国内排出量取引制度小委員会(第4回)議事録

日時

平成22年5月25日(火)9:00~12:04

場所

ホテルグランドパレス ダイヤモンドルーム

議事次第

1 開会
2 議題
(1)
関係業界・団体からのヒアリングについて
(2)
その他
3 閉会

配付資料

資料1 本日の進め方
資料2 委員からの事前質問
資料3 「セメント産業における持続可能な社会に向けたこれまでの取組み」(セメント協会提出資料)
資料4 「キャップ&トレード方式による排出量取引制度の論点について」(日本製紙連合会提出資料)
資料5 「排出量取引制度についての意見 -業務部門における課題提示等を中心に-」(不動産協会提出資料)
資料6 「排出量取引制度に関する基本的考え方について」(電気事業連合会提出資料)
資料7 「持続可能な低炭素社会に向けた企業グループからの提言」(日本気候リーダーズ・パートナーシップ提出資料)
資料8 「国内排出量取引制度小委員会提出資料」(日本経済団体連合会提出資料)

午前9時00分 開会

○戸田市場メカニズム室長 それでは、定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会国内排出量取引制度小委員会の第4回会合を開催いたします。
 本日は、前回に引き続きまして、関係業界・関係団体からのヒアリングとなっております。6団体に来ていただいております。紹介は追ってさせていただきます。
 本日は、委員総数14名中、過半数の委員にご出席いただいておりますので、定足数に達しております。
 また、本日の審議は公開とさせていただきます。
 以後の議事進行は、植田委員長にお願いいたします。

○植田委員長 おはようございます。
 それでは、早速議事を進めさせていただきます。まず事務局のほうから配付資料の確認をお願いします。

○戸田市場メカニズム室長 最初に、一番上に議事次第がございます。議事次第の下に配付資料のリストがございます。資料1が「本日の進め方」。資料2として「委員からの事前質問」。資料3から資料8は、本日のヒアリング団体からの資料ということになっております。
 資料の不足等がございましたら、事務局までお申し出ください。

○植田委員長 資料はよろしいでしょうか。
 それでは、議事に入ります。今日の進め方ですけれども、資料1に沿って、事務局からまず説明をお願いします。

○戸田市場メカニズム室長 それでは、資料1をご覧ください。本日は、関係業界・団体からのヒアリングということで、6団体にお越しいただいておりますので、順次ご紹介いたします。
 まず、セメント協会の照沼生産・環境幹事長代行でございます。
 次に、日本製紙連合会の志村地球温暖化特別委員会ワーキンググループ座長でございます。
 次に、不動産協会の杉山環境委員長でございます。
 次に、電気事業連合会の廣江事務局長でございます。
 次の日本気候リーダーズ・パートナーシップでございますけれども、則武委員からプレゼンテーションをいただきます。
 最後の日本経団連の岩間環境本部長につきましては、遅れてご到着とお聞きしております。
 各団体におかれては、それぞれ15分ずつプレゼンテーションをしていただき、残りの時間でまとめて質疑をしたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。時間の関係上、13分ぐらいたったところでメモを入れさせていただくかと思いますので、よろしくお願いいたします。また、もしパソコンをお使いになる場合には、発表者席のほうで操作いただきたいと思います。もし別の方が操作される場合等につきましては、現在の席で結構でございます。
 また、事前に委員からいただいたご質問が資料2にございますけれども、これにつきましては可能な限りプレゼンテーションの中で触れていただければ幸いでございます。
 以上です。

○植田委員長 それでは、まずセメント協会の照沼様のほうからお願いできますでしょうか。よろしくお願いいたします。

○セメント協会(照沼) おはようございます。セメント協会生産・環境幹事会の幹事長代行をしております照沼裕之です。それでは、セメント協会のほうのプレゼンを「セメント産業における持続可能な社会に向けたこれまでの取組み」と題しまして、セメント産業の現状と社会貢献についてご説明した後、排出量取引制度について意見を申し述べたいと思います。
 セメントについてはよくご存じでない方もいらっしゃると思いますので、まずはセメント産業の概要についてご説明いたします。
 セメント協会は、ご覧のように、合計18社から成り立っております。
 セメント産業の現状ですけれども、近年、非常に需要が落ち込んでおります。この理由としましては、公共投資削減の影響、それから、これは一時的なことでありますけれども、改正建築基準法の影響、それから、セメントに限りませんけれども、リーマンショックによる世界不況と、こういうことで非常に需要が落ち込んでおります。ちなみに、2009年度、昨年の国内需要は約4,300万トンということで、これは約43年前の需要レベルで、ピーク時の約半分に落ち込んでおります。
 セメント工場は、スライドでご覧のとおり、全国各地に分布しておりまして、合計32工場あります。最も生産量の多い工場は九州にあります年間687万トン、それから最も小さなものは東北のほうにあります43万トンということなんですが、平均して年間約198万トン生産するということになっております。
 ちなみに、非常に需要が落ち込んでおりますので、上期中に生産を中止する工場も出てきております。
 セメントとはどういうものかと、ちょっと簡単にご説明しますと、セメントというのは、コンクリートをつくる主要な材料の一つで、皆さんご存じのように、灰色の粉末であります。そのほとんどがコンクリートとして使われております。その原料、それからエネルギーの大体の原単位ですけれども、石灰石が主原料で、1,199キロぐらい使います。そのほかに副原料、廃棄物等を利用しまして、セメントをつくっております。
 それから、セメント産業の生産についてですけれども、生産工程は、主に原料工程、焼成工程、仕上げ工程と3つの工程に分かれております。まず原料工程は、先ほどの原料を目的の品質になるように調合して、粉砕して粉をつくるという工程です。ここではエネルギーとして電力を利用します。それから焼成工程は、1,450度に達する高温の回転炉―いわゆるロータリーキルンを使いまして、クリンカーという中間製品を焼成する、焼く工程であります。ここでは熱エネルギーを利用しております。それから最後に仕上げ工程ですけれども、ここでは焼成工程でできたクリンカーという焼結物、中間製品と石膏を合わせて粉砕して、セメントができる。ここでも電力エネルギーを利用しています。
 それでは、持続可能な社会の形成に向けたセメント産業のこれまでの取組についてご紹介いたします。持続可能な社会というのは、ここに示してありますように、低炭素社会、それから循環型社会、自然共生社会という構成で成り立っていると考えております。セメント産業はそれぞれに非常に重要な貢献をしていると自負しております。
 まず、低炭素社会への貢献ですけれども、ここに示してありますのが、先ほどの焼成工程の焼成の様式別のエネルギー原単位です。こちらに示しているSP、NSPという焼成様式が、一番エネルギーの効率のよい焼成方式です。どのような方式かというのはちょっと省略しますけれども、このSP、NSPというのがいわゆるベストアベイラブルテクノロジー―BATに当たるものと言えると思います。
 これは、日本の焼成様式はどうなっているかという歴史なんですけれども、日本では、NSP、SPというのはもう15年以上前の1990年代から、すべて、100%BATに切りかわっております。
 これは、今のセメントを製造するときの熱エネルギーの原単位の推移なんですけれども、日本の場合は、世界に先駆けて省エネを実施しておりまして、大幅なエネルギー効率の改善を達成しております。もう既に下げしろがないような状態のところまで来ております。
 その結果として各国のセメント産業のエネルギー効率を比較してみますと、日本は世界の中でもトップクラスを達成しております。したがいまして、各国のセメント産業におけるCO2削減のポテンシャルを試算したものがありますけれども、削減ポテンシャルに関しては、総量においても、原単位においても、日本の場合、非常に低い、世界の中で極めて低いという状況にあります。
 そういうことで、ほとんど削減ポテンシャルはないんですが、その中でもやるべきことはやっております。このような省エネ設備の普及促進とか、エネルギー代替廃棄物等の使用拡大、その他廃棄物等の使用拡大、混合セメントの生産比率拡大といったことにトライして、非常に需要がなく、厳しい経営環境の中で、年間150億円ほどの投資を行っております。
 ここからが最も訴えたいところなんですけれども、セメント産業の一番の社会貢献だと考えております循環型社会への貢献についてご説明いたします。
 セメント産業では、このスライドにありますように、さまざまな廃棄物をさまざまな業界から受け入れて、リサイクルを行っております。
 これがリサイクルしている廃棄物の利用の推移なんですが、先ほどご紹介したように、生産量は激減してきておりますけれども、廃棄物のリサイクル量は年々増えてきております。したがいまして、原単位は格段に向上しているということになります。
 これが廃棄物・副産物の使用の推移なんですけれども、このように実にさまざまな廃棄物をリサイクルしておりまして、近年は概ね年間3,000万トンのリサイクルを行っております。
 そのリサイクルの貢献の一例なんですけれども、これは2006年の試算ですが、もしセメント工場が廃棄物をリサイクルしていなければ、最終処分場の余命はあと3.5年しかないという試算があります。実際はセメント工場が廃棄物を受け入れていることによって7年と倍の余命が維持されるということになります。
 もう一つ、社会貢献のリサイクルの一例ですけれども、下水汚泥のセメント化ということを行っております。下水汚泥というのは、水分が多いために、若干エネルギー効率を悪くする要因があるのですけれども、これも一つの社会貢献ということで、循環型社会の構築のためにこれに非常に努力しております。セメント産業でリサイクルがなければ、下水汚泥のリサイクル率は三十数%なんですけれども、今セメントでリサイクルしていることによって70%を超えるリサイクル率となっております。
 これは当協会のポスターですけれども、下水汚泥の36%をセメント原料としてリサイクルしております。
 もう一つ、これは、岩手県と青森県の県境に大規模な不法投棄が行われていたのですが、この原状回復のためにセメント工場を活用して、不法投棄のもののリサイクルを岩手県・青森県にある数カ所の工場で行っております。このような大規模なリサイクルができるのはセメント産業以外にはありません。
 したがって、キャップ&トレード方式による国内排出量取引がセメント産業に及ぼす影響というのは非常に大きなものがありまして、これがネガティブな方向に働けば、今の持続可能な社会の環(わ)が崩れる可能性があります。
 それから、セメント業界は国際協力も積極的に行っております。これは長期的な世界のセメント需要の見通しなんですが、もう日本では需要増加はあまり期待できません。一方で、ほかの国ではまだ需要の伸びが期待できます。ということで、私どもは、国際協力によって世界のCO2削減ポテンシャルの多いところで削減すべきだろうと考えております。
 国際協力の一例として、APP―アジア太平洋パートナーシップのセメントタスクフォースに参加して、この議長国として活動しております。このプラットフォームを使って途上国の低炭素化に貢献していこうと考えております。これまで培った日本の技術を世界にアプライするということで世界のCO2も減らせますし、我々にもメリットがあるという仕組みをつくっていただきたいと思っております。
 最後に、国内排出量取引について、私どもの意見を申し述べたいと思います。まず、この国内排出量取引制度については、非常に慎重であるべきであって、非常に問題点が多いと考えております。その疑問点というのは、公正なマーケットが成り立つのか。公平性を担保できるのか。技術開発を阻害するのではないか。炭素リーケージにつながるだろう。過去の努力は評価できるのか。最終ゴールは持続可能な社会であって、炭酸ガス削減だけではないのではないか。最後に、低炭素社会への貢献は我々もしています、取組を行っていますと。
 まず、公正なマーケットが成り立つのかということですが、この取引というのは、排出する権利の取引ということになりますので、不正が横行するおそれが大きいのではないかと懸念しております。それから、実体のない権利というものを取引する市場では、マネーゲーム化するおそれが大きいのではないか。価格が乱高下すれば、本業の収益を圧迫するだろうと危惧しております。それから、マーケットというのは公正というのが一番大事で、信用のもとなんですけれども、この公正がどのように担保されるか甚だ疑問だと考えております。それから、クレジット価格の変動リスクに左右されて、資金が流出して、企業の体力が衰退してしまい、これによって産業が空洞化するのではないかということを恐れております。このグラフはEU-ETSの価格ですけれども、ご覧のとおり、非常に乱高下すると。
 それから、公平性を担保できるかということですけれども、業種間で排出形態も異なりますし、削減しやすい、しにくいという削減難易度にも差がある中で、これを同じ土俵のマーケットで勝負しなさいということになると、非常に不公平ではないか。セメント業界の中でも専業と兼業と異なる事業形態がありまして、特に兼業については適用範囲などを十分に検討する必要があるのではないかと考えております。

○植田委員長 申し訳ありませんけれども、もう時間ですので、まとめていただけますか。

○セメント協会(照沼) はい。基本的には、排出量取引制度に関しては、非常に疑問を持っておりますし、私どもセメント産業を消失させるおそれがあるのではないか、あるいは炭素リーケージがあるのではないかということで、先ほど申しましたように、持続可能な社会というのは、これだけではありませんので、先ほどのリサイクルというものをつぶしてしまうおそれがあるので、それも考慮に入れた温暖化政策であるべきであると考えております。
 それから、いろいろな政策、制度設計が検討されておりますけれども、この二重、三重の負担が技術の衰退につながるのではないかと危惧しております。
 それから、公平性が保たれて、過去の努力が反映されるようにぜひしてほしいと考えております。
 以上でございます。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは続きまして、日本製紙連合会の志村様、お願いできますでしょうか。

