保健・化学物質対策

東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議 | 第10回議事録

日時

平成26年8月27日(水)

場所

イイノカンファレンスセンター RoomA(4階)

議事次第

  1. 開会
  2. 議事
    • (1)健康リスク評価を踏まえた健康管理のあり方について
      <ヒアリング>
       安村誠司先生(県民健康調査について)
       星北斗先生(県民健康調査について)
  3. 閉会

午後5時01分 開会

  • 得津参事官 本日は、お忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。定刻を過ぎましたが、ただいまから第10回東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議を開催いたします。
     まず、本日の出欠の関係でございますけれども、阿部委員、それから荒井委員、遠藤委員、宍戸委員よりご欠席とのご連絡をいただいております。また、丹羽委員におかれましては、遅れるという連絡が入ってございます。
     また、本日、ヒアリングでお越しいただく星先生につきましては、少し遅れて到着される予定となっております。
     次に、議事開始に先立ちまして、傍聴者の皆様へ留意事項を申し上げたいと思います。
     円滑に議事を進行させるため、事務局の指示に従っていただきます。お願いいたします。
     それから、傍聴中は、静粛を旨とし、発言、拍手などの賛否の表明や、これらに類することにより議事の進行を妨げる行為はご遠慮いただきたいと思います。また、ご質問、ご意見がある方につきましては、お配りした用紙にお書きいただき、事務局のほうにご提出をお願いします。
     次に、携帯電話等につきましては、音が出ないようにご配慮いただきたいと思います。
     そのほか、事前にお配りした内容について、ご注意をいただきたいと思いますので、よろしくお願いします。これらをお守りいただけない場合には退場していただくこともありますので、よろしくご理解をいただきますようお願い申し上げます。
     それでは、浮島政務官より開会の挨拶を申し上げます。
  • 浮島政務官 皆様、こんばんは。環境大臣政務官の浮島でございます。本日は数分遅れましたことを心からお詫びをさせていただきたいと思います。申し訳ございません。
     また、本日も夕刻からの時間にかかわりませず、また、お足元の悪い中、お集まりいただきまして、心から感謝を申し上げさせていただきたいと思います。本当にありがとうございます。
     また、これまでも9回にわたり、線量の把握、そして評価について重点的にご議論いただくとともに、健康影響等に関する検討を精力的に重ねていただきましたことに厚く御礼を申し上げます。ありがとうございます。
     また、本日は、この専門家会議の最も重要なテーマでございます、住民の健康管理のあり方に焦点を絞りましてご議論をお願いしたいと考えているところでございます。
     その中で、福島県で実施されております県民健康調査を含めましてご議論をいただきたいと思っておりますので、本日は、県民の健康調査の実施にご尽力をいただいております、福島県の公衆衛生学教授の安村先生、そして、福島県地域医療に携わりながら福島県民健康調査の検討委員会の座長を務められている星総合病院長の星先生にもお忙しいところ、お越しいただいておりますことを感謝申し上げます。また、これまでの取組や、今後の方向性などについてお話をしていただく予定となっておりますので、どうか最後までよろしくお願い申し上げます。
     健康の管理のあり方につきまして、専門的、そして科学的な知見からご議論をいただけることを期待申し上げて、私のご挨拶とさせていただきたいと思います。本日も長時間にわたりますけれども、どうか最後までよろしくお願い申し上げます。
  • 得津参事官 浮島政務官におかれましては、公務多忙により退席をさせていただきます。ご了承いただきますようお願いします。
     続きまして、本日お配りしました資料の確認をいたします。
     議事次第に配付資料の一覧を記しておりますけれども、資料1として、福島県「県民健康調査」と既存の健診・検診制度に関する概要、これを資料1として配っております。それから、資料2でございますけれども、集団における疾病頻度の変化の把握に活用可能な統計資料を資料2として配付させていただいております。それから、資料3でございますけれども、健康管理のあり方に関する主な論点(案)というものを配付してございます。
     それから、参考資料については、5種類ありますが、一つは、参考資料1でございます。福島県「県民健康調査」の概要、参考資料2として、第16回「県民健康調査」検討委員会資料、参考資料3として、福島県「県民健康調査」結果報告資料、こちらのほうは第7回の参考資料にも配付させていただいているものでございます。参考資料4として、WHO健康影響報告書概要、こちらのほうは9回のほうに配付をしておるものと同じでございます。それから、参考資料5として、専門家会議の開催要綱、こちらのほうを配付してございます。
     資料がそろっておりますことをご確認いただき、過不足等ございましたら、事務局までお申し出ていただきたいと思います。
     それでは、これより議事に入りますので、以後の進行につきましては、座長にお願いいたします。
  • 長瀧座長 それでは、ただいまから第10回の専門家会議を開催いたします。
     本日は、健康管理に関する論議ということが中心でありまして、先ほどご紹介ございましたけれども、安村先生と星先生に今日はお越しいただいております。よろしくお願いいたします。
     では、最初に事務局から資料の1についてご説明いただきます。
  • 佐藤補佐 お願いいたします。では、資料1をお手元にご用意ください。
     福島県「県民健康調査」と既存の健診・検診制度に関する概要をまとめたものでございます。この資料1を主に用いまして、県民健康調査についてご説明を申し上げたいと思います。あわせて、参考資料の1、2、3を適宜ご案内いたしますので、そちらもお手元にご用意いただければ幸いです。
     では、資料1の1枚目をおめくりいただきまして、県民健康調査の全体像でございます。まず、線量を把握ということで基本調査を、左上になりますが、こちらで3月11日以降の行動記録をとるという基本調査、ここで線量を把握するということになっておりまして、それに加えて、右側になりますが、健康状態を把握ということで詳細調査が4種類行われております。それぞれを束ね合わせて、仮称として県民健康ファイルというものの中で、住民個々人で管理をしていただくということとあわせてデータベースを構築し、そこで管理をしていくという形になっております。また、詳細調査の結果を踏まえて、下のところになりますけれども、相談・支援や治療につなげていくと、そのような構造になっております。
     これからのご説明では、まず、この詳細調査の中ですが、健康診査、そして甲状腺検査、こころの健康度・生活習慣に関する調査、妊産婦に関する調査、この順番で少しずつご説明を申し上げたいと思います。もちろん先生方の中には大変詳しい先生もいらっしゃるかと思いますが、基本的なご説明がこの専門家会議の中でしてございませんでしたので、その点ご承知おきいただきまして、説明を聞いていただければと思います。
     まず、健康診査、についてで、ございます。参考資料1を見ていただければと思いますが、参考資料1の2ページ目~4ページ目にかけて、こちらは福島県のホームページに掲載をされております健康診査の説明でございます。
     2ページ目を見ていただきますと。一番上の囲みのところですが、「福島県では、県民の皆様の健康を見守り、将来にわたる健康増進につなぐことを目的に健康診査を実施しています」とあります。
     そして、この健康診査は大きく二つに分かれておりまして、一つが、1、避難区域等の住民及び「基本調査」の結果必要と認められた方に対する健康診査。それから、少しおめくりいただきまして、4ページ目のところですけれども、避難区域等以外の県民の皆様に対する健康診査という、この二つの構造から成っております。
     お戻りいただきまして、2ページ目のところに、それぞれの年齢区分に応じた健診の項目が記載をしております。後ほど、検査項目につきましては別途ご説明をいたします。
     3ページ目をご覧いただきますと、26年度の実施方法ということで、県内・県外それぞれについて、県内の指定医療機関であるとか集団健診での実施といったような形で、さまざまな形で住民の方々が受けやすいような形を県のほうで工夫をされておりまして行われております。
     また、26年度のスケジュールは3ページ目の下半分に記載がされている内容となっております。
     4ページ目のところをご覧いただきますと、先ほど申し上げました避難区域等以外の県民に対するものということで、基本的には、既存健診・がん検診を受診勧奨するということ。また、既存健診の受診機会がない方(19~39歳)の方については、受診機会を持っていただくということになっております。健診項目につきましては、いわゆる特定健康診査を基本にした形になっているということになっております。
     これをご理解いただく際に、まず、日本の健診制度はどうなっているのかということを一旦ご理解いただいた上で、そこに上乗せして、このような県民健康調査の健康診査が行われていると、そういう形でご理解いただきたいと思いますので、先ほどの資料1にお戻りいただきまして、資料1の3ページをご覧いただけますでしょうか。資料1の3ページでは、日本の健診制度の概要をまとめてございます。詳細について、ここでは申し上げる時間はございませんけれども、概ね、乳幼児、児童生徒等、そして、成人になってから被保険者・被扶養者、そして労働者、その他ということで、さまざまな形で健康診査が制度として行われております。この中で実施義務があるものと、努力義務ということになっているものがありまして、特に実施義務があるということにつきましては、基本的には、日本全国どこにいらっしゃっても、こうした健診を受ける機会があるということになります。
     日本でもともと全国的にある健診制度にどのような形で県民健康調査の健康診査が上乗せになっているのかということを、資料1の4ページ以降でご説明をしておりますので、1枚おめくりいただけますでしょうか。既存の法定健診と県民健康調査「健康診査」との関係ということで、このページから乳幼児等に対する健診ということで、少しずつ対象となる年齢層に応じて分けて整理をしてございます。上の青い部分が既存の法定健診として行われている部分、下のオレンジ色のところが県民健康調査として行われている部分というふうにご理解ください。左側につきましては避難区域等の県民の方々へのもの、そして、右側は避難区域等以外の県民という形になっております。これ以降の資料も同じような形で、構造になっておりますのでご承知おきください。
     まず、乳幼児等に対する健診ということですが、避難区域等の県民の方々、避難区域以外の方々、避難区域の内外を問わず、1歳6カ月児健診と3歳児健診が母子保健法に基づき行われております。また、就学時の健康診断というものも学校保健安全法に基づいて行われているということになっておりますが、これに加えまして、避難区域等の県民の方々につきましては、下のオレンジ色の枠のところをご覧いただきたいのですけれども、長引く避難生活や放射線への不安などが健康に及ぼす影響の把握や疾病の早期発見、早期治療のための健康診査の実施をするということで、6歳までの方々に対して年1回、指定医療機関でここに書かれておりますような項目を実施していると。特に、下線を引いております血液検査の部分は、既存の法定健診では行われていない上乗せの部分という形になります。
     引き続きまして、次のページ、5ページ目をご覧ください。このページでは、児童生徒・学生等に対する健診ということで、同じような構造でお示しをしてございます。既存の法定健診としましては、児童、生徒等の健康診断ということで、学校保健安全法に基づく健診が年1回行われております。こちらは、基本的には医師による診察が中心になってまいりますけれども、これに加えまして、県民健康調査では、7歳~15歳、小学校1年生の方~中学校3年生の方々につきましては、この学校保健安全法の健診に加えまして、血圧、血算、そして、希望による追加項目ということで血液・生化学の検査も行われているということになります。また、16歳以上の方々につきましては、先ほどの血圧、血算に加えまして、血液生化学の検査が希望によるということではなくて、基本的に実施される内容となっております。また、この世代につきましては、避難区域等以外の県民の方々に対しても、19歳以降の方々については、特定健康診査と同等の内容を受けていただくと、そういった受診機会を提供するということで、右側になりますけれども、このような形で健康診査が提供されているということになります。
     続きまして、6枚目、ご覧ください。労働者に対する健診でございます。労働者につきましては、既存の法定健診として、労働安全衛生法に基づく定期健康診断が行われております。また、これ以外にも幾つかございますけれども、この定期健康診断が基本になると思います。定期的に年1回実施されるということになります。これに加えまして、県民健康調査では、幾つか追加項目がある形の健康診査となっております。追加項目のところは下線を引いております。また、避難区域等以外の県民の方々につきましても、受診機会がない場合、19歳~39歳の方々については、年1回、特定健康診査と同様の健診を設けているという形になっております。
     続きまして、7枚目です。被保険者・被扶養者に対する健診、世代としましては労働者と重なる部分はございますけれども、基本的には特定健康診査を、40歳~74歳につきましては保険者による実施義務があるということになっております。これは高齢者の医療の確保に関する法律に基づくものになっております。また、右上の注のところに書いておりますが、労働安全衛生法に基づく事業者健診を受けるべき方々につきましては、事業者健診の受診が優先すると、等々という形になって整理がされております。この被保険者・被扶養者に対しましては、県民健康調査で上乗せとして、先ほどと同様、16歳以上の方々について年1回、下線が引いてある項目が追加としてされておるという形になっております。また、避難区域等以外の県民の方々についても、先ほどと同様の形で健診の、受診機会がない方々で19歳~39歳の方々については、特定健康診査と同等の内容のものが受診機会として提供されると、そのような形になっております。
