中長期ロードマップ小委員会(第11回)議事録

日時

平成22年8月6日 10:01~12:22

場所

都道府県会館 101大会議室

議事内容

  1. 1.開会
  2. 2.議題
    1. (1)国内排出削減と国際貢献について
    2. (2)その他
  3. 3.閉会

配付資料

資料1 第90回中央環境審議会地球環境部会における委員からのご意見
(中長期ロードマップ関連部分)
資料2 国立環境研究所亀山主任研究員提出資料
資料3 技術同友会提出資料
参考資料1 地球温暖化対策のための主な施策手法の比較
参考資料2 藤野委員提出資料(第10回小委員会に係る質問に対する回答)
参考資料3 枝廣委員提出資料

午後10時01分 開会

○地球温暖化対策課長 おはようございます。
 若干遅れていらっしゃる先生方いらっしゃいますけれども、定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会地球環境部会中長期ロードマップ小委員会の第11回会合を開催いたします。
 本日もお忙しい中、またお暑い中ご出席を賜りまして、誠にありがとうございます。
 本日でございますけれども、まず事務局から、今週水曜日でございますけれども、8月3日に第90回の地球環境部会が開催されました。そこで西岡委員長、それから事務局のほうから、これまでのこの小委員会での議論の経過をご報告いたしました。それに対していろいろとご意見を賜りましたので、その部会でのご意見をご報告したいと思います。
 その後、前回のこの小委員会でも議論をさせていただきましたけれども、国内の削減に加えて海外での削減への日本の貢献と、積極的な貢献ということが重要だということで、そういう中で環境と成長の両立をどう図っていくかというふうなことについての論点につきまして、国立環境研究所の亀山主任研究員、それから技術同友会の櫛木様から、これまでの研究成果やご提言についてご発表いただきまして、委員の皆様にいろいろとご議論いただきたいというふうに思っております。
 それから、最後に前回の小委員会で藤野委員からご発表いただきましたけれども、技術積み上げモデルの再計算につきまして幾つか細かい質問が出ておりましたので、藤野委員から追加で補足説明をいただくということを考えております。
 本日は委員総数の過半数のご出席をいただいておりますので、定足数に達しております。
 また、本日の審議は公開とさせていただきます。
 なお、影山委員、笹之内委員がご欠席でございますけれども、説明員として東京電力株式会社環境部地球環境グループマネージャーの北原様、それからトヨタ自動車株式会社環境部担当部長の大野様にご出席をいただいております。
 それでは、今後の進行につきまして、西岡委員長にお願い申し上げます。

○西岡委員長 おはようございます。よろしくお願いします。
 資料の確認をお願いします。

○地球温暖化対策課長 資料でございますけれども、議事次第にリストがございますが、資料1として地球環境部会における委員からのご意見をまとめたもの。資料2として亀山委員からご提出をいただいている資料でございます。資料3といたしまして、技術同友会様から提出をいただいております資料でございます。
 それから、参考資料が3つございます。
 参考資料1として地球温暖化対策のための主な施策手法の比較というものがございます。参考資料の2といたしまして、国環研AIMチームからの提出資料がございます。それから、参考資料の3につきましては、これは4月15日に枝廣委員からご提出をいただいたものでございますけれども、当日は経済モデルの議論ということで、この枝廣委員のご提出した資料については議論ができませんでしたので、今日改めて配付をさせていただいております。
 以上でございます。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。よろしゅうございますか。
 それでは、資料1に基づきまして、先日行われました地球環境部会における皆様のご意見についてご披露願いたいと思います。

○地球温暖化対策課長 それでは、資料1をご覧いただきたいと思います。
 8月3日の地球環境部会におきまして、先ほど申し上げましたように、これまでのこの小委員会での議論の経過についてご報告をいたしまして、それについて部会の先生方からご意見をいただきました。主なものをリストアップいたしましたので、ご報告したいと思います。
 まず、1ページ目でございますけれども、原子力発電については不確定要素があるのではないかと。稼働率あるいは事故などにより想定が変わった場合の議論を行う必要があるのではないかというようなこと。
 それから、このロードマップの行き先がよく見えないというようなご意見がございました。この低炭素社会はどのような社会にしていくのか、どういう産業構造にしていくのか、そういうようなことについての戦略を立ててロードマップを作成すべきではないか。
 関連するものとして、2050年80%という部分が十分資料に入っておりませんでしたものですから、その辺を見据えたロードマップが必要ではないかと。
 それから、施策はやはり行ってもなかなか効果が出ない、タイムラグがあるということで、そういうものを見越したものとすべきである。
 それから、25%削減については大きな視点で見るべきであって、中国あるいは東アジアの重要性を考慮すべきであると。
 それから、政策分析のやり方についてということで、定量的な検討と定性的な検討の使い分け、あるいはミクロとマクロの視点、それからさまざまな政策の妥当性をここでは5つの観点、必要性、有効性、公平性、施策の副作用、行政コスト、こういう観点から検討するべきではないかと。
 それから、技術革新については、やはり実現のタイミングの予測が難しい。環境税などを活用するなど、どのように進めていくのかということを検討すべきであると。
 それから、25%削減については、衡平性、あるいはコストを踏まえた検討をするべきである。また、LCCO、LCA的な観点を補完すべきであるというようなこと。
 それから、現在のロードマップについては、よい部分を足し算するような形になっているけれども、規制によるマイナス効果、例えば競争力の低下、そういう要因についても検討すべきであるということです。
 それから、温暖化基本法案が廃案になったということで、特に地方自治体、現場に近い方からのご意見として、地方自治体では施策が足踏みをしている、様子見をしているような状況があるということで、国として低炭素社会構築に向けた方向性をしっかりと示すべきであるというご意見がございました。
 2020年のみならず、30年、50年を見通したモデル分析を行っていくと。中長期的な視野に立って国内削減と国際貢献の割合を考えていく必要があるということでございます。
 次のページにまいりまして、国際バンカー、あるいは国際貢献、国内の森林吸収源、これらはまだ国際ルールが交渉上決まっていない重要なファクターがあるということで、こういうものについても検討に含めるべきであると。
 それから、LCA的な観点の関連でございますけれども、国際的なルールという観点からは、中国等の新興国がこの先進国の消費のために世界の工場として活動しているという生産国側、そういう場合に生産国側ではなくて消費者国側でその排出量をカウントすべきだというようなことも提案しているという動きなので、この辺は注意すべきだということでございます。
 環境と成長を両立させるという観点、あるいは国際競争力の低下という両方の見方があるということで、そういうような側面から定量的・定性的な分析をやって国民にわかりやすい情報提供をすべきであると。グリーン・イノベーションとの整合をとって進めるべきであると。
 国際貢献については国内の足りない部分を補完すると、そういう視点ではなくて、日本が国際的に果たすべき役割と、そのためのスキームをつくっていくんだと、そういう観点からより前向きに議論を進めるべきではないかというご意見もございました。
 IPCCの知見を踏まえた議論をするべきということです。
 それから、2050年80%を見据えた議論が重要であると。
 それから、さまざまな施策をどうやって組み合わせていくかということを議論していくのがこの部会として必要ではないかということです。
 産業部門、電力部門等の削減ポテンシャルをしっかり考えて国内排出量取引制度の検討をすべきである。
 衡平性、国民負担、実現可能性の観点から改めて25%削減というもの自体も議論すべきではないかという意見もございました。
 国内排出量取引制度、地球温暖化対策税、全量固定価格買取制度について、慎重な検討が必要である。
 二国間の取引というスキームには賛成であるので、仕組みについて議論を深めてほしいと。
 それから、ちょっとこれには挙がっておりませんけれども、地域での取り組みという観点からは、温対法に基づく地域の温暖化防止センターを活用した着実な取り組みが重要であるというようなご指摘もございました。
 3ページにこの部会の委員の議論を受けて鈴木部会長、それから西岡委員長から最後にコメントがあったということで、これもあわせて紹介をしたいと思います。
 鈴木部会長からは、2050年半減、あるいは先進国80%削減という低炭素社会、これが科学的な要請として検討課題となっておりますけれども、これを踏まえて2020年、2030年の通過点、それから2050年では恐らく現在とは質の異なる社会があるだろうと。そういうことを考えて現状をどう乗り越えていくのかということをこの小委員会として示していくことが重要だと。その際には、現実を踏まえて日本の役割を勘案しながら、低炭素社会に進むことの大変さについても率直に示していくということが重要なので、しっかりと議論してほしいということでございました。
 西岡委員長からは、ご意見を踏まえて検討していきたいということでございますけれども、2050年に向けてはやはり今から検討を進めていくことが大変重要であると。地方自治体、企業、あるいは国民ということだと思いますが、求めているものは政治的な意思による将来的な見通しであるということでありますけれども、それを判断するための材料をこの委員会として整理をしていきたいと。産業構造を変えないとか、負担のみが強調されるという動きが過去にありましたけれども、あるべき将来像を念頭に置いて、しっかりとよいものをつくっていきたいというコメントがございました。
 それから、このご意見の紹介にあわせて、参考資料1というのを簡単にご紹介しておきたいと思います。
 この参考資料1は、この間の3日の部会で参考として配付させていただきましたけれども、この小委員会ではまだご紹介をしておりませんでしたので、簡単に触れたいと思います。
 この趣旨は、資料1の意見でもありましたさまざまな政策をいろいろな観点から分析すべきである、あるいは、いろいろな施策の組み合わせを議論していく必要があるというようなことに関連いたしまして、参考資料1の1ページ目からございますように、国内排出量取引制度、地球温暖化対策税、それから次のページには再生可能エネルギーの全量固定価格買取制度、いわゆるこの3つの主要な柱、それに加えまして、規制、補助金、税制優遇、あるいは事業者の自主的な取り組みの促進、情報提供、普及啓発、国民運動、あるいは京都メカニズム、新たな新クレジットメカニズムの活用と、こういう幅広い施策手法につきまして、その効果、あるいはその排出削減の確実性というようなことについて、全般的な特徴に加えて産業分野、業務分野、運輸部門、あるいは個人、家庭、こういうところの対象に応じてどういう違いがあるかというようなこと。
 それから、各施策の評価として公平性、公立性、中長期的な効果、あるいは経済への影響、その他例えば行政コスト等、そういう観点でどのような長所短所があるかというようなことについてまとめているものでございます。
 現時点ではまだ極めて一般的な整理になっておりますけれども、今後この個別の制度の議論がだんだん深まっていく中で、適宜見直しをしていきたいと思っております。これについても今後改めてまたご議論いただけばというふうに思っております。
 以上でございます。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 今日の議論の進め方でございますけれども、今地球環境部会のほうでのご意見についてのご紹介がございました。その中でも国際貢献をどうするか、あるいは成長戦略の関係はどう持っていくか、さらには政策というものをきちんと論議してほしいという話がございまして、これからまず国際貢献についてということで、亀山委員のほうからご発表をいただきます。
 先ほど一番最後にさまざまな政策といったこともございました。現在ロードマップ小委員会はいろいろ物理的な道はこっちのほうにちゃんとありますよということを検討しているところでありますけれども、そこの上にどうやって歩いていってもらうか、どう後押しするかといったことが政策になるかと思います。最終的にはどういう形でこのものを進めていくかという検討をする必要があるかということで、今のようなお話になっています。
 それでは、次に国立環境研究所の亀山主任研究員より国内排出削減と国際貢献ということについて、お話を願いたいと思います。

