カーボンプライシングの活用に関する小委員会(第7回) 議事録

日  時

平成31年3月27日(水)  15 :00 ~ 18:00

場  所

全国都市会館 大ホール
(東京都千代田区平河町2-4-2)

議  題

(1)カーボンプライシングについて(排出量取引制度)

配付資料

資料1   カーボンプライシングについて(排出量取引制度)

参考資料1 カーボンプライシングの活用に関する小委員会委員名簿

参考資料2 カーボンプライシングの活用に関する小委員会第6回議事概要

議事録

午後3時0分 開会

新原市場メカニズム室室長補佐

それでは、ただいまより第7回中央環境審議会地球環境部会カーボンプライシングの活用に関する小委員会を開催いたします。

本日ご欠席の根本委員の説明員として、池田様にお座りいただいております。委員の皆様にはご承知おきいただきますよう、お願いいたします。

まず資料の確認をさせていただければと思います。お手元の資料をご覧ください。資料は本日計3点ございます。資料1、カーボンプライシングについて(排出量取引制度)というもの。それからタブレットのほうに参考資料として2点、参考資料1、カーボンプライシングの活用に関する小委員会委員名簿、参考資料2、カーボンプライシングの活用に関する小委員会第6回議事概要をご用意しております。

資料の不足や落丁等ございましたら、お手数ですが事務局までお申しつけください。よろしかったでしょうか。

それでは、浅野委員長、以降の進行をお願いいたします。

マスコミ関係の方におかれましては、撮影はここまでとさせていただきます。

浅野委員長

それではただいまから第7回の委員会を始めます。

本日は、前回に引き続きまして、このカーボンプライスを具体化していくとすれば、どんなことになるだろうかという検討もしなくてはいけないということになりましたので、前回は環境税という切り口で事務局からご報告いたしましたが、本日は排出量取引制度という切り口から、事務局の準備した資料の説明をいただいて、意見交換をしたいと思っております。

それでは、事務局から資料1についての説明をいただきます。

新原市場メカニズム室室長補佐

それではお手元の資料1に沿ってご説明をさせていただきます。

資料1、カーボンプライシングについて(排出量取引制度)と書かれた資料をお手元にご用意ください。

浅野委員長

すみません。前もって申し上げます。

今日は有村委員からご発言いただきますので、よろしくお願いいたします。

新原市場メカニズム室室長補佐

それでは説明に入らせていただきます。

まず資料1、おめくりいただきまして、2ページ目でございます。こちら、前回と同じでございますけれども、設置要綱ということで、この審議会の場、カーボンプライシングの導入ありきということではなくて、その活用の可能性についてご議論いただく場であるということで、改めて提示をしているところでございます。

また3ページ目でございますけれども、こうした検討の背景ということで、脱炭素社会への移行の実現、それから将来にわたって質の高い生活をもたらす新たな成長、こういったコンセプトをにらんで、社会像を描きながらご議論いただければということで、総理の発言ですとか環境基本計画、こういったものを引用させていただいているところでございます。

続きまして資料4、5、6ページでございますけれども、こちらは前回の炭素税のときと同じ問題意識でございます。制度検討に当たって踏まえるべき基本的視点、①、②、③とございますけれども、①は温室効果ガスの排出削減に向けて、価格シグナルをあらゆる主体に発出をしていくと。これでもって脱炭素社会への移行実現をしていこうというところが、まず一つ目の視点ということでございます。

二つ目の5ページ目、基本的視点②でございますけれども、こちらがカーボンプライシングを通じて、我が国の持続的な経済成長、質の高い生活、こういったものを実現していくために価格シグナルを発出していくべきではないかと。カーボンプライシングを通じて経済成長、こういったものにもつなげていこうというものが、二つ目の視点でございます。

続きまして6ページ目でございます。基本的視点の三つ目でございますけれども、こちらにつきましては、カーボンプライシングの導入によってエネルギーコストの上昇ですとか、企業の国際競争力の創出、リーケージの招聘、こういったさまざまな悪影響が懸念をされているところでございます。こういった懸念に対しても、しっかりと対処をしていくということが重要であろうと、これが三つ目の視点ということでございます。

これが前回の炭素税の議論と共通でございます。

続きまして7ページ目でございます。排出量取引制度とはということで、既にもうご案内のところかとは思いますけれども、改めて制度概要でございます。排出量取引制度とは政府によって排出量のキャップを設定をして、制度対象となった主体が必要に応じて枠を取引すると。この結果として炭素価格が決まりますということでございます。制度の対象となられた方は、それぞれのコストに照らしてご自身で排出削減を行うか、あるいは排出枠を買ってくるといったようなことによって対応することができる、選択することができるということでございます。

続きまして、ご参考までに8ページ目でございますが、炭素税と排出量取引制度、どちらも経済理論上は効果としては同じと言われていますけれども、この二つについて主な特徴の違いというものを整理してございます。炭素税については価格を政府が決めると。量については各主体の行動の結果として排出量が決まってくると。一方で排出量取引制度につきましては、排出枠のほうを政府のほうで決めて、価格については各取引主体の取引の結果として決まってくるといったようなところで特徴が違ってくるというところでございます。

続きまして9ページ目はご参考までに、排出量取引制度、現在国際的にどういった国々で制度が入っているか、または制度が予定されている、検討されているところであるかということを私どものほうで調べました資料、ご提示をしているところでございます。こちら、ご参考ということで。

続きまして10ページ目でございます。ここから制度検討について、より具体的なお話となります。2の制度対象者のところになりますけれども、カーボンプライシング、排出量取引制度の対象としては、いろんなタイプが考えられるというところではございます。ここでは事務局として、試みに三つのタイプというものを10ページ目にご提示をしているところでございます。上からいきますとタイプ1、化石燃料の販売者ということで、石油精製会社ですとか、商社など、化石燃料の輸入・生産・販売を行う事業者さんを対象とするといったようなケースでございます。

また、その次はタイプ2でございます。化石燃料を直接燃焼・消費する者ということで、発電事業者や工場・事業場等の大口排出者を対象とすると。

また、一番下がタイプ3でございますけれども、エネルギーを最終消費するものということで、こちらは工場や事業場等の大口排出者が対象になるということでございます。

このタイプ2と3につきましては、非常に似てございますけれども、違いを申しますと、電気に関して発電に伴う排出を、発電した事業者によるものとみなすか、あるいは電気を消費した者による排出とみなすかという点で違っているということでございます。

これとはまた別な観点ですけれども、これら全ての事業者を対象にするというわけではなくて、一定の裾切り値以上の事業者を対象とするということで、裾切り値を設けるということも、制度対象の議論として必要ではないかということでございます。

続きまして11枚目でございますけれども、こちらの制度対象者について、私どもの先ほどの三つの分類に限らず、国際機関などではまた別の分類といったものも論じられております。一例としてICAPなどでは、上流と下流というふうに、大きく二つに分けておられるということで、上流側では化石燃料が最初に商品化されるポイントを対象にすると。また下流側では、温室効果ガスが実際に放出されるポイントを対象にする。電気については消費されるポイントを制度対象とすることも考えられるといったような分類の仕方もあるということで、ご参考までにご提示しております。

続きまして12ページ目につきましては、これは前回の炭素税との対比でございます。これは参考ということで、説明は割愛させていただきます。

続きまして13ページ目、制度対象者ごとに、それぞれ制度の特徴が変わってくるということで、幾つか簡単に整理をしたものでございます。13スライド目につきましても、どういったところを制度対象としていくか、またそれによってどういう影響を与えていくかということについては、これまでにもさまざまな議論がございました。カーボンプライシングが需要家へのシグナルを送っていく候補となり得るとか、あるいはカーボンプライシングの負担は消費者に転嫁されるべきであると、こういったようなご議論もありました。またエネルギー転換が非常に重要である、石炭火力の新増設で、こういった非常に大きな問題が起こっているといったようなご指摘もありました。

また一方では、特定の産業ですとか、上流・中流・下流といったように絞り込まないで、社会の変化にあわせて変えていけるような仕組みにしたほうがいいといったようなご意見もあったところでございます。

こういったご議論を踏まえまして、13ページの一番下でございますけれども、これからの考え方ということで、あらゆる主体によるイノベーションを促していく。脱炭素社会への移行を実現するためにカバレッジを広くしていくという観点から、CO2の排出量が多い部門、それからほかの部門への影響が大きい部門、これを対象にしていくことが考えられるのではないかということでございます。

続きまして14ページ目でございます。先ほどタイプ1、タイプ2、タイプ3と三つの分類をご提示をしましたけれども、それぞれごとにどういった特徴があるかを簡単にまとめたものでございます。

14ページ目の上の表、上の段からですけれども、制度対象の事業者数、タイプ1につきましては、化石燃料の生産・販売等、なりわいとされる方が対象ということで、制度対象者は比較的少ないと。一方タイプ2とタイプ3、真ん中と右ですけれども、こちらになりますと最終消費側に近くなりますので、対象事業者、事業所、非常に多くなるということでございます。

また、上の表の下半分の段でございますけれども、削減のインセンティブの及ぶ範囲につきましても、タイプ1、上流側であれば化石燃料全てをカバーをするということになりますと。一方タイプ2とタイプ3につきましては、一定の範囲で裾切り値以上の事業者が対象になるというケースが多くなると思いますので、その場合は対象のカバー範囲が小さくなっていくということでございます。これは相対的なものではございますけれども、こういった特徴があるということでございます。

また、14ページ目の中ほどに「共通事項」とございます。こちら排出量取引制度の対象としない排出事業者、裾切り値未満の中小事業者ですとか、それから家庭部門、こういったものについては別途、炭素税によるプライシングも考えられると。その場合は排出量取引制度の対象事業者は免税、あるいは還付といった措置の対象とすることも考えられるということでございます。

続きまして14ページ目の下の段でございますが、「制度による排出削減のインセンティブ」ということで、左側からいきますと、タイプ1、化石燃料の需要家に対しては、排出枠の価格が価格転嫁されていけば、最終的に需要家の削減インセンティブも間接的に喚起をされるであろうと。エネルギー転換部門に対しては、排出枠価格が化石燃料の価格に転嫁をされていくということで、発電事業者の削減インセンティブ、間接的ながらも喚起されるであろうというところでございます。

次、続きましてタイプ2、真ん中の欄でございますけれども、化石燃料の需要家に対して、これは自ら消費する化石燃料は減らそうとするインセンティブが直接働くと。また電気についても間接的に喚起をされていくであろう。また制度対象となっている発電事業者に対しては、直接排出削減インセンティブが与えられるであろうということでございます。

また、一番右端のタイプ3になりますと、こちらは自ら消費する化石燃料と電力については、直接的に削減のインセンティブが働く。発電に関しては需要家が購入する電気の排出係数に応じて購入先を選択するのであれば、間接的に影響を与え得るといったようなことであろうと整理をしているところでございます。

続きまして15ページに参りまして、今度は排出削減手法の選択肢の広さでございます。こちらにつきましてタイプ1、タイプ2、タイプ3についてはそれぞれ違いがございます。一番左端のタイプ1につきましては、こちらの化石燃料の販売者が対象になりますので、対策としては販売量の削減ですとか、外部クレジットの調達といったようなものに限定されてしまうであろうと。

一方タイプ2につきましては、制度対象者である発電事業者、低炭素な電源を選択し得るということでございます。また設備投資、運用改善を初めとして需要家側でさまざまなイノベーションを起こし得るのではないかと、これはタイプ3でも共通でございます。また、再エネ電気の購入を促すといったような効果もあるのではないかということでございます。

続きまして16ページ目でございます。今度は制度全体の割当総量の議論でございます。3の割当総量でございます。

こちらにつきましても、これまでにもIEAのデータですとか、IPCCの特別報告書などから、エネルギーが脱炭素化に向かっているかという観点が重視されるというご指摘がございました。また石炭火力の新増設で、これを問題視するご指摘もございました。また、政府が目指しているエネルギーミックスから電源構成がずれそうなときの、調整手段としての意義もあるのではないかと、こういったご意見もありました。

また一方で、各国がそれぞれ国情を踏まえて削減をしていくことが必要と、世界全体の排出ということも踏まえて考える必要があるといったご意見もありました。また前回第6回では、IPCCの報告書で2℃以内に排出量を抑えていくためには、化石燃料の賦存量、1/3から1/5というのがバジェットの大きさであると、真剣に2℃以下を目指すのであれば、化石燃料が使えなくなると、こういったご指摘もあったところでございます。

こういったご指摘も踏まえまして、16ページ目の下の箱でございますけれども、割当総量についての考え方ということで、あらゆる主体によるイノベーションを促していくと。このためには中期的なCO2排出削減の着実な実施、これに資するように割当総量を考えていくべきではないかと。また、パリ協定の掲げる目標を達成していくためには、長期的な大幅削減、これも見据えて、早期から削減を促す、そういった視点から割当総量を考えていくことも必要ではないかということでございます。

これを踏まえまして次の17ページ目でございますけれども、割当総量についての考え方ということで、下半分の表、三つの欄がございますけれども、一つの考え方として、例えば地球温暖化対策計画、政府として平成28年に閣議決定した計画ですが、この計画の中に部門別の排出量、2030年度の排出量の目安がございますので、これを出発点として割当総量を考えていくということができるのではないか。

あるいは2段目でございますけれども、電力分野につきましては、エネルギーミックスがございます。これを踏まえると2030年度の電力由来のエネ起CO2の排出量、こういったものがわかりますので、これをベースとして割当総量を考えていくことができるのではないかということでございます。

そして3段目に、我が国として2050年までに80%削減と、さまざまな条件がついた上でのことですけれども、こういった目標もございますし、パリ協定の最終的な目標も視野に入れて、より早期から大幅な削減を促すような割当総量というものを考えていくことも必要ではないかということで、ご提示しているところでございます。

続きまして18ページ目以降は、ご参考でございます。先ほど申し上げた地球温暖化対策計画に基づく2030年度の排出量の目安でございます。18ページ目が2030年度の目安が表の一番右端にございます。エネ起CO2で例えば産業部門や業務その他部門といったものについて、排出量の目安が立てられているというところでございます。

また、19ページ目にいきまして、2030年度のエネルギーミックス、こちらに基づいて、それぞれ電源構成が見通しが立てられているわけですけれども、おめくりいただいて20ページ目に、このエネルギーミックスに基づいて電力由来のエネ起CO2を計算をすると、20ページ目の右上になりますけれども、2030年度で3.60億トンの排出という見込みが出ていると、こういった数字を出発点として考えるということはいかがでしょうかということでございます。

続きまして21ページ目、割当方法、今度は各制度対象者への事業者ごとの割当の方法についての議論でございます。

こちらにつきましては21ページ目の下半分でございますけれども、急激かつ過大なコスト負担にならないように配慮しながら、あらゆる主体のイノベーションを促していくと、そのためにどういった割当方法がよろしいかということをお考えいただきたいというものでございます。一番下の段のほうに、これは伝統的な分類でございますけれども、左から無償割当・グランドファザリング、真ん中に無償割当・ベンチマーク、右端に有償割当・オークションということで、三つ提示をしてございます。

こちらにつきましては、もう皆様よくご存じかとは思いますけれども、一番のグランドファザリングにつきましては、過去の排出実績に応じて枠を設定をしていくと、2番のベンチマークについては、排出原単位、望ましい原単位というものを政府側で設定をして、これに生産量を乗じることで排出枠を設定していく。オークションにつきましては、こちら3番目については競売によって配分をしていくということでございます。

これら三つの割当方法によって、それぞれ幾つか特徴が出てまいります。次のおめくりいただいて22ページ、23ページ目でございますけれども、22ページ目の上の段、費用効率性の観点でございます。費用効率性につきましては、理論上はどの方法であっても社会全体で費用効率的な削減が可能であるというふうに言われているところでございます。

2段目にいきまして、排出枠の購入に係るコスト負担でございますけれども、こちら左端の無償割当・グランドファザリング、それから真ん中のベンチマーク、どちらも共通ですが、こちらは、この二つについては割当量を超過した分だけを購入していただくということになりますので、有償割当に比べるとコスト負担は小さいと。一方右端に行きまして、有償割当につきまして、こちらだと全額排出量全てについて、オークションで買っていただくということになりますので、コスト負担は無償割当の場合よりは大きいということになります。

また一方で、有償割当の場合は政府側にオークション収入が入りますので、これを使い方によっては負担を軽減することも可能であろうということでございます。これは後ほどまた別途ご説明いたします。