     ここまで健康診査について、既存の法定健診との関係性を含めてご説明してまいりました。
     この健康診査が23年、24年と行われてくる中で、今の時点でどのようなところまで結果が出てきているのかというところにつきましては、参考資料3をご覧いただけますでしょうか。参考資料3、こちらは福島県「県民健康調査」検討委員会の資料を抜粋させていただいているものでございます。こちらの1枚おめくりいただきますと、平成23年・24年度県民健康管理調査「健康診査」の健診項目別健診実績基礎統計という形で、さまざまな健診項目について結果が報告されております。
     このまとめの部分ですけれども、34ページをご覧いただけますでしょうか。参考資料3の34ページです。こちらの下半分のところから、「すなわち」というところからまとめの部分、今現時点でわかる範囲でまとめの部分が掲載されております。「すなわち、平成24年度は、平成23年度に比較すると、肥満、高血圧、脂質代謝異常の割合は概ね減少傾向にあったが、肝機能障害、γ-GT高値、高尿酸血症、腎機能障害、貧血の割合はむしろ増加傾向にあった。耐糖能異常は、HbA1c高値の割合と空腹時血糖高値の割合に乖離があった。血小板減少、白血球減少の割合に大きな変動はなかった」等々ということが書いてございます。
     その次の段ですが、「このような変化の要因を考察すると、平成24年度は平成23年度に比較して、肥満や高血圧、高脂血症等の生活習慣に関わる項目に改善傾向が見られており、避難生活による運動量の減少、食習慣の変化、精神的ストレスや睡眠障害等の生活環境全般がやや改善された可能性がある。しかし、肝機能障害、γ-GT高値、高尿酸血症、腎機能障害等においては増悪傾向を認め、より一層の生活習慣の改善に努める必要があると考えられた。ただし、平成23年度と平成24年度では、健診対象者に大きな変わりはないが、健診受診者は異なり、健診を受けた時期や医療機関なども異なっているなど、多くの修飾要因が存在するため、厳密な意味での比較ではない」と、このような形でまとめてあるものが現在の状況でございます。
     以上が健康診査に関するご説明でございます。
     資料1にお戻りいただきまして、資料1の8ページ、市町村のがん検診の項目についてというところをご覧いただけますでしょうか。県民健康調査の中で甲状腺検査が行われております。これは甲状腺がん検診に相当するものかと思いますが、まず、日本全国の制度として、市町村でがん検診が行われております。まず、これを念頭に置いていただければと思いますので、資料としてご用意いたしました。厚生労働省においては、このような指針を定めまして、市町村による科学的根拠に基づくがん検診を推進しております。根拠法令は健康増進法になります。具体的には、胃がん検診、子宮頸がん検診、肺がん検診、乳がん検診、大腸がん検診となっておりまして、検査項目、対象者、受診間隔、これはご覧のとおりとなっております。福島県においては、これに加えて甲状腺検査を実施されているという形になります。
     甲状腺検査の現況といたしましては、参考資料2としてご用意しております、第16回「県民健康調査」検討委員会の資料の中で最新の結果が詳細されておりますので、そちらをご覧いただければと思います。参考資料2の16ページになります。こちらで甲状腺検査の先行調査の一次検査及び二次検査の結果について説明がございます。これにつきましては、ご存じの先生方も多いかと思いますので、詳細なご説明は割愛いたしますが、一次検査、二次検査の説明に続いて、18ページ目で細胞診の結果、そして、19ページ目に手術の適応症例についてといった形で公表がされております。
     続きまして、県民健康調査の残りの二つの部分をかいつまんでご説明をさせていただきます。「こころの健康度・生活習慣に関する調査」ということで、資料といたしましては、参考資料1の7ページをご覧いただけますでしょうか。参考資料1の7ページでございます。枠の中に趣旨が記載してございますけれども、「福島県では、震災で困難な状況にある県民のこころやからだの健康度(問題)を正しく把握し、保健・医療・福祉に係る適切なケアを提供するとともに、将来の子どもたちの世代に向けて、自然災害時や緊急時における『こころのケア』のより良いあり方を受け継ぐことを目的に、こころの健康度・生活習慣に関する調査を実施しています」とあります。
     対象者は、避難区域等の住民及び基本調査の結果必要と認められた方ということになっていまして、毎年1回、それこそ0歳の方から高齢者まで、皆さんに対して行われているという形になっております。
     方法としましては、質問紙をお送りして、その中で調査項目として、7ページの下のところにありますが、現在のこころとからだの健康状態について、それから生活習慣について、食生活、睡眠、喫煙、飲酒、運動、そして最近の行動について、現在の生活状況、人とのつながりについてといったようなことを質問紙で聞いているという形になっております。
     平成24年度の報告のところだけご紹介したいと思いますが、すみません、参考資料3をご覧いただけますでしょうか。65ページになります。参考資料3の65ページに、平成24年度「こころの健康度・生活習慣に関する調査」の報告が示されております。対象は、先ほど申し上げた方々になりますが、具体的には21万1,000人を超える方々が対象となっているということが記載されております。
     また、少しこの65ページの下のほうを見ていただきますと、回答者数の記載がございますが、概ね、子どもさんですと4割前後、一般、大人の方々ですと3割程度の回答率になっているということかと思います。
     その後、ずっと結果のご説明、ご紹介が続いておりますけれども、少し、そのまとめの部分だけご覧をいただければと思いますが、これが方法の部分でございまして、参考資料の1の8ページに戻っていただけますでしょうか。このような形で、質問紙で調査を行いまして、それのスコアで、この方々には特に支援が必要であるという方々を見出しまして、その方々に対して個別の対応をされているということが8ページのところに書いてございます。(4)の調査後の対応というふうに書かれているところです。参考資料1の8ページのところです。①のところをご覧いただきたいのですが、回答内容を、福島県立医科大学の医師等が評価・分析すると。こころの健康及び生活習慣上、相談・支援の必要があると判断された方には、臨床心理士や保健師・看護師等による「こころの健康支援チーム」が電話支援等を行うという形で、さまざまなステージで支援がなされているということが記載されてございます。
     実際にどのような支援がなされているかというところを少しご紹介させていただきますが、参考資料3の86ページのところに、平成24年度の支援実施報告がございます。こちらをご覧いただきますと、この対象となった方々に、電話による支援あるいは文書による支援を行うという形になっておりまして、尺度の得点による支援基準として、86ページの左下に示されているような内容の方々が特に支援対象として抽出されていると。さらに、同じページの右上のところをご覧いただきますと、尺度以外の項目による支援基準というものも設けられていまして、例えば緊急で急いで支援が必要であると判断された方々であるとか、大人の方でBMIが30を超えていて、ほかのリスクもあるというような、生活習慣の観点、そして、こころの健康の観点、それぞれで特に支援を必要とする方を抽出して、実際に電話等による支援を行っていらっしゃるということが報告されております。
     まとめの部分が95ページに記載をされておりますので、またご覧いただければと思います。このまとめのところ、95ページの右側のところに、平成24年度の支援に関するまとめが記載されておりますので、そちらをまたご覧いただければというふうに思います。
     「こころの健康度・生活習慣に関する調査」についてのご説明は以上とさせていただきます。
     最後に、簡単ではございますけれども、妊産婦に関する調査について見ていただきたいと思います。参考資料1の9ページに戻っていただけますでしょうか。参考資料1の9ページです。県民健康調査「妊産婦に関する調査」についてということで、福島県では、妊産婦の皆様の健康状態等を把握し、健康管理に役立てていただくことを目的に妊産婦に関する調査を実施しているとなってございます。平成26年度については、対象者はご覧のとおりとなっていまして、基本的には調査票を郵送し、それで中の段にありますような主な調査項目、妊産婦のこころの健康度について、現在の生活状況について、出産状況や妊娠経過中の健康状態について、育児の自信について、次回妊娠に対する意識について、このような調査項目について回答いただき、その回答を踏まえて支援が必要と判断された方々には、福島県立医科大学の助産師・保健師の方々が積極的に電話支援をするといったような体制をとっていらっしゃいます。
     この平成24年度の結果につきまして、ちょっと参考資料につけてはございませんので口頭で恐縮ですけれども、平成24年度の回答率は概ね50%程度で、平成23年度とあわせて考察されている検討委員会の資料につきましては、流産率・中絶率は平成23年度と変わらないということ、また、早産率・低出生体重児出生率は23年度よりやや増加したものの、全国平均とほぼ変わらなかったといったようなことが報告されております。
     また、鬱傾向があると判定されたお母様方が25.5%と平成23年度よりやや減少しているものの、いまだ高率であるということも指摘がされておりまして、調査後の対応としての電話の支援は15.4%されているということが既に公表資料として報告されております。
     長くなりまして恐縮でございます。県民健康調査のご説明は以上とさせていただきます。
  • 長瀧座長 どうもありがとうございました。短い時間で県民健康調査の概要、また、既存の健診制度の概要、既存のがん検診の概要についても、非常に急いでご説明いただきましたけれども、ここはご質問というよりは、もう次の先生方にお話しいただいて、一緒にということにしたいと思います。今日は特別に福島の県民健康検査ということで、安村先生に、おいでいただいております。最初に、今、大体概要をお話しさせていただいたところで、今度は、先生から、ぜひお願いしたいと考えております。本当に打ち合わせが十分でなくて、先生に全てお任せしてお話ししていただくような形になっておりますけれども、よろしくお願いいたします。
  • 安村氏 ご紹介いただきました、福島県立医大放射線医学県民健康管理センターの副センター長を拝命しております安村誠司です。もともとは医学部公衆衛生学講座の教授をしております。どうぞよろしくお願いいたします。
     ただいまの事務局のほうから県民健康調査の概要について、もう概略的なことはご説明いただいたので、どこまでお話しするのがいいのかなというのは、ちょっとかぶるところがあるかと思いますけれども、重複する部分に関しましては、非常に重要な点だということでご理解いただければというふうに思います。
     今日のお手元にある資料は最新のものと、あと、当初、震災直後の実態を示すものと幾つか分かれておりますけれども、そこら辺は適宜補足してご説明させていただこうと思います。
     まず初めに、資料1の先ほどからご説明いただいている1ページの県民健康調査のポンチ絵というのでしょうか、この絵が県民健康調査をある意味では全て表しているのではないかなと思っております。震災直後から福島県では県庁、そして、県立医大は市町村とともに県民の命と健康を守るために何をやるべきか、ということを学内、また県庁の中でもいろいろ議論をされていたと理解しています。その中で、私たちは県民の不安の中でしっかりと支援していくことが大事ではないかということで、支援のために、しっかりとした調査をする必要もあるだろうということが、もともとこのような調査をやはりやらなければいけないというふうに考えた大きな理由であります。調査をしっかりすることで、そして、その結果をしっかりと県民に返す、まとめた結果を公表していくということが、県民の一人一人の方々がそれぞれ自分の健康管理、健康増進にその情報を活用していただく上で基本になるのではないかというふうに考えた点であります。また、個人が何をするかだけではなく、市町村や県含めて、もちろん国も、ですけれども、どのような支援が必要なのかということをはっきりさせるためにもしっかりとした結果を示すことが大事なのではないかというふうに考えたわけであります。
     このポンチ絵の、先ほどもうご説明ありましたけれども、そういう点で考えたときに、205万人県民にとって、まず最も知っておかなくてはいけないのは、今回の震災によって、特に放射線の飛散に伴って、私たち県民が受けた健康リスクという視点での被ばく線量をしっかり把握することであるという点で、この基本調査というふうに名前もなっているわけであります。こちらに書いてありますように、震災時点で、県内に居住していた方全員ということで、対象者は205万人ということであります。この県民の皆さんが震災前にはなかったリスクを負わざるを得なくなってしまったということで、それがどの程度であったか、それを知ることがスタートではないかというふうに考えたわけであります。
     右のほうですけれども、健康状態を把握ということで、詳細調査と名づけましたのは、ご存じのように放射線の放射能の飛散によりまして、県内では双葉8町初め避難区域が設定されていまして、合わせて十数万人の方々が強制的に居住地に住めない状況になりました。そういう中で、私たちが当時考えましたのは、放射線の直接的な影響ばかりでなく、それは大変心配ですけれども、もう一つ、今までの世界でのさまざまな原子力災害や自然災害における避難に伴う健康影響ということがもう一つ大変大きな課題であるということを、先行の報告から私たちは学んでおりました。そういう視点から、避難区域の方々というのは、放射線による健康影響というのにプラスして、避難に伴う生活の変化、それに伴って、さまざまな生活習慣が変わってしまうということに対する、そういうリスクを負わざるを得なくなってしまったと。そういう意味で、避難区域に居住されていた方たちには適切な健康管理を行わなくてはいけない。そのために、しっかりとした調査を行う必要があるだろうということで、避難区域の方たちに関しては詳細な調査を行うべきで、その調査に基づいた支援というのがなされるべきだろうというふうに考えました。
