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平成15年度「化学物質と環境」概要版目次へ

    4  平成14年度モニタリング調査結果の概要

    (1)調査目的
    (2)調査対象物質及び調査地点
    (3)評価方法
    (4)調査結果
    (5)調査結果に対する評価
       1) PCB類 5) クロルデン類
       2) HCB 6) ヘプタクロル
       3) ドリン類 7) HCH類
       4) DDT類 8) 有機スズ化合物

 (1) 調査目的
 
 「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」(平成13年5月採択。以下「POPs条約」)対象物質並びに同条約対象物質の候補となり得る性状を有する物質、化学物質審査規制法第1,2種特定化学物質及び指定化学物質のうち環境残留性が高く環境基準等が設定されていない物質で、環境実態の経年的把握が必要な物質を経年調査(モニタリング)することを目的とする。
  ※POPs(Persistent Organic Pollutants: 残留性有機汚染物質)
 
 (2) 調査対象物質及び調査地点
 
 平成14年度のモニタリング調査は、平成14年度化学物質環境汚染実態調査物質選定検討会において検討・選定された優先物質・媒体の中から、次の8物質(群)延べ29物質・媒体について調査を実施した。これらのうち、POPs条約の対象物質はPCB類、HCB、アルドリン、ディルドリン、エンドリン、p,p’-DDT、trans-クロルデン、cis-クロルデン、ヘプタクロルである。
物質
調査
番号
調査対象物質 媒体
水質 底質 魚類・貝類・鳥類 大気
1 PCB類(総量の他以下の項目について測定)
Mono-CBs、Di-CBs、Tri-CBs、Tetra-CBs、
Penta-CBs、Hexa-CBs、Hepta-CBs、
Octa-CBs、Nona-CBs、Deca-CB
2 HCB (ヘキサクロロベンゼン)
3 ドリン類
アルドリン、ディルドリン、エンドリン
4 DDT類
p,p'-DDT、o,p'-DDT、
p,p'-DDE、o,p'-DDE、
p,p'-DDD、o,p'-DDD
5 クロルデン類
trans-クロルデン、cis-クロルデン、
trans-ノナクロル、cis-ノナクロル、
オキシクロルデン
6 ヘプタクロル
7 HCH(ヘキサクロロシクロヘキサン)類
α-HCH、β-HCH
 
8 有機スズ化合物
TBT(トリブチルスズ化合物)、
TPT(トリフェニルスズ化合物)
   
 調査地点は図10~図13のとおりであり、水質は38地点、底質は63地点、生物(魚類・貝類・鳥類)は23地点、大気は34地点で実施した。また調査対象物質は媒体別に全地点同一であった(水質:7物質(群)、底質・生物: 8物質(群)、大気: 6物質(群))。
  • 図10平成14年度 モニタリング調査地点(水質)
  • 図11同 (底質)
  • 図12同 (生物)
  • 図13同 (大気)
 
 (3) 評価方法
 
 平成13年度に化学物質環境汚染実態調査の見直しを行い、平成14年度から調査体系が変更された。このため、調査対象物質、調査地点及び定量下限値について見直し前後の比較を行い、継続性を検討した。次に、個別の物質について、継続性の検討結果に基づき残留状況の推移を評価した。
 
1) モニタリング調査の継続性の検討
 化学物質環境汚染実態調査(昭和49年度開始)において平成13年度まで実施してきた継続的調査として、昭和53年度に開始した「生物モニタリング」を始め、「水質・底質モニタリング」、「指定化学物質等検討調査」、「非意図的生成化学物質汚染実態追跡調査」を行ってきた。また、年度別調査としては一般環境中に残留する化学物質の早期発見及びその濃度レベルの把握を目的とし、種々の調査対象物質を選定して「化学物質環境調査」を行ってきた。これら調査の概要は次のとおりである。
 
調査名称 開始年度(注1) 媒体(注2) 調査対象物質(注2)
生物モニタリング 昭和53年度 生物(魚類, 貝類, 鳥類) PCB類、HCB、ドリン類、DDT類、クロルデン類、HCH類、有機スズ化合物
水質・底質モニタリング 昭和61年度 水質、底質 HCB、ディルドリン、DDT類、クロルデン類、HCH類、有機スズ化合物
指定化学物質等検討調査 昭和63年度 水質、底質 有機スズ化合物
非意図的生成化学物質
汚染実態追跡調査
平成元年度 水質、底質、生物(魚類)、大気 PCB類
化学物質環境調査 昭和49年度 水質、底質、生物(魚類)、大気 PCB類、HCB、ドリン類、クロルデン類、ヘプタクロル、HCH類、有機スズ化合物
(注1)  開始年度は調査の開始年度であり、調査実施状況は媒体、調査対象物質ごとに異なる。
(注2)  調査対象物質は、平成14年度モニタリング調査の調査対象物質に含まれるもののみを掲げた。また、媒体も右欄の調査対象物質について調査を実施しているもののみ掲げた。
 
・PCB類
 PCB類の調査地点については、水質、底質、大気媒体の平成14年度調査地点は平成13年度以前と大幅に変わったため、経年的に評価する場合には考慮を要する。生物媒体では、水質汚濁の進んでいると思われる川崎港、横浜港が追加され、汚濁の比較的少ないと思われる釧路沖、祝言島地先が調査地点ではなくなっているため、経年的に評価する場合、この点に留意する必要がある。
 PCB類の定量下限値については、水質、底質、大気媒体の平成14年度値は平成13年度以前の値とほぼ同等であるため継続的に評価することが可能である。生物媒体では平成14年度の定量下限値は平成13年度以前に比べて1/1,000程度に下がっているため、検出頻度や幾何平均値により残留状況の傾向を評価する場合には考慮を要する。なお、生物媒体については平成13年度以前は定量下限値未満の検体が多く、推移を評価することは困難である。
 
