カーボンプライシングの活用に関する小委員会(第3回)議事録

日  時

平成30年10月25日(木)  15:00 ~ 17:54

場  所

全国都市会館 大ホール
(東京都千代田区平河町2-4-2)

議  題

1.これまでの議論のまとめ

2.カーボンプライシングの意義・効果及び課題等

3.これまでの御指摘事項について

4.日中韓カーボンプライシング・メカニズム・フォーラムについて

配付資料

資料1   これまでの議論のまとめ

資料2   カーボンプライシングの意義・効果及び課題等

資料3   これまでの御指摘事項について

資料4   日中韓カーボンプライシング・メカニズム・フォーラムについて

参考資料1 カーボンプライシングの活用に関する小委員会委員名簿

参考資料2 カーボンプライシングの活用に関する小委員会第2回議事録

参考資料3 気候変動問題に関する最近の話題

議事録

午後時0分 開会

鮎川市場メカニズム室長

定刻になりましたので、ただいまより第3回中央環境審議会地球環境部会カーボンプライシングの活用に関する小委員会を開催いたします。

会議の開催に当たりまして、原田環境大臣よりご挨拶をさせていただきます。

大臣、よろしくお願いします。

原田環境大臣

皆様、このたび環境大臣に着任いたしました原田義昭でございます。委員の先生方には、いろいろ大変お世話になっているところでございます。前の大臣に引き続き、ご指導を賜れればと、こういうふうに思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

今年の夏を振り返りますと、猛暑、豪雨、台風と、大変な災害を国中でこうむったところでございます。地球温暖化が進めば、ますますこうしたリスクが高まるということは、気象庁を初め、さまざまな機関等が指摘しているところでございます。

また、今月8日はIPCCの1.5度の特別報告書が公表されました。同報告書によれば、現在の進行速度で温暖化が続けば2030年から2052年の間に1.5度に達する可能性が高いとされています。また、同報告書はエネルギー、土地、都市、インフラ及び産業システムにおける急速かつ広範囲に及ぶ脱炭素社会への移行が必要だということが指摘されているところでございます。さらにパリ協定、SDGsを機会に、世界は脱炭素化に向けて大きく舵を切っており、世界規模での脱炭素指標が形成されつつあります。また、ESG金融やグリーンボンドの拡大など、世界の資金の流れも脱炭素に向けて大きく変わりつつございます。

我が国はすぐれた技術を生かして脱炭素社会への移行を先導し、こうしたビジネスチャンスをつかみ取り、経済成長へつなげていかなければなりません。このような環境と経済の好循環をなし遂げるという観点から必要とされる脱炭素社会への移行は、既存の施策だけでは困難でありまして、本日お集まりいただいた先生方におかれましては、既に2回、活発なご議論をいただいているところでございますけれども、脱炭素社会への移行を実現し、新たな経済成長の原動力となる、新しい施策としてのカーボンプライシングの可能性について、さらに精力的にご議論いただくことをお願い申し上げます。

これをもちまして私のご挨拶とさせていただきますが、今、申し上げましたとおり、地球環境も含めまして、この問題への必要性、国際社会の動きは大変緊急のものがございまして、世界に先駆けてというくらいの思いで、私どもも取り組みます。先生方におかれましても、そういう観点から、しっかりとしたご議論を賜れればありがたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。ありがとうございました。

鮎川市場メカニズム室長

大臣、ありがとうございます。

ここで環境大臣は公務のため、ご退席ということでございます。

(原田環境大臣 退席)

鮎川市場メカニズム室長

それでは、まず資料の確認をさせていただきます。お手元の議事次第の下にございます資料一覧をご参照いただきながら、ご確認いただければと思います。

まず、資料1といたしまして、これまでの議論のまとめ、A3の縦型でございます。

資料2、カーボンプライシングの意義・効果及び課題等ということで、A4横の資料、分厚い資料でございます。

資料3、これまでの御指摘事項について。

資料4、日中韓カーボンプライシング・メカニズム・フォーラムについてでございます。

それから、参考資料といたしまして、参考資料1、この小委員会の名簿。

資料2といたしまして、前回、第2回の議事概要。

資料3といたしまして、気候変動問題に関する最近の話題といたしまして、特に議題にのせるわけではございませんが、先日の1.5度のIPCCの特別報告書と、あとはノーベル経済学賞のノードハウス教授についての簡単なご紹介の資料をつけさせていただいております。後ほどご参考にしていただければと思います。

資料の不足あるいは落丁等ございましたら、お手数ですけれども事務局までお申し出いただければと思います。よろしゅうございましょうか。

それでは、浅野委員長、以降の進行をお願いいたします。

マスコミ関係の方におかれましては、撮影はここまでとさせていただきます。よろしくお願いします。

浅野委員長

それでは、本日もお集まりいただきましてありがとうございます。カーボンプライシングの活用についてということで、議論を始めておりまして、前回、カーボンプライシングの意義、効果、課題ということで第1回の議論をいたしました。これまで1回目の議論、2回目の議論につきましては、この後すぐ、これまでの議論のまとめということで事務局が整理したものをお示しいたしますが、こういうような議論のまとめを積み重ねていって、諮問に応える答申をどうするかという議論に持っていきたいと思っております。

今日は前回に続いていろいろとご意見が出ておりますので、それを踏まえた形での資料をさらに事務局に整理させました。とりわけ諸外国がどういう状況かということについて、もう少し細かくということもございましたので、その辺りのところのデータを出していきますので、前回に引き続きまして、またどうぞ活発なご議論をいただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

それでは、まず、これまでの議論のまとめについて、事務局から説明いただきます。

新原市場メカニズム室長補佐

議題1につきまして、資料1、これまでの議論のまとめという資料に沿って、ご説明いたします。委員の皆様、お手元にA3の縦長の資料をお配りしておりますけれども、こちらに沿ってご説明させていただきます。

こちらの資料は前回、第2回でお配りしました議論のまとめの資料に、第2回で挙げていただいたご意見を追記したものでございます。また、第2回終了後に一部の委員の方々から個別にいただいた修正意見を赤い文字で反映してございます。第2回で挙げていただいたご意見につきましては緑色またはえんじ色で記載してございます。1回目の意見との区別のため、それぞれ第2回のご発言、ご意見につきましては文末に(第2回)というものを目印でつけてございます。本日は時間も限られてございますので、第2回のご意見の部分に絞ってご説明させていただきます。

それでは資料1につきまして、1枚目、表、上から三つ目の枠でございますけれども、黄緑色の枠でございます。議論の進め方につきまして、上から数えて5番目のチェックマークですけれども、ご意見として、よい制度化をすれば効果は上がる、悪い制度化をすれは効果は上がらない、具体的にどのような制度をつくったら効果が引き出せるか、あるいはマイナスの影響を抑えられるかという議論をしたほうが、合意をつくっていく上では道が近いだろうというご意見がございました。

また、日本での低炭素成長のイメージをきちんと共有した上で、カーボンプライシングの位置づけを議論することが重要という意見がございました。

それから、カーボンプライシングの導入に積極的な方も消極的な方も、議論は平行線に終わってしまうような様相が見えるというご意見で、これについては、積極的な方におかれては、中環審の域から出ないような議論に終始しているのではないか。税こそ民主主義によってつくられるものである、どれだけ多くの方に賛同を得るかを考えなければならない。また、炭素税の効果をいかに発揮させるかという立論も必要であって、中環審の域を出るくらいの勢いで考えなければならないのではないかというご意見がございました。

また、導入に消極的な方に向けては、カーボンプライシングの効果に関するエビデンスが大事である。一方で、籠城戦のためのエビデンスであってはいけない。どういった条件であれば受け入れられるかを議論すべきである。こういったご意見がありました。

また、カーボンプライシングの議論は国際的な政治経済問題であるという一方で、日本経済そのものがどうなっているか、こういったところから考えるべきである。こういったご意見がありました。

下の方のえんじ色の枠に行きまして、なぜカーボンプライシングの活用を検討するのかでございます。こちらにつきまして、第2回でご意見がありましたのは、下の方の三つのご意見でございます。

環境対策については、数量調整とともに価格調整をいかに組み合わせるか、その価格調整の部分がまさにカーボンプライシングであるというご意見がありました。

また、気候変動についてはグローバルな公共財をどのようにしてうまく供給していくかが問われている、価格メカニズムを使うにしても、なるべく共通の価格を設定することが重要というご意見がございました。

また最後に、カーボンプライシングの議論と脱プラスチックの議論を対比すると、紙のストローのコストが上がることは仕方がないという議論がある一方で、カーボンプライシングによる値段の上昇は受け入れられないという議論がありました。

おめくりいただきまして、1枚目の裏面でございます。

同じく、えんじ色の枠でございますが、裏面の一番上、地球温暖化対策としてのカーボンプライシングの効果を慎重に検討される視点からは、一つ目でございますけれども、CO2を減らそうとすると、大きなイノベーションが必要である。そうしたイノベーションのために何をするか、議論すべきであるというご意見。

それから、CO2の削減効果については、その効果がカーボンプライシングによるものであるかどうか、丁寧な分析が必要であるというご意見。

デカップリングについては、カーボンプライシングが原因なのかどうか、疑問であるとのご意見。

また、省エネのさらなる推進のために、明示的なカーボンプライシングが必要なのか、考えなければならない。最終的には、全世界で限界削減費用を一致させるような施策をやらないとおかしいといったご意見。

それから、明示的なカーボンプライシングが省エネ、エネルギー転換という目的に対して、どういう経路で、どういう効果があるのか、分析する必要があるといったご意見がありました。また、次の小見出しですが、税制全体のグリーン化という視点につきましては、上から数えて4番目のチェックマークでございます、ここから、実質的な経済としては、人間と自然との物質代謝、質量変化を指す。現在の価格機構にゆがみがあって、質量変化を最適にしていない。地球の温室効果ガスを抑制するために、カーボンプライシングとか価格機構のゆがみを是正するということを位置づけなければならない。こういったご意見がありました。

また、税制から見る重要なポイントとして、間接税のうち従価税と従量税を組み合わせることが重要というご意見がございました。

それから、環境政策の観点から、税で対応するということは、抑制はしなければならないが、その存在物が必要であるということが前提である。税のポイントは収入を上げることであるということですので、課税対象がなくなると税としての意義がなくなるというわけで、政策手段としては、財政学的には、CO2への課税を基軸に置かなければならない。こういったご意見がありました。

また、カーボンプライシングは課税標準がゼロになることを目指す税制である。この点が消費税とは違う。こういった点であるとか、産業構造の転換がなされるほど成長率が高いということを十分強調していけば、社会的なアグリーメント、合意というのは得られるのではないか。こういったご意見がございました。

続きまして、次の小見出しでございます。暗示的炭素価格に関しましては、上から二つ目のチェックマークでございますけれども、省エネ法、高度化法について、実態的には原単位規制がある。また、日本では既にさまざまなカーボンプライシングの施策がある。既存施策についても分析、検討、議論すべきである。全体としてパッケージをまとめることが必要というご意見がございました。

また、現行の日本のカーボンプライシングがどういった形でかかっていて、どういった効果があるか。これを議論した上で、追加的にカーボンプライシングをかけるのであれば、それがどういう効果をもたらすか、議論しなければならない。こういったご意見がございました。

また、暗示的な炭素価格につきましては、そもそも見えないので、それをどのように評価するかが非常に難しいというご意見もありました。

また、省エネ法、高度化法、さまざまな規定がございますけれども、勧告もなされたことがない状況ということで、かなり自主的な取組にお願いしているのではないかというご意見がございました。

続きまして、一つ飛ばしまして、その次の次の小見出し、他の手法や税収の使途を含む政策パッケージが必要との視点。これにつきましては、イギリスの削減効果は経済的手法と原単位規制のパッケージによって実績を上げているということ。また、脱炭素化していくということについての異論はないということで、どのような政策パッケージであればよいかということについて、具体的な提案を出していただきたい。こういったご意見がありました。

それから、カーボンプライシングの優位性を評価することが大事だ。さまざまな手法があるけれども、手法の相互の比較について、昨年度の検討会、これは環境省の検討会でございますけれども、資料があったので紹介すべきではないかというご意見がございました。

それから、各国の中で直接規制であるとか、他のツールと炭素税との整理をどうしたか、また政策パッケージという観点で、使途のほうも重要であるので、どのような整理があったかを紹介すべきである。こういったご意見がありました。

また、カーボンプライシングについて、適切な値段を明示することが第一条件である。ライフスタイル全体を脱炭素型に変えていく仕組みが必要であり、経済へのネガティブな影響を最小化して、ポジティブな影響をどう最大化するか。他の政策との組み合わせがなければ、カーボンプライシングだけで議論するのは難しい。こういったご意見もございました。

また、気候変動はこれから何十年も続く話である。自然災害に対応する上でも税収が必要であって、それはカーボンプライシングというのが最も合理性であるというご意見がございました。

また、高率の税率をかけてはリーケージの問題が起きてしまう。どの程度の税率にするかが重要。また、使途の問題も含めて重要である。こういったご意見がございました。

それから二つ下に行きまして、その他の重要な視点のところで、一番最後の二つでございますけれども、第2回のご意見でしたが、カーボンプライシングの大前提ということで、汚染者負担の問題であるということが必要であるというご意見がありました。

それから、大前提に関しては費用効果性が高いかどうか、こういったものについても大事な問題であるといったご指摘がございました。

次の2枚目の紙に行っていただきまして、えんじ色の枠の一番上でございます。カーボンプライシングと経済の関係についての続きとなります。上から申し上げます。

一番上の小見出し、カーボンプライシングがプラスの影響を及ぼすのではないかとの視点に関しましては、上から二つ目のチェックマークでございます。

温室効果ガスを減らすということと経済成長は両立し得る、こういったことが明らかになっているということは、議論に非常に重要な示唆を与えているというご意見がありました。

また、日本の現状としては、法人部門が貯蓄超過にあり、投資が行われていない。カーボンプライシングが投資の原資を奪うという主張の妥当性については、日本の現状との関係について問われるべきということでございます。カーボンプライシングをかけて、低炭素投資を促すほうが経済にプラスではないかというご意見がございました。

また、国内への投資が少ない状況がある中で、カーボンプライシングが内部留保を市場に回していただくきっかけになる可能性が高いというご意見がありました。

これに対しては、内部留保が無駄遣いされているわけではなくて、企業は企業の株を買うとか、子会社を新たに子会社化するとか、そういった形で投資を回しているといったご意見もございました。

続きまして、次の小見出しですが、カーボンプライシングがマイナスの影響を及ぼすのではないかという視点につきましては、第2回でお出しいただいたご意見としては、チェックマークの上から8番目からになりますけれども、えんじ色のところでございます。

カーボンプライシングによる負の効果は当然ある。国際競争力に対する悪影響や国民負担、こういった正の効果、負の効果、両面を分析して、順位づけして、費用対効果の高いものから入れていくことが正しい。こういったご意見がございました。

それから、高い税率でカーボンプライシングの導入があった場合、国民負担の問題を非常に懸念するというご意見がございました。

また、日本としての国際競争力をどう保っていくか、これも視点として入れるべきというご指摘がございました。

この点に関して、経済界の方が懸念されているのは、輸出競争力の問題か、電力料金の問題か、明らかにしていただきたい。もし仕向地主義炭素税といったものが導入されれば、輸出競争力は問題ない。こういったご意見がありました。

次の小見出し、炭素生産性の見方についてでございます。上から数えて5番目のチェックマークでございます。

日本の炭素生産性が低いことに加えて、製造業以外の産業で、どうして生産性が下がっているか、なぜ日本だけ下がっているかを考えていただきたい。エネルギー税制で石炭を優遇し、税制がグリーン化されていないことが大きいポイントではないかというご意見がございました。

また、カーボンプライシングを入れたからデカップリングが進むのではではなく、むしろデカップリングが進んでいるからこそカーボンプライシングを入れても大丈夫だというロジックにすべきであるというご意見があって、この一方で、次でございますけれども、デカップリングの言葉の使い方について、委員の間で認識が違う。カーボンプライシングが原因で、結果として成長が起こるのではなくて、カーボンプライシングを導入しても経済が停滞するわけではないということが観察されるというのがデカップリングの正しい理解ではないか。こういったご意見がございました。

その次に行きまして、小見出し、カーボンプライシングが入らないことによる日本企業へのデメリットの視点ということで、下の三つのご意見でございます。

カーボンプライシングによって、他国のエネルギー構造や産業構造、イノベーションが加速されるのであれば、5年後の日本の産業を見たときに、競争力の差につながらないかというご意見。

次が、政府がカーボンプライシングをつくらなくても、企業はインターナル・カーボンプライシング等の戦略を立てている。日本企業やグローバル企業の日本における生産を促進していくためにどうすべきか。こういったご意見がありました。

また、企業の懸念事項としては、脱炭素社会で企業がどうやって利益を上げていくかということが問われている。そのためには、一企業では限界があるので、日本全体の仕組みが必要である。こういったご意見がございました。

