第1回中央環境審議会環境保健部会 化学物質審査規制制度小委員会 議事録

日時

平成14年10月17日(木)14:00~17:00

場所

東条インペリアルパレス(東條會舘)2階 千鳥の間

出席者(敬称略)

(委員長) 鈴木 継美
(委員) 浅野 直人 清水 誠
(臨時委員) 内山 巌雄 中杉 修身
  満岡 三佶 若林 明子
(専門委員) 井上 達 岩熊 敏夫
  小江 紘司 大塚 直
  須藤 隆一 中下 裕子
  村岡 浩爾 鷲谷 いづみ
  (五十音順)  
 (事務局) 南川環境保健部長  
  石野企画課長 早水化学物質審査室長
  安達環境安全課長 鈴木環境リスク評価室長 他

議題

  1. (1)今後の化学物質の審査及び規制の在り方について
  2. (2)その他

議事

【事務局】 時間になりましたので、ただいまより第1回中央環境審議会環境保健部会化学物質審査規制制度小委員会を開催いたします。
 本日は、7名の委員・臨時委員及び8名の専門委員の方々が出席されておりまして、中央環境審議会令に従いまして、委員、臨時委員の過半数という定足数を満たしておりますので、本委員会は成立いたしております。
 開会に先立ちまして、環境保健部長の南川より御挨拶申し上げます。

【南川環境保健部長】 保健部長の南川でございます。本日はお忙しいところ御参加いただきましてありがとうございます。第1回でございますので、開会に先立ちまして一言御挨拶申し上げます。
 本小委員会でぜひ御審議をお願いしたいと考えておりますのは、化学物質審査規制法に関連して2つの事柄でございます。
 まず第1点は、現在この法律は、厚生労働省、経済産業省とともに私どもが担当しまして、新規化学物質の審査や製造、使用などに関する規制を行っておりますけれども、この対象が人の健康あるいはものの物性に限られておるところでございます。最近、生態系全般への化学物質の影響について内外で関心が高まっております。環境基本法に基づく環境基本計画の中でも、生態系を保全するための化学物質対策を推進すべきということが書かれておりますし、OECDにおける我が国のレビューにおいても同じような指摘があるところでございます。ただ、一口に生態系といいましても定義が難しゅうございます。
 ちなみに、後で申し上げますが、ちょっとしたチラシを作りまして、今日の資料の一番最後にはさんでおりますけれども、この中で生態系をどう書いているかといいますと、ざっと申しますと、動物、植物、微生物などの多様な生物と、その生息と生育の基盤となる大気、水、土壌などの自然的構成要素、それらの間の物質やエネルギーのやり取りをあわせて「生態系」と呼びます、ということで、一言で聞いても何のことかよくわからないの
ですが、いってしまえば、様々な動植物の生息・生育環境ということかと考えております。
 若干私事になりますけれども、実は私の父親が植物生態学の仕事をずっとやっておりまして、小さい頃、生態系といっても、ほとんどの人が何のことか全くわかってくれないと言って嘆いているのをよく自宅で聞いたことがございます。それが今や、自然保護の世界では誰も彼もその言葉を使い、また、環境行政全般の中でも「いわゆる生態系」という言葉が使われ出して、非常に自然に使われるようになってきたということかと思いますし、そういう時期にきているという感じを持っております。そういったいわゆる生態系の扱いの問題が1点でございます。
 もう1点は、化審法が制定されてから約30年たっております。もともとはPCB問題を契機にしてできたわけでございますが、現在の審査の形になってからも16年程度がたっておりまして、国際的にも化学物質の審査についていろいろな変化がございましたし、また、我が国も長年の運用の中でいくつか改善すべき点があるように思われます。そういうことで、ぜひ化審法の中身を合理的かつ効果的なものにしていきたいと考えておりまして、そういった観点からも先生方の御審議をいただければと考えておるところでございます。
 私どもとしましては、この審議会の審議の結果を踏まえまして、厚生労働省、経済産業省と十分連携を図りながら、来年の通常国会でできれば必要な法改正をしたいということで対応していきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【事務局】 本小委員会の第1回でございますので、委員の御紹介をしたいと思います。クリップ止めされた資料の2枚目が資料1の委員名簿となっておりますので、こちらを御覧になりながらお聞きください。
 本小委員会の委員長は鈴木委員長でございます。
 以下の委員は、本日御出席の座席順に御紹介させていただきたいと思います。
                 (委員紹介)
 本日御欠席の委員は、藤井委員、井口委員、池田委員、北野委員、田辺委員、吉岡委員となっておりますので、よろしくお願いします。
 事務局の方も御紹介させていただきます。
                (事務局紹介)
 続きまして、本日の議題を確認させていただきます。資料の1枚目の議事次第を御覧ください。議事の1つ目として「今後の化学物質の審査及び規制の在り方について」、2番目として「その他」を本日準備しております。
 配付資料の確認をさせていただきます。
               (配付資料の確認)
 委員長は先ほど御紹介いたしましたが、9月13日に開催されました環境保健部会におきまして、鈴木部会長が本小委員会の委員長を務められることとされております。
 これ以降、本小委員会の議事進行は鈴木委員長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【鈴木委員長】 結果として南川部長の親孝行の手伝いをすることになるのかもしれませんが、長年私どもの心にかかっていた問題点を議論することができるという機会に恵まれて何よりと存じております。
 私は中央環境審議会の水とか大気とか自然等々いくつもの部会に出席させていただいているわけですが、通して感じましたことは、環境省、ひいては日本国全体になるのかもしれませんが、環境における化学物質対策をどうするかに関して、ある種の共通の理解なり考え方なり何なりが必ずしも成立していない部分があって、それは我が中央環境審議会の各部会間の中でもそういうことがあり得るのではないだろうかという心配があります。別に環境保健部会が何かをイニシアチブをとってどうのこうのということではなしに、そういう意味では問題意識を共有した形で何が問題なのかをいろいろな関係のところと一緒になって議論ができる良い機会だろうと思っております。どうぞ各委員の御協力をお願い申し上げます。
 それでは、まず、本委員会の設置の趣旨とその契機となりました諮問の内容について事務局から説明してください。

【早水化学物質審査室長】 私の方から諮問と小委員会の設置の関係の御説明をさせていただきます。
 まず資料2を出していただきたいと思います。表面が9月13日付けの環境大臣から中央環境審議会長あての諮問でございまして、「今後の化学物質の審査及び規制の在り方について」ということでございます。
 裏側が、同日付けで審議会長から環境保健部会長への付議がなされておりまして、これを受けまして、環境保健部会で審議をいただくことになったわけでございます。
 諮問理由でございますが、既に部長挨拶の中にも含めておりますけれども、化学物質審査規制法は「難分解性の性状を有し、かつ、人の健康を損なうおそれがある化学物質」による環境の汚染防止を目的にしまして、審査、規制を行ってきたわけでございますが、生態系への影響等について、必ずしも審査が制度的に行われておらず、必要な規制等の措置も講じられていないという現状でございます。
 この点につきましては、国際的な認識が高まっているということで、OECDの環境保全成果レビューにおける指摘があったということでございます。この成果レビューにつきましては、今日、参考資料1でお示ししております。簡単に御紹介しますと、本年の1月9日に開催されましたOECDのワーキングパーティーにおきまして、幅広いいろいろな政策分野について、日本の環境政策についてのレビューが行われたわけです。そのうち、化学物質の部分について、参考資料1の2枚目に付けておりますが、表が日本語、裏が原文の英語でございますが、結論と勧告の部分だけをお示ししております。第1パラグラフが成果、第2パラグラフが課題ということで、四角の中が勧告となっております。第2パラグラフの1行目に「生態系の保全は、日本の化学物質管理政策の目的に、一般的には健康と並ぶ形で含まれていない。」という結論になっておりまして、それを受けまして、勧告の1行目に「化学物質管理の効果及び効率をさらに向上させるとともに、生態系保全を含むように規制の範囲をさらに拡大すること。」という指摘がなされております。
 資料2に戻っていただきますと、これがまず1つの理由でございますが、もう1つは、環境基本計画を引用させていただいておりまして、これにつきましては、参考資料3に環境基本法、環境基本計画の部分が最初に載っているかと思います。まず環境基本法では、基本理念の第3条として、「生態系が微妙な均衡を保つことによって成り立っており人類の存続の基盤である限りある環境が」ということで、こういった「環境の恵沢を享受するとともに人類の存続の基盤である環境が将来にわたって維持されるように(環境の保全を)適切に行われなければならない。」という理念の下に、いくつかの施策が示されております。
 具体的な施策の中ではこの生態系部分についてはいろいろな表現がございまして、例えば公害の関係でいいますと、生活環境の保全という中に「人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含む」ということで、そういった生活環境が保全される、あるいは自然環境が適正に保全されるという考え方、それから最近になりまして、生態系の多様性の確保あるいは野生生物の種の保存といったものについても確保するという考え方が入ってきております。
 2ページになりますが、環境基準は、公害の関係で受けておりまして、生活環境の保全という形になっておりますが、規制の中身は、公害の防止のための規制以外に、自然環境の関係の規制が入っているということでございます。
 これらを受けまして、環境基本法に基づいた環境基本計画の中身でございますが、具体的には後ろの方に入れておりますけれども、「自然との共生」というのを長期的な目標としまして、いくつかの戦略的プログラムが入っており、その1つが化学物質の関係でございます。そのほんのさわりの部分だけ2ページに載せております。まず認識として、「農薬を含めた様々な化学物質による生態系に対する影響の適切な評価と管理を視野に入れて化学物質対策を推進することが必要」ということで、それを受けまして、基本的な方向として、2ページの一番下ですが、「生態系に対する影響の適切な評価と管理を推進します。」ということで明確に位置づけられております。
 また、3ページに、諮問の方には引用しておりませんが、最近できました新しい生物多様性国家戦略におきましては、新たに多様性条約の中で合意されましたエコシステムアプローチという原則、それは自然と人間との調和ある共存を実現するための考え方ということですが、それが紹介されておりまして、その具体的な政策の中で、従来、自然保護の分野だけいろいろ取り上げておりましたが、新しく化学物質対策についても触れられまして、下線が引いてありますが、「従来からの人の健康の保護の視点に加えて、様々な化学物質による生態系に対する影響の適切な評価と管理を視野に入れた化学物質対策を推進」ということで位置づけられております。
 個別法の関係はまた後ほど御紹介しますが、こういった形で基本的に生態系に対する取組を推進するということが我が国の基本政策の中でも位置づけられているということでございます。
 資料2に戻りますが、それを受けまして、化審法に基づく審査、規制等に関して、生態系保全という観点を導入する必要性が指摘されているということでございます。
 併せて、第2の点でございますが、化審法がこれまで運用されてまいりましたけれども、さらにより合理的かつ効果的な化学物質の審査の促進等を図るよう検討することが求められているということでございます。このあたりの詳しい点は後ほど御紹介したいと思います。
 こういったことを踏まえて、化学物質の審査、規制の在り方について、所要の検討を行
う必要があるということで、私どもから諮問をさせていただいたということでございます。
 具体的に資料3-1~3-3を御説明したいと思います。9月13日の環境保健部会におきまして、資料3-1にありますように、「環境保健部会の小委員会、専門委員会の設置について」という要項が一部改定されまして、2.として「化学物質審査規制制度小委員会」を置くことが決定されまして、この小委員会では、今後の化学物質の審査及び規制の在り方について調査審議を行うということになっております。これが9月13日に議決されております。
 その日に、中央環境審議会令の第8条の規定に基づきまして、部会長より鈴木委員長が指名されております。その後、同じ規定に基づきまして、部会長から委員の指名がなされまして、資料1にありますように、先ほど御紹介しました委員、臨時委員、専門委員の方が指名されたということでございます。
 なお、小委員会の運営方針について若干御説明しますと、資料3-2、会議の公開についてでございますが、これは環境保健部会の小委員会、専門委員会の共通ルールでございますけれども、小委員会、専門委員会は、原則公開でございます。公開することにより公正かつ中立な審議に著しく支障を及ぼすおそれがある場合又は特定な者に不当な利益若しくは不利益をもたらすおそれがある場合のみ非公開としまして、それ以外は原則公開となっておりまして、この取扱いについては、小委員長又は専門委員長が決めるということになっております。
 それから、代理出席は認めないという考え方でございます。
 また、会議録の議事要旨の公開につきましては、2の(3)にございますが、公開した小委員会、専門委員会の会議録は、公開する。議事要旨は、公開、非公開にかかわらず、全て公開ということでございます。
 その他として、このほか、運用に関して必要な事項は、小委員長又は専門委員長が定めることができるという規定が置かれております。
 なお、若干補足しますと、資料3-3に中央環境審議会議事運営規則がございまして、小委員会に関する規定が2ページの小委員会、第8条のところにあります。これは先ほど私が引用したところでございますが、8条の5項に、中央環境審議会令を引用されております。ここを、審議会令をお配りしておりませんので御紹介しますと、審議会令第7条第1項、第2項の規定というのは、この会議の成立の関係でございますが、事務的には、委員、臨時委員の過半数の方の出席で成立ということで、また、出席された委員、臨時委員の過半数で議決がされることになっているということでございます。
 以上、この小委員会の設置の関係についての御説明を終わらせていただきます。