・PCB類以外の有機塩素系化合物
 PCB類以外の有機塩素系化合物では、過去にモニタリングを実施していない物質(ヘプタクロル等)及び媒体(大気等)については残留状況の傾向を判断できないほか、オキシクロルデンの水質及び底質媒体、アルドリン、エンドリンの生物媒体については、前回の調査実施から間隔が開いているため残留状況の傾向を評価する場合には考慮を要する。
 PCB類以外の有機塩素系化合物の調査地点については、水質、底質媒体の平成14年度調査地点は平成13年度以前と大幅に変わったため、経年的に評価する場合には考慮を要する。生物媒体ではPCB類と同様の異同があり、経年的に評価する場合には留意が必要である。
 PCB類以外の有機塩素系化合物の定量下限値については、平成14年度は平成13年度以前に比べて水質媒体では1/10,000程度に、底質及び生物媒体では1/1,000程度に下がっているため、検出頻度や幾何平均値により残留状況の傾向を評価する場合には考慮を要する。なお、生物媒体については平成13年度以前は定量下限未満の検体が多く、推移を評価することは困難である。
 
・有機スズ化合物
 有機スズ化合物の調査地点については、底質媒体の平成14年度調査地点は平成13年度以前と大幅に変わったため、経年的に評価する場合には考慮を要する。生物媒体では、他の物質と同様の異同があり、経年的な評価をする場合、この点に留意する必要がある。
 有機スズ化合物の定量下限値については、底質媒体の平成14年度値は平成13年度以前の値とほぼ同等の値であるため継続的に評価することが可能である。生物媒体では平成14年度の定量下限値は平成13年度以前に比べて1/10程度に下がっているため、検出頻度や幾何平均値により残留状況の傾向を評価する場合には考慮を要する。
 
2) 評価方針
 モニタリング調査は長期に渡り実施されてきており、その間に調査地点、分析法等の変更が行われている。
 そのため、調査開始当初と最近の調査結果をそのまま連続した値として扱うことは困難であるが、一定期間毎にみれば継続性をもって評価を行うことができると考えられる。
 評価は、まず物質別、媒体別に一定期間毎の傾向の評価を行い、次いでこれらを総合した全期間を通じた傾向の評価を行う。
 
 (4) 調査結果
 
 平成14年度調査における検出状況の概要を表3-1及び表3-2に示す。
  • 表3-1平成14年度 モニタリング調査 定量下限値一覧:
  • 表3-2同 検出状況一覧

 また、PCB類、HCB、ディルドリン、p,p'-DDT、trans-クロルデン、cis-クロルデン、TBT、TPTについて、生物及び底質の経年変化図を図14~図21に示す。

  • 図14PCB
  • 図15HCB
  • 図16ディルドリン
  • 図17p,p'-DDT
  • 図18trans-クロルデン
  • 図19cis-クロルデン
  • 図20TBT
  • 図21TPT
 
 (5) 調査結果に対する評価
 
 平成14年度の調査結果の概要は次のとおりである。
 今回の調査では、生物試料において分析精度向上が図られたため、前年度よりも検出割合が増大した。POPsについては鳥類のアルドリンを除き、全ての物質が水質・底質・生物(魚類、貝類)及び大気試料から検出された。また、有機スズ化合物については、鳥類を除き調査を実施した底質及び生物(魚類、貝類)から検出された。
 調査結果に対する評価を物質(群)別に以下に示す。
 
1) PCB類
 水質は、直近3年間の調査結果があり、幾何平均値で平成12、13、14年度がそれぞれ 560pg/L、440pg/L、460pg/Lとなっている。残留状況の傾向の判断は困難であるが、3年とも全地点・全検体から検出されており、依然として広範な地点で残留が認められる。
 底質は、直近3年間の調査結果があり、幾何平均値で平成12、13、14年度がそれぞれ 15,000pg/g-dry、15,000pg/g-dry、9,200pg/g-dryとなっている。濃度は減少傾向にあるが、3年とも全地点・全検体から検出されており、依然として広範な地点で残留が認められる。
 魚類は、調査開始当初から近年までの残留状況は減少傾向にあるが、平成14年度は定量下限値 1.2~3pg/g-wetにおいて全地点・全検体から検出されており、依然として広範な地点で残留が認められる。
 貝類は、調査開始当初の残留状況は減少傾向にあり、近年は定量下限値(10,000pg/g-wet)未満の値が多かった。平成14年度は定量下限値 1.2~3pg/g-wetにおいて全地点・全検体から検出された。過去の定量下限値が高いため残留状況の傾向の判断は困難であるが、広範な地点で残留が認められる。
 鳥類は、地点数が2地点と少ないことに加え調査地点の変更もあり、調査開始当初からの残留状況の傾向の判断は困難である。近年の残留状況に変化は見られず、依然として残留が認められる。
 大気は、直近3年間の調査結果があり、幾何平均値で平成12、13、14年度がそれぞれ 430pg/m3、280pg/m3、100pg/m3と減少している。平成14年度は調査地点が19地点増え、また郊外地域が多数増えたので継続調査地点のみに絞ったところ、平成12、13、14年度がそれぞれ 390pg/m3、220pg/m3、120pg/m3となっており、環境中濃度の減少傾向が伺える。
 
 PCB類はPOPs条約に掲げられている物質であり、全地球的な汚染監視の観点からも、今後さらにモニタリングを継続し、その消長を追跡する必要がある。また、PCB類の分解処理が始まっており、この効果・影響の監視も視野に入れる必要がある。なお、PCB類については総量に加え、これまでも不定期に塩素数ごと並びにコプラナーPCBの測定も実施しているが、平成14年度からはこれらを経年でモニタリング調査していく。
 
   PCB類 (経年変化図
物質名 単位 幾何平均値 検出範囲 定量下限値 検出頻度(地点)
水質 pg/L 460 60 ~ 11,000 0.18 ~ 0.9
0.018~0.09
38/38
底質 pg/g-dry 9,200 39 ~ 630,000 0.21 ~ 1.5 63/63
生物 魚類 pg/g-wet 14,000 1,500 ~ 550,000 1.2 ~ 3 14/14
貝類 pg/g-wet 10,000 200 ~ 160,000 1.2 ~ 3 8/ 8
鳥類 pg/g-wet 11,000 4,800 ~ 22,000 1.2 ~ 3 2/ 2
大気 pg/m3 100 16 ~ 880 0.015 ~ 90 34/34
注:水質の定量下限値は上段が基本採水システム(採水量 30L)、下段が大量採水システム
  (採水量 100L)のものである。