それから22ページ下の段でございますけれども、早期削減へのインセンティブということで、一番左端のグランドファザリングについては、制度の開始前の排出量の基準を設定する、それ以前に厳しい削減を行ったものほど相対的に少ない排出枠が与えられてしまうということで、せっかく過去に努力をされた部分が反映されないということで、意欲をそぐおそれがあるということが考えられるということでございます。

また、複数の対象期間、フェーズを設ける制度の場合は、今期の実績が次の割当の基準基礎となるため、次の期間で多く割当を受けようとして、今期の削減をサボってしまうおそれがあるといったようなことも言われております。また、保有している排出枠一杯まで排出してしまうと、そういった誤ったインセンティブが働いてしまう可能性も指摘をされているところでございます。

続きまして真ん中のベンチマーク方式でございますけれども、こちらのベンチマークと比較して、相対的に削減が進んでいる人ほど、排出枠の枠内で対処がしやすくなるということで、削減努力が反映をされやすくなるといったようなことが言われております。またイノベーションの促進についても期待がされるといったようなことが言われています。これについては右端のオークションについても同じようなことが当てはまるかと思います。オークションの場合も既に削減を行っているほど排出枠の購入に係るコスト負担が小さくなるということで、それだけ報われるということで、意欲の増進を促し得るのではないか。またイノベーションの促進も期待できるのではないかということが言われております。

続きまして23ページ目でございます。こちら割当方法の続きでございますけれども、排出枠の設定・配分について、こちら一番左端のグランドファザリングにつきましては、過去の実績を基準としますので、枠の設定は相対的に、技術的にも行政側も容易であるということでございます。

真ん中のベンチマークにつきましては、ベンチマークに必要な製品・工程ごとの綿密なデータ収集、こういったものが必要ですので、政府側としてもコストがかかるというところでございます。またベンチマークの設定次第では、制度対象者の平均的な技術水準、こういったものを引き上げ、底上げを促し得る場合もあるということが言われています。

また右端、オークション方式ですけれども、こちらはオークションの過程で価格メカニズムが働いて、需給が均衡すると。その価格のもとで排出枠が決定されているということで、ルールが明快であるといったようなことが特徴として言われているところでございます。

一番下の段は各国の事例ということで、既に導入されている国や地域ではどの方式が使われているかということを例示しているところでございます。

続きまして24ページ目でございます。こちらはご参考でございますけれども、EU-ETSでのベンチマークのやり方でございます。詳細は割愛しますけれども、産業団体がルールに基づいてデータを収集してベンチマーキングを行っていると。平均的な水準ではなくて、有料施設の平均をとってベンチマークを設定しているといったようなことが言われているところでございます。

続きまして25ページ、課題への対処策でございます。こちらにつきまして、議論としては炭素税のときと非常によく似た議論になります。25ページの上、「これまでの議論」からも抜粋をしておりますけれども、エネルギー多消費産業、それから中小企業の国際競争力に悪影響を与えることがあれば、ゆゆしき事態であるといったようなご意見、そしてエネルギーコストの上昇、企業の国際競争力の創出、リーケージの招聘、国民経済への悪影響、こういったものを懸念するご指摘、繰り返しいただいているところでございます。

また我が国の電力価格、国際的にも高いということを踏まえて検討する必要があるのではないかというご指摘をいただいています。また弱者にしわ寄せがいく、こういった点も懸念をしなければならないというご意見もございました。また、産業構造の転換も重要であるけれども、ある程度やはり競争力に配慮すべきである。それからイノベーションの原資を奪う方向にカーボンプライシングが働いてしまう可能性もあると、こういったご意見も出ているというところでございます。

こういったご指摘も踏まえまして、25ページ目、一番下の箱でございますけれども、この課題への対処策の考え方として、エネルギーの本体価格も加味した上で、エネルギーコストが急激に高くなることによって、配慮が必要となる場合があり得るということで、制度の当初につきましては無償で割当を行うということは考えられるのではないか。

また、負担の期間的な平準化のために、排出枠の繰り越し(バンキング)ですとか、前借り(ボローイング)、こういったものも費用緩和措置として考えられるのではないか。

またオークションによって政府収入が得られる場合は、その収入を影響の大きい産業部門であったり、低所得者層、こういったところの影響の緩和のために活用していくということも別途考えてみるべきではないかということでございます。

続きましておめくりいただいて26ページ目でございます。配慮が必要と考えられるものというものを真ん中に書いてございますけれども、一部繰り返しになりますけれども、制度導入による負担の増が著しい業種、それからエネルギーコスト上昇の影響を相対的に受けやすい低所得者層、それから代替技術のない業種、それから海外製品との競争にさらされている業種、こういったものを対象にすべきではないかということでございます。こちら間接的に影響をこうむるものも含めてということで、例示をさせていただいております。

続きまして27スライド目が、こちらご参考ではございますけれども、諸外国でとられているカーボンリーケージへの対応策ということでございます。EU-ETSやカリフォルニアの排出量取引制度などでも無償割当が実施されているということでございます。これらも業種によってカーボンリーケージのリスクがあるというところを一定の線引きを行った上で、こういった措置の対象にしているといったような事例になってございます。

続きまして28ページ目でございます。こちらはカーボンプライシングそのものの事例ではございませんけれども、我が国のフィットでも賦課金の減免制度ということで、電力多消費産業の国際競争力の維持のために、一定の基準を設定した上で減免をするといったようなところが、もう既にこういった制度があるということで、カーボンプライシングそのものではないんですけれども、国際競争力に配慮した我が国の法制度の事例ということで、考え方の参考として提示をしているところでございます。

続きまして29スライド目はカリフォルニアの電力小売価格の影響の緩和策ということで、これも過去にこの小委員会でもご紹介をしたことはございますけれども、カリフォルニア州の排出量取引制度では、オークション収入をユーザー側に還元するといったようなことが行われております。家庭向け、中小企業向けに一括還元をするということで、価格の上昇分を相殺しているといったようなことが事例として出ております。

続きまして30ページ目でございます。課題への対処策ということで、これまでにご指摘いただいていた課題以外にも、排出量取引制度固有の課題がございます。30ページ目のスライド、上の箱でございますけれども、排出枠価格の高止まり・低迷、それから乱高下、こういった可能性、リスクについてどう対処するか。

それから排出対象となった事業者の、削減の柔軟性を持たせるために外部クレジットの活用を認めるべきではないか。一方であまり多く活用を認めてしまうと、国内で自ら削減をするといったようなインセンティブが働かないのではないかといったようなことも考えられるかと思います。

これに対する対応策として、次の箱でございますけれども、いわゆるリザーブ制度、EU-ETSで導入されていますけれども、市場安定化のための制度をやることによって、価格の安定化を図ることは考えられるのではないか。また排出枠価格の上限・下限を設けるといったようなことも考えられるのではないかということでございます。

また外部クレジットに関しましても、活用してよい量に上限を設けて、排出枠の一部までしか活用を認めないといったようなルールを設けることも考えられるのではないかということでございます。

30ページ目の下の半分はEU-ETSの事例の概要でございます。

またこれに続いて31ページ目も価格の低迷への対処策の例ということで、イギリスのカーボンプライスフロアということで、発電部門に対して炭素の下限価格を設定するということで、EU-ETSの価格が低い水準で続いていたという状況を受けて、こういった制度が導入されたというふうに聞いております。

続きまして32ページ目でございます。その他の論点ということで、これ以外にもさまざまな、より応用的・技術的な論点、たくさんございます。取引を制度として機能させるためのさまざまな会計ルールや税務ルール、それから登録簿の設定ですとか、排出量の検証ですとか、また企業側に動きがあった場合、新規参入・退出、事業の統廃合、こういったものがあった場合にどうするか。それから排出枠の法的な性格についての法律の観点からの検討といったようなことも論点として考えられるということでございます。

そして最後になりますけれども、33ページということで、ここが本日ご議論いただきたい点でございます。

冒頭に申しました制度検討の基本的視点にかなった効果が得られているかと、得られそうであるかという観点から、皆様にご議論いただければというふうに思っております。あらゆる主体への価格シグナルの発出という点に関しましては、こういった排出量取引制度によって、しっかりシグナルが発出されるかどうか、どのように届くかどうかといったこと。また割当総量や割当方法をどのように組み合わせていくことで、低炭素社会移行に必要なシグナルが効率よく発出されるかどうかということ。

そしてまた生じ得る課題についても、ここに例示をしました制度開始当初の補償割当ですとか、こういったものがしっかり機能するかどうか。また有償割当によっては、収入の活用によって影響の大きい産業や低所得者層への影響の緩和、こういったものができるのではないかといったようなことを投げかけさせていただいております。こういった視点からご議論いただければというふうに思っております。

以上、駆け足でございましたけれども、私からの説明は以上でございます。

浅野委員長

それではただいまご説明いただきましたことについて、ご発言をいただきたいと思います。

一応念のためにご発言、ご希望、全員だろうと思うんですが、ちょっと名札をお立ていただけますか。石田委員、岩田委員、どうなさいますか。無理とは申しませんが。結局は全員ですね。

それでは有村委員から、ご発言をどうぞお願いいたします。

有村委員

名前の順でご指名いただきましてありがとうございます。何分ぐらい、どのぐらいか目安ですかね。

浅野委員長

そうですね、私の腹づもりとしては、とにかく時間は6時までとってありますが、できれば少し早目に終わるほうがいいと思っております。だから大体5分か、最大7~8分でお願いできますでしょうか。

有村委員

わかりました。

浅野委員長

その程度のところで押さえていただけると、もう一巡できる可能性が出てまいります。

有村委員

わかりました。ではそのようにしたいと思います。

大変大枠としては、資料はよくまとめられていらっしゃるなというふうに思いました。

それと前回環境税で、今回排出量取引ということで、先ほどご説明にもありましたように、不確実性のない世界で考えると、どちらでやっても同じような目標を達成できるはずだというところが基本的にあって、どちらで行くかというのは価格を重視するか、数量目標を重視するかといったようなところだというふうに理解しております。

それで排出量取引なんですけれども、税と違いまして少し経済学者が頭の中で考えたところから発しているような面もあって、各国いろいろな工夫をしながら制度をやってきたと。各国を見てみますと、ETSはよく見ると、ETSを導入したことによって、排出量はどこでも増えたところはなくて、ちゃんと減ってきているだろうということは全般的に言えるだろうと思います。

それから、ここでもご紹介しましたけれども、各国、学術的な研究の蓄積が行われてきて、厳密な統計的な検証をして、削減効果というものをサポートするというものは出てきたということが、まず学術的なことは言えるかと思います。

それからもう一つは、いろいろ新しい制度だろうということでご不安を持たれる方も多いと思うんですけれども、実はこれを導入したことによって経済がだめになったところというのは、まずないわけです。いろいろほかの理由で経済的な問題を抱えているところはあると思うんですけども、ETSを導入したから、それで経済が壊滅的な影響を受けたというようなところは、話を聞きませんし、それから当初価格の上昇に対する不安というのが非常にあったわけですけれども、どちらかというと価格の下落のほうが起きて、かなり当初の懸念が緩和されたようなところもあると思います。そして、価格の下落があったにもかかわらず、キャップのほうが効いて削減効果が進んでいるということが言えるんだろうと思います。

今回、ご紹介はなかったんですけれども、実は世界各国だけではなくて、ご承知のように日本国内でも、東京都と埼玉県がこの制度を導入されています。大野委員が非常によくお詳しいところですけれども、私自身も今年度、東京都と埼玉県の制度検討の委員を務めさせていただきました。両制度とも確認すると、きちんと制度として運用されていて、しかも削減効果もあることが分かります。今後の目標もきちんと立てられて、今議論は進んでいるところで、制度としてしっかり日本国内でもちゃんと行えているんだというところは、とても大事なところだと思います。

6月にヨーロッパの環境経済学の世界大会で、日本に参考になる排出量取引の例はないかというのをフランク・カンベリー先生という、非常にこのかいわいで有名な人に聞いたところ、そんなこと言っていないで自分の国内を見ろと。東京も埼玉もあるじゃないかと言われてしまいました。ふと思ったようなところもありまして、ぜひそういった制度も今後排出量取引制度を検討するというのであれば、考えていくべきだろうと思います。

資料のほうで具体的な話になりますと、例えば14ページのところで、今回資料をお出しいただいて、タイプ1、2、3とある中で、中流でも下流でも1,400の事業所あるいは1,600ぐらいが対象ではないかというような具体的な数字が出てきております。この事業所の数というのは、東京都制度や埼玉制度で使っている制度に比べて、トータルで比べると多分小さいんだと思うんですね。なので、行政的に手に負えないような範囲の数字ではないんではないかなというふうに理解しております。

それからこれまでも具体的にどういう目標やタイミングを考えるのかということに関して、委員からいろいろな質問が出ていたと思うんですけれども、今回18ページ、19ページに、国の数値目標が出ていまして、例えば2030年のこういった具体的な目標が部門別にあるのであれば、これを目安にスタートして考えてみるというのも一つの考え方だと思っています。実際東京都と埼玉の制度でも、数値目標そのものは途中で確認しながら見直していくというような制度の立てつけになっておりますので、まずは排出目標をここらの値を目安に考えていくというような考え方もあるかと思います。

それからあとは部門でいうと、19ページに書かれているように、電力部門というのも一つ注目すべきところかなという印象は持っております。2010年の排出量取引の委員会で、電力部門は非常に排出量取引が難しいなという話がすごくありました。供給義務があるとか、あるいは地域独占で小売でやっているようなところもありましたので、なかなか制度としてうまくいくのかなという懸念はあったのです。しかし、今は市場競争が進んでおりまして、かなり排出量取引と相性がよくなってきているなと。しかも新規の参入が入ってきているので、排出量取引と相性がよくなっているということは言えるかと思います。またリーケージも少ないと、というか、電力のリーケージは今のところはないわけですね、起こり得ないというところがあると思います。

また、いろんな懸念に対する対策というのがリーケージ対策、緩和措置、あるいはベンチマークなどがあります。2010年に議論をさせていただいたときには、経済学的にはそうなるんだという理論的な話をずっと諸富先生とさせていただいたわけです。しかし、今は実際にそういったものが各国でやられてきていて、具体的に可能だと。しかも日本国内でもいろんな制度で、そういった措置は行われているということで、現実的な制度としてのリアリティというのが、ここ数年の間で増してきているんじゃないかなというような印象を持っております。

この辺りで終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

浅野委員長

ありがとうございました。時間管理にご協力いただきましたことにも感謝いたします。では、石田委員、どうぞ。

石田委員

制度としてはよくご説明をされていると思いますが、企業側から見ると、具体的な数字がないので、我々にどのぐらいの影響があるのか見えません。どの時点でどのぐらいの影響があるのか、もう少し具体的な数字を示して説明をしていただきたい。この産業でこのぐらい削減するということを示して頂けると、理解しやすいと思います。

浅野委員長

ありがとうございました。

岩田委員、どうぞ。

岩田委員

ありがとうございます。3点ほど申し上げたいと思うんですが、一つ目は今回は排出量取引ということで、これまではタックスのほうを議論してきたわけですが、私の個人的意見としては、タックスのほうがシンプルで世界共通の価格づけするというほうが望ましいんじゃないかと思っております。排出権取引のほうは、やはり価格の不安定性といいますか、それを防ぐいろいろなやり方があるかと思いますが、どうもこれまでやってきた限りは極めて不十分で、現実には80%目標を達成する上では力不足なんじゃないかなというのが全般的な印象であります。

それから二つ目は、こういう排出量の割当といいますか、アロケーションをどうするかというのはなかなか難しくて、EUも一番苦しんでいるんじゃないかと思うんですけど、経済学的に考えるとオークションが一番望ましいのかなと、オークションでもって枠の上限を決めて、そうするとそこから収入も生まれますので、それを有効に活用するという組み合わせが一番望ましいんじゃないかというふうに私は思っております。これが二つ目で。

それから三つ目は、今の政府のエネルギーの長期需給見通し、この計画がございますが、これが例えば2005年度比で24%、排出量削減、30年の目安ということで置いてありますが、これが果たして最終的に2050年80%の排出削減ということとコンシステントなのかどうかということを、これは事務方にお伺いしたいと思っているんですが、つまり80%まで減らすのに、30年の時点で24%とかいうことだと、どう考えても明らかに不足しているんじゃないか。少なくとも40%ぐらい行っていないと、80%はとても今のこの数字では、絵に描いた餅なんじゃないかというふうに思います。

