国内排出量取引制度小委員会(第15回)議事録

日時

平成22年11月9日(月)13:00~16:00

場所

ホテルフロラシオン青山 孔雀の間

議事次第

  1. 1 開会
  2. 2 議題
    1. (1)国内外での排出削減に貢献する製品への配慮
    2. (2)国際競争力への影響及びその結果としての炭素リーケージへの配慮
    3. (3)国と地方の関係
    4. (4)その他
  3. 3 閉会

配付資料

資料1 国内外での排出削減に貢献する製品への配慮
資料2 国際競争力への影響及びその結果としての炭素リーケージへの配慮
資料3 国と地方の関係
参考資料1 中央環境審議会地球環境部会国内排出量取引制度小委員会の今後の予定
参考資料2 排出削減活動におけるLCA的視点の重要性について
(影山委員提出資料)
参考資料3 第13回及び第14回国内排出量取引制度小委員会の議論に対する意見
(影山委員、岡山説明員(笹之内委員代理)、冨田委員提出資料)

午後1時00分 開会

○上田市場メカニズム室長 それでは、定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会地球環境部会国内排出量取引制度小委員会第15回会合を開始いたします。
 前回に引き続き、個別論点の方針(案)についてご議論いただきたいと思っております。
 本日は、委員総数14名中過半数の委員にご出席をいただいておりますので、定足数に達しております。
 本日は末吉委員、増井委員はご欠席でございます。また、笹之内委員はご欠席で、説明員としてトヨタ自動車の岡山様にご出席いただいております。
 本日の審議は公開とさせていただきます。
 以降の議事進行は植田委員長にお願いいたします。

○植田委員長 それでは議事を進めさせていただきます。
 それでは、事務局からまず配付資料の確認をお願いします。

○上田市場メカニズム室長 お手元の議事次第の下に配付資料がございますのでご覧ください。資料1から資料3まで、今回の議題に沿って使わせていただきたいと思います。あわせて参考資料として1、今後の予定、参考資料2としてLCA的視点の重要性について、影山委員からご提出の資料でございます。参考資料の3としまして、影山委員、岡山説明委員、冨田委員から提出の第13回と第14回の本委員会の議論に対する意見としていただいております。これは、前回、各委員からご意見がございましたら事務局のほうへ後刻提出くださいと言ったものについて紙で提出いただいたものですので、参考までに添付させていただきました。
 以上でございます。

○植田委員長 よろしゅうございますか。
 それでは、早速議事に入ります。前回までと同様で、論点ごとに進めたいと思います。まず事務局から資料の説明をお願いした後、ご議論いただくということで、資料1、国内外での排出削減に貢献する製品への配慮について、事務局より説明をお願いします。

○河村補佐 それでは、資料1につきまして説明させていただきます。国内外での排出削減に貢献する製品への配慮ということでございます。
 まず、検討課題でございますけれども、使用段階での排出削減効果が高い製品を中心に、排出削減効果をライフサイクルで評価して、こうした製品の製造が制度の導入で阻害されることのないようにするために、国内外での排出削減に貢献する製品の製造をする事業者への配慮の方法について検討が必要であるということでございます。
 その配慮を行うことの必要性、製品の特定の考え方、配慮の具体的な内容につきまして、以下検討してまいります。
 [1]の必要性でございますけれども、国内排出量取引制度によって排出枠が設定されますと、成長産業の成長を阻害するとのご指摘をいただいておりますけれども、排出量削減が求められる制度のもとでは長期的に見ますと、このような省エネ製品等の価値というのは市場でより高く評価されることになりますので、製造事業者はそれらを販売することで利益を上げ、排出削減のコストあるいは排出枠の購入コストを回収できるというふうに考えられます。
 その一方、そのような製品の一部というのは、製造時のCO2排出量が従来型の製品のCO2排出量よりも大きいことがありまして、このため排出枠が設定されますと、短期的にはこのように製造時のCO2排出量の大きい製品の製造が不利になり、その製造が抑制されるとの指摘をいただいております。
 この場合、使用段階での排出削減効果が高い製品を中心に、排出削減効果をライフサイクルで評価して、製造企業の貢献として評価すべきとの意見があったところでございます。
 諸外国にはこのような配慮措置は行われておりませんけれども、我が国では従来からこうしたすぐれた製品が数多く開発され、国内外でも普及されております。こうした取組が制度の導入後も積極的に促進すべきであると、そのことが社会全体での排出削減の促進、費用の低減の両面から見て望ましいものであるということでございます。
 その場合でありましても、具体的に貢献分をどのように評価するかと、そしてそれをどのように配慮するかということにつきまして、以下検討してまいります。
 国内外での排出削減に貢献する製品を特定する方法でございますけれども、そもそもこの制度の役割が国内の排出量を着実に削減していくということを目指していることを踏まえますと、対象となる製品というのは実質的な排出削減効果があることを示すことができなければならないというふうに考えられます。このため、素材とか中間製品につきましては、最終製品の形に組み込まれて購入者に使用されて初めて排出削減の効果が発現するということでございますので、使用されて初めて排出削減の効果が発現すると、この段階での効果に着目することが適当ではないかと思われます。
 使用段階で何らかの効果が認められるすべての最終製品を対象とするのかという点につきましては、国内排出量取引制度の導入によって製品の製造が阻害される可能性のあるもの、これに限定してよいのではないかと考えられます。そうなりますと、機能面で代替可能な同種の製品に比べて、使用時の排出が相当程度少なく、または排出を相当程度効果的に抑制できる最終製品を対象とすることが考えられます。前者の相当程度排出が少ないものとして高効率の家電または自動車、効果的に抑制できる最終製品といたしまして高性能太陽電池パネルなどが対象となり得るというふうに考えられます。
 [3]番、使用段階で発生する排出削減の効果をカウントし、配慮する方法でございますけれども、この特定された製品の事業者への配慮の方法といたしまして、使用段階で発生する削減効果を定量化してクレジットを交付するという方法が考えられるわけでございます。そして、通常、クレジット化のためには実質的な削減を立証しなければいけないということで、計画書を作成や、審査、登録、モニタリング、認証などの手続が必要となってまいります。ここで、あらかじめ1台当たりの削減量を算定することが可能なものにつきましては、その貢献度に生産量を掛けて使用段階の削減量を推計するということで、その手間を軽減するということも考えられますけれども、こうして簡略化してしまいますと、最終製品の使用者の購入・使用の状況、これが把握できないということでございます。例えば自動車ですと、エコドライブのように使用者の運転管理の工夫によって排出削減効果が発揮されるようなものもありますし、そうした工夫がなければ削減効果が発揮されないという場合もございます。そのような技術的な問題に加えまして、そもそも排出削減効果は誰に帰属するべきなのかということの整理も必要でございます。
 現行、例えば燃費のよい自動車を運輸部門で使用しますと、その削減効果というのは自動車を取得した運輸部門にカウントされます。高効率の家電が家庭に導入されて使用されますと、その排出削減効果は家庭部門にカウントされます。このように、使用者の貢献分ですとか使用者の属する部門の排出削減の反映などの考え方と整合性をとらずに、すべてを事業者のクレジットとすることにつきましては慎重に考えなければならないと思われます。
 そして、そこで使用段階での貢献度を用いて事業者に配慮するために一定の割り切りを行う必要があるということで、例えばそうした使用者の使用方法、あるいは使用者の属する部門への反映などを考えまして、一定の係数を掛けて割り引いた上でクレジットを交付するという方法が考えられるわけでございます。
 ところが、排出削減の効果というのは使用年数、利用状況、メンテナンスの度合い等により変化いたしますので、これには不確定要素が大きいと、一定の値を定めるのも困難な点が多いということでございます。
 このように、排出削減効果をクレジットとして交付する場合に、実質的な削減量を算定するということ、そしてそのクレジットを誰に帰属させるかということ、これらについて個別に判断してまいりますと、不確定要素の大きい方法を用いることになりますし、そこで制度間の公平性あるいは実質的排出削減を促進する観点からも問題があるのではないかということでございます。
 そして、さらに製造段階の排出量が相対的に小さくて、使用段階の排出削減効果が大きい製品につきましては、割引の程度を相当高くしなければ過大な排出枠が交付されるおそれもあるということでございます。その場合、割引を求めるにいたしましても、関係者の合意形成を得るのは非常に難しいのではないかと、そもそもこれが制度の趣旨に照らして適切なのかという指摘も生じるところでございます。
 そこで、[4]といたしまして、製造段階のCO2排出量の差分に着目して配慮する方法というのを検討してございます。製造事業者にとって問題になりますのは、使用段階での排出削減効果はすぐれていますけれども、製造段階のCO2排出量が従来製品に比べて大きい場合に排出枠が設定されると不利になるという製造に係る影響でございまして、これに配慮するためには、排出削効果のすぐれている製品を特定した上で、従来製品と比較して製造時の排出量の増加分を見まして、これに相当する排出枠を追加交付するということが考えられるのではないかということでございます。こうした考え方であれば、さきに述べた使用段階のクレジット交付における課題のうち多くの部分がクリアできるのではないかというふうに考えられます。
 そこで、方針(案)といたしましましては、国内外での排出削減に貢献する製品を製造する事業者の配慮といたしまして、当該製品を機能面で代替可能な同種の製品に比べて使用時の排出量が相当少なく、または排出を相当程度効果的に抑制できる最終製品という考え方で特定いたしまして、その製品の製造段階において従来製品よりも排出量が増える場合に、その差分に着目して排出枠の追加交付を行うことにより配慮する方向で検討することとするというふうにしてございます。
 説明は以上でございます。

○植田委員長 ありがとうございました。
 この点に関しまして、影山委員から参考資料2にある排出削減活動におけるLCA的視点の重要性についてという意見書が提出されておりますので、ご説明いただけますでしょうか。

○影山委員 申し訳ありません。
 それでは、私の提出しました排出削減活動におけるLCA的視点の重要性についてという資料をお願いいたします。
 これは、今ご説明された中にもありましたけれども、従来から申しております、多分一番日本の産業にとっては大事だと思われますLCA視点について繰り返し、ヒアリングも含めて申し上げてきたわけでございますけれども、それについてしっかりしたデータというもので示してほしいというのと、それから中には何を言っているのかわからないといって、どういうことを言っているのかわからないという方もおられましたので、裏のほうにポンチ絵で、大変失礼で、釈迦に説法みたいな資料がございますが、それも含めてご説明させていただきます。
 1番、表紙のほうをお願いいたします。四角で囲ったところでございますけれども、今ご説明がありましたように、低炭素型製品の生産・普及によって、ものづくり、生産段階のほうの排出量が増加するけれども、それ以上に消費段階、使う段階のほうで排出量が減るという、そういうことで国内あるいは国外の排出削減に貢献するような、そういう製品の製造あるいは使用があるということでございます。
 このような製品をつくる企業の生産段階へもしキャップを設定した場合には、これは生産が制限されてしまえば、それ以上生産できないということになりますが、排出枠の購入など、そういうことで生産した場合でも追加コストがかかりますので、製品価格の上昇ということにつながりまして、そうしますとその製品の普及が阻害されると。ひいては、例えば日本の総排出量を削減する、それを阻害するおそれになると。ですから、キャップの設定というのが国内の排出量の削減の邪魔をするというような、そういう場合があるということを指摘しているものでございます。
 その下に具体例として挙げましたのは、これはもうヒアリング等でいろいろ言った内容でございますので、化学、自動車、こういったようなところで製造での排出が増えるということになりますけれども、それ以上に使用段階での排出削減が達成できるということで、こういったような例を化学、自動車、これ以外にも鉄鋼ですとか、いろいろなところで例を挙げているというところでございます。
 裏をお願いいたします。これは本当に釈迦に説法でございまして申し訳ない。イメージ的に描いたものでございます。こういうようなイメージであるという理解をしていただくためのものでございます。
 左側に従来型製品ということで、生産段階でのCO2排出量というのを素材、組み立て加工で2、1という、あるいは消費段階にそれが20ぐらいのCO2を排出するという、そういう設定でLCA23という数字を出しております。これは相対的に価格が安いということが見込まれるわけですけれども、それに対して右側のほうは低炭素型、消費段階で非常にCO2の削減が少ないような、そういう高効率の製品を製造する場合、今の表にありましたように生産段階のCO2排出量は増えると。例えば2倍で4、2というようなそういうような排出量、消費段階では半分になるというような、これはプリウスの場合にはこれに近いような状況かもしれませんが、こういったようなものになると言っている。これは、価格は高くなるけれどもCO2の排出量はLCAで下がるというような、そういうものでございます。
 そのときに、現状で、例えば5台生産したときにどうなるかというのを一番上に掲げておりまして、それが計算すると115になるといったときに、今後低炭素型製品の志向が高まるという、そういうことが予想されますし、この資料の中にもそういうのがありますので、キャップがない場合に生産側の排出量というのは、これはかなり増えてしまうということですけれども、消費段階での高効率型の製品を買っていただくという、そういう機会が増えると。ここでは4台売れるというような、そういう普及するというような、そういう状況を考えた場合に合計で87ぐらいのCO2排出量になると。
 それに対して、一番下にキャップがあった場合に、この左側のところの赤い点線が、これがキャップを示しておりますが、そのキャップを超えたところにつきましては排出枠を買ってこなければいけないという状況になりますので、排出枠の価格にもよりますが、排出枠の価格というのは見込めませんので高くなる場合もあるというふうに考えますと、その価格を製品に転嫁するということによって、製品の普及が阻害されるということが考えられます。
 ということでいきますと、1台しか低炭素型製品が売れないということになりますと、合計で108という数字になると。この108でも従来型製品を売ったよりもCO2は下がるわけですけれども、このキャップがなかった場合のほうがより一層CO2が下げられる場合があるという、そういう例でございます。
 こういったようにキャップを設定するとCO2の削減を阻害してしまうという可能性があるという例を、ちょっとポンチ絵的に示したものでございまして、これは釈迦に説法でございますが、こういったようなことを考えてLCA的視点というのをぜひ重要視していただきたいという、そのペーパーでございます。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは、先ほどの説明とあわせまして、ご意見、ご質問等あればお願いしたいと思います。いつものようにお手元のネームプレートを立てていただきまして、よろしくお願いしたいと思います。
 では、明日香委員からお願いできますか。