2) HCB
 水質は、平成13年度までほとんどが定量下限値(10,000pg/L程度)未満であった。平成14年度は定量下限値 0.06又は 0.6pg/Lにおいて全地点・全検体から検出されたことから、これまでの残留状況は定量下限値未満の値で推移していたと想定される。過去の定量下限値が高いため残留状況の傾向の判断は困難であるが、広範な地点で残留が認められる。
 底質は、調査開始当初から最近に至るまで残留状況は減少傾向にあるが、平成14年度は定量下限値 0.9pg/g-dryにおいて全地点・全検体から検出され、依然として広範な地点で残留が認められる。
 魚類は、調査開始当初の残留状況は減少傾向にあり、近年は定量下限値(1,000pg/g-wet)未満の値が多かった。平成14年度は定量下限値 0.18pg/g-wetにおいて全地点・全検体から検出された。過去の定量下限値が高いため残留状況の傾向の判断は困難であるが、広範な地点で残留が認められる。
 貝類は、平成13年度まで定量下限値(1,000pg/g-wet)未満であった。平成14年度は定量下限値 0.18pg/g-wetにおいて全地点・全検体から検出されたことから、これまでの残留状況は定量下限値未満の値で推移していたと想定される。過去の定量下限値が高いため残留状況の傾向の判断は困難であるが、広範な地点で残留が認められる。
 鳥類は、地点数が2地点と少ないことに加え調査地点の変更もあり、調査開始当初からの残留状況の傾向の判断は困難である。近年は残留状況の変化に傾向は見られず、依然として残留が認められる。
 大気は、平成14年度からモニタリングを開始したため、残留状況の傾向は判断できないが、広範な地点で残留が認められる。
 
 HCBはPOPs条約に掲げられている物質であり、広範囲に存在しており、全地球的な汚染監視の観点からも、今後さらにモニタリングを継続し、その消長を追跡する必要がある。
 
   HCB (経年変化図
物質名 単位 幾何平均値 検出範囲 定量下限値 検出頻度(地点)
水質 pg/L 36 9.8 ~ 1,400 0.6
0.06
38/38
底質 pg/g-dry 210 7.6 ~ 19,000 0.9 63/63
生物 魚類 pg/g-wet 140 19 ~ 910 0.18 14/14
貝類 pg/g-wet 23 2.4 ~ 330 0.18 8/ 8
鳥類 pg/g-wet 1,000 560 ~ 1,600 0.18 2/ 2
大気 pg/m3 99 57 ~ 3,000 0.9 34/34
注:水質の定量下限値は上段が基本採水システム(採水量 30L)、下段が大量採水システム
  (採水量 100L)のものである。

3) ドリン類(アルドリン、ディルドリン、エンドリン)
 アルドリン
 水質及び底質は、平成14年度からモニタリングを開始したが、広範な地点で残留が認められる。
 魚類は、平成5年度までほとんどが定量下限値(1,000pg/g-wet)未満であり、平成6年度以降未調査であった。平成14年度は定量下限値 4.2pg/g-wetにおいて調査したが全て定量下限値未満であり、残留状況に大幅な濃度の上昇はないと考えられる。
 貝類は、平成5年度まで定量下限値(1,000pg/g-wet)未満であり、平成6年度以降未調査であった。平成14年度は定量下限値 4.2pg/g-wetにおいて調査し検出されたことから、これまでの残留状況は定量下限値未満の値で推移していたと想定される。過去の定量下限値が高いため残留状況の傾向の判断は困難であるが、残留が認められる。
 鳥類は、昭和53年度に検出されて以降、平成5年度まで定量下限値(1,000pg/g-wet)未満であり、平成6年度以降未調査であった。平成14年度は定量下限値 4.2pg/g-wetにおいて調査したが全て定量下限値未満であり、残留状況に大幅な濃度の上昇はないと考えられる。
 大気は、平成14年度からモニタリングを開始したが、広範な地点から検出されている。
 
   アルドリン
物質名 単位 幾何平均値 検出範囲 定量下限値 検出頻度(地点)
水質 pg/L 0.84 tr(0.04) ~ 18 0.6
0.06
37/38
底質 pg/g-dry 15 tr(2) ~ 570 6 56/63
生物 魚類 pg/g-wet nd tr(2.0) 4.2 1/14
貝類 pg/g-wet tr(3.6) tr(1.7) ~ 34 4.2 4/ 8
鳥類 pg/g-wet nd ---
4.2 0/ 2
大気 pg/m3 tr(0.030) tr(0.029) ~ 3.2 0.060 19/34
注:水質の定量下限値は上段が基本採水システム(採水量 30L)、下段が大量採水システム
  (採水量 100L)のものである。
 
 ディルドリン
 水質は、平成13年度まで定量下限値(10,000pg/L程度)未満であった。平成14年度は定量下限値 0.18~1.8pg/Lにおいて全地点で検出されたことから、これまでの残留状況は定量下限値未満の値で推移していたと想定される。過去の定量下限値が高いため残留状況の傾向の判断は困難であるが、広範な地点で残留が認められる。
 底質は、平成13年度までほとんどが定量下限値(1,000pg/g-dry程度)未満であった。平成14年度は定量下限値 3pg/g-dryにおいて全地点・全検体から検出されたことから、これまでの残留状況は定量下限値未満の値で推移していたと想定される。過去の定量下限値が高いため残留状況の傾向の判断は困難であるが、広範な地点で残留が認められる。
 魚類及び貝類は、調査開始当初から最近に至るまで残留状況は減少傾向にあるが、平成14年度は定量下限値 12pg/g-wetにおいて全地点・全検体から検出され、依然として広範な地点で残留が認められる。
 鳥類は、地点数が2地点と少ないことに加え調査地点の変更もあり、調査開始当初からの残留状況の傾向の判断は困難である。近年の残留状況に大きな変化は見られないが、依然として残留が認められる。
 大気は、平成14年度からモニタリングを開始したが、広範な地点で残留が認められる。
 
