放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料
(平成30年度版、 HTML形式)

第3章 放射線による健康影響
3.8 こころへの影響

専門家グループの見解 -チェルノブイリ原発事故-

専門家グループの見解 -チェルノブイリ原発事故-
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チェルノブイリ原発事故によりどのような精神医学的影響が見られたのか、精神医学と予防医学を専門とする研究グループが2011年に論文を発表しました。
事故直後に現場で作業した高いレベルの放射線に被ばくした集団は、事故から20年経過してもまだ抑うつと心的外傷後ストレス障害(PTSD)の割合が高いことが分かっています。事故発生時に、原発周辺に住んでいた、あるいは高汚染地域に住んでいた幼児や胎児への影響は、研究によって結果は様々です。例えば、胎内被ばくした子供たちについて、キエフ、ノルウェー及びフィンランドで行われた研究結果では、特異的な精神心理学的及び心理学的障害があったことを示唆していますが、他の研究ではそのような健康障害は見つかっていません。また一般集団の研究では、自己申告による健康状態の不調、臨床的あるいは前臨床的な抑うつ、不安及び心的外傷後ストレス障害の割合が高いことが分かっています。そして母親は、主に家族の健康のことがいつまでも気になっていて、精神医学的観点からは、高リスクグループにとどまっています。
チェルノブイリ原発事故の場合は、こうした症状の原因全てが、放射線への不安に帰するわけではありません。政府への不信、不適切なコミュニケーション、ソ連崩壊、経済問題及びそのほかの要因が関係していますし、おそらくはそのうちの一つが原因というよりは、いくつかが複合的に作用していると考えられます。

本資料への収録日:平成25年3月31日

改訂日:平成29年3月31日

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