○日本製紙連合会(志村) それでは、始めさせていただきます。製紙連合会地球温暖化対策特別委員会ワーキンググループの座長を務めております日本製紙の志村と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 私どもの紙パ業界は、木と紙とエネルギーで生産活動を行っております。その生産サイクルを見ますと、原料だけでなく、廃棄物処理においても、エネルギー利用においても、代表的な循環型産業と言うことができます。次のスライドでもう少し詳しく説明します。
 左下のほうですけれども、原料である木は、利用するのに十分な大きさになった段階で伐採されまして、製材等に使われていきます。私どもの業界は、こうした製材の端材やチップ用の植林木の繊維分から紙をつくっております。伐採された木の跡には植林が行われるということで、何十年かすればまた立派な木に成長するということになります。赤道近くでは8年程度で成木となりますユーカリも植林されています。使い終わった紙は、古紙として6割以上がリサイクルされています。エネルギー利用におきましても、化石エネルギーを半分近くに減らしておりまして、残りは再生可能エネルギーや廃棄物エネルギーで賄っております。CO2で見れば、木の成長・伐採のサイクルと同じように循環しているということが言えます。
 自主行動計画につきましては、当業界は1997年に制定しまして、2004年、2007年と、これまで2度の目標の改定を行っております。挑戦的な目標の設定と達成によります上方修正によりPDCAがうまく機能していると考えております。
 温暖化フォローアップの動きをグラフで見ていただきますと、2003年ぐらいから一番下の折れ線の化石エネルギー原単位もその上の化石エネルギー起源のCO2原単位も急減しています。化石エネルギーから再生可能エネルギー及び廃棄物エネルギーへの転換が進んだことによります。
 これは、省エネルギー、燃料転換投資の推移を示しています。棒グラフの赤い部分が燃料転換投資額です。近年、青い部分の省エネ投資に上積みした形で大きな投資が続けられていることがおわかりいただけると思います。2000年から2008年までの累計の投資額は約3,000億円でございます。
 廃棄物エネルギーと再生可能エネルギーの消費量の推移です。上のほうから、木屑、RPF、廃タイヤなどの使用が促進されているのがわかります。1990年実績では、再生燃料であります黒液というのがあるのですが、これを含めて、全エネルギーに占める割合は35%ぐらいだったんですけれども、2008年では47%になっております。
 このような他業界から発生する廃棄物を紙パルプ業界で再資源化したり、燃料利用を推進しております。その利用量は右上がりで年々上昇して、2008年では年間400万トンを上回っております。
 紙パ産業の今後の地球温暖化対策としては、大きく3本の柱がございます。第1は、廃材、廃棄物の利用でありまして、これが最も大きな温室効果ガスの削減につながるものですけれども、林地残材の集荷・運搬などのシステムの確立という課題が残っております。しかし、工場のほうにリーズナブルなコストで運ぶことができれば、ボイラーのほうは既にバイオマス燃料利用可能な状態になっているところがほとんどですので、すぐに使用することが可能です。ちなみに、第2は高効率古紙パルパーなどによる省エネの推進、第3は高温高圧回収ボイラーの導入による熱効率の改善となります。
 バイオマス資源は、紙パルプ業界としては、まず原料として利用することを考えて、その次に燃料として利用することを考えています。バイオマス燃料としては、2005年の88万トンから2020年には159万トンまで利用を引き上げることを考えていますけれども、設備投資費用として1,290億円を見込んでいます。
 この図は、赤い点が全国に立地している主な工場を示していますけれども、そのうち☆で工場名のついたものが、バイオマス燃料の利用が可能な設備のあるバイオマスボイラーが設置されている工場ということです。日本全国に満遍なく広く分布していることがおわかりになると思います。
 この2つの図はちょっと小さいのですけれども、上のほうは、我が国全体のエネルギーバランスを示しておりまして、中ほどにちょっとチェッキングしていますが、エネルギー転換ロスは約60%となっています。それに対して、下の紙パルプ産業のロスは約30%と、半分程度になっています。非常に効率がよいのですけれども、コージェネによって蒸気として使用します量が比率として6割以上あることによります。
 これは、国内外で所有・管理している植林の面積の推移を表しています。現在の目標を赤いラインで引いていますが、2012年までに70万ヘクタールということですけれども、目標達成が十分に可能な水準に来ていると思っています。国内は新たな植林の余地が少ないため、海外での植林を拡大させてきております。
 ここで問題なんですけれども、国内外で紙パルプ企業は多くの人員と資金をかけまして原料づくりを自らしておりますけれども、国内での社有林のCO2吸収・固定の分は全部国のものになっておりますし、海外の分は宙に浮いた形になっています。吸収量は年間数百万トンにも上っておりまして、ぜひ業界のCO2排出量に対して評価をいただきたいと考えているところでございます。
 この地図は、企業が世界各地で推進しています植林地域を示しています。1990年以降本格化しました海外植林は、土地の確保が容易な南半球を中心に、8カ国で33プロジェクト、面積で約50万ヘクタールに達していまして、これを今後とも積極的に進めていくこととしております。
 排出量取引制度に対する意見ですけれども、大きく3点について述べます。
 1点目は、制度の導入で本当に温室効果ガスを削減することができるのかということでありまして、まずは設備などのストックへの投資によって温室効果ガスを削減すべきであると考えます。紙パ業界の場合は、林地残材のバイオマス燃料による燃料転換を進めれば、経済とのバランスをとりながら、排出量取引制度を導入するよりも確実に温室効果ガスを削減できると考えております。
 2点目は、温室効果ガス削減のための真水の部分をきちんと検討する必要があるということであります。同時に、排出権を誰もが納得できるように公平に割り当てること、これは大変難しいことだと思っております。紙パ産業は、立地条件、それから製品構成、原料事情などによりましてエネルギー消費やエネルギー構成が非常に多彩な業界であります。
 これは、省エネ法の改正でベンチマークを策定した際の資料を持ってきていまして、これから製紙工程の区分を簡単にお話しします。エネルギー的には、青い部分ですが、木材チップを利用するパルププラントのある工場と、黄色い左のほうですが、そのかわりに古紙を利用する工場に分かれます。パルプを製造する場合、エネルギーは古紙を利用する場合よりもかかるのですけれども、発生します黒液という廃液から大きなエネルギーを得ることができまして、次の工程である、下に赤で示していますけれども、抄紙の部分のエネルギーの半分近くまで賄うことができます。
 ここでは化石エネルギーの原単位の違いが出てくる要素を挙げておりますけれども、細かく見ていきますと、パルプ材の種類、古紙の種類、中間材でございますパルプの種類によってかなりの違いが出てきます。さらにつくる紙の種類によっても大きく異なっているのが実情です。
 これは、紙パの工場を化石エネルギー原単位の大小で並べたグラフです。右の最大と左の最小を比較しますと、低いところではトン当たり5,000メガジュールであるのに対し、高いところでは4万メガジュールを超えていまして、10倍くらいの差が出ていることになります。これは決して大きいところが省エネに努力していないということではありません。例えば、特殊品をつくっている小さな工場と量産品をつくっている大きな工場とでは大きな差があるわけでして、当然の結果ということになっています。
 排出量取引制度に対する意見の3点目ですけれども、国際競争力に配慮しないと炭素リーケージといったものは避けられないと思います。現状の紙パ産業の輸出依存率はそれほど高くはないのですけれども、国内の市場の伸びの鈍化あるいはアジア地域での経済の活性化などを考えますと、今後は、輸出、海外展開といったものに力を入れていく必要に迫られています。IEAの調査では、日本の紙パルプ産業のエネルギー効率は世界で最も高く、削減ポテンシャルは最も小さいと評価されています。そうした状況を顧みずに、排出量取引制度の導入によって地球全体の温室効果ガスが増加してしまえば、目的に対して正反対の結果を招くわけで、導入ありきの政策に大きな疑問を感じています。紙パ業界としましては、経済発展と環境保護のバランスがとれた、公平で健全な競争原理のもとでの生産活動を強く希望しています。それには、業界や企業単位での自主行動計画をベースとした実行計画を推進していくことが最もふさわしい手段であると考えております。
 以上で報告を終わります。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは続きまして、不動産協会の杉山様、お願いできますでしょうか。

○不動産協会(杉山) それでは、私のほうからご説明いたします。不動産協会の環境委員長を務めております三菱地所の杉山と申します。私は、お手元の資料に基づいてご説明申し上げたいと思います。
 本日はこのような機会を設けていただき、大変ありがとうございます。私どものほうからは、業務部門における課題についてご説明した後、排出量取引制度についての意見を申し述べさせていただきたいと思っております。
 それでは、お開きいただきまして、2ページ、3ページで協会の紹介ということをさせていただいております。私どもの不動産協会は、他の業界団体とは若干異なっているところがございまして、当協会はいわゆる大手デベロッパーが集まった協会でございます。不動産業界自体は大変すそ野の広い業界でございまして、当協会の会員企業174社が保有するビルの床面積のシェアは、これは木造のものを含んでおりますけれども、全国の事務所として登記されました建築物の3%にも満たないというレベルでございます。一方で全国の主要マーケット、主要都市のオフィスビルに限りますと、全体の約4分の1のシェアを持っている。これには統計上、自社ビルも含まれておりますので、賃貸床という面でいきますと、これを上回るようなレベルであるということが言えるかと思います。
 また、下のほうに書いてございますが、環境の取組でございますが、京都議定書が採択されました1997年に自主行動計画を発表しております。それ以来、積極的に取り組んでおりますけれども、数次の改定を経まして、新築分譲マンションの省エネ性能についての数値目標を設定するという段階に至っております。
 また、昨年度は、慶応大学の伊香賀教授に座長をお願いいたしまして、地球環境研究会を開催いたしました。その検討結果を踏まえまして、本年4月に「低炭素型まちづくりアクションプラン」を取りまとめたところでございます。これにつきましてはまた後ほど詳しくご説明いたしますけれども、当協会といたしましては、本年度を「低炭素型まちづくり元年」と位置づけておりまして、さらに環境行動を加速させていきたいと考えてございます。
 3ページにございますのが、現状の自主行動計画でございます。新築オフィスビルの環境性能目標の[1]のところにアンダーラインがございますが、省エネ法の基準を標準で1割、ハイレベルとしましては2割以上上回る環境性能を確保するということにしてございます。この目標につきましては、今後さらにトップレベルも加えました3段階の目標設定をしていきたいと考えてございます。
 それでは、4ページ以降をまたご覧いただきたいと思いますが、4ページ以降でこの4月に公表いたしましたアクションプランをご紹介しております。
 4ページ目は、基本方針を大きく2つ掲げてございます。今年度を「低炭素型まちづくり元年」として、これまで取り組んでまいりました取組をさらに加速してまいりたい。また、国や関連団体・企業と連携してこのアクションプランを推進することで、民生部門におけるCO2の削減をリードしていきたいと考えております。また、「環境」を次世代の成長戦略テーマとして位置づけたいということでございます。
 5ページからは3ページにわたりまして、民生部門におけるCO2削減の留意点を記載してございます。まず1つ目としましては、民生部門は、関わる主体が大変多様であるということがございます。例えば、オフィスビルでまいりますと、テナント、エネルギー供給事業者、オーナー、運営管理者といった各主体それぞれの側面からの取組が重要だということでございます。この点につきましてはまた後ほど詳しくご説明申し上げますけれども、オフィスビルの排出量削減のポイントは大きく3つでございます。すなわち、依存度の高い電力の排出係数の改善に関わってくるということ、それから建てかえや改修といった投資を伴いますビルの環境性能の向上が2点目、3点目として運用上のさまざまな工夫、この3点がキーになってくるかと思っております。民生部門におきましては、1990年比で約1.4倍に排出量が増加しております。これは、オフィスビルの環境性能の向上、つまり原単位の低下でございますが、これを上回る床面積の増加があったということ、それからテナントの事業活動の高度化あるいは勤務の長時間化といったことがエネルギーの消費の増加になっているということでございまして、これはまた後ほどグラフでご覧いただきたいと思います。
 次に6ページ目でございますが、オフィスビルの場合は非常にライフサイクルが長いということが特徴でございまして、5年や10年といった短期間での排出量の削減ではなかなか効果が現れてこないというところがございます。一斉に環境性能の高いビルに建てかえてしまうということであれば、10年で25%という削減も可能かもしれませんけれども、ご承知のように、テナントの入ったビルでございますと、オーナーの都合で建てかえるといったことは、借家権を主張されるとなかなか容易ではないということがございます。また、テナントが入ったままで設備改修、例えば高効率な照明器具にかえるといったことも、あるいは空調機器のリプレースといったことも、なかなか容易にはできないという状況もございます。したがいまして、足元ではインセンティブや規制緩和、抜本的には長期的な視野に立った技術革新を進めながら、働き方の変革を誘導していくといったことが必要ではないかなと思っております。
 7ページ、3点目でございますが、冒頭申し上げましたように、民生部門は大変すそ野の広い部門でございます。現行の省エネ基準を満たす住宅・建築物は全国でも数%と言われております。規模が大きいということだけで一部のビルに限って網をかけるような施策だけでは、民生業務部門の排出量削減にはつながらないと考えております。現時点でも、全国の住宅・建築物の性能値の平均がどのあたりにあるのかといった基本的なデータも不足しているという状況でございますので、住宅・建築分野が実際に今どのようなすそ野を形成してどう変化するかを把握した上で、削減効果を計測して、さらには建てかえですとか都市の再生といったことを促進する実効ある施策が求められる。そうした中で日本全体の民生部門の環境性能の平均値の底上げをしていくということが重要ではないかなと思っております。
 8ページは、アクションプランに対する国の提言も含めてございますが、ここで詳しくは申し上げませんけれども、そこに3点ございます。特性や現状を踏まえた分野別の目標設定、民間のチャレンジを可能ならしめるインセンティブ策、部門、主体間の負担のバランス、この3点が重要であると考えております。中でもインセンティブ策につきましては十分配慮いただきたいということは、かねがね申し上げているとおりでございます。
 最後に、今年度以降、我々が協会として取り組んでまいりますアクションプランについて、大きく5つ挙げてございますが、10ページから11ページにお示ししてございます。重要なことは、今年度予定されております省エネ基準の見直しの動きを十分フォローしながら、現行の数値目標をより高い目標に設定し直すといった作業をしてまいりたいと考えております。これによりまして新築の環境性能の一層の向上に取り組んでいきたいということでございます。
 また、2点目でございますけれども、主体間連携の強化ということで、業界を超えました新しい技術の実用化への取組、またテナントと協調しました環境への取組のツールとして、テナント向けのエコガイドのようなものも作成してまいりたいと考えております。
 あと、11ページでございますが、先進事例の共有とか、インセンティブ施策の積極的な活用、成長戦略の具現化への取組、このようなことを通じまして一層環境行動の促進を図ってまいりたいと考えております。
 12ページ目からは少しデータ的なものをグラフでお示ししてございます。12ページの左側でございますが、オフィスビルの特性が表れていると思っております。左側のグラフでは、オーナーがコントロールできないエネルギーの消費の割合が7割以上あるということでございます。つまり、テナントの活動次第でビルのエネルギー使用量は大きく左右されるということでございます。また、右のグラフでございますが、オフィスビルが一番右の棒グラフでございますが、オフィスビルにつきましては、電力に依存するという割合が8割を超えております。こちらも同様に、電気事業者の排出係数によってもビルのCO2が大きく左右されるということがおわかりいただけるかと思います。
 また、13ページ目でございますが、これは私どもの会員企業のデータでございますが、テナントの業種によって大幅にエネルギー使用量が違うということがおわかりいただけるかと思います。会員企業におきましては、ビルごとにテナントに参加を呼びかけまして、省エネ策あるいは環境対策につきまして種々説明をし、またテナントとともに取り組むといった体制もとっております。テナントにおける省エネへの取組の啓発にも努めているところでございます。
 また、14ページでございますが、これは先ほど申し上げましたが、当業界のすそ野の広さと関連したグラフでございますけれども、産業部門では大口の部分が大変大きいというところでございますので、ここを効率的にとらえ、カバーできれば、可能という部分もあろうかと思いますが、業務部門では大口のボリュームが圧倒的に小さいということでございます。こういうことからも、大手、大規模だけをとらえて網をかけることよりも、全体の底上げを図るということが重要だということはご理解いただけるのではないかなと思っております。
 15ページ目につきましては、建築用途別のエネルギー消費の状況でございます。ビルでまいりますと、1990年度比で見ますと、都心部の大規模再開発とか、規制緩和の流れもございまして、床面積が増加しているということでございますが、ちょっと見づらいのですが、点線のグラフでございますが、ビルの原単位はここまで順調に減っております。また、エネルギー消費量自体も、床面積は増えておりますけれども、2000年度から2005年度までにはやや右肩下がりという形で削減も進んでいるというところはご理解いただけるかと思います。
 最後になりますけれども、最後の2ページで私どもの意見を申し述べさせていただきたいと思います。今までもそのアクションプランに沿って申し上げましたとおりなんですが、業務部門は非常にすそ野の広い部分がございます。したがいまして、中小の事業者とか個人事業主への過大な負担も想定されるところでございます。また、建物の性能の幅も非常に広いということから、公平で納得性の高い制度が容易に導入できるということはなかなか考えづらいと思っております。行政コストとか入手の手間コスト等も含めますと、むしろマイナスの影響が多いのではないかなと懸念しているところでございます。したがいまして、業務部門につきましては、経済合理的で効果的な省エネ措置としての建てかえとか設備改修を促進するような総合的な施策で臨む必要があるのではないかなと考えております。したがいまして、業務部門として排出量取引をどう考えるかということを問われますと、業務部門は対象にすべきではないのではないかと考えているところでございます。
 しからば排出量削減についてどうしていけばいいのかというところでございますが、最後のページでございますが、これもさきに申し上げましたけれども、現在のロードマップによりますと、業務部門は10年で約半減ということでございますが、オフィスビルはストックに対しまして年に2%の新築ビルの更新があるわけでございますので、これは累積的に効果が出てくるということを考えますと、短期的・中期的な目標ではなく、長期的な視点でとらえる必要があるのではないかなと思っております。民生部門の特徴も踏まえまして、他部門とも比較しまして、公平で、負担についての国民の理解が得られるような適切な目標を設定するということが必要ではないかなと思っております。
 また、ビルの排出量削減につきましても、一律の削減ではなく、さまざまな取組が評価されるような公平なものでなくてはならないと思っております。何度も申し上げておりますように、賃貸ビルのエネルギーをコントロールできるのはオーナーあるいは管理会社だけではございません。オーナーだけが経済的に不利益をこうむるような制度では、全体の効果的な排出量削減にはつながらないのではないかなと懸念しております。
 私どもとしましても、国の成長戦略に沿って、経済成長と環境共生を両立させます低炭素型まちづくりをこれからも一層推進してまいる所存でございますので、国の関係省庁との連携あるいは国と地方の整合といったことがより一層重要になっていくのではないかなと考えております。
 最後になりますけれども、インセンティブにつきましては、省エネの性能が評価されるような仕組みや、テナントとの協調が進めやすいような仕組みといったものもぜひご検討いただきますことをお願い申し上げまして、私からの説明を終わらせていただきたいと思います。
 以上でございます。