最後のページでございます。2枚目の裏側でございます。こちらもカーボンプライシングと経済の関係についての続きとなります。

少し進みまして、二つ目の小見出しでございます。中長期的視野に立った検討の視点に関しまして、上から数えて5番目のチェックマークですが、カーボンプライシングがよくないとの意見の方は、脱炭素社会の実現のために、カーボンプライシングなしにどういうオプションがあるのかを教えてほしい。また、企業の日本での設備ビンテージが上がっているという傾向によって、CO2排出量の効率を悪くしているのではないか。こういったご指摘がございました。

最後の小見出しでございますけれども、将来のエネルギー限界費用低下、経済構造変化の視点。

これにつきましては、下の四つのご意見でございますけれども、GDP比で見ると、サービス業の稼ぎの割合が増えているが、構造改革はあまり進んでいない。バリューチェーンはあまり変わっていない。既存の技術や既存のビジネスモデルを守る議論ではなくて、将来、脱炭素社会が実現されるときに、どういう産業構造であるべきか。こういった議論が大事である。こういったご意見がありました。

それから、セクターによっては、一国内ではなくて、セクター全体、バリューチェーン全体で見なければならないセクターもあるというご意見もございました。

それから、経済が停滞している重要な原因は、産業構造が転換していないからである。価格機構を自然と人間との物質代謝に最適にするような方向に近づけておくことが大事。その価格によって、次の産業構造をつくることができ、経済成長につながる。こういったご意見がございました。

最後に、国の役割として、企業が産業ビジネスを行っていく際の基本となるエネルギーをどのように脱炭素化していくか、この点で国の責務は非常に大きいということでございました。また、国が、そうした競争力のあるビジネスに移行するため、シグナルをどう出すかが重要である。このようなご意見が出されておりました。

これまでの議論のまとめについて、第2回でお出しいただいた意見については以上でございます。

浅野委員長

どうもありがとうございました。

ただいまお聞きいただきましたように、前回同様、出されました意見を並べて、ここに記しているような面がございます。ですから、全部が同じ歩調の議論ではないことはもう、見たらわかるとおりです。ただ、どれがどういうグループなのかというグループ分けが完全にきちっとできているわけじゃなくて、積極的意見と消極的意見がきれいに整理されて並んでいるわけでも何でもないんですね。ですから、最後にこれをまとめていくときには、もう一遍よく元の文脈に合わせて分類しなきゃいけないことは百も承知なんですが、ここに全部詳しく書き過ぎると議事録の再録になってしまいますから、どうにも収拾がつきませんので、こういうやり方で整理させていただきました。

前回もお願いいたしまして、自分が言ったこととニュアンスが違う、そんなふうにまとめられたら迷惑だという方、あるいはこのこともぜひ入れてほしいということがありましたら、ご連絡をいただきましたら、それをもとに次回また加えたものをお出しするということにしたいと思っております。今回、赤い字で書いた部分は、先ほど事務局が言いましたように、後にご指摘があって入れた部分ということでございますので、今回も同じようなやり方で整理させていただくということで、よろしゅうございましょうか。

特にご異論がございませんようでしたら、そのようにさせていただきます。1週間以内に事務局にご連絡をいただきましたら修正を加えるということでございますので、どうぞよろしくお願いいたします。

それでは、こういうものがずっとたまってきますと、後の最後のまとめが楽になりますので、丁寧に今のうちからつくっておくことがいいということで事務局にやらせていますが、なかなか私もメモを見ながら、皆様方のご意見については拝見していますけれども、整理はそう簡単なことでもないものですから、必ずしもご意向に沿った整理になっていないということはよくわかります。

それでは次に、前回の続きでございますけれども、カーボンプライシングの意義、効果、課題ということで、特にカーボンプライシングと経済の関係、前回も炭素リーケージの話がございましたので、それから諸外国はどうなっているかということでたびたびご指摘がありましたから、そのようなことを中心に本日の整理をしております。

これから、事務局から資料2について説明をさせますので、お聞きください。よろしくお願いいたします。

鮎川市場メカニズム室長

かしこまりました。

それでは、議題2の資料でございます、カーボンプライシングの意義・効果及び課題等につきまして、まずは資料2に沿って、ご説明させていただきます。

おめくりいただきまして、4ページ目、スライド4でございます。まず炭素リーケージとはというタイトルのスライドでございますが、これは世銀が2015年に出しました報告書の中で定義されている炭素リーケージの説明でございます。

申し訳ありません。ちょっと原文の英語の訳を少し間違えておりまして、むしろ真ん中の水色の箱の中をご覧いただきますと、2行目から、「炭素リーケージと呼ばれる現象は」というところが世銀が定義している定義でございますが、「排出削減コストの異なる場合に、炭素集約的な企業が転出する」と書いておりますが、これは原文ではアクティビティーと書いておりますので、むしろ生産活動といったような訳のほうが正しいかと思います。「炭素集約的な生産活動が転出する場合に発生し、結果として気候変動対策の野心度が低い地域の排出増加」、要するに世界全体の排出増につながってしまうということでございます。

活動の転出というのは、チャネルといたしまして、まず短期のアウトプットで、価格の違いによって、炭素価格がない、緩い地域の企業に市場シェアが奪われる場合と、あと長期の投資チャネルということで、炭素価格のない地域により投資が行われる、つまり生産拠点そのものが移ってしまうというような場合。あるいは、③のこれは、必ずしも直接的な炭素価格の違いに起因したリーケージではないんですが、炭素価格の導入によって、世界全体の化石燃料の需要が低下し、その価格の低下につながり、結果として安くなったからたくさん使うという、ちょっともって回った効果ですが、こういった形でもあり得るということで、世銀ではまとめております。

あともう一つ、一番最後の最後の2行でございますが、現在のところということで、少なくとも先進国におきましては炭素リーケージは有意なレベルでは発生していない。ただし、炭素の価格差が大きい現状、これが継続する限り、そのリスクは存在し続けるといった形で、世銀の報告書においてはまとめられております。

炭素価格、カーボンプライシングは各国それぞれ強度がさまざまでございますが、スライド5におきましては、こういった形で、今年の4月時点で45の国、25の地域が既に導入しているということで、かなり10年前と比べると広がっているという状況。これは今までも何度もご説明しておりますので、中身は省略させていただきます。

続きまして、炭素価格の明示的なものだけではなくて、エネルギー税、要するに暗示的な炭素価格も含めまして、OECDがまとめております実効炭素価格、この価格の上下によりまして、先ほど申し上げたような炭素リーケージが起こるリスクがあるということですので、世界の実効炭素価格を並べてみました。国際競争が起きるような部門というのはほとんど産業部門でございますので、産業部門の実効炭素価格を主要国で並べてみると、このような感じでございます。

今まで何度か出したことのある資料でございますので、詳細な説明は省略させていただきますが、ちなみに産業部門で、主な国で申し上げますと、日本が左から7番目でございまして、アメリカはもう非常に、ほとんどない状態ですが、真ん中のほうに行きまして、例えばお隣の韓国であれば、日本の4ユーロに対して21ユーロ、イギリスですと25ユーロ、中国ですと35ユーロといったような形でございます。

ちょっと次のスライド7は業務部門だけでちょっと切り取れなかったものですが、家庭部門も入っておりますが、これもやはり同じような傾向が見てとれます。

スライド8をご覧いただきますと、運輸部門、道路輸送部門でございます。いわゆるガソリン、軽油に対する実効炭素価格でございますが、これにつきましては日本は先ほどの産業部門等と比べますと随分違って、かなり諸外国と比べても真ん中よりも高い部類に入るといったようなことが見てとれると思います。

続きまして、炭素リーケージに関わる基礎データのもう一つのものとして、日本の国内の企業を対象にして日本政策投資銀行が行いました、2017年6月に公表しております企業行動に関する意識調査の結果のうち、特に生産拠点を、国内の企業が海外に出る、あるいは国内の生産能力を縮小する理由としてどんなことを思っているか、持っているかというようなことでございます。

さまざまな理由がありまして、生産コストの上昇が国内で起きたことによって国外に、国内の生産能力を縮小するといった理由もございますが、一番大きい理由としては、国内需要が縮小したと。逆に、海外の生産能力を増強する理由としては、当該海外の国における需要が増加したからといったようなことが一番多いということでございます。

スライド10をご覧いただきますと、先ほどのスライド9のほうは製造業でございましたが、製造業以外の企業についてもアンケートを行っておりまして、海外事業への取組方針の理由といたしまして、国内の市場が縮小したので海外に展開していく、その他さまざまな理由がございます。

以上が基礎的な背景状況でございまして、スライド11からは、では諸外国が炭素リーケージのリスクにどのように対応しているのかといったようなところについて、少し情報をまとめました。

まず世銀の先ほどの報告書、同じものでございますが、一般論として炭素リーケージのリスクにさらされている産業に対してどのような対応があり得るかといったようなことをまとめてございます。

まず、下の表をご覧いただきますと、①②③のいずれも、排出量取引制度におきますリーケージの対応策でございまして、いずれにしろ無償割当ということでございます。グランドファザリング、過去の実績に基づいて、あるいは部門ごとのベンチマーク等々といった形で、いずれにしろオークション方式ではなくて無償割当といったことによって対処するといったようなことが排出量取引制度におきましては考えられるといったことでございます。

下の④~⑥までが炭素税のほうでございますが、免税措置あるいは還付・補助金といった形で、一度とってから、納めてもらってから返すといったような形。⑥については、むしろ国境で調整するということでございますが、こういった措置もあり得るということでございます。

では、具体的な事例としてどのようなことが行われているかというのがスライド12でございます。

すみません。スライド12もまだ具体的な事例ではございませんで、世銀の市場メカニズム準備基金、PMRとICAPがまとめたものでございますが、先ほど申し上げたような対応の仕方につきまして、より詳細に説明したものでございます。

これを見ますと、いずれにいたしましても排出枠の無償割当というのが書いてございますが、これは先ほど申し上げたとおりでございます。加えまして、オフセットクレジットの活用、あるいは市場のリンクといったようなことも対応方法として考えられるというふうに整理してございます。

オフセットクレジットの活用と申しますのは、ご覧いただきますと、企業の負担の軽減、要するに自分たちの生産活動そのものを変えるというよりは、オフセットクレジットを購入してくることで対処するという意味では、より負担の軽い対応が可能になって、それによってリーケージのリスクが低減できると。さらには、同じような、特に貿易相手国との市場にも、もちろん排出量取引制度で同じようなものがあれば相互にリンクする。貿易相手国の排出量取引制度によって出されるクレジット、これも自国の排出枠の順守に使うことができるといったような形でリンクすれば、お互いの炭素価格が、言ってみれば同じ市場に乗るわけですので、リーケージのリスクは低減されるだろうということでございます。ただ、これは同じ、お互いの国が、制度がリンクしていないとこれは使えないので、一応の対処方法としてはあり得るということでございます。

スライド13のところが、今度は炭素リーケージの炭素税における対応の仕方といたしまして、もう少し詳しいものでございますが、先ほどの世銀の2015年の報告書の中で出た免税、減税あるいは補助、支援におけるサポートのほか、国境調整といったこともございます。さらには、他国の地域との合意による税制協調といったようなことも含めて、あり得るだろうということでございます。

次、スライド14でございます。具体的な事例を幾つかご紹介させていただければと思います。

まずEU-ETS、欧州排出量取引制度でございますが、これまでも何度か出しておりますスライドでございますが、特に右側の上から2番目のセルの割当方法をご覧いただきますと、発電部門は原則としてオークションではありますが、炭素リーケージのリスクのある業種についてはベンチマーク方式によって無償割当を行うという形で対処しているということでございます。

ちなみに、これは今の第3フェーズのやり方でございまして、第1フェーズ、第2フェーズはベンチマークではなくてグランドファザリング、過去の実績に応じて一定の係数を掛けて割り当てるといったような方式をやってございました。いずれにしろ、無償割当によって対処しているということでございます。

EU-ETSにつきまして、第2回でちょっと委員のほうからご発言がありました、カーボンプライシングの制度に関して分析して成果も出ているといったようなことのご指摘も受けまして、EU-ETSについての、ちょっと分析の結果を少しご紹介させていただければと思います。

まず、フランスにおきましては、真ん中のところからご覧いただきますと、EU-ETSの第2フェーズ前期の対象事業所の温室効果ガスの排出量は、非対象事業所と比べて約13%~20%の排出減ということで、EU-ETSによって排出削減が行われたということが示唆される結果でございます。

第2フェーズ前後で対象事業所の雇用数が非対象事業所と比べて約6%~7%減少しているということで、雇用数ですので、いろんな要因はあるかと思いますが、一つ、企業の規模が少し小さくなっているといったようなことも考えられるというところでありますが、下の矢印のところの「ただし」というところをご覧いただきますと、従業員一人当たりの排出量が、雇用数が減る以上にパーセンテージとして削減していますので、排出削減効果というのは必ずしも雇用が減少したから減っているというわけではないといったようなことも、実証分析では行われてございます。

結論といたしまして、対象事業所内の生産移転による炭素リーケージは確認されていないといったようなことでございました。

続きまして、スライド16をご覧いただきますと、同じワグナー教授、共同研究者は違っておりますが、ドイツの製造業の事業者データを用いてEU-ETSの実証分析をしてございます。

同じく第2フェーズ前期の対象事業者のCO2排出量、GHGではなくてCO2排出量でございますが、25~28%ということでございます、削減しているということでございますが、雇用者数や総生産数、まず雇用者数、経済の指数でございますが、まず第2フェーズ前後で対象事業者の雇用につきましては、いずれの手法でも統計的な有意性がないということで、EU-ETS対象の有無によって雇用に影響を及ぼしたという仮説は支持されないといったようなことでございます。

総生産量はむしろ非対称事業者と比べて総生産額が4~7%増加しているといったようなことでございますので、結論といたしまして、EU-ETS第2フェーズ前後で対象事業者の雇用生産等に負の影響があったといったことは言えないといったことで、ドイツの製造業における分析では結論をつけてございます。

もう一つ、スライド17、これはドイツ政府が委託研究で行ったものでございますが、炭素リーケージの形式とチャネルというふうなことでございます。

全体結論といたしましては、炭素リーケージは、一般論、時として特定セクターのEU内事業継続の脅威要因となり得るといったことでございますが、それでも、ほかの市場自由化や技術革新、消費者の需要変化など、ほかの市場要因の影響力と比べれば少ないのではないかといったようなことを全体として結論づけております。

右側の、特に影響の大きいと思われる電力多消費産業への影響への言及ということでございますが、特に電力多消費産業の中でも鉄鋼など、世界市場で競争にさらされる産業におきましては、間接的炭素コストの価格転嫁が難しいとされるというふうな、これは一般論でございますが、しかしながら、EU-ETSの第1、第2フェーズにおいて、こうした産業でも炭素コストの価格転嫁が行われたという分析の既存の研究があるといったようなことも指摘してございます。

では、続きまして、スライド18でございます。炭素税についての炭素リーケージへの対処の一例でございます。

イギリスのカーボンプライスフロア、EU-ETSの枠の価格に加えて、電力網にかけている炭素税でございますが、スライド19をご覧いただきますと、炭素税について、産業部門への配慮措置を講じていると。具体的には、先ほど申し上げた炭素税のリーケージへの対処のうちのサポートプログラム、補助金等の支援措置に当たるものでございまして、真ん中の箱をご覧いただきますと、ちょっと小さい文字で対象業種がずらずらと並んでおりますが、その下の※をご覧いただきますと、対象業種は何かというと、EUが定める排出量取引制度における国家補助のガイドラインの中でリーケージのおそれがあるとされている業種でございます。

この業種の中であって、かつEU-ETSとCPSレート、つまりはETSと電力における炭素税における追加コスト、これがそれぞれの企業の事業者の付加価値が5%以上に当たる、つまりEU-ETS炭素税の影響を強く受ける、相対的に強く受ける事業者が支援の対象ということでございます。

そういったことで、リーケージのおそれにさらされている業種の中でも、特に影響が強いと思われる事業者に対して、こういったような形の支援という形で炭素リーケージの対処をしているというものでございます。

最後、20ページ、参考ということでございますが、日本のFIT、再生可能エネルギー固定価格買取制度におきまして、やはり電力多消費産業事業者の国際競争力への配慮の観点から、賦課金の減免措置といったものが制度導入されております。詳細は省きますが、いろんな基準に応じて2割から8割程度まで賦課金が減免されるといったようなことでございます。

以上が、炭素リーケージについての一般論あるいは諸外国の事例でございます。

続きまして、もう一つの経済や社会への影響ということで、スライド21からは逆進性でございます。

こちらのスライド21の資料は、左から順番に、所得階層別の消費支出の構成でございます。一番下の紫色の帯の部分が光熱費でございますが、ご覧いただけると、左から順番にだんだん光熱費の全体の支出に占める構成が低くなる、逆に言うと左側の所得の階層に行けば行くほど光熱費の割合が高くなるということで、エネルギーに何かしらのコストをかけるというのがカーボンプライシングでございますので、ここにかけると、それだけ左側の所得階層の方々に、より相対的に重くなる、負担が重くなるといったことは一般論としてあるかと思います。