   ディルドリン (経年変化図
物質名 単位 幾何平均値 検出範囲 定量下限値 検出頻度(地点)
水質 pg/L 41 3.3 ~ 940 1.8
0.18
38/38
底質 pg/g-dry 63 4 ~ 2,300 3 63/63
生物 魚類 pg/g-wet 280 46 ~ 2,400 12 14/14
貝類 pg/g-wet 490 tr(7) ~ 190,000 12 8/ 8
鳥類 pg/g-wet 1,200 820 ~ 1,700 12 2/ 2
大気 pg/m3 5.6 0.73 ~ 110 0.60 34/34
注:水質の定量下限値は上段が基本採水システム(採水量 30L)、下段が大量採水システム
  (採水量 100L)のものである。
 
 エンドリン
 水質及び底質は、平成14年度からモニタリングを開始したが、広範な地点で残留が認められる。
 魚類は、平成5年度までほとんどが定量下限値(1,000pg/g-wet程度)未満であり、平成6年度以降未調査であった。平成14年度は定量下限値 18pg/g-wetにおいて検出されたことから、平成5年度までの残留状況は定量下限値未満の値で推移していたと想定される。過去の定量下限値が高いため残留状況の傾向の判断は困難であるが、広範な地点で残留が認められる。
 貝類は、平成5年度まで定量下限値 1,000pg/g-wet において特定地域(鳴門、イガイ)で検出されていたが、平成6年度以降未調査であった。平成14年度は定量下限値 18pg/g-wetにおいて8地点中7地点から検出されたことから、他の地域にも広範に残留していることが認められた。
 鳥類は、平成5年度まで定量下限値(1,000pg/g-wet程度)未満であり、平成6年度以降未調査であった。平成14年度は定量下限値 18pg/g-wetにおいて全地点から検出されたことから、平成5年度までの残留状況は定量下限値未満の値で推移していたと想定される。過去の定量下限値が高いため残留状況の傾向の判断は困難であるが、残留が認められる。
 大気は、平成14年度からモニタリングを開始したが、広範な地点で残留が認められる。
 アルドリン・ディルドリン・エンドリンは、POPs条約の対象物質であり、全地球的な汚染監視の観点からも、今後さらにモニタリングを継続し、その消長を追跡する必要がある。
 
   エンドリン
物質名 単位 幾何平均値 検出範囲 定量下限値 検出頻度(地点)
水質 pg/L 5.3 tr(0.6) ~ 31 6.0
0.60
36/38
底質 pg/g-dry 12 tr(2) ~ 19,000 6 54/63
生物 魚類 pg/g-wet 24 tr(6) ~ 180 18 13/14
貝類 pg/g-wet 48 tr(8) ~ 12,000 18 7/8
鳥類 pg/g-wet 31 tr(8) ~ 99 18 2/ 2
大気 pg/m3 0.25 tr(0.051) ~ 2.5 0.090 32/34
注:水質の定量下限値は上段が基本採水システム(採水量 30L)、下段が大量採水システム
  (採水量 100L)のものである。

4) DDT類
 p,p'-DDT
 水質は、平成13年度まで定量下限値(10,000pg/L)未満であった。平成14年度は定量下限値 0.06pg/L又は 0.6pg/Lにおいて全地点・全検体から検出されたことから、これまでの残留状況は定量下限値未満の値で推移していたと想定される。過去の定量下限値が高いため残留状況の傾向の判断は困難であるが、広範な地点で残留が認められる。
 底質は、平成8年度まで残留状況に大きな変化は見られないが、平成9年度以降は減少傾向にある。平成14年度は定量下限値 6pg/g-dryにおいて調査し、全地点・全検体から検出され、依然として広範な地点で残留が認められる。
 魚類は、調査開始当初から近年までの残留状況は減少傾向にあるが、平成14年度は定量下限値 4.2pg/g-wetにおいて全地点・全検体から検出されており、依然として広範な地点で残留が認められる。
 貝類は、調査開始当初の残留状況は減少傾向にあり、近年は定量下限値(10,000pg/g-wet)未満の値が多かった。平成14年度は定量下限値 4.2pg/g-wetにおいて全地点・全検体から検出された。過去の定量下限値が高いため残留状況の傾向の判断は困難であるが、広範な地点で残留が認められる。
 鳥類は、地点数が2地点と少ないことに加え調査地点の変更もあり、調査開始当初からの残留状況の傾向の判断は困難である。近年は残留状況の傾向に変化は見られず、依然として残留が認められる。
 大気は、平成14年度からモニタリングを開始したが、広範な地点で残留が認められる。
 
   p,p’-DDT (経年変化図
物質名 単位 幾何平均値 検出範囲 定量下限値 検出頻度(地点)
水質 pg/L 12 0.25 ~ 440 0.6
0.06
38/38
底質 pg/g-dry 270 tr(5) ~ 97,000 6 63/63
生物 魚類 pg/g-wet 330 6.8 ~ 24,000 4.2 14/14
貝類 pg/g-wet 200 38 ~ 1,200 4.2 8/ 8
鳥類 pg/g-wet 380 76 ~ 1,300 4.2 2/ 2
大気 pg/m3 1.9 0.25 ~ 22 0.24 34/34
注:水質の定量下限値は上段が基本採水システム(採水量 30L)、下段が大量採水システム
  (採水量 100L)のものである。
 