○植田委員長 どうもありがとうございました。
 それでは続きまして、電気事業連合会の廣江様、お願いできますでしょうか。

○電気事業連合会(廣江) 電気事業連合会事務局長の廣江でございます。お手元の資料に沿いましてご説明申し上げます。本日ご説明いたします内容は、低炭素社会実現に向けました私どもの取組の状況と、排出量取引制度に関する考え方ということでございます。
 3ページをご覧いただきたいと思います。まず、私どもの基本的な考え方を書いてございますが、丸が3つ、下のほうにございます。環境保全の重要性、これはもちろん言うまでもないところでございますが、エネルギー自給率が極めて低い日本におきましては、この安定供給の確保、それからそれをいかに低廉な価格でお客様にお届けするか、この3つの同時達成ということが非常に重要であろうと考えております。一番最初の「・」の文字でございますが、エネルギー政策基本法の中にうたわれていること、あるいは電気事業法の目的でございます、安定供給確保と環境保全、それから経済性、この3つのEの同時達成、こういうことを私どもの基本的な役割と考えております。
 次の4ページでございます。具体的にこの3つのEの同時達成でどのような取組をしてきたかということでございますが、掛け算が書いてございまして、申すまでもなく、一つは供給サイドでございます。すなわち、原子力の推進であり、再生可能エネルギーの積極的な利用拡大、さらには、忘れてならないのは化石燃料の高効率化・排出削減対策の実施ということになります。一方、高効率機器の普及・電化による省エネといった需要サイドの取組も非常に重要でして、この供給面と需要面の掛け算で全体としての低炭素社会実現をしていきたいということで取り組んでまいりましたし、これからもこういった取組をさらに強化してまいりたいと考えております。
 次の5ページでございます。まず、供給サイドのこれまでの取組の総論でございます。ここに棒グラフが入ってございます。これは電源構成を書いてございます。左から4つ目に1973年、第1次オイルショックのときの電源構成が記載してございますが、当時、実に73.2%が石油火力であったということでございます。これが、右から2つ目の2008年をご覧いただきますと、石油の比率が12.3%でございまして、さっきの3つのEの達成の基軸だと考えておりますが、原子力が25.5%まで入っています。それ以外には、安定供給あるいは経済性という観点から、LNGあるいは石炭の導入を進めてきたということでございます。
 なお、非化石電源という比率で見てまいりますと、下の2つでございますが、1973年が約20%。これが2008年には約35%まで増えている。この先2020年度にはこれを50%にまで持っていきたいというのが、私どもの現在の計画でございます。
 次の6ページをご覧いただきたいと存じます。化石燃料の利用の高効率化ということでございます。ここにプロットしてございますのは、幾つかの国の石炭・石油・天然ガスの全体としての火力発電所の熱効率を1990年から2006年までプロットしたものでございます。ご覧いただきますと、一目瞭然でございますが、私ども日本はほぼ一貫いたしまして世界最高の水準を達成しているということでございます。下のほうに中国、インドがございますが、この両国と比較いたしますと10ポイントの差がございます。すなわち30%差があるということでございます。言いかえますと、同じ火力発電で同じ量の電気をつくるのにCO2の排出量が30%少ないということでございまして、こういった実績をさらに伸ばすことができるように、今後取組をしていきたいと考えております。
 次の7ページでございます。私ども電気事業連合会は自主行動計画といたしまして、使用電力量当たりのCO2の排出量、いわゆる使用端CO2排出原単位を目標に据えてございまして、2008年から2012年までの平均で1990年レベルから20%程度低いレベルを目指したいということで取り組んでまいりました。2008年度のところをご覧いただきますと、残念ながら実績0.444ということでございまして、CDM等々の購入・償却を加えましても0.373と、やや厳しい状況に現在はございます。何とか今後もこの5年間で目標値を達成できるようにさらに取組を進めてまいりたいと考えておりますし、さらにその先でございますが、2020年度のところをご覧いただきますと、0.33程度ということでございまして、原子力の新増設、利用拡大、あるいは再生可能エネルギーの導入拡大、火力発電の高効率化でこの水準を何とか達成したいということで、今後努力してまいりたいと考えております。
 次の8ページでございます。今申し上げました使用端のCO2排出原単位の国際比較をしたものでございまして、一番上の段が排出原単位そのものの数字でございます。その下の中段が非化石電源の比率、一番下の段が化石電源の比率と、このように記載されております。日本でございますが、取っています年次が違いますので、上の7ページとは少し数字が変わってございますが、ここでは0.43kg-CO2/kWhということで、主要な排出国の中ではイタリアの次の第4位でございます。従来第3位が定位置でございまして、この年は残念ながら第4位になっているということでございます。フランスをご覧いただきますと、0.08と圧倒的に低い排出原単位でございます。これは当然ながら、非化石電源のところをご覧いただきますと、78%を原子力で発電がされている、その結果でございます。次に低いのはカナダでございまして、日本の約半分、0.21でございます。カナダはご承知のように非常に大きな河川がたくさんございます。水資源に恵まれておりまして、水力発電が58%を占めているということでございます。一方、ドイツでございますが、実は日本よりも高い水準にある。ドイツの場合には、安定供給という観点から国内の石炭を非常に重視しておりまして、石炭が49%を占めておりますが、こういった影響もございまして日本よりも高い排出原単位になっているということでございます。
 次の9ページでございます。ここでは、今後の取組ということで、まずは原子力発電の新増設について記載しております。ここに数字は入ってございませんが、現在我が国では54基の原子力が稼働しておりまして、合計の出力は4,885万キロワットございます。そこに現在新増設を予定しておりますのは、この右下の表の中にございます合計14基1,930.8万キロワットの計画があるということになります。このうち2019年までに運転を開始するもの、すなわち2020年に間に合うということでございますが、これが黄色く塗った部分でございまして、9基1,294万キロワットございます。今後、その先も含めますと14基ということでございますが、これがすべて稼働いたしますと、CO2の排出量は1億トン程度減少するといった効果があるということでございます。
 なお、左下の図でございますが、向こう10カ年では9基と申し上げました。実は過去の10カ年では5基にとどまっておりまして、そのほぼ倍程度の開発を今後進めなければならない。このような計画であるということでございます。
 次の10ページでございます。一方で、現在、先ほど申し上げました54基の既設の原子力発電をいかに有効に使うかということも、低炭素化を目指す上では非常に重要なポイントでございます。最初の行に書いてございますように、この原子力発電所の利用率、稼働率が1%向上いたしますと、年間で約300トンのCO2の削減ができるということでございます。この稼働率、利用率の現状が左下のグラフでプロットされております。ここでは、日本、アメリカ、フランス、韓国の比較をしてございます。日本をご覧いただきますと、実は90年代の後半には80%を超え、全体でも84%程度まで利用率が向上いたしましたが、その後、右手の箱の中に少し字が書いてございますが、2002年以降に発生いたしました点検記録の不正問題に起因する定期検査期間の長期化、あるいは二次系配管破断、あるいは最後に書いてございます中越沖地震によります発電所の停止といったこともございまして、現状では残念ながら利用率は64.7%にとどまっているということでございます。今後につきましては、ここでご覧いただきますと、アメリカ、韓国は既に90%を超える水準にございますけれども、安全を大前提に地元のご理解を得ながら、一つずつ課題を解決いたしまして、2つ目にございますように、現在の利用率から2020年には85%、その先はさらに世界最高水準を目指して努力してまいりたいと考えております。
 次の11ページでございます。2020年を目指した取組の2つ目のポイントは、再生可能エネルギーの利用の拡大ということになります。特に、電力系統を運用して安定した電力を国民の皆様にお届けするという責務を担っている事業者といたしましては、出力の変動がやや激しい再生可能エネルギーと安定した電力との幸せな結婚関係をいかにつくるかということで、そういった取組を今後していかなければならない。具体的に申しますと、世間でよく言われておりますスマートグリッドの日本版と私どもは申しておりますが、こういったものを構築し、できるだけ再生可能エネルギーがたくさん入っても電力の安定供給に支障が起こらないような体制をつくりたいと考えております。
 この点を少し詳しくご説明いたします。下の図でございますが、電気の品質といいますのは、突き詰めますと、電圧と周波数ということになります。ここで問題になりますのは特に周波数でございまして、周波数を安定させようといたしますと、需要と供給を瞬時瞬時にぴたりと一致させなければならないということになります。需要と申しますのは、当然ながら、これは瞬時に非常に大きく変動する可能性を持っております。特に日本の場合には、欧米各国に比べましてもこの差が大きいと言われております。この変動いたします需要に対しまして、それを予測しながら、左手にございます火力・水力といった電源で需要にぴたりと供給を合わせるという操作、制御をいたしております。ここで原子力が入ってございますが、原子力と申しますのは、基本的にはフルフラットで運転をいたしまして、出力調整をしないということでございますので、こういった変動要素に対しましては火力・水力で対応しているということになります。そこに大量の太陽光が右手に入ってまいります。すなわち、変動要素が大きくなるということでございますので、当然ながら左手の水力・火力といった調整電源をたくさん持たなければならないということになってまいります。ところが、太陽光が入ってまいりまして、一方では水力あるいは原子力はフラットで運転しておりますので、実は火力・水力の運転の余地は小さくなってしまいますし、たくさんあるそれらの設備の稼働率が低下してしまうということも起こります。さらに大量に太陽光が入ってまいりますと、秋あるいは春の休日には、多分原子力・水力とこの太陽光等々だけで需要を超えてしまうような事態も想定されます。そういった場合には、主として蓄電池を導入いたしまして、これで休日の余剰の電力を吸収し、それを翌週の月曜日から金曜日までに使い切りまして、また土・日に備える。多分このような運用になっていくのだろうと思います。この蓄電池と申しますのは、従来の私どもの電源とはかなり性格が異なっておりまして、瞬間的に近く反応するという意味では非常によい性格もございますが、一方で従来より私どもが持っております。若干のタイムラグを持って反応する水力・火力とは少し性格が違いますので、こういうものを抱えながら、全体としてのグリッドを運用していかなければならない。これがまさにスマートグリッドでございまして、この開発に全力を挙げたいと考えているところでございます。
 次の12ページでございますが、今申しました、自然エネルギーを大量に入れても問題を起こさないという努力だけではなく、自分たちでもこういったメガソーラー等々で太陽光を入れる努力もしてまいりたいと考えております。
 13ページでございますが、化石燃料の高効率利用ということでございます。ここでは石炭について少し記載してございます。右下にグラフがございますが、石炭は、実は他の化石燃料に比べますと、可採年数が相当長うございまして、安定して供給が受けられるということになります。したがいまして、左手にございますように、エネルギー自給率の低い日本におきましては、非常に重要な電源ということになります。
 次の14ページでございますが、ここでは石炭の熱効率が右手に書いてございますが、先ほど申しましたように、日本はトップレベルでございます。したがいまして、こういった石炭の技術を他の国に移転する、例えば、3行目に書いてございますが、アメリカ・中国・インドにこれを移転いたしますと、CO2が13億トン程度減るという計算もございます。こういったことで、日本国内で安定供給にすぐれた石炭をしっかり持ちながら、さらにその技術を伸ばして、これを移転する、それで地球レベルでのCO2を減らす努力をするということが必要ではないかなと考えております。
 次の15ページは省略させていただきます。
 次の17ページ以下が環境政策に関する私どもの考え方でございまして、2つ目の「・」をご覧いただきますと、地球温暖化対策の鍵は申すまでもなく技術ということでございます。なおかつ、その技術開発・普及の源泉は企業の活力でございます。したがいまして、こういった企業の前向きな取組を支援する政策をぜひお願いしたいということでございます。
 その下の行にございますように、国内対策を優先することによって、本来達成すべき地球規模でのCO2削減に対するディスインセンティブにならないように、お願いしたいということでございます。
 次の18ページは飛ばしまして、19ページでございますが、個々の政策に関して申し上げますと、地球温暖化対策税、あるいは本日の主要なテーマでございます排出量取引、あるいは再生可能エネルギーの全量買取につきましては、最初の行にございますように、導入ありきではなく、制度導入によるCO2削減効果、あるいは国民生活や産業への影響といったものを総合的に検討し、国民的議論をした上で、ぜひ導入の可否についてのご判断をいただきたいということでございます。
 次の20ページでございます。特にコストについてでございますが、ここではいろいろな試算が入ってございますが、いずれにいたしましても相当なコストアップが予想されるわけでございまして、これを国民にご負担いただかなければならないということでございます。ぜひこのあたりを慎重にご検討いただきたいということでございます。
 その上で、特に排出量取引についての私どもの考え方でございますが、22ページをご覧いただきたいと思います。課題例ということで、こういった点につきまして私どもは懸念を持っておりますということを書いてございます。先ほど来ご説明のあったことと重複いたしますので、特にここのご説明は省略いたします。
 特に電力についてというのが、次の23ページでございます。これに入ります前に24・25ページをご説明したいと思います。一つは、電力の設備形成には非常に時間がかかるということでございます。ここでは東京電力の柏崎刈羽原子力発電所の例が書いてございますが、実は建設に18年かかっている。あるいは、その下にはこの柏崎刈羽の電気を東京へ持ってまいります送電線の建設期間が書いてございますが、12年かかっているということでございます。こういった電力の設備形成には非常に時間がかかるということでございます。
 それから、25ページでございますが、電化の促進による社会全体での低炭素化ということも評価していただきたいと考えております。例えば、暖房・給湯での電化というのが書いてございますが、ヒートポンプという日本の非常にすぐれた技術がございます。これを現在の空調・給湯、産業部門の燃焼式の空調・加温等といったものに使いますと、我が国全体として1.3億トン程度CO2が減る。すなわち、電力部門では3,000万トンの排出量でございますが、全体としましては、それを差し引きいたしましても1.3億トン減少する。あるいは、軽自動車をすべて電気自動車に置きかえたといたしますと、電力部門では1,400万トンの排出増でございますが、運輸部門全体では3,900万トンの排出減となります。すなわち、差し引きすれば2,500万トン減少するということでございます。
 したがいまして、前のページに戻っていただきまして、私ども、特に電気事業といたしましては、最初の赤いラインに書いてございますが、短期的なキャップのもとでは電源設備形成が困難になるのではないかということを非常に心配してございますし、さらに2つ目の赤い●の下の行でございますが、社会の電化が進むことによりまして社会全体としてはCO2削減が可能であるにもかかわらず、果たして電気事業に合理的なキャップを設定することは可能なのか、あるいはそのことが国全体にとってよいのかといったことについて慎重な検討をお願いしたいということでございます。
 したがいまして、最後にございますように、今回の基本法案には原単位方式も併記されたということでございまして、今後の議論や選択肢の幅が広がったと考えてございますが、いずれにいたしましても、現在実施されております排出量取引の国内統合市場での試行的実施等を通し、さまざまな課題を明確にしていただくことが先決ではないかと考えているところでございます。
 時間が超過いたしまして大変失礼いたしました。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは続きまして、日本気候リーダーズ・パートナーシップの則武委員、お願いできますでしょうか。