【鈴木委員長】 どうもありがとうございました。ただいまの説明に御質問なり御意見がございますか。

【満岡委員】 勉強不足で申し訳ないのですが、1点だけ質問させていただきたいのです。参考資料1のOECDのレビューの「結論及び勧告」という中で、「以下のとおり勧告する。」という中で、最初に「化学物質管理の効果及び効率をさらに向上させるとともに、生態系保全を含むように規制の範囲をさらに拡大すること。」と。この後半部分は十分理解できるのですが、前半の部分については、OECDは具体的なイメージをもってこの効果とか効率ということを言っているのでしょうか。例えば審査のやり方なりスピードアップなり、そういうことなのか、それとも、左のページの上に「環境政策における経済的手法の活用、経済分析の強化」とか、こういうことが書いてあるわけですが、こういった経済的側面も考えた効果・効率というふうに理解もできるのですが、どういうことを効果・効率ということで指摘を受けているのか教えていただきたいのです。

【早水化学物質審査室長】 この会議に私自身が出席いたしましたが、最初のパラグラフについては、特に具体的にこの点というのは、どこかの部分を受けてこの勧告が出たということではなかったと理解しております。例えば関連して上の勧告でいいますと、2行目から「有害化学物質の排出削減に係る数値目標は、ダイオキシン類やその他のわずかな物質を除き設定されていない。」というようなこと、これは一例でございますが、その他いろいろ化学物質対策全般についてレビューされたのを受けて、一般的にこんな指摘がなされたと私どもは理解しております。

【鈴木委員長】 これはどんな英語が使われているか覚えていますか。

【早水化学物質審査室長】 参考資料1の裏側にありますが、「further improve the effectiveness and efficiency of chemical management」ということであります。

【鈴木委員長】 今の話にどなたか御意見ございますか。満岡委員、よろしいですか。

【満岡委員】 はい。

【鈴木委員長】 先ほどの運営方針の説明にもありましたとおり、会議の公開、非公開は小委員長が決めることになっておりますが、本日の会議は特に非公開とする理由はないと考えますので、公開にさせていただきたいと存じます。
もう1つ、特に決まりはないのですが、各方面からの御出席を得て委員会を運営していこうということもありますので、小委員長の代理を指名させていただきたいと考えております。実は内々清水委員にお願いしてございまして、御内諾をいただいておりますので、皆様方にも御了承いただきたいと存じます。
 それでは、よろしくお願いいたします。
 続いて議題の1「今後の化学物質の審査及び規制の在り方について」、本日の主議題ですが、よろしくお願いいたします。まず事務局から説明してください。

【事務局】 まず、化学物質審査規制法の概要について御説明させていただきます。資料4を御覧ください。
 まず、化学物質審査規制法の経緯でございます。昭和48年にPCB問題を契機に制定されまして、新規化学物質の審査制度を設けることと、PCB類似の化学物質を規制することを目的として制定されました。
 昭和61年に改正がありまして、トリクロロエチレンなどによる環境汚染に対応するため、指定化学物質、第二種特定化学物質の枠組みを創設ということで、規制対象物質を広げております。
 そして平成11年に改正がありまして、中央省庁の再編に伴いまして環境省が厚生労働
省、経済産業省とともに所管するということが平成13年1月より施行されております。
 この法律の目的でございますが、難分解性の性状を有し、かつ、人の健康を損なうおそれがある化学物質による環境汚染を防止するために、新規の化学物質について事前に審査する。それと、化学物質の性状に応じて、製造、輸入、使用について必要な規制を行うということを目的とした法律でございます。
 化学物質審査規制法の規制の内容でございます。化学物質審査規制法では、物質をいくつかの規制対象物質に分類いたしまして、それぞれの分類ごとに規制するという形をとっております。
 まず、第一種特定化学物質でございます。この要件は、難分解性で高蓄積性で長期毒性がある化学物質で、現在、PCB、DDT等13物質が指定されております。資料4の5ページ目に出ております13物質でございます。いわゆるPOPs条約で定められたPOPsを中心に、それ以外にいくつかの物質を指定しているところでございます。12番目、13番目のトキサフェン、マイレックスは、POPs条約締結のために最近規制対象の追加になった物質でございます。
 1ページ目に戻ります。この第一種特定化学物質の規制内容は、製造、輸入の許可制ですが原則禁止です。使用についても届出制ということで、これも原則禁止という規制になっております。
 続きまして第二種特定化学物質でございます。これは難分解性で長期毒性を有する物質でありまして、なおかつ、相当広範な地域の環境において相当程度残留しているか、あるいはそうなることが見込まれることにより、実際に環境を経由して人の健康に被害を生ずるおそれがあると認められる化学物質となっております。こちらは23物質が指定されておりまして、資料の6ページ目に一覧表が出ております。23物質となっておりますが、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、四塩化炭素、有機スズ化合物の、大きく分けて4つの分類になるもでございます。
 1ページ目に戻りまして、これらの規制内容は、事業者が国の方に製造・輸入予定数量と実績を届け出ることになっております。届出された予定数量を見まして、必要な場合には事業者に対して製造・輸入量を制限することができるとなっております。また、これらの物質については、取扱いに係る技術上の指針を国の方で策定することになっております。この指針を守らない事業者に対して勧告ができるという規定もございます。
 2ページ目に移ってください。次の分類は指定化学物質でございます。これは難分解性で長期毒性の疑いを有する化学物質でございます。616物質が指定されています。7ページ目の表3が指定化学物質の指定の状況になっております。昭和61年の改正で追加になった項目ですので、指定は昭和62年以降になされております。既存化学物質については113物質、括弧内は指定化学物質から第二種特定化学物質に移ったものについて、指定化学物質が指定が外れるということで、それは削除されているという意味でございます。既存化学物質について、指定当初はいくつかあったのですが、しばらくはなくて、平成12年に77物質が指定されておりますが、これはPRTR法の対象物質になったもののうち該当するものを指定したというものでございます。右の欄の新規化学物質は、届出を受けて審査したものを随時指定化学物質として指定していったということでございます。ときどきゼロになっている年がございますが、これは指定化学物質の指定をまとめてやったいたために、毎年ではなくて、何年かまとめた分があって、1年分指定がなかった年がありますので、そういったところはゼロになっておりますが、新規化学物質の審査・届出を受けて行うということで、毎年、指定化学物質に該当する物質が判定されているところでございます。
 資料の2ページにお戻りください。この指定化学物質につきましては、製造・輸入量の実績量を届け出るという規制になっております。
 また、こういう物質の分類とは異なるのですが、予防的措置といたしまして、国の方が第一種又は第二種特定化学物質の要件に該当する疑いがあるという物質について、製造・輸入・使用の制限あるいは使用方法の改善という勧告をすることができるという規定も設けられております。
 以上のようなそれぞれの物質の分類にどういうふうに振り分けていくかという審査・判定の手順とその要件、試験項目でございます。
 まず、新規化学物質、全く国内でなかったものを新しく事業者が製造、輸入しようというものでございますが、これは製造、輸入の前に厚生労働大臣、経済産業大臣、環境大臣に事業者から届出を行います。これらにつきましては、通常、その物質についての試験結果を添付して届け出ることになっております。
 試験項目は、ここに挙げられております分解度試験、濃縮度試験、細菌や細胞を用いた変異原性試験、反復投与毒性試験、こういったような項目になっております。試験の概要については、この資料の後ろの方に付いておりますが、時間がありませんので説明は省略させていただきます。こういった試験項目をもとに国の方に届け出るということになっております。
 それ以外に、2番目、指定化学物質に関する有害性調査というものがございます。指定化学物質については、製造・輸入量を国の方に届け出るということになっておりますので、その量は国の方で把握できております。そういった製造・輸入・使用の状況、モニタリングの結果等を踏まえて、その指定化学物質が使われて環境中に出ていっているということによりまして人の健康被害を生ずるおそれがあるという場合に、第二種特定化学物質にしてさらに厳しい規制をする必要があるかどうかということを検討する必要があるということになります。もし第二種特定化学物質にしなければいけないということでありましたら、この指定化学物質について、長期毒性試験(有害性調査)を事業者に対して指示して、その結果を報告してもらう。その結果を見て第二種指定化学物質に指定するという規定がございます。
 この長期毒性試験の試験項目は、ここにありますように、慢性毒性試験をはじめとしていくつかの試験を実施しなければいけないということで、新規化学物質の届出よりも項目数が多くなっているものでございます。
 この試験結果につきましては、厚生労働大臣等3大臣が、第二種特定化学物質に該当するかどうかを審査・判定するという規定になっております。
 3番目は少量新規化学物質でございます。新規化学物質のうち、量が少ないものについては、先ほどの試験項目等を添付せずに、1トン以下しか製造しないという申出を国の方にしまして、それを国の方で確認すれば、認められた数量の範囲内で製造・輸入ができるというものでございます。国の方で確認する際には、その化学物質の安全性、人の健康を損なうおそれがないということも併せて確認しております。
 次に、既存化学物質の安全性点検でございます。これは昭和48年に最初に化学物質審査規制法が公布されたときに、現に製造され、又は輸入されていた化学物質として約2万種、5万物質が「既存化学物質名簿」にリストアップされております。これらのリストアップされた物質については、従来どおり製造、輸入は自由にできることになっております。この物質については、法制定時の国会の附帯決議等を踏まえ、国がその安全性の点検を行ってきているところでございます。最初の新規化学物質の試験項目にあったような試験を実施しているところでございますが、分解性、蓄積性、毒性について試験をしているということになっております。分解性、蓄積性に関しては1279物質、毒性については191物質について点検をして公表している。その結果を踏まえて、第一種特定化学物質、第二種特定化学物質あるいは指定化学物質に指定しているところでございます。
 なお、この点検のほかに、近年は、国際的な協力の下での高生産量化学物質の安全性点検が進められておりまして、これは国と産業界が分担・協力して実施しているところでございます。
 次のページにフロー図がございますが、今の説明を図にするとこういうふうになります。新規化学物質について、事業者が試験をして届出をしますと、国の方で審査・判定をしまして、第一種特定化学物質になるか、規制対象とならない物質になるか、指定化学物質になるかというのを判定することになっております。指定化学物質については、量が増えてくる等によって、環境汚染による健康被害のおそれが出てきましたら、有害性の調査をして、第二種特定化学物質あるいは規制の対象とならない物質に判定するということになっております。また、第二種特定化学物質については、製造・輸入量の届出を受けておりますので、必要に応じて量の制限をする。このような流れで審査・規制を実施しているところでございます。
 化学物質審査規制法の概要はこういったところなんですが、化学物質の対策の法律はほかにもいろいろありまして、それとの関係も簡単に御紹介したいと思います。参考資料2を御覧ください。
 今御紹介しましたように、化学物質審査規制法というのは、難分解性で人の健康を損なうおそれがある化学物質による環境汚染を防止するために、新規化学物質の事前審査を行
う。それと、製造・輸入・使用において必要な規制を実施するというものでございます。
 他の法令との関係ということで、(1)が、製造・輸入・使用に関する規制と排出・廃棄に関する規制ということで、環境保全の観点からの規制の分類というか整理でございますが、製造・輸入から使用、排出、廃棄の段階の規制というのはいろいろあるわけでございます。
 裏に図を示しておりますので、こちらの方を御覧ください。「環境保全に係る化学物質対策制度の体系」でございます。製造・輸入、使用の段階については、化学物質審査規制法あるいは農薬については農薬取締法によって事前の審査、製造・輸入、使用の段階での規制を行っております。環境への排出の段階、廃棄の段階あるいは廃棄に伴う環境への排出、あるいは非意図的生成物による環境への排出というところについては、大気汚染防止法、水質汚濁防止法といった排出規制の法律とか化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)で排出量の把握を行う。あるいは廃棄の段階の規制としては廃棄物処理法といったもので直接的に環境へ排出する段階のところの規制あるいは管理を行っております。
 環境への排出ということで、大気、水、土壌といった環境媒体に出された化学物質が、大気、水、土壌でしたら直接動植物、大気に出たものでしたら人の方へ直接行きますし、水、土壌に出たものは、水道あるいは食物を通じて人の方に取り込まれるということになっておりまして、この途中の水道、食物については、水道法、食品衛生法といった法律もございまして、こういったところで人へ直接取り込まれる量を見ているという制度になっております。
 おもての方に戻りますと、ここら辺の話が書いてあります。
 (2)の「人への直接暴露に係る規制」というところでございます。化学物質審査規制法は、環境汚染を防止するということで、環境経由の暴露を防止するための法律でございます。このほかに直接的な暴露を規制する法律は別途ありまして、例えば、以下のように、労働安全衛生法、毒物及び劇物取締法、有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律というふうに環境経由以外でも直接暴露の部分をみる法律がある。化学物質対策法の中での化学物質審査規制法の位置づけというものは、環境汚染の防止といったところで事前審査と製造・輸入・使用を規制するという位置づけになるということを御説明したわけでございます。
 以上でございます。

【鈴木委員長】 ありがとうございました。
 御質問ございませんか。

【須藤委員】 農薬と化学物質との関係をお伺いしたいのです。農薬に関するものは農薬取締法というのは理解いたしておりますが、農業で使わない殺虫剤とか殺鼠剤とか、そういうものがあるはずなんですが、これは化学物質審査規制法の方に入るのでしょうか。

【事務局】 殺虫剤等でございますが、衛生害虫の駆除に用いるものは薬事法の対象になっております。薬事法の医薬部外品になりまして、薬事法の範疇になるものでございます。衛生害虫でないもの、不快害虫への殺虫剤やシロアリ駆除剤は化学物質審査規制法の対象になっております。

【須藤委員】 それぞれの物質をどういう用途で使うかによって、初めからどの法律というふうにわかるようになっているわけですね。

【事務局】 そうです。用途について規制対象の法律が違うということになっております。

【中下委員】 第一種特定化学物質で、必要な場合に事業者に対する回収命令がかけられるという制度がございますが、今まで出された例があるのでしょうか。

【事務局】 これは新しく物質を第一種特定化学物質に指定したときに回収命令を出すことができるという規定になっております。今までは回収命令が出されたことはないと聞いております。