 p,p'-DDE、p,p'-DDD
 水質は、平成13年度まで定量下限値 10,000pg/L程度において調査し、昭和62年度にp,p'-DDEが1地点で検出されたのみであった。平成14年度は定量下限値 p,p'-DDE: 0.06又は 0.6pg/L、p,p'-DDD: 0.024又は 0.24pg/Lにおいて全地点・全検体から検出されたことから、両物質ともこれまでの残留状況は定量下限値未満の値で推移していたと想定される。過去の定量下限値が高いため残留状況の傾向の判断は困難であるが、広範な地点で残留が認められる。
 底質は、両物質とも調査開始当初は残留状況に変化は見られず、近年は緩い減少傾向にある。平成14年度は定量下限値 p,p'-DDE: 2.7pg/g-dry、p,p'-DDD: 2.4pg/g-dryにおいて全地点・全検体から検出され、両物質とも依然として広範な地点で残留が認められる。
 魚類は、両物質とも調査開始当初から近年に至るまで残留状況は緩い減少傾向にある。平成14年度は定量下限値 p,p'-DDE: 2.4pg/g-wet、p,p'-DDD: 5.4pg/g-wetにおいて全地点・全検体から検出され、両物質とも依然として広範な地点で残留が認められる。
 貝類は、p,p'-DDEは調査開始当初緩い減少傾向にあったが近年は残留状況の変化に傾向は見られず、p,p'-DDDは調査開始当初から近年に至るまで残留状況に変化は見られない。平成14年度は定量下限値p,p'-DDE: 2.4pg/g-wet、p,p'-DDD: 5.4pg/g-wet において全地点・全検体から検出され、両物質とも依然として広範な地点で残留が認められる。
 鳥類は、地点数が2地点と少ないことに加え、調査地点が変更されたため、調査開始当初からの残留状況の傾向の判断は困難である。近年は残留状況に変化は見られず、依然として残留が認められる。なお、これまでと同様に鳥類からのp,p'-DDEは他のDDT類に比べて高い濃度で検出されている。
 大気は、平成14年度からモニタリングを開始したが、広範な地点で残留が認められる。
 
   p,p’-DDE
物質名 単位 幾何平均値 検出範囲 定量下限値 検出頻度(地点)
水質 pg/L 24 1.3 ~ 760 0.6
0.06
38/38
底質 pg/g-dry 660 8.4 ~ 23,000 2.7 63/63
生物 魚類 pg/g-wet 2,500 510 ~ 98,000 2.4 14/14
貝類 pg/g-wet 1,100 140 ~ 6,000 2.4 8/ 8
鳥類 pg/g-wet 36,000 8,100 ~ 170,000 2.4 2/ 2
大気 pg/m3 2.8 0.56 ~ 28 0.09 34/34
 
   p,p’-DDD
物質名 単位 幾何平均値 検出範囲 定量下限値 検出頻度(地点)
水質 pg/L 15 0.57 ~ 190 0.9
0.09
38/38
底質 pg/g-dry 540 tr(2.2) ~ 51,000 2.4 63/63
生物 魚類 pg/g-wet 610 80 ~ 14,000 5.4 14/14
貝類 pg/g-wet 340 11 ~ 3,200 5.4 8/ 8
鳥類 pg/g-wet 560 140 ~ 3,900 5.4 2/ 2
大気 pg/m3 0.13 tr(0.024) ~ 0.76 0.018 34/34
注:水質の定量下限値は上段が基本採水システム(採水量 30L)、下段が大量採水システム
  (採水量 100L)のものである。
 
 o,p'-DDT、o,p'-DDE、o,p'-DDD
 水質及び底質は、平成14年度からモニタリングを開始したが、広範な地点で残留が認められる。
 魚類及び貝類は、いずれの物質とも調査開始当初から近年に至るまで残留状況に変化は見られず、定量下限値(1,000pg/g-wet)未満の値が多かった。平成14年度は定量下限値 o,p'-DDT: 12pg/g-wet、o,p'-DDE: 3.6pg/g-wet、o,p'-DDD: 12pg/g-wet において全地点・全検体から検出された。過去の定量下限値が高いため残留状況の傾向の判断は困難であるが、広範な地点で残留が認められる。
 鳥類は、地点数が2地点と少ないことに加え調査地点が変更されたため、調査開始当初からの残留状況の傾向の判断は困難である。近年は残留状況に変化は見られず、依然として残留が認められる。
 大気は、平成14年度からモニタリングを開始したが、広範な地点で残留が認められる。
 
 DDT類は、p,p'-DDTがPOPs条約の対象物質であり、全地球的な汚染監視の観点からも、今後さらにモニタリングを継続し、その消長を追跡する必要がある。
 
   o,p’-DDT
物質名 単位 幾何平均値 検出範囲 定量下限値 検出頻度(地点)
水質 pg/L 5.1 0.19 ~ 77 1.2
0.12
38/38
底質 pg/g-dry 59 tr(2) ~ 27,000 6 62/63
生物 魚類 pg/g-wet 110 tr(6) ~ 2,300 12 14/14
貝類 pg/g-wet 100 22 ~ 480 12 8/ 8
鳥類 pg/g-wet 12 tr(5) ~ 58 12 2/ 2
大気 pg/m3 2.2 0.41 ~ 40 0.15 34/34
 
   o,p’-DDE
物質名 単位 幾何平均値 検出範囲 定量下限値 検出頻度(地点)
水質 pg/L 2.3 0.25 ~ 680 0.9
0.09
38/38
底質 pg/g-dry 46 tr(1) ~ 16,000 3 63/63
生物 魚類 pg/g-wet 77 3.6 ~ 13,000 3.6 14/14
貝類 pg/g-wet 88 13 ~ 1,100 3.6 8/ 8
鳥類 pg/g-wet 28 20 ~ 49 3.6 2/ 2
大気 pg/m3 0.60 0.11 ~ 8.5 0.03 34/34
 
   o,p’-DDD
物質名 単位 幾何平均値 検出範囲 定量下限値 検出頻度(地点)
水質 pg/L 5.5 0.21 ~ 110 0.6
0.06
38/38
底質 pg/g-dry 140 tr(2) ~ 14,000 6 62/63
生物 魚類 pg/g-wet 88 tr(5) ~ 1,100 12 14/14
貝類 pg/g-wet 130 tr(9) ~ 2,900 12 8/ 8
鳥類 pg/g-wet 15 tr(8) ~ 23 12 2/ 2
大気 pg/m3 0.15 0.027 ~ 0.85 0.021 33/34
注:水質の定量下限値は上段が基本採水システム(採水量 30L)、下段が大量採水システム
  (採水量 100L)のものである。
 