ちなみにでございますが、この中の折れ線グラフが消費税でございまして、たまたまかどうか、ほぼ光熱費と同じような支出割合と負担の傾斜具合になってございます。

続きまして、22からでございますが、では、逆進性について、諸外国はどのように対応しているかといったものでございます。これも前回と同様、上に制度の概要、下に論点に応じた情報という形で配置してございますが。

上が、まずカナダのブリティッシュコロンビア州の炭素税でございます。中身自体は前回ご説明したものでございますが、この中で減免措置のところに明示的に書いていないのですが、下のほうをご覧いただきますと、カナダのブリティッシュコロンビア州におきましては、炭素税収の一部を低所得者層の所得税の税控除、税率引き下げに使ってございます。赤い枠で囲ったものでございます。

続きまして、スライド24をご覧いただきますと、先ほどのイギリスの炭素税でございますが、こちらも同じように、やはり低所得者層への税収を使ったサポートといったことで対処している。それがスライド25でございますが、イギリスはフューウェル・ポーバティという、住宅コストを除く収入のうち10%以上をエネルギーに支出する必要のある世帯に対しまして、左側の緑色の枠の中でございますが、住宅暖房割引、ガス料金や電気料金の割引あるいは定額給付を行うといったような形で逆進性に対処しているというものでございます。

続きまして、スライド26をお開きいただきますと、アメリカのカリフォルニア州の排出量取引制度でございますが、こちらもやはりETSのオークション収入を使いまして、低所得世帯で実施される、今度はプロジェクトの原資にしているということでございます。このプロジェクトの実施事例といたしまして、ゼロエミッション自動車の購入補助などがあるということで、恵まれないコミュニティや低所得世帯及び低所得コミュニティ向けの投資を一定程度行っているということでございます。

続きまして、スライド28でございますが、今度はRGGIの排出量取引制度の中で、これもやはり同じようにオークション収入を用いて逆進性への対処をしております。これはオークション収入を電気料金の補助に一部使っているといったような事例でございます。

続きまして、スライドの30、31ですが、EU-ETSもやはりオークション収入によりまして、今度は収入をどう使うか自体は各国が行うものでございますが、フランスにおきましては低所得者向けの住宅のエネルギー効率向上のための投資の原資にしているといったようなことでございます。

といったようなことで、いずれにしろ、炭素税の場合、概ね税収の減免を行うというよりは、税収を使って、その一部を低所得者層等に還付すること、給付することによって対処している事例が非常に多いといったようなことが見てとれるかと思います。

参考といたしまして、スライド32でございます。スイスの炭素税におきましても、税収を使って基礎医療保険の保険料から差し引く形で全国民に均等に再配分しているということですので、ダイレクトに逆進性への対応とは言いがたい面はございますが、ちょっと特殊な事例として社会保険制度の中で国民に還元している、税収を還元しているといったような事例もございましたので、一応こちらに載せさせていただきました。

以上、今回こちらのほうからご説明させていただきましたのが、カーボンリーケージの話と逆進性の話につきましてでございます。35以降の参考は、より細かいデータあるいは諸外国の制度をずらっと並べるということでございますので、こちらの説明自体は割愛させていただきます。適宜ご参照いただければと思います。

浅野委員長

では、続けて資料3もお願いいたします。

鮎川市場メカニズム室長

はい。承知いたしました。

それでは、資料3でございます。これも前回も同じようなことをしたと思いますが、資料2で拾っておりませんが、前回までの委員からのご指摘の中で、事務局が調べまして、ご紹介できるものを幾つか整理しておりますので、あわせてご説明させていただければと思います。

お開きいただきまして、まず生産ベースと消費ベースの排出量といったようなタイトルがついてございますが、第2回におきまして、委員のほうから、下のほうでございますが、EU28並びにイギリス、スウェーデンのような幾つかの国のケースが紹介されているオックスフォード大の研究におきましては、過去のトレンドで生産ベースのCO2排出量よりも消費ベースのCO2排出量のほうが急激に伸びている。これは何かというと、エネルギー多消費、CO2大量排出製品を輸入するスピードのほうが国内で生産するスピードよりも速く伸びているといったようなトレンドが出ているということでございまして、まさにあれですね、確かにカーボンプライシングを入れた国では排出量は下がっているかもしれないけれども、排出のもとになるような、要するに排出を生み出すような消費は必ずしも下がっていない。これも一種の炭素リーケージじゃないかというご趣旨のご発言だったと思いますが、こういったようなことでございましたので、事務局のほうでも改めて確認いたしました。

カーボンプライシングのあり方に関する検討会、昨年3月に取りまとめをしていただいた検討会でございますが、その中の参考資料に関係するデータがございました。生産ベースの炭素生産性の高い国は、他国に製造業等の炭素・エネルギー集約度の高い生産業を依存しているといったようなご指摘、趣旨としてはこういったようなご指摘の趣旨だったと思いますが、実際に生産ベースと消費ベースの炭素生産性を比較すると、プロットしてみるとどうかといったようなことでございますが、左側、生産ベースと消費ベースの炭素生産性の関係をこういった形でプロットすると、大体は正比例するような傾向が見られますので、必ずしも、何と言いましょうか、炭素生産性、生産ベースの炭素生産性がよくなることによって、逆に消費ベースの炭素生産性が改善されないといったようなことではないということが見てとれるということでございます。

あと、右のグラフのほうは改善率でございますが、やはり同じように正の相関関係が見られるということでございます。

ということでございまして、生産ベースの削減活動、これが地球全体の排出量には影響がないということではなく、地球全体の削減の動きにもつながっているのではないかなといったようなことが見てとれるというふうに考えてございます。

続きまして、スライド3でございますが、こちらも下のほうに点線で第2回のご発言を要約したものを載せてございます。社内カーボンプライシングを内部で設定している日本企業の先進的な試みを共有することが大事ではないかといったようなご指摘をいただきましたので、ただ、これは実は前回のヒアリングにおきまして、CDPのイギリスからいらっしゃったニッキさんからご説明いただいたデータそのままでございますが、一応こういったご指摘を踏まえて、改めてデータを出させていただくと、世界での社内カーボンプライシングは、左側のグラフのとおり、ちょっとビジュアルはニッキさんの資料とは違いますが、データは一緒でございます。こういった形で年々拡大しているということでございまして、社内カーボンプライシングを採用する企業は、何でそれを導入したのかということでございますが、一つには、今後予想される、現在または今後予想される炭素価格を内部化することによって、ビジネスリスクの影響度を評価するために社内カーボンプライシングを入れている。あるいは、低炭素社会への移行に伴って、達成し得る、今は現れていない潜在的な機会を明らかにするツールとして利用している。あるいは逆に、自らのビジネスの排出削減あるいは投資、製品開発などを促すために利用しているといったような企業も存在しているといったようなことでございます。

同じく、日本の状況ということでございますが、日本企業で導入されている社内炭素価格の実例、これはCDPでおまとめになられておりますところから抽出してございます。これは炭素価格を公開している日本企業の11社を抽出してございまして、いろんな価格がございます。かなり高い企業もいれば、10ドル前後の企業もございます。

同じく社内カーボンプライシングについての事例でございますが、より詳しく少し、企業を少し抽出してみましたということで、まず左側が川崎汽船、海運業でございますが、85ドルの社内カーボンプライスを設定し、2050年に向けた企業の方針といたしまして、2011年比で半減するといったような目標を立てている。逆に言うと、こういった目標をビジネスの中で達成するために社内カーボンプライシングを設定したということが言えるのではないかと思います。

左側が第一三共、医薬品業界でございますが、同じく社内カーボンプライシング、こちらは値段は9~27ドルを設定しているということで、2030年の目標を設定してございますが、2015年比で27%削減ということでございます。

スライド6、スライド7は先ほど資料2で出てきたものと同じでございますが、委員の方からカーボンプライシングに関して精緻な分析結果が、成果が出ているといったようなご指摘をいただきましたので抽出させていただきましたが、先ほどご説明したので省略させていただきます。

続きまして、スライド8でございますが、第2回のご発言の中で、下をご覧いただきますと、アメリカではシェールガスの影響が大きくて、非常に削減は進んだのではないかといったような意見もありますが、デューク大のマレー教授のグループが、排出量取引制度の導入前と導入後の排出量変化の状況を要因分解しているという実績結果があるといったようなご指摘をいただきましたので、マレー教授の研究成果を、概要をここに載せさせていただいております。

真ん中の右側のシナリオごとのRGGI域内の電力部門における排出量の比較というところで、要因分解されたものがございます。ご覧いただきますと、まず一番上のリファレンス、対照シナリオが、要因が全て存在しなかった場合の排出量変化でございますが、52%で、下の2~5までがそれぞれの要因、排出量取引制度が導入されなかった場合、リーマンショックがなかった場合、天然ガスの価格下落がなかった場合、再エネ支援策が実施されなかった場合、それぞれ排出量はどう増えるかといったようなことでございますが、それぞれやってみると、実はリーマンショックあるいはシェールガスによる影響よりも、排出量取引制度による排出量の変化のほうが大きいといったようなことが分析結果に出ているということでございます。

これまでご指摘いただいたものに対するもの、全てではございません、まだ引き続きこういったことは続けさせていただきますが、今回ご提示できる部分につきましては資料3のとおりでございます。

以上でございます。

浅野委員長

それでは、ただいま事務局から資料2と資料3について説明いただきました。これらのご説明いただいたことについて、あるいはそれ以外のことでも結構でございますが、ご質問なり、ご発言がございましたら、特にどこという形では制限いたしませんので、ご発言をご希望の方は名札をお立てください。よろしゅうございましょうか。今日は時間がたっぷりありますので、後出しはだめということは言いませんが。

とりあえず、じゃあ岩田委員が途中退席というふうに伺っておりましたので、どうぞよろしくお願いいたします。

なお、時間的にできなくなるかもしれませんが、最後のほうで報告としてアジアの話も報告を受けますが、それについても、もし必要なコメントがありましたら、この時間に、岩田委員に限ってはお出しください。よろしくお願いいたします。

岩田委員

質問したいと思います。

一つは、今日は大変いろいろな資料をありがとうございます。カーボンタックスの税率が高い国を私は注目しておりまして、特にスウェーデンの場合はたしか1万5,000円でしたか、スイスの場合には1万1,000円というような高い水準にあるんですが、興味深いと思いますのは、多分、スウェーデンが一番高いんですが、高い税率をとった場合に税収がむしろ減ってきているという、これをどのように解釈するかというのが一つ目のご質問。

これはページが41ページですけど、具体的に言うと、2013年には240億スウェーディッシュクローナですかね、が、18年には233億スウェーディッシュクローナということになっておりまして、税率のほうはむしろ13年以降、恐らく同じか、あるいはむしろ高まる方向だったんじゃないかと思うんですけれども、それでも税収のほうが減っているということは、政策が非常にうまくいったので、結果として税収がうまく、思ったほど上がらないということによるものなのかどうかということをお伺いしたいと思うんですね。

それの関連で、デンマークの税を見ますと2,944円ということになっていまして、水準があまり高くないのですが、それにもかかわらず11年の税収が59億、17年は35億ということになっていまして、ここもかなり減っているんですよね。これはまたそれほど高くないのにどうして減ったのかなと。政策が成功したのか、それとも、あるいは私の推測ですけど、再生エネルギー、特に風力なんかが盛んですので、そういうところがうまくいって、その結果、税収のほうが減る。どういう違いがあるんでしょうかということであります。

ついでに、もう一つ申し上げると、スイスが1万1,000円ありまして、これは税率を着実に上げてきているんだと思うんですが、上げてきているのにつれて、税収のほうも若干ずつですけれども、増えているということがありまして、こういう国による違いですよね、水準とその上げていくに対して、税収がややいろいろ違いが見られるということについて、どのようにお考えになるかと。

もう一つ、ついでにスイスについてはお伺いしたいのは、輸送用燃料を除くということが書いてありまして、日本の場合には、実は、輸送用のところが非常に税が重くなっておりまして、スイスはこういうものを除いて果たしてうまくいっているのかなと。結果的にCO2の削減というようなものがうまくいくのかどうかというのが、最初の質問であります。

それから、もう一つは、ドイツの製造業とフランスの製造業にどのようなEUのETAですね、排出権取引が制度が影響あったかと、こういう比較がありまして、ここら辺は興味深いのですが、この場合に、ここでのご質問は、炭素税が両国同じなのかどうか。つまり、うまく排出権取引の効果だけを本当にうまく取り出しているのかどうか。仮にドイツとフランスで炭素税の水準が違ったりなんかしますと、その効果でドイツのほうがこれを見ますと、より大幅な影響を受けていると。しかし、EUは共通のマーケットでやっていますので、カーボンプライス自体は。そうすると、この違いが出てくるのはどういうわけなのかなというのが二つ目のご質問であります。

以上です。

浅野委員長

それでは、この点について、事務局、今、答える用意がありますか。あるいは、さらに先生方のほうでコメントをいただければ、なおありがたいんですが。どうぞ、事務局。

鮎川市場メカニズム室長

今のご質問でございますが、ちょっと全部に今すぐに答えられるわけではないのですが、ただ、スウェーデン、税収が下がっている分は、これは排出量もきっちり下がっているので、単純に炭素の排出自体が下がっているので、税収も下がっているという。非常に何というか、炭素税の効果としては、正しい効果が出ているということでございます。

ただ、その4の部分につきましては、ちょっと今、手元に全部データがないので、後ほどまた確認をして、ご説明をさせていただければと思います。申し訳ありません。

浅野委員長

どなたか、何か情報をお持ちでしょうか。

有村委員、どうぞ。特にドイツ、フランスの話がございます。

有村委員

今、岩田委員がおっしゃられたワッグナーの研究の話なんですけれども、ちょっと補足をさせていただきますと、この一連の研究はいわゆるセンサスデータを使って、事業所のデータを使って分析していて、同じ似たような事業者を見つけて、マッチングして分析しているものなので。それぞれの国の分析の中では、同じ税に直面していると。ETSに影響あるものとないものを統計的に比較するというような手法をとっているので、そこの部分はコントロールされているんだというふうに理解しています。

特にフランスは高い炭素税を導入してはおりますけれども、私の理解だと、ETS対象事業者は税を免除されているので、その辺の影響はないんだと思いますね。

浅野委員長

よろしゅうございましょうか。

有村委員

はい。あと1点、この文献に関しての補足なんですけれども、ドイツかな。フランスのほうの分析ですかね。これに関しては、彼らはアップデートしておりまして、結構、経済学の世界では有名なNBRのコンファレンスでこの夏に発表していまして、もう少し最新版があるので、もし事務局に余裕があれば、それに差しかえていただければと思っておりまして。そちらでは、雇用のほかにも生産量とか付加価値なんかを調べていまして、実は付加価値は下がっていないと。なので、生産量としてCO2を減らしたということではないんだというようなあたりまで分析されています。ただ、雇用はやはり減少しているというような感じの分析になっていると。

これも一応つけ加えさせていただきます。

浅野委員長

ありがとうございます。

それじゃあ、今の資料をお読みいただいて、それも配っていただきたいですし、それから、先ほどのご質問について、事務局なりにまた調べて、次回でもお答えいただければと思います。

では、大野委員、どうぞお願いいたします。

大野委員

2点ですけれども、まず一つは、今日の資料の資料2の6ページから8ページまでに産業部門、家庭・業務部門、交通部門の実効炭素価格の国際比較の資料を出していただきました。これは、前回だったと思いますけれども、議論で、日本は明示的な炭素価格はあまり低くないけれども、暗示的なものを含めれば、実際は炭素価格は高いんじゃないかという、そんなふうなご議論があったのに対して、また、私のほうから、たしか神野先生の委員会でその辺の資料があったのでということでお願いをしたのを出していただきたいと思います。

これを見ると、先ほどご説明があったように、特に産業部門については、実効炭素価格、明示的なものも暗示的なものも含めて、極めて日本は国際的には高くない、むしろ低いほうであるということがになったんじゃないかなというふうに思いますので、これはいろんな意見の違いがあると思いますけれども、事実としては、こういう点は確認して、その上に議論を進めればいいんじゃないかというふうに思いました。

二つ目は、これが関連するんですけれども、CO2削減は全部門でやっていかなきゃならないことは確かなんですけれども、やはり日本が直面する問題としては、石炭火力発電所の問題という非常に大きな問題があるというふうに思っています。それで、これは事務局に対して、資料のお願いなんですが、たしか私の記憶では、今、日本では三十幾つかの石炭火力の新増設プロジェクトがあって、合計十数ギガワット、相当大きなものがあったと思います。出していただきたいのは、それが現在の着工段階にもう入ってしまっているものとアセスメントが終わって着工前のものとアセスメント中あるいは構想中、いろいろあると思うんですよね。その段階が今どうなっているのか。かつ、それを1年前ぐらいの時点と比べていただけないかというふうに思うんです。