     私たち、基本調査プラス詳細調査4本立てというふうによく申しておりますけれども、甲状腺検査、健康診査、こころの健康度・生活習慣に関する調査、妊産婦調査、これで4本と言っています。当初は、甲状腺がんに関しては専門家の方も含めて、放射能の飛散以降、かなり県民ももともと知らなかった発がんという、甲状腺がんが起こるのかもしれないという不安もありましたので、避難区域だけではないというのは、当初からそういう理解がありました。そういう意味で、避難区域を越えて甲状腺に関しては県内全域で18歳以上の全県民を対象にするということが必要であろうということで、甲状腺検査は対象が36万人ということで広げられました。しかしながら、ご存じのように甲状腺の検査を行うということは、超音波の機械があったとしても、決して簡単にできるものではないということや、チェルノブイリでの甲状腺がんの発症に関しての知見等を参考にしまして、もともと3月11日以降の原発からの放射能の飛散によって甲状腺がんが発生する可能性、その前に、既にもしかしたら潜在的に甲状腺がんがあった場合に、それをまずしっかりと把握して対応しておくということがまず必要であると。それには、3年以内には一巡、全員の検査を終えるべきではないかということで、3年間で終えるということを目標にいたしまして、3年間の実施計画、それを行政区になるのですけれども、相対的に被ばく線量の高いと考えられている地域を優先的にしまして、今年の3月までで一巡するということを計画したところであります。そして、実施をいたしました。そして、最初の3年間を過ぎた後で、当初の、もともとの甲状腺の状態を把握した上で、疫学的な表現になりますけれども、ポピュレーション・アット・リスク、つまりリスクを持っている集団、既にがん等で甲状腺をもし切除してしまった場合には、その方に甲状腺がんが発生するということはありませんので、分析上はその方たちは対象としては除外されるわけですけれども、継続的に評価する母集団としまして、その3年間の調査を終了した方たちをしっかりと、終了しなくても、その後で受けていただいてももちろんいいのですけれども、長きにわたって追跡、フォロー、支援していくという枠組みで現在実施しているところであります。
     詳細な結果に関しましては、お手元の、つい先週というか日曜日の第16回の県民健康調査検討委員会の報告書、参考資料2にございますので、全体をまず話させていただきたいと思います。そちらに行かないで次説明させていただきたいと思います。このポンチ絵をまた見て、お戻りいただきたいのですが。
     続きまして、健康診査であります。いわゆる健診ということで、先ほどご説明もありましたけれども、我が国には、健康管理をやっていく上で、しっかりとした健診を行う、その上での健康相談等々で健康管理、健康増進を行っていくという枠組みがございます。そういう意味では、避難区域である、ないにかかわらず、国の制度のもとに健診を受けていただくというのは当然ですけれども、今回の事故に伴って、追加的な項目を入れる必要があるのではなかろうかということで、白血球分画や、そのほか炎症性の、つまり疲労等によって体調が悪くなると、そういうことも評価しなくてはいけないのではないかということで一部項目を追加したところであります。
     なお、この図にあります、次に避難区域等以外の住民に関する健診に関しては、もともとは、これちょっと形式的な、縦割り的な言い方ですけれども、県立医大が県から受託したものではなくて、これは県が主体でやられているものでありまして、しかしながら同じ県民ですので、最終的には左にありますようなデータベースというところでデータに関しては突合させ、健康管理に役立てていくという枠組みは一緒でありますが、繰り返しになって恐縮ですけれども、詳細調査は基本的に避難区域の方々の健康管理ということで私たちは取り組んでおりまして、避難区域以外といいますと、避難区域の方たちが21万人。逆に申しますと、避難区域以外の県民は、もともとで言いますと、福島県民は205万人おりましたので、180万人を超える方たち、つまり10分の1の方が強制的に避難を余儀なくされた方々であるということを考えますと、避難区域以外まで私たちは、まず避難区域の方たちを優先と言うとあれですけれども、避難をせざるを得なかったということで、健康診査をより充実させて受診いただき、健康管理に役立てていただく、疾病の早期発見、早期治療に結びつけていくということを目的としていたところであります。
     次のこころの健康度・生活習慣に関する調査、これに関しても、括弧に書いてありますけれども、避難区域の方々のメンタルヘルスの問題、これに関しても、チェルノブイリ等で長きにわたって、こころの健康度が低下して、支援が必要になる方々が5年、10年経ってからも引き続きいらっしゃると。その支援が大変重要であるということはよく知られているところでありまして、私たちもこころの健康度に関して適切に把握して、支援を早くから対応したいということで、これは質問紙の調査を行っております。あわせまして、生活習慣に関する調査というのは、飲酒・喫煙初め、運動・食生活、私たちの健康を維持していく、健康を増進していくために最も基本的な行動習慣に関して把握し、よりよい健康習慣になっていただくような支援をしていくということがこの目的であります。そういう意味で申しますと、21万人、赤ちゃんから100歳を超える全年齢の方たちを対象にするという考え方で、0歳~3歳、そして6歳まで、そして小学校・中学校という年齢に応じた質問紙をつくりまして、保護者の方に記載していただくという形で現在も引き続き継続的な調査を行っております。
     最後、妊産婦に関する調査ですけれども、この調査も避難区域のみということは、かなり当初のころから避難区域だけじゃないだろうと。お母さんたちの胎児への健康影響や、福島では赤ちゃんが産めないのではないかとか、奇形が多くなってしまうのではないかという大変大きな不安がありました。あと、そういう風評というのが福島県民を非常に苦しめたことがございました。そういうことも背景にありまして、やはり福島県がこういう悲惨なことが起こった後でしっかりと立ち直って、継続して生活できるようなところであるというように私たちがつくっていくためには、妊産婦さんをしっかり守るということが最も大事だろうという視点から、妊産婦さんに関しては震災時に母子健康手帳を交付されていた方々、約1万6,000人ですけれども、これも県内全域ですが、対象といたしました。この調査も1回で終わらせるものではなく、次の年に福島県で妊娠して、福島県で出産を考えている方たちを温かくというか、適切なケアでサポートしていくということが必要だろうということで、平成24年・25年というふうに調査をしております。私たちは、妊産婦さんがどんどん県外に流出しているのではないかということで危惧いたしましたが、24年度は確かに1万4,500人ということで、前年比で比べますと、1,500人ぐらいの対象者の減少、約1割強でしょうか、ということで、このままいくと人口減少著しいのかなということで不安に思いましたけれども、25年度、3年目の調査のときには1万5,000人に回復しております。ちょっと正確な数字ではありませんけれども、そういう意味で、震災直後、福島ではどうなのだろうかという疑問がありましたけれども、先ほど事務局からもご説明がありましたが、奇形率や早産率、その他、妊娠・出産に関する、あまりよくないというか、そういう不安を起こすような結果に関しては、この調査から、この調査をやったことで全国平均と比べて決して多くない。そして、福島県の過去のデータと比べても決して増えてないということをお示しすることができたかなというふうに思っています。
     そういうことで、まずまとめ的なのかもしれないですけど、このポンチ絵を見ていただきますと、基本調査ということで全県民というふうには申しましたが、実際にはまだ26.4%ぐらいでありまして、回答率が、いわゆる通常の調査と比べると大変低いということのご批判をいただいております。私たちとしては、これが最も基本のところであるという考え方で、現在も書き方支援、さまざまな情報提供を行って何とか書いていただいているところですが、私自身も健診会場や仮設住宅でお話をさせていただくと、多くのというか、書いていない方々の反応は、低いのはもうわかっているからいいよというのが一方であるのと、そんな昔のことは思い出せないという、ほぼ二つの大きな意見が書いてくださらない理由であると。非常に私たちも説明がしにくいのは、現在、多くの方たちが理解している福島県内での外部被ばく線量、空間線量等を見ますと、特に会津地方を含めて決して高くないと。その方々も含めて結果を書いてくださいというと、「あなたたちはデータが欲しいんですか」と、「私たちはモルモットではないです」と。おっしゃるとおりであります。そういう点で、私たちはあくまで、これは全て任意の調査ですので、法令に基づくものではないという大前提で実施はしておりますが、ただ、長きにわたる健康管理をやっていく上では、この基本調査は、やはりぜひ知っておいていただきたいことだというふうに考えて現在も実施しているところであります。
     この基本調査の結果や、右にありますような避難区域の方々を中心としました詳細調査の結果は、左にありますデータベースというところで一括してデータを管理し、現在まだ十分にそれを統合して、総合的に評価して、その上で支援に結びつけるようなことまでは正直まだなかなかできていないというところで、若干遅れているところではありますけれども、現在、精力的にこのデータベースを構築しまして、まず、第一義的には個人の支援に結びつけられたらなというふうに取り組んでいるところであります。
     また、その上にあります県民健康管理ファイルに関しては、このような調査結果をファイルということで閉じ込めるというか、入れて保存・保管し、管理すると。データも管理し、かつ放射線に関する知識や健康管理をしていく上での基本的な考え方等々に関しての情報が入ったファイルを県民の方々に配付し、健康管理に役立てていただくというふうに現在しているところであります。
     ちょっと結果についてだけ、先ほどご説明いただいたのにプラスして少しお話をさせていただこうかと思います。参考資料の3をご覧いただけますでしょうか。参考資料3の、健康診査は先ほどもうご紹介いただいたので、33ページ、34ページにありますが、23年度の、いわゆる血液検査等で見られる所見の悪化というのが24年度では若干改善傾向にあるというのがざっくりした結果の評価であります。24年度については、まだ全部の集計が終わってないですけれども、概ねそのような傾向です。ただ、ここでちょっと慎重に考えなくてはいけないのは、受診率が下がっているんですね。これはよく言われているところですけれども、健診を受けるという方は相対的に健康の意識が高い、かつ健康状態も未受診の方よりいいということを考えますと、結果が改善しているのか、より健康な人しか受けてないのかという辺りは慎重に検討しなくてはいけないのではないかなと。安易に改善をしていて問題ないということを判断してはいけないのかなというふうに思っております。
     次、40ページ以降、こころの健康度に関して、であります。これはくどいようですけれども、あくまで避難区域の方たちのデータですけれども、48ページをご覧ください。一つ、私たちが調査をやって驚き、現在も多様の重点でありますのは、48ページの右のほうに、全般的な精神健康状態について(問12)というのがあります。この小さい字ですけど、全般的な精神健康状態(K6)と書いていますけど、「ケーシックス」とよく言われますけれども、これは質問紙、三つの項目でこころの健康度、つまり精神健康を評価するものですけれども、そこに、13点以上が8,717人(14.6%)というふうに書いています。この14.6%という方は、通常であれば、こころの健康に関する支援を要する、または、さらに詳しい検査をしたほうがいいのではないかという、いわゆる閾値、カットオフポイントというふうに言われているところであります。この数字にどういう意味があるかといいますと、この14.6%、岩手、宮城でも被災地域における健康調査というのが環境省を中心に行われました。今でも継続されておりますが、同年、同じこの23年度に、岩手県と宮城県の調査地域で報告されているのはほとんど一緒でして、私の記憶では、岩手県で6.9%、宮城県で7.1%であります。このことが表しているのは、私の理解では、震災後、避難を余儀なくされた方々、そして、岩手、宮城も家をなくされて避難をしているような方たちの調査なのですけれども、非常に福島の避難者のメンタルヘルスの課題は大きく、そして重いということがうかがわれます。
     おめくりいただきまして、これは震災直後なのですが、24年度の調査の結果が、77ページをご覧いただけますでしょうか。77ページの左の上に、これは24年度、翌年の調査ですけれども、13点以上は11.7%というふうに、全体で言えば、わずかですけれども、やや減少してきています。しかしながら、これでもまだ震災直後の岩手、宮城よりも高いという数字であります。25年度については、まだ確定値がちょっと出せておりませんけれども、減少はしてきていると。ただ、これも先ほど申し上げたように、比較的こういう、これは、いわゆる質問者アンケート調査ですけれども、回答してくれている方は相対的にこういう調査に回答するだけの、そこそこの元気さはあるということもバイアスにはなっているのかもしれないと思いますけれども、ただ、全体としては少しずつですけれども落ちついてきているのかなというところはありますが、しかしながら、今後も引き続きケアはする必要はあるのではないかというふうに思っております。
     最後ですが、妊産婦に関する調査結果、先ほどもご紹介いただきましたけれども、データで言うと、107ページの先天奇形の割合というのがここに書いてありますけれども、ちょっと私も専門ではありませんので、解釈等はちょっとできませんけれども、ここに示されているような県レベルでの先天奇形の割合等は、その後に全県で、今、福島県では福島県産婦人科医会の協力をいただきまして、病院ベースでも調査をしておりますけれども、それを見ても決して増えてはいないということで、安心材料に結果的にはつながったのではなかろうか、というふうに思っています。
