環境情報専門委員会ヒアリング(第2回)議事録

日時

平成20年7月30日

議事内容

午前9時59分 開会

○細野企画調査室長 まだお見えになられてない先生もいらっしゃいますが、いずれお見えになると思いますので、始めさせていただきたいと思います。
 ただいまから中央環境審議会総合政策部会の第2回環境情報専門委員会のヒアリングを開催します。
 本日は、お忙しい中をお集まりいただきまして、本当にありがとうございます。
 なお、植田委員、筑紫委員、恒川委員、惠委員、森口委員につきましては、本日はご都合によりご欠席との連絡をいただいております。また、高岡委員につきましては、10分ぐらい遅れてくるというようなご連絡もいただいていますので、始めさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 本日は、東アジア環境情報発伝所代表の廣瀬様と富士フイルムホールディングス株式会社コーポレートサポート部のCSRグループ担当課長をなさっておられます五所様に、ヒアリングでのご発表をお願いいたしております。よろしくお願いいたします。
 まず、お手元の配付資料の確認をさせていただきたいと思います。
 議事次第のところに資料の一覧がございますので、それに沿ってご確認をお願いしたいと思います。
 まず、資料の1でございますが、これは情報専門委員会の委員名簿でございます。資料の2といたしまして、最初に発表していただきます東アジア環境情報発伝所廣瀬様からの報告資料としてご提出いただいたものでございまして、「NGOと行政とのパートナーシップによる環境情報の収集、整備、提供と国際連携の展開」というタイトルのものでございます。それから、資料3といたしまして、次にご発表いただきます富士フイルムホールディングス株式会社五所様からの資料といたしまして「企業における外部評価の活用等による持続可能な社会の構築について」というのをご配付させていただいていると思います。もし足りないものがございましたらお教えいただきまして、事務局のほうからお届けにあがりたいと思いますが、いかがでしょうか。
 皆様のところに行っているようでございますので、それでは進めさせていただきます。
 まず、このヒアリングの趣旨を簡単に説明させていただきます。
 環境情報の収集や発信などを行っておりますさまざまな関係者の皆様へヒアリングを行いながら、特徴ある取り組みについてのご報告とご意見を伺い、今後の情報戦略を策定する、その参考としたいと思っております。
 そこで、ことしはこの4月4日にまず第1回のヒアリングを開催させていただいておりますが、そのときは「環境情報の収集・保存のあり方」をテーマといたしておりまして、本日は「環境情報についての各パートナーシップのもとでの取り組みの促進」というテーマで進めさせてまいりたいと思っております。
 次に、今日の進め方についてご説明をさせていただきます。
 まず、1番目の意見発表者でございます東アジア環境情報発伝所代表の廣瀬様から、「NGOと行政とのパートナーシップによる環境情報の収集、整備、提供と国際連携の展開」について、20分ほどのご報告をいただきました後、委員の皆様や事務局からの質問を10分程度想定しております。以降は同様の流れでございまして、2番目の意見発表者でございます富士フイルムホールディングスの五所様につきましても、「企業における外部評価の活用等による持続可能な社会の構築について」発表していただきまして、最後に50分程度皆様でご議論をいただければと思っております。
 それでは、議事に入ります前に、局の幹部の異動がございましたので、ご紹介させていただきます。
 まず、西尾局長が事務次官になられまして、その後に小林局長が就任しております。本日は11時ごろ参りますので、その際ごあいさつをさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 また、課長クラスにつきましても異動がございまして、ご紹介をさせていただきます。
 後藤総務課長の後任といたしまして、梶原総務課長が就任しております。

○梶原総務課長 梶原です。よろしくお願いします。

○細野企画調査室長 また、弥元環境計画課長の後任といたしまして、小川環境計画課長をご紹介させていただきます。

○小川環境計画課長 小川でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○細野企画調査室長 それでは、これ以降の進行につきましては浅野委員長にお願いいたしたいと存じます。では、委員長、よろしくお願いいたします。

○浅野委員長 それでは、早朝からお集まりいただきまして、ありがとうございました。
 今、細野室長からご説明がありましたように、今回第2回目のヒアリングということでございますが、私どもの専門委員会は、環境省としての環境情報戦略を取りまとめるための原案をつくるということがミッションでございまして、そのために作業を進めておりますけれども、その一環としてのヒアリングでございます。
 それでは、まず第1番目の発表者でいらっしゃいます東アジア環境情報発伝所代表廣瀬様から発表をお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。