○明日香委員 ちょっと風邪気味なので声が出ないんですが、2つあります。こういう考え方は非常に重要かと思います。なるべくそういう低炭素な製品を普及するというのは国内外で非常に重要だと思いますし、それに対するどういうインセンティブをつくるかというのは政策的に考える必要があるかと思います。
 ですが、2点あるんですが、まず1点目は、こういう生産に対する価格アップになる政策というのは、特に排出量取引制度に関わったものではなくて、炭素税でも規制においても全く同じような炭素制約が入れば企業の生産に対する影響はあるかと思います。
 なので、今の議論というのは全然排出量取引制度という意味では関係ないということも、そういう認識は必要かと思います。低炭素製品のほうがより企業にとってはコストが高くなる場合もありますし、規制のほうがより高くなる場合もあるかと思います。それが第1点目です。
 第2点目は、やはりもうちょっと具体的な計算をしたほうがいいと思うんです。私もちょっとそこら辺はちょこちょこと計算をしているんですが、例えばハイブリッド車の場合、いろいろ調べると大体車両製造時の排出量というのは1台2トンぐらいになると思います。普通のガソリン車との差は2割ぐらいというふうに聞いておりますので0.4トンですか、違いは。それを、排出枠を交付したとすると2,000円ですので、大体800円ぐらい、1台につき生産する側としては得をするということなんです。ですが、多分、それは価格に800円転嫁しても自動車の場合は売れ方というのは全く同じなのかなとは思います。なので、それほど販売促進という意味では販売低減という意味では、追加枠を交付しても企業にとってはありがたくないのかなと。なので、ここは個別に、その製品がどういうものでどのぐらい使われているかという計算が必要だと思いますし、数字はいろいろつくればいろんなふうに出せるんですが、もうちょっと個別の議論があるかと思いますし、コスト等も考えたほうがいいかなとは思います。
 以上です。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは、岡山説明員、お願いできますか。

○岡山説明員(笹之内委員代理) すみません、数点言わせていただきます。
 最初、恐らく表現の話だと思いますけれども、資料1の1ページの[1]のところです。よくわからないものですから、ご説明いただければと思うんですけれども、排出量の削減が求められる制度のもとで、長期的な省エネ製品の排出削減効果が高い製品は市場に評価されるから、事業者は販売することで利益を上げ云々というところがあるんですけれども、これはこの文脈で考えると、排出量取引があれば省エネ製品がよく売れるよというふうに読めるんですけれども、現在ここというのは全然関係ないものとして議論されているところだと思うんですよね。だから、多分車なんかを考えると、これは全く違うセクターの話をしているわけでありまして、これ少し、なぜここにあるのかなと。先ほどの明日香先生の話にもございましたけれども、製品が売れるから少しは生産のところの制約は我慢しなさいよというふうに仮に見えるとすると、ミスリーディングになるかなと。実際、台当たり800円というのは、私ども1銭、2銭、それ以下の原価低減というのを必死にやっている中で、非常に大きな値だということは一つあるかと思います。
 それと、2つ目は、LCAのところでございます。ハイブリッドの例をいろいろ出していただきましてありがとうございます。
 ただ、ハイブリッドというのは一つのシステムでございまして、一つの技術というわけでなくて、さまざまな技術のかき合わせの結果で倍の燃費向上というものを達成しているものでございます。そこは、それを構成する技術、それを提供いただく仕入れ者様というのは一次、二次、三次と考えると非常にたくさんの数になります。それぞれを、今の方針(案)にございました機能面で代替可能な同種の製品と比べて使用時の排出相当程度少なくというものにどうやって当てはめていくのであろうかと。一次、二次、三次という非常にご苦労いただいている、そういう仕入れ者さんの苦労というのは、最終製品じゃないから関係ないよというふうに言われているのか、その辺というのは本当に慎重に議論しないと、大切なところが抜けちゃうんじゃないかなというふうに思います。
 以上でございます。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは、新美委員、お願いできますか。

○新美委員 ありがとうございます。
 私は基本的には排出枠の追加交付という形でLCAを考慮するというのは一つの割り切りとしてあるというふうに思って賛成したいと思いますけれども、問題は排出枠の追加交付というのはどういうふうに具体的にやろうとするのかがちょっと見えてこないので、もしも最終回答でないにしても、例えば一応政府がリザーブしている分のうちから出すということにするのか、その辺ちょっとお考えがあるんだったらお伺いしたいなと思って質問した次第です。

○植田委員長 ありがとうございました。
 では、武川委員、お願いできますか。

○武川委員 読んだ限りではなるほどなというところで、それほど違和感がないんですが、1点ご質問したいのが、もしこういった製品について国内での使用をちゃんとMRVをして測定したということが仮にできた場合には、それをクレジット化する余地を完全に否定するものなのか、そこはもし一定の条件が整えば、いわゆるオフセット・クレジットとして認める余地もあると。そこに加えてキャップの段階で配慮するということなのか、そのあたりの考えがもしおありであれば教えていただければと思います。

○植田委員長 ありがとうございました。
 では、諸富委員、お願いできますか。

○諸富委員 私もこういう形で制度化を図っていくということに賛成でして、しかも消費段階といいますか製品の使用段階ではなくて製造段階のほうに着目して、クレジットなり追加配分を考えられるという、その方針は非常に総体的に望ましいものだというふうに思います。
 図でいうと5ページのところで、5ページというんでしょうか、LCA配慮のイメージという参考の資料のほうに描かれてある図がありますけれども、使用段階のところで当初、話としてはどれぐらい人が製品をどれぐらいの時間使用するのか、どういう方法で使用するのかによって実際の削減量が異なってくると。これをモニタリングして削減量というのを算出するのはとても難しいという話があったので、今日ご提示いただいた案というのは、使用段階で一定の仮定を置いて、行為仮定ですかね、それを置いたときに必ずその製品を使った場合に恐らく排出量は削減されるであろうと見込みが立ったという条件で、製造段階のほうで通常製品よりも省エネ製品をつくった場合に、製造段階で起きてしまう排出増というものに対してちゃんと手当てをしていこうということですので、これであれば恐らく国内の問題になりますMRVは多分正確に行うことも可能ですし、恐らく影山委員がおっしゃった製造段階でキャップがかかって追加的に排出枠を購入しなければならなくなる、その費用増加分に対してちゃんと手当てが行えるという意味では、省エネ製品をつくる場合の不利な条件というのを改善できるというふうに思います。
 そういう意味で非常に評価できるのではないかなというふうに思うんですが、ただ、ここで言われるAとBの排出の量の差分です。これはやはりどう評価するかということが先ほどから議論されている点なんだと思います。つまり、1台当たりの製品製造に伴う排出増加という部分と、それから恐らくこういう省エネの新製品を出したことに伴う販売量の増加、数量の増加です。この2つの効果が恐らく掛け合わされて実際の排出増なり排出減が起きるわけで、先ほどからの議論は数量の増加のほうを面倒を見るべきなのかどうかという点が一つの焦点になっていくような気がいたします。
 私の感じからすれば、これは1台当たりの製造に伴う排出増加に対してはちゃんと手当てをしていくべきだけれども、数量の増加については本来なら手当てをすべきではないのではないかというふうに考えています。ここは岡山さんのご意見と違う点ではありますけれども、というのは、もし排出増加つまり数量の増加に伴う排出量増加を手当てしていくということになると、事実上の事後配分、排出枠の事後交付ということになってきまして、そうしますとキャップ・アンド・トレードである本来の排出量取引の趣旨から逸脱をしていくということになってしまいます。したがって、排出枠の事後交付という形ではなくて、期首においてきちっと評価をした上で、1台当たりの排出増加というものを評価した上で期首においてきちっと手当てをしていくという方針で趣旨を一貫させていくべきではないかなというふうに思います。そこだけ、ということで数量というものの定義です。それから、ごめんなさい、排出増というものの定義をしっかり共有していくという必要があるかなと思いました。
 以上でございます。

○植田委員長 ありがとうございました。
 そうしたら、大塚委員ですね。

○大塚委員 LCA的な配慮については、私は前から賛成していたんですが、大分賛成が増えてきているのでよかったと思っていますし、今回のペーパーはよく練れていると基本的には考えています。
 2点ほど簡単な点を申し上げておきますが、1つは今、諸富委員がおっしゃったことに私も賛成で、最初に計画を立てるときに数量は前提にして交付を認める、追加的という言い方は変ですが増量して認めるということで、後から増やすということではないのだろうと思います。
 もう一点ですが、さっき岡山説明員が言われたこととの関係ですけれども、1ページの[1]の2行目の「しかし」のところは、先ほどのように読めなくはないのかもしれませんけれども、必ずしもそうではなくて、「しかし、排出量の削減が求められる制度の下では」というのは別に排出量取引が入ったらという意味ではなくて、税とかほかのことも含めて今後はそういうふうに市場がなっていくのでと読むんだろうと思いますので、「高く評価されるようになれば」というのは、これは絶対なるとか限らないから「なれば」という書き方になっているのでちょっとわかりにくくなっているかもしれませんが、これは別に排出量取引が入るからということだけを言っているのではなく、一般的にこういう傾向になるのでという趣旨で書かれているものと思います。
 以上です。

○植田委員長 それでは、大野委員、お願いします。

○大野委員 私もLCAへの配慮って確かに日本の企業が非常に環境にいい商品をつくっている現状を考えると必要だなと思っておったんですけれども、どんなふうにこれを売り込めるかなというふうにわからずにいたんですが、今日は非常によく整理されたペーパーを出していただいたんじゃないかなというふうに思っております。
 やはり使用段階ということに何とか織り込もうというふうなことができるのかなと思っていたんですけれども、2つ大きな問題があると思っていまして、まさにここに書いてあるところなんですが、使用段階だと使用の方法によって全く違うということだと思うんです。車の例が書かれていますけれども、我々がエコドライブの取組をやっていますけれども、乗用車でも大体エコドライブをちゃんとやるかどうかで2割ぐらい燃料消費量が違うんですよね。だから、それを、ということは使い方によって全く違うということですから、やっぱり使用段階を想定するのは相当難しいと。乗用車でもそうだし、貨物車なんてもともと荷装によっても全く違いますから、推計しようがないだろうということが一つと、もう一つは、もともとハイブリッドカーにしても、それから高効率の給湯器にしても、太陽光発電等々にしても、今CO2が削減できるということを売りにして商品の販売を拡大したことになると。これを、仮にその削減分を製造会社側に帰属してしまうということになると、結局そうすると使っても使っている人がCO2削減効果が出ないということになってしまいますので、そんな制度をつくってしまうと、きっとこれは企業のほうも困るだろうと思いますので、やるとするとこういう製造段階での評価というのが妥当だと思いますので、非常によく考えていただいたんじゃないかなと思っております。

