国内排出量取引制度小委員会(第3回)議事録

日時

平成22年5月21日(金)13:00~16:33

場所

東京商工会議所 国際会議場

議事次第

1 開会
2 議題
(1)
関係業界・団体からのヒアリングについて
(2)
その他
3 閉会

配付資料

資料1 本日の進め方
資料2 委員からの事前質問
資料3 「国内排出量取引制度小委員会 説明資料」(日本鉄鋼連盟提出資料)
資料4 「国内排出量取引制度導入に関する論点」(日本自動車工業会提出資料)
資料5 「国内排出量取引制度小委員会 電機・電子業界プレゼンテーション資料」(電機電子温暖化対策連絡会提出資料)
資料6 「国内排出量取引制度の検討にあたって」(経済同友会提出資料)
資料7 「国内排出量取引制度に対する連合の考え方について」(日本労働組合総連合会提出資料)
資料8 「今後の排出量取引制度に関する議論について」(WWFジャパン提出資料)

参考資料

参考資料 「米国の動向」(ケリー・リーバーマン法案/EPAによる温室効果ガス排出規制)
「EUの動向」(EU-ETS)

午後1時00分 開会

○戸田市場メカニズム室長 それでは、定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会国内排出量取引制度小委員会の第3回会合を開始いたします。
 本日は、前回に引き続きまして、関係業界、関係団体からのヒアリングとなっております。6団体にお越しいただいております。紹介は追ってさせていただきます。
 本日は、委員総数14名中、過半数の委員にご出席いただいておりますので、定足数に達しております。
 また、本日の審議は公開とさせていただきます。
 以降の議事進行でございますが、植田委員長のご都合がつきませんでしたので、大塚委員長代理にお願いします。

○大塚委員長代理 では議事を進めさせていただきたいと思います。今日は私がさせていただきますが、どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

○戸田市場メカニズム室長 それでは、配付資料でございますけれども、最初に議事次第がございまして、配付資料のリストがございます。
 資料1が「本日の進め方」、資料2が「委員からの事前質問」、資料3から資料8が各団体の発表資料ということになっております。
 また、委員限りということでございますけれども、まだ英語のままで申し訳ないんですけれども、米国、EUの最新動向に関する資料、原典を配付させていただいております。もし資料の不足等がございましたら、事務局までお申しつけいただければと思います。

○大塚委員長代理 それでは、議事に入りたいと思います。
 まず、本日の進め方でございますが、資料1に沿って、事務局から説明をお願いいたします。

○戸田市場メカニズム室長 それでは、資料1に沿いまして、本日の進め方について、ご説明いたします。
 本日は、関係業界、団体からのヒアリングということで、6団体にお越しいただいておりますので、ご紹介します。
 まず、日本鉄鋼連盟の山田地球環境委員会委員長でございます。
 次に、日本自動車工業会の名尾副会長でございます。
 次に、電機電子温暖化対策連絡会の実平議長でございます。
 次に、経済同友会の浦野低炭素社会づくり委員会委員長でございますけれども、遅れて来られると聞いております。
 次に、日本労働組合総連合会の逢見副事務局長です。
 最後に、WWFジャパンの山岸気候変動プログラムリーダーです。
 各団体におかれては、それぞれ15分ずつプレゼンテーションをしていただきまして、残りの時間でまとめて90分の質疑をしたいと考えておりますので、よろしくお願いします。
 また、発表者席を発表者の皆様の左側に設けてございますけれども、パソコンをお使いになる場合には、発表者席のほうまでご移動いただければと思います。
 また、事前に委員からいただいたご質問につきましては、可能な限りプレゼンテーションの中で触れていただければ幸いでございますけれども、もしお時間がございませんでしたら、質疑応答の中でまた立ち返っていただければというふうに思っております。

○大塚委員長代理 ありがとうございます。15分の2分前ぐらいの13分ぐらいのところで、メモを入れさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 ではまず、日本鉄鋼連盟の山田様、どうぞよろしくお願いいたします。

○山田氏 では、鉄鋼業のまず温暖化に対する取組の現状をご説明させていただきまして、排出量取引に対する意見を述べさせていただきたいと思います。
 1枚めくっていただきたいと思います。3ページ目ですが、日本鉄鋼業の目指す方向ということで書いております。まず、現在から中期につきましては、我々3つのエコというふうに言っておりますけれども、製造プロセスで世界最高水準のエネルギー効率の現状でありますけれども、それをさらに向上させていくということ。第2点は、低炭素社会の構築に不可欠な高機能鋼材の供給を通じまして、自動車、造船等で、社会で使用される段階の削減に貢献していくというエコプロダクト。あと我々の技術を、途上国を中心に移転・普及し、地球規模での削減に貢献していく。エコソリューションというふうに言っております。
 このうち、エコプロセスにつきましては、我々目標として、総合資源エネルギー調査会から答申されました長期エネルギー需給見通しにあります、2020年で粗鋼生産約1.2億トンを前提といたしまして、最先端技術を最大限導入した場合の削減量、これが約500万トンというふうに試算されております。これを目指すことにしております。なお、この数字につきましては環境大臣の試案のロードマップの中では470万トンというふうになっております。
 さらに、中長期的には既存の技術による削減には、当然限界がございますので、革新的な製鉄プロセスの開発ということを進めているところでございます。
 以下、具体的な内容についてご説明いたします。
 まず、その下、エコプロセスでございます。日本では主要な省エネ技術、設備を実用化し、ほぼすべての装備を終えております。この4ページの左下です。横軸に主要な省エネ設備があります。連続鋳造設備以下、右のようにあります。グラフは各国の普及率を表しております。日本が一番左側で、主要な省エネ設備については、ほぼ日本は100%導入している。韓国は日本に近いですが、その他の国は欧米も含めて普及率は必ずしも十分ではないという実態にあります。そういった実態にありますので、右の上のグラフですけれども、鉄を1トンつくるときのエネルギー原単位、日本を100にした場合に、ドイツ、フランス、ここは120程度、中国、インドで130程度という実態にございます。また、この裏返しですけれども、IEAが算出した削減ポテンシャル、鉄を1トンつくるときの今後の削減ポテンシャル、これは右の縦軸になりますけれども、折れ線グラフで示しておりますが、右から2番目、赤で囲った日本は0.07ということで、最も少ないという実態にございます。
 次のページをお願いいたします。
 次に、エコプロダクトということについてご説明いたします。我々製造業の皆さんと連携して、低炭素社会の構築に貢献する素材、高機能鋼材を出してまいりました。その貢献度合いを算出しております。ここにはちょっと記しませんでしたが、これは経済産業省のもとで、2001年に慶応大学の吉岡先生にやっていただきまして、自工会と各ユーザーの皆さんと日本エネルギー経済研究所のご協力を得て、試算方式を確定しております。その算式に基づいた数字をここでは出しております。5品種、自動車用鋼板、方向性電磁鋼板等5つの品種、生産量にしてみれば800万トン程度。これによるCO2削減効果は幾らあるのかというのを見ますと、2008年段階で1,500万トンに達するということがわかっています。こういった高機鋼をつくるときには、当然製造プロセスではCO2が増えます。一方、使用段階では従来の車に比べて燃費がよくなって下がる。そういう増と減のネットで1,500万トンの減になっているということであります。
 その下、エコプロダクトですが、具体的な製品について紹介しております。今後、増加が期待されるハイブリッドカー、電気自動車用の高張力鋼板、あるいは電磁鋼板、あるいは石炭火力のUSCボイラー用の鋼管、あるいは原子力発電用の鋼管、あるいは鍛鋼部材でございます。ここの6ページのほうは、先ほどの5ページのほうは鉄の素材が軽量化する、あるいは高グレード化することによる削減、貢献度を言いましたけれども、この下のほうは各それぞれの製品が使用される段階で削減する効果。例えば、ハイブリッドカーにつきましては、これはトヨタさんのホームページから出しておりますけれども、ハイブリッドカーが出ることによって、ガソリン車に比べて900万トンの削減になっているといったものであります。鉄の貢献がこの中の幾らになるかというのは、この中でわかりませんけれども、我々のこういった高機能鋼がないと、こういった製品がなかなかできないということだというふうに理解しております。
 よろしければ、次のページをお願いいたします。
 次に、エコソリューションであります。我々のこれまで実用化してきた技術、これは左の下に6つの技術を挙げておりますが、これらが途上国等に移転されることによって、削減した効果がこれまでに3,300万トンございます。あと、日本の技術を世界の鉄鋼業に移転した場合の削減代は、これはIEAが算出しておりまして、3.4億トンというふうに言われております。
 以上をまとめまして、8ページ目ですけれども、我々は自分たちのプロセス、プロダクトによる貢献、ソリューションによる貢献ということで、この排出量取引もそうですけれども、得てしてプロセスだけの規制になりがちですが、我々はこういった幅広い貢献をしてきているということが一つのポイントではなかろうかと思います。
 9ページ目をご覧いただきたいと思います。
 今後の取組ですけれども、先ほどご紹介いたしました総合資源エネルギー調査会の答申の資料を9ページに掲げております。考え方として、設備の更新時に、実用段階にある最先端の技術を最大限導入するということでございます。約1兆円の投資で500万トンの削減が可能であるということが示されております。これはあくまでも削減ポテンシャルであります。左のほうに、まず主要な技術、自家発等の効率化、あるいは廃プラスチックの利用、SCOPE21等新型コークスの導入ということが書いてあります。ただ、これらを実行するためには、当然経済的あるいは技術的、制度的な課題がございます。例えば廃プラ等でありますと、現在我々も有効利用しておりまして、30万トン程度使っておりますが、ここでは100万トンに引き上げるというふうになっております。社会で集荷システム等がきっちり整備されるというようなことが必要になってくるというふうに思っております。
 それと、さらに今後の課題を10ページで示しております。鉄鋼業における既存技術による削減余地は、先ほど申しましたように500万トン程度あるというふうに算出されておりますけれども、我々は今後大幅な削減をするためには、鉄鉱石の還元に石炭を使用しておりますので、CO2の排出が不可欠になっております。これを何とかするということが最大の課題であります。今、国プロとして取り組んでおりますのが水素による鉄鉱石の還元ということと、高炉ガスからのCO2の分離回収ということでございます。これらの技術の確立によりまして、総合的に3割の削減を目指すということを考えております。
 よろしければ、1枚めくっていただきたいと思います。
 それと、途上国での削減を支援するために、鉄鋼業では国際的な連携を推進しております。大きく3つの軸がございます。第1番目は、日本と中国の間、環境省エネ技術交流会というものを2005年7月に立ち上げて、毎年、専門家による交流を続けております。2点目が、アジア太平洋パートナーシップ、これにつきましては2006年4月より開始しております。3点目が、ワールドスチール、世界鉄鋼協会でございます。これにつきましては2007年10月より進めております。具体的な内容は、APPのところに書いておりますけれども、我々省エネ技術の共有化ということで、技術ハンドブックをつくり、各国と共有しております。あと、エネルギー効率等を比較する場合に、効率使用の共有化、共通化ということができていませんと、なかなか比較ができません。こういったことを進めております。あと具体的な専門家による省エネ診断等を行っているということでございます。
 よろしければ、排出量取引についての論点についてご説明したいと思います。
 13ページをお願いいたします。
 まず、排出量取引の議論の大前提である実効性ある地球温暖化対策のための要件ということをまとめてみました。地球規模での削減に資するということ。日本だけが削減しても、世界で増となるということになってはいけない。炭素リーケージを起こさないということ。経済成長や雇用の安定と両立するということ。技術的な裏づけのない排出規制や国際的に不公平な税等は、そういったことを起こしてしまうということ。あと、すぐれた製品・技術の普及や革新的技術開発を促進する。地球規模での大幅な削減に向けた日本の役割ということは、こういうことではないかなというふうに思っております。
 14ページは、排出量取引制度についての問題点を書いております。後段と重なりますので、ここは省略させていただきます。
 今までご説明しました日本鉄鋼業の取組との関係で、排出量取引制度にどういう問題があるのか。あるいはどういう論点があるのかというのをまとめております。まず、第1点ですが、日本鉄鋼業における対策としての有効性。日本鉄鋼業は世界最高の効率にあります。さらなる向上を最先端技術の最大導入、あるいは革新的な技術開発の推進により実現しようと思っております。排出量取引の導入は、削減余地が小さく、費用の高い日本で削減するよりも、海外からの排出権購入を促進するということになります。省エネ投資あるいは技術開発の推進の障害になるということで、国内での削減にならないというふうに我々は考えます。日本の鉄鋼業のエネルギー効率を踏まえた対策として有効なのかどうかということについて、よく議論いただきたいと思います。
 2点目は、炭素リーケージへの対応でございます。鉄鋼業は、炭素集約的な産業であります。オフセットのための排出権負担が極めて大きく、技術的な裏づけのない排出規制は事実上の生産規制となります。ここにつきましては次のページ、グラフがありますのでちょっと見ていただきたいと思います。17ページです。このグラフは世界の2,000万トン以上の大きな鉄鋼会社をすべてリストアップしております。2006年と2009年を挙げております。2009年のほうで見ていただきまして、緑のところ、棒グラフは生産量を表しています。緑のところが排出に制約がないところ。1位のアルセロール、ヨーロッパですね。8位、新日鉄、JFE/日本、10位はTataと書いてありますが、一部ヨーロッパに工場がある会社です。赤のところは排出に制約がないところであります。鉄鋼業のほうとでは、日本とヨーロッパ以外、排出に制約がないという実態であります。さらにヨーロッパにつきましては、上の四角のところを見ていただきたいと思います。ヨーロッパでは、実質的な、例えば1位のアルセロール・ミッタルは3分の1制約がありますけれども、生産拠点が世界にありますので、生産調整が可能だということ。あと足元のリーマンショック等で大幅な余剰排出権を獲得している。排出枠が8,900万トンに対しまして、8年の実績が6,800万トン、排出実績がですね。9年については4,500万トンというふうになっております。この一部については、複製ガスを電力に提供するために控除するものも、数字としては入っているというふうに思います。ちょっと我々分析できませんでしたので、それを含めております。
 ここで申し上げたいのは、この四角の下の※のところですけれども、ある量を超えて生産しようとしたときに、省エネができないというときには、オフセットで排出権を買ってくる必要があります。仮に排出権のコストをヨーロッパのこれまでの価格の幅、15ユーロから30ユーロということで考えますと、3,500円から7,000円の負担になります。一方、これまでの我々の粗鋼1トン当たりの利益というのは6,000円強でございます。したがって、事実上、生産しようとすれば、もう利益がなくなっちゃうということでございます。
 申し訳ございません。前のページに戻っていただきまして、したがって、そういった規模の負担になるということでございますので、競争力や雇用に多大な影響を与え、炭素リーケージになってしまうということ。また、先ほど来ご説明しましたけれども、高機能鋼材の開発は、我々はユーザーの皆さんと一緒にやっております。こういった供給に制約がかかるということになりますと、製造業の皆さんの生産活動にも影響するということでございます。どのような考え方で鉄鋼業のキャップを設定するのかということであります。
 次、18ページですが、次に事業者間の競争に与える影響であります。業界の目標は技術的な削減ポテンシャルに基づき設定するといたしましても、個別企業の公平なキャップをどのように設定するのかということでございます。その下に書いておりますが、総量の場合には事業者間の競争を歪める。これは効率がよくて、生産が増える企業には課徴金になる、悪ければ補助金になるということであります。あと原単位につきましても、確かに効率改善を促進する手法としては非常に意味を持ちますけれども、原単位だから公平なキャップができるのかという問題でもあります。下のところに書いておりますが、原単位であっても、生産品種、あるいはそれは生産規模にもかなり立脚します。設備更新時期等により大きく異なります。特に高機能材の場合には、小ロットで多数のプロセスを経るということで原単位が悪くなるということでございます。先ほども言いましたが、炭素集約的な産業ですから、ある会社には5,000円の補助金が出、ある会社には5,000円の課徴金になるという可能性があるということでございます。
 次に19ページですけれども、LCAの話であります。これについてはプリウスの例をご紹介させていただきたいと思います。これはトヨタさんのホームページから出したものであります。従来のプリウスクラスのガソリン車で、製造段階で排出するCO2、これグラフですのでちょっと見にくいですが、大体15%程度。車両製造で5%、走行で8割ということになっています。したがって、いい素材ができることによって、走行使用の8割を大きく減らすことができるということでございます。たまたまプリウスの例が上にありますけれども、素材段階ではCO2は増える。ただ、プリウスというものになることによって、全体としては大幅に削減されるということではないかなというふうに理解しております。こういったことを排出量取引ではどのように評価されるのでしょうかという問題であります。
 最後に、排出量取引だけでなくて、環境税あるいは固定買取、そういったことも含めた影響であります。まだ、特に固定買取については制度の内容が非常に幅が広いものですから、確定的なことは言えませんけれども、電気代が上がる。固定買取で負担が出る。さらに排出量取引で云々ということになりますと、これは日本における鉄鋼業の事業存立が危ぶまれるというふうに考えております。個々の施策をばらばらに論じるのではなくて、それぞれの施策による効果と影響を全体として的確に評価していただきたいというふうに考えております。
 この点につきまして、最初に申し上げましたが、エネルギー効率が高い日本において排出である規制をどんとする。あるいは環境税を入れる。あるいは固定買取で電気代が上がるということになりましても、それによって削減が進むということはないわけですね。ちゃんとした技術開発をやっていくということしかないというふうに思っております。
 説明は以上です。