○廣瀬東アジア環境情報発伝所代表 ただいまご紹介にあずかりました東アジア環境情報発伝所の廣瀬と申します。本日はこのような機会をいただきまして、まことにありがとうございました。
 団体名をごらんになっていただければおわかりになるかと思いますけれども、私どもの活動は、東アジアの環境情報を発信して伝えるという活動をメインにしておりまして、そういった中から、現在では水の汚染問題をどうやったら日中韓で協力して取り組めるかですとか、あと日本や韓国から大量の廃家電あるいは廃コンピューターが中国に渡って環境汚染を引き起こしているという問題についてなどの取り組みを進めております。
 本日は、私どもの活動の中心の1つとなっております日中韓の環境情報共有事業について、まずご報告をさせていただきたいと思います。
 そもそも、日中韓の環境情報共有事業を始めようと思った背景をご説明します。プロジェクトが始まったのは2001年からです。これは、私が初めて中国を訪れたのが2000年だったのですが、、その当時の中国の状況、特に市民の環境に関する活動の状況というものが、1990年ないしはそれ以前の日本の状況と限りなく似ていたということが一つのきっかけで、まずは東アジア全域にまたがるような酸性雨ですとか黄砂ないしは越境漂着ごみのような、この地域全体にまたがるような大きな問題と、あとそれぞれの地域、都市都市で大量のプラスチックを使ってごみが出てしまっているですとか、外来種による生物種の危険性が迫っているですとか、いろんな自然破壊が進んでいるというわけで、その地域地域の課題も似たような課題をそれぞれ抱えているなということで、これはいろいろな環境協力を相互の日中韓で進めることで何かできるのではないかというのがそもそもの背景の一つでした。
 特に、越境汚染型の問題は、どうしても被害国、加害国というような二項対立のような図式で語られることも多いですし、特に温暖化等をめぐっても、中国なんかは1人当たりの排出量は少ないんですけれども、国として見た場合は最大のCO排出国になっているというようなところで、いろんな国レベルの物事の見方だと、なかなか対立構造がどうしても生まれてしまって、議論が先に進まないんじゃないか。であれば、まず市民レベルから何か協力を進めるようなことができればというようなところで、まず環境協力が必要であろう。また、日本がこれまで経験してきたようなことというのも、これからの中国の市民の活動とかにもかなり有益な情報として伝えられるのでないかというところが一つ背景としてありました。
 また、2001年のプロジェクトを始めた当初は、なかなか日本語で中国や韓国の環境問題がどうなっているかですとか、環境NGOがどのような活動しているかという情報はほとんど得ることができませんでした。かくいう私も2000年に初めて中国を訪れるまで、共産党一党支配の中国で草の根の環境NGOが存在して頑張っているということを、恥ずかしながら知りませんでした。こうしたお隣の国でありながら、なかなか知らない部分が多いということで、まず環境情報がないということが問題意識としてありまして、これはやっぱりもうちょっと3カ国の情報をみんなで共有していくことが必要なのではないかということが一つのきっかけでした。
 また、中国でもその当時は、インターネットを草の根環境NGOでもそろそろ使えるようになっておりまして、インターネットが、高い国際電話ですとか郵便とか、そういったものを使わずに、瞬時に情報共有できる手段として使えるようになったということと、あと、一番肝心なところが、僕たちがおつき合いするようになった中国や韓国の草の根で頑張っている市民の人たちというのは、それほど英語は堪能ではなかったということが一つございました。私もそんなにというか、全然英語はだめだということもあって、常に通訳や翻訳ボランティアのお手を煩わせてはいたんですけれども、やはり英語ではなく、普通の方と情報を共有していくためには、それぞれの方がふだん使われている国の言葉を使って情報を発信・共有していくことが大事だろうということが背景になりまして、日中韓の環境情報共有事業というのを始めようということになったわけです。
 それで、いろいろリサーチを踏まえた結果、とりあえず日本語と中国語と韓国語の3言語で、3カ国の市民がどんな活動しているか、どんな問題に直面しているかという情報を発信するホームページをひとつつくろうではないかということになりました。そうした環境協力を進めるためのプラットホームになれればという思いから、2002年の秋からこちらにあります日中韓環境情報3言語サイト「ENVIROASIA」というものを開設いたしました。もうそろそろ6年目に突入いたしますが、現段階で毎週、原則一、二本の記事が各国から上がってくるというような協力活動というものをずっと続けてまいりました。
 この運営に関しては、特に日本語のサイトは、我々東アジア環境情報発伝所が担当するわけなんですけれども、韓国語の運営に関しては韓国環境運動連合というところが、そして中国に関しては中国のサイトの運営と中国からの情報発信については環境友好公益協会という、草の根環境NGOがそれぞれ担当してプロジェクトを動かしております。
 現在でも、この日中韓環境情報共有事業全体にかかわる予算というのを全くとっておりませんで、それぞれの国の団体がそれぞれの活動経費の中で情報の収集・発信ですとか、あとはボランティアの力をかりながら情報の翻訳というようなこともしております。
 日本の場合、主に社会人ですとか主婦とか学生の方が、中国語ができるんだけど、韓国語ができるんだけどというような方がボランティアとして応募してくださっていまして、今、大体、中国語から日本語が20名ぐらいの方が、韓国語から日本語で10名ぐらいの方がボランティアとして毎週翻訳作業をしてくださることで、この活動が成り立っております。
 発信する情報に関してなんですけれども、日本の場合、現在では日本語では、中国や韓国の大手のマスコミが日本語のサイトをつくって情報発信をしているものですから、特に余りマスコミには出てこないようなNGOの活動、草の根の活動というようなものを中心に今、発信をしていこうということを心がけてまいりました。
 発信する情報に関しましては、それぞれの国がもう大事だと思うこと、伝えたいと思うことを、それぞれの相手の国のことを考えながら発信していこうということで、それぞれ一任をしてございます。日本の場合に関しましては、月に1回、中国や韓国でこういう状況だからこんな情報が必要なのではないかとか、こういった新しい取り組みをぜひ伝えようということで、編集会議というものを設けて、情報を選定して伝える、あるいは記事を公開しております。また、それぞれ、一方的にこちらはこんなことを伝えたいというだけでも、やはり一歩通行になってしまうので、発信されて翻訳された記事をお互いに見ながら、もうちょっとこういう情報をくれないだとか、これに関してはもう少し知りたいですとか、これはいい情報だったよというようなこともお互いにフィードバックをしながら6年間活動を続けてまいりました。
 そうした約6年間、プロジェクトを始めようと思ってから8年目に入るわけですけれども、その中で感じたことというのを幾つかご報告させていただければと思います。
 一つは、やはり経済発展のずれから、その国の市民ないしは国にとって緊急な課題、深刻な環境問題というもやはり異なっております。特にもう日本では60年代、70年代、公害列島と言われた頃の四大公害含めて、大変な公害みたいなものは過去のものというふうに思われがちですけれども、そういったものが今現在、中国では起きていて、そういった情報がすごく必要とされています。あと経済発展がどんどん進むに従って、やはり余暇ができて、お金もできて、ゴルフをする人がふえてきたということで、日本ではもうバブル華やかなりしころがゴルフ場問題が全盛で、そうした活動されている方いっぱいいらっしゃったんですけれども、そういった今2005年以降、韓国とかでもゴルフ場問題がすごく深刻になっているというようなことも出てきております。
 また、この間、韓国で重油流出事故があったんですけれども、それで福井県で「ナホトカ号」の重油流出事故があったということを韓国の方が知っていたので、ぜひそういった情報を、使える情報が欲しいというようなことで要望とかもいただきます。しかしながら、インターネットが日本にも普及し始めた95年以降は、古い情報であってもいろいろ拾えるわけなんですけれども、そういったかつてのインターネットが普及される以前の情報というのがなかなか取りにくい。特に、中国や韓国が必要としている情報というのは、インターネットが普及する以前の日本での経験というものが多いんじゃないかなというのを感じております。そういった部分が、なかなかちょっと難しいかなというふうに思っているところです。
 あと、やはり手軽にいうことではコストが余りかからないということで、ITを使って、ホームページを開設するということでプロジェクトを進めきているわけですが、やはりホームページで情報発信するというのは、あくまでも取っかかりの1つでしかないかなというふうに思っておりして、やはり本当に情報なり経験というのをちゃんと相手が理解して、伝えようというためには、やはり顔と顔の見えるフェイス・トゥ・フェイスの関係性がすごく大事だなということを感じております。
 先ほど申し上げたように、日本で今、すごく焦点になっている課題というのは、これから恐らく韓国や中国でも課題になっていくだろうということでありますので、我々日本で活動している立場としては、「ENVIROASIA」で発信する情報というのは、いずれ中国や韓国でそうした情報が必要になったときに、そのサイトでこのホームページが検索で引っかかって、ああこういった団体が日本ではこういう活動していたんだ。じゃあ、もうちょっとそういった情報を知りたいということで、我々とかその団体に問い合わせが行く、そんな形で情報や経験の共有というものが進めばよいと考えております。ですから、あくまでもホームページの情報というのは、カタログみたいなものでしかないんじゃないかなというふうには思っております。なので、日中韓の顔と顔の見える関係もそうですけれども、日本の国内でも、例えば我々に依頼があったときに、ほかの団体をご紹介したりですとか、情報を持っていただくことは、各国においても顔と顔の見える協力関係にあるネットワークというのはすごく重要だなということを日々痛感しております。
 あと、やはり3言語でやる情報発信というのが大事だったなということはすごく思っております。恐らく英語でしか情報発信をしていなければ、多分これほどまでに長続きはしなかったんじゃないかなということと、あと、やはりすごく限られた方の参加しか得られなかったんじゃないかなということを感じております。
 毎年1回、関係者が集まった会議とかをしているんですけれども、そこでも基本的には英語は一切使うことなく、通訳の方を介してそれぞれの、私ならば日本語だけで話ができる、中国の方は中国語だけで話ができるという、言葉の壁をいかに低減するかというところに腐心をいたしまして活動しているわけなんですけれども、そういった英語だけの情報であれば余り見向きもされなかったかもしれないんですけれども、日本語ないしは中国語、韓国語で発信したことによって、その情報を見た方が「ENVIROASIA」を見て、こんな協力ができるんじゃないかというので今、環境協力の事例というのも二、三生まれてきておりますので、やはり3言語といいますか、ふだんそれぞれの方がお話しになっている言葉での情報の発信というものがすごく大事なんじゃないかなということを感じてまいりました。
 そういった活動の中から何かこう、余りおこがましいことは言えないんですけれども、感じたことも含めて、幾つかお話をさせていただければと思います。
 まず、我々、国際会議一つするにしても、やれ航空券代をどうするのかとか、いろいろ費用を工面するのに、いつも助成金を探したりとか大変なんです。今ホームページ等を拝見している限りでは、政府レベルで幾つかの環境関係の国際会議が開催されております。ただ、残念ながら国際会議は公用語が英語ということで、いろんな資料等も公開されてはいるんですけれども、英語の情報ばかりというのが現状です。もしそれが日本語であれば我々も、そしてまた韓国語、中国語になっていれば、中国や韓国の市民の人たちもそういったものを活用して、いろんな環境対策とか政策とかを考えるための素材になるかもしれません。せっかく多くの国際会議でいろんな貴重な情報が出ていることを考えれば、そういったものもぜひ多言語化していただくということで、環境協力がより進むのではないかというふうには一つ感じております。
 次に、やはり政府レベルの国際会議とかを傍聴とかさせていただきますけれども、やはり失敗例とか、こんなふうに困っているという話はなかなか出てきません。どうしてもやはりこんなふうにうまくいっているとか、成功例が多くご報告されるのが常かと思います。それは市民の国際会議でもそうかもしれないんですけれども、やはり、ただ、それは同じくNGOから見れば全然また違う物の見方をされているということあるかと思います。
 特に、ごみ問題でいろいろ情報とかをやりとりする関係があって、韓国がすごく日本よりも先に行くような、食料、生ごみのリサイクルをするような法律をつくったりですとか、いろんな取り組みをされています。それだけ聞くと、ああすごいなというふうに思うんですけれども、いざ韓国の一緒に活動しているようなメンバーに聞くと、そんなに政府が言っているほどうまくいってないよとか、こんな問題たくさんあるよというようなことも幾つか聞きますので、やはり政府レベルで情報の共有というところも含めて、ぜひ相手国とかのNGOとか草の根グループとの意見交換の場を設けることで、もうちょっと多角的ないろんな情報というものが入ってくるのではないかなということを思いました。
 あと、3番目に、負の環境情報収集へのNGOの支援ということです。特にこれは中国とおつき合いしているというところからなんですが、中国で環境汚染がこんなにも起きているという情報を得るのはなかなか難しい状況です。特に政府レベルでも、黄砂のモニタリングに関しても、いったんは中国政府が黄砂に関する情報は国家機密でやっているからということで情報を出し渋ったりという、二転三転あったというふうに聞いておりますけれども、なかなか、本来どちらが悪いとかではなくて、一緒の立場で協力をして問題を解決しようというところに立つときにもかかわらず、情報の出し渋りみたいなのが起きています。
 やはり、中国はお国柄もあるのかもしれませんが、、そういった中でも頑張って活動している草の根グループたくさんおりますので、東アジア全体の環境問題を解決するという意味においては、こうした地道な活動しているような団体と協力して情報の収集というのも、一つ考えられるのではないかなというふうに思いました。
 あと、既存のホームページの活用ということです。特に「環境らしんばん」ですとか、いろんなホームページは環境省でつくられているかと思いますが、、そこは特にNGOのいろんなイベント情報はすごく並んでいるんですけれども、その後ですね、そのイベントでどんな議論が行われたですとか、どんな情報が飛び交ったかという部分の報告という部分が余り見受けられません。それを義務化してしまうとなかなか利用者が減ってしまうでしょうから、難しいかもしれませんけれども、ぜひそういった、こんなイベントだったよとか、こんな会議だったよというような、ただお知らせ版の掲示板として使われるだけではなくて、その後の情報を収集できるような仕組みというのも、ひとつ既存のホームページを活用してできれば、新しい情報収集が開けるのではないかなと思いました。
 次に、情報の発信と提供という部分に関してです。ちょっと中国と韓国と日本の環境部、環境省のホームページを拝見したのですが、中国の環境部は繁体字、いわゆる台湾とかで使われている文字と、普通に使われている中国の文字と、あと英語の2言語で情報発信がされております。韓国の場合は英語と、あと携帯用のサイトと、あとマイページという、環境部のホームページを自分でIDをとってデザインできるような部分があるんですけれども、いずれにしても2言語での情報発信しかされておりません。
 一方、日本の環境省は、ただいま英語、フランス語、韓国語、中国語と、日本語を合わせれば5言語での情報が発信をされています。やはりNGOや市民にとってみれば、まず一次的に今、環境情報はどうなっているんだというときには、それぞれの国の政府のホームページが一番有益な情報源だろうと思いますので、そこの部分の多言語化というのも一つ大事ではないかなというふうに思っております。
 ただ、日本の環境省のホームページも5言語にはなってはいるんですけれども、それぞれの情報がどれぐらい発信されているのか。まず国際環境協力に関する中国語の該当情報を見てみますと、今こちらでお示しさせていただいているような形で、3行か4行程度で、あとリンク先は英文であったり、日本語文であったりという部分で、全くないよりはいいと思うんですけれども、これで十分かというと、まだまだ不十分な部分が多いのではないかなと思います。
 また、環境基準のページ等も、日本ではこんな環境基準を設けていますというのもつくられてはいるんですけれども、それが日本語で、こういう環境基準がつくられているという部分の説明は中国語や韓国語でもあるんですけれども、その基準値そのものの一覧表みたいなものが英語と日本語しかありません。もうちょっとやっぱりそういった基礎的な情報というのを積極的に多言語にしていただけると、それぞれの環境協力ないしはほかの国の市民との連携という部分でも有益だろうと思いました。
 また、日中韓の環境大臣会合というものが2001年ぐらいから毎年定期的に開催されています。そのホームページも、やはり公用語、いつも会議で使われている言葉が英語だからということなんでしょうが、英語でしかホームページがない。やはり、いずれの日本も中国も韓国も、それぞれ英語を公用語としているわけではありませんし、また、基本的な単語、用語は漢字の言葉を使って環境のことを語られている部分が多いと思いますので、そういった部分では、ぜひ日本語、中国語、韓国語でこういった情報発信もしていただけるとありがたいと思っております。
 また、過去情報の蓄積と多言語化という、これは先ほどちょっと冒頭で申し上げた部分と重なるんですけれども、今、中国では工業関係の排水等の関係で地下水ないしは河川が汚染されて、このように川が黒くなったりして、その地下水ないしは河川の水を利用したことによるがんにかかった方がふえる、「がん村」というものが幾つかあちこちに出てきているというような状況も、ようやく明るみに出てくるようになりました。そういった部分では、かつての新潟水俣病みたいな、60年代、70年代の日本の情報、経験というのはすごく伝えるのが非常に大事じゃないかなというふうに思っております。
 確かに中国の現場の人も、かつての水俣と同じように、目の前で水の色がすごく濁っている、異臭がする、病気にかかる人がいる、亡くなっている方がいる、何かがおかしい。でも、どうしてなのかわからないという部分で、手探りで状況を解明しなければいけないという部分は、すごく日本と経験として似通っている部分があるかと思いますので、そういった手法も含めて、日本のかつてのいろんな方、被害に遭われた方の苦しみの上に成り立っている部分かと思いますので、そういった部分をぜひ蓄積して、どんどん多言語で発信していくということがすごく大事になってくるのではないかなというふうに感じております。
 それから、これも先ほどと同じように、ゴルフ場や原油流出事故というのは、日本の経験が求められているところでもあるということです。
 あと、先ほど申し上げたように、やはりホームページ、ITでの情報発信・共有はなかなか限られているということで、関係者は毎年集まっておりますし、2年に1回、東アジア環境市民会議というものを開催して、より多くの方に顔と顔の見える関係づくりをということで国際会議を開催しておりますが、こういった海外の市民に向けてのフォーラムというのもある。NGOだけではなく、また、行政とNGOがパートナーシップを結び、ないしはまた企業の方も一緒になって、環境対策にこんなふうに取り組みができるよという部分のフォーラムみたいなものを積極的に開催されるということで、意義があるのではないかなというふうに思っております。
 ちょうど今年が、また日本が東アジア環境市民会議を開催する年になっておりまして、ことしは、新潟県や新潟市のご協力を得ながら、新潟水俣病の経験というものを、特に中国の市民に発信するということ、共有するということをやっていく予定です。
 あと、特にテレビの場合に、こういった状況が顕著かもしれないんですけれども、とかくやっぱりマスコミ報道ではわかりやすさというものが求められます。そのため越境型の汚染の場合は、やれ中国ないしは韓国が加害国であって日本が被害国だといった、単純な図式で報道されることが多くて、越境漂着ごみも随分環境省の方とかもご尽力されて、いかに対立抗争ではなく、協働の協力体制を築けるかというところで腐心されているかと思うんですけれども、そういったことを含めて、NGOも同様にまた二項対立ではなくて、どうやったらお互いに解決できるかという知恵を絞ろうということで頑張っておりますので、そういった政府ないしはNGOがメディアに対して、こういった単純なものじゃないんだよ、こういったふうにその情報というのを伝えてほしいということが、一緒に協働の事業としてできたらどうかなということをちょっと感じました。
 特に、最近はブログというのを、いろんな方がマスコミ報道を引っ張ってきて、自分の論評を加えられたりとかすることが多いと思いますので、やはりマスコミで発信される情報というのはすごく、いろんな意味で社会にインパクトもあり影響力もあるかと思いますので、そういったところも、政府、政府セクターと、NGO市民セクターが協働できる余地があるのではないかなというふうに感じました。
 あとは、やっぱりインターネットをどうしても使うことが多くなるかと思います。やはりインターネットの特性というのは、リンクで瞬時にどんなところへも飛んでいけるですとか、あとはRSSというようなもので、新しい技術を使えばいろんな情報が引っ張ってこられるという部分がありますので、そういった部分も、やはりインターネットならではの特性を活かした情報の発信・収集・提供も含めたということができるのではないかなというふうに思いました。
 ちょっと長くなってしまいましたけれども、一応これで報告を終わらせていただきます。ありがとうございました。

