付録3 化学物質対策の国際的動向
1 . 経済協力開発機構(OECD)の化学物質対策
2 . 持続可能な開発に関する世界首脳会議
3 . 国連環境計画( UNEP )
4 . 化学物質の安全に関する政府間フォーラム(IFCS)

1 . 経済協力開発機構(OECD)の化学物質対策

1 ) 
OECDの環境保健安全プログラムの概要
 
(1) OECD(経済協力開発機構)は、1960年に西側自由主義先進諸国が、経済成長、自由貿易等各国に共通の問題を討議するために設立したもので、パリ(フランス)に本部を置いている。現在30ケ国が加盟しており、我が国は、1964年に加盟している。
 最高議決機関は、OECD理事会であり、その下に現在、環境政策委員会等の委員会が設置されている。
(2) OECD環境政策委員会は、19707月に環境問題への関心の高まりを受けて、科学政策委員会から環境委員会として独立し、1992年に環境政策委員会に改名された。現在、化学品グループ等4グループが各分野の活動をしている。
(3) 化学品グループは、化学品試験法の検討などの活動を実施していたが、我が国の化審法、米国TSCA 、EC6次指令などの各国の化学物質規制に関する法律制定の動きに対応して、特別なプログラムを実施する必要性がでてきたことから、各国からの特別の出資により、「化学品規制特別プログラム」が開催され、「管理委員会」が設置された。
(4) 管理委員会は、環境政策委員会及び化学品グループと密接な協調のもとで作業を行うこととされており、「化学品グループ/管理委員会合同会合」が1983年以降、年2回(1993年からは2年に3回) 開催され、化学品プログラムの推進、調整を行っている。
 この定期的な活動に加えて、必要に応じ、ハイレベル会合( 大臣レベル) が開催され、活動の基本方針について話合いが行われる。
 その後、新しいバイオテクノロジーに関する分野への対応も含め、全体を「環境保健安全プログラム」(Environment, Health and Safety Programme)(http://www.oecd.org/ehs/ と呼ぶようになり、現在に至っている。
(5) 最近の環境保健安全プログラムの活動は、主に次の3つのテーマのもとに行われている。
テストガイドラインと優良試験所基準
リスク評価
リスク管理
また、以下の「特別な課題」にも取り組んでいる。
工業用化学物質( 新規化学物質、既存化学物質)
農薬
分類と表示
事故
PRTR
食品の安全性とバイオテクノロジー産物
 なお、本プログラムの概要を説明した日本語版のパンフレットが、同プログラムのウェブサイトからダウンロードできる。
http://www.oecd.org/ehs/ehsmono/EHS-brochure-Japan.pdf
 
 なお、OECDでは、20014月に、2020年までの化学産業の経済面及び環境面の将来動向や予測をまとめた「化学産業の環境アウトルック」(OECD Environmental Outlook for the Chemicals Industry)を公表している(http://www1.oecd.org/ehs/INDEX.HTMからダウンロード可)。
 
2 ) 各プログラムの取組
 
 (1) テストガイドラインと優良試験所基準( GLP
 OECD テストガイドラインは、個々の化学物質の有害性を評価するために用いる方法を規定したもので、人の健康、生態系への影響、環境中での蓄積と分解性などについて、様々な試験方法が定められている。現在、内分泌攪乱化学物質に関する試験方法が検討されているほか、動物実験の削減に向けた取組が進められている。
 一方、優良試験所基準は、テストガイドラインを補うもので、試験所における管理、試験実施、報告などに関する基準を設定している。
 データの相互受入に関する1981年OECD理事会決定により、他の国で作成された試験データがテストガイドライン及び優良試験所基準に従ったものであれば、OECD加盟国はそのデータを受け入れるよう求められている。
 
 (2) リスク評価
 工業化学物質や農薬のリスク評価方法の作成・調和に向けた取組が進められている。工業化学物質については、特に環境暴露評価(例: 化学物質排出シナリオ文書の作成、環境暴露モデルの調和、環境モニタリングの利用) などについての活動が進められている。また、農薬については、人への暴露や健康影響に関するガイダンス文書の作成などが進められている。
 
