長期低炭素ビジョン小委員会(第5回) 議事録

日時

平成28年10月6日(木)15時00分~17時00分

場所

TKPガーデンシティ永田町 バンケットホール1A
東京都千代田区平河町2-13-12 東京平河町ビル1階

議事録

午後3時00分 開会

〇低炭素社会推進室長
では、定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会地球環境部会長期低炭素ビジョン小委員会の第5回会合を開始いたします。
本日は、ご到着が遅れておられる委員もいらっしゃいますが、委員総数18名中12名の委員にご出席いただく予定であり、定足数に達しております。
なお、既に地球環境部会長決定とされております本委員会の運営方針において、原則として会議は公開とされていることから、本日の審議は公開といたしております。
では、以降の議事進行は浅野委員長にお願いいたします。

〇浅野委員長
それでは、議事を始めます。
まず、事務局から配付資料の確認のお願いをいたします。

〇低炭素社会推進室長
配付資料の確認をさせていただきます。一番上に議事次第がございます。その次に配付資料一覧がございます。資料1としまして、委員名簿がございます。資料2-1としまして、村上先生からの民生部門の長期低炭素ビジョンという資料がございます。資料2-2としまして、同じく村上先生からの同資料集というのがございます。資料3-1といたしまして、東松島市さんの「復興」と「エネルギー地産地消型のまちづくり」という資料がございます。資料3-2としまして、パンフレットでございますけれども、「スマート防災エコタウン」と書いたパンフレットがございます。資料3-3といたしまして、これもパンフレットでございますけれども、一番上に「2016 HOPE」と書いている資料がございます。資料3-4ですけれども、これもパンフレットでございますけれども、右上のほうに「HOPEのでんき」と書いた資料がございます。資料4としまして、杉山上席研究員のイノベーションと温暖化対策長期戦略という資料がございます。
資料の不足等がございましたら事務局までお申しつけください。
カメラはここで退席をお願いします。

〇浅野委員長
それでは、議事に入ります。本日もヒアリングを行います。
まず、事務局から本日のヒアリングについてのご紹介をいただきます。

〇低炭素社会推進室長
第2回目から実施しておりますが、引き続き11月ごろまで、関係者へのヒアリングを実施してまいりたいと考えております。ヒアリングは、委員の皆様のご議論に資するよう、世界の潮流・海外の動向・長期的戦略の策定状況、科学的知見、技術、温暖化の影響、ライフスタイル、建物、移動、ビジネス、エネルギー供給、都市・地域・地方創生、金融システム、その他の多様な分野について行ってまいりたいと考えております。
本日のヒアリングですが、お一人目として、民生部門の長期低炭素ビジョンについて、一般財団法人建築環境・省エネルギー機構の村上周三理事長よりご説明いただきます。
また、お二人目には、「復興」と「エネルギー地産地消型のまちづくり」、東松島市「スマート防災エコタウン」について、東松島市復興政策部の高橋宗也復興政策課長よりご説明いただきます。
さらに、3人目として、イノベーションと温暖化対策長期戦略について、一般財団法人電力中央研究所社会経済研究所の杉山大志上席研究員よりご説明いただきます。
3名の方々には、本日貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございます。委員の皆様につきましても、忌憚のないご議論をどうぞよろしくお願いいたします。

〇浅野委員長
それでは、ヒアリングに入りたいと思いますが、前回同様、お一人ずつ発表いただき、発表ごとに委員の皆様方からのご質問を受けたいと思います。ご質問をご希望の方はお手元のネームプレートをお立ていただくようにお願いいたします。また、ご質問については、一わたり委員から質問をまとめて差し上げますので、その後まとめてご回答いただくという形で進めますので、どうぞよろしくお願いいたします。
では早速でございますが、村上先生からご発表いただきたいと思います。先生、どうぞよろしくお願いいたします。

