建築された戸建て住宅に住む世帯はCO2排出が顕著に少ないということです。建築年次別にずっと上から並べてありまして、下から二つ目が2011年以降に建てられた住宅でありますけれども、明らかにCO2の排出量が減っているわけです。
だから2011年というのは、先ほど森先生からもご指摘がありましたように、非常に大きな意味で、不幸なことではありましたけれども、こういった人々の消費者行動といいますか、あるいは、エネルギー消費に対する考え方というのは、大きく変わったことがご覧いただけると思います。
右側は用途別になっています。左側はエネルギー種別でありますが、ご覧になっていただきますと、一番右が照明・家電製品等でありますけれども、それまでの住宅がほとんど2を超えるような状態ですが、1.6ぐらいですから、2011年以前の直前の住宅と比べても2割ぐらい家電製品・照明等が減っているわけです。非常に2011年というのは大きな意味を持った年だったと思います。
これは省エネ行動の実施率、どんな省エネ行動をやっていますかということをこの調査で聞いているわけです。このグラフの見方は、18項目の省エネ行動を並べているわけであります。そのうち2割ぐらいしかやっていない、2割もやっていないという人が一番上にありまして、一番下が平均ですから、下から2番目が8割方やっていますよという人と、全体の平均と比べると、15%ぐらい少ないわけです。やはり、省エネ活動について着目しながら暮らしていらっしゃる方は、平均に比べて15%ぐらい少ない。2割以下の人とはもっと大きな開きがあることがおわかりいただけると思います。
これが後でチェックしていただきたいんですが、ごくごく一般的な皆さんよくご覧になるような省エネ行動でありまして、決して難しいことを聞いて、やってくださいと言ったわけではないということであります。
これはアメリカで我々より一足先、二足先ぐらいにいろんな活動をやっていますが、アメリカで推計されたデータの一例でありますけれども、ライフスタイルにあまり大きな変化を与えない、影響を与えない範囲で行動を変えてもらうと、どのぐらい削減余地があるだろうかということを、ずっと積み重ねていくと、フルにこれを全部できるというのはなかなか相当まめな人でも難しいかもしれませんけれども、2割近く削減の余地があるというわけです。
この場合は、そんなに大きな機器の買いかえというのは入っていなくて、どちらかというと、直接的な行動に関与するというふうに考えていただいたほうがいいと思いますが、やはり、大きいのは暖房とか冷房、給湯といった熱需要に関わる分野になりますけれども、極めて大きく五、六%ぐらいありそうだと。
ただ、注意しなきゃいけないのは、アメリカの暖房のエネルギー消費量は日本の五、六倍ありますから、完全にセントラル空調がスタンダードでありますから、これをこのまま日本に持ってくるわけにいきませんけれども、そういった背景はあるにせよ、こうやって行動を少し変えていただくことによって、結構な積み上げがあるんだと。これはヨーロッパでも、ほぼこういった同じようなデータが出てきておりまして、消費者行動を変えてもらうということに対して、そんなに大きな費用がかかるわけじゃないので、政策的には極めて有効ではないかということは欧米では高く評価されているようであります。
イギリスなんかは、それ専門の部署が省庁の中にできているように聞いております。直接最近伺っていないので、わかりませんが、そういうふうな話も聞いております。
これは省エネ行動のプログラムのアメリカでの例でありますけれども、これも詳しく説明していると時間がありませんが、アメリカで2008年から5年ぐらいの間に100以上の供給事業者に対して300近い行動プログラムが実施されているそうであります。
このうち半数以上は家庭用エネルギーレポート、これは後ほどご紹介いたしますけれども、要は請求書に附帯して、おたくのエネルギー消費はほかの家と比べると、こうですよとか、一番少ない人と比べるとこのぐらい多いですよとか、それに対して、こういった辺りを少し着目されると減る可能性がありますよと、そういうレポートをA4裏表1枚の紙で配っているという方式でありまして、これは欧米の消費者行動の学会に行きますと、必ずホームエナジーレポート、HERというのが出てくるわけでありますが、これを使っているのが非常に多いというふうにここでは書かれております。
それから、フィードバック、これは見える化であります。見える化もいろいろレベルがありまして、専用のディスプレーを配って見える化するものもありますし、専ら最近はスマートフォン上に全部情報が来て、それで操作できる、あるいは確認できる、これが主流になっているようであります。
認知的なプログラムとか、計算的なプログラムだとか、社会交流的プログラム。社会交流的プログラムというのは、友達同士で省エネゲームをやって競い合うとか、コミュニティ同士で比較して競争するとか、そういったものを含むわけです。いろんなメニューが出てきていることがおわかりいただけると思います。
これはまた全く違うアプローチになると思いますが、これから日本でもこういうことを検討する必要があるんではないかと、私自身は個人的には思っておりますけれども、これはアメリカのエネルギー供給事業者向けに省エネを義務化しているわけです。今、経産省でもサードパーティに対して新しい省エネのステークホルダーになってもらうということで、いろんなサードパーティを探しているわけですが、その中の一つにエネルギー供給事業者というのが我々省エネ小委員会では検討しておりますが、アメリカではエネルギー供給事業者、すなわち電力会社、ガス会社に対して、一定の省エネを義務づけるわけであります。
これはアメリカですから、連邦制でありますので、州別でありまして、やっていない州ももちろんありますけれども、需要家に対して省エネプログラムを提供して、一定の省エネ義務目標値を達成しなければならないと。
幾つか下にポイントが書いてありますけれども、インセンティブとペナルティーということで、エネルギー供給事業者は、省エネ目標値の達成状況に応じてインセンティブとペナルティーが与えられる。報酬と罰金と書いてありますが。
省エネプログラム費用の回収保証、省エネを義務づけるということは、エネルギー供給事業者にしてみれば、売上が減るわけです。ただではなかなかできませんから、何がしかのコストはかかるわけです。昔のDSMプログラムが非常に盛んだった二、三十年前の欧米では、住宅の省エネ回収費用を電力会社が負担したなんて例もあるんです。もちろん、それは収入階層によっていろいろ補助率は違いますけれども、あるいは、省エネ型の冷蔵庫を買うと、エコポイントと同じでありますが、100ドルのクーポンを上げたなんていうことをやってきた経緯がございますから、そういった意味で日本はなかなかこの辺は免疫が足りないわけでありますけれども、要は省エネプログラムの費用を、どうやって回収していくかと。