○浅野委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、ご意見の交換は後で少し時間をとりたいと思いますので、とりあえずただいまの廣瀬さんのお話に対するご質問があれば、ご質問を伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。
 はい、どうぞ。

○多田委員 JFSの多田です。
 僕らも、これと同じではないんですけれども、ある面似たことをやっているものですから、非常に共感とか関心を持って聞かせていただきました。
 こういうのって、やり始めるときってすごく盛り上がるんですよね。はからずも、僕らも2002年にスタートして、ちょうど生き延びてきたんですけれども、かなりこれ経営資源も少ない中で、3カ国で回していますよね。それこそ、この活動がサステナブルに続いてきたその理由というんですか、その辺を少しかいま見たいなと思ったのと。
 それから、これはターゲットのステークホルダーは、どっちかというと一般の市民とか、あるいは僕らのサイトなんかでよく活用されるのは、マスコミの方なんかが情報のちょっと裏を取るるのに使うなんていうケースが結構多いんですけれども、そちら様でやっているこのウェブの検索したりとか利用する人の属性というんですか、世代とかそういうのも含めて、どのぐらい押さえられているかわからないんですけれども、その辺をちょっと少し基礎情報として伺いたいなと思ったものですから。

○浅野委員長 どうぞ。

○廣瀬東アジア環境情報発伝所代表 ご質問ありがとうございました。
 まず、最初のご質問なんですけれども、本当に僕たちも始めるときは確かに盛り上がって、やろうということになりました。最初の3年間は地球環境基金のご支援いただいて、多少のお金はあったんですけれども、それ以降ぱたっと途絶えてしまいました。お金の切れ目が縁の切れ目になるんじゃないかという心配もすごくありました。ただ、最初は、日本がどちらかというと働きかけて、こういうのをやろうよという部分もあったんですけれども、やっていく中で、中国・韓国の方も、いや、これはすごく日本の情報とか、中国がどうなっているかというのは大事だと、特に越境型の問題が広がっているということで、こういった情報の共有がまず大事だという部分の認識が、やっている関係者に広がったということがまず一つ大きいかなと思います。
 あともう一つ、やはり毎年1回、最低会うようにしてきたんですけれども、お互いこう、よく会社ですとか政府関係の方ですと、部署が変わられたりということがあって、往々にして人と人の個人的な関係では切れてしまうことが多いかもしれないんですけれども、それぞれNGOは市民でやっているということもあって、ずっと変わらず同じ方が一緒につき合いをしてきた。ちょっとした家族みたいな感じの集まりになってきているというのも一つ大きいかなと思います。
 最初は、それこそ日本、やれ中国、韓国というふうに、ある種市民レベルで、国を代表するというわけではないんですけれども、何しろ、やっぱり何となく日本から来ているやつは日本を代表しているような感じで、それぞれ受け取られがちだったんですけれども、8年も続いてまいりますと、特にやれ日本だとか、中国だ、韓国だという、そんなに国レベルでの発想よりも、東アジアという地域で、同じ地域に暮らしている市民という、アイデンティティーというほどには強固なものではありませんが、そういった部分の共有意識みたいなものが醸成されてきたという部分が、活動的には続いてきたのかなと思います。
 あと、酒の力といいますか、会うたびにそういった盛り上がりの、仲よくなる、友情という部分をはぐくんできたというのも大きいのかもしれません。
 あと、2つ目のご質問なんですけれども、我々がホームページを置いているサイトは、それこそお金の部分で制約があるものですから、それほど完全な解析ができるまではちょっとできておりませんで、余りどういった属性の方が見られているかというのは、正直わかりません。ただ、基本的には僕たちとしての情報発信の相手としては市民ないしは、特に環境NGOみたいに活動されている、ないしはボランティアされているような方を主な対象として情報を発信するように心がけてきております。
 あと、最近では、マスコミの方から、ちょっとホームページを見たんですけれども、これこれどうなっていますかとか、ここの団体を紹介してください。特に、中国の環境、北京オリンピックがあるとか、中国の環境問題がひどくなってきているということもあるのかと思いますが、マスコミの方からも問い合わせも多いので、そういった方もご利用していただいているんじゃないかなと思っています。

○浅野委員長 ありがとうございました。
 ほかにご質問ございませんか。
 国内からの、日本からの発信の情報が、さっきのお話ですと、余りマスコミに載っているようなものは重視しないというか、それを中心にしないで、載らないようなものというふうにおっしゃったわけですが、そうすると、その情報源というのはどんな形で確保しておられるんでしょうか。

○廣瀬東アジア環境情報発伝所代表 ありがとうございます。
 他のいろいろなNGOもそうだと思いますが、いろんな形で、メールマガジンですとか、あといろんな、なかなか一つの、日本の場合は環境NGO自体が1個1個はそんなに大きくないものですから、そういったいろんなNGO同士が共通のテーマでメーリングリストとかをつくられて、いろんな情報が飛び交っているので、やはりそういったインターネット上を飛び交っているような情報を中心に集めるような形になっております。
 あと、ようやく本当ここ二、三年なんですけれども、こういった情報サイトがあって、ぜひ中国とか韓国にうちの情報を発信したいという団体の方からの投稿もいただくようになりました。

○浅野委員長 ほかにいらっしゃいませんか。よろしいでしょうかね。
 事務局のほうから、何かご質問ありませんか。
 それでは、どうも、後でまた一緒にお話し合いをしたいと思います。どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、富士フイルムホールディングス株式会社コーポレートサポート部の五所様にお願いいたします。