○則武委員(日本気候リーダーズ・パートナーシップ) ちょっと委員の立場を外れまして、日本気候リーダーズ・パートナーシップからの説明とさせていただきます。資料7でご説明させていただきたいと思います。
 まず1枚めくっていただきまして、「はじめに」のところに書いておりますが、日本気候リーダーズ・パートナーシップについて簡単にご説明させていただきますと、持続可能な低炭素社会への移行に関して先陣を切って進めることによって、企業にとってビジネスチャンス、次なる発展の機会ととらえる企業ネットワークであります。昨年の7月に5社でスタートいたしました。持続可能な低炭素社会の実現には、産業界が建設的な危機感を持って積極的な行動を開始すべきであるという認識のもとに、日本独自の企業グループとして設立いたしました。現在のところ8社のメンバー企業が参加しております。8社につきましては、一番最後のページに挙げておりますので、見ていただければと思います。
 それで、今回の提言ですが、Japan-CLPでは、昨年の7月の設立時にその目的というものを設定いたしました。目的につきましては後ろの資料にありますけれども、目的の中に、社会の変化を加速するために積極的なメッセージを発信するというものがございます。そういった意味で今回の提言という部分も考えていただければと思います。
 それから、図1の下から2つ目、まず時代認識というものを我々として設定いたしました。気候変動に対する危機感と、それのビジネスの視点での考えという点を示しております。詳細についてはまた見ていただければと思います。さらに、その時代認識に基づいて、持続可能な低炭素社会の基本原則というものを考えます。その中で、今回特に排出権取引等に関わります部分については、早期行動と企業負担の原則というものがその中にあります。その辺についてもまた見ていただければと思います。Japan-CLPといたしましては、そういう時代認識や基本原則に基づいて、図の左上にあります「私たちの約束」ということで、メンバー企業が自らの行動という部分についての約束をしております。各社それぞれ異なる産業界に属しておりますので、各社のコミットメントは各社のほうで約束として提示いたしております。それについてもまたウエブページ等で見ていただければと思います。今回の提案、右上にある部分ですけれども、持続可能な低炭素社会に向けた企業グループからの提言ということで、主に政策立案者に対してということになっております。
 提言につきましては、全体像をその次の3ページに示しておりますが、その3ページの下にあります持続可能な低炭素社会の基本原則というものに基づいて提言の構成をしております。
 4ページに、提言の構成といたしまして、基本原則の1~5について、それぞれ提言[1]~[12]がございます。特に今年の3月にこの提言をまとめた段階では、赤で囲っております提言[1]、企業視点で整理した低炭素社会の方向性という部分、それから提言[2]、低炭素社会を担う「エコ・アクティブコンシューマー」の拡大を図る多面的施策の実施という部分、それと今回ご説明させていただきます提言[6]、共負担の原則に基づく効果的で公正な制度設計という部分でございます。
 ちょっと申し遅れましたけれども、今回の提言につきましては、現在の8社のメンバー企業のうち5社が企業の視点から発信しているとお考えいただきたいと思います。5社につきましては、2ページのところに書いておりますが、イオン株式会社、SAPジャパン株式会社、東京製鐵株式会社、富士通株式会社、株式会社リコーの5社でございます。
 それで、今回説明させていただきますのは提言[6]についてですが、5枚ほどめくっていただきます。提言[6]、共負担の原則に基づく効果的で公正な制度設計のディスカッションペーパーという部分がございます。その中について説明させていただきたいと思います。
 まずディスカッションペーパーの位置づけですが、3点目に、これは後ろに出てきますけれども、各排出主体への目標設定と、その達成に柔軟性を持たせるための経済的手法を実施する際に留意すべき論点とその方向性の例及びその理由を整理したものであります。基本的には、ディスカッションペーパーの位置づけとしましては、これでなければならないという考えではなく、また今回のディスカッションペーパー作成に関わっております5社すべてがこの意見ということではなく、我々としては、これまでの排出権取引について総論の議論ではなく、具体的な内容に踏み込んだ議論をしていくことを促すためということでつくったものであります。そういう点で内容を見ていただければと思います。
 次に、2/10となっておりますところ、制度設計上の論点としてここに挙げているようなものを我々は検討いたしました。今回、排出量取引だけではなく、税制の見直しという部分も合わせたポリシーミックスという形での提言になっております。
 次に、制度設計の方向性の例として、排出主体への目標設定と排出量取引制度ということで、基本的には、取引制度ありきではなく、温室効果ガス排出の主体に対して義務的な目標を設定することにより、公平な取組を期待することができる。ただ、自主的な目標設定では、誠実な組織と不誠実な組織間で不公平が生じる。また、国の目標を担保するためには、それぞれの温室効果ガス排出主体での排出量を設定し担保できる仕組みを設定することが不可欠であるという点で、まず目標設定についての考え方を示しております。
 その次に、温室効果ガスの義務的な目標を設定した際に、その対象となる組織の活動量が大幅に拡大した場合に目標を達成できなくなる場合がある。これは、その排出主体が目標を達成できなくなる場合がありますが、ただ、その場合にも、組織の活動量の拡大は必ずしも低炭素社会への移行を妨げるものばかりではなく、太陽光発電設備の拡大など低炭素社会への移行を進める企業の活動量が増えることは望ましい場合もございます。このような企業が活動量を抑えるようなことになっては、本来の温室効果ガス排出量削減という目的を果たせなくなってしまうという点であります。それとまた、環境技術開発などによって、温室効果ガス排出量削減の容易性が組織によって異なってくる場合も考えられます。このような場合に排出量取引制度は、義務的目標の達成手段に柔軟性を持たせることを可能とする有効な仕組みであると考えております。
 次に、制度対象でありますが、対象とする温室効果ガス、まず当面CO2を対象とするということを示しております。
 それから、対象範囲としまして、この部分が今回の論点となるかと思っておりますが、直接排出だけでなく、電力使用に対する間接排出を対象とするとしております。
 それから、対象単位、組織でありますが、現行の省エネ法で定められるエネルギー管理対象事業者及び輸送事業者を対象事業者とするという考えを示しております。
 それから、既存法制度との整合性ということで、省エネ法と整合性をとり、当初は現行の省エネ法の第1種エネルギー管理指定工場相当の事業者及び特定輸送事業者を対象とするということを示しております。
 次に、4ページでありますが、カーボンリーケージ影響産業の扱いについては、炭素税を活用することによって削減の効果を考えるということで、目標設定の対象から除外するということを示しております。この部分については税制の部分で示しております。
 それから、削減目標については、割当方法としまして、事業者等への目標は国の目標を達成可能な量として設定する必要がある。それから、大口電気事業者に対しては、排出量目標ではなく、原単位目標とするということを示しております。
 それから、CO2排出係数の扱いということで、電気の使用者に対してですけれども、その購入電力については、現在の省エネ法では、電気事業者別実排出係数に基づいて算出することになっておりますが、今回の提案の中では、原単位目標対象とする電気事業者からの購入電力については、電気事業者別実排出係数ではなく、当該電気事業者の目標排出係数を用いるということで考えております。
 それから、初期設計と展開方法については、具体的に特に示しているものではございません。
 それから、運用につきまして、排出量の信頼性確保という点で、排出量の検証に関わる負担を軽減するため、検証につきましてはISO14001等の認証審査との連携を検討する必要があると考えております。
 マネーゲームの防止についても、特にそう示しているわけでもございません。
 さらに、自主的削減・森林吸収クレジット等の活用ということで、既に推進されている自主的削減のクレジットや森林吸収のクレジット、Japan-CLPではほかの提言としましても森林の有効利用・吸収という部分について挙げておりますので、特に森林吸収クレジットなどの効果のあるクレジットを活用することが望ましいと考えております。
 税制の見直しについては、今回の議論とは若干違う点でありますが、直接的な温室効果ガス排出者のみならず、各経済主体が受益に基づいてサプライチェーンを通じて適切な負担や責任を負う仕組みを構築するという点で、先ほどの素材部門については税の対象とするということで、排出量取引制度の対象外としてカーボンリーケージを防止するということを示しております。
 こういう設定をいたしました理由を6ページから挙げております。基本的には、まず目標設定と排出量取引制度につきましては、電力利用に関して間接排出者を対象としている理由でございますけれども、これはいろいろな形で出されている図でありますが、実情として業務その他部門が増えている。これは電力原単位の問題ではなく、実際に電気の使用量が増えているということも事実でございます。そういった点についても考えていく必要があるという点で、間接排出も対象としております。
 それから、7ページの1.5ですが、カーボンリーケージの防止と資源循環の促進というところで挙げておりますが、その中で、排出削減コストもしくは排出量の購入コストが製造売価に比べて大きな比率を占める場合には、義務的目標を課さない国との間で不公平が生じることになります。このことはその産業の国際競争力を損ねることになるということがございます。特にその産業が海外企業に比べて温室効果ガス排出割合が小さい場合には、排出割合の大きな海外企業の生産量が増加することになり、グローバルでの温室効果ガス排出量の削減に逆効果となるということも考えられます。特に鉄鋼などの素材産業での影響が大きいと考えられるという点で、今回の素材の部分については税という提案になっております。
 その理由は、[1]としまして、素材購入者が素材の使用量削減、製造時の温室効果ガス排出量が少ない素材の使用促進や、循環資源利用による温室効果ガス排出量の削減を意識できるということ。それから、輸入素材への課税をして素材大量使用輸出製品への還付を行うことによって、輸入材との低炭素競争力を発現でき、また自動車等重量物の国際競争力低下を防止できるといった点で、資源に関しては資源循環の促進ということも考えて、税のほうがいいという考えになっております。
 それから、8ページに、電力事業者に対しては原単位、電力使用者に対しては間接ということで設定しておりますが、それによって全体として排出量取引に対して原単位という目標がまざると不都合を生じるのではないかという意見もございますが、今回詳細はお話しできませんが、そこに示しておりますように、電気事業者に対して原単位目標ということにしても、それに売電量を掛けるということで、対象排出量として、排出量としてのカウントができるということ。それと、電力使用者に対しては、目標電力原単位に基づいて排出量を算出する。その両方を合わせれば実排出量と同等になるということで、排出量として考えることができるということで示しております。
 以上で時間になりましたので、説明を終わらせていただきます。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは最後に、日本経団連の岩間様、お願いできますでしょうか。

