保健・化学物質対策
平成26年度第2回水俣条約対応技術的事項検討会 議事録
日時
平成27年3月27日(金)13時00分~15時10分
場所
TKPガーデンシティ永田町 ホール2D
出席者
出席委員
大塚直(共同座長)、東海明宏(共同座長)、蒲生昌志、高岡昌輝、田村暢宏
出席事業者
電池工業会、日本照明工業会、日本試薬協会、日本鉱業協会、野村興産株式会社
政府出席
環境省環境保健部環境安全課、経済産業省製造産業局化学物質管理課
政府傍聴
環境省、外務省、文部科学省、文化庁、厚生労働省、農林水産省、国土交通省、防衛省
議題
- (1) 検討の進め方及びスケジュール(進捗報告)
- (2) 事業者に対するヒアリング
- 1.製品製造等禁止の適用除外の範囲
- 2.製品製造等禁止の水銀含有基準及び開始時期
- 3.既存用途製品の洗い出し
- 4.水銀等保管の状況
- 5.水銀含有再生資源の管理の状況
- (3) その他(今後の予定等)
議事録
(1)検討の進め方及びスケジュール(進捗報告)
(環境省より資料1-1、1-2、参考資料6、事務局より参考資料7について説明)
(質問なし)
(2)事業者に対するヒアリング
1.製品製造等禁止の適用除外の範囲
(事務局より参考資料8の説明)
高岡委員:参考資料8、6ページの表3について、EU改正電池指令では2015年9月30日までは2重量%を越えないボタン電池は適用除外だが、2015年10月1日からは全ての電池について5ppm規制が適用されるということでよいか。
事務局:おっしゃるとおりである。
大塚座長:EU では改正電池指令により電池には5ppm 規制がかかり、米国も2016年までに全ての電池が水銀フリー化される見込みとのことだが、電池工業会の資料2-2-2には、国内において基準値を「1%未満」に深掘りするのであれば対応可能とある。欧米では水銀使用の大幅な削減が可能である一方で、日本では難しいのはなぜか。また「1%未満」という基準値の根拠は何か。
経済産業省:その点に関しては、次の議題で扱うこととしたい。
蒲生委員:参考資料8、2ページの表1で「「一般的な照明用」でないものはそもそも対象外。」という記載があるが、意味が分かりづらい。
事務局:「一般的な照明用」でないもの、つまり特殊用途のランプについては、条約の規制対象外であるという意味。特殊用途には、例えば殺菌用ランプが該当する。
環境省:分かりづらい表現だった。参考資料5、第2回合同会合における日本照明工業会の提出資料のスライド13で「一般的な照明(lamps for general lighting purpose)」の定義が示されている。この定義に該当するものが「一般的な照明用」ランプであり、それ以外が特殊用途と整理される。
2.製品製造等禁止の水銀含有基準及び開始時期
(事務局より参考資料9について説明)
東海座長:まず、事業者より意見等あればお願いしたい。
日本照明工業会:参考資料9、8ページに「水銀含有量低減、水銀フリー化に向けた今後の見通し」が示されているが、テレビ等に用いられる冷陰極蛍光ランプ(CCFL)及び外部電極蛍光ランプ(EEFL)については、ほぼLEDに転換済みである。参考資料5でもお示ししているが、バックライト用冷陰極蛍光ランプの生産量は2008年時点で約6億本あったものの、2012年にはその約4%まで減少しており、2013年以降、経済産業省の機械統計からも外されている。
電池工業会:参考資料9、7ページの表4でボタン形電池の水銀含有量の現状が示されている。脚注3にも説明があるが、この数値は国内流通する全てのボタン形電池の平均値であり、無水銀電池の流通量も含めて平均を算出している。例えば酸化銀電池については、2010暦年で計348トンの製品(有水銀、無水銀の合計)が製造され、水銀使用量は378kgであった。このため、水銀を含む酸化銀電池のみで平均水銀含有量を算出する場合、0.1重量%とはならず、1%に近い値となるだろう。その他の電池も同様である。