○五所富士フイルムホールディングス株式会社CSR担当課長 ご紹介いただきました富士フイルムホールディングス、コーポレートサポート部CSRの五所と申します。よろしくお願いいたします。
 本日、簡単に3つのセクションに分けてお話をさせていただきます。簡単に企業概要とCSRの考え方、状況というところをご説明しまして、それから何を参考にして情報を集めているかというところと、それによって環境情報を集め、どの様に活用していっているかという事例を少し紹介させていただきます。3番目に、持続可能な社会の構築に向けた事例を少しご紹介したいと思います。
 それから、お手元には、昨年の8月に発行いたしましたサステナビリティレポートを添えてあります。それでは、発表させていただきます。
 企業概要ですが、設立が1934年でございます。それから、売り上げは2兆8,000億円を超えております。営業利益のほうも2,000億円を超えております。連結の従業員数は、7万8,000人を超えております。当社は、26カ国で事業を展開しておりまして、227社が連結対象となっております。
 次にどの様なエリアで事業を展開しているかと、構成比ですが、26カ国を4つに分けまして、日本が44%、アメリカが20%、欧州が16%、中国も含めたアジアとオセアニアでは20%を超えております。
 3つの事業セグメントで13事業を展開しております。イメージング・ソリューションというのがデジタルカメラ、カラーフィルム、それから現像などプリントのカラーペーパーなどの製造などをしております。それから、インフォメーション・ソリューションでは、印刷事業や、メディカルシステム、これは乳がんの検査に有効なマンモグラフィーや内視鏡の製造・販売をしています。また最近はサプリメントや化粧品、記録メディアや液晶テレビに使われるようなカラーフィルムとディスプレー用のパネルフィルムも製造しております。42%の売り上げを占めるドキュメント・ソリューションは富士ゼロックスが担当しているオフィス用の複写機・複合機、プリンターなどの製造と販売です。
 このように、多岐にわたる事業を26カ国で展開していることや、富士フイルムホールディングスが2006年10月に持ち株会社に移行したことを踏まえて、次のページにありますが、企業理念、ビジョン、企業行動憲章、企業行動規範を改定いたしました。さらに、CSRの考え方というのをグループの中で統一し展開していくために、昨年の7月にグループ共通の「CSRの考え方」を3つの視点で明確にしました。
 次に、CSRの推進体制ですが、今、私がおります富士フイルムホールディングスというのは、事業を行っているというよりはどちらかというとスタッフ部門であり、2つの大きな事業会社(富士フイルム、富士ゼロックス)のCSR活動を支える役割です。
 本日は、富士フイルムホールディングスが二大事業会社を含めたグループ全体の情報を集めて、社外に情報を発信する立場、それから社内に統制をとっていく立場で、発表させていただきます。
 昨年の7月にグループ全体で、このように中期のCSRの課題を整理いたしました。大きく5つの領域に分けております。中長期的に取り組む課題を明確に、現在は各二大事業会社及びグループ会社各社にCSR活動の推進をお願いしているという段階です。
 中期のCSR課題をどのように整理したかというところでは、「何を参考にしてCSR情報を収集しているか」という質問になると思います。
 まず、大変重要なのは、やはり行政や参加団体への報告項目です。これはベースになるものです。
 それからお手元にあります当社のCSRレポートをつくる際にガイドライン(環境省、GRIガイドライン)の報告項目も参考にしております。
 当社は株式市場に出ておりますので、SRIファンドの評価項目ですとか、各種シンクタンクが要請してくるようなCSRのアンケートというものも重要視して、こういう項目も参考にしています。
 また、私どもは「ステークホルダー・ダイアログ」を2004年から毎年開いておりまして、直接ステークホルダーの方からご意見を伺って、どういうことが必要なのか、どういうものを当社は取り組むべきかというところにステークホルダーのご意見を入れるようなスキームを持っておりますので、ダイアログでのご意見も参考にして情報を集めています。
 では、「環境情報をどのように集めてきたか」という点では、少し段階的にご説明させていただきます。
 まず、段階的に環境情報の収集のバウンダリや項目をバージョンアップしてきました。1990年から1995年の間では、富士フイルム、国内の単体のみで情報収集しました。これは、環境法規制の項目です。エネルギーの使用量、SOx・NOxの排出量などのいわゆる法規制にかかわるような情報を主に集めておりました。
 1995年にレスポンシブル・ケア協議会に加入したことで、環境法規制以外のところも少し拡充して集めるようになりました。それの整備をしましたのが1996年からです。このとき富士フイルムと関係会社、これは連結の海外も含めて情報を収集するようにいたしました。ここで重点実施事項の項目という形で法規制以外の項目も管理をしていくこと、集めた情報を戦略的にどこに投資して環境負荷削減につなげていくかに使用するために、エクセルファイルで情報を集めるようにいたしました。
 2004年からは、富士フイルムグループとして、関係会社である富士ゼロックスも含めて情報を集めることに加え、エクセルファイルでは情報を分析しそれから活用しながら、現場に有用な情報を返す際に非常に手間がかかるため、インターネットを介して情報収集し現場に情報を戻していくようなシステムを導入いたしました。これによって、富士フイルムのグループ全体、これ海外、国内合わせて、連結も含めて、ほぼ完璧な状況で環境情報に関しては集めることができるようになりました。
 先ほどの重点実施事項というものは何かといいますと、富士フイルムグループの環境方針(グリーン・ポリシー)で設定された項目です。CSRレポートの67ページ、68ページをごらんください。
 先のシステムは、これらの管理すべき項目についての環境情報を、インターネットを介して収集するシステムのことです。
 これのシステムよって、データを一元管理する一方で、皆さんが今ごらんになっているCSRレポート、国や自治体などの行政に報告するデータの収集ツールとして活用しています。また、それから集めた情報を、単年度だけでは評価できませんので、経年評価するなど分析ツールとしても活用しています。
 これらの情報は、環境担当者、それから一部の社員や経営層なども見ることができるようなツールになっています。それを製品の開発や工場の管理に生かしています。最近では排出権の問題ができてきていますので、情報を正確に集めて、対外的に恥ずかしくないように開示できるような情報収集をしております。
 重点実施事項の項目では、エネルギーや化学物質の使用量大気汚染・水質汚濁物質の排出量、廃棄物の発生量、土壌汚染などストック汚染の状況などの情報も管理をしております。
 では、「収集した環境情報やパフォーマンスデータをどのように活用しているのか」としては、4点あります。1点目に、「環境効率」があります。環境効率は、環境負荷の値を分母に置きまして、売り上げを分子に置き、売上高分の環境負荷の値という形で出しております。これは2004年から集めていて、このレポートでは2006年度までのデータを掲載しています。目標値を2010年に置きまして、「グループ全体で環境効率を上げていきましょう」ということをグループ全体に伝えています。
 2点目は、「マテリアル・フロー」です。2007年度の新しいデータが資料にあります。企業は、どうしても直接管理している環境負荷(製造時)のところを重視する傾向があります。当社は製品を生産する際に、原材料を調達してこなくてはいけませんし、お客様に製品を届けるときにも物流時や製品使用時それから廃棄時に環境負荷がかかりますので、これらの環境負荷も把握して、事業の中をきちっと整理しながらパフォーマンスを上げていきたいという思いもあり、こういったマテリアル・フローで環境負荷の全体像を見ることが非常に重要だと思っております。図のピンク色の部分は、当社グループが直接的に管理する領域です。この情報は先に説明した情報収集システムで集めています、それ以外の白い部分については、LCAの情報や製品の基礎データを使いながら算定をしております。
 次に、各ライフステージでどれだけ環境負荷をかけているかというのをグループ全体で見ることが非常に重要ということで、これは今年トライをしてみた、3点目の「環境負荷のLCA分析」です。8月に発行されるCSRレポートにはこの情報を載せております。調達のところをご覧ください。私たちが工場で製品をつくる前の原材料の調達時にどれだけ環境負荷がかかっているかというところを見ることもできます。私たちの環境負荷というのは、このLCA分析では資源調達のところが非常に環境負荷が高いことがわかりました。後程、資材調達時の環境負荷削減の事例を紹介させていただきますが、この様に分析することによって、どこの環境負荷を減らせばいいかというような視点、ただ工場の環境負荷を減らすだけではなくて、自社の展開している事業の中で、ライフステージのどの部分を減らすのが一番有効なのかを見極めるために、LCAの情報をうまく活用させていただいております。
 最後に4点目ですが、「環境会計」です。環境会計は、事業の環境負荷量や環境保全効果をお金ではかることができるツールとして、環境省のガイドラインに沿って分析をさせていただいております。
 以上のように、環境情報を収集して、かつ有効に活用するということを社内でしておりますし、それをなるべく社外のステークホルダーの皆様にお知らせする意味で、こういうレポートという媒体を利用させていただいています。しかし、一企業できることは非常に限られています。環境情報を活用するという点に関して、「政府に期待すること」を次のページにまとめました。
 まず、「バウンダリの設定」です。今、私たちはグローバルに事業を展開し、ほぼグループ全体の環境情報を集めています。例えば、国内だけで事業を展開している企業とグローバルに事業を展開している企業では、その設定の仕方、評価の仕方が変わると思います。また、財務上重要な会社であったとしても、環境上の重要な会社というのはまた違っています。連結対象でなくても、環境負荷が高い工場や会社を含めるべきかとか、含める場合は何のパフォーマンスだけ収集すればいいのか。例えば、エネルギーや廃棄物は必ず収集するべきか否かや、全ての環境項目を収集するべきかなど、企業によってそのバウンダリの設定は、不明確ためです。M&Aによって企業の規模は変動しますし、常に同じものを50年も製造しているわけではないため工場のラインも中短期のスパンで変わってしまったり、製品種類自体もが変わってしまうため、環境負荷も変化します。この様に事業構造が大きく変わるときに、どうやってバウンダリを設定して、環境情報をきちんと収集把握していくのかというところは、もう少し政府の主導が要ると思います。
「業種別の比較・可能性」の点では、大きくサービス業と製造業では環境負荷が違います。また、製造業の中でも、プラントで製品を製造する製造業と、アッセンブルを中心にした製造業ではまったく環境負荷が違いますので、そういう製造業の違いをどの様に扱っていくのか。さらに、当社のように13も事業があり、アッセンブルもあれば、プラントで製品を製造する事業もあります。こういう複数事業を持つ企業では、一企業としてデータが開示されてしまうので、単一の製造業を営む企業と比較をすることが非常に難しいなど、どうやって開示した情報を誤解が無いよう第三者に見てもらうのかというところが政府に求められると思います。
 「経年変化」ですが、単年度のパフォーマンスの比較だけでは、企業の努力はなかなか伝わりません。そういうときに、1年だけの情報を見るのではなくて、過去3年や過去10年の情報も第三者に見ていただいて、企業の環境負荷削減などの努力を理解してもらい、評価をしていただく上で大切だと思っています。
 それから、「国際的な視野と国内の視点の違い」が、先ほど廣瀬さんからもご説明があったように、かなり視点が違います。収集するもの、開示するものの項目というのの重要性が国によって違っています。こういうところをどう見せていくか、特に海外に発信するときどう見せていくかというところを、政府にもう少しいろいろ議論していただけるといいと思います。
 環境省が出されている報告ガイドラインに少し項目が出ておりますが、「社会性の情報」も、事業内容やビジネスを展開している国などでその重要性が異なるというところがあります。一般に企業が開示する情報の中で、環境情報に関しては正確性などきちんとしたデータを求められる傾向がある一方で、社会性の情報に関しては定性情報も含め開示していく傾向もあります。今後は、何をまとめて開示したらいいかというところが非常に課題になってくると思います。ポイントを押さえた、こういう業種であればこういう情報を開示しなさい、こういうバウンダリ(範囲)までは情報を出すべきでしょうといった詳細な指針があると、これから環境や社会性の情報を収集し始めようとする会社にとって参考になると思います。
 次に、「どのような視点で、持続可能な社会に貢献したいか」についてです。当社の設定は4つです。まず、「環境法規制の遵守」これは最低限のことです。法令遵守のために、もっとより厳しく自主基準を設定しています。
 2つ目に、当社は主に製造業のため「技術の革新」を掲げ、時代の潮流やトレンド、未来の方向性等を踏まえ社会に貢献したいと思っております。
 3つ目に、「ライフサイクル全体で環境負荷を低減」することです。これは、自社だけの環境負荷を低減させるだけではだめで、上流・下流の環境負荷も低減させるという、企業としての使命をきちっと果たしていきたいためです。
 最後に「地域との共生」です。これは、環境保全や環境保護だけではだめで、ローカルエリアから資材や原材料を調達することや、工場を建設した際に雇用を創出するといったこともしていきたいと思っております。
 では、当社の「持続可能な社会に貢献した」事例を3点、次のページから提示をさせていただきます。
 この事例は、皆さんがお読みになる新聞紙や雑誌、この様なCSRレポートも該当しますが、印刷物を刷る際にCTP版というものが必要です。それに関わる製品システムを、技術開発によって努力した結果、持続可能な社会に貢献するという取り組みです。
 私たちは、そのCTP版の世界シェアが35%ぐらいを持っている企業です。製版をするときに、いろいろな版がたくさん要るのですが、図(右側のピンク色部分)で見ていただくように、リスフィルムなどのブルーの部分をなくしました。これによって、下から1番目のように、従来の印刷システムと比較して約37%の環境負荷にすることができました。この環境負荷削減は企業の努力だけではできないため、新聞社や印刷会社に理解していただきながら、当社の開発した技術による努力によって達成することができた事例です。
 2番目の事例ですが、先ほどのCTP版は非常に多くアルミを使います。CTP版に使うアルミというのは高純度、99.5%の純度を持ったアルミでないと、クオリティの高い製版ができません。これまでは、廃材となったアルミ版を、ジュースのアルミ缶などにリサイクルされていました。純度99.5%のアルミは、精錬にエネルギー負荷か高いボーキサイトからしか得られませんでしたが、またアルミ版として利用するのであれば、せめて工場から出る純度の高い廃アルミの部分をまたPS版用に戻せないかということで、「他社とコラボレーション」して、実現した事例です。アルミの合金メーカーとアルミの圧延メーカーの協力なくして、このクローズトループ・リサイクルは実現できませんでした。
 最後の事例は、富士ゼロックスの国際資源循環システムの事例です。富士ゼロックスでは、1995年から日本のエリアで、複写機・複合機のリサイクル、リユースというものをしてきました。それを手本に、ここに挙げているのタイの事例です。韓国、フィリピン、マレーシア、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランド、インドネシア、香港、タイと9カ国分のお客様のご使用が終わった複写機・複合機を収集して、リサイクルするものです。これは、タイ政府と富士ゼロックスが仕組みを構築し、2004年から実施しています。オーストラリアで排出された廃棄物を輸出することや、タイ政府の他国から出てきた廃棄物受入れることなどバーゼル条約や各国の法で規制があり、当初障壁となっていましたが、タイ政府の協力を得て法律を変更いただくなど、9カ国分のリサイクルをタイで集約することを可能にしました。なお、2008年1月からは、中国全土でもこのシステムを導入し、事業エリアすべてを網羅でき、「地域との共生や政府との連携」という形で循環システムが構築できました。
 当社のこれらの事例を踏まえて、政府にぜひ期待することは3つあります。まず「橋渡し役」です。先ほど廣瀬さんもおっしゃったように、企業には、ローカル企業、グローバル企業いろいろあると思います。それから静脈産業、地方の行政、海外の政府、国連の組織、NPO、NGOなどとのコラボレーションに向けて、政府には、情報の提供や交渉の礎になっていただけたらすごくありがたいと思っています。一企業で情報を集めるというのは難しいのですが、様々な組織が様々な情報を持ち寄ればと選択肢も広がると思います。今までできなかったこともできるようになるかと思っています。
 それから、「事例の提示」。すぐれた事例(環境配慮製品、環境技術、企業のコラボして生まれたようなすばらしい事例)というのは、やはりウェブで、国内だけではなく海外にも発信をしていただきたいと思っています。企業もCSRレポートをつくっていますので、事例を結構まとめるという力はありますが、そういう媒体を政府につくっていただけたら非常にいいと思います。
 最後に、「インセンティブの付与」という形で、人件費の安いところ、それから法律の緩い海外にどうしても工場が移転してしまう傾向があると思います。海外移転だけでは、やはり地球全体の環境負荷は低減できないと思っておりますので、国内で生産している工場に対して、やはりもう少しインセンティブを与えていただけるようなことがあると、日本の中の雇用創出にもなりますし、日本の技術とか日本の培ってきたものというのも守られるのではないかなと思っています。当社からは以上でございます。

