保健・化学物質対策

平成27年度第3回(通算第5回)水俣条約対応技術的事項検討会 議事録

日時

平成27年11月27日(金)13時00分~15時00分

場所

TKPガーデンシティ永田町 ホール2D

出席者

出席委員

大塚直(共同座長)、東海明宏(共同座長)、蒲生昌志、崎田裕子、高岡昌輝、高村ゆかり、田村暢宏

政府出席

環境省環境保健部、環境省廃棄物・リサイクル対策部、経済産業省製造産業局化学物質管理課

政府傍聴

環境省、経済産業省、文部科学省、農林水産省、国土交通省、防衛省

議題

(1)中央環境審議会 循環型社会部会における分別・回収関連の検討状況の報告

(2)製品表示等の情報提供の方法に関する事業者ヒアリング

(3)廃製品の適正分別・回収に資する水銀使用製品のリスト化について

(4)その他

議事録

(1)中央環境審議会循環型社会部会における分別・回収関連の検討状況の報告

(資料1-1~1―4について環境省より説明。)

崎田委員:様々な検討が着実に進んでいることが分かった。資料1-2、4ページで、2015年12月に市町村の廃棄物管理担当者を対象とした普及啓発セミナーを開催するとある。本検討会では製品表示等の情報提供の方法について検討しているが、実際に回収作業を行っている市町村から、製品排出や分別方法に関して要望があるはずである。そういった要望を集約し、本検討会で示していただきたい。現在、水銀大気排出対策、製品中水銀対策、水銀廃棄物の適正処理について、それぞれ検討会を設置し議論しているが、各検討会が密に連携することが重要であるため、廃棄物処理や分別回収処理に関して要望等を伺いたいと考えている。或いは、既に市町村からの要望を集約した資料を作成しているか。まだであれば、ぜひセミナー等の場を利用して、市町村等の要望を集めていただきたい。

環境省:本検討会の資料においては、御指摘にあったような意見集約は行っていない。12月に国内3か所で実施するセミナーにおいて、そうした意見・要望について問いかけていきたい。

蒲生委員:資料1-3の「家庭から排出される水銀使用廃製品の分別回収ガイドライン(案)」(以下「ガイドライン案」という。)の位置づけを確認したい。既存の取り組みを一元化してまとめたものということでよいか。これまでとは異なる、新しい内容があれば、示していただきたい。

環境省:基本的には市町村が実施してきた取り組みをまとめているが、新しい点としては、環境省からの要望として、焼却処分は行わないでいただきたい旨記載している。

田村委員:ガイドライン案は分かりやすいものとなっている。例えば7ページで水銀体温計・水銀血圧計の回収について記載されており、水銀血圧計に含まれる水銀量は蛍光管8,000本分に相当するといったリスクの観点でも記載がある。リスクについては、表示に関する検討の際にも考慮する必要がある。朱肉やマーキュロクロムにも相当量の水銀が含有されているが、退蔵される場合が多い点も踏まえて検討を進めていく必要がある。

(2)製品表示等の情報提供の方法に関する事業者ヒアリング

(事務局よりヒアリング質問事項の説明、各事業者より資料2の説明。)

高岡委員:電池工業会に伺いたい。15ページで「回収缶でなく一般ごみとして排出された分、電池工業会の会員でないメーカーの分については、自治体に受け皿としての役割をお願いしたい」とある。電池工業会の会員でないメーカーの電池も回収缶によって相当量回収されるのであろうが、それらの電池はどう扱うのか。次に、日本電気計測器工業会に伺いたい。26ページに記載のある水銀リレー1個当たりの水銀使用量はどの程度か。また、アナログ・マルチプレクサ・モジュールはどの程度製造されているのか。これらの製品は、国外にも販売されているのか。

電池工業会:実態として、ボタン電池回収缶によって回収される電池には、非会員メーカーのボタン電池も混ざっている。ボタン電池の回収は、認定取得者が製造又は販売したボタン電池のみを引き取ることができる広域認定制度の下で実施することが基本である。認定書の冒頭には「やむを得ず混入したボタン電池は処理してもよい」と記載されているが、あくまでも例外措置であり、電池工業会は「回収対象ブランドを明記すること」という環境省の指導に従い、ボタン電池回収事業の案内を行っている。ボタン電池回収事業は会員企業がコスト負担しているため、非会員メーカーのボタン電池が処理されている点は問題である。

日本電気計測器工業会:アナログ・マルチプレクサ・モジュールに使用される水銀リレー1個あたりの水銀量は把握していないが、火工品回路点検装置に使用される水銀リレーの水銀含有量は20mg程度というデータがある。アナログ・マルチプレクサ・モジュールはプラント用に製造されており、国内外の顧客に販売されている。火工品回路点検装置は、国外には販売されていない。