○大塚委員長代理 どうもありがとうございました。
 では、質問や意見は、後でまとめてさせていただくとして、続きまして日本自動車工業会の名尾様、お願いいたします。

○名尾氏 資料をめくっていただきますと、最初に基本的な考え方が6点ほど書いてございます。世界全体での温室効果ガス削減に寄与すること。経済と環境の両立を図ること等々書いてございますが、ただいまの鉄鋼連盟さんのご説明と重複いたしますので、詳細な説明は省略をいたします。
 3ページ目をご覧いただきたいと思います。自動車工業会の取組の状況をご報告いたします。日本自動車工業会と車体工業会は、共同で自動車生産時のCO2削減の取組を推進中でございます。実質的な取組によりまして、4ページの棒グラフにございますように、1990年度から2007年度で、真水で25%の削減を達成しております。生産台数の規模が右のほうに同じ棒グラフとして掲げてございますが、例えば、1997年、1,078万台。それからこれに近い数字で言うと2005年、この排出量が172万トンから676万トン。それから2000年と2008年、生産規模が大体1,000万台ということでございますが、これだけ排出量が下がっているわけでございます。
 3ページ目の3.にございますように、年間こうした投資を大体トン当たり6万円から26万円をかけてやっておりまして、これはEUの排出権価格を大幅に上回る金額になっております。
 こうした削減は、私どもの会員企業がCO2削減の趣旨に賛同いたしまして、業界目標の達成に努力をしている成果でございます。今後とも経団連の実行計画に参画して、世界最高水準の技術の導入を促進してまいります。
 排出量取引制度が導入されますと、制限のない国への生産シフト、それから制限のない国からの素材、部品等の購入が進み、我が国は世界の温室効果ガスの真水での削減にはつながらない。今、新興国、例えば中国を初めとしてどんどん新しい自動車メーカーが台頭して国際的な競争にしのぎを削っているわけでございますけれども、先ほど鉄鋼連盟さんのご説明にあったのと全く同じような状況が私ども自動車業界にも起きているわけでございます。それから、国内に設備投資をするということになれば、10年タームで投資計画を立てて、最終的な経営判断を下すわけでございますけれども、そういった将来の予見可能性、例えばどれぐらいのCO2の排出量が割り当てられるのかということがはっきりしないということになれば、将来の予見可能性が損なわれます。安心して国内で投資を行うことが非常に難しくなります。
 5ページ目をご覧ください。排出量取引制度についてさまざまな問題点が指摘されております。この6ページ目にちょっとグランドファザリングの問題点ということでご説明させていただきたいと思っているんですが、この排出量取引制度を推進されている方々は、恐らく暗黙のうちに企業活動、経済活動というのが非常に静態的なものであるという、そういった暗黙の了解の上に立って議論をされているのではないのかなというふうに私は感じておりまして、それでこういう表を用意させていただいております。過去20年ぐらいのタームで、乗用車の生産台数を個社別に拾いました。これは、実は公表されている数字でございますから名前を出しても全然構わないんですけれども、会社によっては生産の台数が減ったりしているところがあるので、一応ここはABCDEというふうにさせていただいていますが、これは公表されている資料を当たっていただければ、どの会社がどの数字かというのはわかります。決してこれはバーチャルなものではございません。それから2009年は、例のリーマンショックでものすごく生産が落ちた年ですので、一応2008年までをとってあります。
 これをご覧いただきますと、順調に少しずつ生産を増やしている会社がA社、途中でもちろん落ち込んだりなんかしている年もありますけれども、A社、B社。それからC社はむしろ減っておりまして、90年に比べると2008年は54%の水準、その前の年は49%の水準まで落ち込んでいる。それから、B社は途中で増えましたけれども、その後減ってきている。それからE社に至っては、90年の2倍のレベルまで生産を増やしているということでございまして、極めて企業間の競争、経済活動がダイナミックに行われているということをまず押さえていただきたいと思います。
 では、こういった前提で、シミュレーションとしてグランドファザリング方式による割り当てを仮にやってみる。後ほど申し上げますが、原単位が私どもは非常に難しいとは思っておりますが、一応原単位は一定だとして、この生産台数がCO2の排出量の代理変数だとお考えください。2008年の割り当てを、一番下にございますけれども、2000年の時点で仮にやったとします。大体過去のシェアでやるのが公平だという常識がありますから、それに基づいて過去5年ないし過去10年のシェアで、2008年の割り当てをしました。その前提として、ここに書いてありますように、では2008年の自動車の生産台数を神様のように正確に予測できたという前提に立つ。これも大変な前提だと私は思いますけれども、そういった前提で2000年に割り当てをいたしましたところ、この(2)のケースで申し上げると、A社は338万台分の割り当てで、実際は363万台ですから、足りない分はどこかから買ってこなくてはいけない。それから、C社はむしろ生産が減っております。C社、D社は生産が減っておりますから、C社に至っては173万台分の割り当てをもらって、2008年は109万台しか実は生産できなかった。D社も割り当て量よりも少ない。それから、E社は生産が105万台に増えていますけれども、70万台分の割り当てしかもらえなかったということになります。これは各社、みんな日本をリードする代表的な会社ですから、それぞれ生産が増えたり減ったりしたのは、例えば海外生産との関係だとかいろいろな理由がありますので、生産を減らしたところが、競争力がないということを申し上げるつもりはございませんが、仮に競争力がなくなって生産が減ってきたようなところに、過去これだけの実績があるからこれだけ割り当てをしますということになると、そこはその分排出量を売れることになると思うんですね。
 つまり、伸びている人たちはその分排出量をほかのところから買ってこなくてはいけないという足かせをはめられて、生産を落としてしまったようなところは、むしろ排出量を売って、お金が入ってくるということになりかねない。市場経済のダイナミズムは競争に負けた企業あるいは産業、こういったところが市場から退出をしていくことによって、産業、あるいは国全体の競争力が高まっていくわけでございますけれども、もしこのグランドファザリングのやり方によっては、計画経済的なこと、すなわちかつてソ連が計画経済をやって競争力がなくなってしまったことはもう皆さんご承知でありますけれども、そういったことにもつながりかねない。極めてこれは経済の本質に関わるような問題になってくるのではないかということを懸念しております。
 それから、オークション方式についてでございますけれども、これはやはりその費用負担が発生いたしますから、本来やらなくてはいけない省エネ投資あるいは次世代自動車開発への投資の低下につながる。それから生産制限のない国への生産シフト、あるいは制限のない国からの素材の輸入が増加するというリーケージの問題が生じてまいります。それから原単位、ベンチマークの話にもなりますと、実は自動車メーカーは同じ自動車と申しましても、軽自動車から大型のトラックだとかバスだとか、車種構成が異なりますので、そういった問題をどうやってクリアしていくのだろうかということがあります。
 7ページ目をご覧いただきたいと思います。
 国際的な公平性のことについて申し上げます。私どもは、国内の生産台数の約50%を輸出しております。排出量取引を今導入しているのはEUのみでございます。我が国でこういった制度を導入すると国際的な競争力を著しく損なう。それからリーケージの問題が生ずる。ちなみにEUで、私どもの自動車メーカーの設備で制度の対象になっておりますのは、一定規模以上のボイラーでございまして、全部で10ないし11でございます。ちょっとその数字、若干まだ集計し切れていないところがありますが、いずれにしても約10のボイラー設備というものだけが対象になっております。それから、上流の素材業界の多くは輸出産業として無償排出権が与えられておりまして、それを買っている自動車メーカーの競争力に悪影響が及ぼされないような手当てもちゃんとなされているということを申し上げておきたいと思います。
 それから、8ページ目、これは先ほどプリウスの例で鉄鋼連盟さんからお話をいただいたことの延長線上にあるわけですが、ライフサイクルアセスメントをいたしますと、この一番下の棒グラフにございますように、ハイブリッド車はご承知のようにガソリンエンジンとバッテリー、モーター、コントロールユニット、両方備えなくてはいけませんので、どうしてもこの製造段階ではCO2の排出が増加いたします。しかし、走らせるとこれは運輸部門のCO2の削減に大きく寄与する。これはLCAですから、排気のところまで全部やりますと、ここにお示ししたような状況になっておりまして、こういった製品についてどういう手当てをお考えなのか。むしろ私どもとしては教えていただきたいと思います。
 9ページ目にまとめがございます。1.先ほど申し上げたことの繰り返しになりますが、今後とも世界最高水準の技術の導入を進めて、CO2の削減を進めてまいります。これは、国際競争力にさらされているときに、CO2の削減、省エネルギーをやるというのはもう当たり前のことでございまして、今、各社、リーマンショックから立ち直る過程にございますけれども、例えばいろいろなコスト削減努力、例えば役職員の報酬だとか、ボーナスだとかそういうところにも手を入れたり、あるいは部品メーカー、協力会社にも協力をお願いして、コスト削減をしていただく。いろいろなことをやっているわけでございますが、そういった中で省エネルギーというのは自分たちで一番手の届く範囲内でできることでございまして、これをやるのはもう当然のことでございます。ですから、この排出量取引制度を導入するから、そのCO2の削減が進むとかそういうことではなくて、私どもとしてはそういうことがあろうとなかろうと、従来からこういった削減に努力をしているということをぜひご理解いただきたいと思います。
 それから、この排出量取引制度についてはいろいろな課題がございまして、今まで申し上げた以外にも、過去から削減に取り組んできた企業が不利になるだとか、マネーゲーム化だとか、あるいは電力のCO2排出係数の話だとかいろいろな指摘がございます。ですから、ぜひこういった問題点を本当にクリアできるのか。政府のほうで、これを推進するとおっしゃるのであれば、そういった細目を詰めた上で、こういった制度であれば、こういった弊害はクリアできるんだということをきちんとしたものをお示しいただいた上で、再度、私どもと議論させていただきたい。この議論をすると、いや、いい制度をみんなでつくり上げていけばいいんだとか、最初導入して何か問題があれば改善すればいいんだというようなことをおっしゃる方が時々おられるんですが、制度が99%、98%煮詰まったものができても、1%、2%の隙間があると、必ずそこをねらっていろいろなことをする人達が出てくる。これはもう自由経済の中では当たり前のことだと思いますけれども、そういったことで私どものものづくりが振り回される。つまり、部品メーカーには何銭だとか何十銭のオーダーでコストの削減をお願いしているときに、例えばこういったマネーゲームによって振り回されてしまって、私ども経済発展の牽引役として雇用も含めて社会的な責任を今後も果たしていきたいと思っておりますが、そういったことの土台が揺るぐようなことにならないように、ぜひお願いしたいと思います。
 以上でございます。

○大塚委員長代理 どうもありがとうございました。
 では、続きまして電機・電子温暖化対策連絡会の実平様、お願いいたします。

○実平氏 それでは、電機・電子の説明をさせていただきます。
 今日はこのような説明の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
 今日のご説明は、まず電機・電子業界の特性のようなお話、それから私どもの温暖化対策に対する取組のお話、そして最後に排出量取引制度導入に対する考え方ということでお話をさせていただきます。
 まず、特性ということで、2ページ飛ばしまして、3ページ目でございます。ここには、私どもの製品分野が書いてございまして、まず左上が、重電であります。これは原子炉を表しています。それから、太陽光発電、それから風力が書いています。こういった重電、新エネ分野も製品品目の一つでございます。それから、その右側にございますのが電子部品、半導体、デバイス等々でございます。左下に行っていただきまして、家電製品、冷蔵庫等々、テレビ等々ということでございまして、右側は業務用機器の一環ということでございまして、変圧器の例を示しております。その右側がITソリューションということで、パソコンとかサーバー等、かなり広い分野にわたる製品群を提供させていただいているというふうなところに特徴がございます。
 4ページ目をご覧いただきまして、これは国内総生産がございますけれども、そのうち緑の部分が私ども電機・電子の生産のパーセンテージ、割合でございます。1990年が9%であったのが、2008年になると31%ぐらいまで拡大をしている。こういうふうな絵姿でございます。
 5ページ目でございます。グローバルな事業展開ということで書いてございまして、左側には、ちょっと濃い赤のほうが国内生産で、ピンク色が海外生産ということで、右側は全体のボリュームを示しています。AV機器が全体的に8兆円ぐらいの生産。それからディスプレイデバイス等々は2兆円、こんな感じの見方でありまして、ここで申し上げたいのは、AV機器等々上側にあるものは組立系のものでありまして、海外生産比率がお客さんに近いところで生産しているというのが多いということでありますが、逆に下側の半導体、ディスプレイデバイス等々は国内生産が多いということ。これはかなりキーデバイスということで、いろいろなノウハウを積み込んだものであるということでありますので、国内生産を維持せざるを得ないようなところ。ただ、この下側のほうが逆にCO2という観点では多く排出をするという事業であるというふうな特性がございます。
 それから、6ページをご覧ください。これは競争環境の厳しさ、ほかの業界でも同じだとは思いますけれども、書いてございまして、左側のほう、DRAMの日本の世界におけるシェアですね。どんどん残念ながらこの10年間落ちているという絵姿であります。液晶パネル、DVDプレーヤーということであります。右側、現時点での薄型テレビのシェアのような話。その下側はリチウムイオン電池のシェアということ。かなり海外企業が伸びているということになってございます。
 それから、7ページをご覧ください。国際競争の激化ということで、これは当たり前のことでありますけれども、為替の話ですとか、あるいは法人税率の高さの話、それから賃金の話、あるいは電気料金の話という、これはよくご存じのお話でありますけれども、これに加えて申し上げたいのは、いろいろな意味で環境規制が強化されますと、それに伴うコストがどんどん上がっていくということであります。それで、ここでご指摘をしたいのは、エネルギー系のCO2等々については省エネの投資をすれば、その分電気代の削減ということではね返ってくるということでは、回収ができるということでありますけれども、回収ができないものがあります。半導体、液晶をデバイスで使っているそのPFCのガスがあるんですね。これは不可欠なものでありますけれども、これについては除外するという操作しかできないということもあって、除外については投資回収ができないということでありますね。これが韓国メーカー等々はこういう規制がないということがありますので、韓国の強いメーカーはさらに強くなるという構造にあるというふうなことをご指摘させていただきたいなと思います。
 それから、8ページからが温暖化対策に対する取組ということでございまして、9ページに私どもの対策の方針ということ、これは当たり前のことでありますけれども、製造時のCO2削減ということであり、いろいろな意味で努力をしてまいりました。
 それから、エネルギーの需要、供給の両面で、低炭素社会に実現するポテンシャルがあるということであります。真ん中辺りの絵を見ていただきますと、省エネデバイスを生産していますし、このうちエネルギーの需要面に関してはいろいろな意味での省エネ機器等々の提供をさせていただく。それからエネルギーの供給面で、これは低炭素電源に寄与するいろいろな原子力等々の供給をさせていただいている。こういう絵姿でございます。
 次の10ページでありますが、上側の棒グラフが全体的に私どものCO2の排出量というのは、これは電機・電子の350社の集計のデータでございますが、国内が1,600万トン、海外で960万トンぐらい排出をしているという絵姿であります。その下側の円グラフにつきましては、全体の産業部門に占めるCO2シェアということで、私どもは5.2%ぐらいということでありまして、その右側、そのうち大体のものは電機であると。間接排出であると、直接排出についても17%程度であると、こういうことでございます。
 11ページでございます。これは棒グラフにつきましては、先ほど来申し上げています組立系のものと、電機・電子の中でも組立系のものと、あるいは電子デバイスのようなもの等を分けて書いてございまして、電子デバイス系がちょっと伸びているということであります。棒グラフにつきまして、これは原単位の推移ということで書かせていただいているものでございます。
 12ページは、製造時のCO2排出の取組ということの例を書いてございます。一つは、生産プロセスの革新ということで、いろいろなウエハー等々の大型化等々でエネルギー集約を図るような話ですとか、それからエネルギー消費効率の改善という意味では、さまざまな省エネの施策に加えて省エネ投資を年々やってきているというものでございます。
 それから、その次の13ページになりますが、これは製品・サービスによるCO2削減への取組ということで書いてありまして、左側がエネルギー供給面での貢献ができるのではないかということであります。グラフに描いてありますのは、従来の火力発電に比較して、コンバインドサイクル等々を導入した場合のCO2の排出の低減化等々、それから今後供給が期待される太陽光発電等々の導入量の例が描いてございます。
 右側はエネルギー需要面ということでのいろいろな取組であります。省エネ機器、省エネ家電等々を含めた従来に比べての消費効率というか、エネルギーの改善の絵姿を描いているものでございます。その他、ITによるバイITによる大きな省エネ貢献も考えられるところでございます。
 14ページにございますのが、上側の棒グラフがものづくりでのCO2の排出量ということでありまして、大体2,000万トン均衡、これ残念ながらといいますか、増加の傾向にございます。ただ、こういったものを特に省エネ家電、あるいは太陽光発電等々を導入していきますと、省エネ貢献といいますか、日本国13億トンぐらいのCO2排出量でありますけれども、ポテンシャルとして2億トンぐらいの削減の可能性があるということであります。主には原子力58%、家電製品20%、ソーラー9.6%等々ということであります。
 ここで事前に明日香委員のほうからいただいている質問がございますので、ちょっとだけ触れておきたいと思います。省エネ機器等々社会に供給したもので削減に貢献している分については、相殺すべきとかという議論があるけれども、それはどうなのということでありますが、私どもが申し上げたいのは、上側の生産時のCO2の排出量と全体的な置きかえ等々による低炭素電源化等々による寄与等は同じ土俵で論じるのはなかなか難しいだろうと思っていますが、申し上げたいのは、それらを太陽光発電、二次電池等々書いてございますが、これをつくっていくという計画においては当然ながら製造時の負荷は増えていくということでございます。若干の増え方でありますけれども、貢献度がとても大きいということを考えますと、そこについては何らかの考慮が必要、配慮していただかないと全体がうまくいかないのではないか。こういうふうな話でございます。
 国内排出量取引制度に対する考え方ということで、16ページでございます。私どもは、グローバルに事業を展開しているということもございまして、地球規模での低炭素化に貢献していきたいということでありまして、今まで述べたように省エネあるいはエネルギーをつくる、エネルギーをためるという機器の供給拡大ということもやっていきたいということでありますし、このために継続的な投資あるいは革新的な技術を生み出していくということを進めていきたい。グローバル事業全体でのエネルギー効率改善への努力も続けているということでございます。
 最後のところ、排出量取引制度の課題というふうに書いてございますけれども、こういったことであっては困るということで書いてございます。低炭素社会実現に向けたこれらの機器の製造ということが記載されているんだけれども、事業制約になるような形になると全体がやはりうまくいかないのではないか、こういうふうなお話であります。それから、国際競争力が阻害されるような規制によって、技術開発に必要な投資が遅滞をする。商品開発に対するインセンティブが働かないというふうなことも困りますよねという話。それから、排出枠購入に伴って、実質的な削減が少なくなる。進まなくなるというものづくりに対しての話なんですね。例えば排出量取引等々、比較的安い枠を買ってくるというふうなことであります。それはその場限りということなので、実際のプロセスの改善には役に立たないと、こういうこと。ある意味では捨て金に近いようなものということに使うということが進まないようにしたいと、こういうことであります。それから、温暖化対策のための多重規制あるいは新たな市場の整備など、過度な社会的コストを強いるということになっては困るということでございまして、基本法案にはちゃんといい原則が書かれてございます。産業の国際競争力の確保ですとか、国際的協調ですとか、地球温暖化防止に資する研究開発、成果普及が図られるようにすることですとか、産業の発展及び就業の機会の増大、雇用の安定化ということ、この基本原則を踏まえて慎重な検討が必要なのではないかというふうに考えているところでございます。
 以上です。