 (3) リスク管理
 1980年代から1990年代半ばまでは、鉛、水銀、カドミウム、臭素系難燃剤、ジクロロメタンなどの特定の化学物質に焦点にあてた取組が進められてきたが、現在では化学産業全体に適用可能なリスク管理のためのツールづくりや情報提供に重点が移っている。前者の取組の延長として、鉛のリスク管理に関する閣僚宣言(1996年)のフォローアップ、ニッカド電池のリサイクル、臭素系難燃剤に関する産業界の自主的活動が進められているほか、後者の取組として持続可能な化学産業、リスクコミュニケーション、社会経済的分析などの検討が挙げられる。
 
 (4) 工業用化学物質
  <新規化学物質>
 新規化学物質の届出プロセスを改善し、各国が協力して活動できるよう支援することが新規化学物質プログラムの焦点となっており、新規化学物質に関する情報や評価結果の共有を目的とする二国間協定の締結の推進、届出様式の標準化などの活動が行われている。
 
 <既存化学物質>
既存化学物質は、新規化学物質と比較して、数量とも圧倒的に多いにもかかわらず、新規化学物質ほど有害性の評価が十分になされていないまま利用されていることから、リスク評価の加速化が急務となっている。このため、OECD 加盟国が協調して取組を進めている。現在行われている活動は以下のとおり。
HPV (高生産量) 化学物質プログラム
 既存化学物質の環境に対する影響を評価するに当たっては、高生産量の化学物質に焦点をあてるのが効率的であるため、世界的に高生産量の化学物質について協力してデータを収集し、その環境安全性の評価を行うことを目的として開始された。
 OECD の現在の高生産量化学物質の定義は「1カ国以上で1,000 トン/ 年以上製造又は輸入されている物質」であり、2000年版のリストには、5,235 物質が掲載されている。
 リスクアセスメントの加速化が世界的な要請になっていることを鑑み、OECD では高生産量化学物質の初期評価をリスク評価から有害性評価に限定しており、評価に用いるマニュアルも改訂作業中である。また、産業界の協力も得て評価の速度を早めることが検討されている。
 
クリアリングハウス
 懸念のある特定の化学物質に関する共同作業の可能性をより詳細に調べるために、加盟各国は自主的に自国が関心を持つ化学品に関して先導的な立場をとり、中心的な機関( クリアリングハウス) として機能し、当該化学物質に関する各国の情報を集約、交換する活動を行っている。クリアリングハウスは、加盟国が共通の関心を持つ課題や化学物質について、ボランティア国が情報収集、交換のセンターとして活動を行おうとするものであり、集められたデータは、リスク管理の推進やIPCS の環境保健クライテリアの作成にも役立っている。
 
EXICHEM データベース(http://www.olis.oecd.org/exichem.nsf )
 EXICHEM データベースの目的は、加盟各国が特定の既存化学物質を調査する上での協力の機会をつくりやすくすること及び関心を有する国々がそれぞれの活動について情報交換、交渉をしやすくすることにある。従って、本データベースの利用により各国政府、機関が個々に実施している安全性点検などの情報をOECD に集約することができ、安全性試験の重複を防ぐとともに同一物質の安全性評価対策における協力関係を促進にも役立っている。
 具体的には、各レコードには各々の窓口(フォーカルポイント) が記載されており、手紙、ファックスや電子メールで情報交換が出来るシステムとなっている。加盟国は、特定の化学物質に関する進行中又は計画中の活動についての情報を毎年このデータベースに提供する。データの更新は各国のEXICHEM コーディネーターを通じて年1回行われる。
 
 (5) 農薬
 農薬プログラムは、農業及び非農業用の駆除剤や殺生物剤(バイオサイド)を対象としている。農薬のリスク評価における各国の協力関係を強化するため、農薬評価報告書のデータベース化や書式の調和、農薬に関する共通データ要求事項の調和、リスク削減などの取組を進めている。
 