崎田委員:日本照明工業会に伺いたい。今後も蛍光管に水銀が含有され続けるため、消費者が排出する際のことを考慮すると、表示が非常に重要となる。パンフレットで情報提供しているとのことだが、製品本体やパッケージ、説明書等にも記載が必要ではないか。また、4ページの「情報提供に当たっての留意点1」と、5ページの「留意点2」について、もう一度ご説明いただきたい。メーカー、販売店、消費者、自治体がどのように役割分担して環境負荷を低減するかを検討していくことになるが、留意点1の「消費者に水銀を使用していないランプの選択や分別・回収を促すことは難しいと思われる」という点や、留意点2の「パッケージなどの表示がランプ購入の際に水銀を含有していないランプの選択を促す手段には必ずしもなり得ないことに留意すべき」という記載が分かりづらい。表示をしたとしても100%の回収は難しいかもしれないが、各主体が役割分担の下で環境負荷を低減していくという観点を持っていただきたい。どのようなニュアンスのご発言だったのか確認したい。次に、電池工業会に伺いたい。12ページに「日本企業のみならず、輸入品も無水銀表示を採用」とあるが、業界としてボタン電池については全て無水銀表示とする、という提案と捉えてよいか。

大塚座長:日本照明工業会資料の留意点1として「(仮に表示しても、)開始後10年近くは市中に表示有・無ランプが混在し、反って消費者に混乱を来しかねない」とあるが、留意点2では「直管、環形及びコンパクト形蛍光ランプについては、今のところ推奨される代替可能なLEDランプがない」ということで、LEDランプと蛍光管が混在して回収されることはないと読めるが、どうか。

日本照明工業会:留意点1について、当会の調査によると蛍光管を製造してから回収するまで10年程かかるため、表示がある蛍光管と表示の無い蛍光管が10年近く混在してしまうことになり、表示を目印に回収を促進することで消費者が混乱するのではないかという懸念がある。10年後に表示の効果が出るかもしれないが、それまでには蛍光管が製造されなくなる可能性もある。表示にコストをかけるよりも、他に分別・回収を促進する方法はないのかというのが業界としての正直な意見である。留意点2について、ランプ自体に水銀含有表示をしても購入時に水銀含有かどうか見分けがつきにくいが、パッケージに表示をすることでランプ購入の時点で水銀含有表示を見ることが出来るため、消費者に水銀フリー製品を選択して購入していただけるという利点がある。したがって、電球形蛍光ランプには水銀フリーのLED代替製品が既にあるため、パッケージに水銀含有表示をしてはどうかという意味合いで記載している。

大塚座長:直管、環形及びコンパクト形蛍光ランプについては代替可能な製品がないため、表示は必要と考えてよいか。

日本照明工業会:それらの製品については代替可能なLEDランプがないため、表示の効果がないのではないのかということである。

大塚座長:今後の技術革新によって、それらの製品の代替可能なLEDランプが製造されるようになる可能性もあるため、現在代替製品がないからといって表示しなくていいということにはならないのではないか。

日本照明工業会:費用対効果を考慮すると、全ての製品に表示をすることは難しいのではないか。その点については引き続き検討したい。

崎田委員:事業者の立場として費用対効果を考慮することは理解できるが、日本がリードして水銀対策をしっかりと進めているということを世界にアピールし、世界全体の水銀管理や削減に貢献していくことも制度設計に含まれているため、日本照明工業会にも一歩踏み出してほしい。また電池工業会に伺うが、ボタン電池については無水銀表示の方向性を目指しているという理解で良いか。

電池工業会:電池工業会としてはボタン電池の無水銀表示を今後効率的に実施していく予定であり、情報提供に関する自主ガイドラインを今後策定する予定である。現在は無水銀表示が自発的に実施されているところだが、今後、業界として統一して実施できるようにしていきたいと考えている。

田村委員:資料3の製品リストとも関係するが、製品がいつまで製造されるかという点を考慮する必要がある。2020年に蛍光管の製造が禁止されるという情報もあり、製造中止までの3~4年の間の製品に表示がされても、回収される蛍光管には殆ど表示はないということになる。本体への表示にどこまで効果があるのかという疑問がある。一方、水銀フリー製品に代替可能なものについては、パッケージに水銀使用の表示をすることを検討いただいたほうがよいのではないか。