○植田委員長 影山委員、どうぞ。

○影山委員 幾つか書き方の点で、1ページ目に2の検討のところの2つ目のパラグラフのところに、短期的には不利になるけれども、長期で見れば最初の1のパラグラフのところというふうな文脈ですけれども、これは短期的にも長期的にも別に関係なく、やはり配慮しないと支障が出るということではないかと思いますので、そこのところはちょっと意見を申し上げておきます。
 それから、方針のところで、素材、中間製品については外されておりますけれども、先ほどの私の資料もそういったところでの排出というのも非常に大きく影響すると思いますので、そこを外すということは、これは不十分だというふうに思いますので、それについてもご意見させていただきます。
 それから、全体的にこのLCA的視点というところからお話ししますと、キャップ・アンド・トレードの悪さ加減が出ている一番大きなところかなというふうに思いますので、いろんな問題があるんでしょうけれども、これがうまく配慮できるかどうかが一番大きなところであって、その配慮できるかどうかというのとキャップ・アンド・トレード導入の是非というところは大きく関わる問題だと思いますので、それはぜひ記載しておいていただければというふうに思います。
 いずれにしても、いい製品をどんどん世の中に出して、そこでCO2を削減するという、そういう仕組みづくりが大事だと思いますので、そういった制度がつくれるかどうかというところが大きなポイントだというふうに思います。

○植田委員長 では、冨田委員、お願いします。

○冨田委員 ありがとうございます。
 毎回感じることなんですけれども、皆さんの委員の方々の意見を拝聴していて思うのは、制度としてあるべき姿を追求していくのか、それともこの制度によって対象となる企業、事業者にどういう取組をやってほしいのかと、どういう取組にインセンティブを与えるのかと、そこのやっぱり差が出ているなというふうな気がしています。既に何人かの委員の方がおっしゃっていますけれども、素材あるいは中間製品のところについては配慮がなかなか難しいと。それは難しいかもしれない。だけど、排出量取引制度は素材産業、中間部品をつくる産業に対して配慮ができない制度になってしまうということに対してどう考えるのかというような視点が必要なのではないかなというふうに思います。
 それから、通常製品に比べて省エネ型の製品で排出量が増えると、それについての配慮というのが検討されているわけですけれども、例えば太陽光発電のように比較するものがあまりなくて、排出量を削減する効果が非常に高い、それの生産量が増えるということに対しての配慮というのをどうするかということについて、例えば原単位方式の目標というのも一つの考え方かもしれません。ですから、ここの論点というのはやっぱり、ここだけではなくてほかの部分にも影響が出てくるというところを踏まえて、全体として考え方というのを、制度のあり方というのを検討すべきだろうというふうに思います。
 以上です。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは、則武委員、お願いします。

○則武委員 まず1ページの[1]のところですけれども、やはり制度としてここでは「しかし、排出量の削減が求められる制度の下では、長期的に、省エネ製品」と書かれておりますけれども、「高く評価されるようになれば」という表現になっていますけれども、基本的には「なれば」ということではなくて省エネ製品等の排出削減効果が高い製品が高く評価されるようにしてもらいたいので、制度としてはこういう消極的なのより「する」という意思で書いていただきたいなと思います。
 それと、4ページの最後の方針(案)なんですが、この最終製品を考え方で特定するということですが、この特定の中にもう一つ追加すべきものがあるのではないかなと思います。それは、もともと配慮する目的が何かということを考える必要があるのかなと。こういった削減効果の高い製品の普及の阻害になるということを回避することが目的であるならば、特定する段階では削減効果を生む製品の普及に影響を及ぼすかどうかという評価をして、この取引制度がそういった製品の普及に影響を及ぼすという結果が出た場合には、こういう排出枠の追加交付というのもあってもいいのかなと思いますけれども、影響も何もないのに単に追加交付というのはちょっとどうなのかなというのが若干思います。
 それをもう一つは、この方針(案)でいくと、クレジットは全くもうないという形になってしまうように見えるんですけれども、商品によってはクレジットが成り立つものもあるんではないかなと思うんですが、その辺具体的には今、考えておりませんけれども、排除していいのかなというのがちょっと疑問に思います。
 以上です。

○植田委員長 ありがとうございました。
 明日香委員、ありますか。

○明日香委員 すみません、簡単に補足です。
 私も配慮が必要だとは思うんですが、今おっしゃったように製造段階での差を実際計算をすると、クレジットを追加配付するという意味では、それがあった場合とない場合で比べると製品普及にほとんど影響しないんじゃないかな、ということです。ですが、なので制度としては労多くして実際の実績がないんじゃないかなという気はします。
 あと、やはり実際に自動車の場合、何でもいいんですけれども、普通のガソリン車との差というのは、言うのは簡単なんですけれども実際そういうデータがあるか、どういうふうなガソリン車と差をとるかという、かなり技術的にも難しいと思いますし、影響があるかどうかというのも、また800円では私はあまりないんじゃないかなと思うんですけれども、そこは主観的な判断も出てくるので難しいかなと思います。
 配慮は必要なんですが、配慮の方法としてはほかの種類の補助金とかいろいろあるかと思いますので、この制度の中で考えるかどうかは検討すべきだと思いますし、この制度ですべて解決するのは、そもそも排出量取引制度がすべて考慮する必要はないのかと私は思っております。
 以上です。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは、幾つかご質問等もございました。まだありますか、大塚委員。

○大塚委員 素材、中間製品を外すなというのが多分、産業界さんからのほうの一つの問題点だと思いますけれども、多分それはいろいろ考え方はあるので、最終製品に絶対限らなくちゃいけないかどうかというのは多分、若干柔軟に考えるところはあり得るかと思いますので、それはまた考えていけばいいのかなという感じはします。案はいろいろありますけれども、今、私がここで申し上げるのは適当かどうかわかりませんので、すみません。

○植田委員長 ありがとうございました。
  では、室長からお願いします。

○上田市場メカニズム室長 いつものように、いただいたご意見につきましては次に議論するときの資料にできる限りのものは反映したいと思いますが、今コメントできるものを幾つかコメントさせていただきたいと思います。
 まず、1ページ目の2の[1]の第1パラの「しかし」のところがここにある理由というところですけれども、ここは2つ目の後、3パラのところに、諸外国の取引制度では配慮されていないというふうなところに少し呼応するところでありまして、排出量取引制度だけではありませんが環境、特に炭素の制約といったものが出てくれば、一般的に炭素の制約により有利な製品が売れて、利益により実際の制約のコスト、そういうものを回収できるのではないかというふうに説明していまして、ここで言ったのは3パラに少し対応させる意味で言ったところでございます。
 また、LCAのところで、ここは多くの方からご発言をいただきました。2ページの素材または中間製品の扱いでございます。実際にこれを計算するとなると非常に難しいものがあって、なかなか難しいのかなというふうには思ったんですが、課題としてはあるなというふうに認識しております。また、先ほど大塚委員のほうからも、やり方はあるんじゃないかというふうにも言われましたが、ちょっと少しどういうふうな形で課題を書けるかあれですけれども、少し書きぶりについては考えてみたいと思います。
 また、実際に追加交付するときにどこから出すのか、リザーブからかどうなのかというふうなことでしたが、排出枠の設定というのを前々回だったか議論したかと、前回ですか、議論したかと思いますが、そのときに国全体で排出枠の総量というのがあって、そこから割り戻していくという考え方であれば、その全体枠が決まっているので、リザーブか否かというところが大きな焦点になってくるかと思いますが、個々の事業者の排出枠というのはそれぞれの削減ポテンシャルに沿って設定していくと。全体の排出枠のほうから割り戻していくという考え方ではないので、基本的には枠の外か中かというのはあまりなくて、別途そういうものを用意して配付するということになろうかと思います。
 そうしたものの追加で配付したもののトータルが全体として中長期目標等に照らして、適切なほうに向いているのかどうか、それを確認する意味で排出量の総量、そういったものも推計して、横目で見て全体策の方向性、必要があれば他の策の見直しも含めてやっていくというような考え方でございます。
 また、その使用段階の製品の削減の効果、MRVがしっかりしている場合にクレジットとして認めることがあるのかどうかということですが、排出枠の個々の事業者の設定という観点で言えば、一律にこういうふうな形で設定すると、ほかの方からも何人かご意見がありましたが、非常に計算の精度、MRV、一律にやるとかなり落ちてしまって、個々の事業者の方に直接の製造活動で測定してもらっている精度とかなり仮定を置いた使い方、多分1日何時間こういう使い方をするというものを同列に並べるのはなかなか難しいのかなと思っています。そういう意味で、同列に排出枠設定の段階で配慮するときには、今の案では難しいのではないかという提案です。ただ、これを別の議論、外部クレジットというのを前々回か前に議論したかと思いますが、特定のプロジェクトに限ってそういったものが測定可能で、なおかつここで指摘されている問題がクリアできるものがあれば、そういったものは外部クレジットとして余地があろうかと思います。そのほかの委員からもご質問がございましたが、そこは外部クレジットの問題と、ここの排出枠、初期の設定と切り分けて解決できる、整理ができるのではないかというふうに思っております。
 また、交付する段階がいつなのかということで、事後の交付と事前の交付の問題、これについても複数の方からご意見をいただきました。基本的には期首に配付するというふうなことを考えていますけれども、そのときの数量というものをどういうふうに見るのかと、その期に売れるであろうという数字を見ていくのか、それともそれまでの販売実績を見ていくのかということで、我々としては一つはグランドファザリングだけでも過去の排出量の実績なんかを見ているように販売実績というものを見て、それをその当該年度の計算に算入していくということも考えられるのかなというふうに思っておるところでございます。ただ、ここのところは今いただいたご指摘についても、留意すべき事項として追記しておくことができないかなというふうに考えております。
 あとは、大体重複しているかな。あと、多分、複数の方からいただいた意見で重複しているので漏れがないと思います。もしあればお答えしますけれども。
 以上でございます。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは、次の議論に移らせていただきます。資料の2でありますけれども、国際競争力への影響及びその結果としての炭素リーケージへの配慮に関しまして、資料のご説明をお願いいたします。