ただ18ページ、19ページにそういう図がありますが、私個人的には経済成長が1.7%、30年ですね、するのはちょっと難しいと思っていまして、多分この半分ぐらいの可能性が強く、それから人口が減少しているので、家計の数が減っているというようなことがありまして、これが相当省エネに効くんですよね。ですから恐らくここに徹底した省エネ、17%と書いてありますが、これももうちょっと大きいんじゃないかなと。ですから恐らく30年度結果的に幕を閉じてみれば、今の政府のお考えになっているものよりも、もう少し削減しているとは思いますが、ただ最終的な目標と比べてどのくらい不足しているのかというようなことは、フォローアップするときにはいつも注意しなきゃいけないんじゃないかと思っております。

それから最後に、これはちょっと余分なことになりますけど、固定価格の買い取り制度で例外措置というようなことを触れられていますけれども、2.4兆円の使い道をこれからどうしようかというお話が前にも出ていたと思うんですけれど、2.4兆円あると、今の地球温暖化税というのは289円で、2,600億円ぐらいの税収になるんですよね。これをもしそういう温暖化税に振り向けるとすれば、2,900円ぐらいのカーボンタックスということになるんじゃないかと思います。ですからこれは何か有効に活用する余地があるんじゃないかというふうに思っております。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。では牛島委員、どうぞ。

牛島委員

私も個人的な考えでいきますと、カーボンタックスと排出権取引というふうなところでは、岩田委員と限りなく近い意見でして、タックスのほうがわかりやすいのかなというふうに思っています。

ただ一方で、これまでのお話を聞いている感じでは、キャップをつけるというふうなところに一つ大きな意味がありそうだというふうなことで、キャップをつけることで目標に向けてリードすることができるという可能性は大いにあるのかなと。ただ一方で非常に身軽な企業と、それから炭素にさらされている企業との大いなる格差というふうなところがありますので、そういったところから既にある程度競争環境が相当違ってくるのかなと。

一方、私の関心事としては、なぜタックスのほうがと思っているのは、適切な資源配分というふうなところで、今後低炭素社会を日本が描く上で、それをどのように産業構造や人材とか設備というふうなところを、新たな社会の枠組みのところに移行させていくのかと。その再配分するメカニズムの中に、むしろタックスのほうがそういったことがやりやすいのかなと。排出権取引の場合、需要と供給というふうなところで、逆に言えばお金で買えてしまうというふうなところもありますので、その辺りの資本力みたいなところで差はついてこないのかなというふうなところを危惧したりしております。

したがって、当初より言っていたイノベーションというふうなキーワードですとか、新しい社会構造に向けた資源配分というふうなところを、こういった枠組みを使って行う上で、どちらがいいのかというふうな視点の中では、どうなのかなというふうなところは若干感じているところです。

浅野委員長

ありがとうございました。では大塚委員、どうぞ。

大塚委員

重要なことから申し上げたほうがいいと思っているんですけども、税と排出量取引との関係については、さらによく検討した上でどちらがいいかと考えたほうがいいと思っていますが、ただ両方ということもあり得るものですから、特に排出量取引の場合は排出量取引だけということではなくて、特に電力に関して排出量取引を入れるというのが、一つの重要な方法ではないかということは、前から申し上げているところでございます。それは電力は何といっても全ての業種に対して基礎になっているところがあるものですから、電力の排出係数が上がってしまうと、全体に影響するというのが、東日本大震災の後もまさにそういうことが起こったわけですけども、そういう非常に全体に関係する立場におられるということとか、電力が全体の排出量の4割を占めておられるということとか、さらに電力自由化で直接排出方式が非常にやりやすくなったという、さっき有村委員が言われたことともちょっと関係しますが、というところがございますので、電力部門に関しては排出量取引の導入というのは十分可能ではないかということを、まず申し上げておきたいと思います。

それから排出量取引に関しては、これもよく言われることですけども、2010年のときの検討と比べて中国・韓国と近い国では入っているというところもございまして、むしろ日本が遅れているような状況にもなっていますので、大分その辺は変わってきているという、日本のほうが国境税調整をされる可能性すら出てくるような、残念な状況になっていますので、検討には値するんだろうということがあると思います。

さらに具体的な話をしていきたいと思いますけども、まず設定の話、割当量の設定のところの話は排出量取引の場合、一つの大きな問題になるわけですけども、この17ページに書いてある、各種の計画等の目標が基礎にはなると思います。最終的には2050年のところまで、80%削減するというのが一つの方法ですが、2030年までについては別の目標がありますので、さっきご議論がございましたけれども、最初は少しずつで、後で大変になるということにはなってしまいますけど、とにかく計画との関係ではそういう目標を立てるということで、直線で引くというのが基本だと思いますけれども、その上でバンキングとかボローイングをつけて調整を図るというようなことが考えられるのではないかと思います。もし直線ではないということであれば、それはそれで、例えば産業界のほうからご主張いただいて、検討して修正するということはあり得ると思いますが、基本は直線から始まるんだろうということが言えると思います。

それから成功した例がないじゃないかという議論が一方であるようですけども、それは有村委員も言われましたけど、一応削減に成功はしてはいるということがございますし、EU-ETSがリーマンショックの結果、ETSの価格が下ったことに関していろいろご議論がございますが、これある意味リーマンショックによって経済状態が悪化したので、ETSの価格は下らないとむしろまずいので、逆に上がってしまったら多分産業界は非常にお困りになったと思うんですけども、そういうことにはならなかったという、むしろ景気が悪くなってGHGの排出量が下がり市場が十分に機能したというふうにも言えるようなことかと思います。

その後ヨーロッパの各国で足並みをそろえて追加的な対策をとることがなかなか難しかったというところに、まさに問題があるわけで、これに関してはEU-ETSが最初のころ市場を非常に信頼していたというところが、ヒアリングしたときもドイツの連邦環境省の方がおっしゃっており当時ちょっと違和感があったんですけども、おっしゃっていたことと関連しています。また、その頃は、アメリカなどでは、市場が適正な排出削減に機能しないケースとしては、むしろ高止まりのほうが気にされていましたが、EUでは下落のほうで問題になってしまったというケースでした。だから先ほどご説明があったように、リザーブとかカーボンプラスフロアというのをつけるというのが重要になってくるということはあると思います。

それから炭素リーケージの問題は、結構重要な問題になると私も思っていますけども、無償割当を続ける業種は、将来的にもある程度残す必要があると思いますし、最初はとにかく無償割当で、ベンチマーキングをやっていくのが基本ではないかというふうに考えております。そのときには先ほどご説明もあったように、貿易集約度と炭素集約度を使って、ある程度透明性の高い形で、炭素リーケージに対処するようなことを考えるということになってくると思われます。

あと最初に申し上げたことと関係しますけども、とにかく電源選択の自由が電力自由化で広がっていますので、直接排出方式が2010年のときとは違ってとれるようになったということが、非常にここの10年の間の大きな変化、あとアジアの国でも入れるようになっているというところが大きな変化ではないかと思っております。

以上でございます。

浅野委員長

ありがとうございました。では大野委員、お願いいたします。

大野委員

じゃあ私も何点か意見を申し上げようと思うんですけども、まず1点目なんですけども、先ほどからタックスと取引の関係が出ているんですけど、これは私前回も確か申し上げたと思うんですが、どっちか一方というよりは、二つの制度を有効に組み合わせるのが一番いいんじゃないかなというふうに思っています。

やはりCO2削減を大幅にやってくいためには、幅広い部分もカバーする必要があるし、経済的手法で一番明確なタックスというのは非常に有効なので、これは一番大事だと思います。ただもう一方で、確実に早く減らすということも必要なので、そういう観点から考えると、特にターゲットを絞って排出量取引制度を入れるということもあわせてやるという意味があるんじゃないかというふうに思います。

2点目に、じゃあ具体的にそういうふうな考え方でいった場合は、どこをターゲットにするかということなんですけども、日本のエネルギー起源のCO2排出量で考えると、大体44%ぐらいがエネルギー転換部門から出ていて、それから産業部門が27%ぐらいで、産業部門の中でも特に素材産業、4業種だけでもたしか22%持っているんですよね。だから電力発電部門と素材産業4業種で大体66%、3分2を排出しているということですから、こういうところをまたターゲットにしていくというのは考えられるんじゃないかと思います。中でもということで、やはり有村委員も、それから大塚委員も言ったように、やっぱり電力発電事業というのは、一番対応策ということを考えると、この排出量取引制度が効果を発揮しやすいのではないだろうかというふうに思います。

私も有村委員や大塚委員と一緒にたしか2010年ですか、国の検討会に入ったんですが、あのときを思い出すと当時の電事連の方がおっしゃっていたのは、まさに有村委員がおっしゃったように、供給義務があるということが非常に一番無理な理由だということを強調していたことをよく覚えているんですけども、その点も条件が変わっていると。それからやっぱり再生可能エネルギーがかなり使えるようになったこともあって、そういう転換があのとき以上に容易になっていたということもございます。

それからこの間随分議論になっているような、石炭火力がまだ多いという話がありますので、石炭からガスに転換していく、そういう筋もありますから、やはりまずは一番縛るとしたら発電部門をターゲットに、この排出量取引制度を入れていくということが考えられるんじゃないかというふうに思います。

あともう三つ目は、排出量取引制度というのは、本当に有効に機能するかどうかというのが一番のかなめはキャップなんですよね。総量をどう設定するかによって、この制度が生きるか死ぬかも決まるということです。そういう意味では岩田委員がおっしゃったように、今のすぐに出てきたような2030年の、今までの見通しをベースにという話なんですが、これで本当にそのまま行くのかというのは相当疑わしいと思っています。2050年の80%との関係でも不十分だということがありますし、それから実践的に考えても、早くやっても2022年とか、そういう段階になると思うんですよね。そうすると必ずその段階でエネルギーミックスも見直しになるでしょうから、そういう新しい2050年の大幅削減と整合性をとったキャップを設定するというのがいいんじゃないかなと思います。

それから最後は、もう一つやはり何といっても早くやるということだと思います。何人の方から東京都の制度のご紹介をいただきましたけども、当時2007年に東京都で導入方針を発表しまして、いろんな議論をいただいて、2008年に条例を可決して、2010年から開始をしました。当時担当していた率直な印象でいうと、まさか2007年に導入した後、日本の中で東京都だけが条例を持つ法的な根拠を持った制度にして、唯一やっているということは、ひとり旅が10年以上続くということは全く想定していなかった。だからそういう意味ではやはりぜひ国でもこの際、もう十分遅れているわけですから、早く導入を決めていただきたいと。逆に言うと後発であるので、いろんな経験が国内でも海外でも蓄積されていますから、そういうものを生かして導入していくといいんじゃないかなと思います。

あと1点だけご説明の中で、割当方法でグランドファザリングについて、これだと複数の割当期がある場合に、今期の排出実績が次期の割当の基準になるから、今期の削減を怠るインセンティブが働くというような記述があったんですけども、これは必ずしもそんなことはなくて、複数期があっても基準排出をどこで設定するかというだけの話ですから、これはちょっと誤解を生む記述じゃないかなと思いました。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。それでは大橋委員、どうぞお願いいたします。

大橋委員

すみません、ありがとうございます。大きく2点申し上げますけれど、まず排出量取引に関して、事務局の資料にもあるように、基本的には排出量の大きい部門に対してターゲットを据えてやるというのは一つ大きな考え、今回電力について言われていますけれども、それは一つ大きな考え方かなと。で、小さいところというのは炭素税みたいなところで見るという仕分けは、事務局の資料にもあるとおり、リーズナブルかなと思っています。

排出量取引の難しいところは、先ほど岩田先生からもあったと思いますけど、割当のところがやっぱりあるかなと。グランドファザリングにしても政治的に結構難しいことが起きるかもしれないし、あるいはベンチマークは、私はイノベーションとかという観点で言うと結構いいとは思いますけれど、これはかなり情報を集めるような作業が多分伴うだろうと。有償割当は、これは事業者によってはかなり深刻な問題になりかねないこともあるのかなと。要するに買ってこないといけないということ。これとペナルティーをどう位置づけるかというところとの関係だと思いますけれども、どれもそんなに簡単にはできる話じゃないかもしれませんが、いずれにしても問題を解決していかなきゃいけないのかなということかと思います。それが1点目です。

2点目は、事務局の資料にはないので、ちょっと不思議に思っているのですけれど、他方で思えばなんですが、非化石証書の取引は既にもう始まっているというところがあります。ほぼ排出権市場とパラレルに考えることはできないのかなと。今確かに行われているのはFIT非化石証書ですが、これから非FIT非化石証書が始まると、ほぼ電力セクターの排出権取引的なものができるというふうな枠組みはあるのかなという感じがします。

多分これが排出量取引よりもメリットが恐らくあるのは、トラッキングができるというところがもう一つ、この排出量取引でもトラッキングをやればいいのかもしれませんけれども、トラッキングは制度として入っていて、たしかRE100にもこれから認証される目途は立っているというふうにも伺っているので、そうこう考えてみると、今議論されている非化石証書の市場をこれと比べてどう考えるのかなというのは、多分一つあるのかなというふうに思いました。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。では河口委員、どうぞ。

河口委員

ありがとうございます。ほかの委員の方々がおっしゃったことにかぶるところもあるんですけれども、どの制度を導入するにしろ、目的としては価格シグナルを入れることで、幅広く国民にこういったCO2を出すのはコストがあるんだよということを、まず理解してもらうというようなこと。それから実際に排出を削減しなければいけない。それを考えると、どちらかの制度にすると全部できるというのではなくて、どちらにもメリット、デメリットがあるので、組み合わせたらいいんではないかというご意見が、幾つかあったと思うんですが、それに賛成します。

東京都の排出権取引の検討委員もさせていただいたので、ある程度のイメージはわかるんですけれども、あれは本当にかなりきちんとわかっているプレイヤーが、きっちりコミットしてやっていかないとうまくいかないものなので、何ていうか、リングに上がった人たちがわかっている人たち同士で、お互いに取引するならいいんですけれども、あまりよくわかっていない人たちを巻き込もうとすると、多分すごく社会的なコストが高くなる。こういう制度をつくりましたと、かなり幅広い人たち、全国津々浦々の業種の人たちに理解してもらおうとすると、物すごく社会的なコストが高くなるのかなという気がしています。ですので、税金であればもう既存のシステムの上に乗せていけるということもありますので、幅広くということであれば、税金で国民全体にそういうシグナルを薄く広くと。ある特定の業種でプレイヤーが限られていて、専門的にそういうことができるような人たち相手に、排出量取引というような形の組み合わせがうまくできれば、社会的なコストも少なくなるのかなという気はいたします。

それから非化石証書に関しては、私も大橋委員と同じで、何で非化石証書について書いていないのかなと。あれとの関係はどうなっているのかなというのがちょっと疑問でしたので、そこに関しても次回は整理していただければなというふうに思いました。

そして最後になんですけれども、33ページのところで6番目、検討の背景・制度検討の基本的な視点にかなった効果を得られるかというところで、幾つか議論のポイントが書いてあって、それぞれそういうふうな見方もあるのかなと思って読んでいたのですが、最後の「○」のところに、温暖化対策と同時に、国民生活にとって他にも重大な要素はある。大事な要素はあるということで書いてあって、それはある意味今の現状の認識としては正しいことではあるのですが、温暖化が進むとどうなるかというと、ほかに大事な国民生活の要素が全部吹き飛ぶぐらい大変なことになるリスクがあるという前提なのか、いやいや、それほどでもなくて、ワンオブゼムなのかということによって、これに対するコミットの仕方が違ってくると思います。ここにおられる先生方の間でも、その辺りの認識というのはかなり差があると思うので、どの認識に発してこれを発議しているのか、ある程度そういうふうな、どのぐらい大変なことなのということをある程度、ここだけでもレベル合わせをするとか、国民にどういうメッセージで、どのぐらいやらなきゃいけないのよというメッセージをあわせてしていくことで、皆さんの理解も得られやすくなるかなというふうに思いました。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。では小西委員、どうぞ。

小西委員

ありがとうございます。手短に5点お話をさせていただければと思います。

まず私の役割として、ここでは総量の割当の話からさせていただきたいと思います。やはり総量を考える場合に、まずパリ協定を遵守していくための一つの制度設計になりますので、2℃未満は当然として、今国際交渉では本当に1.5℃特別報告書以来、そちらのほうがメインに切りかわっていますので、それを視野に入れているという制度設計にしていくことが必要だと思っております。ですので、2050年80%削減というのはもう所与のものとして、その後なるべく2050年に近い段階でゼロにしていくということを視野に入れた制度設計というものが、国際的に見て今日本にも求められていると思います。