○浅野委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、ここでご質問を承りたいんですが、今、小林局長がお着きになりましたので、ちょっとごあいさつを先にお願いいたします。

○小林総合環境政策局長 遅参をいたしまして、大変申しわけございません。22日付で環境省総合環境政策局長に環境省大臣官房長から異動してまいりました。
 総合環境政策局は、私自身は環境省の中で一番長く過ごした場所でございますので、古巣に戻ってきたということではございます。総合環境政策局では、経済社会のいろんなステークホルダーの方々が環境保全に取り組むということ、それらの取組が成功するように力を出しやすいようにするというような土俵づくりとか基盤づくりとかルールづくりとか、例えば一例を挙げますと環境税などがありますけれども、そういったようなことを担当しております。
 そういう意味で、この会合もそうですけれども、どんどんそういった新しい枠組みが進化していけばいいなというふうに思っております。個人的には、環境配慮契約法とか、環境レポート法と私は勝手に言っておりますが、中には環境経営促進法とか言う方もいらっしゃると思いますけれども、あるいは環境活動法とか環境教育法とかありますが、そういったものに一々タッチをさせていただいておりますけれども、先ほどの富士フイルムさんのお話も大変おもしろいお話で、やはりそういった情報をうまく活用して、さらにみんなが力を合わせて環境保全が進むような仕組みというものを、例えば環境レポート法もそうですし、考えていかなければいけないなというふうに思った次第でございます。
 遅参いたしまして申しわけございませんけれども、ぜひこの環境情報専門委員会が成果をおさめますように、引き続きご協力、そしてご尽力賜りたいと思っております。簡単な粗辞でございますけれども、よろしくお願いいたします。

○浅野委員長 どうも、小林局長、ありがとうございました。
 それでは、ただいまの五所さんからのご報告いただきましたことについて、まずご質問がありましたらご質問を承りたいと思いますが、いかがでしょうか。
 亀屋委員、どうぞ。

○亀屋委員 大変興味深いお話を聞かせていただきまして、ありがとうございました。
 最初のほうの政府に対する期待のところに書いてあることなんですけれども、バウンダリの設定ということで要望が出されておりまして、ただ、その次のシートにはライフサイクル全体での環境負荷低減ということで、ライフサイクル全体になるとバウンダリというのが逆になくなるのかなという感じもするんですけれども、政府のほうでバウンダリを設定していただいたと仮にしたときに、環境情報としてどういうような活用上のメリットといいますか、そういったものが期待されというふうにお考えなのか、その辺少しお聞かせ願えればと思うんですが、いかがでしょうか。

○浅野委員長 では、ご質問の趣旨はおわかりでしょうか。

○五所富士フイルムホールディングス株式会社CSR担当課長 まず、バウンダリの設定ですが、私たちも、先ほど15年ぐらいかけて情報を集める整備がやっとできました。多分、情報を集めるということに関しては結構先進的な企業に分類されると思いますので、これから情報を集める企業にも配慮する形でお話をさせていただきます。まずバウンダリの設定は、まず単体、次にグループ会社の情報を集める段階的な対応を考えていただけたほうがいいと思います。
 ほとんどの企業は情報をどうやって集めたらいいか、どういう項目を集めたらいいかや、せめて連結対象だけでも集めるべきかというようなところの議論をまずしなくてはいけないと思います。まだこれから環境情報を集めようとされる企業に焦点を合わせて、まずバウンダリを設定していただくことが重要だと思います。
 次に、ライフサイクル全体のところは、当社の事例で言うと過程のところで、LCAの分析ツールを使って、製品から出るCO、廃棄物時に発生するCO、さらに調達時のCOを算定しています。1社1社が自社の環境情報を収集すれば、LCA情報を使用しなくても正確な情報が集まります。そういった情報を集約して見られるハブがあれば、より自社の環境負荷の全体像を正確つかむことができ、かつ、情報活用上のメリットにつながるのではないかなと思っていますので、まずは1社1社が自社の環境負荷情報を収集することだと思います。

○浅野委員長 よろしいですか、亀屋さん。

○亀屋委員 はい。

○浅野委員長 要するに、私の理解するところでは、まず事業者として情報を集めるという場合に、一体どこまでの情報を集めておけば、その事業者としての責任を果たしたことになるのかということが、やっぱりある意味ではスタンダード化されていないと、ああだこうだという議論になってしまうのでまずいんじゃないかというのがまず前半のお話だったと思うんですね。後半は、どっちかというと、もっとその情報を深掘りして利用するときの利用の仕方として、各事業者が自社の製品についてLCA的な分析をしていると。それを全部足し算したら全体がわかるというようなことは決してねらっていないわけで、1事業者としてのパフォーマンスを考えるときに、そこまで情報ネットワークを広げておいて、自社はどこで努力をすることが最も社会的に効果的に役割を果たし得るかということを考えるんだというお話だと、こう思ったんですね。
 これは、今の経団連自主行動計画的な発想だと、そうなってなくて、自分のところの企業、あるいは自分のところの業種がどうなっているかということだけ言えば、それで済んでしまうものだから、時々ぎくしゃくしてきて、それで、いいの悪いのという議論がそこだけで収斂してしまうというのはよくないと思っていますから、その意味では今のお話は非常によくわかるんですね。
 例えば、真ん中のところの事業所のところが、高いからけしからんということじゃなくて、周りのところをずっと下げる効果を上げていれば、全体としては効果を上げているんだから、それはそれでいいじゃないかという評価だってあり得るんだけれども、どうも今の自主行動計画の評価というのは、この赤い真ん中のところだけが高いか低いかだけで評価してしまうと。そういうやり方ではよくないということは私も前から思っていましたので、同じような発想を持っておられるのは大変心強いなと思ったんです。そういう理解でよろしいですね。

○五所富士フイルムホールディングス株式会社CSR担当課長 まず、1社1社がきちっと正確に情報を集めたりしていくことが大切なので、その次に応用編として、それを集めて全体把握をして、どこを減らすべきかという思考にならないといけないと思います。例えば、中小企業であれば、環境負荷低減の取り組みがコスト削減と結びつかないと取り組みが推進されません。まず、自社の環境負荷削減とコスト低減の関係に目を向けさせて、次に余裕が出てきたから、自社と関係する企業とどうしていったらいいかというような思考に持っていかないと、、、大企業と同じような考え方ではいけないと思っています。

○浅野委員長 ほかにございませんか。
 はい、どうぞ。

○多田委員 内容自体にも随分興味深いところがあるんですけれども、それはきょうの趣旨と反するので割愛して話しますけれども、CSRの環境ってやっぱり大分違うんですよね、行政が。それで、僕も一時そういう仕事をしていたのでわかるんですけれども、各部署からいろんなデータをもらうじゃないですか。環境なんかは比較的定量的な数字が、環境会計なんかを含めて入っていますけれども、例えば今話題になります、いろんな意味でのダイバーシティ・マネジメントだとかそういうところになってくると、結構、何部というとさすがに差しさわりがあるので、部の名前までは言いませんけれども、会社の中の部による温度差ってすごくあると思うんですよ。だから、もう一回言いますけれども、部の名前はどうでもいいんですけれども、そういうある種の社内で抵抗勢力になっているような部署は、どんなふうに説得してここまで持ってきているのかなというのを非常に―かなり網羅性という意味では非常に網羅的に、環境だけに偏らずに頑張ってやってらっしゃるので、さぞやご苦労は大きいんだろうなというふうに思ったものですから、その辺を少し聞かせていただきたいのと。
 それともう一つだけ。そもそものここの趣旨が、環境がいろんなところにあって散逸していて、個別には頑張っているんだけれども、どうも全体最適化されていないねみたいな意識があって、これは五所さんの個人的な意見でもいいんですけれども、富士フイルムさんもゼロックスを加えて、かなり今後変革期になってきますよね。その変革期における御社の情報戦略ってどういうふうに考えているのかなというのも興味があるわけですね。ちょっと長くなっちゃいましたけれども、その2つ、よければ少し教えてください。