○大塚委員長代理 どうもありがとうございました。
 では、続きまして、経済同友会の浦野様、お願いいたします。

○浦野氏 それでは、資料6に基づきましてご説明してまいります。経済同友会でございます。
 2ページを見ていただきます。経済同友会、少しおわかりでない向きもあると思いますので、私どもつい先般、公益社団法人を取りまして、今は公益社団法人経済同友会となっております。歴史的にはもう60年を超える歴史を持っております。特徴は、今までご発表のありました各産業団体とは違いまして、各産業の出身ではありますけれども、経営者として個人の資格で参加をして、経営者個人の考え・知見に基づいて意見を表明していくということでございますから、いわゆる産業代表と、あるいは経済界全体を代表するんだといったようなことではないということだけご承知おきいただければと思います。
 次に3ページにまいりまして、私ども今年度、日本が目指すべき「国のかたち」ということで、横断的にさまざまなテーマのもとに、日本の「国のかたち」ということを模索していこうということでございます。その中で、低炭素社会づくり分野というものがございまして、そこでは、目指す方が文章にしてみればということになりますけれども、ちょっとここは読み上げさせていただきます。
 環境保全と経済成長を同時に実現し、世界に先駆けて持続的発展が可能となる低炭素社会が構築され始めている。そのために必要な国民・企業の新たな価値観の醸成、継続的行動を促すための各種制度設計がなされており、低環境負荷型の技術、製品・サービスの導入が進んでいる。また、この変革の過程で獲得した技術、製品・サービス、社会システムが国際社会に展開され、地球環境保全にも貢献しつつ、わが国の経済成長の柱となっている。これらの取り組みは、2020年、2050年のわが国の温室効果ガス削減目標の達成に資するレベルで行われている。これは言うまでもなく25%なり80%といった削減目標の達成に資するという意味でございます。
 そんな中で私ども今までこの環境問題については、4ページに掲げたような提言をしてまいりました。一番近いところでは、『世界に先駆けた持続的発展を可能にする社会づくりを』ということでレポートを出しております。その中身が5ページに書いてございます。
 一つは、IPCC等の科学的知見に基づき、主要排出国全員参加の枠組みづくりに貢献していきたいと、日本がですね。そして、昨年の時点では我が国の温室効果ガス削減中期目標として、1990年比マイナス7%ということで目標を掲げておりました。持続可能な社会づくりに向けての全員参加ということに最大限の努力をしていきたい。もちろん、途上国に対する必要な技術・資金供与、あるいは東アジアの持続的発展に向けた環境・エネルギー分野の連携等々を掲げております。そんな中で、やはり原子力の問題は避けて通れないということで、核燃料サイクルを含む、原子力発電の着実な推進を訴えております。それ以外にも、環境配慮型の税の導入とか、森林バイオマスエネルギーの利用促進等、提言をしております。
 6ページは、先ほど申し上げました日本の「国のかたち」という中で、私どもは共通課題として、地域主権型からグローバル、少子・高齢化の問題、市場機能の活用、持続可能な財政といったようなものを横串しにしながら、大きく4つの分野に分けて、日本の「国のかたち」というものを模索してまいりたいと思っております。その中で、今日のこの低炭素社会づくりというのは3番目の経済の再生と、成長基盤の強化といったところにくくられて、この1年議論してまいりたいと思っております。
 次に、7ページ、この1年は、従来の委員会活動を基盤にして、低炭素社会の実現に向けた具体的施策について議論をしてまいりたい。そしてもちろんCOP16、COP10、生物多様性の問題等も含めて、意見を発信していきたいというふうに思っているところでございます。中でもこの低炭素社会づくりの実現に向けた諸施策と、環境エネルギー分野における成長戦略といったことに重点を置きたいと思っております。
 以上のようなことが基盤でございますけれども、本日の話題に向けて、2枚シートを用意しております。
 まず8ページでございますが、やはり今日のこの席も究極の目標は、中期目標達成に向けて、達成の道筋なり、受益と負担の明確化をきちんとしていくことだと思っております。残念ながら、現在政府のほうでこの達成の道筋なり受益と負担の明確化がされているわけではございませんけれども、対策基本法のことも含めて、今からこういったことが議論されていくのだろうと思っております。その中で、やはりポリシーミックスのあり方といったことが非常に重要になってくると思っております。
 私ども、ポリシーミックスといったときに、そこの左に掲げたように、自主的取組、助成措置、規制的手法、対策税、いわゆる環境税ですね。そして排出量取引等々あると思います。そして、このすべてが私どもは一定の役割を担っているのだろうというふうに考えております。
 例えば、右側にはこの部門分類を示しております。産業部門でエコ等の非常に少数の排出量の多い産業等々あって、本当に少ない数で7割程度のCO2の排出量を占めるわけですけれども、この分野というのは先ほど来お話がありましたように、長年にわたって自主的な取組を真剣にやってきたところでございます。そういう中で、世界に冠たる数字を原単位においても技術的な革新においても示しているわけでございまして、やはりこの実質的取組というものがスムーズに回るようなポリシーミックスというのが本来は一番望ましいんだろうというふうに思っております。ただ、今のこの世界の状況をいろいろ考えるときに、それだけではない部分があることも承知しておりまして、その中でポリシーミックスの在り方が問われるのだろうというふうに思っております。
 排出量取引につきましては次のシートで述べますので、それ以外のところで少しお話しさせていただきたいというふうに思うんですけれども、例えば家庭部門等にどんな形で達成の道筋を描いていくのかといったようなことは、今日の主要課題ではないかもしれませんが、ポリシーミックスということを考えたときには、非常に大きな課題だろうというふうに思っております。ここでもやはり家庭部門の自主的な取組がきちんと回るような仕組みを、一部は環境税であったり、一部は助成措置であったり、一部はまた規制的な手法もあるのかもしれません。そういったようなことをやはり国民全員を引き込む形で議論していかないと、この問題はなかなか回っていかないのではないかなと。そういう意味では、現状そういった議論がきちんと回っているとは、やはりとても思えないというふうに考えております。この部分について、国民各位をいかに議論に巻き込んでいくかということが、当面一つの大きな問題だと思っております。
 それから、今まで自主的取組で、世界に冠たる成果を残してきた大規模なCO2排出の産業部門以外のところ。この分をどういうふうに巻き込んでいくか。特に運輸部門、業務部門あるいは小規模な産業部門の問題でございますけれども、ここもいわゆる原単位の考え方の中で、ベンチマーク方式をうまく使いながら、ここもやはり助成措置と規制的手法の組み合わせだというふうに考えますけれども、ここの引っ張り上げ方が非常に難しいところなのだろうというふうに思っております。私どもは、大きな問題をこの大規模な分野にあるのではなくて、それ以外の部門がむしろ喫緊の課題として上がっているんだということを認識すべきだというふうに思っております。
 そういう中で、各セクターの削減目標設定ということを、これは幸いといいますか、日本の場合には産業分野別に極めてきちんとした団体がありますので、各セクターの削減目標というものを改めて、ベンチマーク方式の中で設定していく必要があるんだろうというふうに思っております。先ほど来何度も述べておりますが、業務部門その他、家庭部門や中小企業の取組の促進、これも非常に大事なところでございます。
 最後に9ページでございますが、国内排出量取引制度の検討に当たってということで、幾つか懸念事項がございます。排出量取引そのものは、私どもはやはり手段として一定の役割があるし、必要なことだろうというふうに思っておりますが、まずここで政府のほうも、当面国内というふうに言っておりますので、その部分では安心しておりますけれども、海外との排出量取引なんていうのは、当面の間考えるべきではないだろうというふうに思っております。理由につきましては、先ほど来各団体が申し上げてきたところでございます。
 そんな中で、まずはこの取引制度を入れることが目的ではなくて、これはあくまで実質削減の重要な手段の一つであるという考え方。当然でございますけれども、これをまず最初に確認しておきたいと思います。その上で、先ほど来各団体が心配しておりますように、国際競争力への配慮というものが、これはやはり避けられないというふうに思っております。そういう中で、少なくとも当面導入するにしても、無償割り当てからの出発というのが当然だろうというふうに思っておりまして、海外との考え方の違い等々いろいろあるかと思いますけれども、やはり日本に合った実質削減に結びつくやり方をゆるゆるとゆっくりと進めていただければというふうに考えております。
 それから、3つ目は国と自治体の役割分担ということで、この4月から始まりました東京都の制度が必ずしも排出量取引とは言い切れない部分もあるのかもしれません。単純なペナルティ制度だという考え方もとれるかと思いますが、いずれにしても国と自治体の役割分担の中で重複したり不整合のない制度にぜひしていっていただければというふうに思っております。
 それから4番目、これは先ほど来各団体が申しております。そして、明日香先生の質問の中にもございましたけれども、やはり国内外での排出削減に貢献する業種、製品についての考え方ということでいくと、このサプライチェーン全体にわたって、あるいは例えば食品企業がカーボンフットプリントというようなことを考えたときに、食料資源の少ない日本が輸入せざるを得ないといったところから、このカーボンフットプリントの問題が始まるとか、あるいはこのLCAのことでずっといろいろなことを考えていくと、やはり実態と違う数字の中でそれぞれの企業が削減に取り組んでいくということではなくて、やはり企業として責任を負っているサプライチェーン全体の中でどうなんだといったことも、ダブルカウントをいとわず、ぜひ制度設計の中でうたっていかないと、これはさまざまな企業がある意味やる気をなくすということだと思うんですね。例えば物流事業といったものを考えてみますと、この物流の共同化といったことがいろいろな意味でCO2の削減に大きく機能するわけですね。そのときにやはり物流業者がお膳立てをして、こういった共同物流といったことを提案したとすると、今のやり方で直接の排出量削減の受益というのは、共同物流に参加する荷主のほうにあるわけですね。これは、物流機能のほうにはそういう意味でのメリットはないんですけれども、でもこのことを提案しているのはというような、このことが先ほどのハイブリッドの車等を含めて、やはり現実にあるわけですから、ダブルカウントの問題だけでこのことを切り捨てるのでなくて、やはり企業がサプライチェーン全体にわたって、排出量削減に意欲を持って取り組めるようなそういった制度設計にぜひしていただければと思っております。
 以上でございます。

○大塚委員長代理 どうもありがとうございました。
 では続きまして、日本労働組合総連合会の逢見様、お願いいたします。

○逢見氏 日本労働組合総連合会、連合の副事務局長の逢見でございます。
 お手元に資料7をお配りしてございますので、これに基づいてご説明させていただきます。
 まず2ページのところですが、連合についてあまりなじみのない方もいらっしゃるかと思いますので、簡単な資料をつけておきました。680万人の組合員がおる労働組合の全国組織でございますが、傘下に54の産業別組織がございまして、その中には今日、産業界からお見えの鉄鋼、電機あるいは自動車といった産業に働く組合員もおりますし、いわゆる重厚長大型産業だけではなくて、食品とか繊維とか化学とかそういった産業に働く者もありますし、それからものづくりだけではなくて情報、それから流通・サービス、金融、保険といった産業、それから公務・公共サービスといったところ、すべてではありませんけれども、およそかなりの産業分野をカバーしていると言っていいと思います。
 連合は働く者の立場ということで政策提言などをやっておりますが、他方やはり働く人たちはそれぞれ家庭を持ち、また地域社会に暮らす一員でもあるということで、生活者の視点、あるいはサービスを受益する側の視点ということも大事だということで、そうした観点も含めていろいろな施策や運動を行っております。
 次のページに、連合の環境政策の基本理念と、3ページですがございますが、環境と経済の両立というふうによく言われますけれども、我々はそれだけでは不十分で、この右にありますように産業、雇用、そして経済、社会、環境と、こうした要素が共存できるような、そういう施策、全体最適といいますか、どこかの要件を満たすためにほかの部分が犠牲になるということはしばしばあるわけですが、それがどこかで犠牲になる部分がそこでこうむる負の影響ということについても十分配慮して、全体としてこうした要素が共存できるような政策をつくっていくべきだというふうに思っております。
 4ページは、社会対話の必要性ということを言っておりますが、これは国際的な労働組合の中での共通した認識であります。特に環境問題というのは、さまざまなステークホルダー、利害に関わる人たちが出てきます。産業界ももちろんそうですし、労働組合もステークホルダーの一つですし、それから環境問題に取り組むNGO、NPOもございますし、地域社会の活動に取り組んでいる方たちもおります。また、国民生活という点でもいろいろな影響を受けるわけですし、ライフスタイルの変更も伴うものでありますから、そうした意味ではいろいろなステークホルダーがこの地球温暖化問題、低炭素社会をどうつくっていくかということについて、きちんとした情報提供を受けながら、その中で協議に参加して合意をつくっていくという必要があると思います。
 今回の温対策基本法の中にこうした社会対話の条項が入っておりますが、法律はまだ成立しておりませんけれども、こうした法案の考え方を受けて、今後さらにこうした社会対話が進んでいく必要があると思っております。
 次の5ページに、ここから必須留意事項というふうに書いていますが、これからの特に今日は排出量取引についての論点でございますので、そこに注目しながらこうした温暖化対策をやっていく上での必須的な論点といいますか、私どもが考える点を申し上げていきたいと思います。
 1つは各種施策の位置づけと役割の明確化ということであります。温対基本法を議論する際に、最初の法律の必要性の中であらゆる政策を総動員するという考え方が示され、鳩山総理もそういったことをしばしば発言されておりましたけれども、私どもはあらゆる政策ということで、何でもそれを入れるんだということではなくて、やはり実質的に温室効果ガスの削減に貢献できる政策をうまく組み合わせる、ポリシーミックスということでつくっていくべきだというふうに思っております。温暖化効果ガスの削減には、規制的手法もありますし、経済的手法もありますし、さまざまな誘引的手法もあります。それらにはそれぞれのメリットもあるし、またデメリットもあります。そうした部分のそれぞれの効果をうまく考えて、相乗効果が発揮できる政策の組み合わせにすべきだと。国内排出量取引もその一つではありますけれども、これがすべてではないわけでありまして、これの導入を検討する際にも、他の政策との組み合わせということを考えつつ、全体の中での位置づけを考えながら、こうした政策の導入を検討すべきだろうと思っております。また、制度設計の内容次第によっては二重負担が生じるおそれもございます。こうしたそれぞれの政策が独自の領域を発揮することの中で、二重負担というようなことが起こらないようにする必要があるだろうと思います。
 次の6ページですが、排出量取引で懸念されるマネーゲーム化とカーボン・リーケージの問題でございます。排出量というのは、そこにマーケットが存在するわけですが、そのマーケットの中で将来を予測して、買う側はできるだけ安いものを購入するという行動になりますし、売る側はできるだけ高く売りたいという中で、それが現時点での取引だけではなくて、将来を見越した取引ということがあるわけですから、そこにいろいろな思惑が絡んで、マネーゲーム化の懸念がございます。そもそもマーケットそのものが未整備なわけですから、こうしたものをつくる際には、こうしたマネーゲーム化の懸念ということを払拭する努力が必要だろうと思います。冒頭申しましたように、実質温室効果ガス削減に資するものでなければいけないということであります。
 それから、カーボン・リーケージの問題については、私たち雇用の問題を抱えるところでは非常に大きな影響がございます。今の京都議定書には、世界の中で3分の1しかカバーされていないわけで、アジアでいうとお隣の中国とかインドとか、そういうところは京都議定書の対象の枠外でございます。今後の国際的な枠組みの中でポスト京都がどうなるかわかりませんけれども、今の京都議定書の枠組みであれば、日本でこうしたキャップ&トレード方式を入れるとすれば、隣の国で全くそういうものがないところがあって、そこで生産の枠、制約、あるいはコストということを考えると、当然コストの低いところで生産するほうがいいということになるわけですね。そうすると、国内の生産拠点が隣の中国へ移ってしまうということが懸念されるわけです。それは雇用機会もなくなってしまうわけですし、一旦そちらへ移ってしまうともとへ戻るということはできないわけです。
 そうすると、キャップ&トレードを入れることによって、生産拠点が国内から流出し、雇用機会が失われる。結果、生産活動が下がって、CO2排出量が減るということになるのかもしれませんが、ではそのことが我が国にとってハッピーなことなのかといえば、CO2は削減されたけれども、そのお陰で失業者が増えたということは全体最適ということで考えれば、決していい姿ではないと思います。こうした点で、地球全体として実質、温室効果ガスCO2が削減されるということが大事なのであって、一つの国から他の国へ容易に移るような仕組みとすべきではないだろうというふうに思います。
 次、7ページでございますが、経済成長と両立できる排出量の限度ということでございます。法案では総量基準と原単位基準の併用ということが書かれて、今後これを検討する際にはこうした温対基本法のベースの中で議論することになると思うんですが、私どもはこの法案の段階で、総量基準だけではなくて原単位も入れるべきだということを主張してまいりました。原単位基準を入れるべきだというのは、これは全体として低炭素社会に向かっていくということで、政府は現在新成長戦略をつくって、そこでグリーンイノベーションを進めていこうということをやっているわけです。方向としてはこうしたグリーンイノベーションを進めることによって低炭素技術が発展していくということは非常に重要なことなんですが、そこに生まれる新しい産業もありますし、他方、また産業構造転換の中で衰退していく産業も出てくるんだろうと思います。そうしたときに、排出量取引が新しく生まれる産業ではなかなかそういったものが公平に割り当てられるかどうかということでは、必要なイノベーションを促し、伸びていかなければいけない、低炭素社会にとって必要な産業が、きちんとした生産活動ができるために、それがキャップによって活動が阻害されることがあってはいけない。一方、衰退する産業によっては、与えられたキャップが一つのある種の補助金のようなものに、隠れた補助金のようなことになる可能性もございます。
 そうしたことから、総量と原単位と基準との併用、併用ということは意義があると思いますが、ただ原単位についても必ずしもいいということだけではなくて、産業によっては、いわゆる連送型の24時間ずっと操業を続けるタイプの鉄鋼とか化学とか、そういう産業がございまして、そういったところで生産量、稼働率が落ちると原単位は悪くなるということなんですが、こうしたことが基準になることがいいのかどうかという問題もございます。
 それから、次に8で、公平・公正かつ実効性のある制度設計ということをいっておりますが、これは温室効果ガス排出削減に向けた努力は当然のこととして受け止めた上で、地球環境問題の解決と低炭素社会づくりに貢献することが地球の利益と国の利益を両立するということが必要だということであります。つまり、地球全体で低炭素社会に向かっていくためには、やはり技術開発ということが非常に重要だし、日本はそうした役割を求められている国だと思います。そうした技術開発に向かう資金が取引のほうに使われてしまって、本来の投資なり研究開発に向かないということであれば、何のためにお金を使っているのかということになりかねない。日本が低炭素社会に向けて国際的に果たすべき役割ということが阻害されることがないようにすべきだということだと思います。
 それから、また技術開発を通じた低炭素社会をつくる上では、トップランナー方式というのも非常に効果があるというふうに思います。こうしたトップランナー方式の拡大ということも手法としては十分検討すべき点だろうと思います。
 9は、民生部門と産業部門の連携ということであります。これは低炭素社会をつくっていく上で、この民生部門の削減というのは非常に大きな課題であります。この民生部門を削減していく上で、環境と排出削減との連携ということで、京都CO2削減バンクというようなものがございますけれども、こうしたものも我々は参考になるのではないかというふうに思っております。
 それから、10は地方自治体における排出量取引制度との整合性です。現在、東京都がやっております。これが今後検討する排出量取引に該当するのかどうかはちょっとまだよくわかりませんけれども、既に東京都にこういうものがあるということで、これが今後考える制度との整合性ということは十分念頭に置く必要があるのだろうと思います。いずれにしても二重負担にならないようにすべきであるし、それから条例は法律の枠内でつくるということになっているわけでございますので、条例が先にあって法律が後からできるということになったときに、その関係をどうするのかということも踏まえる必要があるのだろうと思います。
 以上でございます。ありがとうございました。