今も河口委員もおっしゃっていたんですけれども、33ページで国民生活にとってほかにも大事な要素って温暖化対策以外にということ。それは当然そうなんですけれども、ここと私たちが一番考える必要があるのは、将来世代のことかなと思っております。今スウェーデンのグレタが起こした行動をきっかけに、フライデーズ・フォア・ザ・フューチャー、日本においてもあまり報道はされていませんが、まさに子どもたち、学生が私たちの未来をということで声を上げています。ですので、この国民生活にとって大事なものといった場合、ここにいる世代だけではなく、将来世代のこともきっちり考えた制度設計というものを出していく責任が私たちにあるのではないかと思います。

それから制度の具体的な話なんですが、2番目として、例えば10ページの制度対象者の話なんですけれども、このタイプ3というのは間接排出を対象にするというのは、非常に排出量取引制度の本来の効果を弱めてしまう可能性があるかなと思っております。もちろん東京都のように業務部門が多い場合には非常に功を奏するんですけれども、全国的に大口排出者、直接燃料を消費する対象者を対象とするべきかなと思っております。そもそも燃料転換など、石炭火力の増設・新設が今これだけある中で、そういった燃料転換などをして、電力の排出係数を下げていくのは電力事業者しかできませんので、そこはタイプ3というのは不適切ではないかなと思っています。

それともう一つ考えなければならないのが、そもそも電力というのは日本のエネルギー部門の4割で、残り6割は熱燃料需要ですので、エネルギー全体の脱炭素化を考えていく場合のキーワードの一つというのは、やはり脱炭素化がしやすい電力に置きかえていくこと。すなわち熱燃料需要のエネルギーの可能な限りの電化を進めていくということが、非常に重要になっていきますので、その際に電力の使用削減をメインの焦点にする間接排出を対象にするということは、熱燃料需要の脱炭素化を図るという意味においては、効果を下げてしまうかなと思います。

タイプ1とタイプ2では、タイプ2が望ましいと思っております。先ほどから何人もの委員がおっしゃっているように、もう今後はミックスで考えていって、あらゆる手段をとっていくということが求められていますので、炭素税とのミックスで考えるならば、直接的に化石燃料を消費するものに、インセンティブがかかる制度との組み合わせが効果的かなと思っております。

3番目としまして、今具体的に案を考えるというフェーズで話し合って、入れるかどうかは別として、具体的にということですので、日本の産業界に何が最も適切かということを具体的に案を検討していければなと思っております。

例えば前回の税の話では、既に日本にも非常に少額ではありますが、税が入っておりますので、国際競争力にさらされている重厚長大産業には減免がされていて、減免措置も最初は時限措置だったのが、今は当面の間ということで、時限も外されているといったような、具体的なことが前回のときに示されていました。ですので、どういった配慮が必要なのかということを、日本の産業界に何が適切かということを、ぜひ検討していければなと思っております。

例えば4番目としましては、9ページで、今排出量取引制度が多くの国に入っていて、リンクのメリットとして削減オプションの増加による削減の費用効率性が高まることと書いてあります。ですので、それを逆に言えば日本の産業界にとってリンクされる制度がないことはデメリットにならないのかなということを懸念しております。たしか石田委員が前回おっしゃっておられたと思うんですけれども、例えば再エネ100%のRE100とか、そういったものに入っていないと、サプライチェーンから外されてしまうような非常に危機感があるといったことを、またNHKの脱炭素革命でリコーさんともおっしゃっておられましたけれども、リンクされる制度がないということが日本の産業界にとってどうなのかといったことも、ぜひお聞きしたいなと思っております。

最後、割当方法、21ページなんですけれども、いずれ全量オークションへ移行するといったことを前提に、基本は最初はベンチマークの無償割当で、一部をオークションとしてはどうかなと思っております。というのは、日本は排出量取引は既に後発組ですので、ほかの制度のいろいろなものをレッスンズラーンドを学びながらやることができますので、最初から一部オークションといった形で制度を、ジャンプした形で取り入れていければいいかな。その際にも例えば国際競争力にさらされている部門への配慮としては無償割当みたいな、そういった一つの形になり得るのかなと思っております。P26で書かれているような、国際競争力にさらされている産業界、どういったフォーミュラで配慮が必要と考えるものを抽出するのかといった、ここにも具体的に日本の産業界には、何が一番適切なのかなといったことを案として検討していければなと思っております。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。では高村委員、お願いします。

高村委員

ありがとうございます。前回炭素税のときに発言をしませんでしたけれども、1点したがって共通をする点についてお話をした後に、後半で今日の資料についてご意見申し上げたいと思います。

共通したポイントとして、やはり一つこれは税にも関わるところなんですけれども、いわゆる特にエネルギー部門からの排出量が日本の場合多いですので、やはりエネルギー部門をどう脱炭素化していくためにどうするのかという観点からの議論って、非常に重要だというふうに思っております。特にエネルギーに関して言うと、当然3E+S、経済性安定供給、環境性、安全性という、これは非常に重要な観点だというふうに思うのですけれども、特にそれを前提としたときに、今の日本のエネルギーのあり方というのが、むしろこの3E+Sの理想形なのかというとそうではないんだというふうに思います。つまりエネルギーコストの本体のやはり一番大きなところを占めているのが、輸入している化石燃料の購入をしている部分であって、そういう意味では、しかも外に依存していることより価格変動を受ける、そういうエネルギーに多くを依存しているという構造そのものを、やはりどうやって変えていくかというのが、3E+Sだからこそ一つの非常に重要な点だというふうに思っております。その意味でこの後いずれの手法をとるにしても、どういう手法によってどういう効果があるのか、3E+Sとの関係も含めてどういうインパクトがあるのかという議論はあると思うんですけれども、こうしたカーボンプライシングを入れることによって、やはり特に非常に大きく依存している火力の部分、特に輸入の化石燃料をどういうふうに減らしていけるか、減らすことによる効果というのも、きちんとやはり評価をしていただきたいというふうに思います。あわせてそのために、これは前の議論でもたしか安田委員ほかおっしゃったところですけれども、どうやってうまくそちらに移行していくかという制度上の設計を、これまでのいろんな諸外国の例や検討の内容もありますので、それを踏まえて知恵を出すというのが、この委員会できちんとやっていくべきことではないかなというふうに思っております。

これもほかの先生おっしゃいましたけれども、スライド9にもご紹介ありますが、世界的にカーボンプライシングがいろいろ皆諸国工夫をして、しかも失敗しながら試行錯誤でやっていますので、その経験を踏まえて今申し上げたように、どうやったらうまくあるべき方向といいましょうか、エネルギーのあり方、あるいは脱炭素の方向に向かう制度がつくれるかという議論を、ぜひしていきたいというふうに思います。これは共通したコメントです。

本日の資料について幾つかありますけれども、一つはスライドの8番目のところであります。大きく整理をしていただいているところですけれども、こちらについて基本的にここでの整理自身は異論がないんですが、二つつけ加える、ここなのか、いろいろほかのところなのかとありますが、重要な点として二つ確認したいと思いますのは、一つは排出量取引制度の利点というのは、削減を追加的に求められるよりも、多くしたものについてのリウォードがあるというところなんだというふうに思います。逆にこれは仮に達成が自社でできない、自分のところでできない場合に、ほかから場合によっては安く買ってくることで達成ができるという、取引可能性という意味で、目標達成のオプションを広げるという、プラスの面があるというふうに思います。他方で、排出量取引制度に関して言うと、これはもう既に何人かの先生からありましたけれども、やはり一番の大きな、といっていいかわかりません、一つの大きな課題というのは、取引コストの問題だというふうに思っていまして、いわゆるキャップと割当について、これを決めるということについての行政コストといってもいいかもしれませんけれど、ここの点が相対的には炭素税と比べると、税とのアプローチと比べると、大きいのではないかというふうに思います。

ただしこれも、制度設計によるというふうにも思っております。これは何人かの先生に示唆されているように思いますが、電力分野は高度化法で小売について非化石44%という、一つの基準というのをつくっていただいているので、そういう意味では一種電力に関して言うと、そういう形でのキャップらしきものというのは、既に見えているような、見えていないようなキャップというのは存在しているというふうには思います。したがいまして、例えばこれをどうやってうまく使っていくと、ひょっとしたら今申し上げた取引コストというのを、もう少し下げるかもしれない。今例を出しましたのは、つまり制度をどういうふうにつくっていくか、既存の制度をどういうふうにうまく使っていくかによって、この取引コストというのも下げる可能性がある。場合によっては税のほうで上がる可能性もあるという、そういう点でございます。

今議論の中で非化石証書の指摘があって、これも私は非常に重要な指摘だと思いまして、いわゆる既存の制度として非化石の価値について、今一定の価格をつけるという制度というのは既にあるわけですね。これとの整理はぜひしていただきたいと思うんですが、非化石証書で、二つ難しいなと思っていますのは、非化石に価値をつけるんですけれども、火力に対しての差別化はないという点が一つです。もう一つは、これ小西委員が先ほどおっしゃいましたが、熱・輸送燃料のところには、これ電気の話ですので、そこに対してはやはり効かないという、カバレッジの問題が非化石に関してはあると思います。それも含めて制度の整理をしていただくというのが、重要かなというふうに思っております。

あと2点目でしょうか、スライドの14ですけれども、これは石田委員がおっしゃいましたけれども、今回かなり具体的に制度のオプションといいましょうか、あり方について出してくださっているんですが、もう少し具体的なところに進んで検討していただくほうがいいかなというふうに思っている一つの例がカバレッジであります。これここで今、年2.5万トンCO2以上ということで一つ切っていただいておりますけれども、タイプ2については直接で、タイプ3については直接・間接排出量ですけれども、これがカバーされると一体日本の排出量のどれぐらいをカバーするのかといったようなところが、多分皆さん関心があるんじゃないかなというふうに思いますので、そういう意味では一歩進んだ具体的な検討を、今後そういう材料を出していただけるといいなという要望でございます。

最後、スライドの28でありますけれども、すみません。長くなって恐縮ですが、FITの賦課金の減免のところです。これは大橋委員等々とご一緒に議論した記憶があるんですけれども、この議論したときの背景の考え方、非常に大事だと思っていまして、つまりこれ2016年法改正で改正をしたわけですけれども、単にエネルギー多消費かどうかだけで減免をするというのではなくて、やはり真に国際競争に影響を与えるようなインパクトがあるかどうかというのを一つの基準にいたしました。もう一つは、やはりそうは言っても、その分野のエネルギー効率改善、ここでは原単位改善ですけれども、きちんと削減の努力というものをしているということ、削減努力の促進をするということを制度の中に組み込もうという意図が、この減免の議論をしたときにあったというふうに理解をしております。したがって一つのいい先例だというふうに思いますので、減免等の制度設計のときには、これは税についても深く共通する課題だと思いますけれども、一つのよい例ではないかというふうに思います。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。では手塚委員、お願いいたします。

手塚委員

どうもありがとうございます。

何点か申し上げたいと思いますけども、まず非常に包括的な資料をつくっていただいているんですけども、ここでいろいろなEUであるとか、カリフォルニアとか、こういうケースを少し比較参照の対象として、こちらではこういう制度をやっているというようなことが書かれているんですけれども、EUの場合はもう2008年からやっているんで、10年以上の歴史があって、あるいは韓国なんかも2015年からフェーズ1やっているわけです。なので、成績というか、実際彼らがどういうことで、私の目から見ると七転八倒しているように近いんですけども、どういうことが起きてきたのか、どういう問題を抱えてきたのか、なぜマーケットリザーブみたいなものを導入せざるを得なかったのかとか、こういうことをもう少し深掘りしていただくと、示唆に富むんじゃないのかなと思います。

EUの場合は30ページにグラフが描いてあるんですけど、このグラフを見るだけでも、物すごく含蓄が深いんですね。ピークには二十数億トンも余剰排出権が存在しちゃって、彼らはこれで七転八倒したわけなんですけども、このようにいかにこの排出権取引制度というものが、設計が難しいかということ、あるいは当初の計画どおりに事が進まないかということの証左なのかなと思います。

中国なんかも2013年から北京でテスト的に始めて、17年12月に本格的に導入することを決定したというふうに発表して、18年から制度導入ということを言っていたんですけど、いまだに何も動いていないわけですね。早くても2020年以後になるだろうというふうに言われているんですけども、そうした遅れの背景が何なのかというようなことも、調べてみる価値はあるんじゃないのかなと思います。

あとは多少制度論の書生論的なお話なんですけども、まず排出権取引というのは名前が非常にミスリーディングでして、環境的に見たらば、これは排出権割当制度です。取引というのはあくまでその割り当てられたものを遵守する際に、低コストで取引をするということであって、本質は割当なんで、割当制度だと思います。この割当、つまりキャップをどういうふうにかけるかということが肝要なんですけども、これが結局一番難しくて、先ほど何人かの委員の先生も同じようなことをおっしゃっていたと思いますけども、本質的に政府が5年先の経済活動を含めたBAUの姿というものを見通すということは不可能だという中で、キャップをかけざるを得ない。何年間か先のプログラムとして余裕をもってかけていくということをやると、余りぎみになる。これはEUで20億トン余剰になったといいますけども、韓国は最初のフェーズ1の3年間で4,300万トンの余剰枠がもう既に発生していると言われています。

この余ったものがどうなるかということなんですけども、基本的には毎年毎年でその価値がなくなるようなものじゃなくて、みんなキャリーオーバーして、ずっと将来にたまっていく類の排出権と言えばきれいな言葉ですけども、要は将来の汚染権なわけです。ですからそれを持っていればGHGを出すことができる権利というのが、たまってくると、逆に言うと過去に決めたキャップ以上に、たまたまリーマンショックで経済活動が減ったとか、大きな自然災害があって排出量が減ったというようなことが起きたときに、想定しなかった余剰の枠が出たらば、その分は何年か先にその分追加的に排出をすることができちゃう量になるわけですね。つまり逆に言うといったんある時点で決めたキャップ以上に減らすことができないのは、この制度の本質的欠陥だと私は思います。いかなる理由であっても、実際はキャップ以上に現実が減ってしまったときに、減った分のクレジットというのをどこかで償却する方法があるんだろうかというのが大きなテーマの一つかなと。

と同時に、実際にはほとんどのケースで全量であるか、ベンチマークでいくかはともかくとして、フリーアロケーションが行われるわけですから、価値のある排出権、排出枠というものが各事業者に政府から与えられる。それがただで与えられたものが値段がついて取引されるわけですから、与えられたものというのは企業にとっては資産価値があるので、バランスシートに計上されるというような形で、一旦この制度を始めてしまうと固定化してきます。先ほど申し上げたように、別な理由でもってたくさん余ったから、償却しちゃいましょうというふうに言うわけにいかなくなってくるんですね。そういういう問題がある。

そうすると、余ったものをどうするかというときに、政府がEUの例が一番典型なんですけども、マニュピュレーションを行う。つまり本来であれば自由に取引されているはずの排出量を、政府が大量に億トン単位で集めてきて、凍結処理、棚上げ処理をするというのがマーケット・リザーブなんですけども、これはある意味株式の世界で言ったらば、政府が市場のマニュピュレーションをやって、価格を一定にするために需給のほうを政治的に、あるいは行政的にいじるという、大変自由主義経済的な考え方からすると、不健康なことをやらざるを得なくなっているわけです。

こういう意味で一旦始めてしまうと、手のつけようのないモンスターができてしまうという、こういう制度なのかなと思います。私は韓国の鉄鋼会社の人ともヨーロッパの鉄鋼会社の人とも話をしますけども、一旦この制度というのは始めてしまうと絶対にやめることができない麻薬のようなモンスターだと言っていました。なぜならば企業には政府からフリーアロケーションでもって有価の価値のある資産がばらまかれてしまって、これが一旦企業のバランスシートに乗ってしまうと、なかったことにしようということは特損がでてしまいますのでできなくなるわけです。

一方で行政的には、EUの場合にはブリュッセルだけで100人規模の行政官、さらにそれを各国で割り振って運用するためにドイツ、フランス等でも100人近い行政官が、EU-ETS運用のだけのためにパーマネントに存在するということで、既得権化するということで、大変大きな行政コストを払った組織をつくってしまうということになるんだろうと思います。なので、入れる場合には大変慎重な検討や覚悟が必要になってきます。

最後に、もう一つ本質的なこの排出権取引、あるいはキャップアンドトレードの欠点を申し上げますと、クレジットの取引の部分は自由にマーケットでもって需給を調整していって、価格がそれでもって最も安いところに落ちつく、これがキャップアンドトレード、割り当てた後の排出権取引を行う際の限界削減コストがミニマムにできるというメリットだというふうに、大体経済学者の先生方はおっしゃるんですけども、これはマーケットで取引するということでして、莫大な量の億トン単位の排出権がマーケットで取引される市場ができて、これが株式市場と同じ、あるいは債券市場と同じような形で自由に取引されるということが、合理性があると言われているわけです。しかしこの手のマーケットというのは、基本的に普通の経済学、あるいは資本主義の社会では、値段がどんどん上がっていって価値が膨らんでいくということが、いいことだということに想定されていると思います。