○浅野委員長 割合、核心をついたご質問だろうと思うんですが、お差し支えのない範囲でよろしくお願いします。

○五所富士フイルムホールディングス株式会社CSR担当課長 実は、環境に関しては、私たちの直接の管轄になっており、情報収集ツールもありますので集めやすいです。人事などの社会性の情報に関して、グループ全体の情報は集めにくい傾向がありますが、情報を収集する一つのきっかけとなるのがやはり、SRIファンドの評価項目です。それから、最近は東洋経済からCSR便覧という冊子が出ていて、各社のCSRの定量データが一覧で閲覧出来るようになりましたので、社内での情報開示の基準にも使用しています。
 人事に関する情報などは、国内のグループ会社の状況はどうなのかを調査をしていますが、本来の管理については国内単体が主体になります。海外の現地法人の状況等も国内単体レベルとは言わないまでも把握して、適切に社外に情報を発信していく必要が、グローバル企業として今後より一層求められると思います。もちろん会社の規模やビジネスの内容によって、開示すべき情報は違うと思いますので、情報開示の内容やその範囲について、段階を踏んで情報開示していく方向性を、政府などの第三者が企業に対して示していただくと、企業の情報開示が進むと思います。
 それから、2番目の変革期における情報戦略については、まず情報開示という点で申し上げますと、これに関して現在は年に1回の報告です。先ほど廣瀬さんもおっしゃったウェブの特徴(適時開示できること、更新ができること、いろんな言語で開示をできること)がありますので、変革期の情報戦略としては適時開示であり、今後はCSRレポートよりもウェブを充実させて、なるべく海外に情報を発信していくということを心がけていきたいと思っています。
 また、情報を収集しないと開示できませんので、情報を収集するという点の戦略もあります。SRIファンドやシンクタンク、CSRの調達先から来るアンケートなどの調査項目を重視して、当社の状況にあった項目をなるべくグループ全体で集めるようにしていきたいです。そして、情報開示を通じて当社の企業価値の向上につながるような情報戦略も積極的にしていきたいと思います。

○浅野委員長 ありがとうございました。
 よろしいですか。

○多田委員 はい。

○浅野委員長 ほかにございませんか。
 では、ご質問がさらにまた出ても構わないと思いますが、富士フイルムホールディングと、それから発伝所と両方のお話を聞いた上で、総合的な意見交換ということで、これから残りの時間進めていきたいと思いますので。
 発言を強制する気は全くありませんけれども、和気先生は今の富士ホールディングの多分直接発言、一番しやすそうな感じがするので。

○和気委員 ありがとうございます。大変興味深く、お二方からの発表を伺い、らないこともたくさんございました。ところで、アジアの枠組みで国際協力と国際競争という両輪において、どのように環境改善していくかという課題が重要な柱のひとつだと思っておりますが、その関連で、グローバル企業としての戦略と、それからアジア内でビジネスを展開していく部分と、それからそれを周辺的にサポートしていくさまざまな行政やNPOの活動等、この辺をどううまく結びつけていくかという観点で五所さんに、質問というよりはご意見を伺いたいと思います。先ほどバーゼル条約の関係で、オーストラリアと日本との協定の実績が紹介されましたが、この両国では環境認識においてそれほどの相当情報ギャップはないんじゃないかと思うんですけれども、たとえば中国との関係性の中で、環境認識、あるいは環境情報に対するセンシティビティに相当違いがあるのではないかと感じています。もちろんその多くは発展段階の違いによるものと思いますが・・・。
 日中韓などの東アジアの枠組みを想定したとき、アジアビジネス展開のなかで、いわゆる環境問題、特に環境情報の共有部分、広くは価値の共有というか、そうした視点から、企業の中ではどういうふうな仕掛けで壁を乗り越えていったらいいのか、あるいは行政的な部分とどういうふうにかかわっていくのか、その辺の感触というか、ご意見を伺いたいと思います。

○五所富士フイルムホールディングス株式会社CSR担当課長 弊社は、中国に31社の現地法人を持っております。臨時社員や派遣社員を入れますと、中国だけで2万人以上を雇用しています。
 この様な状況のため、5月に中国の主な6社をCSRの視点で現地調査してきました。調査を終えて、中国は地域、地域で違うということを感じました。例えば、深センは、新興の工業地帯で、移民が多い地域ですが、天津は、中国にある4行政区の内の一区で歴史もある地域です。この2地域を比べても、地域性がかなり違います。こういったことも、現地に訪問し、状況を把握しないと分かりませんでした。さらに、蘇州には、当社グループの複数の工場があり、各エリアの工場を訪問して、新しい工業地区と古くからある工業地区とでは環境規制値が違いっていることも分かりました。この様に、ローカルで工場の置かれた状況を見れば見るほど、地域・地区に合った管理をしなくてはいけないと感じました。当社は、日本から中国に進出している企業として、日本のレベルと同様に管理・運営をすることを戦略として実施してきていますし、今回の調査ではそれを確認してきました。工場の環境管理など運営する一方で、マネジメントする現地人をこれから育てていかなくてはいけません。中国にある工場のマネジメント層はほぼ日本人ですが、年月をかけてマネジャーになれる人を育ててきました。中国は、他企業も含めて離職率が高く、優秀な人材が辞めてしまうことも多いため、工場の置かれた地域性なども考えて人材を育成し、企業への帰属意識を高めるためにも、CSRの取り組み状況など情報開示は重要と考えています。
 よって中国の環境法規制などをきちんと理解し管理すること、さらに日本と同様に法規制より厳しい自主基準を設けて管理にしていけば、中国で公害や訴訟になるようなことはないと思います。

○和気委員 そうすると、例えばそれぞれ進出先国・地域における法・規制体系などをまずは基準とした上で、それにプラスアルファ、かりに5年後、10年後に環境規制が厳しくなるだろうという予測の上で、それでも日本の法規制や環境基準などを基準にすれば、長期戦略においては相当程度に現地での環境保全への要請をクリアできる、あまり大きな問題とならないといった国際戦略があるということでしょうか。

○五所富士フイルムホールディングス株式会社CSR担当課長 そうですね。例えば、工場建設時に、ロースペックではなくてハイスペックで環境設備を整え、長期に渡って工場が存在することを伝えないと、従業員の帰属意識も保たれないと思います。日本の工場で設定した自主基準、例えば富士フイルムの自主基準、富士ゼロックスの自主基準などを中国など海外に建設する工場に展開し、工場を管理することが望まれえると思います。この様な取り組みを工場が進出した国の地方政府も含めて理解していただく、地域のマスコミやNGOなどにも伝えていくようなロビー活動も非常に重要だと思います。

○和気委員 しつこく伺って申しわけないですが、例えば、日本以外の他のアジアの国々の企業の多くが当然、中国に進出している現状において、それぞれの投資国、あるいは親会社のある国の環境規制などが基準として参照されるとすれば、そのような外国企業との国際競争環境の中に日本企業があるとすれば、そしてクリアすべき戦略的環境基準に差があるとすれば、コスト的に当然違いが出てきます。このような企業間競争とそれにともなう環境対応の相違をホスト国はどういうふうに受け止めているのでしょうか。長期的にハイスペックのほうがいいというふうにきちんと理解してくれているのでしょうか。このような観点でのコミュニケーションというのは、どういう形で持っていったらいいのでしょうか。

○五所富士フイルムホールディングス株式会社CSR担当課長 中国に現地調査に行った際に、アメリカ系、韓国系、台湾系、日系の企業の中で、どこがきちんと環境に配慮しているかについてマスコミの報告書を現地で入手したのですが、日系企業は非常に評価はされていました。目先の利益追求だけでなく、長期的な視野で環境への投資をしていくことが大切と思います。
 それから、廣瀬さんのお話にあったように、日本が今まで痛い目をしてきたことを相手国にもさせるのかという意思を、持つことが大切です。今までの課題などをクリアし提供しながら、一緒に事業を展開するというスタンスを日本企業は持たなくてはいけないと思います。当社現地法人の日本人の総経理もその様な意思で工場を運営し、工場の従業員にもそれを理解し、協力的に管理してくれているそうです。なので、時間をかけ、当社の信念を持って工場を運営することが大切ですし、きちんと相手に伝えることをしていくべきでしょう。

○浅野委員長 はい、どうぞ。

○多田委員 多分、彼女は、本人しゃべりにくいと思うので、僕が知っていることで言うと、中国に進出したときに、多くの企業は結局オービットの手法を入れたんですよ。要するに、こういうロハスだとかローズシエン守らなきゃいけないから、これ守っておいてね、どんと渡して、それで1年後に日本で専門的な知識を持っている人がオービットへ行って、丸だバツだ三角だとなってもいいわけですよね。ほとんど背景情報持ってないと。それじゃだめだということに気がついて、キャパシティビルディングに変えたんですよ、現地の人たちの能力開発、それの先陣を切られたのが五所さんとか富士フイルムなんですね。
 だから、僕の乏しい経験では、やっぱりオービットとかそういうのというのは、よほど工夫して使い分けないと、むしろどこかできょう言葉が出たパートナーシップだとか、今言ったコラボレーションとか行政とか、そういう流れに今変わってきているのかなと。それは、五所さんのところは割とかなり早くそういうところに先鞭つけて、深センのNGOの人なんかも、日本にしょっちゅう呼んでやっているでしょう。だから、それは非常に僕はすばらしいことだと思うので、ちょっとすみません、勝手にしゃべっちゃいました。

○浅野委員長 ありがとうございました。
 ほとんど似たような話を昔、数年前に環境国際協力の専門委員会やったときに、別の業種の企業からも同じことを聞いたんですね。ですから、今のお話はよくわかるんですが。廣瀬さん、冨田さん、今のやりとりについて何かコメントがありましたらどうぞ。

○廣瀬東アジア環境情報発伝所代表 中国の公衆と環境研究センターというNGOが、2006年に中国政府が発表した情報を使って「中国の水汚染マップ」というホームページを開設しているんですね。そこでは幾多の、中国政府が発表した情報をもとにしているんですけれども、環境基準を違反した企業の案件とか全部ずらっと公開していて、中には結構日本の企業の名前とかもちらほら出ています。それを見た日本の企業側からクレームじゃないんですけれども、したときにその実態をもうちょっと精査して、基準がクリアできたのでということでリストから削除したというようなこともあったりとかするので、もうちょっとそういった部分の、中国側が発信している情報とかをちゃんと日本の我々も見て対処するということは必要じゃないかなというふうには思いました。