○亀山国立環境研究所主任研究員 国立環境研究所の亀山です。おはようございます。
 資料2に基づいてお話させていただきたいと思います。時間25分ほどでということですので、若干駆け足になるかもしれませんけれども、資料をご覧ください。
 2ページ目ですが、全体の話の流れとして、今日のテーマは国際貢献ということですけれども、国際貢献というキーワードで、では日本が果たすべき役割を考える上でしばしば衡平性という問題が出てまいりまして、恐らく国内外でもこの言葉をめぐった整理が余り十分つけられていないと感じまして、概念論ではありますけれども、そもそも衡平性とはという話をさせていただきたいと思います。
 それから、2つ目としては、近年の国際交渉関連で出されているさまざまな衡平性に関する研究報告等を皆様にご紹介したいと思います。
 また、最後に衡平性とは若干離れますけれども、国際貢献という観点からは国外クレジットについてもさまざまな議論が出ておりますので、それについても補足的にお話ししたいと思います。
 3枚目のスライドですけれども、環境保全制度、これは条約であったり炭素税といった、よりスぺシフィックな政策である場合もありますが、このような制度、あるいは政策を評価する指標としてしばしば挙げられるのが、ここにあります4つ、つまり環境保全性、費用効果性、配分の衡平性、実現可能性の4つであります。ここに出しましたのはIPCCのAR4から引用したものですけれども、この4つの指標が提示されることが多うございます。
 次のスライドに移っていただきまして、これを特に気候変動に関する制度で考えたときに、この4つの衡平性指標というのは以下のように示されます。それで、最も望ましいというか、理想的な制度というのは、もちろんこの4つのすべての指標で100点満点がつけられるような指標であるわけですけれども、残念ながら多くの場合この4つの指標というものはトレードオフの関係にあるわけであります。例えば環境保全性を重視しようと思って非常に厳しい排出削減を設定したような制度をつくろうとすると、実現可能性の点で誰もその文書に合意しないといった状況が現れたりですとか、あるいは地球全体での費用を最小化するためにすべての排出削減活動を途上国でやろうとしますと、衡平性の観点から問題が生じるわけであります。したがって、どうやってこの4つの指標の中でバランスをとっていくのかというのが、その制度を構築する上で重要となってきます。
 それで、ここで1つ注目しておいていただきたいのは、限界費用一定ですとか、あるいは総コスト一定といったような指標案というのは、実は配分の衡平性というよりかは、むしろ費用効果性のほうの指標の一つとして位置づけられておりまして、もちろんこれは多くの研究論文では2つを合わせて配分をどうすべきかという、配分の検討をする上で必要な考慮すべき材料となるわけですけれども、一応位置づけは別であるという認識が概念論的にはなされております。
 といった上で、5枚目のスライドをご覧いただきたいんですが、そもそも衡平性とはということで、いろいろな辞典とかひっくり返しますと、「公に平等であること」ですとか、「評価者が正しいと考える配分原理のもとで生じるであろう仮想的な配分を基準にして、現実の配分状況がどれだけ逸脱しているか、という評価」というすごく難しい書きぶりなわけですけれども、これをちょっとブレークダウンしまして、公のほうの公平性とよく難しい字で書く衡平性とどう違うんですかというご質問を受けますが、英語で書くとfairnessequityと全然違った言葉になります。
 今ちょっとわかりやすいように英語でお話しさせていただきますが、fairnessのほうは「同一条件同一処遇」と言われまして、つまりある一定の条件に満たす人たちはみんな等しく扱うという点を重視しているのがfairness。それに対しまして、equityというのは「参加者の交換率の平等」と書かれておりますが、つまり異なる状態にある人たちをその差異に応じて処遇する、異なって処遇するという意味で使われます。スポーツで言えば、お相撲のようにやせたお相撲さんも太ったお相撲さんも同じ土俵で戦うのは上のほうでありますし、柔道のように体重別に細かくランクが分かれているようなスポーツというのは、下のほうでequityが満たされているというような、よく具体的な例を出します。
 ちょっと離れたところから見まして、ではjustice、公正というのは何かと言いますと、fairnessとかequityというのはどうしてもその人の立場から有利なというか、見た場合のルールというのは人によってさまざまなんですよね。いろいろな人によってさまざまな衡平性の中で、ではどれが一番みんなが納得するルールなのかというのが公正なルールというふうに理解されています。
 もう少しわかりやすくご理解いただきたいと思いまして、次の6枚目のスライドを用意しましたが、これは簡単にパイの配分の話から入っておりまして、1つのおいしいパイをみんなで分けようと思ったときに、みんなやっぱり自分に少しでも多くパイが来るように、いろいろな自分にとって有利なルールを主張するわけです。しかしながら、じゃ何が一番公正な配分なのかということを検討する上で、哲学的には「無知のベール」という言葉を使うんですけれども、つまりその人が自分がどういう立場になるかとかわからない状態でまず配分するんですね。配分した後で、ああ、やっぱり自分は太った人間としてパイを食べるとかするわけですけれども、このように無知のベールが実現し得るような場合は、公正なルールというものがある程度参加者の間で実現し得ると言われております。
 しかしながら、7ページ目で見ていただきますと、やはり気候変動対策になりますと、もう少しパイよりも物事は難しくなってまいりまして、1人当たり排出量を一律にすべきだとか、限界費用を一律にすべきだといった、こういう主張というのはその参加者にとっては公平な、あるいはequitableなルールなわけですけれども、果たしてそれが公正なルールかどうかというのは保障されないわけであります。したがいまして、例えば日本が限界削減費用を一律にした場合、日本は何%だと主張した場合、それは日本にとっての公平なequitableなルールでありますけれども、ほかの国がそれに合意するかどうかはわからないということになります。
 では、どういうルールであればみんなが合意し得るのかということを検討するために何が行われているかというと、複合指標化の試みといいまして、みんなが言っている指標をどうにか複合化して一つの指数みたいなものをつくってみたりとか、そういった研究が進められています。
 8ページ目のスライドですけれども、今までの各国から出されている具体的な衡平性、あるいは配分の指標の提案というものは大きく分けると3つのグループに分けることができます。そのうちの2つは配分の衡平性の下に位置づけられると思いますが、汚染者負担に関する原則、あるいは支払い能力、より豊かな人ほどたくさん支払うべきだというような観点からの指標。それから、3つ目のグループはむしろ費用効果性に基づく配分のルールですけれども、削減ポテンシャルですとか実効性、どこで物理的に減らすべきかというような観点から提案されているルールであります。
 また、下のほうの黒枠でありますが、この黒枠というのは先ほどの公正なルールの説明でお話ししたとおり、どうやったらみんながいろいろなことを言っているさまざまな指標をみんなが納得する指標として組み込めるかというようなアイデアの一つと見ていただけると少しわかりやすくなるかなと思います。
 こういったことでございまして、一言で衡平なといっても、みんながそれぞれいろいろなことを考えている。その中でどれが正しいということは言えないわけですけれども、ただみんなが合意に向かっていくためにはそれなりの努力が必要だということをご念頭に置いていただいて、2つ目の話題に入りたいと思います。
 ここでは日本国内では余り実は聞かれないのですが、国際的に衡平性という議論を聞いておりますと、どうやら国内で聞いている衡平性の議論とは大分違うようでございます。10ページ目のスライドは若干古くなって恐縮ですが、去年の3月に京都議定書の作業部会のワークショップで衡平性そのものが議論されるワークショップがございまして、そこでプレゼンテーションを行った国、地域のスライドを取りまとめたものでございます。
 これを見ていただきますと、例えばEUであると箇条書きの一番下のブレットなんかを見ますと、いろいろな複合指標が望ましいと言ったりですとか、中国ですと、これは一番上のブレットですが、すごく長い期間のCOの累積の排出量で計算すべきだと言ったり、ニュージーランドであれば、一番下のブレットとして能力指標を考慮すべき、1人当たり、あるいは1人当たりのGDPが高い国ほど削減割合を比較的大きくすべきですとか、南アフリカとしては全部合わせて3つの指標を総合的に勘案すべきだというような提案を実際行っております。
 それで、では研究者グループはどういう計算をしているかということで、11枚目のスライド、これはご覧になったことがある方はどれぐらいいらっしゃるかわかりませんが、このグラフを私などはきっと京都議定書を交渉していた1995~1996年ぐらいからずっとこれ見続けているんですね。Global Commons InstituteというのはイギリスにあるNGOでかなり環境重視派のNGOが、いつもこの大きなポスターをつくって張り出すんですね、会場に。別に細かい計算もしていませんし、これが現実的だと本人が思っているわけでもないでしょうが、やはり彼の頭の中にあるものをイラストレートしてイメージとして発信するには非常に有効なポスターではないかと思います。これはContraction and Convergenceというルールで、例えば2100年とか決まった目標年に1人当たりの排出量が全世界で一律になるようにして、現在の排出量からその目標年に向かってリニアに増やしたり減らしたりしていくんですね。すごい単純なルールなんですけれども、こういった考え方が今から20年ぐらい前から出ているということであります。これはただ紹介まで。
 12枚目のスライド、これは国環研や京都大学、あるいは東京工業大学の研究者が集まりまして、1年ほど前にやった試算でありまして、これは中期目標検討委員会においても紹介された資料でございますから、ここで詳しく細かいところまではお話ししませんけれども、我々として一番日本にとって有利になる指標と不利になる指標をちょっと検討してみようということで、13枚目のスライドにあるような3つの収束ルール、みんな収束しているんですね。
 一番左上は先ほどのContraction and Convergenceに近いようなルールで、真ん中の下はGDPあたりの排出量が収束していくようなルール。一番右にあるのはGDPあたり排出量が比例で改善していくようなルール。この3つのルールを仮に設定いたしまして計算した結果が14枚目のスライドになります。
 それで、この図も中長期目標検討委員会の資料でそのまま出ておりますけれども、今申し上げた3つの指標案の結果というのが、この表の一番下のほうにある3行で示されておりまして、GDP当たりの排出量を収束していくというようなルールは、もともと日本のGDP当たり排出量がいいこともございまして、ほとんど2020年時点で削減しなくていいような結果になる半面、逆に日本にとって非常に不利な指標なんかを用いますと、マイナス30まで出し得るということを示しています。ちなみにこれはAnnex<1>全体でマイナス25というところはフィックスして、固めて、Annex<1>の中での配分をしておりますので、世界全体でやると同じルールでもまた若干ぶれが出てきますけれども、ここで何を示したいかというと、本当に何を指標として用いるかによって、国の公平な配分というのはかなり違うんだよということを一つお示ししたかったわけであります。
 その上にご参考までですが、中期目標検討委員会で一番中心的に検討されておりました限界削減費用で示された削減幅も入れてございます。
 それから、この京都大学と国環研のグループは今年に入ってもう一回検討、再計算しておりまして、細かいルールは15枚目に書いてありますが、簡単に結果だけお見せしたいと思います。
 16枚目のスライドをご覧いただきますと、ここで私たちがやってみたルールというのは、2050年時点で世界各国の1人当たりの排出量が等しくなる。世界全体の排出量は2050年時点で1990年レベルの半分となるように設定した上で、現在から2050年までを炭素強度が一定割合で改善するように設定して線を引いてあります。
 ちなみに、2020年は各国がコペンハーゲンアコードに基づいて提出した目標をそのまま使っておりますので、ここだけは若干緩い目標を提示した国については、上にはね上がっております。
 それで、日本は余りに小さいので16枚目のスライドでは見えなくて、17枚目は16枚目を拡大した図なんですが、これでもあまりよく見えないのですが、実は一番下のほうにある青い線が日本でありまして、すーっと2010年あたりから2050年まで下がっている、これ炭素強度が縦軸ですけれども、ご覧いただけるかと思います。縦軸を炭素強度ではなくて、6ガス排出量にしたのが18枚目と19枚目のスライドであります。
 19枚目のスライドには日本の排出量がどれぐらいどういう状態で減っていくかというのがご覧いただけるかと思います。これはあくまで今申し上げたようなルールを設定して計算した場合の日本の排出経路となるということをご承知いただきたいわけですけれども、これを実現しようと思った場合には、かなり2020年以降も炭素強度の改善率をどんどん上げていかなければいけないということが計算上示されております。
 ほかの国の計算例も幾つかお示ししたいと思います。
 20枚目のスライドをご覧ください。
 これは、ドイツのWBGUが「バジェットアプローチ」ということの概念を用いて報告書を昨年出しております。
 これはどういう概念かというと、炭素バジェットというのが1人当たり排出していい予算というのが決まっているんだ、世界でみんな等しいんだという前提に立ちまして、まず世界の国々を豊かな国と中ぐらいの国とそうでない国と3つのグループに分けまして、それぞれのグループに炭素バジェット、排出していい枠というのを与えて、それを1990年から、あるいは2010年から2050年までの間に配分していくんですね。それで計算した結果が21ページにあるんですが、左の図がOption<1>と小さい英語の説明書きで書いてあると思いますが、これは1990年から2050年までにある国の1人当たりの排出量が一定となるように、まず最初に予算を与えた上で、既に1990年から2008年までの間にその予算の一部を使ってしまっていますから、そうすると2010年から2050年まで残りの予算というのはどれぐらい残されているのかという計算をしています。これ見ていただきますと、例えばアメリカなんていうのはもう既に2008年時点で2050年までの予算をすべて使い切ってしまっていて、今後はマイナスになっちゃったりしているんですね。これはつまりCCSをめちゃくちゃやらなければいけないということになりますけれども、日本も本当に非現実的なぐらい少ししか2010年以降は残されていないことになります。
 上の表をご覧いただきますと、例えばJapanというところでPer yearという欄が右から3つ目にあると思いますが、0.058GtCO2というのが年当たりの日本に与えられる予算枠となります。これだとあまりに非現実的だろうという話で、若干現実的なoption<2>というものが右に提示されています。ルールをちょっとゆるゆるにして計算していますけれども、それでもまだまだ厳しい目標値が設定されているのが見てとれるかと思います。
 次のスライド、22枚目のスライドは、アメリカのWorld Resources Instituteが出した報告書、これも去年のですけれども、これは特に衡平性という観点ではなくて、各国がその当時自主的に提出した自主目標を比べる際に、そのベースや基準年が1990年で統一した場合と2005年で統一した場合とどれぐらい違ってくるかですとか、LULUCFというのは森林吸収量ですけれども、それを入れるか外すかでどれぐらい各国が設定している目標値というものが変わってき得るのかということを示した図でございます。
 それで、こういった目標数値の不確実性というか、ぶれに関する関心というのは、この報告書の後どんどん高まってまいりまして、今実際AWGが開催されていますけれども、そこでもこういった不確実性というのは、ほかにバンカーフューエルの扱いですとか、排出権取引制度をどう入れるのかとか、クレジットをどうするのか。あるいはキャリーオーバーといって、第一約束期間で余っちゃった排出枠を第二約束期間にどれぐらい貯金していいのかといったような、そういったルールでこの同じ25なら25という数字もすごく変わってくるというような話が最近強調されてきております。
 23枚目は同じアメリカですがPew Centerという別のシンクタンクから出された報告書であります。こちらも排出量も絶対量で見るのと1人当たり、あるいはGDP当たりで見るのと随分見た印象が違いますねといった話。特にアメリカなんかを見てみますと、絶対量が増えているのでよく批判はされますけれども、emissions per GDPなんかはかなり頑張っているんだということを示したいための図であるかと思います。GDPあたりで見れば、例えばEUとアメリカというのはほとんど差がないといったような説明がこの図でなされております。
 また、24ページは、Pew Centerもmarginal abatement costsというのを計算していまして、これはminiCAMというモデルを使っているそうなんですが、またそのモデルの構造ですとか前提条件によって同じ限界削減費用という概念を使ってもこれだけ結果が違ってくるんだなということを、これでご覧いただければと思います。日本は今後人口も減ってくるしということで、BAUと比べるとそれほどお金をかけなくていいのだけれども、アメリカとかオーストラリア、カナダというのは今後も人口も増えるし、BAU自体が非常に伸びが高いからそこから減らそうとすると、コストがかかるんだというのが彼らの説明であります。
 それから、IEA、これは去年の9月ごろ出された報告書ですけれども、こちらも特に公平性で日本の数字を決めているわけではなくて、各国が当時自主的に設定した数字をそのまま引用して計算しています。日本であれば、その当時まだ鳩山目標が出る前の数字を使っております。
 各国の提示した目標をそのまま使っていくと、実は2020年の目標はAnnex<1>全体ではそれほど厳しい目標にはなりません。それでもなおかつ450ppmシナリオに入れられるんだという主張をIEAはこの報告書でしていて、よく見ていただきますと、2030年以降すごい勢いで減らしていっているんですね。日本につきましても2020はこれでいいのかもしれませんが、2030で450シナリオというのはすごく減っているのをご覧いただけるかと思います。やはり2020年の数字を見るときには、その後がどうなっているのかというのもあわせて見ないと、同じ環境保全効果を目標としているのかというのはわからないので、ご注意いただかなければいけない点かと思います。
 26枚目のスライド、これも去年出されたDen Elzen、ヨーロッパの学者ですけれども、いろいろな指標を使ってみて、それによって国の削減目標がどれぐらいぶれ得るかということに注目した報告書で、多分これは日本の国内でもあちこちで引用されている図かと思いますけれども、ご注意いただきたいことはtargetsのところで、具体的に彼が用いている指標の非常に多くが、言ってみれば費用効果性の下に位置づけられるべき指標をいろいろな種類で使っていて、あまりその他の衡平性指標、1人当たりといった汚染者負担関係の指標ですとか、応能負担に関する指標というのはあまりここではもともと取り上げられていないという点は、ご注意いただかなければいけないかと思います。そういったその他のタイプの指標を使うと、もっとこの日本の削減幅というのは厳しい方向に広がっていきます。
 しかしながら、この図で彼らが言っているのは、日本の25%というのはかなり厳しいほうの目標を選んでいるねというようなことを27ページで示しています。彼らはむしろ日本よりウクライナですとかロシアがもう少し厳しい目標を設定しなければいけないよということを言いたいがために、ここの図をつくったようであります。
 28枚目のスライド、これは6月のボンのAWG-KPで出てきたペーパーなんですが、オフィシャルドキュメントになっていないので、スキャンしたのでちょっと汚くなってしまって申し訳ないんですが、これはUNFCCCの事務局から出されたペーパー、アンオフィシャルなドキュメントであります。
 ここで事務局が示したかったのは、京都議定書のもとでこの目標を設定する場合、2020年単年の目標ではなくて、5年、あるいは7年ほどのコミットメントピリオドという期間の中で平均してある目標を達成しなければいけないことになります。第一約束期間の場合は、たまたまこれが羊羹の形をしているわけですが、第二約束期間の場合は2020年から遡ってその開始年、第二約束期間の開始年からだんだん減っていくような台形の形になるんですね。第二約束期間全体でその国に与えられる排出枠がこの赤い台形の面積に相当することになります。
 ということで何が言いたいかというと、その2012年とか2013年あたりの排出量次第で、この赤い面積というのが若干変わってきてしまうんですね。事務局はそのスタート年を京都議定書の目標値、日本であればマイナス6%という数字と、現行の排出量と、2種類の排出量をとりまして、この台形の面積を求めています。これをご覧いただきますと、例えば日本であればNew QELROsのミニマムというところをご覧いただくと、82とか84という数字が出ているんですね。これは1990年比だと思いますが。EUを見ますと、EUも84と83と書いてあって、実はこの台形の面積、ヨーロッパと日本とは余り変わらないということを示していまして、このペーパーが出たことに日本政府はどうやら反対したようで、撤回されました。なので、これはUNFCCCの事務局のホームページ見ても載っていないペーパーであります。
 最後、もう時間がなくなってしまったので簡単にお話ししますが、国外クレジットの話をさせていただきたいと思います。
 30ページにあるように、各国の排出量というのはいわゆる真水と呼ばれている部分と、外から購入してできる部分に分けることができると多くの国で考えられています。それで、既に国際交渉で3種類ほどの新しいクレジットの議論というのが始まっておりますし、32ページにはその他は国内でも新しいアイデアというのが出されてきております。
 それで、いずれにいたしましても、こういった新型のクレジットに対する途上国の懸念というのはやはりございます。例えばこういったクレジットを購入するということは、もともと配分したときに公平で公正なルールで配分したと考えられたにもかかわらず、その後でいろいろ売ったり買ったりしていると、もともと公平であったとされる配分が失われるのではないかといった懸念ですとか、あるいは先進国でカウントして、途上国も自分の削減分だといってカウントしているとダブルカウントになるんじゃないかといった恐れ等がございます。
 駆け足になってしまいましたが、まとめといたしまして、まず第1点目としては、衡平性の概念について整理させていただきました。
 それから、2つ目といたしましては、衡平性の概念を踏まえまして、排出削減目標の算定に関するさまざまな試算というものをここでご紹介させていただきました。
 それから3点目、本当にこちらは駆け足になってしまいましたが、国内外からクレジットに関しましてさまざまな案が出ておりまして、検討することは非常に今後重要かと思いますけれども、特に途上国側から出されている懸念等についても真剣に検討していかなければならないのではないかと思います。
 以上でございます。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 続けて、技術同友会製造業委員会の委員長の櫛木様のほうからご説明をお願いしたいと思います。論議はその後にしたいと思います。