5) クロルデン類
 trans-クロルデン
 水質は、昭和62年度、平成5年度にそれぞれ1検体ずつから検出されたほかは定量下限値(10,000pg/L)未満であった。平成14年度は定量下限値 0.15又は 1.5pg/Lにおいて全地点・全検体から検出されたことから、これまでの残留状況は定量下限値未満の値で推移していたと想定される。過去の定量下限値が高いため残留状況の傾向の判断は困難であるが、広範な地点で残留が認められる。
 底質は、調査開始当初からの残留状況は減少傾向にあり、近年は定量下限値(1,000pg/g-dry)付近の値が多かった。平成14年度は定量下限値 1.8pg/g-dryにおいて全地点・全検体から検出された。過去の定量下限値が高いため残留状況の傾向の判断は困難であるが、広範な地点で残留が認められる。
 魚類及び貝類は、調査開始当初からの残留状況は緩い減少傾向にあり、近年は定量下限値(1,000pg/g-wet)未満の値が多かった。平成14年度は定量下限値 2.4pg/g-wetにおいて全地点・全権体から検出された。過去の定量下限値が高いため残留状況の傾向の判断は困難であるが、広範な地点で残留が認められる。
 鳥類は、地点数が2地点と少ないことに加え調査地点の変更もあり、調査開始当初からの残留状況の傾向の判断は困難である。近年は昭和62年度から平成13年度まで定量下限値(1,000pg/g-wet)未満であった。平成14年度は定量下限値 2.4pg/g-wetにおいて全地点・全検体から検出されたことから、近年の残留状況は定量下限値未満で推移していたと想定される。過去の定量下限値が高いため残留状況の傾向の判断は困難であるが、残留が認められる。
 大気は、平成14年度からモニタリングを開始したが、広範な地点で残留が認められる。
 
   trans-クロルデン (経年変化図
物質名 単位 幾何平均値 検出範囲 定量下限値 検出頻度(地点)
水質 pg/L 32 3.1 ~ 780 1.5
0.15
38/38
底質 pg/g-dry 130 2.1 ~ 16,000 1.8 63/63
生物 魚類 pg/g-wet 180 20 ~ 2,700 2.4 14/14
貝類 pg/g-wet 420 33 ~ 2,300 2.4 8/ 8
鳥類 pg/g-wet 14 8.9 ~ 26 2.4 2/ 2
大気 pg/m3 36 0.62 ~ 820 0.60 34/34
注:水質の定量下限値は上段が基本採水システム(採水量 30L)、下段が大量採水システム
  (採水量 100L)のものである。
 
 cis-クロルデン
 水質は、平成13年度までほとんどが定量下限値(10,000pg/L)未満であった。平成14年度は定量下限値 0.09又は 0.9pg/Lにおいて全地点・全検体から検出されたことから、これまでの残留状況は定量下限値未満の値で推移していたと想定される。過去の定量下限値が高いため残留状況の傾向の判断は困難であるが、広範な地点で残留が認められる。
 底質は、調査開始当初からの残留状況は減少傾向にあり、近年は定量下限値(1,000pg/g-dry)付近のデータが多かった。平成14年度は定量下限値 0.9pg/g-dryにおいて全地点・全検体から検出された。過去の定量下限値が高いため残留状況の傾向の判断は困難であるが、広範な地点で残留が認められる。
 魚類及び貝類は、調査開始当初からの残留状況は緩い減少傾向にあり、近年は定量下限値(1,000pg/g-wet)未満の値が多かった。平成14年度は定量下限値 2.4pg/g-wetにおいて全地点・全検体から検出された。過去の定量下限値が高いため残留状況の傾向の判断は困難であるが、広範な地点で残留が認められる。
 鳥類は、地点数が2地点と少ないことに加え調査地点の変更もあり、調査開始当初からの残留状況の傾向の判断は困難である。近年は平成6年度から平成13年度まで定量下限値(1,000pg/g-wet)未満であった。平成14年度は定量下限値 2.4pg/g-wetにおいて調査し全地点・全検体から検出されたことから、平成6年度から平成13年度の残留状況は定量下限値未満で推移していたと想定される。過去の定量下限値が高いため残留状況の傾向の判断は困難であるが、残留が認められる。
 大気は平成14年度からモニタリングを開始したが、広範な地点で残留が認められる。
 
   cis-クロルデン (経年変化図
物質名 単位 幾何平均値 検出範囲 定量下限値 検出頻度(地点)
水質 pg/L 41 2.5 ~ 880 0.9
0.09
38/38
底質 pg/g-dry 120 1.8 ~ 18,000 0.9 63/63
生物 魚類 pg/g-wet 580 57 ~ 6,900 2.4 14/14
貝類 pg/g-wet 810 24 ~ 26,000 2.4 8/ 8
鳥類 pg/g-wet 67 10 ~ 450 2.4 2/ 2
大気 pg/m3 31 0.86 ~ 670 0.60 34/34
注:水質の定量下限値は上段が基本採水システム(採水量 30L)、下段が大量採水システム
  (採水量 100L)のものである。
 