〇村上理事長
村上でございます。民生部門の長期ビジョンについてお話しさせていただきます。「我慢の省エネ」ということになりますと暗くなるので、ここにありますような副題をつけさせていただいております。論点が四つございます。目標とその実現、消費実態、留意すべき視点、将来展望、この順番でお話しさせていただきます。
まず、目標とその実現でございます。最近の世界の趨勢、特にヨーロッパの先進的な国は、2050年に向けて既に95%削減ということを公式表明しております。ですから日本でも、長期の目標としては、100%削減ということを目標とすべきだと私は考えております。ただし、これを言うのは簡単なのですが、本当に実現できるかどうかということを検討することが課題となります。環境省は「2013年以降の対策・施策に関する小委員会」というのを5年前に設けておりまして、その下に住宅・建築物ワーキングがございました。私が主査をしておりまして、2012年4月に2050年のストック平均でゼロエミッション目指すという報告をしております。簡単なものがお手元の資料の2番、3番に入っております。ですから、材料はある程度そろっているわけでございます。ただ、このときはバックキャスティング的に、ゼロにするにはどうすれば数字が合うかということを検討したものでございまして、実現可能性を詳しく検討したわけではありません。今日の私のお話は、どうすれば実現可能性を上げることができるかという視点でお話しさせていただきます。そういうことでございますから、前回の報告よりさらに踏み込んだ提案が必要になるますので誘導、規制、キャンペーンなど、あらゆる政策手段を動員することが求められます。同時に大事な視点は、国民の理解が得られるかどうかという点でございます。
まず実現可能性について説明します。民生部門の低炭素化は電力の低炭素化に依存する部分が非常に多うございます。ですから、電力の低炭素化による貢献と建築自体の低炭素化による貢献、これを弁別して評価する必要があります。問題点は、民生部門の実現可能性を他分野である電力部門の努力に依存する危うさがあるわけでございます。電力の低炭素化の主要部分は、建築と無関係のところで進むわけでございます。
次に別の視点で、省エネと省CO2の問題。省CO2は当然直接の目標です。しかし、省エネも同時に留意する必要があると思います。時々「電力がカーボンフリーになれば、全電化住宅では省エネは必要ない」という議論が出ることがございます。しかし、私はそうでないと思います。なぜなら、カーボンフリー電力の調達量には限界がありますし、カーボンフリー電力も設備製造時にはCO2を排出しております。
2番目の論点です。消費実態と中長期トレンドです。民生部門からのCO2排出は、戦後一貫して増加を続けてきましたが、2005年から初めて減少傾向に入りました。その背景として三つぐらいの点を指摘することができます。まず行政面です。これは省エネ法の強化等の対策が進展したこと、すなわち機器効率改善や断熱向上等です。次に社会面では、省エネ文化の浸透とクールビズなどです。経済面では、高齢化、人口減少などやそれに伴う消費経済の停滞などです。
その消費内訳を見ますと、日本の特性は、欧米に比べて消費量が少ないことです。一人あたり、床面積当たりで比較しても少ないです。ですから削減しろは大きくない。特に暖房用消費が少ない。これは気温補正しても少ないです。ですから、断熱の効果は限定的です。
次に、3番目の論点、留意すべき視点についてお話します。これが今日の話題提供の中心でございまして、八つぐらいサブの論点ございます。最初にストック建築対策の困難さについてお話します。私有財産であるストック建築に対しては有効な対策手段が少ないということです。適用可能な手段の一つとして、建物単位の排出権取引を指摘することができます。また、間接的手段として、エネルギー消費性能の表示、エネルギー消費量の開示という手段を挙げることができます。数年前から国交省がBELSという、エネルギー消費性能の表示制度を実行に移しております。ストック建築に比べますと新築建物の対策は相対的に容易でございます。省エネ法というのは広く活用されていますが、適用対象は主に新築で、ストックへ適用される部分はわずかでございます。ですから、断熱義務化などに、過剰な速効性を期待することは危険でございます。
次に、躯体のリプレイスと設備機器のリプレイスと耐用年数の問題です。機器の耐用年数は短くて、躯体は長い。もう一つは、物理的耐用年数と社会的耐用年数。後者に留意して、早目のリプレイスの有効性にもっと注目すべきです。一方で、2050年になりますと、2016年時点のストックの大半がリプレイスされております。ただし、その新築も年とともに老朽化するので、その継続的なメンテナンスが必要でございます。
大事なことはストック建築のオーナーをどうやって省エネに向けて意識改革するかということです。有効な一つの方法が省エネがもたらすコベネフィットに着目することです。特に断熱がもたらす非財務的価値としての健康・快適、アメニティ向上などでございます。ストック建築のオーナーに対しては、断熱改修は省エネだけでなく貴方の健康の問題でもあるんですという説明は断熱改修の有効な動機づけになり得ます。
次の課題は建築産業の発注/運用形態と省エネ技術の開発/普及のギャップという問題でございます。有用な技術が開発されても十分に普及していない事例が民生では非常に多い。これは有用な技術の発注者となるオーナーやユーザーがその気にならないからです。特に住宅の場合、低性能住宅でも、住んでいる人にとっては住めば都でそれほど痛痒を感じていないことが多い。たくさん調査しましたが、非常に性能の悪い家に住んでいる方も、聞き取り調査をすると快適だと答えるわけです。もう一つが “もったいない”です、この立派な節約主義のおかげで、高効率機器への買い替えがなかなか進みません。このバリアをいかに克服するかということになると、キャンペーンと経済的誘導の二つが有効かと思います。
次に、建物や設備の性能水準の選択の問題です。この意思決定はオーナーがやるわけです。設計事務所や建設会社に意思決定権限があるわけではございません。問題は、オーナーの環境意識が高いとは限らないことです。どっちかというと低いことが多い。
次、オーナー/テナント間のインセンティブ・スプリット問題です。これは省エネ投資や省エネ活動推進に対する大きなバリアになっております。省エネの努力をしても、その果実が本人―オーナーとかテナントに還元されるわけではない。例えばテナントが昼食で部屋を空けるときに省エネのために電気を消したとします。しかし、一般には消灯したからといって家賃が下がるわけではない。その利益はオーナーに届いて、努力したテナントに入るわけではないんです。その逆もございます。ですから、例えば健康経営など、オーナーとテナントで便益を共有できるような運用体制のデザインが有効だと思います。コベネフィットを共有できれば、このスプリットもある程度解消されると思います。
次、建物性能のブランディングの問題です。このCASBEEとかLEEDなどの建物性能の評価ツールが広く普及してきました。その評価結果の開示による環境建築のマーケットの形成は省エネ建築の推進に効果的です。これは環境建築に対するオーナーの意識の刺激になるわけです。三つ星では格好悪いからもう少し頑張って四つ星にしましょうというように、高性能建築に向けた意識を誘導することです。こういう動きは評価事例の蓄積とともに顕著になりつつあります。
次の課題はコベネフィットです。我々は大幅な環境負荷削減と同時に、クオリティー、すなわちQOLの確保も実現しなければならない。QOLが低下するのでは市民の賛同は得られません。
QOLの向上を図るために、省エネがもたらす多面的なコベネフィットに着目しようということです。私はIPCCの第4次と第5次の報告書のLead Authorを務めておりました。そこで強くコベネフィットのことを主張しました。第5次報告では、コベネフィットの考え方が大変幅広く受け入れられています。このコベネフィットの見える化が大事です。コベネフィットには財務的価値と非財務的がございます。特に後者を重視するESG投資が非常に活性化しつつあります。これは環境建築普及に対する大きな支援でございまして、そういう意味では、民生部門には追い風が吹いていると言えます。
次に、アジアの蒸暑気候における環境調整の問題です。アジアでは欧米に比べて暖房需要が少ない。歴史的に俯瞰しますと、環境調整技術はヨーロッパの寒冷地で発達してきました。ヨーロッパにおけるエネルギー需要は暖房が中心でございまして、結果として、世界に断熱を中心とした省エネ対策が蔓延することになりました。IPCCのLead Authorを務めていた時もこの点を是正するのに苦労しました。アジアでは、断熱の省エネ効果は限定的です。断熱の効果に過剰な期待を持たないことが大事です。日射遮蔽とか通風も同様に重要です。ただ一方で、断熱のもたらす健康増進などのコベネフィットを忘れてはなりません。
エネルギー需要が大きい分野は、冷房を含めた設備機器利用でございます。ですから、トップランナー制度の重要性というのは、幾ら強調してもし過ぎることはないと言っていいと思います。
次に、自治体行政と省エネの問題です。民生部門の省エネ行政は、自治体の関与が決定的に重要です。省エネ法を初めとして、建築に関わる業務は、主に自治体が担当しております。そして、民生の省エネは日々の生活に直結します。ですから、市民との連携が欠かせません。その点、自治体の職員は非常に市民に目線が近いと。霞ヶ関とややカルチャーが異なる感じがします。
さらに民生部門の省エネと地域再生という問題です。省エネに向けた新築、改修というのは、地元経済に及ぼす大きな経済効果がございます。
もう一つが、中央政府による自治体行政の支援という問題です。裾野の底上げとピークの引き上げの2つの側面があります。まず、裾野の引き上げについてです。昨年、まち・ひと・しごと創生法に関連して、内閣府は全国の自治体に、地方版総合戦略を策定するよう、全国の自治体にお願いしました。その結果では、1,737の自治体からが作成して、提出しなかったのは3つだけという驚異的な協力を得ることができました。これは、結果的に民生の省エネ水準の向上にもいい影響が出るものと期待しております。
もう一つがピークの引き上げという課題です。内閣総理大臣による優良自治体の認定。例えば環境モデル都市、環境未来都市、地域活性化モデルケースとございます。東松島さんは環境未来都市に指定されております。このような優良自治体の指定は、ピークを高くします。優良自治体におけるベストプラクティスを波及させれば、裾野の引き上げにつながります。
次の論点は技術の開発と普及の問題です。機器の効率改善が民生部門におけるエネルギー効率改善の中心でございます。トップランナー制度の一層の深化・拡大が必要かと思います。一方で、従来型技術の効率改善には限界の兆しが見えております。例えばヒートポンプの成績係数などです。
もう一つは、すぐれたイノベーションの早期の実用化、普及方策の必要性です。放置したのでは、民生の場合、せっかくの有用技術が普及しない事例が多いわけです。特に住宅では、躯体のリプレイスまで高効率機器が導入されないことが多い。LED照明は例外でございます。いかにして、普及のためのインセンティブを与えるか、これは行政上の大きな課題かと思います。
もう一つは、イノベーションの促進です。そのためには低炭素化の行政目標が、シーズを刺激してイノベーションを誘発させるような制度設計が必要かと思います。
次の話題は、ZEB、ZEHでございます。ZEB、ZEHは中低層建築では容易で特にバリアはございません。しかし高層建築では難しい。高層建築で無理してZEBを目指すことはないと思います。それよりも排出権取引で実現したらいいのではないかと思っております。一般に高層建築には資金の余裕があることが多いのでオーナーは高性能を目指す意向が強い。だから、ZEBというブランディングが取引参加の動機づけになるような仕組をつくればいいということです。
次、エネルギーマネジメントとスマート化という問題です。HEMSとBEMSに関して、我々はいろいろ調査してきました。現時点の技術では、省エネに対する過剰な期待は困難だと思います。エンドユーザー、中間ユーザーに対するよりきめの細かいサービスが必要だろうということです。将来はAI等の組み込みによる一層の技術開発がなされるものと期待しております。最後にスマートシティの課題についてです。多くの建物が参加する地域スケールのアグリゲーションビジネスに、期待しております。というのは、多くの中小ビルのメンテナンス要員が必ずしもレベルが高いとはいえないからです。だから、中小ビルのエネルギーデータをITでアグリゲートして、高レベルのメンテナンス技術を提供するビジネスは大変効果があると思います。
最後の4つめの論点で、将来展望と課題ということでお話します。最初に国際動向としての、パリ協定、SDGsの話題です。パリ協定とSDGsにおける省エネの要望は今後一層強化されて、民生部門の低炭素化の推進の大きな力になることは間違いないと思います。建築に関係の深いSDGsのGoalは、17のうちの五つございます。健康、エネルギー、インフラ、都市、気候変動などです。ということで、SDGsの枠組みの下で、経済、社会、環境システムのイノベーションを進めることはそのまま民生部門の省エネに重なる部分が多いわけでございます。この面でも民生部門の省エネに追い風が吹いていると言っていいと思います。
次、経済的インセンティブと環境建築金融の課題です。最初に経済的インセンティブ、いわゆる補助金について説明します。現在各省庁による多様なプログラムがございます。これらは省エネ建築の誘導という点で大きな効果を発揮してきました。誘導には二つございまして、一つがエンドユーザーへの直接誘導と、もう一つが中間ユーザーからエンドユーザーへという間接誘導でございます。エンドユーザーは補助金のことには詳しくないことが多いので、工務店が建主に、こういういい補助金があるからやりましょうよという形で進展する間接誘導のケースが多いようです。大事なことは、このような補助金の効果がどれくらいあったのかということの検証です。次に、省庁連携の必要性です。やや環境省、国交省、経産省の間で、似たような施策が見受けられます。ぜひ連携して進めてほしいと思います。
次、環境建築推進に向けた国連の活動について解説します。国連のUNEP FIという取組みにおいて、責任投資原則をつくっています。GPIFのような日本の年金積立の投資ファンドがこれに昨年署名して非常に話題になりました。
それからもう一つ、UNEP FIがPWGという組織をつくっています。PWGとはプロパティーワーキンググループという、不動産専用の作業グループです。このWGがRPI(Responsible Property Investing)、責任不動産投資という運動を展開しております。UNEP FIは不動産業界の環境改善に大変熱心でございます。
それからもう一つが、建設産業に対するESG投資の活性化です。例えばグローバル不動産サステナビリティ・ベンチマーク、いわゆるGRESBが世界的に普及しております。不動産業界のESG配慮を図るベンチマーク調査でございます。例えばCASBEEの評定を受ければ1点もらえるというような仕組で環境不動産の普及に努めております。もう一つは、パリ協定を受けた不動産投資のフレームワークです。これもUNEP FIが中心になってつくっております。
いずれにしましても、化石燃料使用に関しまして、建築・不動産ビジネスにおけるDivestmentとEngagementの動きは、今後ますます盛んになることは間違いないと思います。これも民生部門の省エネには追い風になると思います。
次、省エネ文化と新しいライフスタイル/価値観という課題でございます。20世紀の大量消費文明を私なりに総括すると、グローバルスケールでは地球環境問題、個人のレベルでは生活習慣病ということになります。建築も生活習慣病になっているんじゃないのかという心配でございます。過剰に人工化された現状の居住空間の問題点です。すなわち、我々の居住環境は機械とエネルギーに頼り過ぎているのではないかという危惧です。自然との親和というのは生命体にとって根源的に重要でございます。しかし近代建築では自然との切断ということが進行してきました。その切断がもたらす問題点を、生活習慣病的な環境病理と位置づけております。
もう一つは、価値観とライフスタイルの見直しです。自然親和型ライフスタイルの復権と、日本人が古来実践してきた、知足(足るを知る)生活倫理の復権ということです。これらをセットにして、価値観の見直しが必要だろうと思っております。
次の話題はアジア地域の環境調整のニューフロンティアという問題です。アジア地域では暖房需要が少なく、冷房需要が多い。このような気候への対応技術は、これは日本が断トツに進んでおります。夏も冬も快適に過ごす日本で開発された先端技術を世界に向かって日本から提案すべきであると思います。アジアにおいて先導的省エネ型ライフスタイルを広めるべきです。日本のZEB/ZEH産業の国際展開ということに直結します。すでに、ダイキンは小型空調技術で世界を制覇しています。
次に建物単位の排出権取引の話題です。いわゆる省CO2意識の低いオーナー、ユーザーに対しては、この手法は対策か負担かの判断を促す規制的手法としては有効ではないかと思います。特に、業務用のストック建築に対して有効です。また、意識の高いオーナー、ユーザーに対しては、排出権を増やすための省CO2投資への動機づけになるんじゃないかと期待されます。
次に、省エネにおける経済合理性の見える化の問題です。断熱向上方策のデザインです。住宅の断熱というのは全然進展しておりません。これは断熱がもたらす省エネ効果のみの説明では、ユーザーの共感を得にくいという問題があります。なぜかと申しますと、断熱の投資回収というのは、省エネ効果の便益のみでは40年、50年という長期の投資回収年数を必要として、経済合理性に欠け、ユーザーにとって魅力が少ないということです。その場合、多面的なコベネフィットを評価して、経済合理性の向上に活用することが重要です。コベネフィットには既に説明しましたように、財務的価値と非財務的価値の2つがあります。特に、非財務的価値としての健康とか快適とか遮音性、これらを金額換算して財務的価値として評価することができれば、投資回収年数は大幅に短縮されます。今、我々は、この健康の改善を金額換算して評価に組み込むということに成功しつつあります。
次、電力/化石燃料の利用ということでございまして、民生部門の低炭素化では、繰り返しますけど、電力の低炭素化が決定的に重要です。一方で、この、電力の低炭素化技術には、まだ不確実性がいろいろございます。ユーザーによる低炭素電力の選択制度等を実施すれば、低炭素電力開発の一つの支援になるかと思います。いずれにしても、建築分野において、化石燃料に対する制約の顕在化とDivestmentに留意する必要があります。
先進国の住宅のエネルギー消費は現在の時点では電力と天然ガスが中心です。民生部門における化石燃料離れは将来当然予想されることです。ですから、民生部門のエネルギー消費が電力に傾斜する傾向は間違いないと思います。一方で、レジリエンスの観点から、系統電力に依存し過ぎることへの不安も指摘されます。
これが最後のスライドです。都市スケールの低炭素化について述べます。建築スケール/都市スケールの、多様なソフト・ハードの省エネ技術を統合したエネルギーマネジメントを進めるべきです。電力、運輸等の他の都市インフラと民生との統合化ということでございます。
居住環境のレジリエンス問題については、さっき申しましたように、系統電力への過剰依存に対する危機意識があります。ですから、コジェネ、太陽光発電、蓄電池、V2H等の導入はどんどん進むでしょう。ただ、燃料電池などの分散型電源については、今後カーボンフリー問題が出てくるわけですから、その対応が必要です。
最後に、ライフサイクルにわたる取組ということについて述べます。現在の民生部門の省エネの議論は専ら運用段階の省エネについてです。次は建設段階の省エネが問題になりますが、このことはほとんど議論されていない状況です。いわゆる民生部門のエネルギー統計は専ら運用段階の消費を指しています。建設に要するエネルギーは産業部門で勘定されます。そのせいもあって、建設に要するエネルギーについては一切議論されていないのが実情です。私どもはこの点の重要視に着目して、LCCM住宅、ライフサイクル・カーボンマイナス住宅というプロジェクトを推進してきました。建設含めて、ライフサイクルにわたって省エネを進めるべきだということを主張しておりまして、既に筑波にモデル住宅もつくっております。このライフサイクルにわたる省エネの問題は非常に大事だと思います。
以上でございます。

〇浅野委員長
どうもありがとうございました。先生には時間を守っていただきまして、ありがとうございます。それでは、ご質問がおありの方はどうぞ名札をお立てください。先に全部立てていただけませんでしょうか。後からは困ります。8名ですね。よろしゅうございますね。
それでは、大塚委員からお願いします。

〇大塚委員
どうも大変興味深いお話ありがとうございます。簡単な質問をちょっと二つだけさせていただきたいんですが、一つは、スライドの18のところで、建物単位の排出権取引のお話をしていただいて、大変おもしろく重要なご指摘だと思いましたが、この主体の数はどのぐらいをお考えになっておられるかということを、もしお考えがございましたら、つまり建物というのは多分、裾切りが問題になると思うんですけども、もしお考えがおありでしたら教えてください。
それから、スライドの9ですが、丸3のところで、オーナー/テナント間のインセンティブ・スプリット問題というのは、私の理解ですと、ここでその省エネの努力をしても、果実が本人に還元されるわけではないというのは、テナントのほうには恐らく電気代が下がるとかいう果実があると思うんですけども、オーナーはそれで還元されないという、そういうご趣旨と伺えばよろしいですか。すみません、確認をさせてください。ありがとうございます。