○浅野委員長 さっきの和気先生のご質問の中で、ちょっとなかなかこれはかみ合わないというかな、我々の専門委員会の持っている一つの関心事は、行政がどういう対応しなきゃいけないかということについて、きちんとした勧告をしなきゃいけないというふうに思っているんですが、今の文脈の中で言うと、何か我々のリポートの中で、ぜひ入れておかなきゃいけないことは何かあるかしら。
 企業のビヘイビアについては、今の五所さんの話で、前にも聞いたこと、同じことだから非常によくわかったんですね。それは、ひょっとすると、一つはこういうようなことをやっているという、企業の例をきちっと公表していくようなことというのは、どうも企業みずからやりづらいんですかね。あっちこっちでお話を聞くと、やっているという話をされるんだけれども、全然出てこないんですね。何か、それは宣伝のために言っているみたいだから嫌だというようなことを言われるんで、とんでもないと言うんだけれども、やっぱりそういう何となくあるんですかね、シュリンクしちゃう面があるんですか。

○五所富士フイルムホールディングス株式会社CSR担当課長 あります。8月発行のCSRレポートに、中国の現地調査の情報を載せましたが、社内の情報開示すべきか、すべきでないかの判断はありますので、優れたCSRの取り組みでもお伝えできない取り組みもあります。しかし、社外にお伝えできなかった優れた事例などは、社内で展開していけばいいと思っています。 行政にお願いしたいのは、例えば地域別・行政区別の企業リストマップがあり、企業ごとに高い評価を受けているCSR取り組み事例を提示していただけると助かります。その様なリストマップがあると、企業間の環境情報などの共有やコミュニケーションをとることが可能になりますので、ローカルエリアの対応が企業の壁を越えてできると思っています。
 その様な情報共有の場があると、NGO中国に進出した日系工場が中国のNGOとパートナーシップとの活動内容や、日系工場と中国系企業と協働した活動内容など提示された事例に賛同して、自社のCSR活動を見直し、地域、NGO、他企業と協働しながら事業活動や社会貢献活動などの推進につなげていくことができると思っています。情報共有の場は大変欲しい場です。

○浅野委員長 どうぞ。

○冨田東アジア環境情報発伝所 せっかくなので、ちょっと私も、私見がちょっとまざっちゃうかもしれないんですけれども。中国・韓国から、やっぱり日本のすぐれた事例といいますか、特にCSRに関したまとまった情報があればといったようなニーズもなくはないんですよ。それは、より進んだ企業というのがどこかというのをぱっと見てわかるというのがあるんですけれども、それを発伝所として訳して提供するというのはもちろんあるんですが、いい面を伝えると同時に、逆にしっかり中国・韓国からの目でその日本企業を見てもらうことによって、現地法人にもう一回しっかりまた目を届かせてもらって。
 実際あるんですよね、やっぱり、NGOの取り組みの中で、ここ実は日系企業なんだけれども、悪いことしていそうなんだけれども、何かうまくごまかしているなみたいな、そういうのもあって。要するに、いい面、悪い面、両方しっかり見てもらうためにも、やっぱりスタンダード的な情報源が、環境省なり公的なところかどこかで入手できればというようなのは何か常に感じていまして。
 ただ、環境に関してそういったまとまった情報を出すと、エコファーストもそうだと思うんですけれども、そこがもういかにもトップランナー的に映っちゃったりですとか、要するに競争原理の道具になっちゃう可能性があって、割と企業側もCSRをアピールしにくいのは、環境で競争していいのかというのが多分まだどこかデーズといいますか、後ろめたいところがあるんじゃないかなというのもあって。実際、環境で競争して苦しむ人というのも多分出てくると思うんですよね。会社にいて、何かそういう矛盾と闘っている方もどこかにはいるのかなというのがあって。
 どっちにしても、いいところはいいので、そういうのは出していただいていいでしょうし、逆に下手な載せ方すると、本当に変な競争に巻き込んじゃう可能性もあるので、うまく伝える必要はあるなというのはいつも考えているところではあります。
 以上です。

○浅野委員長 わかりました。
 ほかのポイントで何かありますか。
 亀屋さん、何かありませんか。

○亀屋委員 きょうは、NGOの方あるいは連結企業をお持ちの方ということで、非常に毛色の違う2つのパートナーシップということでご紹介いただいたというふうに感じております。
 特にNGOの方については、非常にそれぞれのNGOってたくさんあって、それぞれが独自性を持っているものだと思うんですね。それをどういうふうにやっていくのかと。日・中・韓ということではなくて、国内のNGOの中でもいろんな専門的な情報発信をされているところもあると思うんですね。そういったところを、やはりこれから環境情報として、特に中国・韓国に、あるいは東アジアに発信していくときに、それぞれの専門性といったことと、あと専門性以外の、廣瀬さんの場合でしたら、国同士の情報交換というのが主たる目的だと思うんですけれども、そこをどういうふうにつなぐのかといったところで、やはり行政が何らかのイニシアチブをとってやっていかなければならないんだなというのは強く感じたところです。
 企業さんのことにつきましては、五所さんからもご紹介あったように、1社1社でやっていくのがまず非常に大事なことだというのはそのとおりだと思いまして。ただ、直接的な事業所から出るような環境負荷の部分については、独自の事業所でできると思うんですけれども、先ほどもありましたライフサイクルとか、あるいはLCAの分析に頼らなければいけないようなところまでCSRの範疇でやっていくとしたときに、やはり企業間、連結していないところですね、あるいはもう場合にはよっては競争相手なんかとも、ある程度のパートナーシップのようなもの、あるいは環境情報の共有というのをやっていかないといけなくなるのかなというふうにも感じました。
 そういった中で、先ほどのバウンダリの話もあるんですけれども、バウンダリ以外に何か、環境といっても、きょうは自然環境系の先生ちょっと少ないんですけれども、自然環境の部分についてもあるかと思うんですけれども、基盤となるような環境情報として、他社と共有できるような基盤となるような情報を、どういったようなものが考えられるのかというのを、少しおつき合いありましたら加えて教えていただけると非常にありがたいかなというふうに思います。
 それとあと、もう1件なんですけれども、先ほどNGOの方のところで、日本の公害経験の話がなかなか海外に伝わらないといったようなお話があったかと思うんですけれども、我々大学なんかで学生に物を教えるときも、なかなかうまい公害経験、まとまったような書籍というのはないものですから、幾つか、これとこれとこれとこれというふうな形で紹介をして、学生にですね、夏休みなんか活用して読んでおきなさいと、こういうふうに言うんですけれども。ただ、日本国内ではそういったいろんな成書が、いろんな先生が書かれているので勉強できるかと思うんですが、そういったものが中国語とか韓国語に、今のところ翻訳されたものというのは全くないような状況なのかどうかという、その辺の現状を教えていただきたいんですけれども。

○浅野委員長 最後の点については、小林局長に教えていただきたい。(笑)後でまた少しお話をいただくことにして。
 じゃあ、どうしましょう、まず五所さんのほうから、共有したい基盤となる情報というのはどんなものがあるか、何かご示唆いただけないかということなんですが。

○五所富士フイルムホールディングス株式会社CSR担当課長 バウンダリという点で、企業同士となりますと、中国での廃棄物処理やリサイクルの受入先が今後一層課題になると思います。  先程ご説明しましたが、資料のマテリアル・フローやLCA分析からも分かるように、アルミの調達における環境負荷が当社グループのライフステージの多くを占めています。当社の日本にあるPS版製造工場で実施したPS版のリサイクルが、中国のPS版製造工場でも可能になるのであれば、中国での環境負荷も低減することにつながります。今後、中国での印刷物の需要が高まれば、日本市場より拡大することが明らかです。そうなれば、アルミの調達における環境負荷が今以上に増加していましますので、PS版リサイクルの実施は、企業の事業活動だけでなく製品のライフサイクル全体の環境負荷を低減する上で大切な取り組みです。

○浅野委員長 いっそのことCDMか何かで。(笑)

○五所富士フイルムホールディングス株式会社CSR担当課長 それでは本質的な問題の解決にはならないので、取り組めることは取り組まないと。(笑)

○浅野委員長 それで、CDMの枠に入れ込んでしまって、それを買ってくるという、二重にもうかるんじゃないかということです。それは冗談です。
 じゃ、廣瀬さん、何かそういう日本の公害経験を伝えるようなスタンダードの情報源というのはあるんでしょうかという質問です。

○廣瀬東アジア環境情報発伝所 多分、中国語、韓国語ではそんなにまとまった、これを読めばというものは多分本としても出されていないと思います。特に、中国のそういった公害に近いものを研究されている専門家の方ですら、ある方はもう水俣病以降、劇症型の―水俣病というのは「水俣」という名前と、あと写真だけがひとり歩きをしているようなところで、水俣病といえばもう劇症型というものが先行しているという部分もあって、正しく専門家と言われる方ですら認識されていないという部分があると思うので、そういった部分はちゃんと正しく伝えるということが重要だと思います。
 あと、環境省でも、水俣病の経験を伝える冊子をつくられたりいろいろされているとは思うんですけれども、僕たちが接している草の根で本当に現場で困っている人たちにはそういった情報は届いていないというところがあるので、そういったところがこれからも必要なのかなというふうには思います。

○浅野委員長 環境省としてはこれまでどういう努力をしてきたか。

○小林総合環境政策局長 環境省でどういうことをやっているかというのは、地球環境局から異動されてきたばかりの梶原総務課長に聞きたいと思います。
 恐らく浅野先生がこちらに話を振られた理由は、「日本の公害経験」という薄い本ですけれども、それをつくれというふうに言われて、たしか水俣病のケースとイタイイタイ病と四日市の公害を、その歴史と、それからそれが公害対策として得だったのか損だったのか、企業の負担はどうだったのかというような、割と単純なフレームワークでやったものを作成しました。結論は、未然防止のほうが圧倒的に安いと、後追いでやるとかえって損すると。例えば、水俣でいえば、もちろん工場も損をするわけですが、地域も疲弊してしまうというようなことを書いた。それも数字で書いて、淡々と書いているわけです。それは、結果として英語版が最初にできて、中国語版ができ、それは中国のたしか環境科学出版社とか何かあるんですかね、一応政府系だと思うんですけれども、そこで中国語にされ、それからベトナム語版というのも出ましたですね。
 それとあと、それは職員の研究会の名前で、少し半民でつくったんですが、その後、公害健康被害補償予防協会、当時のでございます。今は機構というのになって変わっているんですが、そこがもうちょっと掘り下げた、フロー経済モデルや何かを使って、日本ですらもっと早く環境対策をやったほうが、これは経済的に得だったとかというような分析も加えた「日本の公害経験」というような、発展するなら公害対策したほうがいいよというやつですが、それを出して。それでもって中国語はいつごろでしょうかね、英語版がむしろメーンでつくったのがありますが、確かに草の根には伝わってなかったですね。
 それから、こちらでも引用していただいています、TEMMを始めていて、これは日・中・韓のベースで全部やろうということで。私が知っている限りでは、最初の取りかかりは日・中・韓の環境教科書をつくろうかというような話でしたね。それぞれの言葉で書いたり、環境の教科書みたいのをつくろうというような話があって、その中に公害経験が入っているかどうかちょっと承知していませんが、そんな動きがあるということは一応聞いております。