Ratepayer Fundと書いています。全顧客から徴収する資金からの回収が認められている。これはいわゆる、今、PVでやられている、再生可能でやられているFITですね。それと同じような意味を持っていると思います。それで省エネ投資に対する利益率が保証されている。したがって、電力会社は、デカップリングと書いてありますけれども、販売電力量に関わらず、一定の販売収入が保証されているため、省エネをしても販売収入は減少しない。こういうふうなサポートがないと、インセンティブは働きませんから。
右側には、いろんなプレイヤーがこの中に関わってくるわけでありますけれども、上から公益事業委員会がそういう指令を出しますと、エネルギー事業者が計画を立て、省エネプログラムを立案して、それを実行に移すわけでありますが、そのときにプログラムの提供者としてESCO事業者、最近日本でESCOは少し下火になっていますけれども、Energy Service Companyの略ですが、省エネをやって浮いた電気代、ガス代で省エネの工事費を、あるいは必要な費用を回収していくという、そういうビジネスモデルですが、そういうESCO事業者であるとか、あるいは建設事業者であるとか、自治体であるとかというところに実行を任せて、実際に現場で省エネをやってもらう。
それを報告して、それが達成できていれば、それに対してエネルギー料金に上乗せした全需要家からプログラム費用を回収する。エネルギー事業者が得べかりし利益をこれで回収していくというシステムです。
これはアメリカだけではなくて、ヨーロッパでもEnergy company obligationと。イタリア、フランス、イギリス等でも活発にこういったプログラムを進められておりますけれども、いずれ、こういうふうな時代が来るんではないかと。今、自由化されたばかりでありますから、いきなりこういうことを持ち込みますと、大混乱になりかねないんで、しばらく時間を置いて、じっくり日本型のプログラムを立てながら検討していきたいと思いますが、海外では、こういうことをやっているということであります。
これはアメリカの例でありますが、Behavior, Energy & Climate Change、最近、向こうでは温暖化という言葉はなくて、全部Climate Changeで出てくるので、日本もClimate Changeにしたほうがいいんじゃないかと、私は言っているんですけれども、そのほうが一般的な市民にとっては、気候が変わっているということは肌感覚でわかりますけれども、温暖化というのは、全然ピンと来ないですね。何となくほんわかしていて、あまり危機感がないのでClimate Changeにしたほうがいいんじゃないかと思いますが、BECCという会議がありまして、ここに書いてありますように、2007年から開催し、大体毎年700人ぐらい、来週またアメリカであるものですから、私どもは行って彼らと意見交換してまいりますけれども、参加者の専門は心理学、社会学、経済学、物理学、生物学、マーケター、教育、政策研究者、ユーザビリティ、ITエンジニアと非常に多岐にわたっております。
もう一つ特筆すべきは、半数以上女性です。あるセッションに行くと、全員女性、パネリストも、会場もほとんど女性というような。日本はそこまで全くまだ追いついていないわけであります。まさにこういう話をしようとすると、当然女性は半分は入って議論してもらわなきゃ困るという話であります。
以下の3機関というのは、公的な機関、スタンフォード大学とアメリカのACEEEという省エネの学会と、それからカリフォルニア大学のバークレー校の研究所が主体になって運営をしております。
それに倣って、日本でもこういうのをやったんです。ご存じの方はいらっしゃいますでしょうか。あまり売れていないかもしれませんが、環境省さんにはここ3年ばかり随分支援をしていただきまして、ご挨拶とか、いろいろパネルディスカッションにも参加していただいたりしました。今年は9月に慶応大学の三田のキャンパスでやりまして、250人ぐらいの参加がございました。まだまだ細々でありますけれども、今年で3回目でありましたので、来年またぜひこういうのをやろうと思っていますが、どこかで見かけたら参加していただければ、お出かけになれば、日本型のものなんかだと思いますけれども、残念ながらまだ女性の参加は2割ぐらいかな、2割いますかね、2割ぐらいです。
これはアメリカの事例、消費者行動を促すための一つの手法として、サーモスタット、日本でもサーモスタットというのは使っているはずでありますけれども、いろんなサーモスタットがあるわけでありますが、12種類ですか、サーモスタットをテストしまして、丸印がついたとこが評価が高かったということでありますけれども、使い勝手であるとか、好みだとかを調査しているわけでありますが、こういった調査を結構地道にやっているというところが、先ほどお話ししたように、日本はまだまだこの辺のフォローが遅れているなと思います。
これはまた別な情報です。リアルタイムに気象情報を送っている。そこにエネルギー消費のデータをくっつけて送ると、結構省エネが加速していると。この例では、2年間のパイロット事業でエアコンの電気消費量が8%減ったと、家全体の電気消費量が4%ぐらい減りましたというふうな実績が出ているようでございます。これは先ほどお話ししたホームエネルギーレポートの例でありますが、左側に、おたくのエネルギー消費が多いか、少ないかというのが比較してあるのとか、前年との比較であるとか、どんなことをやったらいいという省エネアドバイスであるとか、これはアメリカで使われているモデル的なエネルギーレポートの例でありますけれども、大体これを送るだけで2%程度の省エネ効果が得られたというのがアメリカでの実績だそうであります。これはOpowerという会社からの資料であります。
日本でも、それを一度トライしてみようかということで、昨年、経産省で予算化してもらいまして、残念ながら単年度の調査だったものですから、2カ月しか送って、消費がどうなったかというチェックができなかったので、これはぜひもう少し深掘りして調査をしてみたいと、今思っているところでありますが、私どもの研究だと、北陸電力さんとOpowerという先ほどの会社と組んで、消費者の省エネ意識の変化がどんなにエネルギー消費に関わってくるかと、1,500世帯を対象にして実施しまして、2万世帯ですね、ごめんなさい。送付世帯2万世帯と送っていない世帯2万世帯を比べて、どの程度、エネルギー消費に変化があるかというのを見たわけであります。
これを見ますと、左側のほうでいきますと、12月は始めたばかりですから、ゼロですけれども、それから、それから1カ月たつと0.9%、2月の結果で1.2%ぐらい減っている。