しかしながらこの制度は、導入することによって、イノベーションが進んでいわゆるローカーボン、ゼロカーボンの技術がどんどん普及し、究極的にはカーボンプライスがゼロになる姿がいい世界だということになるわけです。つまり最終的に株価がゼロになることがいい世界であるということを前提に、巨大なクレジット市場をつくるということは、本当に経済学的に合理性があるんだろうかと思う訳です。これは長期の話になるんですけども、要は目的とインセンティブとがどこかで何か相反するような世界になってきてしまうんではないかと懸念します。

マーケットはどんどん値段が上がっていって、どんどんでかくなっていったほうが儲かるという市場参加者たちの資産に、こういうゆくゆくは価値がなくなることを目指す有価証券がどんどん計上されていって、それが活発に取引されるということが本当に社会にとっていいことなのかどうかということも、あわせて考えてみる必要があるんじゃないかと思います。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。では土居委員、どうぞ。

土居委員

カーボンプライシングで炭素税と排出量取引とそれぞれ長所・短所があって、組み合わせるというのはいいアイデアではあると思うんですけれども、これまでの私も今回初めて中環審に関わらせていただいて、はたでこれまでずっとこの議論を見ていて思うのは、結局のところ「ニ兎追う者は一兎も得ず」ということになってはいないのかということです。やはり政策を新たに進める、ないし制度を新たに導入するということにするには、ある一定の推進力がないとうまくいかない。

私の見方なのかもしれませんけれども、この永田町、霞ヶ関で政策の推進力の、一つの極めて大きなものは予算と絡まると。そうするとカーボンプライシングの中でも、排出量取引を無償で割り当てるというようなものにして、特に政府収入も入ってこないというようなもので、あまり予算が直接は関わらない。もちろん人件費とかそういうものはあるのかもしれませんけれども、政府収入がないような形でのカーボンプライシングというものを、何か誰かがスポンサーになって積極的に推進してくれるというようなことがあるんだろうかというと、今のところなかなかそうは簡単に、この国では政策の実現・可能性という意味では高くないと。

何らかの政策的な動機づけがないといけないということからすると、やはり予算が絡まないとなかなか物事は動かないんじゃないかという意味では、確かにグランドファザリングとか、そういういろいろなアイデアは世界にはあるんだろうけれども、この国でそれがうまく実現できるんだろうかというと、どちらかというとまだ炭素税のほうが実現可能性はあるんじゃないかと。だけども無償割当での排出量取引というものが、日本でネイションワイドに行われるというようなことというのは、ちょっとすぐにはなかなか政策を実現する動機づけというものが、大きなものとして感じるのは、私には難しいというふうに思います。ただ、さはさりながら、炭素税にはできなくて排出量取引にはできることはあると。

それは後で申し上げたいと思いますけども、ただ今東京や埼玉で行われている排出量取引、制度設計に関わられた先生方もいらっしゃって、敬意を表しているんですけれども、残念ながらサブナショナルレベルなんで、自主規制と何が違うのかというところは、なかなかそれを全否定するということは難しいのではないかと。価格がくっついた自主規制と、価格のない本当に規制を遵守するということだけの自主規制と、価格がついているか、ついていないかの分だけが違うぐらいで、基本的には排出量を減らすということには変わらないという、そういう部分にとどまっているというようなことはないのかと。

それからなぜ東京と埼玉だけなのか。他県で進めるような動機づけというのがないとするならば何なのかと。これちょっと地方税のアナロジーで言うと、例えばかつて銀行税というものを東京都が導入して、結局訴訟で負けたので銀行税は撤回されましたけれども、なぜ東京だけ銀行税がかけられるような状況かというと、やはり東京にはほかの地域では取引できないような優位性があると。東京でなければ商売ができない。そういうある種地理的に特権的なものがあるから、東京都はそこに着目して銀行税をかけるというようなことができたけれども、当然のことながら、銀行界からはそれはひどい税じゃないかといって反対されたというようなことがある。じゃあ他県でそんな銀行税なんてかけようものならどうなるかということを考えると、ひょっとするとそこでビジネスをしないかもしれないという。

それがひょっとすると他県では排出量取引を導入しないという理由の一つになっている可能性というのはあるんじゃないかと。東京と埼玉はくしくも私が今指摘したような性質を持っている面があって、東京や埼玉でなければビジネスができないということだから、排出量取引には応じるけれども、だからといって他県に逃げるというようなことは積極的にはしないし、やりたくないということだと。だけども暗黙のうちにカーボンリーケージが起こっている可能性って、つまり日本のほかの県にカーボンリーケージが起こっている可能性というのはあるのかもしれない。私は存じません。あるのか、ないのか調べておられるのなら、もし教えていただきたいですけども。

そういうようなことがあるとすると、結局自主規制で産業界レベル、ないしはそれぞれの領域レベルで行われているものと、サブナショナルレベルの排出量取引とはどこが違うのかというのは、まだまだ残念ながら私が納得できるようなレベルで説明がないのかなと。ただそうは言っても排出量取引にできて、炭素税にできないことがあると、これは私は思っているのは、やはり国境を越えた取引というものが、炭素税では課税権というのは国家主権と結びついているので、国境を越えた形での課税というのは炭素税ではできないけれども、もちろん国際的なクレジット市場とうまくリンクしなければいけませんけれども、国境を越えた形での排出量取引というものが行われるとすれば、これはまさに地球環境問題というのはワールドワイドの問題ですから、国境を越えた形での何らかの取組というものに、排出量取引というものを使うということはできると思いますから、先ほど永田町や霞ヶ関に政策的な推進力がなかなか無償割当の排出量取引はないとは申しましたけども、もしワールドワイドな動きとしてそういう排出量取引を活用するというものがあるとすれば、それに日本が応じるべきだとか、応じたほうがいいとか、そういうようなことであったとすると、その局面では排出量取引を他の国と歩調を合わせながら活用するというようなことはあるのかなというふうに思います。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。では池田さん、どうぞ。

池田説明員(根本委員代理)ありがとうございます。前回に引き続き本日もカーボンプライシングの具体的な制度設計の議論ということで、繰り返しになりますが、改めて原則や大目的を出発点に施策について検討ができているのか、疑問を提起させていただきたいと思います。

第1に、経済界として、地球温暖化問題はグローバルな課題であることから、国内に閉じた施策では意味がなく、あくまで地球規模での削減に資する施策を検討する必要があると考えております。カーボンプライシングは炭素税であれ、排出量取引であれ、脱炭素化に向けた施策として講じるのであれば、本質的に国際的に限界削減費用を均等化する施策であるべきだと考えております。なお、この3月にG20各国のビジネス界が集まるB20サミットを東京で開催いたしました。そこでは、採択されたコミュニケにも記載があるように、ビジネス界は世界全体で限界削減費用を均等化させるカーボンプライシングについて、国際的に議論を深めることが重要だという認識を一にしているところです。

第2に、資料にもありますが、パリ協定の掲げる長期目標を実現するには、イノベーションの創出が不可欠です。本日の資料についても排出量取引を導入することでどのように長期かつ大幅削減に資するイノベーションの創出につなげられるのかという視点が薄いのではないかと思います。

世界全体での長期大幅削減、そのためのイノベーションの創出という大目的にかなう施策があり得るのか、カーボンプライシングがその施策となり得るのか、その可能性を議論する必要があるのではないかと考えております。本日の資料には目的や具体的な効果、経済や産業競争力へ与える影響といった視点がなく、排出量取引を導入するという前提で、その場合どのような制度内容がパターンとして考えられるのかという整理の域を出ていないように感じております。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。では廣江委員、どうぞお願いします。

廣江委員

ありがとうございます。電力に対する多大なるご期待を受けましたので、少し申し上げたいと思います。

まず私ども公式見解になりますけれども、1kWh当たり0.37kg-CO2程度というレベルに抑えようという目標を持っていまして、自主的に取り組んでいますが、先ほど来お話が出ていますように、エネルギー供給高度化法によりまして、非化石電源比率を44%にするという基準もございますし、さらには火力につきましても省エネ法におきまして効率基準というのがありまして、それによって基本的にはエネルギーミックスのような比率になるように誘導するという政策がとられているということでございます。また非化石価値につきましては、先ほど来先生方からお話が出ましたが、既にもう市場が創設をされておりまして、実際運用されているという事実もあります。

それから2030年だけではなしに、特に非化石につきましては中間評価をするということで現在その時期であったり、あるいはその基準をどうするかという議論が進められておりますし、省エネのほうにつきましても、それを実現するための一つのスキームであります共同達成についての議論が進んでいるということでございます。

したがいまして、17ページにエネルギーミックスを実現するために、こういった取引を入れるんだというようなお考えがなされておりますけども、私どもとしましてはそれはいわば屋上屋を重ねる、あるいは二重規制ではないかなと考えておりまして、その必要性というのは非常に低いというふうに考えています。

それから先ほど来、自由化とこの取引市場が親和性があるといいますか、あるいは供給責任というお話も出ていますけど、ちょっとそこは私は実はよく理解できないところがあります。

まず一つ供給責任でありますが、かつては私ども一貫体制で、なおかつ地域独占の会社が全ての責任を負っておりました。これは法律に明記をされていたということであります。しかしそれをなくしてしまったら、当然日本人が必要としている発電所が天から降ってくるというわけではありません。やはりこれは誰かがつくらないといけないということになります。設備建設をしないといけないというふうになります。

したがいまして現在の法の考え方は、非常に単純に申せば、それぞれの小売業者が自らのお客さんに対する供給責任を持つというふうに変えられたということになります。もう既に我々15%、新電力さんにマーケットを奪われましたので、85%の責任を負っているというふうになります。少しは肩の荷はおりたのかもしれませんけど、いずれにしましてもこれは全供給小売事業者がその責任を負うということであります。ここから先は少し本日の議題とは合いませんけども、そういった形で果たして本当にこれから10年、20年先の発電所が必要なだけつくられるかということについては、やや心配だという議論もありまして、現在容量市場というものをつくろうという議論が行われています。これは本日の議論とは直接関係ありませんが、一つご紹介を申し上げます。

もう1点、実は今日先ほど申しました非化石市場の中間評価についての議論を、午前中に経済産業省の委員会があり、行ってまいりました。そのときの議論でありますけれども、実は2030年が目標ですけども、先ほど来申しますように中間目標を設定しようということになっていますが、現在非化石電源がどれぐらい日本にあるかといいますと、水力9%、いわゆる新エネルギーが多分5~6%だと思います。原子力はまだ再稼働が9基しかしていませんので、9基がフルに動いても多分5~6%、とてもその数字に達していないというような状況の中でどうするかという議論がありまして、一気にもちろん中間で44%無理だなということで、どれぐらいの高さのものを比率にするのかというような、あるいはいつの時期にこれを設定するのかというような議論がずっと行われました。

その中でのポイントは二つありまして、一つはあまりにも緩い目標であるならば、非化石電源を維持し、あるいはこれを新設するというインセンティブにはならないねという考え方が一つあります。一方で、一気に非常に厳しい数字を入れてしまうと、特に小売事業者さんについては、非常に負担が大きくなってしまって、このバランスを考えないとだめじゃないかというのが、今日実は議論として出ておりました。特に新電力さんからは、もし仮に一気にこういうものが入ってきたら、自分たちの利益の半分は吹き飛んでしまいますというようなご発言もありました。

そういったこともありまして、何も自由化をやめろということを言っているつもりは全くございませんけども、いずれにしましてもそれほど自由化が入ったから、こういった取引が簡単にいくんですねというような話ではないということだけは申し上げたいということで、つけ加えさせていただきます。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。では増井委員、どうぞ。

増井委員

どうもありがとうございます。2点ございます。

1点目は、今回カーボンプライシングで排出量取引制度ということなんですけれども、最終的な目標はやはり2050年8割減、ないしは1.5℃、2℃目標に向けて排出量をゼロにしていくという、そういう大きな目標がある中で、この排出量取引制度ないしは炭素税、カーボンプライシングというのをどう活用していくのかというようなところが、議論の中心であろうというふうに考えております。

そういった中で、まずは今回の資料でも例えば14枚目にカバレッジの話がありますけれども、それぞれの基準で、どういった基準であればどれぐらいのカバレッジになるのかというようなこと、さらにはいわゆる大口の排出量、排出者というのがこの排出量取引制度の主な対象でしょうけれども、小口ですとか家庭をどうするのか。資料の中には間接的な効果も見られるのではないかというふうなお話もありましたけれども、じゃあその間接的な効果というのを本当に有効にするためにはどうすればいいのかとかいうようなことも、やはりきちんと検討していくことは必要であろうと思います。

それとあと重要になるのは、例えば今から排出量取引制度を始めるとなると、実際2年後、3年後、それぞれキャップが設定されると思うんですけれども、将来的にどういうふうにキャップを変えていくのか、削減していくのか、その8割減、ないしはゼロ排出というふうなところに向けて、どういうふうに排出量のキャップが強化されていくのかといったところのメッセージといいますか、そういったことも一つ重要になってくるのではないかと思います。実際にキャップを今どうかけるのかといったこととともに、2050年に向けて、あるいはさらにその先に向けて、どういうふうにかけていくのかといったこともぜひ検討、議論していきたいと思っております。

2点目なんですけれども、今回の資料でこの排出量取引制度に関する課題ということが取りまとめられてあります。そのほかの点についても非常によくまとめられておりますけれども、実際排出量取引制度を実施するに当たって生じる課題と、その対処策といったこととともに、実際にこういう制度、効率的に導入していくために、どういう阻害要因があるのかということもやっぱり検討していく必要があるだろうと思っております。

資料の22枚目のところに、排出量取引制度は社会全体での費用効率的な排出削減が可能というふうに書かれておりますけれども、実際にはいろんな阻害要因というものがありまして、理論的なシミュレーションで行うものと、社会で導入するものとの間にはかなりのギャップがあると思われます。どうしてもモデルで計算するとファーストベストの社会、それが前提となって計算されますので、実際導入してみるとやはり違っていたというようなことが往々にございます。

そういう意味でセカンドベストないしはサードベストというような、モデル上のファーストベストのものと、今の社会というのはどういうふうに違うのか、どういう阻害要因があるのか。なるべく効率的に排出量取引制度というのを実施していくためには、そういう阻害要因というのをどういうふうに改善していくのか、そういったことも改めて検討しておく必要があるでしょうし、そういうところに対する追加的な措置、検討というのも必要になっていくのではないかなと思います。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。では森澤委員、お願いいたします。

森澤委員

ありがとうございます。

まず早急に日本での排出量削減を考えましたら、当然ながら電力の部分の石炭も含めて、こちらのほうに税金をかけるということは、すぐにでも検討しないといけないと。加えましてこの排出量取引制度を考えた場合、阻害要因もございますけれども、便益もあるわけなんです。これは排出量の報告が精緻化されるということ。そして第三者検証、これが排出量取引制度を導入されることによりまして、必須になってきます。

日本は皆さん企業さんとかできているように思われるかもしれませんが、環境省さんの算定・報告制度に報告していらっしゃる企業であっても、CDPに報告いただいたときに桁が違うということがあって、どうしてだというふうに見ますと、間違っていらっしゃると。第三者検証も日本の場合には必須ではありませんので、取っていらっしゃらなくて、気づいていらっしゃらないと、これが現状なんです。海外で排出量取引制度が入っているところは、排出量をきちんと報告して、第三者検証を取っていらっしゃる。そういう企業さんがほとんどになってきている中に、日本の企業さんはまだそこができていないというところがあります。

CDPでは、ランクをつける評価の中でAを取っていただくというものがありまして、どんどん厳しくなって、このAを取るに当たっては、第三者検証を自分たちの排出量の70%を超えた部分について、第三者検証を取っていないとAは取れなくなりました。ですからAを取っていらっしゃる企業さんは開示していらっしゃる。その排出源に大きな漏れがないと、その前提で70%の第三者検証をしていらっしゃるとこのレベルになるんですね。

これはずっと長い歴史からいきまして、一部だけでも取っていらっしゃる場合には、そこにポイントをつけるということをやっていますと、東京都の排出量取引制度、そこに該当している部分だけ第三者検証を取っているという企業さんがあるわけなんです。その事業所のみを。これはまだそれを必須だったので、そこのみを取っていたと、そういう企業さんというのが過去の歴史からもありましたし、いまだにそこの部分に進めないという企業さんもあるかと思います。