○大塚委員長代理 どうもありがとうございました。
 では、最後に、WWFジャパンの山岸様、お願いいたします。

○山岸氏 皆様、こんにちは。WWFジャパンの気候変動プログラムリーダーをしております山岸と申します。本日はこのような機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
 まず最初にご存じいただいていない方も多いかと思いますので、簡単に団体の紹介をしますと、私どもWWFジャパンという団体は、100カ国以上で活動している自然保護に関する国際環境NGOです。私はその日本オフィスの気候変動問題に関する担当のリーダーとして、今日はお話をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 私のほうからお配りさせていただきました資料ですけれども、今日の発表のメーンになりますプレゼンテーションの資料と、それからその後ろに今度縦のといいますか、普通のA4の資料として、私どもが本委員会の委員でもあられる京都大学の諸富先生を始めとする研究チームの方々にお願いをしてつくっていただきましたポリシーミックスの提案の概要、要約版もつけております。本日、その細かい内容についてはご説明はするのはちょっと難しいかと思いますけれども、ぜひご覧いただけましたら幸いです。
 では、早速本日の意見内容について、中に入っていきたいと思います。まず意見の目次ということころをご覧ください。私、本日はこの6つのポイントについてそれぞれ意見を述べさせていただきます。
 最初に検討の枠組みについてということで意見を述べさせていただきます。今回の排出量取引制度の検討に当たって、まず一つ、全体の枠組みの中で意識していただくのがいいかなと思っている点としまして、制度というものを最初からパーフェクトな形でつくるということを目指さないほうがかえっていいのではないかと思っています。というのは、制度はむしろ生ものといいますか、徐々に発展させていって、最終的に望ましい形にしていくという観点が大事で、その意味でいいますと、例えば、この小委員会の設立をされました地球環境部会のときの説明の中で事務局が示された論点案があります。あの論点案に対する答えも、例えばいきなり全部に対する論点を一つで決めてしまうのではなくて段階ごと、例えば2012年の時点ではこういうことでつくって、2015年の時点ではこういう形でつくりますというような形で、段階ごとに回答を出す。その段階分けをどうやってするのかという問題もありますけれども、そういった考え方も重要なのではないかというふうに思います。
 また、そうした時間を見据えた考え方と同時に、他の政策との関連ということも大事なポイントだと思います。先ほど来ポリシーミックスという言葉が出てきておりますが、私どももポリシーミックスは非常に大事だと思っています。25%削減目標というのは、我々が重視する2度未満という目標からすれば決して十分ではないにしても、日本の現状を考えるとかなり大変な目標であることは確かです。ですから、これに対応するための政策も、一種総力戦になるというふうに考えていますので、排出量取引制度が必要不可欠で、コアになる政策であるということは間違いありませんが、そのほかの政策も同時に非常に重要になってくる。ですから、それらの政策との連携が、あるいは相乗効果が発揮されるような形で検討しなければいけない。その意味で、本小委員会ではどこまでを検討するのかということもあらかじめある程度はっきりさせておいたほうがいいのではないかと思います。それは他の対策、食べ物に対する政策、例えば排出量取引制度では対象にできないような部分に対する政策をどこで検討されるのか。あるいは排出量取引制度以外の部門に対する政策と排出量取引制度との連携はどのようなところで検討されるのか。その辺もちょっと意識していただくのがいいかなと思いました。
 私どもの提案の中では、次のスライドに移っていただきますと、この排出量取引制度を中心としたポリシーミックス(イメージ図)と書いてあるようなイメージで、私どもは先ほどご紹介したような提案をつくらせていただいております。左側が化石燃料の輸入段階から最終的な消費段階までを示した図で、その中で下流型の直接排出型の排出量取引制度ではどの部分がカバーできて、そのほかの部分はどういった政策でカバーしなければいけないのかというようなことを簡単に示しております。今日はちょっとこの細かい部分のご説明はできませんが、そういった形で、漏れなくかつ相互に連携した形での政策のミックスというのが必要になってくるというふうに考えています。
 では、次の論点に移らせていただきます。次はキャップ設定の重要性という論点です。キャップ&トレード型の排出量取引制度は、その名前が示すとおりに、キャップの設定というのが非常に重要だというふうに考えています。よく言われますように、EU、ETSの第1期はあまり成績がよくなかったというふうにちまたでは言われておりますけれども、この大きな原因というのがこのキャップ設定をやや緩めにしてしまったからということになります。キャップ&トレード型の排出量取引制度は、よく言えば最初のキャップ設定の段階でほとんど制度が持つ環境的効果を決定することができるというところに大きな利点があり、そしてまた最大の弱点でもあると思います。このキャップ設定がうまくいかない。あるいは緩過ぎるものになってしまうと、排出量取引制度自体が持つ環境的な効果、つまり排出量削減の効果というのも極めて限定的になるというふうに考えています。そのキャップ設定の重要性を、そんな当たり前な話と思われるかもしれませんが、あえてここで取上げているのは、日本全体の25%削減目標というものから、排出量取引制度におけるキャップの設定というまでは幾つかの段階を経なければいけなくて、特に我々の提案の中でもキャップ設定については25%真水で削減するというふうに考えておりますが、オフセットとか吸収源をどのように使うのかという話が入ってくると、さらに複雑化する可能性があります。ですから、キャップ設定の過程というのは思った以上に複雑である。非常に重要であるにも関わらず、思った以上に複雑であるということを指摘しておきたいと思います。
 次の論点に移らせていただきます。次は、原単位方式の問題点という論点です。皆さんもご存じのとおり、地球温暖化対策基本法案の中では、総量を基本としつつも、原単位方式が検討されることになっております。私どもとしては、ぜひ排出量取引制度は総量方式で統一をしてやっていただきたいというふうに考えています。その理由というのがここに示してあります3つの理由からです。
 1つ目の理由は、皆さんよくご存じのとおり、原単位の方式でいくと、たとえ原単位の限度を守ったとしても排出量が増加してしまうリスクがある。生産量の増加の勢いが原単位改善の勢いを上回れば、排出量は結果としては増えてしまう可能性がある。これは皆様もよくご存じのことだと思います。それに加えて、2つほど大事な論点があります。
 1つ目は、そうやって増やしてしまった場合、でもなおかつ国全体としての25%削減目標は守りたいとすれば、誰かほかの人がその増加分はカバーしてあげなければいけないということになります。このとき、この増加分がなぜ起きているのかということに着目しますと、それは増加させた企業さんが生産量を増やしているからですね。生産量を増やしているということは、基本的には利益を上げたいと思って増やされているわけで、利益があった場合は利益を上げるために排出量を増やした、生産量を増やして排出量を増やした企業さんのための増加分を誰かほかの人がカバーしてあげなければいけなくなる。それは家庭部門であるかもしれないし、運輸部門であるかもしれないし、税金で買ってくるクレジットなのかもしれないということです。これが暗黙裡のうちに行われてしまうというのが、原単位方式が内在している大きな問題点だというふうに思います。
 3番目は、これとさらにつながる論点ではありますけれども、原単位方式の場合、原単位の限度を下回って、排出量を下回ると言うべきでしょうか、上回ると言うべきかちょっと迷うところなんですけれども、原単位の目標をオーバーして削減を達成した場合は排出枠を売却できるということになります。ただし、原単位方式というものの特質上、原単位の限度が守れたとしても総量が増えている可能性があります。これが意味するところは、原単位の方式でたとえ目標を達成していたとしても排出量が増えている。つまり、排出量が増えている状態で排出枠が売却できる可能性があるということです。これを避けようと思うと総量方式にいかなければならないという問題点があります。ですから、原単位方式を採用してしまうと、生産量を増やして総量を増やしてしまうインセンティブが、逆に言うと働きかねないという懸念もあります。
 次の論点に移らせていただきます。次から3枚ほどは直接排出量ベースで制度をつくるべきか、間接排出量ベースで制度をつくるべきかということに関するスライドになっております。
 1枚目は、これは前回の環境省さんの委員会の中間まとめの資料から出させていただいた資料なんですけれども、これ注目をしていただきたいのは、間接方式にした場合、通常、直接方式の場合とカバーをすることができる部門で大きな差が出てくるような業務部門だと考えられます。業務部門は、ただしその業務部門の排出量について着目していただくと、業務部門のうち大口のところと、それから小口のところを比べてみると小口のほうが多い。ですから、例え業務部門でカバーすることができたとしても、排出量取引制度によって対象とすることができる大口業務というのは意外と少ないと言うことができます。
 これが次のスライドの問題につながるわけですけれども、下のグラフが直接排出量によって恐らくカバーができるであろう範囲を示していて、これが大体66%ぐらいになる。これに対して間接排出量でカバーをしようとすると、恐らくそのカバー率は50%近くに落ちてしまうだろうということです。ですから、ポイントとしては直接排出量方式と、間接排出量方式、どちらを採用するかいろいろ論点があるかと思いますが、恐らく間接排出量方式にいくと、間接のほうがカバー率は落ちるというふうに思います。
 もう一つ重要なポイントとしては、次のスライドにいきますと、間接と直接で何が一番大きく違うかといいますと、電力会社さんが入るか入らないかというところだと思いますけれども、やはりその電力の系数は消費者側からコントロールできない。先ほどもご指摘がありましたけれども、その点に関わる問題としては、やはり施設に関して、早期の段階でかなり大きなインセンティブを与えないといけないと。現実問題として石炭火力発電所の数も増えていますし、実際にその役割も大きくなってしまっている。ここで大きな削減インセンティブをというか、そういう方向ではない方向に進むインセンティブを与えないと、排出量の構造自体がインフラ設備に関わってきますので、ロックインしてしまうという問題点があるかと思います。ですから、直接排出量方式の部分できちんとインセンティブを与えていくことが非常に重要かと思います。
 さて、次の論点に移らせていただきます。国際競争力とリーケージの問題です。国際競争力とリーケージの問題。要するに、特に国際競争力に対して著しく不利な状況に、排出量取引制度の結果としてなってしまうと、リーケージが起きてしまって制度本来の目的に反するのではないかという論点があります。これを考えるときに、確かにそういった懸念はありますので、これに対して対処することは非常に大事だと考えます。しかし、一つ前提として押さえておかなければいけないのは、日本の企業さんが海外に出ていかれるというか、日本の企業さんが海外に展開されるという傾向は既にあるという前提です。
 参考資料のほうに、JBICさんが毎年行われているアンケート調査の結果などもお示ししておりますけれども、現時点で、これはあくまで一般論ですけれども、海外に生産拠点をシフトされたりとか、あるいはそれを空洞化というべきなのか、それともグローバルに展開されているというべきなのかわかりませんけれども、そういう傾向はもう既にあると。ですから、炭素制約がかかったときに、それが加速されるのか。それともどうなのかというところはかなり見極めが難しい。全く何もない状態だったら見極めるのは簡単かもしれませんけれども、既にある傾向の中で、その影響がどれぐらい加速されているかということを見なければいけないので、非常に見るのは難しくなってくるというふうに考えられます。
 その結果として、リーケージが起こる原因の類型としては、直接的に日本企業さんが生産をシフトさせる場合と、それから日本企業さんが競争で負けてしまって、海外の企業さんが生産量を増やしてしまって、排出量が増える場合というこの2種類が考えられると思います。いずれにしても、我々が注目しなければいけないのは、それによって排出量が増えているかどうかというところです。日本の企業さんが海外に出ていくことがまずいか、それともよいことなのかというのはまた別の問題としてありますけれども、それによって排出量が増えているかどうかというところを着目して議論を立てなければいけないと思います。仮にそれが大事だと、現状既にそういう傾向があることも問題だとすれば、今、既にそういった対策はしなければいけないということにもつながるかと思います。
 リーケージを、では実際にどうやって評価して、どうやって対応していくのかということに関しましては、いろいろな研究が既にされていますけれども、基本的には2つのポイントに着目して判断することが必要かと思います。というのは、1つ目は当該問題となっている業種が、そもそも国際競争にさらされているのかどうかということを判断する。もう一つはその業種にとって炭素制約というものがどれぐらい重要か。これはコスト構造、その業界さんのコスト構造にもよりますし、それから価格転嫁ができるような業界さんなのかどうかということにも関わってくるかと思います。本委員会の委員でいらっしゃいます明日香先生も、欧米の研究にならってこういった点については細かい検討をされているので、やはりそういった客観的なデータに基づいて冷静な議論をすることが重要かと思います。
 最後にマネーゲームの問題について、ちょっと駆け足になりますが、指摘したいと思います。排出量取引制度の議論をすると、必ずこのマネーゲームのおそれがあるという話が出てきます。ただ、おっしゃる方によってそのマネーゲームという言葉がそもそも何を意味するのかというのがはっきりしない部分があります。できれば、こういったマネーゲームという問題、何となく我々も昨今の経済危機があるので、こういった問題が重要だということは恐らく重要になるだろうということは、皆さん恐らく異論はないと思いますので、マネーゲームという一般的な概念で議論をするのではなくて、一体それによって私たちは何を懸念しているのかをもう少し明確にして議論をすべきだと考えます。例えば投機的な参加者が参加して、人為的に価格の乱高下が起きる。これが問題だとすれば、それに対する対処を考えましょうと。あるいは取引参加者の中で情報を一部、不正な情報といいますか情報の非対称性があって、その一部の参加者だけが得する。これがけしからんというのであれば、それを防ぐようなことを考えましょうとか、そういうふうにもうちょっと話を具体化したほうがよいのではないかと思います。現実的にあり得る制度的な対応としては、参加者をどういうふうに定義するのかとか、あるいは取引としてどういったものが許されるのかとか、あるいは特定のプレーヤーが力を持ってしまうことを防ぐような措置であるとか、あるいは価格の透明性を高めるような措置というものが考えられます。こういった措置というのは、排出量取引制度の議論ではひょっとしたら新しいのかもしれませんけれども、ほかの市場では全然新しい話ではないと考えられるので、そういった市場での本当のプロの方々にお話を聞くような機会というのも設けるべきではないかというふうに思います。
 以上、ちょっと駆け足で各重要であろうと思われる論点についてお話をさせていただきましたけれども、こうした委員会での議論を通じて、排出量取引制度に関する議論が建設的に行われることを期待したいと思います。排出量取引制度は、あくまで25%削減を達成するための手段であって、その25%によって、手段としての排出量取引制度に内在する論点と、それから25%という削減目標に内在する論点とその辺はしっかり区別をして、今後議論していくことが建設的な議論につながるのではないかというポイントだけ最後に指摘して、私の発表とさせていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。

○大塚委員長代理 どうもありがとうございました。
 皆様、時間を守っていただきまして、どうもありがとうございます。
 では、ここから質疑応答とさせていただきたいと思います。これまでのご報告につきましてご質問等がございましたらお願いいたします。発言される際には、お手元のネームプレートを立てていただいて、私の指名に従って順次ご発言いただきたいと思います。
 ではまず、影山委員、お願いします。

○影山委員 ありがとうございました。
 まず産業界の方にお尋ねしたいと思いますが、今日お見えになっている産業界の業界の方は、一つの特徴としまして、下流部門のCO2削減に貢献している。そういうような業界の方が多いと思います。
 それで、この発表の中にありましたように、なかなか下流部門も含めたCO2の評価というのをしていかないと、生産部門だけで見た場合には非常に間違ったCO2対策、温暖化対策になるというような発表がございましたが、そうすると下流も含めた、例えばLCA的なそういう評価手法というのは何がしか考えられるものなのか。そんなのはちょっと無理だよというようなことなのか。それとも何か下流までずっとやっていけば、含めたそういうCO2の評価というのができるものなのかというところを、一つお聞きしたいと思います。
 それから、産業界の方にお尋ねしたいんですが、グリーンニューディールですか。厳しい温暖化対策というものが新たな雇用あるいは産業機会が生まれるという、そういうのに対して、今の企業あるいは産業界の状況の中でそういうことが起こり得るのかどうか。厳しい温暖化対策という、特に2020年というふうに目標も置いてあるわけですが、そういう中で新たなビジネス機会というようなところが生まれるような、そういう素地があるのかどうかというようなところをお尋ねしたいと思います。
 それから、電力について、特に山岸さんの発表のところですが、電力についていろいろお話がありまして、一つは、電力というかエネルギー供給そのものも問題としていろいろな論点があると思うんですが、いつも申し上げているところですが、私は電力の専門家という立場で入っていますので、電力供給の成立要件というんですか、そういうところからいいますと環境問題というのはもちろん重要だというのに加えて、やはり安定供給とそれから経済性、なるべく安いエネルギーをお届けするというところが非常に大事なものですから、そういったものが同時に成立する。あるいはバランスを持って達成できるというところが、このエネルギー供給の成立要件になりますので、そういったところを考えて、いろいろな問題点を整理していかなければいけないというふうに思います。その中で直接、間接という電力に関する直接割り当て、間接割り当ての問題がこの中でも何回か問題になりますけれども、それについて、ちょっとこれがこういう制度がいいのかどうかわかりませんが、一つの整理の仕方としては直接でやりますと、電力会社というのは消費者の電力消費量、こういったものも含めてCO2削減というのを受け持つという、電力消費全体も、それも含めて、それでCO2削減の責任を負うという、そういうことになろうかなというふうに思います。
 ですから、我々が、電力会社がそういうようなことで削減を受け持つと、そのしわ寄せというものが電力消費者にとっては電気料金の上昇という、そういう形で出てくる可能性が多分にあるということで、そういう電力消費者の方々が電気料金の上昇というのを含む、コストを受け持つということでそれでいいのかどうかという、そういう問題かなというのは一つの整理の仕方かなというふうに思います。電気料金が上がりましても、なかなかその電力消費量が下がらないというのは過去の事例にもありまして、かなり電力消費者の負担が増えて、消費が落ち込むとかいろいろな課題も出てこようかと思います。産業部門にも影響が及ぶと思いますので、そういったのがいいのかどうかというところかと思います。
 今のはちょっと整理として申し上げましたので、山岸さんのご意見があれば、またいただきたいと思います。
 以上です。

○大塚委員長代理 では、まとめてお答えいただきたいと思いますので、次、冨田委員、お願いします。

○冨田委員 ありがとうございます。まず最初のものづくり3団体の方に同じ質問をさせていただきたいと思います。
 皆様方の会社はグローバルに事業を展開されているということで、直接あるいはグループ会社を通じて、海外に生産拠点をお持ちと思いますが、この生産のシフト、日本で何らかの制約が強くなって、生産を海外にシフトするということが懸念されるわけですが、そういう生産のシフトが容易なのかどうか。我々がはたから見る以上に簡単にできるのかどうか、そういったところについてコメントがあればお願いしたいと思います。
 それから、経済同友会さんですけれども、資料の中にも実質削減が大事だということが書かれておりまして、私も全く同感でございます。一方で、排出量取引は一定の役割があるということもおっしゃられたわけですけれども、過度なキャップというのは生産量を削減するということにつながりかねないと思うわけですけれども、これについては同友会さんとしては、そこまでしなくてはいけない様な過度なキャップというのをどうお考えになるのかということについてお聞かせいただければと思います。
 連合さんですけれども、排出量取引において生産シフトとか生産拠点の移転という、そういう可能性があるときに、通常、排出量取引の対象になるのは大企業というふうに考えられる方が多いと思いますけれども、実際に影響を受けるのは大企業だけではなくて、下請であるとかあるいはものづくりのサプライチェーンに関わる中小企業も影響を受けることになると思います。WWFさんの資料の中にも排出量取引以前に、既に日本の企業が海外に生産をシフトさせる傾向があると書かれていて、確かにそういうところはあると思いますが、現実の国内雇用の空洞化に対しての危機感について、もしコメントがあればお聞かせいただければと思います。
 それから、最後にWWFさんに2点、質問があります。1つはキャップの設定ですけれども、25%削減を一つの例としておっしゃられたと思いますが、例えば来年25%削減してくださいというようなキャップがかけられたとすれば、それはとてもできないと。そうすると、当然生産を削減する以外に多分方法はないということになろうかと思います。それは極端な話ですが、10年後に25%削減かどうかというのは次の問題があるわけですけれども、生産を削減するというのも実質なCO2の日本からの削減にはなるわけです。しかし、それ自身をいいこととお考えなのかどうか。それまでしてもやったほうがいいとお考えなのかどうかということについてお聞かせください。
 もう一つは、今日のものづくりの3団体の方もそうですし、これまでのヒアリングの中でも、企業の取組として製造時におけるCO2の削減というのが第一にあり、それから、製品使用時にいかに省エネできるものをつくるかといった取組もあります。それから、技術開発あるいは国際貢献、こういった分野でも企業としての役割があるというご発表があったかと思います。排出量取引で通常カバーできるのは、製造時におけるCO2削減だと思いますけれども、それ以外の取組に関して排出量取引では普通考えるとなかなかカバーできないと思いますが、それに関して、いや、こういうような考え方でやれば何とかなるとか、アイデアがございましたら教えていただければと思います。
 以上です。