     しかしながら、お戻りいただきまして、99ページですけれども、99ページの左の上に、問2-3、問2-4というのがございます。文章を読みますと、「ここ最近1ヶ月間、気分が沈んだり、憂うつな気持ちになったりすることがよくありましたか」「はい」という項目。そして、その次の設問が、「ここ最近1ヶ月間、どうしても物事に対して興味がわかない、あるいは心から楽しめない感じがよくありましたか」という、この2項目は、妊娠に伴う鬱状態を評価する2項目でありまして、いわゆるマタニティーブルーというのに該当する、ここに「はい」という回答があったような場合に、先ほどありましたが、助産師・保健師等の、こちらからいかがですかということで支援をしているという状況であります。
     一部詳しく、一部あまり詳しくなくの説明になってしまいましたが、現在そんな形で調査をしております。
     今、主に私が現状等に関してのお話をさせていただきましたが、3年間の調査が一応終了しまして、現在4年目ということで取組をしているところですが、今回、今から私がお話しする私自身が考えている課題かなというふうに思っていることを、ちょっとだけ申し上げさせていただきますと、やはり、あくまで調査を行って、その結果に基づいて、基本的には電話から対象者の方に関わっていくという関わり方が、やはりちょっと遠い感じがいたします。そういう意味で個別的な対応、フェース・ツー・フェースの支援というのをこの調査から前へ進めなければいけないのかなということを一つは感じております。
     また、この調査は県民健康、当初は管理調査で、今は県民健康調査ですが、国からの基金で県が医大に委託してということでやっておりますが、市町村との協働というか、市町村との連携をどうやって進めるかというのは非常に大きな課題ではないかなというふうに思っております。私たち、医大と県で考えたからこれで調査を終えますということで市町村への説明とか、住民への説明を全くしてないというわけでは決してありませんけれども、やはり市町村さんの考えている方向性や、市町村が現実に取り組んでいることとの重複をなくすとか、お互いのすみ分け、または協働というのをしっかり、やっぱりやる必要があるだろうということで、今年になってから、特に市町村との個別のご相談をしまして、今年、これから実施します調査に関しては、こころの健康度・生活習慣等の調査に関しては、分量についても、必要なものにそぎ落としまして、約半分にするということで、対象者の負担を軽減する。しかしながら、大事な項目を残すということで調査を市町村と一緒にやるというスタンスで情報共有、今までもやってまいりましたけれども、それをさらに進めていきたいなと。これは県がやる調査だとか、医大がやる調査だということではなくて、県民を守るために一緒にやる調査というふうにもし持って行けたら、本当に私たちが目指している県民の健康を見守る、そして支援していく、元気な福島を取り戻すということにつながるのではないかなというふうに思っております。
     調査の結果等に関しまして、また、何かご質問等ございましたらお願いしたいと思いますが、とりあえず、まず一通りの説明はこのぐらいでまずよろしいでしょうか。以上、このような機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。
  • 長瀧座長 どうも本当にありがとうございました。私も、やはり環境省の委員会で一度現地に伺ったことがございますけど、初期のうちに。もう本当に何もないところからここまで立ち上げて、データも集まってきたと、制度もできてきた、もう本当に大変なご苦労だったと思いますけれども、ぜひ、この機会で直接お話を伺えることがあるかと思いますので、皆様、どうぞご質問いただきたいと思います。
     どうぞ、鈴木先生。
  • 鈴木委員 こころの健康度、心のケアのほうの調査について質問をさせていただきます。参考資料の3の65ページ見ますと、ここの中の表1ですね、回答率が随分低くなってきていて、平成23年は平均で43.8%、44%です。これが平成24年度は31%に下がってきている。ちょっと心配するのが、回答をしなかった人がなぜ回答しなかったのかというのを別個に調査していかないと、もう安心だから、この回答はしなくてもいいという人がいると思うのですが、もっと落ち込んでしまって、回答するだけの気力もないという人がここの中に入ってるのじゃないかと危惧します。そうすると、これからの心のケアの支援の仕方として、今のようなアンケート調査をベースにした支援体制というもので見落としてしまう人がどのくらい出てしまうのかということについて、ちょっと懸念があります。それで、お聞きしたいのは、その回答しなかった人たちにある程度ランダムでいいのですが、インタビューをした場合、なぜ回答をしてこなかったかというふうな調査というのは別個にやられているでしょうか。
  • 安村氏 ありがとうございます。私たちも一番危惧しているのは、まさに先生おっしゃられたところでして、現在、回答できなかった方も含めて、今、仮設住宅等で面接調査の協力をいただいて、回答していなかった方も当然その中には含まれるというふうに理解しておりますので、実際に回答した方、そして、その結果と、回答していない方の健康状態というのを評価・比較するというのは、今後というか、現在やっているところですので、来年、今年、今年度中に何とかそこら辺の結果を出したいなと。ただ、そうはいっても結果が出るまで何もしないというわけではありませんので、市町村との情報の共有を、個人情報の問題も非常にありますので、私たちが把握している要支援と思われる方というのは市町村で把握されているのか、市町村ではもう既に把握しているものが実際は、回答はやっぱりないのかという辺りは、市町村との相談という中ではいろいろ情報交換はしているところです。
  • 長瀧座長 ほかにございませんか。
     どうぞ。
  • 中村委員 先ほど、この調査は全県民に対してやっておられて、会津地区のように線量の低いところは回答が低いと言われたような気がするのですけど、地域によってこの回答率にどれぐらいの違いがあるかというデータがあれば教えてください。
  • 安村氏 ありがとうございます。参考資料の2をご覧いただけますでしょうか。参考資料の2はつい先週公表したものですが、その9ページ目に回答率の状況が出ております。9ページ目、よろしいですか。上のほうに県北、福島市、二本松市というのがあって、次、県中、県南、会津、南会津、相双と書いてあるのですけれども、この南会津、会津というのは原発の立地の浜通りというところから一番遠いところなのですけれども、見ていただきますと、どこの市町村とは言いませんが、回答率は21%、10何%、10何%、20%、10何%ということで低くなっております。一方、この下の相双地域という、これ浜通りなのですが、原発の周辺地域が多いですけど、これ見ていただくと、34%、40数%、50%、回答率が一番高いのは浪江町で60%を超えているということで、多分、やはり関心の高さと線量が相対的に高いということが既にいろいろ情報が出ておりますので、そのことがこの結果に多分反映しているのかなというふうに判断しています。
  • 長瀧座長 どうもありがとうございました。
     ほかに、もう一つぐらいございませんでしょうか。よろしいですか。随分、もう具体的に関与しておられる方も委員の中にたくさんおられますけども、
     もしなにかあるようでしたら、また後でご質問させていただきます。とりあえず、ここいったん終わりにいたしまして、次、星先生、県民健康調査検討委員会の座長という立場で、非常に問題をお持ちであると思いますが、ご自由にお話しいただければと思います。
  • 星氏 この県民健康調査検討委員会の一応座長ということで、ここのところいろいろさせていただいております星と申します。
     本日、今、事務局からの説明、そして、安村先生からの詳細な報告がありましたので、調査の内容、その他については私からは申し上げるつもりはございません。
     私ども、この県民健康調査をどんなふうにするのかということについて、当初からかなり苦心をして、特に安村先生なども、あるいは医大の先生方、あるいは県もそうですけれども、苦心をしてやってきたという経緯がありまして、その検討委員会の当初から私はその議論に参加をさせていただきました。現時点で、今、どうやらといいますか、本当であれば、この基本調査というのがもっと高い回答率が得られるということを想定というか望んでおりましたし、詳細調査につきましても、さまざまな観点から行われている調査の結果や、それに対する受診率の問題もそうですけれども、もっと皆さんに活用していただけるようにと苦心した割には、相対としては想像よりは低い回答率であったり、提出率であったりというのが、私が今、現時点で感じているところでありまして、私にも責任があるのかなと反省をしているところです。その一方で、甲状腺の検査だけが何やら非常に注目を浴びて、それは言ってしまえばそのとおりでありまして、如実にがんが見つかるという調査ですから、その調査の結果に注目が集まるのはやむを得ないといいながらも、そちらから用向きが行われてしまっていると。あるいは県民もそうでしょうし、当事者さまざまな意味で注目が集まってしまっているということについて、もう少し相対的に全体的な健康の維持増進といいますか、管理をしたいという思いで始めた調査ながら、そういうことが十分に浸透していないと。これは、やはり大きな問題だろうと思っておりますし、受診率その他提出率などを上げていく、あるいは考え方を変えていく転機なのかもしれないなと、そのようにも感じています。
     というようなことがございまして、参考資料の2のところの最後のページを開いていただきますと、3日前の日曜日ですけれども、私が副座長の先生と相談をさせていただきまして、これはたまたま甲状腺検査というのが書いてありますが、本当は全体の中間まとめということをしたいと思っておりますが、まずは甲状腺検査の一巡目の先行調査が終わったということで論点を出させていただきました。これについてあまり詳細な議論が当日できませんでしたけれども、これを見ていただきますと、ちょっと言葉があれですけど、私の苦悩というか、我々が今、この甲状腺に関して直面している苦悩というようなものがおわかりいただけるのではないかというふうに思っています。最初のところは、今お話をしたようなことであります。調査の方法、受診率、あるいは今回の検査結果の評価のこと、そして、今後どのような体制で臨むべきなのか、続けていっていいのかどうか。あるいは、最近ちょっと話題になっています、いわゆる過剰診断についても少し論点がすれ違っているようなところもございますので、この辺も整理する必要があるだろうなと思います。その最後の下から三つ目の丸でありますが、今話題になっております、受診者の中には、不安が高じる人がいる一方で、受診の必要性に対する意識が低下する人がいるかもしれないと。今後の検査を確実に実施するために、受診者の意識調査をするなどの対応が必要だろうかというようなことを論点と挙げさせていただきますし、甲状腺の場合はその次の問題があります。今は学校単位で見つけて、捉えている検診のありようが、今後、時間が経つにつれ、学校で捉えるといいますか、集団としてアプローチすることが非常に難しくなっていったときにどうするのかというのは、今後大きな問題だろうというふうに思っています。結果の中身について、その影響があるとか、ないとかという話は、今日ここで皆さんの前でする必要はないと思いますので差し控えさせていただきまして、そのような観点から、今、私が考えていることを一つ、二つ、三つ、四つぐらいお話をさせていただきます。
     一つは、今、子どもの甲状腺の検診は、二次検診までがこの県民健康調査の対象ということになっておりまして、二次検査が終わりますと一般の保健診療ということになりまして、半数を超える方が手術をされているということ、疑いの患者さんですね。それで確定診断がついているということですけれども、実際には18歳を超えてしまっているといいますか、当時18歳で今21歳という人もいるわけですね。今後、やはりあの年齢分布などを見ておりますと、当然、そういう年齢層の方からそれなりの数が見つかってくる可能性があると思います。それが放射線の影響かどうかということはちょっと置きまして、やっぱり今、福島県内は小児、18歳未満の医療費が県の財政措置で無料化されています。一方では、がん検診、甲状腺の検診でもってがんが見つかって、通常診療に移るという方々がこれから18歳をどんどん超えてくるというときに、この費用の問題を含めてどう考えるのかということが一つ大きな問題だと思います。もう一つは、先ほど申し上げたとおり18歳を超えて、例えば就職をする、進学をするといってお家を離れてしまった、県を離れてしまった人たちへのアプローチをどうするのかというようなことを含めて、今後、どんどん年齢が高くなっていく、そして、広範な地域に広がっていく対象者についてどうするのかということは、医療費の側面も加えて考えておくべき必要があるのではないかなと思っています。
     それから、受診率の問題です。これは、むしろ一般のがん検診について、今日は、先ほどさらっとご説明がありましたが、がん検診の受診率は一部分のものを除いて23年度以降、福島県の場合は低下傾向にあります。これはさまざまな理由があると思うのですが、一つは避難をされている方が自らの市町村の行うがん検診へのアプローチ機会を減らしている可能性があると思います。今までですと、集団検診で、コミュニティー単位で、さあ行くぞといって参加していたがん検診に参加できなくなって、医療機関方式ですね、施設検診に行きながら、実はなかなか自分で予約をして行くというようなことにつながっていない可能性があるのかなというふうに思っています。いずれにしても、がん検診の受診率が下がっているということは、私どもとしては、やっぱり避けなきゃいけない。特に福島県に限らない問題ですけれども、特に福島県で、今、居住地と生活の、住民票のあるところと生活の拠点が異なっているような方々について言えば、医療だけではなくて、検診へのアプローチが容易になるような仕組みを考えるべきではないかというふうに前々から思っておりますが、なかなか医療市町村事業ということになっていますので、特に住民検診はですね、住民のがん検診は市町村事業ということになっていますので、市町村区域をまたがってやる場合のいろんな問題がまだ解決できていないというのは、一つ大きな問題だと思います。
     病院が、医療の相対的な需要の増加がある病院、あるいは診療施設があって、個別健診に対応し切れていないというような環境がどうやらあるようでありまして、電話をしても、「あなたの順番はいついつですよ」といって随分遅くなることを言われるので、「それなら受けるのをやめちゃおうかな」というようなこともどうやらあるようでありますので、とにかく、いずれにしても受診率が下がっている要因をしっかりと把握して、受けやすい体制をつくっていくというのは、まだまだ避難をしている方が多い中で、大きな課題だろうというふうに思っています。