経済産業省:資料2-2に各事業者の提出資料がある。こちらについても、御説明いただきたい。
日本照明工業会:資料2-2-1を提出している。規制の深掘り・前倒しについては、HPMV以外のランプについては条約上の基準を現時点で達成している。それらのランプについてはLEDへの転換を目指しており、こちらを推進していきたいと考えている。前倒しについて、HPMV以外のランプについては即時対応が可能である。ただし、非会員の製造事業者や輸出入業者に対する配慮が必要であり、猶予期間が2~3年必要と考える。HPMVの前倒しは、中小企業を含む製造サプライチェーンに係る全ての企業がスムースな事業転換を実現するために、避けるべきと考える。製造には30社以上の中小企業が関わっているケースもあり、また消費者は他光源への転換を進める必要もあり、前倒しは製造業者、消費者の混乱を生じさせる。課題として、試買調査は歓迎するものの、個々のランプの水銀封入量のばらつきや測定精度について配慮していただきたい。測定精度が±10%程度と推定され、例えば5mg基準を上回る製品が出てしまう可能性がある。
電池工業会:資料2-2-2を提出している。本資料は電池工業会の会員企業の意見を集約したものであり、非会員企業の実態や意見は反映していない点に留意していただきたい。また、ユーザー側の意見も別途聴取する必要があるのではないかと考える。まず酸化銀電池については、会員企業でもEUの5ppm基準をクリアする技術は有しているものの、EUの規制は輸出品には適用されないことから、我が国の規制が輸出品にも及ぶ場合には、EU域外の市場において国内企業が不利益を被る可能性がある。また、日本や欧米が含有量基準を引き下げた場合に、価格競争力のある有水銀電池が市場を奪い、世界的に電池への水銀使用量が増加することを懸念している。これらを踏まえ、基準値の深掘りについては「1%未満」であれば対応可能と考える。空気亜鉛電池については、国内でも外資企業によって無水銀品が販売されていることは承知しているが、日本の高温多湿な環境下で安全性が確保されているかどうか、確信がもてておらず、深掘りに応じることはできない。アルカリボタン電池については、国内企業でも2020年に向けて無水銀の開発を進めているため、前倒しに応じることは難しい。アルカリボタン電池以外の電池については、「1%未満」の深掘りを含め規制値を達成済みであり、工業会としては即時対応可能である。
経済産業省:電池工業会より、非会員事業者への対応について意見があったが、経済産業省としては一定の周知期間を設ければ、とくに問題は生じないものと考える。
大塚座長:電池工業会への質問。欧米における電池に関する水銀含有量規制のほうが日本よりも厳しいが、それについてどうお考えか。また、基準値「1%未満」の根拠は何か。基準値を1%未満と設定しておけば、国内製造品は国際市場で売れると想定しているか。資料2-2-2の酸化銀電池の部分で「水銀含有基準値を引き下げた場合...結果として世界規模での水銀使用量がむしろ増加することを憂慮する」とあるが、これは本当か。基準値を引き下げても、国際市場における水銀使用量は変わらないのではないか。
電池工業会:「1%未満」については、会員企業でも無水銀化に対応できているところとそうでないところがあり、水銀含有量の削減達成度も異なるため、会員全体が達成できる値としてお示ししている。欧米の規制について、米国では州法のほうが先行している。欧州ではドイツやスイスに電池メーカーが存在するが、EUの規制はEU市場への上市に限られているため、輸出品には適用されない。また価格競争力について、無水銀電池のほうが有水銀電池に比べて価格は高い。水銀含有量1%程度の電池は有水銀の範疇であり、各社多少ばらつきがあるとしても、価格競争で海外製に負けるということはないのではないか。