○大塚委員長代理 では、挙げた順番で、武川委員、お願いします。

○武川委員 結構一杯あるのでどうしようかな。ちょっと空気を読みながら、2回ぐらいに分けるかもしれません。すみません。
 まず、すべての団体さんがご指摘をしておられたポリシーミックスの点なんですが、私も全く同感でして、この委員会の第1回で全く同じようなことを実は環境省さんにもお願いしたというところで、ぜひこれは委員会の守備範囲の問題という言い方もできるかもしれませんし、すり合わせの問題というふうに言えるかもしれないんですが、ぜひともやっていただかなければいけないだろうなと。ここは正直、やるやるということだけじゃなくて、本当にどうするかというところも含めて、真剣に、実際こうやりますというところも含めて出していただかないと、ちょっと私も正直どうするんだろうなというのは思っております。
 ただ、そのことを申し上げた上での話なんですが、ポリシーミックスをご指摘された方に、もし私の認識と相違があればご指摘いただきたいんですが、基本的にポリシーミックスが大事だというところはそのとおりではあるんですが、例の3つの制度がお互い矛盾して、およそワークしないというようなことではないんだろうなというふうに理解はしておりまして、ざっくり言うと、大口については排出量取引、小口や家庭は税ということをやった上で、電源構成については再エネの買取制度で対応するということなのかなと。その上で、税と排出量取引の関係についていうと、税の内容にもよりますが、両者の切り分けをしっかり考えるということだろうし、排出量取引と買取制度についていうと、特にこれは産業界のほうから今日も指摘がありましたが、電力料金の上昇と排出量取引による負担ということで、両方来る可能性があるので、二重の負担が直ちに私は悪だというふうに言うのは論理的ではないと思っているんですが、二重の負担があるとして、それでも本当に制度として合理的なのかということを、多分考える必要があるだろうというふうに思っています。これは、経産省やエネ庁さんのほうではこの問題意識から大口需要家に対して、何かフィードインタリンフのほうで優遇措置のようなものを講じるかという形で、既に問題意識として表れてはいるので、その辺との連携をぜひしていく必要があるのかなということは思っております。
 それともう一つが、これも経産省さんのほうで出ている問題意識なんですが、再生可能エネルギーが増えることによる環境価値の帰属をどこに持っていくのかと。系統電力の排出係数が下がるということで、排出量取引制度の対象者の優遇につながるということなのか。それともそうじゃないんだということにするのか。このあたりも両者が関連してくるところなのかなということで、論点としては出ていると思うので、ここをぜひしっかりやっていく必要があるだろうというふうに思っております。
 それから、税とフィードインタリフ、固定価格買取制度の関係なんですが、これは両者に似た性格があるので、二重で負担するから駄目だということにはならないとこちらも思うんですが、両方負担してもそれでも妥当な水準と言えるのかという議論としては、これはやっていく必要があって、この種の議論を詰めるべきだと私は思っているんですが、もし、いや全然違うとか、こういうこともあるんだということがあるようでしたらご指摘いただきたい。これが1点目です。
 長くなってきたので、もう一点ぐらいにしておきます。それから、もう一点、これはものづくり3団体さんのほうに質問なんですが、お聞きしていると必ずしも排出量取引制度は要らないのではないかというお立場だということなのかなというふうには思うんですが、さはさりながら、では今のままでいいのかという問題もあって、今のままというのは、要は自主行動計画や試行的実施ということをそのまま続けるというご趣旨で、何か物をおっしゃっているのか。いや、そこはそれを基準にしながらも、さらに改良というのがいいのか。見直していくことは必要だというふうにお考えなのか。要は、これが駄目だというのなら、ではどうするんだというあたりを、まさにクリアに示せというのはひどい話なので、その辺、どういう方向性をお持ちなのかというのをお聞かせいただきたい。具体的には、自主行動計画や試行的実施の場合には、自主的な目標設定であるとか、団体や業界で指標が統一していないとか、あるいはたくさん達成すると国に呼ばれて、もっとやれるでしょうと言って、もっとやらされるけれども、たくさん達成したからといってそれが売れるわけでもないというインセンティブのゆがみのような問題であったり、あるいはその算定検証がまちまちであったり、試行的実施についても排出量を売らなければ自分で検証すればいいよというような話であったりすることもありますし、あるいは今日、自工会さんでしたっけ。長期的なものがわからんというお話が出ていたんですが、私は試行的実施が長期的な制度だとはとても思えなくて、ああいうもののほうがむしろ長期的な視野という意味では経営が難しいんじゃないかなと。これははたから見ていて思うところもあるんですね。そういった要素について、排出量取引がいいかどうかという議論とはちょっと別の議論として、今申し上げたような点について、今後の対策として各業界でやってもいいかなというふうに思っているものの中で、対応するということは考えられるのか。あるいは検討してもいいよというような話ぐらいはあるのか。もしその辺、ご意見があればぜひ伺いたいなと思っております。
 もっと一杯あるんですが、もうちょっとほかの方のを聞いた上で発言したいと思います。

○大塚委員長代理 では、ちょっとたくさんになってきましたので、このくらいでまとめてお答えいただければと思います。
 ごく簡単に言うと、影山さんのご質問は消費段階での削減の問題をどう考えるかということ。それから、グリーンニューディールについて素地があるかという話と、それから電力に関して電力の消費者のほうについて、電力を請け負うことになると電力料金が上がるけれども、そこをどう考えるかという直接排出についての問題。それから、冨田さんからは海外シフトは簡単なのかということと、それから過度のキャップは生産量削減につながるけれども、それをどう考えるかということ。それから国内雇用の空洞化についての危機感をどう考えておられるかという、これは連合さんに対してですね。
 それから、WWFさんに対しては、キャップの設定は生産削減をする可能性があるけれども、それはどうかということ。それから、それ以外の取組についてどうお考えかということ。
 それから、武川委員からは3つの制度の関係で、問題になる点についてご指摘いただいた上でそれについてどうお考えかという点ですね。それから、自主行動計画と試行の今の方式について、これでいいとお考えになっているかどうかと。
 以上でございます。
 ちょっと影山さんからの質問について、私も追加してお伺いしたいのですけれども、先ほど生産のところで、排出量が増えるけれども消費のところで大幅に減るという例があるということで、これはプリウスの例とか、太陽光発電もそうだと思いますけれども、幾つか例を挙げておられますけれども、こういうのはどのぐらいあるのかというのがほかにもあったら、また幾つぐらいあるかというようなことがもしお分かりでしたら教えていただきたいと思います。
 以上、たくさんですけれども、よろしくお願いします。
 では、山田さんからお願いします。

○山田氏 最初に影山委員からのご質問にお答えしたいと思います。
 LCAの点についてお聞きになったんだと思いますが、排出量取引を議論するに当たって、あるいは日本の温暖化対策を議論するに当たって、いわゆる一般論で排出量取引だとか市場メカニズムが働くだとか、そんな議論が非常に多いと思うんですね。ただ、日本の今の現状あるいは特徴ということを考えますと、少なくとも主要企業についてはエネルギー効率が世界的にもう非常に効率がいいということはわかっていますし、つくった製品、鉄鋼のような素材であっても、それが社会に出されたときに貢献できるというものがあるんだと思うんです。このことを前提にして議論しないと、我々は例えば世界最高だとして、排出量取引というのは一般的には効率の悪い人がさらによくする。効率のいいほうはクレジットを買うんだみたいな話になるわけですけれども、そんなことでは我々の技術レベル、あるいは省エネレベルは改善されないわけですね。
 だから、やらなければいけないことというのは、どんな制度が入ろうが、今、日本がやらなければいけないことというのは、最先端技術を最大限導入する。あるいはもう技術の余地がなければ、さらにいいものを開発していくと。そこが基本だと思うんですね。だから、そうでない業界だとか分野がもしあれば、そういった排出量取引みたいなことが成り立ち得るとは思いますけれども、もう既にそうなっているところがどうやるのかということで考えた場合にどうかということを議論しないといけないんじゃないのかなというふうに思います。
 それと、温暖化対策は厳しくすればできるのではないかという話は、今の話で尽きている部分もあるんですけれども、我々は省エネというのはオイルショック以来、最大限一番重要な課題だというふうにやってきましたし、やはり日本が誇れる技術だと思うんですね。もしこういった分野で、例えば新日鉄がJFEさんにおくれをとるだとか、あるいは日本鉄鋼業界がヨーロッパにおくれをとるだとか、そんなことになったら大変なわけです。したがって、我々も規制が強くなろうがなるまいが、当然厳しくやるということではないかというふうに思っています。
 影山さんのはそういうことでよろしかったですか。ほかにありますか。

○影山委員 私の質問なんか意味ないんだというお答えのような気がしますけれども。

○山田氏 いやいや、そんなことはないです。意味がないんではなくて。

○影山委員 わかりましたが。例えば下流も含めて、CO2を評価するような、そうすれば。

○山田氏 わかりました。そういった仕組みというのはやろうと思えば私はできなくないと思います。今の議論というのは、排出量取引というものをつくるために、ある排出権というクレジットを発生させる。それを、経済価値を持たせるためには厳密な議論が必要でということから始まっているんだと思うんですね。だけれども、先ほど言いましたように、日本の企業の置かれた実態が世界で最高率で、いい製品をつくろうということで、我々メーカーと一緒に、素材ですけれども、ユーザーの皆さんと一緒に開発したりしているわけですから、そういったことを評価していく。どっちがクレジットをとるとか、どっちのほうが貢献しただとか、そんなことを我々は争っているわけではないわけですね。それは、排出量取引をしようとするから、そう思うだけで、日本全体として最大のアウトプットをどうするかということではないかなというふうに思います。
 冨田委員ですけれども、グローバルが容易か。鉄の場合には設備構造的に、一度つくれば20年あるいは50年、そういった設備を稼働させますので、当然容易ではないという面が一つと、もう一つ鉄鋼メーカーと連携して、いろいろな技術開発をしています。こういったことから容易ではないということになります。したがって、具体的な設備の移転が起きるかどうかというのは簡単ではありませんけれども、コスト競争力がなくなってしまう。つくっても利益にならない。オフセットのお金が非常に高いということになれば、当然これは競争に負けますから、結果として設備は残っても生産できないという事態は想定されるというふうに思います。
 LCAを含めたキャップのあり方という話は、先ほど言ったように、それはキャップ&トレードではというふうに考えなければ、それを評価するやり方は、私は幾らでもあろうと思います。

○大塚委員長代理 あと、武川委員の3つの制度の関係の問題についての指摘に関していかがでしょうか。

○山田氏 これも、3つの制度というのは、排出量取引、税、固定買取なわけですね。いずれもそういった規制をすることによってインセンティブが働いて削減できるということだと思いますけれども、先ほど来申し上げているとおり、今の技術で削減できる余地がないところは、もう技術開発をしていくか。自らのプロセスの改善のために技術開発をしていくか。ユーザーと連携していいものをつくっていくか。あるいは、世界でされたいというのであれば、我々のいい技術を海外に持っていく。海外へ持っていくというか、移転促進すると、そういうことしかないと思うんですね。
 国内のことだけいえば、税がかかっても、我々ができることが限られれば単なる負担になる。これは排出量取引も同じだと思います。あるいは固定買取もそうですね。単に高い電気代になるということにしかなりませんので、やはり各分野、業界の実態をよく見た対策ということが必要ではないかなというふうに思います。
 それと自主行動等について言われました。自主行動という形がいいかどうかというのはいろいろ議論があろうと思います。我々がやるべきことは何かということを各業界別に考えたときに、もうやるべきことというのはわかっているわけですね。それが、透明性が足りない。あるいはきちんとした評価がしにくいということをもし言われるのであれば、それは温対法の中でちゃんとやるとか、それは当然やっていけばいいと思います。自主行動に別に固執しているわけではなくて、我々がやらなければいけないことをちゃんとできるような仕組みが何なのか。それが本当に排出量取引でしょうか。今日申し上げたかったのはそういうことです。
 以上です。

○大塚委員長代理 ありがとうございます。では自動車工業会の名尾様、お願いします。

○名尾氏 LCAの実例がどれくらい、これ以外にも、プリウス以外にもあるのかというご質問ですが、これは全部調べれば、理論的には私は可能だと思いますが、大変な時間と労力がかかりますし、それから時々刻々新しい製品というものが生まれてまいりますので、理屈の上でできるけれども、実際上できるかどうかというのは別の話だと思います。今すぐ何か実例を言えと言われても、今は思い当たることはありませんけれども、しかし例えば車の燃費を改善しようと思えば、当然必ず新しい技術開発をして、その分がコストにかかってまいりますから、それが場合によってはCO2の排出を、生産段階では増やすような技術が伴うこともそれは当然あるかもしれないということであります。
 それから、今、鉄鋼連盟さんの言われたことと同じなんですが、先ほど私が申し上げたかったのは、一般論で議論をしていても生産的ではないと思うんですね。先ほどどなたか発表された方がおっしゃっていましたけれども、やはりいろいろな懸念があるときに、そういった懸念を本当に生じさせないような制度の仕組みができるのかどうか。私は今、直ちに、なるほど問題は生じないですねというだけの確信は持ち合わせておりません。ですから、これをやるべきだとおっしゃる方が、むしろここできちんとした議論をしていただいて、もう一回これならどうだというのを私どもに示していただいて、それで議論をさせていただきたいと思っています。
 それから、生産のシフトの話、これはやはり何百億とか、一千億とか、そういうオーダーの投資が必要になっていますから、右から左にということにはなりませんけれども、ただ必要があれば、新しい工場をつくるときには、当然制約のないところを探して投資をするというふうに、企業行動としてはならざるを得ない。
 それから、先ほど試行的実施が長期的にサスティナブルかどうかというお話がありましたけれども、試行的実施はそもそもこれをやることによってどういう問題点があるのかを洗い出しましょう。その上で、ではどういう排出量取引制度をやるのかやらないのかを含めて議論しましょうということで、これが始まったと私は理解をしております。
 それで、私どもは何もやらないということを申し上げているのではなくて、先ほどご説明申し上げましたように、これまでも自主行動計画で25%の削減を実績としてやっておりますし、それから今後も経団連のこの実行計画に参画をしてやってまいります。
 繰り返しになりますけれども、政府からやれと言われなくても、これはやらなければ生き残っていけないんですね。あのトヨタですら、2年前のリーマンショックの荒波をこうむったときには、本当に企業の存続にかかわるような大変大きな赤字を計上して、トヨタショックという言葉が新聞の上に活字として踊ったようなことでありまして、それぐらい厳しい国際競争にさらされていれば、繰り返しになりますけれども、こういう省エネというのは企業としてやらなければならない中の、まず最初に手がけるべき当たり前のことでありまして、それは私どもとしては当然のこととしてこれからもやってまいります。

○大塚委員長代理 どうぞ。

○武川委員 微妙に趣旨が伝わりにくい質問をしてしまったかなと、今反省しているんですが、山田さんの先ほどのお答えだと、今までもやってきたし、言われなくてもやるし、これからもやると。ただ、それが見えにくいというのであれば、見えやすい形でやることも考えますよというお答えをいただいたのかなと思って、なるほどというところだったんですが、今のお答えというのは、要は最後の部分ですね。今までもやってきたし、これからもやるけれども、より透明化できる部分があるんだったらするかどうかとか、そういった、要はこれまでと全く同じにやるのか。それとも改善できる部分があれば改善するのかというあたりについては、どういうお考えになりますでしょうか。

○大塚委員長代理 お願いします。

○名尾氏 一般論で何が透明性がないということを……

○武川委員 それは具体的に言ったつもりなんですけれども。

○名尾氏 私どもとしてはご理解いただけるように改善すべきことがもしあるのであれば努力はいたしますけれども、具体的にこういう点、こういう点とおっしゃっていただければ、それは私どもも一つ一つ申し上げたいこともきっと出てくるでしょうから、そういった議論をさせていただきたいと思います。

○大塚委員長代理 どうもありがとうございました。
 では電機・電子温暖化対策連絡会の実平様、お願いします。

○実平氏 まず影山委員のLCAに関して、ちょっと論点が違うのかもしれないんですけれども、LCA全般につきましては私どももいろいろ製品群があって、それはやっているわけですね。それで、そのLCAの中でどこのポイント、調達段階であるとか、あるいは製造段階に重きがある。あるいはお客さんでの使うところに非常にウエートがあるというような区分けをして、その一番大きいところをねらうような施策を打っているということが1つ。
 それから、もう一つの見方は、いろいろ影山さんのところにもお世話になっているわけですが、低炭素電源としての原子力ですとか火力発電等々とやっているわけでありまして、この寄与のような話ですね。コントリビューションの話を我々がある意味では、お客さんのところに近いというところで、例えば山田さんのところの鉄のコントリビューションとか、あるいは科学のコントリビューションというのも見ていくという見方が今後必要になってくるんだなというふうに、ちょっと趣旨とは違うかもしれないんですけれども、そういうことを今思いましたので、発言をさせていただきます。
 それから、冨田委員のはグローバル、生産シフトが容易か否かというふうなお話だったと思いますけれども、これは比較級でありますので、私ども製品群で申し上げますと、途中でも、発表の中でも申し上げたかと思いますけれども、組み立て経営のものについては、比較的設備等ともそんなに難しくないということで容易に動く。つまり、人件費だとか何だかんだという要因で動くということですね。あと、装置産業的な半導体とか液晶等々につきましては、なかなか現状では動きづらいというところがあるんですけれども、あまりいろいろな意味での炭素で限られてくるということになると出ざるを得ないという局面は出てくるだろうなというお答えであります。
 それから、武川委員ですけれども、ポリシーミックスというか、どういう政策なら受け入れられるのかみたいなところでありますけれども、これは業界を代表した意見になっているかどうかわからなくて、後で怒られるかもしれないんですけれども、ちょっと個人的にというか、確かに約束をしたらというところであれば何かやらなければいけないということなわけでありますね。そうすると、何らかのキャップ的なことというのが必要になるかもしれないと思っていて、ただ、そのキャップのあり方の合理性というところがやはりポイントで、我々にどう関わるのというところが最大のところでありまして、どうも今までの傾向を見ていると、攻めやすい産業界が責められ過ぎているというのがあって、業務部門とか、家庭部門なんていうのはほとんど野放しなわけですね。ここにちょっとメスを入れる必要があるだろうし、そこに我々も頑張りたいなという意思がありますということを、ちょっと申したいと思います。
 以上です。

○大塚委員長代理 では、経済同友会の浦野様、お願いします。

○浦野氏 それでは3人の方々、共通の問題からですけれども、LCAといいますか、サプライチェーンといいますか、この問題が出ておりました。これはやはり私、真剣にこれをどうやったらきちんとカウントできてくるんだということをどなたもやっていないと思うんですね。例えば、経済分析でいけば、付加価値分析の中ではB to Bにしろ、B to Cにしろ、この連鎖というのはきちんと追求していくわけですよね。その大きなものになってくると、産業連関表みたいなものがあって、それぞれ量ることができる。言ってみれば、こういう産業連関表的なもの、あるいは付加価値の連鎖的なものを、この温暖化のいろいろな指標の中で使っていくような、そういう組み立てをやはり頭のいい人たちにぜひ考えていただきたいなと思いますし、これは私は可能だというふうに思っているんですね。
 それがないと、その企業だけ単独で動いているなんてどこもないわけですね。必ず川上、川下にそれぞれが影響を与えるわけです。先ほど大塚委員長代理のほうから、ほかにどんな例があるんだという話がありましたけれども、もうすべてがそうですね。例えば身近なところで食品を考えてみましょうか。お母さんが一からハンバーグを、タマネギもひき肉も買ってきて、切ってそして自分でいためてと考えたときに、それといわゆる加工食品でハンバーグをつくったとき。おいしさとか愛情の問題とかは別にしまして、これは明らかに、この部分でいけばCO2の削減にはなっているのはもう間違いはないわけですね。もともとそういう連鎖で、B to B、B to Cというのは動いているというふうに私は思っておりますので、もうこの事例は無限であります。

○大塚委員長代理 私が伺いたかったのは、消費のほうでは減るけれども、生産のほうでは新しい技術の開発とかをすることによって、生産のほうのCO2は増えてしまう。しかし、消費のほうでは結果的に減るんだという、そういう例というのはほかにありますかという話だったのですけれども。プリウスとかはそういう話ですよね。