【中下委員】 もう1つ質問させていただきたいのは、少量新規なんですが、表6を見ますと、年々増加傾向にあって、最近では1万件を超えている。仮に1トン以下といっても、1万件を超えると相当の量になるのではないかと心配されるのですが、このように増えている理由と、ある程度安全性の確認というのがあるようですが、それはどのような形でされているかについてお伺いしたいのです。

【事務局】 この申し出は、1年間に1トン以内の製造・輸入ということですので、同じ物質でも毎年1トン未満の製造・輸入でありましたら、毎年同じ物質を申し出なければいけないということになっております。それと、数自体が増えておりますので、全く新しい物質が増えているということになっております。これは化学物質関係、新しいものが開発されたときに、それを試験的に使うといったことがあるでしょうし、少量の用途に使うようなものが増えている。例えばハイテクに使うような製品とか、ちょっと構造が違うけれども似たような用途に使う製品とか、いろいろな種類のものが開発されているようでございまして、そういったことを踏まえて、最近特に量が増えているということでございます。有害性の確認は、それぞれの化学物質の構造等から判断しまして、あるいは化学物質に関する既存の知見から判断して、特に厳しい有害性がないということを確認した上で、製造・輸入を認めているという形になっております。

【中下委員】 そういう中から指定になるものもあるのでしょうか。

【事務局】 この中からは指定になるものはありません。

【中下委員】 この1万件の中で継続で使用されているのはどのぐらいの件数でしょうか。

【事務局】 申し訳ございません。1年たってまた出てくるものとかもありますので、継続しているものの数は把握しておりません。

【早水化学物質審査室長】 若干補足しますと、これは件数でございますので、同じ物質について2つの事業者から出てきたような場合は2件としてカウントしておりますので、物質数としてはこれよりは少し少なくなっております。それから、年間に4回確認しておりますが、例えば1回目で1トン枠がいっぱいになってしまったケースは、2回目以降はもう受け付けませんというような形になります。実績などの報告も見ております。全部チェックはしておりませんが、枠取りをして、とりあえずとっておいて、実際にはそんなにつくっていないとか、実際にはつくらなかったとか、そういうケースもありまして、そういった意味で毎年出されているけれども、実際にこれだけの数の化学物質がこれだけの量、全部1トン使われているということにはなっていないようであります。きちっとした数字はございませんが、全体を見た感じではそんな感じでございます。

【中下委員】 それから表3ですが、指定化学物質の既存化学物質からの指定が平成5年以降ずっと、先ほどの御説明で、PRTR法の制定の際に指定されたものを除いてゼロ件、その前も2件とか1件とか非常に少数にとどまっているということですが、これは何か原因があるのでしょうか。

【事務局】 実際のところ、既存化学物質は、点検した結果を踏まえて指定していくということになります。今、毒性の試験が終わっているものは191物質ありますので、そこから審査・判定をして指定するということになっておりますが、今までのところはそこあたりが余りうまく進んでいなかったというところがあるかとは思いますけれども、現在は点検結果をもとに指定化学物質かどうかの判定は順次進めているところでございます。

【鈴木委員長】 先ほどの須藤委員の質問に関わるかもしれませんが、参考資料2の後ろに描いた絵で、環境中に排出されている化学物質の全てがちゃんとカバーされていますかという別の意味を持っていることになるわけですが、漏れが起こっている部分がありませんか。これは話としては飛ぶのですが、例えば人がいろいろな薬剤を飲んで代謝物が排泄されて、それが下水処理場を通ってという出来事が起こるわけですね。人口が増えてきて集積が起こった場合に、そのような問題が起こりかねない。現にいわゆる環境ホルモン問題でいえば、人が排泄するホルモンが何かやっているかもしれないというような議論にも
なるわけで、この絵で全部がカバーできているかどうか、その辺の認識を伺いたいのです。

【早水化学物質審査室長】 今御指摘の点は、少なくとも排出のところは全てカバーしているという理解でいいと思います。もし必要があれば、この排出のところで、例えば、ある医薬品であっても、問題がある物質があれば、ここで規制することになると思います。これまで人の健康を損なうおそれがある化学物質による、製造・使用の入り口の審査のところですが、これは表側に書いておりますけれども、医薬品、農薬、食品添加物等につきましては、特に人の健康についてのチェックというのは、例えば医薬品などは薬事法で化審法よりもきちっと行われているということで、安全性のチェックにつきましてはそれぞれの法律に委ねています。他の法令で本法と同等以上の規制が行われる場合には、入り口のところの審査の部分は他の部分に委ねますので、そういった意味で後ろの絵で省略しているということはありますけれども、そういったところは他の法律で人の健康への影響についてはチェックされているということになります。

【鈴木委員長】 ありがとうございました。事態が複雑になって動いているものですから、その辺のところは委員の先生方、ぜひ細かいところまで目をお配りいただいて議論を進めていただきたいと思います。

【浅野委員】 今、室長がカバーされていると言われたのですが、枠組みとしてはそうなっているというだけで、そこはちょっと誤解を与える表現ではないか。枠組みは一応あります。だけど、それで全部、小委員長がおっしゃったような意味でカバーされているかといえば、落ちているものがあるというのが正解ではないかと思います。
 それから、医薬品の薬事法というもののもともとの立法目的は違いますので、「環境保全に係る」という枠組みには入ってこないわけです。そこでやっているから、鈴木先生のおっしゃるように、人体経由で排出されるものについて、出たものは大丈夫ですということにはならないはずです。カバーされていますということの意味をきちっと正確に言っておかないといけないと思います。

【安達環境安全課長】 今の議論からちょっと外れているかもしれませんが、環境保全に係る化学物質対策ということで、この絵の中には自然界から出る化学物質がそれぞれまた別の環境中へ出てというものは含まれていないのではないかと思います。それをそもそもこの枠組みでやるかどうかは別の議論でございますが。

【鈴木委員長】 というようなことも1つの問題点として指摘されたわけです。
 それでは、この委員会をつくって議論を始めるに至るまでの段階でいろいろと支度がされていて、環境省も経済産業省もそれぞれの作業をしてこられたわけですが、その辺の話を、まず環境省の準備から説明してください。

