カーボンプライシングの活用に関する小委員会(第9回) 議事録

日  時

令和元年5月24日(金)  15 :00 ~ 18:00

場  所

航空会館 大ホール

(東京都港区新橋1-18-1 航空会館7階)

議  題

(1)第5回から第8回までの議論の概要

(2)カーボンプライシングの意義・効果及び課題等

(3)CO2排出削減と関連のある既存の制度について

配付資料

資料1   第5回から第8回までの議論の概要

資料2-1 日本経済の状況・課題とカーボンプライシングの関係について

資料2-2 日本経済の状況・課題を踏まえた改善の方向性(イメージ)

資料2-3 日本経済とカーボンプライシングの関係について(続き)(イメージ)

資料3   CO2排出削減に関連する既存の制度について(続き)

参考資料1 カーボンプライシングの活用に関する小委員会委員名簿

参考資料2 カーボンプライシングの活用に関する小委員会第8回議事概要

参考資料3 パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略(仮称)(案)

参考資料4 日本経済の状況・課題 参考資料集

参考資料5 脱炭素化に資するプロダクトイノベーション、第4次産業革命のイノベーションの具体例

参考資料6 エネルギーの使用の合理化等に関する法律に基づくベンチマーク指標の実績について

(平成29年度定期報告分)(資源エネルギー庁(平成30年6月20日))

議事録

午後3時02分 開会

鮎川市場メカニズム室長

ありがとうございます。

それでは、ただいまより第9回中央環境審議会地球環境部会カーボンプライシングの活用に関する小委員会を開催いたします。

では、まず資料の確認をさせていただきます。普段であれば参考資料はタブレットに入れておるんですが、本日はちょっとタブレットの不具合によりまして、参考資料も含めて紙で席上に配付をさせていただきます。

資料一覧、議事次第をご覧ください。

まず資料1といたしまして、第5回から第8回までの議論の概要。A3の縦長の資料でございます。資料2-1といたしまして、日本経済の状況・課題とカーボンプライシングの関係について。資料2-2といたしまして、日本経済の状況・課題を踏まえた改善の方向性(イメージ)。資料2-3といたしまして、日本経済とカーボンプライシングの関係について(続き)(イメージ)という資料でございます。資料3といたしまして、CO2排出削減に関連する既存の制度について(続き)ということで用意をさせていただいております。

以下、参考資料といたしまして、参考資料1、カーボンプライシングの活用に関する小委員会委員名簿。参考資料2といたしまして、カーボンプライシングの活用に関する小委員会第8回、前回の議事概要でございます。参考資料3といたしまして、パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略(仮称)(案)ということで、パブリックコメントのかかっているものでございます。参考資料4といたしまして、日本経済の状況・課題の参考資料集。参考資料5といたしまして、脱炭素化に資するプロダクトイノベーション、第4次産業革命のイノベーションの具体例でございます。参考資料6といたしまして、エネルギーの使用の合理化等に関する法律に基づくベンチマーク指標の実績について(平成29年度定期報告分)資源エネルギー庁さんが出されている資料でございます。

以上、資料の不足、落丁等がございましたら、お手数ですがお申しつけくださいませ。大丈夫でございましょうか。

それでは、浅野先生、以降の進行をお願いいたします。

マスコミ関係の方におかれましては、撮影はここまでとさせていただきます。それでは、よろしくお願いします。

浅野委員長

それでは、よろしくお願いいたします。

この委員会、それこそ平成に始まりまして、ついに令和になってしまいましたが、9回目になります。かなりの議論をしていただきまして、そろそろ中間的な整理ということも必要な状況でございますけども、まだまだ少し議論の足りない点もあるので、本日は第5回から第8回までにいただきましたご意見について、前にやりましたのと同じような形での資料の整理を事務局にさせました。まず、これについて事務局から報告をさせまして、何かコメントがあればいただくということにしたいと思います。

その後、前回のご議論のときに、まだ十分でなかったかもしれないという点がありまして、特にFeed-in Tariffについていろいろご発言がありましたが、この点についての状況についても、少しデータをお出ししようということで準備をさせました。

さらに、これまでにもう既にお出しをした資料をもう一度、再度確認のために出しておりますけども、それを少しブラッシュアップするような形で、このカーボンプライシングとの関係についての議論を深めたいということで、その資料も出しておりますので、よろしくお願いいたします。

それでは、第5回から第8回までの議論のとりまとめについての事務局からご説明をまずいただきます。

新原市場メカニズム室長補佐

それでは、議題の1につきまして、資料1、第5回から第8回までの議論の概要に沿ってご説明をいたします。資料1で縦長のA3の紙をお手元にご用意ください。

それでは、資料の1、こちらがこの小委員会の昨年末最後の第5回から直近の第8回までの議論の概要をまとめさせていただいたものでございます。本日は時間も限られてございますので、適宜かいつまんだ説明とさせていただきます。あらかじめご了承願います。

まず1枚目でございますけれども、気候変動の現状と脱炭素社会への移行ということで、まず、温暖化が進むとどうなるかと、どういったリスクがあるかということを国民にどうメッセージを出すべきか、こういったことが重要である。また、脱炭素製品でなければ売れない時代が来るのではないかと、国全体がゲームチェンジの方針を出してサポートしていくことが重要、こういったご意見がございました。

また、足元の状況でございますけれども、電力事業者として資源小国というハンディキャップはありますけれども、できるだけ経営を効率化して、安い料金で電気を届けるが、現実の料金は競争しなければならない中国、韓国と比べても高いと、こういった現状についてのご意見がありました。また、震災後、石炭火力の計画がたくさん出てきましたが、これも長期の需給を考えての計画であったと、こういったご説明があったところでございます。これに対して、安定供給を真剣に考えたときに石炭火力を選んでしまう、こういう構造が問題であって、これを直すのがCPだといったご意見もございました。

また、今後、何に投資をしていくかといった点につきまして、人口減少の中で日本の中に投資していく方向を考えなければならない。また、2℃目標、1.5℃目標、これを達成していく上で、どういった投資がどれぐらい必要か、こういったご意見がございました。また、これを将来世代にどのようなものを残していくかという視点の議論も必要と。それから、再エネについても、かなりの投資をしなければならない、そのための投資余力も持たなければならない、こういったご意見もございました。

また、再エネの低コスト化、安定供給、こういったものについても、主力電源化ができない限り難しいと、S+3Eを高次元で実現していくことが重要だと。また、この議論がS+3Eの枠内の議論だというご意見がございました。また、これに対して、一方で3E+Sはエネルギー政策の話であって、環境政策の場合にこれを当然の前提とするかと、むしろ、環境が軽視されることがあるので、バランスについてよく議論が必要である、こういったご意見もありました。それから、化石燃料を大量に輸入していると、こういったところが安定供給の観点からも問題ではないか。そ現在、掲げられているエネルギーミックス、こういったものが絶対ではないのではないかと。この委員会では2050年までに80%削減、こういったものを目標とするべきではないかというご意見がございました。

続きまして、2ページ目でございます。

カーボンプライシングが脱炭素化と経済成長に寄与する可能性ということで、企業が脱炭素化に対してどれだけ責任を持って行動するかとか、あるいは、気候変動がどういったショックを与えるか、これを認識することが重要ということでございました。

また、カーボンプライシングによる痛みをどう減らしていくか、あるいは、需要側にどのように脱炭素技術を普及させていくかも重要であると、こういったご議論がありました。また、国内よりも、むしろ海外市場に展開していく、これを考えていくべきではないかというご意見もございました。

それから、経済成長との関係では、カーボンプライシングによって成長につながる景気をつくり出していく、こういう議論が出てきたという点を指摘する声がございました。また、カーボンプライシングで事業構造、産業構造を転換して、これに伴って経済全体が成長していく、こういう議論が必要ではないか、こういったご意見がございました。

また、イノベーションとの関係でもカーボンプライシングについて、これによって炭素依存型・高炭素型の産業から違ったものに変わっていく、そういったイノベーションを促進していくことが重要ではないか、グローバリゼーションに入っていく環境づくりを進めていくことが重要であるといったご意見がございました。

また、投資の分野でございますけれども、TCFD、こういったものが企業のリスク、コスト、こういったものについて示唆を与えているということで、こういった中でCPのメカニズムをどう適用するかが重要といったようなご意見がございました。

続きまして、3ページ目、ここからは炭素税をめぐるご意見でございます。非常に多岐にわたるご意見をいただいておりますけれども、3ページ目、一番上の塊が、有効性・妥当性に関するものとして整理をさせていただいております。

環境税につきまして、租税は公平性を重視すると。正義の原理から言って、好ましくない消費・行為を重く課税して、好ましいものについては軽く課税をするということではないかということ。

また、CO2の総量削減を柔軟に達成していくという観点から、CPをどう位置づけるか。また、国民の一人一人、企業に対して、削減に向けてどれぐらいやらなければならないか、これを理解することが必要ということで、ポイントは価格づけであるということ。また、炭素価格を上げるようにという外圧に備えて、むしろ早目に炭素価格を上げておく必要があるのではないか。

また、各国においては既に導入されているわけですけれども、導入をしてひどい事態が起きた国というのはない。もう既に中国や韓国も導入をしているといったご意見がありました。

また一方で、カーボンプライシングは果たして本当に効果があるのか、どの程度あるのか、また、経済成長とのデカップリングといわれる事象との因果関係はどうなのか、まだ議論が必要である、こういったご意見がありました。

また、既存のエネルギー課税との違いがわかりづらいということで、国民に負担を求めるのであれば、しっかり理解できるものにすることが必要というご意見がありました。

また、既に経済界は自主的な取組をされていると。明示的なカーボンプライシングが追加的に必要なのかどうかというご意見がありました。

また、日本が既にCO2、トン当たり4,000円の税がかかっているという中で、これ以上、新たな税金は必要ないというご意見がありました。これについて、CO2で4,000円かかっているということですが、これは道路の分野が非常に高いと、ほかの分野は非常に低いと。また、揮発油税が突出して高い税で5万3,000円というご意見がありました。また、石炭がトン当たり1,370円ということで、税制はグリーン化からかけ離れているというご意見もありました。

それから、税については価格で決まるということで、予測可能性が高いということが産業界にとってのメリットでもあると。一方で、効果を見ながらしっかり再検討していくということも重要というご意見がありました。

また、カーボンプライシングについて我が国の姿勢を示すといったような部分もあるというご意見がありました。また、JCLPが日本政府に対して具体的な対策を求めている、その中にCPも含まれていると。政府が姿勢を示すことで企業は安心して投資ができるというご意見がありました。

また一方で、ビジネス界が世界全体で限界削減費用を均等化させるカーボンプライシング、こういった議論が必要だというご意見もありました。

それから、排出量取引制度と比べてダイレクトに価格をつけたほうがよいということで炭素税がよい。また、適切な資源配分、こういった観点からも炭素税のほうがよいというご意見がございました。

また、車体課税に関して、車の利用に関する負担、こういったものからカーボンプライシングのような考え方が出てきたわけですけれども、自動車だけではなくて、ほかの分野についても考えるべきではないかというご趣旨のご意見がありました。

また、今、災害の多い年が続いており、CPの議論をするにはよいチャンスではないかということで、国民にしっかり納得していただけるよう説明をしていく必要があるというご意見がありました。

また、透明性が必要である、炭素の見える化が必要である、こういったことを通じて、しっかり炭素税が有効に利くように説明が必要だというご意見がありました。

また、仕入税額控除、こういったもの措置をすることで価格効果が変わってくるのではないか、一方、WTO協定との関係をどう考えるか、こういったご意見もございました。

それから、温対税の評価でございますけれども、そのままでは市場に入っていかない技術、こういったものを補助したということで、事務局資料で提示をされていたコストをもって日本の削減コストとは言えず、価格評価と財源効果をパッケージで評価をすることが重要といったご意見がございました。

続きまして、4ページ目でございます。こちらも炭素税についてのご意見でございます。

課税の対象につきまして、IPCCの1.5℃特別報告書、これを踏まえて長期大幅削減をしていかなければならないということで、CPは幅広い層に影響を与えるものであることが必要だと。また、実際に大量に排出しているところに直接効果があることが必要といったご意見がございました。

また、エネルギーに関して、3E+Sが非常に重要だけれども、現状はその理想形ではないと、化石燃料に依存している構造を変えていく必要があるというご意見がございました。

また一方で、カーボンプライシング、特定の分野に絞り込むのではなくて、社会全体にかかるようなものであるべきというご意見もございました。

続きまして、課税水準につきまして、各国際機関がさまざまな水準の炭素価格を提唱しているわけですけれども、大量排出国であるアメリカ、中国、インド、こういったものがどういうカーボンプライシングを導入するかということ等を考えないと、日本が課税負担のメリットを裨益できないのではないかというご意見もございました。

また、イギリスで、カーボンプライスサポートによって石炭から天然ガスへの転換があったけれども、これはイギリスの特殊事情によるものであって、日本とはかなり違うということで、もし日本がやるとしたら、相当な課税水準が必要になってしまうというご意見がございました。

また、火力のコストを再エネと同じぐらいにするには、相当高い水準が必要になってしまうというご懸念の声もありました。

一方で、石炭火力について、特に石炭火力発電所の新設を問題視する立場から段階的に引き上げるのではなくて、最初から高い税をかけるべきではないか、新設だけではなくて、既設の石炭火力についてもかかるようにしないと、石炭からのフェーズアウトができないのではないかというご意見がございました。

一方で、我が国における石炭技術の位置づけというものを考えると、国際的な貢献はできるというご意見もありました。

また、現在、最もCO2排出量の多い石炭、これに対する課税水準が低いと、燃料間の価格差を縮めるような水準が必要といったご意見、それから、従量税的に既存の税制も含めて変えていくことも重要ではないか。エネルギー安定供給が重要ということであれば、再エネも重要というご意見がございました。

それから、炭素税の仕組みについて、社会の変化に合わせて徐々に水準を上げていくような、可変性・柔軟性を持った制度が必要であるというご意見がございました。

また、イノベーションによってどのような削減ポテンシャルがあるか、その効果を調査しながら税率を変えていくような議論も必要というご意見がございました。

また、価格効果についても、これによって電気代がどれぐらい上がるのか、そういう試算も出してよいのではないか。また、その状況を見ながら、こういった場合には上げていく、下げていくといったような長期的な議論も必要であろうと、こういったご意見がございました。

それから、炭素税、価格効果よりも財源効果のほうが大きいようであると。そうであれば、価格シグナルはどれぐらいのレベルのものを必要としているのか疑問であるといったご意見がありました。

続きまして、5ページ目でございます。こちらは炭素税でございますけれども、課税段階、これについても誰に対するメッセージ、シグナルなのかを考えれば、おのずと決まるであろうと。上流で電源構成を変えるということが電力自由化で比較的容易になっているのではないかと。また、徴税コストの問題を考えても上流課税がよいのではないかというご意見がございました。

また、軽減措置でございますけれども、こちらについてもどのような配慮をするかということで、例えば、鉄鋼業はCO2を当面は出さなければならないということで、国際競争の観点も含めて、減免の対象になってくるのではないかといったご意見がありました。また、既に温対税などで既に減免制度があるということで、こういったことも実施可能であるというご意見がありました。また、FITの賦課金についても減免の制度があるということで、今後、制度設計をするのであれば、よい先例となるだろうというご意見がありました。

また、東京都と埼玉県で排出量取引がございますけれども、その対象者に対して税の減免を対象とするというご意見がありました。

それから、中小零細事業者についても、排出量の多い事業から転換をする場合の補助や事務負担への配慮が必要ではないかといったご意見がありました。

それから、逆進性に関するものとして、軽油や灯油に関する所得分配による配慮が行われているので、こういったものも参考にしながら家計への逆進性について対処すべきではないか、こういったご意見がありました。

それから、税収の使途につきましてもさまざまご意見があります。炭素税であれば税収が入るということで、これを経済に活用していくべきである、あるいは、気候変動による影響への適応に活用していくべきである、あるいは、財政赤字を踏まえて税収確保が重要ということで、炭素税を上げてでも法人税を下げてほしいといったようなこともあるのではないかといったご意見もございました。

これに対して、税収を低炭素投資の補助金などに回さないで一般財源に回すということについて、環境メリットが発現しないリスクがあるのではないかというご意見もありました。また、再エネの賦課金に充てるというご意見もございました。こういった様々なご意見があったところでございます。

続きまして、排出量取引でございます。次の6ページをご覧いただければと思います。

排出量取引をめぐる議論ということで、最初に、有効性・妥当性に関するものでございます。

こちらも2050年8割削減、ないしは1.5℃目標、2℃目標、こういったものに向けて排出量取引などをどう活用していくかが重要であると。

排出量取引については取引可能性があり、自分で削減できない場合は、ほかから安く買ってくることができるということで、目標達成のオプションを広げるというプラスの面があるというご意見がありました。

また、各国の状況を見ると、排出量取引によって排出量が増えた国はどこもないといったこと、削減効果があるとする研究の蓄積があるといったご意見がございました。

一方で、価格の不安定性があると、これまでの制度は極めて不十分であるというご意見もあります。この点につきまして、むしろ、市場が機能したので排出枠価格がこうなったというご意見がありました。