右のグラフは何を表しているかというと、このOpowerという会社が世界中でやっている例でありまして、非常に変化はしていますが、大体1年ぐらいたつと、1%から1.5%ぐらいのところに収斂して、安定してくるということでありますが、日本のこのスピードでの省エネの効果の上がり方を見ると、それをずっと上回るカーブで行くんじゃないかと、ここが試せなかったものですから、機会があれば、ぜひフォローアップしてみたいと思っております。
1%とか、1.5%という数字は極めて小さく思われるかもしれませんが、日本中の家庭の電気の消費量の1.5%から2%削減するためにはというので、何万kWhと書いてあるので、そんなの大体普通の人が聞いても、プロが見てもわかりませんから、もうちょっとわかりやすい指標にしろと所員に指示しまして、最新の冷蔵庫を買いかえたらどのぐらい省エネになるかと。それを1%から1.5%稼ぐためには何台ぐらい売らなきゃいけないかと。現状の冷蔵庫のストック、皆さんが持っていらっしゃる平均効率を推計しまして、古いのも新しいのもありますが、推計しました。それに対して、この1.5から2%に相当するkWhをはじき出して、それを逆算して、新型冷蔵庫への交換に置きかえると、どのぐらいになるかというと、大体1,500万台か2,000万台ぐらい。これを金額にすると、大体10万円では買えませんから、安く見積もっても1兆。2兆という金が必要になるわけでありまして、それがこういったレポートが全国全世帯に拡がれば、これがうまく成功するかどうかはもっと深掘りしなきゃいけませんけれども、極めて大きな効果があると。
私が言いたいのは、もう一つありまして、1%、2%というと極めて小さく思われるかもしれませんけれども、いかに1%、2%の省エネ消費者行動の施策をたくさん打っていくかということが大事なんです。いきなり一つの施策で10%、20%なんて、それは無理です。そんな無駄は決して日本の住宅はやっていないということでございますから、いかに小さいけれども、小さいものを積み重ねていく。その中で消費者行動というのは大きな意味を持っているということになるんじゃないかと思います。
レポートの認知度とか閲覧状況から見ていただければいいんですが、これがおもしろかったんですけれども、電力会社としては、エネルギー消費が減るという懸念がありますけれども、送った世帯と送っていない世帯は電力会社に対する評価に差がでているんです。電力会社が家庭の削減量を教えてくれたり、サービスがいいかというと、送っていない世帯は半分ぐらいの世帯が全然そう思っていないと。ですけれども、送った世帯は、俄然そういう評価率が高くなって、電力会社に対する省エネサービスの評価が向上してきている、あるいは電力会社に対する、エネルギー事業者に対する評価が高くなっているということが今回の結果でも出てきたわけであります。こういう効果は確かにあると思います。
もう最後になりますけれども、消費者行動が決め手と書いてありますが、消費者目線でものを考えるべき。先にそれをお見せしましょう、これが私がいつも講演に使うときのネタなんですけれども、左側が一般的なテレビの、これは小型の部類ですけれども、リモコンなわけです。右側は、私が台湾のビジネスホテル、安いホテルで見つけてきたリモコンでありまして、左はいっぱいボタンがついているわけです。右側はオンとオフとチャンネルの上げ下げと音量の上げ下げとミュートしかないです。これで十分なわけです。日本のテレビはいろんな機能が入っているものですから、必要なんでしょうけれども、ほとんど使わないボタンばかりだと。
ここをどう使っているかを調べようというのが私の消費者行動の最初の取っかかりでありまして、つくるほうも、これをつくった後、どうやってユーザーの評価というものはフィードバックしているんだろうかと。これは余談になりますけれども、今、大体皆さん大型量販店に行かれて、そこで選んで買われますが、昔はメーカーの系列のお店があって、不安があったら、そこに行けば、必ず何らかのレスポンスが返ってきたんですけれども、皆さんは携帯電話でよく経験されると思いますが、不具合が生じて、携帯電話のショップに行くと、30分か1時間待たされて、係の人に呼ばれて行ったら、またその人が30分電話して、また出直してくださいとなっちゃうわけです。買った本人は直接メーカーには何もアクセスできないシステムになっている。ビジネス上は、それは非常に効率がいいかもしれませんけれども、社会的に本当にそれでいいのかなというのをまた別で経験していたのが、ここでも気にかかりまして、こういったボタンをどう使っているか、先ほど、冒頭申し上げましたIoTが進んでまいりますと、その種の情報もきちっと評価できるような時代が来ると思いますから、それにしても、作り手のほうも一生懸命お考えになっているのはわかりますけれども、フィードバックしてほしいと。
もう1点は、ユーザーも買うときに、右のリモコンだけだったら買わないかもしれない。左になってないと、買わないというところがあるんじゃないかと思うんです。日本人がものを買うときには、フル装備から売れるというんです。
今はどうか知りませんけれども、昔はヨーロッパの車は何もないのから売れていって、私はステレオをつけてほしいと、私はエアコンをつけてほしいと、私は窓を自動に開くようにしてほしいというふうにオプションで変わってくると。ところが日本は、そういうんじゃ売れなくて、全部ついていないと売れない。しかし、車を買いかえるまでに一度も使ったことのないボタンが必ずあるはずでありまして、果たしてそれでいいのかなと思いますが、それもこんなものにつながってくると思います。ものづくりから考えれば、そこでも省エネ消費を積む余地がまだあるんだろうと思います。
次に、消費者行動が全てを決める、作り手は使い手の、今言いましたね。それから、消費者こそスマートであるべきだと。消費者がもっと利口にならなきゃいけないということであります。
そういった意味で、情報の発信、あるいは、わかりやすい解説というものをもっともっと深めていかなくちゃいけないと思います。
これも最後の絵だと思いますけれども、インターフェースデザイン、私の友人でアラン・マイヤーというカリフォルニア大学のデービス校の先生でありますが、先週のICEFの会議で彼が使ったデータでありますが、本当はもっとおもしろいリモコンを叩いているビデオがあるんですが、これは彼が使った絵でありまして、左側は、若い子にとっては、Its easy to save energyと書いてありますね。非常に簡単だわと。右のおじいさんは、よく見えないと、どうやって使ったらいいんだと。それが同じリモコンで売られていると。果たしてこれがいいんだろうかという話を彼は逆説的に使って説明してくださったんです。
こういったところにも消費者がどういうふうに行動し、どうやってエネルギーとつき合っていくのかと。どこにヒントがあり、どこにまだまだ抜けがあるのかということの一例ではないかと思います。
多分、これで終わりですね。ちょっと長くなったかもしれません。