○櫛木技術同友会製造業委員長 ただいまご紹介いただきました技術同友会櫛木でございます。
 まず最初に、技術同友会とはどういうものなのかということを22ページのほうにございますので、ちょっとご覧いただきたいと思います。お手持ちの資料のほうの。
 1972年にできた団体ですが、科学技術出身の経営者の集まりというものになっておりまして、今回は22ページ下のほうにございますけれども、私はパナソニックですが、その他製造業トヨタさんを初め、ご覧のような16人の方々、それから産業技術団体の方々で議論をして進めてまいった今回の提言でございます。
 もとへ戻ります。
 したがいまして、目次のほうに戻っていただきたいんですが、提言における課題認識がございまして、その次に提言が3点ございます。9ページから参考資料がございます。いろいろな参考資料を引用しましたが、代表的なものを挙げてございますが、説明の途中でときどき参考資料に飛んで見ていただくことになりますので、ちょっと細々としますけれども、お許しをいただきたいと思います。
 1ページのほうから説明をさせていただきます。
 タイトルは「海外とともに成長する21世紀の製造業・新成長戦略に関する提言-海外と国内を結ぶ『環境産業革命マザー基地』からの攻略-」ということでございます。したがいまして、ここで検討されております環境というものがこの中の本質にずっしりと重く入ったテーマを産業としてどう日本として海外に展開をし、いい関係、いい回転を起こしていくのかというのが今回の提言の趣旨でございます。
 まず、提言における課題認識でございます。
 3点大きくございます。
 2005年以降、日本の人口が減少モードになりまして、世界最高水準高齢化社会と。したがいまして、国内市場の新たな成長は望めないという状況になっております。
 一方、グローバルな環境産業革命の大変革点に直面しておりますので、「ものづくり」や「社会システム」の新しい形を再構築するというのが官民共同で推進する必要があると。
 3点目で、日本の先進的環境技術、これを従来システムの破壊と創造を実証するんだと、これが日本の得意なところでございますけれども、これをどうやって海外とともに成長するかということになりますと、国内は市場が小さくなる、しかし振興国は伸びるという間で、どういう経済モデルをつくって伸びていくのかというのが大きな課題であるという認識でございます。
 まず、課題の日本の産業活力の低下ということでございますが、1点目、日本の人口減少と高齢化による国内市場の衰退でございます。
 一方、これは振興国はGDP・人口とも大きく伸長しておりまして、世界の成長市場となっております。したがって、こことどう共存するか、また良回転を起こすかが成長のために極めて重要であるということであります。
 2点目、金融危機後の日本ファンダメンタルズが割高にということでございますが、2008年9月のリーマンショックを境に、日本のファンダメンタルズというのはさらに割高になっているということで、このままでは製造業の海外流出、また海外からの日本への投資というのが本当に細ってしまうということでございます。
 それから、2ページ目にいきまして、グローバル展開力の課題でございます。
 特に製造業では自動車や電機などは海外売上高比率が2007年度30%以上になっておるんですけれども、これから振興国でどう展開するか課題であります。
 また、非製造業というのは海外売上比率は3%ということでございますので、この製造業と非製造業がうまい連携でもってより伸びていくという形は何なのかという課題でございます。
 4番でございますが、日本の技術の強みが必ずしも国際競争力に結びついていないということでございます。
 そこで、少しそのデータを見ていただきますが、9ページをご覧ください。
 9ページは参考資料1で、人口及び世帯数の推移でございます。
 2005年から日本の人口は減少に転じておりまして、2015年では年平均50万人が減少していくと。2046年には1億人を下回るということになっております。
 それから、10ページにいきますと、日本の世帯数も2010年、15年を境に減少する。
 それから、その次の図は下のほうの先進国の経済は小さくなって、あと振興国は大きくなるという図でございます。
 11ページの参考資料2もG7の伸びよりもはるかにBRICsの伸びが大きいという図でございます。
 それから、12ページは日中韓のファンダメンタルズのリーマンショックの前と後、2007年と9年の主要指標を比較しておりますけれども、対ドル為替レートが日本が46%円高、韓国は41%ウォン安。日本の人件費は中国の22倍、電気代は韓国の3倍、土地代は中国の53倍、法人税率は韓国の2ないし3倍というようなことで、非常な割高であるということが海外への流出、また海外からの投資が日本に入ってこないという大きな原因になっておるということでございます。
 それから、13ページは参考資料4で2つのグラフを示しておりますけれども、製造業の海外売上比率、電機、精密機器、輸送機、これは電気OA機器、自動車でございますが、これが30%を超えております。
 一方、下のほうは非製造業でございますが、海運業、鉱業を除いたら平均で3.3%ということで、ここでいい循環が起こらなければ、お互いに成長していけないことになります。
 それから、14ページにいきまして、参考資料5でございますけれども、科学インフラは2位で、あと政治効率性、経済効率性が悪いということで総合17位ということになっておりますし、これが良循環を起こすにはどうすればいいかということでございます。
 2ページに戻らせていただきます。
 課題認識のその2でございますけれども、環境産業革命の大変革期に遭遇ということで、環境産業革命というのは技術を生かす政策力が成功のカギと。ちょっと大きな話になりますけれども、19世紀の産業革命、それから20世紀の情報化革命、これはやっぱり技術革新主導の革命であったと、産業革命であったと思われますが、今回の環境産業革命は国際政治が炭酸ガス削減目標を決めて政策絡みで引っ張ろうというのは、今まで世界ではなかった産業革命であるという認識をしております。
 したがって、その法規制、それからエコポイント制度、トップランナー方式などのこういう仕掛けが極めて重要で、それを総動員して技術を武器に達成をしていくということでございますので、その技術と法制度をつなぐ国内戦略というものがまた海外展開にどう寄与するのかというのが成長のための大きなポイントになるということでございます。
 6番目は省エネ技術だけではないということでございます。クリティカルメタルの問題、また食品廃棄物の問題、産業廃棄物の問題。したがいまして、有機栽培農業展開、まさにこの環境産業革命の裾野分野というのは極めて大きなものがあると。
 7番目、環境に適合した新しい社会システム、とりわけ次世代の自動車システム、また家庭での蓄電・創電システム、スマートグリッド、それから鉄鋼プロセスのようにコークスのかわりに廃棄プラスチックを使うとか、そういう循環系、こういう新しいシステムへの変革が望まれていると。
 次にいきまして、海外とともに成長する戦略とはということですが、これはグリーン・イノベーション政策のイノベーションの具体策ということで、去年暮れから今年にかけて新成長戦略が固まってまいりましたけれども、環境関連事業で新規市場50兆円超と、新規雇用で140万人と。それから、日本の民間ベースの技術を活かした世界の温室効果ガス削減を、日本全体の総排出量に相当する13億トン以上にしていこうではないかというようなことが出ております。
 それから、しかしこれをどのようにして結びつけていくのかということがキーでございます。また、これが海外への貢献を通じて日本市場に成長をもたらさなければ新規雇用という拡大にはつながっていかないと。
 9番目に環境・エネルギー分野において技術はトップレベルであると言われておりますけれども、しかし海外で展開したときに海外の現地最適化という意味においては、政治交渉力とか、海外現地向けソリューションということが必要になってまいりますので、これが本当に優位性があるのかというのがキーでございます。
 これも少し参考資料がございますので、14ページをご覧ください。
 参考資料6、こういう課題は経済産業省の日本の産業をめぐる現状と課題に随分詳しく出ております。
 また、自動車社会の将来、あるいは鉄鋼業の将来等についてもこれからの新しい技術開発でどのような炭酸削減も含めた効果を出していくのかというのが各産業、企業によって詳しく報告されております。
 また、新成長戦略で先ほどの数字が出てまいりました。
 また、標準化の問題では、16ページに参考資料10がございますけれども、電気関係の標準化団体によりますIECがエレクトリック・エナジー・エフィシャンシーという電気効率をいかに上げるか。また、その電気と炭酸ガス削減の関係というものを詳しく調べたレポートを出しておりまして、6月に各国批准をされました。75件の革新技術を挙げて、これから2050年に向けての標準化のロードマップをここで作成をしております。
 またもとに戻ります。
 それでは、提言に移ります。
 4ページ、提言でございます。
 まず製造業の役割、環境産業革命におけるということでございます。
 CO削減だけではなくて、さまざまな製造プロセス上の廃棄物も含めたシステムが要求されております。それに適した機器・システムを開発して、そして従来のシステムを破壊して、最適効率の新体系に材料、機器・システム全部をつくり直さないといけないという状況に直面していると、私ども産業人は認識をして、それを一から現在やり直しつつあります。
 したがいまして、製造業ではCO削減を見たトップランナー方式とか、また異業種協業によるオープンイノベーション、これを積極的に推進して、従来の法制度にとらわれることなく改革を提言する責任があると考えております。したがいまして、それは産業界のみならず国側にも戦略推進本部等を置いて、官民共同でこれを力強く進めるということが重要であろうかというふうに考えており、かつそれをいかにして海外の成長市場に提供して、日本の国内に回るような循環形をつくるのかということが大きな課題であるという認識でございます。
 また、そのための実証実験、このための法整備の緩和並びに当該国への働きかけというのがキーになります。したがいまして、環境産業革命の海外展開に成功し、国内の成長に寄与するにはということで、以下の3点を提言いたしております。
 提言1は、環境産業革命の「国際展開ロードマップ」による着実な実践と。
 それから提言2は、国内外を結ぶ「環境産業革命マザー基地」の実証による展開と。
 提言3は、裾野分野です。これを生かすワンストップ・ソリューションによる攻略でございます。
 提言1の環境産業革命の国際展開ロードマップでございますが、既に技術のロードマップというのは、これは経産省が進めております技術戦略ロードマップに詳しく書かれておりますが、これをさらに強化するには客観的な比較が必要だと。特に他国との比較は必要だと。
 それから、2点目に環境産業革命そのものの各国の展開がどうなるのかという、これは十分調べる必要があると。日本の展開は戦略としてつくっていっておりますけれども、各国に出ていこうとしたら、中国はどうする、ベトナムがどうする、インドネシアがどうする、アメリカがどうする、すべてそれらは知っていて、各国で戦略は違いますので、それに合わせるように技術と組み合わせる必要があるということでございます。また、そういうデータベースを官民協力してつくる必要があるということを言っております。
 それから、3点目に先進環境技術に関する標準化の積極提案でございます。
 標準化というのは測定の公平性、またマーケット普及の迅速性を保障、担保していくものになります。したがって、何もかもオープンに標準化するわけではございませんが、ブラックボックスするもの、知財化するもの、オープン化するもの、そして標準ということを戦略をしっかりと決めた上で提案をしていく必要があると。それも日本だけがやったのでは、これはもう通りません。まさにガラパゴスというキーワードで言われるようなことになりますので、一緒にやる国を決めて、中国・韓国・ASEAN、インドを初め欧米先進国、そのテーマごとにそういう作戦を組んでやっていくと。この海外貢献へのそういう各国とのまとめ役として日本が評価されなければいけないということでございます。
 これも少し参考資料がございますので見ていただきたいんですが、16ページに「次世代エネルギー・社会システム実証地域」というのがございまして、今言いましたようなことをベースに次世代エネルギー・社会システムの4つの都市が決められて進められております。横浜、豊田、けいはんな、北九州、それぞれねらいが違います。新しい自動車システムであったり、スマートグリッドのあれだったり、またクリーンエネルギーの北九州だったりします。
 また、参考資料12で10離島のための太陽光発電。
 離島というのは電線が張れませんので、この中で完結系を目指す必要がある。
 それから、18ページには「環境モデル都市」、13都市が2009年に発表されております。
 また、参考資料14では水関係の事業・実証の展開で、北九州、UAEの例が出ております。
 それから、参考資料15ではCool Earth計画。20ページを見ていただきますと、21の技術が挙げられております。これを日本は計画的にロードマップのもと進めているところでございます。
 また、それの早期実行プロジェクト16が経産省から発表されておりまして、グリーン・イノベーションによる環境・エネルギー大国戦略、アジア経済戦略、それから観光立国・地域戦略、雇用・人材戦略というものでございます。
 それらを踏まえまして、また6ページに戻っていただきます。
 提言2になります。
 国内外を結ぶ「環境産業革命マザー基地」での実証による展開ということでございます。
 先ほど実証実験都市を紹介いたしましたけれども、これらを「グリーン・イノベーション特区」と指定して、ここで「新技術と新法規」を実証すると。これも先日今言いました早期実行プロジェクト等に挙がっておりますが、重要なことはやはり世界に先駆けてリスペクトされるような革新的な環境エネルギー技術を導入して、それを実証するということでございます。そのときに日本は地政的な特徴、つまり寒帯から亜熱帯までの場所に存在しますので、うまくその特徴を生かして、それが適用できる地域に当てはめていくということでございます。これを「環境産業革命マザー基地」として目標を明確にして絞り込んで、そしてそれがお役に立てる海外地域をしっかりと目標設定する必要があると。これを官民共同してやっていく必要があると。
 聞くところによりますと、こういう環境モデル都市は世界でも300カ所ぐらいあるらしい。先日中国の責任者の方のお話を聞きますと、中国でも660都市のうち100都市はこういう環境モデル都市として進めたい。大きい3つが天津と唐山と海南島であるという話も聞きました。
 つまり、こういう実証実験都市で日本が競争力のあるリスペクトできる成果を上げて、しかもそれが尊敬されるような技術標準化というものを持って海外に出ていけるかということがキーであるということでございます。したがいまして、そこに海外政府、企業も参加して、国内マザー基地で交流を図ると。しかもそれが例えばベトナムであるか、ほかの都市に出ていったときに、そこに海外マザー基地をつくって、そこにこんなことを言うとあれですけれども、日本料理屋さんも出ていったり、工場の場合、部品工場も出ていきますけれども、文化も含めて出ていくということが必要ではないか。そういう実証実験場が大事であると。
 それから3点目は、出していくのは物、それからそういう物だけではなくて、それの製造プロセスから廃棄、その技術そのものがクリーンであるという技術を実証して、そしてそれを海外にも提案していかないといけないということでございます。
 7ページにいきまして、提言3でございます。
 「環境産業革命裾野分野」を活かすワンストップ・ソリューションによる攻略ということでございます。この裾野分野といいますのは、制度、環境政策に役立つ制度、コンテンツ、環境、人材育成力、こういうものを活かすということでございます。特にこれを海外に向けてはワンストップ・ソリューション体制で臨まないといけないということです。ここでワンストップ・ソリューションとは、制度政策、産業界異業種連携、サービス・システム・機器を専門人材チームによってまとめて解決することを言うという定義でございます。
 日本の場合、現在「エコポイント制度」「トップランナー方式」等でエコ商品普及促進策というのはもう実証されてきました。これをさらによりよいものに磨いていく必要が当然ございます。補助金制度もやってまいりました。
 しかし、これが他国に出ていったときにその国向けに商品とかそれだけではなくて、これらの制度そのものもその国に向けて最適化し提案をしていくということが重要でございまして、そのような推進を図るということでございます。比較的にそれに近い活動をやっておるのは、シンガポールなんかはそういう形で海外にワンストップ・ソリューションで出ていっているというところがございます。
 さらに、制度面では先ほど出てまいりましたけれども、CO削減成果を二国間取引で日本に持ち帰るということも重要でございます。
 それから、法人税の国際競争力ある減税、これもやらないと出ていくばかりになりますし、海外から入ってこない。
 また、技術料収入の場合は海外でも税金をとられ、国内でもとられる二重課税になっている、まだ残された未解決問題でございまして、莫大な開発投資とか設備投資が環境産業革命に必要なんですけれども、こういうことがこれを阻害しておるということで、こういう問題も解決する必要がございます。
 それから、地域特有のコンテンツ・観光事業・農林水産業に連動した環境関連産業の育成強化ということでございます。
 「環境産業革命マザー基地」という言葉にさせていただきましたけれども、こういう活動をその地域地域で「エコ・イノベーション見本市」などの開催。また、「エコを楽しみながら学ぶコンテンツ」、こういうものを観光資源化してブランド化する。
 また、その地域には日本特有の料理もあれば名所旧跡もあって、これらが新しい形で世の中にブランド化されて紹介していく、こういうことがこの裾野分野として極めて重要であるということだと考えます。
 次に、人材育成でございます。
 日本が環境先進国として本当にそれが推進できていくならば、それを推進できる人材、これは消費者向けもありますし、一般企業人向け、専門家向け、海外ソリューション担当向け、これを輩出していく必要がございます。そして人材そのものが国際競争力強化として重要であるということでございます。
 したがいまして、革新技術と環境技術をつないで法制度までつなぐ交渉力のある人材で、これらを例えばアジア諸国を対象として人材とセットにして、また育成ノウハウとセットにして育成制度・認定制度、提案をしていくということでございます。
 まとめに入りますけれども、上記のような提言実現のためには、官民のきちっとした体制が必要で、そのためには内閣府に「グリーン・イノベーション戦略推進本部(仮称)」、産業界には「グリーン・イノベーション産業推進協議会(仮称)」などを設けて、両者の緊密な連携のもとに「環境産業革命海外展開プロジェクト」を積極的に展開すべきであるということでございます。
 図示しましたが、下のほうにございます。日本で政府、産業界を挙げてマザー基地から海外マザー基地に向け、それが相互に交流すると。そして裾野分野まで含めて現地最適化ソリューションを進めていくということでございます。
 議論の過程で私ども産業人は、この「マザー」というキーワードが極めて意味が深いという議論をいたしました。特に製造業で一応成功をおさめて世界にもリスペクトされるような事例が出てきているわけでございますけれども、これはマザー工場ということで、そこが日本のマザー工場がキーになって、やっぱり海外に出ていっています。それと一緒に部品工場も出ていっています。その地域には日本料理屋さんもできてきています。また、「改善」とか「ジャストインタイム」とか「たくみのわざ」ということがこの世界に対して輸出でもリスペクトされる部分として日本の競争力の源泉になってきたのも一つの事実でございます。
 ならば、この環境産業革命ということ自身を世界に対して呼び入れ、また出ていき、そしてお互いに理解し合い成長できるということに競争力をつくっていくということはどういうことなのかということを願って、この提言をまとめたつもりでございます。
 以上でございます。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 低炭素社会、低炭素世界、あるいは地球環境の問題につきまして、どのように産業的に攻めていくかといったことは、国にとって非常に重要な問題ではないかなと思っております。先に亀山さんのほうから国際貢献どうあるべきかという話もございました。また、地球環境部会のほうでもこのあたりの関係をきちんとやってほしいという意見も多く出されたと思います。
 皆さん、残り時間ございますので、委員の方々からこれまでの発表につきましてご意見、ご質問ございましたら、よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。
 それでは、この辺から。藤野さんのほうからいきたいと思います。

