放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料
(令和2年度版、 HTML形式)

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第4章 防護の考え方
4.4 長期的影響

降下・沈着したセシウムの環境中での移行

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東京電力福島第一原子力発電所事故によって環境中へ放出されたセシウムの分布は時間経過と共に大きく変化しました。事故直後に樹皮や枝葉に付着したセシウムは落葉や降雨等によって林床へと移行し、現在では90%以上が地表から5cmの深さまでにとどまっていることが分かっています。一方で、地表面付近のセシウム減少量が物理減衰による減少よりも大きいことから、僅かに地中方向に移動していることが推測されています。
セシウムは特定の粘土鉱物に強く吸着する性質があり、水中にはほとんど溶け出しません(上巻P181「環境中での放射性セシウムの動き:粘土鉱物による吸着・固着」)。また、風等による大気中への再飛散も現在ではほとんどないことが分かっています。これらのことから、森林から生活圏へのセシウムの流入は少ないことが予想されています。
上の図は、森林に降下・沈着したセシウムが上流から河口にあるダム湖に流れ込むまでの過程をイラストで示したものです。2つの拡大図は林床とダム湖底質をそれぞれ表しており、どちらもセシウムが土壌表層に堆積していることが分かります。
セシウムは、急流においては土粒子に吸着した状態で下流へと運搬され、緩流においては堆積する傾向にあります。また、上流にダム湖がある場合、セシウムがダム湖によってせき止められるため、下流へのセシウムの流出が少ない傾向にあります。さらに、台風や大雨等によってダム湖水位が高くなった場合においても、ダムの放流口付近の底質の流速が遅いため、堆積土壌の巻き上げはほとんど起こらないことが分かっています。

本資料への収録日:2016年3月31日

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