○浦野氏 これはもちろん、今例に挙げた食品でもそうですよね。例えば電子レンジだけでチンでできていくようなもの、これには当然、食品工場の段階ではさまざまな負荷がかかるわけなんですけれども、これも含めて、今加工食品業界の結論からいけば、全体でマイナスにはなっているという自信を持っているわけなんですけれども、そんな事例は一杯あると思います。
 それで、もう一つ、これに絡んで、過度なキャップという問題が出ました。これはやはり困りますよね。過度なキャップという議論が出る前に、要するに25ということを国としてどんな道筋で、どんな負担でやるんだという全体像がない中で、この排出量取引の部分だけ、これは武川さんもおっしゃっていたように、多分大規模排出のところがかかわってくるポリシーだと思うんですけれどもね。そこだけ過度なキャップと言われても困るわけですね。
 全体が本当にできない中でそれぞれの分野で、どうしても過度なキャップをかけざるを得ないとしたら、これは日本の成長力というか成長性がなくなるわけですから。全体の前提が崩れますよね。成長を果たしながら、なおかつ25%ということにチャレンジしていこうと言っているわけですから、そうなったときにはやはり国全体の産業構造の変革が要るでしょうね。いや、別に鉄鋼がなくなるとか、自動車がなくなると言っているわけじゃなくて、国全体としての産業構造の変革をどうなし遂げていくんだといった議論に全体がかかわっていかないと駄目だというふうに思っております。
 ですから、端的に言えば、過度なキャップということは反対というよりはあり得ないだろうというふうに考えているわけであります。
 それから、最後にポリシーミックスの話がありました。これはやはり太陽政策も北風政策も含めて、それぞれの中でもしかしたら矛盾が出たとしても、それぞれの主体がいかに自主的に取り組んでいけるかということを考えたときには、ある意味矛盾が出てもそれを承知でやっていくぐらいの、そういった柔軟性がないと全体の目標削減はなかなか難しいのではないかなというふうに思っております。

○大塚委員長代理 ありがとうございました。では連合の逢見様、お願いします。

○逢見氏 冨田委員からのご質問でございますが、空洞化についての危機感をどのぐらい持っているのかということでございます。端的に言えば、相当危機感を持っているということです。我が国は資源、エネルギー、食料を輸入に依存しなければいけない体質がありまして、そういう中でどうやって稼ぎ、どうやって飯を食っていくのかということが重要で、ずっとこの間、日本の高コスト体質の中で、海外への移転というのも進んできた。それは必ずしも環境制約だけではないと思いますが、そういう中で日本に雇用の場をとどめるためには、やはりものづくり産業というのは日本にとっても将来も重要だし、これを日本に残していかなければいけないんだろうというふうに思います。
 そのときに、やはり技術力、高付加価値のある製品をつくる力、それを支える人材というのが今後も重要であって、それが環境制約ということだけですぐに空洞化になるとは思いませんけれども、しかし、環境制約も大きな空洞化要因になり得るというふうに思っております。そのことで雇用の場が国内から失われることがあってはいけない。中小企業も、日本の産業集積、例えば東京の大田区とか東大阪とか、そういうところで相当競争と協力の中でさまざまな技術を持ってきているというのがだんだん弱ってきているのではないかという指摘がございます。
 中小企業に今度のそのキャップ&トレードがかかるのかどうかは、設計の状況によると思いますが、中小企業というのは投下資本も少ないわけで、いい意味では小回りがきくんですが、逆に悪く見るとすぐに逃げ出すというか、転廃業が容易であるということなので、そういうところでキャップをかけるということになると、そこで頑張るぐらいだったら、別のところでもっと制約のないところでやろうと。あるいは今までせっかくつくってきた技術をやめて、もうそこでは建物を壊して、駐車場にして、それで暮らすとか、そういうことになりかねない。そうすると、せっかく持ってきた技術力が継承されずに失われてしまうという懸念がありますので、そういうところについては十分な配慮が必要になるだろうというふうに思っております。

○大塚委員長代理 ありがとうございました。では、WWFの山岸さん、お願いします。

○山岸氏 ありがとうございます。最初に影山委員からのコメントに関して、安定供給と、それから経済性の問題についてご指摘いただきまして、確かにその辺、もう少し突っ込んだ分析をして、きちんとしたバランスのとれた回答を出すべきという点はおっしゃるとおりで、その辺は私どもまだきちんとできていないと思っております。ただ、長期的に見たときに、基本的な方向性としては、化石燃料に頼り続ける現在のエネルギー構造が決していいものだとは思えないので、それは経済性にとっても、それから安定供給にとってもよろしくないという点はあるんだと思います。
 それから、消費者に対するしわ寄せといいますか、あるいは電力会社さんとかあるいはガス会社さんも含まれるのかもしれませんが、カバーしなければいけないという点についてはおっしゃるとおり、確かにだからこそ逆に言うとポリシーミックスで、家庭部門であるとか業務部門であるとかというところに関してはしっかりとした施策を入れなければいけないというふうに思います。特に電力会社さんのケースですと、例えばウィン・ウィンになれる分野としては平準化努力みたいなところとどれぐらい組み合わせができるのか。家庭部門に特化したような政策によって、その辺をどうやってうまく活用できていけるのかというところは、もっと突っ込んだ検討をすべきだというふうに思います。
 それは、排出量取引制度による価格転嫁が起きたとしても、価格弾力性が働かなくてあまり削減につながらないのであれば、なおさらそういった部分についてのきちんとした政策は、別途検討しなければいけない。この委員会とは違いますけれども、ロードマップのほうの委員会でお呼びいただいたときに、省エネコンシェルジュという制度みたいなのを入れたらどうかというのが、私たちの一つのご提案だったわけですけれども、それ以外にもいろいろな考え方はあるかと思います。ですから、そういったところもここなのか、それとも別なところなのかわからないですが、検討するべきではないかというふうに思います。
 続きまして、ちょっと駆け足で恐縮ですけれども、冨田委員からのご質問に移らせていただきたいと思います。生産減をいいというのかというご質問をいただいたかと思いますけれども、端的にお答えすると、場合によるというふうに考えます。なぜか。一般論として、生産が増加することをとめたり、というか、企業さんにとって生産を増加するということは基本的に成長するということなので、それをとめるのは一般論としてはよくないと思うんですけれども、例えば生産物の代替を促す結果につながるのであれば、それは必ずしも代替によって何らかの別の方向にシフトする。そもそも生産しているものを変えていくというような方向で、排出量の減につながるとかということがあるのであれば、それは促されてしかるべきと。もしそういった方向性が、今まで制約がないがゆえに、それほど真剣に検討されていなかったけれども、炭素制約があることによってそういうのを検討せざるを得なくなったということであれば、それも必要だと思います。
 また、生産減が製造業さんにとって嫌であれば嫌であるほど、排出量削減に関してのインセンティブは強く働くと考えています。ですから、そういったところに対して制限がかかっていない状態と、このままでいったら生産減につながってしまうかもしれないと思っている状態であれば、当然後者のほうが削減の圧力は強く働くはずですので、その辺はそういった形で削減については強いインセンティブがより働くのではないかというふうに思っております。
 それから、もう一点ご質問をいただきました製品とか技術とかサービスを通じての削減について何かお考えがありますかという点につきまして、私自身、一日本人として、そういう形で日本の製品とかサービスが海外での削減に貢献にしてほしいなと思うところがあるので、いろいろ検討してはいますけれども、なかなかすっぱりとした回答がありません。現状、私が感じている課題を3点ほど挙げて回答とさせていただきますが、1つ目は正確性、削減量の算定の正確性の問題です。これは例えばある製品で、オオツキショウジに排出量の削減が起きましたということを言おうとしたら、ではそもそもその製品が使われる前は、誰が何を使っていたのかがわからないと本当は言うことができない。しかもその製品は本当に既存の製品をリプレースしたのか。それとも似たものを買っただけなのかとか、あるいは技術に関しても似たようなことが言えます。もう一つ大事なポイントは、もしその製品が使われたとして、より効率のいい製品が使われているようだけれども、結果として馬鹿売れしてしまって、大量に売れてしまって、結局エネルギー消費が増えてしまいましたという場合であれば、削減にはつながっていないと。
 嫌な点ばかり挙げていますけれども、私が申し上げたいのは、正確にその排出量の削減にどれぐらい貢献したのか。そして、それが日本の企業、あるいは製品、あるいはサービスがどれぐらい、削減のうちの何%を日本の企業の貢献ということができるのかという算定は、遠くなれば遠くなるほど難しくなるので、その辺あまり大げさに言ってしまって、かえって海外から、いや、そんなことを言ったって、日本はそんなに削減に貢献していないじゃないかと言われるのは避けなければいけないので、その辺は非常に難しいと思っております。
 2番目は、先ほど来排出量取引制度に関しても出ている公平性の問題です。企業間で、そういう仕組みを仮に、削減に関する評価の仕組みを、例えば製品とかサービスとか技術について導入したとして、それが企業さんの競争にとって果たして本当に公平になるのかどうかというのは非常に難しい問題だと思います。どういった製品をベースラインとしてとるのか。どういう社会状況をとることに対して想定するのかといったことによって、全然その環境が違ってきてしまって、得意な状況を持つ企業さんとそうじゃないところによって大きな差が出てきてしまう。この公平性をどうやって確保するのかというのは、排出量取引制度並みに難しい問題だというふうに考えております。
 3番目は、では仮にそういった評価ができる仕組みをつくったとして、それをどういうふうにインセンティブに変換していくのか。補助金という形で変換をするのか。それとも排出量取引制度と組み合わせて、そういう製品を生産している人たちに対してはやや大目の排出枠を配ってあげるのかとか、いろいろな形が考えられると思いますが、それにしてもやはり財源であるとか、そういった問題にも直面せざるを得なくなってくるかなと思います。ですから、私自身としては、全般的な方向性としてはそういったことを検討するのは大事だというふうな認識は共有しています。ですから、現時点で今申し上げたような課題をなかなか自分の中でうまく整理ができていないので、ダイレクトにお答えするような妙案というのが出せない状況です。
 最後に、武川委員のほうから3つの政策がおよそワークしないという前提ではないというお話なのかというご質問がありましたが、私はこれは制度設計のいかんにかかわると思いますので、3つの政策がともにうまく機能するかどうかというのは、もう原理的にできないということはないと考えております。

○大塚委員長代理 どうもありがとうございました。
 では、次の質疑応答に移りたいと思います。増井委員からお願いします。

○増井委員 どうもありがとうございます。1回目、2回目と欠席させていただきまして、申し訳ございませんでした。
 今回、各団体、特に産業界の方々からこの排出量取引制度に関してご懸念されていることをいろいろコメントいただいたと私自身は思っております。そういう意味で、こういう制度をつくるに当たって、今後そういう懸念をどう払拭させていくのかということが、非常に重要になってくるのだろうと思っています。まず各産業界の団体の方々にご質問させていただきたいところなんですけれども、今現在25%、もちろんいろいろな条件はついていますけれども、25%減というのが一つ国の目標となっています。そういう状況の中で、各産業の業界のほうでこれまで自主行動計画ですとか、あるいは長期エネルギー需給見通し等で目標値が定められておりますけれども、それに加えて、こういう25%減に向けてさらなる対策の追加をお考えなのかどうかという点をお聞きしたいと思います。この委員会は排出量取引制度ということなんですけれども、若干中長期ロードマップのほうと重なってしまって申し訳ありませんけれども、そういうところをもしご検討されているのであれば教えていただきたいというのが1点目でございます。
 それと、2点目といたしまして、これまでご発表あるいは質疑の中で省エネは当然というような意見が出てまいりました。当然ということではあるんですけれども、果たしてそのインセンティブというのは一体何なのかということ。やはり金銭的なものなのか。あるいは消費者といいますか、最終的な製品を買われる方々がそういうことを意識されているかどうか、いろいろあるかと思います。そういう省エネのインセンティブというのは一体何なのかということを教えていただきたい。それとともに、こういう排出量取引制度で検討されている仕組みといいましょうか、問題点というのをどう整理されているのかというのを2点目としてお聞きしたいと思います。
 3点目なんですけれども、これまでに使用段階と製造段階等でどう切り分けるのかとお話がありました。実際、中長期ロードマップ等におきましても、太陽光発電ですとかあるいは次世代自動車、こういうものを導入して、民生側で大量にCO2を削減するという絵を描いてきているんですけれども、実際そういう対策をとる場合に、やはりかなりの負担、コストというものが生じてくるだろうということは、我々自身の計算でもオープンに示しております。使用段階も全くゼロのコストでそういう削減が実現しているというのではなくて、やはり何らかの形でお金を支払っている。また、そういう支払いというのは各メーカーさんにとっては売り上げ、利益になるわけでして、そういう利益とCO2の負担について、もう少しきちんと整理する必要があると個人的には思っております。その点についてどうお考えなのかということを、もしコメントがあれば教えていただきたいと思っております。
 あと4点目、これは鉄鋼連盟さんのほうにお聞きしたいんですけれども、ちょっと細かくなって恐縮なんですが、CO2の排出コストの負担に対して利益の値、17ページのところに経常利益がトン当たり6,400円と。それに対して排出権負担のコストが3,500円から7,000円になって、非常に極めて大きな負担であるというようなことなんですけれども、これ、粗鋼の1トン当たりではなくて、例えば仮に、いわゆる最終製品といいますか、ご発表の中では極めて高機能な製品を提供されているということで、最終的な製品、鉄鋼業さんとしての最終的な製品で見た場合に、この比率というのはどう変わってくるのか。もし数字があれば教えていただきたいと思っております。
 以上です。

○大塚委員長代理 では、明日香委員、お願いします。

○明日香委員 どうもありがとうございます。私も半分コメント、半分質問ということでお話しさせていただければと思います。
 まずコメントなんですが、やはり全体として、今この世界で経済の動きというのを認識したほうがいいと思うんですね。というのは、日経新聞を見てわかると思うんですけれども、日本企業も海外市場でつくって、売って、つくって、そこからの利益で日本企業も生きていく。その動きというのは、もう全然、我々が考えている以上に大きなものになっていて、皆さんもうおわかりだと思うんですけれども、そういう文脈の中でカーボン・リーケージなり国際競争力という話を考える必要があるかなと思います。そういう意味ではエネルギーコスト制約なり、資源制約、どこで売るか、誰に対して売るかというほうが炭素制約よりも、経営判断としては全然大きいのかなと私は思っていまして、多分経営者の方もほとんどはそういうふうに思っているのかなとは思います。
 というのがコメントなんですけれども、もう一つ、排出量取引制度でも何でもそうなんですけれども、いろいろ課題はあると思います。でも、それは私が思うには、税金は不公平だから、税金は要らないというようなことと同じだと思うんですね。やはり何らか多分みんな公平だと思っている。税金は公平だと思っている人は、日本中誰もいないと思うんですけれども、税金は多分取らなければいけない、そういう状況だと。先ほどゆっくりやればいいというお話があったと思うんですけれども、20年までに何十%減らさなければいけない。50年までに50%減らさなければいけない。2100年までには90%、100%減らさなければいけない。そういうことで、多分ゆっくりやっている時間はないのかなとは思います。
 あと、これは質問なんですけれども、仮にキャップがかかったという状況で、トレードが不要だと思う企業なり業界というのはあるのかなと思います。だから、ちょっとおっしゃることが矛盾しているところがあるかなと私は思いまして、キャップが嫌いなのか、トレードが嫌いなのか。トレードならこう問題があるという話はあるんですけれども、では本当にキャップがかかったときに、キャップはもうかかっているんですけれども、25%でかかっていますし、企業だけではなくて、国民全体として頑張らなければいけないと思うんですけれども、そのときにトレードは不要だとおっしゃれるのか。もしそのときに、そういうことを言ったら、もしかしたらより効率的な削減方法を無視しているということで、もしかしたら株主に背任行為で訴えられるんじゃないのかなと僕は思ったりもしてしまいますし、先ほど愛情のあるバンバーグという話があったと思うんですけれども、愛情のあるハンバーグしか食べてはいけないというふうなことは、普通はどうかなとちょっと思いました。
 競争力の話です。先ほど一般論はやめようということがあったと思います。私もまさにそこは賛成なので、なるべく細かくどの業界はこういう制度を入れたときに、どれだけ負担がかかると。それによって国際競争力はどれだけ下がると。恐らく競争率でも生産者のリーケージ、ないしは海外で市場を失うのか。国内での輸入が増えるのかいろいろありまして、それも業界ごとにかなり細かく調べているつもりです。なので、多分こちら制度設計を推進しているほうも、一般論ではない議論をだんだんしていると思っていますので、それに対して具体的な議論をしていただけるといいかなと思いました。
 あと、もう一つの私、鉄鋼連盟、CDQのPDDを書いたことがありますし、よく鉄鋼業界さんが一生懸命頑張っていることはわかると思います。ですが、よく議論の中で、排出制約なしはこれだけで、排出制約あり、この世界ではこのぐらいだという表があったと思うんですけれども、多分京都議定書に入っているとか、そういうことと排出制約なしというのは多分違うことだと思うんですね。実際、山岸さんがおっしゃったように、排出制約なくても企業は絶対やらなければいけないというふうに、どこの国にも、どこの企業も思っていますので、結果的に排出制約がかかっていると同じようなことだと思います。ご存じのように、中国において鉄鋼業の生産調整というのは物すごいものが今ありますので、排出制約がない、京都議定書に入っていないから云々というのはちょっと違うのかなとは思いました。
 あと、これも質問なんですけれども、鉄鋼分野に対する質問なんですけれども、いろいろ技術的なポテンシャルが、削減ポテンシャルは難しいというお話はよく聞くんですが、多分それも鉄鋼会社によって違うのかなと思うんです。というのは、高炉なり、コークス炉のリプレースを考えている。リプレースしなければいけない製鉄所があって、そこは当然、その電炉なりいろいろなオプションを考えているのかなとは思います。なので、そこら辺は実際、日本の鉄鋼業界はそういうオプションに関してはどう考えているのか。もし電炉というのがやはり問題であるのだったら、どこら辺が課題として、コストなのかシステムなのか。そこら辺がどういう問題があるのかというのを教えていただければと思います。
 とりあえず、私も空気を見てここら辺でやめたいと思います。