〇浅野委員長
大野委員、どうぞ。

〇大野委員
建築物対策で既存住宅が非常に重要であるということと、それから、既存の技術で活用が可能なものがあるんだけども、なかなか活用されていないと。そういうものを動かす方法として、今、大塚先生もおっしゃった建物単位の排出権取引が必要であると、有効であるというご指摘なんですが、これは東京都で村上先生のご指摘もいただきながらやってきたものなんですけども、私がお聞きしたいのは、建築業界であるとか、それから不動産業界に非常にお詳しい村上先生の立場から見て、あの制度は2008年に入ったんですが、こういう制度に対する認知度といいますか、受け入れようという意思とか、その辺が建築や不動産業界の中で変化してきているのかどうかと、その辺のところを教えていただければと思います。

〇浅野委員長
小木曽委員、どうぞ。

〇小木曽委員
ページの14ページのスマートシティのところのアグリゲーションビジネスのところで、アグリゲーションが一つのすごく大きなキーワードだと思っています。その関係で国内外で具体的にここのスマートシティのアグリゲーションビジネスのところで、これはいい事例だみたいな話がもしあれば教えていただければと思います。

〇浅野委員長
桜井委員、お願いいたします。

〇桜井委員
19ページなんですけども、これは非常に大事だと思うんですが、多面的なベネフィットの評価、その中で非財務的価値、快適性であるとか、あるいは健康、そしてここに表記されている遮音性などは、ある程度の数値化が可能なのでしょうか。快適といっても、個人々々違うだろうし、数値化ができるようですと、提供者側の企業も快適性を落とさずに低炭素家屋の設計が、経済合理性を確認しながらできると思います。その辺ちょっとお願いしたいと思います。

〇浅野委員長

谷口委員、どうぞ。

〇谷口委員
わかりやすいお話をありがとうございました。住宅の個々の低炭素化をどう評価するかという視点は非常に先生おっしゃるように進歩してきていると思うんですが、例えばCASBEEもそうですけれども、例えば都市全体の観点から見ると、非常に環境がいい住宅ですよというものが、まちの中に、変なところにできてしまっても、例えばそれを優良住宅と認めてしまうような仕組みがあるように思うんです。それは都市CASBEEでも評価できなくて、個々の住宅をどこに建てるかというときに、一緒にそのロケーションの場所も評価しないと、トータルの意味では低炭素化にならないと思うんですが、そういう議論というのは進められていませんでしょうかというのが質問でございます。
以上です。

〇浅野委員長

手塚委員、どうぞ。

〇手塚委員
18ページの建物単位の排出権取引、先ほど大塚先生が主体の数はというのがあったと思うんですけど、それに加えて、実際にこれは物すごい数、住宅、すみません、建物といったらあると思うんですけれども、これに対して、例えばキャップ・アンド・トレード型の排出権取引をやるんだとすると、どうやってそのキャップをかけていくのか。つまり用途によってまるでその原単位というか、違ってくるわけですよね。オフィスであれ、オフィス、研究所、病院、学校、その他もろもろ、こういうものに対して物すごく複雑な制度になるんじゃないかということなんです。何かこれを単純明快にやる方法が何か想定されておっしゃっているのかということを伺いたいと思いました。

〇浅野委員長
根本委員、どうぞ。

〇根本委員
三つあります。資料の3ページにございました民生部門の100%削減というお話ですが、2030年の中期目標での、民生部門40%削減の実現すらおぼつかない状況の中で、この目標の実現可能性をどのように評価をされているかというのが1点目の質問です。
2点目ですが、ZEBやZEHの技術的バリアは少ないことでご指摘をいただきましたが、木密住宅等を国内に抱える中で、その政策的な実現可能性をどのように評価されているかお伺いさせていただきたいと思います。
それから、19ページにありました、財務的価値と非財務的価値のところですが、非財務的価値も含めて全て住宅価格等に含まれていると見るのが経済学的な考え方だと思っておるんですが、その辺りの評価をどういうふうになされているのかというのをお伺いできればと思います。

〇浅野委員長
増井委員、どうぞ。

〇増井委員
どうもありがとうございます。17枚目のところで、新しいライフスタイル/価値観ということなんですけれども、その具体的にどういうふうに醸成していくのかといったところにつきまして、村上先生のほうで何かアイデアがあれば教えていただきたいと思います。
以上です。

〇浅野委員長
荻本委員、どうぞ。

〇荻本委員
2点ございます。まず1点は、全然自分の専門と関係ないんですけれども、既築の住宅を何か改修をしなきゃいけないというときに、個人にとっては比較的大きなお金を使わないといけない。その状況がいろいろ違うので、どう考えたらいいかわからない。こういう中で、起こりがちなことは、一つは業者さんがかなり高いお金をなぜか請求しているとか、または悪意はなくても、選択しているその技術が間違っているとかいうようなことが私はあるような気がして、これがもしその既設住宅の改修の足かせになっているのだろうかということで、質問は、このような状態の認識は一般的にあるんでしょうか。または、これは日本だけじゃなくて、外国も同じくらいの話なので、これはなかなか難しいことなんですよ、こういう理解をすべきなのか、この辺りをちょっと教えていただきたいというのが第1点です。
第2点は、ZEB/ZEHという言葉が出てますけれども、家だけゼロエネルギーにすることにどれくらい意義があるかと。自然にできる分は全然問題ないんですけれども、例えば家1軒をZEHにしようとすると、10kWぐらいのPVを乗せないといけないということで、無理やりたくさんのPVが乗って、配電網に過度な電気が流れて電圧が乱れるということがあります。そのZEHに、それ自体に価値があれば、それはそれでいいんですけれども、あまり国民経済的に見て、家1軒ずつを、またはそのビル一つずつを無理やりゼロエネルギーにするということにどれだけ価値があるのかということに関しては、先生はどのように考えておられるかということと、建物をどうすればいいかということは省エネが本質的だと思うんですが、その辺りいかがでしょうかという、はい。

〇浅野委員長
ありがとうございました。大変多くの質問がありまして、丁寧にお答えいただくと、多分30分ぐらいかかってしまうと思うんですが、恐縮でございます、10分でおまとめいただければと思います。

〇村上理事長
10分いただけるんですね。

〇浅野委員長
はい。

〇村上理事長
ご質問ありがとうございました。聞き落とした質問や充分理解できていない質問もありますので満足な回答になっていない点も多いかと思います。あらかじめお詫びしておきます。
まず、大塚先生から質問は排出権取引に関することでございます。これについては別の方からも質問をいただいております。進め方としては、大規模建物からスタートすることになると思います。大野さんがご発言されたように、既に東京都の事例もあります。段階的に中小規模の建物に拡大していく手段をたどることになると思います。住宅含めた中小建物に拡大するためには、十分なる国民に対する説明と同意が必要だろうと思います。
次の質問はオーナー/テナントのインセンティブ・スプリット問題です。テナントがお昼に電気を消す行為について説明します。消しても、今のシステムでは家賃が一定ですからテナントが得をするわけではありません。得するのはオーナーです。逆にオーナーが頑張って省エネ改修をしても、だからといって家賃をその分上乗せするのは困難です。ですから、オーナーとしては、省エネビルで頑張らなくても光熱費は家賃として請求すればいいと考えるのが一般的でございます。オーナーが頑張っても果実がオーナーに還元されないということが多くなっております。
次に大野委員からの質問です。これは排出権取引制度の認知度に関する問題でございます。日本の社会では、この問題に対する認知度は高くないと感じております。逆に国際会議に参加しますと、東京都の建物の排出権取引の制度は大変有名です。この問題に対する認識をもっともっと高めるべきだと思います。

次は小木曽委員からのスマートシティのアグリゲーションに関する質問です。大都市を中心に、既に色々実現しております。今手元に資料はありませんが、調べれば具体例はたくさん見つけられると思います。
次は桜井さんのコベネフィットに関する問題です。例えば断熱がもたらす健康改善効果などは、エビデンスも集まり定量化ができる段階になってきました。断熱の悪い家からいい家に移るとどれだけ健康が改善されたかのデータが集まり、その効果を金額換算しております。医学界も断熱の効果を認識して医学的効果を認めていただけるようになりつつあります。快適とか遮音性などの性能も、次の段階で定量化して金額換算することが十分可能だと考えております。
次に谷口委員からの、個々の住宅の省エネと地域的視点からみた省エネに関する質問でございます。おっしゃるとおりでございまして、個々の住宅の省エネも大事だけども、まち全体、コミュニティ全体としての省エネも大事であります。数年前に、国交省の住宅局と都市局が連携してエコまち法という法令をつくっております。これは街区全体としてエネルギー効率を向上させることを意図した法令です。この法令では住宅だけではなく、業務用建物や交通も入れた形で、地区全体のエネルギー効率改善を狙っています。
次に手塚委員からキャップ・アンド・トレードに関する質問がありました。建物用途によって原単位が異なるから、行政手続きが大変複雑になるのではないかというご指摘でございます。これにつきましては、標準的な建物について標準的な利用状態を想定して、標準建物に対して当該建物がどれだけCO2排出量が多いか少ないかというやり方で算定するのが簡単ではないかと思っております。既存の省エネ法などで利用されているやり方を準用すれば、手続自体はある程度簡単化できると考えております。
根本委員からZEBに関する質問がございました。例えば伝統木造など文化財保護の観点からZEBの技術を適用することが困難な建物もあります。歴史資産など、そういう特殊な建物については行政のルールの中で、緩和ルートを設ける必要があると思っております。
次に増井委員から、ライフスタイルの問題に関する質問がございました。私が申し上げたいのは、21世紀の文化は今までの20世紀の大量消費文化とは違う形にならなければならないということです。100%削減を目指すとして、そのとき、生活の質、QOLが下がるとなると国民の賛同が得られないわけです。ですから、省エネは実行しながらもクオリティーは確保されていることが必須です。そのとき、クオリティの位置づけに今までとは違う価値観を導入することが重要です。大量消費がいい生活だという従来の価値観とは異なる新しい価値観の導入が必要だということを申しあげたいわけです。その一つとして、いわゆる知足ということを指摘しました。日本は江戸の昔から、大量消費をせずに足るを知るという生活を実践してきたわけです。もう一つの視点がいわゆる生活習慣病でございます。これは20世紀の大量消費文明の一つの終点のように感じております。これに関しても、価値観の転換ということを指摘したいと思います。それまで暴食、暴飲していた人も、糖尿病だという診断を受けると途端に人生観を変えてお酒を飲むのをやめ、飽食をやめる事例が多いようです。また歩くのが健康にいいと言われて、タクシーに乗るのをやめて電車に変えるわけです。同じように我々の民生の生活も、大量消費文明型のライフスタイルからの反省があっていいように思います。生活習慣病予防型の民生部門のライフスタイルとか価値観の転換が必要だと思っております。
最後に荻本委員からの質問です。改修に関する適確な情報提供が不足している問題のご指摘かと思います。ご指摘のように、改修コストとか業者の信頼性などに関して、一般消費者に不安、戸惑いがあるのは事実であると思います。国交省もこの問題については、充分関心を持って対策を検討しております。近々に、消費者の不安を無くせるような制度が構築されると考えています。このような消費者情報の提供に関しては、ITを活用して、例えばレストランの評価で実施されているような、改修業者を評価するシステムを作って、みんなで共有するのが有効であろうと考えます。そういう仕組を作れば、悪徳業者は充分に排除できるのではないかと思います。
次に、ZEB/ZEHに関するご指摘です。おっしゃるように、無理なZEB化、ZEH化は意味がないと思います。ご指摘のように合理的な省エネを広く推進することが正道であると思います。省エネを進めれば、結果的に、今までよりもずっと容易にZEB/ZEHをつくることができるようになるわけです。
たくさん質問を頂いて、私のメモが追いつかなかったものもあり、お答えできなかった質問もあるのではないかと心配しております。その点はお詫び申し上げます。

○浅野委員長
どうもありがとうございました。村上先生、本当にありがとうございます。
では、続きまして、東松島市の高橋課長からご発表いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