蒲生委員:ランプの水銀含有量について、条約では例えば一般照明用のコンパクト蛍光ランプは5mg基準となっていて、測定精度によって製品によってはこれを超えることが考えられるため抜き取り調査の際は留意すべきという指摘が業界よりあったが、実際の製品の水銀含有量はどの程度で管理されているのか。
日本照明工業会:例えば条約の基準を超えてはならない場合、製造側としては自主的にこれよりもやや低いレベルで製造管理を行う。平均プラス2~3シグマ程度で管理するため、例えば条約基準5mgの場合、3.5mg~4mg前後の含有量となるように設計で狙う。しかし、統計上、あるいは不良品も出てくるため、条約基準を超えるものを無くすことは難しい。そのため、試買調査等を実施した際に、1本が基準を越えたからといって全てが問題ありという判断をしていただきたくない、という趣旨で申し上げている。例えば5本くらいの測定値の平均を取るなど、あくまでも平均値で判断していただきたい。
蒲生委員:説明を踏まえると、例えば蛍光ランプは3.5(mg/本)といった水銀含有量で管理されているということでよいか。
日本照明工業会:おっしゃるとおりである。
高岡委員:参考資料9、8ページでは蛍光ランプの水銀含有量が6.9(mg/本)と示されているが、現状はその半分程度の水銀含有量で製造管理がなされているということか。
日本照明工業会:蛍光ランプの水銀含有量6.9(mg/本)は原単位である。会員企業における蛍光ランプ生産量で水銀使用量を割った値であって、1本ずつ測定して平均値を算出しているわけではない。例えば直管蛍光ランプについては、条約の線引きである60Wよりも大きいサイズのものも原単位の算出時には含まれるため、ずれが生じる。
高岡委員:条約でも、含有量基準が5mgのものと10mgのものがある。こうした異なる種類・サイズのランプを全て含んだ平均値という理解でよいか。
日本照明工業会:おっしゃるとおりである。
大塚座長:ランプについては、日本照明工業会で規制の前倒しを考えているとのことで、LEDへの転換は大変結構だと考える。電池については、業界で技術開発に取り組んでいるとのことで、日本の高温多湿な気候条件における安全性の確保という点も考慮して、1~2年後に規制の深掘り・前倒しについて再検討するという対応ではどうか。
高岡委員:大塚座長の御発言にも関連するが、電池工業会の会員企業としては水銀フリー化に向けて取り組みを進めていくという理解でよいか。条約では段階的廃止が規定されているため、条約の見直しによって2020年以降、水銀含有量基準がさらに引き下げられる可能性がある。そうした状況になった場合に対応していくことができるのか。
電池工業会:電池工業会としては、水銀フリー化に向けた技術開発を進めていくつもりである。
3.既存用途製品の洗い出し
(事務局より参考資料10、環境省より参考資料11の説明。)
日本照明工業会:資料2-2-1に示したとおり、業界としては水銀添加ランプの新用途はまったく想定していない。またランプは種類・用途が幅広く、個々の事業者の製品を全て詳細にリストに含めることは難しく、リストは大括りとした分類としている点に御留意いただきたい。
電池工業会:電池については、リストに記載のとおりである。
日本試薬協会:水銀化合物については、研究試薬として現状のリストでほぼ網羅されていると考えられる。
大塚座長:既存用途製品リストは今後も精査していただきたい。可能な限り網羅的なものを作成していくのだと思うが、リストに掲載されていない用途で既存と考えられるものが後から見つかった場合に、過去に使用されていたかどうかの審査をしっかりと行う必要がある。審査方法については、省令のどこかに書いておくことが考えられる。審査の最終判断は「水銀による環境の汚染の防止に関する法律案」の第28条第2項第3号にあるように事業所管大臣、環境大臣及び経済産業大臣が判断するということが適当。