つまり、私が懸念をしているのは、むしろ石炭火力発電所ができると、これは非常に日本のCO2排出の中でも大きなウエートを占めていますから、かなり大きな先行きに影響があるわけですね。やはりこの検討会が始まって、神野先生の委員会も始まって、相当長い期間、これは議論をやっているわけなんですが、我々が議論をやっている間に、実際には石炭火力発電所開発がどんどん進んでいってしまっているんじゃないかというふうに思うんですよ。ですから、実際、我々はどういう状況の中で議論をしているかということを、お互いに共通認識にするためにも、ぜひ、そういう状況を出していただけないかと、これはお願いでございます。

浅野委員長

はい、わかりました。

アセス対象になっているものについては、大体、アセス課で把握できているんですが、それ以下のものについては、正直、全くわからないですね。

鮎川市場メカニズム室長

公表されたベースのものでの計画中のものといったのは、大体、把握をしてございますので、ただ、1年前と今年でリジットに比べられるかというのはちょっとトライしてみますが、いずれにしろ、大野委員のご指摘、ご趣旨はよくわかりましたので、要するに、石炭火力の喫緊性といいましょうか、どんどん進んできているんだという状況がわかるようなデータというふうに理解させていただきましたので、ちょっとそれは次回までに用意できるべく努力いたします。

浅野委員長

はい、可能な限りちょっと努力していただいて、なかなかこういうのは業界でもわからないと言われるようなこともあるものですから。

鮎川市場メカニズム室長

ぜひ、廣江委員に補足していただけるとありがたいです。

浅野委員長

それでは、手塚委員、どうぞ。

手塚委員

どうもありがとうございます。

最初に、資料3の2ページ、これは私がコメントをしたことに対して、追加でお調べいただいたことだろうと思いますので、ちょっと私のコメントを述べさせていただきます。

この二つのグラフをどう読むかなんですけれども、私の理解は、上に書いてある説明とはちょっと違いまして、まず、左のグラフ、これは生産ベースの炭素生産性と消費ベースの炭素生産性、つまり、生産ベースのCO2排出でGDPを割ったものと生産ベースと輸入されてきた製品にくっついているCO2でGDPを割ったものの相関をとっているんだろうと思うんですね。そうしますと、これは実は45度じゃなくて、縦、横の目盛りの間隔がずれているんですけれども、1対1の線を仮に引っ張ったときに、その45度線というか、1対1の線よりも下側にあるものというのは、つまり外からCO2を輸入してGDPをつくっているということになる。

つまり、ここに書かれているノルウェー、スウェーデン、スイス、フランスと、こういった国は、内部で生産したもの以外に海外でCO2を排出して製造された製品を取り入れることで、GDPを生み出しているから、この線より下側に来るというふうに私は読ませていただいています。

それから、右側の改善率なんですけれども、これは同じものが経年変化でもって、どっちが大きくなっていったかということを、これも同じく45度線の上側にあるか下側にあるかで見るんだとしますと、これも45度線よりも下側にある国に関しては、以前よりもより多く輸入しているCO2によって、GDPを生み出しているという変化が見られるというふうに、私は読んだんですけれども、何か解釈が間違っていますでしょうかと、こういうことです。

それから、2点目ですけれども、この資料2の6ページにございます、これも先ほどからほかの先生方もおっしゃっていますけれども、OECDの実効炭素価格、これはぜひ裏をとっていただきたいんですけれども、日本の2012年の実効炭素価格がCO2トン当たり2ユーロになっているんですけれども、温対税と石油石炭税の中の一番税率の低い石炭だけを加えても多分5ユーロを超えているんじゃないかと思うんですね。なので、仮にそうだとすると、この4という数字がどこから出ているのかなということと、我々の産業の中にいる者の立場から見たときに、とても違和感があるのは、日本では何で世界のほかの国々で行われていないような高度な省エネ投資がなされているかというと、実はエネルギーコストが高いからやっているということが実態としてあるわけで、実際日本についているような省エネ設備で、ここに右側に書かれているような国で入っていないものはいっぱいあるんです。だとすると、日本の産業界が極端に省エネが好きなのか、そうでなければ、このグラフの縦に書かれている数字に何かの誤解があるんじゃないかと、こういう懸念がございます。ぜひ、これはフォローしていただければと思います。

それから、同じ資料の15ページ、16ページにETSの実証、これはフランスとドイツの例ですが、非常に細かな分析結果をご紹介いただきまして、ありがとうございます。大変参考になるんですけれども、フランスのケースに関して、私の持っている印象は2008年から2010年ですから、これは基本的に経済がリーマンショックに襲われまして、ETSがあってもなくても、どっちにしろ生産量がかなり落ち込んでいる、経済活動が落ち込んでいる時期で、排出量が10%、20%削減というのは、恐らく自然に起きたことなんだろうと思うんですが。雇用のほうがそれでも6から7%減っているというのは、かなり大きな数字じゃないのかなと思います。通常、企業の場合には、景気が悪くなっても、できる限り雇用は維持しようという行動をとるわけでして、フランスのように比較的社会主義的な政策をとっている国の中で、雇用がこれだけ減っているというのは、相当大きなインパクトがあったんじゃないのかなという気がいたします。これは単に印象論です。

次のドイツのほうは、もう少し話が複雑かなと思うんですけれども、同じく2008年から2010年で、ドイツの場合も25から28%削減しながら、雇用のリーケージあるいは雇用の減少等が起きなかったということですけど、これは生産額がむしろその間に増えていて、輸出が10%以上増えている訳でして、それなら雇用は減らないだろうなと思います。恐らくこの2008年から2010年の期間を見ますと、ユーロの価値が2008年ぐらいをピークに下がっていますので、ドイツ産業の輸出競争力が上がり、国内の内需が減った分を外需に回して、雇用を維持した結果として、生産がこう伸びたということがあるんだろうかなとは思います。一方で、同じ時期に私ども鉄鋼業の中で個別具体的な例を申し上げますと、ドイツ最大の鉄鋼会社はこのEU-ETSのフェーズ2の直前に、国内で計画中の拡大投資、つまり、経済成長を行うための投資はもはやETSの中ではできないということで、ブラジルに高炉を含む大型の製鉄所、500万トンの製鉄所を数千億のお金をかけて建設して、中間製品をドイツに持ってきて、そこで最終製品にしてEU域内で売るというビジネスモデルをスタートさせています。

これは、我々の目から見ると、リーケージそのものなんですね。本来、EUの中で自由に投資ができるんであったらば、同じ数千億の投資と、加えて恐らく1,000人単位の新規雇用がEUの中で生まれたはずのものがブラジルで生まれているということでございまして、ミクロの面で見たときには、そういう成長投資が外で行われて、結果的に製品を輸入する、CO2を体化した製品輸入が行われて、EU域内の消費を満たすという行動が行われたという、リーケージの現実の例がございます。

ちなみに、実際は2008年から2012年までは、グランドファザリングで、十分な排出量がその鉄鋼会社にも無償で与えられて、結果的にリーマンショックで余らせたという、つまり、棚ぼた利益が発生したという実態もあるんですけれども。ただ一方で、グランドファザリングですから、より大きな排出量をもらえるわけではなかったので、彼らとしては海外に成長拠点を持っていったと、こういうことなんだろうというふうに理解いたします。

そういう政策を導入しますと、企業はその政策に対して、合理的な行動をさまざまなオプションの中からとっていくということの実例じゃないかなというふうに思いましたので、ご紹介を差し上げます。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。この点については、特にいいですか。

鮎川市場メカニズム室長

最初の資料3のスライド2についての御指摘は、手塚委員の意見でございますので、我々のから正しい、正しくないを申し上げる立場ではないです。また、資料2のスライドの6について、口頭でも補足すべきでしたが、このデータ上は、日本の温対税はカウントされていないため、その分は足し算をしなければいけないものだと思います。

浅野委員長

わかりました。

じゃあ、根本委員、どうぞ。

根本委員

全体感として、資料をまとめていただきありがとうございました。第1回のときから申し上げていることですが、世界全体でCO2を削減するために、日本としてどういう貢献ができるかという基本に立ち返って常に考えなくてはいけない。そのことを忘れないようにしなければいけないと改めて感じているところです。

今日はリーケージと逆進性のお話ですが、前回もご指摘申し上げたとおり、先行事例として紹介いただいているカーボンプライシングは、リーケージが起こるほどの水準になっていないのではないかという指摘をさせていただきました。要するに、リーケージが起きていないというエビデンスを幾つか提示されているので、そのように申し上げた次第です。申し上げるまでもなく、米中あるいはNAFTA諸国の動向を見ても、明らかに、関税やその他の要因によって、産業のシフトが起きるということは目に見えている状況ですので、カーボンプライシングを実施してもリーケージは起きないということを強調し過ぎることは、あまり有益ではないと考えます。さらに、リーケージが起きる起きないにかかわらず、地球全体の温室効果ガス排出量の問題として立ち返って考えて、地球全体の排出量がどうなるかということを常に考えないといけないだろうと思っています。

また、繰り返しですが、全体のエネルギー構造や産業構造等々も踏まえて分析をしないと、間違った分析結果を導いてしまうのではないかと思います。資料の6ページから8ページまで、いろいろとデータをお出しいただきましたが、各国の産業構造やエネルギー供給構造が全く違っているので、実は、炭素価格が幾ら高くても関係ないという国もあるかもしれないと理解しております。加えて、大野委員のほうから、これは暗示的炭素価格も含むというお話がありましたが、資料の6ページから8ページまではエクスプリシットな部分だけ、しかも、エクスプリシットな部分も一部含まない数字が出ていると理解をしております。ここで示されている価格にインプリシットな部分も加えた形での比較をしないと、よろしくないのではないかということを繰り返し申し上げたいと思います。

加えて、手塚委員から既に資料3の2ページについて指摘がありましたが、私もこの表を見させていただいたときに、少し違和感がありました。要は、前回手塚委員が指摘がされたことに対する答えとしては、恐らく同一国で時系列でこれを分析した図を出さないとあまり意味がないと考えます。つまり、生産ベースの値が低い国というのは、国内生産された財を消費すると当然、消費ベースも低くなるので、それを転記しただけの形になって、それを解釈しているだけになってしまいます。設問に答える時系列データがないでしょうか。ない物ねだりであったら申し訳ないのですが、そう感じる次第です。

さらに、解釈の問題として、同じ資料3の3ページ等で、社内カーボンプライシングの導入が世界的に拡大している旨、記述があります。確かに拡大していることは事実ですが、全世界の企業数から見ますと、極めてネグリジブルな値でしかないことも、一方において事実です。このことの解釈もまた別途この場で議論をすべき課題ではないかと感じるところです。

以上です。

浅野委員長

最後の点については、この間の懇談会のときの話では。ちょっとあれはどういう整理でしたかね。まだきちんと記録できていませんか。何か全体としての市場占拠率みたいなことを言われて、それで結構カバー率が高いからみたいな説明をしておられたんでしたか。

鮎川市場メカニズム室長

そうでしたね。ちょっとすみません、手元にあれがないのでわかりませんが。

浅野委員長

ちょっと前回のお話の記録ができたら、もう一遍、照合してみてください。

ほかのことでは何か、事務局、お答えありますか。

鮎川市場メカニズム室長

はい。資料3のスライド2のところの2番目のご指摘でございますが、時系列のものがもしあればでございますが、確認をさせてください。

最初のご指摘の世界全体の排出削減が大事で、特にリーケージが起きていないのは、リーケージが起きないのは、それはカーボンプライスのレベルが低いからじゃないか。つまり、削減効果が生まれないじゃないかといったようなご指摘かと理解をしております。後ほど有村先生に補足していただければと思いますが、そういったようなご指摘も念頭に置いて、この資料2のスライドの15、16ということで載せてございまして、いずれも温室効果ガスないしはCO2の排出量の削減はできているといったようなところで、リーケージは起きていないけれども、GHG排出量の削減にはある程度寄与しているんではないかなということの示唆も含めまして、この15、16のスライドをお出しした次第でございます。

浅野委員長

後でまた議事録を起こしてみて、少し整理をしてみてください。

では、廣江委員、どうぞお願いいたします。

廣江委員

ありがとうございます。

まず、大野委員からのご質問があった件ですけれども、今、日本に発電事業者というのは確か600社ぐらいありますが、各社ともに毎年、10カ年の供給計画を出しているはずですので、多分、そこから数字は拾えるというふうに思います。大野委員から1年間の変化というお話がありましたけど、私はできればそれに加えて5年間とかぐらいの変化もとっていただければいいのではないかなと思います。といいますのは、これは全くの仮説でありますけれども、やはりあれだけたくさんの石炭火力の計画が出たのは、私どもは一生懸命原子力を再稼働させるつもりでありましたけれども、もしかしたら本当にできるのかというような疑念があったかもしれない。そのため、まずはやはり安定供給のための石炭火力というような計画もたくさんあったのではないかと。これは私の全くの仮説ですから、実証されないかもわかりませんが、そういう面からいいますと、できれば、震災の2年ほど後ぐらいの数字もとっていただいたほうがいいのではないかなと思います。

それで、私から2点申し上げたいと思います。1点目は、やや重箱の隅をつつくような話で恐縮なんですけれども、9ページ、10ページに政投銀さんのアンケートの結果があります。多分、ここでご指摘になっているのは、今、企業にとっての非常に大きな関心事は国内需要の減少であって、費用はそれほどの要因ではないということかなというふうに私は解釈いたします。ただ、これはまさにそういうことだと思いますけれども、一般論として、永遠の要素として国内事情云々ということではなしに、今はご承知のように、少子高齢化が非常に日本の国にとっては大きな課題になっていますので、当然、そういうことからいうと、これから数年間の間に投資をするとか、国内の生産を増やすというときの大きな判断要素になると。逆に申しますと、最近、エネルギー価格は若干上昇ぎみでありますけど、基本的には物価は落ちついています。したがいまして、そういったことを考えたときには、今すぐにそういったものが大きな国内生産の縮小につながるということではないのではないかというふうに、少なくとも回答者が判断したのではないかなというふうに私は見ました。

すなわち時代によって変わるのではないかと。もう当たり前のことですけれども、企業にとって非常に大事な利益といいますのは、販売単価掛ける販売量マイナス費用です。これは三つともそれぞれ大事であります。それは、時代によって重要性というのは変わってくるはずでありまして、したがって、あまり短期的な今の時点だけで、コストは関係ないのですよということではないのではないかと。ちなみに申しますと、今から五、六年前に日本企業は六重苦を抱えているということをよく言われていました。一世を風靡していました。改めてその六重苦って何であったかというのを調べてみたのですが、実は法人税の高さ、円高、それから電気料金というのが入っていましたが、少なくとも国内需要というのは全くそこにはなかったわけであります。それぐらい、ことほどさように、やはり物の見方って変わっていきます。一方で、地球温暖化対策というのは、非常に長い期間をかけて着実に進めないといけない対策と思いますので、今、企業がどう見ているかというだけであまり短期的な判断をするのはいかがなものかなという感じがいたします。それが1点目です。

2点目ですが、これはあまり本日の議論には本質的にかかわりはないのですけれども、ちょっと誤解があるといけませんので、20ページのFIT制度の減免についてです。ここで書いていらっしゃることは、まさに事実でありまして、そのとおりなのですが。あえてつけ加えさせていただきますと、ドイツとの比較を少し申し上げたいと思っています。FIT制度というのは、ご承知のように、普通の電気代に比べて、賦課的に国民の皆さんからお金を頂戴して再生可能エネルギーを導入・促進しようという政策です。賦課金という用語がありますけれども、これは一般の電気料金にプラスアルファで幾ら払っているかということです。直近でいいますと、今、国民の皆さん方には2.4兆円、年間にお支払いをいただいています。ドイツでは、FITの対象になっているのは、ダム式の水力は対象じゃありませんので、いわゆる、そういった新エネルギーの導入量は多分、日本の倍ぐらいあると思いますが、実は賦課金の額は3.1兆円ぐらいです。実は桁違いじゃないです。逆にいいますと、日本のFITの買い取り価格がいかに高いかということだと思います。

ここで申し上げたいのは、実は減免なんです。確かにここにありますように、日本も減免をしてもらっていまして、最大8割の減免がありますが、これに使われている費用は直近でいいますと、900億。ドイツは一体幾ら使っているかというと、6,500億です。これはもう完全に桁違いです。それぐらいやはり産業に対して、ドイツは国民を挙げて、配慮していらっしゃる、非常に立派だなというふうにも思うわけでもあります。日本が果たしてそれが可能かどうか。それから、もう一つは、日本の900億の原資は相当部分が石油石炭税であり、場合によっては、これは産業が負担しているといってもいいようなものです。ところが、ドイツの場合のFITは、全てこれは国民が負担をしています。ここの議論とはあまり関係ありませんけれども、そのあたりの事実関係は少しご認識をいただきたいなと思って、発言をいたしました。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