○河村補佐 それでは、資料の2につきましてご説明させていただきます。
 まず、課題でございますけれども、温室効果ガスの排出規制の程度は国により異なる場合に、規制が厳しい国の産業と規制が緩やかな国の産業との間で国際競争力に差が生じ、結果として厳しい国の生産・投資が縮小し排出量が減る一方で、緩やかな国の生産・投資が拡大して排出量が増加すると。これによって、地球全体で見ると排出量が減少しないという炭素リーケージが生じるおそれがあるということの懸念があるわけでございます。このために、制度の導入によって、国際競争力に影響が及ぶ制度対象者がある場合に、何らかの配慮をする必要があるのか、配慮するとした場合にどのような事業者を対象にどのような配慮を行うべきかについての検討を行ったところでございます。
 検討の際に、これは議論を整理するために、まず排出枠を有償割当とする場合ということで議論を整理してみました。ちょっと無償と有償をまぜると非常にわかりにくくなってしまいましたので、一旦有償で整理した上で、次に無償のことについても検証すると、このような構成にしてございます。
 まず、有償割当の場合の配慮措置の必要性と考え方でございますけれども、有償割当の場合、その排出枠の総量が国内の制度対象者全体の削減ポテンシャルに即して設定したというふうにいたしましても、他国で同等の制度を導入していない場合につきましては、我が国の制度対象者が排出枠を一から調達しなければならないと。そのための調達コストがかかってくるので、他国に比べて相対的に高いコストの負担があるということでございます。その場合に、基本的には、事業者にとってその負担が過大なものとなればEU-ETSの第3フェーズ、前回の資料で参考資料としてお配りしましたけれども、一定の配慮を行うことが必要であるというふうに考えられるわけでございまして、どの程度の負担が生じる場合に配慮を行う必要があるのかということを見極めることが重要ではないかということでございます。
 この影響という観点で見ますと、事業者が国際競争にさらされている程度、それから排出削減のコストの事業規模に占める割合の程度、この2つを勘案して判断することが可能ではないかということでございまして、業種ごとにこれらの点を判断するために、設定した指標を用いてはどうかということでございます。その設定する指標の中身と、その程度でございますが、[2]の選定基準でございまして、国際競争にさらされている程度の指標といたしまして、まず貿易集約度、事業者の取引規模に占める輸出・輸入の割合というのが用いられるのではないかということでございます。また、排出削減コストの事業規模に占める割合の程度といたしまして炭素集約度、排出枠の想定される調達コストが事業規模に占める割合を使うことが可能ではないかということでございます。
 具体的にはこれらを組み合わせて選定していくわけでございますけれども、例えば貿易集約度と炭素集約度がそれぞれ一定以上の業種を対象とするということといたしますれば、国際競争力に影響を受けることが考えられる業種は特定できるんじゃないかということでございます。
 ただし、貿易集約度がそれらの業種よりも低くて、国際競争にさらされている程度が低い業種でありましても、炭素集約度が相当程度大きくて、調達コストも相当程度大きくなってしまう場合、これにつきましてもやはり一定の配慮が必要ではないかと思われます。
 そして、具体的な選定基準値につきましては、こういう考え方を踏まえまして、諸外国の事例にも配慮しつつ、我が国の実情も勘案して決めていこうということでございます。
 そして、その炭素集約度及び貿易集約度を算定する場合に当たりましては、算定過程の透明性と公平性の確保が必要でございますので、公の統計、例えば最新の産業連関表等を用いるべきではないかということでございます。
 そして、配慮業種に対する配慮措置といたしましては、有償割当の制度におきましては、配慮業種を特定した上で無償割当を行うと。このことによって調達コストを大幅に下げようということが考えられておりまして、EUでは第3フェーズにおきまして域内共通のベンチマーク、これが前回の参考資料でございますけれども、そこで得られた、ベンチマークで得られた枠につきましては100%無償で交付されるという措置を検討しているということでございます。ニュージーランドにつきましては、排出枠を有償販売、定額販売しているところでございますけれども、排出量が多くて国際競争下にある産業部門を特定した上で、炭素集約度が特に高い業種につきましては、ベンチマークなどを用いた必要量の90%で、比較的高い業種につきましては、その60%につきまして無償で交付されるという仕組みをとっているようでございます。
 この無償割当を行う割合につきましては、貿易集約度、炭素集約度の程度ですとか配慮業種に該当しない業種の公平性も考慮して、適切に決めていく必要があるということでございます。
 ここまでが有償でございまして、そこからが無償割当の場合でございますけれども、無償割当の場合につきましては、個々の排出枠の設定を各事業者のこれまでの削減努力の程度ですとか、今後導入可能な技術の内容や程度と事業者の削減ポテンシャルに着目して設定しますれば、当初見込まれた対策コスト以上の負担は見込まれないこととなります。海外の先行事例におきましては、無償割当の場合に国際競争力の影響のための配慮措置というのは置いている事例はないようでございまして、対策コストの当初の見込みがそもそも高い場合ですとか、想定以上に高くなった場合につきましては、何らかの配慮のことが考えられるのではないかということでございます。その際の事業者の範囲といたしましては、有償割当の場合と同様と考えてよろしいんじゃないかということでございます。その配慮の方法といたしましては、基準年の活動量または排出量と実際の活動量または排出量の差が、配慮業種において追加的な負担となっているというふうに考えまして、それを補てんするアウトプット・ベースト・アロケーションが使えるのではないかと。または配慮すべき業種について当初から削減義務を緩和する方式、排出削減率緩和方式というふうにつけましたけれども、これらの方法というのが考えられるんじゃないかということでございます。
 まず、アウトプット・ベースト・アロケーションでございますけれども、これは活動量の増加分の一部を補てんする方法でございまして、例えば直近2年間の活動量の増加に合わせて排出量の限度の設定をやり直して、当初の排出枠の交付量との差を補てんするという方式でございます。そして、無償割当の場合につきましては、先ほどもご説明いたしましたとおり、有償割当の場合と異なりまして、排出量があらかじめ交付された枠の範囲内におさまっていれば、調達コストが発生しないということでございまして、無償割当の場合に配慮が必要なのは、当初に設定された枠では排出量が足りなくて、さらなる対策が必要である場合、または排出枠やクレジットを追加的に購入しなければ義務を達成できない場合と、こういうときではないかと思われます。
 そこで、例えば当初の排出量の限度の設定に用いたベンチマークですとか、グランドファザリング方式の排出削減率はそのまま用いまして、これに直近2年間の平均活動量とか平均排出量を掛けまして、これが当初の排出量の限度を超えた場合に、その上回った分について追加交付ということが考えられるのではないかということでございます。ただ、この方式につきましては、制度対象者が追加交付分を増やそうとして、直近の活動量または排出量を増やすインセンティブが働くおそれがあるということが指摘されてございます。
 続きまして、配慮業種に対する配慮措置、排出削減率の緩和方式でございますけれども、配慮業種につきましては、当初からベンチマークの改善率またはグランドファザリングの削減率を緩和しておこうということでございます。ベンチマークであればベンチマークの改善率であり、グランドファザリングであればグランドファザリング削減率ということでございまして、これは実績の排出量を増やそうとかいうことは起こりにくいと思いますけれども、配慮業種に適用するのに適当な削減率が一体どれほどかということについては検討する必要があるということでございます。
 方針(案)でございますけれども、排出枠の交付を有償割当で行う場合は、国際競争力の影響及びその結果としての炭素リーケージや懸念される業種を、貿易集約度と炭素集約度に基づいて特定して、その業種に対して無償割当を行うということで、排出枠の交付に当たっての配慮を行うということでございます。
 この場合の貿易集約度及び炭素集約度の基準値につきましては、我が国の産業の実情を考慮して定めるということで、実際に算定するに当たりましては、最新の産業連関表等の公的な統計等を使おうということでございます。
 また、排出枠の設定を無償割当で行う場合につきましては、配慮業種の選定方法というのは先ほどの有償割当の場合と同様の考え方によることといたしまして、その配慮措置につきましてはアウトプット・ベースト・アロケーションまたは排出削減率緩和方式等による排出枠の追加交付を念頭に置いた適切な措置を講ずることによって配慮を行うこととしてはどうかということでございます。
 以上でございます。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは、今のご説明につきまして、ご意見とかご質問とかございましたらよろしくお願いします。
 では、有村委員からまずお願いできますでしょうか。

○有村委員 国際競争力のリーケージ問題に関しておまとめいただきましてありがとうございました。
 私はこのアウトプット・ベースト・アロケーションというのは以前から注目しておりまして、もともとこれはアメリカの研究者が言い出した方式でして、実際にアメリカの法案の中でも何度もこれが形を変えて出てきているということで、私どものほうでも応用一般均衡分析を使って、この方式をシミュレーションしてみました。この方式を提案したアメリカの研究者と一緒にシミュレーションしているんですけれども、例えば単純なオークションとか、恐らく無償配分でもキャップを単純にかけるというものに比べて、この方式を導入することによって企業の国際競争をして、かつエネルギー集約的な企業に対する負担の緩和というのに関しては、かなり大きな効果があるのではないかなというのが我々のシミュレーション結果で出ております。例えば単純に25%削減というようなものを実施した場合に、ある業種では例えば11%ぐらい生産量が減ってしまうかもしれないと、オークション方式などを導入すれば。そういった場合でも、この方式を用いれば、その削減率が2%台まで緩和することは可能になるのではないかというようなシミュレーション結果を得ておりまして、これが一つの方式、重要な選択肢ではないかなというふうに思っております。
 ただ、一方で、これ実際に導入するときに、どういうふうに実務面でやっていくのかというところが非常に難しいところではあるというのも現実としてはあると思います。コンピューターでの経済でのシミュレーションであれば、総量抑制というのがきちっと確保する中での制度設計というのができるわけですけれども、総量抑制を実施しながらアウトプット・ベースト・アロケーションを実現するためのところが行政上なかなかハードルが高いという面もあるかなと思っております。
 以上です。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは、則武委員、お願いできますか。

○則武委員 基本的にはあまり意見はないんですけれども、ちょっと確認させていただきたいのが、方針(案)のところの2つ目の段落の1行目の後ろのほうですか、「諸外国の事例にも配慮しつつ」と書かれているんですが、諸外国の事例を配慮しない必要性があるのかと、参考にする程度、配慮しなきゃいけないのかちょっと確認させていただきたい。それと、一番最後、言葉の問題かと思いますけれども、「配慮措置は、OBA方式又は」とあって「排出枠の追加交付を念頭においた」となっていますけれども、追加交付という位置づけではなく、こういう方式を念頭に置いて適切な配付を行うということではないかと思いますので、2点です。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは、諸富委員、お願いします。

○諸富委員 有村先生のご研究、私も存じ上げておりますので、論点はよく、ご趣旨はよくわかるんですが、例えばEUでも恐らくアメリカのワックスマン・マーキー法案でもそうだったはずなんですが、基本的に有償配分をやるという前提がまずあって、そこから国際競争上の問題が生じる場合に無償配分の議論が始まっていたと思うんです。
 ですので、今日のペーパーも前半は確かに有償配分なんですけれども、後半は無償配分ですよね。さらに追加的にアウトプット・ベースト・アロケーションを議論しなければいけないかどうかという点について、ちょっと根本的な疑問があるので、その点をまずお聞きしたいということで、明日香先生なんかのコメントもいただければと思いますが、そういう必要があるのかどうかです。その上でということで、というのは、もし炭素集約度が問題になるのであれば、多分ボトムアップで恐らく排出枠の配分をするという議論をしているわけですから、恐らくポテンシャルの算定の際に炭素集約度については事実上配慮されることに多分なるであろうというふうに思います。
 もっとも、貿易集約度については、そこでは配慮できないかもしれないので、貿易集約度に関してはまた別途、非常に国際競争にさらされている企業について、別途さらに追加的に配慮しなければいけないということがあるかもしれませんが、ここで議論されている2つの方法、[4]-1、[4]-2。[4]-1のアウトプット・ベーストがやはり問題で、これはもう事実上日本でも既にやられている試行スキームの、やはり事後精算と同じ方式ですね。期首と期末という先ほどの問題とパラレルなんですが、期首の段階ではなくて期末の段階で見て、生産量が増えたり減ったりしていると。その状況を見て配分を追加的にやることで調整しようということですよね。ですから、当初配った排出枠では足りなくなって追加購入を迫られましたと。それに対して追加購入分の費用負担が増加するので無償排出枠を充ててあげましょうということだと思うんですが、あまりこの事後調整というのをやりますと、そもそもキャップが膨張してしまうという問題ももちろんありますが、ミクロ的に見ても企業行動としても排出枠を意識しなくなってしまうと。増えれば追加配分してくれるという期待があるわけですから、そういう誤ったインセンティブを与えてしまう可能性があると。
 それから、安易に追加配分を無償でしちゃうと、これは市場構造にもよるわけですが、非常に市場支配力を持つような企業の場合あるいは業種の場合には、場合によっては価格転嫁をしてもマーケットシェアが縮小しないということから、超過利潤を得られる可能性があることも研究によっては明らかにされているわけで、そういったことまで含めて、リスクを含めて無償配分でなおかつ追加配分という必要があることについては、ちょっと疑問が生じるという点でございます。
 そういう意味では、[4]-2のような期首において事前に排出枠を緩和するというやり方で調整するということのほうがまだ望ましくて、事前にきちっと配慮すべきことは配慮して終えておいて、期首から制度がスタートしたらもうそれはさわらないと、事後では調整しないという方針で全体を貫くべきじゃないかなというふうに思います。
 以上でございます。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは、明日香委員、お願いできますか。

○明日香委員 私もペーパーを書いておりますので、詳しくはそちらを見ていただければと思います。
 全体的なコメントなんですが、基本的に企業への配慮というのは必要だとは思いますし、どの国でも導入初期においてはさまざまな保護措置を入れているのは確かだと思います。アメリカ、EU、ニュージーランド、オーストラリア、いろいろあると思うんですが、そこと全体的に比べて今回の保護の割合は、かなり産業界に対して、ほかの国と比べると非常にプロテクトしているような認識かなとは思います。もちろんそれ自体はいい悪いはなかなか難しいと思うんですが、各国が悩んでいるのは結局、あるところに甘くすればほかの部分のセクターの削減コストが高くなると。だから、国全体としての遵守コストは高くなるという、これもトレードオフの関係ですので、そこをどう評価するかという大きな問題は重要な認識にしていく必要があるかと思います。例えて言えば、法人税を減らすんですけれども、結局消費税をどんどん高くしなきゃいけなかったということになりますので、各国もどうそこのバランスをとるかで悩んでいて、日本でもそういうような認識は必要かなとは思います。
 先ほど申したように、各国はオークションを前提に保護措置を考えているんですが、我々は無償を前提にして保護措置を考えていますので、全く考え方のレベルが違うというところはあるかと思います。
 あと一点、先ほど諸富さんがおっしゃったように、やはり生産量拡大のインセンティブというよりは、最初にある程度、率等なりベンチマークの数字を調整して決めたほうが行政コストとしても非常に小さいものになるかと思いますし、実質的な企業に対する負担というのはそれほど変わらないことになるのかなと思います。
 以上です。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは、大塚委員、お願いできますか。