○藤野委員 いつも端っこから当たると思っていたので、ちょっと今油断してしまいました。
 技術同友会の櫛木様のほうのご提言について、5月か技術同友会でちょっと例会でこの25%、80%の話をさせていただく機会があって、そのときに初めてこの提言を聞かせていただいて、非常に元気が出るような、確かに問題はいろいろあると思うんですけれども、とにかく元気になる方向で考えられないだろうかというところでご提言いただいていて、共通にチャレンジすべきものではないかという印象をいただきました。
 我々のこのロードマップの議論で大きく欠けているのはアジア展開、世界展開の部分で、国内の25%、80%の話はかなりぎりぎりと、それぞれのワーキンググループの先生がリアリティーをさらに求めていくといろいろなしがらみが多分見えてきて、ちょっともうこれ以上突っ込むといろいろな顔が見えてきて、嫌になっちゃうところも出てくるところ、そこもぜひバリアを見つけて、さらに乗り越えていかないといけないとは思うんですが。
 より大事なのはそれを世界の貢献につなげていくこと。つまり日本のCO排出量、世界の4%ですけれども、日本も減らしながらも、アジア、世界で減らしていく。そこで国際展開ロードマップというところでご提案いただいていて、我々も国立環境研究所もこういう場では日本のぎりぎりしたシミュレーション、後でもちょっとご説明しますけれども、やっておりますが、アジアの低炭素社会シナリオもつくっていまして、今まさに筑波でAIMのモデルのトレーニングワークショップをやっていまして、中国、インド、タイ、インドネシア、マレーシア、ベトナム、韓国等の若手研究者を1週間呼んで、それで我々がこうやって25%とか80%シナリオをどうやってつくったのか、そういうシミュレーションの講習をして、彼らの国のシナリオ、または都市のシナリオをつくっていただいています。
 我々、技術の根本のところはやはり産業界の方、また新しい芽がどこにあるかというのは、そういう情報をいただかないとわからないんですけれども、ただまとめてシナリオを書くことはできますので、ぜひ連携して日本のためにもなるし、アジアのためにもなるシナリオを書きたいと思っていまして、そういった中でシミュレーションの説明もさせていただいたんですけれども、シミュレーション分析でもし何か問題点というか、よりこういうところを分析したほうがいいとか、そういうポイントがもしありましたら、ご意見をいただければと思います。
 以上です。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、こちらにまいりまして伴先生、お願いします。