ほかのところでのヒアリングでも、石炭火力については、計画はとにかく立てなきゃいけない、立てるけれども、なかなか現実には厳しいというお答えをいただいてはいますので、多分、大野委員がおっしゃっていることについては、ある程度、データが出てくると思いますけれども。

それじゃあ、前田委員、どうぞお願いいたします。

前田委員

東京大学の前田です。

今日のお話、大変おもしろく聞かせていただいてきました。カーボンリーケージの話が最初のほうで、それから、逆進性の話が後ろのほうで、大変おもしろかったんですが、ただ、少し疑問に思ったことがありますので、それを述べさせていただきたいと思います。

カーボンリーケージですが、最初のほうに定義がありまして、ページでいうと4ページですよね。カーボンリーケージとはということですけれども、排出削減コストが異なる場合に、ここは修正がありましたけど、アクティビティが高い企業が転出する場合に発生し、結果として気候変動対策の野心度が低い地域の排出増加につながると。これは、要するに世界全体で見て、一つの国から別のところに排出源が移るということだと思いますが、これは、だけど、いいことなのか、悪いことなのかということは少し考えなきゃいけないかなというふうに思います。

今日のお話では、この後に例えばカーボンリーケージの起きるリスクとかという言葉がありますので、このカーボンリーケージそのものがよくないというような論調で話がまとめられているように思います。ただ、例えばですが、日本から製造部門、特に工場なんかが海外へ移転して、日本には知識集約型の部分だけが残るということがあったとしたら、それはそれで、ある意味とても日本の知識集約性を高める方法にもなるわけで、見方によっては、ある意味、日本の目指すべき一つの製造業の方向性じゃないかということも言えるわけですよね。

つまり、排出源が海外に移転するということ、それ自体についてのよしあしというのは、必ずしも言えなくて、見方によっては、日本にとってはむしろそれによって日本の排出量が減らせるわけですから、これは大変よいと言えます。一方、移った先で日本ほど増えなければ、それはそれで世界全体で見てよいということも言えるわけですよね。そこまで全部考えないと、プラスマイナスは、両方は言えないかなというふうには思います。

それで、今日のお話の中では、恐らくこういう話が出てきた前提としては、そもそもカーボンプライシングは大変よいことで、これはやるべきだが、ただ、悪影響もあるかもしれないという反論がたくさんあって、それに対して、どういう緩和策があるかというお話の脈絡だったと思うのですよね。だから、そういう意味で、カーボンプライシングの悪いエフェクト、影響というのをどう緩和するかという話の脈絡でもう少し整理したほうがわかりやすいかなと思います。それこそが本当の論点かなというふうには思うところではあります。

そうすると、またさらに話を進めると、一方で、いろんな緩和策みたいなのをやるわけですね。今日はたくさんいろんな事例、それから、いろんな研究例というのを教えていただいたと思うのですが。一方で、これによって、本来のカーボンプライシングのよい面、つまり、CO2を減らすという、そもそもの目的そのものをそいでしまう可能性も十分あるわけですよね。それはカーボンリーケージをとめるために、いろんな政策をしました。それにより日本の企業は国の外には出ていきませんでした。となると、それは結局、本来は海外移転でしか排出を削減できなかった企業が無理やり国内にとどめ置かれたということにもなりかねないのだと思います。言い方を変えると、一時的になんとか減らせてもそれ以上の削減は不可能、長期的には海外移転がベストソリューションという企業とそもそもが日本の中で減らさなくていい企業だけが残っているということになってしまいます。本来、日本国内に残って日本の中で活動しつつ自由に排出を減らさせることが目的だったはずなのに、結果的に排出を減らさなくていい企業と減らす方法が制限された企業だけが残る、それによって、削減余地のない企業に高い課税だけを続けるということになりかねないように思います。これでは、あまりそもそもカーボンプライシングをやっている意味がないということになってしまうわけですよね。だから、もしかしたら、派生する事象を悪い影響だとして制限をするというのは、本来のいい影響や目的を消してしまうという可能性をはらみます。そういうところでもこの整理の仕方で論点がぼけてしまうともったいないかなというふうには思います。

同じことが逆進性の話についても言えます。もともと逆進性の話は、税を議論するにはとても重要であると思うんですが、そもそもこのカーボンプライシングは何のためにやるのかと考えてみると、これはGHGを減らすためなわけですよね。一方、消費税みたいなのは、別に消費を減らすためにやるわけでは全然ないわけですよね。だから、そもそも消費税で逆進性だという議論、それが大事だという議論と、カーボンプライシングの中で逆進性が大問題だという議論は全然違うものであって、それを一緒くたにしてみると、本当の論点がまたずれてしまうように思います。論点がずれるというかぼけてしまうというか、あえて論点をぼかして議論を複雑にするのは一つの方法ではあるんですが、論点を整理するときには、少しかえってマイナスかなというふうには思うところです。

そういうことも全体を考えてみると、制度としてつくるときには、あまり本質的でないところを緩和するための制度を後から後からつけ足して、制度そのものを複雑にしていくという方向性に、議論を持っていくようなことはあまりすべきではないと思います。そのもともとの制度の本質、本当の目的は何だったのか、これのための明確な制度をつくるべきであって、あまりほかのいろんな派生するもののために制度をごじょごじょといじっていって、最終的に何をやっているかわからないような制度というのはつくるべきではないと思うところです。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。そういう視点をご指摘いただいたのは貴重だと思いますので、いろいろな意見も出てくると思います。

森澤委員、どうぞ。

森澤委員

ありがとうございます。社内カーボンプライシングの部分で、CDPのデータ、日本企業の先進的な試みを共有するということで使用していただいてありがとうございます。SBT、Science Based Target、環境省で企業版2℃目標という、日本名をつけていただいていますが、こ、SBTを設定されている企業は再生可能エネルギーの使用の予定を盛り込んでいらっしゃるということを少しご紹介させていただきたいと思います。

再生可能エネルギー使用を考慮しないと企業版2℃目標というものは達成困難です。再エネの供給量が日本で拡大する、また、価格が低下するという前提で企業は企業版2℃目標を設定されています。今、おっしゃったように、日本国内で再エネの供給量が増加する、価格が低下するという事が生じないと、反対にリーケージが起きてしまうリスクがあります。今日、リーケージと収入の使途をご説明いただきましたが、再エネの価格が下がらない場合のリーケージということも考えられます。石炭火力について、大野さんからお話しいただき、全く同感です。その資料をまとめていただきます際には、投融資の行動についても、ぜひまとめてください。

もう一点、TCFDの提言につきまして、9月現在で、世界で500超の企業・団体が支持表明この中で日本企業29社金融機関14社、事業会社15社が賛同署名しています電力の需要側、投融資側であり、石炭火力に対します投融資に関して、どのように考えていらっしゃるかという部分もヒアリング頂けるなら入れて頂きたく思います。

企業も再生可能エネルギーが増えていかないと、再エネが促進できないんであれば、日本から生産を移せばいいという話が先ほども少し出ましたけれども、反対に本当に出ていかないといけなくなる企業も生じる可能性があります。海外の取引先から再エネ使用を、サプライヤーさんとして求められているという状況にあります。

浅野委員長

ありがとうございました。

安田委員、どうぞ。

安田委員

前回、お休みしている間に随分と議論がまた一段とヒートアップしているようで、この会場がヒートアップしても地球はクールダウンしなきゃいけないということで、建設的な方向に議論をできればまとめていきたいなと日々考えております。

まず、今日の報告に直接関連するところで、もう既に何名かの委員の方からご指摘がありましたけれども、資料3の2ページですね、生産ベースと消費ベースの排出量のグラフで、いろんな方のご意見を伺っていた中で、個人的には手塚委員の意見が非常に腹落ちするというか、そのとおりだなという感じで。これは恐らく消費ベース、生産ベースというのは、国内の総生産にどれぐらいCO2排出が行われている上で、商品に関してもCO2の量を計算して、それをGDPでノーマルでしているんだと思うんですけれども。こういったグラフをつくったときに、まず、貿易依存度の高い国と低い国で大分数字の振る舞いが変わってくると。これを見ていただくと、アメリカなんかはわかりやすいんですけれども、この左側の図も右側の図もほぼ数値は一緒なんですよね。それは明確な理由があって、アメリカって先進国で一番貿易していない国。国内市場が大きくて、輸入の割合も1割ないので、そうすると、もう国内でつくったものをほぼそのまま消費していると。日本もそれに近いです。日本は貿易立国のイメージが昔はあったかもしれないですけど、現在、先進国の中で2番目に貿易依存度が低くて、輸入量は大体、GDPの10%ちょいぐらいなので、基本的に日本も国内でつくったものをそのまま消費しているということで、日米といった貿易依存度の低い国に関しては、この横軸、縦軸の数値が似通ってくると。

一方で、手塚委員のお話の中に出てきたかと思うんですけれども、環境先進的な取組をしているイメージが非常に強いヨーロッパ諸国というのは、国がつながっていますので、やっぱり貿易依存度が高くなって、消費ベースの生産性というのは、多少パフォーマンスが悪くなっていると。これの表を見て、日本としてできることをぱっと考えると、従来、炭素排出に関して、やっぱり生産ベースで見ることが大きかったんですけれども、消費ベースでもきちんと見ようと。そうすると、生産ベースで非常に先進的な取組をしているように見える国も、実は消費レベルでは、自分たちの国でつくってはいないけれども、よその国につくらせて、それを消費しているということを見える化する、そういった指標であるとか、国際的な議論の場に、こういった見方もあるというのをのせていくのは悪いことではないとは思います。その国際的に一応、負担と実績の見える化を進めるということですね。

ほかに、リーケージ、ちょっとお待ちください。社内カーボンプライシングの話が出てきて、企業数としては少ないんじゃないかというご意見もあったんですけれども、こういったカーボンプライシングのような法律を変える、税制を変えるといった完全にハードローの世界での解決策とは違う道筋を示しているという意味では、非常にやっぱり注目すべき取組ではないかと思います。既に別の事例として何度かこの委員会でも挙がっている「リニューアブルエナジー100」ですね、あれも民間の取組で出てきた、ある種の認証制度なものですよね。認証制度のいいところは、ハードローではないんですけれども、ソフトローで、それに加わっている企業や組織というのがプラスに評価されると。国境を越えて広がっていくところに大きい強みがあります。なので、この社内カーボンプライシングも有効性がきちんとあるということであれば、それを何らかの形で国内において奨励するような取組を環境省さんが音頭をとってやっていくのは、決して悪い話ではないと思いました。

その社内カーボンプライシングから一歩進んで、例えばなんですけれども、個々の会社を超える、だけれども、一律の税金ではなくて、例えば産業内でのカーボンプライシングを考えるといったことも当然、発想としてはあるかと思います。どういうことかというと、具体的なカーボンプライシングとして代表的なのは、炭素税と排出権取引ですよね。炭素税は、CO21トン当たり幾らという価格が明示的に示されるので、予見可能性は高い制度だと。一方で、企業への負担が強くなると。典型的に産業界の方はやみくもに炭素税を入れるというのは反対されるのは理解できるんですけれども。一方の排出権取引はどうかというと、これはやり方次第ですけれども、いきなりオークション的なものを入れなければ、最初は排出権を割り当てるので、直接負担増になるかどうかは明らかでない。ただ、問題点は、価格が幾らかになるかわからないわけですよね、そこの予見可能性が低いと。

じゃあ、両者のいいところどりはできないかというと、一応、制度上は考えることはできて、炭素税のように、1単位、1トン当たり排出を増やすことによって、負担は増えるんだけれども、基準の排出量をまず決めておいて、それよりもたくさん排出してしまった企業は支払いが発生すると。税として支払いが発生する。その基準量よりも少ない排出であれば、むしろ補助金をもらうという形で、例えば同じような産業内で、より環境負荷の低い、CO2排出が低い企業に関しては補助金を。環境負荷の高い、CO2をたくさん出してしまっている企業に対しては税金をとる形で、産業内の中での金銭的なトランスファーでインセンティブづけはやろうと思えばできるわけですね。そういった制度にすると、輸出の問題とか、先ほど挙がってきたカーボンリーケージの問題というのも直接発生しなくはなるので、要は、制度設計にかなり幅があると。産業界のあれですね、合意を受け入れやすいような形で、制度を設計していくことは可能じゃないかというのを個人的には考えています。

最後に、産業界が同意できるかもしれないビジョンということで、一つ、これは日本のある種、産業界の強みともつながるんじゃないかと思うんですけれども、環境負荷の低い製品をどんどんつくっていって、それの製品サイクルを上げると、買いかえを進めるということですね。よくもうなかば国際語にもなっている「もったいない」という表現があって、我々日本人は大切に物を使い続ける。それはすばらしいんですけれども、ことエネルギーに関して言うと、何がもったいないかといったらエネルギーなんですよね。非常に効率の悪いエアコンを使い続けるとか、燃費の悪い車に乗り続けるというのは、環境負荷をある意味高めているわけですよね。製品サイクルを高める、買いかえを促進して、より環境負荷の低いものにスイッチしていくと。そのスイッチを促進するような取組、一昔前でいうと、エコ減税とかありましたけれども、そういったものであれば、CO2削減につながるような先進的なテクノロジーを生み出すインセンティブを与えつつ、恐らく産業界の方からもそんな大きい反対は起きないと思うんですよね。

なので、当委員会、カーボンプライシングが中心ですけれども、先ほど言ったハードロー、ソフトローもそうですし、いろんな政策オプションがあると思うので、その辺、有機的に何となく過去2回の議論を見ていると、カーボンプライシングを入れる入れないで、基本的に産業界は入れたくないと。現状の温暖化に危機感を持っている方はぜひとも入れたい。何か平行線をたどりそうな嫌いを感じているので、少しその辺、オプションを広げて歩み寄れるような道を見つけていったほうが建設的じゃないかと思いました。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

それじゃあ、有村委員、どうぞ。

有村委員

ちょっと既に安田委員が取りまとめみたいな感じで議論をされた後で個別の話をさせていただくのは、恐縮なんですけれども。

先ほど消費ベースで考えるのもいいんじゃないかというご指摘があって、これは、実は学者は結構たくさんそういう研究をしています。特に中国の研究者の方なんかは、自分たちはそんなに悪くないんだと、日本とアメリカのために生産してやっているんだみたいな、ヨーロッパのために生産しているんだという話があって、かなり研究はたくさんされているんです。けれど。恐らく国連でこの話の議論が始まったときに、京都議定書のほうが生産者ベースで議論が始まったので、それがずっとイナーシャで続いて、そこがひっくり返らないなと思うんですね。先ほど根本委員からグローバルでやっぱり削減することが大事だというお話があって、それはそうなんだけど、多分、そこがなかなか国際交渉ではひっくり返らないところだろうというふうに思います。

私自身は、今日の資料を拝見しまして、非常にしっくりしたところがありまして、まず、カーボンプライシングって、本当に効果があるのかという疑問を皆さんお持ちなところで、前回、資料を出していただいたわけですけれども、ちょっとマクロのだけを見て、経済学者としてはあまりしっくり来ないところがあったんですけ。今回、私がご紹介したのもあるんですけれども、ミクロベースできっちりと色んな条件をそろえてと見ていったときに効果が確認できているということだと思います。先ほど若干、私は手塚委員が資料を誤解されているんじゃないかと思ったんですけれども、フランスの話もリーマンショックが全て影響を受けて、そういった影響を全てコントロールした上で、ETSの効果だけを見たというので見たときに、きちんと効果が出ているんだということです。価格は低いけれども、それなりに削減効果はあったんだと。雇用にはマイナスの影響があったかもしれないけれども、効果があるんだということが示されていると思います。経済学者としては納得できるような資料を出していただいてよかったなというふうに思っております。

一方で、前田委員から指摘があったカーボンプライシングというのはすっきりすべきもので、いろいろリーケージ対策とか逆進性の問題とか、細かいことを指摘するのはどうかという話で、非常にそれは私も胸が痛むところです。過去、よくリーケージにどう対処をしていくかという研究も私自身よくやっておりまして、2010年ぐらいの委員会のときもそういった研究成果をご紹介させていただきました。経済学者としてはもうグローバルに炭素価格をどんと入れて、国際的にやるのが望ましいんです。けれども。国際社会はそう動かないので、国別に政策を導入するしかいけなくて、その結果、ステークホルダーの合意を得るために、各国みんなどうしたら合意を得られるだろうかというところで、いろいろリーケージ対策というのもしてきています。いろんなのが各国で提案されてきていて。実際にちょっと効率性は損なうちぐはぐな制度設計になっている面はあるわけですよね。EUもまさにそれで無償配分、特定の業種に無償配分をしてやっているというところで、そこは経済学者としては非常に胸が痛むんです。けれども、

そういったちぐはぐな制度であるにもかかわらず、ミクロデータを使った実証研究では、ドイツとフランスでちゃんと削減効果が出ている。そういった一部のステークホルダーに配慮しながらも、制度設計することによって、削減効果があるんだということもある意味、今回の資料で示されているというようなことはあるんだと思います。

