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第1回 生態系保全等に係る化学物質審査規制検討会
議事要旨


日  時平成13年10月5日(金)14:00~17:00

開催場所環境省第2会議室(合同庁舎5号館23F)

出席委員
中杉委員 飯塚委員 池田委員 井上委員 大塚委員
鳥居委員 中下委員 畠山委員 吉岡委員 若林委員
欠席委員北野委員
事務局
岩尾環境保健部長小沢企画課長
安達環境安全課長早水化学物質審査室長
鈴木環境リスク評価室長江口企画課課長補佐
新田化学物質審査室室長補佐 他
オブザーバー厚生労働省医薬局化学物質安全対策室
経済産業省製造産業局化学物質安全室 他
議事
(1)議題1 検討会の設置趣旨について
  • 早水室長により、資料2に基づき検討会の設置趣旨について説明。中杉委員が座長に選出され、了承された。中杉座長より、池田委員が座長代行に指名された。
  • 本日配付した全ての資料については、公開することとされた。
(2)議題2 「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」の運用状況について

事務局より資料3について説明。主な議論は以下のとおり。

1)確認事項
  • 少量新規化学物質について、複数の届出者が同一の物質の申出をした場合はどうするのか。→調整して合計1トン以下にして確認している。
  • 既存化学物質点検の計画はどうなっているのか。→分解性、蓄積性は経済産業省が、毒性は厚生労働省が計画的に試験を実施していると聞いている。
  • 化審法24条に基づく有害性調査の実施事例が過去にあるか。→第2種特定化学物質を指定した際に実施している。
  • 本検討会では化審法のみについて議論するのか。他法令との関係を整理しないのか。→他法令はそれぞれの担当部局で議論が行われていると思うので、本検討会では主に化審法について検討していただきたい。
  • 化審法についてどの程度まで検討するのか。→化審法に生態系保全の観点を導入することについてを中心に議論していただきたいと思っているが、これらに付随する現行の化審法の見直しの議論もあると考えている。
2)制度・施行に係る指摘事項
  • 現在の化審法では難分解性かどうかを判断しているが、良分解性で生物影響がある物質もあるので、難分解性かどうかにとらわれる必要はないのではないか。
  • 既存化学物質の点検が進んでいないことや、指定化学物質から第2種特定化学物質への指定があまりなされていないことなどから、化学物質の安全性を評価するシステムに問題があるのではないか。→化審法の審査規制体系のあり方については、今後の検討会で議論していきたい。
  • 生態系の保全を図るための行政措置として、化審法が適当であるのかどうかということを十分議論する必要がある。
  • 既存化学物質の安全性の点検を速やかに進捗させる必要があり、企業に実施させるという方法もある。 OECDの HPVプロジェクトでは企業も参加して高生産量化学物質の点検のペースを早めようとしているところ。
(3)議題3 化学物質の審査・規制における生態系保全の観点の必要性について

事務局より資料4-1~4-3により説明。主な議論は以下のとおり。

1) 確認事項
  • 短鎖塩素化パラフィンは、 IARCの評価が2Bであるので、資料 4-3に書いてあるように発がん性ありと言えるほどではない。→資料の表現を修正することにする。
  • モニタリングは重要であるが、検出限界の問題や、塩素化パラフィンのうち短鎖のものだけを分離して分析できるかは確認しておくべき。
  • 資料に「白物質」という言葉が出てくるが、非指定物質などという言い方にすべきである。→資料の表現を修正することにする。
2)化学物質による生態系への影響について
  • 資料 4-3で新聞報道を整理しているが、事故的な影響と化審法はどう関係しているのか。→現在の化審法では事故による影響は考慮していない。しかし、水生生物の保全を考慮した場合、事故にみられる突発的な影響も考える必要があるため、今回資料として提示した。
  • 新聞報道や水産庁の資料に掲載される事例は、魚類等、比較的大型の生物が対象となっている。しかし、自然界では目視で確認できない小型の生物についても、化学物質によりかなりの影響を受けているという研究報告例もある。
  • 新聞記事は事故事例だけではなく、生態系保全の必要性を示した資料と考えることができる。河川水にミジンコを入れると死亡するという報告や、大河川でも同様の事象が生じている報告もある。つまり、現在の水環境は、生存できる生物しか生息しておらず、影響を受ける生物がいないのであるから結果的に被害も報告されないとも考えられる。
3)化審法における生態系保全の観点の必要性