〇高橋課長
宮城県東松島市役所復興政策課の高橋と申します。今日はこのような機会をありがとうございます。どうかよろしくお願いいたします。
東松島市は、仙台と石巻の中間に位置する人口約4万のまちでございます。当市の特徴をご説明するために、若干震災と復興の状況からご説明いたしたいと思います。
ご覧のように、当市は東日本大震災で10m50の大津波が襲来しまして、1,110人がお亡くなりになりました。現在でも24人が行方不明でございます。
少しスライドでは見にくいかもしれませんけれども、この水色のエリアが津波の浸水エリアでございます。海岸から7km奥まで浸水しております。ご覧のような奥まで津波が入ったというのは、海岸低地が広がる地形上の特性から標高が高い地域が広がっておりまして、7km奥まで浸水しております。この地図上の赤のドットが亡くなられた方の住居の所在地であります。どちらかというと、海岸線よりは内陸の2km、3km奥に集中しております。これは想定外という言葉では余りにも表現できないくらいの大津波が襲いましたので、当初の避難想定エリア以外で亡くなられた方が多いという特徴でございます。
また、当市の特性としてもう一点、地域分権型の自治協働のまちづくり、総務省の制度で言いますと、「小さな拠点」づくりということになりますか、地域自治、自治分権型のまちづくりを進めておりましたので、そういった共助組織につきましては、今回の大震災でも大きな役割を果たしまして、あらゆる面で地域の合意形成につながっております。
また、その一つの例として、通称「東松島方式」と言われておりますが、市民合意を背景にいたしまして、当市では震災瓦れきの全量リサイクルに取り組みました。99%のリサイクルとコストの圧縮、合わせて被災者の雇用が実現できましたので、この実施例につきましては海外からの視察者にも関心をいただいています。
当市の防災集団移転でございますけれども、集団移転地を7カ所ほど造成しております。当市に限らず、当市から北の大規模な被災地、いわゆる10m以上の津波が来たエリアは、全住民の5分の1、3分の1、そういった大規模な被災を受けまして集団移転を行っておりますが、当市の場合も人口の5分の1以上、約8,000人が集団移転の対象という巨大プロジェクトがまだ進行中でございます。
市民とともに住宅再建を進めております。先ほどは村上先生からも情報をいただきましたが、できるだけエネルギーにも貢献するような高品質型の住宅づくりを進めておりますが、制度上の要件等もありながら、できるだけ戸建てを中心に住居の復興住宅なども進めておりまして、現時点で80%ほどの住宅系の復興率には至っております。ただ、堤防や道路などのインフラがまだあと三、四年かかる部分がございまして、そちらのインフラにつきましては、やはり今後、復興期間10年かかってしまうような想定で今スケジュールが動いております。また、被災した方々の心の復興や、経済の復興は本当にこれからというのが現状でございます。
そうした中で、野蒜北部丘陵というモデル地区がございます。まだ造成中ではありますが、来月11月20日には、集団移転の引き渡しがほぼ済みまして、当市の防災集団移転がほぼ完了する予定であります。このエリアは448世帯の防災集団移転の市民の方と、JRの駅、学校、市民センター、病院、福祉施設などを伴うまちぐるみで移転するモデル地区であります。
そういった中で、当市として環境未来都市認証を受けまして、レジリエンスの実現に取り組んでおります。当市では、このような大きな被害を受けましたので、単に被災から復旧するだけではなくて、持続的に発展するまちづくりを目指して、エネルギー的な自立も含めて総合的なレジリエンスの強化に取り組んでいるところであります。
一例を申し上げますと、市内における再生可能エネルギー、まだ今のところ太陽光中心でありますが、震災前の800kWから現時点では16MW程度まで20倍に達する勢いでございます。全国平均は8倍、9倍程度ともお伺いしておりますので、そのさらに倍の再生可能エネルギーの生産を実現するに至っております。
また、今回の本題でございますスマート防災エコタウンであります。このモデルは災害公営住宅と救急病院を中心とした公共施設に太陽光での電気を給電する地産地消型のエネルギーモデルとして整備したものでございます。まだ今年6月に稼働したばかりでありますので、通年の数値が出ておりませんが、日中はこの太陽光460kWで、十分85世帯の災害公営住宅と当市の救急病院含む四つの病院群と公共施設に十分給電できる、日中は給電できる数値が現状で出ております。
位置図は省略しますが、もとは水田でございました。約2haほどございます。そういった水田を埋め立てましたので、防災調整池という遊水池を造成する必要がございました。その遊水池を活用して太陽光パネルを並べております。このにありますが、私たちは、このモデルをもとに環境貢献、あるいは効率的な送発電の送電網、発電網の整備、あるいは防災面での強化、経済性など、いろいろ各部門での貢献は目指しつつも、最終的な目標は、持続的な「まちづくり」、大きな被災を受けて、これからサステーナブルにまちづくりを展開していきたいというような、総合的なまちづくりのもとにこの事業を展開してきております。
15ページ目、事業の配置図であります。施設の内容といたしましては、通常、先ほど申し上げた単なる大雨の際の遊水池となるだけの防災調整池ではありますが、そこを有効に活用するために架台を整備しまして太陽光400kWを整備しております。そのほか、災害公営住宅の屋根なども活用して、460kWの太陽光発電と大型の蓄電池、さらにそれを制御するCEMS、あと非常用のバイオ発電機、自営線などを整えてございます。
特に最新あるいは高額の整備を行ったわけではなくて、既存の機器を効率的に配置することで、安定的な給電を実現し、あるいは経済性も考慮してきたつもりでございます。
CEMSの機能であります。平常時と災害時にそれぞれ給電管理を行う機能を持っております。また、各家庭、災害公営住宅の家庭では、スマートフォンで電力の消費状況などが見れるような仕組みなどもあわせて整備しておりますし、視察見学者の方にもモニターを整備しまして、今どのぐらいのエネルギーをどこで使っているかがわかるような、見学施設としても整備しております。
架台のほうの太陽光パネルのスライドであります。こういった防災調整池に台を設置して太陽光を並べるという事例は、私どもが存じ上げている範囲ではあまり伺っておりません。宮城県ではほかにはないと思います。こういった施設を当市では、このほか防災調整池5カ所に整備しまして、同様の調整池活用型のミドルソーラーを配置しております。民間活用で配置しております。
電力給電の考え方の資料であります。横軸が24時間の時間軸で、縦軸が電力量であります。太陽光でありますので日中の発電が中心になりますが、その太陽電池で発電した電気を夜間にも展開するような仕組みで、できるだけ効率化を図っているところであります。
非常時のレベル別の給電イメージであります。私たちがこの事業に取り組んだ主な目的の一つは、防災面での非常時、災害時の電力の給電です。大震災の際は、非常に冷たい雪が降る気候の中で津波を受けましたので、低体温で亡くなる方が非常に多くいらっしゃいました。この救急病院もエネルギーが止まり、重油がなくなって非常用発電も止まってしまいますと、重篤な患者さんを救うすべがなくなってしまいました。そういった経験を踏まえての防災面でも活用できる安定的な分散型の発電施設ということで整備しましたので、非常時にどのような給電をするかも私どもとして計画立てて設計したところであります。大災害が発生したときには、順次、給電の対応施設を縮減して、3日間から1週間は給電ができるような計画をあらかじめ立て、その旨を市民の方と事業者の病院関係者にご説明して今に至っております。
また、この地産地消型スマートタウンの普及の意味でありますけれども、今回の東松島モデルは規模としては小さいものでありますが、このような防災エコタウンのような施設が増加していきましたならば、送電網の負荷や送電ロスの縮減、あるいは大型発電施設の減少にもつながる可能性が高いものと私どもは考えてございます。
この大きな写真は県民防災の日、6月12日に丸川環境大臣にもご臨席いただきまして稼働いたしております。ほかに同様の事例が非常に少ないこともありまして、現状で視察要望が非常に多く寄せられております。毎週のように海外を含めて視察者に訪れていただいております。
この運営の概要図であります。施設のハード自体は市が、基礎自治体が行いましたが、運営は当市の一般社団法人、まちづくり団体、TMO的な組織になります一般社団法人東松島みらいとし機構、愛称「HOPE」が給電事務を統括しております。HOPEの資料につきましては、今日リーフレットでご配付しているところであります。
このHOPEがあわせてPPS事業にも今年から参入しまして、今年4月からPPS事業の事業展開も行っております。このエコタウンはもちろん、市役所や学校など、公共施設あるいは農業・漁業の産業施設などにも給電を行い、現状では7.5MWの非常に小さな電気会社でありますけれども、宮城県では唯一の地域新電力として営業を開始しております。また、特徴として、大手の会社等にすべて委託するのではなくて、このHOPEで独力で3人雇用しまして、電力の需給業務を自立して行っております。そのため3人の定期雇用が発生しましたので、電気を売るだけではなくて、雇用や、まだ小さい利益ではありますけれども、その利益を活用した新たな公共事業の財源の確保にも貢献するものと私どもでは見込んでおりまして、行く行くはドイツのシュタットベルケ的な施設といいますか、団体にしたいなということで今、計画を立てているところではございます。
HOPEの紹介でありますが、もともとは震災復興の中間支援組織として設立したもので、民間会社様にも多く加盟いただきました。当初80社、現在でも50社の民間会社様にご加盟いただいて、市と社会福祉協議会と商工会により設立した公的法人であります。「産・学・官・民」が連携した被災地の一つのモデルとして今、多方面からの事業展開を行っていただいております。
このスライドはG7環境大臣会合にも当市の市長が都市市長会合に出席させていただきました。その際に、バンクーバーの市長さんから、再生可能エネルギーを防災に活用した取組は非常に目新しかったというお言葉をいただいたそうであります。我々は毎日復興事業を行っておりますので、特にそういった考えを持ったことはないんですけれども、海外から見ますと、防災に再生可能エネルギーを活用した取り組みというのは目新しい事例だったのかなというのが市長の感想でございました。
まだ当市は、復興の途上ではありますけれども、震災を契機とした国際協力の取組なども進めております。JICAさんと連携した海外との連携を、今進めているところであります。特に被災地間の連携として、インドネシアスマトラ沖地震の大規模被災地でありますアチェ市とは包括連携を行いまして、毎年、研修生を複数回受け入れております。
あわせて、ヨランダ台風のレイテ島・サマール島の基礎自治体とも連携を行いまして、継続的に草の根の市民交流なども行っているところであります。
また、当市として十分な復興状況ではございませんけれども、私たちは東日本大震災で大きな被災を受けました。このような大被害を繰り返したくない、繰り返すようなことがあってはならないといった強い思いがございます。そういった思いの中で、国連のSDGsにも私たちが果たすべき役割があるものと考えております。特に17のアジェンダのうち、9番、11番、13番については、レジリエンス系の項目が大きく入っておりますので、被災地の基礎自治体として役割を果たしたいという思いで事業を進めてございます。
非常に拙い話でございましたが、以上で説明を終わらせていただきます。ありがとうございました。

〇浅野委員長
どうも高橋課長、ありがとうございました。余計なことですが、この夏には、中央環境審議会の総合政策部会でも東松島市を視察させていただきまして、そのときもいろいろとお世話になりまして、ありがとうございました。
それでは、ただいまのご発表につきまして、ご質問ございましたらどうぞ札をお立てくださいませんでしょうか。それでは、このくらいにさせていただきます。
では、増井委員からどうぞ。

〇増井委員
どうも復興と低炭素のお話をありがとうございました。1点質問なんですけれども、実際、住民の方々の低炭素ですとか、あるいはパリ協定といったものへの関心というのはどういったものなのか、お伺いしたいと思います。
以上です。

〇浅野委員長
廣江委員、どうぞ。

〇廣江委員
ありがとうございます。懸命な復旧努力に対し、心から敬意を表します。2点、質問をさせていただきます。資料の、これは電力供給の考え方というページがございまして、基本的には昼間の余剰分を夜間に使うと、こういう考え方をお示しいただいているんですが、その手前、前の前のページ、17ページのほうには、現在の機能だと思いますけれども、蓄電池の充放電によるピークカット、すなわち昼間に実は発電が追いつかないときに、これを放電しておりますというふうにもこれは読み取れますので、この関係がどうなっているのかというのが1点目でございます。
それから、2点目がスマートタウン普及の意味ということで、大型発電所軽減可能とか、あるいは送電網の軽減可能ということを書いていただいています。確かに再生可能エネルギーというのは火力発電所の焚き減らしをできますので、その分、確実に発電電力量を減らすことができる。従来の発電設備の発電電力量を減らすことはそのとおりだと思いますが、ご承知のように、電力供給においては、瞬時瞬時に需給を合わさないといけないといたしますと、やはりキロワットのベースで見れば、実は需要に見合ったような発電機をバックアップとして用意しておかなければならない、あるいは送電網を用意しなければならないという問題があるのではないか。むしろ利用率が下がってしまうという問題がありまして、ヨーロッパはかなりこれで苦労をしているということでございますが、この辺り、どのようにお考えになっているのか。
この2点、お聞きしたいと思います。よろしくお願いします。