環境省:後から見つかった場合に追加できるのか、という懸念について、様々な方面から意見をいただいている。既存製品だった証拠があるものについてはきちんと対応できるように、方策を検討したい。
田村委員:表下の注2の記載ぶりが分かりづらいのではないか。例えば、冷凍庫・冷蔵庫に使用されるランプは使用条件を逸脱しているから、新規用途とみなされるのか、といった誤解を生じる恐れがある。
環境省:新用途は全くの未知の用途のため、記載ぶりが難しい面もあるが、例えばボタン形電池をいくつか繋げてショートさせ、過電流を流すといった、メーカー側としても到底保証していないような用途について、既存用途とはみなさない、という意味で書いている。
高岡委員:第1回検討会でも伺ったと思うが、政省令制定に向けて、本資料の表1と表2のような分類で検討を進めていくということでよいか。将来的にはどのような形になるか。
環境省:省令策定時に表が統合される可能性はあるものの、基本的には現状の分類で精査していくことになる。表2は水銀及び水銀化合物の用途、表1は販売時に水銀が含まれている製品、という整理である。例えば8ページに「灯台のレンズ浮揚用」という用途があるが、灯台のレンズ回転装置は部品として納入される際には水銀が含まれておらず、灯台設置後に水銀を流し込んで使用するものであるため、表2に含めている。2つの表で重複はあるものの、片方のみだと漏れが出てしまうため、このような整理としている。
高岡委員:一部の水銀化合物で、半導体物質に使用されるものがあるかもしれない。経済産業省の安全保障貿易管理[文末脚注1]でも、テルル化水銀カドミウムを用いた半導体物質に関する規定がある。これらを表2に追加すべき。
環境省:あとで関連するデータをいただきたい。
4.水銀等保管の状況
(事務局より参考資料12の説明。)
環境省:補足だが、水銀化合物の保管状況については、参考資料7で示した文化財修復・伝統工芸関係のヒアリング結果から追加できる情報もあるため、今後資料に反映させたい。
日本試薬協会:資料2-2-3を提出している。保管については、毒劇法に基づく管理を行っている。そのほか、労働安全衛生法、化学物質管理促進法、貿易管理令に基づき管理を実施している。9ページにあるとおり、高純度水銀や純度の高い単一化合物を取り扱うため、表示を含め管理を徹底している。破損についても、対策を講じている。製品の廃棄は生じない。サンプリングで使用した水銀の廃棄は生じるが、少量のサンプリング用水銀は一定期間保管し、産廃業者に処理委託している。
野村興産:資料2-2-5を提出している。水銀及び水銀化合物の保管は、毒劇法に基づく構造の場所で行っている。金属水銀保管場所は2か所ある。
1)内壁をウレタンにしているのは、寒い場所にあるため、作業者の環境改善のために断熱することが目的。不法に侵入した場合、警報機が鳴る。保管量は50トンと示しているが、回収量及び販売量によって、10~200トンの幅でばらつきがある。
2)原料保管、製品保管は異なる事業所にあるが、事業所全体がセキュリティ会社に管理されている。庫内の作業環境測定を実施している。5トン程度の水銀を鉄製のフラスコ(内面樹脂コーティング)で保管している。
水銀化合物については、数十キロを保管しているが、こちらも量にはばらつきがある。硫化水銀は一斗缶に入れて保管している。特定の水銀化合物から別の水銀化合物を製造する場合もあるため、ここに掲げたものは製品として売るものもあれば、原料として使用するものもある。庫内の環境測定は1か月に1度行っている。水銀化合物の生産状況だが、銀朱以外は数十キロとなっているが、年によってばらつきがある。バッチで湿式製造しており、受注生産している。例えば10kg作って、5kg保管することもあるが、劣化する場合には再び金属水銀に戻すこともある。
田村委員:参考資料12、4ページに「中性子を発生させるための水銀標的」とあるが、これは参考資料10の既存用途製品リストではどこに該当するか。
環境省:表下の注1で示しているが、試験研究用途は全て既存用途とみなしている。