  [1]基本的な理念について
  • 環境省としての「理念」が見えない。理念が明確になれば、生態系保全の観点を化審法に導入する必要性も明らかとなる。→生態系保全を含め環境の保全に関する基本理念については、環境基本法で記述しているとおりである。
  • 理念だけでは対策が進まない。理念は環境基本法で充分ではないか。排水規制や化審法で対策を講じることが必要。
  [2]生態系への影響から
  • ミジンコの毒性値を安全係数で除した場合、黒本調査等で得られた環境中濃度に比べてかなり低い値となる化学物質が少なくない。
  • 化審法は人の健康保護を目的とした法律であるが、生態毒性試験のデータが提出され、審査の議論に生態影響が含まれることもある。しかし、法律上は生態影響のデータは義務付けられておらず、自主的に届け出られたものだけが議論されるという不公平感がある。環境省においても審査の観点は人への影響になるので、それだけでよいのかという印象があり、その意味でこの検討会は意味がある。
  • 生態系の保全のために必要な事項は何か、どのような体系が有効なのかを明確にする必要がある。生態系への影響については、生活排水や土砂等化学物質以外の影響も考えられる。また、現実的には新規化学物質よりむしろ既存化学物質が生態系に影響を与えているのではないか。こういう状況のなかで化審法の中に生態系の保全を導入すべきかをよく議論しなければならない。
  • 我が国の化学物質の審査規制体系に生態系保全の観点が入っていないことには驚きを覚える。上市前の新規化学物質の審査規制体系において生態系保全の観点は必要であり、環境保全の観点から未然防止を図ることは当然のことと思う。
  [3]他の法制度、外国の制度との関連から
  • 化審法は入口で全体を抑える規制であり、まず個別の排出規制等、他の手段で対応できないかどうか検討した上で化審法での対応を考えるべき。
  • 排水への規制を強化して生態系保全を進めるということも考えられるが、排水基準などを短い期間で多くの物質に対して設けることは難しい。入口側における生態毒性の評価は必要である。
  • 欧米における化学物質の審査規制体系は、生態影響試験が考慮されたものとなっている。我が国の化学物質製造者は、輸出する際は当該国の制度で審査を受けることとなり、国際的な整合性という観点からも矛盾が生じている。
4)法律の整備について
  • 実際に生物への被害が生じない限り法整備できないのか。→被害が生じないと法制度ができないことはない。予防的なアプローチは法律上可能。今後本検討会で議論していただきたい。
  • ダイオキシンについても、我が国で因果関係が明確にされた死亡例があったわけではないが法律が作られた。それと同じではないか。
  • 例えば PRTR法や12物質の排出削減を図っている有害大気汚染物質対策は「規制」ではなく「自主管理」である。生態系の保全を自主管理で進めるという考え方もある。→既存化学物質についてはいろいろなやり方があると思うが、新規化学物質については化審法以外の仕組みはあり得ないのではないか。
5)生態系保全という観点の導入に関して
  • 化審法における濃縮度試験の導入により、 POPsに該当する物質の有害性を予見できたという前例がある。EUでは、藻類、甲殻類、魚類の試験がセットとして実施され 20年たった。 EUの事例について、本当に意味があるのか、逆に充分なのか等を評価した上で、我が国における審査スキームにおいてもこの3生物群の試験で十分であるか等の検討も必要。また、この試験を導入することにより、どういう効果が得られたかについても情報を集める必要がある。→ EUではラベリング制度があり、この情報を収集することは可能。生態影響試験については GESAMP(海洋汚染について科学的観点から助言する専門家グループ)での評価例もある。しかし、これらの規制が実際にどのような効果をもたらしたかを実証することは難しい。
  • 欧米における化学物質の審査規制体系には、生態影響試験が考慮されているが、強制的なものではないものもあると聞いている。欧米における正確な情報を整理して欲しい。→欧米における実例は次回以降の検討会で紹介する。
  • 欧米における審査規制体系にあわせるのか。→そうではない。
  • 生態系保全の観点のうち、何が必要なファクターかを考えるべき。化審法のスキームに入れるべきかも含めて、「生態系保全とは何か」をまず議論すべき。
  • 「化学物質は生態系に影響を及ぼす」という認識が出てきたのは最近のこと。生態系保全の観点は、例えば第3種特定化学物質などとしてでも法律に入れて行くべき。
  • 生態系を侵すファクターとしては毒性と暴露をかけあわせたリスクで見るべきであり、そうした考え方が化審法のスキームにあうか検討すべき。
6)その他
  • POPs条約(3条3項)への対応が必要である。
  • 化学物質による生態影響を研究している国内の研究者は限られており、人材も不足している。今後、化学物質による生態系保全を推進していく上でも課題の1つである。
7)まとめ
 最後に、中杉座長が本日の議論について、「化学物質対策に生態系保全の観点を入れることが必要、ということについては各委員とも異論はないが、その方法については特に第3回目以降の検討会において十分な議論をする必要がある。」ととりまとめた。

(4)議題4 その他
  • 次回検討会は10月25日に開催することとされた。