このことは、手塚委員がおっしゃったことと矛盾していなくて、これはあくまでも平均での効果ですので、製造業全体で見たときに、こういった効果があったということで、増えたところもあるかもしれないし、もしかしたら、リーケージを起こしてしまったところもあるかもしれないといったところはあって、そのリーケージ対策によって全てのリーケージが防げるわけではないということは事実かなと思います。

先ほど前田委員からリーケージはそんなに悪くないんじゃないかというようなお話がありましたけど、実際、多分、排出規制とかあるなしにかかわらず、製造業は先進国から途上国に移転して流れていくというのは、これはもう経済の流れというようなところがあるんだと思うんですね。昨年度の委員会でも、もうお帰りになってしまいましたけど、岩田委員から紹介された日経センターの分析なんかでもそういった流れのもとで、日本経済も今後考えていけば、カーボンプライシングのもと、環境と経済と両方いろいろ対応できるんだというようなお話もありました。企業が途上国に行くということをもって、それが炭素価格によるリーケージだというふうな解釈をするのはなかなかそれだけではないだろうなというふうに思っております。

それが今日の資料についてです。

それから、あと、私はリーケージ対策、今回、例えば幾つか示されているオプションに関して、その経済影響について以前研究させていただいて、いろんなところで発表させていただきました。一方で、そういう経済学者が紙の上で、コンピュータの上で考えた制度設計が本当にできるのかなというような、行政的に実行可能なのかなというのは不安に思いながら、分析をしていたわけです。けれども。最近ですと、FITの制度で電力を集約的に使う産業に対して、特定の配慮をするような制度というのは実際にあって、運用できているのですね。ということは、リーケージ対策というのが実際に特定の業種を絞って対策をするということが、行政的に可能なんだなということを、ある種示してくれている証拠になっているんではないかなというふうに思いました。

それから、ちょっと。とりあえず、あともう一つ。前回までの議事録に関してのちょっと自分の発言に関係することで補足してもよろしいですか。

浅野委員長

はい、どうぞ、いいですよ。

有村委員

デカップリングについて、前回、私自身も前回の資料を見て、デカップリングは炭素価格を入れたから経済成長するという、経済学的なロジックは必ずしもよくわからないというお話をさせていただいたんです。けれども、それが起こり得る状況というのが二重の配当という議論です。炭素税収を法人税減税や社会保障負担に回していけば、うまく設計すれば、そういったことが経済学の理屈の上でもできるところはあるんだというところは、補足させていただきたいと思います。

すみません、以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

それじゃあ、河口委員、どうぞ。

河口委員

ありがとうございます。非常に学術的な議論ですとか、おもしろく聞かせていただきました。ポイントは、まずリーケージのことと、あと税収のことなんですけれども。まず、リーケージなんですが、いろいろと産業界の方からご指摘をいただいて、なるほどそういう視点もあるなというふうに思いました。ただ、私たちが問題にしなきゃいけないのは、過去の分析ではなくて、それをベースに今入れたら、日本の産業界はこれからどうなるかということが一番ポイントで、それに過去のいろいろな他国の事例とかを参考にしているというふうに理解をいたしますと、そうすると、じゃあ、これから入れたときに、リーケージで出ていってしまう可能性というのはどういう業種、業態にあるのか。それで、先ほど手塚委員のほうからドイツの鉄鋼メーカーがブラジルに行っちゃったよというお話があって、ブラジルに行っちゃったのはリーケージということもあると思うんですけれども、当時、ブリックスということで、ブラジルの経済が物すごく伸びていて、あっちの市場が拡大するよねとか、いろいろな理由で出ていくと。これは産業構造が変わっていけば、炭素があろうがなかろうが動くものではないかという一般論のお話もある中で、そのときの客観的な世界情勢、経済情勢という、そういう要因とカーボンというのがどう絡んでいるのかと。

何が言いたいかといいますと、これからカーボンプライシングを導入したときに、どういうリーケージが起こり得るか。カーボンプライシングに対して、リーケージをしないような制約要因はあるのかないのかと。これは、先ほど森澤委員が言われたことにもかぶるんですけれども、ここ半年、1年で、もうここ1カ月、2カ月で投資家の対応が全然違っていると。リーケージのためにたくさん出せるから、ブラジルに行きますみたいなことをある企業が言ったとしたらば、それに対して、投資家がそういうふうなことに対して、どう評価をするのか。また、最近、昨日、一昨日もですけれども、新規の石炭火力には保険をつけないというような動きがどんどん広がってきています。今日見たところによると、石炭だけではなくて、石油もダイベストメントするぞというニューヨークの年金基金の人がその可能性にも言及をするという世の中の中で、今までだったらば、それじゃあ行っちゃおうかというところにいろんな制約が入ってくる。投資家の見方もここ半年、1年でめちゃくちゃ変わっているので、3年前、5年前とは多分違うであろうということになったときに、これからどんな制約があるか。また、消費者の見方も変わってきますし、サプライヤーのほうもRE100というようなところで、森澤委員が言われたように、再生可能エネルギーじゃないと、部品は調達しないわよみたいことを言い出しているという状況下で、単純に値段がこうだから行ってしまうという状況では違うと。

これから想定される今言ったような制約要因のもとで、リーケージが起きるか起きないかということのある程度、何というか、シミュレートというかシナリオを考えていただくと、意外と日本の製造業の場合、中にいたほうが得だよねというようなことになるかもしれないですし、いやいや、それでもこういう業種は出ていくという考え方もあると思うんですけれども、それをされると、いろいろとだめなんじゃないのとか、いろいろな議論がある中で、もう少し頭が整理されるかなというふうに思いました。

あと、もう一つは、それから、エネルギーだけではなくて、世界へ出ていくときの制約要因としては資源、そのプラスチックの問題も非常に大きい問題で、プラスチックの原料は石油なので、これはプラスチックゴミの専門家の東京農工大学の高田先生から聞いたんですけど、2050年に重油が燃やせないということは、重要な副産物として出てくるナフサもつくれなくなるので、ということは、プラスチックがつくれなくなると。どっちもアウトだよというような話もされている中で、どういう産業構造になっていくのか、物の仕組み自体が変わっていくと。ただ、従来の同じようなものをビジネスアズユージュアルでつくっていって、そこに価格がカーボンの値段が上がるのよという前提条件では多分いけないであろうと。資源の循環とか脱プラスチックとか、込み込みでその中にこれが入ってくるのよということで、非常に難しい多元的な分析になると思うんですけれども、単純に値段が上がるから行かないという問題じゃない。そういうふうなちょっと何というのかな、絵を見せていただくといいのかなという気がいたします。

それから、あと、もう一つ、税収の逆進性のお話があって、逆進性ではないよというようなご意見が先ほどあって、私も前々回でしたか、税理士協会長の方のご意見で、消費税と全く違うよと。消費税というのは、消費することに対して、罰のように税金がかかるから、それは逆進性なんだけれども、これというのは、CO2をなくすためにかけているので、なくなったらば税金がなくなるんだから、CO2を出さなくなったら払わなくていいんだから、これは全然逆進性はないんだと。やり方によっては、これは全く国民的に支持されるものであるというようなことを言われていて、だから、これはマーケティングだと思うんですけれども、逆進的に見えるよねと。負担は多くなるけれども、これは本当にどうなのと。全員国民がみんなでこんなの払いたくないから減らそうといったら、最終的になくなると。

実際にいただいた資料で各国の税金を見てみますと、例えば、デンマークだとか、あとイギリスもそうですけれども、税収が減っているということは、イコールCO2を出していない。それはリークかもしれないんですけど、という部分を考えますと、税金の逆進性という言葉自体もいいのか悪いのかというのも検討していただきたいと思いますし、それから、リーケージそのものがどうなのという前田委員のお話もありまして、外に行くけれども、すごく省エネ型ので行ったらば、そっちのほうが世界全体としてCO2のトータルの排出量が減るかもしれないと。

リーケージというのは、出ていっちゃったものは私はメジャーできないので、わかりませんということですけど。日本のコントロール外ですけれども、ということなので、わからないからまずいということですけど、そこまでフォローしていって、計測できれば、そっちのほうがトータルでいいよねという、そういう議論もできると思うので、その辺もちょっとシナリオの中で検討いただければというふうに思います。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。かなり複雑系なので、事務局の能力を超えそうな気もしてお聞きしていたんですが、事務局があまりかわいそうなので、頑張っていただいて。やっぱり経済の先生方にもご協力をいただかないと無理かもしれませんね。

土居委員、どうぞ。

土居委員

遅参しまして申し訳ございませんでした。

私からは、2点ほど申し上げたいと思いますけれども、炭素リーケージの関係、それから、あと、資料3の2ページの消費ベースの排出量というところに関連してというところなんですけれども、消費ベースの排出量という話は、やはり先ほど有村委員も触れられましたけれども、非常に重要な指標で、何かと生産ベースで議論されるんだけれども、消費ベースの排出量というのも非常に重要で、むしろ私もこの小委員会でかねがね申しておりますけども、生産者は好き好んで二酸化炭素を出しているわけではないと、消費者が求める品物をつくるために排出しているという側面があるということを考えると、やはり最終的にはこういうカーボンプライシングの負担というものは消費者に転嫁されるべきであるというふうに思います。

そういう意味では、これは小委員会ではまだ大々的に私は俎上にのせていませんが、この前の段階である検討会では大々的に申し上げましたけども、いわゆる仕向地主義炭素税と、つまり消費ベースの排出量に対して、ないしはそういうものに比例するような形で炭素税を課すということであるならば、今、多くの国で採用している、いわゆる源泉地主義で二酸化炭素排出がなされた国で課税されるというよりかは、むしろ消費されたところで消費ベースに換算したような意味合いの排出量に比例する形で炭素では課すということが一つ考えられるのではないかということであります。

資料2の文脈で言えば、例えば11ページにあるような炭素リーケージのリスクへの対応方法ということでいっている公共税調整というものが一つ、仕向地主義炭素税といっていることの、それにほぼ近いニュアンスだと思います。

もちろん、制度設計及び徴税の実務ではいろいろ工夫が必要だということで、そこまでして国境税調整までして炭素税を課すというような国はないわけですけれども、考え方の一つとしては、我が国でもし国際的な価格競争力が炭素税を課すことによって、落ち込むことを懸念するということであるならば、輸出免税というような措置が講じられるような対応、これが炭素税でも行えれば、そういう懸念は払拭できるというようなことはあるんだろうし、まさに資料3の2ページで言っている消費ベースの二酸化炭素排出量という概念にも近いようなものに近づけられるというふうに思います。

それから、もう1点は、逆進性という話でありますけれども、逆進性は確かに電力利用量とか、光熱費などに比例して、排出量が当然、低所得者ほど割合が大きいということになるので、そのまま炭素税を課すと逆進的になるというようなことは確かにそうなんですけれども、まさにこの逆進性に目くじらを立てる必要があるのかどうかということは、私としてもここの議論をしっかりする必要があるんではないかと思います。

私は、この逆進性というのは大した逆進性ではないと、むしろもっと社会保険料の逆進性のほうが我が国では深刻であって、つまり低額の社会保険料が重く課されていて、それが逆進性の源になっていると、そちらのほうがむしろ真の意味での逆進性であって、消費税は逆進的にはないし、そもそもですね。生涯所得に比例的な税であって、逆進的ではないし、仮に炭素税、類似の税が逆進的であるということだとしても、それはむしろより多く二酸化炭素排出に加担しているという意味において、それはむしろ甘受していただいて、別途、所得再分配上の配慮があるとすれば、この資料2でも紹介されているような各国の事例に倣いながら、所得再分配への配慮というのも別途できるんではないかというふうに思います。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。それでは、牛島さん。

牛島委員

話の流れにも関連するんですけれども、いただいた資料の中で、どこかのタイミングで事務局の方、もしくはそのほかの方でご研究されている方がいらっしゃれば教えていただきたいなというふうに思っている点が、中国の動向、中国がカーボンプライシングシステム、排出権取引なんでしょうけれども、これを導入した背景、戦略というところですね。

理由は、これまで、今日、特に議論されているのは、河口委員とかもおっしゃいましたけれども、いわゆるカーボンプライシングを入れればCO2が減る、こういった相関関係ですとか、あるいは生産維持できる、こういったところの証明にさまざまな論拠を並べているような感じなんですけれども、必ずしも本当にカーボンプライシングでもってCO2を減らすことだけが目的なのかというふうなところにも、少し私自身別な視点も持っております。

幾つかの委員の方もおっしゃいましたとおり、私の周りでも企業と接している関係上、遅かれ早かれ式の流れは脱炭素の方向に向かうというふうなことは、ほぼ間違いないだろうと感じています。

特に、ここ数カ月、数年どころか数カ月でも投資家の行動というのは、急激にやはり変わってきておりますし、開示の制度というものも、どんどん変化をしております。

いわば、気候変動に関するリスクですとか、あるいは将来に対するコスト、あるいはこれに隠れたコスト、社会的なコストというものを誰が負担するのかというふうな議論に始まっていて、そういう意味では、企業も一定の負担をすべきであろうということで、こういったところをいかにバランスシート上に載せていくのかというところが、今、相当議論されているだろうと。

いわば、こういったことでもって、従来のルールをエンハンスすることで、企業や人々の行動を変えていこうというふうな、一つの試みだろうと思います。

もう一方は、日本の産業構造、これは前回にも私、発言させていただいたんですけれども、産業構造の変革ですとか、イノベーションをどういうふうに、やっぱり加速させるのかということだと思います。

脱炭素社会を目指すというふうなことに、恐らくあまり異論はないんだろうと思うんですけれども、問題はそこの財源をどう確保するのかというところで、それを公平にというか、一定の形で税という形で一旦、徴収をしてそれを再配分するという形をとるのか、どうするのかということだろうと思います。

したがって、最終的に何で中国に興味を持ったかというふうなことと、ここの議論でもう少し拡大できるといいなと思っておりますのは、カーボンプライシングが是か非かと、これが気候変動問題の解決に非常にすぐれた施策であるとか、それでもなお、我々は産業経済を成長させるために何ら害はないのであるというふうなことを証明することが、果たして本当にこの議論の中核なのかどうなのかというと、決してそうではなくて、これから脱炭素社会に移行する上で、日本の産業競争力ですとか、お金の流れをどう仕向けていくのかという、全体に移行プロセスや戦略の中で、このカーボンプライシングというものをどう位置づけていくのかというところがもっとあっていいのかなと私は感じております。

そういう意味では、確かにヨーロッパなどの国々とは、単純に日本の産業構造ですとか、人口構造ですとか、比較できないんだろうというふうに思うんですけれども、なぜ一時は公害ですごく話題になった中国が、これに踏み切ったのかと。

2025年ぐらいには、石炭も縮小に向かうというふうなこととか、いろいろ計算されているようなんですけれども、こういった中長期的なプロセスの中で、こういった問題を取り上げている可能性は大いにあるだろうと思っていまして、その辺りも解明されると、より戦略的な議論になるのかなと思った次第です。

浅野委員長

ありがとうございました。

後で、何とか時間をつくりたいと思いますが、日中韓カーボンプライスのワークショップをやっていますので、その報告を今日は受ける予定にしています。

じゃあ、石田委員、どうぞ。

石田委員

今日の話題のカーボンプライシングの効果の話ではないかもしれませんが、今、我々が何を考えているのかはあまり関係ないと思います。

それは、世界を動かしているのは、恐らく、例えばアメリカのA社さんなどの世界のトップの企業であり、彼らがどう考えているかによって大きな影響を受けると思います。実際、9月にも、私がカリフォルニアでお会いしましたが、次の目標はサプライチェーン全体を脱カーボンすると言っていました。カーボンプライシングを導入しようが導入しまいが関係なく、森澤委員の発言のように再生可能エネルギーを安く大量に日本で使えるようにならなければ、日本で製品がつくれなくなる可能性が十分にあると思います。

この意味は、河口委員の発言にあるように、カーボンリーケージではなくて、むしろ再生可能エネルギーリーケージのようなことです。彼らは、日本の再生可能エネルギーは高いから、再生可能エネルギーで作らなくても良いとは絶対に言ってくれないので、日本企業が脱炭素でつくれないのであれば、脱炭素で製造できる他の国に発注される恐れがあります。我々が何を考えているかというのは関係ありません。このため、世界はどういう方向に動いていて、それにどう対応していくのかを考えたほうが良いと思います。

その中で、カーボンプライシングというのは、恐らく再生可能エネルギー導入や脱炭素に向かうのに有効な手法であるだろうと考えています。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

では、遠藤委員、どうぞ。

遠藤委員

ありがとうございます。今日、いただきました資料の中で、私も2点ほどコメントさせていただければと思います。

2ページ目のごめんなさい、参考資料の2ページ目につきましては、先ほど手塚委員……

浅野委員長

ごめんなさい、資料2ですね。どちらですか。3ですか、2と3と両方あるんですが。

遠藤委員

資料3の2ページ目につきまして、先ほど手塚委員が解釈をされ、また安田委員や土居委員が付け加えられましたが、私も輸出量を含めまして産業構造の違いというものが大きく影響している数字に他ならないと考えます。また、消費ベースの指標が大事であるということは、前回も最終価格の転嫁の話で申し上げましたが、極めて重要な視点であろうと思われます。