○日本経済団体連合会(岩間) 日本経団連の岩間でございます。今日は、9時過ぎから私どもが主催する会合がございまして、12過ぎまでございますが、そちらのほうの関係で大変遅くなりまして、大変失礼いたしました。では、早速でございますが、資料を皆様方のところにお配りしてございますので、そちらをベースに、私どもの現時点の考え方、感じ方というものをご説明させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 資料8をご覧いただきたいと思います。下のほうのスライド1でございますが、こちらからスタートさせていただきます。
 まず、私どもの温暖化対策に関する基本的な考え方でございますけれども、温暖化対策のかぎを握るのは技術ということで、技術をいかに普及し伸ばしていくかということが非常に大事ではないかと思っているところでございます。下のほうに、国際的にも温暖化対策のまじめな議論のときにはしばしば例に出てくる茅恒等式のことを書いてございます。くどくど申し上げませんけれども、CO2の排出量を要因分解しますと、省エネ度、エネルギーのクリーン化、それから経済活動に分解できるわけでございまして、経済活動に影響を与えないということですと、省エネの技術あるいはエネルギーのクリーン化の技術を高めていく、あるいはこの普及を図っていくということが、温暖化対策にとっての基本になってくるのだろうと思っております。そういう意味で、グリーン・イノベーションというものをいかに進めていくかということが温暖化対策にとっても非常に重要なかぎではないかと思っているところでございます。
 資料の2ページございますけれども、私どもが今年の3月に取りまとめましたグリーン・イノベーションの実現に向けての提言の一部のスライドをお持ちしております。グリーン・イノベーションというのは、イノベーション全般にですが、単に研究費を与えればイノベーションが進むとか、あるいは単に目標を設定すればイノベーションが進むとかということではなくて、シーズの段階から、それが育っていく段階、花が開いていく段階といろいろな段階がございますので、それぞれの段階に応じて適切な対応をしていくということが大事だと思っております。また私どもは、グリーン・イノベーションということも含めまして、イノベーションを中心になって推進して実用化していくのは企業でございますので、企業の活力をいかに伸ばすのか、企業の活力の発揮の足かせをいかに除くかといったところをきちんとやっていくことが本筋ではないかと思っているところでございます。皆様ご存じのとおり、各国、グリーン・イノベーションの競争が行われておりまして、緑の大競争時代などという言葉もあるぐらいでございますので、こういったところはきちんと押さえて取り組んでいくということが大事だと思っております。
 下の3のところに、私ども産業界から見て、グリーン・イノベーションのシーズというものはたくさんございます。ここに80以上の技術をシーズを書いてございます。基礎研究の段階から、応用研究の段階、実証を目指していく段階、あるいは普及段階と、日本ではこれから普及していくもの、あるいは日本では既に普及しているので海外に普及したいとか、いろいろな形で温暖化対策と地球規模の取組に貢献するようなものがたくさんありますので、こういったシーズをいかに伸ばしていくのかということが大事だと思っております。こういったものをやるときは、各技術ごとにやっていく。単に大きく網をかけるということではなく、きめ細かく現場に立ち返って取り組んでいくということが大事ではないかと思っております。
 資料の4ページでございますけれども、そういう意味で温暖化対策に関する基本的な考え方(2)としてございますけれども、本小委員会のテーマでございます低炭素社会の構築に向けた制度設計に関するということでございますが、私どもがどのような制度、どのような政策かということは別としてやるべきことは、製造工程においてBAT―Best Available Technology、利用可能な最先端の技術というものを最大限導入普及していくということ、それから低炭素製品などの普及というものを中心としたLCA―Life Cycle Assessment的な取組を推進していくということ、それから地球規模の低炭素化に向けた日本の技術というものを普及していくということ、それから長期的に大幅な削減が可能になるように革新的な技術の開発をやっていくこと、こういったものを業界ごと・分野ごとに具体的にピックアップして、それをいかに進めていくのか、こういった議論をしっかり積み重ねていくことが重要ではないかと思っているところでございます。
 日本の産業界は、1997以来、自主行動計画を推進しまして、成果を上げております。これは、温暖化対策と廃棄物リサイクルの対策ということで、両方を進めております。廃棄物のリサイクルのほうも、1990年比で89%、最終処分量の削減というところまでこぎつけているところでございます。温暖化対策の成果については後ほどご覧いただきますが、そういったこれまでの取組をベースに、さらにしっかり取り組んでいきたいと思っておりますし、世界規模の問題であります温暖化対策につきましても、できる限りの貢献をしていきたいと思っているところでございます。
 そういうことで、昨年の12月に低炭素社会実行計画の考え方というものを発表しました。この中で、世界最高水準の低炭素技術の開発・実用化をさらに進めまして、環境と経済が調和する低炭素社会実現に向けて世界をリードしていくといったことを宣言しているところでございます。こういった具体的な取組を参加業種と一緒に進めて、その進捗につきましては、きちんとモニタリングし、政府とも連携してPDCAサイクルを回していきたいというのが私どもの基本的な考え方でございます。
 スライドの5に現行の自主行動計画の概要を書いてございます。中心が産業部門・エネルギー転換部門でございますが、中身の説明はともかく、目標を達成しましたら、目標をさらに深掘りしてより高い目標にチャレンジしていただくといったことを、PDCAサイクルを回しながらやってきているということでございます。自らの目標達成のためには、クレジットを購入してでも達成するといったことを自主的にやって成果を上げているということでございます。
 資料の6でございますけれども、その産業・エネルギー転換部門の成果というものを経年ごとに書いてございまして、直近のデータは2008年でございますが、1990年比10.5%減少というところで、これは電事連さんの京都メカニズムのクレジットの償却も考慮しての話でございます。
 資料の7でございますが、その要因分析を行っています。それから、京都議定書の約束期間の見通しについても出しております。下のほうのグラフをご覧いただきますと、ゼロから上のほうが、生産活動の増加に伴うCO2排出量の増大、下のほうが、ここでは低炭素化率と書いてございますけれども、原単位の改善と、それから排出係数の改善、これを合わせて低炭素化率と呼んでいるわけでございますけれども、ご覧いただきますとおり、低炭素化率というものが着実に改善しているという中で、生産活動増に伴うCO2排出量増加を上回る成果を出していて、2008年度には1990年度比で10.5%減少になっているということで、今後、景気回復、政府の景気対策等あるいは経済成長戦略に伴いまして生産活動が回復してくると思われますけれども、それでも平均1990年度比7.5%まではできるのではないかと、これは産業もエネルギー転換も両方合わせての数字でございます。
 8ページでございますけれども、そういったこれまでの取組の成果がありまして、主要産業においては世界最高水準のエネルギー効率を達成しているということでございます。逆に、これは今後短い間ですと、さらなる改善というのは非常に難しいということも示唆しているわけでございます。そういう中で、私どもはポスト京都においてもしっかりとした取組をやっていこうということで、9にございますような先ほど申し上げました低炭素社会実行計画という考え方を発表しているところでございます。現在、関係の業種の方々にご参加のご検討を呼びかけているところでございます。
 この柱でございますけれども、まず国内対策としましては、産業部門、業務部門、運輸部門等におきまして、利用可能な世界最高水準の技術BATの最大限の導入ということをベースに目標を設定していただくということもしっかり説明していただくというのが第1点です。それから2番目でございますけれども、消費者等との連携の強化というところにございますが、世界最高水準の省エネ製品・サービスの開発・実用化に努めるとともに、啓発・情報提供活動もやっていくといったことでございます。それから3番目が、国際貢献とございますように、日本の技術・ノウハウというものを途上国を中心にした世界に普及していくということ。4番目が、革新的技術開発でございます。こういうことで、目標としては、2050年の世界半減について積極的に貢献していくということで、2020年においても国内削減の取組やできることをしっかりやっていくというのが私どもの柱でございます。この利用可能な最高水準の低炭素技術の最大限の導入等をいかにしていくのかということで、今いろいろな業界の方にご検討いただいているところでございます。
 私どもの産業界のエネルギー転換部門と産業部門、特に製造業とエネルギー産業というところで言えると思いますけれども、そういうところがしっかりやっているわけでございますけれども、この部門だけに着目して減らしても日本全体が減るわけではないということで、10ページのほうにございますが、こういうことでございまして、特に右側の寄与率のほうを見ますと、産業部門とか工業プロセスといった製造業のところはマイナスに寄与しているわけでございますけれども、その上のほうにあるところは増加に貢献しているようなところもありますので、こういったところをどうするのかというのをセクターごと、現場に立ち返ってしっかり議論して取り組んでいくということが大事だと思います。
 そういう中で今日本がどういう状況に置かれているのか、その中でどういう対策が必要なのか、その辺につきまして私どもの問題意識を申し上げたいと思います。
 資料の11でございますけれども、まず日本の国際競争力でございますが、左側に先般スイスにございますIMDが発表した国際競争力のランキングがございますけれども、日本は下から5番目の26番目になっておりまして、アジアのいろいろな国よりも劣位にあるということでございます。右側に経済産業省の調査がございます。外資系のほうに、日本の投資といったことについて、日本でのビジネス環境について聞いたところ、ビジネスコストの高さといったことが一番の阻害要因になっているということが外資系のアンケートから出てきております。外資系の声というのは、客観的にアジアにおいてどのような地位にあるかというのを如実に表しているんだと思います。また、下のほうに欧米アジアの外国企業の対日投資関心度調査がございますけれども、製造拠点から見ても、地域統括拠点から見ても、日本というのはアジアにおいてほとんど魅力がないというところになっているわけでございます。
 それから、12ページでございますが、企業の公的負担は、アジアの国に比べると非常に高いような負担になっているということでございます。
 こういう中で、13ページにございますように、少子・高齢化社会が急速に進展していくということでございます。生産年齢人口は減りますし、人口全体も減っていくということでございます。それから、社会保障負担額も増えていきます。これは中位推計でございまして、楽観的な数字でございます。現実は低位推計でいっておりますので、これよりかなり厳しいものになっていくというのは皆様よくご存じのとおりで、要は日本はがけっぷちにあるということでございます。土俵の中央にいる間は多少強い力が及んでもびくともしないわけでございますけれども、土俵際に行ってバランスがかなり危ないような状況になっていくときには、相当注意深くやっていく必要があるのだろうと思っております。
 こういう中で温暖化対策についてどのような形でやっていくべきかということでございますけれども、資料の14と15にございます。まず、温暖化対策の原点というのは、単なるテクニカルな話というよりは、持続可能な社会の形成、低炭素社会の形成という目的に向かってしっかりとした、地に足のついた取組をするということ、これが原点ではないかと思います。また、温暖化というのは地球規模の問題でございますし、社会全体の問題でございますので、そういった実効性を持つことが大事だと思っております。炭素リーケージを生じさせないこと、LCA的な取組を促進すること、あるいは阻害しないこと、それから技術革新をしっかり推進するといったことが大事だと思います。それから、環境と経済の両立ということで、国際間競争力というものへの配慮は十分必要だと思います。
 それから、15でございますけれども、エネルギー安全保障とか、格差拡大とか、行政コスト削減といった他の政策ともきちんと整合性がとれている必要があると思われます。また、温暖化対策の中においても整合性がとれているということが必要でございまして、他の政策の足を引っ張るようなこと、技術革新の足を引っ張るようなこと、低炭素型等設備投資の足を引っ張るようなことはやるべきではないと思っておりますし、副作用の大きなものというのはやるべきではないと思います。それから、個別業種業態の実態・特性に適合していること、それから企業間の公正な競争が確保されるということは当然でございます。また、官民の適切な役割分担というものを図っていくということです。

○植田委員長 すみません、時間ですので、まとめていただけますでしょうか。

○日本経済団体連合会(岩間) そういう中で、LCA的な視点というのが非常に重要だということはこれまでにも議論になったところでございまして、省エネ製品の開発・供給の2番のプロセスのところで、CO2の排出量が増えるといったことがあるわけでございますので、プロセスのみに着目したということ、そういう部分最適ではなくて、全体最適をいかに追求していくかというのが大事だと思っております。
 そういう中で、日本は国際的にも非常に高い突出した取組をしようとしているわけでございます。これに対しては、18ページ、19ページにございますように、日本のクレジット購入ということに着目している人たちも多いわけでございます。そういう中で、国内排出量取引制度については、極めて慎重な検討が必要だと思っております。持続可能な社会の形成の足かせとなるおそれがある。LCAとかリサイクルとの関係がございます。それから、技術革新の足かせになると。つまり、排出権を購入すれば、自ら努力しなくてもいい、設備投資もしなくてもいい、研究開発もしなくてもいいという仕組みでございますので、そのような心配があります。また、炭素リーケージの心配、国際競争力の低下のおそれ。それから、企業間の公正な競争が阻害されるおそれ、世界最高効率の業界が排出権購入を強制されるおそれ、行政コストあるいは民間の対応コストが増大するおそれもありますし、国民負担が増大し格差が拡大するようなおそれもございます。
 後ろのほうに書いてございますが、こういったいろいろな懸念がございますので、私どもは、官民合わせて、どのようにして全体再建になるような対策を現場に応じた形でしていくのかということをしっかりやっていく必要があると思っております。
 排出量取引制度につきましては、今申し上げましたように、懸念が非常に多いので、懸念をすべてクリアできるような案をもしご提示いただけましたら、誠意を持って検討してまいりたいと思っております。
 以上でございます。

○植田委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、ここから質疑応答ということにさせていただきたいと思います。ご質問がございましたらお願いしたいと思いますが、発言される際は、まず手元のネームプレートを立てていただきまして、私のほうで指名させていただきますので、順次ご発言をお願いしたいと思います。それから、ちょっと会場の制約もございますので、進行管理上、簡潔にということでぜひお願いしたいと思います。では、よろしいでしょうか。
 では、大塚委員からお願いできますでしょうか。

○大塚委員 最初に、各団体への質問事項で出させていただいているんですけれども、ちょっとお時間がなかったからだと思うのですが、一つもお答えいただいていませんので、すみませんが、セメント協会さん、不動産協会さん、電事連さん、よろしくお願いします。
 それから、新しく今お伺いしたいことでございますが、まず自主行動計画についてどう考えるかという問題でございますけれども、例えば製紙業界さんにおきましては、自主行動計画で十分だとおっしゃっていますが、産業界については確かに減ってきていることは事実なんですけれども、今後、2020年に25%削減とか、2050年に80%削減ということを考えたときに、自主行動計画だけで中長期的に対応できるのかという問題が恐らくあると思います。そういう総量の確保をするために何をするかという問題があると思いますので、その点についてどうお考えかということがございます。
 それから、製紙業界さんの15ページにおきましては、短期間に10ポイントもの削減を行うことも不可能ではないと言われているのですけれども、こういうことだとすると、むしろキャップを設定して遵守を義務づけさせていただいてもあまり問題ないのではないかとも理解できますが、この点はどうかということがございます。
 さらに、これも製紙業界さんの15ページですけれども、「排出量取引制度は、何物も生み出さず、企業活動の継続性を損なう」とお書きになっておられますけれども、長期的な排出のパスというのを提示して、トレンドを提示していけば、長期的に削減するということがEU-ETSでも出てきますし、アメリカの法案とかでも出ておりますので、むしろ自主行動計画よりも排出量取引制度のほうが予見可能性があると考えられると思いますけれども、この点についてどうお考えかということをお伺いしたいということでございます。
 それから、あと2点ほど簡単につけ加えますが、セメント協会さんにおきましては、確かに廃棄物を大幅に取り入れられてリサイクルされているというのは敬意を表したいと思いますけれども、これはコストの面で言うと、市場原理に従って行動されているということが多いと思いますが、もちろん補助とかもあると思いますけれども、別に社会貢献のために自腹を切っておやりになっているというわけでは必ずしもないと思いますが、その点はいかがですかということをちょっとお伺いしておきたいと思います。
 それからもう一つ、経団連さんにおきましては、いろいろご指摘いただきましたが、一つお伺いしたいのは、スライドの17ページの限界削減費用ですけれども、確かにRITEさんからこれが出ているのですが、これは研究機関によって大分違ってきているところがあるかと思いますので、この数字について、これだけが正しいというわけでは必ずしもないと思いますが、その点についてどうお考えか、ちょっとお伺いしたいということでございます。
 以上でございます。

○植田委員長 ありがとうございました。
 3人ぐらいまとめてということにしたいと思いますので、明日香委員からお願いできますか。

○明日香委員 最初に、前回の議論とも関わるのですが、カーボンリーケージでどれだけ売り上げがという話で、今回もこの産業団体さんもカーボンリーケージの話をなさっていたので、一つコメントさせていただきたいと思います。この前、カーボンリーケージで売り上げが何%という話があったんですが、私の計算ではどういうことをやっているかというと、製品価格が上がったときに需要が何%下がるかという話なので、売り上げは上がります。EU-ETSでも、ほぼすべての企業が売り上げも、価格転嫁もかなりしたので、利益も両方上げています。それは実証的にある程度明らかにされていますし、まさにそれはどのような割り当て方法、無償か有償か、どうするかによって絵図が変わってくると思います。
 あと、マネーゲームに関して一つ。マネーゲームも不公平性も結局議論は同じでして、すません、ちょっとコメントになるかもしれないんですけれども、そもそも、では公平性とは何ですかと聞くと、誰も答えられないんです。究極的には多分自社のコストがかからなければ公平だといった議論に落ちついてしまいまして、マネーゲームも結局何ですかというと、ほとんど答えはない。実際、EU-ETSの価格変動を見ますと、何でもいいんですけれども、ほかの資源の価格変動に比べてはるかに投機筋の影響は少ない。そういう意味では価格変動は小さいということはあると思います。なので、どの製品と比べるとか、そういう視点も重要かと思います。そういう意味では、EU-ETSにおける、あるいは排出量取引制度におけるマネーゲームなり価格乱高下の可能性というのは、相対的には低いと考えられると思います。
 あと一つだけ、すみません。多分皆さん、ほかの方もおっしゃると思うので、僕は多分皆さんがおっしゃられないことで、経団連さんが最後のほうで、お話になかったんですけれども、スライドの23ページですけれども、例えばECOFYSという研究機関が「EU-ETSは域内の排出削減に寄与していない」と評価しているとか、英国下院の環境監査委員会は「現行のEU-ETSが環境技術への投資を十分促進していない」と結論づける報告書を公表しているということを書いていらっしゃるのですが、多分これは典型的なアウト・オブ・コンテクストというもので、両方とも今の排出キャップなりの緩さ、だから基本的に今の排出キャップが甘いから価格が低くて削減に寄与していないという結論だと思うんです。なので、多分このECOFYSも、議院の報告書も、ここに書いてあることとは全く逆のことをインプライしているかと思います。なので、排出量取引制度に関しては、建設的な議論をしたほうがいいと思いますので、なるべく具体的な話ができればいいなと思っています。
 以上です。

○植田委員長 では、有村委員もお願いできますか。

○有村委員 各報告者の皆様、丁寧な説明をありがとうございました。委員の上智の有村です。最初に1点コメントさせていただいて、その後何点か質問させていただきたいと思います。
 セメント協会の照沼様からのご報告で、33ページ、34ページあたりです。例えば34ページで、そもそも、国内セメント企業間では売り手がおらず売買が成立しない可能性が高いというご指摘があるんですけれども、これがまさに排出量取引を導入するべき一つの理由で、多分、業界を超えて削減コストの低いところを探すといったところが、自主行動計画と違って、キャップ&トレード型の排出量取引制度を考えたときに、排出量取引が入ってくる非常に重要な要因なのではないのかなと。
 それから、その上のページで、技術開発の点に関しても、革新的な技術革新というのが模索されているということで、そういったことに成功したところがキャップ&トレード型の制度があるときに競争力の面ですごく優位に立つというのが、まさに排出量取引制度のキャップ&トレード型、あるいは炭素税でもそうかもしれませんが、そういったものを導入することの根拠なのではないかなと考えられると思います。
 それから、これから先は質問させていただくのですけれども、セメント協会様、日本製紙連合会の方も、非常に国際競争力ということをご懸念されていて、それはまさに、特に日本でだけこういった規制が行われて、中国などで規制がされないということになると、確かにそちら側の国、新興国からの輸入の可能性があるのではないかというご懸念があるということで、私もそれは非常に共有するんですけれども、Japan-CLPの則武委員のほうから例えば国境調整といったアイデアが出されているんですけれども、例えば、これはヨーロッパでも議論されていますし、アメリカの法案などでも常に出てくるアイデアで、新興国などで温暖化対策を望まない国から来る製品に対しては、炭素税のようなものを課して競争条件を公平にしようという考え方があるのですけれども、それについて日本製紙連合会と日本セメント協会などで何かお考えがあったら教えていただきたいというのが1点目の質問です。
 それから2点目は、排出の割り当てに関して、公平性の問題が常にあるという話で、それに対して、多分一つの考え方はベンチマーク方式で、今EU-ETSが第3フェーズに向けて、ECOFYSなどが試算されたようないろいろな各業界ごとのベンチマークの考え方があると伺っているんですけれども、もしその辺について既に調査済みであってご意見がおありであれば、教えていただきたいと。
 それから、今回は資料はないんですけれども、技術ベースのベンチマークの難しさというのは確かにいろいろなところで指摘されることはあると思うのですけれども、例えば前回の委員会でWWFジャパンは技術に依存しないタイプのベンチマークというのをご提案されていたので、いろいろな考え方で対応はあるのかなと思っております。これはちょっと今日は資料がないので、議論するのは難しいかと思いますが。
 3つ目の質問は、製紙連合会さんのほうで植林にかなり積極的に取り組まれているということで、これはかなりCO2削減に寄与されているということなんですけれども、これは、どういった観点からこれだけの植林をなさっているのか、CDMということなのか、その辺について教えていただければと思います。