それから、東京都の排出量取引、これについても、もう既にさまざまな知見が蓄積をしているということで、これを生かしてはどうかというご意見がありました。この制度につきまして、自主的規制とどう違うのかというご議論がありましたけれども、総量削減の義務が課せられていると、自主的な取組ではなくて罰則も義務もあるということで、制度についてのご意見がありました。また、この制度がもう既にきちんと運用をされていて、削減効果もあるというご意見がありました。

また、排出量取引につきまして、これは国際面でございますけれども、国際的にリンクをするということがあるのではないかと、リンクをすれば削減オプションが増加して費用効率性が高まるということで、日本だけこうした制度がないのはデメリットではないかといったご意見がございました。

また、エネルギーミックスを実現するために、さまざまな施策が講じられているということで、ここに排出量取引制度が入ると二重規制ではないか、制度の導入の必要性というものは非常に低いというご意見がありました。

それから、数量を通じた見える化、キャップをはめるということが重要であるといったご意見がございます。

それから、さまざまにマーケットをきめ細かくして、それぞれのマーケットでやっていくといったようなことも必要ではないかというご意見がありました。

それから、価格メカニズムよりも目標を設定するということが削減につながるというご意見もあったというところでございます。

続きまして、7ページ目、排出量取引制度をめぐる議論、制度対象者でございます。こちらについては、エネルギー起源CO2の排出量の多い業種を対象にしていくことが重要ではないかということで、特に発電事業を対象にすることがよいのではないか。特に化石燃料に多くを依存している構造を変えるために重要ではないかという観点からのご意見がございました。

特に、電力を対象にするということについて、さまざまなご意見があったところでございます。電力の自由化に伴って、電力分野を対象とすることがやりやすくなっているのではないかというご意見もあれば、逆に、自由化したからといって簡単にいくわけではないというご意見もいただいているというところでございます。

また、直接排出、間接排出という観点からも、燃料転換などを促す上では、間接排出ではなくて、直接排出を対象にすることが重要ではないかと、こういったご議論がありました。

それから、割当総量につきまして、これも排出量取引制度は、炭素税と違ってキャップをつけるということで削減目標に向けてリードをすることができると、EU-ETSもキャップが効いたというご意見がありました。

また、既に政府として部門別の削減目標があるということで、これを割当総量の考えるスタートにしてはどうかというご意見がございました。

また、バンキングやボローイング、こういったものをつけることで、全体の調整をしていけばよいのではないかというご議論がありました。

また、現在の2030年の目標では不十分であって、新しい2050年の大幅削減、こういったものと整合性をとったキャップが必要であろう、1.5℃特別報告書、これを視野に入れて考えることが国際的にも求められているといったご意見がありました。

これに対して、一方で、割当総量を考えるに際して、政府が将来の経済活動を見通すのは非常に難しい、不可能であるということで、この点を指摘するご意見がございました。

続きまして、割当方法について、グランドファザリングですけれども、デメリットが指摘をされているけれども、基準排出をどこで設定するかによって解決ができるというご意見がありました。

それから、グランドファザリングは政治的に難しいことが起きるかもしれない。あるいは、ベンチマークはその情報を集めるための作業が非常に重くなるだろうと。また、有償割当については事業者にとってはかなり深刻な問題になりかねないということで、どう考えるかというご意見がございました。

また、突然、オークションで入れると排出権を買う必要が出てくるということで、実現性に懐疑的というご意見があり、ある程度は最初の段階で無償で割り当てるということが必要ではないかというご意見がありました。

また、いずれオークションに全て移行することを前提に、最初は無償割当にするというご提案がありました。

また、経済学的にはオークションが一番望ましい、また収入も生まれるということで、これを有効に活用するという組み合わせが望ましいのではないかというご意見がございました。

また、低所得者対策、イノベーションへの補助、系統増強、こういったもののための予算措置を考えると、無償割当の場合は財源がないのでオークションを支持するというご意見がございました。

続きまして、8ページ目でございます。引き続き、排出量取引制度をめぐる議論でございます。課題への対処策ということで、経済や競争力へ与える影響といった視点が足りない、あるいは、イノベーションの創出にどうつながるかという視点が弱いというご指摘がございました。

また、制度の失敗事例の研究も必要というご意見もありました。これに関しては、排出量取引を導入したことによって経済がだめになった国・地域というのはないというご意見もあります。

また、既にリーケージ対策、激変緩和措置、こういったものが既に各国で実際に行われていて、具体的に可能であるというご意見もございます。

一方で、排出枠の需要に供給において、資本力で差がついてくるのではないか、あるいは、業種によってさまざまな対応に格差が生まれるということで、競争環境が変わってきてしまうというご意見もありました。

また、炭素リーケージ税についても最初のうちは無料割当にして、ベンチマークにしていくのが基本であるけれども、将来的にもある程度残すべきではないかというご意見がございました。

また、排出枠の価格の下落、これのコントロールは非常に困難であるというご意見、また、政府が市場をマニュピュレーションすると、価格をコントロールするということは大変不健康であるというご意見もございました。

他国の排出枠価格についての事例でございますけれども、これは排出の期限を設けずに排出権を配ったことが原因であるので、期限を短くしたり、使わない場合は減価していくといった仕組みを入れることで対応できるというご意見がございました。

また、EUーETSについても3期目については繰り越されず、クレジットは消えており、排出枠が余って大変になるということは起こっていないといったご意見がありました。

また、オークションと無償配布について、8割、9割は無償配布して、価格の乱高下があれば、それについては政府がオークションでコントロールしてはどうかというご意見がございました。

また、行政の体制でございますけれども、制度運用のために大勢の行政官がパーマネントに存在することで既得権化するのではないか、非常に大きな行政コストがかかるというご意見がございました。

これに対して、埼玉県の排出量取引制度は、非常に少人数で運用されていて、コストパフォーマンスのよい運用がなされているというご意見、また、省エネ法による命令とその実施に比べれば、コストは低くてよいのではないかといったご意見がございました。

続きまして、9ページ目でございます。ここからはCO2排出削減に関連する既存の制度をめぐる議論でございます。

まず、省エネ法につきまして、目的がエネルギー効率の改善を求めるものであって、CO2の削減を目標としているものではないということで、そもそも目的が違うと。また、年1%のエネルギー効率改善の努力義務があるけれども、これでは2050年に間に合わない。また、さまざまな制度はあるけれども、パッチワーク的で排出削減のインセンティブが不完全であると、こういったご議論がありました。また、法律の対象となるものが、再エネが対象になっていない。あるいは、サービス部門などがかなり外れている。中小企業、家庭などが対象になっていないのではないかといったご意見がありました。また、長期的なイノベーションを促すという観点で弱いのではないかというご意見がございました。また、達成状況、これがエネルギー効率改善の努力義務、これが産業部門の50%しか達成されていないとか、ベンチマーク制度についても10数%しか達成をされていない。一方で、省エネを担当する行政官は少ないと。また、勧告が1本も出ておらず、厳しい規制になっていないと、こういったようなご意見がありました。

続きまして、高度化法でございますけれども、こちらにつきましても、目的と対象がCO2排出量ではないといったご意見。それから、対象となるものが化石燃料の燃料転換に作用しない、また、熱・輸送用燃料には効かない、自家発・自家消費に効いていかないといったようなご意見がありました。

また一方で、非化石証書取引が始まっていると。これは排出権取引とパラレルに考えることができるのではないかと。また、排出系取引と違ってトラッキングができるということはメリットであると、こういったご意見もございました。

また、高度化法につきまして、排出量取引を導入する場合であれば、非化石市場と二重規制、二重負担になってしまうのではないか、この点を議論すべきである。また、両方やるのであれば、両方のプラスの効果をつくるために制度の調整は考える必要があるのではないか、こういったご意見があったというところでございます。

続きまして、10ページ目でございます。こちらもCO2排出削減に関連する既存の精度をめぐる議論ということで、まず省エネ法と高度化法、両方に共通するものということでございます。

まず最初に、省エネ法や高度化法によって、既に一定の負担があると、ここに電気料金にカーボンプライス分が上乗せされるということで、これが二重の負担なのではないか。その水準がどうなるのが正しいのか、効果的なのか、そういった検討が必要であるといったご意見がございました。

また、カーボンプライシングと省エネ法、高度化法が重複をするのだけれども、目的が違うから別物であるというご意見もありました。また、適切なCPが入るであれば、おのずと高度化法、省エネ法が順守できるであろうと、二重負担を防ぐという意味で適切なCPを考えるべきであると、こういったご意見がございました。

また、現行の制度がもたらしているプライシングの水準、これについてもしっかりと見定める必要があるというご意見がありました。

一方でこれを測ることは非常に難しいということで、経産省さんの資料なども活用しながら、しっかり見ていくことが必要ではないかというご議論がありました。また、これについて、制度によってはそれぞれ対象ですとか、目的も違っているので、単一化した効果をはかる、どういった価格があるかというのを評価するのは難しいと、こういったご意見もありました。

続きまして、FITでございますけれども、これについても、電力コストにどれだけ正負の効果があったのか、再エネ投資額がこれからどれぐらいになるか、こういった評価も必要であろうといったご意見もありました。

また、FITの見直しの議論が今進んでいますけれども、これを将来どうするか、税制のグリーン化と結びつけて考えていくことが必要ではないかというご意見もありました。

続きまして、11ページ目でございます。炭素税と排出量取引の組み合わせについてでございます。

こちらについては、幅広くカバーをするということで炭素税が重要であり、一方で、早く確実に減らすという観点では、ターゲットを絞った排出量取引を入れるということが重要ではないかというご意見がありました。

一方で、両方同時に設計をするのは非常に難しい。国民や産業界への説得がまだまだ必要であるということで、どちらかを優先すべきであると、こういったご意見がございました。

また、ほかの政策との関係でございますけれども、特にエネルギー政策ですが、ほかの政策と政策目的が対立をしている場合、小目的を越える大きな目的というものを考えて、これから議論をしていくことが重要ではないかと、必ずしも対立しないで和解する道があるのではないか、こういったご意見もございました。

また、3E+Sの観点からも、化石燃料に大きく依存している状況を変えていくべきではないかというご意見がございました。

最後に、今後の議論の進め方ということで、特に議論のあり方として定量的な議論を心がけていくべきであると。どのような経路で経済に波及をしていくのか、また、価格効果、どれぐらいのプライシングをしたらよいか、こういった問題について、プライシングの水準がどれぐらいになるかということを算定していくべきである。それが国民生活上どういうことになるか、しっかり判断すべきである。また、企業側から見ても影響が見えないので、やはりこれぐらい影響があるということを提示すべきであるというご意見がありました。

また、時間軸に関しては、2050年までに80%削減しなければならないということで、タイミングも重要であると、また、バックキャスティング、長期的な視点、こういったものが必要であるといったご意見があったところでございます。

私からの説明は以上でございます。

浅野委員長

どうもありがとうございました。これ、資料はなかなかつくるのは大変だったようでありまして、どうやら昨日中には終わらなかったという感じなんですが、それはそれとして、やはりまとめる人の主観というのは当然入りますので、私はそんなつもりで言ったわけじゃないとか、私の発言はちょっとここに置かれるのは不適当であるとかというようなご指摘は多分あろうかと思います。

前回も同様でありましたが、これに対してさらに加筆、あるいは修正を求めるということがございましたら、1週間以内に事務局宛にご連絡をいただきましたら、次回はそれをさらに加える形で、もう一度お出しをするということにしたいと思います。

よろしゅうございましょうか。この段階で何かございますか。

ちょっと私も見ていて、あれと思うところもありますので、多分、ご発言になった方は、私の発言が入ってないじゃないかとか、ちょっと趣旨が違うじゃないかということがあろうかと思いますが、よろしゅうございますか。今、私が申し上げたように、前回と同様の扱いにさせていただきたいのですが、ご異議はございませんか。

よろしければそのようにさせていただきますので、1週間以内にどうぞメモをお出しいただけますように、お願いいたします。

それでは、次に議題の2と議題の3につきましては続いておりますので、一括して事務局から説明をいただきます。

新原市場メカニズム室室長補佐

続きまして、議題の2、カーボンプライシングの意義・効果及び課題等ということで、資料2-1、2-2、2-3に沿ってご説明をさせていただきます。

まず、資料2-1でございます。日本経済の状況・課題とカーボンプライシングの関係についてということで、こちらは昨年末に一度ご議論いただいた資料を、再度お配りしているものでございます。

こちらにつきまして、おめくりいただいた次の資料に、非常に細かい字で「日本経済の状況・課題について」という資料がございますけれども、こちらは昨年内にご議論いただいた資料のエッセンスを抽出して、カーボンプライシングによる価格シグナルについて、こういった可能性があるのではないかということを追記したものでございます。

一番上の紙を中心にご説明をさせていただきます。

まず、一番上の紙、向かって左側でございますけれども、日本経済の状況・課題ということで、かいつまんで申しますと、まず、供給面について生産性の向上、それから、資本ストック、労働力という観点がありますけれども、イノベーションがなかなかうまく進んでいないですとか、設備が老朽化している、あるいは、人手不足がある、人的資本投資が十分でない、こういった課題があると。

一方、需要面につきましては、投資、これが収益の伸びに比べて設備投資が弱いといったような課題があると。

また、下のほうに行きまして、民間消費ですとか、こういったところについても力強さを欠いている、消費ニーズが変化をしてきているといったような状況があると。また、雇用面につきましても賃金の伸び悩み、同労分配率の低迷。金融につきましても、成長分野についての資金供給が少ない。財政面につきましては、社会保障費の増大。地域経済については、人口減少や、地域の稼ぐ力の向上・維持が課題になっているという状況でございます。

この状況の中で、右上に行っていただきまして、経済的課題へのさまざまな対策ということで、既に政府の中で未来投資戦略ですとか、生産性革命、こういったさまざまな施策が広範に打たれていくと。

この中で、プラス、カーボンプライシングによる価格シグナルということで、右下でございますけれども、どういった可能性があるかということで、直接的に脱炭素マーケットを拡大する可能性があるのではないかと、脱酸素化に資する商品サービスの需要が拡大をするのではないか、また、そのためのイノベーションが促進されるのではないか、また、こういった分野での純輸出が強化されるのではないか、それにあわせて資金調達も活性化をするのではないかと、こういったことが考えられるのではないかと。

さらに、直接に脱炭素化に関係する部分だけではなくて、それ以外の分野についても、生産性向上のきっかけとなる可能性があるのではないかといったことを提示しているところでございます。

一方で、経済へのコスト・負担となる可能性、これについても、この委員会でもたびたび指摘をされているところでございます。コストが増加をしていく、価格上昇によって需要が減少する、国際競争力が低下、炭素リーケージが発生をすると、あるいは、投資やイノベーションの原資が不足すると、こういった可能性もあるのではないかというところが指摘をされているところでございます。

こうした状況・課題がある中で、今後、どういった改善の方向性が考えられるかと、そのイメージが次の資料2-2でございます。横長のA3の紙でございます。

こちらは先ほどの状況・課題を踏まえて、このような改善の方向性が考えられるのではないかという、一つのイメージでございます。

少し込み入った資料でございますけれども、経路を説明してございます。

まず、下の図でございますけれども、生産性の向上という青い箱がございます。これが設備投資の拡大、無形資産投資の拡大、連携の取組、こういったものが改善をしていけばよいのではないかということで、企業の前向きな設備投資は拡大をするとか、生産性を向上する、あるいは、消費ニーズに対応するための研究開発、マーケティング、こういったものに取り組まれる、また、オープンイノベーションの取組が加速化する、こういったものが改善の方向性ではないかと。

また、企業活動の活性化、事業構造の高度化、こういったものによってイノベーションが活発になっていく、これを繰り返すことで、絶え間ないイノベーションの実現が起こっていくのではないかということを考えているところでございます。

また、新技術を用いた財・サービスの誕生、非価格競争力の向上、こういったものが生まれてくるべきではないかということでございます。

続きまして、次の右上の労働力・雇用につきましても、生産性の向上と相まってのことですけれども、企業の利益拡大を受けて賃金が上昇していく、あるいは、生産性が向上することによって人手不足が解消していくと、こういったことが目指されるべきではないかと。

また、その下に行きまして、民間消費・純輸出につきましても、イノベーションの成果として、ニーズに対応した新しい商品・サービスが生まれると、これによって消費が拡大している、また消費者の思考が、価格が高くても付加価値の高いものを選ぶ、こういったものに変わっていくのではないかということが考えられるのではないか。

また、質の高い生活の享受と、それから、価格の転嫁についても、コモディティからの脱却によって消費者への適切な価格転嫁が実現をしていくのではないかと。

また、輸出の観点でも高い付加価値を持つ成果が海外にも遡及していく、これによって輸出が拡大し、企業の利潤が拡大をしていく、こういったものが改善の方向性ではないかと。

また、左下に行きまして、資金供給でございますけれども、それも資金供給の活性化、企業活動を活性化していく、事業構造が変わっていくということによって、投資の意欲を刺激するのではないか、資金供給が拡大するのではないか、また金融機関についても経営環境が改善をしていくのではないか、こういったものは好循環として生産性向上ともつながっていくのではないかということが考えられると。

また、右下、脱炭素化でございますけれども、脱炭素化に乗り遅れる経済リスクの回避ということで、脱炭素化に取り組まないことによるリスクですとか、気候変動による経済的損害を回避していくということ。