○伴委員 亀山さんの衡平性の議論というのは前からよくお聞きしていて、本当に大変だなと思います。要はみんな自分はやりたくない、他人にやらせたいという、単純なそれだけの理由で、理屈をつけながらやっているのが衡平性の議論と思っています。
 日本ではちょっと間違った衡平性があって、つまり限界削減費用が各国で均一でなければいけないというがたくさんいらっしゃるのが非常に大きな問題と思っています。
 けれども、経済の発展段階とかいろいろな状況が違うときに、一つの指標で衡平性を議論するなんてとんでもない話でありまして、そういう点でどういう衡平性の議論をするべきかというよりも、中国なりアメリカなりが国際交渉の枠組みに参加するための便利な概念みんなが認めていくというのが一つのやり方と思っています。
 ただ、おもしろかったのが、中国が過去の歴史の1800年代の半ばからの排出量で比べろと言ったんだけれども、私ももう既にしたのですが。あと10年もしないうちにそういう論理は、中国は自分の首を絞めることになるのですが、亀山さん聞いてびっくりいたしました。
 結局は衡平性なんていうのは理屈づけの問題であって、みんながどうやって協力できるか、そこのところが一番の大きな前提になると思います。もちろんそれに伴って各国はそのルールに従うことで、自分がどれだけ得するか損するかを計算するかもしれませんけれども、重要なことは国際的な合意を得ることであって、そこのところに集中してみるというのが要るかなという具合に思っています。
 それから、技術同友会の提言、まさにそのとおりで国際的な展開というのはここでもロードマップ委員会でも皆さんが申し上げていることかという具合に思います。
 ただ、そのときに、私自身は経済をやっておりますので、日本の企業というのはアジアを含めて、特にアジアを中心にもう一体で考えていますから、日本から出て行くとか出て行かないという問題ではなくなっていると考えています。したがって、大部分を中国とかベトナムとかアジアで生産しても、それが安い費用で日本に入ってくれば、それに伴う付加価値も日本でも発生しますので、別にどこの国で生産するかというのは日本のGDPを見る上ではほとんど関係ないということは、皆さん頭の中に入れておいていただければと思います。
 あと、この提言に関わることで、むしろ私自身が少し聞きたいことが2点ほどあるんですけれども、技術同友会の方、まさに世界に冠たる技術をこれまで開発されてきたのですが、技術者の方々というのはパーフェクト主義者というのが多いと思います。技術というのはつくって、それが最初からパーフェクトでなくて、途中でどんどん改良すればいいのに、最初からパーフェクトさを要求する。それは技術者だけじゃなくて社会もそれを要求しますので、結局それが日本にとって非常に大きなダメージになっている。典型的に、10年前にネットワークの管理をやっていたときに、シスコという製品があったわけですが、なぜ日本でそういうのが出ないかということを聞いたとき、日本の場合はちょっとでもトラブルがあると、もうそれだけでたたかれてしまう。今も相撲協会がたたかれていますが、完璧さを要求してちょっとでも外れると徹底的にバッシングすると、技術者はやる気をなくす。ところが、シスコの場合を例にすれば、いい加減な技術がだんだんユーザの意見を取り入れなが改良し、世界を席巻していく。
 やはりそういうところが国際化という動きではないか。つまり日本の中だけでなく、技術に対する温かみというのが要る。それはガラパゴス症候群でも言えるわけで、非常に高機能の高価なものなんて世界で売れるわけじゃありません。むしろ低機能で安いのが世界の市場を獲得します。そこら辺が技術者の方々にとってはちょっと腹立たしいことかもしれませんが、やはり世の中生きている技術というのはそういうことをクリアしている技術じゃないかなという具合に思っています。
 それから、提言の中になかった点がちょっと残念だったのは、技術というのは一つ一つのパーツではなくて、それを全体統括したインテグレーション型なわけですね。だから、そのインテグレーションをできる人材をどういう形で養成するかをもう少し考えていただければと思います。このインテグレーションというのは国際的なインテグレーションだけではなくて、技術のインテグレーション、特に環境については一つ一つの部品ではなくて、それをどう使うか、そこが非常に大きな貢献になりますので、システムインテグレーションとよく企業は言いますけれども、現実にはなかなかうまくいっていない。そういうある意味の幅広の技術を頭の中に入れて、それをどういう形で組み合わせることで非常にいい製品を持っていくかというのが、本当のところの技術だと私自身思っていますので、インテグレーションする技術をどういう形で増していくかということにもう少しいっていただけると、おもしろかったのではないかと思います。

○西岡委員長 大聖委員、お願いします。

○大聖委員 2つの点をちょっと申し上げたいと思います。
 1つは人材育成ということでありますが、先ほどやはり人材の育成というのは重要だというご指摘がありましたけれども、私ども教育機関にありましても最近留学生が急増しておりまして、環境エネルギー分野での日本で学びたいという学生が大変多い状況にあります。そういったときに彼らが就職するという問題になりますと、日本の企業の受け入れというのは必ずしも十分ではないのが実情です。彼らの能力を使えば、日本の企業で働いてもらって、環境分野で活躍できれば、わが国の技術力の増強につながる面があります。
 その一方で、彼らは帰ってその母国の企業に勤めますと強力なライバルになる可能性があるわけですね。伴先生のようにアジア全体で考えれば、それは利益なんだというふうな見方もできるかと思いますけれども、その前に、じゃ日本はそういう人材育成でどういう貢献をしたのかということを何がしかやはりアピールするような指標なり定量化するようなものがないと、やはり国際的にもアピールしたことにならないのではないかというふうに思います。
 それから日本の学生、ちょっと内向きになっておりますけれども、元気のいい者は飛び出して、アメリカに行ったりして戻ってこない訳です。そうすると、それは相手の国の利益になっているという、そういう人材の教育の裏腹なプラスマイナス面があるということであります。その辺をどういうふうに日本の貢献度としてやるかということが重要ではないかなということ。
 それからもう一つ、亀山さんのご指摘にありました低炭素型製品のことです。とりわけ途上国での展開に関してダブルカウントする可能性があるという、これは本当にご指摘のとおりだと思いますけれども、製品だけじゃなくて、技術の全体がそうなのですね。一つ一つの物だけじゃなくて、いろいろな物をどうやってつくるか。それから伴先生が言われたように、インテグレートした全体でノウハウというのが外へ出ていったりして、それが使われているという状況がありますので、これももともとは日本の技術の非常に優秀なところが利用されているということでありますので、何がしかの指標で日本の貢献が見えるような、そういう工夫が必要ではないかなというふうに思います。
 それから、その中で低炭素製品とか技術というのはどういうふうに定義するのかということは問題だというご指摘もあって、それもまさにそのとおりですけれども、例えば国連の下にいろいろ安全ですとか、それから省エネに関わるようなところでハーモナイゼーションの取り組みが進んでおりますので、行く行くはやはり省エネの製品に対する国際標準化みたいなものがうまく整理されていけば、そういうもっと客観的な評価が多国間でできるのではないかと思っております。そういう努力も必要ではないかと申し上げたい。
 以上です。

○西岡委員長 杉山委員。

○杉山委員 どうもありがとうございました。
 特に技術同友会の方から説明された話、この中長期ロードマップ小委員会の中でも始まったときから私は発言させていただきましたけれども、やはり日本の技術をどう国際貢献に使っていくのかと。前回の地球環境部会でもそういうようないろいろな意見が多面なところから出ていたなということで、その上で今日こういったお話を聞かせていただいて、非常に力強いといいますか、重要な点が再認識できたんじゃないかなというふうに感じています。
 先ほど、生産拠点の問題が取り上げられていますが、ただ一点、積極的に外へ乗り出していく、これはとても大事なことで全く同意するものですけれども、やはり我々は炭素リーケージの形で外に出ていってしまうというものは避けていかなければいけないと思うのですね。外に積極的に出ていく者と、出ていかざるを得ないというのはやはり違うものであろうと思っています。成長戦略の中でも日本の雇用創出140万人等々の数値も出ています。そういったものにもぜひ貢献し、調和できるような取り組みをぜひお願いしたいなというふうに思います。
 その上で1点お伺いしたいのが、もう大体先ほど提言を聞いていて全く違和感がないわけですけれども、既に新成長戦略の中で工程表なりそういったものが出されていまして、ご提言されている中身もほぼ同調しているのかなというふうに受けとりました。その上で今出ている工程表などを見た中で、産業界としてもう少しここを具体化した目標を出すべきだとか、こういうところを言葉として出すべきだとかいうところがもしあれば、ぜひお聞かせいただけますでしょうか。よろしくお願いします。

○西岡委員長 荻本委員、お願いします。

○荻本委員 同友会さんのほうのコメントをさせていただきます。
 私自身はこの中のクールアースというようなものに代表される技術戦略というのに大分長く関わってきました。このごろスマートグリッドというようなところでもいろいろな経験をさせていただいているのですが、そういう中で思いますのは、確かに日本は非常にいい技術を持って、いい製品体系を持っていると。ただ、先ほど言われました、時代が今変わろうとしたときに、5年後、10年後にフィットした技術を持っているか、製品体系を本当に持っているかということにはもう少し率直に、自分に何が欠けているかということを今一生懸命考えないといけない時期かなと。
 具体的には、いろいろな実証試験、またはいろいろな特区というものが走っているわけなんですが、本当にその中に投入すべきものが国内にどれだけ育っているかということについては、十分ではないかなと私は思います。
 つまり、枠組みをつくり、予算や人を投入し、みんな苦労はするんだけれども、本当にその中に投入すべきもの、光るものがちゃんとあるのかということに関しては、あるものもあるんですが、まだ足りないと思えます。そういうところは少し謙虚に考えたほうがいいと思います。それをうまくこなしていくためには、やっぱり人間というのがベースになります。どういうコンセプトで考えるのかとか、そういう考え方を実際に実現できるような人間とか組織というところをうまくワークするようにつくっていただいて、その中からアウトプットが出てくるというようなことになればよいと考えます。
 以上です。

○西岡委員長 枝廣委員、お願いします。

○枝廣委員 亀山さんに教えていただきたいと思います。
 この衡平性をいろいろ考える視点がこんなにあるということ。日本だと「限界削減費用」が前面に出ているわけですが、世界の議論の中でこの限界削減費用を重要な指標として考えていこうというのは、全体的に見たときに中心的な位置なのか、それとも、中心ではちょっと違う話をしていて、亜流というか、限定的な国で限界削減費用というのが前面に出ているのか。国際的なバランス感覚からいったときに、日本の今出している限界削減費用という視点がどれぐらいなのかというのが1つです。
 あと国内、日本の中でもこの衡平性なりいろいろな評価をするときに、限界削減費用だけではなくて、ほかのいろいろな議論もあるのか。「国のポジション」というところに日本がなかったからなのですが、日本の国のポジションはもう決まっているのか、それを今討議しているのか、討議もしていなくていろいろと羅列段階なのか、そのあたりもしおわかりになったら教えてください。

○西岡委員長 牛久保委員、お願いします。

○牛久保委員 ありがとうございます。
 経済同友会さんの2ページにあります環境産業革命は省エネ技術だけではないという部分の中に、特に食品廃棄物の削減、肥料化による有機栽培農業展開という書き込みをしていただいており、特に食品廃棄物を扱っている者としては、このような提言をしていただいたということに感謝しております。
 ご存じのように日本では約9100万トン近くの食料を食用向けに輸入している中で、約1,900万トンの食品廃棄物が、さらにそのうちの約50%に当たる最大見積もり約900万トンが、まだ食べられるにもかかわらず食品ロスとして捨てられているわけですね。しかも食料自給率を考えると現在41%程度ということで、海外依存しています。土地で言っても日本の耕地面積約500万ヘクタールに対して、海外依存の約60%を栽培面積に換算しますと約1,200万ヘクタールとなります。さらにそれにフードマイレージの面から、海外の生産地からCOを排出しながら海外から輸入しているという、観点。
 ですから、廃棄物一つをとっても非常に海外との関連が深いということもあり、こういう面についても議論を大いにしていっていただきたい。いわゆる海外との関連の中には、毎日生活するに必要な食料が大きな関わりがあるということで、こういう書き込みをしていただいたことに対して感謝申し上げたいなということです。ありがとうございました。