○大塚委員長代理 末吉委員が早かったと思いますので、末吉委員、お願いします。

○末吉委員 どうも6名の方、ご説明ありがとうございました。大変よく勉強になりました。
 私なりにお聞きしていると、業界、産業界の方の共通したおっしゃり方は、こうじゃないかと受け止めました。我々はこれまでの努力で世界最高水準の技術を持っているんだと。環境、省エネでは世界トップだと。そのトップの技術が生み出すエコプロダクトで、経済や社会全体のCO2を減らすのに大いに貢献していると。カーボンバランスのお話だと思います。これは大変結構なお話だと受け止めました。また、さらに最高水準の技術を今後も維持していくんだと、非常に力強いお話を聞くと大変うれしく思います。ただ、キャップ&トレードのお話になると、一転して地球全体で減らなければ意味がないんだとか、規制は困る。コストも嫌だ。国際競争力を弱めてほしくない。分配の不公平をどうやって解決するんだ。さまざまな問題点や難しさを強く訴えておられます。これも皆様のお立場からはそうかなとは思っております。
 ただ、私は今金融という小さな窓口で世界の動きを見ておりますと、こんなことを強く感じているんですね。世界は大きく動いている。大きく変わり始めたと。しかも熾烈な競争が始まったんだと。ですから、例えばこれはドイツの銀行が発表しているんですけれども、去年10月から今年1月までのわずか4カ月間で、世界で154本の政策が発表になっているそうです。すごいですね。4カ月間で154本の政策が発表になっている。当然、規制もいろいろ打ち出されていますし、温暖化の規制の特徴はグローバル化ですよね。自分たちも規制をやるけれども、世界にも押しつけるということであります。それから、当然お金も動いています。これはパブリックなお金と同時に、プライベートな投資のお金も巨額に動き始めております。消費者もグリーン消費者に変わろうとしております。金融も変わります。あるいは年金基金だって、投資の基準を変え始めました。つまり、世界は物すごい勢いでダイナミックに動いているわけです。そういった中で、一体全体、日本の産業のダイナミズムはどこへ行くのだろうということを私は大変心配しております。
 そこで6人の方に1問ずつ簡単な質問をさせてください、せっかくの機会でございますから。
 まず山田さんなんですけれども、新聞報道を見ていると、鉄鉱石とか原料炭の値上がりで大変苦しんでおられて、私も一体どうなることなのかなと心配しておりますけれども、一方で、世界や日本が今取り組もうとしているのは、CO2排出にコストをかけて、それを社会や経済全体のいわばメカニズムの中でどうやってみんなに分担をしていこうかという、そういう大きな流れが始まったと思うんですよね。つまり、CO2コストを経済の中に取り組んでいくという話が始まっています。とすれば、例えば鉄鋼業界で言うと、そういった海外の原料などの資源の高騰のコストアップと、長期にCO2コストのアップと二面作戦で企業を襲っているわけですけれども、この2種類のコストは一体どういう具合のバランスでお考えになっているのか。目先の原料炭のコストのほうを優先するのか、それとも長期的なCO2コストだって吸収しなければいけないんだと。どういう具合のバランスでお考えになっているのか教えてください。
 それから、名尾さんですけれども、キャップ&トレードを導入する前提に、静態的に物を見ているんじゃないかというようなお話があったかと思いますけれども、実は私は全く逆に見ております。非常に大きなダイナミックな、もっと言えば想像を超える変化がある中で、一体全体日本の自動車業界ってどうなるんだろうと。EUだって非常に厳しい規制を出しております。アメリカだって規制を出し始めております。競争条件が大きく変わる中で、日本の今までの比較優位性はどうやって維持できるのか。その辺を少し教えていただきたいと思います。
 それから、電機の実平さんですけれども、この電機業界も非常に温暖化が競争を激化させているというふうに私は見ておりますけれども、資料の中にあった、日本のシェアが、どんどん世界的シェアが下がって、これは皆さんだけではなくて恐らく日本国全体が大きな心配をして見ているんだろうと思いますけれども、世界はグリーンエネルギー経済へ向けた大きな競争が始まっています。そういった中で、日本の電機業界というのはどういったような競争を目指そうとされているのか。それを教えていただきたいと思います。
 それから、同友会の浦野さんですけれども、国民を巻き込む重要性をおっしゃいました。私は全く同感であります。そこで、国民との対話のあり方、特に国民と産業界の温暖化に対する対話のあり方で教えてください。時折、全国紙の一面広告で、産業界の業界の名前で広告が出ます。それを読んでおりますと、日本の家計に、消費者に、皆さん、大変だぞと。このままいくとすごく負担がかかるぞと、こういうようなことをおっしゃっているように見えます。でも、一方で同じ新聞に、個別企業がこれからエコだと、グリーンだと、この商品を買いませんかという個別商品の宣伝を一杯されております。でも、その宣伝の中には、消費者の懐具合を心配する話は一向に出てまいりません。こういった2つの流れを見ていますと、産業界と国民との、特に消費者の対話というのは、一体軸はどこに置くべきなのかというのが私にはよくわかりません。多分消費者も混乱しているんではないかと思います。ぜひいろいろな提言をされている同友会のこの国民との対話のあり方についてのお考えをお聞かせください。
 それから、連合の逢見さんですけれども、お話をお伺いすると、2万5,000の組合と680万の組合員がおられるそうですが、まさに日本の縮図ですよね。としますと、温暖化が進むとさまざま規制が出てくるし、経済が変わります。その中でメリットを受ける。そこに期待する分野と、そうでない分野とが混在していると思います。まさに日本国が抱える問題が連合の中に起きているのではないかなと外から想像するんですけれども、連合の中でそういった立場や意見の違いをどういう具合に調整されているのか。どういう理念をお持ちなのか、もしできましたら教えてください。
 最後は、WWFの山岸さんですけれども、キャップ&トレードは世界でさまざまな流れが始まっています。私は、規制を受ける側の方の立場もそうですけれども、一体ここで生まれるマーケットに参加する、マーケットの参加者の利便性は何だろうかというようなことを絶えず考えます。としますと、商品性のあり方、手続のあり方、あるいは国際的なこういう炭素市場のリーケージを見ますと、一体日本の産業界の多くがその利用者になるであろうキャップ&トレードの利便性というのは何をベースに考えるべきかといったことをぜひ教えてください。
 私は産業界の詳しい話は全く存じませんけれども、そのかわりのマクロの点からご意見を伺えるチャンスだと思って、いろいろ質問いたしました。どうもありがとうございました。

○大塚委員長代理 ちょっと大変私の不手際で申し訳ないのですけれども、少し延長する可能性が出てまいりましたので、申し訳ございません。
 では笹之内委員、お願いします。

○山田氏 ちょっともう答えさせていただいていいですか。自分の。あまりにも多過ぎるので。

○大塚委員長代理 早くお帰りになりたいですか。

○山田氏 いや、そうじゃなくて、帰りたいんじゃなくて、あまりにも質問が多いので、何の質問だったかわからなくなっちゃう。

○大塚委員長代理 いいですか。ではそこで切らせていただきます。では山田さんから。

○山田氏 最初にちょっと誤解があるようなので申し上げたいんですけれども、産業界はというと違うかもしれないんですが、少なくとも私どもは規制に反対しているわけではないんですよ。規制に反対しているわけではなくて、合理的な規制かどうかということを言っているだけで、技術的な裏づけがあってやらないなんてことは、普通はないわけですね。あるいは経済合理性が全くなければできないということはあります。あるいは、国民負担レベルが妥当なのかどうか。あるいは国際競争という観点で見たときに、本当に競争力が維持できるのか。そういうことを言っているわけで、そういうものが保証された規制を別に反対しているわけでは、保証されたというか、それが担保できるものを反対しているわけではない。ただ、キャップ&トレードという仕組みが、いわゆる技術革新だとか削減を促進するのかというのは、少なくとも日本の主要産業、あるいは鉄鋼業においては当てはまらないということを言っているだけで、規制を嫌だとか言っているわけではありません。我々は最先端の技術を最大限入れる。それをどうやってやるかということを考えているということを、最初に申し上げたいと思います。
 それで、まず増井委員ですけれども、追加的な対策等と言われたのかな。ちょっと趣旨がよくわかりませんでしたけれども、我々は最先端の技術を最大限導入するということで、国環研が言われた470万トンというような数字も含めて、当然やっていこうというふうに考えているということに加えまして、その次はやはり革新的な技術開発ですから、水素による還元、そういったものをどうやってやっていくのかというのが重要だというふうに思っています。
 それと2点目ですけれども、インセンティブという話がありました。省エネ等であれば、当然インセンティブがあります。それと消費者の意識、あるいはユーザーの意識というのは当然変わってきています。したがって、そういった要求に応えていくという意味でも、当然インセンティブはあります。
 それともう一つ、やはり日本の産業が重要なのは技術の先進性といいますか、やはり技術力で世界に勝っていく。この気持ちが私は大事だと思います。今すぐでは、例えばさっき水素による還元というのは経済性は当然ありません。ありませんけれども、それをまさにやっていくということが、日本の製造業の強さであろうというふうに思います。そういった意味でのインセンティブということが十分にあるのではないかなというふうに思います。
 それと、対策することによって利益があるじゃないかという意味だったかもしれません。鉄の場合には、利益云々というのは、最終的に高機能材が爆発的に売れるということがあれば、当然あり得ますけれども、利益があるからやっているということでは必ずしもないのかなというふうに思います。
 それと、増産のオフセットのための負担というのは、これは粗鋼ベースであっても、製品は大体歩どまりをかければ90%強ぐらいなので、負担のほうも利益のほうもほとんど変わらないというふうに思います。
 それと、明日香委員ですけれども、これはどういう質問だ。キャップとトレードとどちらが嫌なのかという趣旨のあれでしたか。先ほど来言っているとおり、キャップ&トレードをするかどうかという話を別にすれば、ある削減目標があると、それが規制であっても何でも、あるということを別に必要でないということを言っているわけではありませんので、それが本当に妥当なものかどうかということが大事だというふうに思います。
 それと、排出権を買ったほうが効率的にできるじゃないかと。それはある目標を達成するために、自らやるよりも買ったほうが安いということはあると思います。ただ、それは何の意味があるんですかということを言っているだけで、国が目標達成するために排出権を買ってくる。それはそれで一つの考え方だと思いますけれども、個別企業が合理的な目標を達成できないときにどうするかということは、もちろん約束した以上あるかもしれませんが、排出権を買ってきて何かするということが、自らの削減、あるいは日本、あるいは世界全体の削減ということに意味があるのかどうかということが、私は問題だと思います。
 あと、京都議定書に参加しているかどうかで排出制約が違うはずだという話については、違うのではないかという趣旨だったと思います。あのグラフで表しているのは、単に京都議定書に入っているかどうかということを表しているだけですから、それしか言っていません。日本の場合にはそれ以上負担になって、当然、日本のほうが負担になっています。なぜかというと、限界削減費用が高いわけですね。削減余地がない中で、さらに削減しようとしているわけですから、日本のほうが負担が高いということになります。
 末吉委員の意見は何を言えばよかったんですか。世界はどんどん変化しているという話でした。鉄鋼業の世界においては、中国の変化というのは激しいと思いますけれども、日本の変化も激しいんではないかなというふうに思います。水素による還元であるとか、そういったことに我々取り組もうと、5年前、10年前には全く思っていなかったと思います。そういうところが進んできました。あるいは省エネ技術についても、100%、主要な技術は日本で開発したものはすべて入れてきていますし、それを中国等にも移転していくと。今日もご説明しましたが、APP、あるいは日中APPワールドスチール、そのレベルで国際的な技術移転をちゃんとやろうと。そのために必要な技術を共有し、あるいはどちらが効率がいいとか、指標が今までなかったものですから、それを公平な指標を共有化し、具体的な技術移転を進める。そういう動きがまさにこの5年間で起きてきました。それを指導してきたのが日本だと思います。そういう意味で私は最も変化していると思います。
 それと、EUはもっと変わっているんだみたいなことだったと思いますが、EUで排出量取引をやっている事実はもちろんあると思います。それが、本当に意味があるかどうかというのは、私は正直言ってわかりません。たまたまリーマンショックがあったということもありますけれども、大幅な余剰、少なくとも製造業、鉄鋼業は大幅なクレジット、余剰クレジットを獲得しています。だから何の意味があるのかなと、私にはよくわかりません。
 それと原料炭が上がっている。それとの関係でCO2の価格づけみたいな話だったと思います。原料炭は世界で上がっています。鉄鋼石も世界で上がっています。そこは同じ競争条件なわけですね。排出規制は、同じ競争条件になれば一つの合理性はあると思いますけれども、今の実態はそうなっていない。そういった意味で同一にはすることはできないというふうに思います。
 以上です。

○大塚委員長代理 ありがとうございました。経済同友会の浦野様が4時にお帰りになるということなので、恐れ入りますが、浦野様、先にお願いします。

○浦野氏 すみません。それでまず増井さんがおっしゃった中で、25%の対策ですね。これ、各企業、聞いている限り、現時点で25%へのロードマップができている企業というのは、私は聞いたことがありません。皆さん方、25への努力をどういう形でやっていくかというのは、各企業の中で、今議論しているところだと思いますけれども、明快な形でうちはロードマップがあるよと言っているところはないと思います。
 そういう中で、何がインセンティブになっているんだということでありますけれども、これは今の時点でいけば、ほとんどの企業がやはり科学者の良心から聞こえてくる声に対して、真摯に応えようといったところが間違いなく一つのインセンティブになっているでしょう。その上で、企業ですから、それがやはり最終的には利益につながるということを考えております。CO2を今まで以上に出しっぱなしの中で成長していこうなんて考えている企業は、今どこもありません。やはりそのことが最終的にお客様からそっぽを向かれるということも含めて、やはり通常の人としての良心から出るインセンティブと、それをさらに儲けの機会にしなくてはいけないという両方のインセンティブで回っていると信じております。
 それから、末吉さんのお話の中で、国民と産業界の対話の問題です。まず一つ誤解のないようにあれなんですけれども、同友会は産業団体の連合ではないものですから、新聞広告で、産業界で出しているあれには一切かかわっていないということが一つございます。
 そうは言いながらも、基本スタンスがどこにあるかというと、今同友会としては成長と、CO2削減ということが成長に結びつく。その道筋を見つけようということで一生懸命やっておりますので、当面もしかしたら、生活者の負担が上がることもあるかもしれないけれども、最終的な姿としては生活者も含めて、このことが日本の成長につながっていくんだという道筋を見つけようというふうにしております。その中で一番大事な問題はやはり、生活者の方々の部分が減らないどころか4割も増えてしまったという現実。私たち企業人であると同時に、間違いなく一生活者なわけですね。そして一生活者として企業の中で考えると、企業が生活者に対してやるようなことを一杯今までもやってきたわけですよ。例えば住宅の取得についてだってそうだし、健康保険のことだってそうだし、そういうふうに考えていくと、このCO2削減ということについて企業は社員と生活者としては何も向き合ってきていないんですね。ほとんどの企業が今まで。若干、環境家計簿をつけましょうとかいうような運動を始めた企業もありますけれども、基本的には向き合っていない。ここを向き合うと随分変わるんではないかと。国民の大多数は企業に勤めているわけですから、中小の方も含めて。
 そういう意味で、社員と、生活者という立場で企業がこのCO2の問題を含めて、対応を始めることこそ、同友会にとって一番大きな課題だろうというふうに思っております。

○大塚委員長代理 ありがとうございました。では自動車工業会の名尾様、お願いします。

○名尾氏 まず増井委員のおっしゃった追加対策云々なんですけれども、私の記憶が正しければ、自動車の生産部門の生産の数字というのはロードマップの中になかったんじゃないかと思います。いずれにしても、先ほど来申し上げましたように、今後とも省エネの努力を続けていくというのがお答えでございます。
 それから、省エネのインセンティブの話がありましたが、何しろ競争に勝っていくために、コスト削減というのは至上命題ですから、当然やらなければいけない。では、その後ろから後押しをするのに、確かに何か省エネしたら、それがキャップ&トレードによって経済的な利益をいただけるということになれば、それはインセンティブとして追加的な部分があるかもしれませんけれども、ただし、先ほど私が申し上げたいろいろな問題があるわけですね。ほかの委員の方もご指摘がありましたけれども、例えば生産が減って、本来市場から退出しなければいけないような企業が、そういったインセンティブをもらうことによって市場からの退出をしないでも済むとか、それが遅れる。こういった経済のダイナミズム、まさに市場メカニズムのよさを損なうことについてどう考えるかという根本問題をぜひ委員の先生方にはお考えいただきたいと思います。
 それから、明日香委員が競争力についてはいろいろ調べているというお話がございました。私が申し上げたいのは、行政が本当に一つ一つの企業の実態の中に分け入って、この部分が省エネ努力による改善分だとか、この部分が生産減による減少だとか、本当にそういうことができるでしょうかということを聞きたいんです。かつて、学生時代にはソ連には九十幾つの省があったらしいです。重化学工業省どころか、輸送機械省とか、鉄鋼省とか、そういったところがみんな計画経済をやっていたわけですね。まさかそういうことをお考えになっているんではないでしょうねと。だけれども、制度設計いかんによっては、そういった道につながりかねないような問題を含んでいるんじゃないか。
 先ほど末吉先生が、自分たちはダイナミズムでとらえていて静態的にはとらえていないとおっしゃいましたけれども、私が申し上げたかったのは、この排出権取引を論ずるときに、キャップをかけるときに、企業の活動というものに対して、そんなに数字は変わらないんだよと。だから過去の実績から数字を計算すれば合理的な割り当てができますよと、そういう考え方に立っているとすれば、実態に即していないということを申し上げたかったんです。おっしゃるように、ダイナミズム、これはむしろ私どもがつくっている製品の世界で、いわゆる電気自動車だとか、プラグイン・ハイブリッド、それから燃料電池車、いろいろなものが今出ております。
 今日の本題ではないので、あまり時間はかけたくありませんけれども、各企業は10年後どの車がマーケットの勝者になるかという確信を持てていないんです。持てないけれども、何しろやらなければ、この地球温暖化の世界で生き残っていけない。よく申し上げますけれども、富士山に登るときに、ふもとに道が10個ぐらいある。登っていかなくてはいけないけれども、中腹には雲がかかっていて、行ったら、実はそこから谷底に転落するような世界が待ち受けているかもしれない。だけれどもやらざるを得ない。そういった極めてリスクの高い中で競争をやっております。
 ただ、これは生産部門の話ではなくてつくった製品の話ですので、あまりこれ以上申し上げることは差し控えたいと思います。
 (浦野氏退室)

○大塚委員長代理 ありがとうございました。では電機・電子温暖化対策連絡会の実平さん、お願いします。

○実平氏 増井委員のご質問からでありますけれども、25%減について対策を考えているかというふうなところでありますけれども、電機・電子500社ぐらいということでありまして、これは傾向として増えていくということはつかんでいるんですが、対策までは当然ながら考えていなくて、これはちょっと申し上げたかどうかわかりません。私が所属しています東芝の例としてちょっとお答えしたいと思いますけれども、90年比25%ということは、2005年比で30%減ということです。これは、対策を考えているというよりは、こういうふうに伸びていくだろうと、生産が伸びていくだろうという仮定をして、その後、10%やる場合、20%やる場合、30%やる場合というのはシミュレーションはしています。シミュレーションはしました。ざっくりと申し上げますと、あらゆる対策の、今考える総動員で、これは言わないほうがいいな。幾らかまではいけそうだということが見つかっているというところです。相当程度、30%というのは、手は全然ありません。中身については相当程度のお金が必要だな。投資が必要だなというふうなシミュレーションはしていますということを申し上げておきます。
 それから、明日香委員が言われたところで、キャップ&トレードのキャップがかかった場合、トレードをなくしてできるのか否かということのお話であります。これは当然キャップのかかり方によって全然違ってくるわけでありますけれども、基本的には自助努力で頑張りたいというのが基本線であります。ただ、本当は欲しいことは欲しいんですよ。我々の限界削減費用というのは、トン当たり数万円にはいくわけでありまして、今市場から買ってくれば、2,000円ぐらいで買えるわけなんで、買いたいというふうに思いますけれども、ただこの排出量取引については実態が残らないということがあって、我々の企業競争力には反映されないということですね。使い捨てというんですか。毎年買い続けなければいけない。こういうふうな非常にうまくないことなので、できれば手を出したくない。頑張りたいというところのコメントです。
 それから、末吉委員のどのような競争を目指しているのかということでありますけれども、これシェアが落ちてなかなか難しいし、世の中かなりいろいろな意味でコモディティ化していて、コモディティ化すると、賃金が安いところとかそういうところで負けちゃうということでありますし、我々はちょっと難しいんでありますけれども、イノベーションで知能競争のようなところで頑張りたいなと思っていて、その部分でその後はあるイノベーティブな商品を開発した後、その中身についてはある程度つくり方も含めて、ブラックボックス化するとか、その方向でないと駄目なので、今までの失敗例がそうなんですね。韓国等々で、こんなに早く韓国の皆さんがついていらっしゃるとは思わなかったんですが、あっという間にころっと負けちゃって、全然競争逆転をしちゃった。そんなに昔ではないわけでありますけれどもね。そういうことがあるので、どうできるかわかりませんけれども、知能競争というところで、もう知能もなくなっているのかもしれませんけれども、頑張りたいと思います。