○大塚委員 有村さんにもうちょっと話してもらうと本当はいいかなと思ってはいるんですけれども、基本的に私も今までは炭素リーケージについての配慮というのは有償割当の場合に無償割当を継続するというのが配慮だったので、[4]-1とか[4]-2というのはあまり今まで議論してきていない、議論の蓄積はそれほど多くないんだとは思います。
 ただ、有村さん、随分ご研究なさっていますし、アメリカの法案とかにもあるので、考えてもいいかなという気はしますけれども、だから、これまでがどのぐらい要請があるかというのをちょっときっちり環境省さんのほうでもご検討なさったほうがいいと思うんですが、ただ、もしやるとしたらなんですけれども、もしやるとしたらというときに、諸富さんのお考えもよくわかるし、基本的に事後精算はあまりよくないと私も思っているんですけれども、これは生産量も増えないのにあらかじめ甘いものを与えるというのも逆にどうかなという話もあって、[4]-2がいいともちょっとなかなか言いにくいんだと思うんですよね。だから、もしやるんだったら私は[4]-1で、非常に例外的に追加的に交付するということが、やるとしたらあるんだと思うんですけれども、ただ、その必要性があるのかどうかは、もうちょっときっちり精査していただいたほうがいいかなと考えております。
 以上です。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは、岡山説明員、お願いできますか。

○岡山説明員(笹之内委員代理) ありがとうございます。
 2点あります。1点は無償割当の場合の配慮の方法のところでございますけれども、これは削減ポテンシャルを積み上げた場合は対策コスト以上の負担が見込まれなくて、原則として国際競争力に影響はないというふうに読めるわけですけれども、もともと日本というのは限界削減費用が他国よりも非常に高くて、そこで一生懸命削減しようとしているところだと思います。
 したがって、何らかの、国が例えば25%を削減するというものと、この制度を何らかの形で結びつけようという考えがどこかにあった途端、それは25%というのがほかの国と限界削減費用が一定の目標があった上での前提じゃないと、この文章というのは絶対成り立たないと。要は、ほかの国も日本と同等の目標を設定した上でしか、この言葉というのは、この文章というのは成り立たないんじゃないかなというふうに思います。
 2点目はちょっとこれ、よくわからない話なものですから教えていただきたいというかお願いなんですけれども、自動車でいうとさまざまな素材や部品のサプライチェーンが非常に長い産業でございます。自動車として完成品が例えば海外に輸出されたとしても、それを構成する国内でつくる部品の単価が上がってしまうと、車としての国際競争力を持たずに、日本国としての競争力も下がると思います。ここでは、指標として炭素集約度、貿易集約度、それへのある目安として5%とか30%という数字が出されておりますけれども、これは実際にきちっとデータで、本当にどれだけ日本の経済競争力に影響があるのかというシミュレーションをきちっとしていただかないと、これで本当に日本がこれからも国際的に勝っていけるのか、しのいでいけるのかというのがよくわからないというふうに思います。その辺については、ぜひこの判断をする上では絶対必要じゃないかなというふうに思います。

○植田委員長 では、影山委員、お願いできますか。

○影山委員 国際競争力ということですが、ひいては雇用の確保ということにもつながると思うんですが、その点においてはこの配慮というのは必須だというふうには思います。有償というのは、これの影響においては致命的なんでしょうけれども、無償においてもここで議論されていますように、生産量の増加が抑えられてしまうというような、生産量が増加すれば競争力をなくしてしまうということになりますので、そういう欠点があるということだと思います。
 それで、アウトプット・ベースト・アロケーションですか、こういったような方法が考えられるんでしょうけれども、どうも何か無理やり排出量取引を維持するためにやっているような、そういうイメージがあって、これだったら原単位のほうがすっきりするような気もしますし、いずれにしても、ちょっとここら辺が排出量取引の大きな欠陥、これも欠陥の一つであって、これをうまくできるかどうか、さっきの炭素集約度とか貿易集約度で仕分けしてできるのかどうかというところがキャップ・アンド・トレードの是非とも非常に大きく関わる問題だというふうに考えますので、そこもぜひ記述していただければというふうに思います。

○植田委員長 では、冨田委員、お願いします。

○冨田委員 2点質問なんですけれども、無償割当のところに書かれている「当初見込まれた対策コスト」、これがどういう意味を持っているのかと、どういうことを求めるものなのか、求めている対策なのか、どういうことまで求められる対策なのかというところについてもう少しイメージを教えていただければと思います。
 2点目は、これも私、理解が不十分で申し訳ないんですけれども、国際競争にさらされている程度を示す指標としての貿易集約度なんですが、日本のものづくりのメーカーが外国に行っての競争というのももちろんありますけれども、国内における外国産との競争というのがあるわけで、その場合、貿易集約度という表現で国内産業への配慮というのができるのかどうか。例えば、太陽光で考えてみれば、2020年に向けて太陽光発電をたくさん導入しようという考え方があるわけですけれども、外国産との競争にさらされるという中で、一方、排出量取引の制度の中では対象となり得る事業者というのは国産のメーカーでしかないわけで、そこのところの配慮というのはこの考え方でできるのかどうか、これを教えてください。

○植田委員長 それでは、諸富委員、どうぞ。

○諸富委員 大塚委員がおっしゃったことに対するリプライということになりますけれども、4ページの[4]-2のような事前の緩和方式が、例えばかなり緩いもので大幅に枠を脱してしまうのに比べたら、生産量が増えた増加分だけをがっちり見て、追加配分を行うほうが主ではないかということはそのとおりだと思います。ですので、要するに[4]-1、[4]-2、どれだけ厳格にできるかという、そこの違いかなと。ただ、[4]-1で懸念されるのは、要は事後で幾らでも配分されるというふうになってしまうと、行動に及ぼすインセンティブが出てきてしまいまして、事前の形で排出枠を意識しなくなってしまうということで、実際の企業行動に当たるインセンティブが[4]-1と[4]-2では異なってしまうという点をちょっと強調したかったという点でございます。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは、明日香委員、お願いできますか。

○有村委員 いつかの委員の方に対するコメントでもあるんですが、排出量取引制度を入れたときの国際競争力の影響に対するシミュレーションなりモデルを使った計算というのは幾つかされていますので、ほぼすべてのものが有償で入れたとしても、今のレベルの炭素制約ではほとんど影響はないというような結果になっています。ですが、幾つかの産業、特にセメント、電力、アルミニウム、鉄ですか、そこら辺の産業に関しては何らかの措置が必要だということなので無償の対象を入れているというのが大体ほかの国なり研究者のコンセンサスになっているかと思います。
 あと、もう一つ、輸入の場合なんですが、貿易集約度は分母と分子に輸入も入っていますので、国内へのマーケットの影響に関してもある程度配慮されているかと思います。
 3点目は、アウトプット・ベースト・アロケーションにした、これは基本的に原単位と同じだと思うんですが、先ほど申し上げたように、その国全体の遵守コストというのは高めると。アメリカの場合、アウトプット・ベースト・アロケーションを入れたことによって全体のカーボン削減コストは2割ぐらい上がるというような計算をしていますし、EU-ETSの場合は、これもケース2というモデルの計算なんですけれども、電力だけをインテンシティにした場合には、削減コストが、カーボンオフのプライスがEU域内では2倍になるという計算をしています。だから、幾つか計算がありまして、ほぼ定数的にも定量的にも産業への負担をすればするほど国民全体、その国全体の負担は大きくなるというので、その活動から大きくなるかという計算も最低要るかと思います。
 以上です。

○植田委員長 ありがとうございました。
 では、有村委員、お願いできますか。

○有村委員 アウトプット・ベースト・アロケーションは無償配分のときには要らないのではないかというご意見をいただいたんですけれども、無償配分でもキャップがかかれば、ある水準以上の、例えば中国への輸出が増えたということになれば、そこで先ほどの話ですと1台当たり2トンですか、CO2の排出枠を購入しなければならないと。そうすれば、それに関しては間違いなく国際競争上、排出規制のない国との差になるわけですね。もともとのアウトプット・ベースト・アロケーションの考え方は、その部分のすべての購入を義務づけるのではなくて、一定割合を緩和しようというのが多分アウトプット・ベースト・アロケーションの考え方なんですね。ですから、例えば85%分ぐらいは排出枠を配分して、残り15%分は購入していただくと。景気拡大で輸出が増えて生産量が増えたら、それに応じて排出枠を一部補てんしていくというような形の考え方だと思います。ですので、無償配分でもこういった方式の考え方というのが機能する可能性はあると思います。
 どんな政策も完璧なものはありませんから、全世界で一斉に炭素税なり排出量取引を導入するのであれば、それが一番理想的なんでしょうけれども、そうはならないので、結局ある削減努力をしようとする国が、その中である企業に対して、ある程度削減義務を負わない国との競争の中で配慮しなければならないといったところで経済学者が考え出してきた制度であるということをご理解いただきたいと思います。
 それから、貿易集約度の点に関しては、日本でいると大体どうしても海外で競争するというイメージが非常に強く、日本の製造業は海外で強いですから、そういうイメージを持ちますが、もちろん国内での競争というのもあるので、先ほど明日香委員がおっしゃられたように、よく分母のところに輸出額と輸入額というのを足しまして、どのくらい海外で輸出で競争しているかということと、プラスその業種が国内でどのくらい輸入しているかということで、両方見ながら海外で競争している部分と、それから国内で競争している部分と両方とも指標の中に入れようといったような考え方で計算しております。そもそも輸入額が入ったのは、そういったような理由があって、EUなどで使われている基準でも輸入額も指標の中に入っているというふうに伺っております。