○植田委員長 ありがとうございました。
 ここで一度、たくさんの質問が出ておりますので、順次お答えいただくということで、特に大塚委員のほうから出た、もともとの質問事項も含めてということで、ほぼすべての方にご質問があったと思いますので、もしコメントへの再コメントもあれば、あわせてお願いしたいと思います。それでは最初のセメント協会の照沼様のほうから順番にお願いできますでしょうか。

○セメント協会(照沼) まず大塚先生のほうから事前の質問の、セメント業界では火力自家発電をかなり行っており、石炭の割合も高くなっているようだが、改善策を講じられているかといったことですけれども、これについては、当然のことながら、発電システムそのものの効率アップと、それから発電システムで廃棄物を使用するとか、発電のほうで難しければセメント製造システムのほうで使うといった形で、効率を上げることをトライしております。
 それからもう一つ、プロセス由来のCO2に関してですけれども、これについては、プロセス特有のことでして、現段階では削減の方法はありません。
 それから、EUのベンチマークの件ですけれども、これは先ほど申しましたように、そもそも取引制度そのものは、セメント産業に関しては、もう削減余地がないので、売るものも買うものもないような、むしろ設定されれば買うばかりということになってしまいますので、この点についてはあまり議論しておりません。

○大塚委員 議論はいいんですけれども、そのベンチマークについてはそれぞれの会社はお持ちではないかと思うんですけれども、あまりそういう数字は出しておられないということですか。

○セメント協会(照沼) そうですね。
 それから、先ほどの廃棄物を大量にリサイクルしているのは社会貢献というよりも経済原理で動いているのではないですかといった質問ですけれども、これは企業ですから、経済原理で動くのは当然ですし、企業というのは、そういうところで経済原理に従って動いて、その中で、それが社会貢献だと思いますので、この質問に対してはそういうお答えしかないかなと思いますけれども。

○大塚委員 すみません。さっきのベンチマークについては、ご検討されれば数字は出てくるわけですね。今お持ちでないというだけで。

○セメント協会(照沼) 検討しても、ではそれはどう役に立つのかという疑問は非常にありますけれども。

○大塚委員 とりあえず。すみません。

○セメント協会(照沼) それから、大塚先生からはそれだけですね。

○大塚委員 はい、私はないです。

○セメント協会(照沼) あとは、有村先生のほうから国境調整という話が出てきましたけれども、これについては、当然セメントの場合も、現在は国内で流通しているセメントのうち輸入品というのごくわずかですけれども、当然こういう制度が入れば、炭素リーケージは起こるだろうと思っております。国境調整を行うということに関しては、これはいろいろ政策上の問題ですから、私どもとしては何とも答えようがないんですけれども。

○植田委員長 よろしいですか。
 それでは、製紙連合会の志村様のほうからお願いできますか。

○日本製紙連合会(志村) 製紙連合会です。大塚先生のほうから、自主行動計画でどうやって25%、80%に対応していくのかと。それに関連してくると思うんですけれども、資料の15ページを中心として、10ポイントはキャップでもいいのではないかとか、何も生み出さないということについての意見といった質問があったと思います。我々は製造業なわけですけれども、一番以前から努力してきたことは省エネなんです。エネルギーを非常にいっぱい使っている産業ということで、それはもう業務そのものということであって、結局CO2の削減というのも、これはオペレーターレベルまでいくと非常にわかりにくい話になってしまうわけで、実態は何かというと省エネではないかと思っています。省エネについては、原単位で管理していくといったやり方でずっと何十年もやってきているわけでして、そういった中で、オペレーターもわかるような内容で目標をつくって、それで目標をクリアすれば、それがそのまま収益にもつながってくるわけですから、実績を上げて、そしてまたその上で新たな目標をつくって実績を上げていく。PDCAを回していくということだと思うんですけれども、そういったやり方は非常になじんでいますし、全員で取り組むという意味でも一番効果が大きいのではないかなと思っています。それに、努力がはっきりそのまま数字として表れてくるということで、従業員のやる気も一番出てくる方法と考えていまして、そういった産業、業界になじんだ方法で、日本の企業にもなじんだ方法だと思っていますし、CO2の削減に取り組んでいくのが一番いいのではないかという強い思いがございますので、一連のこういう主張につながっているとご理解いただければいいのではないかなと思っています。

○大塚委員 すみません。ちょっと申し訳ないんですけれども、あまり質問に答えていただいていることにならないのではないかという気もするんですが、25%削減とか80%削減をそれでやっていけるとお答えいただいているということになるんでしょうか。

○日本製紙連合会(志村) その件については、後の質問の答えにもつながってくるかもしれませんけれども、必ずしも産業界でこの25%、80%をやっていかなければならないという話ではないわけですから、その辺は、もうちょっと議論を詰めて、妥当な目標を産業界あるいは業界各社で決めて、それに向けて取り組んでいくということであれば、自主行動計画でも十分にいけるのではないかなとは思っております。

○大塚委員 これ以上は申し上げないほうがいいですよね。この辺にしておきます。

○日本製紙連合会(志村) それから、明日香先生からご質問があったんですけれども、事前に質問を受けていまして、それも絡めてちょっと返答したいなと思っています。
 ベンチマークについて質問がございまして、どの程度の製品レベルまでブレークダウンできるのかといった質問でした。製紙業界の場合、製品の種類としては、一般的には新聞用紙、非塗工、塗工、包装用紙、衛生用紙、その他の紙、あと段ボール原紙、紙器用紙、その他の板紙といった程度にはブレークダウンができるかなとは思っています。EUでは15種類程度と聞いているのですけれども、海外では製品ごと専用の工場が結構あると聞いています。日本では一つの工場でいろいろな紙をつくっているところが多いということで、この辺が実際にブレークダウンして進めていくのにちょっと難しい点かなと思っています。
 数値化しているかということなんですけれども、現在、数値化はやっていません。省エネ法のベンチマークの検討というのはやったのですけれども、もうちょっと大きなくくりでやったというのが現状です。
 それから、どの程度のレベルを目指すのかといったことなんですが、各社、各工場によって状況が異なるということで、一律にはお答えができない状態です。
 それから、原単位のばらつきの話ですけれども、プレゼンでもちょっと例を示したのですが、非常にばらつきが大きい、場合によっては10倍以上のばらつきが出ているというのが現状で、工場の立地とかエネルギー事情、古紙主体なのか、再生エネルギーを持っているKP主体なのか、それから製品構成といったことが大きな原因になっているかなと思っています。
 それから、海外クレジットの検討のお話がありましたけれども、AR-CDMとかREDDプラスとの関係ということでご質問を受けていますけれども、現在のこういった結構厳密なクレジットについて、多くのプロジェクトのうちでは、王子製紙がかろうじてマダガスカルで試験的に行っているというのが実態です。これについては、米国が提案しているように、二国間で合意すればカウントできるようにといった気持ちでございます。植林の場合は、持続的な経営を目指すということで、使う分だけきちんと植林をするといった考えでやっていまして、そういった経営の中での事業ということなので、AR-CDMとかREDDプラスとはちょっと考え方が違うのかなとも感じています。
 それから、鉄鋼さんでは技術の海外展開といった話が出ていまして、紙パでも黒液ボイラー等海外展開についてどう考えるかという質問がございました。この回収ボイラーの高温高圧化については、省エネ効果は大きいんですけれども、設備費が非常に高い。200億といった数字にまで達してしまいます。そんなわけで日本以外の国では非常に導入が少ないと聞いています。あと、鉄鋼さんは独自の開発ということなんですけれども、紙パの場合は機械メーカーとの共同という要素も強いです。ほかの国の省エネに対する意欲等を考えると、展開ということでは非常に難しいのかなとは思っています。また、配管の材質が非常に重要で、通常の低圧のボイラーに比べて運用・保守が難しいということ、あと操業のノウハウが非常に必要ということで、海外企業のほうで導入を計画するということであれば協力はしますけれども、なかなか厳しいかなと。ほかにもいろいろな脱墨とかニーダーといった技術も持っているのですけれども、一番大きいのは、そういった個々の機械のほかに、全体のフローとか、操業のノウハウといったことかなと思います。そういったことで貢献できる可能性はあるかなとは思っています。
 それから、あと海外事業展開はどうかといった話もあったかと思います。国内では、非常に生産が伸び悩んでいます。アジアでは、結構紙の生産が上がっているし、経済も急成長しているということで、まだまだ需要が多い状態ということです。そういったことを踏まえて、今後は輸出の拡大とか海外事業展開、あまり紙パは他産業さんに比べて積極的にやっていない部分もあったんですけれども、そういったことが求められているかなと思っています。現在、ただでさえ原材料の高騰と輸入紙の拡大で非常に圧迫されていまして、その上で炭素税とか排出量取引が加わるということは、非常に重くなってくると思っています。こういったことが適用されてくるのであれば、いろいろ特例措置とか、排出権の付与といったものが重要な条件になってくるのではないかなと思っています。ほかの国に比べて技術・品質では優位性はあるとは思っているのですけれども、輸入紙に対抗し得る価格で生産することができるかとか、国際競争で価格で対等に争うことができるか、こういったところが最も重要なファクターかなと思っています。ほうっておけば海外進出の体力のない中小は倒産していくでしょうし、大手でも海外資本に吸収されて、業界は衰退して経済と雇用に影響が出てくるのではないかなとは思っています。

○植田委員長 よろしいでしょうか。ちょっと時間の関係がありまして……。

○日本製紙連合会(志村) すみません。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは続きまして、杉山さん、不動産協会のほうからお願いできますでしょうか。

○不動産協会(杉山) 事前に大塚先生からのご質問をいただいているところでございますけれども、東京都の制度で、ビル単位でキャップがかかる場合に、オーナーとして苦労する点はあるかということと、テナント側に排出削減に取り組ませるために行っていることはあるかというご質問をいただいております。
 私どもの業界で、先ほどもちょっと一部申し上げましたけれども、大規模改修の際に環境性能の高い設備に改修するということは従来から取り組んでいるわけでございますが、ではそれに係るコストをテナントの賃料に転嫁できるかというと、正直、それはできていないというのが実情でございます。そうしますと、テナントと共同してどのように排出削減に取り組むかというところが重要だと考えておりまして、これは各会員企業がさまざまな取組をしているところだとは思いますけれども、例えば私どもでいきますと、ビル単位に温暖化対策協議会といったものを設置しておりまして、その中でまさに運用面でのさまざまな改善を行うといったことで私どものほうから使用先に対して情報を提供して、その中で共同でどう取り組んでいくかといったことを定期的にやっているというところでございます。細かいところでいけば、空調の温度の設定の問題、あるいは照明の利用の問題とか、さまざまなことがございますけれども、そういったこととか、あるいは私どもが取り組んでいろいろな情報を提供して、それについて各テナントさんはどういう形で協力していただけるかといった形での取組は、既に実施しているところでございます。
 私のほうからは以上でございます。

○植田委員長 それでは、電気事業連合会さん。

○電気事業連合会(廣江) ありがとうございます。
 まず大塚先生のご質問の1点目でございますが、欧州と日本の比較がございました。結論から申しますと、実はよくわかりませんということでございます。ご承知のように、欧州の場合には基本的には、国によって少し制度が違いますが、発送配電の分割がされておりますし、さらに小売分野は100%自由化されている。日本の場合には、4回にわたります電気事業制度改革の検討が行われまして、現状は、先ほど私どものほうから申し上げました3つのEの達成のために、送配電部門のコストあるいは運用については徹底的に透明化させた上で一貫体制を維持し、さらに自由化範囲につきましても高圧のお客様までの拡大にとどめるという体制になってございます。この体制の差が転嫁の容易性あるいは100%オークションにどのようにつながっているかは実はよくわからないというのが実態でございます。これが一つ目でございます。

○大塚委員 すみません、今の点は電力の自由化との関係とかもございますでしょうか。

○電気事業連合会(廣江) 今申しましたように、その関係はよくわからないというのが率直なところでございます。

○大塚委員 そうですか。はい。

○電気事業連合会(廣江) 多分、この転嫁が容易というのは、電気料金そのもののことを言っているということであって、欧州が特に転嫁が容易だということではないのではないかなと想像いたしますが、確たるところではございません。
 それから2つ目の、間接排出の制度とした場合、原単位の低減をどう担保するのかということでございますが、これも先ほど申しました3つのEの同時達成のために私どもの実質的な行動といたしまして、原子力開発あるいは利用率の向上、火力の効率的な運用、さらには再生可能エネルギーの大量導入に取り組んでまいりました。引き続き、こういった考え方のもとで、さらに技術開発等も進めながら、原単位の低減を図ってまいりたいと考えております。
 それから3つ目の点でございます。間接排出の制度とした場合、電力使用量を把握し、検証する必要があるが云々というところでございますが、実は電気だけをとりましても、特に大口のお客様の場合には、私どもがお売りしているだけに限るわけではございません。例えば自家発を持っていらっしゃる、最近はこういったビルでも相当程度自家発が入ってございます。さらには新規参入者から買っていらっしゃるケースもあるということでございまして、私どもがすべてを網羅しているというわけではないという事実がまずございます。さらに申しますと、現在の温対法も、実はご使用者のほうでそういったものを把握して報告されるという制度になってございますので、基本的には現行制度でよろしいのではないかなと考えているところでございます。

○大塚委員 すみません。2つ目の点ですけれども、さっきおっしゃっていただいたことなんですけれども、政策手法としてはどういうことをお考えかということだったんですけれども。

○電気事業連合会(廣江) 先ほど申しましたように、ぜひ私どもの自主的な取組というものをご評価いただきたいと思っています。

○大塚委員 それだけで大丈夫かどうかということですけれども、大丈夫ですか。

○電気事業連合会(廣江) ええ。例えば、先ほど申しました2008年~2012年につきましても、残念ながら当初の目標にまだ到達していないんですけれども、それにつきましては、クレジットを買ってしっかりとそれも達成するということにしておりますし、基本的にはその方向でまいりたいと思っております。
 それから明日香先生からのご質問のほうでございまして、排出枠購入価格の転嫁の判断要因というご質問でございます。そもそも、購入しなければならないという前提の議論というのが、プレゼンのほうでも申し上げましたように、そこにやや問題があるのではないかなと思っておりますが、基本的に転嫁につきましては、ぜひこれは、株主あるいは私どもの従業員の負担ということではなしに、お客様にお願いしたいというのが率直なところでございます。ただ、いろいろなこういったコストにつきまして、例えば今太陽光の買取制度がございますけれども、これとてなかなかうまく転嫁は必ずしもできていないというのが実態でございまして、非常に難しいとは考えております。
 それから、2つ目の"wind-fall profits"の件でございます。これも、そもそも"wind-fall profits"がどういう形で発生したか、私も十分に把握はしてございませんが、そういったものが発生するとするならば、これはやはり制度自身に相当問題があるのではないかと考えます。
 それから、3点目でございますが、発電分野にキャップがかからない場合に、原単位などを向上させるためのインセンティブ、これは先ほどのようなことだと思っております。
 それから、最後の売り上げと利益のデカップリングといいますのは、売り上げが落ちても利益は落ちないという制度でございましょうか。