 (6) 分類と表示の調和
 化学物質の有害性を、その化学物質を取り扱う作業員や一般消費者にわかりやすく伝えることは化学物質のリスク管理の重要な柱のひとつであることから、国連において化学品の分類と調和に関する世界調和システム(Globally Harmonized System GHS) が2003年7月に勧告された。GHS は国連危険物輸送専門家委員会(UNCETDG) が爆発性などの物理化学的性状を、経済協力開発機構(OECD) が毒性や生態毒性を、国際労働機関(ILO) がラベルやMSDS (化学物質安全性データシート) などを担当している。OECD では、化学物質の人の健康及び環境影響に関する有害性の分類方法の、技術的フォーカルポイントとして取り組んできている。OECDにおいて合意された有害性項目の分類方法については、他のILO 、UNCETDGにおける検討結果とともに、国連経済社会理事会に新たに設置された常設委員会(GHS小委員会) において検討される。
 
 (7) 事故
 化学事故の防止、対策、対応などに関するガイダンスの作成、OECD 加盟国と非加盟国との間の情報交換などに取り組んでいる。
 
 (8) PRTR
 加盟国のPRTR 構築の支援、国際的なPRTR 活動の調整、PRTR データの普及方法や点源及び非点源からの排出量の推定手法に関する情報共有などの活動を進めている。
 
 (9) 食品の安全性とバイオテクノロジー産物
 遺伝子組換え体(GMO) が人の健康や環境に及ぼす影響を明らかにするための科学的知見の基盤構築、OECD加盟国におけるGMOの規制及び商品化に関する情報データベースの作成・更新などに取り組んでいる。
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2.持続可能な開発に関する世界首脳会議

1)持続可能な開発に関する世界首脳会議の概要
 
(1) 2002年8月26~9月4日、ヨハネスブルグ(南アフリカ)で持続可能な開発に関する世界首脳会議が開催された(首脳級会合は2~4日)。世界各国の首脳、関係閣僚、国際機関の長が参加した。
(2) 我が国よりは、小泉総理が出席し(9月2~3日)、演説、ラウンドテーブルへの参加を通じて、持続可能な開発にとって人づくり、就中教育の重要性を強調、「小泉構想」(開発・環境面での人材育成等の具体的支援策)の実施を通じた我が国の貢献の決意を示した。また、川口外務大臣、大木環境大臣を始めとして関係省庁の副大臣・政務官が出席した他、超党派の国会議員団と多数のNGO等が参加した。
(3) 成果:「実施計画」(持続可能な開発を進めるための各国の指針となる包括的文書)については、主要委員会で採択の後、首脳級全体会合で採択された。また、持続可能な開発に関するヨハネスブルグ宣言(首脳の持続可能な開発に向けた政治的意志を示す文書)については、首脳級全体会合で採択された。今後は、「実施計画」の着実な実施が重要である。
 
2)持続可能な開発に関する世界首脳会議のための実施計画(化学物質関連抜粋-環境省仮訳)
 
23. 持続可能な開発と人々の健康と環境の保護のために、ライフサイクルを考慮に入れた化学物質と有害廃棄物の健全な管理のためのアジェンダ21で促進されている約束を新たにする。とりわけ、環境と開発に関するリオ宣言の第15原則に記されている予防的取組方法(precautionary approach)に留意しつつ、透明性のある科学的根拠に基づくリスク評価手順と科学的根拠に基づくリスク管理手順を用いて、化学物質が、人の健康と環境にもたらす著しい悪影響を最小化する方法で使用、生産されることを2020年までに達成することを目指す。また技術及び資金協力を行うことにより、開発途上国が化学物質及び有害廃棄物の適正な管理を行う能力を高めることを支援する。これは、あらゆるレベルにおける以下の行動を含む。
 