〇浅野委員長
どうもありがとうございました。それでは、この委員会には女性が少ないというお叱りを受けましたので、崎田委員から、どうぞ。

〇崎田委員
どうもありがとうございます。今日のお話の行動に移すところが非常に難しいというお話が、本当に今の日本の省エネの大課題だと思って伺わせていただきました。ありがとうございます。
それで、関心は高いけれども、消費選択するようなところに行かないという、こういう課題の中で、最後のほうにある情報をしっかりと伝えるだけで、かなり変化したというのは、こういうデータは大変重要なことだと思うんですけれども、こういう情報をしっかり渡すというものの次に制度的に入れていくとしたら、先ほど、アメリカの義務化の例がありましたけれども、そこに行くまでの間にどういうような可能性を考えたらいいかという、少しお考えを伺えればありがたいというふうに思いました。ネガワット市場とか、いろいろな話題もありますけれども、どんなふうなのが日本にとって消費の徹底にいい政策と思っておられるか、教えていただければと思います。

〇浅野委員長
それでは、もうお一方の女性、池田さんが、いらっしゃいますのでどうぞ。

〇池田説明員
データに基づくご説明、ありがとうございました。ご質問ですけれども、例えば、3ページ、2011年以降に建築された戸建て住宅の世帯、CO2排出量、非常に減っている、こんなに違うものなのかというふうに思いました。恐らく、これは住宅の断熱性がいいとか、あと、省エネ機器をそれぞれ買いかえるから、このぐらいになっているのかな。それだけ省エネ製品というのが普及しているのかなというふうに思いましたが、今後の家庭部門の省エネ行動を考える際に、省エネ製品を変える効果、それから、使うときの省エネの効果、そこのボリュームというふうにカウントして、どんなふうに考えておられるのかということについて、先生のお考えを教えていただきたいと思います。

〇浅野委員長
それでは大野委員、安井委員の順番でお願いいたします。

〇大野委員
ご説明ありがとうございました。私も今後の家庭部門の省エネで省エネ行動を強化するということの重要性は十分わかっているし、大事だと思うんですけれども、今も池田説明員がおっしゃいましたけれども、2011年以降に建設された住宅のところでの省エネについては特に多いということから考えても、躯体の問題というのは非常に大きいんじゃないかと思うんです。これからいろいろな方法で家庭部門のCO2発生量を減らしていかなきゃいけないんだけども、一番力を入れるべきところはどこかというと、日本の住宅の戸建て住宅だと、7割ぐらいが1枚ガラスを使っているというような話もありますので、特に新築だけじゃなくて、既存の住宅の躯体の省エネ性能をよくするというところに、相当ないろんな政策手法を動員して、ここが一番肝じゃないかと思っているんですが、先生のお考えはいかがでしょうか。

〇浅野委員長
安井委員、どうぞ。

〇安井委員
いつもありがとうございます。大変興味のあるご発表をいただいております。
私も消費者行動が重要だというのはわかっているつもりなんですけど、消費者行動を二つに分けていて、日常的な生活に関わるような消費者行動と、やっぱり、省エネ機器を選択して入れるという行動の二つが、どちらかというと、やはり、後のほうがどうもあまり強調されていないかなという気がするんですけど、例えば、IoTというのは、本当に実用化すると、それぞれの持っている家庭の機器のエネルギー効率がそこで全部はかれて、それで、電力の価格も効率のよい機器を持っているうちだと、単価が安いみたいな、そういう全く違った社会システムを導入しないと、ぼちぼちだめなのかなんて思っているんですけど、何かお考えがあればお聞かせいただければと思います。

〇浅野委員長
谷口委員、どうぞ。

〇谷口委員
興味深いお話、どうもありがとうございました。私は質問ではなくてお願いになるんですが、エネルギー行動関連のデータを指導的な立場からいろいろ見ておられる中上先生にお願いという意味なんですけども、最初にデータがないということを割とおっしゃって、アンケートとかをご自分でとられて、それはよくわかるんですけども、私が思うのは、データはあっても出てこなかったり、もしくは分析できる形にそもそもつくられていないというふうに感じています。
経産省さんのお名前を出して申し訳ないんですけども、スマートシティの実験とかですと、データはそれぞれ補助金に対してどうかというレスポンスができるような形ではデータはホームページとかに出ているんですが、省エネルギー行動を分析する上で、個人属性とか行動属性とかとリンクするような形で分析しようと思うと、データがやはり出てこない。いろんな形で手を尽くして入手してデータを分析すると、わからないことがあって、それをお尋ねしようと思うと、そのときのチームはもう解散しているという、そういう状況になっていて、データが生かされていないというのがポイントだと思います。
そういう意味でいくと、IoTに私はあまり期待していなくて、むしろ、散らかったデータしか出てこない、きちんとパラメーターが求められるようなデータというのは、実はむしろ難しくなっているんじゃないかというふうに思っています。
1点だけ、すみません、長くなって。
エコカーに乗っている人がどういう行動をしているかというのを、以前ガソリン価格高騰しているときに分析したことがあって、エコカーに乗っている方のほうが明らかにガソリン節約をしないというふうなことが出てきています。自分がエコな行動をしていると思うと、サボってしまうというふうな行動も見えておりますので、ぜひ、その辺りの本来の意味できちんとデータ分析できるようなデータが確保できるような社会にしていただけるようお願い申し上げます。