 trans-ノナクロル、cis-ノナクロル、オキシクロルデン
 水質は、trans-ノナクロルとcis-ノナクロルは平成13年度までほとんど定量下限値 (10,000pg/L)未満であり、オキシクロルデンは昭和62年度まで定量下限値(10,000pg/L)未満で昭和63年度以降未調査であった。平成14年度は定量下限値 trans-ノナクロル: 0.12pg/L又は 1.2pg/L、cis-ノナクロル: 0.18pg/L又は 1.8pg/L、オキシクロルデン: 0.12pg/L又は 1.2pg/Lにおいて調査し、trans-ノナクロル、cis-ノナクロルは全地点・全検体から、オキシクロルデンは多くの地点・検体から検出されたことから、これまでの残留状況は定量下限値未満の値で推移していたと想定される。過去の定量下限値が高いため残留状況の傾向の判断は困難であるが、広範な地点で残留が認められる。
 底質は、trans-ノナクロル及びcis-ノナクロルは調査開始当初の残留状況は減少傾向にあり、近年は定量下限値(1,000pg/g-dry)付近のデータが多く、オキシクロルデンは昭和62年度まで定量下限値(1,000pg/g-dry)未満で昭和63年度以降未調査であった。平成14年度は定量限界値 trans-ノナクロル: 1.5pg/g-dry、cis-ノナクロル:2.1pg/g-dry、オキシクロルデン: 1.5pg/g-dryにおいて調査し、trans-ノナクロル、cis-ノナクロルは全地点・全検体から、オキシクロルデンは多くの地点・検体から検出されたことから、これまでの残留状況は定量下限値未満の値で推移していたと想定される。過去の定量下限値が高いため残留状況の傾向の判断は困難であるが、広範な地点で残留が認められる。
 魚類及び貝類は、3物質とも、調査開始当初からの残留状況は緩い減少傾向にあり、オキシクロルデンの近年は定量下限値(1.000pg/g-wet)未満の値がほとんどであった。平成14年度は定量限界値 trans-ノナクロル: 2.4pg/g-wet、cis-ノナクロル: 1.2pg/g-wet、オキシクロルデン: 3.6pg/g-wetにおいて調査し、trans-ノナクロル、cis-ノナクロルは全地点・全検体から、オキシクロルデンは多くの地点・検体から検出されたことから、依然として広範な地点で残留が認められる。
 鳥類は、地点数が2地点と少ないことに加え調査地点の変更もあり、調査開始当初からの残留状況の判断は困難である。近年は3物質とも定量下限値(1.000pg/g-wet)未満の値が多い。平成14年度は定量下限値 trans-ノナクロル: 2.4pg/g-wet、cis-ノナクロル: 1.2pg/g-wet、オキシクロルデン: 3.6pg/g-wetにおいて調査し、trans-ノナクロル、cis-ノナクロルは全地点・全検体から、オキシクロルデンは全地点のほとんどの検体から検出されたことから、これまでの残留状況は定量下限値未満の値で推移していたと想定される。過去の定量下限値が高いため残留状況の傾向の判断は困難であるが、広範な地点で残留が認められる。
 大気は、平成14年度からモニタリングを開始したが、広範な地点で残留が認められる。
 
   trans-ノナクロル
物質名 単位 幾何平均値 検出範囲 定量下限値 検出頻度(地点)
水質 pg/L 29 1.8 ~ 780 1.2
0.12
38/38
底質 pg/g-dry 120 3.1 ~ 13,000 1.5 63/63
生物 魚類 pg/g-wet 970 98 ~ 8,300 2.4 14/14
貝類 pg/g-wet 510 21 ~ 1,800 2.4 8/ 8
鳥類 pg/g-wet 880 350 ~ 1,900 2.4 2/ 2
大気 pg/m3 24 0.64 ~ 550 0.30 34/34
 
   cis-ノナクロル
物質名 単位 幾何平均値 検出範囲 定量下限値 検出頻度(地点)
水質 pg/L 7.6 0.23 ~ 250 1.8
0.18
38/38
底質 pg/g-dry 65 tr(1.0) ~ 7,800 2.1 63/63
生物 魚類 pg/g-wet 420 46 ~ 5,100 1.2 14/14
貝類 pg/g-wet 190 8.6 ~ 870 1.2 8/ 8
鳥類 pg/g-wet 200 68 ~ 450 1.2 2/ 2
大気 pg/m3 3.1 0.071 ~ 62 0.030 34/34
 
   オキシクロルデン
物質名 単位 幾何平均値 検出範囲 定量下限値 検出頻度(地点)
水質 pg/L 2.9 0.13 ~ 41 1.2
0.12
35/38
底質 pg/g-dry 2.7 tr(0.6) ~ 120 1.5 59/63
生物 魚類 pg/g-wet 160 16 ~ 3,900 3.6 14/14
貝類 pg/g-wet 78 tr(1.9) ~ 5,600 3.6 8/ 8
鳥類 pg/g-wet 640 470 ~ 890 3.6 2/ 2
大気 pg/m3 0.96 0.37 ~ 8.3 0.024 34/34
注:水質の定量下限値は上段が基本採水システム(採水量 30L)、下段が大量採水システム
  (採水量 100L)のものである。
 
 クロルデン類は、trans-クロルデン、cis-クロルデンがPOPs条約の対象物質であり、全地球的な汚染監視の観点からも、今後さらにモニタリングを継続し、その消長を追跡する必要がある。
 

6) ヘプタクロル
 
 全媒体において、平成14年度からモニタリングを開始した。
 水質は、定量下限値 0.15pg/L又は 1.5pg/Lにおいて38地点で調査を実施し、全地点から検出された。
 底質は、定量下限値 1.8pg/g-dryにおいて63地点で調査を実施し、60地点から検出された。
 魚類は、定量下限値 4.2pg/g-wetにおいて14地点で調査を実施し、12地点から検出された。
 貝類は、定量下限値 4.2pg/g-wetにおいて8地点で調査を実施し、6地点から検出された。
 鳥類は、定量下限値 4.2pg/g-wetにおいて2地点で調査を実施し、2地点から検出された。
 大気は、定量下限値 0.12pg/m3において34地点で調査を実施し、全地点・全検体から検出された。   
 
   ヘプタクロル
物質名 単位 幾何平均値 検出範囲 定量下限値 検出頻度(地点)
水質 pg/L tr(1.3) tr(0.5) ~ 25 1.5
0.15
38/38
底質 pg/g-dry 4.0 tr(0.6) ~ 120 1.8 60/63
生物 魚類 pg/g-wet 4.9 tr(1.6) ~ 20 4.2 12/14
貝類 pg/g-wet 4.8 tr(1.9) ~ 15 4.2 6/ 8
鳥類 pg/g-wet tr(2.9) tr(1.9) ~ 5.2 4.2 2/ 2
大気 pg/m3 11 0.20 ~ 220 0.12 34/34
注:水質の定量下限値は上段が基本採水システム(採水量 30L)、下段が大量採水システム
  (採水量 100L)のものである。
 