それから、交易条件の改善ということで、化石燃料からの脱却、エネルギー輸入が減少して交易条件がよくなるといったようなことが改善の方向ではないか。

以上、これらはあくまでイメージとして、仮説としてご提示をしているところでございます。

続きまして、次の資料2-3でございますけれども、こういった資料2-2の改善の方向性を目指していく中で、カーボンプライシングがどのように作用していくかということでございます。これは事務局として、委員のご意見を踏まえて、いわば仮説として考え得るものをご提示しているというものでございます。

こちらは昨年末、11月、12月に、日本経済とカーボンプライシングの関係についてご議論いただいた際に、どのような経路で、経済にカーボンプライシングが影響していくか、価格シグナルが効いていくかということについてご議論いただきました。これをさらに事務局として整理をしてみたというものでございます。

まず、この背景として、資料の左側でございますけれども、脱炭素分野ということで、パリ協定以降、世界が脱炭素社会に向かっている、ESG金融も拡大をしていくと、こういった中で、脱炭素化への取組が遅れると、サプライチェーンから外されるリスク、資金調達が難しくなるリスク、こういったものがあると。

また、一方で、第四次産業革命ということで、AI、IoT、ロボット、こういった分野で新しい技術が生まれてきている。それにあわせてさまざまな財・サービスを生み出していると。また、生産性を押し上げていく、いろんな可能性が出てきているという状況でございます。こういった動きをうまく確実に捉えて、日本経済の競争力を高めることが重要ではないかと、こういった背景認識があるわけでございます。

これを背景にしまして、まず最初に、これらの状況を背景に、カーボンプライシングによる価格シグナルが、経済のどういった側面にどのような経路で影響を与えていくのかということを整理してみたというものでございます。

この資料にありますように、イノベーション・投資、それから資金供給、消費、事業構造、稼ぐ力、こういった側面で経済を切り分けまして整理をしているところでございます。

資料の上の方が、直接的に脱炭素化に関係してくるものです。矢印の先に行きまして、一番下のほうが、間接的なもの、脱炭素分野以外の他分野への正の経済的波及効果というものを整理しているものでございます。

まず、左上のほうのイノベーション・投資でございますけれども、価格シグナルがカーボンプライシングによって行われることによって、炭素排出のコストが見える化をされると。これによって製造工程のプロセスイノベーションが促進をするのではないか。

また、相対価格が変わっていくことで、脱炭素ビジネスが稼げる状況が出現をする、また、予見可能性が担保をされているということではないかと。これによってプロダクトイノベーションも促進をされていくのではないか。AI、IoT等を活用したものがどんどん加速していくのではないだろうか、また、これがオープンイノベーションのきっかけになるのではないかということでございます。

これと対になって、投資の観点でございますけれども、炭素排出のコストが見える化をされ、成長の方向性をシフトするという、この状況の中で、設備投資も拡大をしていくのではないか。また、生産システムを更新していく場合は、資本ストックの生産性も向上していくであろうと。また、無形資産投資の拡大のきっかけにもつながるのではないかということでございます。

真ん中の列でございますけれども、資金供給、これについても脱炭素ビジネスが稼げる価格提携が実現をする。脱炭素レピュテーション、日本全体のレピュテーションが向上をしていくと。これによって、資金供給が脱炭素ビジネスの方向に向かって拡大するのではないかということでございます。

また、成長分野への資金供給も拡大をしていくのではないかと、脱炭素集約度の低い分野に供給がシフトしていくのではないかということが考えられるということでございます。

次の列に行きまして、消費です。これは需要側から見て脱炭素商品・サービスが選ばれる、そういった価格体系が創出をしていくと。これによって消費が拡大し、消費者の高付加価値指向、こういったものが促進をされていくのではないかということでございます。

次の列に行きまして、事業構造ですが、脱炭素ビジネスが稼げる価格体系の実現、また、予見可能性の担保ということで、新規事業がスタートアップする、こういったものが促進をされるのではないか。特に非炭素集約型の事業、こういったものへのシフトを促すのではないかということが考えられるということでございます。

また、続きまして、一番右の列ですけれども、稼ぐ力ということで、価格シグナルによって資源のアロケーションが変化する。これによって化石燃料の消費が抑えられる。また、イノベーションの成果が輸出を拡大するということがあるのではないかということでございます。

これはAI、IoTを活用して、これは海外向けでございますけれども、財・サービスの輸出も拡大をしていくのではないか。また、非価格競争力を上げていくのではないかといったようなことが考えられるということでございます。

以上、こうしたプラスの影響もあるのではないかということで、考えられる可能性を提示しているところでございます。

一方で、下にありますとおり、炭素集約度の高い分野を中心に、負の影響の可能性というものもございます。これもたびたびご指摘をいただいているところでございますけれども、緑の箱をご覧いただきますが、投資やイノベーションの原資を奪う可能性がある。需要を減少させる。炭素リーケージが発生をする。国際競争力に悪影響を与える。こういった負の影響もあると、可能性として考えられるというところでございます。

本日のこの資料につきましては、事務局としての整理でございますので、カーボンプライシングが経済に対してどんな作用を与えるのか、プラスの可能性、マイナスの可能性、両面合わせて、どういった可能性があるのかご議論をいただければと思っております。

続きまして、議題の3に行きまして、資料3をお手元にご用意ください。

前回、CO2削減に関連のある既存の制度ということで、省エネ法と高度化法をご議論いただきました。その続きでございます。今回はFITを扱います。これまでにもFITについても議論すべきであるというご指摘が相次いでおりましたので、これを踏まえてのご提示ということでございます。

まず、資料をおめくりいただきまして、再エネの位置づけということで、まず、4ページ目でございます。環境基本計画、それから、5ページ目がエネルギー基本計画でございます。字が細かいので割愛しますけれども、どちらも昨年、閣議決定された基本計画ということで、いずれも再エネを非常に重視した記載ぶりになっているということでございます。

続きまして、6ページ目に再生可能エネルギーの意義ということで、現在、資源エネルギー庁さんにおきまして、FIT制度が抜本的な見直しにかかっております。

その中でも再エネの意義ということで、6ページ目の上から三つ目のポツでございますけれども、再エネは、発電時に温室効果ガスを排出しない、国内で生産できると、エネルギー安全保障にも寄与できる有望かつ多様で重要な低炭素の国産エネルギーであると、こういったような位置づけがなされているというところでございます。

続きまして、FIT制度の現状について、8ページ目でございます。もう既に皆様、ご案内のとおり、FITの固定価格買取制度でございます。

再エネで発電した電気を電力会社が一定価格で一定期間買い取ると、また、その買取費用は、電気の利用者から賦課金という形で集めるといったものになっているということでございます。

9ページ目もその賦課金のルールについて、ご参考までに整理しているというものでございます。

また、10ページ目でございます。こちらは参考資料ですが、再エネの導入、FIT以降、着実に拡大をしているということで、既に発電電力量全体の8.1%、水力を含めると16%が再エネで賄われる状況になっているというところでございます。

11ページ、12ページも導入が拡大をしているということで、参考資料でございます。

続きまして、13ページ目でございます。国民負担の増大と電気料金への影響ということで、このFITの賦課金、以前から問題になっておりますけれども、2019年度で買取費用総額3.6兆円、賦課金総額2.4兆円と、今後はエネルギーミックスを実現するためには、単純計算で毎年さらに1兆円、賦課金を投じていかなければならないと。これまでにも2兆円が毎年投じられていたわけですけれども、ここにプラス1兆円という見通しが出されているというところでございます。また、下の右半分が、旧一般電気事業者の電気料金の占める賦課金の割合、その推移を示したグラフでございます。

続きまして、14ページ目からがFIT制度の抜本見直しについてというところでございます。現在、FIT法を所管されている資源エネルギー庁において、このFIT法の抜本的な見直しの議論がなされている、始まったところであると聞いております。

その今次の検討のフレームワーク(案)というのが15ページ目でございます。検討のフレークワークということで、15ページ目の下の三つの箱でございますけれども、電源の特性に応じた制度のあり方を考えていく、適正な事業規律、そして、次世代電力NWへの転換、こういった視点からの議論が進められていくところでございます。

続きまして、16ページ目が、再エネ政策の再構築に当たっての基本原則ということで、FIT制度がもたらした成果と課題を踏まえて、FIT制度を残すのか、新しい制度をつくるのかということが議論されているというところでございます。

その基本となるのが3E+Sと。その中で再エネの主力電源化をどう図っていくかという観点から、さらなるコストダウンと国民負担の抑制、長期安定、そして、電力システムとの統合と変容する需要への適合と、こういったものを3原則としながら議論が進んでいくという状況でございます。

続きまして、17ページが、主力電源たる再生可能エネルギーの将来像(イメージ)ということでございます。

再エネが電力市場でコスト競争に打ちかって、自立的に導入が進んでいくということが求められるのではないか。また、地方でも地域の活性化、レジリエンス強化、こういった部分に資する面もあることから、地域で活用される電源、そうなるように環境整備も重要であるといったようなことが、将来のモデルとしてイメージされているというところでございます。

18ページ目と19ページ目は、そのモデルのイメージ図ということで、ご参考までにお配りしています。

続きまして、20ページ目が、再エネがもたらす電力システムの変容ということで、20ページ目の青い箱でございますけれども、これまでは大手電力会社が大規模電源と需要地を系統でつなぐというものが従来のシステムだったと。ここに分散型電源を柔軟に活用する電力システムへと大きく変化をしてきているというところでございます。

また、FITによる固定価格・買取義務に依拠した売電モデルから脱却をして、需給が一体となったモデル、こういったものが拡大していくことが考えられると提示されているというところでございます。

ここから先は参考資料でございます。21ページ目から先は、現在、資源エネルギー庁で見直しの議論がなされている途中でございますので、その中での論点案ということで提示をされているものを、ご参考までにお示しをしているものでございます。こちらはまだ議論の途中ということで、ご参考までにお配りしているところでございます。

駆け足でございましたけれども、私からの資料説明は以上でございます。

浅野委員長

ありがとうございました。

それでは、ただいまの資料2と資料3について、いつものようにご意見をいただきたいと思います。

FITについて誤解をなさる方はないと思いますが、ここはFIT制度の善し悪しを検討する委員会と性格を異にしておりますので、そのことを主に議論したいと思ってこの資料を出しているのではなくて、カーボンプライシングとの関係を考えるということがテーマですから、それを前提にした上で、現在、こんな議論が行われているというご紹介をしているというだけでございます。

さて、それでは、いつものようにご発言をいただきたいと思いますが。ご発言をご希望の方というおたずねは、もう前回、前々回同様、省略させていただきます。順番が来て発言がないという方は、なしとおっしゃってくださればそれで結構でございます。

今日は有村委員からご発言をいただく順番ですが、吉村委員が途中で退席というお申し出をいただいておりますので、まず、吉村委員に先にまずご発言をいただいた後、有村委員から順次、ごご発言をいただきたいと思います。

吉村委員

以前申し上げましたように、私自身は税法の専門家ですので、今日の議論のまとめを見て、カーボンプライシング全体を見渡した議論を勉強しているところでございます。

その上で、資料2、2のところのイメージ図ですね。資料2-2、資料2-3というところで、これは多分、ハッピーなシナリオということでお示しいただいているんだと思いますけれども、やはり、カーボンプライシング自体は負担であることは一旦認めた上で、その設計の仕方によっては、どういったメリットが期待できるのかということで、カーボンプライシング全体を議論する上で、一つ重要な視点が示されているように思います。

結局、カーボンプライシングが、やはり負担があるというところは否定できないわけですけれども、それで議論がおしまいというのではなくて、国際的な環境政策の目標のもとに、特定の政策を実現していかなければいけないという前提に立って、このカーボンプライシングの設計によって、こういったプラスの波及が考えられるといったイメージを示し、議論を深めていくのは非常に重要だというふうに感じました。

今までの議論の整理のところで、いろいろと繰り返されてきたと思いますので、それ以上は触れませんけれども、非常に重要なイメージだというふうに思いました。

感想です。以上です。

浅野委員長

どうもありがとうございました。

では、有村委員、どうぞお願いいたします。

有村委員

ありがとうございます。

今、吉村委員からもありましたけれども、カーボンプライシングは、基本的には顕在化してきている気候変動の課題にどう対処するかということなので、まず、それがそこで非常に有益だと。その上で経済との関係を考えていくということが大事だと思うんですね。

経済に関して言いますと、従来、経済学ですと、ここで環境規制は基本的に負担になるんだというふうに考えられてきているわけですけれども、新しい経済になっていって、今はAIやIoTなどが含まれた新しい経済においては、カーボンプライシングは補完的に経済をアシストできる面もあるんだというような辺りが、資料2-1とか2-3辺りで示されていたというのがよい資料だと思いました。

ただ一方で、本当に経済学的に考えたときに、カーボンプライシングはその環境目標を達成しつつ、経済社会に貢献できるというのは、ここでも何度か申し上げておりますけれども、いわゆる、二重の配当というような理論に基づいて、税収を活用して法人税減税をしたり、所得税減税をしたりというようなときに理論上起こり得ると。ですので、そういった視点もこの資料とかにあると望ましいのかなというふうに思いました。

それから、次にFITについて少しご意見をさせていただきます。

FIT制度は、カーボンプライシング、特に排出量取引とは違って、安定的な価格シグナルをずっと出すと、長期にわたってということで、その投資環境を用意して、その結果、再生可能エネルギーに非常に貢献してきた制度だというふうに思います。

一方で、これが経済全体で見たときに、効率的な削減を進めているかというと、必ずしもそうではないのではないかというふうに考えております。

第一に、いわゆる、天然ガスへのシフトというようなインセンティブがFITにはないというようなことがあります。この点に関しては、高度化法でもそういった対応をされているということですから、それが一部の事業者のみが対象であったり、いろんな問題があるということが言えると思います。

それから、FITは電源のものだけに対象になっているので、バイオマスの熱の利用とのバランスとかという視点も欠けているというところが、ちょっと不完全な制度として、そういったところがあるかと思いますし、あるいは、その自家発電で効かないといったようなこともあるかとは思います。

それから、あと、経済学的に言うと、FITは政府が再生可能エネルギーの技術に値段をつける制度で、若干、そこは経済学者にとっては気持ちが悪い。経済学的に考えると、カーボンプライシングで外部性に値段をつけてもらって、あとは、民間の競争でどの技術が選ばれるかというのを選んでもらうほうがすっきりするので、ちょっとそこはFITに関しては気持ちが悪いかなというところではあります。

それから、一つ、これは結果として起きたことなんですけれども、この制度ができたことによって、電力を集中的に使う産業に対して、配慮措置を行うということが制度として実施されてきているということは、カーボンプライシングを導入したときに、特定の産業に対してちゃんとした減免措置をするんだというようなことが実施されています。つまり、もう制度として実行可能であるということが、FITの経験を通じて示されているというところは、非常に有益なところだなと思います。

以上です。

浅野委員長

どうも、ありがとうございました。

では、石田委員、いかがでしょうか。

石田委員

まとめていただいてありがとうございました。

ただ、資料2-3には少し違和感があります。例えば、その全ては経済原則で決まっていると考えられます。安いものが買われるという理屈です。そうすると、カーボンプライシングが導入されると、排出量が少ない製品の価格が安くなるので、企業は低炭素の技術開発をしようとして努力します。このためイノベーションが進む順番ではないかと思います。この図では、炭素排出コストの見える化をするとプロセスイノベーションが促進されて、その後に相対価格が変化して稼げるとなっていますので、順番が逆のような印象があります。

また、低炭素の技術が進むと、日本はその分野では恐らく得意ですから、世界のリーダーになって輸出が進むとか、もう少し先があっても良いと思います。

 もう一点、負の部分が緑色として下に書いてありますが、それぞれの部分でコメントを入れたほうがわかりやすいかもしれないと思います。例えば、電力をたくさん使う産業では、その負荷が大きくなって対策をとる必要があるというのは、その場所に記入したほうがわかりやすいと思います。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

では、岩田委員、どうぞお願いいたします。

岩田委員

それでは、二つコメントを申し上げたいと思います。

一つは、最初の資料のご説明にあったように、日本の経済のいろいろな変化についてであります。もう一つは、カーボンプライシングとFITの関係ということで、二つ申し上げたいと思います。

一つ目の全体、丁寧にはいろいろ細かいところまでよく整理されていると思いますが、一番抜けていると思うのは、今の第4次産業革命、あるいは、Society5.0ということで、デジタライゼーションが急速に進んでいく、これは経済社会を、私、根本的に変えると思っています。2050年のときに日本の産業構造全体がどのような姿になっているかということは、これは本当は誰もわからないですが、私ども、実は5月の初めに、第4次産業革命下のCO2排出ゼロというのはどうしたらできるかという実はレポートを公表しております。

私、一度この審議会でお話ししたことがありますが、それはアメリカ経済ぐらいにサービス化が進むという、その場合にどのぐらいCO2の排出量が減るかというのですが、今度ものはもっとさらにイギリス型まで産業構造が変化する、あるいは、過去の10年ぐらいのスウェーデンの経済の産業構造の変化、これは製造業のシェアが大きく落ちて、サービス化が大きく進むと。デジタライゼーションとサービス化というのは、多分、平仄が合っていて、さらにシェアリングエコノミーということを考えますと、存在しているキャピタルストックの稼働率が極めてよくなるわけですね。自動車一つとっても稼働率が非常に変わってくる。