〇浅野委員長
小川さん、どうぞ。

〇小川説明員
どうもありがとうございました。単純な質問で、無知で申し訳ないのですが、アメリカと日本の省エネは、どちらが進んでいるのかという点と、先ほどの大野委員と関連しているのですが、住宅改修はなかなかすぐにはできないので、例えば、2001年から5年の住宅を今の2011年以降ぐらいのエネルギー使用量にするのに改修というのが可能なのか、どれぐらいのお金でそういうことができるのかというのをわかれば教えていただきたいと思います。
最後に、たくさんいろいろ省エネの取組を日本でもやっていますけれども、気候が違う海外へ我々が貢献するというときに、どのようなことを展開することが可能なのか、教えていただければと思います。

〇浅野委員長
増井委員、どうぞ。

〇増井委員
貴重なお話、ありがとうございました。データのことに関して、お伺いしたいんですけれども、最近、太陽光パネルをつけている家庭というのは非常に増えてきていると思います。それに関して、電力の家庭での消費量というのは、本当にその機器を使っている電力消費量そのものなのか、あるいは、いわゆる電力会社から購入した電力なのでしょうか。その辺り、私はちょっと不勉強でよくわかっていないんですけれども、こういう最近の家庭部門におけるデータというのは、本当に実際に家庭の中で使われている電力が減ってきていることを示しているのか、もしご存じであれば、教えていただきたいと思います。