大塚委員:保管の基準について、硫化水銀は水銀及び他の水銀化合物に比べて安定しているため、扱いを変えたほうがよいのではないか。定期報告の頻度を緩めるとか、何らか指針を緩くしなければ、伝統工芸での使用等で困るのではないか。
高岡委員:参考資料12の5ページにあるとおり、硫化水銀(辰砂)は毒劇法の対象外である。他の水銀化合物よりも毒性が低いため、基準を別途検討する必要があるかもしれない。
野村興産:資料2-2-5で管理指針について意見を提出している。1点目として、水銀及び水銀化合物について、その特性、量、保管形態を考慮した合理的な管理指針としてほしい。また、管理指針等が運用される際、例えば暫定保管場所の判断といった事項について、自治体によって地域的に温度差が生じる可能性があるため、公平性を担保してほしい。
環境省:指針について、とくに運搬を含めるかどうか迷っている。参考資料12の5、6ページにあるとおり、毒劇法では、保管に関する義務対象者は特定されているが、運搬については義務対象者を特定していないため、硫化水銀(辰砂)以外の水銀及び水銀化合物は毒劇法で運搬がカバーされていると言える。毒劇法でカバーされない硫化水銀(辰砂)は毒性が低いためリスクは低いものの、運搬についてどうすべきか御意見を伺いたい。
高岡委員:硫化水銀は毒劇法の対象外のため、保管も運搬もカバーされていないという理解でよいか。
環境省:おっしゃるとおりである。毒劇法の対象である水銀及び水銀化合物については、運搬に関してもカバーされている。
高岡委員:毒劇法に則って基準を設定すべきではないか。
蒲生委員:保管の指針の検討において、毒劇法や消防法といった既存法を参照しているのはよいが、もともとの主旨は水銀の環境中への漏洩を防ぐことであり、参照している既存法の要件がこの点をきちんとクリアしているかどうか、確認が必要である。
経済産業省:条約上はstorage(貯蔵・保管)に関して適切な措置をとることが求められているため、貯蔵の指針については条約上の義務を履行するために定める必要があるものの、運搬に関しては条約上の明文化された規定はないため、そもそも運搬に関する指針を我が国として独自に定める必要があるかどうか、というところから検討を行う必要がある。
5.水銀含有再生資源の管理の状況
(事務局より参考資料13の説明。)
日本鉱業協会:資料2-2-4を提出している。会員企業において、銅・鉛・亜鉛の製錬工程で水銀がスラッジ中で濃縮され、回収される。原料の精鉱の水銀濃度は通常1ppm程度だが、高いものは100ppmを超えるものもあり、平均すると10ppm弱である。水銀はほぼ全量がガス化するが、ガスを洗浄する際に水銀がスラッジに移行する。資料では非鉄金属製錬スラッジの発生量は659トンとのことだが、年間ではドライで400トン程度発生し、水銀が40トン程度回収され、野村興産のイトムカ鉱業所で処理される。スラッジは微量ながら金・銀・銅を含んでおり、有価である。製錬工程に戻し、これらの希少金属を回収する。各社で安全環境上、問題無いような保管を何十年も行っている。昨年10月に、協会として自主的な管理指針を作成した。スラッジを入れる容器はビニールに入れ、ドラム缶に入れて蓋をして、保管するといった内容。フレコンを使用し、専用の容器に入れる場合もある。取扱者には、ラベルの表示を把握できるように教育している。製錬所には守衛がおり、防火体制も確保されている。敷地外に置く場合は、施錠できる場所に保管する。漏洩した場合の対応についても定めている。
大塚座長:保管指針に運搬を含めるかということだが、以前に日本鉱業協会に対するヒアリングの際に、運搬中の事故があったという報告をいただいたことがある。水銀含有再生資源には毒劇法が適用されないため、保管指針に運搬を含めたほうがよいと考える。その場合、水銀含有再生資源と廃掃法上の廃棄物の隙間の無い制度設計という観点では、水銀の保管指針にも運搬を含めるかどうかの検討が必要となってくるかもしれない。