〇浅野委員長
根本委員、どうぞ。

〇根本委員
具体的な料金水準のレベル感として、通常の大手電力会社と比べ、どのぐらいの水準に抑えていらっしゃるのかという点と、どこからの資金調達で、電力部分をファイナンスされているかという点を教えていただければと思います。

〇浅野委員長
手塚委員、どうぞ。

〇手塚委員
大変ユニークなというか、新しい取組を興味深くお話を伺いました。
それで、この電力供給の考え方というページで、ちょっと私の理解が不足しているのかもしれないので確認させていただきたいんですけども、ここでつけられている太陽光発電の電力というのは、いわゆるFIT、系統電力に戻して、そこからFITの補助金を得るという制度に乗っているのではなくて、実際に地産地消で消費者のところに届いて、そこに課金制度を使って、このHOPEという組織がお金を集める。余った分は、これも系統に戻すのではなくて、蓄電池にためて夜間の電力に使うという、基本的にFITとは全く切り離された使い方をされているのでしょうかというのが1点目の質問です。
2点目の質問は、実際には、これ、かなり初期投資がかかっていると思うんですけども、恐らくこれはエコタウンをつくる全体の復興予算等の中で初期投資が行われて、こういう非常に合理的な規模で合理的な形の設備をつけられているんだろうと思うんですけども、これが例えば20年とか30年たちますと、設備そのものが老朽化して、いずれリプレイスの必要性が出てくるのだろうと思うんですけども、そのリプレイスの際の資金をどういうふうに出すのか。つまり、このHOPEという会社、組織のようなところに、再投資資金みたいなものをためていくというようなことを想定された事業になっているんでしょうか。
こういう質問でございます。よろしくお願いします。

〇浅野委員長
谷口委員、どうぞ。

〇谷口委員
リプレイスのご質問をしようと思って、全く同じことを手塚委員が今聞かれたので、それで結構なんですが、私自身は、震災後の1年間、復興計画の監理委員で入れさせていただいていて、今も大変頑張っておられるなということで期待しておりますということと、あと、やっぱり小さな町で人員とか予算とか限られていて、対応されるだけでも結構大変だと思いますので、リプレイスの面だけではなくて、例えば人員の確保とか、全体を通して、どう持続可能な形で持っていかれようとしているか、その辺りの今考えておられる将来的なご苦労ですね、どんなところが一番大変になりそうかということをちょっと教えていただければと思います。

〇浅野委員長
大野委員、どうぞ。

〇大野委員
大変すばらしい取組をご紹介いただいて、ありがとうございました。
こういう新しい取組をやろうと思って、それを企画して事業化して、さらに事業になったものを動かしていくというのは、結構いろんなマンパワーとか人的な資源が要ると思うんです。よく基礎自治体でお聞きするのは、なかなかエネルギーの新しい仕事をやろうと思っても、やれる人がいないというお話を聞くことがあるんですが、東松山市さんでは、どんなふうな人たちで、どんなふうな方法で、そういう人的な資源とかマンパワーを確保して生み出しているのかという、その辺を教えてください。

〇浅野委員長
大塚委員、どうぞ。

〇大塚委員
ありがとうございます。
一つだけお伺いしておきたいんですけども、エコタウンの事業の前に、市街化区域をコンパクトにという、コンパクトシティ化をしていらっしゃるということが7ページ辺りにも出ていますが、これはある種規制によって対応しているということになるんじゃないかと思いますけど、この集団移転地以外のところに住むことに関しては、何らかの制約はあるのでしょうか。あるいは、ある程度誘導みたいなこともやっておられるのであれば、ちょっと、その点についても教えてください。

〇浅野委員長
それでは、以上、ご質問でございます。また、結構数がございますけども、10分程度でお答えいただければと思います。よろしくお願いいたします。

〇高橋課長
全てをお答えできないかもしれませんが、よろしくお願いしたいと思います。
まず、市民感覚でございますけれども、パリ協定に関する理解度が高いとまではさすがに申し上げられませんが、私ども、市民も含めて行政も、震災で大きく意識が変わりました。自分たちでできることはしていきたい、人に迷惑はかけたくない、人の役に立ちたい、そういった意識も人生も変わった市民、行政マン、多うございます。それの一環として、エネルギー的な、あるいは環境的な取組も、関心が高いといった市民意向が出ております。震災前と比較して、もうほぼ倍にも近いような環境に関心のある方という市民意向が出ておりますので、そういった傾向はございます。
また、次の質問でありますが、蓄電池では、やはり全てカバーできませんので、JEPXなどの市場から調達する電力も、夜間を中心に行っております。ご指摘のとおり、30分同時同量ルールもありますので、太陽光だけでは十分な電力の確保につながらない部分はあります。風力あるいはバイオマス等も含めての検討が必要と考えているところであります。
料金水準でありますけれども、この最初のモデルでありましたスマート防災エコタウンは、一般電力会社と同じ電力料金体系で行っておりますが、新電力HOPEとしては他の公共施設、農業者、漁業者には、若干、お安く給電を開始しております。
あと、FITかどうかということでありますが、FITではなく、当然、自立分散型の独自のPPSで運営しているところであります。
また、リプレイス関係、あるいは初期投資の件でありますけれども、約5億の総事業費のうち、今回、モデル事業で採択いただきまして、環境省さんの予算で、約4分の3ほど補助をいただいてございます。残りの4分の1が市の負担になります。今後、安定的に運営していく、あるいはパワコンなどのリプレイスも含めて想定しておりますが、十分、15年から16年で利益が出るといった想定のもとに、今計画は立てておりますので、それに向けて努力していきたい、そういった工夫を重ねていきたいと考えております。年間600万から700万程度のフィーが発生するような構想も今立ててございますが、まだ通年で運営しておりませんので、まだきっちりした数字が申し上げられないところでございます。
また、谷口先生から質問がありましたマンパワーの件ですが、本市は人口4万の小さなまちでありまして、復興予算が膨大な事業展開もありまして、マンパワーは非常に不足しております。行政職250人しかおりませんので、他自治体からの応援や復興庁派遣の民間の方からのご支援をいただいて、何とか切り回しているところであります。そういった意味で、今日も復興庁から民間人材派遣をいただいた川崎さんにも同席していただいていますが、こういった外部からのご支援あるいはご協力が、まだ被災自治体には、欠かせないところであります。
こういった事業を行う上で、前例がないといった新たな展開事業でございましたので、特に一般電力会社さんとの調整、あるいは許認可関係で困難なところがありました。ファーストペンギンとまでは申し上げるつもりはありませんが、飛び込んでみたら、かなり水は冷たかった部分はあったのかなと思います。大変だった部分は、正直ございます。
また、今後のマンパワー不足につきまして、全国的に新たな災害なども発生しておりますので、この環境面だけではなくて、特に技術職の不足が当市も含めて深刻でありますので、そういったPRを重ねてまいりたいと考えているところではございます。
また、建築制限の件でありますけれども、防災集団移転を進める上で、当然、防災危険区域を条例で設定しまして、集団移転を進めております。南側の約20%を、ほぼ建築制限区域に、No Build Zoneに設定しましたので、本当に究極のコンパクトシティにならざるを得ないというのが被災自治体の姿でございますし、先ほど少し紹介した野蒜地区は、本当のコンパクトの中のコンパクトシティになるまちとしても構想しているところであります。
十分なお答えができずに、失礼いたしました。以上でございます。

〇浅野委員長
どうもありがとうございました。
それでは、高橋課長からのご発表は以上にさせていただきます。
それでは、最後になりましたが、杉山上席研究員からご発表いただきたいと思います。