     それから、県内でこれは28万人、30数万人を対象にして、また甲状腺の話に戻りますが、甲状腺の診療体制、検査体制、その他については、長らく医大を中心に日本中の甲状腺の専門家から協力・支援を受けてやってまいりまして、第一陣目が終わりました。私は当初から、長期にわたってこの健診を県で実施するためには、県内で、やはり県内のお医者さんたちがこれに参加、あるいは検査技師さんたちが参加すべきだというようなことを申し上げて、当初、誰の協力――誰の、といいますか、この場合は環境省の、と言っていいのかもしれませんが、協力が得られない中で、県医師会と県立医大と我々の努力で、県内のお医者さんたちに講習会を受けてもらったり、ハンズオンセミナーと称して甲状腺の診断ができるような勉強をしていただいて、試験もやってというようなことをやってまいりました。
     最近、環境省からもご支援を得られるようになりましたけれども、やはりそういう長期にわたって実施していく場合に、単純に金があればいいとか、何か施設があればいいとか、機器があればいいではなくて、やっぱり実施に当たる人をどうするのかという話です。これは長期にわたってやるとすれば、最初はいろんな県の方から、あるいは県外の方から協力が得られますが、やっぱり最終的には我が県の中で実施しなければいけないというのは当然のことであります。そのことについて、やはり私たち自身ももちろん努力をしてまいりますが、何らかの形で今後も支援が受けられたらいいと思っておりますし、これまで協力をいただきました多くの先生方にも、今後とも協力をお願いしたいのと、感謝を申し上げたいというふうに思っています。
     それから、精神科医療の話がありました。実は精神科医療というのは、福島県において実は浜通り地方と言われている被災地、特に原発に近いところに、簡単に言えば気候がよいところだったのですが、そこに比較的集中している傾向がございました。これらの病院が多く使えなくなったというようなこともあり、県内にさまざまな形で患者さんが分布するということになっていますが、一方で、精神科のお医者さんたちが非常に減っているという事実もありますし、実際には、先ほどの質問紙の話でも出ていましたが、軽度の鬱の方というのはどんどん増えていると。しかし、それに対するアプローチが十分ではないということが言えるのだろうと思います。22年度までですかね、医師会が――多分、日本医師会が提唱したのだと思いますけども、かかりつけ医に鬱病の初期診療をきちんとしてもらって、しっかりとした専門診療につなげる努力をしましょうという、そういう事業があったのですが、実は震災後まだ再開しておりません。これは我が県だけの問題かもしれませんけれども。やはり身近な先生たちが軽度鬱をきちんと判断をして、より専門的な治療が必要な患者さんを専門医療機関につなぐという形でなければ、少ない専門医しかいないといいますか、精神科の専門医療というのは資源が限られていますから、その限られた資源で、先ほど言っていたように、他の県と比べると何倍もの不安を抱えているという人たちが、局地的な、どうもいるという状況からすれば、これに対する対応というのも私たちは考えなければいけないだろうと思っています。
     以上、つらつらと申し上げましたけれども、先ほどの質問にもございました心の健康調査の返答率や妊産婦の返答率、回答率も下がってきています。これが先ほど安村先生がお答えになったように、もう大丈夫だからということなのか、あるいは答える元気もないからということなのか、あるいはほかに理由があって回答しないのか。いずれにしても、私たちは声を挙げていない声に、これからもう少し丁寧に耳を傾けなければいけないなというふうに感じておりまして、今後、長く続くこの検査体制、調査体制が、単なる調査や検査の積み重ねではなくて、県民の理解や健康に対する意識の向上や、あるいは、もっと言えば、先ほど言ったがん検診の受診率が上がって、がん死の数が減るとか、そういうことにつながればいいというふうに思っています。
     残念ながら、我が県、がん登録後進県でありまして、やっと医大と我々医療機関で力を尽くして、この問題に取り組もうということになったところです。非常に残念です。震災前から、しっかりとしたがん統計があれば、がん登録があれば、もう少しいろんなことが言えたのかなと思うこともないことではないですが、でも今後、こういう体制をもっともっとしっかりとつくっていくということも大事なことだろうというふうに考えておりまして、そういうことを考えると、本当にため息が出ちゃって、何から手をつければいいのかなというふうに思いますが、いずれにしても、医大の先生方、そして地域の医師たち、あるいは検査に携わる多くの人たちが、自分たちの役割を認識して、一生懸命やってくれているということだけは皆さんには理解をしていただきたいなと思って、今日はいろいろと問題はお話ししましたが、皆さん方の協力や理解を得て、さらに努力をしてまいりたいと思います。
     以上です。ありがとうございます。
  • 長瀧座長 どうも、星先生、ありがとうございました。
     本当に、3年間いろいろとご苦労なさった結果のご意見が随分たくさん伺えたと思うのですが、どうぞ、時間はあまりございませんが、どんどんご質問いただきたいと思います。どうぞ。
  • 大久保委員 星先生、大変ご苦労さまです。
     参考資料2の63ページに、座長素案という形でまとめられていますが、その中の63ページの真ん中の「(いわゆる過剰診断について)」という項目がありますが、その二つ目の丸に、「今後この検査を続ければ一定数のがんがさらに見つかると考えられるが、起こりうる二次被害を避けるためにはどのような方法を講じるべきか」と、こう書いてありますが、ここで言うところの二次被害というのはどういう意味なのでしょうか。
  • 星氏 これはちょっと筆が滑ったところがあるのかもしれませんけども、がんが見つかって手術をされる、あるいは手術をしないという選択もあると思います。しっかりとした治療のラインに乗ってくれば、そんな大きな問題は起きないのかもしれませんが、それにしても、手術をするということによる避けられないことというのが起きるかもしれませんし、あるいは、しなくていい手術をはしなくていいというのは、この場合は、医学的にというよりは、間違った形で診断をされて手術をされてしまうというようなことも含めて、健診をすればするほど見つかるがんが増えると。増えたがんを対応するのも、一定の基準の考え方や一定の診療基準でやられるばかりとは限りません。そうなると、何らかの問題が起きてくる可能性もあるのかなというふうに感じておりますし、中には、これは、僕はここにはあまり意図していませんけれども、大きなこういう検査をやったために、本当なら見つからなくていいがんが見つかったんだ、それを本当なら切らなくていいとか言いながら切られたんだというようなことにもとられかねないという意味で、医学的に、ですから先ほど言った「いわゆる」というのは、そこも難しいところで、医学的な評価という話と、疫学的と言っていいのかどうかわかりませんが、見つかっちゃったがんはどうするのというようなことについてのギャップが生じるのではないかというような、そういう問題意識であります。
  • 大久保委員 ありがとうございました。
  • 佐々木委員 佐々木です。
     精神科医療という、あるいは心のケアが今大変大事な局面にあるのだと思いますけれども、三つ質問があるんですけども、安村先生も含めて。一つは、精神科医療といいますか、精神科医にかかること自体、ほかの病気とは違って、避けるとか、嫌うとかという傾向はどこでもあるとは思いますが、一般的に言うと、大都会では大分そういう精神科を受診することへの偏見というのは少なくなっていると思うのですけれども、福島県では、そういった点がほかと比べるとなかなか難しいと思います。一般論として、精神科を受診するということ自体に対して、それを嫌うとか、あるいは隠したいという、そういう傾向というのはかなり強くあるのかどうかということが一つ。
     それから、今、相談員制度がスタートするというふうに伺っています。それに対する期待、あるいは今のようなこととも関連して、そういう相談が、より精神科そのものよりはうまくいくのかどうか、その辺のところ。
     それからもう一つ、先ほどK6の率が、お示しになりましたけども、それは私ちょっとよく知らないのですけども、何もない、災害のないところでのK6の頻度というのは、かなりもっと低いものなのでしょうか。
     ちょっと、その3点をお教えいただけますか。
  • 星氏 まず、1点目の精神科受診を避ける、またはそういう通院していることを知られたくないというのは、都会と比べてという、比べてはわからないですけれども、やはりあると思いますし、もしかしたら強いのかもしれないと思います。ただ、今、調査を通じて、市町村と情報共有をしながら、やはり必要な方に、そういう説明をご本人やご家族というときに、強い拒否や、どうしても嫌だから困っているというような、困難ケースというようなことは逆にあまり聞かないので、そういう意味では、受診がそのために遅れたり、対応が不十分ということは、そんなにはないのかなというふうに。これは印象です。
     2点目の相談員制度は、先生、医師会のあれの等々ですかね。僕、そこはちょっと......。
  • 安村氏 相談員というのは、先生がおっしゃるのは......。
  • 佐々木委員 相談員支援センターがスタートして、相談員が、制度が動き出すというふうに私は理解しているのですけど、それに対して先生方はどのように期待、あるいは評価をしておられるかという。
  • 安村氏 心のケアセンターのことかと思うのですけれども、各、福島では方部というんですけれども、6方部かな、それぞれの圏域ごとにセンターが設置されまして、心のケアが必要な方に対して、やはり市町村では専門のスタッフを配置することはなかなか難しいということで、そのセンターが中心になって、もともと独自に市町村と情報共有して、必要な方への支援を行っています。医大というか、センターも、ご本人に連絡をしたときに、市町村に情報を共有していいかとか、心のケアセンターの専門の方に相談したほうがいいのではないかという場合に、ご本人の了解をいただいて、心のケアセンターの専門スタッフが相談に乗るとか、面接をするということで、その地域、地域で対応していただくという意味では、医大と心のケアセンターと市町村というのが一緒になって、勉強会をするとか、情報共有をしているということで、大変ありがたいというかですね、これに関しては、多分、国がそういう制度をつくってくれたんだと思うんですけども、ぜひ、もっと拡充していただけると、よりきめ細かな対応ができるのかなというふうに思っています。
     3点目のK6に関しては、何もないところですと、ちょっと正確じゃないですけど、2~3%だったかなと思います。もちろん全くないわけじゃなくて、もともといるという、そういう意味では、大体、そのくらいの割合はいらっしゃると思います。
  • 長瀧座長 どうぞ。
  • 祖父江委員 がん検診についてちょっとお伺いしたいのですけども、先ほど星先生のほうからがん検診の受診率が思わしくないということでしたけれども、避難されている方が市町村から提供されるがん検診を受けにくい状況というのは、がん検診だけじゃなくて、特定健診のほうもそうだと思うんですけども、がん検診特有の受けにくい状況などがあるのかどうかはどうですか。
  • 星氏 特定健診も下がっています、受診率は。ですので、健診一般が受けにくくなっているというのは事実だと思います。
     がん検診の場合、集団検診でやる場合と施設検診でやる場合とがありますし、一つの施設で全て済まないこともありますので、より受けにくいということがあるのだろうと思います。
  • 祖父江委員 がん検診で、もちろん市町村が行うがん検診もありますけども、あと職域で行われている一定数の検診があって、それはなかなかほかの県でも実態は把握されにくいところだと思うのですけども、福島において、そこをあえて実態を把握するというか、そのデータを系統的に収集するような仕組みというのは考えられないですか。
  • 安村氏 それは、県民健康調査を実施している立場で言えば、先ほどのポンチ絵でありますように、健康管理をやっていく上でのデータベースに、そのような結果も突合させて経年的に評価していく、そして健康管理に役立てていくという意味で言えば、そのデータが要らないというふうには思いませんけれども、ちょっと、今までそういう視点は、ちょっと正直持っておりませんでしたので、特に職域に関しては、特にがん検診もそうですけれども、県民健康調査の枠とはちょっと違うものですから、なかなかそこまで私たちが十分対応できていなかったというところだと思います。
  • 長瀧座長 鈴木先生、どうぞ。
  • 鈴木委員 先ほど地域がん登録の話がちょっと出たと思うのですが、地域がん登録というのは、いろんな水準の登録が現実にありまして、祖父江先生のほうが詳しいと思いますが、例えば5大陸のがん罹患統計に採用されるような、比較的いいレベルを目指してこれから考えていくのか、それとも全国平均をクリアすればいいと考えてデザインしていくのかで、随分結果は違ってくると思うのですね。ちょっとその辺の決意を聞かせてください。
  • 安村氏 ご存じかと思いますけど、がん登録に関しては、今度、法制化されましたけれども、その前の段階で、私たちは震災前にはがん登録の制度を導入しまして、スタートさせましたが、国立がん研究センター等のご指導をいただきながら、制度を高くということで今実施しておりまして、制度で言いますと、現時点では、まだ平均に何とか近づくところですけども、むしろ福島で、やはり震災のこともありますし、放射線の健康影響ということを考えますと、目指すという意味では、最も精度の高いところを目指すということで今進めているところで、祖父江先生を初め、関係している人たちにいろいろご支援・ご協力いただいているところです。
  • 長瀧座長 どうぞ。
  • 祖父江委員 福島県は、震災の直前といいますか、2008年からデータの収集を開始して、ですから、震災前の罹患率というのが辛うじて測定できるという状況にあろうかと思ったのですけども、開始当初の登録制度というのは、やっぱりあまりよろしくはないと。そこを特別に出張採録等で精度を上げてという努力をかなりされつつあるのだと思います。何とか2008年、2011年の辺りの震災前の罹患データを整備し、震災後のほうは、かなりご努力されていて、新たに始めたがん登録としては、非常に、急速に制度がよくなっているんだと思います。