【早水化学物質審査室長】 それでは、私の方から資料5-1、5-2、資料6を使いまして、環境省の方で設置いたしました「生態系保全等に係る化学物質審査規制検討会」の報告につきまして、また、その結果に対する国民意見につきまして御紹介したいと思います。
 冊子の最後のページにこの検討会の委員名簿を付けております。本小委員会に御参画いただいている先生方が何人か含まれておりますけれども、中杉委員を座長といたしまして検討していただいたわけでございます。
 検討会は、昨年10月に設置いたしまして、今年の3月に報告が出されております。
 この報告書の内容でございますが、報告書の1ページに目次がございますが、大きく4つに分かれております。まず、化学物質の審査・規制へのいわゆる生態系保全の観点の導入の必要性について状況を整理していただきました。それから、技術的な生態系への影響の試験・評価方法についての整理をしていただきました。次に各国で生態系の関係あるいは人の健康も含めて、化学物質の審査・規制制度がどうなっているかという整理をしていただきまして、最後に、生態系保全に係る化学物質の審査・規制のあり方ということで、細かい議論はまだ詰めておりませんけれども、大まかな方向性と検討課題の整理、これは生態系保全を中心に検討していただきましたが、それに関連して化学物質審査・規制の全体に関する意見もいろいろ出されておりますので、そのあたりを整理していただきました。そのまとめがなされているということでございます。
 以下、資料5-2がその概要となっておりますので、こちらを中心に御説明して、ときどき報告書の方に戻りたいと思います。
 最初のチャプターは、「化学物質の審査・規制への生態系保全の観点の導入の必要性」ということで、実は次回、特に生態系関係の議論をしていただきたいと思っておりますので、詳しくは次回に御説明したいと思いますが、簡単に申し上げますと、まず、実際に化学物質の生態系への影響があるかということで、例えばトリブチルスズ化合物の貝類への影響、あるいは除草剤や殺虫剤の水生生物への影響などが報告されている。それから、リスク評価の結果あるいは化学物質の審査の過程で、生態毒性が強い物質や生態リスクが高いと考えられる物質があること。国際的に、今のトリブチルスズ化合物とかノニルフェノールのような物質についての対策が進められているということがあるということです。
 2番目に、諸外国ではどうしているかということですが、OECDの決定・勧告を踏まえまして、各国で審査・規制制度がつくられておりますが、これは報告書の35ページに表としてまとめております。OECD加盟30カ国の中に、日本の化審法と同じような制度を25カ国が持っておりますけれども、そのうち、生態影響について、法の目的を持たないで生態影響試験を事業者に要求できないのは日本だけということで、端的に言いますと、右側の一番上ですが、生態影響データの法律に基づく要求というのは日本にはないということです。他の国では、最初から試験を求める、あるいは審査の結果を踏まえて要求するという形になっているということでございます。
 資料5-2に戻りますが、我が国において生態系保全のための法的制度はどうなっているかということですが、これは先ほど御紹介しましたように、環境基本法なり環境基本計画で位置づけられているということであります。また、PRTRの関係の法律でも取り上げておりますけれども、化審法においては、事前審査あるいは未然防止という観点では含まれていないということでございます。
 このまとめとして、先ほどの諮問の趣旨にもございましたが、OECDのレビューの結果あるいは環境基本法に基づく施策を進めるという観点あるいは国際的に遜色のない対策を実現するという観点から、生態系の保全を視野に入れた化学物質の審査・規制の枠組みの導入が必要という結論がこの報告でまとめられております。
 2ページでございます。次の章も詳しくは次回御紹介したいと思いますが、化学物質の生態系あるいは動植物への影響の試験・評価方法につきましては、OECDにおいてテストガイドラインが整備され、また、試験データの信頼性を確保するという観点でGLPというものも策定されております。その結果を踏まえてデータベースも整備されており、また、定量的構造活性相関(QSAR)というのも開発されつつあるということでございます。
 海外ではこれらによる試験結果に基づきまして、一定の手法に基づいた生態リスク評価が行われておりまして、これに基づきまして法的なリスク管理がなされているということでございます。
 我が国におきましても、環境省で生態影響試験や生態リスク評価がおりますので、技術的にこういった生態影響に関する試験・評価が可能というようにまとめられております。
 そこで、次回以降の御議論のために、各国の審査・規制制度についてちょっと詳しめに御紹介したいと思いますので、報告書の12~13ページを開いていただきたいと思います。日本の制度は先ほど御紹介とおりなので省略いたします。
 各国の比較表は後ろの方にありますが、国別に若干ポイントだけ御紹介しますと、アメリカにおきましては、届出者が所有又は管理するデータをまず出すということになっておりまして、必ず試験をするということになっておりません。その届出データとか先ほど申しましたQSARによりまして、米国環境保護庁(EPA)で審査して、その結果、必要があれば、例えば試験をしてもらうように求めたりする。その試験結果などを踏まえて、リスクがあると判断されたものについては、製造、輸入、使用を禁止するための同意命令とか、13ページの第2パラグラフの下の方ですが、重要新規利用規則(SNUR)というものに基づいて規制が行われます。これは比較的いろいろな項目を含むものでございまして、例えば水への排出に関するもの、あるいは用途の制限とか、実質的な製造・輸入・加工の禁止など、いろいろな内容が含まれております。比較的柔軟に中身が変わるものと認識しております。その範囲で使うということが認められますので、その範囲を超えて利用したい場合にはまた届出が要るということになります。
 EUは、逆に10kg以上については試験データを必ず添付するということですが、基本的に年間1トン以上の場合に「完全届出」とされて、いわゆるベースセットと呼ばれるデータを届け出る。それ以下は少量届出ということで簡略化するということになっております。ポリマーについては、水溶性のものについてはアメリカなどで届出のデータが要るという形になっておりますが、一定のポリマーについては、これはどの国も同じですが、届出は簡略化されております。
 EUにおきましては、分類と表示の案をまず有害性のデータによって示して、分類して表示するということをまずやりまして、有害性のあるものについてはリスク評価が行われるということで、その結果を踏まえて対策が講じられるということでございます。
 EUの場合は、年間の届出の予定数量によりまして、先ほど1トンでベースセットと言いましたが、10トンあるいは100トンとか1000トンとか、そういったランクに応じて届出項目が増えていくという形になっております。
 14ページに移りますが、オーストラリアでございます。これはEUと類似しておりますが、オーストラリアでは、新規化学物質の届出は年間1トン以上一律ということであります。
 ちなみに生態影響について、これはEUもオーストラリアも同じでございますが、魚の急性毒性、ミジンコの急性毒性、藻類の生長阻害、この3つについての試験をするということになっております。
 低懸念ポリマーについては簡略化するということは同じでございます。
 こちらにつきましてもリスク評価がされまして、事業者や州政府においてリスク削減措置が実施されます。オーストラリアにおきましては、リスク評価の概要が全て広報で公表されるという形になっております。
 オーストラリアの第2パラグラフの最後のところに書いてありますが、国内での製造、製造方法の変更等によるリスク増加のおそれ、あるいは健康・環境への有害作用に関する新たな情報の入手があった場合には、届出が必要ということになっておりまして、これはEUとかアメリカでも似たような規定がありまして、事後届出の制度があります。
 カナダは、アメリカに近いということもありまして、国内の物質リストとアメリカと共通の既存物質リストがあるのですが、比較的新しくできた制度でございますので、EUとアメリカをミックスしたような形になっております。入り口の審査のところは、EUと同じように段階的な届出制度になっておりまして、ここでは10トン以上のものについては一律で先ほどのベースセットのデータが要求されます。ここでは生態影響試験は、魚の急性毒性、ミジンコ急性毒性の2種類でございますが、これは今、藻類も入れた3種にするような変更が検討されているという情報があります。
 規制の部分は、アメリカではSNURといっているものがSignificant New Activitiesと呼ばれており、アメリカと同じような用途等の規制が行われるということでございます。
 なお、どこの国も日本と同じように既存化学物質のリストがございまして、それについて、国の方でリスク評価をする。あるいは最近は事業者の方で自主的にリスク評価をする。特に高生産量のものについて試験をしたりリスク評価をするということが行われているということでございます。
 まとめが15ページの下にありますけれども、どこの国も人の健康の保護の観点からの審査・規制と環境あるいは生態系の保全の観点からの審査・規制の枠組みに特段の差異はございませんで、細かい内容について差異があり、これにつきましては38ページの参考8に比較表を付けて項目ごとに整理しておりますので、後ほど御覧いただければと思います。
 こんな形で各国の制度ができておりますので、今後の審議の参考にしていただければと思います。
 また資料5-2に戻っていただきます。では、生態系保全に関する化学物質の審査・規制のあり方はどうしたらいいかということについて整理されておりまして、本文では16ページ以降になりますが、資料5-2の2ページの下の方から御紹介いたします。基本的考え方としては、製造・使用の前に生態影響に関する試験・審査を行いまして、生態系の保全あるいは動植物の生育・生息に支障を及ぼすおそれがある化学物質については、製造、使用等に関する規制を行うという仕組みを導入することが必要ということでございます。ここで「規制」といっておりますが、これは直接的な厳しい規制から緩やかな管理的な規制のものも含んで「規制」という言葉をこの報告書では使っております。
 次の点は、導入の際には、現行の化審法の仕組みに必ずしもとらわれずに審査・規制スキームを検討すべきだということでございます。これは後の方で御説明しますが、化審法全体についていろいろと指摘されておりますので、それらについて同時に検討して解決していくことが必要だということが背景になっております。
 具体的な規制区分については、有害性に関する生態毒性(ハザード)の評価による規制と、その物質の暴露による生態影響のおそれ(リスク)の評価による規制を組み合わせることが有効ではないかという御指摘がございました。
 また、これに関連する検討課題として、3ページにありますが、用途の一部を制限するような仕組み、あるいは今の化審法では分解性が良いものについては審査・規制を免除するということになっておりますけれども、何らかの方策の検討が要るのではないか。例えば量が多いものについてリスク評価を行うなどのことが要るのではないかというような指摘がなされておりますので、これらの課題についての整理も必要かと思います。
 2番目に「生態影響に関する試験と審査のあり方」ということですが、これは一定の範囲で生態影響試験の実施を求めて、生態系への影響について審査するということですが、段階的にして、試験動物愛護や企業負担に留意した合理的なものにするということでございます。
 基本的に、各国がやられております藻類(生産者)、ミジンコ類(一次消費者)、魚類(二次消費者)を対象とした急性毒性試験を基本的な試験として、必要に応じ追加するという形がいいのではないかということでございました。
 また、GLP制度を設けることがいわれております。ただ、何トンから試験を求めるかということについては、今と同じにするかどうかは検討が必要だという指摘がされております。
 水溶性の高分子化合物については、今まで生態影響の観点は入っておらなかったので、ポリマー全体的に安定なものについては試験が軽減化されておりますけれども、水溶性の高分子化合物については、水生生物に影響を及ぼすおそれがあるので、試験対象とすることを検討すべきではないかという指摘がされております。
 また、構造活性相関については、どの程度活用するかということについてもう少し勉強したらどうかということが言われております。
 さらに、その他の事項として、(3)ですが、既存化学物質の点検について加速化が必要ということで、国がやるべきだという御意見と、産業界がもう少し積極的に関与すべきだという御意見がございまして、このあたりについての整理も必要かと思います。
 また、2つ目の点ですが、化審法の現行の審査・規制体系についていろいろな意見が出されたということで、これは本文の19ページを見ていただきたいと思います。19ページの[2]試験・審査スキームの見直しというところでございますが、これは特に細かい議論はされておりませんで、検討会で出された意見を整理したものでございます。最初の点で、例えば1トン超で一律に全部試験するというのではなくて、量や用途に応じた柔軟な試験評価スキームの導入を考えていくべきではないかという御指摘。あるいは分解度試験や濃縮度試験の実施基準や評価方法などの見直し。それから、評価の内容について、行政サイドと届出者とが議論できる場を設けるべきという御指摘。指定化学物質から第二種特定化学物質に移行するのが非常に少ないので、もう少しきちっとやるべきだという御指摘。指定化学物質の規制内容を強化すべきではないかという御指摘。このような指摘がなされておりまして、これらについて今後検討すべきということが言われております。
 関連しまして、化学物質の有害性や危険性に関する分類と表示の問題とか、有害性に関する情報の取扱いについての御意見も出されておりまして、今後の検討が必要ということで、少し幅広めのディスカッションがなされたということでございます。
 以上を踏まえまして、この報告書について公表いたしまして、国民意見の募集を行いました結果が資料6でございます。
 報告書の公表直後、3月29日から1カ月半にわたりまして国民意見を募集しましたところ、意見件数としては56件、こちらで整理した意見数としては延べ251件の意見が出されております。
 実際にどんな意見が出されたかということにつきましては、9ページ以降にまとめております。9ページに提出者の一覧がございまして、特に個人の意見か団体の意見かというのは整理しないで、こんな形で整理しております。
 意見の原文そのものは付けておりませんが、原文をそれぞれの項目に整理したものを11ページ以降に付けておりまして、書かれている言葉は出された意見そのものでございますが、内容を整理した方がいいかということで、項目ごとに整理させていただきました。それにつきましてちょっと御紹介します。2~3ページに概要がございますが、4ページ以降に表にしておりますので、それを使って御説明いたします。
 まず、生態系保全のための審査・規制の導入の必要性については、導入に賛成という御意見が数としては多かったということでございまして、いろいろな物質について、これをやるべきだ、あれをやるべきだという御指摘がありました。そのやり方について、いくつか少数の御意見がありまして、今の仕組みにとらわれないとか、現行の審査規制法を見直す中でやってほしいという御意見などが出されております。
 2.の考慮すべき事項については、いろいろな意見が出されておりまして、数が多いものとしては、日本でしか要求されないものは廃止してはどうかという御意見とか、閉鎖系用途の化学物質については、規制を緩和することが合理的ではないかという御指摘が出されている一方で、例えばポリマーも対象にすべきとか、良分解性物質、内分泌かく乱化学物質についてもう少し幅広くやるべきだという御指摘も出されております。
 それから5ページの3.の試験・審査のあり方ということですが、ベースセットに追加するという考え方について賛成という御意見が中心であったかと思います。
 試験を求める範囲については、数は少ないですが、1トン以上とすべきだという御意見と10トン以上とすべきだという御意見がございました。
 構造活性相関の利用については、使用すべきだという御意見と、少し慎重にという御意見もありましたが、その中で、アメリカでQSARを使っているのは、審査後も新たな試験データを入手したら当局に提出しなければならないということになっていること等に留意が必要だという御意見がございました。
 既存化学物質対策については、審査・規制を進めるべきだという御意見が数多く出されております。
 審査・規制スキーム全体の見直しについては、いろいろな意見が出されておりまして、先ほど集約したものに大体整理されるかと思いますけれども、この中でも2件ありましたのが、審査終了後であっても追加試験・情報の要求を行い、再審査できる制度とすべきというような御意見も出されております。あるいは2件ありましたのが、試験法の国際調和、既存データの活用等、企業の負担の軽減を視野に入れてほしいという御意見も出されております。
 7ページで、もう少し幅広くなってきますけれども、安全性評価の透明性の確保ということで、一番上に3件ありますのは、届出者と行政サイドの議論、あるいは審査の評価基準について明らかにしてほしいという御意見です。
 9番の分類と表示について、GHSというのは、国際的な分類・表示の調和制度で、これから順次導入していこうということで国際的にも進められておりますけれども、それを踏まえて、我が国でも表示制度を見直すべきだという御意見もありました。
 情報公開については、毒性情報等を公開すべきという御意見と、営業秘密の確保に留意すべきという御意見がございました。
 その他、幅広い意見がいろいろ出されております。運用改善とか、化審法以外に関する御意見も出されております。8ページですが、動物実験を行うことに反対という、いわゆる動物愛護の御意見が一番数多く出されております。
 ざっと御紹介しましたが、個々の御意見の内容につきましては、後ろの方に付けておりますので、後ほど御覧いただければと思います。
 このような国民意見も念頭に置きながら御審議を進めていただければと思っております。
 以上、環境省の検討会の結果についての御報告を終わらせていただきます。

【鈴木委員長】 ありがとうございました。何か御質問ありませんか。

【須藤委員】 ただいま化学物質の審査・規制の枠組みの歴史というのは結構長いということを伺ったし、外国との比較も十分理解したのですが、生態影響あるいは生態系保全のことが今までできなかった理由というのは、省庁再編になるまでできなかったというふうに理解してよろしいのですか。本来でしたら、これは当然もっと早くやられるべきだと理解しているし、例えば農薬取締法でもコイだのミジンコの試験というのは、人の健康が優先はされるけれども、当然やられてきているんですね。環境に最終的に放出される物質について今まで手が出せなかった理由というのはどういうふうに理解しておいたらよろしいのでしょうか。これから審議するのに大切だと思うので、その辺についてお伺いしたいと思います。

【早水化学物質審査室長】 これは環境省としての公式見解というのはなかなか難しいと思いますので、私の個人的な見解を述べさせていただきます。私も化学物質対策をいろいろ長くやっておりますので、そういうことでお許しいただければと思います。
 まず1つの大きな理由は、化審法自身が、あるいは他の公害規制法もそうですが、人の健康への被害というものが最初にあって、それをもとにできた法律だからではないかということです。水俣病あるいは化審法の場合ですとPCBの問題であります。魚への影響というのは、漁業なり水産資源への影響という形で最初にとらえられて導入され、生活環境の保全ということで水濁法で対象となり、あるいは化審法においても、魚に蓄積するということで考えられてきたということが大きな背景としてあるのではないかと思います。外国では、これに対して、例えばPCBの問題でも鳥が死ぬとか、レイチェル・カーソンの『沈黙の春』などもそうですが、鳥の問題あるいは生物の問題と人間の問題が非常に密接に最初から考えられてやられたということで、その違いがあるのではないかと認識しております。
 もう1つの理由は、化審法で結局カバーされる人の健康への影響がある物質というのは、全部ではないですが、多くは生物への影響のある物質と重なる部分がありまして、例えば第一種特定化学物質は、人にも悪いけれども生物への悪いということで、実態上カバーできていた。あるいはTBTなどについても人の健康という観点で規制してきたということで、実態上カバーできたということであると思います。ただ、詳しく見ますと、人への作用と生物への作用は違っていまして、これは環境省の中の審査を行いましても、今日の報告書にもちょっと事例が出ておりますが、人へは問題ない、指定化学物質にはならないけれども、生態影響に留意する必要がある物質がありますし、基本的に2つのものというのはきちっと重なるものではございませんので、きちっとチェックすることが大事だということがだんだんわかってきたということもあると思います。
 もう1つは、環境省の施策としても、昔は例えば自然環境の保全でも景観の保全とか、そういった形だったと思いますが、「生態系」という概念が入ってきて、動植物への影響についてもちゃんとみるということが自然保護の観点からも出てきたということで、我が国としては、世界に比べれば遅れたけれども、やっとそういう認識が世界に追いついたということではないかと思います。これは個人的な見解が混じって恐縮ですが。

【鈴木委員長】 その問題に関してまだ何かありますか。もっと自由な雰囲気で座談会でもやらなきゃいけないようなテーマになりそうですが、今のところはよろしいですか。

【須藤委員】 結構です。

【浅野委員】 前半の部分で指摘されたことは、我が国の環境行政の中で、人の健康からスタートしてしまっていて、生き物に対する影響は後手後手に回っているということは事実です。水の環境基準でも、生き物に関しては最下位に置かれていて、工業用水にも使えないような水が一番下のところで環境基準にようやく位置づけられるという状況ですから、環境保全というのは一体何なのかというのは前から議論になっていて、ようやく環境保全という以上は生き物を上の方にあげなきゃいけないとされはじめているわけですから。水産業についての保護はするけれども、業につながらない生き物は全く保護しなくていいという発想が依然として残っているわけです。だから、これは化学物質だけではなくて、環境省全体の施策の中でしっかり考えなければいけない課題が今出てきているということではないかと思います。
 もう1つは、生態系という概念そのものが、先ほど南川部長がおっしゃったように、なかなか定着していない。ようやく最近、鷲谷さんのお話などを聞いていると、生態系というのはそんなに難しいものではないなというのがわかってきたのですが、昔はとかく生態系というと、ものすごく難しくて、つかみどころがなくてわからないというイメージが先行してしまっていますから、生態系を取り上げると言った瞬間から、何だか知らないけれども、よくわからないことをいいかげんに取り上げて、何でも禁止するということになるのかねと、そういう猜疑心が先に働いたということはなかったのかなと思いますね。

【鈴木委員長】 法学者だけではなくて?