○浅野委員長 これはひょっとしたら小川君がかえって詳しいかもしれない。

○細野企画調査室長 環境白書とかにつきましては英語版をつくっておりますけれども、今後また考えていかなきゃいけないところもあるかと思います。また、私どものところではないんですけど、廃棄物リサイクルのほうにつきましても、アジアでの循環圏というものを提唱している中で、今回サミットに向けて、循環型白書の部分につきましては、英語のところは私どもと一緒にやったんですが、ほかに7カ国語ぐらいに、北斎漫画というのも使ってやったりもしておりますので、少しずつそういう面は、向けてやる動きも出ておりますが、皆さんからより詳しいニーズとかを聞かせていただければ、また展開があるかと思っております。

○浅野委員長 実は、全くやっていないというわけじゃないということを少し言っただけのことで、知られていないことは否定しがたいわけだから、やっぱり知られてなければやったことにならないということにもなるわけなので。いや、実はかなりのものは私も首突っ込んで一緒に仕事していますので、全くないわけじゃない。
 ただ、もっと手軽に、さっきのような情報発信源のところにうまく載るようなものを、もう一遍また工夫してみるとか、それから今あるものをもう一回電子媒体に落としてみて、利用できるようにしておけば、もっと汎用性が出てくるとか、きょうのお話は結構行政にとっては必要なアドバイスをいただけたと思う。我々も、それをしっかりこの中に書き込むと思いますが。
 さて、ほかの観点から何か。はい、どうぞ、関川さんどうぞ。

○関川委員 多分、日本側のPRが不足している部分かなという部分と、例えばそういう情報なんかで、私の経験で言えば、例えばJICAのたくさんの研修生が呼ばれていますよね、公害防止も含めてですね。あそこでやっている研修テキストなんかは、すごくよくできていますよね。実はあれ、クローズドですよね、オープンされていませんよね。何かそういうのっていうのは、せっかくつくるのにもエネルギーを投じているので、そういうのをオープンにしていくとか。そういう研修コースすごくたくさんあって、実はそれらで使っている資料って余り公開されてないと。そういうのというのはちょっと一考してもいいかな。もちろん著作権の問題とかいろいろあるのかもしれませんけれども、そういうのは必要かなというのは思いました。
 あと、もう一つは、企業のいろんなどんな情報を出していくか、また、共通ベースにするかという中で、やっぱりどういう仕組みにしていいかちょっとわからないんですけれども、非常に今聞いていて思ったのは、例えば日本の国内、例えば横浜の出て行くところですね、廃棄物の話でいきますと、廃棄物交換システムというそういうシステムを動かしています。企業の不要になったものという言い方はあれなんですけれども、不要になったものを要するに掲示板に載っけるみたいなですね。そういうようなのをもうちょっとグローバルなものができてもいいかなと。
 ただ、非常に問題があるのは、何しろ法令上の問題の部分と、あと規格の問題とか、そういうのがあるんですね。その辺の整備をどうするかというのが、やっぱり整理しなきゃいけない問題かなというふうに聞きました。
 以上でございます。

○浅野委員長 そうですね。確かに、そこまで広げて考えるのが必要かもしれません。
 金藤さん、何かありましたらどうぞ。

○金藤委員 本日は、非常に興味深い話ありがとうございました。
 二人の方に共通して聞かせていただきたいことが一つあります。それは亀屋先生も少しふれられておりましたが、環境情報をどの様にとらえているのか、お二人の講演者の方にお聞かせいただきたいと思います。私なりの二人の方の想定されている環境情報を整理すると、、最初の方は、ノウハウ、取り組み、経験、経験、知識、組織の存在、その他の活動といった話がありました。、後半の方は、特に具体的なデータの話が出てきたと思います。そこで二つの法人では、実際何を環境情報として定義されているのかということが、素朴な疑問点であります。
 もう一つの質問は、後半の方の話に関連します。そこでは、システムを活用してデータを収集するという話があったと思います。実際には、富士フイルムは非常に先進的で主体的にやられているということを理解しました。しかし、実際にこういったシステムを、日本全体を前提に広げようとしたときに、本当にこのようなデータは公開できるのかといったことを疑問に感じました。頂いた配付資料をお読みすると、富士フイルムは、関連するデータを公開しているという話が書いてあることは理解して言っております。
以上2点をお願いいたします。

○浅野委員長 それでは、高岡さん、何かコメントなりご質問なりありますか。

○高岡委員 興味深いお話ありがとうございました。
 私は、全く違う視点からなんですけれども、企業がすごく力を入れて、例えば、10ページ、11ページにあるようなLCA分析などもやられて、事業活動の範囲外というんですか、消費や資源調達のところまでデータを収集している。これは、すごくいいことだと思う一方で、ここまでやった上で、このデータを集めて企業として何の効用を得ることを目的としているかについて伺いたいと思います。
 確かに、わが社はこれだけ社会に貢献している、環境配慮しているということを、ウェブサイトやCSRレポート上の情報として出すというのは、それは重要だと思います。しかし、それが直に消費、つまり製品販売のところに本当につながるのかというのが、私の立場からするとすごく気になります。
 最終的には、消費材を売っている場合には、集めたデータを、消費のところで、つまり、消費者が意思決定をする購買時点のところで消費者にうまく見せて使える仕組みがあれば、企業の中で環境に多大なコストをかける意味があるんじゃないかなと思います。そのあたりというのは、どう考えられているのでしょうか。例えば今、富士フイルムさんでは、11ページの図でいうと、複写機やプリンターを売る際、使用時にいかに電力の使用量が減りますとか、そういう情報は消費者に訴求するので購買決定時に出しているのだと思うんですけれども、別の部分、つまり、製品の輸送ステージや資源調達の部分で、いかに富士フイルムさんが環境負荷を減らしているかという情報まで、販売の時点でお客さんに出していて製品を選んでもらっているのかどうか。そして、その辺の情報を出すことの意義についてどう考えているのか、ということをぜひ伺いたいと思います。

○浅野委員長 それでは、ご質問がありましたので、廣瀬さんのほうからしますか、どうぞ。

○廣瀬東アジア架橋情報発伝所 ありがとうございました。
 環境情報をどういうふうに定義しているかというのですけれども、全く定義はしておりません。僕たちの発信する情報というのは、普通の市民や現地のNGOの活動の参考になるような、こんなふうに取り組みができるんじゃないかというような、主に取り組みというところに焦点を当てております。発信する情報も、もちろん温暖化では気候ネットワークとか、原発関係では原子力資料情報室といった専門のグループがございますので、そういった部分に関してはそういった方にお願いをして寄稿していただくなど、ネットワークで情報を集めて発信するというようなことを主にやっております。

○浅野委員長 それでは、五所さん、どうぞ。

○五所富士フイルムホールディングス株式会社CSR担当課長 まず、1問目の環境情報をどうとらえているかについては、リスクヘッジです。これは環境情報を収集し、グループ全体のガバナンスをきかせているということは、企業としてのリスクヘッジにつながります。そしてリスクヘッジだけでなく、コストダウンにもなります。環境情報の収集やパフォーマンスの把握のよって、環境負荷をかけないように、資材調達や廃棄物の発生も最小限にでき、長期的には投資を回収でき、コストダウンにつながると思っています。
 それから、2番目のシステムを活用に関する質問では、グローバルにデータを収集・公開していますので、外部にも出るものだということを社内にもわかってもらっています。各サイトや工場の積み上げが富士フイルムグループ全体のデータの開示につながっています。もちろん、収集した情報を戦略として使うということが次の段階(企業価値の向上)にあると思います。
 それから、高岡先生のLCA分析の質問ですが、範囲外のデータを収集して、先の事例にまとめたのは、海外の工場にも水平展開したいためです。今、まずトライアルで実施しやすい取り組みから実施し、LCAデータを活用して全体像が見えると、海外に進出している工場でも、日本で実施した施策が同じように実施できるのではないかという事前評価になり、水平展開につながると思います。
 次に、「消費につながるか」というところですが、つながると思います。これまで、当社の営業が、先ほどのCTP版の技術変遷をする際に、相手先にも投資をしていただかなくてはいけないので、LCAデータのような基礎情報を相手先(営業先)に提供し、ご理解いただいて技術変遷を重ねてきています。市場でのシェアを高める意味でも、LCAのような情報を提供し、これまでの自社製品やサービスの消費につながっていたと思います。これまでは企業として競争力にかかわってしまうのでLCAデータのような基礎情報を公にしていませんでしたが、幸いなことにCSRレポートで事例を提供することが最近可能になりつつあります。

○浅野委員長 どうもありがとうございました。
 それじゃ、そろそろ時間になりましたので、本日は大変貴重なお話を聞かせていただきまして、ありがとうございました。専門委員会の報告取りまとめには、十分に反映をさせたいと思いますので、改めてお礼を申し上げたいと思います。
 それでは、本日の議論については、事務局で改めて整理をしていただきまして、委員の先生方には整理したものをお送りすることになると思います。
 今後のスケジュール等について、事務局から連絡があれば。

○細野企画調査室長 今回のようなヒアリングをあと1回ぐらい、技術問題などを中心にやらせていただくようなことと、あわせて委員会をまた二、三回開催させていただきながら、先生方からいただいた意見をどう反映させていくか、まとめの作業に入りたいと思っております。
 また、先生方のご日程、大変タイトなことでございますので、改めてまた事務局のほうからいろいろと日程調整等お願いさせていただきながら相談してまいりたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

○浅野委員長 要するにもう一度繰り返しますと、ヒアリングをもう一度ぐらいはやろうということで、別の観点からのヒアリングを近々にやりたい。その上で、今年度、とにかく我々は報告をまとめなきゃいけませんので、後半は報告をまとめるという作業に入っていきます。いつまでに仕上げるかということに関しては、次官も局長もかわりましたので、改めて少し協議をして、次回のヒアリングのときには今後の工程表についてはしっかりお示しすると。いつごろまでに答えを出すということについてもご説明できるようにしたいと思います。
 ほかに何かございませんでしょうか。
 よろしければ、本日はこれで散会いたします。どうもありがとうございました。

午前11時56分 閉会