〇浅野委員長
それでは、いろいろなご質問がございましたが、どうぞお答えをお願いいたします。

〇中上代表取締役会長
何でも答えられるわけじゃないんですけども、順を追って復唱してみたいと思います。
日本の消費者向けの政策という話ですけれども、政策で大上段から行くのがいいのかどうかということは、必ずしも、それか全てだと思っていませんで、トップランナーだとか、いわゆる省エネ法は、あれはあれで政策的に私は非常にうまく機能した法律だと思いますが、消費者行動に関わる分野に関して、どのように政策的にアプローチするかということは、あまり軽々には言えない。
特に個人のプライバシーに関わってくる問題が随所に出てまいります。今の最後の質問とも関わりますけれども、どういう使い方をしているかということによって、ほとんど生活スタイルがわかってしまうということもございますから、今後、データの扱いというのは、ますます慎重を期すべきだと思いますので、その辺は、そういう意味での政策的な何かガードというか、対応は必要だと思います。
私には明確な答えが今のところ見つかりません。また後で考えついたらお話しします。
それから、2011年以降の住宅のCO2が減っていると。買いかえ効果かと。買いかえ効果というのも製品によりけりだと思います。それから、ご案内のように、トップランナーで年次を追って、どんどんバージョンアップしていますから、そのタイミングがうまく合えばいいんですけれども、ずれると、全く変わらないものを買うことにもなりかねませんので、そういった意味での情報をいかにして正確にお伝えをしていくのかと。確かに10年前の冷蔵庫と一言で言えば、何となくそういう意味があるかもしれませんが、これが5年前だったらどうかというと、あまり変わっていない可能性もあるわけです。
もう1点は、買いかえられたはいいけれども、捨てるのがもったいないというので、まだお持ちの方がいらっしゃるわけです。アンケートをやりますと、2台以上冷蔵庫を持っている人は結構ありまして、大抵それはどうもコンセントにつながっているような感じなんです。2台目は切ってもらいたいと思うんですけれども、あるものだからつなげているという話で、こうなると、何のために省エネの冷蔵庫を買ったかわからないわけでありまして、特にご高齢のおうちほど、もったいないということが作用して、壊れかかった冷蔵庫をそのままつなげているということは、こういうのは今回の調査でいろいろわかってきましたので、情報としていかに扱うかということを、今、環境省の方と考えているところであります。
それから、2011年の躯体の省エネ、保温構造化、既存の改修。既存の改修はまさに私も本当にやらなきゃいけないと思うんですけれども、ちょっとお話ししましたように、ヨーロッパ、アメリカの暖房のエネルギー消費量と日本の暖房のエネルギー消費量は、四、五倍違うんです。4分の15分の1ぐらいしか使っていない。北海道とか東北は徐々に欧米型に近づいてきておりますけれども。
したがいまして、省エネ改修をして、それでコストを削減して、それで何とかという話は、とても間尺に合う話じゃないんですね。暖房代幾ら払っているか、皆さん、ご存じですかという質問をしても答えが返ってくるわけはないんですが、そういう形で、皆さんがエネルギー代を払っていないわけでありますが、大体日本の平均で家庭調査ベースで推計しますと、4万円ぐらいですかね。4万円ちょっとぐらいが日本の平均、北海道に行きますと、その倍ぐらい、あるいは場合によっては2.5倍ぐらいになりますけれども、4万円ぐらいの年間の光熱費は1割削減して、1割住宅の保温構造化を強化するというのは、なかなか既存の住宅ではそう簡単ではないわけです。桁が違ってくるわけです。
したがって、そういう経済的なモデルでいったんでは、とても変わらないので、むしろ、最近、この辺りなんかは増井先生からはご質問もあるかもしれませんが、ノンエナジーベネフィット、そういう保温構造化することによって家庭内で寒いところが少なくなって、中でのヒートショックがなくなる、あるいは健康にプラスに働くとか、そういったものを加味して、うまく誘導していかないと、単純にエネルギーだけでやるというのは、なかなか簡単ではないと思います。
でも、やれればやったほうがいいと思いますが、なかなか簡単ではないと、私はあまり答えを持ち合わせておりませんが、一度、昔の通産省時代に委託研究費をもらって戸建て住宅、船橋と下北沢で改修したんですけれども、すぐ100万、200万のオーダーで費用がかかちゃったようで、後の評価のしようがなくなって、何となく大っぴらには公表しなかったんでありますけれども、工事費が非常に高いんですね。さっきの太陽電池もそうですけれども、電池本体そのものは下がっても、工事費が結構高いという日本独特の問題がありまして。やりたいけど、なかなか進まないというのが現状であります。