そうしますと、簡単な私どもの今回の試算では、例えば車で言えば、乗用車は2050年のときには全てEV車になっているだろうと。EV車になるということは、もう自動車産業というよりは、電気機械産業にもう変わってしまう。自動車産業がつまり、8割ぐらいは生産が落ちてしまう。もし残っているものがあるとすれば、トラックとか、そういうものが半分ぐらいは残るものがあるかもしれない。しかし、そのぐらい大きく変化します。

製造業も6割ぐらいは減少すると。そうしますと、製造業とサービス業の電力、同じ1単位当たりのGDPを算出するのに必要なエネルギーというのは、1対20です。20分の1になります、サービス化しますと。

それで、一つの私どもの今回の報告書の結論は、6割排出量がデジタライゼーションで2050年にはもう減りますと、8割減らさなければいけないわけですが、6割は産業構造の変化で達成できます。これはもちろんSociety5.0が成功するという前提であります。もしそうであれば6割、そうすると、残りの2割はどうするのですかという問題が残ります。

私どもは、これはちょっとモデルで計算すると、1万円カーボンタックスが必要です。2割、あと残り減らすためにはですね。ゼロにしたければ2万円という計算をいたしました。

ということで、1点目の要するにコメントは、非常にきめ細かく日本経済のことが書いてあるのですが、2050年、あるいは、2060年というようなものを考えたときに、産業構造がどのように変わっているかという、非常に太いところが抜けているんじゃないかと。

政府で言うと、恐らくこれは産業構造審議会のお仕事だと思いますが、その60年のときに産業構造がどのぐらい変わるか、あんまりはっきりしたイメージが私は出されてないと今のところ思っていますけど、一つはそうした産業構造の大きな変化ということをやっぱり考えないと、カーボンプライシングを幾らにするにするのですかという話も一向に進まないということになるのじゃないかと思います。

これが1点目で、2点目は、カーボンプライシングとFITの関係であります。これは前回も申し上げましたが、今の地球温暖化税というのは1トン当たりの排出量ですね、289円。それで、今の税制をグリーン化すると、全部ですね、炭素税の形に変える。これは経済産業省さんも同じことをおっしゃっていますが4,000円。4,000円分、まずグリーン化を進めて。

それから、今のFITの財源が幾ら上がっているかというと、2,4兆円上がっていますよね。財源のほうから逆算しますと、これは前回か前々回に申し上げましたけど、言ってみると、2,900円ぐらいの炭素税に匹敵するような課税が事実上行われていると思います。

そうしますと、今言ってみますと、FITのグリーン化といいますか、それを炭素税化する。それから、今のエネルギー税制全体をグリーン化する。合わせると7,200円ですよね。1万円になるには残りをやればいい、2,800円か。というのが、今、日本に突きつけられている課題ではないかというふうに思います。

それで、ついでにコメントでも申し上げて、後で事務方に言おうかと思ったのですが、揮発油税について5.3万円というのが出ていたんですが、私どもの計算では2.3万円です、炭素税に換算すると。ですから、揮発油税と同じだけの、揮発油税を炭素税に変えたとして、2万3,000円分、つまり、ゼロエミッションにするには、先ほど2万円とおっしゃいましたけど、揮発油税と同じような税を炭素税に変えれば、いわばゼロエミッションになります。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

では、牛島委員、お願いいたします。

牛島委員

非常に全体像がわかる整理で、これまでの議論もこういうふうな形で整理いただきましたので、私自身、改めて頭の整理をできたところなんですけれども、私の場合はどちらかというとビジネスサイドから来ておりますが、ただ一方で、同時に気候変動、長期的な視点を持ちながらというようなところで、そういった意味で今回の議論というのは、論点の一つとしては、過去の議論にも出ておりましたけれども、いわゆる化石依存、特に石炭かと思いますけれども、ここから脱却するインセンティブというか、それをどういうふうにするのかというふうなことが、実際に大きな位置を占めるのかなと。

そのためにお金の流れ、あるいは、必要な投資、財源、こういったものをどこに変えていくのかと、これに当たり、そのカーボンプライシングというものがどれほど有効なものなのかというふうな、こういうふうな視点で見てきたわけなんですけれども、全体のこの日本経済のあり方とか、この評価を見てみても、ちまたでもよく言われていることですが、資金は企業としてはかなり持っていると、しかし投資されていないと。それは、昨今、私、ESG関係もやっておりますけれども、そうした世界では、ほとんど、もはやその設備というよりも、無形資産への投資というのが非常にウエートを占めているというふうなことではありますけれども、これは見てみると、人にも設備にも投資はあまりされていないというふうな現状。資金が回ってなければ、当然ながら次の投資も生まれない、あるいは、市場も生まれない、イノベーションも起きないということで、資金が相当滞留しているのではないかと。そういう意味では、このカーボンプライシングによる負の影響ということで、投資やイノベーションの原資を奪うですとか、あるいは、国際競争力への影響というふうなこともあるんですけれども、そういう意味では、原資を奪うどころか、原資はあるんだけれども、それが滞留していて全く使われていないという、全くというのはちょっと語弊がありますけれども、あまり使われていないというふうなことと、国際競争力への影響というのも、過去20年ぐらいいろいろ見てみれば、もう既に競争力を失っているということを、むしろ認めたほうがいいのかなというふうに思っております。

この原因は何なんだというふうなところで、過去数十年の間、日本の経済というのは、主に欧米の豊かさですとか、欧米をモデルにキャッチアップしようというふうにしてきたんだろうというふうに思うんですけれども、今は一旦追いついた感があると。そうすると、その先のゴールというか、目標というか、モデルというか、それをちょっと失っていると。いろいろな新しい芽が出始めてはいるものの、問題はそこで予見性といいますか、確固たる思い切ったものがないので、どうしてもちゅうちょしてしまっているというふうなところで、お金はあるし、機会も何となくちらちら見えるんだけれども、一体、右に世の中が行くのか、左に行くのかがよくわからないというふうなところで、結局、居座ってしまうというふうなことが今の状態なのかなと。そういう意味では、ここに思い切ってこちらの方向に行くんだというふうな、やはりリーダーシップというのは、非常に重要なことだろうと。なので、お金の問題なのかというと、実はお金の問題は解決可能な問題なのではないかというふうに、この資料を読んでいて感じたところで、むしろ、政策的なメッセージ、こちらの方向に行くんだというふうなことが、過去の議論にもありましたけれども、企業がもっと投資をしやすくなる、そんな環境をつくる、むしろ、そっちのメッセージの効果のほうが非常に大きいのではないかなというふうに感じています。

実際、TCFD等々でこれからの予測を考えたときでも、目標としてはその2050年までが一つの目安にはなっているものの、2040年を一つのターニングポイントとして、これまでに何の対処もしていなかった場合と対処していた場合とで、その先の世界というのは大きく変わるという予測が、いろいろなところで出ています。

そういう意味では、本当にこの20年の間に、私たちはどちらに向くのかというふうなメッセージは、政策的なメッセージを出していくということが、このカーボンプライシングに合わせて取り組んでいくということが重要なのかなというふうに思いました。

浅野委員長

ありがとうございました。

大塚委員、どうぞ。

大塚委員

ありがとうございます。

同じく、FIT等のカーボンプライシングに関係するところのお話をしておきたいと思いますが、FITは有村さんもお話しいただきましたけど、基本的には固定価格で買い取る義務があるというところは規制だし、それから、一種の補助金でもあります。ただ補助金といっても政府によらない補助金ということで、なかなか上手な仕組みとも言えるところがございますけれども、ある種、ゲリラ的に再エネの供給業者にインセンティブを与えて再エネを増やすという意味では、プラスの意味が非常にあったというふうに考えられます。

そうは言っても、いろいろなコストの問題とかがございますので、今回、改正をすることになっておりますけれども、今日ここで扱っているカーボンプライシングとの関係を申し上げておきますと、カーボンプライシングは再エネの後押しをするというところがありまして、カーボンプライシングによって再エネと、それから、化石燃料に基づくエネルギーとの間で価格の差が出てまいりますので、再エネの競争力を高めるということはございますし、あと、FITに関しては幾つかの限界が、さっき有村委員がおっしゃったのでもう繰り返しませんが、ございます。FITは供給業者のほうにインセンティブを与えるものですけれども、需要家が再エネの選択をするかどうかに関しては、別に何かシグナルを与えるものではないので、そこはまさにカーボンプライシングが需要家のほうにシグナルを与えるというのは意義があるということだと思います。

それから、あと、FITはどうしてもコストダウンにあまり向かわないんじゃないかという議論があって、日本の場合はどうしても、再エネの価格がほかの国に比べて高いものですから、それを下げるということを一生懸命考えようとしても、そのインセンティブが働かないと。毎年のように政府のほうで決めている、調達のほうの委員会で決めている価格は、どんどん下げておられますけれども、まだちょっと高いということがあって、そういうことに対処するには、カーボンプライシングの収入を系統に使うとか、技術革新に使うとかということをすれば、それなりに意味があるのではないかということがあると思います。

あと、FITは、FITが切れたときには対応できないという、FIT切れのときには対応できないという、当たり前の限界もございます。

そういうことで、FITとカーボンプライシングは矛盾するということではなくて、FIT自体にも意味が私はあったと思っていますけども、両立し得るものもございますので、両方やっていけばいいというのが基本的な発想です。FIT自体はいずれフィードインプレミアムに変わっていくと思いますけれども。

あと、経済との関係の話につきましては、先ほど牛島委員もおっしゃっていたことに、私も同感ですけれども、現在の日本経済に関しては、何か起爆剤に当たるものが出てきていないので、企業のほうがお金を溜まっていても投資をするところが、したいと思うところを国内にはあまり見つけてられないというところがあって、カーボンプライシングはその起爆剤になるだろうということがございますし、あとは、環境省のほうで今、一生懸命やっておられる地域循環共生圏は、まさに、そういうお金を落とす場所を国内に見つけるための作業でもあるので、これはある種、国民運動のようにやっていく必要があると私は思っていますけれども、いろんなことをやりながら経済を活性化させていく一つのきっかけに、カーボンプライシングがなるということがあり得るということです。。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

大野委員、お願いします。

大野委員

それでは、資料2で1点と、それから、FITの関連で3点ぐらい意見を申し上げたいと思います。

まず、資料2のほうなんですけども、これはカーボンプライシングが入ってくる意義を書いているんですが、私が特に大事だと思うのは、この資料2-2の一番最後のところです。脱炭素化に乗り遅れる経済的リスクの回避というところでありまして、これはもう現に乗り遅れてしまってきているということだと思います。

日本では、産業部門でも石炭という高排出の燃料の使用量が過去20年間で2倍ぐらいになっていますし、電源でも相当多い。こういう中で再生可能エネルギーが、量も少ないし価格も高いというふうになっているという状況があるという状況の中で、既にいろんな弊害が起きているということだと思います。

これから再生可能エネルギーの供給量という点では、洋上風力が、非常に大きな成長分野になっているわけですけれども、。日立さんも風力発電から撤退する羽目になってしまったということが報道されておりました。既に世界的には安い自然エネルギー電力が得られるんだけども、日本ではなかなか得られない。そのために、日本でもRE100企業というのは増えてきていましたけれども、率直に言ってその達成の年限を見ると、やはり海外のRE100企業との間でかなり違いがある。

それから、もう今は1kWh当たり4セントくらいの自然エネルギー電力が海外で普通になっている。今後はですね、日本でもそういう展望も見えてはきているんですけども、数年遅れているという中で、海外では既に産業用の燃料を電化していって、その電化に安い再生可能エネルギーを使っていくという、そういう流れが起きてきているし、検討が始まっている。そこがまた自然エネルギー電力の高い日本では進んでいかない。ですから、そういう意味で、電力部門についても産業部門についても、脱炭素化が置かれているということは非常に大きな意識として出ているということだと思います。

それから、FITとの関係なんですが、これについては、さっき既に有村委員や大塚委員がおっしゃいましたけれども、FITは非常に大事な制度ですけれども、対象主体は電力です。電力というのは、エネルギー起源CO2のほうが4割強ですから、それ以外の分野の削減対策としてはFITでは効かないということになります。

それから、電力部門の中でも、政府の2030年の見通し、目標というか見通しの中でも、非化石電源でいったら44%です。それ以外のところは火力発電になるわけですけども、その火力発電の中で低炭素化していくことを考えると、やっぱり、その石炭火力とガス火力になりますから、そこでもやはりカーボンプライシングが働いていくことが、火力発電の2030年段階での低炭素化で働くという意味で、FITだけではなくて、電力部門でもカーボンプライシングが大事だと思います。

あともう一つは、これはFITのこれまでの役割というか、評価に関わることなんですけれども、よくFITに対する批判として、国民負担が非常に大きいじゃないかということがあります。今日ご提出いただいた資源エネルギー庁の資料、これはよく出てくる資料ですけども、現在の買取費用の総額は3.6兆円で、賦課金総額は2.4兆円であると、非常に国民負担が大きいという話があります。これは確かに小さな額じゃないんです。これは最初に固定価格買取制度が入ったときに、買取価格が42円とか、そういうオーダーでした。日本でそれ以前に再生可能エネルギーの導入が進んでいない中で、最初の段階でこういう高い価格を入れたのは合理性があったと思うんですが、その後、急速に実際の供給コストが下がっていく中でも、買取価格の改定と引き下げが十分追いつかなかった。そういう制度運用上、いろんな限界というか、欠点はあったと思います。それがなければ、ここまでは負担額が大きくならなかったと思うんですが、そういう意味では、もっともっと本当はうまく運用するべきだったと思います。

ただ、それにしても、このFITというものは今までどういう役割を果たしたかということなんですけども、もう既に買取価格も、最初から考えれば3分の1ぐらいに下落をしました。それから、今後の見通しを考えると、見てみると、これはブルームバークニューエナジーファイナンスの最近の予測でありますとか、資源総合システムを見ても、2020年代の半ばぐらいには、日本においても太陽光発電コストがほかの電源よりも安くなってくると、そんな見通しを発表しています。

我々の財団でも、去年、アンケート調査を相当やりまして、太陽光発電事業者の方からそれに基づいて今は分析をしていて、来月の初めぐらいにはレポートを出すつもりなんですけども、やはり同様の結果が出ています。

ようやく日本でもこのFITによって導入が進み、日本でもようやく安価な自然エネルギー電力が実現する展望が見えてきたということだと思っています。化石電力に依存しない供給の可能性が日本でも開けてきたというのは、やはりFITの大きな効果だと思うので、そういう意味では、非常に大きな意義がある制度ではないかと思います。

以上、3点申し上げました。

浅野委員長

ありがとうございました。

では、河口委員、お願いいたします。

河口委員

ありがとうございます。5回からの意見のまとめと、これをうまく図表にまとめるのは、大変な作業であったろうと思います。でも、こんなことをしていいのかなというのがちょっと思ったことなんですね。

今朝、今日、ここに来る前に読んでいた資料なんですけれども、気候研究所、気象庁の気象研究所と国環研と京大で共通の研究を発表しましたと。何かというと、昨年の夏の猛暑で7月1カ月で1,000人以上が熱中症で死んでいると。それで、その前に熱中症でたくさん死んだのは平成22年、8年前ですけれども、750人を大きく上回っていると。昨年7月の猛暑、これをシミュレート分析したところ、シミュレーションで研究したところによると、あれは温暖化があったから、あんな猛暑になったという確率が2割で、もし、あそこで人為的な温暖化がなければ、そういう確率はゼロだったと、ちょっと、どうやってそれができるのか、よくわからないんですけど、そういう研究結果が出ていますよと。

ちなみに、その研究結果と同時に、保険業協会かな、損保業界が昨年どのぐらい保険金を払ったかというお話が出ていて、その猛暑と豪雨と台風で1.6兆円の保険金を昨年支払っていて、それは過去最高の額の2倍だそうです。

だから、もうこういう影響が出ている中で、今日の議論だと、確かにおっしゃるとおり、カーボンプライシングにはいろいろと不備が合って、経済的にいろいろな面でも議論しないとわからないとか、いろいろな問題はあるんですけれども、事ここに及んでいるときに、ゆっくり精緻なものをつくるというような方向性の議論でやっていっていいのかと、精緻なものをつくろうとしていたら、あと何年かかるかわからないや、というような状況にあるのではないかなと思います。

ということを考えますと、これだけ環境の問題が深刻になってきている中で、やるべきことというのは、やはり社会の基本インフラ、脱炭素を目指すのであれば、社会の基本インフラとしてのカーボンプライシングみたいなものをまず入れると決めて、かつ、ここで議論されていた、いろんな指摘があったとおり、経済的なメリット、デメリットがいろいろとあるので、それをどうやったらデメリットを最小化して、経済的なメリットを最大化できるかな、みたいな方向に話を、議論していくのが、もっといいのではないかなというふうに思います。

それから、今日のまとめていただいた資料2-3と2-2にはないところなんですけれども、これは経済的なインパクトということなんですが、社会的なインパクトもいろいろと出てくるであろうなということと、金融における、これから起きるであろう変化ということについて、ちょっと書いていないので申し上げたいと思うのですが、一つは、そのTCFDで先日コンソーシアムができましたということです。

TCFDで開示が進んでくると、多分、どういうことになるかというと、一つ頭の体操のあり方が変化をします。なぜかというと、これは今までやらなかったシナリオプランニングというのをしなければいけなくなって、いろいろな人たちが2050年どうなるんだろうねと、今まで考えてなかったようなことを考え始めるわけです。