【浅野委員】 多分、法学者が一番始末が悪かったと思います。しかし、別の検討会では法学者以外のところからも似たような意見が出てくるわけですから、言葉の使い方の整理もちゃんとやらないといけない。例えば「生態毒性」といってみたり「生態系」といってみたり「動植物」といってみたり、その辺のところがごちゃごちゃになって議論されていたのではないかという気はしますから、これはここでの議論でも十分注意しなければいけないのではないかと思います。

【鈴木委員長】 お名前の出た鷲谷さん、何か意見ありますか。

【鷲谷委員】 まだ勉強不足で意見という感じではないのですが、生態系への影響というものは、個別の種に対する影響とは違う視点で考えていくべきではないか。もうそういうふうな取扱いになっているのか、いくつか指標になる生物を選ばれていますけれども、評価の際は、生態系ということで評価されているのかもしれませんが、それが重要だと思うのです。生態系は多様な生き物がつながり合って生きているわけです。単純に見えてきたとおっしゃいましたが、私も非常に複雑なものを対象にしているという意識はいつも持っているんです。その中に恐らく化学物質ということを考えると、弱い環みたいなものがあって、それは1つとは限らないですが、そこがつながり合っていますので、ある生き物がいなくなると、連鎖的な反応が起こる可能性がいつもあるわけですね。どんな連鎖的な反応が起こるかを十分に予測できればいいのですが、それはできる場合もありますけれども、難しいことが多いですね。ですから、そのシステムの中から「要素」が失われないようにするというのを1つ原則にする必要があると思うのです。みんな生き物ですから、共通の面も持っていますので、一番感受性の高そうなところを注意していくつか見ておいて、それへの影響が起こるときには、生理的なところから影響が起こるわけですので、もし試験をするのだったら、生理的な試験でもいいかもしれないのですが、その種について見ることが、生き物がつながり合っている生態系全体に対しての試験をしているのだという理屈がしっかりできている。これにも理屈があるような印象を受けました。生産者と消費者というのが書いてあったのですが。それと、もしかしたらちょっと違う感受性というような見方も必要なのかと思います。
 それから、この報告書を見て一番ちょっと違うなと思ったのは、ほかにもいろいろな要因があって、化学物質の影響だということは特定できないではないかということが書いてあるのですが、私たちは原因を探せばいいということではなくて、健全な生態系を持続させるということを重視しなければなりませんので、原因を押しつけ合うような形になってはならない。生き物は、生息環境の悪化、化学物質以外の悪化ということにもよって絶滅の危険を高めているわけですが、そこに化学物質が加わってさらに「弱り目にたたり目」ということもあると思いますので、それをどう考えるか。むしろ生き物に他の環境の悪化でストレスがかかっているということを前提にして、絶滅を加速しないようにという姿勢が、本当に私たち自身の健康と生態系を守るつもりだったら、原因を押しつけ合うような記述とか分析の仕方はまずいのではないかと思います。

【鈴木委員長】 ありがとうございました。また追い追いいろいろ議論が出てくる話でありますが、経済産業省が「化学物質総合管理政策研究会」というのを設けて、今回の諮問
事項にも関係の深い検討をしてこられましたので、それの説明をしていただきましょう。

【事務局】 資料7-1が7月22日付けの研究会の中間取りまとめで、資料7-2がその概要資料になります。
 「化学物質総合管理政策研究会」ですが、資料7-1の1ページ目、2ページ目のところでございます。まず、そもそもアジェンダ21でリスクという考え方が示され、それを踏まえていろいろな取組が進められてきました。1つは、我が国で「化学物質排出把握管理促進法」ができて、PRTR制度ができたということで、国や事業者だけでなく、国民を含めた全ての関係者がリスクに基づく取組の具体化を求められるという状況になった。国際的にも、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」が採択されたこととか、「化学物質の分類及び表示の世界的調和システム」(GHS)というものが間もなくとりまとめられるといった状況を踏まえまして、化学物質の総合管理の新たな枠組み・制度を整備していくということについての考え方をとりまとめるということで、今年の4月に経済産業省の製造産業局次長の私的研究会として設置されたものでございます。
 資料7-1の最後のページにこの研究会の委員の名簿がございまして、座長はこの小委員会の委員でもあります池田委員でございます。そのほか何名かこの委員会の委員の方々も名を連ねておりますが、産業界や有識者の方々等が集まりまして、この研究会での議論が行われたところでございます。4月に設置されまして、8回ほど研究会が開催されまして、中間とりまとめという形でまとまったものが今回の資料でございます。
 概要につきましては、資料7-2を見ながら御説明していきたいと思います。
 まず、化学物質総合管理の基本的考え方が示されておりまして、これは化学物質が社会的・経済的な便益があるということで、それとのバランスをとりながら、化学物質の「リスク」に応じた対応をするということを基本的な考え方としております。
 そして、事業者、国民、国等の関係者が、下にいくつか項目があるような基本的方針に従って取組を進めていくべきという基本的な考え方が示されております。
 2.の政策の充実・強化というところで、もう少し具体的な項目についての考え方のとりまとめがされておりまして、まず(1)新規化学物質の評価というところでございます。新規化学物質につきましては、化学物質審査規制法による事前審査という制度がございますが、これは今一律に、例えば化学物質審査規制法でしたら、年間1トン以上であれば届け出て審査を受けなければいけないということになっておりますが、これについて、便益を考えて、全ての物質について一律に審査を義務づけるのではなく、暴露の可能性を考慮した段階的な対応が必要だという考え方が示されております。
 具体的には、その下にいくつか項目がありますが、暴露可能性の低い化学物質は事前審査の対象外とするというような考え方が示されております。
 また、その下のところは、セーフティネットというもので、例えば事前審査の対象外としたもの等についても暴露状況を事後的に確認するとか、必要な場合に有害性情報の提出
を求める制度とか、そういったものが必要ではないかという考え方が示されております。
 資料7-2の2ページでございます。一方、既存化学物質の方は、事業者による自主的な取組と国における取組、それぞれ一層進めていくという考え方が示されております。事業者の方では、現在、事業者間の協力や国際的な連携を図りながら、高生産量化学物質とかリスクが懸念される化学物質を中心に有害性情報の把握をするという自主的な取組を進めているところですが,これをさらに推進すべきという考え方が示されております。その方法として、既存の情報の活用とか、たくさんある化学物質をスクリーニングして、そういった手法を活用して必要な情報を入手していくとか、関係者間の協力とか、そういったことが位置づけられております。
 また、国における取組も一層進めていくということで、化学物質審査規制法に係る安全性点検を国の方で実施しておりますが、それを着実に実施していくことと、有害性・暴露の状況・リスク評価の施策を推進すべきということが書かれております。
 (3)のところは自主管理です。事業者の方で自主的な管理を進めていくということですが、この改善を促すような枠組整備が必要であるということが位置づけられております。化学物質ごとにリスク評価の結果を踏まえて、対策の実施が必要だといった場合に、自主管理を進めるようなシステムとして、例えば従来のOECDのリスク削減プログラムや有害大気汚染物質対策という枠組みがございますが、そういったものを踏まえまして、自主管理計画の策定・実施とその進捗状況の把握といった手法で自主管理の改善を促すようなことができるのではないかといったことが書かれております。
 また、GHSと呼ばれる分類・表示に関する世界的に調和したシステムを自主的に管理するための手段として活用すべきということが掲げられておりまして、既存の制度にこういったものを位置づけていくことも必要ですし、自主的な取組も必要であろうということがここで書かれております。
 また、「生態毒性物質」につきましても取組を強化する必要があるといったことがこの研究会の中でも位置づけられております。
 まず「科学的知見の充実の必要性」と書かれておりますが、これは生物に有害性を示す、例えば生物影響の試験などをして、有害性があると考えられるような、ここでは「生態毒性物質」と書かれておりますが、そういう物質と生態系との影響の関係は必ずしも明らかになっていない。非常に複雑な要因があって難しいということがありますので、これについて、科学的知見の充実に取り組むことが必要だとされております。
 科学的には十分に解明されていない間でありましても、当面、影響を未然防止するということで、これについて事業者の自主管理を促す枠組整備を進めるといったことが書かれております。事業者とか国で生態毒性がある物質の情報を入手して把握していくとともに、例えばMSDS制度、GHSあるいはPRTR制度といったような自主管理を促すような枠組みにこういった物質を入れていって、未然防止を図る必要があるということがこの中間とりまとめの中で書かれております。
 また、生態系への影響というものはなかなか難しいということですが、ただ、個別の生物種の生息又は生育への影響の未然防止の観点から、例えば生活環境保全を目的とした水質目標等の検討というふうに、個別の生物種への対応といったことについて取組をさらに進めることができるのではないかということが書かれております。そうした場合には、我が国として統一的な考え方の下で、制度設計を行うべきということがありまして、新規の化学物質について生態毒性を事前に把握する制度を導入する必要性がある。あるいは事業者に生態毒性物質の管理を求めるということで、MSDS、PRTR以外の何らかの制度が取り入れられるのではないかと考えております。
 3番は、今後さらに継続して検討すべき課題ということで、今回は中間とりまとめということでございますので、今後の課題がいくつか掲げられているところでございます。
 今回の審議に関係する部分は以上でございます。

【鈴木委員長】 これは主として経済産業省でやられた議論ですが、環境省の中でも生態系なり生態毒性に関わっていろいろな活動があるわけで、参考資料3の個別法の部分について環境省の活動を説明していただけませんでしょうか。

【事務局】 参考資料3の3ページの下の方から「個別法における生態系保全に関する取組」という記述がございます。全体的な考え方は、先ほど諮問の説明のときに参考資料3の1ページ目、2ページ目のところで説明したとおりですが、それを具体的にどういうふうにやっているか、具体的な制度が3ページから書かれておりますが、4ページの一覧表を御覧ください。
 生態系保全に関する法制度がいくつかございます。まず最初が「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」で、PRTRとMSDSの制度を位置づけている法律でございます。PRTRとMSDSの対象物質の選定の際に、これは動植物の生息もしくは生育に支障を及ぼすおそれがある化学物質といった要件も含まれておりまして、そういったものを含めて環境の保全上の支障の未然防止を行っているというものがございます。
 その下は「水質汚濁防止法」です。目的の中に「生活環境の保全」というものがございます。生活環境の保全というのは、参考資料3の1ページの下から3行目の下線の引いてあるところですが、これは環境基本法の中の記述ですが、「生活環境(人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含む。)」といったものです。水質汚濁防止法では、生活環境の保全ということで、ここにあるような人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境といったものは観点としては含まれているということでございます。規制の対象物質等について、生活環境に係る被害を生ずるおそれがある程度のものでありますが、現段階では、動植物への影響という観点のものは位置づけられておりませんで、今その位置づけについて検討しているところでございます。後ほど説明させていただきます。
 その下の「農薬取締法」でございます。こちらの方も目的の中に「国民の生活環境の保全」というものがございます。登録保留基準、農薬は事前に登録したものでないと販売できないという規定になっておりますが、その登録が可能かどうかという基準のところに「水産動植物の著しい被害が発生するおそれ」という項目がございます。現在もこういうふうな位置づけになっておりますけれども、この取組の強化ということを検討しておりますので、後ほどまた説明させていただきます。
 その下の「海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律」は、海洋環境の保全ということが目的になっておりまして、海洋環境の保全の見地から有害である物質といったもの、これは海洋環境ですので、海洋中の生物等も含まれるという観点になっているところでございます。
 以下は自然環境の関係の法律でございますが、「自然環境保全法」は、自然環境の保全という目的で、例えば動物の捕獲・殺傷等、植物の採取・損傷等を禁止するという規定があるところでございます。
 また、「自然公園法」におきましては、自然の風景地の保護という目的でございますが、生物の多様性の保全のために規制を行う。利用調整地区制度でそういう地域を設けたり、貴重な野生動物の捕獲制限という措置がここでとられているところでございます。
 「鳥獣の保護及び狩猟の適正化等に関する法律」も、生態系に係る被害の防止、生物の多様性の確保・生活環境の保全という目的がございまして、生態系に係る被害の防止のために鳥獣の捕獲の禁止等の規定がございます。
 また、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」は、自然環境の保全というのが目的でございますが、生物多様性の保全という観点から、貴重な生物種についての捕獲の禁止等の措置がとられております。
 一番下の「南極地域の環境の保護に関する法律」も、南極地域の哺乳類・鳥類の捕獲・殺傷等の禁止といったような規定がございます。
 先ほど後で説明すると申しました水質汚濁防止法と農薬の関係でございますが、まず農薬の方でございます。参考資料3の14ページに参考3で「農薬生態影響評価検討会第2次中間報告」というものがございます。農薬の評価制度の中に実質的に生態系の保全を視野に入れた取組を強化することが喫緊の課題であるということで、当面具体化を図ることが可能な対策として、技術的手法が確立されている水域生態系の急性影響についての評価手法の在り方について取りまとめられたものでございます。これは平成10年から検討が開始されまして、今年の5月に報告書が出ているところでございます。この検討会の委員の名簿は23ページに出ておりまして、須藤委員が座長で検討を進められたところでございます。
 基本的な考え方は15ページにありますが、先ほど申しましたように、農薬の評価制度の中に実質的に生態系の保全を視野に入れた取組を強化することが課題であるということで検討が進められたものでございます。農薬の方で水産動植物の被害のおそれといったものがありますが、今のところ、その観点から水質汚濁性農薬ということで規制に関わる農薬に指定されたものは2農薬にとどまっておりますので、さらに追加する必要性があるということで検討が進められたところでございます。
 16ページのところに当面の生態影響評価の考え方がありますが、水域生態系に加え陸域生態系及び遷移帯生態系も含めて評価することが望ましいのですが、技術的に困難なため、当面の評価対象とする生態系は水域生態系とするということになっております。
 また、考え方について、17ページの4.のところでございます。少なくとも水質環境基準点があるような河川等の公共用水域において水産動植物への影響が出ないように現状の評価手法を改善するといったことが書かれております。
 評価方法ですが、まず、魚類、甲殻類、藻類を代表する生物種についての急性影響濃度を導く。それとモデルを利用した短期の環境中予測濃度を求める。これとの比較により評価を行うといったことになっております。
 既登録農薬については、順次調査を進めていって、判断をしていくという形になっております。
 当面のところ、このような形でやるという形になっておりまして、今後これを取り入れることについて検討を進めておりますし、さらに広い生態系についても手法を開発していくことが課題であるというふうにまとめられているところでございます。
 水質の関係は25ページになります。「水生生物保全水質検討会報告」でございまして、こちらも水質目標について、水生生物の保全という観点を入れるということについての検討を進めたものでございます。昨年、「水生生物保全水質検討会」を設置いたしまして、26ページに委員の名簿が出ておりますが、こちらも座長は須藤委員でございますが、今年の8月に報告書が出たものでございます。
 基本的な考え方は27ページでございます。生活環境項目として水生生物の保全という
目標、その対応を早急に検討することが必要であるということで検討が行われております。
 対象生物につきましては、全ての水生生物について対象とすることについては議論があると思われるがということで、少なくとも有用な動植物について保全を図ることの必要性について議論の余地はないということで、環境基本法の「生活環境」という概念の中心にある、人にとって有用な動植物とその餌生物並びにそれらの生育環境の保全という観点から、その対応を早急に検討することが妥当であるとされております。
 目標値の導出につきましては、利水目的に応じていくつか地域を区分しておりまして、28ページの表にありますように、淡水域でも冷水性で川底が礫(れき)である水域を生息場としているイワナ等のイワナ・サケマス域と、水温に対しては比較的鈍感で川底が泥や砂であるコイ・フナ域、さらに海域とそれぞれについて幼稚仔の生育の場というふうな分類をしているところでございます。
 目標値について検討を進めておりまして、一昨年の12月に優先的に取り組むべき物質として81物質が挙げられておりまして、それについてリスク評価の検討をいたしまして、この検討会では9物質について水質目標値の導出が可能であったということが掲げられております。
 30ページ、31ページにその9物質についての目標値等が出ております。
 現在は、この水質目標値が掲げられたことを踏まえまして、水質目標値の環境基準の適用についての検討を進めているという状況でございます。
 以上でございます。