○明日香委員 そういうのが排出先には理想的だと思いますし、ほかの国ではそういう制度もあると聞いておりましたので、もし何かご知見なりアイデアがあればということなんですが。

○電気事業連合会(廣江) なるほど。コストにつきましては、現在我が国では、燃料費調整制度とか、あるいは先ほど少し申し上げました太陽光の買取制度といった形で自動的に調整させていただくというものはございます。ただ、売り上げが減少した場合にこれを利益と遮断するというのは、なかなかそんな名案は思い浮かばないわけでございまして、結論から申せば、やはり安全に影響がない、安定供給に影響がないという大前提のもとで効率化努力をして、何とかそれを私どもが吸収していく、あるいは場合によっては国内の他の事業に進出する、さらには海外進出することで利益を確保するという方法しか今のところは思い浮かばないというところでございます。
 以上でございます。

○明日香委員 一つ転嫁についてちょっと確認させていただきたいんですが、国民なり政府がある程度転嫁を認めれば、転嫁するという理解でよろしいんでしょうか。

○電気事業連合会(廣江) まず排出量取引制度そのものにつきましては、先ほどのプレゼンで申し上げましたように、いろいろな課題がございますので、そこをしっかりと議論いただくということでございますけれども、一般論としまして、転嫁というところにつきましては、私どもの合理化努力が及ばない範囲であれば、やはりそれは何らかの形でお客様にご負担いただきたいとは考えております。

○明日香委員 排出量取引制度にかかわらず、どんな政策でも多分コストアップという形で出てくると思いますので、それは具体的にどのくらいの大きさのコストアップで、それが転嫁したときに社会がどう認識するかという話になるのかなと思います。ありがとうございました。

○電気事業連合会(廣江) ありがとうございました。

○植田委員長 それでは、岩間さんのほうからございましたら。

○日本経済団体連合会(岩間) まず大塚先生からありました限界削減費用の国際比較についてでございますが、先生がご指摘のとおりでございまして、さまざまな企業がさまざまな手法で試算されていると思います。ただ、一般的な傾向としましては、90年比25%という目標でありますと、諸外国に比べればかなり高いというのは一般的評価であると思いますが、先生がご指摘のとおりでございますので、まさにそういうことは、こういった中央環境審議会のような公開の場で、関係のモデル・試算の専門家の方に集まっていただいて、なぜそのような試算になるのか、どこがどう違うのか、どのような形で限界削減費用の国際比較をやるのがいいのかということをしっかり議論していただきたいと思います。また、そういったものは国民の多くも待ち望んでいるのではないかなと思います。
 それから、私が聞かれているのかどうかはちょっとわかりませんので、簡単に触れますけれども、25%削減、80%削減が自主行動計画で可能なのかどうかということでございます。逆に、排出量取引が必要なのかということになりますと、では排出量取引制度で何をやるのか、そこまで削減するのかということになりますので、そういったところは、ここが排出量取引制度の制度設計をご議論されるということでございますけれども、排出量取引はどの程度の削減を目指してやるのか、あるいは他の政策との役割分担として何をやるのか、他の政策との相互関係はどうなのかということもしっかり頭に置いて議論していくということが必要なのではないかなと思っております。
 私どもは、80%削減というのは、既存技術では不可能でございますので、先ほどお示ししましたようなさまざまな革新的な技術をいかに開発して、いかに普及させていくのかというところで、官民が協力して力を合わせていくということが大事でございます。そういった技術開発の足かせ、制約となるようなことはやるべきではないと私どもは思っております。
 それから、25%につきましては、まさにロードマップの議論が行われているわけでございますので、そういうものとセットで、どのような道筋で、どのような政策が、どのような役割分担をして、相互関係がどうなるかということをしっかり議論していただきたいと思っております。そういう中での国内排出量取引制度の制度設計の議論ではないかなと思っております。
 それから、明日香先生のほうからEU-ETSについてのご指摘がありまして、EU-ETSについてしっかり認識を持たなければいけないというのは全くそのとおりでございまして、かつてたしか経団連と環境省と経済産業省でEUのほうにEU-ETSの視察ミッションなどを出したことがあります。あれは一つの当時の共通認識を持つのに有益だったと関係者から聞いておりますが、調査に行って、自分の都合のいいところだけを日本に紹介するといったことがあってはいけないと思いますのは全くそのとおりです。明日香先生のご指摘については、大塚先生のご指摘とも関係するわけでございますけれども、結局は排出量取引制度は、キャップがどの程度のものであるのかといったことを切り離してその排出量取引制度の善し悪しなりを議論できないといった面がありますので、単に制度の諸技術的な設計だけではなくて、どの程度の削減なり、どの程度の設備投資なりを考えていくのかといったこと、そういったものをしっかりやることが、いい議論、最終的な目標であります持続可能な社会、低炭素社会形成に向けた議論につながっていくのではないかなと思っております。
 それから、先ほど明日香先生が、EU-ETSが導入されて、EUの企業の収益とか売り上げとかというご指摘がありましたけれども、それもキャップとの関係もございます。制度の関係もあります。いろいろなことがあると思いますので、そのようなところはしっかりみんなで研究調査して共通認識を持つということが大事ではないかなと思っております。
 それから、どなたかから公平性の話がありましたけれども、資料の中にも書きましたけれども、この制度を導入することによっての公平性ということでありますが、制度を導入して規制するほうがこれは公平だということをきちんと証明していただきたいと思っております。
 それから、これも私が聞かれているのかどうかわからないんですけれども、有村先生から国境調整の炭素税というのがありました。これも、具体的にテクニカルにどうするのかというところと、どの程度の規模なのかによって大分違うとは思っています。例えば、インドから鉄鋼が入ってくる、中国から鉄鋼が入ってくる、韓国から鉄鋼が入ってくると、鉄鋼はそれぞれ恐らく炭素を含んでいるという認識で、そこに対して炭素税をかけるということかなと思いますが、ちょっと詳細はよくわかりませんけれども、国境調整措置をご検討いただくのであれば、中国・インド・韓国の3カ国から入ってくる鉄鋼に対して公平な炭素税をテクニカルにどうかけるのかということもしっかり検討していただきたいと思いますし、先ほど申し上げましたように、私どもはさまざまな多くの懸念を持っておりますので、今のことも含めて、その懸念をクリアできるような提案をしていただければ、誠意を持って検討させていただきたいと思っております。

○植田委員長 ありがとうございました。

○有村委員 すみません、一言だけいいですか。

○植田委員長 ちょっと残りの委員の皆さんにも全員ご発言いただきたいと思いますが、簡潔にお願いします。それからお答えも、申し訳ないんですけれども、ポイントだけに絞っていただいてということでお願いできますでしょうか。それが終わって、もし時間があれば、また回りたいと思いますが。
 では、すみません。影山委員のほうからお願いできますか。

○影山委員 それでは簡潔に。セメント協会さんですけれども、廃棄物のリサイクルと非常にリンクしているという話ですけれども、セメント業界さんに厳しいキャップをかけると、そういうことで国際競争力がなくなって生産量が減るということになると、廃棄物のリサイクルに大きな支障が出る。下手をするといろいろなところでごみがあふれるようなことにもなりかねないということで、そういうことも踏まえて、セメント協会さんの温暖化の目標を立てなければいけないのではないかと考えますが、それについてコメントがあればお願いします。
 それから、製紙業界さんについて、これはもう感想だけですけれども、最後のページに製紙工場別エネルギー原単位というのがありまして、工場によって原単位が非常に大きく違うということを踏まえますと、なかなか工場別とか個別の単位での目標値というのは相当厳しいんじゃないかなと。これでどうやって工場別の目標値を立てるのかというのは非常に難しいと思いますので、こういう単位ではなく、何かもし立てるとすれば、ほかの形を考えなければいけないのではないかと考えるのですが、何かコメントがあればお願いします。
 それから、不動産協会さんについても同じですけれども、やはり不動産の物件によって全然その状況が違うということでございますけれども、何か目標値の設定についてお考えがもしあるとすれば、お聞かせいただきたいと思います。
 電事連さんですけれども、この会議で電力について、発電所あるいは電力会社に直接総量の目標値を立てたらどうかというご意見が幾つかございますけれども、それについてのご見解があればお教えいただきたいと思います。
 以上です。

○植田委員長 ありがとうございます。
 では、笹之内委員、お願いします。

○笹之内委員 大変勉強になりました。ありがとうございます。
 一つは、セメントさんが、まずビジネスにしていろいろ廃棄物を受け入れられるというのは、まさに環境と経済の両立という面では高く評価されるべきではないかと私は思います。それで、今日で3回目になるんですけれども、大分論点が絞られてきたと思います。そのカーボンリーケージの問題、それから公平性、それから技術開発ができるかどうか、それから投機的市場、これは是非も含めてですけれども、そういう論点から今日のご説明に対して質問させていただきたいんです。
 まず、カーボンリーケージで具体的に則武さんが、7/10のところで、「素材大量使用輸出製品への還付を行う」というのが1.5の[2]のところにあるわけなんですけれども、これは素材メーカーではなくて、これを見ると、輸出製品をつくっているメーカーへ還付を行うと私は理解したのですけれども、これは補助金付輸出にならないかどうかという点をちょっとお聞きしたい。
 それから、セメントさん。これはカーボンリーケージと同じ話なんですけれども、公平性という話で、ましてや、それぞれの個々の民間企業が途上国へクレジットを買いに行って途上国支援という形になるというのは、これはまさに避けるべきだと私は思うんですけれども、もう一つ国内の問題で、先ほどご指摘があったかもしれませんけれども、セメントさんのように、ほとんどトップレベルの技術をほぼ全社で導入してしまっていると、先ほど有村先生からそういうご指摘があったんですけれども、だからよその分野で削減するのだというときの公平感、既にトップの技術をその分野でやっておられるのに、ほかの分野での削減に資金提供するという不公平感を感じられないかということをお聞きしたいと思います。
 それから、もう一つセメントさんですけれども、そうだとすると革新的な技術しかないということで、そういうことに対してキャップ&トレードというのはうまく機能するのか。例えば、私は私の民間企業での経験で、いろいろなところで調査活動もやっておりましたけれども、私は私どものライバルのアメリカの自動車会社が衰退していくときに一番見たのは、クオータリーベースの業績を非常に重く評価するようになったということなんです。それで基礎研究をほとんどやめていったという経緯があるんですけれども、そういうおそれはないかということです。  それから、投機的市場、これも則武さんにお聞きしたいんですけれども、セメントさんが出した資料では、第1期とほぼ似たように、第2期の価格もかなり下がっている局面があるわけです、ゼロにはなっておりませんけれども。もちろん、マネーゲームというのはいろいろな指標があるという指摘もございますけれども、とりあえず則武さんは価格が乱高下したということを一つの指標にされているんですけれども、このセメントさんの資料で第2期はなかったというのをどのように感じられるかという、その3点をお聞きしたいんです。
 以上です。

○植田委員長 では、冨田委員、お願いします。

○冨田委員 ありがとうございます。時間も限られていますので、CLPの則武さんへの質問を2点させていただきます。
 1点目は、削減目標の割り当ての件です。資料では、義務的な目標を設定することにより公平な取組を期待できるとなってございますけれども、削減目標の割り当て自体をどう公平にやるかというのが論点に挙がっているかと思いますが、それについてはどのようなお考えをお持ちかということをお聞きかせください。
 それからもう1点は、電気のCO2の排出係数のところです。他のエネルギーと違って、電気については、発電時にCO2を出して、使用時には出さない。すなわち、電気を使う人とCO2を出す人が異なるという難しいところがあります。したがって、これまでも何回か小委員会の中でもお話をさせていただきましたけれども、電気の供給者のほうの取組と使用者のほうの取組の両方をやっていかなくてはいけない。そして、両方の努力を適切に評価する必要があると思います。その観点でCLPさんの資料を拝見しますと、電気のCO2の係数というのを電気事業者さんの目標係数を使って評価するといった考え方になっていますが、これは恐らく全電源平均の係数を想定されていらっしゃると思いますけれども、全電源平均の係数を低下させるというのは供給者側の努力によるところが非常に大きいと思います。その努力の結果を使って需要側、電気の使用者の努力を評価することが本当にうまくできるのかということについてのお考えをお聞きしたいと思います。

○植田委員長 では、新美委員、お願いできますでしょうか。

○新美委員 どうもありがとうございます。私も簡潔に質問させていただきます。
 今日の事業者団体の皆さんの主張される全体を見ていますと、経団連さんの報告の中でLCA的な取組というものをどう対応するかということを強調されているんですけれども、一つ、経団連さんに、あるいは他の事業者団体さんに伺いたいんですが、このLCA的な取組というのは、我が国の独自なといいますか、独特な視点なのか、あるいは欧米その他諸外国で取り組んだような例があるのかということです。もしあったとするならば、例えば欧米であったとしたならば、例えばEU-ETSでどんな対応がされたのかということを伺いたいということです。
 それから、同じような質問で、これは冨田さんと同じところですが、則武さんに伺いたいのはこういったLCA的な取組についてこの報告書では何らかの考慮がなされているのかどうか。
 その2点でございます。

○植田委員長 ありがとうございました。恐縮ですが、もう質問を全部と思いますので、則武委員もお願いできますか。お答えではなくて、質問は多かったんですけれども。

○則武委員 質問についてですけれども、まず電気事業連合様のほうにお聞きしたいのが、12ページにメガソーラーで4万軒分に相当するということで書かれておりますけれども、電気事業連合会様が実施されるものでない部分で、新築の日本で年間60万軒程度の新築に太陽光がつけられるようなことではもっと大きな効果があるのではないかということと、あと電気の購入者であるオフィスビルや工場などが再生可能エネルギーを購入することや太陽光を設置するという効果もかなり大きなものになるのではないかなと思うんですが、そういった部分についての政策とかということ、積極的にそういうものを推進するということに対してどのようにお考えかということをお聞きしたいと思います。
 それから、セメント協会さんと日本製紙連合会さんと不動産協会さんのほうにお聞きしたいのは、業界内で皆さん真摯に全部取り組まれているということであれば望ましいと思うんですが、業界内ではいろいろなばらつきもあるのではないかなと思うんですが、その辺が不公平だといった議論がないのかどうか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
 それから、不動産協会様のほうに、インセンティブとか支援・補助といったことが幾つも書かれているのですが、実質上、東京都の制度によって大規模なビルで再生可能エネルギーを導入しているということが現実に起きていると思いますが、これは排出量取引の制度自身がインセンティブになっているのではないかなと思うんですが、それについてはいかがでしょうか。
 以上です。

○植田委員長 ありがとうございました。
 では、増井委員、お願いします。

○増井委員 ありがとうございます。1年数カ月前に中期目標検討会という場でも各業界の方々にこうして我々自身のほうからヒアリングをさせていただいて、そのときにももちろんいろいろな先進的な取組をご紹介していただいて大変勉強になったわけなんですけれども、今回も、さらにそれからいろいろ対策を積んでいらっしゃるということで、非常にうれしく思います。特に、具体名を出して申し訳ないんですけれども、電気事業連合会さんのほうに行ったときに、1年ちょっと前には、「スマートグリッドなんて、あんなものだめだよ」といったことで、もちろん今日来ていらっしゃる方ではないんですけれども、そのようなコメントも少しいただいたのが、1年たって非常に研究も進んでいるのかなということで、非常に頼もしく思っております。一方、このビルも……。