ある企業の人たちが集まっている研究会で、そういうことでシナリオプランニングをやろうねといって、グループごとに分かれてディスカッションしているんですけど、4グループのうち3グループはシナリオになっていません。1グループしかシナリオを考えて、それにベースになった話ができていないと。この訓練で頭の中でできていないので、今日のこの資料を見ても、全然シナリオプランニングではなくて、今の時点においてイノベーションがどうなるかなということは書いてあるんですけれども、そこはできていない。

だけど、TCFDを真面目にやっていこうと思うと、シナリオプランニングということを訓練する企業の人たちがいっぱい出てくるとなると、こういうものではなくて、シナリオベースで物を考えましょうということが社会に出てくるというのが1点。ですので、そういう面でカーボンプライシングというのをどう考えるべきかということを、ちょっと見直さないといけないということ。

もう一つは、金融の中で生まれてきているのはESG投資の世界で、環境面、だから、再生可能エネルギーとかにお金が行くよという、その二次元的な発想だけではなくて、今はESG投資で一番言われているのは、インパクトをどう見るのというところで、インパクトの検索ということが言われています。

今までのリスクとリターンに加えてインパクトで、この場合であったら、CO2をどれだけ削減できたかというところ、これを同じような評価軸として見ていこうというように金融が変わっていくとなると、このカーボンプライシングの意義というのも、異次元でお金のベースだけで考えているメリット、デメリット、プラスアルファの今言ったカーボンそのものというのが、もう一つの評価軸に出てくるよと。

そういう前提で考えていきますと、ここで議論しているようなものがかなり立体的になるということと、急がなければいけないということと、昨日もフランスの高名なイギリス人の投資の非常に専攻している人と話をしていたんですけれども、何で日本は引き続き石炭とか言っているのとか言って、理解しがたいと言って、私も、合理的な説明はないという話をしていたんですけれども、かなり、その海外から見ると、省エネだ、何だかんだと言って、日本は環境にすばらしいとか言っている割には何、これ、みたいな形で見られているというような社会構造になっているということもあって。ですので、これは経済面で当然メリットが出るような形ではないとみんなが不幸になるわけですけれども、社会構造の仕組みとして、これを入れていかないと立ち行かない。もう足元の、その環境の、気候変動の影響というのもそうですし、かつ、グローバルに見た日本の立ち位置というのもそうですし、金融面が、今言ったような変化を、そういう変化を、これからどんどん金融の人たちが、頭がどんどん変化していくということを考えると、なるべく早く、そのコストとしてCO2が見えるというようなものをつくるのが急ぐべきではないかなというふうに思います。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

神津委員はございますか。どうぞ。

神津委員

どうもありがとうございます。

私は、この委員会において、経済や環境の専門家の方々ばかりの中で、少し異質というか、税務の専門家でございますが、こうした委員会に入れていただいたのも初めてでして、会議に参加することによって、いろいろなことを勉強させていただいております。そうしたことに加え、今、河口委員がおっしゃったように、身をもって、この地球環境をどうにかしなければならないということを体験する中で、非常にビビットに、カーボンプライシングの必要性を感じているところでございます。

カーボンプライシングの方向性について、税理士会の中で、会員に周知をしなければならないということをまず考えまして、我々の会報で、この委員会の委員でもいらっしゃる土居丈朗先生に、非常にわかりやすい論文を書いていただきまして、このカーボンプライシングで地球環境を守るということ、税の世界でも環境問題への対応が必要だということを力説していただいて、会員への周知を徹底したところでございます。

もう一つ、私どものポジションとしましては、税理士法という法律には、税理士会は税制改正の建議権を有するという規定がありまして、この建議権を用いてカーボンプライシングについて言及しようということで検討しております。年末に公表される税制改正大綱に向けて、今、我々の会では、税制改正の意見書をつくっている最中でございます。中心になるのは、当然、法人税、所得税、資産税、消費税のことでございますけれども、今年は新たなファクターとして、カーボンプライシングの提案もさせていただく方向で準備を進めています。6月の理事会で最終的に機関決定し、それをもって権限のある官公署等に建議をしていくわけですが、カーボンプライシングの必要性を訴えていく端緒としたいということで、努力を始めたところでございます。

その意見の方向性につきましては、まだ案の段階ではありますが、カーボンプライシングは、温室効果ガスの削減に資するだけではなく、あらゆる主体に脱炭素社会に向けた資金を含む資源の戦略的な配分を促し、新たな経済成長を実現する役割も期待できるとした上で、導入する際には、他税目の減税措置を講じるなど、中小企業者等への十分な配慮が必要であるというような内容でございます。

以上でございます。

浅野委員長

ありがとうございました。

小西委員、どうぞ。

小西委員

ありがとうございます。

まず、資料2と、それから資料3について4点ほどお話しさせていただければと思います。

資料2、これ、2-3も2-2も、これからの脱炭素社会がどういう社会になるかという意味において調べて、これだけまとめてくださったことに感謝申し上げたいと思います。これ、本当に、IoTとかAIとか、こういった第4次産業革命、Society5.0、これに対するこのCPの果たせる役割という意味でいくと、この対GDP比での炭素集約度が上がることに、このカーボンプライシングは貢献するものですので、まさに、この方向に行くことに、カーボンプライシングが貢献するという意味の資料において読み取る価値が、非常にここから見えることかなと思っております。

この中で、もう一つ、ぜひつけ加えていただきたいなと思う視点は、サーキュラー・エコノミーです。ですので、この特に先進国日本においては、既に、物質、人工物が飽和してきています。まさにこれ、小宮山先生の「プラチナ社会」で言われていることですけれども、例えば、日本には、既にこの先生の新ビジョン2050によりますと13.5億トンの鉄があります。ですので、やはりこれからの社会、これからの先進国日本としては、こういった都市鉱山を活用したサーキュラー・エコノミーを進めていくということが、イコール、非常に脱炭素社会になり、そうでなければ、2050年80%削減、あるいは脱炭素化ということは実現不可能ですので、まさにそれを2050年とか2075年という短期に実現していくには、特に日本の場合は、世界に示せる道としては、そこのサーキュラー・エコノミーという視点が非常に大きくなってくると思いますので、そこもぜひ、ここに一つ加えていただければなと思っております。

それから、資料3のほうなんですが、資料3、これまでの議論の流れからしますと、既存のこの政策、施策が、いわゆるインプリシット・カーボンプライシングで日本には既に入っている。FITもその一つであるということに対して、いや、それにさらにイクスプリシットなカーボンプライシングが必要なんだという流れのための資料だという観点でお話しさせていただきますと、FIT、今、いろいろと見直しがされていますので、これ、見直しの段階の次のPost-FITということとカーボンプライシングとの、その両方のすみ分けといった観点でお話しさせていただきたいと思います。それからいくと、既にもう有村委員、大塚委員がお話しされていることではあるんですが、例えば9ページ、FITが一律にかかるのに対して、カーボンプライシングは、やはりカーボンプライシングのかかった化石燃料よりも、再エネをより選ぼうとするインセンティブが、これ、カーボンプライシングはさらにかけることができます。その意味において、FITよりプラスアルファ、より脱炭素化方向に、このカーボンプライシングは寄与すると思います。

あと、これからは、やはり15ページの黄色枠にも書いていますけれども、電源ごとに合わせた適用ということにおいて、このカーボンプライシング、効いてくるかなと思います。例えば、24円まで下がった太陽光は、近いうちに卒FITするのかもしれません。主力電源にふさわしいコスト低減が求められていますので。その後は、まさに化石燃料にカーボンプライシングがかかることによって太陽光に競争力がつくといった形で、カーボンプライシングで支えられていくことが可能だと思っております。それに対して、風力とか、地熱とか、まだ、今の日本ではコストの高い電源、これは風力とかが大量に入ってくることによって、日本の再エネのコストというのは下がっていきますので、まだ、これはFITで補助していく価値があるという意味において、これ、CPと、それからPost-FITのすみ分けが可能だと思っております。

そしてもう一つ、地域分散型と集中型、両方にカーボンプライシングの効果があると思います。集中電源の場合は、カーボンプライシングのかかる化石燃料とのコスト差が縮まることによって増加させるインセンティブが働きますし、また、地域分散型のほうは再エネを主にバイオマス発電ですね、熱電供給型に、これ、熱も利用して電気も利用するという意味においてインセンティブがかかりますので、熱をつくるのに必要なエネルギーを節約することができます。また、太陽熱利用など、今、熱利用を現在のFITではカバーされていませんので、CPならばカバーされます。そういった意味において、CPプラスPost-FITというものは、双方ともに功を奏する形になり得ると思います。もちろん、次世代電力ネットワークに対する費用負担というのは、この炭素税の税収ですとかオークション収入とかを充てることによって、これも双方ともに効果が出てくると思います。

また、有村委員もおっしゃっていたように自家発ですね、これ、今、エネ電部門の1割ぐらいを占めていますので、2050年に80%削減するならば、そこに無策というわけにはいきませんので、今のFITでは、これはカバーされていませんので、まさにCPが必要な大きな理由になってくるかなと思っております。

あと、もう一つは、この再エネ賦課金、9ページと13ページに出ていますけれども、過去のグラフから将来の見通しまで、この賦課金については見える化されているんですけれども、これ、今回ご用意いただいた参考資料4の67ページに、化石燃料の過去からの推移というのが出ています。大体10兆円から20兆円ぐらい、日本はずっと海外に払っているんですけれども、これもやはり、再エネの賦課金という場合には、同時に示すべき資料かなといつも思っております。

プラス、やっぱり、もう一つ、我々が非常に、目に見えないコスト負担をしているのが、化石燃料の上下に合わせて燃料費調整費もすごく負担しております。これ、今、FITの賦課金が大体2.95円とか書いてありますけれども、過去の燃料費調整額というのを見てみますと、最近は下がっています、マイナスのコストにはなっていますが、例えば、2014年から2015年にかけてですと、1kWh当たりプラス2円から3円ぐらい払っております。そういった燃料調整費がこれからも上下して、電力料金にかかってくるということを考えますと、これからもずっと、この化石燃料費や輸入費を払いながら、それをずっと見えない形で電力消費者は負担していくことになりますので、それも、この再エネが増えることによって減っていくことになります。それとの比較というものにおいて、この再エネの賦課金額というのは、常時見せていく必要があるのではないかなと思っております。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

それでは、神野委員。

神野委員

え、発言してもいいんですか。

浅野委員長

どうぞ。

神野委員

私も財政学をやっておりますので、環境経済には素人でございますので、パスしたいんですが、どうもありがとうございました。いろいろ、これまでの議論をまとめていただいたわけですが、今後あれですね、共通点、共通の認識というのはどこで、違っている何かとか、分かれているのはどこで、どういうふうに分かれているのか。恐らく、脱炭素社会の方向、脱炭素経済、経済社会の方向にかじを切らなくちゃいけないということは、人類史的な課題として、大目的としては、恐らく合意はとれているのではないかと思いますので、その後、下のフェーズに行ったときに、どこが分かれていて、どこが一致しているのかという方向で整理していくことになるのかなというふうに思っております。

それから、私のやっています財政学は19世紀末に新古典派との論争、方法論的な論争を経て生まれてくるわけですが、そのときのテーマというか課題として、経済を形式的経済、これは市場のメカニズムと考えていただいて、市場を分析するんだという経済と、もう一つは実質的経済、これは人間と自然と、経済というのは人間が自然に働きかけて、人間の生存にとって有用なものに変えていく過程ですので、人間と自然との物質、物質代謝といいましょうか、そういった構造をどうやって理解するかというか、それを実質的な経済。当面は形式的な経済をやるんだけれども、いずれは実質的な経済に踏み込まなくちゃいけないという研究者もいたくらいなんですね。

コストというのは、当然ですが犠牲にしたものという意味だと思っています。つまり、あるものを生産するときに、何を犠牲にしたのかと。そうしたときに、今、私たちが議論しているのは、実質的な経済では犠牲にしたもの、コストになっているんだけれども、形式的な経済、つまり、市場にのっけたときに、それが出てこないということを問題にしていると。そこが見える化、あ、見える化というのは多分、学校文法で間違いだと思う。「化」というのは名刺にしかつかない、体言にもつかないということになっていますので、可視化とか、そう表現すべきで、動詞の終止形にはつかないので、「見える」化というのはおかしいと思うんですね。つまり可視化していくということとして、カーボンプライシングを考えていく、考えているのだということではないかというふうに思っています。

それで、先ほど、岩田先生からもご指摘がありましたけれども、恐らく、今後2050年辺りになってくると産業構造が変わっていきますが、それはもう完全に脱炭素の方向に向かって、その産業構造そのものが、非常にCO2その他の排出量の少ないような産業構造に恐らくなっていっているだろうと思うんですね。

ただ、歴史的に見ると、産業構造を大きく変化させるというときにドラスティックに起こると恐慌が起こるわけですが、1929年の世界恐慌でも、価格のメカニズムがやっぱり産業構造を変えているわけですね。つまり、生糸の価格は下がったままなんだけれども、重化学工業の製品は、その後すぐ、つまり価格は高くなっていって、産業構造を転換していくというほうに機能いたしますので、2050年、あるいは未来に向かって産業構造の変化ということが必要で、かつ、それが脱炭素社会に合わせるような形で産業構造が変化していくとしても、それはやっぱり価格体系、このまとめていただいているように、相対的な価格体系を変化させるということが産業構造、つまり私たちの未来の産業構造をつくり上げていく上の基本的というか、決定的な、根底的なファクターになるのではないかというふうに思っています。そういう観点から整理していくということが、今後、重要になってくるかなというふうに考えているということだけ申し上げておきます。

浅野委員長

ありがとうございました。

では、手塚委員、どうぞ。

手塚委員

ありがとうございます。

大変、非常に広範囲にわたる資料をご用意いただいたというふうに認識しております。まず、この前半の経済の話については、ミクロの話、マクロの話を一つずつ、それから後半のFITについて1点、指摘させていただきたいと思います。

まず、ミクロの点なんですけれども、この資料2-1のほうに、中小企業の経常利益は過去最高の水準にあるけれども、なかなか、設備投資の力強さは欠けているというようなコメントがありますが、実は、その中を見ると、まだら模様だと思います。工業統計を見ますと、産業分類の中で電炉業とか鋳物業といった電力多消費産業は、この評価されている期間の中でも、製品出荷が伸び悩み、電力使用額が上昇したということで、不況にあえいでいます。一人当たりの賃金を見ますと、産業全体で見ると4%ほど上昇しているんですけれども、電炉業、それから鋳造業では4%平均賃金が下がっている。また雇用者数も、産業全体ではほぼ1%下がっている程度で、あまり下がってないんですけれども、今申し上げた電力多消費産業では6~8%下がっているということが現実に起きております。この主たる要因が、電力料金という非常に大きな製造コストの上昇に伴うものだというふうに認識しておりまして、そのうちの大きな要素となっているのが、現在、2.95円かかっているFITの賦課金です。

ちなみに、有村委員がおっしゃったとおり、こうした電力多消費産業のFIT賦課金は8割減免されております。8割減免された中でも、これだけインパクトが現実に出てきていて、一部の鋳造業種等では、倒産、転廃業といったことが起きておりますし、賃金カットが常態化しているというようなことがございます。

したがいまして、カーボンプライシング制度を導入する、あるいは現在のカーボンプライシングよりもさらに上乗せしていくというときに、どういうことが起きるかということに関しては、非常に慎重な検討がなされないと、こういう電力多消費産業が日本から出ていってしまうという懸念が大きな課題になっていくのではないかというふうに考える次第でございます。

ちなみに、先ほど、小西委員から、日本には鉄鋼の蓄積量が13億トンあって、これで全部回せるんじゃないかというお話があったと思いますけれども、事実関係だけ申し上げますと、そのおっしゃったような鉄鋼のストックは、現在でも95%リサイクルで使われております。ただし、これは国内だけではなくて世界の電炉を含めたグローバルなデータでありまして、日本の少なくともどこかに放置されているわけではなくて使われていうということです。が、カーボンプライスにより電力コストが上がりますと、国内でリサイクルされるスクラップから電炉鋼材をつくる電炉業は恐らく衰退して、日本国内での電炉法によるリサイクルは、より減る方向に行くだろうということが懸念される次第でございます。

マクロのほうの話をちょっとさせていただきますと、これは資料2-2と2-3なんですけれども、いろいろ話すことはたくさんできる、非常に大きな絵なんですが、2-2に関しては、このとおりなんだろうなと、非常に複雑な構造をうまくまとめていただいていると思います。ただ、よく見ますと、好循環というのが真ん中辺と左下のほうにありますけれども、脱炭素化というのは緑の線矢印の到達点として書いてあるんですね。つまり、ここで出しているイメージというのは、社会全体の生産性が向上し、Society5.0のほうに移行し、資金供給も行われ、国際競争力もつき、賃金も上昇していった結果、社会の資本ストックが最新鋭のものにどんどん入れかわっていって、効率化が進み、結果として脱炭素化が進むだろうということを書かれている絵なんだと思います。それはその通りなのですが、問題は、脱炭素化が先に来て、このサイクルを同じように回すことができるかということについてはどこにも書かれていなくて、逆の悪循環に陥るシナリオも、同じ絵を使って書くことができるのではないかということでございます。