【鈴木委員長】 ありがとうございました。御質問あるいは御追加ありましたらどうぞ。

【小江委員】 今の水生生物の試験その他に関わって、今、化審法で考えている試験法、対象生物とのオーバーラップその他ということで、テスト法、基準を含めた整合性をとるといったような考え方はありますでしょうか。

【早水化学物質審査室長】 環境基準と化審法のものというのは、必ずしも整合をとらなければいけないということではないと思います。それぞれ法目的が違いますので、若干ずれてくる部分があるかと思いますが、ただ、逆に技術的なサイドの方から考えますと、OECDのテストガイドラインとかございますので、基本的に用いる試験法というのは類似してくるのではないかと思っております。もちろん化審法でどうするかということにつきましては、この審議会で御審議いただきたいと思いますけれども、国際的に用いられている標準的なものがございますので、それから外れてくるということは多分ないと思います。ただ1つ違うのは、日本全国で製造・使用する物質について認めるか認めないかという観点では、やはり標準的な手法になると思いますが、水生生物の目標の場合は、場ごとに値が違うとか、そういうことが出てきますので、その辺が少し違ってくるということはあるのではないかと思います。

【中下委員】 水生生物の目標値ができるのはもちろん好ましいことなんですが、先ほどのお話の中にも出てまいりましたように、人が食用するとか、人に密接な関連のある魚だけではなくて、生態系保全そのものを環境省としては考えるべきなので、水質の環境基準に生態系保全という観点の目標値を定めるということはお考えになっておられないのでしょうか。

【須藤委員】 今の検討会については私が世話役をさせていただきまして、今、中下委員がおっしゃっていただいたことは十分議論させていただきましたし、環境省自身もその点は十分理解しているところでございますが、具体的に何か数値を出すためには、どうしても法的な裏付けと対象生物というのが重要になりますね。環境基本法の中に、御承知のとおり、生態系保全の水質環境基準を作りなさいというふうにはまだ今のところなっておりません。ただ、先ほどの御説明にありますように、生活環境項目の中には、我々の生活環境を守るために水産動植物を守るということがありますので、そこから入り込むのが一番妥当であろう。ですから、おっしゃるとおり、生態系保全なんだけれども、具体的には我々の水産動植物とその餌になるところ、その餌になるところというのは、例えばミジンコにしても、先ほど生産者と消費者という言葉があったのですが、一次消費者とか一次生産者というのがありますので、それは具体的に当然入り込んできますので、大ざっぱにいえば生態系保全、考え方として生態系保全だと私は思っております。ただ具体的に、さっき説明されたように、水産動植物とその餌と言われてしまうと、そのとおりに受け取られてしまうかもしれないけれども、実際にはこの議論は行ったり来たりして、特に検討会の中では、生態学者も結構おられるので、十分にさせていただいて、最終的に中下委員がおっしゃるとおり、そういうことなのだけれども、実際の試験をやっていくためには、あるいは法的にそれを裏付けるためには、今のようなやり方が最も早急にできる方法である、こういう意味でございます。

【中下委員】 将来的なことで姿勢はいかがなんでしょうか。

【南川環境保健部長】 将来の問題としては、環境基本法自身をどうするかということになってくると思います。環境基本法自身がああいう法律になってからもう9年たちまして、実はこれ以外にも見直すべき事項がいくつかございますから、ある時期に見直すようになると思いますが、当座、基本法自身が大議論を呼びますので、パーツに限らず、あらゆるパーツが地球環境問題を含めて大議論になるものですから、その改正よりは、実質上、誰もが想定している生態系をいかに守るかという観点で当面やっていこうということで、環境省としては作業したい。ただ、将来的には環境基本法を変えることを含めてやっていくことが正しいだろうという認識を持っております。

【鈴木委員長】 ほかによろしいですか。

【浅野委員】 今、南川部長が言われたことは、環境基本法を作ったときからの課題です。つまり、公害対策基本法の中に「環境基準」という言葉が使われていたのだけれども、あれは「環境基準」だったわけです。しかし当時はそれでよかったとしても公害防止に係わる、これを環境基本法に移しかえるときに、これを環境基本法に移しかえるときに、私は「環境基準」という言葉でない言葉を使えとだいぶ主張したのですが、行政の現場が混乱するから難しいと言われて「環境基準」になってしまったのです。アセスなどを考えても、環境基準が達成できれば、環境はよくなったという印象を与えるという問題もあるものですから、もっと違うことを考えて、環境基本法は、生き物も全部含めて一体的にやるのだったら、それを全部包括できるような目標の言葉を作るべきだと言っておりました。今後もう一度この手の議論が行われることになるのではないかと期待しています。

【南川環境保健部長】 実はこのチラシの最後のページにも全体でいろいろ取り組み始めていますというふうに書いておりまして、姿勢としてはそういう姿勢は持っております。

【鈴木委員長】 ほかにございませんか。

【若林委員】 今、化審法の関係の環境省と経済産業省の検討会の内容を御説明いただいたのですが、来週以降の準備のためというか、勉強のために、もし答えられたらお聞きしたいのです。今回の諮問に係る部分で相違点などがあるのでしょうか。お聞きした限りではよくわからない部分もございまして、もし答えていただけるのでしたら、その辺について、大ざっぱな話でよろしいのですが。

【鈴木委員長】 環境省と経済産業省との間の違いがあるかという意味ですか。

【若林委員】 はい。

【早水化学物質審査室長】 なかなか答えにくい質問でございますが、基本的に検討時期にまず差があります。私どもの検討会が先にあって、その後、経済産業省でやられたということで、我々の方はどちらかというと大枠的な議論になっておりまして、言葉の議論、例えば「生態系」という言葉の議論を詰めたりしていません。それから中身につきましても、生態系を中心に審査・規制の導入が必要だということ、特に前段階の整理というのですか、必要性とか技術的な可能性とか、そのあたりを議論していただいた上で、今後の方向性と検討課題の整理という形でやらせていただいておりまして、性質がちょっと違うので、一概に比較できないというように認識しております。ただ、方向性として、いわゆる生態毒性物質あるいは生態影響物質について何らかの対応が必要だということ、それから、化審法全体について見直しをすべきだということについての認識は同じと考えております。細かい点につきましては、今後この審議会で御審議いただきたいと思いますし、後ほど御紹介しますが、もし先生方の御了承をいただければ、他省の審議会との合同開催なども予定させていただければと思っております。そうすれば、違いというのももしあれば、整理されてくると思っております。

【鈴木委員長】 後で私が提案しようと思っていた、経済産業省、厚生労働省と3省合同の形で会合をもっていくようなやり方ができないものかと思っていたわけです。そこの中でおのずから何が違うのかが明らかになるだろうと思うのですが、それは事務局の方がそういう腹積もりで支度をしているようですから、その辺のところを説明してください。

【早水化学物質審査室長】 それでは、とりあえず事務局の方でこの小委員会における検討課題と検討スケジュールについて御提案させていただくということで、これを踏まえて今日残りの時間御審議いただければと思います。事務局としてこんな形でどうかという
ことで整理したものを資料8として用意しておりますので、御説明させていただきます。
 まず検討課題でございますが、これは広めに設定しておりまして、全ての事項について法改正になるということではなくて、制度改正、法改正の部分もありましょうし、政省令の方に落ちてくる部分もあると思います。それから、運用を改善していけば足りていく部分、他の制度を活用するような部分も出てくると思いますけれども、そういったものをいろいろな課題ごとに整理していければと考えております。大きく分けて2つで、1つが「生態系保全の観点からの化学物質の審査及び規制の在り方について」ということで、一番根本として、化学物質の生態系や動植物の生息・生育への影響に係る審査、その結果に基づく規制の考え方及び枠組みといったものについて御審議いただければと思っております。また、関連しまして、検討会報告書等で指摘されている事項の取扱い。例えば水溶性ポリマーの問題とか、用途を制限すること、あるいは良分解性物質にどう対応したらいいかといったことについても議論していただいて整理していただければと思っております。
 もう1つの大きな課題は、「審査・規制制度の見直し等について」ということでございます。この「等」というのは、今申し上げましたように、制度の見直しの部分と運用改善等にあたる部分もあろうかと思います。1つ目の丸ですが、より合理的かつ効果的な化学物質の審査の促進等を図るため、現行の審査・規制制度及びその運用に関していくつかの課題がありますので、その対応についての御審議をいただきたいということです。代表的なものとして4つ挙げておりますが、1つ目が製造・輸入量や暴露可能性に応じた柔軟な事前審査制度の導入の検討、2つ目が審査・点検後のフォローアップ、これは特に経済産業省の研究会で指摘された、いわゆるセーフティネットの考え方、あるいは同じようなことが私どもの検討会報告書への意見の中にも入っておりますので、そういったものへの対応でございます。それから、規制対象となった化学物質等に関する、より効果的な環境汚染防止のために措置の検討ということで、例えば指定化学物質等について新たな環境汚染防止のための措置が必要かどうかということについての御審議をいただきたいということです。それから、既存化学物質について点検を促進するにはどうしたらいいかということについての御審議もあろうかと思います。
 その他、制度の円滑な運用のために改善すべき点ということで、これは実は現在、3省で運用改善のためのワーキンググループを設置しまして、3省体制になってから1年半以上過ぎた中で出てきたいろいろな課題を今整理しておりますけれども、その関係でもし御意見があれば御指摘いただいて、対応などを考えていきたいということでございます。
 検討スケジュールでございますが、下にありますように、今回第1回ということで、背景説明、検討課題の整理、自由討議ということでございますが、第2回以降、書いてありますように予定しておりまして、次回が生態系保全の観点からの審査・規制の在り方についての議論を中心にお願いできればと、また、3回目に審査・規制制度の見直し等について御議論いただいた上で、答申案の骨子について御審議いただき、第4回で答申案の中間まとめをしていただければと思います。その結果を踏まえまして、12月下旬から1カ月間、パブリックコメント手続によりまして国民意見を募集した後に、1月末から2月上旬にかけてあと1~2回程度開催した上で答申案をとりまとめていただく。この委員会は小委員会ということでございますので、最終的には環境保健部会で答申をとりまとめていただくことになろうかと思います。
 裏側に参考までにということで他省の審議会のスケジュールを載せておりますが、経済産業省におかれましては、産業構造審議会化学・バイオ部会化学物質管理企画小委員会というものが一昨日、化審法に関しては初回にあたる会合が開催されまして、次回、10月30日に開催を予定されております。また、厚生労働省におきましては、厚生科学審議会化学物質制度改正検討部会というものが24日に開催を予定されておりまして、その場におきまして、化審法の改正に関する専門委員会の設置について審議される予定と聞いております。
 以上、検討課題と検討スケジュール案はこういう形でございます。

【鈴木委員長】 各委員の先生方から検討課題に関しての御意見を個別に伺うつもりでおります。ここで2~3分休憩をとって、その後、各先生方からお考えを聞かせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

                 〔休憩〕

【鈴木委員長】 それでは、各委員が検討課題としてどうしてもこれは取り上げてほしい、あるいはこういう見方があるだろうということに関しての御意見をお持ちだろうと思います。できれば一わたり聞かせていただいて、今日御欠席の方からは文書でもいただくつもりでおりますので、浅野先生からお願いします。