7) HCH類
 
 水質は、α-HCH、β-HCHとも減少傾向にあり、平成6年度以降定量下限値(10,000pg/L)未満であった。平成14年度は定量下限値 0.09pg/L又は 0.9pg/Lにおいて全地点・全検体から検出されたことから、平成6年度以降の残留状況は定量下限値未満で推移していたと推定される。過去の定量下限値が高いため残留状況の傾向の判断は困難であるが、広範な地点で残留が認められる。
 底質は、α-HCH、β-HCHともに過去データにおける数値の変動が大きく残留状況の傾向の判断は困難である。平成14年度は定量下限値α-HCH: 1.2pg/g-dry、β-HCH: 0.9pg/g-dry において全地点・全検体から検出されたことから、依然として広範な地点で残留が認められる。
 魚類及び貝類は、昭和50年代後半から昭和60年代の残留状況は減少傾向にあり、近年は定量下限値(1,000pg/g-wet)未満の値が多かった。平成14年度は定量下限値 α-HCH: 4.2pg/g-wet、β-HCH: 12pg/g-wetにおいて全地点・検体から検出されたことから、依然として広範な地点で残留が認められる。
 鳥類は、地点数が2地点と少ないことに加え調査地点の変更もあり、調査開始当初からの残留状況の傾向の判断は困難である。近年は残留状況の変化に傾向は見られず、依然として残留が認められる。
 
 HCH類は、γ体以外の異性体は残留性が高いと言われていてPOPs条約の候補物質となる可能性があり、全地球的な汚染監視の観点からも、今後さらにモニタリングを継続しその消長を追跡する必要がある。
 
   α-HCH
物質名 単位 幾何平均値 検出範囲 定量下限値 検出頻度(地点)
水質 pg/L 84 1.9 ~ 6,500 0.9
0.09
38/38
底質 pg/g-dry 130 2.0 ~ 8,200 1.2 63/63
生物 魚類 pg/g-wet 51 tr(1.9) ~ 590 4.2 14/14
貝類 pg/g-wet 65 12 ~ 1,100 4.2 8/ 8
鳥類 pg/g-wet 160 93 ~ 360 4.2 2/ 2
 
   β-HCH
物質名 単位 幾何平均値 検出範囲 定量下限値 検出頻度(地点)
水質 pg/L 210 24 ~ 1,600 0.9
0.09
38/38
底質 pg/g-dry 200 3.9 ~ 11,6000 0.9 63/63
生物 魚類 pg/g-wet 99 tr(5) ~ 1,800 12 14/14
貝類 pg/g-wet 89 32 ~ 1,700 12 8/ 8
鳥類 pg/g-wet 3,000 1,600 ~ 7,300 12 2/ 2
注:水質の定量下限値は上段が基本採水システム(採水量 30L)、下段が大量採水システム
  (採水量 100L)のものである。
 

8) 有機スズ化合物(TBT、TPT)
 
 底質は、TBTは調査開始当初から最近に至るまでの残留状況は減少傾向にある。TPTは平成11年度までは減少傾向にあったが、平成12年度及び平成14年度は高濃度となっている。平成14年度は定量下限値 TBT: 3.6ng/g-dry、 TPT: 1.6ng/g-dry において調査し検出されたことから、TBT、TPTともに依然として広範な地点で残留が認められる。
 魚類は、TBT, TPTともに調査開始当初の残留状況は減少傾向にあったが、近年は残留状況の変化に傾向は見られない。平成14年度の定量下限値は平成13年度に比べてTBTで3/10、TPTで3/40となったため検出頻度は上がっているが、95%値ではTBTは平成13、14年度はそれぞれ 70ng/g-wet、83ng/g-wet、TPTはそれぞれ 30ng/g-wet、28ng/g-wetであり、残留状況の変化に傾向は見られない。
 貝類は、TBT, TPTともに調査開始当初の残留状況は減少傾向にあったが、近年は残留状況の変化に傾向は見られない。平成14年度には定量下限値が平成13年度の定量下限値に比べてTBTで3/10、TPTで3/40となったため検出頻度は上がっているが、95%値ではTBTは平成13、14年度はそれぞれ 50ng/g-wet、54ng/g-wet、TPTはそれぞれ 20ng/g-wet、18ng/g-wetであり、残留状況の変化に傾向は見られない。
 鳥類は、過去にはTPTで平成元年度及び平成2年度に1地点で検出された他は定量下限値(TBT10~50ng/g-wet TPT 20ng/g-wet)未満であり、平成14年度は定量下限値 TBT: 3ng/g-wet、TPT: 1.5ng/g-wetにおいて調査し不検出であったことから、残留状況に大きな濃度の上昇は無いと判断される。
 
 現在の我が国のTBT, TPTの生産状況(国内における開放系用途の生産/使用はほとんどない)を考慮すれば、汚染状況はさらに改善されていくものと期待される。しかし、未規制国・地域の存在に伴う汚染も考えられることから、今後も引き続き環境汚染対策を継続するとともに、環境汚染状況を監視していく必要がある。また内分泌撹乱作用を有する疑いのある化学物質との指摘があることなどから、関連の情報を含め、毒性関連知見の収集に努めることも必要である。
 
   TBT (経年変化図
物質名 単位 幾何平均値 検出範囲 定量下限値 検出頻度(地点)
底質 ng/g-dry 7.1 tr(1.2) ~ 390 3.6 48/63
生物 魚類 ng/g-wet 8 tr(1) ~ 500 3 13/14
貝類 ng/g-wet 12 tr(2) ~ 57 3 8/ 8
鳥類 ng/g-wet nd --- 3 0/ 2
 
   TPT (経年変化図
物質名 単位 幾何平均値 検出範囲 定量下限値 検出頻度(地点)
底質 ng/g-dry tr(1.3) tr(0.55) ~ 490 1.6 30/63
生物 魚類 ng/g-wet 6.5 tr(0.7) ~ 520 1.5 13/14
貝類 ng/g-wet 3.3 tr(0.6) ~ 25 1.5 7/ 8
鳥類 ng/g-wet nd --- 1.5 0/ 2
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