○植田委員長 ありがとうございました。
 では、全委員に概ねご発言いただいたかと思いますので、事務局から説明があればお願いします。

○上田市場メカニズム室長 まず[4]-2と[4]-1について、いろいろご意見いただきました。実際にそれぞれ留意すべき事項というものは双方あるんだと思いましたので、本日いただいた指摘について、それぞれのほうに留意事項として将来は全体のシステムを考える上で、ここをどちらに検討するのかと、そのときの留意事項としたいと思っております。
 あと、この[4]-1と[4]-2に関する質問で、根本的に必要かどうかというのが特にありましたけれども、それは何人かの方から意見がございましたけれども、当初見込まれた排出枠を超えて生産が増えたりするときのインパクトというものがより大きく出る業種というのとそうでないところというのがあるだろう。その差に着目してこういったことも考えてもいいのではないかということですから、有償の場合とは少しインパクトの大きさが違うかもしれないので、そういったものは程度の中身を考えるときの検討対象になろうかなと思っております。
 また、事後なのではないかということですが、OBAも過去のデータをもとに、当該年度のものを計算するときには、当該年度の期首に計算することも可能なのかと思って、我々事務方では思っておりましたが、そのあたりもちょっと丁寧に本日の議論を踏まえて、期首、期末の話も書き込んでいきたいと思います。また、各委員には少し個別にお尋ねすることもあるかもしれませんが、そのときはよろしくお願いいたします。
 あと、実際に記述のところで3ページに[4]のところの1パラ目、「当初見込まれた対策コスト以上の負担が見込まれないことになる」という記述について複数の方からご質問をいただきました。これにつきましては、最初のポリシーミックスの議論を再開第1回のときにさせていただいたと思いますけれども、そのときに我々として、この排出量取引制度、今ご議論いただいている制度の性格から費用の問題を整理するときに我々が使わせていただいたフレーズでございます。詳しくは次回もう一度、ポリシーミックスの議論を、時間をとってさせていただきますので、そのときに少し前回から踏み込んで、できるだけデータ等も用いてご説明できればと思っておりますが、前回と同じ繰り返しになるかもしれませんが、排出量取引制度、これを2つの考え方があるのかなと。
 1つは、排出量取引制度自体が対象となる事業者の総量を削減するためのツールとして仕組むと。例えば実際に個々の削減ポテンシャルごとに事業者の排出枠の設定をし、国枠の全体で見て、その当該事業者の分野で望むべき削減量の総量があって、そこに乖離があった場合には、目標のほうに近づけるように個々の排出枠を圧縮する調整率みたいなものを一律にかける、そういったやり方が1つと、そうではなくて、個々の事業者の方の削減ポテンシャルを見て、その排出枠の設定プロセスというものを尊重して、そこの中で実際にこういうものをやっていこうというふうに事業者の方で取組を考えた、その取組の中身と結果を担保するためのものと、公平で透明なルールを設定する土俵として使おうというものと、その2つあるのかなと思っていまして、今回のご議論いただいている案は後者のほうでございます。
 実際に事業者の皆様にとってどのぐらいの対策をしなければいけないのかというのは、この排出量取引の制度があるからそれをやらないといけないのかというのではなくて、中長期目標という目標に向かってそれぞれの事業者の皆さんがどれだけのことができるのか、そういう対話を積み重ねる中でどういう手法を、ツールを活用するのであれ、皆様のほうでやって、ここまではできるのではないかというものを決めたところで、それをこの排出量取引制度という枠を使ってルールをはめて、確実な実施を担保しようということで、そうすると当初それをやろうというふうに決めた段階でのコスト、もちろんそれは事業者の皆さんにはかかりますし、そういったものの費用というものはあるわけですけれども、それに加えてこの制度を実施するということは、管理費用というのはかかると思いますけれども、それに加えてこの制度を活用することによってさらに1割ないし2割削減を求めるというものではないということ、そういう趣旨を圧縮してこの1行にしたというところでございます。
 この表現が、ちょっと言葉が足りないところはあるかもしれません。それについては次回またポリシーミックスの議論をいただいて、そのときに皆さんのいただいた意見も踏まえて、こちらのほうも修正すべきところがあれば修正したいというふうに考えております。
 実際にシミュレーション、具体的な費用といったものについて言及いただいたご意見が複数ございました。これにつきましては、今ある論文と少し精査をしてみて、言及できるものがあれば、整理できるものがあれば、こちらの中で整理したいと思います。また、委員の皆さんにお尋ねするかもしれませんが、その際はよろしくお願いいたします。
 あと、国内の問題については、委員からご指摘があったとおり、輸入分というものも入って計算しているところで、ある程度そこで見られているのではないかと思います。5ページに、現状分析で有村委員の資料が掲示されておりますが、こちらのほうも輸入額のほうが勘案されたものというふうになっているというふうに理解しております。
 以上でございます。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは、次の議論に移らせていただきます。
 資料の3、国と地方の関係になりますけれども、事務局から資料の説明をお願いいたします。

○平尾補佐 それでは資料の3、国と地方の関係といった資料についてご説明申し上げます。
 最初の課題といったところで、法律と条例の関係といったところが課題になる旨申し上げておりまして、法律に基づく国内排出量取引制度を導入する場合に、既に条例に基づいてやっていらっしゃる制度と、それぞれについてどういった位置づけに法律上なっていくのか。あるいは国と地方分権、地域主権といったことでいろんな話がございますので、全体的な整理を踏まえた関係といったところが課題になってくるというところがございます。
 それで、過剰な負担、混乱といったことが生じないように役割分担の明確化でありますとか、あるいは既に頑張っていらっしゃる方の努力といったものを新しくできる法律のもとで適切に評価していくといったことが課題になってくる旨申し上げております。
 2.に移りまして、[1]、[2]で若干前振り的なところをご説明申し上げたいと思うんですけれども、最初に法律と条例の関係といったところで[1]に書かせていただいております。それで、憲法あるいは地方自治法といったところで法律の範囲内、法令に違反しない限りにおいて条例を制定することができるというふうになってございまして、その条例が法令に違反しているかどうかといったところは最高裁の判例ではありますけれども、趣旨、目的、内容及び効果を比較して両者の間に矛盾抵触があるかどうかによって決するということになっているということがございます。
 それで、環境法制について申し上げますと、環境基本法だと国が基本的かつ総合的というところと、あと地方公共団体はその国の施策に準じた施策あるいはその区域の自然的社会的条件に応じた施策を策定し実施するというところで、例えば公害法制といったところですと、条例と法律との関係といったところで具体の規制基準を条例にゆだねる、騒音なり振動なりといったところ。あるいは、法律よりも厳しいいわゆる上乗せ規制、あるいは法律が規制していない対象を規制するという横出し規制を認めるといったところのことがあると。それで、近年の学説で承知しているところですと、横出しといったものは一般的に認められるんだけれども、上乗せといったことに関していうと、法律の趣旨、目的等の考慮といったものが必要であるという話を承知してございます。
 それで、温暖化の分野でございますけれども、従前から国、地方公共団体、適切な役割分担を踏まえて先ほどの区域の自然的社会的条件ということでございますけれども、現に国が算定報告公表制度というのをやっているわけでありますけれども、多くはその導入以前から削減の計画制度、計画の策定とか知事への提出を求めるといったような制度といったところが義務づけされて実施されていると、30を超えていると承知しております。
 めくっていただいて、2ページ目の一番上のところに、東京都さんが取り組まれていらっしゃる「総量削減義務と排出量取引制度」、あるいは、埼玉県においても同様の制度が導入予定であるといったことを紹介させていただいておりまして、従来、公害法制なんかですと条例が先にできて法律が後から出てきたというところで、温暖化の分野においてもこういった条例による一定の先駆的役割ということは言えるのではないかというところで、今回、国内排出量取引制度を検討するに当たって、こういった取組を損なわないような検討というのが必要ではないかといったことを書かせていただいております。
 [2]の個別法制度に基づく国の地方に対する関与ということでございますけれども、平成11年にいわゆる一次分権がありまして、従前の機関委任事務が廃止されたというところ。あと、また現在、地域主権改革というところで全体的に法律による自治事務の義務づけ・枠づけの見直し、あるいは条例制定権の拡大でありますとか、出先機関の改革、原則廃止といった検討が進められているところでありますけれども、その検討は今進捗中というところがありますので、一次分権改革後の環境規制の状況を申し上げますと、そこにありますように(1)で、国が直接執行するか、あるいは従来の機関委任事務が廃止されて、法律において法定受託事務というところで法律または政令において定めを置いて自治体がやっていただくか。あるいは、そもそも地方公共団体が地域の実情を踏まえて行う自治事務であるかといったところに整理されるというふうになってございます。
 それで、個別法が環境分野にはいろいろございますけれども、これに基づいて1つの法制度のもとで役割分担をするといった場合は、国が全国的な見地から事務を行って、地方公共団体はその管轄区域内といったところでやっていくといった自然保護法制、あるいは公物管理法制においても見られるというところがございます。
 今ある温暖化対策推進法でございますけれども、法律に基づく算定報告制度といったところは、国の直接執行事務というところで、都道府県知事を経由するというようなことはせずに、国の直接執行というふうになってございます。
 他方で、先ほど申し上げたことと重複いたしますけれども、法律とは別に条例において計画の策定、知事への提出を義務づけるといった制度が重視されているといったところがございまして、それは条例としてやっていらっしゃるというところがございます。
 それで、[3]で、すみません、今までが前振りでございますけれども、条例に基づく排出量取引制度の法律上の位置づけについてでございますけれども、国内排出量取引制度を定める個別法について、先行している条例との関係をいかに位置づけるかといったことでございます。
 それで、先ほど申し上げましたように、法律の中で条例に基づく制度を正面から組み込みまして、地方公共団体を規制主体として定めるということも考え得るわけではありますけれども、ただ、先ほどもありましたように、現在の計画書制度、報告、義務づけといったところについては、温暖化対策推進法上の規定といったところはないというところがありまして、あえて法律において枠をはめて自治事務の範囲を狭めるといいますか、そういったところをやるかどうかといったところは慎重な検討が必要であるというところを書かせていただいております。
 他方で、本来は国の事務であるというふうにして、法定受託というところで地方公共団体を規制主体として定めるといったところも考え得るわけでありますけれども、一次分権改革において従来の機関委任事務を廃止して法定受託事務に整理したといった経緯からして、こういったところは法定受託事務の新設といった点については国会でご議論もありまして抑制的にするというふうになっているということからすると、こうした位置づけはなかなか難しいと考えられるというふうに思います。
 そうした場合に、国の法律といったところは国の事務についてのみ定めるというところになってくるわけでございますけれども、他方で今までなかったのでよかったかもしれませんが、法律ができるとなると、従来の条例の排出量取引の制度が法律との関係で、有効性等々の関係で不安定になってしまうのではないかといったところがありますので、何らか関係を整理する規定を設けて、いわゆる入念規定にはなるかもしれませんが、条例において必要な規制を設けることを妨げない旨明確化するといったことが必要ではなかろうかという旨書かせていただいております。
 ただ、こういって必要な規制を設けることは妨げないといった場合もどういう関係の整理にするかといったところがございます。いわゆる横出し、上乗せの議論でございますけれども、公害法制ですと両方相対として認めているというところがあるわけですが、例えば環境影響評価アセスでございますと、法律の手続の対象外の事業について条例において定めを置くと。横出し的なことは認めているし、実際やっていらっしゃるわけですけれども、法律の対象となった事業の手続については別の手続を条例で義務づけるといったことは認めていないというような事情がございます。
 それで、国内排出量取引制度についてでございますけれども、いわゆる横出し、法律による規制の対象外、例えば裾切り以下でありますけれども、について条例によって規制の対象とするといったことは、これは問題ないんだろうというふうに考えられるわけですけれども、規制対象者が重複する場合の関係についてといったところは検討が要るのではなかろうかといったところがございます。
 それで、公害のように汚染物質で地域的な局地的な濃度汚染があるというわけでもありませんので、法律と条例が同一の規制対象について同様の義務を課すという場合に、過剰な負担といったところが生じないように法律に基づく制度において一元的に行うといったことが考えられるというわけでございますが、法で既に進んでいらっしゃる東京都、埼玉県の制度について、めくっていただきまして、その効果が損なわれないような十分な配慮が必要だという旨を書かせていただいております。
 ただ、今オプション案といったところでご議論いただいているところでございまして、既存の東京都、埼玉県の条例との関係を整理するといったところ、制度オプションの考えによっても変わり得るというところで、電力の扱いによっては重複する規制対象の範囲といったものが変わり得るでしょうし、例えば原単位方式オプションCでございますけれども、であると東京都、埼玉県の条例いずれもその総量といったところで、同様な規制というものではないというような見解もあり得るかと思っております。
 いずれにいたしましても、具体的な重複があるか、同様の規制かといったことが言えるかとどうかといったところは、今申し上げましたような詳細な制度設計を進める上で判断すべきだといったところを書かせていただいております。
 それで、地域主権戦略大綱等に基づき進められている地域主権改革の検討といったところはまだ現在進行形でございまして、これが進捗するとそもそも全部の考え方が変わるかもしれませんので、そういったときは検討の進捗に応じて、必要に応じて見直すべきではないかといった旨、念のため書かせていただいております。
 [4]のところで、既存の条例との調整といったところ、さらに書かせていただいておりまして、法令上の関係整理といったところはオプションごとに異なり得るわけですけれども、いずれにせよ詳細な調整が必要であるといったところを書かせていただいておりまして、例えば事業者が、排出量が増えて国の裾切り基準値以上になってきたといった場合に、従来条例によってやってきた取組といったのはしっかり評価する必要があるんじゃないか。あるいは、法律と条例の両方の制度で制度対象者の考え方、昔、適用単位と言っていた話ですけれども、が異なる場合とか、あるいは算定方法が異なる場合といったところで混乱を招かないようにしっかりと法律と条例の両者の関係を明確化すべきではないかといった旨、書かせていただいております。
 3の方針(案)のところですけれども、今申し上げたようなことを改めて書かせていただいておりまして、規制対象外について条例によって規制対象とすることは問題ないと考えられると。重複する場合に、同一の対象者について同様な義務づけを行う場合は、法律に基づく制度において一元的に行うことが考えられるが、条例に基づく取組が損なわれないよう十分留意しながら、詳細な制度設計を進めて、具体的に重複があるか、同様な規制と言えるかといったことを判断するといったところが必要で、そういったことを踏まえて関係整理の規定を置いてはどうかと。また、実際に条例に基づく事業者の取組を法律においてしっかりと配慮するとか、双方の制度を明確化するといったところを書かせていただいております。
 説明は以上でございます。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは、今の説明に関しまして、ご意見とかご質問ございましたらお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
 では、大野委員からお願いできますか。