資料2-3の上のほうにカーボンプライシングによる価格シグナルで、この好循環が回るという仮説を書かれていて、一方で下のほうに、緑のところで、逆のネガティブのサイクルが回り始めるリスク要素が書かれているんですが、どっちの要素が大きいかということは、きちんと経済モデルを回していただかないと、定量的には議論できないんだろうなと思います。上のほうが大きいということは、仮説としてはあり得ると思うんですが、一つ気になるのは、価格シグナルという言葉を使っていると、何となくあまり悪いことじゃないような、価格がこういうシグナルをもって社会を是正していくというメッセージのほうが表に出てくるんですけれども、価格シグナルがどうやって出ているかというと、価格高騰から出てくるわけですね。

問題はエネルギーの価格を高騰させることによって、本当にこういうサイクルが回るんだろうかということに関しては、恐らく、経済学者の皆さんでも議論が分かれるんじゃないかなと思います。もっと言いますと、価格シグナルが低炭素のエネルギー、低炭素の電力等のコストが下がるという方向で出始めたら、恐らくこれはこのとおりに回るのでしょうが、問題は、そのコストを上げるほうの、エネルギーコストを上げるほうの価格のシグナルが出たときに、本当にこう回るのかどうかということは立証されてないんじゃないかと思います。

前者の例としてアメリカですが、これはまさにそのとおりのことが起きていて、シェールガス革命によって、石炭よりも安いエネルギーが潤沢に国内で出てくるようになりました。したがって、ここに書かれているようなプラスの経済の好循環が起きていて、先進国の多くの部分で、なかなか経済が上向かないといって悩んでいるときに、一人だけ経済が好循環を増して、AI、IoT革命でも世界で断トツに進んでいっていると、こういう状況が起きているんだろうと思うんですが、それと同じことを、エネルギーコストを上げてできるかどうかということは、恐らく大きなチャレンジじゃないかというふうに思う次第でございます。

ちなみに、このAI、IoT産業に関しては非常に期待が大きくて、私もそのとおり、2050年になると新しい未来が待っているというようなことが起きるといいなと思うんですが、実は、これにも非常に大きな外部性があるんじゃないかというふうに思います。なかなか、この分野って、まだエネルギー経済学的な研究テーマが進んだ論文とかがないんですけれども、私が見ている限りの論文の中には、例えば、世界のスマホですが、スマホそのものはmWですから、大した電気は使わないんですけども、スマホを使うことによって、やりとりされているデータを処理するデータセンターとか、通信で使われている電力が、既に200から300TWh、これはイタリア1カ国の年間の電力使用量なんですけれども、に達しているという論文があります。

一方、さらに、その裏でデータセンターがデータ処理を支えているんですけれども、これの電力使用量がほぼ同じぐらいだということです。これが、今、4Gの世界のスマホで起きているんですけれども、5Gになっていったときに、どれぐらいの電力を使うようになるかということは、これから大きな課題になってきて、きちっと定量的な分析をしていかなきゃいけないんじゃないかと思います。

また、シェアリングエコノミーですが、EVになってシェアリングエコノミー、自動運転が実現すると、物の消費が減るというのは、多分、それはそのとおりのことが起きてくるだろうという意味で、岩田先生がおっしゃったことはそのとおりなんだろうと思うんですが、一方で、需要がどうなるかということをちゃんと議論したほうがいいと思います。

飛行機というのは、1950年代に商用旅客機が導入されたんですけれども、現在飛んでいる飛行機は、当時、導入された飛行機よりも、エネルギー効率は3倍に上がっています。つまり、同じだけ人を運ぶのにエネルギーは3分の1で飛んでいるんですが、実は、稼働率が物すごく上がっているわけですね。ご存じのように飛行機というのは、もう空港でとまっている時間を最小にして、ほとんど全ての時間、空を飛んでいる。そういう意味では、EV、自動運転、シェアリングエコノミーが行うであろう未来の自動車の姿は、飛行機産業は今、既に実現しているんですが、結果として、1950年代の総航空エネルギー使用量に対して、エネルギー使用量は4倍に増えているということです。つまりサービスが安くなることによって需要が爆発的に伸びるということが一方で起き得るということなわけです。こういうことも含めて、このAI、IoT産業の未来というのは語っていかないと、節約ばかり注目した一面的な捉え方だけだと、ちょっと片手落ちかなというふうな気がいたします。

最後に、FITに関してなんですけれども、ご用意いただいた資料は非常に包括的に、今起きていることを、ほとんどカバーして書かれていて、大変参考になるんですが、実は、そのFITとカーボンプライシングの関係についてが良くわかりません。カーボンプライシングの観点から、FITの意味をうまく見たほうがいいんじゃないかと、私も1回この委員会で発言したんですけども、それは何を申し上げたかったかというと、このFITによって、どれだけCO2が減っているのか。つまり、FITのカーボンプライシングは幾らかということなんですね。2.4兆円のコストを国民にかけた中で、CO2が本当に一体何トン減っていて、それをトン数で割ったときに幾らの削減コストを国民が負担しているのか。つまり、現在、FITを経由して、国民が負担しているカーボンプライシングは幾らなんですかと、この答えを是非どこかで計算していただければなと、こう思います。

実際には、2.4兆円のコストというのは、化石燃料の輸入コストを節約できた分をネットでもって計算しています。従って小西委員のおっしゃった十数兆円の化石燃料の輸入コストがあるという点については、そのいくらかがFITを導入して再エネが入ることによって節約できているというメリットのネットの数字が、この2.4兆円として計算されているというふうに認識しております。なので、このFITが今かけているカーボンプライシングに、さらに上乗せして、どれだけかけるかという、あくまでそういう議論を、この委員会の中で議論しているんだろうというふうに私は認識していますので、ぜひそういうものをご提示いただければと思います。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

土居委員、どうぞ。お願いいたします。

土居委員

私は、FITの制度に関して疑っています。もう既に有村委員、大塚委員、小西委員が、非常にうまくFITの仕組みの性質をあぶり出す意見をおっしゃっておられたので、私は、それに特につけ加えることはなくて、それはそのとおりだと思います。

問題は、委員長が、この資料3を踏まえて、そのFIT制度の今後のあり方をここで議論するわけではないというふうにおっしゃったということ自体、私は、その、一体この小委員会は何をやっているんだというふうに思います。私は、ほかの審議会でも委員をさせていただいて、例えば、財務大臣の諮問機関である財政制度等審議会で、例えば社会保障のあり方を議論すると。そうしたら、今度は厚生労働省の、厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会、その財政制度等審議会の資料をそっくりそのまま社会保障審議会に出したら、そこの委員は何とおっしゃったかというと、厚労省は財務省の手先かと、こんな資料を、全く同じものをコピーして出して、我々に何を議論しろと言うんだというふうにお怒りになったと。私は、一方、全然それについて非常に怒っているわけじゃないんだけれども、むしろ、その経団連の方と一緒に、むしろ、その自己負担をもっと増やすべきだとか、そういうような意見で、むしろ財政制度等審議会で言っている意見のほうが正しいんじゃないかという意見を言いましたけれども、これ、今日の資料3を見てみると、結局、その総合資源エネルギー調査会の小委員会の意見をコピペしているだけなわけですよね。コピペして、うまくまとまっているということかもしれないけれども、これは別に環境省がまとめたわけじゃなく、資源エネルギー庁がまとめているだけの話であるんです。

これに対して、その資料3の2ページには、これまでに我々のこの小委員会でどういう意見が出てきたかというと、やっぱりFITをグリーン化するとか、もっとFIT制度に関して、今後どういうふうに対応していくべきかということについての意見が積極的に出ているということなわけで、もちろん、意見を言ったところで、資源エネルギー庁の議論は資源エネルギー庁の議論なわけですけれど、でも、先ほどのその財政審と社保審の話からすれば、大いに政策論議をしてもいいんじゃないのかと、別に、その資源エネルギー庁に遠慮をして、我々はそこについては踏み込まないんだということを言っていたのでは、この2ページで言っておられる委員の方々の意見は全然反映されない。

幸い、この小委の高村委員は、その4月22日の、まさにこの総合資源エネルギー調査会の小委員会の委員を兼ねておられるし、それから、経団連の別の方が委員をされているし、電事連からもオブザーバーで出ているという、そういう小委だということはわかるんだけれども、ほかの委員は全く兼務しているわけではないわけですね。そうするとFITはFITで、まあそちらでお決めくださいと、それを受けてカーボンプライシングということなんですかと言われると、いやいや、もう少し総合的に議論をしたほうがいいんじゃないですか。極端に言えば、合同委員会をやってもいいというぐらいの勢いで本当は議論をしていただきたいと。小委同士で、合同委員会をやるというぐらいの勢いで議論していただかないと、FITはFITで勝手に決められて、場合によっては、そっちのほうが先に結論を得るという話になると、それに拘束されてカーボンプライシングの制度を考えろという話になってしまうということすら懸念をするわけであります。

もちろん、その資源エネルギー庁が、我々が意見を言ったところで、それを受け入れるつもりはないという結論なら、それはそれでいいわけで、いや、だって実際に、財政審も社保審も、それぞれ意見を言っていて、最後は政治でお決めいただくという、そういうスタイルでやっているわけですから、ただ、意見は言えないとか、FITの話をここで、その、こうあるべきだということを言っちゃいかんとかと言われると、ちょっと、その、もう少し議論についての制約を解いていただきたいというふうに思います。

最後に、そのFITに関連して、事務局にお願いというか、むしろその議論が、今後、そのFITも絡めたところで、そのカーボンプライシングのあり方ということの議論の視野があるということであれば、一つ重要なそのFITの経緯ですね、つまり、我が国では、ご承知のように2012年7月に導入された、つまり民主党政権のときに導入されているということです。そのときの議論の経緯はどうなったのかということですね。FITはカーボンプライシングよりも望ましい制度であって、カーボンプライシングをリジェクトした上で、FITの仕組みを我が国に入れたということだったのかということです。別に、そうだったわけじゃないと私は記憶しています。

ですから、結局、政治的にまとまったのがFITのほうが早かったからFITが決まり、もちろん政権交代があって、ここに行き着いたということになるわけですけれども、カーボンプライシングを我が国はリジェクトしてFITができたから、そのカーボンプライシングをFITの上にのっけるのはけしからんというような話には、少なくとも、そういう結論を得ているというふうには私は理解しておりません。

ですから、そのFITを議論するということを、ここで俎上に乗せるということであれば、これまでの我が国でFITが導入されたときに、同時に議論されていたカーボンプライシングの議論というものが、FITとの関係でどういうふうに位置づけられていたのかということは、ぜひ、一旦整理をしていただきたいというふうに思います。

以上です。

浅野委員長

ちょっと、誤解があるかもしれません。FIT制度そのものを、ここで直接に議題にしているわけじゃありませんからという、時々議論がそっちのほうに終始してしまうことがあるものですからね、それを注意しただけのことで。全体としてはカーボンプライスを、今、我々は議論していますから、それとの関係の中でFITがどうかということは、当然、議論していたあdきたいわけです。FITそのものの今後のあり方が主な議題ではありませんと申し上げただけのことです。

私の言いたいことをついでにちょっとだけ言わせていただけば、我が国のFITの導入は、そもそも、教科書的に我々が教わったことからいうと、まるっきり異質な入り方で、特にFITの前身の制度がそもそも、あのときの電力構造、供給構造の中から生まれてきた異質なものであったと。それをそのまま引きずってしまっているという問題があることはよくわかっています。

土居委員

そのお言葉をお待ちしておりました。

浅野委員長

それでは、根本委員、どうぞ。

根本委員

全体を通して、手塚委員が、私の言いたかったことをほとんどおっしゃっていただいたので、その他、少しコメントをさせていただきます。

岩田先生から指摘がありましたように、炭素税に関する定量的な数字を幾つか出していただきました。今日、提示いただいた資料2-1や2-2、2-3辺りは、極めて定性的な矢印チャートになっており、このパスがどういう水準の価格シグナルで、何が起こるのかという分析がありません。恐らく、このチャートを書かれた方の「こうなってほしいな」という希望が書かれている形になっていて、分析の対象や議論の対象とするには少し、まだ足りないなという気がします。

順次申し上げますと、資料2-1と2-2で大きく抜けてしまっているものとして、実は、この国が置かれている状況の1つであり、将来必ず起こる大きな人口減が、視点として抜けており、その点も加味すると、無邪気に「市場が拡大します」など、そういう言葉は使えないはずであるにもかかわらず、全部、「大丈夫、未来は明るい」という形で示されています。それを克服するための手段として、どのように対策するのかを、我々はまず考えなければいけないのではないかと思います。それにカーボンプライシングが本当に役立つかまで考えて議論をしなければいけないだろうと思っております。

岩田先生から、2050年の産業構造はどうなっているのか、という想定をするべきではないか、という話がありました。Society5.0を提唱している団体としては、その点も非常に留意をしており、今後、デジタルトランスフォーメーションが極めて高度な形で、早い形で進んでいくだろうと想定しています。そうなったときに、産業構造そのものが、この国に存在するかどうかすら分からないのではないか、産業というカテゴリーでくくれない話になってくる可能性があると考えております。実は、今の産業構造を前提に、様々な資料は書かれておりますが、もう少し視点を変えないといけないのではないかと考えます。

その際に、電力料金上昇の影響は十分に考えなければなりません。過去、日本はアルミ産業を失い、今、チタン産業を失いつつあります。窯業は、かなり危機的な水準に既に入っていて、2012年から2018年までの間に、60を超える事業所が、倒産および転廃業という状態になっているはずです。加えて、Society5.0の時代になると、先ほど、手塚委員から指摘がありましたデータセンターの問題があります。現時点において、私が承知する限り、アメリカの電力料金の5倍ほどの電力料金を、日本のデータセンターは負担しております。データセンターを本業でやっている方は6倍と話していたように、そうした高いレベルの負担です。電力料金がさらに倍化するような施策をとるかどうか、Society 5.0時代に必須の産業を日本には置かないという政策選択をするかという問題だと理解をしています。

企業が今、お金を使ってないという指摘が幾つか見られました。恐らく、内部留保あるいは利益剰余金の関係を指すものと思いますが、いわゆる大企業の現状としては、かなりの部分が投資に回されている現実があります。実は、企業全体の内部留保の半分以上は資本金1,000万円から1億円未満の中小企業によるものであり、これがどのような使われ方になっているか分かりませんが、現預金の形で残ってしまっているかもしれません。ただ、そうした内部留保は、実際にカーボンプライシングを実施するときにどういう取り扱いになるのかなど、そうした構造的な問題も視野に置きながら検討をしないと、経済を正しく、想定するようなパスで伸ばしていくことは難しいのではないかと思います。

もう一つ、もっとも重要な点として、S+3Eに関して、環境の部分をもう少し重視すべきではないかと指摘がありましたが、これには全く同意できません。経済よりも環境を優先すべき、という考え方をとるのであれば、こうした場ではなくて、違う場で、しっかりと議論をすべきだろうと思います。議論の対象にすべきではない、と言っているわけではありませんが、カーボンプライシングを検討する場において、S+3Eのバランスという原則そのものを変える結論を出すような形になってはいけないと考えております。

FITについては、私が承知する限り、例えば太陽光発電について、買取価格が7円ほどになったとしても、蓄電池等を調整電源等に使うと、供給コストは60円を超える形になります。その間の経費の差は電力会社において、現時点において、負担をしている現実があります。賦課金の問題だけではない現実があることを我々は承知しなければいけません。目に見える賦課金だけの議論をするのではなく、そもそも、かなり一般電力事業者に頼った制度設計になっていることを、現実の問題として理解すべきと思います。

加えて、現在のFIT制度においては、コストが下がらないような制度設計を当初してしまったために、FITはなかなかうまくコスト低下に機能しなかった現実があると思います。さらに、年間2.6兆円という負担は20年続きますので、要するに、この分野に50兆円の補助金を与えることを想起して政策論議をしなければならないと思います。

最後に、再エネの主力電源化は、私自身は賛成ですが、かなり大きな技術開発と、再エネを受け入れるための電力ネットワーク、その他の大きな投資と運用のノウハウ等々が必要になります。そういったものなしに、単純に再エネをつくればいいというわけではありません。日本のコストは、ほぼ下がっていない状況ですので、海外でのコストが下がったからといって、日本が下がるとは限らないという現実を、もう少ししっかり見つめるべきではないかと思います。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

では、廣江委員、お願いいたします。

廣江委員

ありがとうございます。私も、FITに関しまして3点申し上げます。

まず、1点目ですけれども、資料3の6ページに再生可能エネルギーの意義というのがありますが、そもそも、2012年に、このFITが入りましたときには、その目的として三つ挙げられていたと思います。一つ目は、当たり前ですけれども再生可能エネルギーを大量に入れてCO2を減らす。二つ目は、エネルギーの自給率を上げる。三つ目に、実は、最近、ほとんど見られなくなってしまいましたけれども、風力だったり太陽光の発電機産業の振興といった、産業政策的な側面もあるんだということが挙げられていたというふうに記憶をしています。残念ながら、この三つ目のほうは、先ほど来もお話が出ていましたけれども、もうほとんど日本では太陽光パネル、あるいは風力発電機はつくられなくなってしまいました。そういう点が、現在、消えています。そういう面から言いますと、6ページの話にもありますけれども、やはり基本的には、現在、このFIT制度を維持している目的というのはCO2の削減であり、自給率を上げること。これはこれで非常に大事なことだと思いますけど、そういうことだと思います。