     安村先生がおっしゃられたように、今後、全国がん登録という形で、病院から登録をするのが義務化になりますので、当然、登録制度はよくなりますし、全国との比較も十分可能になるということで、がん登録に関しては、法制化に伴って、かなり高い制度が維持できて、その辺りのデータに関しては、福島のみならず全国的によくなるであろうということだと思いますけど。
  • 安村氏 補足で、よろしいでしょうか。
     今ご説明いただきましたけれども、震災前の、2011年より前のデータをしっかり持っていないと、その後の変化というのはやはり評価できないということで、今ご説明ありましたけども、出張採録ということで、県内の病院、医師会のご協力もいただいて、私どもから職員が病院に出向いて、実際のデータ、カルテをめくってデータを収集するという形を1件全部やっております。ただ、カルテの保管期間とか、あと震災に伴って病院が閉鎖するとか、さまざまないろいろと困難があって、今、医大としては、全力でそこのところの情報収集は今当たっているところです。
     以上です。
  • 長瀧座長 どうもありがとうございました。
     ほかに。
     どうぞ、石川先生。
  • 石川委員 今日は、大変福島でのご苦労のお話をお聞きしたんですけども、基本的な確認事項として、第7回の会議で話にありましたが、がんの検診も含めて健診について、私の立場としては、人数的にも増やす方向で行きたい、それから、もっといろいろな問題点も解決して、県民に広くやっていただくというのは、私たちが考える健康支援だというふうに思っています。そこで一応確認ですけれども、健診のこの状況というのをもっと発展させるという方向で、私たち、ここでどんどん議論をするということでよろしいですよね。増やす、健診の受ける受診率を増やすとか、そういったことについて議論するということで、そういう方向で確認してよろしいですね。第7回で、健診についてはいろいろと利益・不利益の問題だとか、それから、受けると余計心配をさせるとかというご議論もありましたので、一応確認していただきたいのですけれども。
  • 長瀧座長 どうしましょうか。ただ、それぐらいで、ここで今、星先生に伺うか、あと、最後に1時間近く一般の議論をしますけれども。そちらのほうでよろしゅうございますか。
     それでは、ここで、また後で議論にぜひ加わっていただきたいのですが。
     どうぞ。
  • 大久保委員 甲状腺の健診で、参考資料2を見ると、5mm以下の方が1,600人ほど出ておると思います。これは経過観察という対応になっているかと思いますけれども、そういう診断を受けた人たちが、将来自分はがんになるんじゃないかと思って、非常に不安を感じているのではないかと思います。子どもも含め、親も含めですね。その辺は、何か心のサポートみたいなことは、今、されていらっしゃるんですか。
  • 安村氏 まずは県民皆さんが対象ですので、健診を受けられた結果に関しての説明・解説というのは、当然、パンフレットというか、資料を添付して、この状態だとこうですというような解決をつけたものは、当然、現在でも配っておりますし、あと、学校単位での保護者等への説明会の開催、これはもちろんPTAや学校のほうでやってくれと言われたときには、こちらから出向いて丁寧な説明をするというようなことも行っています。また、もちろん個別に、心配なという場合には、コールセンターでの対応ということで、まず電話をいただければ、私たちが対応するということでしておりますし、会場でも、スタッフがもちろんおりまして、必要に応じて――大変、もし心配・不安が強いという場合には、必要な相談等は、より専門家、そこに必ずそういうスタッフを配置できるわけではありませんので、その場ではありませんけれども、メンタルに対応できるような支援チームも今つくっております。そういう形で対応しています。つまり個別にも対応しますし、全体にも対応するというやり方です。
  • 大久保委員 ありがとうございました。
     これから健診を進めて、受診率が上がると、こういうケースが非常に増えてくるかと思いますので、そういう体制も今後強化していかないといけない、と思います。健診をより充実させるのであればなおさらです。
  • 安村氏 ありがとうございます。
  • 長瀧座長 では、清水先生。
  • 清水委員 清水と申しますけど、県民健康調査委員会にも先日も出て、会議に参加させていただいておりますけども、二つちょっとお聞きしたいことがあります。一つは確認といいますか、甲状腺の受診率が非常に下がっているということで、これはさらにこれから年月が経っていくとどんどん下がっていく。当初、私、1回質問をしたことがあるのですけども、新聞にも一部出ていたことがあって、健康調査手帳みたいなものですね。つまり、県外に出た人をどうやってフォローしていくかと。これからそういう人たちの足取りというのですかね、そういうのをしっかりとつかんでおかないと、なかなか、今後、そういう人たちの受診を促すことというのはなかなか難しいのではないかと思うのですね。それで、そういう人たちに対しては、自分たち、本人の自覚に受診を任せるのかどうか、あるいはこちらから何かの形で連絡して受診を促すのか、その辺のところをどういうふうにこれからやっていくのかというのが一つですね。
     もう一つは、参考資料2の29ページをちょっとご覧になっていただきたいのですけれども、受診者数に対して、県外の検査の実施機関数というのが、例えば新潟県は609人受診していて検査するところは1施設であるとか、それから、驚くことに沖縄県のほうには随分受診者がいらっしゃるのに、実施機関数が1施設。それから、宮城県は1,501人で2施設と。検査するほうも非常に大変なことではないかと思いますね。それで、多分、これは甲状腺外科学会の認定施設が、あるいは専門医がいるところだけが指定されていると思うのですけど、なかなかこれだけあると対応が難しいと思うので、何かの形でもう少し受け入れ施設を増やせないかどうかという、この二つ。
  • 安村氏 甲状腺の受診率の低下に対しては、私たちも大変危惧していまして、まず一つ、まず県内での取組をまず申し上げますと、未受診の方に対して、現在案内を送付して、未受診者のための受診というのを別途開催することにいたしました。そういう意味では、ちょっと日時等は、なぜ受けにくいかというときに、平日はやはり受けにくいというようなご意見もあったということですので、現在、土・日とか、まだ夜間はちょっと考えていないのですけれども、土・日の受診は、今まで基本的に、受診というか、なかったのですけれども、そういう意味で、受診しやすさ、機会を少し増やして、受診しやすいことを進めたいというのが、とりあえず県内での対応の一つであります。そういう意味では、受けていない方への案内も出し、受診勧奨をさせていただくというふうに。
     なお、県外に関しては、今、先生がご存じのように、施設認定というよりも、資格を持っている先生の施設で受託いただくと。甲状腺の超音波機器に関しても、ちょっと詳細に、私、先生のほうがご専門だと思うのですが、一定以上の水準の互換性のあるしっかりとしたデータができるというところということで言うと、この数になってしまったということで、先ほど星先生からもありましたけれども、もっとやれる人たちの養成というのは、ちょっと医大だけの取組ではなかなか難しいということで、各種関連学会の協力とかいただきながら、受診できる実施機関の増加というのは、今後ますます、先生おっしゃられるように、18歳超えて県外に進学・就職する方は多くなりますので、それを増やしたいということと、もう一点は、県外に行った場合の住所確認をどうしていくかということは大変大きな課題でして、5年に1回だと、もう本当はわからなくなってしまうということで、これはまた国との今後相談・調整なのかもわかりませんけども、住基等の活用ということで、ちょっとそこも私専門ではないので詳しく言えないのですが、しっかりとフォローしていくというか、追跡できるような方式を考える必要があるなということで、それは今内部でも検討しているところです。
  • 長瀧座長 石川先生、さっきのお話については、少し後にと言いましたけども、せっかくホットな議論がありますので、ここでどうぞ先ほどのご質問を続けていただいて結構だと思います。
  • 石川委員 先ほど言いましたように、健診はもっと広げるべきだというふうに思っているわけなのですけども、そういう方向でいくんだったら、例えばどうやって、福島の方たちの今おやりになっている、苦労されている人たちのやり方の支援をするのかということについて議論をどんどんするべきだというふうに思っているのですけれども、そういう方向でいいですかという確認をしたわけですけど、それでよろしいですか。がん検診にしても、この一般健診の内容だとか、そういったことについてもということなのですけども、それでよろしいですね。
  • 長瀧座長 だから、福島で、もっと健診、むしろ、今の質問、福島でもっと健診を増やしたほうがいいかどうかという質問でもよろしいですか。
  • 石川委員 そうです。そういう方向で、一応、この今日の発表の先生方にご質問もいろいろとしたいと思っているので、それでよろしいですね。
  • 長瀧座長 はい。
  • 石川委員 じゃあ、健康支援というのは、こういう健康調査とか、そういったものを広げる、もっと充実する、そういう方向での議論ということでよろしいですね。
  • 長瀧座長 もちろん、議論して......。
  • 石川委員 じゃあ、それで。
  • 長瀧座長 どうぞ。
  • 祖父江委員 健診を広げるという意味に恐らく二つあって、受診率を向上させるという意味であるのか、それとも健診の項目を増やしていくのかというところで、かなり違うと思うのです。恐らく受診率を向上させるというところは、あまり反対する人はいないと思うのですけれども、健診の項目を増やすということに関しては、利益・不利益バランスとかということもありますので、一概に増やすほうがいいという判断ではないと思います。
  • 石川委員 いや、そうではなくて、要するに項目の問題はもちろんありますけれども、それから受診率の問題もありますけれども、健康支援、福島の今、今日は福島県民について言っていますけれども、福島県民の健康支援というのは、こういった健診だとか、そういったことをやるということが今話されているわけですね。そこを、ですから、私としては充実させるという方向で議論するべきだというふうに思っているのですけども、そういう方向でよろしいかと。
     そのときに、例えば今先生がおっしゃったような利益・不利益という、この間も先生はそういうご発表をしていましたけれども、がんのですね、あれは全く、私が言いましたようにちょっと視点が違うことで言っているんだと僕は思っているのです。
     それから、鈴木先生だと思いましたけれども、健診をやることによって余計な心配をされるというふうなご発言があったから、僕は再度確認をしているわけです。このことについてですね。
     それでもって、もっと健診を、この県民健康調査を進める方向での議論が僕は大事だというふうに考えています。ですから、そこの方向に持って行くのでいいのかどうかということお聞きしたということでございます。確認です。
  • 長瀧座長 座長が別に方向を決めているというわけではありませんので、本当に、委員の間で議論をしていただいて、方向が見えてくれば、それがいいことではないかと思いますので、もし、先生が今健診の項目を増やしたほうがということであれば、もちろんそれを主張していただいて、ほかの委員の方から、いや、それは必ずしもメリットではないというお話があって、そういう議論の上でこの委員会の結論が決まっていくのだと思いますが。ですから、どうぞ先生のお立場としての発言は、どうぞなさっていただいて。
  • 石川委員 そうですか。わかりました。
     じゃあ、健診のこの四つの柱というふうに安村先生がおっしゃいましたけど、これはすごくいいと思うのですね。私は、既存の健診項目をできるだけ利用して、それにプラスしてということも、私たちも述べ立てておりますので、そういう方向でいいと思います。
     例えば資料1の5ページ目の児童生徒・学生等に対する健診のところから始まってくるのですけれども、右と左で避難区域等以外の県民と避難区域等の県民というふうに分かれて、ずっとそれが成人のところにもつながっていきます。私は、この県民健康調査の健康診査、例えば労働者のところ、6ページ目にありますけれども、ここで尿蛋白、尿糖、これはいわゆる特定健診の項目等に入っているわけですけども、ここに尿潜血を加えるとか、ここ血算をやるとかぐらいの追加を、僕はするべきだと。それは次の7ページ目においてもそうですし、できるのであれば、一般の例えばほかの県でやっている、例えば乳幼児に対する健診のところで尿検査というのも、やったりしておりますので、そういうものも、乳幼児のところにも加えるとか、項目のところでは幾つかあると思います。尿検査ですね。尿検査は、普通はほかの県ではやっていると思うんですけれども、尿潜血と蛋白ですね、そういう項目はあると思います。これをやって、もっと充実するべきだというふうに考えております。
     それから、がん検診のところについては、私は、例えばどんなところでも子宮頸がんは2年に1回とかというふうにしていますけれども、特に、私は、これはやり方によっては、例えばアイウエオ順にやられている市町村だとか、そういったところもありますし、年齢で、何歳のところで勧奨している市町村もありますけれども、いずれにしても、福島の方たちについては、子宮頸がん検診は1回やったら次は2年後という、とにかくスタートの時点はどこでも、というふうな形でどんどんやるとかというふうに、これはちょっと質問も含めてなんですけれども、これは一般のがん検診の受診間隔のやり方なのですけれども、そうじゃなくて、もっとアクセス数を上げるような形で提案ができないかなというふうに思っております。
     本当は、これ、もっと細かいところの議論、私なんかも、実際に、まだ自治体でこういうがん検診だとか、そういうのをやっておりますので、やって、何とかがん検診の受診率を上げていっていただきたいというふうに考えております。
  • 長瀧座長 どうぞ、もう、どなたでも。