○大野委員 これは、この小委員会で地方自治体から参加しているのは私だけでございますので、少し長目にお話をさせていただきます。
 やはり、国と地方の関係、先行する条例の制度と今後入ってくるであろう国の制度の関係を考える場合に、一番大事な点が2つ私はあると思っております。
 1つは何といっても、先行する条例の制度によって、先に取組をされている事業者の努力がきっかりと評価されると、このことが一番大事だというふうに思っております。もう一つは、やはりこれも今、触れていただきましたけれども、先行している地方の取組が生かされると、そこでの削減に向けた方策が生かされてくると、この2つのことが一番大事だと思っております。そういう点では、今日の整理の中ではその点が明言されておりますので、基本的には妥当なまとめではなかろうかというふうに思っております。
 実際に国の制度が入ってくるときには、いろんな細かい調整が必要になってくると思いますけれども、またあまりにも不確定要素が多うございますので、現時点ではこのまとめぐらいのところが限界ではなかろうかというふうに思っております。
 その上で2点だけちょっと追加的な意見を言わせていただきたいんですけれども、1点は2ページのところでございます。2ページの一番下のところで、現在の地球温暖化対策推進法に基づく事務について、まず算定報告公表制度については温室効果ガスが一地域を超えて地球規模の影響を発生するので、都道府県知事経由によらず国の直接執行事務としてやるという事実がございます。これはこういうご理解もあるんだと思うんですけれども、ただ、一方で、これは例を1つだけ挙げさせていただきますと、同じ地球環境問題でオゾン層の破壊のものがございまして、これに対応する法律としてフロン回収破壊法という法律がございます。このフロン回収破壊法の中では、フロンを使っている製品を使っている人でありますとか、回収事業者でありますとか、破壊をする人でありますとか、大体分かれているのが6つのプレーヤーがございます。6つのプレーヤーがあるんですけれども、その中で国が所管するというふうにしておりますのは1つのプレーヤー、フロンの破壊事業者だけでございまして、それ以外のプレーヤーについては都道府県知事が指導、助言でありますとか、勧告、命令も行うことになっております。これは議員立法ということがありますので、少し経緯が違うということがあるのかもわかりませんけれども、しかし、それにしても現実に地球環境問題においてもこういう整理があるということについては、やっぱり留意すべきだろうというふうに思っております。
 現に現在、先ほども地方分権についてはいろんな議論が行われておりますが、全国知事会からの提言、報告書の中では、現在の報告書の制度、国の報告書制度についても分権の対象にすべきであるというような意見も出ておりますので、そういうことについては指摘させていただきたいと思っております。
 それからもう一つ、2点目なんですけれども、キャップ・アンド・トレードについては、もともとこれは地球環境問題でありますから、第一義的には当然これは国が一番大きな役割を果たしていただくべきであるということであると思っております。したがって、その中枢的な施策であるキャップ・アンド・トレードについても当然国家レベルで先に構築されているというのが望ましいというのが理念的な理解なんだと思います。実際、少し前まではそういう局面だというふうに思っておるんですけれども、ただ、実際には、世界的に見ても今後の展開を見ていると、必ずしも国の制度が先行するというふうになっていかないというふうな、これが必ずしもいいことか悪いことかわかりません、いいことでないかもしれませんけれども、現実としてはそうなっているということも押さえていく必要があるのではなかろうかと思っております。
 日本はそういう意味では、現に東京の制度が先行しているということがございますし、アメリカも先般の中間選挙の結果、これも少なくとも2年間は連邦政府レベルのキャップ・アンド・トレードを導入していく可能性はゼロになったと言って間違いないというふうに思います。同じ中間選挙があった日に、実はカリフォルニア州の知事選挙がございまして、これも2012年からの制度に実施に向けていろんな議論が行われてきたわけですけれども、カリフォルニアでは2010年からの制度の推進を掲げる知事が当選し、もう一つ住民投票で失業率が一定の水準まで下がるまでは実施を延期するという住民提案が提案されていたんですが、これも通らなかったということで、カリフォルニア州においては2012年から実際にキャップ・アンド・トレードが実施されるのが確定的になったということであります。
 カリフォルニアの経済規模というのは、国として見ても世界第8位の非常に大きなところでございますし、カリフォルニアが動くということは、同時にWCIというグループがございまして、これに参加しているカナダのブリティッシュ・コロンビア、オンタリオ、ケベックという3つの州が同時に動くことになりますので、合計して約2億トンぐらいの市場が生まれます。カナダもそういう意味では、連邦政府よりも先に動くということでありますので、こうした動向を踏まえましても、やはり地方制度が先行しているというような例も一つのルートとしてあり得るということでありますので、そういう意味でも、今回まとめの中で先行する地方の制度にご配慮いただいているのは妥当ではなかろうかというふうに思っております。
 以上でございます。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは、新美委員、お願いできますか。

○新美委員 今の大野さんのお話と私は大分正反対であります。というのは、アメリカとかカナダの州と連邦の関係と、我が国の都道府県と国との関係では全然権限も割り振りも違うわけでありまして、むしろアメリカとかカナダは州が国であって、それをまとめるのが連邦であると、ちょうどEUのようなものだというふうに、ちょっとラフですけれども、そう考えるべきであって、当然日本の都道府県がそれらの国の州と同じだというふうに考えるのはあまりにも乱暴な議論だというふうに思います。
 それから、それを一つ伝えておきたいということと、もう一つは、温暖化の問題が、これは大野さんも的確におっしゃったんですけれども、これは国レベルでの努力であるということが大事であります。ですから、これまでの環境法制を見てきたときに、地方のいわば独自の規制を認めるというのと相当様相が違っていると思います。公害の場合の横出し、上乗せというのは、まさに地域環境の特性があって公害の出方もそれぞれの地域環境に応じて出てくるから、自治体の独自の規制を認めましょうということになってきたと思います。
 それから、環境影響評価制度につきましても、これは国レベルのものを外して、あと、それがないものは地域で認めるというんですが、これも環境影響というのはそれぞれの地域の環境影響を見るわけでありまして、地球レベルのものではないわけです。ですから、そういう意味で、これまであるものの制度があるから単純に上乗せ、横出しがいけるということにはならないと思います。むしろ国全体でやっていくべきであるという温暖化対策の中で、地域において独自に行い得るものが何なのかということをきちんとやらないと、二重規制になる可能性というのは非常に大きいというふうに思います。ですから、先ほど出ましたオゾン層の問題も、これは委任立法があるからできるわけでありまして、本来国がやるべきですけれども、それだけの能力ないしはノウハウを持っていないから、都道府県に委任しているというところがあるわけであります。ですから、これまでの国と自治体の議論とちょっと違った局面があるということは押さえておく必要があるだろうと思います。
 以上です。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは、武川委員、お願いできますか。

○武川委員 ありがとうございます。
 何点かあるんですが、まず、今からお話しすることの前提として、ここで言う地方の制度というのは多分いろんなものがあると思うんですが、今念頭に置いているのは基本的に東京都さんがやられているような、いわゆるキャップ・アンド・トレード的な、総量規制的な制度を念頭にお話をします。つまり、単純な報告制度であったり、計画諸制度のようなものであるとちょっとまた別論の議論があるかもしれないということをお断りした上でお話ししたいんですが、まず、ここに書かれていることのうち、地方で行われた取組を評価する必要があるという点、それから条例と法律が併存した場合に両者の関係を整理したほうがいいという点はそのとおりかなと思っておりまして、現場の感覚としても、いろいろ東京都さんの制度でも相談を受けているんですが、正直これどうなるんですかね、この制度はと。あるいはここで頑張ったことはどうなっちゃうんですかというのはやっぱり非常に根強いものがありまして、ここはぜひとも何らかの形で対応する必要があるかなというふうに考えております。
 一方、ちょっとここは議論の余地があるかなと思っているのもありまして、それは新美先生の問題意識とも重なるんですが、法律による規制の対象外、例えば裾切り基準以下の場合については条例で規制対象とすることは問題ないというふうに割と無邪気に書いているんですが、本当にこれはそうなのかなというのはよく考えたほうがいいんじゃないかなというふうに思っております。といいますのも、まず幾つか私が疑問に思っているところがあるんですが、1つはキャップ・アンド・トレード、法律のつくる際の哲学として、そういう地方でキャップ・アンド・トレードを法律が規制しているもの以外であれば、原則何でもやっていいんですよというのが本当に法律の趣旨なんだろうかということをやはり考える必要もあるのかなと。これはやはりCO2ということなので大気中に拡散しますから、そこも踏まえて本当にそうなのかと。あるいは、それに対して地方でいろんな規制が入った場合に、事業者にどういう影響があるのかと、それがまさに受容可能なのかというあたりをやはり考えなきゃいけないんじゃないかというのが一つあります。
 それから、2つ目として、これは法律全体としてそういう地方条例での規制を認めているかというのをまさに判断せよというのが最高裁判決の趣旨でもあるんですが、そこで判断すべきはキャップ・アンド・トレードだけではないと思うんです。つまり、いろんなポリシーミックスの中でキャップ・アンド・トレードの対象になっていないセクターや部門についてもいろんな形で対応していきましょうというのが法律レベルの規制で入る可能性は十分ある、規制というか制度が入る可能性があると。それを考慮しても、なお地方に規制を認める趣旨というふうに法体系全体として言えるんでしょうかということはやはり考える必要があるのかなというふうに思っています。
 それから、3つ目として、技術的に結構大変なんじゃないでしょうかというのがあって、まさにここにも書かれているように重なり合いの判断というのはすごく難しいと思います。要は規制対象がそもそも物や事業所に着目するのか、あるいはそれをベースにしながらも人に着目するのかとか、電力が直接か間接か、こういういろんなバリエーションがある中で本当にこの制度は重なっているんですかというのは、一々判断するのは極めて大変というのもありますし、あとまさにここにも書かれているように、条例を卒業して法律に入りましたというようなことも対応が必要だと思います。これは最初に申し上げたとおりなんですが、そうだとすると、本当にいろんなバリエーションがあったときに、卒業の仕組みをちゃんと法律の中に書き込めますかあるいは哲学を書けますかというと、実際私はすごく難しいんじゃないかと思うんです。
 以上のことから考えると、私の今の感覚なんですが、法律と条例の役割分担は当然あってしかるべきだと思うんですが、一方であらゆるバリエーションを許容して、何が起こるかわからないけれどもこういうことが起きたらどうしましょうかねというのでもワークしないということになると、法律の中である程度条例としてはこういうことを規制して、あるいはこういう制度であればいいですよというある程度のひな形のようなものを書き込んでいかないと、多分ワークしないんじゃないかと。その意味するところは、そういうものなら地方はやっていただいても結構ですが、それ以外はやってもらったら困りますということになるんじゃないかなというふうに思います。
 なぜこうしたほうがいいかというと、現実問題として今我々が考慮しなければいけない制度としてあるのは、恐らく東京都さんの制度と埼玉県さんの制度なんだろうと。ですから、まずはそこにフォーカスを当てながら、どういう架橋、ブリッジがあるのかを考えつつ、それ以外のものも、何をやってもいいですよというのはちょっとこれからワークしないんじゃないかなというふうに個人的には考えています。
 以上です。

○植田委員長 それでは、諸富委員、お願いいたします。

○諸富委員 先ほどから新美先生もアメリカの話を出されましたが、連邦制国家ではない我々、単一制国家の国において、こういう形で国と地方の関係を整理するのは非常に難しい点ではあると思いますが、その中の非常に多様な論点を拾いながら、非常に興味深いペーパーを書いていただいたかと思います。結論的な点は、私は実は趣旨には賛成でありまして、こういった方向でとりあえず考えていくべきではないかなと私も思います。
 現時点においては、国の制度が果たしてどういうものになるのか、環境省において、ここ現在中間指針において議論している制度が本当に実現するのかどうか、産構審でも議論を進めておられるわけで、そういう中で法律論を超えて私が非常に心配するのは、この国の制度があまり環境政策上かちっとしたものにならない場合において、しかし国の法律において東京都の制度が法律違反に結果としてなってしまうようなケースはぜひとも避けたいなというのが個人的な思いとしてはあります。
 そういう中で、実際の先進的な恐らく施策というのは、日本全体総体として恐らく温暖化対策を前進させていく非常に重要な構成要素ではないかなというふうに思っております。東京都の制度というのは、CRCと比肩する非常に先進的な業務部門に対する事実上のキャップ・アンド・トレードの制度でありますし、非常に多くのシンガポールを初めとして、ほかの各国の問い合わせがあるということを伺っておりますが、そういう制度の持つ意味というのを十分生かすような形にしていただければというふうに考えております。
 ただ、すべての制度が東京都と同じ水準で、確かに計画書制度というものがあるとはいえ、きちっとした制度を実現、今後もできるとは限りません。そういう意味では、まず国の制度がきちっと全国をカバーするような制度としてしっかりしたものが組まれていて、しかし東京都のようにしっかりと制度を組んでいるところについては、ここにあるような重複について整理を行うというのが恐らく基本的な考え方ではないかなと思います。そういう意味では、ここに書かれているペーパーと基本的に私も同じ考え方だというコメントをさせていただきます。
 どうもありがとうございました。