○西岡委員長 飯田委員、お願いします。

○飯田委員 亀山さんと技術同友会さんのプレゼンに一言ずつコメントさせてください。
 亀山さんの衡平性、非常に勉強させていただきましたけれども、このさらにもう一つ奥にある政治文化的なところも少しつけ加えてみたらいいのかなというふうに思いました。よく言われるんですが、日本の政治文化の中にはいわゆる公共性というかパブリックネスが欠けているというのをさまざまな方が指摘されていますが、一方で非常に狭い領域のいわゆる平等性みたいなものにやたらこだわると。であるがゆえに、先ほど伴さんがおっしゃったようないわゆる限界削減費用のような大もとが余り根拠のない数字にやたらこだわるような、そういう非常に特殊な文化が一方であって、もっと将来性などを含めた、あるいは地球全体の広い意味での衡平性といった、いわゆる本来の意味の公共性がマインドに必要なところがどうも日本の議論に欠けているのではないかと。そういうもう一つ奥に突っ込んだまた分析もしていただけるとおもしろいなと思いました。
 それから、技術同友会さんのプレゼンテーションに関しては、先ほどの荻本先生と私は結構似た感想を持ちまして、非常に力強い心意気と、その奥にある危機感みたいなものも受け止めたんですが、書いてある内容全般には違和感がやはりありまして、それはどこから来るのかというのは、ちょっとここで長く議論しても仕方がないんですが、例えばさまざまなマザー基地なんかが書かれているんですが、これまで山のような○○モデル地域だとか規制特区などが行われてきた結果として、ほとんどまともなものが実現してきていないんですよね、日本の中で。
 あるいは、もう既に全面的に普及しつつあるような、例えば風力発電とか再生可能エネルギーが日本の中では極めて閉塞していると。そういう現実の部分、例えて言うと非常に力強い声を挙げてこぶしを振り上げているんだけれども、自分の等身大から下のところがなかなか追いついていっていないという、そこのギャップのようなものがあるのかなという意味で、先ほど荻本さんが言われたような、もう少し足元のところをしっかり見たほうがいいんじゃないかと。
 もう一つのずれは、恐らく例えば5ページ目のところに技術標準化とか、日本語のデータベースというふうに書かれているんですが、恐らくその技術標準なるものが例えばISOにしてもASTMにしても何にしてもぽこっと紙に書かれたものとしてできるのではなくて、それを支える膨大な顔の見える専門家群、ナレッジのコントリビューションというものがあって、その結果の結晶としてそういう紙に書かれたものがあるのであって、恐らく日本のいわゆる知識社会というものが、知識コミュニティーがグローバルナレッジのところにコントリビューション、余りに少な過ぎるんだと思うんですね。そこのところをもうちょっと掘り下げていかないと、標準化を提案すればいいんだ、それが何か採用されるんだというような、しかも日本語でデータベースをつくっているとますますガラパゴス化するので、そのあたりのユニバーサリティー、足もとのユニバーサリティーをもうちょっと見据えないと、やはりそこのずれというのはなかなか埋まっていかないというふうに思いました。
 以上です。

○西岡委員長 赤井さん、お願いします。

○赤井委員 ありがとうございます。
 お二方のプレゼン、非常に私も勉強させていただきました。ありがとうございました。
 亀山さんの衡平性の話、私も飯田さんと同じようにいろいろな観点から分析結果等をご紹介いただいてありがたいなと思ったんですけれども、結局は衡平な形でこういう政策を各国でどういうふうにとろうか、あるいは国だけじゃなくて世代間の衡平性というのもあるかと思うんですけれども、そういった衡平な形を考えるということで研究者等はいろいろ分析するんですが、結局は伴先生がおっしゃったように自分はやりたくなくて、自分はなるべく負担が少ないようにということで、結局は国際交渉の場に持ち出されてしまうということなんですけれども。
 そうするときに、前回の委員会でも交渉ということで話題になったんですけれども、そうなると今度は誰がどういう形で交渉するのかという、また人の問題になってきまして、経済同友会さんのほうの提言の最後のほうでしたか、専門家としてのいろいろな意味での人材育成ということがあって、先ほどの亀山さんのお話とひっかけて言うと、例えば交渉ができるような人材の育成だとか、そういった人材ということも含まれると思うんです。
 非常に矮小な例で申し上げますと、例えば私もそういう人材は必要だし、いろいろな国の役所等もいろいろなそういった人材を内輪に持つ、あるいは外に持ちたいということで、いろいろな人材育成を過去にやったのを私も横で見ていた経験があるんですけれども、例えば外に人材育成、例えば交渉でもいいですし、ほかの分野でもいいんですけれども、そういった人材を育てようとしたときに、その分野で日本全体で何人必要かわかりませんけれども、一気に1万人とか2万人が育てられるわけじゃなくて、最初は数人から始まって、それが波及効果として最終的には必要な人数、何千人か何万人か育てるというプログラムをつくるときに、何が起こったかというと、例えばある分野で民間のシンクタンクの人たちに知識を高めてもらおうとして、その当時いろいろな国内何社もあるシンクタンクの人たちを公募で、ある分野についてかなり育成プログラムを走らせて、あるレベルまでいったと。実際その人たちに今度は仕事をしてもらおうと思った途端に、余り考えのない一律主義の随意契約禁止ということで、実際にはそういった人たちは全く生かせずに、安かろう、要するに安けりゃいいという人たちの企業からの応募で採択せざるを得なくて、実際には育てた人たちが全く無駄になってしまうという例が結構今起こっているんですね。
 だから、非常に矮小な例ですけれども、そういったことも含めた人材育成プログラムみたいなものが必要なんじゃないかというふうに、経験から一つコメントさせていただきました。
 以上です。

○西岡委員長 そちらに行きまして、増井さん。

○増井委員 どうもありがとうございます。
 私のほうからはコメントといいますか、昨日までアメリカのスノーマスという避暑地でアメリカのモデラーですとか、あるいはEPA、DOEというような政策決定者、ヨーロッパのほうからも何名かそういうモデラーの方々が参加して、日本からもライトですとか、あるいは電中研、そういうふうなところから参加していた、そういう会合があったんですけれども、そこに参加していまして、その一つのセッションにコペンハーゲン後のポリシーというのがございまして、当初はエネ庁の方から報告がされる予定だったんですけれども、ちょっと来られないというか、急遽私に発言の機会が回ってきまして、こういうロードマップですとかいうふうな話もご紹介させていただきました。
 同じセッションの中でアメリカのほうからジーキューブドというモデルの紹介がありまして、そういう中では日本は25%、非常にアンビシャスな目標を掲げているけれども、例えば限界削減費用で見ると、実は日本のその25%の値、彼らの試算では69ドル/tCO当たりなんですけれども、ヨーロッパでは20%削減という目標なんですけれども、それよりも高い78ドルというような計算結果を出していたり。
 また、GDPの減少率、BAUと比べてのGDPでの減少率というようなものを見ますと、日本は5.1%なんですけれども、オーストラリアはそれよりさらに高い6.3%GDPがそのBAUより減少している。一方ヨーロッパ、EUでは4.9%と、ほぼ日本と同じような減少率になっているということで、彼らの一つの結論としては、いろいろなエフェクトとバードンというのは必ずしも一致しないというふうなことを結論として申し上げています。
 そういった中で、多分モデルのその数字というのはいろいろありまして、ちょっとこの辺は亀山さんにお聞きしたいんですけれども、国際交渉されている方というのはモデルの結果というのをどの程度信頼されているのか。我々もプラスマイナスいろいろな結果が出ておりますけれども、国際交渉の場でそういうモデルというものをどの程度信頼しながら議論をされているのか、もしご存じであれば教えていただきたいなというふうに思います。
 あと技術同友会様のほうに関しましては、同じセッションの中で中国の農原研の方からの報告で、彼らは今現在ポリシーベンチマークというものを調べておりまして、これは日本、アメリカ、ヨーロッパ、いろいろなところでそれぞれ温暖化に関する政策というふうなものがあるんですけれども、実際具体的にどういうふうな政策が行われているのか。そういう中で実際中国はどの程度のものをやっていきたいのか。実際にはその中国の方々、一番いいものをやっていきたいというふうにおっしゃっているんですけれども、そういう中で技術同友会様のほうとしてもそういう国際的ないろいろな基準、スタンダードというようなものがあろうかと思いますけれども、そういう中の位置づけで今回取りまとめられた提言というのを見たときに、どういう位置づけにあるのか。特に海外との協力関係というふうなところの視点から見ますと、どういうふうな位置づけにあるのかというところを教えていただきたいなと思います。
 最後に、このスノーマスでの議論の中で1つ話題になっていたのがセカンドベストということで、多分いろいろな現状、リアリティーというようなものを考えると、どうしてもファーストベストのモデルで計算されるような極めて最適化の結果ではなくて、もう少しリアリティーというようなものも含めたセカンドベストというふうなものの政策なり対策というようなものを見ていかないといけないのではないかなというふうなこともありましたので、またそのあたり機会があれば紹介したいと思います。
 以上です。

○西岡委員長 三村委員、お願いします。

○三村委員 お二人の発表どうもありがとうございました。大変勉強になりました。
 私、櫛木委員長さんに1つだけ質問をさせていただきたいと思うんですが、お話全体は非常になんか明るい気持ちになるようなご提言だったんですが、7ページにありますこの環境産業革命裾野分野というものの中に、非製造業がどの程度考えられているのかという点だけご質問したいと思うんですが。というのは、一番最初のときに非製造業の海外展開率が平均で3%ぐらいだというようなのがあって、そういう部分もアジアの成長と一緒に成長する、あるいはそれに貢献する必要があるんじゃないかというようなことは感じました。それで、この中にどうかなと思うんですね。
 それで、実は私も先週ベトナムに1週間ほど行っていまして、もともと専門が土木工学なものですから、海岸なんぞを見せられて、200メートルぐらい浸食されて堤防が壊れて今新しいのをつくったばかりですみたいなところとか、それから道路も都市も建設途上、それから水道も必要ですみたいな話なわけですね。
 今つくるインフラというのはきっと2050年のときにベトナム社会を支えると思うので、そうすると、そういうようなものがどれだけ低炭素化されているかとか、あるいは環境に配慮されているかというので、かなりな部分ベトナムの将来というのも決まる。
 それから、日本企業が出ていくときに、周りのさっき言ったような建設とか保険とかサービス業とか、そういうインフラが整っていないと、今おっしゃっているような環境のモデルとなるような地区とか都市というのはなかなか難しいかもしれない。そうすると、この環境産業革命裾野分野というものは、ある程度広くとらえる必要もあるんじゃないかなという、社会システム、社会インフラを含めたようなものとしてとらえる必要もあるのではないかなと、こう思うんですけれども、その辺はこのご提言の中ではどういうような考え方になっているのかを教えていただければと思います。

○西岡委員長 村上委員、お願いします。

○村上委員 亀山さんと櫛木さん、ありがとうございました。
 まず亀山さんに質問でございますが、非常に多様な考え方をお示しいただきましてありがとうございました。それで、やや総体的に並べられていて、ご自身のご意見は余り出さなかったような感じがいたしますけれども、もしもどの辺が将来動きがあるかというご主張がございましたら、教えてください。
 それから、技術同友会さん、大変すばらしいご検討ありがとうございます。
 大変気になる、いつも言われていることですけれども、この中にも参考資料の3に日本と中国と韓国のファンダメンタルズな比較がございます。それで、これほどの差があるのをなぜ日本は放置してきたのかということが私は大変気になるわけでございまして、恐らくこれを改善しないことにはすべて進まないんじゃないかと思うんですね。
 ですから、この環境産業革命というものをぜひこのファンダメンタルズの改善という形で進めていただければ、関連づけてですね。といいますのは、これだけ日本がファンダメンタルズが劣った古い体制、古い既得権をそのまま維持しているからこういうことになっているんじゃないかと思います。ひとつそういう考え方で、ぜひこの環境産業革命をお進めいただければありがたいと思います。
 以上でございます。

○西岡委員長 安井委員、お願いします。

○安井委員 ありがとうございました。
 まず亀山さんのお話を伺って、ちょっと感想を述べさせていただいて質問を1つ。
 この話、本当に非常に難しくて、いろいろとトレードオフがあったり、いろいろな関係がある指標をうまくまとめていこうとか、その点のアプローチを伺っていて、私も前やっていたライフサイクルアセスメント、LCAの世界、あれの統合指標というのをやろうと思って大失敗しているわけです、LCAというのはね。結局不可能なんですよ。ですから、これは多分そういう方向には行かないかなという気がしてしまいました。
 質問は何かと申しますと、今の個人的な意見を伺いたいということなんですけれども、国連の枠組みが、今国際的な枠組みといったほうがいいかもしれませんけれども、WTOに見られるように、ほとんどまとめ役として機能を果たさなくなるというのはどうも歴史的方向性だと思われるんですよ。そうなってくると、UNFCCCもそんな感じかなという気がすると、そのWTOではFTA的な交渉に行った。そうすると、もうこれも機構も多分バイラテラルになるに決まっているんじゃないかという気がするんです、二国間交渉になるんじゃないか。そうなったときに、この衡平性という議論はどのように行われるのでしょうかというのが質問でございます。
 それから、技術同友会さんのほうもありがとうございました。
 ほかの方はこれで明るい気持ちになられるそうですけれども、私はかえって暗い気持ちになったんですけれども、質問がまず1つございます。
 もしこれが実現したらば、国内の雇用及び賃金はどうなるか。そこのところは多分検討されていないんじゃないかという気がするということでございます。何でそんな余り明るい気持ちにならないかといいますと、1つは日本がやはり競争力を失っていく過程で幾つかのことがあるんですけれども、1つは商品で言いますとオンリーワン商品みたいなものがなくなった。昔は余り大きな市場ではないにしても、例えば半導体のステッパーとか、あるいは分析機器なんかで、日本が要するに最先端のオンリーワンの商品というのをつくっていた。ところが、最近それがなくなってしまった。NMRとか電子顕微鏡とかそういうものも大分また追いついて復活しつつありますけれども、なぜそれができないかというと、やはり日本国内で5台しか売れないような商品というものはつくらないという経営者のリスクを冒さないマインド、これが大きかったと思うんですよね。要するに、日本国内で600台ぐらい売れない商品って日本はつくらなくなっちゃったんですよ。ところが、そういう商品というのは本当にオンリーワンじゃないものですから、基礎競争力は失う。
 もう一個は、韓国の話がよく言われますけれども、このシナリオの中でやっぱりマスマーケットへの参入をお考えのようなんですけれども、もしもマスマーケットへの参入をお考えであると、企業はやっぱりオンリーワンかオンリーツーでないとやっていけない。要するに、日本国内が1つか2つの企業にならないと多分やっていけない。要するに、非常に大規模な投資を非常にリスクを冒したデシジョンをやって、ごんとやるという、そういう格好じゃなければやっていけないと思うんですね。
 要するに、韓国は大統領制でもありますが、大統領制的な産業構造をつくった。ところが日本は相変わらず幕藩的な産業構造のままずっと来ていて、それで隣の藩と何か内部摩擦をごちょごちょやっちゃ、エネルギーを失っていると。そういう体制をずっと続けているんですね。ですから、日本の産業構造そのものにかなりのメスを入れない限り、お書きになっていることは実現できないんじゃないかという気がするという、その2つの点で余り明るい気持ちになれませんでした。
 このまま行きますと、やっぱり韓国も実を言いますとご存じのように弱小財閥がどんどんぶっつぶれたのは1997年のIMF危機なんですよね。結局デフォルト寸前までいって、それでもウォンががたっと落っこっちゃって、もう雇用も何もないような状況になって、今の韓国ができているわけです。ですから、このまま行ったらあと10年で多分日本もそうなるでしょうけれども、そこまでとにかく今のまま、とにかく国債を出し続けるというのをやったほうが実は回復が早いのかな、みたいな気もするというのがちょっと余り明るくなれない、そんな感じでございます。