(a) 国際貿易の対象となる特定の有害な化学物質及び駆除剤についての事前のかつ情報に基づく同意の手続に関するロッテルダム条約が2003年までに発効することが可能となり、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約が2004年までに発効することが可能となるように、これらを含む化学物質と有害廃棄物に関する関係国際文書の批准と実施を促進するとともに、これらの実施に際して開発途上国を支援するとともに、調整を促進し、改善すること。
(b) 化学物質の安全性に関する政府間フォーラム(IFCS)によるバイア宣言及び2000年以降の優先行動事項に基づき、2005年までに国際化学物質管理への戦略的アプローチを更に発展させること、また、このために国連環境計画(UNEP)、IFCS、化学物質の管理に携わるその他の国際機関、その他関係国際機関及び主体が、適切な形で、緊密に協力するよう促すこと。
(c) 化学物質の分類及び表示に関する新たな世界的に調和されたシステム(GHS)を2008年までに完全に機能させるよう、各国に対し同システムを可能な限り早期に実施するよう促すこと。
(d) 化学物質及び有害廃棄物の環境上適正な管理を向上させ、環境関連の多国間協定を実施し、化学物質及び有害廃棄物に関連する諸問題についての人々の意識を高め、更なる科学的データの収集と利用を促進することを目的とし、そのための活動を促進するためのパートナーシップを促進すること。
(e) 有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約等の関係国際文書に基づく義務と合致する形で、有害化学物質と有害廃棄物の国際的不法取引を防止し、有害廃棄物の国境を越える移動と処分により生ずる損害を防止するための努力を促進すること。
(f) 国内におけるPRTR制度(我が国では化学物質排出移動量届出制度)のような、化学物質に関する一貫し統合された情報の取得を促すこと。
(g) 水銀とその化合物に関するUNEPのグローバル・アセスメントなどの関係する研究をレヴューすること等を通じて、人の健康と環境に害を及ぼす重金属によるリスクの軽減を促進すること。
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3 . 国連環境計画( UNEP )

1 ) UNEPにおける化学物質対策の推進
(http://irptc.unep.ch/irptc/default.htm)
 
 UNEP(国連環境計画:United Nations Environment Programme)においては、①化学物質の人及び環境への影響に関する既存の情報を国際的に収集・蓄積すること、② 化学物質の各国の規制に係る諸情報を提供すること等の目的で、国際有害化学物質登録制度(IRPTC) が実施されている。
 IRPTC による情報の収集、蓄積活動の主な成果は、データプロファイルであり、これまでに数種のデータプロファイルが刊行されている。情報提供活動の主たるものは、質問・回答サービスとIRPTCBulletinの発行である。質問・回答サービスについては、各国からの照会に対し、ナショナルコレスポンデントにおいて取りまとめの上、回答が行われている。
 現在、IRPTC は「UNEP Chemicals」(http://irptc.unep.ch/irptc/default.htm と改称され、OECD 、WHOなど他の国際機関とも連携しつつ、地球的規模の化学物質汚染問題に取り組んでいる。
 なお、UNEP は、化学物質関連の国際条約(国際貿易の対象となる特定の化学物質および駆除剤についての事前のかつ情報に基づく同意の手続きに関するロッテルダム条約、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約、有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約) の締結・履行についても主導的な役割を果たしている(前二者については、下記に解説)。
また、2002年2月にカルタヘナ(コロンビア) で開催されたUNEP第7回管理理事会特別会合において、IFCS等関連国際機関と連携して、SAICMを作成することが合意され、また、同年8月に開催された「持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルグ・サミット)」において、2020年までに化学物質による人の健康と環境にもたらす悪影響を最小化することを達成すべく、2005年までにSAICMを更に発展させること、また、そのためにUNEP、IFCS及び化学物質の管理に携わるその他の国際機関が、適切な形で協力するよう促すことが、政治的に合意された。SAICMは2006年頭の閣僚級会合において採択される予定であるが、2003年11月に第1回の準備会合が開催されたところであり、今後、2004年10月の第2回準備会合、2005年9月ころの第3回準備会合を中心に議論が進められる予定。
 
2 ) 国際貿易の対象となる特定の有害な化学物質及び駆除剤についての事前のかつ情報に基づく同意の手続きに関するロッテルダム条約(通称PIC条約) ( http://www.pic.int/)
 