蒲生委員:ボタン電池回収缶による回収の促進は効果的だと考えられるが、ボタン電池のパッケージや販売店において、使用済みのボタン電池は回収缶へ、といった周知は行われているか。回収する段階だけでなく、販売の段階でも回収促進の周知を行ったほうがよいのではないか。また、水銀使用製品が今後製造されなくなるため表示は不要ではないかという意見もあるが、退蔵品や現在使用している製品が今後廃棄されることを考えると、例えば、LEDのパッケージに、「今あなたが取り替えようとしている蛍光灯には水銀が含有されているため適切に回収される必要がある」といった表示があるほうがよいのではないか。また、パッケージのスペースにも限りがあるが、単に水銀含有の表示を行うのではなく、もう一歩踏み込んでどのように回収される必要があるのかという点が表示に入っていてもよいのではないか。

電池工業会:販売時にボタン電池回収を促進しているかという点について、13ページに示しているとおり、POP等を電池の売り場に設置していただいており、消費者にも購入の時点でボタン電池の回収を意識していただいていると考えている。パッケージには安全のための警告、注意事項等表示すべき事項が数多くあり、あまりスペースの余裕がない。ただでさえ文字が入りきらないためにピクトグラムを利用しているほどであり、加えてボタン電池回収協力の依頼について追加で記載することは難しいと考えている。

大塚座長:蛍光管についても回収を促すための表示をしてはどうかという点について、日本照明工業会からコメントはあるか。

日本照明工業会:ボタン電池と同様、蛍光管のパッケージにも製品使用時の安全面に関する注意事項等、数多くの事項が記載されている。表示を考える場合はその点を考慮して製品に直接表示するか、パッケージに表示するか検討する必要がある。

大塚座長:建設的な意見だと思う。LEDランプに水銀フリーと記載することは販売促進が見込まれるため、ネガティブに考える必要はないのではないか。消費者が混乱する、といったネガティブなことだけでなく、どう表示すれば意味があるかを考えてほしい。10年後に表示の有無で混乱が生じるという考え方をもつのではなく、法第16条、第18条の趣旨に沿って、できるだけ表示を行っていただきたい。

高村委員:大塚座長や蒲生委員からも指摘があったが、情報提供が必要ということは共通認識としてあるはずだが、情報提供を行う目的についても考慮する必要がある。例えば、①消費者が商品を選択する際に水銀含有量の少ない製品を選択するため、②製品購入後にどのように使用・管理する必要があるかを知らせるため、③適切な廃棄方法を示すため、といったことが考えられる。事務局には、適切な情報が適切に使われるという大原則を踏まえた上で、情報提供の局面ごとにどのような情報提供方法が適切か整理していただきたい。製品の選択の段階では、パッケージへの表示がおそらく最良の方法である。特に大きな製品であれば取り扱い説明書やホームページ等への掲載も考えられるが、実際には、製品に表示がされなければ、その後の管理・廃棄ということに結びつかないのではないか。情報提供の必要性を前提としつつ、情報をどのような形で提供し、それがどのような局面で使用されるかを整理いただきたい。使用者や製品の形状の違いによって最適な表示の方法が異なるため、個別に考える必要がある。

経済産業省:まず、本検討会の設置理由に立ち戻って考える必要がある。廃棄物・リサイクル対策部から提出いただいた資料1-2の3ページに検討会設置の基本的考え方が示されている。水銀汚染防止法の「第四章 水銀使用製品の製造等に関する措置」では、国・市町村・事業者の責務が示されているが、この中で市町村が水銀使用廃製品を適正に回収するために、国・市町村・事業者がそれぞれ責務を果たしていくということが規定されている。検討会の設置意義はこの部分にあると考えている。今後は、それぞれの局面でどのような情報提供が最適か検討していきたい。

大塚座長:表示の趣旨としては、分別排出の局面が中心であると考えられるが、中央環境審議会答申にはそれだけではなく、製品選択の局面についても記載されていた。適正な分別排出については、条約上特に重視されているようである。

高村委員:分別排出や製品選択の局面における情報提供のレベルは業界によって異なるため、段階を踏まえた方法としていただきたい。また、製品選択の際にも、最終的な分別回収時の情報が提供される必要がある。

大塚座長:適正分別回収の観点からは、現時点では不要と思われる情報も今後必要となる可能性もある。

高岡委員:廃棄物の適正な分別回収は大変重要で、水銀が含有されていることが分かりにくい製品には表示があったほうがよい。また、水銀が封入されているのが外から見えるため表示は不要、という発表がいくつかの事業者からあったが、一般消費者が我々と同じように分かるかというと怪しい。ビジネスユーザー向け製品でも、最終的に一般消費者の手に渡ることもある。水銀が封入されていることが外から見える製品に関しても、表示は必要ではないか。

崎田委員:水銀体温計、水銀温度計及び水銀血圧計の適正な分別・処理の必要性については社会の中でしっかりと認識されていないのではないか。水銀含有量が非常に多いため、表示を徹底することが重要である。なお、水銀血圧計・水銀体温計の取扱事業者は小規模の場合が多いとのことなので、個社で水銀対策を実施するのではなく、業界全体で取り組んでいく必要があると考えられる。