それから、買いかえ効率、HEMSとか、スマートメーターとか、IoTという話で、これは後ほどのご意見にも関連してくるのかもしれませんけれども、これからは割ときめの細かい情報が見えるようになってきて、手に入るようになってくるから、きめの細かい対応に対しての回答がお渡しできるようになると思います。先ほどご紹介したホームエナジーレポートというのも、AさんならAさんのおたくのエネルギー消費量がAさんと同じような世帯構成を持っている方だけ引き抜いて平均したものと比べるとどうかという、そういう統計処理をして返すわけです。そうすると、それより多いと、やっぱり減らそうかというようになるし、もっと少ない人がいると、やってみようとなるんですが、これもまた何かテクニックがあるそうでありまして、消費者行動というのは、最初はそういうふうに効くんですけれども、だんだんそれが元へ戻っちゃう。そこで、ホームエナジーレポートをつくったOpowerという会社は、にこにこマークをつけたそうであります。にこにこマークが次の月に切れて泣き顔になっていると、これはやばいと思って、にこにこマークをもう1回取り直したいと思うそうでありまして、だから、消費者というのは、そういう形でも行動を変えてくるというので、こういう意味で、ものの見せ方というのはダイレクトに数字だけではだめなんだなという経験をしましたが、そんな工夫を加味しながらやっていけば、消費者行動というのは、結構、ビビッドに効いてくるんではないかと思います。
データがない、データが難しいとおっしゃいましたが、そのとおりでありまして、私が研究所をつくって四十数年になるんですが、30年以上、データがないから、統計をつくってくれ、つくってくれと、三十数年、あらゆる審議会で言い続けてきたわけであります。やっと今回環境省で家庭用のCO2統計ができた。何とここに持ってくるまで足かけ7年、来年で8年目にかかる。8年かかったわけであります。
ここから先は耳が痛いかもしれません。役所というのは2年で大体人がかわるものですから、やっと了解していただいて、次行こうと思ったら、また、一からやり直しというので、たまたまご担当の長い方がいらっしゃったものですから、四、五年いらっしゃったものですから、そこで一気に加速して、やっとここへこぎつけたと。
ただ、データがあっても、説明変数がついていないと、意味がないんですね、おっしゃったように。これは統計のための統計をやっても意味がないので、我々はだから環境省の統計をお手伝いするときに、いかに要因分析ができるかということを主眼にして、できるだけ深く彫り込んだつもりであります。大変ここに持ってくるまで苦労いたしました。総務省のほうも、何でこんなのが必要だと。これはほかの調査にあるじゃないかと、いろいろあったわけでありますけれども、C02の政策まで結びつけるには、どうしてもこういうのが必要だということで、かなりきめ細かく拾ったつもりでありますから、ぜひ、今日いらっしゃっている傍聴の方も含めて、お帰りになって、アクセスしていただいて、使いにくいと言っていただいたら、また直すまだ時間はございますし、今年まだ1年詰めて、来年から本格調査に入る予定でありますけれども、よろしくお願いしたいと思います。
それから、エコカー分析も、まさにそうですね。やっているからしないと。それで安心しちゃっているという話かもしれませんね。
それから、米国と日本の省エネの進捗度、これは比較が難しいんですが、アメリカの省エネルギーの機関は先進20カ国ぐらいと比べて、去年は省エネでナンバーワンはどこだったかというと、トップはたしかドイツだったですかね。僅差で日本です、次は。トップのドイツと日本の差はどうもちょっと評価が違うんじゃないかというので、私は日本が一番だろうと思っていますけれども、国際的に見て、決して遜色はないと。これは手前みそではなくて、アメリカの機関がやった結果でそのように出ていました。
ただ、どういう評価軸でやるかということによって、随分変わってきますので、そこはよく読み込む必要があるかみしれませんが、そういう情報もあるということであります。
海外の展開の可能性は、これはおっしゃるとおりであります。最近、これも環境省のプロジェクトで東南アジアのエネルギー消費、家庭用のエネルギー消費を調べたわけでありますが、意外とホーチミンだとか、ハノイだとかといった都市部に近いところにある、多少、だから、ベトナムにしては、収入が高いかもしれませんが、そこの電力消費量を調べてみますと、日本より少ないんで、やっぱり少ないねと思って、そういう評価をしようと思ったら向こうは熱需要がほとんどないわけです。だから、向こうの電力消費量というのは、まだエアコンは入っていませんから、ほとんど照明と一部の家電製品ぐらいですけど、下手をすると日本の平均より多いというのが出てくるわけです。これはまだまだ白熱灯が多いとか、非常に効率の悪い機器を使っていらっしゃるのに違いないわけでありますから、いかにして日本の省エネ型の機器を向こうに普及してもらうか。
今はサプライサイドに対しては非常に大きな補助金といいますか、ODAが使われているようでありますが、本当は需要側にそういう補助金をつけて、最初から省エネ型の機器を入れてもらうという政策をとったほうが無駄な発電所をつくらなくて済むわけです。多分、発電所の建設費よりはるかに安く普及できる機器があるはずなんです。私、これは何回かやりまして、最初は白熱灯から蛍光灯、電球型蛍光灯とやったんですが、その後、エアコンと冷蔵庫とか、いろいろやってみましたけれども、エアコンぐらいになってくると、なかなか簡単には回収できないんですが、補助率を少し高めてやると、結構、資金回収は簡単だということでありましたから、そういった方向で援助をしていくべきであろうと思います。
必ずしも日本の法体系を向こうに持ち込んで、このとおりフォローしてくださいと、とりあえずしてくださいというのは、私はあまり適策ではないと思います。日本を飛び越えて省エネできる可能性があるわけでありますから、そういった意味では、いろんな省庁の協力が必要だと思いますけど、大いに海外への普及の可能性はあると思います。
あとはデータで太陽電池とか何かおっしゃった、何かありましたか。