○西岡委員長 お二方、ちょっと短目にお願いします。
 どうぞ、北原さん。

○北原説明員 まず、亀山先生、それから技術同友会の皆様、貴重なご報告ありがとうございました。
 私からは2点です。
 亀山先生のご報告にありますいわゆる新型クレジットというものについてと、同友会のご報告に関連いたしまして、技術開発について、2点コメントをさせていただきたいと思います。
 まず、新型クレジットにつきまして、これを考える場合には、低炭素社会に貢献する製品、あるいは技術というものがありますが、こういったものが世界で普及していくということが大事であると思いますので、BAUを下げるという、そういった技術であることをしっかり評価した上でクレジットにするということが前提になると考えております。
 もう一点、技術開発については、先日地球環境部会があり、今後この委員会でも2050年に向けたCOの削減の方向性について検討が進められていくという認識をしたわけですが、我々産業界も、従来より温暖化問題を長期的かつ地球規模の課題としてとらえるべきということを主張しており、その一つの考え方として、産業界では2050年における世界の温室効果ガスの排出量を半減するという目標に向かって、日本の産業界が技術力で中核的な役割を果たすということを共通のビジョンとして掲げております。
 やはり2050年に向けて我が国が大幅な削減目標を掲げた場合、その実現の鍵は革新的な技術開発と考えております。しかしながら、技術開発の時間軸というものを考慮していただくということをぜひお願いしたいと考えております。
 例えば、新しく開発された効率の高い最新鋭の発電所があったとして、それを新たに導入することを考えますと、計画からアセスメント等の手続、建設、運転開始ということで、導入までに10年以上要することもあります。
 また、隣にトヨタさんがおられる中で大変僭越ですが、車の技術革新といいましても、普通の車で5年に1度ぐらいしかモデルチェンジされないということなので、10年間で市場に出回る車を大幅に革新するというのは大変難しいと考えております。さらに革新的な技術を戦略的に開発しようという場合、その費用の回収について裏づけがなければ、企業はなかなか先行投資に踏み切れるものではないと考えます。
 したがいまして、2050年という1つのターゲットが今回示された中で、2020年の目標の位置づけについても、今一度、その現実性や、国民負担の時間軸という観点から、議論を進めることが重要ではないかと考えております。
 まさに2020年の目標達成ありきということで、企業の技術開発の原資が奪われ、長期的な温暖化防止に向けた日本の技術開発が阻害されることがないように、そのようなロードマップを今後示していくことが必要ではないかと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

○西岡委員長 大野説明員、お願いします。

○大野説明員 まず技術同友会さんに1つ最初に質問させていただきます。
 大変わかりやすいご提言で、ありがとうございました。
 今伺っているときに車とか電気製品のような最終消費者向けの商品を頭に描いてお聞きすると大変よく理解できたんですけれども、例えば素材とか電気部品とか、あるいはインフラとか、そういう最終商品を支えているような技術とかいうのを頭に置くとちょっとよくわからなくて、それがご提言の範疇に入っているならば、どういう形で入るかというのをまた教えていただけるとありがたいと思います。
 それから、2番目に亀山さんのほうなんですけれども、2点ございまして、1点目は質問なんですが、8ページ目なんですけれども、一つ一つの指標じゃ衡平性が保てないので、複合指標化が試みられているということなんですが、この8ページ目の例えば4つある複合指標化というのは、私は余りよく知らないものですから、みんな意見が違うならみんなぶち込んで最大公約数にしようというふうに見えるんですが、そういうことなのか。あるいはもっと深い意味があるのか、その辺を教えていただければと思います。
 それから、最後に亀山さんのところの4ページ目でございますけれども、これは私の意見でございますが、4ページ目の上のほうに制度評価のための指標という言葉がありまして、私はここは非常に重要なところだと思っておりまして、今日のようないわゆる概念的なコンセプトの議論はまだいいんですが、実際にこういうことを検証したりやり始めたときというのは、日本はまだいいですけれども、発展途上国なんか全然統計がなくて、何がどのぐらいCOを出していて、どうすればどのぐらい減るかなんていう定量的な議論が実際は全くできない状況じゃないかと思っているんで、これは概念論で終わらせないで具体的にどんどん進めようとすると、2050年まで議論しているんですから、例えば国連あたりでもうちょっと各国の統計を整備して見えるようにしようじゃないかという、そういう運動も必要なんじゃないかなという気がいたします。
 以上です。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 ちょっと時間が押してしまいました。

○冨田委員 最後になってしまいましたけれども、簡単にいきたいと思います。
 まず亀山さんのご説明ありがとうございました。いろいろわからないところが、整理ができたと思います。
 1つは感想ですが、4ページ目の制度の評価指標というところで、地球規模の削減がいかにできるかというところをそれぞれの指標にしているというところは、全くそのとおりだというふうに思いました。
 衡平性のところですけれども、私は、この指標というのは非常に大事だと思うんですね。というのは、実際に排出削減に取り組むのは生活者であったり、あるいは企業ということですが、そういう人たちがいかに納得するかというところが大事だと思うんです。すなわち、取り組む上では何らかの負担、例えば金銭的なものであるとか、あるいはライフスタイルを見直すだとか、これまでやってきた活動、行動を変えなくてはいけないと。すなわち価値観を変えるというところにいかにつながるかと。価値観を変えるときに納得できないことで変えられるかというところがあると思うんです。地球温暖化という問題の性格からして、自分がやったことのメリットを自分自身は享受できないということがあると思うんですが、したがってなおさらその衡平性のところ、納得感というところが非常に大事だというふうに思います。
 これは枝廣さんもご指摘されたところですけれども、昨年の3月、ワークショップで日本はどういう主張をしたのかというところがもしわかったら教えていただければと思います。
 それから、資料1のところですが、地球環境部会のご意見の中で、2050年80%削減ということについても見据えてくださいという意見がありました。確かに中長期のロードマップですから、2050年見なくてはいけないのかもしれませんが、これはワーキンググループの方々にお聞きしたほうがいいのかもしれませんけれども、議論に耐えるような見通しができるのだろうかというところをちょっとどなたかからコメントいただければ幸いです。
 以上です。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 すみません、先ほどちょっと言いかけましたけれども、時間が押しておりますが、しかしこれだけの質問が出てきておりますので、その範囲できちんと答えていただければと思います。
 どうぞ、亀山さんのほうからお願いします。

○亀山国立環境研究所主任研究員 たくさんのコメント、ご質問、本当にどうもありがとうございました。
 本当に手短にしかお答えできませんが、かいつまんで補足させていただきたいと思います。
 まず、枝廣先生からのご質問ですけれども、限界削減費用という指標は複合化した指標のうちの一つであることは非常に多いんですけれども、もともとの単一指標として提示されているのだけ見ると、恐らく日本だけではないかと思います。
 3つ理由がありまして、1つは共通ではあるが差異のある責任という原則論が条約にも入っておりますが、そこに含まれている衡平性の精神というのは責任、つまり1人当たりのCOではかられる部分と応能負担、つまり1人当たりGDPではかられる部分で構成されているというふうに理論的には説明される部分が多く、ほとんどの途上国はこの2つをもって衡平性の原則だと言いますし、2つ目の理由としてはアメリカですが、アメリカはそもそもこの配分の問題というのは全体のパイの大きさが決まっていないと出てこない議論なんですね。アメリカの多くはこのパイ自体を余り意識していないものですから、余りequityの話は出てこないんですね。なので、アメリカが余りequityの議論に参加していないというのがあります。
 3つ目としては、スライドで実は今日お話しできなかったんですが、4ページ目のスライドの費用効果性の赤い四角の真ん中よりちょっと下のほうで、排出量取引制度の活用というのが書いてあります。排出量取引制度がない世界だとすべての削減をその国の真水でやらないといけないですから、ある程度費用効果性も配分の中に入ってこなければいけないんですが、排出権取引をもし全面的に導入できた場合には、少なくとも理論上はどこで削減するかと、誰がそれを負担するかを完全に分離することができるということになりますので、この制度が京都議定書で導入された以降は、ほとんどの国がすべてを真水でやらないという前提のもとに、衡平性の議論と費用効果性の議論を分けてやっております。ですので、分けていない議論をしているのは日本だけであります。
 それから、増井からの質問ですけれども、モデルの使われ方というのは恐らく衡平性の議論とほぼ同じで、つまり自分にとって一番有利なモデルを使って説明していると、残念ながら、ということではないかと思いますが、それをどう克服するかという議論もやはり衡平性と似た点があって、いろいろな研究をいろいろ比較してみて、モデルの構造は何が違うのかというのを見ておいて、それでその相場観というのをつかむためにモデルというのも使うんじゃないかなと思うんですよね。
 今相場観というふうに申し上げましたけれども、村上先生、あるいは安井先生からのご質問に移りますけれども、やはり国際交渉で交渉しようとしているのは、どの衡平性指標を使おうかということを交渉しているわけではなくてあくまでも数字を議論していますから、どの指標を使うかについて合意する必要はないんですね。
 それで、京都議定書の交渉のときも私も実際参加しておりましたけれども、指標の議論をするというのはあくまで最終的な数字が出てきたときにみんなが納得する、納得感を醸成するための過程で使われるものであって、最終的に総合指標みたいなのをぼんと大きなものを打ち出すということではないのではないかと思います。
 安井先生の後半の議論にあった貿易問題と気候変動との関連ですが、2つの問題、よく似ているというふうに例示されますが、大きな違いは貿易問題は特に2国間の貿易がうまくいかなくても外に何の副作用もないですが、気候変動の場合は交渉が延期すれば延期するほどどんどんあったまっていっちゃうという影響の部分があるわけですよね。そういう影響がないのとあるのが貿易問題と気候変動交渉との大きな違いだと思います。
 ただし、交渉の現状を見ていますと、トップダウンの制度からボトムアップの制度に今大きく振り子が動いているというご指摘はそのとおりでありまして、国際政治を見ている専門家の関心事というのは、その振り子がまた戻ってくる可能性があるか。これは恐らく三、四年かかると思いますが、ボトムアップでやってみて、みんな好きなことをあっちこっちでやって、でもやっぱり減らないねとなったときに、もう一回トップダウンの動きが出てくるかどうかというのがむしろ注目点ではないかと思われます。
 最後、大野先生からのご質問ですけれども、複合指標、いろいろあっちこっちくっつけただけではないかというご指摘ですが、できるだけ複合指標の中でも責任能力と実行性という、この3つの分類の中からうまく引っ張ってくるような工夫をしている複合化指標が多うございます。また、その途上国のデータにつきましては、アメリカがむしろ主張している部分でございまして、この前のコペンハーゲンでもアメリカが主張していたのはMRV、つまり透明性を高めて測定して報告してベリファイする、このプロセスをまず固めようじゃないかということになっておりますので、まさにおっしゃるとおりだと思います。
 以上でございます。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 それじゃ、どうぞ。