  • 祖父江委員 無症状の、病気でないといいますか、症状を呈していない方々に検査を行うというのに健診という言葉を使いますけども、それは2通りあって、血圧をはかるとか、高脂血症を見つける、とかといった、病気そのものではなくてリスク要因を見つけるための検査と、病気そのものを見つける検査。前者が循環器健診といいますか、特定健診の多くの項目であるし、後者はがん検診で、病気そのものを見つけるという意味でやると。後者の場合、病気そのものを見つけるということの行為が、時として不利益もたらすという側面が多くて、ですから、特定健診等の健診、字もちょっと違うのですね、健康の健を使うのが健診であり、検査の検を使うのが後者の検診というふうに使い分けますけれども、利益・不利益バランスを特に検討すべきというのは、やっぱりがん検診のほうであって、循環器健診、特定健診のほうは、その利益・不利益バランスを厳密に考えるという必要性は、まだ少ないのだと思います。
     そういったときに、福島の県民健康管理のほうで、福島だからということで取り入れている健診の項目についてどう考えるかということなのですけども、通常のリスクを持った、日本全国の方々に勧めている特定健診、それからがん検診といったものは、これはもう推し進めていく、受診率を高めていくという方向に力を注ぐべきだと思います。
     一方で、特に福島のほうでやられている、追加的に行われている健診項目については、必ずしも利益・不利益バランスが検討されているわけではない。特にがん検診に関しては、そういう点が言えるということなので、今後、始めたものに関して経過を見るということは、ある程度は必要だと思うのですけれども、ある段階で、やはり本人の意思で決めていくと。個々の方々が、受けるという意思があるものについては、その機会を提供するけれども、積極的に受けましょうということは言わないという方向に私は行ったほうがいいのではないかと思います。
     特に、そうですね、だから、がん検診の中では甲状腺がん検診、それから血液検査で血球等をはかるといった行為も、繰り返し行うことが、どういうことをもたらすかということも十分に考えた上で、やっぱり任意に行うという方向に持っていったほうが、私はいいように思います。
  • 石川委員 私も任意でいいと思うのですけれども、私の言っているのは、がん検診というのは、やはり不安を持っておやりになることが多いわけですね。特に福島の方たちは、不安があってがん検診というのを受けたいということであれば、アクセスできる門戸を広げてやるべきだと思います。もちろん科学的な、あるいは今までの医学的なエビデンスだとか、そういったものを含めて、何回もやる方、これはちょっとそういう方も中には出てきちゃうかもしれませんけれども、そういう方には、適切な説明をして、やるということは必要だと思います。
     私は、福島の方たちに行うがん検診で、ご本人たちがどうしても不安でやりたいということであれば、どんどんやっていただくということは必要だと思います。そのところで利益・不利益の話というのは、僕はないと思うのです。不利益というのは、一体、誰の不利益なのかと。そのバランスというのは、一体、どういうバランスなのか。私は非常に理解不能です。
  • 祖父江委員 不利益というのは、大きな要素としては過剰診断と擬陽性の二つです。今回、甲状腺の検査で、正常というか、精密検査は必要ではないけれども所見があるという状態で、A2という判断がされて、これはもちろん医学的には放置してよいというものではあるにしても、受診された方々にA2ということを申し上げると、やはり不安を持たれると。こういったことは、やはりご本人に対しては不利益ということとカウントするのが僕は正しいことだと思います。
     それから、過剰診断というのはなかなか難しいですけれども、現実、30万人受診をされて100人程度の甲状腺がんが見つかっていると。これをどう解釈するかということは、きちんと比較をして検討すべきですけれども、その中には、放置しても本人のがんには至らないようなものもあったのではないかということは当然考えられるわけで、それが個々の人のどの方が過剰診断なのかというのは、これはなかなか難しいですけども、総体として数が増えているということでの過剰診断ということは否定できないというふうに思います。
     ですから、現にこういう1回お子さんの方々に健診をして、こういう結果が厳然とあるわけですから、それをきちんと解釈して、そのうちの不利益というものは、このような数あったということを認識して、それに見合う利益というものがきちんとあるのかということで、利益・不利益バランスを考えて、個々の方が受診をするかしないかということを判断する適切な材料を与えていくほうがいいと思います。
  • 長瀧座長 最初に手を挙げていらしたので。よろしいですか、今。
  • 春日委員 私も、この福島県の検討委員会の委員の一人でございますけれども、星先生、特に検討委員会の途中から座長を引き受けていただきまして、本当にいつも大変ご尽力いただきしまして、ありがとうございます。
     また、甲状腺の専門部会のほうでは、清水先生にやはり座長をお引き受けいただいて、また大変ご尽力いただいております。
     環境省のこちらの委員会が、福島県での健康管理のあり方についても議論をするという、そういうミッションを持っているものですから、私は、福島県の委員も兼ねている立場で、もっと早く県のご担当の方々のご意見を聞くべきだったというふうに、それは発言すべきだったというふうに反省しております。今回、事務局の方、大変、本当にいいタイミングで県の方をお呼びいただいて、ありがとうございました。
     直前の日曜日の会議のときに、何人かの県の委員の方々が、この点については、もう県だけでは、あるいは県の検討委員会だけでは議論がし尽くせないので、ぜひ、国のご支援もいただきたいとか、国でも議論いただきたいということが出されたと思います。ちょうど北島部長も新任の委員としてご参加いただきましたけれども、ちょっと私、その論点について、ちょっと記憶が曖昧だったので、そういう発言があったということは覚えているのですけれども、もし、座長のほうから、せっかく今日のこちらの会議の場面ですので、その点について、もうちょっとリマインドしていただければというふうに思います。
     もう一点は、私も日曜日に発言したのですけれども、もし、座長が今回の中間取りまとめのところで、少し県としての検討委員会の検討のあり方についても考え直したいということをおっしゃってくださったので、県の委員だけで議論を深める機会、もちろん傍聴の方にはいていただきたいと思いますけれども、より委員同士での議論を深める機会や、それから県民の声を直接聞く機会をいただきたいという発言もしました。そういうふうに、検討委員会として、今後、また新たな局面を考えているということも、もう一度、座長のほうからご説明いただければありがたいと思います。
  • 星氏 1点目のことは、私もうろ覚えであります。ただ、県内に閉じていない環境になりつつあって、先ほどの就職の話もそうですし、進学の話もそうですね。ですから、県内での努力や今の我々の努力だけではカバーし切れないものが出てくるとすれば、それはやっぱり広く支援を受けなきゃいけないし、それから、やっぱり県で今やっていることについてもう少し理解をしてもらって、国からの側方支援というのも必要だなということを文脈として言っていたというふうに記憶しています。
     それから、見直しの件ですけれども、やはり3年が経って、さまざまなことがありました。それを思い出にはしたくないので、結局、我々が経験したことが、これからの健診や健康管理に結びつくものでなければならなくて、スタートしたものを、もう絶対の変更があり得ないという形でやるものではないよねと。これは、今、現にそれに取り組んでいらっしゃる県立医大の実行部隊の方々の意向、意向といいますか、感触や、あるいは実際に出てきた結果なども踏まえて、全体としての見直しの時期というのは当然来るだろうと。さっきの、利益・不利益みたいな話も、もしかすると一つの論点なのかもしれませんが、そういうことだけじゃなくて、今やられていることの妥当性や、今後へのより価値のあるものにしていく、それは県民の健康についてという意味ですね、より価値のあるものにしていくための転換は、はばからずにやっていきましょうという意味で、そういう発言をさせていただいて、手始めに、3年を迎えた先行調査が一段落をついた甲状腺については、論点を出して、皆さんと議論をしながら、このまま続けていくというのも一つのもちろん選択肢ですし、これは追加です、これは少しこういう形で、というようなこともあり得るんだろうと思います。いずれにしても、データをとることが目標とか、何かの結果を出すことが目的ではないので、県民の健康というものを最大限最大化するためにどうするのかという論点で見直しをしたいということで申し上げました。
     ちょっと、私、申し訳ないですけど、一つ、先ほどの件で、利益・不利益みたいな話はさておいて、それから、がん検診の受診率は高くなくてもいいのだという議論かもしれませんが、それも置いて、受けたいけど受けられないという環境は、私は排除すべきだと思って発言をしました。がん検診を100%受けさせることが是だと、それが目標だと、目的だと、そういうことではないです。受けたいのに受けられない環境に現実に置かれている人たちがいるから、多分、23年度より24年度のほうが、受診率が下がっているということも考えられるんですね。ですから、受けたい人が受けられるような環境をつくり、そして適時に医療に結びつくような状況が、全ての国民に与えられたある種の権利であり、それは、その有効性について議論もあるのかもしれませんが、それも置いて、今、制度として置かれている甲状腺のことを除けば、そういうがん検診の受けやすさみたいなものは、やっぱり特段の配慮をこの福島県に対してはしてもらいたいという意味で申し上げたので、ちょっと誤解があったような気もしないでもないので、そのように理解をしていただきたいと思います。すみません。
  • 長瀧座長 どうぞ、先ほどの......。よろしいですか。
  • 佐々木委員 全然、今のお話とは違うことで伺いたかった質問が一つあるのですが......。
  • 清水委員 じゃあ、私、関連していることなので。
  • 長瀧座長 それでは、どうぞ。
  • 清水委員 先ほどから過剰診断のことで、私は私なりに意見を一つ持っておりますので、話させていただきたいと思うんですけれども、これは疫学的見地から見る検査、その結果と、私は臨床医なので、臨床的見地から見る結果と、それに対する対応というのは違うと思うのです。そこの点が少しずれているので、なかなか話がまとまらないかなというふうな感じもするのですね。
     私は、検査を、これ、36万人から38万人なる検査を福島県が整然と行っている、すごい努力で敬意を表しますし、それがうまくいっていると僕は思っていますね。
     それで、これだけの対象の検査をすれば、病変が見つかるのは当然の話で、多くなるのもですね。実際に、昨年の12月の時点では70人ぐらい、悪性または悪性の疑いが。それが3月になって90人ぐらいになっています。今度、6月で104人と。大体3カ月で15人から20人ぐらいですね。だから、今度の検査でも予想できたぐらい、この3カ月ぐらいで少し増えるというのは、そのうちの一定の割合で増えている。これは検査をたくさんやるから増えているのは当然のことで、それに対してどういうふうに対応するか。その104人なり、悪性の疑いを全部手術しているわけではなくて、その中から手術をする必要があると判断した外科医ですね、福島県立医大のドクターなりが、これは必要だと思って手術をされたんだというふうに思っています。実際は、もう少し、そのうち出てくるでしょうけども、どういう患者さんに対して手術をした、あるいは転移があったのか、あるいは全部取ったのか半分にしたのかとか、位置がどこだったのか、転移の数が幾つだったのかというのは、個人情報がキープされている限りは、どこかでやっぱり知っておきたいなというようなことが一つあります。
     それから、もし、これは反対に、いや、これはやっぱり過剰診断なんだ、過剰診療なんだという意見の方々は、じゃあ、これはやらないのか、あるいはどこまでやったらいいのか、それに対してどういうふうに対応するべきなのかという意見も聞きたいというふうに思います。
  • 長瀧座長 最近、結局、インフォームドコンセントというのもございますから、なかなか医者だけで決めるわけではない、患者さんも、それぞれバックグラウンドが違うところで、1対1でお話しして、手術を受けるかとか、あるいは検査をするということになるので、それは、そういう臨床的なところを、どう疫学的というか、データに変えるかというのは、なかなか難しいですね。
  • 清水委員 そうです。臨床的立場から言わせると、一人一人が違います。だから、この人に対しては手術が必要か、手術が必要じゃないかということを、一人一人専門家の間で検討して、それで必要な患者さんに対しては、もちろん本人が子どもさんでわからない場合には、ご両親を含めて、あるいは関係者を含めてきちっと説明して、それでやるべきだと。それはもちろんそう思います。一例一例、一人一人に対して、きちっと対応する。だから、その結果、100人のうち90人が必要だということになれば、それは90%になりますので、それはやっぱり専門家のそういう所見に委ねなくてはならないところもあるかなというふうに思います。
  • 長瀧座長 祖父江先生、どうぞ。
  • 祖父江委員 私は、臨床の先生方の判断が間違っているとか、そんなことは一切言っておりませんで、個々の判断を適切にやった結果が、この90人とか100人とかということなのだと思います。
     ただ、過剰診断というのは、数の上で判断するということをせざるを得ないのですけれども、過去の検診の実例として、神経芽細胞種の検診がありまして、当初、導入されたときは、もちろん早期発見につながるということでやりましたけれども、結局、その後の評価で、死亡率は下がらず罹患率だけが増えて、それは数の上では過剰診断であったのだろうという判断がされて、1回導入されたものが休止されたという経緯があります。ですから、そういうことがあるので、過剰診断というのは、何も霞のようなものではなくて、現実に存在するものですので、そのことをきちんと念頭に入れて今後のことを考えたほうがいいというふうに思います。
  • 長瀧座長 どうぞ。
  • 清水委員 確かにそうだと思います。神経芽細胞種のご講演とか聞いたこともあるんですが、神経芽細胞種と甲状腺では違います、病気が。しかも甲状腺は、予後がいいとは言われても、やっぱり時間が経てば進行してきます。特にお子さんの乳頭がんは大人と比べてアグレッシブというふうに一般的に言われておりますし、経過を見て、例えばその中の1人でも2人でも将来手術ができなくなったり、あるいは亡くならなくても、クオリティー・オブ・ライフの例えば声を失うとか、気管を切除して、端々吻合をして、危険な手術になるとか、そういうようなことになってからでは僕は遅いと思います。
