1999（平成11）年度パイロット事業は、1999（平成11）年７月の「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律（化管法）」の公布を受け、法律に基づくPRTR制度の円滑な導入に向けて、排出量算出のためのマニュアルの整備や各種支援施策等の準備に資するとともに、PRTRの試行を通してPRTR制度の普及啓発を行うため、これまでより調査対象地域を拡大して実施しました。
　対象地域は13の都道県市の全域または一部の地域とし、8,425事業所を対象事業所として調査を実施しました。このうち、約60％の事業所から報告をいただきました。
　対象化学物質は、前年度と同じ176物質としました。
　平成11年度パイロット事業の結果の一部を以下に示します。
　※なお、事業結果の詳しい報告はこちらをご覧ください。
　　「平成１１年度PRTRパイロット事業報告書」

●どんな物質が排出されているのか（排出量上位10物質の排出量）
　環境中への排出が特に多かったのはトルエンとキシレン類です。これらを含む上位４物質の順位は平成10年度と変わりありませんが、1999（平成11）年度はフッ化水素やトリクロロエチレン等が上位10物質に加わりました。
　上位に挙げられた物質や新たに加わった物質の主な用途は次のとおりです。
　　・トルエン：塗料・インキ溶剤、合成原料等
　　・キシレン類：合成原料、溶剤等
　　・ジクロロメタン：ペイント剥離剤、金属脱脂洗浄剤等
　　・フッ化水素：金属酸洗剤、エッチング剤、フッ素化合物原料等
　　・トリクロロエチレン：金属脱脂洗浄剤、各種溶剤等

●どこへ排出されているのか（媒体別上位３物質の排出量）
　排出される物質の種類やその量は、媒体によって大きく異なります。
　大気、水（河川などの公共用水域）、土壌などの媒体ごとに排出量・移動量を比べると、大気への排出が報告物質数、報告件数ともに一番多く、次いで廃棄物としての移動が多くなっています。

●業種による違い（主な業種グループ別の排出量上位５物質）
　主な業種グループとして化学系、機械系、金属系の製造業を例にとって、排出量の多い物質を比べると、昨年度の結果と同様にトルエン、キシレン類、ジクロロメタンは概ねどの業種からも排出されていますが、金属系製造業のフッ化水素、化学系製造業の1,2-ジクロロエタン、クロロメタンなど特定の業種グループに特徴的な物質もみられます。
　なお、それぞれの業種グループには下記の業種が含まれています。
　化学系製造業：化学工業、石油製品・石炭製品、プラスチック製品、及びゴム製品の各製造業
　金属系製造業：鉄鋼業、非鉄金属、金属製品の各製造業
　機械系製造業：一般機械器具、電気機械器具、輸送用機械器具、精密機械器具の各製造業

●地域による違い（各地域における排出量上位５物質）
　地域ごとに排出量の多かった５物質をみると、多くの自治体でトルエン、キシレン類、ジクロロメタン、p-ジクロロベンゼンが含まれています。しかし、山口県のフッ化水素や川崎市の1,3-ブタジエン、新潟県のN,N-ジメチルホルムアミドのように、地域によって特徴的な物質も見られます。