○櫛木技術同友会製造業委員長 非常に多くのご意見、ご指摘をいただきまして、本当にありがとうございました。私ども非常に短期間で議論してきたものですから、尽くせない部分が随分あったということを反省しながらも、意見を披瀝させていただいた次第でございます。
 どなたというよりも、問題をちょっと整理しながらお答えをさせていただきたいんですけれども、対象とした産業がどういうものなのかというご指摘がございました。電気、車中心になっているんじゃないかと。素材、インフラが抜けている、どうだと。それから、裾野分野はどの程度のものがあるのかと、非製造業との関係はどうなのかということでございましたが、素材までは入って議論したつもりでございます。随分製鉄関係の問題もこの中で議論をされました。
 インフラにつきましては、今回紹介させていただいたような環境モデル都市、あそこでやられているさまざまなインフラ、水処理が入った北九州であった廃棄物も入っています。それから車のシステムが豊田市ですし、横浜はそれをもう少し都市システムとしてのスマートグリッドも含めたものですし、車も入っていますし、「けいはんな」は個人のスマートグリッド的要求に対してどうするかとか、いろいろなことありますので、そういうものが一つのインフラとしてのモデルであろうなというベースに立って考えはいたしました。
 そこで大事なことは、先ほどの海外で成功しているという、成功といいますか、売り上げが大きいというのは、統計数字的にいっても、自動車、電気、それから精密機器というそれの工作機械というのがやっぱり圧倒的に大きいんですね、事業規模的に。特に海外売上比率も含めて。だから、そこはそこでもっとうんと強くなっていかないといけないし、そこが中心になりながらも周りの産業が引っ張っていくという形が絶対あるべきだと。
 それは議論ですけれども、そのときに素材としても日本が相当大きなシェアを持っている、世界シェアを持っている産業を育ててきていると。そこをさらにそういう関係のもとに強みをつくっていかないといけないという観点に立って分析をした次第でございます。したがって、ややモデルをそういうふうにケーススタディー的に絞ってはいますので、もっとほかの分野については、では衣料品はどうなのかというふうなこと、特にヘルスケアの問題なんかは議論できていませんので、不十分だというふうに思っております。
 したがいまして、大事なことはそれらの体系をシステムとしてとらまえるということが、やはり日本の場合の大きな弱点として挙がっているのではないかというふうに考えております。システムとしてとらまえるときに、かたいシステムではなくて、ご指摘もございましたシスコのルーターの技術がいい加減なものがだんだんまともになっていった、そういうものも受け入れるべきではないかというご指摘がございましたけれども、柔らかなシステムづくり、またそれを支えるプロセス、仕組み、検証があって、それを入れかえていくという、そのプロセスそのものを極めて重要視しないと、これからはシステムを構築していくことはできないというふうに思っております。
 そのプロセスというのは、ものづくりのプロセスというだけではなくて、検証があって認証があって、それを改善することがちゃんとやれているかということを含むプロセス。ISOが最近やり出しているマネジメントプロセス、こういうものを入れていって常に改良に向かうということが極めて重要であるという思いを持ちながら、そこは十分に書き切れていない分野でございます。
 それから、技術的にもご指摘ございました日本に技術がかなりあるんだけれども、何が欠けているのかといったときに、そういうプロセスをうまく政治及び政策の仕組みにまとめ上げていく力はまだまだ弱いというふうに感じておりまして、それは欠けている大きな問題ではないかというふうにも思っております。日本でもそれに類したものは私どもの関係ではトップランナー方式とか、あれも年2回データを出して競争をやりますし、またその中で仕組みも変えていくという形もやっておりますし、エコポイントにしても補助金制度にしても、仕組みと一体となった形でテクノロジーと炭酸ガス削減を進めていっているという部分のアイデアづくりというのはやはり弱いなと。
 私も先ほどのIECのEEEをまとめる15人の世界の委員の一人でやってきたんですけれども、ヨーロッパはそこが強いですね。常にIEAとも議論し、そういう炭酸ガス削減とエネルギー効率と電気と熱とほかの化石燃料との関係づけというのは極めてうまく分析しながらも、うまく商品及びシステムに結びつける工夫を常にやっているというのはうまいなと。
 アメリカは情報型で、情報システムで何とかやっていこうという形できます。
 日本は要素技術には強いと思います。かなり要素技術の重要性は入れ込んだつもりですけれども、そういう要素技術がやはり一本釣りで、要素技術だけ買われていくということでは日本の成長にはつながらないと。その要素技術がキーになって環境産業革命に至るイノベーションを起こして、システムにしても都市にしても、それから根づくものに、制度にしても、それを新しく革新を起こすようなイノベーティブな技術になっているというシステムの定義づけと、それが改良されていくマネジメントプロセス、これがやはり日本のこれから強化すべき最大のポイントではないかというふうに思っている次第であります。
 また、そのためにはいろいろな問題があって、ユニバーサリティーが不足ではないかとか、技術標準の背景には専門家の知恵がもっと入るべきだということとか、産業構造が変わらないといけないのではないかというご指摘ございまして、全くそのとおりだというふうに思います。
 環境産業革命というのはやはり機器でも材料からシステム構成から今大きく変えていっていますので、社会システムも変わっていくとなると、当然産業構造も変わらざるを得ないはずなんだと。しかしそれをじゃ具体的にどうするのかといったときに、企業、企業の間にすごく簡単に早いスピードでM&Aにしろ何にしろ変革は起きるのは難しいと。そこで、先ほどのような先進的なモデル都市の中で行われる異業種間連携というものが小規模の中でしっかりお互いの足元を見つめて、小さく生みながらそのモデルを検証し、新しい関係づくりをそこで検証すると。その中にはやはり独禁法でどうのこうのとかいうようなことは枠をとらないと進んでいかないと。規制をそこは取っ払ってやらないといけないと。
 だから、新しい産業構造が新しく向かう芽というのは、新しいモデル都市なりモデルシステムをつくるときに必ず何かお互いに話し合いがされているわけで、それを本当に進化させて産業構造の変革までつなげていったときに、初めて本当のマザー基地たるものができるのであって、世界がまたマザー工場的な日本のポジションがつくれるのであってというふうに思う次第であります。
 それが一発終わって終わりというのは全くだめで、それは今までも何回も繰り返してきた失敗ですので、私どもを含めて猛反省しながら一発で終わらないように、法制度も、またそこにお住まいになる方々のお客様としての本当の価値観というところまで密着して、繰り返し繰り返し改善をして、そして政治自治体の中の活動の中にも埋め込んでいって、そこが海外とも交流するんだという形を考えていったつもりでございますが、まだまだこれは踏み込んだばかりですので、非常に大きな重い課題という認識をしております。
 今日は本当にいろいろなご指摘ありがとうございます。十分には答えられていませんが。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 時間が不足でまだ幾つかお聞きしたいこともあるかと思いますけれども、この議論はこれで終わりたいと思います。
 最後に冨田委員のほうから、2050年の目標まで一体検討できるということで進んでいるのかという話もございました。全体の流れといたしまして、2050年という40年の長さというのは、だんだんそれに不確実性が加わってくるのは当然なことだと思っております。しかしながら、この問題は長期的にはいずれは解決しなければいけない、それから2050年までに半分ぐらいにしなければいけないという概ねの合意がございますので、そのあたりは非常に漠然とはしているけれども、ある程度の未来を想像していただいて、その中で例えば2020年、2030年の間に何をしていかなければいけないかとを考えているのでございます。これは今やらないとずっと先につけがどんどんたまっていく。まずそういう形で、今の一歩をどう見るかということで2020年。さらにおっしゃるとおり、2030年ぐらいの距離も考えること要るかもしれません。お互いにそれぞれを見比べながら順次こうやっていくという、言ってみれば見直しを繰り返しながらのローリングの形をとっていく。
 その間に気候のほうもこのままでいきますとどんどん変わっていきます。それから、どういう対応ができるかも変わっていきますから、その間を調整とりながら政策をステップワイズに打っていくというのが全体の政策のプロセスではないか。その中で、今我々はまず2020年に向けて、30年遠くを見ながら、どっちのほうに行くかという最初の一歩を設計しているのだと考えています。あまり時間もございませんが、もし一言であったら。

○藤野委員 私も地球部会の議論も聞いていたんですが、もっとマクロフレームをいろいろ考えてみたらいいんじゃないかというご提案をいただいたと思います。今マクロフレームワーキンググループというのが4月というか、実際には7月ぐらいから安井先生が座長で始まっておりますので、そこで幅広にどういう未来があり得るのか。多分シナリオというのはイマジネーションがやはり大事で、事実に基づくというのもありますけれども、じゃ誰が1970年代のときから2010年の今の姿を正確に予想できたのかというのはありますので、しかし準備はしないといけませんので、そういったかなりチャレンジングな分析というか研究というか、そういうことを進めていければと思っています。
 以上です。
 ○西岡委員長
 あと1題残っているので次へ進みます。これは藤野委員のほうから短くお願いします。

○藤野委員 参考資料2をご覧ください。
 参考資料3に枝廣委員のご指摘もあったんですけれども、あと前回途中経過、試算の見直しの途中経過をご報告したんですが、若干回答に不備というか十分でなかったところがありましたので、回答案をこのように作成しました。
 1番目のところがヒートポンプに関する想定に関するご指摘についてです。
 効率等については可能な限り文献調査をして、実使用のものに近い、つまりカタログ値に対して6割とか9割とか、そういった実効効率を見てやっています。こちらのほうはもっとデータがあれば随時改善していきたいと思います。
 使用時間につきましては、我々は消費量全体で扱っておりますので、使用時間は推計には含めていません。村上先生の住宅建築物ワーキンググループなりほかのそういう情報があれば、随時今後ブラッシュアップできる可能性があるかもしれません。
 冷媒につきましては、別途大体フロン等のところは計上して検討していますけれども、対策としてはまだ見込んでいません。こちらのほうはたしか中環審のほうでもフロンのほうを検討されていますので、そういった結果も見ながら組み込めるところは組み込みたいと思います。
 また、前回のことにつきまして、冨田委員のほうから天然ガス転換なり燃料電池、どういう扱いをもともとしていたのかということなんですが、1番目につきましては、現状のままの扱いを実はしていました。それをもう少しできる可能性があるというご指摘がエネルギー基本計画のほうにありましたので、反映させました。
 燃料電池につきましては、高効率給湯器の内数として平均効率で扱っておりました。
 また3番目、牛久保先生のほうからご指摘いただいた農業分野の活動量につきましては、2020年度まではこちらにお示ししましたような資料と、あと生産目標のものを使いながら、あとトレンドを考慮して外挿してやっておったんですが、2021年以降につきましては、人口減少だったり作付面積、飼料、頭数とも減少によりそちらも減るというような予想をしていますが、今農水省のほうでもこちらのほうは見直しが進められているという話も聞いておりますので、それを踏まえたり、また牛久保先生のほうからこうしたほうがいいのではないかということがもしアドバイスいただけるようでしたら、こちらのほうも更新していければと思っています。
 最後4番目、今後の試算ですけれども、今各ワーキンググループで、また非常に大変な作業をされていて見直しをされています。そちらのほうを含めながら、整合性がとれた試算というものを示していきたいというふうに考えております。
 以上です。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 事務局のほうから何かありますか。どうぞ。ちょっと待ってください。
 村上委員、お願いします。

○村上委員 この枝廣先生のご指摘、ごもっともでございまして、既に住宅ワーキングでは踏まえて議論しております。1つだけいわゆるフロン系の冷媒の漏れはデータがまだ十分なくて、これは例えば断熱材でもフロン系の発泡剤を使った断熱材は、あれを使って断熱すればするほど漏えいによって地球温暖化を推進するというような結果もございまして、今どこのワーキングでやるかちょっとご検討いただいたほうがいいかもわからないですね、フロンの漏えいの問題は。
 以上でございます。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 枝廣委員。

○枝廣委員 ありがとうございます。
 フロンとこのエアコンの関係のお返事をいただいて、少しはっきりしたかなと思います。
 この省エネ型エアコンは税金を使ってのエコポイントがついていますし、果たして、政府が推奨してそう言われて買ったけれども、それが本当にどうだったんだろうという、そういった国民の側の信頼性を損なう可能性もある問題だと思うので、これからちゃんと情報も開示して、きちっと説明責任を果たして、私たちが安心して国が推奨するものを低炭素行動として採用できるようにと思っています。
 あともう一つ、別件ですが、私のところで進めているコミュニケーション・マーケティングのワーキンググループのほうで、いろいろな例えばこのロードマップに書いてあるような機器の買いかえであるとか、それ以外のものも含めて低炭素行動に対する実態と、それから何があって行動を変えたかという、そのあたりの調査を始めようと思っています。
 既に伴先生とか村上先生のところでもいろいろそういった実態調査などされているように聞いているので、情報交換ができれば、いろいろ教えていただければと思っていますので、よろしくお願いします。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 ほかによろしゅうございますか。
 それでは、議事を一旦終わりまして、事務局のほうから何かご案内があれば。

○地球温暖化対策課長 今後の予定について一言申し上げます。
 先日の3日の地球環境部会におきまして、鈴木部会長のほうから、今このロードマップとそれから排出量取引制度と2つの小委員会が動いておりますけれども、それぞれの小委員会からさらに報告をもらった上で部会として年内を目途に意見具申を取りまとめたいというお話がございました。
 そういう状況も受けまして、この中長期ロードマップ小委員会といたしましては、今ちょっとお話も出ておりましたけれども、今幾つかのワーキンググループでいろいろ詰めていただいておりますけれども、9月中に各ワーキンググループからの経過を報告いただくということにさせていただきたいと思います。それを踏まえて10月末、あるいは11月初めぐらいを目途にこの小委員会としての議論を整理していきたいと、そういう大まかなスケジュールで考えております。したがいまして、この小委員会しばらくお休みいただきまして、9月になりましたら、各ワーキンググループの報告をいただくというところからまた議論を始めたいと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。

○西岡委員長 どうもありがとうございました。
 亀山さん、それから櫛木さん、どうもありがとうございました。
 それでは、本日の議事はこれで終わりたいと思います。
 どうもご苦労さまでした。

午後12時22分 閉会