〇杉山上席研究員
杉山と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
私からは、イノベーションと温暖化対策長期戦略ということでお話をいたします。
まず、問題意識ですけれども、なぜ世界の温室効果ガス削減はなかなか進まないかというと、温暖化対策のコストが高いというのが非常に大きいと。コストを下げるということはまさにイノベーションであって、それを推進したいと。特に革新的な温暖化対策技術ということが言われているんですけれども、これがどうしたら得られるかということを考えていきたいと思います。
最初に結論をスライド2枚で申し上げまして、後で詳しく説明します。
一つ目の結論、主なメッセージですけれども、「革新的温暖化対策技術」というのが大事で、それが温暖化問題解決の鍵です、とよく言われています。それを得るためには、実は科学技術全般が進歩しなくてはいけない。そのためには、経済活動が活発に起きていなければいけない、ということです。温暖化対策と経済成長の両立というのは、よくトレードオフだというふうに思われるんですけども、ただそういうことを超えて、実は経済成長がきちんと起きないと、温暖化問題の解決ができない、ということであります。
もう一つの主なメッセージのスライドですけども、これには2点あるんですが、今、長期的に8割ぐらいCO2を減らしましょうということを言っているんですが、これを「生産ベース」、日本の煙突から出るベースで達成することによりも、「消費ベース」、日本の消費のために世界中で発生するCO2を減らす、そっちのほうが実は大事、ということです。これはイノベーションによって、世界規模で温暖化対策コストを下げないとできません、ということです。それから、2点目ですけども、「電気の低炭素化」と、それから「電化」、この両者というのが大規模な排出削減のためには必要ということは、前のプレゼンターの方もおっしゃったんですけども、これを起こすためにはどうするか、ということです。これを起こすためには、あまり慌てて電気の低炭素化をやると、電気料金が上がってしまうので、そうではなくて、電力価格を抑制して、徐々に電気の低炭素化を図ったほうがいい、こういうことです。これだけ聞いたのでは、何のことやら、ということもあると思いますが、これからご説明します。
話を進めるに当たって、まずイノベーションという言葉をどう定義するかなんですけども、このイノベーションというのは、ただの発明ではないわけで、技術が普及していくという、そういうことも含めてイノベーションというふうに考えるのが、この方面の学会の定義、普通の定義ですので、私もそれに従います。
どんなイノベーションの話をするかということなんですが、以下で幾つか見ていきます。ここで、温暖化に関するイノベーションについて最初に話しますけれども、実はそれ以外にも日本政府はいろんなイノベーションの絵姿を描いているということをお話しします。
初めが温暖化に関する革新的な温暖化対策技術の推進をするエネルギー環境イノベーション戦略、これは内閣府のほうですけども、真ん中辺りを見ると、左から太陽光発電、地熱発電、蓄電池、水素、超電導、革新的生産プロセス、こういったことで、いわゆる温暖化対策の革新技術というものが推進されていくと。それを支えるのが、下からはデバイスとか材料技術ですね。上のほうからは、AIやビッグデータといったのでシステム統合技術というのがあると。こういったものを推進していきましょうということです。これらが無事推進できれば、温暖化問題は非常に解決しやすくなるというふうに考えられる。
ただ、政府は、温暖化対策技術だけではなくて、いろんなイノベーションを考えています。例えばこの第5期科学技術基本計画は、社会全体のスマート化ということを言っていて、エネルギーだけではなくて、生産システムも、それから交通システムも、いろんなものをスマート化していくんだとしています。そのためには、IoTといったものを活用していきますということを言っているわけです。これも内閣府ですね。
それから、経産省のほうの新産業構造ビジョンというのもありまして、こちらは左側に共通基盤技術というのがあります。人工知能とかIoTなどです。これを金融とか医療とか、エネルギーも含めて、いろんな分野に活用することで、新しい産業ができていく、ということが考えられているわけです。
それから、この中で人工知能というのは共通基盤技術としてありますけれども、これについても、将来像というのはNEDOでつくったものがありまして、いろんな分野で人工知能が進んでいきます。これは進歩がすごく急で、この時間軸は一番右の覧であっても2030年以降としか書いていなくて、その急なことがうかがえる。技術進歩というのが急激に起きるということは、温暖化問題を解決するための時間のスパンを考えると、非常に有望であるとわかるわけです。つまりイノベーションを起こすことによって、温暖化問題を解決していくということに、期待が持てるわけです。
以上、いろんなイノベーションというものを申し上げました。だが問題は、ここでいろいろ羅列したから、これで安心して終わってはいけないということです。どうやったらこのイノベーションを起こせるかということを、よく考えなくてはいけない。
イノベーションがどうやって起きるかということを知るために、一つ、最近話題になっている例を出しますと、人工知能があります。
人工知能というと、最近、Googleの人工知能が囲碁でプロ棋士を破ったということで、この部屋でも、多分、勝てる人は1人もいない、そのぐらい進歩してきたわけです。
この進歩において、ディープラーニングというのが、一つ大事な技術だった。これはAIにおける50年来のブレークスルーだと言われて、今、注目されているわけです。
このディープラーニングをなぜ例として持ち出しているかというと、二つのことを申し上げたいからです。一つの特徴は、このディープラーニングは、既存の技術の組み合わせで実現したということです。どんな技術で実現したかというと、ディープラーニングというのは、神経細胞が何十層にもなって相互作用をするという、そういうものなんですけれども、図の一番左にあるパーセプトロンというのは、その層が三つしかない。すごく簡単な人工知能技術が昔あったわけですね。それから、組み合わせの2番目の要素が、Web上のビッグデータです。これは、みんなが猫の写真とかを一生懸命アップしたんですけど、こういうものが人工知能のトレーニングのために使われた。それから、一番右の画像処理ユニットというんですけども、これはゲーム機で画像を処理する速さを競っていたら並列計算技術が発達してしまった、というものです。この三つを使うことで、ディープラーニングという新しい人工知能技術ができるようになった。実際に実現したわけです。
このディープラーニングという例についてのもう一つの特徴は、こういった新しい人工知能技術ができると、いろんなことができます、ということです。この新産業構造ビジョンの絵なんですけども、この赤枠をつけたところは、例えばエネルギー分野に応用すると、エネルギーデマンドレスポンス、要は省エネができる、としています。人工知能が省エネをやってくれるようになる、そういうわけです。ここでよく考えると、この人工知能を使った省エネというのは、革新的な温暖化対策技術だと言えるんですけども、それがどうやってできたかと考えると、実は温暖化対策を直接の目的としない技術進歩でできているわけですね。
つまり、前のスライドに帰っていただくと、左のパーセプトロンも、それからWeb上の猫さんの写真も、それからゲーム機も、この3つとも、どれ一つとして温暖化を目的として発達した技術ではないわけです。だけども、ひとたび人工知能の技術であるディープラーニングができると、これで温暖化対策は飛躍的に進むことが期待できる。ディープラーニングに関するイノベーションというのは、そういう構造になっているわけです。
次に、今の例をベースに、より一般的に、どうやったらイノベーションが起こせるかということを考えます。イノベーションというのは、複雑系研究の人たちが随分考え方をぐっと進めてくれました。結論としては、一つには、新しい技術は既存の技術の組み合わせで生まれるということがはっきりしている。これはアイデアの交配とか新結合とか、いろんな言い方で言われています。そして、技術というのは既存のものがどんどん増えるという蓄積性があって、しかも新しい組み合わせというのは、技術の数が増えれば増えるほど、ますます増える。それで、どんどん技術進歩は加速している。
もう一つ、どうやって新しい技術ができるかということを考えるときに、おもしろい概念が、この隣接可能性というやつです。ちょっとややこしいんですけど、何のことかというと、技術革新の蓄積がある程度に達すると、それが新たな技術革新を可能にするということです。イノベーションが起こるには、それを可能にするだけベースがなければいけない。何のことかというと、さっきのディープラーニングだと、三つの技術が存在して、初めてディープラーニングができました。そのほかの例で言うと、ブロードバンド環境というのがないと、YouTubeというのは生まれなかった。概念だけできても、絶対に普及していかないということです。
この隣接可能性という考えの、もう一つおもしろい側面は、隣接可能性が満たされると、実は発明が不可避的に起きるんだ、という話です。よく発明や発見というのは、ほぼ同時に、複数が同時に、独立に起きます。ニュートンとライプニッツは、ほぼ同じタイミングで微積分を発見した。また、小数を発明した人も、同時に何人もいた。スライドの下のほうに行くと、温度計とかタイプライターとか蒸気船とか、これも大体同じようなタイミングで、複数の人が発明・発見した。
この何が大事かというと、科学技術全般が進歩していって、隣接可能性が満たされていくと、それによって新しい技術ができる、というイノベーションのメカニズムを示しているからです。革新的温暖化対策技術というのは、それが欲しいならば、科学技術全般が進歩して、隣接可能性が満たされていくということが大事なわけです。革新的温暖化対策技術が欲しいからといって、例えばそこだけに一生懸命をお金を投入しても、革新的温暖化対策技術だけがぽかっと生まれることは絶対にないわけです。科学技術全般が進まないといけない。簡単な、ほぼ自明な例を挙げると、この下にあるように、人工知能が進歩したら、人工知能による省エネが可能になる。だが人工知能が進歩しなければ、そもそも人工知能による省エネなんてできるわけがないわけですね。
さて、科学技術全般の進歩をもたらすことが大事だと、いま言いました。では、そのためには何が一番大事か 進歩のドライバになるかというと、やはり自由経済です。「私は鉛筆」というのは、経済学のほうでは有名な話なんですが、鉛筆1本とっても、それを1人で全部つくれる人はどこにもいません。木をどこから切ってくるかとか、黒鉛をどこから掘って、どうそれを処理するかとか、そういうノウハウがたくさんあって、そういう断片的であちこちに存在する知識を組み合わせて、新しい製品、すぐれた製品をつくっていくというのが自由経済の力です。自由経済というのは、まさにイノベーションをもたらすものであるということです。
こういうふうに見てくると、革新的温暖化対策技術が欲しいというときに、政府は何をしたらいいかということなんですが、大事なのは、まず活発な経済活動を促すことです。これによって、新しい製品をどんどんつくられて、イノベーションが起きます。それから、基礎研究や理科教育への投資というのは、やっぱり必要です。市場だけでできないことは、政府がやらなきゃいけない。それから、もちろんターゲットを絞った革新的温暖化対策技術の開発プログラムというのも必要です。ただ、大事なのは、この3番目の革新的温暖化対策技術の開発プログラムだけやっていればいいというわけではないことです。むしろ活発な経済活動を促進することが大事であり、また基礎研究には国の役割がやっぱりあるわけで、そういったことにも投資しなきゃいけませんということです。
以上が、冒頭申し上げた結論2枚のうちの1枚目のスライドの話です。ここからは、2枚目のスライドの話をします。この会合は長期戦略を考えるということなので、2点にわたって申し上げたい。
一つ目は、長期戦略というのは、イノベーションを重視するとどう考えればよいか、ということです。
先に行く前に、このスライドの例をちょっと考えてみましょう。温暖化問題の解決に結びつくのは次の2つの活動のうちどちらだろうかと。
第1の活動ですが、2000年以降アメリカでは随分イノベーションが進みましたと。シェールガス革命がありました。それから、シリコンバレーでデジタル革命がありました。。これはどちらも温暖化対策にとってすごく重要な活動だったわけです。
第2の活動としては、ほかの多くの先進国がやったことですが、確かにCO2が減ったところはあった。けれども、それは生産ベースの話であって、その国の煙突では減っているんだけれども、その国が消費するためのCO2が減ったかというと、貿易に伴って海外で発生しているCO2を考えると実はあまり減らなかった。
これはOECDがそういう計算をしているので、ここにグラフを載せていますけれども、これは今詳細は省きますが、要はその国のバウンダリの中では、つまりその国の国境の中では、CO2排出は減ったと言っているけれども、実は中国からモノをいっぱい買うようになりました。そのモノの生産のために中国で出ているCO2まで考えたら、実はCO2は減ったとは言えないでしょう、という計算です。
今、8割削減ということを先進国はどこも言っているんですけども、残念ながら、これはどこも生産ベースで、その国の煙突の話しかしていないように見えます。でも、これは実は意味がない。消費ベースで減らさなければ意味がない。8割自分の国では減らしましたけども、その分輸入します、その輸入している先の中国では、いっぱいCO2が出ている、ということでは、全然意味がないわけです。だから、世界全体で排出を減らさなきゃいけない。それをやるためには、やっぱり排出削減のコストが低くなければいけない。そのためには、イノベーションが大事、ということです。
こうして見ると、イノベーションを重視した長期戦略というのは、イノベーションにコミットしたらいい、と思います。具体的にいうと、もちろん、エネルギー環境イノベーション戦略のような、革新的温暖化対策技術開発プログラムには、もちろんコミットすればよい。だが、それだけではなくて、すでにご紹介したように、一体となって進める他分野のイノベーションの計画ないし、ビジョンというものをせっかくつくっていますから、こういったものにも合わせてきちんとコミットしたらいいだろうと思います。それから、2050年8割減という国全体の数値目標について、これをブレークダウンした排出削減目標というのは、実は今、つくりようがない。それにかえて上記のようなイノベーションに関する研究開発目標、さらに言えば、理科教育目標のようなものを設定したらいいというふうに考えます。
最後に、「電気の低炭素化」と「電化」の戦略について申し上げます。
これも冒頭少し申し上げましたけども、電気の低炭素化と電化が両輪として必要だ、ということは、今日の村上先生も高橋先生もおっしゃったとおりで、かつ、この小委員会の第1回の資料というのを眺めていましたら、やっぱりそう書いてありました。電気からCO2を大幅に抜いて、それから、電気を使う、ということです。このスライドの囲みの3に於いては、電化を促進することが、大規模な削減には必要です、ということを言っているわけです。このためには、電気自動車とかヒートポンプが必要ですということが書いてある。
さて、これは結構なんですが、ただし、どうやってこの両方、電気の低炭素化と電化を同時に両方進めるかということは、よく考えなければいけない。発電コストというのは、やっぱり大事なファクターであって、再生可能エネルギーは安くなってきたとはいっても、まだやっぱり割高な状況にあるわけです。
そこで、この図を見て今後の作戦と戦略というのを考えたい。このグラフは右軸が電化率です。電化率とは、電力消費が最終エネルギー消費に占める割合です。縦軸が電気の低炭素化で、上に行くほどCO2が少ない、という絵です。現在は、電化もまだこれから進めなければいけないし、それから、電気の低炭素化というのもまだこれから進めなければいけないということで、図の左下にあります。目指すべきは、右上の低炭素社会であって、右のほうに行って電化が進んで、上のほうに行って電気の低炭素化が進む、ということが必要です。
この低炭素社会にどうやったら行けるか、ということなんですけども、二つ経路が描いてあります。この色は電力の価格を表していて、水色は安くて、赤いは高い、黄色は中間となっています。
さて、電気の低炭素化をあまり性急に進めようとして、大規模に再生可能エネルギーを導入するということを性急にやり過ぎると、電気の低炭素化は進むので上に行きます。ところが、電気の価格が高くなると誰も使わないので、このとき、電化は進みません。そういったことを続けていると、結局いつまでも電化は進まない。誰も電気自動車は使わないし、ヒートポンプは使わないということで、低炭素社会に到達できなくなります。
そうではなくて、電力価格を抑制しながらやっていくことが適切です。最初は原子力と化石燃料発電を活用して、電力価格を抑制できる範囲で、CO2を減らしていきます。それから、再生可能エネルギーも、どんどん技術のコストは下がっていきますので、様子を見ながらそれを導入していくということで、電力価格を抑制して、水色のまま、やっていくことができます。それで、電気自動車、ヒートポンプというものは、もう既に市場に入りつつありますし、この後も電力価格が抑制されていれば、技術開発と普及が進んでいきますので、それで電化が進みます。そういった形であれば、最後に、低炭素社会に、無理なく到達できると期待できます。こういったやり方が現実的なのではないか、と考えます。
私からのご説明は以上で、最後は文献ですので省略いたします。
どうもご清聴ありがとうございました。

〇浅野委員長
どうもありがとうございました。
それでは、ただいまの杉山さんのご発表について、ご質問ございましたら、どうぞ名札をお立てください。
ほとんどの方がお立てになっていると思いました。それでは、荻本委員から順番にお願いいたします。