ということで、特に、そのCO2の削減の面に焦点を当てて考えますと、先ほど、岩田先生から少しお話が、2,900円というお話がありましたが、私ども、非常に単純な計算を、すなわち電力の排出係数と、それからこの5月から2円95銭になります現在のFITの賦課金で計算いたしますと、実はトン当たり6,000円ぐらいになるということで、かなりの金額であります。もちろん、FITから発生をいたしました非化石証書を販売するということは既に行われておりますし、今後、供給構造高度化法の中間目標が設定されまして、この取引がさらに活発化するということでの賦課金の減というのは期待できますが、やはり、相当程度の賦課金がずっと、これは続くということは覚悟しなければならないと思います。

先ほど来、FITとカーボンプライシングの差異について、ご説明がありました。それはそれなりにわかる部分もありますけど、金額6,000円というのがかかっているということは、やはり、もし仮に明示的なカーボンプライシング入れるということであれば、もう一度しっかり、その辺りを整理する必要があるのではないかなというふうに考える次第です。

それから2点目であります。これは今、実は根本委員がおっしゃったのとほとんど重複しますけれども、確かに日本のFIT買取価格が急激に下がってきました。今後も下がっていくことを期待しています。ただ、ご承知のように20年間の買い取りというのが原則であります。したがいまして、もう根雪のように、過去に買ったものはそのままの値段で続くという事実も、これまた免れることができません。13ページにエネ庁の資料がありまして、こういう形で出ていますが、これは実は2030年に目標としている金額を抑えるためには、こういうカーブですねということを言っているわけであって、多分一般的には、これは突破するだろうということが考えられます。

さらに申せば、これも根本委員がおっしゃいましたけれども、系統対策費用とか、あるいは火力のバックアップ利用というのがあります。今までこういったものはほとんど見える化されていませんでした。今回、ご覧になったかもしれませんが、実は北海道と東北の間の連系線を増強するときに、受益する半分ぐらいは再生可能エネルギーであるということで、賦課金で負担してもらおうじゃないかと、これも本当に、そういう意味では見える化という意味でよかったと思いますが、こういうことをやはり今後考えていかないといけない。

さらに申しますと、昨年の2月に、東京で雪が降りまして、太陽光発電が2日間もとまってしまって、大慌てで火力発電を立ち上げたりしましたけど、こういったものの維持費とかを、やはり今後、考えていかないといけないと思います。再生可能エネルギーを主力電源化するためにはこういったもの全てをトータルで考えて、評価をしていく必要があると思います。

3点目、細かな話ですが、先ほど、燃料費調整制度、いわゆる燃調についてのお話がありました。もうご存じだと思いますが、燃調といいますのは、96年だったと思いますが、導入されています。そのときは、主としてどういう方が、この導入を主張されたかといいますと、実は消費者団体が多かったと。当時、油代が上がっているにもかかわらず、電力会社は値下げをサボっているではないかというようなご指摘がありまして、毎月発表されます日本の輸入価格に連動させて、これを調整するという即効性のある、非常にわかりやすい制度が始まったというふうだと思います。したがいまして、これは本来、上下するものです。料金改定をした基準から、上がったか下がったかで上下いたしますけれども、一方的に上がるものでなければ一方的に下がるものでない。したがいまして、もし仮に今後、化石燃料がどんどん上がるんだという前提を置かれるならともかく、そうでないとするならば、当然上がる一方でありますFITの賦課金と、この燃料費調整というものを同列に扱うべきではないというふうに考えています。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

前田委員、どうぞ。

前田委員

前田です。

今日の資料の中で、資料2-1、2、3、これについて少し、思ったところを述べたいと思います。

先ほど、手塚委員から、脱炭素化のところについて、矢印がついているが、これが実は逆で、日本経済に悪影響を及ぼすということも言えるかもしれないというお話があったと思います。私も、この矢印について少し考えていましたので、それについて述べたいと思います。

この資料2-2ですけれども、下のほうの脱炭素化のところに向かって矢印が二つ下向きになっています。これは一方的な矢印なわけですよね。これの意味するところは、生産性向上と民間消費・輸出入によって脱炭素化を実現できます。そうすると、気候変動による経済的損害や、脱炭素化に取り組まないことによるいろいろなリスクを回避できますというようなことになっていまして、ここで矢印が終わっているんです。さらにその結果どういう良いことがあるか、と考えれば、逆向きの矢印もきちんとあるはずで、それがプラスの意味での逆向きの矢印があり得て、そうすると矢印が両方向きになりますから、好循環といいますか、そういうようなことがきっとできるのではないかと思います。もっというと、そういうロジックでないと、説得力として少し弱いかなと思います。

それはどういうことかというと、まず、背景として、パリ協定以降、世界は脱炭素社会に向けて大きくかじを切っているとか、ESG金融の拡大など世界的な資金の流れも変化している等々と、それから、国内外で脱炭素分野での市場創出が見込まれているといったことがあります、とされています。これは資料2-1や資料2-3の背景としても書いてあります。一方で、資料2-3では、脱炭素化への取組が遅れた場合、サプライチェーンから外されるリスク、資金の調達が困難になるリスク等、いろいろなリスクを抱えることになる。さらには、第四次産業については、イノベーションの大きな波を確実に捉え、日本経済の競争力を高めることが重要、これは言い換えるとこのままではその大きな波に乗り遅れかねない、というようなことが書いてあります。こうしたことは、確かにこのとおりではあるのですが、何かこう、リスクに備えるとか、イノベーションの波に乗り遅れないようにとか、ちょっと弱いというか、後ろ向きな気がします。重要なのですが、ここで話がとまってしまうと、常に流れに後ろから着いていくだけという印象だと思うのですよね。ここで話がとまらない、もっと先にあるものを考える必要があると思います。

むしろ、脱炭素化によって、経済面で何が積極的に良いことがあるのかというロジックをもう少し固める必要があるのではないと思います。それは、恐らく、脱炭素化に取り組むことによって、日本経済の総合的な国力といいますか、経済的な力のみならず、さらには政治的な力といったものを向上させることができる。そういうビジネスモデルというか、国ですからビジネスとは言わないのでしょうが、仕組みという意味で、ビジネスモデルみたいなものをつくり、そして、その仕組みを世界に広げていく、そういうような形というのがあるとすれば、それは脱炭素化から日本経済に戻ってくる矢印になって、日本経済にとってのプラスの力の矢印になるのではないかと考えるところです。

具体的にどういうことがありえるかというと、恐らくなのですけど、この脱炭素化に関連して、国際社会の中でのルールメイキングであるとか、標準化であるとか、スタンダード化とか、そういうようなものをリードするということができると思います。そしてそれは直接的には、国際交渉の中での日本の交渉力を高めていくことにもつながる。背景となる技術力を持って、そこから、技術をリードする力で、基本となるルールをどう作っていくか、技術的なスタンダード、標準化というものはどうするべきかなど世界の流れをリードしていけるのだろうと思います。脱炭素をしながらも価格を抑えていけるとすれば、それは脱炭素化にかじを切っている世界の中での日本経済の強い基礎力になるだろうし、その技術を標準形として広げていけるというふうに思うところです。逆に、そうしたことができないのであれば、脱炭素化の流れに後から着いていって、最終的に脱炭素化は達成したけど日本経済自体はめちゃくちゃになってしまいましたということにもなりかねないと思います。

ただ、こういうルールづくりとか、標準化・スタンダード化のリードというのは、すごく重要で、目に見えない、インタンジナブルな資産、国全体の資産にもなり得るものなのですが、日本は、歴史を見てみると、どうもそういうことがあまり得意ではないというふうに思います。例を挙げれば、古い例だと、テレビのハイビジョンの技術開発がその例でしょう。世界的に見ても先導的な技術研究をしていながら、最終的な世界標準は日本の技術とは全然違うところに行ってしまう。それから、インターネットとスマートフォンの組合せで、もう誰もがご存知のようにiモードを世界に先駆けてつくっていながら、結局廃れてしまう。最近では液晶であるとか、半導体であるとか、日本が一時期世界を席巻しながら、いつの間にか世界の潮流から外れてしまう。

エネルギー関係でも、石炭の高効率利用に向けて多大な技術開発もして、極めて高い技術を持っていながら、世界の最近の潮流は脱石炭になってしまっている。環境問題で言うと、気候変動問題で、IPCCの設立とその地位の確立に関して、日本の学者の貢献というのはものすごく大きかったと思います。それは、多分、学者の間では常識というか、誰も知っていることだと思います。世界的に、学者の世界で、日本人というのはIPCCにすごく貢献している集団だよねというのは誰もが認めるところだと思います。そうでありながら、一方で、気候変動の国際交渉の場では、常に防戦に回らなければいけないような状態になっている。なかなか難しいところです。

話を戻しますと、ルールづくり、スタンダードづくりというところに貢献して、それで脱炭素の世界的潮流というのを日本が後追いではなく、将来に渡ってリードしていけるような、そういう構造、仕組み、仕掛けをつくっていけるのだとすれば、この資料2-2の矢印が逆向きに回って、そこに好循環というのができるだろうと思います。そういうロジックが是非必要だろうと思います。

浅野委員長

ありがとうございました。

増井委員、お願いいたします。

増井委員

どうもありがとうございます。

資料2-1から2-3にかけて取りまとめ、どうもありがとうございます。こちらについて、2点ほどコメントさせていただきます。

まず、1点目が、今回、こういう形で取りまとめていただいておりますけれども、ぱっと見たところ、やはり、その供給側中心のとりまとめかなと思って見させていただきました。やっぱり、炭素税、カーボンプライシングというようなことを考えたときには、需要側、消費側の視点も、非常に重要になっていくんですけれども、じゃあ、その、普通の一般の方が、どういうふうな生活をしているのかといったところが、この資料からは少し見えにくいかなと思います。民間消費というような言葉がここには書かれておりますけれども、じゃあ具体的に、その2050年ですとか、そういう将来においてどういう生活をしているのかといったところ、さらには、そういった生活とこの脱炭素というのが、どういう形で関係しているのか、この辺り、もっと強いメッセージがあってもいいのかなと思いますので、ぜひ、最終的な段階では、消費、家計、国民生活といったそういう側面から、どう変わっていくのか、どう変わっていかないといけないのか、さらに、それに応じて、カーボンプライシングというのが、どういうふうな形で貢献するのかというところを見せていただければと思います。

それに関して、例えばといいますか、もちろんカーボンプライシングという意味では、その費用、コストというところが非常に重要にはなってくるんですけれども、先ほどから出ているIoTというようなことを考えますと、時間の使い方とかというのも大きく変わってくる可能性がありますので、なかなか今の社会の中で将来を見通すということは非常に難しいことではありますけれども、やはり、その辺りも含めて論点を書いていただき、人々がイメージしやすいもの、そういった中で、そのカーボンプライシングの役割というようなものを明示していただければと思います。

2点目は、今の話とも若干関わるんですけれども、今回資料、参考資料3という形で、長期戦略の資料だけが示されていまして、今はパブコメ中ということで、今回、詳しい説明はされなかったと思うんですけれども、一応、その長期戦略ということで2050年、あるいは、その先の姿というのが示されてきているというふうに理解しています。長期戦略というふうに言われながら、実際、僕自身、評価といいますか考えているのは、いわゆるビジョンだけで、少し戦略というにはロードマップ的なところ、「じゃあ、どうすればいいのか」というところが足りないなと思っているところではあるんですけれども、ここでいうビジョン、2050年の社会というのが描かれたときに、このカーボンプライシングというのはどういうふうな形で貢献できるのか、そのビジョンを実現していくためにどう使えるのか、どういうふうに貢献できるのかといったところを大胆でもいいので書いてみるというのも一つのやり方かなというふうに思っています。

逆に、そのカーボンプライシングを導入しないときにどういう形でそれを実現していけばいいのか、それは明らかに非合理的だよねとか、社会的な負担が大きいねということになれば、やはりそのカーボンプライシングの役割というのは非常に大きいというふうな、そういう説明にもつながっていきますので、その辺り、ぜひこの長期戦略に対応させるような形でカーボンプライシングの役割等を書いていただければなと思います。

というのが、参考資料3をご覧いただきますと、カーボンプライシング、一応書かれてはいるんですけれども、78ページのところにわずか10行だけしか書かれていなくて、専門的・技術的な議論が必要であるというふうなことしか書かれていませんので、この委員会では、ぜひその議論をして、その議論からこういうふうな形で貢献できるんだということを示していただければというふうに思います。

最後、FITに関してなんですけれども、いろんなご意見が、今日、出されていましたけれども、まさにそのとおりだと思います。FITの一つの役割として、普及に伴ってコストを下げると、再生可能エネルギーの発電費用を下げるというようなこともあったと思いますが、やはり依然として国際的な水準から見ると、まだ高い水準だというのは事実だと思いますので、そういうところ、なぜ世界と比較してコストが下がらないのかといったところも一つ重要な論点かなと考えます。

そういう中で、じゃあ、このカーボンプライシングを導入していったときにその費用というのはどう変わっていくのかといったところを見るというのも非常に重要な論点、視点かと思いますので、そういったところもつけ加えていただければなと思います。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

それでは、諸富委員、どうぞ。

諸富委員

日本経済とカーボンプライシングの関係について、大変資料をつくっていただいたので、それについてコメントさせていただきたいんですが、その前に根本委員、あと廣江委員も少し言及されましたが、再エネは、結局コストが本当に安いのかという点で蓄電池と組み合わせると結局高くなるという言及がございましたが、通常再エネの需給調整は蓄電池で行うのでしょうかという点が少し疑問に思います。というのは、通常、再エネの需給調整、火力発電でドイツでもやっていますし、確かに蓄電池と組み合わせると非常にコスト高になるんですけれども、例えば日本でも、九州電力で太陽光の出力抑制を行いましたけれども、こういう機関が求めている手順も、まず火力で再エネが非常に発電した場合には抑制して、次に揚水発電、最終的には連系線を通じてこういう技術をやるという順番ですので、再エネのコストをトータルにという場合には、需給調整の何に使っているのかという場合に、火力の調整コストを足した場合にどうなるのか、あるいはその揚水を使った場合、あるいはこういう技術をした場合のコストはどうなるのかという辺りで試算をしていって比較していくというのはフェアな議論ではないかなと。蓄電池を使うというのは、むしろレアなケースじゃないかなというふうに思います。

その点では、再エネで調整電源のコストを加えたコストが通ったときどうなるのかという点については、私の知る限り、研究も既に行われておりまして、再エネのコストと調整電源のコストを合わせても、既存電源と比べて21%コストが削減、恐らく低いという結果が出ているんですね。ですので、どういう形で調整するかという形で蓄電池と組み合わせるというコストだけを比較するのはフェアな議論ではないのかなというふうに思いました。

日本経済のほうですけれども、大変すばらしい資料をつくっていただいたというふうに思います。ロジック、どういうふうにしてカーボンプライシングが日本経済に対していい効果をもたらしていくのかというロジックを詳細に後づけしていただいたというふうに思います。背景には、非常に広範な資料を、資料2のほうでも挙げていただいていますけれども、経済財政白書とか厚生労働白書といった辺りの政府機関の発行する白書を非常に引用されていますけれども、今の日本経済に関する政府で共有されている問題意識を深く協議していただいた上でのロジックだったというふうに思います。

その中でデジタル化とか人口減少とか脱炭素化の中で日本経済が十分適用し切れていないのではないかという危機感が背景にはあるし、またその生産性が非常に低迷しているというこの現状をどういうふうにして改善していけるのかという深い問題意識だというふうに思います。

私自身は、生産性の議論、つまりこれは労働生産性とそれから炭素生産性、両方とも国際的に見て今の日本経済は非常に低い水準にあると。これをどういうふうにして引き上げていくのか、確かに根本委員がおっしゃっていた、人口が減少しているという非常に大きな日本経済にとっての課題ですし、その中で日本経済を引き上げていく上で生産性の向上は非常に大きな生産課題に、今、なっています。そういう意味では、労働生産性とエネルギー生産性、あるいはその炭素生産性をどうやって引き上げていくのかというところが非常に大きな課題として省の中で制定されるのではないかなというふうに思います。

そのロジックを説明する上で今日の資料が一つあるのですが、例えば脱炭素化をしていくことは、通常コストをもたらすと、これはもちろんそうなんですけれども、例えばOECDの2017年の報告書も、OECDでマクロモデルを回して50%確率で2℃目標を達成するとした場合に、経済はどういうインパクトを起こすのかということを試算していますけれども、その結果は、実は、G20の経済成長率はむしろ2.8%引き上げられるという結果になっています。もちろんこれは規制が強まることによるコストの増加が成長を引き下げる効果を勘案しております。にもかかわらず、脱炭素化が引き起こされる新しい投資や産業構造転換、その背後には付加価値、高付加価値の産業構造に移っていくというメカニズムが背後では働いているんですけれども、今日何人かの委員の先生方がそういうメカニズムが働くと、あるいは、岩田委員からも日経センターの報告書で、そういう仮定を置いて試算をされたというご紹介がありましたけれども、そういった背後に大胆な産業構造転換が行われることで、より高付加価値化が進んでいくといったようなロジックが恐らく背後に働いて、プラスマイナスで2.8%成長が引き上げられているというような形にOECDは試算を出したんですね。こういう形で、OECDだけじゃなくて、さまざまな研究論文がマクロ経済モデルを回して大胆なエネルギー転換、あるいは脱炭素化にもかかわらず、むしろそれが経済成長をもたらすという結果がほぼ研究の世界では合意事項だというふうに思います。