○植田委員長 ありがとうございました。
 では、明日香委員、お願いします

○明日香委員 私もこの趣旨には、このペーパーに関しては非常によくまとまっているかと思います。幾つか今まで議論があったと思うんですが、アメリカでも日本でも一つのジュリクスリクションというんでしょうか、に幾つかの制度が混合している場合は、程度の差はあるかと思うんですが調整は必要で、かつ調整は非常に難しいのかなとは思います。
 個別に具体的に私がちょっと気になるというか気にすべきだと思うのは、やはりダブルカウントというんでしょうか、国内で言えば幾つか東京都の制度はクレジットがありますし、国内クレジットもありますし、J-VERありますし、J-VERも地方と全体のがありますし、幾つかの制度がありますので、そこら辺そういう関係の中でのダブルカウントは排除する、実際にはかなり難しい問題だと思うんですけれども、必要が出てくるのかなと思います。
 あと、それに関するものとしてMRV的なアカウンティング方法もある意味では統一、ISOみたいな形で統一する、いろんなやり方があるかと思うんですが、ばらばらではなく何らかのグランドデザインが当初、最初からは難しいと思うんですが、考えながら全体的な枠組みをつくっていくべきかなとは思っています。
 以上です。

○植田委員長 ありがとうございました。

○明日香委員 あと、すみません、もう一つ。
 例えば使っていいクレジットと使っていけないクレジットというのも非常に重要なのかなと思います。具体的にはこれの電力証書をどうするかとか、いわゆるそういう種類の問題もあるかと思います。
 以上です。

○植田委員長 大塚委員、お願いします。

○大塚委員 すみません、法律と条例の関係の話なので、多少長くしゃべりますが、最終的にはこのペーパーのような方向性でいいかなと思っているんですけれども、いろいろ考えなくちゃいけないことがたくさんあるということもちょっと申し上げておきたいと思います。
 第1にこのペーパーとの関係で申し上げておくと、一つは公害との関係は先ほど新美委員もおっしゃいましたけれども、もう少しきっちり書いていただいたほうがいいかなと思います。公害は基本的に地方によって汚染が集中する可能性がありますけれども、CO2とかGHGは基本的にそういう問題はありませんので、そこは公害とは大分違うということを、さっき環境省のほうのご説明にもありましたけれども、ちょっと書いていないので、ぜひそこは書いていただいたほうが思考の整理のためには非常にいいのだろうと思います。
 それから、環境影響評価についても挙げられていますけれども、ここにもちょっと書いてあったと思いますが、環境影響評価の法律と条例の関係の問題というのは、手続の上乗せの話だというところが一番のポイントだと思いますので、そういうこともちょっと、そういう意味ではちょっとあれですよね。ほかのと必ずしも一緒には議論しにくいところもあることはあるので、書いていただくのは構わないと思いますけれども、ここは手続と書いていただいていますが、要するに手続だというところが実態ではないというところ、ちょっと違うと思いますので、そこを強調していただけるとありがたいかなと思いました。それが第1点です。
 それから、2つ目に今いろいろ議論があって、とてもおもしろかったですけれども、ご案内のようにアメリカの連邦の法案では、連邦で排出枠取引制度が入ったときには州の今の知事等が全部提出することを条文にうたっておりますので、そういう考え方もあることはあるということは一応申し上げておきたいと思います。それは、別に私がそれがいいと思っているわけでは必ずしもありませんけれども、さっき新美委員がおっしゃったこととか武川委員が気にしておられたようなことが実はあるからで、温室効果ガスについて最終的にどういう形で国と地方の関係を見るかというのは、1つにしたほうがいいんだという発想はあることはあるということですね。それは情報として申し上げておきます。
 武川委員がおっしゃったことは、みんなそのとおりで、とてもおもしろいご指摘だったと思います。特に法律の哲学というふうに最初におっしゃったこととの関係で言えば、結局これは公害と同じようなナショナルミニマムの法律なのかとか、あるいは最小限規制立法なのかという、そういう問題なので、最小限規制立法とかナショナルミニマムでないとすれば、もうそれは条例でこれ以上は決めてくれるなという話もあり得ないわけではないんです。私はそういうふうに考える必要はないと思いますけれども、議論としてはあり得るので、それはちょっと触れないといけないかもしれないですね、確かに。
 それから、武川委員がおっしゃった第3点目の技術的に大変だというのは、これは私は何とかここはクリアしないとまずいかなと思っていて、これはこのペーパーの趣旨でもあるんですけれども、とにかくやっぱり重なり合いはなくすというのは頑張ってやらないとだめだなと。じゃないとちょっと整理はできないなと思いますので、そういう意味では、そうすると何か東京都さんの前のご趣旨である、国のほうは直接排出方式で、都のほうは間接排出方式でというのは、ちょっと私はダブルカウントになるから、重なり合いが出てくるから難しいなというふうに思っちゃうんで申し訳ないんですけれども、というようなことは、その議論は横に置いておくにしても、重なり合いの判断はやっぱりちょっときっちりやらないといけないかなという気がします。
 それから、さっき大野委員がおっしゃったフロン回収破壊法との関係とかでいうと、ここ三、四年ですけれども、新たに法定受託事務をつくったり、自治体に対して義務づけをするような法律をつくることに関しては、分権推進の観点からということなんですけれども、ちょっと今までのような法律のつくり方が法定受託事務でできなくなっていますので、それは分権推進の観点からそういうことになっているので、ちょっと環境政策としてはいいのかなと一般的には思わないところもないんですけれども、事実上の問題としてはちょっとそういう状況にあるということは前提にして議論せざるを得ないのかなと、何か考え方をそこは変えていただければいいんですけれども、環境政策をやるときに自治体に法定受託事務で何かやっていただけなくなるというのも本当は大問題だと思うので、それ自体の話は別にしたいところもありますけれども、ただ議論としてはちょっと今、そういうことを前提にして考えるのが現実的かなと思います。
 それから、以上、第2点ですけれども、第3点としてちょっと申し上げておきたいのは、私は、これは自治体の東京都の制度と国の制度が入ったときにはリンクすべきだとは思っていて、ちょっとこれもご議論があるし、あまりこの議論はここに出てきていないですけれども、国にそんな2つも3つも市場をつくっても、そんなに取引も起こらない可能性もあるのにどうなんだろうというのは非常に思っておりまして、つくるんだったらリンクのことは考えていただくといいのかなと思います。
 以上です。

○植田委員長 ありがとうございました。
 では、冨田委員、お願いします。

○冨田委員 ありがとうございます。
 法律の先生方の議論に口を挟むほどの知見は持ち合わせていないわけですけれども、事業者の立場とすれば、もう言えることは一点しかなくて、制度の重複もそうですし、それから例えば義務履行のやり方等も全部一緒にやるんだったら一緒だろうと。別々で同じことをやっても評価が違うとか、そんなことはあり得ないと。そうじゃなくても温暖化対策は非常に苦労してやらなくちゃいけないだろうというところがある中で、無駄な努力はさせないでくださいという切なる思いをお伝えいたします。
 以上です。

○植田委員長 武川委員。

○武川委員 念のため補足なんですが、私の立場というのをもう一度念のため申し上げると、条例があること自体を問題視するということでは決してないので、そこは誤解なきようにお願いしたいなというふうに思います。ポイントは、いろんな方がおっしゃっていたように、結局何らかのリンクというふうに言うのがいいのか、あるいは併存するけれども関連するということになるのか、それはいろんなパターンがあると思うんですが、どっちにしてもそういうことを必ず法律にやっぱり書かないといけないんだろうなというふうに思っています。完全にお互いがスタンド・アローンで重なっていないから結果的によかったねというわけにはいかないでしょうというふうに思っていまして、そう考えるとある程度のパターンやバリエーションはあると思うんですが、あるいは抽象度をどう書くかというのはあると思うんですが、こういうものならぜひやっていただきたいと、その中でそういうものが入った場合には、じゃ法律としてはこうしましょう、条例としてはこうしてくださいということで、法律と条例の関係が1,000通りもあるということは決してないであろうと、あるとしたら一通りか二通りの、そういう問題なんじゃないでしょうかという、そういう趣旨でございます。

○植田委員長 よろしゅうございますか。
 ありがとうございました。
 そうしたら、室長からお願いします。

○上田市場メカニズム室長 種々ご意見いただきありがとうございました。
 ご指摘のところは、1つは資料でいいますと3ページのところの横出し、上乗せ議論のところの結論の出し方が至極単純過ぎるのではないか、もう少し丁寧に書くべきではないか、その際には従前の公害規制と温暖化行政の違いというものも意識して書くべきではないかというご指摘に集約されるのかと思います。その点につきましては、少し丁寧に書かせていただこうかと思います。若干、資料にもつけていますが、徳島公安条例の最高裁判決であるとか、憲法の趣旨やら規定等、自治法の規定等をかんがみて、若干厳しく解釈していたのかもしれませんが、結論からすると結局、今、最初資料の説明でもございましたが、具体的にまだこの制度がどういうふうな形になるかと、こういうものが固まっていなくて、最高裁判決でのまさに文言だけで型どおり決めるのではなくて、実際の中身、趣旨等を勘案して実際に抵触するのかどうかを判断するということかと思いますので、結論部分においては変わらないのかなと思いますが、その前提になる途中の意見の整理の仕方が若干単純化され過ぎているというところがあったのかと思いますから、その点については整理をしたいと思います。
 そのほか、技術的な問題ということでご指摘があったかと思います。同一の法律上の中に国と地方の事務の併存というのは、3ページの上段部分のほうで、なかなか難しいのかなと、現行の地方分権の議論の中でも難しいかというふうに書いたところではございますけれども、実際の実務としてそれがある種、どこかで整理ができたとして、その接続部分については実際には法律というよりも実際の排出枠の設定であるとか、カウントする実務のレベルで調整するのかなと。その際には、例えば法律のほうに、条例が法律を尊重していかなければならないような趣旨の訓示規定、そういったものは例があるようでございます。実際にこのあたりは我々も環境法規には精通しているつもりでも、それ以外の分野で国と地方の関係はどういうふうなものを書き込んでいる例があるのか、すべてを網羅しているわけではございません。何かヒントがあればご指示いただければと思いますが、いずれにせよ何らかの工夫というのはもう少しできようかと、そういったところの記述も実際にどこまでできるのか、東京都さん等とも相談しながら少し論旨の整理をしてみたいと思います。
 結論部分については、最終的には、制度としていかなる制度になるのかと具体的に決定づけないと、そういったのが今オプションとしてぶら下がっていて、またオプションが絞り込まれても実態判断としてどうなのかということで結論づけるのは難しいかもしれません。そのときには考え方を整理するというところにとどまるかもしれませんが、今言われたようなご指摘については少し丁寧に書いてみたいと思います。
 以上です。

○植田委員長 ありがとうございました。
 今日ご審議いただく論点は以上でございます。
 皆さんのほうから他に何かございますか。よろしゅうございますか。
 この要領で今後続けてまいりまして、制度オプション案にまとめていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
 それでは、事務局からございますでしょうか。

○上田市場メカニズム室長 本日の論点の議事につきまして、ご質問、ご意見等ございます委員の方におかれましては、12日中に事務局まで提出をいただければと思います。
 また、次回でございますが、11月16日、来週火曜日1時から3時間、4時までというものを予定しております。場所等の詳細については追ってご連絡させていただきたいと思います。

○植田委員長 では、以上で本日の議事は終了ということでございます。
 どうもありがとうございました。終わります。

午後3時07分 閉会