 P Prior Informed Consent:事前通報同意)手続きとは、工業用化学品や駆除剤の国際貿易において、あらかじめ輸入国の輸入に係る同意を確認した上で取引を進めるための手続きであり、先進国で使用が禁止または厳しく制限されている有害な化学物質が、発展途上国にむやみに輸出されることを防ぐためのものである。従来、PIC手続きは、化学品については「ロンドンガイドライン」において、農薬についてはFAO の「コード・オブ・コンタクト」において、ボランタリーベースで進められていたが、1995年の第18回UNEP管理理事会において、PICの条約化のための検討を進めることが決定された。
 その後、5回にわたる条約化交渉を経て、1998年9月にロッテルダムに於いて「国際貿易における有害化学品及び農薬の事前通報・合意手続き条約」が採択された。条約の発効には50 ケ国の締結が必要であり、20042月24日に発効した。我が国は、1999年8月にこの条約に署名し、現在、締結に向けた最終的な検討を進めている。
 
<主な経緯>
(1) 1987年6月、UNEP において、有害化学物質事前通報を内容とする「国際貿易における化学物質の情報交換に関するロンドンガイドライン」が採択された後、1989年5月、UNEP において、輸出事前通報・承認制度(PIC) の実施等を規定する改正ロンドンガイドラインが採択された。
 当面の措置として、10カ国以上で禁止あるいは厳重に規制されている物質について、IRPTCが禁止事項を加盟国に通告し、各国は、当該化学物質の輸入を禁止するか否かを決定し、IRPTC がこれを輸出国に伝えることとされた。
(2) 1991年5月の第16回UNEP管理理事会において、改正ロンドンガイドラインの法的基盤の強化等の緊急課題に取り組むための専門家会合の召集が執行部に要請された。
(3) 1992年6月にはアジェンダ21第19章において、2000年までに法的拘束力のある文書を通じたPIC手続きへの参加と実施の達成が目標として掲げられ、我が国においては、1992年7月の輸出貿易管理令の改正により、ロンドンガイドライン対応体制が整備された。
(4) 1995年5月には、第18回UNEP管理理事会で勧告がなされ、PIC条約化のための条約交渉会合を1997年早期に開催することが事務局に要請された。これを受け、1996年から5度に渡る条約交渉会合を経て、1998年9月にオランダ・ロッテルダムで開催された外交会議において条約が採択された。
 
<条約の内容>
(1) 附属書に掲載されている化学物質・駆除剤の輸入に同意するかどうか、国内で使用を禁止又は厳しく制限する措置がとられているかどうかを事前に事務局に通報しておく。なお、この情報を、事務局はすべての締約国に伝える。
(2) 締約国は、自国において使用を禁止又は厳しく制限している化学物質・駆除剤を輸出しようとする場合は、毎年、輸入国に必要な情報を添付した輸出通知を行う。
(3) その他、化学物質の有害性等に関する情報交換、技術援助などを進める。
 
3 ) 残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(いわゆるPOPs条約)
(http://www.pops.int/)
 
 環境中での高い残留性・生物蓄積性・毒性を有するPCB、DDT、 ダイオキシン等のPOPs Persistent Organic Pollutants)については、一部の国々の取組のみでは地球環境汚染の防止には不十分であり、国際的に協調してPOPs の廃絶、削減等を行う必要から、2001年5月、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)」が採択された。
 条約の発効には50 ケ国の締結が必要であり、2004年5月17日に発効の予定。我が国は、2002年8月30日に条約に加入した。
 
<主な経緯>
 1992年のアジェンダ21を受けて1995年にUNEP が開催した政府間会合において、「陸上活動からの海洋環境の保護に関する世界行動計画」 以下「世界行動計画」という。) が採択された。この世界行動計画により、残留性有機汚染物質(POPs:Persistent Organic Pollutants)の12物質(PCBs、DDT等)について、国際的に排出・流出の低減等を図るため、法的拘束力のある文書( 条約・協定等) の策定を行うことが求められ、UNEP 管理理事会において2000年までに行うことが望ましいとされた。これを受け、UNEPが中心となり、1998から2000年までの間に、5回に及ぶ政府間交渉会議が開催された後、2001年5月にストックホルム(スウェーデン) で開催された外交会議において条約が採択された。
 