【浅野委員】 ちょっとだけ無い物ねだりみたいな話になってしまって、ここでどこまで議論できるかわからないのですが、言わせていただきますと、当面我々は化審法を取り上げるわけです。今、隣で井上先生から「化審法は本当に『環境』保全に役に立っているのかしら」という御下問があったのですが、化学物質を製造する段階から、それが今度は資材として第2の原料として使われる。それがさらに製品になって使われて、最後は廃棄されるという、化学物質そのものは一連の流れがあるはずですね。化審法は頭のところの製造のところだけを押さえていて、その後のところは個別の用途ごとに別法がそれぞれ用意されているという構造になっている。さっきのお話にもあったのですが、だから極端にいえば、ある化学物質がある用途で使われる場合はこの法律、この用途で使われる場合はこの法律というふうになってしまって、流れが極めて曖昧で、最後は廃棄物処理法のところに行くわけですが、ずっと全部一貫してうまくつながっているのだろうかという疑問があるわけです。これは経済産業省の総合管理と銘打った研究会でもひとしきり話題にはなったわけです。総合管理という以上はそこまで入り込んでちゃんと議論しなきゃいけないのではないかという声はかなりあったのですが、やはり所管が違うことについてはなかなか難しいみたいなところがあって、結局こういうことになったわけです。しかし、ずっと一貫して議論されたことは、流れを追いかけていって議論しなきゃいけないのであって、一番上の製造元のところだけをいくら縛り上げてみても、中間のところで尻抜けになったらどうにもならないではないかということです。化学物質の総合管理に資するようなシステムはどうあるべきかということを、他の法律の運用の仕方なども併せて考えながら議論しなきゃいけないという認識があるわけです。

【井上委員】 何点か申し上げようと思いますことは、先ほど浅野先生に質問したのは、ちょっと表現が違っていまして、化審法のいろいろな審査の取扱いに携わってきていて、僕らはあれは「環境」保全には全く役立っていないと確信を持っているのです。審査項目がそういうふうにできていますから。それを誤解しておられる方がもし環境サイドの方におられるとしたら、ぜひそこのところをよく認識しておいていただかないと、私たちが審査している内容はあくまでも人の健康の問題以外何も考えていませんから、それに関して責任を持っておりますので、そこのところの誤解だけはこれから御審議なさるときに、事務局が作っておられるように、生態系保全の観点からの化学物質の審査・規制の在り方というものをお考えにならない限り、生態系の問題は解決しないということ。それで僕が浅野先生に申し上げたのは、どうしてああいう法律をお作りになったのかというふうに質問したのです。そういうことで僕らは人の健康に関して、28日間という非常に期間の短い試験ですから、十分に見ることができないのですが、いろいろな産業との全体的なことを勘案した限りでのある程度のバッテリーテストでもって人の健康については万全を尽くすべく努力して審査をしていると思って確信しているのです。その点を申し上げておきたいと思います。

【岩熊委員】 検討課題がいくつかございまして、多分次週、生態系保全の観点からの審査・規制の在り方について討議されると思うのですが、今までにいくつかの委員会等に出ていて感じているのは、「3点セット」とよく言われる藻類、ミジンコ、魚類というグループで代表されているのですが、それはそれなりにうまく機能しているということは理解できたのです。一方で、水生生物の保全に関する検討会で、先ほど生態系という観点からということで御指摘があったのですが、河川の中での存在し得る生物群種を考えて、その毒性データがあるかどうかということをいろいろ拾っていくと、非常に少ないんですね。決められているグループについて、ミジンコや藻類、魚についてはあるのですが、どうしても他の生物が少ない。幸い今のところ、その他の生物の耐性が割合高くて、ミジンコの方がむしろ耐性が低いという結果が出ているので、何とかデータが補充できたかという感じはするのですが、これからこういうデータをいかにたくさんいろいろな機関で検討してもらうかというのが重要なことだと思います。お金はかかるかもしれませんが、これをエンカレッジする手立てはないかということ。
 もう1つは、2つ目のところで既存の化学物質の点検をいかに促進するかということですが、この表を見る限り、これは何年かかっても絶対に終わらないと思えるので、すごい画期的な方法を見つけ出さないといけないのではないかと思います。その辺の議論もかなり重要なのではないかという気がいたします。生態系のことも重要なんですが、むしろ数
万ある既存のものをどうするかということは非常に重要であるのではないかと思いました。

【内山委員】 私はずっと環境系の方から生体の方をやってきたのですが、当時から環境基準等でもなぜ人の健康だけが問題になっているのだろうか、生態系への影響、いわゆるエコの方にもどうしてこういう基準がないのだろうかということは10年以上前から考えてきて、やっとこの大もとだけでも生態系への影響を考えるような機会ができたと思っています。2年前からは化審法の方にもちょっと関係させていただいておりますけれども、そのとき思ったのは、ここでも井上先生がおっしゃったように、健康だけが目的の法律である。そこに生態系をどうやって取り入れていくかというのは、新しい制度をつくったらいいのか、それとも、この中に組み込んでいったらいいのかというのは、健康と生態系の両方を考えていく上で非常に難しい問題もあるのではないかと考えておりますが、検討課題の中で、生態系保全の観点からの審査・規制の在り方ということと、審査・規制制度の見直し等と両方含まれておりますので、これをどういうふうに考えていったらいいか、まだ私の中では整理されていないのですが、そこら辺のところの議論がこれから必要になってくるのではないか。
 あと、浅野先生がおっしゃいましたように、これは大もとだけですので、枠組みは今それぞれできているけれども、中途段階とか排出の段階でも生態系に対する影響をどのようにとらえていくかということも今後、環境省としては必要になってくると思います。

【小江委員】 私は化成品工業協会の代表でございますので、産業界から見てこれをどういうふうに考えていったらいいかという観点でお話しさせていただきたいと思います。
 生態毒性の化審法への追加については、私ども化成品工業協会としてはいち早く賛意を示しておりますし、自然との共生という中での産業活動という観点からこの法律をとらえたいと思っております。ただ、何分、企業ですので、経費の問題がすぐ頭にまいりますから、法律自身も人の環境の保全と産業の発展というのが両輪として両立できるようなシステムをぜひ考えるべきだと思っております。それに対して費用対効果をもう1つ考えていく。化学物質のそれぞれの毒性を全部チェックするということは、どなたも異論がない事柄だろうと思います。
 それに関して、先ほどの御質問の中にもありましたが、少量新規の申出が非常に多いのになぜ1トンを超える新規化学物質が出てこないのかと。これは1万件を超える件数の中から平均して約300件が新規化学物質になるということで、アメリカのTSCAで登録されているのが現在のところ年間2000件ということに比べればずっと少ないわけです。これは化学産業の実力を示したものではなくて、それを阻害する要因が内在しているのではないかと思っております。
 その1つが、1トンを超えると、現在、全ての試験を一律に有害項目をしないといけない。先ほど御説明がありましたように、今、機能性の化学物質というのは、何百トン、何千トンとなるものは非常に少なくなっております。それを単位量で割りますと、非常に大きな経費的な負担になります。あるいは先行して届出をしたとき、後から来る人のただ乗りで競争に負ける可能性があるという問題も内在していると思っています。日本の私どもの協会は107社ありますが、ほとんど中小企業の方が多いわけです。年商100億以下の会社の皆さんが会員としてたくさん登録されております。こういう化学産業が今、国際競争の中で中国あるいはインドといった国の製品の脅威にさらされている。これらの国々は規制が甘いか、ないか、あるいは既得権に守られている、また、労働力が安価であること等ありまして、産業自身が国外に逃げていっておりまして、日本からは染料は一部を除いてほとんど姿を消しました。例えば、ブルーの顔料でフタルシアニンという化合物がありますが、これは非常に汎用に使われている化合物ですが、これも実質上、日本ではクルードの生産はできなくなりました。ほとんどの会社がもうその生産をストップするという形で、産業自身が次々と姿を消すという状況が起こっておりまして、別の意味で人間の生活を脅かすという状況も片方で出ている状況であります。

【鈴木委員長】 化審法どころではないぞという意味ですか。

【小江委員】 いえ、そういうふうに申し上げているわけではありません。ただ、私どもの国はこれが趨勢ですので、しょうがないところがあるのですが、そういう新興国にできない、新しい機能性の物質を次々と開発していきながら世界の中で棲み分けしていくという形を産業としてとらないとしょうがないだろうと思っております。

【大塚委員】 主に2点申し上げさせていただきたいと思います。今お話しになったような点は、環境と貿易ということとも関係ある大問題で、今ここで扱うのは適当でないと思いますので、それ以上付け加えません。1つは、先ほどからも御議論になっている生態影響をどうやって化学物質の審査に取り入れていくかという問題で、これは大問題だと思います。今回どこまでできるかというのは非常に難しいところがあるわけですが、できるだけ取り入れていっていただきたいと思っています。法律の人間ですので、法律との関係のお話をしますが、1つの考え方としては、生活環境の被害というところにどうしても拘束されるわけですが、人類が基盤としている生態系の基点になるような生物がミジンコと藻類と魚類ということにもしなるのであれば、そういうものについては生活環境の被害に何とか取り込めないかという解釈はできないかというあたりが1つのポイントではないかと思っております。ただ、今回はそこまでいけるのかどうかというのは、法律家としてはなかなか難しいところもあるかなと思っております。
 第2点ですが、先ほどからお話が出ていますように、既存物質についての点検が非常に遅れているという問題がありまして、これはそういう制度をつくるのか、あるいはとりあえず自主的に行っていただくかということはともかくとして、事業者の方で調査をしていただいて、それを国が評価するという仕組みをできるだけ進めていっていただきたいと思っております。これは数が非常に多いので、なかなか進まないということが非常に大きな問題だと思います。EUの予防原則の考え方などを参照すると、化学物質を製造される場合に、それが環境へ負荷を与える可能性がありますので、それに関する証拠を提出する責務が事業者にあるという考え方になりますので、それについての調査をしていただく方向で、これは制度的にすぐにやるということでは必ずしもないかもしれませんが、運用ででもいいですが、進めていっていただきたいと思っております。

【清水委員】 とんでもないことを言うことになるのかもしれませんが、私は生態系なんぞというものは存在しないと思っているわけです。これはパンフレットの「かけがえのない生態系」に書いてある認識を否定しようということではありませんけれども、ここに、「多様な生物と、その生息と生育の基盤となる大気、水、土などの自然的構成要素、それらの間の物質やエネルギーのやり取りをあわせて『生態系』と呼びます。」と書いてあります。「呼びます」ということは、人間がいろいろなことの理解だとか目的のためにそういうふうな概念を作ったわけです。コンセプトとしては生態系というのは非常にわかりやすいのですが、では本当に生態系とは何なのかと言われると皆さんがお困りになるのはそういうことなんですね。で、結局のところ、一般の方たちといいますか、どこでも「生態系」という言葉で言っているのは、「生き物」のことをおっしゃっているのですね。化審法の中に生き物というものをまともに取り入れていこうというのは大変結構なことなので、ぜひやっていただきたいのですが、そのときに「生態系」という言葉にとらわれて、逆に複雑になってしまっては困る。ごく単純に全ての生き物を視野に入れて考えましょうというふうなことでやっていただけるといいのではないかと思います。

【須藤委員】 私は先ほどの御説明の中の水生生物と農薬の方の世話役をさせていただいて、今も継続して議論をさせていただいておりますので、その関連で申し上げさせていただきます。私も「生態系」という概念は、今、清水先生がおっしゃっていただいたので、その中を構成する重要な構成種が、例えばどう影響するかということを評価するということだろうと思うのですが、我々が今までやってきたのは、出口のところでやっていることが多いので、今度は入り口の話になるのですから、それと視点を合わせる必要はないのだけれども、代表選手をどう選択できるのかというのが大事なのです。例えばミジンコと藻類は動物プランクトン、植物プランクトンで、魚類はコイを選ぶか、イワナを選ぶか、ヤマメを選ぶかということになってしまうわけですが、本来であれば、その組合せがよくないですね。同じところにいるものではない、河川と湖沼にいるものをそれぞれ選んでいるということもあるわけなので、そういう意味では理屈をきちっとつくっておいて、これが代表選手として代わっても大丈夫なんだよということを、これは私もやらなくてはいけないことなんですが、その辺のところの理屈が十分できてなかったのではないかと思います。これが1点目。
 2点目は、後で若林先生が御説明いただくかもしれませんが、いろいろ私どもは仕事をしていて実際のデータがないんですよね。これが実は一番困っているし、毒性値などもなく対象生物も少ない。今だったら、例えばホタルとメダカが大事だと言われる。メダカのデータはなくはないのだけれども、ホタルが大事だと言われても、もちろんこの中に入れにくかったのですが、そういう意味でさっきの9物質が重要だからというよりも、データがあって何とか目標値ができたものがこれらの9物質だったということもありますので、この審査の最後のまとめの中で、この方面の試験研究を促進させるようなことが検討できればと思います。

【中下委員】 市民、NGOの立場から申し上げさせていただきます。まず、生態系保全については、その枠組みを導入すべきである、これは皆さん一致した意見かと思いますけれども、化審法の中にぜひとも導入していただきたい。そして、その規制のあり方として、人と生態系とを分けるべきではないのではないか。これは諸外国の法制度もみな同じようだったと思いますけれども、分ける必要はないのではないかと思っております。
 それから、化審法のその他について、先ほど既存化学物質の問題が皆さんから指摘されておりましたけれども、私も全くそのとおりだと思いまして、これは促進といっても、促進とうたうだけでは、何十年先になるかわからないという状態だろうと思いますので、要するに期限をきちっと決めて、その間までに毒性データ等を出さなければ使ってはいけないという、今までの挙証責任の転換をしていく必要があるのではないか。そのための計画あるいは戦略といったものが必要ではないかと思います。
 もう1点は運用についてなんです。先ほど質問させていただきましたけれども、指定になるものが非常に少ないし、また、指定から二特にいっているものも非常に少ない。あるいは一特、二特を合わせても数十物質である。今世の中に出回っているのが10万種と言われている中で、せいぜい数十というのはいかがなものかと思いますので、この運用の在り方を抜本的に点検していただきたい。先ほど回収命令のことも伺わせていただいたのですが、出していない。そのために今DDTとか、例のストックホルム条約で問題になっている農薬の回収などに農水省の方でも取り組み始めたようですが、困難をきたしている。これは当然のことでありまして、指定したときには当然回収命令を出す。これも当たり前のことではないかと思うのですが、そういう運用ができていないということももう一ぺん反省していただいて、運用を改善するためのきちっとした合意をしていただきたい、ここで確認させていただきたいと思います。
 それから、化審法から少し外れてしまうかもしれませんが、先ほど浅野先生がおっしゃったように、ライフサイクルが問題なわけでして、これはOECDの勧告の中にも、3点目にあります消費財に使用されている化学物質の環境及び健康リスクを最小化して、この間のヨハネスブルクサミットでも、有害化学物質からの人や環境に対する影響を最小化するような生産と消費の確立ということがうたわれましたし、それが目標になったので、そのための化学物質政策を考えていかなきゃいけないのではないか。それには当然なんですが、情報公開とリスクコミュニケーション。先ほどオーストラリアの例で、毒性のリスク評価の情報も公表するという制度があるようですが、日本ではそういうことが全然出てこない。OECDの勧告の中にも5つ目にございますが、住民が利用しやすいような形のデータベースという制度的な枠組みもぜひ整備していただきたいと思います。