ここの部分からいきまして、便益としましてそういった排出量の報告の精緻化、第三者検証の取得ができると。この対象としましては、産業部門ということが下流として対象とするというのはいいのかなと思いますし、もう一方で業務その他部門というのが日本の排出量の中でも大きな部門を占めているわけですけれども、ここのビルに関しましても、日本では省エネの促進、ビルの促進が遅れております。

アメリカのEnergy Starであったり、オーストラリアのNABERSとかに相当するビルの認証制度が日本では存在しないんです。こういうものを導入することが重要だと思いますし、そういうところに入りたいと。外資系の企業の中では、そういう不動産のことをやっていらっしゃる事業者さんのほうからは要望があるそうです。省エネのビルに入りたいと。そういう部分で排出量を削減したりとか、そういうことをしたいという要望があると。そういう声が上がっていかないといけないと。そのためにも排出量取引制度、そういった部分にもかけていく、業務部門にもかけていくということは、これは行政コストではなく、削減するために重要なことだと思います。

もう一方で、割当方法ですが、オークション、望ましいと思います。一方でベンチマークの設定というものも重要だと思います。これは先ほどの算定・報告制度、環境省さんの部分でございますので、長らくの歴史がありますから、そこからベンチマークということを、ここにたくさんの先生方がいらっしゃいますし、一緒にベンチマークはどうすればいいかということを検討するということがあるかと思います。既にサプライチェーンマネジメントを進んでいらっしゃる企業さんにおきましては、自分のサプライヤーに要請していらっしゃいます。これは反対に日本企業も要請されていらっしゃるわけですね。RE100にコミットしている欧米企業から要請を受けて、自分の製品を生産している、そこの部分に対しては案分して排出量を出してくれと。いわばベンチマークの部分の一部ができているわけなんです。ここの部分というものをやらずして、どんどん海外のためにだけやっていて、日本の中でやらないというのはもったいないと思います。

もう一つ、東京都の排出量取引制度、ここの部分導入されるのはすばらしい制度だと思いますが、排出係数は一定なんですね。当時はそれがベストだったと思います。ただ今、電力の自由化に伴いまして、排出係数、これは使用電力の排出係数を使用するということ、それによりまして再生可能エネルギーとか、排出係数の低い電力、こういったものを活用することが進んでいくと思います。

先ほど話が出ましたように、埼玉もそうですが、東京都が開始してもほかの自治体は始められないというのは、当然東京都にはブランドがありますし、国内とのリーケージということを考えて、ほかの自治体はなかなか導入に踏み切れないということを、東京都さんのほうも、ほかの自治体に声をかけていらっしゃるらしいですが、そういうことをすると、うちの自治体から産業が出ていくんじゃないかという懸念があるという声を聞いた、というふうに伺っております。

もう一つ、これは総量規制、キャップをかけての排出権取引制度ということになってきますけれども、話が出ていました非化石証書はいわばクレジットです。これは非化石証書だけでなく、Jクレジットであったり、再エネ由来とか、グリーン電力証書、これはRE100を達成するに当たって、そのクレジットを使うということが認められていますし、ようやく非化石証書も、CDPを初めRE100としてトラッキングがないとここの部分は導入は難しい。使用に関しては問題があるんではないかという声が高いことによりまして、政府によるトラッキングということもつくられることになってまいりました。

一方で以前にも非化石証書の方々、始めていらっしゃる方々、エネ庁さんとか申し上げましたけれども、先生方にも申し上げましたが、名前も変えていただきたいと。非化石証書じゃブランドになりませんと。もう少しいい名前に変えて、反対に本当に再エネ由来であるのかということも明確にした証書にして、トラッキングもつくって流通するということであればいいのかと思いますが、そこの分離とトラッキングと、名前の変更ということがあってこそ、ブランドかできて、皆さんにそういったものが買っていただけるんじゃないかと。

昨年とか、どうしたら売れるんだと、全然売れないじゃないかと言われたときに、RE100とかCDPとか認めないと、企業が買わないというふうなことを言われたんですが、まずそういう前提をトラッキングをつくっていくということが、重要であるということを申し上げまして、それが認められてきたということにはなってきましたので、だんだんそろってきたと思いますが、あくまでもこれはクレジットです。ここの部分を記述されるんであれば、記載いただくんであれば、そういったほかのクレジットとも一緒に、あわせて記載されるということが重要かと思います。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。では諸富委員、どうぞ。

諸富委員

先生方のご意見をずっと一通り伺っていて、大変興味深く聞かせていただきました。

とりわけ排出量取引、そもそも根本論をめぐっては、手塚委員とかそれから池田委員代理、それから廣江委員がご指摘されたことというのは、かなり私も同感するところが実は多かったですね。

私も有村先生も言及されました2010年ごろの議論のときには、もちろん排出量取引について熱心に議論していたわけですけれども、ちょうどあのころはEU-ETSでいうと、第2フェーズだったと思います。第3フェーズに向けてのEUは制度設計論議に没頭していた時期だったと思うんですね。

そのときにはもう第1期、第2期で、いろんな問題が噴出していたので、それを第3期へ向けて直して、かちっとした制度に移行していく。それから無償配分に伴うさまざまな問題もオークションを入れていき、それを部分的に入れた上で、さらに拡大をしていくということを通じて修正していけるんだという見通しのもとに、議論がされていたという記憶があります。しかしリーマンショックが起きたこともあって、手塚委員がおっしゃったような現状というのがやはり起きていますし、それはなかなかコントロールするのが非常に困難であるということが、現実であるということはお話を伺っていて、真摯に受け止めなければいけないんじゃないかなというふうに思いました。

ですので、今この時点で排出量取引制度をきちんと議論していこうとするならば、今産業界の各委員がおっしゃったことにどう答えるかということを抜きには、なかなかしっかりした議論はできないんじゃないかなというふうに思っていますし、そういった特にEU-ETSで起きている問題をどう克服し得るのかと。今日本は幸か不幸か後発国になっているので、先発国からどういうふうに後発国が学んで、失敗を繰り返さないような制度設計が可能なのかどうか、可能だとするとそれはどういう制度設計になるのかという失敗事例の研究等もちゃんとやらないといけないんだろうなというふうに思いました。

それから土居委員のおっしゃったことも、深く同意するところでして、土居委員いろいろと政府の審議会出られていて、財務省の財政審その他で、やはりその政策、霞ヶ関、永田町で政策のドライブがかかるときに予算というものがあるかどうか、あるいはそれを獲得できるかどうかというのは非常に大きな推進要因になると、全く至言で、そのとおりかなというふうに思いました。

そういう意味では単純な無償割当、規制とプライシング、これは環境経済学を学んできた者にとってはプライシングと規制でやるんだというのは、ある種教科書どおりなんですけれども、ただリアリティを考えると予算というのは確かにあって、2050年あるいは今世紀末へ向けてドラスティックな脱炭素社会に向けていくには、やはり移行期をどうするのか、どういうふうに脱炭素型の社会に移行していくのか、長い期間に確かに政府がいろんな形で低所得者対策だとか、それからイノベーションに対する補助だとか、あるいは再エネの大量導入を可能にするような系統補強のための、増強のための予算的な措置だとか、いろんな脱炭素社会に向けた政府の投資計画というのは恐らく必要になるだろうし、あるいは再分配政策が必要になるだろうし、そのための予算をどこからどう持ってくるのかというときに、確かに無償配分では財源の出所がないという問題、カーボンタックスが別途あるじゃないかと、それはそうかもしれませんが。そういう意味ではオークションというのは、私はオークション支持なんですけども、今この段階で排出量取引を議論する場合には、もう一回無償配布に関するさまざまな問題を繰り返す必要はないだろうと。

そういう意味ではオークションを入れるべきだと私は思っているんですけれども、オークションの問題は単に無償配布の、これまで問題を解決するだけじゃなくて、ある種そういう脱炭素社会移行に向けた予算獲得なんだと。収入を生む手段として、アメリカのかつてのワックスマン・マーキー法案はまさにそうでした。きちんとオークションをやって、その収入をいろんな脱炭素社会の移行のための目的に政府が支出していく、そのための支出計画とセットになっていたわけですよね。ですからそういった構想を考える必要があるかもしれないなというふうに思いました。

最後に非化石価値取引上の、いろんな委員の先生方が言及をされました。廣江委員のご指摘も全くそのとおりだなというふうに思ったんですけども、確かに二重規制になるおそれはあるなというふうに思うんですけれども、これはあくまでも電力小売事業者に対する44%規制ですよね。ですので、発電段階に対して直接かけているものではないので、小売に44%かけることを通じて、非化石電源に対する需要が盛り上がって、発電事業者にインセンティブが効くという、こういう間接的な経路だと思うんですけれども、排出量取引を議論する場合には、別途小売段階に対して非化石価値取引が既に入っているけれども、発電段階にダイレクトにコントロール手段を入れることが、それ二重規制になってしまうのか、あるいは二重負担になってしまうのかという問題は多分議論しないといけない。あえて段階が違うんだから、これは異なる規制だからいいんだという議論ができるのかどうかです。

それから高村委員がおっしゃった、確かにこれ非化石かそうでないのかという、二大区分しかないので、原発と再エネは非化石だけど、それ以外ということで化石燃料は丸ごと一緒くたになっているので、排出量取引は意味があるとすれば、例えば石炭から天然ガスへ転換するインセンティブは、そこには確かに高村委員がおっしゃるとおりで効かないので、カーボンプライシングの意味は、多分そういう化石燃料の中で燃料転換を促すインセンティブ、恐らく働かせることだろうということと、それから恐らく排出量取引が考えているのは電力セクターだけじゃなくて、あらゆるセクターなので、そういう意味でより広いカバレッジを持っているのが排出量取引かなというふうに思いました。この辺りは論点であり、廣江委員に対する反論じゃなくて、廣江委員のご指摘を踏まええた上で、さらに考えるべき論点かなというふうに思いました。

以上でございます。

浅野委員長

ありがとうございました。安田委員、お願いいたします。

安田委員

名前順で一番最後ということで、重箱の隅をつつく系も非常にしにくいんで。できるだけ総論めいたことを。

浅野委員長

まだ二人おられますので、最後ではありません。

安田委員

そうか。最後のほうなのでという感じで。

いろんな方のお話を伺って、特に経済学者の方はいろいろと理由をおっしゃりつつ、やはり税のほうがいいんじゃないかというご意見が多いのかなという印象でした。私も基本的にはこの委員会に出る前はそう思っていたんですけれども、委員会に出ている途中というか、出る前辺りから少し考え方を変えていて、そもそも何で我々が今この2019年のタイミングで、かなり初歩的なカーボンプライシングの議論をこの国においてしているのかと。これは今まで入れようと思っても入れられなかったということなんですよね。そこに来て突然オークションを入れる、当然事業者の方は排出権を買う必要が出てくると、こんなものが実現できるのかと、僕はかなり懐疑的です。これは今までの経緯、僕はほかの委員の方ほど深くカーボンプライシング業界にコミットしていないんでわからないんですけれども、現状を考えると、この排出権取引に関しては、最初は無償である程度割り当てるというほうが、はるかに現実的じゃないかと思います。その際にベンチマークを導入するんであれば、行政コストがというご指摘ありましたが、この点に関しては先ほどの森澤委員と私の意見は近くて、確かにコストはかかるかもしれないんだけれども、それが広い意味での見える化につながっていく、これは投資と考えればいいんじゃないかと。冒頭の有村委員からも、おもしろい情報提供があったんですけれども、ついつい僕のような経済学者の場合は、価格シグナル、価格を通じた見える化ということを意識しがちなんだけど、実は数量を通じた見える化、キャップをはめることによって、それがかなりCO2排出量に金銭的なインセンティブに直接つながらなくても影響があるかもしれないというのは、そんな気がしていて、まさに環境省のナッジ・ユニットさんがやられている研究の一部だとは思うんですけれども、これは企業ではなくて家庭向けに、自分の、これはCO2じゃなくて電力だったような気がしますけども、消費電力が平均よりも高いか低いかということを見える化させるだけで、大分節電意識が変わってくるみたいな、行動経済学の知見が生かされている研究成果とかも上がってきています。だからそういった意味で、価格だけではなくて数量を意識させると。例えばうまくベンチマーク型を導入をして、見える化がされて、そうすると自分のところに割り当てられた排出量よりも少なくて済んだ。つまり何らかの形で効率化に成功した企業、これもある意味グリーン企業なわけですよね。多く排出することになってしまったので、購入せざるを得ない。それはグリーンではない。そういったことが見える化されやすくなってくると。そうすると、今このカーボンプライシングと別途補完する形で進んでいる、さまざまなグリーン・ボンドのようなものもそうですし、ESG投資やSDGs、そういったものとの相性が、この見える化というのは非常にいいかなという印象を持ちました。

実務上、一番気をつけなきゃいけないのは恐らく手塚委員がおっしゃっていたEUでの経験、見方によっては失敗なんだと思いますけれども、この点もお話を伺っている中で感じたのは、そもそも排出権にかなり長い期間排出できるという期限を設けずに、排出権というものをばっと配ってしまったから、使われなかった排出権が残った。であれば、期限を短くするであるとか、あるいは使わないと減価していくみたいなものを考えることは十分できると思います。

あとオークションと無償配布の併用ということに関して、僕自身も実はオークションの専門家だと個人的には思っているんですけど、併用は十分考えられまして、これ理想的な状況で言うとオークションにするか、配付してプレイヤー同士で取引させるかというのは、結局同じ価格がついて変わらないのが理想的な状況で起きる話なんですけど、実際には恐らく価格の予期せぬ乱高下とか状況が変わってくると思います。なので、例えば8割、9割は無償配布しておいて、トータルの枠で、1割、2割はそもそも政府が持っておくと。価格の乱高下に応じて政府から出す量をコントロールしていく。新規で出すものはオークションで出すといった形で対処していくことができるんではないかと思います。

最後に、皆様からご意見が一切出てこなかったんですけれども、こういったイノベーションの促進とかで新規企業の参入であるとか、比較的事業規模の小さいベンチャーとかをどういうふうに育成していくかという視点も重要だと思うんですけれども、その際に排出権取引で完全に無償で配るという形になってくると、新規プレイヤーはなかなか入ってきにくいと。その際にオークションを部分的に入れたときに、新規参入組だけ少し優遇するみたいなことは十分考えられると思います。例えばアメリカでも、これは周波数オークションのケースですけれども、事業主がマイノリティ出身であったりとか、特別な事情があった場合に、入札価格の減免ということは行われているので、そういったものもいろんなさまざまな環境政策との組み合わせというか、相性という意味では裁量の余地が大きい分、排出権取引制度というのはのびしろというか、いろいろやりようがあるのかなという印象は持ちました。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。では遠藤委員、どうぞ。

遠藤委員

質問が中心だったものですから、最後にしようと思っておりました。大橋委員からもご指摘がありましたけれども、排出量取引については既存の制度として非化石電源市場があるので、比較検証をすることが政策導入の議論については非常に重要かと思います。

また、土居委員がご発言されましたが、国際的な枠組みで取引をすべきだということであれば、広い意味ではJCMとの比較ということも有用であろうかと思います。既存の制度がどのような問題点があるから、新たな制度を設定すべきなのかが明らかになれば、議論が進んでいくのではないかと思っています。

それと類似する点ですが、前回の議論におきましても、炭素税の価格のボリュームの具体的なイメージがないと、ある程度の議論が難しいということを私も申し上げて、何人かの委員の方もおっしゃったと思うのですが、ご回答は、いずれ頂けると理解をしておけばよろしいでしょうか。その辺も含めて事務局のご見解をお聞かせいただけたらと存じます。よろしくお願いいたします。

浅野委員長

どうもありがとうございました。前田委員、どうぞ。

前田委員

遅れてきて、皆さんのご意見をあまり拝聴することができず残念です。皆さん方からもう既に出た意見と重なるかなという懸念もあって、もしそうなら心苦しいのですが、自分の好き勝手な話を少しさせていただきます。前回の第6回のときに私は15年前の議論と一見あまり変わっていないですねと。しかしよくよく見てみるとそうではなくて、時代的な背景が変わって、それにあわせて議論が大分変わってきていますねということを申し上げたと思います。それで15年前からの時代的な変化、これは社会的背景であるとか、技術的背景であるとか、あるいは国際情勢の変化であるとか、そういうところから15年前よりはもう少し広範で柔軟で、あるいは多様性のある形で制度を考えるべきじゃないかと。15年前と同じものの焼き直しというものではないようにするべきではないかというようなことを少し申し上げたつもりでした。