次に、逆進性の話で幾つか議論がありましたけれども、たばこ税であれば、禁煙が進み税収が減っていくということは、課税の目的を果たしているわけですけれども、エネルギー価格に影響を与える税につきましては、たばこのような嗜好品と違い、電気を使うな、石油ストーブをたくな、と誘導するわけには参りません。生活を支えるインフラであるという性質を鑑みれば、国民負担の議論になっていかざるを得ないのは、当然のことと思っております。これは再生可能エネルギー賦課金が、国民生活に重くのしかかってきている問題意識と同様と思われます。

それでもなお、将来的には石炭火力を減らしていかなくてはならないということにつきましては、何人かの委員の方がご指摘のとおり、私も重要な課題だと思っておりますが、何かの意見がございましたとおり、投資家の視点、市場からのプレッシャーというものがこちらについては極めて効果的と思われます。これに加えて何か必要な施策があるか鑑みれば、まずは高度化法をはじめとする法令、省令による誘導が考えられるかと思いますが、これらに加え、カーボンプライシングがどのようにきいてくるのかということについては、たとえばどの程度の価格付けであれば誘導できるのか、検証が必要と思っております。

最後に、先ほど牛島委員がおっしゃっておられたました点につきまして、例えばどのぐらいの価格付けをすれば排出削減効果が得られるのかという検証の前に、カーボンプライシングが善し悪しだということの議論が、検討会に続いて行われているわけですが、何となく雲をつかむような話だなという印象を受けております。ですので、移行プロセスの中での位置づけ、政策を導入していく中でどのような負の作用があるから、それを緩和するためにどういう施策が必要なのか、そういったことを整理し、具体的な政策の議論に入っていくべきであると思っております。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

それでは、小西委員。

小西委員

ありがとうございます。この後で、日中韓の説明のところでもと思っていたんですけれども、3点だけ、一つとても違和感があるのは、これからまさに牛島委員がおっしゃったように、脱炭素化していくということがはっきりしている中で、省エネの手法として何があるかなと考えたときに、結局は規制的手法が入れられるのか、あるいは見える化とかのソフトローでいくのか、それとも自主行動計画にずっと頼るのか、それともカーボンプライシング、本当はこれは炭素税がいいのか、排出量取引税制度がいいのかといったふうに分かれるのかもしれないんですけれども、省エネをこれから進めていくといった場合、どれが効果があるのかという比較で本来はあるべきじゃないかなと思います。

カーボンプライシング自体が経済成長につながるか否かということを議論して、カーボンプライシングの導入の是非を議論するというよりは、これから脱炭素化していくに向かっての省エネの手法として何があるかということを検討するのが本来だったとは思うんですけれども、今や、もはやそういっている段階ではなくて、ありとあらゆる手法を組み合わせて導入するという段階に入っているんだと思います。

ですので、今回は例えば日本の場合、リーケージを防いだ設計にするにはどうすればいいのかなというようなご意見をぜひ聞けたらなと思っておりまして、先ほど安田委員がおっしゃったようなやり方、いわゆる最初からベンチマーク方式で排出量取引制度、グランドファザリングするにしても、ベンチマーク方式で入れていくみたいなほうが、恐らく日本の産業界さんには、特に省エネに非常に秀でている会社さんにとっては、これは望ましい方法ではないかと思うんですが。

私たちも制度設計を一生懸命考えようとしたときに、ベンチマークを決めるのがすごく大変だなというのに直面しました。業界ごとに、なかなか全てのデータもない中で。ということですので、ぜひこれだけ産業界の方もいらっしゃるところなので、ベンチマーク方式というものの中で、ベンチマークは果たして業界ごとに可能なのかなということを、ちょっとお聞きできればなと思っております。

あと、もう一つ、これだけいろいろリーケージとか、逆進性とか、海外のケーススタディしてくださっているんですけれども、日本においてもやっぱり東京都さんとか、埼玉県とか、これは電力の消費ベースでの形にはなりますけれども、好例もありますので、ここにおいてもこういったリーケージとか、逆進性とか、まさに入っていないところと入っているところとの比較もできると思いますので、ぜひ資料を出していただけたらなと思っております。

一つ、私が非常に日本の企業さんとして感銘を受けたのが、東京都の場合も埼玉県の場合も、特に埼玉県の場合は自主行動の自主目的でありながら、当初の6%ぐらいの目標よりもはるかに多く22%ぐらい?、東京都は26%ぐらいでしたでしょうか。最初に日本企業さんは、すごく過達成しているという事実です。

ですので、そこに制度が入れば恐らくすごく日本企業さんは真面目に、より過達成していくというようなことが、ここで証明されているということが一つ、大きな日本への示唆なのではないかなと思っております。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

それでは、このテーマについて、さらに、じゃあ、大野委員。

大野委員

資料2の6ページの表について、資料についてお聞きしたら、幾つかの発言があったので確認したいんですけども、日本が4というのは、実は温対税が入っていないということで、1.5ぐらい加わるという話だったかな、と思うんですが、そうすると5.5とか何かになるということですよね。はい、わかりました。

それから、あともう一つは、根本委員が、これは明示的な価格だけで暗示的なものは別にあるというお話だったんですが、それはたしか私の理解ではというか、昨年の神野先生の委員会のレポートで、明示的というのは排出価格とは炭素税で、エネルギー税というのは暗示的な炭素価格であるということなので、暗示的なものは全部入っていないかもしれないけども、明示しているものだけでないと。明示的なものと暗示的なものと両方入っているということだと思います。

ただ、いずれにしろ、これに入っていない暗示的な炭素価格があって、それを入れると日本はほかの国よりも高いんだみたいな理解が経済界にあるとすると、議論が難しいでしょうから、その辺も含めて、もし出せれば、出していただきたいと思います。

いずれにしても、明示的な炭素価格が入らないと、炭素削減に結びつかないので、そこは既存のもの、組み換えを含めて制度設計する必要があると思いますけども、ちょっとこの辺の理解が全体が違っていると、なかなか合意ができないと思うので、この辺についてはご検討をいただければと思います。

浅野委員長

今の点について、事務局、よろしいですか。

鮎川市場メカニズム室長

大野委員おっしゃるとおりで、暗示的価格の中のエネルギー税については、ここに入っていますと、ただ、入っていないのが、例えば規制対応コストみたいなものは入っていない。

ただ、それはなかなか定量的に出すのは、正直、つらいといいましょうか、それはそういう数字はないので、世の中に。なので、定性的に何かお示しすることはできるかもしれませんが、ちょっと検討させていただければと思います。

浅野委員長

有村委員、どうぞ。

有村委員

幾つか、今までいろんなご意見が出た中で、それに関連するコメントをさせていただきたいと思うんですけども、東京都と埼玉県は、実は今、次のフェーズの制度設計をしていて、私は両方のほうに関わっているんですけれども、また、同時に自分自身でも今、東京都の削減効果を評価するプロジェクトをやっていまして、先ほど小西委員から大幅な削減があった。そのうち何%かは電力価格の上昇による分で、でも半分以上は東京都の制度の削減効果であるというのが個別のデータを使った分析とかでは出てきています。

それから、リーケージに関しては、今ちょっとサービス業を中心に分析しているんですけども、国内でも東京都からもしかしたらほかのところに活動が移転する可能性もあるというのは、経済学的に言うと考えられるんで、分析したんですけども、むしろおもしろい結果が出てきていまして、東京都に事業所があるような会社が、ほかのところにも事業所があると、東京都で減らすのと一緒にほかのところでも減らしているんじゃないかというようなのが、データ分析の結果、出てきているんですね。

これは、多分、まだ日本国内では推測なんですけども、東京都内の事業所で何か省エネするんだったら、それと同じようなことをほかのところでもやってしまおうというのは、スピルオーバー効果があるんじゃないかというような感じがサービス業では出てきていまして、実は中国のETS参加の企業をヒアリングしたこともあったんですけども、そのときも同じような話を彼らはしていたので、そういったことがあるんじゃないかというふうに思っております。

それから、先ほど安田委員からソフトローとハードローとかと話があったんですけど、実は埼玉県の制度は罰則がない自習型の制度なんですよね、そういう意味ではソフトな配置の取引制度なので、それはここで少し考えていくようなものに値するんじゃないのかなというのも、一つはちょっとは思っていますけど、一つのオプションとしてですね。もちろん理想的には東京都のような制度が多分、経済学的には正しいんでしょうけども。

あとは、同じように先ほど安田委員が業界単位の話というのをされていましたけども、航空業界は国際的にそういった制度でETS入っているわけですよね。なので、ちょっとこの場で国際的な話を議論するのは難しいかと思いますけど、そういった視点もあるのかなと思いました。

それから、ベンチマークは難しいという話がありましたけども、EUでもやっているので、きっと日本の優秀な官僚の方と業界の方が集まればできなくはないんじゃないかなというふうに、外部の人間としては想像するというところでございます。

それから、あと、何人の委員からご指摘があったOECDのエフェクティブ・カーボン・レートの話は、やっぱり何となく我々がいつも聞いている話と直感と何か合わない感じがあるので、どうしてこんなに日本のエフェクティブ・カーボン・レートが低いのかなという辺りは、例えば何か減免措置を受けている業者の分を差し引いているとか、何かそういったことをしているとかということがあるんでしょうか。もし、何かそういうのがわかれば、ぜひ今後、調べていただいて教えていただければなと思います。

鮎川市場メカニズム室長

確認します。

浅野委員長

ありがとうございました。今の点は、ちょっと可能な限り調べてみてください。

安田委員、どうぞ。

安田委員

ソフトローに絡めて、私、今、大阪大学で関西におりますので、関西にある国循ですね、国立循環器病研究センター、そこは最近、おもしろい認証制度をスタートして、かるしおという、低塩分食品を促進しようというための認証制度をスタートしていて、それはどういう仕組みかというと、食品成分表ごとに、当該食品に該当するもので、標準的な塩分よりも3割以上カットしていると。

かつ、ある程度、人が食べて味覚が落ちていないとか、食感が損なわれていないという一定の基準を満たす食品に対して、かるしおマークというのをつけられるのを国循がお墨つきを与えて、発行するんですね。

それを無事に審査が通って、もらえた企業は自分たちの商品に張るわけですけど、売れるごとに1.5%の利用料というか、認証料を国循に払うというビジネスモデルになっています。

何でこんな話をしているかというと、例えばなんですけれども、できるかどうかちょっと僕はわからないですけど、環境省さんなり、何か公的な機関で、業種によって外部の投資家から見ても明らかに環境先進的な取組をしている、あるいはCO2排出が少ないか、かなり客観的にわかる業種もあれば、ちょっとやっぱり専門家に見てもらわないとわからないとか、あるいは自分たちでCO2を減らしていますといっても、ちょっと信憑性が怪しいという業種もあるかもしれないので、もしも外部できちんとそこを審査して、一定の基準を満たす企業に対して、かるしおではないので、何かグリーンマークでも何でもいいですけれども、そういった何か認証ができるとすると、自発的にその企業で取得するところが増えてくるかもしれない。

先ほど来お話を伺っていて、いろいろ意見が食い違っているところもあるんですけど、唯一、皆さん、同じことをおっしゃっていて、やっぱり投資家の視線がどんどん厳しくなっている。であれば、投資家に対して、より環境の取組をしている企業、していない企業、見える化していくサポートを国というか、環境省さんを通じてやっていくというのは、かなり筋の良いタイプのアプローチだと思うので、何かその辺のアイデアも直接、カーボンプライシングから離れてはしまうんですけれども、有効性がありそうなので、一応、提案させていただきました。

以上です。

浅野委員長

手塚委員が直接、口頭で先におっしゃったので、先にどうぞ。

手塚委員

2点ありまして、一つは、小西委員がおっしゃったベンチマークについて難しいかどうかという話なんですけども、実は資料2の11ページに無償割当、部門ごとのベンチマーク②という項目があって、この中にもくわしくも書いてあるんですけども、ロビングの対象になる可能性ってありますね。

これ、EUで今、何が起きているかというと、とにかく次のフェーズにおける有利なベンチマークをどうやって取るかということで、猛烈な勢いでブリュッセルにロビングを各産業がかけているわけです。大変な経営資源がかかっている。これについて、専門の役員まで各社、配置するというようなことが起きていますんで、明らかにこれは政治ゲームになります。

同じようなことが、韓国でも起きているということを聞いていますし、一方、中国でこれから多分、説明があると思うんですけども、排出権取引制度を17年から全国レベルで、かつ主要産業部門、電力を含む主要産業部門の排出権取引制度を導入するということを習近平主席がおっしゃっていたんですが、実は2020年以後に電力以外は延期しました。

延期した理由というには、やはりベンチマークや制度設計のための個別参加企業のデータが集められないということだというふうに聞いております。大手の企業のデータ等、あるいは国営企業のデータ等は集まっているんだけども、そうでないところがカバーできないので、したがってベンチマークもつくれず制度が導入できないということで、結局2020年だったか21年以後までに今年に入ってから延期されたということは発表されているというふうに認識しています。

それから、もう1点、大野委員がおっしゃった資料2の6ページの産業部門の実効炭素価格、これについてはいろんな視点があると思うんですね。私もよく理解できないのは、違和感があるのは日本のカーボンプライシングってこんなに少ないのかなというのがあって、例えば電力から間接的にかかっているカーボンコストが入っているのかだとか、そういうものも含めて判断していただきたいです。産業界で仮にリーケージが起きるとすると、それは何で起きるかというと、炭素価格で起きるというよりは、実際に払っているエネルギーコストで起きるわけですね。

つまり、エネルギーの本体価格プラス実効炭素価格が実際に産業が払っているエネルギーコストでして、これが他国、特に日本の場合は通商競争を行っている、韓国であるとか、台湾であるとか、東南アジア、中国といった国々と比べて異常に高くなってくると、利益を出しながら物が売れなくなるという事態を招くということですので、本体価格も含めて、実際はどういうエネルギーコストを産業は払わなきゃいけなくなっているのかということが実は肝になるわけです。

日本の場合、天然ガスは液化天然ガスで輸入していますし、原発が今、ご存じのような状況でして電気代が非常に上がっているというようなことがございますので、そういうことも含めて、果たしてこういう国々に比べてどういう電気の実質コストがかかっているのかということの比較をしないと、今後、追加的にどういうカーボンコストをかけられるか、かけられないかという議論につながらないんじゃないかと思いまして、ぜひそういうこともスタディいただければと思います。

浅野委員長

根本委員、どうぞ。

根本委員

4点申し上げようと思いましたが、そのうち2点は手塚委員と同じ意見だったので省きます。が先ほども少し出ていたことでもありますが、ライフサイクルでのCO2排出を削減することは極めて重要です。これまで私ども経団連でも自主行動計画を推進する中で、排出量を下げる努力は様々してきたわけですが、全世界的にCO2排出量を削減する観点から、やはりライフサイクルでの削減の部分を今度、視点として入れてみようということで、色々なトライアルを行っているところです。

自主行動の中でもかなりCO2排出量は下がってきていますし、全世界的にも今後下げていこうという努力もしていきますので、それとカーボンプライシングとの比較衡量も必要だろうと考えます。したがって、明示的なカーボンプライシングを入れない限りCO2削減がされないという考え方を最初からとることは、よろしくないのではないかと考えます。

それから、あと2点、細かい点ですが、税収の問題が出ました。いずれなくなるものだからというご発言が委員から2回か3回繰り返されたと思いますが、過去に導入された税で、税収がなくなって、それで終わったものを私は知りません。必ず代替財源を追求していくということが一般的であろうと思いますので、あまり軽軽にカーボンプライシングの導入を考えないほうがいいだろうということが1点です。

それから、もう1点は、事務局へのお願いです。先ほど、石炭火力に対する投融資の姿勢に関する資料作成について依頼があったと思います。これに関しては、日本国内に閉じずに、全世界でどういうことが起きているかという形にしていただけるとありがたいと思います。これはお願いです。

以上です。

浅野委員長

前田委員、どうぞ。

前田委員

東京大学の前田です。今日のお話の中で、資料3の中の15ページ、16ページ、ドイツ、それからフランスの製造業の事業者データを用いたEU-ETSの実証分析というスライドがあります。これ、今日のお話の中で大変重要な2枚だと思うので、少しこれについて議論させてください。

これは、もともと第2回の御発言(要約)と書いて、これに基づいて対応する形でマンハイム大学の学者先生の学術研究を持ってきたということだと思います。

学術研究ということなので、私も学者の端くれですので、少し意見を述べたいというふうに思います。

我々、学者のコミュニティでは、学術研究はジャーナルで出版される前に必ず意見を求められて、一つの論文のいい点、悪い点の意見を述べるというピアレビューというんですが、そういう仕事がたくさんありまして、私もそういうことをしょっちゅうやっているので、そういう観点から少し意見を述べさせていただきます。