環境省:第3回合同会合の追加資料の中で、ドラム缶での運搬中に事故があったという情報を提供していただいた。非鉄金属製錬スラッジについては、毒劇法の対象外と認識されているということでよいか。
日本鉱業協会:毒劇法の対象外と認識している。
(3)その他
(事務局より資料3の説明。)
田村委員:電池の水銀含有量分析方法について、底質調査方法では±10%程度の誤差が見込まれているはずなので、確認していただきたい。資料3、5ページの測定結果で、分析のばらつきを表す変動係数を示していただいたが、変動係数0.94というのは極めて大きい。有水銀電池と無水銀電池の両方が含まれているのではないかと思われるほどの大きなばらつきである。これが分析の誤差なのか、電池の水銀含有量のばらつきによるものなのか、確認する必要がある。今後同様の水銀含有量分析を実施する場合、こうしたばらつきの可能性について留意すべきである。
事務局:資料3、6ページで脚注に示しているが、変動係数0.94についてはサンプル数が少なく、電池中の含有量のばらつきか、分析操作によるばらつきか判断が難しいものの、分析機関において確認のために複数回測定を実施したことから、今回は数値を採用した。
蒲生委員:電池の水銀含有量について、有水銀電池と無水銀電池で明確に量の違いが出るものと思っていたが、それほど違いはなく、有水銀電池には中途半端な量が入っているようにも感じられる。測定値の振れも考慮すると、有水銀とも無水銀とも判断される可能性があるのではないか。電池工業会の意見を伺いたい。
電池工業会:ボタン形電池のサイズは様々で、各電池の製造における水銀の使用量は、水素ガスがどれだけ発生し、どれだけ吸着するか、また電池の構造にどれだけ余裕があるかといった条件によって異なる。各事業者の技術によっても異なる。メーカーが異なれば、同じ型番の電池であっても、微妙に水銀含有量が異なる。
蒲生委員:今回の分析結果において水銀が多少でも検出されたものについては、意図的に水銀を使用している電池と考えてよいか。
電池工業会:EUの基準でもあるが、5ppm未満の含有量であれば、無水銀電池とみなしてよいだろう。今回のように数十~数百ppm程度であれば、意図的に水銀を使用している電池と考えてよい。
環境省:今年度実施した試買調査では予算が限られており、試買対象が比較的安価な製品であったため、結果として安価なアルカリボタン電池のみが回収される結果となった。なお、アルカリボタン電池は条約上、2020年までに水銀含有ゼロとすることとされており、適用除外は設けられていない。
田村委員:ボタン形電池では、どの部分に水銀が含まれているのか。
電池工業会:負極の部分に水銀が含まれる。例えば、亜鉛アマルガムのような電池材料が負極部分に用いられている。
東海座長:今後、同様の試買調査を実施する場合、例えば電池工業会の非会員企業が製造する電池を注視するといった方法もあるのではないか。
電池工業会:表1に掲載されている電池メーカーは、ほとんどが非会員である。
環境省:予算を確保した上で、経済産業省とも協力の上、体系的に調査を実施していきたい。
田村委員:電池の水銀含有量の測定方法は、IEC規格等で規定されていないのか。
事務局:今回の調査は実施期間が短く、水銀含有量分析手法に関し十分な事前調査が出来ず、分析機関において分析手法を選定していただいた。日米欧の電池工業会による、電池中の水銀含有量測定に関するガイドラインがあるため、そうした文献を参照し、次回の検討会でお示ししたい。また今後の調査でも、分析手法については十分に検討したい。
事務局:事業者に対する追加の質問等がある場合は、1週間後の4月3日(金)までに事務局までお知らせいただきたい。第3回検討会は5月22日(金)18-20時、予備日を6月5日(金)18-20時で予定している。会場については決まり次第ご連絡差し上げる。
以上