     そのために、もちろん手術をしないで経過を見る方も、子どもさんたちも1年なり2年なりに1回はきちっとフォローをして、手術をしなくていいものかどうかというのは、きちっとこれは検査していかなくちゃいけない。これは我々の臨床医側の役目でもある、義務でもあると思いますね。
  • 長瀧座長 どうぞ。
  • 石川委員 先ほど星先生がおっしゃったことに私、大賛成ですけども、やはり健診の門戸を広げて受けやすくするということが一番大事だというふうに思っています。
     参考資料2の48ページに、過剰診断の、これは恐らく清水先生が部会長のあれですか、評価部会ということで、48ページのところに過剰診断という、(5)で過剰診断と書いてあります。これを見ますと、過剰診断の定義みたいなことについて書かれていますし、私は、こういうことで過剰診断というのであれば、別に私はいいと思うのですけど、大変、過剰診断ということは、イメージが大変悪いのであまり使いたくないですけども、私は、やはり健診をしてこういうものが見つかって、そのことについて、早々と手術するとかということは確かに間違いかもしれませんが、しかしきちんと経過を追うということは大事だというふうに思います。まずは健診をやったからこういう過剰診断とも言えるような所見が出てきたわけで、健診をやって経過を追うということがすごく大事な――特に今の県民の方たちを安全に見ていくためには、僕は必要だというふうに思っています。
     その点では、同じ資料の63ページの星先生のおまとめになった「(いわゆる過剰診断について)」というところ、それから、その下の63ページですけども、その下の「(対象者の受診機会を適正に確保する方策について)」、こういった問題点の捉え方が、僕はすごく正しいんじゃないかなというふうに思っています。
     以上です。
  • 長瀧座長 わかりました。
     大分時間がたちましたので、大分事務局での一般論も準備しておりますので、むしろこの次の、次回の前もっての勉強と、あるいは次回までに頭を整理して来ていただくということで、概況と論点整理について、準備したことを最後にお話ししていただきますが、その前に、どうしても今お話ししたいという方はいらっしゃいますでしょうか。
     佐々木先生、さきほどの続きをどうぞ。
  • 佐々木委員 いえ、せっかく議論が盛り上がっていたと思いますので、個別に伺いますので。
  • 長瀧座長 よろしいですか。
     それでは、どうぞ。
  • 佐藤補佐 では、お手元に資料2をご用意ください。
     先ほど来から県民健康調査についてご議論いただいておりますけれども、県民健康調査は、県民個々人の――資料2でございます、すみません――県民個々人の健康を見守るということで、県民健康調査はされてきたということになっておりますが、一方で、地域の住民全体について、疾病の増加傾向、トレンドを把握するということも、施策を考えていく上で重要なことかと思います。
     先ほど来からお話も出ておりますが、既存のシステムとして、がん登録等ございますので、資料2のほうで、それを一通りまとめてございます。ここでは細かな説明は割愛させていただきますが、またお持ち帰りいただいてご覧いただければと思います。
     ざっとですけれども、まず、患者調査についての資料を資料2の3ページでつけてございまして、5ページ目以降、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)、ナショナルデータベースの略ですけれども、こういったものも活用可能なのではないかということでご紹介してございます。
     どんどん飛ばしていきまして、15枚目以降ですね、がん登録についてご説明をしてございます。ここでは詳細なご説明を省きますけれども、最後、21ページだけご覧いただけますでしょうか。がん登録推進法施行に向けた今後の予定というところでございます。先ほど先生方のほうからもお話ありましたように、平成25年12月に、がん登録等の推進に関する法律が成立いたしまして、右側を見ていただきますと、平成28年より法施行の予定と。現在は、その準備の段階という状況になってございます。今、政省令の策定等の有識者会議、厚生労働省のがん登録部会のほうで議論がされているところでございます。
     この法律の中では、厚生労働大臣が全国がん登録情報を提供できるという旨の規定がございまして、その対象として、厚生労働省令で定めるものが規定されると。その中身について、この政省令の策定ということで議論をされているところなのですが、まだ議論の途中ではございますけれども、少なくとも現在、議論の中では、この厚生労働省令で定めるものについて、福島県立医科大学、福島国際医療科学センター、放射線医学県民健康管理センターが含まれている形で議論がされていると聞いてございますので、こういった全国がん登録のデータも今後非常に活用可能なものかと思います。
     資料2につきましては、以上でご説明としては終わらせていただきます。
     続きまして、資料3をお手元にご用意いただけますでしょうか。
     こうしたさまざまな現状をご認識していただいた上で、健康管理のあり方について、これからさらにご議論を深めていただきたいと思いますが、経緯、現状、主な論点を一旦まとめておりますので、ご確認いただければと思います。
     経緯といたしましては、繰り返しになりますけれども、福島県において、県民健康調査をこうした目的を持って、趣旨でもって平成23年から実施されてきていると。
     現状のところですが、震災から3年以上が経過し、次のようなことが一定程度わかってきた。原発事故による被ばく線量が一定程度わかってきた。または、県民健康調査の結果もある程度出てきつつあると。
     そういう状況を踏まえて、主な論点として三つ挙げさせていただいております。これはあくまで案という形でして、それ以外のものがないというわけではございませんので、その点、ご留意いただければと思います。まず、論点1ですけれども、県民健康調査について、これまでの調査結果をどう考えるか。また、それを踏まえた同調査の方向性や改善すべき点についてどう考えるか。続いて論点2ですが、被ばく線量の状況を踏まえ、事故による放射線の健康への影響が見込まれる疾病についてどう考えるか。また、それを把握するための方法についてどう考えるか。論点3ですが、健康不安への対応についてどう考えるか。この三つを事務局としては挙げさせていただきました。
     ご説明としては以上です。
  • 長瀧座長 どうもありがとうございました。
     論点、随分、環境保健部として何度も議論してつくり上げた論点でありますけども、もう、またこの次来ていただくというわけにもいきませんので、お二人から何かこの論点について、まだちょっと時間がございますので、お話しいただければと思いますが。特になければ、無理に出さなくても結構です。
  • 星氏 これを言うと嫌われそうですけども、あえて。せっかく来ましたので。
     やはり先ほど私述べました健診を受けにくい環境になっているというこの現実には、やはり何らかの対応を、国の施策としてというか、国の支援なしにできないことが私はあるんだと思うんですね。例えば市町村事業と言われている住民健診、あるいはがん検診の垣根を越えた実施になると、県も及び腰なんですよね。もちろんです、それは。ですから、県単位でやれといっても、県は自分の県の話として、つまりこれは法律に書かれていることですので、簡単に曲げることはできないと。こんなことも私は百も承知ですが、とはいえ、長く避難をしている状況が続いている我が県民の健康を守っていくという観点から、上乗せ健診もさることながら、きっちりとした基本健診や、今で言うとメタボ健診ですかね、何とか健診と、がん検診については、より受けやすい環境をつくるための皆さん方の支援というのが、私は福島県にとって不可欠だと思っていますので、そのことは発言をさせていただきました。
  • 安村氏 今の星先生とかなり重複するかもしれないですけれども、当初、この県民健康調査、30年というスパンで県民を見守っていく必要があるのではないかということでスタートしたと理解しています。そういう意味では、国の基金をもとに、私たち無駄使いはせずしっかりとやらなきゃいけない調査をやっているつもりですけれども、論点のそれぞれを適切に私たち対応していく、特に健康不安への対応、フェース・ツー・フェースの支援とかを考えますと、とても県立医大のセンターの、または県と一緒にやっても、なかなか十分に対応できるだけの人材、そして、そのためのノウハウも含めてですけれども、やはり国の引き続きの支援が本当にお願いしたいなということで、私たち県民の命と健康を守るためにできるだけのことはやっていきたいと思っていますけれども、いかんせん力不足ですので、ぜひ、今後ともご支援、あと実質的なご支援もお願いしたいなというふうに思っています。
     以上です。
  • 長瀧座長 特に論点1、2、3、それぞれ伺いたいところでありますけども、逆に委員の方から、この論点が近いところで、県民健康調査をやっていらっしゃる方に伺いたいことがあれば、今、数分間、まだ時間がございますし、先生方、どうぞ。
  • 伴委員 福島医大、それから各市町村、それから県、いろんな関係者がおられて、ある意味で全てステークホルダーということになると思います。ただ、実際に健診を受ける方々がやはりステークホルダーであるはずなんですけれども、そういう方たちの声を吸い上げる、そういったシステムは、今はできているんでしょうか。
  • 安村氏 吸い上げるという意味で言えば、住民との対話というようなことや、私たち直接市町村の住民を対象とした結果説明会や、あと個別の、健診であれば、来られた方への結果説明会での個別の健康相談等を通じての情報収集というか、対話はありますけれども、健診に来られない方や、質問紙に答えていない方たちにのみというか、そういう方を対象に特別何か十分対応できているかというと、多くは保健師さんを通じてどういう方が答えていない、またはどういう方が受診をしていないようだということは、市町村の行政担当者等を通じて情報を得ているというような状態です。
  • 星氏 福島県が今年県単事業で私ども医師会にも委託をしてもらいましたけれども、3年を過ぎて、いまだにやはり放射線の影響に対する心配や、自分の体、心の心配を持っている方がいると。そういう方に対して、個別の相談会のようなものをやりましょうと。それは数としてはそんな多くはできません。でも、今までのように、講演会のような形式で、誰かがしゃべってそれを聞いてではなくて、さまざまな例えば健康フェスティバルみたいなところにそういうものを設置して、ブースを設置して、医者ですね、この場合、我々は医師会ですから、医師が個別に住民からの声を聞くというチャンスをつくろうというふうにしています。これは単純に不安解消のための相談会に終わらせてはいけないので、しっかりとした、カルテというと言葉は悪いですね、どういう相談があったのかとか、どんな不安があったのかと、問診票のようなものをしっかりとつくって、それを集計・分析することによって、我々があまり普段アプローチのできない人たちに対する相談を、相談という切り口ですけれども、ニーズの発掘みたいなことをしていきたいというふうに考えたりもして、県で予算をとってもらいましたので、今年度、しっかりと対応したいと思います。
  • 長瀧座長 どうもありがとうございました。
     丹羽先生、何か今のことでお答えになるか、ご質問されるか、ありますか。
  • 丹羽委員 ちょっとこれからは一般的な話になるのですけど、ここで、これは一度申し上げたんですけど、線量と健康という形で議論がずっと続いております。それで、これは最初の基本的な問題として議論しておると理解しますが、本来、例えば論点3なんかに象徴されるのですが、健康不安という言葉そのものは、一つの言葉として使われていますが、それはすごく大きい広がりがあるように私自身は思っています。
     例えば日常生活が壊れてしまっているようなところでは、当然、体調は悪くなるし、そういうような日常が壊れるという状況が、最終的には健康不安というものに代表されるようなものになってきておると。だから、被災なさった方、あるいは避難されない方でも、福島に住むということの状況から受けるさまざまな問題点をもっと全体的に対応しない限りは、どうしてもここのところへ戻ってしまうという。だから、問題はもっと大きいと、私は少なくとも理解しております。だから、ここで終わらなくて、問題の広がりがどうなのだということは、やはり議論しないと、ここの最後の不安というところが、最後の最後まで残ると思います。これは福島の問題というのは今後100年以上の問題と我々は理解しておいたほうがいいのではないかと思っています。だから、そういう観点で、単にここで終わるというものではないようにぜひともしていただきたいと思います。
  • 長瀧座長 どうもありがとうございました。
     いつも時間を大幅に超過するものですから、今日はできるだけと思ってしましたが、でも、また今の論点については続けてこの委員会で議論していくということにいたしまして、今日は、ここで、事務局で最後に何かございますでしょうか。
  • 佐藤補佐 ありがとうございます。
     先ほどの資料3の点につきまして、加えて議論すべき点がございましたら、ぜひ次回までに事務局のほうにお寄せいただきまして、先生方と調整させていただきまして、より充実させたもので、次回、またご議論の素材を提供させていただきたいと思いますので、ぜひ事務局のほうにご意見をお寄せいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
     また、引き続きまして、次回の専門家会議の開催につきましては、9月22日、月曜日を予定しております。会場につきましては、環境省内の会議室で開催予定となっております。
     また、本日の議事概要及び議事録につきましても、後日、公開とさせていただきますので、事務局からお送りいたします。後日、ご確認をお願いいたします。
     事務局からは以上です。
  • 長瀧座長 それでは、これでよろしいですか。
     どうも、本当に今日は遠方からおいでいただきまして、ありがとうございました。
     それでは、これで終わりにいたします。