ただ、にもかかわらずミクロ的には打撃を受ける産業、あるいは非常に大きなプラスを受ける産業に分かれているという点は、確かに問題かもしれません。ただ、こうやってそういう構造転換を促していくかという点がポイントで、今日の資料というのはそこでカーボンプライシングの役割が出てくる。そういう意味では、カーボンプライシングの役割というのは、温室効果ガスを削減する環境政策上の役割であり政策手段であるだけでなく、実は経済政策上の手段であり、また、産業製作所の手段であるということが今日示されたんだというふうに思います。

産業構造転換を促すための手段、つまりカーボンプライシングというのは全経済領域に対して同じ価格を課していくわけですから、その価格を払ってもより高い付加価値を挙げられる産業かどうか、あるいはそういう企業かどうかによって分かれていくということになります。そのコストを払って収益を上げられない産業、あるいは企業というのはやはり淘汰されていくと、厳しいですけれども、そういう論議になっていくんだというふうに思います。

ちょうどこういった議論というのは、最近話題になっておりますデービット・アトキンソンの『日本人の勝算』という本が出ておりますけれども、あれは最低賃金を引き上げていくことによって日本の労働生産性を引き上げていくことを提言している書ですけれども、あれはまさに産業構造の転換を促す手段として最低賃金の引き上げということを提言しているわけですね。つまり、賃金を払って、その水準の賃金を払って、それよりも高い付加価値を生み出せない産業、企業は残念ながら淘汰される。これはちょうどスウェーデンがこれまで採用してきた経済政策と全く同じ論議でありまして、いわゆるレーン=メイドナーモデルですよね。ですので、同一労働、同一賃金を全産業領域に課した上で、それを上回る生産性を実現できない産業というのは淘汰されていくと。そこで確かに失業は出るんですけども、救済するのではなく、より生産性の高い産業に労働力や資源を移していくような産業構造転換をしてきたことがスウェーデンをずっと高い、日本よりもはるかに高い経済成長を長い期間にわたって実現させてきた一つの要因であります。

ですので、同じような論議がちょうどパラレルに出てきた非常に興味深いことで、一つは労働生産性を高めていくための最低賃金制度、あるいは共通の全国一律の同一労働、同一賃金制度の適用、それを徐々に引き上げていくんですね。他方で、炭素生産性を引き上げるためのカーボンプライシング、これを導入して徐々に引き上げていくということで、日本の産業構造転換を促して、成長を促していくモデルというのが、実際にこれから求められるまさに経済政策であり、産業政策ではないかというふうに思います。そういう意味では、気候変動政策と実は産業政策、経済成長政策がちょうどパラレルといいますか、同一の方向を向いていくということが、今日この資料によって明らかにされる点に非常に意義があったのではないかというふうに思います。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

安田委員、どうぞ。

安田委員

この委員会は名前順のときもあれば逆名前順のときもあって、名前順で諸富委員が出席されているときは、最後的確にまとめるとともに展望を述べられるのでやりにくくてしようがない。諸富委員がアトキンソンさんの著作に触れられていたので、それに関連して今後の産業構造というか、どういう新陳代謝が起きるかというところから少しお話をスタートしたいと思います。

アトキンソン氏の中では、最低賃金が上がっていくことによって競争環境が、ある意味公正な形で徐々に徐々に上がってきたと。その中で生産性が高い、あるいは新しい試みをしていった企業が、残念ながらそれをできなかった企業を吸収していく、そういった新陳代謝によって合併のようなものが起こっていくべきではないかと。なぜかというと、データとして示されているんですけど、日本企業は中小企業の数が非常に多くて生産性が残念ながら低いと、国際的に見ても中小企業の生産性が低いと。これはもちろんつぶさに中身を見ると高い企業もあれば低い企業もあるんでしょうけれども、それは比較的横並びでこの平成の恐らく二、三十年間で頑張って生き残ってきている。恐らく、そこから少し撤退戦というか、令和の大合併みたいなものを起こしていかなきゃいけない。同一産業内で日本の場合に企業数が多過ぎるということはかねてから指摘されていて、結果的にマークアップ率、利益率みたいなものは低いんです。

これは少し業界は限られますけど、昨年、金融庁だと思いますけれども、有識者会議で地方銀行ですね、各県1行しか地銀が仮に残らなかったとしても、23の県においてもう採算割れだと、不採算だと。なので、県を越えた合併とかを認めていくべきではないかというのが金融庁ビジョンで、そういうふうに待ったをかけたのが公取だったわけですけれども、競争政策等も恐らく縮小する市場規模に合わせて、変わっていかざるを得ないような状況が起きていると思います。

そこからスタートして、世に出回っている本であったりとか雑誌関連で注目したものとして、ぜひ、今日これを言及したいと思ったのは、東洋経済の5月18日号で、脱炭素時代に生き残る会社という特集を組んでいます。当委員会でももちろん実業界からも委員の方が参加されていて、間接的に産業界の総意といいますか、意見というのは感じ取っていたつもりなんですけれども、ここでのアンケートを見ると少し様子が違うと。具体的には、大手企業150社にアンケートを東洋経済のほうが送って、108社から回答を得ています。その中で、当方委員会とも関連するような質問が幾つもアンケートの形で出されていて、ご覧になったかと思うんですけれども、重要なところで言うと、例えば、今日も論点として挙がってきたRE100ですね。108社の中で既に加盟済みは13社で、注目すべきは加盟を検討しているというのが42社、合わせて55社なので、過半数がRE100に加盟済みないしは加盟を検討していると。問3のほうで、CO2排出係数の低い電力会社で契約を切りかえたことがありますかという質問もあるんですけれども、あると答えたのは29社、約3割です。なので、足元を、大手企業を見ると、こういった形でかなり脱炭素に向かってかじを切り始めているという実態が一応アンケートではありますけれども、浮き彫りになってくると。

政府の取組に関するアンケートも出ていて、政府に望むことはというのがありまして、脱炭素化を進めるべく、2030年度のエネルギーミックス目標を見直してほしいというのが45社です。その次の脱炭素化を進めるべくカーボンプライシングを導入すべきだというのが7社です。カーボンプライシングに関しては、108社中7社なので、明言して答えている企業は数としては多くないんですけれども、そのエネルギーミックスの見直しを含めて、少し積極的に脱炭素化にかじを切ってほしいと思っている企業は決して少なくないということですね。これは、今日の議論の中でも、たしか牛島委員だと思いますけど、予見性というところで、政府の方針が定まらないと企業としてはもっと積極的に脱炭素化を進めたい意向を持っている企業は多いものの、なかなかそこに進めない。たしか、大野委員だったと思いますけども、RE100、日本企業、加盟数は増えてきたんだけれども、達成までの期限、時間軸が結構長いというご指摘がありました。恐らく、時間軸が長くなってしまうのも、政府が政策として今後こうしていくというビジョンを出さない限り、国内の電力会社の電源構成がどう変わるかということもなかなか先が読めない。その中で軽々にRE100に加盟できないとか、加盟しても短期間でコミットしにくいという実情が背後にはあるんじゃないかと思います。そういった観点から言うと、途中の議論の中で、これは手塚委員でしたかね、やり方を間違えると電力消費構成の高い企業は日本から出ていってしまうという話があったんですけれども、これは逆のことも起こり得ると。要は、CO2排出係数が下がっていかないと、今工場は国内にあるけれども、これは達成できないということで海外に行ってしまう危険性は高いと。さらに、恐らく、RE100に積極的に加盟するような企業は、実際に名前を挙げることもできますけれども、比較的利益率も高くて日本を引っ張っていくような企業なので、彼らが国外に輸出していくというのはかなりマイナスが大きいんじゃないかという形で、少し個人的にも心配なところです。

もう一個くらい言おうと思った。AI、IoTというキーワードもいろんな委員の方から上がりましたけれども、先ほど平成の30年間、なかなか新陳代謝が進まずにじりじりと本来やるべき撤退戦を先延ばしにしてきたんじゃないかとご指摘させていただいたんですが、今後それが切りかわる兆しというのは各所で出ていると思います。この東洋経済のアンケート結果も、足元で企業の脱炭素化へ向ける意向が変わった一つの物差しになるかもしれませんが、もうちょっと市場全体の動きで言うと、例えば労働需要を見ると圧倒的にもう売り手市場になっていると。人を雇えなくなってきているわけですね。そうすると、今までは、買い手市場のときは安い賃金であるとか、あまり言い方はよくないかもしれないですけど、ブラック企業が生き残ることができてきたわけですけれども、それもできなくなってきていると。今後、労働需要の環境と先ほど挙げたAI、IoTによって、新陳代謝がどんどん進む方向にいくと思います。進んだときに、じゃあ、どの方向に向かっていくかという形で、そのメッセージ、あるいは政府が発するシグナル、コミットメントとして、カーボンプライシングを初めとしたこういった社会のほうに行くんだというメッセージを今設定しておかないと、今後放っておいても新陳代謝は進むと思うんですけれども、また非常に、長期的に見て筋の悪い方向にチャレンジをしてしまう企業が出てしまっては元も子もないかなと。なので、タイミングとしてもここで何かカーボンプライシングに代表されるような長期的な日本経済の道筋を、メッセージとして出しておくというのはタイミング的にも僕はすばらしいんじゃないかと思いますということで、最後、言い忘れたとき、2回目は絶対ないんでしょうけど、大体そんなところですかね。すみません。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

大変皆さん、熱心にご発言いただきましたので、残り10分しかありませんので、今、三人名札を立てておられますから、10分を根本委員、大野委員、有村委員でシェアしてください。廣江委員も今駆け込みですが、じゃあ、廣江委員から、簡潔にどうぞ。

廣江委員

駆け込みで申し訳ありません。

先ほど、諸富先生から蓄電池の話がありました。ちょっとそこに言及させていただきたいんですけども、再生可能エネルギーの技術的課題というのは、三つ大きくあります。最もわかりやすいのは、ある送電線にたくさんつながれて系統容量を超えてしまうケースです。これは増設をするのは非常に高いものですから、いわゆるコネクト&マネージというものを、今、日本はやろうとしています。これはもう世界ではどんどんやっているぞと言われていましたけど、実は調べてみたらほとんどやっていない、暫定的にしか使っていないんですけど、日本はこれをやろうというふうに検討を進めていますし、もう既に一部始まっています。

二つ目が、これも言及されました九州電力で起こっているようなエリア全体の需要を超えるような供給が発生するケースです。これは基本的に非常に需要の低いゴールデンウィークであったり、こういったときに太陽光ががんがん発電するのに比例して起こります。九州は相当起こっています。このときにはおっしゃいますように、エリア全体の需要を越えますので、まずは火力を絞り、揚水を動かし、他電力へ電気を送る、それでもだめな場合には出力調整をしていただくということが起こっています。これも実は、今のところはそういう順番ですけれども、場合によってはそこに蓄電池を入れて、それを吸収するということもある程度、可能性としてはあります。

一番の問題は三つ目でして、それは周波数の維持の必要性です。ご承知のように、需要と供給を常に一致させて周波数を維持することが必要です、ここでいうと50ヘルツということになります。このときに、火力がどんどん減っていき、再エネが入っていきますと、周波数調整能力は火力発電が基本的にしていますが、これができなくなってしまう可能性がある。全体として需要を上回るとかそういうことではないんですけども、入っているそもそもの火力の比率が下がってしまって、持っている周波数調整能力を全部出しても追いつかないという可能性がありまして、このときには実は蓄電池が必要になると思います。

現在、北海道電力は、蓄電池を入れた実証をやろうとしています。これは、新エネ事業者の皆さんにも参加をいただいて、蓄電池を入れてそういったものはどうなるかというのを検討しようとしております。

それからもう一つは火力の……。

浅野委員長

申し訳ございませんが、あと三人発言ご希望ですから、そのくらいでおまとめください。

廣江委員

火力の場合には新設と、そういうことのコストも考えておくべきだと思います。

失礼しました。

浅野委員長

根本委員、どうぞ。

根本委員

太陽光発電のバックアップとしての蓄電池について、アンフェアという指摘をいただきましたが、私が申し上げた水準は、資源エネルギー庁が公式に発表している資料からの引用ですので、もしアンフェアであれば資源エネルギー庁にアンフェアと言っていただきたいと思います。

また、アンフェアという言葉に関連して、例えば資料2-1に労働分配率の低迷という価値観の入った言葉がありますが、これこそアンフェアに思います。労働分配率は、景気がよくなれば下がりますし、悪くなれば分配率が上がるということが過去の傾向値であり、2回目と比べてどうかという問題もありますので、価値の入った言葉を資料に使うのは、事務局には控えていただきたいと思います。

最後3点目として、カーボンプライシングが経済政策、産業政策の手段として提供されたという指摘がありましたが、全くそのようには思いません。定量的な数字・水準が入らず、どういうパスで何が起こるかが全くわからない中での資料ですので、エビデンスのないペーパーが今日、目の前に出てきたと思います。とりわけ2-3については、一方的な思い込みによるパスを書いただけの形にしか見えませんので、ぜひフェアな形でいろいろなパスを書き起こしていただいて、さらにそれが起こる数字・水準をぜひ資料に入れて議論に提供していただきたいと考えます。

以上です。

浅野委員長

最後の点は、経済学者からの異議があるかもしれませんが。

大野委員、どうぞ。

大野委員

この短時間で一つデータだけ示しますけども、今日は蓄電池の話が出たんですが、諸富委員がおっしゃったように、自然エネルギーの変動に対応するために、1対1で全部蓄電池が必要というわけではないです。いろんな方法があります。その上で、蓄電池をつける場合のコストで、おっしゃるように60円ですか、経済産業省さんがそう言っているのを私も重々承知しております。しかし、これが世界的にそうかというとそうではなくて、ハワイの最大の電力供給会社、Hawaiian Electricという会社があるんですが、ここが今年4月に電源入札をやりました。六つのプロジェクトが入札で通りました。これは全部太陽光発電と蓄電池、バッテリーをつけたものです。これが幾らかというと、1kWhあたり、8セントから10セントなんです。もう既にこれは現実に起きていることなんです。こういうことができるようになるということは、太陽光発電も安くなってきているし、蓄電池も安くなってきているんです。ですから、日本もいつまでたっても60円かかっちゃうみたいなことを考えていると、まさに競争に負けちゃうんですよ。自然エネルギーがまだ日本で今高いから、じゃあ、それをどうするかと。化石燃料に依存した世界を続けるかどうかということなんですよ。かつて電力業界はあえて申し上げますけれども、原子力発電は1kWh、6円で一番安いとおっしゃってきました。これは全く崩れてしまいました。そうした中で、世界が脱炭素化をする中で日本の産業が生き残れるように競争力を持てるようにどうするか。世界で実現していることを実践するしかないんですよ。その方向で、いろんな問題がありますけれども、努力していく方向を一緒に見つけるのが我々の仕事じゃないかと思います。

浅野委員長

有村委員、どうぞ。

有村委員

安田委員と諸富委員が大きくまとめている中での細かい話なんですけれども、産業界の委員の方からデータセンターなど、非常に電力消費の大きな産業が心配だという話がありましたけど、そういったことに関しては、もう我々はいろんな知見があって、減免措置をとるような制度というのはいっぱいあるわけです。政策も緩和措置も実際行われていますし、研究も行われてきました。鋳物産業でお話がありましたけれども、それに関して言うと、恐らくそれは因果関係は必ずしも明確ではないと思うんですね。鋳物産業は、たまたま電力産業、電力多消費であると。しかも産業として弱くなっていると。それは因果関係は必ずしも明らかではないし、もしその8割減免で2割負担すると負担が大きいということであれば、ぜひ、排出量取引を検討していただきたい。無償配布で負担なしで減免措置をすることができるので、そういったこともちゃんと政策としては実施可能だということを申し上げたいと思います。

実際、先進国経済というのは、どこの国もどうしてもサービス産業化は進んでいって、カーボンプライシングが導入するずっと前から産業には外に出ていて、市場の大きい産業のところにどんどん移転されているところなので、それはこのエネルギーの問題ではないというふうに私としては思います。

浅野委員長

小西委員も発言を希望しておりますので、まだ少し時間が余りましたので、どうぞ。

小西委員

すみません、一つだけ。

FITのカーボンプライシングという、ぜひ出してほしいというお話だったんですけれども、そもそもFITは3E+Sで、国産エネルギー、エネルギーセキュリティの面とそれからセーフティーという面も非常に多かったと思いますので、FITのカーボンプライシングだけで出すというのは、それはちょっと趣旨が違うかなと思いました。ということだけ一言。

ありがとうございます。

浅野委員長

それでは、あと、まだちょっと時間がございますが、ここで打ち切らせていただきます。

事務局からどうぞ、お願いします。

鮎川市場メカニズム室長

本日はありがとうございました。活発なご議論をありがとうございます。

次回につきましては、6月21日、金曜日、13時から最大3時間ということで、こういった予定で今最終調整を今させていただいております。委員長にもご相談した上で、追ってまた事務局より正式にご連絡させていただきます。

本日はありがとうございました。

浅野委員長

それでは、この委員会は夏に向けて少なくとも中間的な整理をしなきゃいけませんので、次回はこれまでのご議論をどう中間的に整理していくかということについてのたたき台を事務局に提出してもらうということを考えておりますので、よろしくお願いいたします。

それでは、本日はこれで終わります。

午後5時57分 閉会