〇浅野委員長
増井委員の質問ですが、太陽光などを屋根に乗っけていると、絶対的にその世帯で使ったエネルギーは把握できないんではないかというような、そういう趣旨の発言だと思います。どうでしょう。購入電気量だけで見ていると違ってくるけど、どうやって全部を把握するんでしょうねという趣旨の質問でした。

〇中上代表取締役会長
担当した鶴崎から答えさせますから、私が言うと、また間にバイアスがかかるといけませんので。

〇鶴崎所長
すみません、申し訳ありません。PVの発電量も調査していますので、それについても把握しています。ただ、整理上、ここの挙げている左側の電力に関しては、買った電気だけになっています。ただし、右側に用途展開するときには、PVの自家消費分も含める形で推計を行っていまして、つまり、照明や家電製品というところには、PVの自家消費分も入っております。

〇浅野委員長
よくわかりました。ありがとうございました。
では、中上さん、どうもありがとうございます。これだけじっくりとお話を聞く機会はなかなかなかったので、大変勉強になりました。
それでは本日のヒアリングは以上で終わりにさせていただきます。
事務局からの報告をいただきます。

〇低炭素社会推進室長
発表者の皆様におかれましてはご説明を、委員の皆様におかれましては活発なご議論をありがとうございました。
次回の日程については、11月2日水曜日、10時から12時半を予定しております。次回においても引き続き関係者へのヒアリングを実施する予定であり、ヒアリング対象者等の詳細につきましては、追って事務局より連絡を差し上げます。
また、今後地方でのヒアリングも予定しております。委員の皆様方におかれましては、後ほど参加のご意向や日時等を照会させていただきますので、よろしくお願い申し上げます。

〇浅野委員長
それでは、本日はこれで閉会にいたします。どうもありがとうございました。次回もまたどうぞよろしくお願いいたします。

午後 12時29分 閉会