○大塚委員長代理 すみません。有村委員がもうお帰りにならないとまずいということですので、途中でちょっと複雑になりますが、有村委員、ご質問お願いします。

○有村委員 6団体いろいろご発表ありがとうございました。まさに日本の産業が移転して、日本国内を出て、どこか外国で増えているというだけだったら全く意味がないというところは私も共有しますし、それから製品のライフサイクルとかそういった視点で評価していくということの重要性というのも非常に勉強になって、それが実際、どういうふうに制度設計とかに反映できるのかなというのは非常に重要な視点だと。
 それから多重規制の問題点ですね。これはやはり3つ、ポリシーミックスというのはすごく、例えば排出量取引で大型のところはカバーするけれども、そうでない家庭部門を環境税でやるとかというのは制度の補完性があると思うんですけれども、それに今度、全量買取制度が入ってくるとそれの意味は何なんだろうという視点というのも、非常に多分重要な視点で我々持ち続けなければならないだろうと思います。
 省エネを日本の企業さんがずってされてきて、まさにそれが日本の企業の特徴だという話はもう皆さんわかっている話なんですけれども、多分我々がここで議論しているのは、それプラス低炭素社会というのがもう一つ必要になってくるので、あと最後、そこのインフラづくりをしていこうと。そのインフラの一つの重要な部分が、多分キャップ&トレードとなり得る制度で、それで今の技術ですぐ何とかという視点だけではなくて、長期的にこのインフラとしてこれを社会の中に根づかせて、また将来的にそういった制度を持っていくところで生まれてくるイノベーションとか、そういったものを見ながら考えていこうという、そういった合理的な視点も必要なんだろうと。短期的にできないことを無理に削減、過度なキャップをつけるということの問題点とかを意識しながら制度をつくっていくことは大事だと思うんですね。
 それで、自工会の名尾さんからすごく、過去の排出量に基づいた制度だと、非常に資本主義の原理に反するというご意見があったんですけれども、そういった意味では、WWFの本日の資料でベンチマーク方式などというのが提案されていまして、例えばベンチマーク方式をアップデートしていくというような考え方をすれば、そういったところはむしろある程度対処できるのかなといったような個別な案、本当に時間があればそれについてご意見がもし自工会からいただければと思います。
 それから、電機・電子の方で、韓国は実は京都議定書の中に入っていない。そこで競争しているという話があったんですけれども、そういった環境の中で、例えばヨーロッパとかですと国境調整措置という議論があって、アメリカでも法案の中に常に出てくるんですね。要するに炭素制約をやっていない国から製品が入ってくる場合は、何かそこで炭素税みたいなものを先進国で課してしまおうとか、あるいは輸出するときに、炭素制約がない国に輸出する場合には、その分輸出者に割り戻しをしてあげようというような考え方があるんですけれども、その辺に関して何かお考えがあったら教えていただければと思います。

○大塚委員長代理 まとめて笹之内委員、お願いします。

○笹之内委員 時間がないものですから、コメントは何もなしに質問だけしようと思います。ただ、事務局、これは1ラウンドこういうヒアリングが終わったら、委員だけで議論する場はまたあるんですか。

○大塚委員長代理 はい。

○笹之内委員 ですから個々の私の意見を言うのは、今日はやめまして質問だけです。
 1つはWWFの山岸さんにお聞きしたいんですけれども、スライドの5、ここに棒グラフ、キャップ設定の重要性というのがあって、CO2の削減分というところまでは何となくわかるんですけれども、その後、ETS対象部門65%、それから裾きり後の60%、これずっとあるわけですけれども、この理由をまず教えていただきたいのと、その数字とスライドの8ページですか、これのカバー率の一貫性があるのかどうかという話です。5と8ですね。
 それともう一点お聞きしたいのは、これは定性的な話で申し訳ないんですけれども、スライドの9で原単位の限度を守っても排出量が増加するリスクというのは、それはもちろんリスクとしてはありますけれども、原単位が国際的にトップの人が活動量が増えたために、何らかのものを買わないかんというそういうことに対してどういうご意見かというのをお聞きしたい。
 それから、これは鉄と自動車と電機・電子の方にお聞きしたいんですけれども、ちょっとどなたか私覚えていないんですが、前回のヒアリングで、排出量取引をやると数%しか需要が、いわゆる出荷量が落ちる影響があるというのがあったんですけれども、産業界の実態から見て、売り上げが数%落ちるということは、どのぐらい深刻なのかというのをちょっとお聞きしたいんです。
 以上です。

○大塚委員長代理 ではお答えの方は先ほどの続きで、今のお二人のを含めて、連合会の逢見様から山岸さん方へいって、それからまた……

○逢見氏 私は末吉委員からの質問に答えればいいのかなと思いますが。
 連合の中の立場や意見の違いをどう調整しているのかということだと思います。まず、基本的にはこの温暖化問題については国際的な組合の議論でもやっております。大体共通した認識がありまして、科学者からの指摘、この地球温暖化が人為的な原因であるということを受け止めて、何とか人間の力でCO2を削減して、2度以内の温度上昇に抑えようという部分は共通しています。そのときに先進国が率先してやらなければいけない課題もあるし、新興国、途上国にも努力してもらいたい。これも共通です。それを今度日本に持ち帰ったときに、一つは産業構造が変わっていく中で、グリーンジョブを増やしていこうということで、そのためのグリーン化には政府もいろいろな政策的な支援をしてもらいたい。これも共通しています。ただ、もう一つやはり既存の産業の中で、この産業構造転換で失われる雇用もあるだろうと。失われる雇用については、それを放置するのではなくて、職業訓練とか新たな雇用分野への移転ということに時間をかけて、公正な移行をしていく。そのためにやはりソフトランディングも必要だし、そのためのコストを、自己責任だけではいけないということで、そうした公正な移行のための時間と費用をきちんと見ていくということで、雇用がこれを理由にして、失われる雇用は当然出てくるわけですが、しかし、失われる雇用を失ったままにすべきではないということで、そこは一致しています。
 それぞれ個別に見ると、自分たちが抱えている産業がこういうキャップ&トレードでどれぐらいの影響を受けるかということの温度差はありますから、やはり影響を受けるところのほうが非常に強い主張をしてきますけれども、そこはみんなで共有して合意をつくるということでやっておりまして、そんなに中へ行ったときに、立場の違いはあるけれども、しかし意見が大幅に違うということにはなっておりません。

○大塚委員長代理 では、WWFの山岸様、お願いします。

○山岸氏 私からは末吉委員にいただいたご質問と、笹之内委員にいただいたご質問それぞれについてお答えしたいと思います。
 では、最初に、末吉委員からいただきました日本の企業さんにとっての排出量取引制度の利便性とは何ぞやというご質問に対しては、3点に分けてお話をしたいと思います。すごく短くいきますけれども、1点目はやはりルールを徐々に共通化していくということが利便性につながると、これは別の分野の環境政策において、例えばEUのリーチであるとか、あるいはアメリカ国内の話ですけれども、カリフォルニア州における自動車規制の話というのがやがてはスタンダードになっていったように、やはりあるところでの規制と別のところでの規制があまりにも違い過ぎるとやはり不便なところが出てくるので、そういった意味ではルールを共通化していく努力は必要だと思います。
 もう一つは透明性、特に価格の透明性が非常に大事だと思っておりまして、取引をしようとしたときに、どのぐらいの価格が妥当なのかどうかということが、一般の企業さんにとっても利用可能でないとその市場というのはなかなかうまく機能していかないのではないか。適切な価格というものがしっかりと市場の中で発見されていくことを確保するような仕組みが重要だと思います。
 3番目は信頼性です。つい先日ですけれども、つい先日というほど直近ではないですが、EUでも排出枠の登録簿に関連したフィッシング詐欺がありました。そういったような問題が発生すると、やはり制度全体に対する信頼性が落ちますので、当然そういう想像できるような詐欺行為であるとか、そういったものに対する対処、あるいは別のところでは、EUで言うところの付加価値税、日本で言ったら消費税みたいなものでしょうけれども、を使った詐欺みたいなものもありまして、そういったものに対する対応をしっかりと考えておいて、信頼性ができる仕組みなんだということを確保することが大事だというふうに思います。
 ちょっとぱっと思いついたのが以上の3点です。
 笹之内委員からいただきましたスライドに関する最初のご質問、スライドでいうと5とそれから8に整合性があるのかというところですが、具体的にどのように出しているのか。ちょっと早口になりますがご説明しますと、CO2の排出量全体のうち過去5年間で排出量取引制度の対象となることができるような部分、具体的に言いますとエネルギー転換部門と産業部門と工業プロセスが占めるCO2全体の排出量に占める割合を、過去5年間で平均してみると大体65%だったと。その65%を、ではCO2全体の中で排出量取引制度が受け持つ部門としましょうというのがETS対象部門というところのCO2全体の65%と推定というところなんですね。これからさらに下の裾きり後のETS対象部門というのは、これはそこからさらに削るために、気候ネットワークさんが省エネ法のデータを情報開示請求で出しておられるデータを使って、さらに排出量取引制度で対象とすることができるような事業所、つまり小さな事業所は多分、排出量取引制度では対処できないので、もっとありていに言えば中小企業を切った後という、制度対象外とした場合、どれぐらいがカバーできるかということをパーセンテージで、過去のデータですけれども出して、それを見たら大体60%ぐらいだろうというふうな推計を立てて出しているということです。
 ですから、この5ページのスライドと8ページのスライドで対応があるかといいますと、その下の直接というところで約66%とありますが、これはちょっとすみません。この年の直近の数字を使っていて、2008年の数字を使っているんですけれども、この数字と5ページのETS対象部門のところのCO2全体の65%と推定というところが、本来対応しているはずです。ただ、8ページのほうは2008年という単年度の数字を使っているのに対して、5ページのほうは5年間の過去の平均から大体これぐらいがETS対象部門のCO2全体に占める割合であろうと。これが将来も続くと仮定しての考え方をとっています。ちょっとややこしい話なので、あまりきちんとわかりやすくお答えできたかどうか不安なんですけれども、とりあえずそういうような形です。
 あと6ページの原単位の話のところで、国際的にトップの企業さんがクレジットを買ってこなければいけないという状況が果たしてフェアなのかどうかというご質問ですけれども、これはこの問題、どちらかというと場合によるというふうに考えます。というのは、ほかの企業さんに対してどれぐらいが求められているか。全体として国際的にトップの企業さんがクレジットを買ってこなければならないほどキャップが厳しいという状況は、ほかの企業さんにとっても同様であれば、それは仕方がないことだと思います。要するに逆に言うと、国際的にトップの企業さんであるからこそ、自分のところで削減するのではなくて、海外からクレジットを買ってきて、約束を達成するということが許されるという考え方だと思います。これはどれぐらい排出量取引制度云々とか原単位とかという問題よりも、むしろキャップのレベルがどの水準なのかということのほうに問題があるというふうに考えますので、どちらかというと、フェアかどうかというよりは、他の企業さんが、それとも他の業種さんであるとか、その他の部分があまりにもゆるゆるなキャップである状況下でこういう状態になっているんだと、そういうおっしゃったような状況になっているんだとすれば、それはフェアではないですけれども、全体的に非常に厳しい状況の中であれば、それは仕方がないというか、目標を達成するという観点からすれば仕方がないことだというふうに考えます。

○大塚委員長代理 どうぞ。時間がないので簡単にお願いします。

○笹之内委員 そうすると、そういうことをきちんとやる方法ってお考えですか。

○山岸氏 そういうことをきちんとやるというのは。

○笹之内委員 そういうことが起こらないように、他の業界も他社もトップではない人もきつかったら、そういう評価基準というのは作成可能だと思われるんですか。

○山岸氏 完璧なものは多分つくれないですけれども、ベンチマーク方式みたいな形で公平性を確保する努力はできると思います。そうじゃないと、その制度の公平性を判断するときに、一つ重要なポイントは排出量取引制度の中での公平性の確保が難しいからといって、ほかの制度で公平性が確保できるという想定もそれは間違っているということです。多分ほかの制度の中で公平だと思っていても、実は一部の企業さんにとっては非常に不公平な形であることも確かなので、排出量取引制度に対して公平性が確保できるかどうかという問題は、それ単独で扱うのではなくて、ほかの制度の中だったら公平性は確保できるんでしょうかという点と一緒に考えないと意味がないというふうに思います。

○大塚委員長代理 では、先ほど有村委員からのご質問の自工会さんと、それから電機・電子温暖化対策連絡会さんにございますので、お願いします。

○名尾氏 まずベンチマーク方式ですけれども、先ほど私のご説明で申しましたように、一言で自動車といいましても、軽自動車からトラックまでありますので、本当に簡単なそんなベンチマークというのは、今は思いつかないんです。

○有村委員 それで、WWFジャパンがこちらの資料の、例えば5ページなんかにちょっと興味深いご提案をされているので、それをどう思われるかということだったんですけれども、これは個別の車とか、それとも特定ということをしないでベンチマークをしようという。

○名尾氏 何ページでしょうか。

○有村委員 添付資料の……

○大塚委員長代理 参考の5ページです。

○有村委員 参考の5ページですね。ちょっと時間的に今すぐこれを見て、ご判断するというのは難しいかとは思うんですけれども、こういったものもあるので、本当に時間をかけて議論したいところ……

○名尾氏 組み立て産業の特殊性だけ申し上げておきますと、さっき申し上げたこと以外に、例えばエンジンの鋳造設備を持っている会社もあれば、ない会社もある。つまり外から買ってくる会社もある。これは会社ごとによっても違うし、工場ごとによっても違う。それから製造ラインもロボットを、例えばかつてはたくさん入れていましたけれども、自動化比率がどれぐらいなのかとか、もう千差万別なんですよね。ですから、本当にそういう中でベンチマークというものができるのかどうかということについては極めて疑問を持っております。
 それから、2番目に笹之内委員のご質問にお答えさせていただきたいと思いますが、たまたま今手元に、この間5月に発表した各社の決算の数字があるんですが、今にわかに電卓をたたいたんで間違っていないとは思いますが、売上高、本当は8社合計をすればいいんですけれども、ちょっと合計がないので、自分で今計算したんですが、トヨタ、ホンダ、日産3社の売上高35兆円、3社の純利益の合計は5,000億円。売上高純利益率は1.4%しかございません。大変厳しい競争の中で必死になって黒字を出し、雇用を維持し、国民経済に貢献しているということを申し上げます。
 それから、明日香委員からあらかじめいただいたご質問の中に、団体でやっている自主行動計画なり試行が独禁法上問題になるのではないかというご指摘があったので、ちょっとお答えさせていただきたいんですけれども、私どもが事前に各社別にCO2の排出量はこれこれということを割り当てたり、お互いに制約はし合っておりません。結果的にもし不足が生じた場合には事後的に各社のCO2の排出実績に応じて、外から買ってくる部分の負担をしましょうということだけを決めております。これは独禁法上の問題が当然あると思いましたので、あらかじめ専門家の弁護士等々とも相談して、そういうことにさせていただいております。

○大塚委員長代理 では実平様、お願いします。

○実平氏 有村委員のご質問というか、国境調整措置というお話。これ、ちょっと私初めて聞きましたので、ぜひ排出量取引制度を考えられるときに、セットで考えていただければありがたいかなというふうに思いました。
 それから、笹之内委員の売り上げ数%ダウンはどうなのという話で、自工会さんが言われましたけれども、私どもの見方で、売り上げがちょうどやはり数%落ちたんですね。今年、今年というか2009年度。それで固定費削減を4,000億ぐらいやって、営業利益はプラスにいったんですけれども、最終損益についてはスティルリメインデッドということで、かなり厳しいという認識をしております。

○大塚委員長代理 鉄鋼連盟の山田様、お願いします。

○山田氏 有村委員のお話の中でまず第1点ですが、低炭素社会のインフラづくりとして排出量取引を入れようとしているという話があったんですけれども、我々が心配するのはそのこと自身が製造業の製造基盤であるとかあるいは産業間の連携だとか、今日申し上げたようなことを破壊する可能性があるという可能性があるということを1点申し上げたいと思います。
 それと国境調整措置については、いろいろなアイデアはあろう。私は別に排出量取引がいいと思っているわけではないので、いろいろな意味での国境調整措置ということはとり得る可能性はあると思いますけれども、日本の置かれた状況において、本当にそんなことが可能なんでしょうかということをよく議論して、このことを前提に置かないと、中国から来たものに本当に課税ができるのかみたいなことというのを無視して、一般論としての国境調整措置というのは私はナンセンスだと思います。
 それと笹之内さんからの売り上げが落ちるということについては、これはもう大変な影響です。問題は、それは何のためにそんなことをしているのかということであって、温暖化のためにそれが必要なのかということについてよく考えなければいけない。あるいは国益としての国内での生産、雇用、そういったことをなくして、しかも地球全体でリーケージになってしまう。そのために落ちてもいいというのは、私には全く理解できません。
 それと3点目、これは回答しなかったのでお話しします。明日香委員からの意見ですけれども、今後の能力増強と高炉だとか電炉だとかをどう考えるのかという話です。これは当然会社によって違うと思います。何をつくるかということで変わってきます。ただ、日本の国内の需要を見ますと、30%がいわゆる土木建築等の一般的にはローグレード、高グレードのものももちろんありますけれども、ローグレードのものが多い。そういう中で何をつくるのかということで決まっていきます。例えば韓国では、韓国のヒュンダイという最大の電炉メーカーは、高炉に進出しました。彼らは高機能鋼材をつくるという点でそういうことをいたしました。それとアメリカではニューコアという、これは世界最大の電炉メーカーです。今は電炉しか持っていませんけれども、高炉の建設も検討しているという行動があります。
 以上です。

○大塚委員長代理 どうも遅くなってしまいまして、申し訳ありませんが、この辺で質疑応答を終了させていただきたい。
 ではどうぞ、明日香委員、お願いします。

○明日香委員 すみません。先ほど売り上げが数%下げるというお話。多分私が先回やった計算結果について関わっていると思うので、そこからディファイします。あれの計算というのは一番影響を受けるホットコイルで、かつ3,000円の炭素価格と排出枠価格で、全部価格に転嫁した場合の需要が1%、2%下がるという研究結果が、日本でもアメリカでもEUでもあるということです。なので、ある意味では一番影響を受けて、かつ全部価格に転嫁した場合にそれだけ需要が下がるということです。なので、多分電機・電子とか自動車というのは0.0何%でしょうし、かなりマージナルだと思います。
 申し上げたいのは、産業なり製品によって全く違います。私はそこを定量的に議論していますし、方法によってまさにおっしゃるように違います。どう排出枠を割り当てるか。無償であるか有償なのか、ベンチマークなのか全部違います。そこら辺もある程度、私の研究ペーパーもほかの方の研究ペーパーも議論していますので、そういうのをもとにもうちょっと具体的な議論ができればいいかなと思います。
 以上です。

○山田氏 今の話、非常に重要なので、ちゃんとしたデータを示していただいて、鉄鋼連盟としてお話を聞きますから、説明に来ていただきたいと思います。

○明日香委員 ネットで……

○山田氏 中身の説明をしていただかないと、そういう資料がありますとか研究がありますと言われたから。

○明日香委員 先回言ったんですが。

○大塚委員長代理 また、終わってから言っていただきましょう。
 では最後に事務局から連絡事項等がございましたら、お願いいたします。

○戸田市場メカニズム室長 大変遅くまでどうもありがとうございました。
 次回の日程でございますが、5月25日、9時から12時、ホテルグランドパレスによって、引き続き関係団体からのヒアリングとさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

○大塚委員長代理 では、以上で本日の議事を終了いたしたいと思います。
 本日はお越しいただいた団体の皆様におかれましては、大変お忙しい中、貴重なご意見をいただきまして、ありがとうございました。

午後4時33分 閉会