どちらも、フランスもドイツもそうですが、二つのコントロール群とそれからトリートメント群と二つの群に分けて比較をしてみましたと。その結果、コントロール群とトリートメント群に明確な差が出ましたというのがこの論旨だと思います。

これ自体、大変おもしろいし、統計的に結果が出たというのは、多分、大変メークセンスというか、そうなるだろうというふうに思いますし、この結果自体、多分、本体を読んではいませんがこういう結果が出たことは大変おもしろいというふうに思います。

一方で、そもそもこれをどう解釈するべきかというところに考えてみると、これは必ずしもこれでEU-ETSの制度が、これが原因となってこのような結果が出たというふうには、必ずしも言えないのではないかなと思います。

つまり、統計分析としてはまったく正しい、しかし政策的な解釈については少し慎重というか、いろんな解釈があり得るので、ちょっと注意が必要かなというふうに思うところです。

トリートメント群とコントロール群ということですが、これは片方はEU-ETSに参加している事業者がトリートメント群になって、そうでないのがコントロール群ということだと思いますが、もともとこのEU-ETS対象事業者になり得るかどうかというのは、そもそもが業種が違ったり、あるいは業種が同じ中でもオプトインというか、自分が希望して入るとかいう形になっていたり、あるいは政府と業界の交渉結果として参加してよい業種・業態・企業だったりして、たとえ同じ業種のなかでもEU-ETSに参加して排出削減ができる可能性のある一部の業態・企業とそうでない業態・企業であったりするわけですよね。つまりはよくよく見てみると業種・業態・企業としての性質や特性が全然違うということもあり得ると思います。

これは、例えてみると、全然違うものに対して、二つに分けてそれぞれ別のことをやったということにもなりかねません。

普通、コントロール群とトリートメント群というのは、例えば一律に同じ普通の患者さんがいて、そこで特定の薬を投与する群と、それから投与しない群に分かれて、それで片方をトリートメント群、それからコントロール群というんですが、もともと全部同じ患者というのが第一前提なわけですよね。

でも、患者さん一人ひとりの希望あるいは医師の提案により、二つに分けました。結果的には、片方は男性ばかりがコントロール群となっていました。トリートメント群のほうは実は女性ばかりでした。なぜそうなったかはわかりませんが、とにかくそうなりました。これだと、本質的な比較にはならないですよね。あるいは、片方は日本人でした。片方は、アメリカ人でした。文化的に違いのあるような施策をやったとすると、もう比較にならないですよね。なぜそのような群に結果的に分かれたのか、その背景を考察することが必要だと言えます。そしてその背景こそが興味深い政策的インプリケーションを与えるのだと思います。これは単に統計的な分析結果だけではわからないことだと思います。逆にいうと、統計分析の結果だけでは、憶測だけで断定してはいけない部分が必ず残るということだと思います。

だから、統計学的に差が出ましたということ、これ自体は大変おもしろいし、大変評価するべきです。一方で、それを政策的インプリケーションとしてどう解釈するかというところは、統計学的な分析の正しさとは違う次元のところで、少しいろいろ考えようがあるかなというふうに思います。

以上です。

浅野委員長

はい、ちょっとこの点は有村さん。

有村委員

明確な誤解があるので、ちょっとご指摘したいと思います。コントロール群とトリートメント群と分けているんです。コントロールは確かにEU-ETSでない業種なので、事業所なんですけども、傾向スコアマッチングを使って、まず業種はちゃんとコントロールしていますね。

NBERで発表しているような論文なので、規模に関しても限りなくそこに近いような形で比較するということを統計的にした上でやっています。若干、今の委員の発言は論文を誤解しているコメントだと、私は学術的に言わざるを得ないですね。

浅野委員長

また、後で場外でやってください。

河口委員、どうぞ。

河口委員

ありがとうございます。先ほどから、投資家のお話ということがあったので、もう一回、ちょっとだめ押し的にお話をしたいんですけれども、昨日、日本の最大手の投資家とちょっとお話をしておりまして、それは株の評価というよりは、グリーンボンドの発行、これからどんどん増えていくと。特に、脱炭素ということでは物すごい資金需要がいるので、グリーンボンドをどう増やしていくかというような文脈の中でお話をしていたんですけれども。

投資家としては、グリーンだからといって金利が安いというのは、そんなものを買っていたらお客様に説明がつかないよねというのが今の時代なので、金利が同じで、こちらのほうのソーシャルな効果があるよというところだったら買えると、CO2をこれだけ削減すると。

ただ、これから進んでくる話としては、投資家の動きの中で、彼らのアクションとして脱炭素をどう進めていくかということになってくると、単に金利という財務的なパフォーマンスと、あとソーシャルパフォーマンス、この場合だったらCO2削減効果がどのぐらいあるかというのと、両方足して両面で評価をすると。

それから、こちらのほうは金利がちょっと安いけれども、CO2削減効果がこんなにあるんですということで、社会がその評価を納得すれば、多分、それを選べるようになるし、これからの時代というのは、幾ら金利がよくても、CO2を出しているはどうなのかということが世間的に言われるようになってくると。

フランスのエネルギー転換法では、金融商品のCO2の排出量はカーボンフットプリントをもう既に出しなさいという話になっていて、それを見た人はそれも評価基準に入れて判断しましょうということになってきていますので、これ以上に単にお金が儲かる、損するだけではなくて、カーボンとかそういうソーシャルインパクトをどう計測するかということで、今、急速に金融業界が大同団結していて、DENET-FYのインパクト・マネジメント・プロジェクトというと、物すごいたくさんのポータルサイトでいろんなものが出てきて、ちょっと今日も見ていてよく全容はわからないんですけど、本当にこのインパクトを継続していこうとSDGsということを考えたら、これを計測しないとだめなので、それを金融商品の評価に入れてしまおうというふうな動きがありますので、こういうことも含めて、投資家の動きがこれから加速するというふうにお考えされたほうがいいかなと思いました。

浅野委員長

ありがとうございました。

もうそろそろ次に移らなきゃいけないんですが、土居委員で、申し訳ない、前田先生、ちょっと。

土居委員、2、3分でお願いできますか。

土居委員

まず、コメントの前に、一つ、事務局にお願いしたいのは、資料3の2ページに先ほど来、言及している消費ベースの排出量、これはもちろん炭素生産性に数字はなっているんですけど、ほかに消費ベースでの排出量を推計したような分析というのも何か二、三あるようなので、それが特に日本でどういうような構造になっているかというのがわかるような先行研究があれば、少し次回以降に消費ベースの排出量がどういうような構成予想になっているかというのをデータとしてお示しいただけるとありがたいなというふうに思います。

それから、あと2点、コメントがありまして、1点は、根本委員が先ほどおっしゃったように。二酸化炭素の排出量が減れば、炭素税の税収は減るといえども、税収が減るということについて、何らかの減った財源を別の形でまた穴埋めせよというふうに言われるのではないかという話があるんですが。

税率を変更するときとかというのは、確かにそういうような議論はあるんですが、一旦、設定した税率でもって、経済活動の変化に伴って税収が減っていくという分については、役所の方がいらっしゃる目の前で言うのも釈迦に説法ですけど、経済活動の変化に伴って税収が減ると、税率を変えていないのに税収が減るという分についてまで、代替財源を出せなんていうような予算編成というのは基本的にはないわけで、だから、そういうような議論の仕方というのは多分ないんだろうと思います。

ただ、一つあるのは、この今の話から類推したのは、ちょっと全然カーボンプライシングと関係ない話ではありますけども、医薬品の話で後発医薬品ジェネリックの普及促進という話と、この話というのは割と関連性があるのかなと思うんです。

と申しますのは、今、政府が後発医薬品の使用割合を80%にするという目標を立てて、それに向かって一生懸命やっていると。ただし、市場での後発医薬品の価格を反映するように公定の薬価を決めるということまではしているけれども、強制的に価格を引き下げるとかというようなことまでジェネリックではやっていないわけですね。

むしろ、医師の方とか薬局の方とか、場合によっては患者が先発医薬じゃないと嫌だとかというようなところの行動様式を変えるように、仕向けて何とか後発薬がある医薬品については8割の使用量になるように目標を立てて各都道府県で頑張ってくださいというふうにやっていると。

だから、極端に言えば、自主行動計画みたいなようなもので、8割目標を達成しようと努力していると。ただ、8割以上の部分でどうするんだと、もちろん8割以上達成している県もなくはないんですけども、じゃあ、政府全体として医薬品の社会保障給付をできるだけどんどん増えるというようなことにならないように抑制するということだとすると、8割以上の目標をさらに達成するというようなことになると、今のところの厚生労働省の理解は、何らかの強制的な措置でも講じないとなかなか8割以上もジェネリックを使うというようなことに世の中、ならないんじゃないかというふうには見ているわけですね。

それは財務省もそういう見方もあって、財務省の一つの提案というのは、価格で調整するべきだということを言っていて、ヨーロッパ諸国で取り入れられているわけですけども、参照価格といってジェネリックの値段が実際、参照価格よりも高かったとしても、それ以上は全額自己負担でお願いしますと、そこは保険では見ませんという、そういうような形で価格で認識させて、ジェネリックを使おうが、先発薬を使おうが、政府が定めた価格以上の部分は自己負担でお願いしますというようなことで、じゃあ、そのお薬に幾ら払いますかというようなことでやってくださいと、こういうようなことをやるべきじゃないかと財務省は言っているけども、厚生労働省はまだとにかく8割目標が達成できていないだからという話になっていて、それに温室効果ガスの排出削減というのは、割と似ているんじゃないかと。

つまり、自主行動計画で進められるところまで進めるというのは……

浅野委員長

すみません、少し簡潔に。

土居委員

結論、行きます。進められるならば、それはそれでいいんですけども、価格もまじえて調整しないと、どうもうまくいかないと、目標達成できないというようなことになるならば、多少、強制的でそんな乱暴にプライシングを入れるなというようなことかもしれないけれども、プライシングの機能を活用して目標を達成するというようなこともやらないといけないというような状況なのかもしれないというふうに思います。

以上です。

浅野委員長

それじゃあ、このテーマについては、本日はこれで終わりにさせていただきます。

もうあと一つ、資料の4がありますので、事務局から説明をいただきます。

鮎川市場メカニズム室長

資料4、日中韓カーボンプライシング・メカニズム・フォーラムについての資料でございます。ちょっとお時間も迫っておりますので、ポイントだけ拾い読みで申し訳ありませんが、ご説明させていただきます。

おめくりいただきまして、スライド2が表でございまして、実は、日中韓でカーボンプライシングについて、各国の環境関連の研究機関がメーンになってやっておるイニシアチブでございます。

2016年が中国、昨年が韓国、今年が3年目で我が日本ということで、実は過去2回やっております。10月24日まで、昨日まで3日間の日程で行われていましたが、下のスライド3、(参考)プログラムをご覧いただけますと、各国の、これ、オープンでやりましたが、こういった形で各国の政府機関、あるいはその研究機関からのそれぞれのプレゼンテーション、あるいはパネルディスカッションといった形でセッションを行うというものでございます。

なお、ご参考までに、スライド2に戻っていただきまして、皆さんご存じだと思いますが、韓国は既に2015年から排出量取引制度を導入していると。

排出初期割当量が若干、きつめになっておりましたので、少な過ぎるといったことによる訴訟等々も起きておりましたが、追加割当量の実施、あるいは割当量計画の変更等、制度の改善を加えまして、だんだんと定着してきているというものでございまして、中国のほうにつきまして、牛島委員からもご指摘ありましたが、後ほど何で入れたかということも含めて、ちょっと発言があったので、ご紹介しますが、中国は、昨年末に電力部門を先行させてこの全国排出量取引制度を開始するというのは、手塚委員からも指摘したとおりでございます。

ほかにも、順次、広げていきたいということを言っておりますが、具体的なまだスケジュールは公表されておりません。

主な発言をちょっと拾わせていただきます。スライド4をおめくりいただけますでしょうか。まず、これまでの話で、中国の排出量取引制度の特徴的な点を中国自ら2点あると言っております。

まず一つは、中国は電力市場が全く自由化されていなくて、価格も統制されていますということなので、直接排出だけだと、中に価格が飲み込まれてしまうということなので、間接排出も含めて割り当てているというのが1点。

あともう一つは、これ、手塚委員のご指摘に関係すると思いますが、大きい事業はついてこられるんですが、小さい企業はそもそも過去の排出量から何からデータが全くないし、測定する能力もないということなので、まず、彼らに対してキャパシティービルディングをしなきゃいけないというのが中国として非常に特徴的な点だと。

恐らくは、何とか電力がこれに間に合ったけども、まだ鉄鋼、セメント等については間に合っていないというのが、彼らの実情なのかと思います。

韓国につきましては、K-ETSと呼んでおりますが、先ほどもちょっと申し上げましたが、削減目標がまずあり、そこに整合的に各セクターに排出額を割り当てるという、いわゆるトップダウンアプローチだということを彼らは強調をしておりました。

当初は反対意見もありましたが、先ほど申し上げました、第1計画期間、これ3年ごとでやっております。2015年から3年間、また3年間が始まって、次の第3期は5年だと、逆に言うと、その5年が本格スタートというふうに説明をされておりました。

当初は、反対意見もさまざまありましたが、今はかなり前向きに評価をされているということでございます。

続きまして、スライド5でございますが、企業の反応というところがありますが、1点、牛島委員からのご指摘で、何で入ったかというところで、CO2削減もありますが、一番下のパラグラフをご覧いただきますと、非常に中国の重工業というのは比率が高いと。かつては、スピードと量を求めるというビジネスモデルだったんですが、今はクオリティを求めるモデルに、産業構造自体を構造というか産業のあり方自体を変換するというツールとしても使っているといったような趣旨のご説明がありました。

要するに、効率の悪い企業、あるいは事業所を淘汰していくということなのではなかろうかということでございます。まさに、淘汰という言葉を使っております。ETSの下で効率の悪い企業を淘汰するといったようなご発表がございました。

スライド6は、今度、韓国の企業の関係でございますが、当初は反対だったということを繰り返し具体的に書いておりますと。現在、というのが一番最後のパラでございますが、企業は、新しい機会と捉えて方向転換をしつつあるんだということで、また、CEOレベルでも、新しいビジネスチャンスだと、この環境分野というのは考え始めているといったような意見表明がございました。

最後、スライド7、今度の取組ということなんですが、まだ開始をしたばかりで、多くの困難もあるけども、健全に発展できると思うと。

市場の健全的な運営をどのようにするかという課題も含めて、まだまだこれから課題がたくさんあるといったようなころでございます。

最後、スライド8で、韓国の取組でございますが、先ほど申し上げたとおり、第2期から削減が開始され、第3期で本格的になるということで、特に言っております。

この中で、一つあったのが、2030年の温室効果ガスのロードマップを修正して、排出の取引の枠もそれに応じて変更しております。より絞っています。

恐らく、最後の目的はあまり変わっていないんですが、今までかなり彼らは野心的な目標を立てていると、ナショナル目標全体をそう言っておりますが、キュウシュウゲンあるいは海外のクレジットの活用の分を減らして、その分、国内削減を増やすという計画変更をして、それに合わせてETSの枠も変えていくといったようなことで、かなり排出額のコントロールについてはトップダウンでやっているという印象が非常に強く出ました。

最後、9ページ以降は、基調講演をしていただきました、伊藤元重先生の資料でございます。こちらにつきましては、ご説明は割愛いたしますが、ぜひ後ほどご参照いただければと思います。

以上でございます。

浅野委員長

牛島委員、何かご質問ございますか。よろしいですか。

有村委員が当日、出ておられますので、もしコメントがありましたら2、3分。

有村委員

オープンのフォーラムとそれから研究会と両方参加させていただきまして、どうしても学者なんで効果が排出量取引効果があったのかどうかというのを定量的に見せてほしいなと思うんで、そんなところを見てもしようがないというさっきからご批判もありますが、韓国の研究者のオゥ先生が韓国でも時系列別にして、ある程度の削減効果があるといったようなのが学術的には印象に残りました。

一方で、一番印象に残っていたのは、実は中国の方が見せた非常に派手な中国の排出量取引のプロモーションビデオでして、何か中国はこれで低炭素投資をやって経済を活性化していくそ、みんなついていこうみたいな、何か非常に勢いのいいビデオがありまして、何か随分考え方がいろいろあるんだなというような印象は持ちました。

浅野委員長

ありがとうございました。

まだ、ご発言はあるかと思いますが、6時に終われという委員のご注文もございますので、本日はこれで終わりにしたいと思います。

事務局からお願いいたします。

鮎川市場メカニズム室長

ありがとうございます。次回につきましては、11月22日、木曜日、13時から16時の日程を予定してございます。

浅野委員長

それでは、本日はこれで閉会いたします。どうもありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします。

午後 5時54分 閉会