その脈絡の中で、以下の話をさせていただきたいと思うのです。それの結論を申し上げますと、価格差別戦略という考え方、こういう考え方が少し入ってきてもいいだろうというふうに思うところです。もともとのカーボンプライシングの考え方というのは、カーボンを経済主体なり生産者なりが生産の要素、生産のインプットとして使うという設定から出発します。そこで、もともとカーボンはただだったものを、環境によくないからこれに値段をつけて、有限な資源かつ希少性としての価値のつくものにしようというのが、カーボンプライシングの基本的な考え方というふうに思います。その大前提にあるのが、カーボンが生産主体なり、経済主体にとって独立した生産要素、インプットだということなのですよね。そしてカーボンの利用がエネルギーとしての化石燃料消費と表裏一体である場合は、確かにそのようなイメージで捉えられると思います。

ただ現実問題を見てみますと、生産におけるカーボンの要素としての独立性というのは、産業によって幅があるように思います。産業によっては、あるいは業種によってはカーボンとそれからほかの財との消費なり、インプットなりが完全に不可分で、カーボンを減らすということは、他の不可欠な生産インプットをも減らしてしまうということを意味するということもありますし、その場合はカーボンを減らすということは、もう生産できなくなるということにもなります。たとえば、石炭と他のインプットの組合せで生産が成り立つような場合は、石炭を天然ガスに置き換えるということは容易に出来ないわけです。

一方で、また別の産業ではカーボンを使わなくたって、ほかのカーボンコンテントの違うインプットに転換することも十分可能ということもあります。石炭を天然ガスに置き換えるだけで済むなら、それでいいわけです。

そうした各産業や業種の生産実態をひっくるめて、それを日本全体で見てみれば、価格弾力性、つまりカーボンに価格をつければそれに反応してインプットが減るという性質がある程度あるだろうし、あるいは業種を超えて代替弾力性、つまり置き換わる性質もあるだろうしというような話にはなると思います。一方でグルーピングによって特定のところをグルーピングしてしまえば、その中では代替の弾力性は全然ないということもあるでしょうし、グルーピングを変えれば、その中で代替の弾力性が十分あるという見方もできると思います。であれば、この代替弾力性と価格弾力性が同じようなところでグルーピングしてあげないと不公平というように考えられます。

こういう考え方はピュアな排出量取引制度あるいは、排出許可証制度の理論ではあまり想定していないものではあります。減らせるところと減らせないところを個別にグループ化して差をつけるということが公平かどうかという議論にも関わりますが、そもそもピュアな制度では、公平性の観点はあまりなく、環境によくないものに値段をつけて減らせばいいんだというのがピュアな理論だと言えます。現実問題としてはそれぞれの産業のグルーピングによって弾力性が変わってくるので、それぞれにこのグルーピングをきちんと考えてあげるべきじゃないかというふうに思います。

似たような弾力性なり代替性を持っているところでグルーピングしていくとなると、それはそれぞれのマーケットをつくるということになるわけです。そうするとそれぞれのマーケットが幾つもあって、それぞれ別々の価格がつくということになります。それは言いかえると同じカーボンでありながら、そこに別々のマーケットがあって、別々の価格がつくということになります。これはいわゆる一物一価の法則、経済学の教科書の最初のほうに出てきますが、一物一価、一つの物に対して同じ価格、価値でなくてはいけないという法則に完全に反するわけですよね。これはいかんということで、ピュアな排出許可証制度の理論でいけば、一律のマーケットをつくって、単一の許可証価格がつくというのが正しいとされます。こういうのが教科書ではありますが、現実問題、今申し上げたように、高度に複雑化した現代社会の生産構造の中で、全部共通して単一な、ユニークなものというのは、なかなか不公平ということがあり得るのではないかというふうに思います。

それで、先ほど申し上げましたように、一物一価に反すると、これはけしからんということになるのですが、実はこれでもいいという考え方は十分あり得ます。それは先ほど申し上げたもので、経済学の中級くらいの教科書の真ん中辺に必ず書いてある価格差別戦略とか、価格差別化、プライス・ディスクリミネーションというものです。全く同じ財に対して違う値段をつけてもいいという考え方です。それは使う人によって値段が違う、それから時間によっても値段が違う、あるいは同じ人でも1個目の値段と2個目の値段は違う、3個目の値段も違うというような値段のつけ方です。教科書的には第一種、第二種、第三種という言葉があり、理論としては複雑ではあるのですけれども、基本的な考え方としてはマーケットを解像度高く、細かく見て、セグメンテーションを考えて、そのセグメンテーションごとに価格をつけていくということです。これで効率性が落ちるのかというと、実はそういうことはなくて、価格とマーケットを細かく見た分、より効率的な資源配分が達成されるというような考え方ができます。したがって、これは一物一価の法則を破っていて、非効率的な資源配分になっているかのように見えますけど、それはマーケットが違うのだから、実は物理的に同じ財でも経済活動としては違う財で違う価値があるのだという論理になっているわけです。

これをうまく今回の排出量取引制度であるとか、あるいは前回のカーボンタックスみたいな議論に戻してくると、マーケット・セグメンテーションをよりきめ細かくして、その中でそれぞれのマーケットをつくって、それぞれ別々の取引があってもいいだろうという考え方にもなるし、それぞれのマーケットについて別々の価格をつけるという考え方にもなります。

カーボンタックスと排出量取引とどっちがいいのかという議論は古くからありますが、近年カーボン・プラインシングというようになって、「プライシング」という言い方としています。こういう言葉からいくと、プライシング・ストラテジーというような考え方がぴったりです。人為的に個別のマーケットをつくって、それぞれのマーケットでそれぞれ別々の価格を形成させる。そうした場合は、ダイレクトに価格をつけたほうがプライシングという考え方としては素直かなというふうには思います。量を先に決め結果的に価格が決まる形より、価格を直接的に決めるほうが素直だと思います。素直ということは実現しやすいかなというふうには思うところです。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。先ほど遠藤委員からご質問があったんですが、事務局は、これに答える用意がありますか。

西村環境経済課長

ご質問ありがとうございました。この小委員会の運営方針そのものでございますけれども、これまでも委員の皆様からいろいろこういう検討をすべきであるというご意見をいただきながら進めてまいりましたので、その他今日いただいたさまざまな意見も同様でございますけれども、遠藤先生のほうからいただきましたほかの制度との関係ですとか、あるいはより具体的な数量的な話、準備の状況にもよりますけれども、そういった先生方の、こういう検討もすべきじゃないかということを踏まえて、ご準備をさせていただきたいと思っております。

浅野委員長

一渡りご発言いただいたんですが、前半でご発言の有村委員どうぞ。

有村委員

すみません。立ち位置でそうなるということで。遠藤委員からご質問があったJCMなんですけど、私JCMの取引規定をつくる委員会の委員でした。その当時、数年前の記憶で覚えているのは、国内は取引をするので、国内の取引規定はつくるんですけども、海外については取引は全く考えないということでした。海外取引については議論しないというのが、数年前に取引規定をつくったときのルールだったんですよね。その後もう一回ルール改定されていれば、また別だとは思うんですけども、そういう意味でグローバルな話というところでの取引というのはないような感じなんですね。削減は実施するんですけど。

遠藤委員

二国間協定ではないんですか。

有村委員

二国間協定は存在するんですけど、削減したクレジットを例えばタイで削減したものをタイとどこかで取引するというようなことは想定していないのです。日本企業がそこで関わって、日本の企業がクレジットを獲得すると日本国内で取引をしていいという。

遠藤委員

それはわかっております。

有村委員

すごい変わった、普通のETS、エミッション・トレーディング・スキームとは違う感じものが当時の制度設計になっていました。

もし違っていたら、その後変更があったら訂正していただきたいとは思うんですけど。

鮎川市場メカニズム室長

それ自体は変更はないのですが。今ちょっと。申し訳ない。途中で遅刻したんで、論点が多分つかめていないのかもしれませんが、もともとJCMは日本の技術の資本を貢献として、その削減量の一部を貢献量に応じて日本の貢献にすると。それがJCMのクレジット化されるところなんですが、JCMを多国間に流通されるという前提ではなくて、日本の貢献を生かしてその分を一部日本の削減量として貢献量としてカウントするという仕組みなので、そもそも成り立ちが違う制度ということではございます。

有村委員

ちょっと続けちゃっていいですかね。

浅野委員長

どうぞ。

有村委員

すみません。遠藤委員がおっしゃったことに少し関わっていたので、その補足をさせていただきました。それで、排出量取引、非常にさっきから厳しい発言が多くて、私自身も排出量取引の方がいいのかどうかというところは、必ずしも明確でない部分もあるんですけれども、いろんな制度の学術的な検証とかいろいろ見ていって、あと私自身も制度設計に関わってみて、考えるところを申し上げます。実は安田委員がさっきおっしゃったように、結構価格メカニズムよりも目標を設定することによって、皆さん頑張って削減しているということが起きているんじゃないのかなというのが、各国のいろいろなミクロデータを使った検証で起きていることなのかなというふうに感じる面は思います。ここ数年特にそういった事後検証が増えてきていますし、自分自身も制度設計に関わっていてそう考えるところがあります。

手塚委員からバンキングによる余剰が増えて、非常にEUでは大変なことになっていろいろ苦労されているという話がありました。これもこれ学者なんで私はそういうふうに考えてしまうんですけども、ある意味環境規制の一つのCO2の通貨の産みの苦しみを今人類は経験しているようなところがあるんじゃないかと思うようなところがあります。例えば我々が使っている紙幣は紙切れ1枚で「1万円」と書いてあるんですけど、「日本銀行券」と書いてあるから1万円の価値があると思って信用しているんですけども、ここにたどり着くまでに多分物すごい歴史を経て、各国中央銀行を用意して、マクロ経済学者が一杯集まって、この公定歩合どうやってやろうかという話をずっとやってきて、制度設計してつくり上げてきた制度なのです。同じような感じでそういった排出権の市場というのもでき上がっていくというプロセスの一部なのではないのかなというふうに私自身は思っています。

また、先ほどバンキングが余って大変じゃないかというお話があったんですけども、実際そういう例でEUはちょっと米国のフェデラル・リザーブ・バンクがやっているような感じのようなことをやっているわけです。これに対して、東京都は実は先ほど安田委員がおっしゃったようなこと、まさにそのことをやられています。1期4年でやっていて、2期目も4年間ですが、3期目には繰り越されず、そこでクレジットは消えています。昨年の暮れに。余剰の排出枠が、余って大変になるということは起きていないわけですよね。そういった形で、制度設計というのはできるという形で、いろんな問題はあるんですけれども、制度設計のつくり方によっては、排出量取引も削減に貢献できる制度になるだろうというふうに思います。

手塚委員のご意見にばかり集中して恐縮なんですけど、先ほど行政コストが大変だというお話があって、官僚が肥大化するというお話がありました。けれども、埼玉県なんか調べていただくと、非常に少人数でやられていて、コスパのいい排出量の取引をやられているというのが一つ言えるかと思います。

それから後は削減の数量目標、どのぐらい真剣に捉えるかというところだと思うんですよね。削減の数量目標を本当に達成するんだということになれば、これは環境省の官僚の方がカーボンプライシングをやらないということであれば、皆さん総動員して各地事業所で減らすという命令を出していただくことになると。そのときにかかる行政コストに比べたら、ETSのほうがまだ少ないんじゃないかなと思います。導入初期には高い行政コストがかかるかもしれませんけれども、というふうに正直思いますので、要は数量目標をどのぐらい真剣に捉えるかというところが、かなり大きいのではないのかなというふうに思ってはいます。

こういった形でいろんな論点、心配な点を排出量取引でもカバーできますし、あと実際、環境税になって事業者の方が全部負担するよりは、無償配布の排出量取引のほうが現実的に対応可能なんじゃないかというふうに思います。ビジネス上それでいいんじゃないかというふうに私は思うんです。

けれども、一番排出量取引がカーボンタックスに比べて分が悪いのは、土居委員がおっしゃったとおりのところで、それを進めるドライバーがいないという。それを進める非常に強いプッシュする勢力ですね。これは全く経済学的な視点では全くないんですけれども、過去10年ぐらいこの議論に参加してきて拝見していると、政策というのはドライバーというのが大事なんだなというようなところは感じることがございまして、そこはごもっともかなというところは今日の議論を聞いていて少し思ったところです。

浅野委員長

ありがとうございました。では、大塚委員、大野委員の順番でお願いします。

大塚委員

4点ほど簡単に申し上げたいと思いますけども、一つは非化石価値取引市場との関係は先ほどいろんな方がおっしゃったように、幾つかの違いがございますので、それでも二重の負担になるという問題は残るとは思いますが、非化石価値取引市場のほうで毎年目標を決めていただいて取引が発生することになったときに、はじめて検討するということになるかなというふうに思っているところでございます。そうでないと実際に排出量取引で考えているようなところのレベルまでは行っていることにならないものですから、そこまで行かれたときにどうするかを考えるということかなというふうに思っています。

それからEU-ETSに関しては、確かに価格が下ったところでとまってしまったという問題があるんですけども、これはEUが当時ヒアリングをしたときにも思っていましたが、非常に市場を信頼していらっしゃったので、経済学者の中でも純粋な方たちを中心に考えていたということだと思うんですけども、これに対してアメリカの法案はリザーブとか、最初から結構、もしうまくいかなかったときにどうするかという、価格が高くなったり、安くなったこともケースに上がっていましたけど、どうなるかということをかなり一生懸命考えていったところでございまして、EUの方式がちょっと対策を怠っていたということになるだろうなとは思ってはおります。ただとにかく安くなっても一応価格はついてはいますので、何も影響がないというようなことではないというところがございますし、先ほどご議論がございましたように、排出枠の期限をつけるとか、対応の仕方は幾らでもあるんだろうということはございます。

それから先ほど来申し上げて、環境省もその案を出していただく必要があったかなと今思っているんですけども、電力だけの排出量取引とか、そういうケースは今回あまり上がっていないので、それは案として出していただく、前にもその議論はしていたので、私も申し上げるのを忘れていたんで申し訳ないんですけども、出していただいたほうがいいかなと思います。というのは幾つか問題点として指摘されたところが、電力だけにした場合にはかなりクリアできるということがございます。

一つは炭素リーケージの問題は、例えば鉄鋼のような製造業者の方に比べれば少し問題点としては弱くなるということがございますし、イノベーションの創出という点は、一般的には非常に重要でございますが、これに関しては税のほうが排出量取引よりもいいところがあるわけでございます。排出量取引の場合はどうしても価格が変動しますので、税のほうがイノベーションの効果は高いわけですけれども、これも電力に限るんであれば、まさに電力の電源選択の問題になりますので、それほど強く考える必要はなくなるのかなというところもあります。

あと税よりも排出量取引がいいところは何かという、最大のポイントは先ほどもどこかの表にございましたように、量を決められるというところですね。税の場合は価格を決めますので、量は決められませんので、思ったより量が減らなければ、また税率を上げなければいけないということが当然出てくるというようなことになってしまうということがありまして、そこで電力さんに申し訳ないんですけども、電力さんに期待をかけたいところは、まさに電力があらゆる業種のところの基礎になっているという、排出係数の基礎になっているところがございますので、そこは量で押さえたほうがいいんじゃないかというふうに考えれば、電力のみを対象とする排出量取引の導入にはそれなりに意味があるということなんだろうと思います。

といっても、税との関係は常に考えていく必要があると私も思っていますので、排出量取引だけがいいというつもりはございません。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございます。大野委員、どうぞ。

大野委員

何人かの方が東京都の制度について言及されたので、その観点で少し何点かお話をしたいんですけども、まず一つは東京都の制度の経験から教訓を得るとしたら、一番大事なことというのは、やっぱりCO2の排出を削減努力を自主的な努力に任せないで、総量削減の義務を入れたということだと思うんです。よく今東京都では排出量取引といって皆さんお呼びになっているんですが、制度の正式名称は「総量削減義務と排出量取引制度」というふうになっていまして、一番大事な点は総量削減をしろと。東京都も実は2008年に条例化する前に、2002年から自主的に計画を出していただいて、削減の取組を進めていただく制度をずっとやってきたんですけども、なかなか効果が上がらないということを踏まえて、総量削減の義務にしたという経緯があります。ですから自主的な取組ではなく、全て東京都の制度は罰則もありますし、義務化されている制度だということで、その点が一番大事な教訓じゃないかと思います。それが1点目です。

