地域再生・振興及び調査研究等に係る施策並びに
一時金支払に係るチッソ株式会社に対する支援措置

平成22年4月16日
閣議了解

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 水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法の救済措置の方針の決定に伴い、水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法に定める事項等に関して、下記の措置を講ずるものとする。


1.水俣病発生地域における地域再生・振興及び調査研究等に係る施策

 将来にわたって水俣病被害者が安心して暮らしていける社会を実現するため、地元のニーズを適切に織り込みながら、別添のとおり、水俣病発生地域における医療・福祉施策、もやい直し、調査研究及び地域振興等の施策を適切に実施する。

2.一時金支払に係るチッソ株式会社に対する支援措置

 水俣・芦北地域の再生・振興に資するため、財団法人水俣・芦北地域振興財団(以下「財団」という。)が水俣病問題の最終解決を図り、環境を守り、安心して暮らしていける社会を実現するためにチッソ株式会社が支払う一時金に係る貸付事業を行う場合には、当該事業に係る熊本県(以下「県」という。)の出資について、国は、速やかに所要の財政措置及び地方財政措置を講ずるものとする。なお、財団への出資のために県が発行する地方債については、その全額を財政融資資金が引き受けるものとする。


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(別添)


水俣病発生地域における地域再生・振興及び健康調査・環境調査等に係る施策の具体的事項について

 国及び関係地方公共団体は、引き続き水俣病問題に真剣に向き合い取り組むこととし、関係事業者による取組や地域の幅広い関係者と連携協力しつつ、次のような施策を進めます。


1.医療・福祉施策

 高齢化が進む胎児性患者とその家族の方など関係の方々が安心して住み慣れた地域で暮らしていけるよう、国、関係地方公共団体、関係事業者及び公益団体などの協力の下、必要な通所やショートステイ等の在宅支援サービス、地域の医療との連携などの医療・福祉施策について所要の取組を行います。


2.地域社会の絆の修復

 水俣病に関する偏見・差別の解消と、水俣病問題で疲弊した地域の再生を図るため、地域社会の絆の修復、地域の再生・融和(もやい直し)について所要の取組を行います。


3.水俣病に関する健康調査

 水俣病に関する調査研究を進め、水俣病被害者の方などの症状の改善、地域全体の環境管理に役立てていきます。

(1) メチル水銀が人の健康に与える影響を把握するための調査研究(健康不安者のフォローアップ)

 将来に水俣病被害者が存在するか否かの可能性とそれに関する対応については、今後の調査研究による新しい知見によるべきものですが、当分の間、過去に相当の期間、熊本県及び鹿児島県においては水俣湾又はその周辺水域の魚介類を食べたことに伴い、あるいは、新潟県においては阿賀野川流域の魚介類を食べたことに伴い、健康不安を訴える方について、以下のとおり健康診査等を実施し、その推移をモニタリングします。

① 対象

(ア)  一時金等の申請を行った方で、一時金等対象者又は療養費対象者のいずれにもならないとされた方のうち、熊本県及び鹿児島県においては、昭和49年末までに1年以上、水俣湾又はその周辺水域の魚介類 を、新潟県においては、昭和46年末までに1年以上、阿賀野川流域の魚介類を食べたことに伴い、健康不安を訴え、登録する方
(イ)  平成22年5月1日現在において補償法上の認定申請を行っている方で、一時金等の受付が終了した後に棄却処分となって一時金等の対象とならなくなった方のうち、熊本県及び鹿児島県においては、昭和49年末までに1年以上、水俣湾又はその周辺水域の魚介類を、新潟県においては、昭和46年末までに1年以上、阿賀野川流域の魚介類を食べたことに伴い、健康不安を訴え、登録する方

② 内容

(ア)  健康に不安のある方を登録して、医師による健康診査、保健師による保健指導が無償で受けられるようにします。
(イ)  希望者には、必要に応じて、国立水俣病総合研究センターが実施する研究に参加し、脳磁計(MEG)等による高度な検査が受けられるようにします。なお、この研究では、今回の一時金等の対象となった方も含め、幅広い方々の参加を求めていきます。

(2)高度な治療に関する調査研究

 胎児期に脳がメチル水銀の影響を受けたことによりしびれや疼痛、不随意運動などがある者に対して脳磁計などの検査を行い、障害部位を特定し、将来的に磁気刺激や電気刺激などによる治療に結びつけるための研究を行います。


(3)効果的な疫学調査を行うための手法の開発

 関係する地域に居住している方の水俣病に関する不安を解決することに向け、関係者の協力や参加の下、毛髪中水銀値等の過去のメチル水銀ばく露データを持っている方について、高ばく露地域に居住していた集団、低ばく露地域に居住していた集団、対照集団に分けて、それぞれ、長期的に健康状態の追跡調査を行いながら、水銀値及び健康影響との関係について、比較して分析を行います。


(4)その他の健康調査

以下のような健康調査を継続して行っていきます。


4.水質汚濁状況の監視の実施

 原因企業が排出したメチル水銀による環境汚染を将来にわたって防止するため、水質汚濁の状況の継続的な監視やその他必要な所要の措置を講じます。


5.国際協力

 メチル水銀に関する海外の研究者や環境・公害行政の担当者等の受入れを積極的に行い、国内の研究者や行政担当者との交流を進めます。また、国内でのメチル水銀に関する研究成果や水俣病の教訓などを、国内外に広く発信していきます。加えて、水俣病発生地域の研究者や行政担当者、技術専門家、水俣病被害者などを、現在、公害問題の発生している開発途上国や新興国に派遣し、直接、研究成果や知見、技術、教訓などを伝えていきます。


6.国立水俣病総合研究センター

 水俣病における医療・福祉や調査研究、国内外への情報発信等において中核となるような役割を適切に果たすこととします。


7.環境教育・学習、環境モデル都市としての取組、その他の地域振興

 水俣市の進める環境モデル都市づくりや、みなまた環境大学構想の検討に協力するとともに、水俣病に関する経験と教訓を学ぶ学校・企業・団体研修等の受け入れ、環境教育プログラムの充実、市民や企業による環境学習や環境意識啓発を積極的に進めるなど、水俣病発生地域が、地域内外の環境人材育成を図るための拠点となって、幅広い世代への環境教育を積極的に進めます。
 新潟においても、阿賀野川流域の環境資源を活用した地域づくりや環境学習を行うフィールドミュージアム事業、環境と人間のふれあい館を活用した環境学習・体験学習など、地域に根付いた取組を積極的に進めます。
 また、環境に対する高い市民意識や蓄積された環境産業技術、美しい自然や豊富な地域資源などを積極的に活かして、エコツーリズムをはじめ、環境負荷を少なくしつつ、経済発展する新しい形の地域づくりを積極的に進めます。


(以上)


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