放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料
(平成30年度版、 HTML形式)

第3章 放射線による健康影響
3.1 人体への影響

確定的影響と確率的影響

確定的影響と確率的影響
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確定的影響の特徴は、これ以下なら影響が生じない、これ以上なら影響が生じるという「しきい線量」が存在するということです。しきい線量を超えると、一度にたくさんの細胞死や変性が起こり、影響の発生率は急激に増加します。
一方、放射線防護において、確率的影響にはしきい線量はないと仮定されています。この仮定に基づくと理論上どんなに低い線量でも影響が発生する確率はゼロではないことになります。100~200ミリシーベルト以下の低線量域については、放射線被ばくによる確率的影響を疫学的に検出することが極めて難しく、国際放射線防護委員会(ICRP)は、低線量域でも線量に依存して影響(直線的な線量反応)があると仮定して、放射線防護の基準を定めています。
低レベル放射線によるがんのリスクを評価する場合には、主に広島・長崎の原爆被爆者集団の疫学調査の結果を用いています。放射線被ばく線量とがん発生の関係はおよそ150ミリシーベルト以上では、ほぼ直線的に線量と共にリスクが上昇することが分かっています。しかし、150ミリシーベルトより低い線量では、直線的にリスクが上昇するかどうかは明らかではありません。また原爆のように短い時間に高い線量を受ける場合に対して、低い線量を長時間にわたって受ける場合(低線量率の被ばく)のほうが、被ばくした総線量が同じでも影響のリスクは低くなるような傾向が、動物実験や培養細胞の実験研究で明らかになっています。

本資料への収録日:平成25年3月31日

改訂日:平成28年3月31日

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