〇荻本委員
荻本です。
いろいろお話、全て同意するところなんですけれども、一つ、やはり自分の悩みとして、家庭とか業務のところで低炭素化を推し進めようということを皆で考えているというわけですが、杉山さんの視点から見て、ここに何かメッセージをいただくとすれば、どういうことがあるかということをお願いしたいと思います。

〇浅野委員長
増井委員、どうぞ。

〇増井委員
どうも、イノベーションに関するご説明ありがとうございました。
三つあったんですけど、1点目は荻本委員と同じなので割愛させてもらいます。まず、このメッセージという中で、電気の低炭素化は価格高騰を招き、電化イノベーションを阻害するとご説明されているんですけれども、ただ、これまでの歴史を見ますと、価格上昇、そういった何らかの制約というようなものによってイノベーションが起こってきたという経緯もあるかと思います。恐らく、ここでは生産等のイノベーションと普及等のイノベーションというのが、ちょっと混在しているのかなと個人的には思うんですけれども、価格というものが何らかの形、シグナルとしてイノベーションを誘発するという、そういうようなこともあるんじゃないかなと思うんですけども、この点についてはどうなの漸進的に行くとなると、2℃目標というところに果たして時間的に間に合うのかどうか、その点、杉山先生、どういうふうにお考えなのかということをお伺いしたいと思います。
二つ目は、同じくメッセージの中の1番目のほうなんですけれども、三つほど書かれておりますけれども、これらについて、これまでに実証的な分析の結果というものが、もしございましたら教えていただければと思います。
以上です。

〇浅野委員長
廣江委員、どうぞ。

〇廣江委員
ありがとうございます。
32ページ、全くこのとおりだと私も思います。それで、電気にはご承知のようにキロワットアワーとキロワットという二つの概念がありますけども、現在のFITのやり方というのは、石油火力よりも高いような――燃料費は安いように見えますけど、実際、仕上がりは石油火力よりも高いような燃料で、片方ではキロワットアワーを調達しながら、一方では、バックアップのためのキロワットを持ち続けなければならないということで、もう全く、今、失敗の方向に向かっているんじゃないかと非常に心配しているところです。
現在の国がとろうとしていらっしゃるのは、FITにつきましても、例えば入札を入れるとか、できるだけ買取価格を抑制するということをとっておられますが、こういう方向で、このブルーの線に向かって進めるというふうに現在評価していらっしゃるかどうかが質問であります。
以上です。

〇浅野委員長
根本委員、どうぞ。

〇根本委員
消費ベースでのCO2排出量の削減のの方が生産ベースでの削減より重要という、非常に重要なご指摘をいただきました。
私の質問は、最後の31ページ、32ページに関連するところですが、価格の高い再エネの大量導入など、性急な低炭素化を進めますと、これがイノベーションを阻害して、結局良くない状態になるというご説明をいただきました。実際に、日本ではFIT制度などがそれに該当するのだと思いますけれども、排出権取引等々いろいろ考え方はあるかと思いますけれども、イノベーションを阻害する政策が、ご提示いただいたもの以外にあるかどうか。あれば伺いたいと思います。

〇浅野委員長
手塚委員、どうぞ。

〇手塚委員
短時間に非常に広範囲のご説明、ありがとうございます。
ほとんど賛同いたしますが、消費ベースと生産ベースのところで、実は世の中、生産ベースのインベントリしか今のところ議論されていないという、そのとおりだと思うんですけども、パリ協定の中で、例えば途上国はみんな原単位目標を掲げていて、先進国は絶対量の生産ベースの目標を掲げているという構図だと、これは多分、ますます生産ベースの消費は途上国のほうに行って、途上国は生産が増えれば原単位が下がるので好都合という、こういう何か失敗のゲームに行きそうな気がするんですね、地球全体で見たときには。そのときに、これをそうさせないようにするための歯止めというか、何か新たなカウンティングの仕方、あるいはパリ協定に最もふさわしい、地球全体で下げるための方策というのを、この消費ベース、生産ベースという考え方の中から、何かご提案みたいのがおありでしたらば伺いたいと思います。

〇浅野委員長
桜井委員、どうぞ。

〇桜井委員
もう増井先生から先ほど出ましたように、僕は32ページ、これは非常に興味を持って聞かせていただいたんですが、本当にこれで、今度のパリ協定で合意された意欲的削減目標を時間的にも達成できるのでしょうか。パリ協定は、もう皆さんもご存じのように大変に歴史的、そして、またかなり踏み込んだ目標値になったわけですね。できる、できないというよりも、むしろ、目標を達成するために、やるべきことをやるにはどんな道筋で行くべきものか。すなわち、フォワードキャスティングよりも、バックキャストで達成の可能性を見出して行くことが、我々の役割だと思うんですが。価格を抑えつつ、排出量を増大させていくこの方法で、気温上昇を2℃または1.5℃に抑えるための削減目標達成を可能とするには、時間的な整合性をとらねばなりませんが、何か戦略的な推進方法が必要と思いますが、この点はいかがでしょうか。

〇浅野委員長
崎田委員、どうぞ。

〇崎田委員
ありがとうございます。お話ありがとうございます。
先ほどイノベーションをもたらす方向性として、生産ベースよりも消費ベースの重要性ということをお話しされました。そこを考えると、生産と消費がもっと緊密に連携するということが大事だと常に思ってきました。けれども、パリ協定では、その具体化として、都市ということを非常に強調されていたんですが、そういう具体的なものとして、今日のお話を生かすとしたら、例えば研究成果をきちんと生かすために、どういう形が一番効果的とお考えか、ぜひ伺いたいと思います。よろしくお願いします。

〇浅野委員長
小木曽委員、どうぞ。

〇小木曽委員
すみません、ご説明ありがとうございました。
イノベーションこそ社会的課題を解決するということは非常に重要です。27ページのところで、我々の今後の議論の参考にさせていただくために、ちょっとあえて二つ質問をさせていただきます。目標達成のレベルの置き方として、80%削減のブレークダウンというものではなくて、別の研究開発目標や理科教育目標の設定という、その設定のレベルの仕方を違うものにしたらどうかというご提案だと思うんです。それであえてちょっとお聞きしたいのが2点で、欧米でイノベーションというのが非常に、特に米国はそうだと思いますけれども、イノベーションを重視する国において、地球環境の観点から、この目標設定について、今、どんな議論を行っているかというところで、参考になることが、もしご存じであれば教えていただきたいのが1点。
あともう一つ、よく政策で議論するのが、バックキャストで考えて、あえて無理目の数値設定、KPI、目標を設定することによって、そこからイノベーションが起こるということを言われる方も割といるんですけれども、その意味で、2050年80%をブレークダウンした目標を達成するというところから、イノベーションが起こるという考えがあり得るのか、あり得ないのか。あるいは、それはむしろほかの目標設定のほうが有効なのか。そこら辺、ちょっとまたご指摘があれば、いただければと思います。

〇浅野委員長
大野委員、どうぞ。

〇大野委員
私も2点お聞きしたいと思います。
一つは、26ページの表で、生産ベースと消費ベースということなんですが、これは要するに先進国は自国の生産ベースは減らしているんだけども、途上国から輸入しているものがあるので、そこが大事なんだということなんですけども、ということは、つまり消費ベースというのは途上国の生産ベースのCO2を削減するんだということに結局なるんだと思うんですね。そうすると、結局先進国でも生産ベースで減らし、途上国も生産ベースでは減らそうということだから、要するにこれはパリ協定でまさに合意した、世界全体で減らしていこうということだと思うんです。そういう意味では、ごく当たり前の話というふうに思うんですが、それで、26ページで、杉山先生から出していただいた資料を見ると、EUを見ると、これは生産ベースが減少しているんですよね。日本は、生産ベースも減少していないし、消費ベースも減少していないということなので、むしろこの表で一番大事なことは、日本が生産ベースにおいてすら減っていないということを、今、日本の温暖化対策を考える我々はやっぱり着目すべきじゃないかというふうに思うんです。ですから、こういうことから言えるのは、やっぱり日本でも生産ベースを減らし、加えて、もちろん途上国の生産ベースのCO2削減にも貢献していく必要があるというふうに教訓をとることが大事なんじゃないかなと思うんですが、いかがでしょうか。
それから、もう一つの、最後の「性急な低炭素化で電化阻害」というお話なんですけども、杉山先生のご議論というのは、原子力や化石燃料の価格というのが、再生可能エネルギーよりも高いんだということを前提にした議論だと思うんですよね。そのことの証明として、31ページに2014年の例の発電コストの検証データをお使いなんですけども、やはりこういう構造がずっと続くということが言えるのかなというふうに思うわけです。現に、ここでは例えば風力発電群の価格が21.6円、政策経費を抜いて15.6円と書いてありますけども、2日前にエネルギー庁のほうで調達価格の算定委員会が開かれましたが、そこでは、現在、もう13.6円まで下がっていますよというふうなデータも出ております。だからもう、わずか2年間だけで2円下がっていると。一方で、原子力コストのほうは、これは10.1円以上となっていますが、その10.1円以上の根拠の弁償費用とか、それについてはもっと上がるという傾向が出ているというような報道もあります。ですから、必ずしもこういう構造が具体的にはいかないんじゃないかなと思っています。そのエネルギー庁の調達価格算定委員会の資料を見ると、13.7円という、下がってきたのも、世界標準の8.6円からは大分高いんだと。まさにおっしゃったイノベーション、技術のイノベーションだけではなくて、仕組みのイノベーションとか、プレイヤーのイノベーションというような視点で、こういう価格を下げていくことが必要になったということまで出ているわけですよね。そう思うと、やはり一番大事なことというのは、まさにイノベーションを進めていくことによって、自然エネルギーに再生可能コストを下げていくというところこそ大事なんじゃないかと思うんですけども、いかがでしょうか。

〇浅野委員長
大塚委員、どうぞ。

〇大塚委員
既に重なっていますので、二つの点だけお伺いしますが、一つは、杉山先生がここでイノベーションとおっしゃるときに、技術だけのことを中心に考えていらっしゃるのかどうかという点がちょっと気になってはいるんですけども、もし技術のことを考えておられるというふうに一応考えると、既に日本の官民合わせた研究開発費はかなりの部分に達しているということが、OECDとの――ほかの国との関係でも出てきていますので、3.5%程度ということにGDPとの関係でなりますけども、それでも今まで温暖化対策の技術があまり発展してきていないということがございますので、やや心配があるということがございますし、さらに、イノベーションというのは、日本の経済財政白書などを見ると、技術だけではなくて、それ以外の政策とか新商品の開発とか役務なども全部入ることになっているので、そういうふうに考えるとすれば、技術以外で具体的にどのようなイノベーションが必要か、あるいはイノベーションの誘発にとって何が必要かということについて、お話しいただければありがたいと思います。
それから、二つ目ですけれども、マスキー法もそうですし、日本のトップランナー方式もそういうところがあると思いますけれども、規制とか、目標を立てることによって、イノベーションを促すという面があるわけですけども、テクノロジー・フォーシングのような議論があるわけですけども、そして過去、日本の自動車の排出ガスも含めて、そういう歴史があるわけですが、それによって産業競争力を獲得したという歴史があるわけですけれども、それについて杉山先生はどうお考えかということをお伺いしたいと思います。
以上です。

〇浅野委員長
それでは、また、たくさん質問がありました。前の高橋さんが少し短目に終わってくださいましたので、時間的には13分ほど可能ですので、どうぞ、13分でまとめてお答えください。