それから2点目は、それは逆なんですけども、やっぱり排出量取引制度としては東京都の制度は必ずしも典型的な制度ではないんですね。これもまたはっきりと確認をしていく必要があると思っていて、東京都の制度を導入したときには、まさに業務部門が多いという東京都の特質であるとか、地方自治体があの時点で導入制度ということで、そういう制約のもとで、その中で限界の中でどういうことができるかということを考えて設計した制度なんです。ですから当然グランドファザリングを使っている、無償割当を使っているわけなんですけども、それはやはり本当に全国の中でどこもやっていないところで地方自治体が始めるのに、いきなり有償割当というのは、なかなか幾ら何でも合意形成が難しかったというのもありますし、それからオークションにすると収入が入ってくるわけですが、これが地方財政上そういう収入の位置づけというのはなかなか難しいという議論もありました。そういう中でやったということですから、今排出量取引制度の導入を国のレベルで考えるのならば、全然違う視点で考える必要があると。やはり直接排出で考える必要があると思うし、私も入れるのであれば諸富委員がおっしゃいましたけども、やっぱりオークションを前提で考えていくことが必要だろうというふうに思っています。

それから3点目に何人の方から東京都のせいだ、東京都だからできたんであって、なかなかほかは難しいというお話なんですが、これも確かにそのとおりで、地方自治体の中では東京という相対的には経済的に強い位置にある県だからできたということで、逆に言えばだからこそ東京都はやる必要があると思ってやったんです。ですから逆に言えばなかなか全国的なほかの自治体がやるのは難しいので、だから逆に国が今やらなきゃいけない、そういう必要性があるということでもあると思っています。

それから4点目ですね。手塚委員からEU-ETSのいろいろな困難についていろいろとお話があったんですが、それは確かにそのとおりだと思います。ただ手塚委員がおっしゃった中で、キャップを決めるときに政府が先の経済活動まで見通すのは難しいという発言をしたんですけども、今の時点では政府が決めるというよりは、やっぱり2℃目標、あるいは1.5℃目標というものがあって、それに基づいて減らしていかなきゃならないということがあるわけですよね。だからそれに基づいて決定をしていくので、これは仮に政府がかわりに決定をする場合であっても、行政が恣意的に決めるという話ではなくて、まさに価格の要請で減らさなきゃならない部分についてやっていくということなんだというふうに思います。

最初に戻りますけども、いずれにしましても2℃目標、1.5℃目標を達成するために必要な貢献、役割を日本もしなきゃいけないと。そのために必要な制度を導入するということなので、もし排出量取引制度なりカーボンタックスがだめだということであれば、私はどうやって減らすのかという提案をする必要があると思います。

浅野委員長

ありがとうございます。土居委員、どうぞ。

土居委員

私先ほど東京都の排出量取引について若干否定的なことを申し上げたかと思いますけど、決して効果がないということで申し上げたわけではありません。ある種量的な規制をかけるという意味においての効果はあったんだと思います。問題は、それがカーボンプライシングの制度としてワークするものなのか、ないしは炭素税よりも優先されて導入に向けた議論を前に進めるべきものなのかという点が、一番気になっているということです。

つまりどういうことかというと、自主行動計画とか、自主規制というのは既に行われていて、民間レベルでもあって、別にそれに任せればいいじゃないかという話があるんだけれども、カーボンプライシングという考え方を、どういうふうにこれから国民の理解を得ていくかというために、これを私は少なくとも参加しているという理解です。ですから、確かに東京都の制度、埼玉県の制度、制度設計された有村委員や大野委員には大変敬意を表していて、それについて私は特にそれがだめだというつもりは全くないんですけれども、それをカーボンプライシングとして位置づけるということにどこまでできるのかと。結局先ほど大野委員もおっしゃったんですが、総量を決めて取引しているという意味においては確かにそうなんですけれども、でも逆に言うと日本の排出削減目標と東京都の量が、どう関連づいているのかというと、必ずしも私自身は明確なリンケージが感じ取れなくて、そうすると東京都が自主的に取り組んでいる制度で、そこに価格付けという仕組みが一つ入っているということではあるけれども、量的に自主的な規制をしているという話に終わっているということだとすると、結局民間レベルで自主規制をしているという話と、どこが違うんですかというふうに言われて、なかなかプライシングという話に議論が及んでこないというところを、私は大変懸念をしているということです。

「二兎を追う者は一兎も得ず」という、大変失礼な言い方をしましたけれども、少なくとも排出量取引もいい面があるし、炭素税もいい面があるんだけれども、両方それぞれいいところを押し出して進めていきましょうというにしては、やはり相当それぞれには国民なり産業界の説得がまだまだ必要で、そのエネルギーのことを考えると、私の印象で言うと二つも同時によろしくというふうにお願いするというふうには、そこまでの力はなかなかないんじゃないかと。まずはどちらか優先して行うべきじゃないかというふうに思います。

そういう意味で言うと、先ほども申し上げましたように、排出量取引というのは税ではできないものというのは、もし国際的な排出量の取引ができるとすれば、それが税にはできない排出量取引ならではの長所の一つであるというふうに思いますし、先ほど森澤委員がおっしゃった第三者認証といいましょうか、そういうのも確かに排出量取引ができると促される面はあるんですけれども、私は炭素税でもできると思います。つまり当然のことながら量をしっかり客観的にはかれないと、排出量を客観的にはかれないと、課税も客観的にできないということになります。

資料1の14ページに、「排出量取引制度の対象事業者は、炭素税を免税とすることも考えられる。」というような文言があるんですが、これは結構危うい表現だと思います。どういうことかというと、先ほど大橋委員がおっしゃいましたけども、大口のところは排出量取引でやって、小口のところは税でというのも、それも一つのいい考え方だと思うんですが、じゃあ小口のところはなぜ税でないとだめなのかというと、客観的に排出量をきめ細かくはかれないかもしれない。ないしははかれるだけの事務コストがかけられないかもしれないという、事業者だったりするから、小口は排出量取引に乗せるということにはしないでという面も、一つの側面としてあると思うんですけれども、そうすると結局排出量取引で排出量が客観的にはかれる事業者は、排出量取引に行っちゃうと、じゃあ一体炭素税はどこにかけるんですかという話になるわけですね。大口のところですといったら、大口のところは大体排出量を客観的にはかれる事業者という話になるんで、そうすると排出量取引の対象事業者は炭素税免税すると、炭素税はどこにかけるんですかという話になりかねないということですから、確かに小口のところには税という対応関係はあるとは思うんですけれども、私がこの会議でも申し上げたように、仕入税額控除つきの炭素税という形で、中小事業者や家庭部門に炭素税を転嫁できる、そういう意味でこれを書いているなら意味はわかるんですけれども、そういう意味で客観的な排出量の測定ができないところに対しては、間接的に炭素税で転嫁するという形で負担をしてもらうという、そういう組み合わせということでない限り、なかなか炭素税と排出量取引を車の両輪でという話にはならないのではないかなというふうに思います。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。それでは遠藤委員、どうぞ。

遠藤委員

先ほどの発言に言葉が足りなかったので、説明を加えたいのですけれども、やはり既存の制度と比較検証してほしいと申し上げているのは、政策をスクラッチからデザインする手法はいろいろあるかと思いますし、期待効果もいろいろと想定できると思うのですが、実現性というか、リアリティを考えると、やはり社会的なコストが小さい制度というものがしかるべき措置だとに考えます。現在の制度、例えば税であれば温対税があります。取引であれば、各自治体にあります。実現性のリアリティを持ちたいがゆえに、過去の、既存の制度との検証というものが欠かせないと思って発言した次第です。非化石電源市場については、担当の省をまたぐかもしれませんが、それはぜひお願いをしたいところでございます。

一点、電力セクターに排出量取引を導入するという案につきまして、もちろんその意図や期待される効果は理解しているつもりなのですが、現実的には、原子力が9基しか稼働していない状況で、非化石で頑張ろうとすると、再生可能エネルギーを大量に導入しなければいけない。蓄電池は、まだ各家庭や各グリッドに入っているわけではないですので、負荷調整のためにバックアップで火力をたかなきゃいけないわけです。そういうリアリティの中で電力セクターに排出取引を課すというものは、時期尚早ではないかと思います。

蓄電池がグリッドの中に入り、整備されたというような状況になって、再生可能エネルギーが本格的な主力電源になり、また原子力が非化石電源としてまたパワーを持ち返すようなことになったときに、排出量取引というものが設計できるのではないかと思います。電力セクターが容易に火力を諦められない状況にある実情については、言及させていただきたいと思います。

以上です。

浅野委員長

河口委員。どうぞ。

河口委員

ありがとうございます。実は私は86年に「環境税と排出権取引」という論文を修士論文で書いて、周りから総スカンを食らって、経済でおまえは何をやっているんだと言われた覚えがあって、多分日本で最初にそれを書いた人間だと思うんですけど、そのときとほとんど基本的なロジックは変わっていないということに、ある意味驚きを感じております。というかあまりプリミティブなその議論だけでいけちゃうんだというところがですね。

まず何が申し上げたいかといいますと、排出権取引というのは、皆さんいろんなことを言っていて、排出権とか言っているから混乱するけれども、先ほども大野委員がおっしゃったように、総量規制をどうやってフレキシブルにコスト削減でできるのというものでしかなく、そこに値段がついているので、その値段がついた副次的なところを捉えて、それが外部不経済を評価する仕組みとして、マーケットでプライスがついたよという話なんで、この順番ですよね。だからこれは資産ではなくて、コストです。本体であれば削減しなければいけないコストよりも安く削減できる可能性があったら、それをかわりにもらってくるということであって、最初に発生するのは資産ではなくて、やらなきゃいけないために払わなきゃいけないコストからスタートするというところを、もう一回きちんと押さえたほうがいいんではないかなというふうに思いました。

それから皆様の議論を聞いていると、それぞれのお立場で一理あるなと思ったのですが、失礼な言い方になるかもしれないんですけれども、「群盲象をなでる」的なところがあって、それぞれのお立場で正しいんですけど、それぞれの立場なので、これ全体図にすると象になるんですが、象さんということを事務局からはまだ提示されていないので、それぞれ自分の鼻とか足とか、そういうところで議論されているような気がします。ですので、これはこういう象さんなんですよということを、皆さんもおっしゃっていると思うんですけれども、やはり提示をしていただかないと、議論がかみ合わないのかなという気がいたします。

それからもう1点なんですが、いろいろと精緻化するために、よりよい仕組みをつくるためにという提案もあるんですけれども、そのうちの一つの議論として欠けている判断軸が時間というものでして、2030年までというのがあるので、精緻的な議論をまた10年やっている場合ではないということで、早くできて、社会的なコストが一番安いものという軸もぜひ評価の中に入れていただいて議論していただきたいと。

先ほどから排出権取引の行政コストは大したことはないよねというご意見もあったのですが、東京都の事業者との対話なんかを見ると、事業者の人は物すごい大変だと思うんです。私も企業の立場なので、これをやらされたらどれだけ大変と。だから行政コストは大したことはないかもしれないけれども、事業者のコストというのは、かなりあれでもかかっているなということは理解した上で、それも東京都の中で大企業が多くて上場企業が多くて、それだけコストがかけられる人たちで、かつ頑張って、かつそういうことをやると、ESG投資家にも評価されるというベースで、あれだけのコストでできているという前提で、これを本当にもっと広げようとすると、そういうメリットがない人たちと、そういうキャパがない人たちに広げるコストというところまで広げていただいて、排出権取引をやるのであれば、どういうふうなインフラが使えるかということ。そのコストをどう考えるのか。税金なら既にある仕組みだから、何となく言えばわかるんですけど、こういうこと関わっていない人にこんなことを言ったら、説明するのにどれだけのコストがかかるんだというようなことも含めて、時間軸で全体のこの象さんを示していただければというふうに思います。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございます。

では、あと3人、これで打ち切りにさせていただきますが、まず、小西委員、どうぞ。

小西委員

ありがとうございます。今の話を聞いていて、結局そもそも論をやっぱり考えなきゃいけないんじゃないかなと思います。2℃未満達成するためには、2075年に実質ゼロです。そのためには総量規制、総量削減というのが絶対必要になってくるんですけれども、本当はそれをやるためには直接規制が一番簡単で、例えば先ほどから話題になっている非化石、44%ですか。これも義務にしちゃえればいいんですけれども、それではやっぱり社会的受容性がない。では総量削減が必要。どうやってそれを柔軟に達成するか、それぞれ取引もオーケーだよ、カーボンプライシングでも、みたいな柔軟に達成するかというところだと思うんです。

ですので、排出量取引制度を生んだ京都議定書では、排出量取引制度は柔軟性メカニズムという名前です。ですので、もう同じ議論に、十年一日のごとくを聞いている気がするんですけれども、そこに戻らないで、ここ今私たちが話しているのは、導入するかどうかは別として、具体的な制度設計に入っていこうよということで、今この議論がされているんだと思いますので、EU-ETSもいろいろ問題はあるけれども、バンキングとかキャンセレーションとか一部オークションを導入しているとか、いろいろ学べる点がありますので、日本にはどのような制度設計ならば、いろいろ学んでワークをするのかという具体的な設計に、ぜひ議論を進めていければなと思っております。

もちろん自主行動計画で2050年80%削減が実現できるという道筋があるならば、それもぜひ具体的に提案をお聞きしたいなと思いますし、そういう意味でここの議論の方向性として、今後どのように議論が進んでいくのかということを、ぜひ事務局にお聞きしたいと思います。

浅野委員長

それは事務局にお聞きされても、困るのかもしれませんね。大塚委員、次に安田委員の順でどうぞ。

大塚委員

一言だけですが、土居委員が言われた最後の点は、排出量取引と税を両方でやろうと思っている人は、多分まさに先生がおっしゃったとおりと同じようなことを考えているわけで、税は小規模のところで、排出量取引は大規模のところしか無理なものですから、税は上流でかけて間接的にという、あと排出量取引の対象者に対しては税収の還付が必要になってくるという問題はあるんですけども、まさに先生がおっしゃるようなことを考えているということだと思います。

それから遠藤委員のおっしゃったのはやや意外でしたけども、そうするとやはり現在2030年の非化石価値の44%というのは、達成できないというふうに思っていらっしゃるのかなと思いましたが、それに向けて徐々に上げていくというのが、多分一つの方法なので、おっしゃったことは目標の決め方次第かなというふうには思います。

以上です。

安田委員

まず最初に排出権の有効期限がある事例をご教示いただいて、有村委員どうもありがとうございます。

有効期限の話につながったのも、きっかけとしては手塚委員から提示された各国での事例を見ながら、どういった課題があると。その辺をこの委員会は極めて多様なバックグラウンドの方が集まっていらっしゃるので、具体的な問題点を挙げて考えられるアイデアを出していって、その具体的な姿につなげていく。こういった形の運営を今後も続けていくのは一番ゴールに近づくのかなという印象です。

最後土居委員が途中でおっしゃっていた、やっぱり二兎を追う者はというのが僕も同感で、あまり多くを望むと実現可能性が下ってしまう。で、遠藤委員がおっしゃっていましたけど、既に炭素税に近いもので言うと温対税があると。排出権取引ではないんだけど、クレジットに準ずるもので非化石証書であったりとか幾つかがあると。

なので、例えばこの委員会の中で炭素税的なものを抜本的に導入するということであれば、それと組み合わせで言うと、非化石証書に代表されるクレジット、この辺の関係性をきちんと議論すると。そうではなくて、ETS、排出権取引みたいなものを新しくつくるというようなところで言うと、それと既存の炭素税に近い温対税との関係性を詰めていくというのが、一番筋が良いのではないか。新しく追うのは一兎なんですけれども、既にあるものを組み合わせて、皆さんがおっしゃっている税とこういった排出枠、総枠の割当というもののコンビネーションが図れるんじゃないかと思いました。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

それではまだご発言もあるかもしれませんが、今3時間近くやっていますので、本日はそろそろ会を閉じたいと思います。

昔は3時間コースの審議会の会議では大体真ん中に必ず休憩を入れるという、これは主な理由は当時の座長さんが喫煙をしなきゃいけないので、それで休憩が入ったんですが、今はそういうものもありませんので、少々休みなしの会議で疲れました。

次回また議論を、続けることにいたしますが、今日はこれで議論を終了したいと思います。事務局からお知らせをお願いいたします。

新原市場メカニズム室室長補佐

本日はありがとうございました。

次回につきましては、4月24日水曜の15時から18時に開催の予定で、最終調整をしております。委員長ともご相談をした上で、追って事務局より正式にご連絡をさせていただきます。ありがとうございました。

浅野委員長

それでは今日はどうもありがとうございました。これで終了いたします。

午後5時51分 閉会