化学物質は、現在、工業的に生産されているものだけで数万種に及ぶといわれており、私たちの生活を豊かにし、日常生活に不可欠なものとなっております。しかしながら、ダイオキシン、ＰＣＢ等が大きな社会問題となるなど、化学物質は、その生産、使用及び廃棄の仕方によっては、人の健康や生態系に多大な影響を及ぼすおそれがあります。
また、今日の化学物質による環境問題は、大気、水、土壌等の複数の媒体を経由して、微量ではありながらも、多種の化学物質に長期間に亘り暴露するという特徴を持つため、人や生態系に対する多様な影響が懸念されますが、この作用メカニズムは、まだ未解明な部分が多いというのが現状であります。
　このような状況に対応するために、化学物質による人の健康や生態系に与える影響を生じさせるおそれを「環境リスク」として捉え、その科学的評価を着実に進めつつ、未然防止の観点からこれを相対的に減少させる必要があると思料しているところであります。
　環境省では、昭和49年以来、化学物質環境実態調査として、一般環境中における化学物質の残留状況を継続調査し、その結果を公表してきました。平成14年度からは、調査結果がより広く、種々の化学物質関連施策に迅速に活用されることを目的に、毎年調査対象物質を選定しつつ、調査を実施しております。
本誌は、平成15年度に実施した化学物質環境実態調査の結果を、中央環境審議会環境保健部会化学物質評価専門委員会において、ご審議いただいたうえでとりまとめたものであり、化学物質の「環境リスク」の評価等を行うための基礎資料として活用されることとなります。
　本誌に収録された調査にご協力いただいた多くの試験研究機関や研究者の皆様に深く感謝の意を表するとともに、関係各位におかれましても、本誌を適宜、活用していただき、環境保全に役立てていただけることを念願いたします。

(平成１６年度)