〇杉山上席研究員
どうもありがとうございます。それでは、順番に参ります。
最初、家庭と業務の低炭素化というところですけども、家庭・業務は割と電化になじみがいいので、今すぐとは申し上げませんですけども、長期的には、かなり電化が進むと思います。すると、電気の低炭素化が合わさってくることで、大幅なCO2削減ができると思っています。もちろん、省エネというのは一方ではあるんですけど、家庭・業務部門は、産業部門や運輸部門に比べると、割と電化が進みやすいという意味で、大幅なCO2削減が考えやすい、というふうに思っております。
それから、増井先生からのお話で、価格が上がると、あるいは規制することでイノベーションが起きるということもあるのではないかということで、確かにエネルギー価格が高ければ、省エネルギーに関する技術というものはある程度進むということはあります。ただ、ここで考えたいのは、今、低炭素化というときに、電化を進めたいということであれば、その電気の値段をまず、イの一番に上げてしまったのでは、ほかのエネルギーをみんな使ってしまい、電化が進まないということです。暖房には灯油を使うようになります。ほかの用途にも、ガスを使うようになります。新しい電気利用の技術を導入しようというときには、最初はそういう技術というのは価格も高いし、シェアもあまりないことに注意が要ります。電気自動車を今買う人は、ちょっとまだ珍しい人だし、ヒートポンプも、なかなか、そうみんな簡単に買えないのが現状です。そういうところで、まず電気の料金だけ上げてしまうというのは、いかにも狙っている長期的な方向性とは合っていない、というふうに思います。仮に、もう完全に電化してしまって、あとやることは省エネだけだというのであれば、それは電気料金を上げたら省エネが進むという方向にはなるんだと思います。だが、我々の長期的な戦略ということを考えるときには、電気料金をまず上げるようなやり方というのは、実は適切ではないだろうと思います。
それから、電力価格を漸進的に上げることは2℃目標に間に合うかというご質問に答えます。電気料金をいきなり上げてしまうと、2℃目標に間に合うかどうかという以前に、まず電化が進まないので、長期的なCO2削減自体が非常に難しくなるだろうと思います。全く別の技術体系として、バイオマス、バイオエネルギーを大量に使うとか、水素を大量に使うとかという話もあるんですけども、ただ、この小委員会の第1回の資料もそうですけども、やっぱり低炭素化社会のためには、電気を使いましょうという話が主であり、であれば、電化は一生懸命進めなきゃいけないだろうというふうに思います。ですから、むしろ2℃目標に間に合うかとか、あるいはパリ協定に間に合うかというようなことを考えるためにも、電力価格はあまり性急に上げてはいけないんだということだと思います。
それから、もう一つ、増井先生のご質問です。主なメッセージの1で、革新的な温暖化対策技術が進むためには、技術全般が進まなければいけなくて、そのためには、経済活動が活発でなければいけない、と申し上げました。これに対して、実証的な研究結果があるか、というご質問でした。これについては、今日お見せしたようないろんな文献で、イノベーションについてはこういった議論の蓄積がある、ということです。実証とおっしゃった意味は、定量的な分析でこういうものを示したものがありますかという意味だと思うんですけど、定量的には、私の知る限りでは、ないと思います。ただ、このイノベーションの議論というのは、シュンペーター以来ずっと蓄積があります。私は、その上に乗っかった議論を、温暖化対策の文脈でしているわけです。このような議論をする人は、実はあまりいないんですけども、ほぼ間違いない議論だろうと私は思っています。
次に、廣江先生からのご質問です。今、FITの見直しなどをして、電力価格を抑制する方向で政策が動いているが、それは、私がお示しした漸進的なブルーでした。少なくとも現状のFITの見直しなどは、その方向性になっていると思いますし、それから、温暖化対策計画でも電力価格を抑制する、エネルギー長期需給見通し等でも、電力価格を抑制する、と書いてありますので、この限りではいいと思います。ただ、これから具体的な政策が一つ一つつくられていく中で、本当にそれが電力価格を上げるような結果になってしまわないかということは、都度議論して、注意深く見守っていかなければならないものだと思います。
それから、根本様からは、イノベーションを阻害するものというのは何があるかというご質問でした。まず第一に、やっぱり経済活動が停滞していたら、イノベーションはあまり生まれません。日本からは、ここ20年ぐらいあまりイノベーションが出てこないというのは、やっぱり経済活動が停滞しているというのがすごく大きいと思います。それから、イノベーションを阻害するような規制があまりあるといけない。ヨーロッパで、なぜデジタル革命が起きなくて、アメリカでなぜデジタル革命が起きたかというのは、ヨーロッパの人で、真剣に考えている人がいます。結論は、いろんな規制が強すぎるということです。例えばGoogleなんかは、ヨーロッパで最初事業をやろうとしたら、違法で操業できなかっただろうというふうに言われています。これは、アメリカの規制環境ではできたと。そういった規制環境というものも大事なんだろうというふうに思います。
それから、手塚様からは、途上国は原単位で、先進国は絶対量でやっているが、これは、地球全体で考えると、よくない方向に行っているのではないですか、というご質問でした。私もそう思います。パリ協定は、これは原単位も絶対量もどちらも法的拘束力がない目標ではあるのですが、政策措置を実施するということは、きちんと約束しなきゃいけない、となっています。私は、その政策措置というものの内容に、きちんとイノベーションにコミットしますということをつくり込んでいくということが大事だと思います。この原単位か絶対量かといった話は、なかなか交渉事なのでうまくいかないところはありますけども、より本質的には、やっぱりイノベーションにきちんとコミットする、ということだと思います。
桜井様から、パリ協定に間に合うかという質問でした。また、バックキャスティング的なものが必要ではないかというご意見をいただきました。私は、これだけ技術の進歩が急であることもあって、バックキャスティングというのは、できない相談だと思っています。2050年に、一体、我々がどういう暮らしをしていて、どの部門でどれだけ排出しているかというのを予測することはできない。ただ、そのときにあってほしい技術というものは考えることができるし、そのためのどうやったらイノベーションをより進めることができるかという知恵を絞ることはできると思います。私は、それでいい、と思います。
それから、崎田様から、生産と消費の結びつきという話なんですが、私は、とにかく消費側は、生活の仕方というのは劇的に変わると思いますし、実は生産のほうも、今日はあまりお話ししませんでしたけども、技術進歩で物すごく変わっていくと見ています。両者がどう結びつくか、ちょっとわからないところはあるんですけど、根本としては、消費のほうが物すごく変わるので、それに連れて生産も変わっていくんだというふうに考えています。
それから、小木曽さんから、米国でイノベーションをどう長期戦略で位置づけているか、というご質問でした。米国での長期戦略というのは今、検討途中で、私は、その詳細は知りませんので、ちょっと申し訳ないが、わからないです。
それから、バックキャストで数値目標を設定するとイノベーションが起きるのではないか、そのためには、2050年の数値目標を部門別にブレークダウンしたほうがいいのではないか、というご意見をいただきました。確かに、技術開発の目標を考える上では、そういう数字があったほうがいいのかもしれないですけども、私は、2050年に国全体で8割という大きな数字だけで十分だと思っています。それでいろんな会社がこれを自分のことだと思って、技術開発などの活動をしています。それを細かくブレークダウンすると何が問題かというと、この産業は何年までになくなってしまうとか、そのような非常に乱暴な議論になってしまうことです。これは好ましくないので、ブレークダウンするべきではない、というふうに思っています。
その次のに、大野様から、パリ協定で全体を減らすことになっているから、生産ベースで減らしていくというのでいいのではないか、というご意見でした。まず最初、前半ですね、先進国の消費ベースでというのは、結局、途上国の生産ベースのことを言っているんだから、どっちも減らせばいいんでしょうという点については、それはおっしゃるとおりです。ただし、ではヨーロッパで生産ベースで減っているから日本より優れているといえるかというと、私はそんなことはないと思っています。要は中国などから輸入していることによるCO2排出が全然減っていない。つまり消費の見直しというのは全く進んでいなくて、産業の空洞化が進んでいるだけ、という話だと思います。それは実は何の意味もない。産業が空洞化していれば、その分よそでつくっていて、しかも実はエネルギー効率が悪いところでつくっていて、余計にCO2が発生している。だから消費ベースのCO2は減らないわけで、やっぱり生産ベースのCO2を減らすということは何の解決にもならないと私は思います。
それから、もう一つ、大野様から、いつまでもリニューアブルが高いわけではないでしょうというご意見でした。これはおっしゃるとおりで、イノベーションでリニューアブルのコストを下げることは大事、これも大賛成です。イノベーションをどうして進めるか一生懸命お話ししていたのも、私もリニューアブルのコストが、もっとずっと下がってほしく思っているからであります。もう一つだけ言うと、リニューアブルのコストというときに、それが系統に対して悪影響を及ぼす部分がまだありますので、それの安定化のコスト、対策のコストというものがやっぱり計算されなければいけなくて、それについても今後考慮していく必要があります。そうすると、まあ、そう簡単ではないですが、2050年とか言うんだったら、それまでに私はリニューアブルは十分安くなって、電源構成において主力になってくれるのではないかと期待しています。そのためのイノベーションのことというのは、本当に考えたいと思います。
最後に、大塚先生から、日本のR&DはGDPの3.5%だけど、大したことができなかったのではないか、というご意見でした。温暖化対策の技術革新も進まなかった、だから今後についても心配だ、というご意見でした。これについては、イノベーションについてはいわゆる研究開発費だけが大事なのではなくて、日本で特に問題だったのは、私は過去20年間経済が停滞していたことだと思います。経済が伸びるような環境でないと、やっぱりイノベーションというのは起きない。どんどん新しい製品をつくっていくことができないので、新しい技術体系も生まれてこない、ということだと思います。単純に言ってしまえば、日本のR&D費は、高かった割には経済成長に結びつかなかったというわけで、それは経済成長のやり方として何か間違っていたということだと思います。
それから、技術以外のイノベーションを考えているか、というご意見でした。社会イノベーションということをおっしゃる方はいますが、私は、今日は技術イノベーションしか話していません。ただし、技術が変わって社会が変わるということは、実はすごくよくあるので、そういう範囲での社会のイノベーションというのは私は十分あると思っています。だが、技術抜きで社会イノベーションというのはどういうものかというのは、私は今日は議論していません。
それから、マスキー法やトップランナーなど、テクノロジーフォーシングの規制についてどう考えるかというご質問でした。これについては、ある程度、対象がはっきりしていて、対策の技術が見えていれば、そういった規制でもって汚染が減ったり、効率が上がったりすることもあるとは思います。ただし、その一方で、これから電化を進めようというときに、電気料金がまず上がってしまったのでは、誰も電気自動車もヒートポンプも買わないというような、長期戦略との関係というところを考えなくてはいけません。この辺は、この長期戦略の議論が、その他の技術政策の話とは違う点だと思う次第です。
以上です。

〇浅野委員長
どうもありがとうございました。
まだ少し時間があるんですが、事務局から何か質問がありますか。あれば、たまにはお聞きしてもいいと思いますが。よろしいですか。
それでは、3人の方に対して、さらに追加的に何かご質問がございますでしょうか。
どうぞ、大塚委員。
どなたに対しての質問か、まずおっしゃってください。

〇大塚委員
ありがとうございました。
杉山さんに対してですけども、電気の値段が上がると電化は進まないというのは、確かにそうだと思うんですけども、電力会社はお嫌だったとは思うんですが、電力システム改革がなされて、かなり電気の値段は下がる方向にももちろん行っていると思うので、それでもやっぱりある程度、炭素税とか、そういうカーボンプライシングみたいなものを入れることに関しては、プラス面とマイナス面と両方あると思いますけども、どうお考えなのかということをちょっと教えていただければと思います。

〇浅野委員長
杉山さん、どうぞ。

〇杉山上席研究員
仕上がりとしての電力価格というものが高過ぎると、電化というのは進みません。だが、もし、電力価格が安過ぎて、みんな無駄遣いするようだったら、そのときは高くしたほうがいいかもしれません。ただし、それも他のエネルギーである石油やガスの価格との見合いだと思います。

〇浅野委員長
どうもありがとうございました。
それでは、杉山上席研究員、どうもご発表ありがとうございます。
本日は、3人の方にご発表いただきました。大変お忙しい中おいでいただきまして、ありがとうございました。
本日のヒアリングは、以上で終了させていただきます。
事務局から報告がありましたら、どうぞお願いいたします。

〇低炭素社会推進室長
発表者の皆様におかれてはご説明を、委員の皆様におかれましては活発なご議論を、ありがとうございました。
次回の日程につきましては、来週になりますけれども、10月13日木曜日、10時から12時30分を予定しております。次回においても、引き続き関係者へのヒアリングを実施する予定であり、ヒアリング対象者等の詳細につきましては、追って事務局より連絡を差し上げます。よろしくお願い申し上げます。

〇浅野委員長
それでは、次回は30分少し余計に時間をいただいておりますので、どうぞ日程の調整をよろしくお願いいたします。
本日の議事は、これで終了いたします。
どうもありがとうございました。

午後 4時58分 閉会

ページ先頭へ