【中杉委員】 最初の会議でまだ具体的な中身が提示されない段階で意見を述べるというのはなかなか難しく、一般論にしかならないのですが、一言、話をさせていただきます。
 最初に、先ほど若林委員から御指摘があった、経済産業省と環境省の違いは何かというのは、たまたまここに参加しているメンバーで私だけが両方に出ていたので、感想的な話ですが、先ほど早水さんからお話があったように、基本的な方向としては、やりましょうということは、どちらの委員会も間違いなくその方向である。ただ、実際にそれを規制の段階に入っていってどういうふうに管理していくかということについては、各省の立場でニュアンスの違いがあった。その辺りが多分、今後の議論の中に出てくるのではないかと思います。
 それに絡んでなのですが、先ほどの生態系を保全するということに関しては、私自身も全く反対ではなくて、そのとおりだろうと思うのですが、先ほど清水先生が言われた「生態系」という言葉自体が非常に曖昧ですし、あえて「生態系」という言葉を使わせていただくと、どういう生態系を保全するのですかという話がないままに、同床異夢的に話が進んでしまうと非常に怖いなという感じがいたします。といいますのは、極端な話をすれば、生態系というのは必ずいつでも存在するものだと私は考えていますので、そういう意味ではどういう生態系を我々は残しておこうと考えるのかという話が1つ重要なポイントだろうと思います。
 その絡みでいきますと、もう1つ気になる点は、化審法の制度の中でもレベルの違う対応をいくつか考えているわけですね。レベルの違う対応に応じて、今申し上げました保全すべき生態系といいますか、生態系の保全のレベルというものが変わってくるのではないか。その辺りのところを具体的に出していただかないと、本当のところの同床異夢的な議論で最後までいってしまって、わからないままで終わってしまうようなおそれがあるのではないかと思いますので、事務局としては、次回、具体的に生態系保全についてどうするかということについて、ある程度こんなスキームを考えている、この部分についてはこんなふうに考えるという形で提示していただければありがたいと思います。

【満岡委員】 私も産業界から出させていただいている委員であります。今回の検討課題を見させていただくと、いろいろ考えられていて良くできていると思います。生態系に関しては、我々もやるべき事はやると考えております。今までの議論にも出てますように、生態系とは一体どういうことか、どうとらえるのか、そういう中から法的枠組みなり規制の方向が決まってくると思います。しかしながら規制というのは一般的にいって、これにお叱りを受けるかもしれませんが、どんどん厳しくなって行くものと思われます。最初に、効率的、効果的ということについて質問させて頂きましたが、欧米では規制の一方で、しかし経済的側面もかなり強く頭に意識しながら対応できていると思われます。即ち、やるべきことはやると共に、経済的な側面も十分考えながら対応していく、そういう方向で新しい枠組みができればと思っています。こう考えると、リスクベースでやっていくということにだんだんなっていくのだろうと思います。日本でも政府が優先順位をつけて個々の化学物質のリスク評価を始められていますが、欧州では、既に政府によるリスク評価のガイダンスのようなものができているように聞いております。こういうものがあれば、より合理的に進められると思います。経済的側面を考えて頂きながら法制化を考え、一方でそれを補完するように、やらなければならないことを同時に進めて行く、このようなことを考えていかなければいけないと思っています。

【村岡委員】 水環境部会をあずかる身としまして、これは単純に言って、非常に不安な材料だろうと思います。趣旨そのもの、あるいは理念そのものに反対するわけではありませんけれども、先ほど須藤委員がおっしゃったように、代表選手として、この場合、水に決めていこうといった場合に、生活環境項目として1つの魚を選ぶということになりますと、ダブルスタンダードといっていいのかどうか、そんな感じの混乱が起こることも考えられるわけですね。つまり、漁業資源としての魚と生態系の一員としての同じ魚と基準が違うということになりますと、一体どっちに従うのか。どっちかを犠牲をして、どっちかに我慢してもらうということにもなりかねない。いわば水の中での生態系ということを考えると、必ずしも1物質、1生物という対応ではなくて、もう少し複雑な系で考えないと意味がないのではないかという意味で、複合的な指標といいますか、そういったものを導入する研究を少しばかりやらないといけないのではないか。そういうことで要するに水環境の水質部門と生態系部門が矛盾のないような形の法制度というものを切り開いていく。そういう目標でやらないといけないのではないかというふうに感じました。

【若林委員】 ずっと人以外の生物に人間はもっと優しくなるべきだと言っていましたので、こういうことが検討課題に具体的に挙がってきたということは、私にとってとてもうれしくと思います。検討課題は、もちろんここに書かれているようなことで基本的にはいいと思いますが、先ほど須藤先生が言われたように、課題になのか、ちょっとわかりませんけれども、「その他改善すべき」というところに入っているのか、実施体制、実際にこういう項目を入れたときに我が国で対応していけるのかどうか、いかなければいけないわけですが、GLP対応できるようなところは今7機関という状態なので、その辺を考えていってほしいということ。
 それから、具体的な議論については次回以降だと思いますが、産業界などからはリスクでやってほしいという声が出ていると伺っています。それで、実際に防がなければいけないのはリスクということなので、その辺についての検討、リスクにするとすると、結局、用途制限を入れなきゃいけないということになると思うのですが、そのあたりは時間をかけて議論していただきたいと思っています。
 今この会議では生態系保護が入ってなかったのがおかしいという議論がなされて、非常に心強いのですが、今までの検討会などに出ていますと、総論のときにはかなりこういう形での意見が多くなるのですが、具体的な各論になりますと、人が死ぬということ、あるいは病気になるということだと、例えば規制ができるけれども、実際に魚が死ぬということになると、できるのかという議論が出てくるんですね。だから、その辺のところについて議論が必要なのかどうかわからないのですが、欧米でそういう議論は基本的にはないんです。レベルのことはもちろんございますが、日本ですと、人が食べるというようなことに関してはかなり賛同が得られていますけれども、そのあたりがまたネックになるのではないかと、後の方は感想ですがそう思っています。

【鷲谷委員】 生態系への影響をいかに効率よく、しかも問題を見逃さないようにして実施するための考え方と実際の方法を考えていくことが必要になると思うのです。生態学では、ある特定の空間の中で生きている全ての生き物とその環境を擁護するのは、関係を重視して、システムというふうに定義して、それをとらえるとしたら、要素でとらえることもできますし、経済産業省の研究会報告にあったかもしれませんが、食物網とか生態系ピラミッドのような構造でとらえることもできます。あるいは物質循環とかエネルギーフローとかその他、機能の面からとらえる、つまりサイエンスの対象とすることはできるわけですが、化学物質の影響ということですから、影響がどう生じていくかということを考えると、結局は生物の個体への生理的な影響が生死にすぐ関わるような影響であったり、繁殖を通じた影響を通じて、生態系を構成している種の個体群の存続性などに関係して影響が生じるといった形からみていくべきではないかと思います。安全側でとっていけば、生物の個体への生理的な影響で捉えるのだと思うのですが、生死、急性影響になるのかもしれない。また、神経系とか内分泌系を通じた繁殖に関わるような影響をみるのであれば、その感受性が、例えばミジンコは感受性が高いとおっしゃっていましたが、そんなに神経系とかが発達していない生き物ですから、そういう影響はまた他でみざるを得ないのかなと思ったりもします。
 それから、先ほどある特定の空間のという言い方をしたのですが、地球全体の生態系を問題にするのかどうか。といいますのは、北極圏などの哺乳動物にPCBなどが蓄積したりという事実がありますので、地球全体の問題として考えることも必要と思うのですが、そういうことを念頭に置きながらも、日本国内レベルでの、あるそういう化学物質の影響を受けやすい部分について具体的に考えていくということも必要かなと思うのです。それで、このパンフレットはなかなか素敵にできているなと思ったのですが、もしかしたら、この裏表紙に出ているようなのが生態系のイメージなのかもしれないですね。サイエンスからはいろいろなことが論じられるわけですが、生態系への影響ということで国民の皆さんが心配していることはどういうことなのか、そのあたりを踏まえることも重要だと思うのです。で、指標になる生物、実験がやりやすくても確立しているということで3点セットというのをお使いになるのは問題ないかもしれませんけれども、それとの関係といいますか、例えばカエルとか、タガメは丈夫そうで毒にも強そうですが、それとの関係がどうなっているのか、データがあるかどうかも存じ上げませんけれども、3点セットに、例えば生態系の安全率みたいなものを掛け算するとか、そういうようなデータを十分に検討されると、効率の良いやり方にもつながっていくのか。研究があるかどうか、私はこの分野のことは余り存じ上げていないのですが、生態系への影響となりますと、脊椎動物で、魚でないものも意識したようなものにしたいと思いますので、そういうデータで、毒性のタイプによって生物の分類群間にどんな違いがあるか、そういうことが今まで研究されているか、把握されているか、世界全体からそういうデータをずっと集めるとか、そんなことも必要なのかなと思いました。

【鈴木委員長】 ありがとうございました。本当は丁寧に一々議論していって、それこそ毎日のようにやっても1年たっても終わらないくらいの量の議論をしなきゃならないような感じがしますけれども、各委員の方々がどんなバックグラウンドで、この問題をどうお考えになっているか、そういう意味でのある種の共通理解みたいなものは今のお話から生まれてきただろうと思います。私も相談に乗りますが、清水先生も多分相談に乗ってくださるはずですが、課題の整理を事務局がもう少し進めて、こういうことを議論して、こう考えようという話に進めなければいけないのだろうと思います。それはこの次からの課題になるはずです。そのときにお願いは、既存の法の体系があって、そこから出てくる縛りみたいなものでどうしても動かせないものと動かせるもの、そこら辺のところをもうちょっとわかりやすく提示していただきたいと思います。皆さん方のお考えの土台に、規制的手法のようなものによってものを裁くといったものが何となく前提になっているような気がして心配になったのですが、対策を進めていくのは必ずしも規制だけではないはずでありますから、もっと多様な、もっと弾力性のあるやり方をいろいろなふうに考えていくことも必要だろうと思います。
 さっき早水さんがおっしゃってくれたように、次回から第4回まで3省合同の審議会でやる、そういう手配ができますね。

【早水化学物質審査室長】 日程的には、第2回、第3回、第4回は各省合同ということが可能というふうに判断しております。

【鈴木委員長】 今日やったような議論よりもっと薄まった形になるかもしれませんし、もっと紛糾するかもしれませんけれども、それもまた必要なことかもしれません。合同でやることに関してはよろしゅうございますね。
 (異議なし)
 次回は11月7日になるわけですね。

【事務局】 今後の開催予定は、資料8に記されているスケジュールのとおりでございます。次回は11月7日(木)の15時から18時の予定でございます。次回以降、合同会合ということですので、経済産業省の方は産業構造審議会の化学・バイオ部会化学物質管理企画小委員会、また、厚生労働省の方は厚生科学審議会の化学物質制度改正検討部会に設置される予定の専門委員会と合同で開催することになろうかと思いますので、よろしくお願いいたします。

【鈴木委員長】 何十人ぐらい集まる会議になるのですか。

【事務局】 各小委員会で委員の先生方が20名程度ずついらっしゃいますので、50~60名の先生方が集まるのではないかと思います。

【鈴木委員長】 もし委員の先生方で今日の議論をお聞きになって御意見をお持ちになって、十分話ができなかったというような方がいらっしゃいましたら、文書で事務局の方にお送りくださると、それはしかるべく勉強させていただきますので、よろしくお願いします。

【浅野委員】 ぜひ事務局で最初に準備段階で詰めておいていただきたいのは、言葉の使い方についてのずれがないようにしておいてほしい。例えば、さっき早水さんが検討会報告を紹介されたときに、「規制」と書いているけれども、これは決して直接規制の厳しいものばかりをイメージしているわけではないと言われました。産構審の方では「規制」というと直接規制の厳しいものしか意識していないわけです。また、「自主的取組」という言葉を使っていても、それは枠組み規制まで全部入っているわけです。そういうところの違いをお互いにちゃんと理解しておかないと、議論が空回りするおそれがありますから、そこはぜひ留意していただきたいと思います。

【鈴木委員長】 ありがとうございました。事務局、何かありますか。

【早水化学物質審査室長】 今日御指摘の点を踏まえて資料を用意したいと思っております。鈴木先生からお話のあったように、次回御欠席という場合等、もし御意見があります場合には、もちろん御出席の方でも結構ですが、会合の1週間ぐらい前までにいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

【鈴木委員長】 今日いらっしゃっていない委員の方にも連絡をとってください。

 それでは、本日の会議はこれで終了いたします。ありがとうございました。

--了--