○植田委員長 申し訳ないのですが、ちょっともう時間がないので、質問のほうへいってください。

○増井委員 はい。それで、幾つか質問なんですけれども、まず2020年までに何%削減するのかということ。自主行動計画等もありますけれども、先ほど大塚委員のほうからありましたけれども、実際に各業界団体で2020年までに何%削減するのかという目標値を定められているのかということを各業界団体の方々にお伺いしたいと思います。
 2点目なんですけれども、先ほど製紙連合会さんのほうでは難しいというお話がありましたけれども、海外に技術を売り込む努力というのをどの程度されているのかということで、各業界団体で、日本の技術は世界最高水準であるということを常々おっしゃっていらっしゃるんですけれども、それを海外展開していかないと、宝の持ち腐れということになりますので、そのあたりをどのようにお考えなのかということです。
 3点目としましては、製紙連合会さんのほうでは、それぞれ個別の事業所単位で排出原単位を出されておりますけれども、そのように平均値ではなくて、個々の事業所なり企業というところで議論することがこの排出量取引を行う上でも必要なのではないかなと思いますので、ぜひともそのようなデータを各業界から開示していただきたいと思っております。
 4点目、これは個別になってしまいますけれども、製紙業界さんのほうで、今日は特に報告はなかったんですけれども、自主行動計画の中で、自主参加型排出権取引制度参加というものをこのCO2削減の対策・取組の一つとして取り上げられております。そこの教訓といいますか、そういうところに参加されてのご意見等があれば、ぜひともお聞かせいただきたいと思います。
 最後なんですけれども、電事連さんのほうで、今日の資料の20ページ目のところにも、現在かかっているコストということで、追加的にこれだけ費用がかかるということが書かれているんですけれども、追加的にかかる費用というのはもちろんわかるんですけれども、現在実際にかかっている費用を、例えば燃料コストの調整とか、そのほか電源開発促進税等の費用とか、そういうより公平な形でいろいろな情報をご提示いただきたいということです。
 すみません、それとあともう1点だけ。経団連さんのほうで、先ほど大塚先生のほうからもありました限界削減費用の話。先ほどのコメントの中で、こういう場でどういう違いがあるのかというところをきちんと議論するということはもちろん非常に重要だと思います。ただ、実際に計算している側からしますと、そういう限界削減費用というのはあくまでわかっているものの積み上げでして、経団連さんのほうで別に取り上げられておりますようなグリーン・イノベーションの効果といったものは一切含まれていないと私自身は考えております。それで、一方でグリーン・イノベーションの効果というものを期待されて、一方でその限界費用が非常に高いということで、少しバランスが悪いのかなといったこともございますので、そのあたりはぜひとも配慮していただければと思います。
 以上です。

○植田委員長 では、武川委員、お願いできますか。

○武川委員 では、簡単に2点だけ質問です。
 まず、不動産協会さんなんですが、不動産協会さんのほうでは、削減ポテンシャルがテナントにあるのか、オーナーにあるのかといったあたり、あるいはどのぐらいあるのかといったあたり、何かデータをお持ちであれば教えていただきたいと思います。趣旨としては、オーナーがより削減する余地があるのか、それともテナントに電気を消してもらわないとしようがないという話なのか、このあたり、もしデータとしてお持ちであればお聞きしたいなというところです。
 それから、電事連さんなんですが、ほかの方の質問とも重なるかというところもあるんですが、20ページのところで費用負担を見ると、排出量取引制度よりもむしろ再生可能エネルギーの制度のほうが、負担が場合によっては大きいと。再生可能エネルギーのほうは、需要家が最終的に負担するので、電力業界というよりも電力セクターということだと思いますが、非常におもしろい数字だなと思っております。則武さんの質問と重なるんですが、電力業界として、これだけ再生可能エネルギーに負担がかかるのであれば、むしろ個別の小さい太陽光などというのは本当に合理的なのかなと私などはちょっと思うところもあるんですが、そういった、要はベストの政策というのはこういうものであるということについて何か検討されているのであれば、つまり、排出量取引だけではなくて、3つの政策を合わせてこうするのがいいんだというのがもしあれば、お聞かせいただきたいというところです。

○植田委員長 では、諸富委員、お願いできますか。

○諸富委員 1点だけ、Japan-CLPの則武さんに質問したいんですけれども、こういう形で産業界の側から積極的な制度設計提案が出てきたのは、非常に歓迎したいと思います。
 確認ですけれども、この資料の3/10ページに「直接排出および電力使用に対する間接排出を対象とする」ということで、この制度というのは電力会社も含めた形でキャップ&トレード型の制度を指示されているという理解でよろしいでしょうかというのが1点目の質問です。そうしますと、影山委員のご質問にもありましたように、直接排出で電力に規制をかけるという手法も一つあるんですけれども、これは電力会社に対しては、後で詳しい説明がございますように、原単位の目標だけをかけて、そして需要家側にむしろ電力量のほうの規制をかけて、2つを掛け合わせると、トータルとしては総量キャップがかかっているという仕組みの提案でしょうかという確認をさせていただきたいということです。
 それから2点目ですけれども、4/10ページ目に書かれてありますカーボンリーケージ影響産業の取り扱いということで、カーボンリーケージが想定される場合の素材部門については、炭素税を活用ということですけれども、そして恐らくキャップの対象からはもう除外してしまうというご提案かと思いますが、ここを若干詳しく説明していただきたいということです。炭素税を活用しても、活用した炭素税だと同じようにカーボンリーケージの可能性が出てくるわけですから、ここはかなり低い税率を想定されているのか。あるいは、先ほどおっしゃっていた、笹之内さんからも質問があったような国境のところでの還付ということで完全に対処できると考えておられるのか。そのあたりのご説明をお願いいたします。
 以上です。

○植田委員長 ありがとうございました。
 ここの会場の制約もございまして、時間が十分ないんですが、非常にたくさんの大事な質問が出ておりまして、今日おいでいただいた方1人2分でお答えいただくということになります。したがいまして、一番大事だと思うことだけ言ってください。その上で、残りについては、申し訳ないんですけれども、文書でご回答をする必要があるとお考えになったことについて次回までに出していただくという方式でお願いしたいと思うんですが、よろしゅうございますか。
 では、最初にセメント協会の照沼さんのほうから、何かございましたら。

○セメント協会(照沼) それでは、公平性についてどう考えるかというご質問がお二方からありましたので、まずは笹之内先生のほうから、セメント業界はもうぎりぎりまでやっているんだけれども、ほかの業界との不公平感はないかというご質問ですけれども、実はここが一番不公平感を感じるところで、ほかの政策などによって守られてきて、今まであまり削減ができていない、ただ削減する技術は今あるという業界との不公平感というのは非常にあります。それを同じマーケットで取引を行うというのは、非常に不公平感を感じております。
 それから、業界内なんですけれども、業界内は、セメント産業はエネルギー多消費型の産業ですので、これは省エネ法などによって非常に省エネ努力を極限までやってきた。その結果が先ほどご報告したとおりですので、セメント工場によって大きな差があるとは考えておりません。ですから、業界内の大きな不公平感というのはありません。ただ、地域によって原料事情とか先ほどの廃棄物の収集の事情などがかなり違いますので、その辺は、廃棄物をきちんと考慮していただければいいかなと考えております。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは、製紙連合会の志村さん。

○日本製紙連合会(志村) 先ほどお答えできなかった有村先生も含めて、公平性とか、原単位の異なる中でどのようにというお話が、あと影山委員、則武委員のほうからあったと思うんですけれども、ベンチマーク方式でやっていくのが一番望ましいんですけれども、非常に工場によって異なるということで、我々としては、各企業、理想的なところまでは省エネを実現しているところがほとんどという認識を持っておりますので、例えば、個人的意見では、スタートはグランドファザリングであって、その後ベンチマークを導入しているといった方法もいいかなと思っています。最初は企業単位ということになってくるかもしれませんけれども、工場単位を目指してやっていくという方向になるのかなというような気がしています。
 それから、あと増井委員のほうから幾つか質問がございまして、目標値としては、業界原単位で16%ということ、それから今、経団連の実行計画の検討では、これまで言ってきた数値をベースにして百二十数万トンということを考えていまして、先ほど言ったように、個々の企業で目標値を出してやっていくという方向につなげていくべきではないかと思っています。
 それから、制度の参加の話を最後にちょっとだけ言いますけれども、幾つかの企業が参加しまして、例えば王子製紙、北越製紙なども入っています。それで、私の所属する日本製紙は今年度ということでやっているんですけれども、あとレンゴーがJVETSに入っているということで、こちらは補助金を当てにしてというところが強いのではないかと思うんですが、本当はこういった試行運用をしっかりこれで排出量取引を含めて練習をやって、それでその後につなげたいと思っているところなんですけれども、必ずしもそのように進んでいないのかなというような気もしております。
 以上です。

○植田委員長 ありがとうございました。
 では、不動産協会の杉山さん、お願いします。

○不動産協会(杉山) お二方から目標設定のお話がちょっとあったかと思いますので、私どもの目標設定についてちょっとご説明いたしますと、基本的には私どもは性能目標を設定しているということでございまして、省エネ法に定めております建築主に求められている基準の10%あるいは20%の上のレベルを目標にするというのが新築でございます。
 それから、ご質問の中にもございましたけれども、既存ビルについは、築年数、建築年限が大分違うものがございますので、一律にはなかなかなじまないというところがあります。ただ、大規模改修というのが15年から20年あるいは30年から40年の期間でございますので、その際には新築に準じたような設備改修を行うということを目標にしているということでございます。
 もう一方、先ほど来、なかなかテナントさんの問題もあってコントロールできる部分がないというお話を申し上げましたけれども、自社ビルにつきましては、2008年から2012年の5年間の平均値を90年比で5%削減すると、自らの努力が及ぶ範囲につきましてはそのようなことを今目標にしております。
 それからもう1点、武川委員でございますが、削減のポテンシャルがテナント側にあるのか、オーナー側にあるのかというところで、正直なところ、これはなかなかまだ数字として押さえることはできてございませんが、例えば私どものビルの例でいきますと、大規模改修を行うということによって、設備の改修あるいは設備のリプレースを行うことによっても、全体で6%とか7%ぐらいの削減になるといった状況でございます。
 一方で、今申し上げましたように、自社ビルについての削減が90年比5%、これは恐らく達成できるとは思っておりますけれども、そんな状況と考え合わせて、どちらがポテンシャルなのかなというところは、まだなかなか判断がつかないところですが、やはり設備のほうが大きいのかなとは思っています。

○植田委員長 ありがとうございました。
 それでは、電気事業連合会の廣江さん、お願いします。

○電気事業連合会(廣江) 2分間で2件お答えいたします。
 まず影山委員の総量かということについてでございますけれども、ご承知のように、まず私どもは今回排出量取引についてはいろいろ検討課題はがると思っていますので、その件ではなしに、基本的な削減策ということでございますけれども、私どもは供給責任を負っている、さらに先ほど申しましたように、場合によっては電気需要が増えたほうが社会全体としてのCO2削減という可能性もございますので、やはり事業者として取り組むべきは原単位だろうと思っております。私どもの原単位削減努力とお客様の省エネ努力、この掛け算で頑張っていくんだろうと考えております。
 それからもう1点、則武委員からメガソーラーとの関連で太陽光のお話がございました。先ほどちょっと私も時間をかけ過ぎてご説明いたしましたが、11ページで申しましたように、私どもも、メガソーラーはむしろ起爆剤でございまして、基本的には一般のご家庭等でつくられるソーラーパネルの電気が大量に入っても問題がないようなグリッドを開発するということが本筋であろうと、これが私たちの責務であろうと思っております。
 それに関連してちょっと増井委員のほうからお褒めの言葉をちょうだいしましたが、少なくとも1年前から私どもはスマートグリッドはだめだと言った覚えはございません。正確に申せば、アメリカでスマートグリッドといいますのは、送変電の自動化、あるいはデマンドサイドマネジメント、太陽光の導入、こういう幾つかの要素があります。そのうち送変電の自動化はもう既に日本ではできております。デマンドサイドマネジメントにやや疑問があると思っております。しかし、太陽光は一生懸命やります。このように1年前から申し上げております。
 以上でございます。

○植田委員長 ありがとうございました。
 では、則武委員。

○則武委員 簡単に。笹之内委員の素材の税についてですけれども、ここで示している例では、税の負担者は素材の購入者という設定になっておりますので、購入者が日本向けに利用するのではなくて海外に出すための部分ですので、その部分は還付ということで表現しております。実際に還付の必要があるかどうかは、ちょっと事情によって異なると思います。
 それから、冨田委員の目標についてですけれども、これは具体的には議論しておりませんので、個人的な意見については今後の委員会の中で話させていただきたいと思います。
 それと、もう1件ありました電力の原単位についてですけれども、使いますのはあくまでも目標原単位で、期初も期末も目標の原単位を使って計算するという考えですので、電力事業者の貢献度が使用者の評価に影響するかというと、逆に、今までの省エネ法が影響を受けているのに対して、今回はもう完全に購入者は購入者の努力だけが反映されるということになっております。それから、平均値についてではなくて、あくまで購入している大口電気事業者に対する目標値という考えで記載しております。
 それから、新見委員からのLCAに関しては、議論しておりません。クレジットの中で考えられるのではないかというのは、若干議論はありますけれども、詳細は詰めておりません。
 それから、諸富委員からありました、電力会社を含めてのキャップ&トレードかということに対しては、そのとおりでございます。
 それから、電力事業者に対する原単位と間接の使用者も含めて、総量に対しての制度と考えております。
 それから、カーボンリーケージに関して、素材については、環境税であってもということでありますが、何らかの国境措置をとることによってリーケージは回避できると考えております。
 以上です。

○植田委員長 ありがとうございました。
 では、経団連、岩間さんのほうからお願いします。

○日本経済団体連合会(岩間) LCAにつきましては、EU-ETSがどのようにやっているか、正直存じ上げませんので、また専門家の方のヒアリングなどをしていただければと思いますけれども、これまでのところは、LCAについて配慮されているという話は正直言って私は聞いておりません。ただ、制度設計に当たって、排出量取引制度は当然ですが、ほかの制度に当たっても、LCAを無視して責任ある温暖化対策を検討するというのはあり得ないと感じております。
 それから、増井先生からグリーン・イノベーションと限界削減費用の話がありまして、私どもが3ページのほうに出しておりますこういったもので、既に普及が始まっているようなもの、今後普及が進むようなものと、それからまだどうなるかわからないようなものが入っていると思います。ですから、そういうものも含めて、しっかりモデルを詳しい先生方でご議論していただければと思います。示すときに、前提をはっきりさせていただければいいわけでございまして、これがいいとか悪いとか、特にイノベーションについてはそこを今から決めるようなことはできないわけでございます。国内排出量取引制度との制度設計で言いますと、ビジョンとしてイノベーションをこれだけ伸ばしたいと、意思として、希望として伸ばしたいというのは幾らでも言っていただいていいのですけれども、排出量取引制度というのは、目標を超えたら、それは排出権を買わなければいけない、目標を達成したら、浮いた分は売れるという金銭・資産に関するものですので、単なる願望・ビジョンで目標を設定するというのは納得できない方がほとんどではないかなと思います。
 以上でございます。

○植田委員長 ありがとうございました。
 時間の制約もございまして、質問される側もお答えの側ももう少しということはおありかと思いますが、ちょうど時間になってしまいましたので、ここで終了とさせていただきたいと思います。ご回答で補足されたいということがおありかと思いますが、その際は今週中ぐらいにできたら文書で事務局に届けていただけますでしょうか。委員、事務局の側から若干問い合わせが行く可能性もありますので、その点もご留意願えたらありがたいと思います。
 ではこれで終了とさせていただきたいと思いますが、最後に事務局から連絡事項等ございましたら、お願いいたします。

○戸田市場メカニズム室長 ありがとうございました。
 次回日程でございますが、6月1日9時から12時、砂防会館におきまして引き続き関係団体からのヒアリングとさせていただきたいので、よろしくお願いします。

○植田委員長 それでは、以上で本日の議事を終了したいと思います。
 どうもありがとうございました。

午後0時04分 閉会