東海座長:現状として、市町村によっては破損した廃蛍光管は焼却処分しても構わないというところもある。回収された蛍光管の処理を踏まえて、どういった情報を消費者に提供すれば水銀排出の低減に効果的なのか、整理する必要がある。資料1-4、5ページの札幌市の事例で「割れた蛍光管はリサイクル協力店に出せないため、燃やせないごみとなる」と記載があるが、個々の自治体レベルでの排出であっても、トータルで考えると水銀排出に影響がある。消費者が行動を選択する際には、もちろん購入時点や廃棄時点の表示を参考とするが、自らが住んでいる市町村における取り組みにも左右される。その点について、整理すればさらなる議論ができるのではと考える。

田村委員:本日の議論の中で、製品中水銀量には100倍~1,000倍と大きな幅があることに改めて気づいた。また、LEDランプのパッケージに「今あなたが取り替えようとしている蛍光灯には水銀が含有されているため、適切に回収される必要がある」といった表示があるほうがよいとのご意見に関しては、そのような考え方もありうるなと納得した。情報提供について、製品特性も含め業界ごとに取組状況に相当差があるため、特定の方法をガイドラインに示すことは困難かもしれない。分別廃棄や製品選択の際に参考となる取組事例の紹介を行い、各業界が自ら判断して方法を選択できるようなガイドラインとしたほうが取り組みやすいのではないか。

大塚座長:資料2、29ページの日本圧力計温度計工業会からのコメントで、「販売先の事業者では、安易な廃棄は生じにくい環境にあると認識している」という点については、他業界からも同様の意見があったところだが、高岡委員からも指摘があったとおり、ビジネスユーザー向けの製品であっても、最終的に一般消費者の手に渡る場合もある。一般消費者の手に渡らなくても、処理業者により製品が扱われるため、表示は不要と決めつけるのではなく、何らか工夫をしていただきたい。

環境省:東海座長からも御指摘があったが、水銀使用製品の分別回収を行っていない自治体があるところ、これを進めるためにガイドラインを作成している。分別回収の実効性を考えると、どの製品に水銀が含有されているかということが明確になっていると良く、出来る限り表示を行う方向で検討していただきたい。

(3)主な水銀使用製品のリスト

(事務局より資料3の説明。)

崎田委員:前回検討会では、今後製造が続いていく製品と、製造が廃止されていく製品が識別できるようなリストが望ましいと発言したが、それ以上に様々な事項を追記していただけたと感じている。製品の処理に関する情報が少ないという委員の意見があったと聞いているため、本リストを活用いただければと思う。

高岡委員:水銀廃棄物の環境上適正な管理に関する検討会では、本リストの活用方法や今後の更新の予定に関して質問があったが、本検討会ではどのようにリストを扱っていくのか。

大塚座長:本日の御意見を踏まえ修正等を行うため、修正点があればご意見を伺いたい。

高岡委員:特に修正はないが、どのようにリストを活用していくのか伺いたい。

環境省:今後水銀使用製品も変わっていくため、アップデートの必要があると考えている。また、リストをどのように活用していくかという点に関して、資料1-2に示したように第6回水銀廃棄物適正処理検討専門委員会の資料中で掲載された。来年度策定予定の水銀廃棄物ガイドラインにも掲載することを想定している。

蒲生委員:リストの備考の記述の多くが「2020年末日より製造・輸出入禁止」とある。今後どのように表示をするか議論していくわけであるが、製品の退蔵等を考慮した上で、表示や分別をやめる時期についても、今の段階から議論しておいた方がよいのではないか。

崎田委員:製造が中止され、市場から製品がなくなった段階で、表示もなくなると考えられるのではないか。

大塚座長:崎田委員と同様の意見である。

蒲生委員:表示や分別が自然になくなるのであればそれでも良いが、どういう場合に表示や分別を継続して、どの時点で止めるのかの検討が必要なのではないか。

大塚座長:リストで「今後使用される見込み」とある製品については、蒲生委員のおっしゃるとおり表示をやめる時期についても議論しておいた方がよいかもしれない。

蒲生委員:例えばであるが、蛍光灯の要回収に関する表示はLEDランプにもあってもよいのではと発言したが、これについても表示が不要となる時期が出てくると考えている。

大塚座長:LEDランプに何らか表示をすることになれば、表示をやめる段階についても別途検討が必要になるかもしれない。リストについては本日の御意見を踏まえて取りまとめる。

(4)その他

(説明事項は特になし。)

事務局:本日の議題に関して追加の御意見がある場合、12月4日(金)までに事務局にお送りいただきたい。次回検討会は2016年1月29日(金)14-16時、本日と同じ会場で開催する。

以上