<条約の概要>
目的
 リオ宣言第 15原則に掲げられた予防的取組方法に留意し、残留性有機汚染物質に対して、人の健康の保護及び環境の保全を図る。
2.対策手法
製造、使用の原則禁止( アルドリン、クロルデン、ディルドリン、エンドリン、ヘプタクロル、ヘキサクロロベンゼン、マイレックス、トキサフェン、PCB 及び原則制限( DDT
非意図的生成物質の排出の削減( ダイオキシン・ジベンゾフラン、ヘキサクロロベンゼン、PCB)
POPs を含有する在庫・廃棄物の適正管理及び処理
これらの対策に関する国内実施計画の策定
その他の措置
新規POPs の製造、使用を防止するための措置
POPs に関する調査研究、モニタリング、情報提供、教育等
途上国に対する技術・資金援助の実施
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4.化学物質の安全に関する政府間フォーラム(IFCS)
 
1992年リオデジャネイロで開催された国連環境開発会議(地球サミット)により採択された行動計画「アジェンダ21」の第19章「化学物質の環境適正管理と不法流通の防止」の実施を促進するため、1994年、国連、国連専門機関あるいはIAEA(国際原子力機関)のいずれかに加盟する政府で構成される政府間のフォーラム「Intergovernmental Forum on Chemical Safety」として発足。1994年に第1回フォーラムがストックホルム(スウェーデン)において開催され、以降「フォーラム」は3年毎に開催されてきている(第2回フォーラム:オタワ(カナダ)、第3回フォーラム:バイア州サルバドル(ブラジル))。
 なお、IFCS http://www.who.int/ifcs/)に委任される事項は、以下のとおりとされている。
(1) 化学物質の安全性に対する共同行動の優先順位を明らかにして助言し、適切な範囲で、化学物質の労働環境の暴露を含む有害性の同定及びリスク評価、環境上適正な化学物質の管理のための協調した国際戦略を勧告する。これには、特に開発途上国での高い必要性を考慮したリスク削減計画、リスク伝達が含まれる。
(2) 化学物質の安全性の分野で、活動的な国内、地域及び国際団体による協力の確保に助力し、この分野での努力が団体間で重複しないようにする。
(3) 国内の調整メカニズムの強化とともに、特にインフラの整備、訓練、教育、研究及びモニタリング、情報提供に関連した化学物質管理の国内の能力の強化を促進する。
(4) 化学品の調和した分類及びラベル表示の国際的な合意及び遂行を促す。
(5) 科学知識のギャップを明らかにすることに助力し、訓練や教育、技術移転を含む情報交換及び科学・技術協力を促進する。
(6) 化学物質の安全性に関して勧告された国際戦略の実施について、現在行われている活動の効果を定期的に再検討し、さらに進んだ活動についての勧告を行い、必要な範囲で、フォローアップのメカニズムの強化又は創設を助言する。
(7) 政府に対し、化学物質の安全性に関する作業について、特に法制面に言及して助言し、政府機関、政府間機関及び非政府機関の相互の協力を促進する。また、これらの機関とその他の国連内外の団体との間の仕事を、適正に、かつできるだけ明瞭で整合性のある方法で分担するよう奨励する。
(8) 主要産業の事故を含む化学物質による事故の防止、対策、対応について、国際協力を促進する。
(9) 化学物質による中毒の予防及び対応に関するプログラムの強化を促進する。
(10) 参加国の政府の承認によって、フォーラムの意図及び目的に沿った上記以外の任務を遂行する。
 
1) 化学物質の環境上適正な管理のための行動
 フォーラムでは、アジェンダ21第19章の実施に向けて、以下の6つのプログラムのそれぞれについて、優先的に取り組むべき行動が議論され(「平成8年版化学物資と環境」327頁参照) 、その結果、優先的に取り組むべき行動に関する決議がされた(「平成8年版化学物質と環境」336頁参照)
(1) 化学的リスクの国際的なアセスメントの拡大及び促進
(2) 化学物質の分類と表示の調和
(3) 有害化学物質及び化学的リスクに関する情報交換
(4) リスク低減計画の策定
(5) 化学物質の管理に関する国レベルでの対処能力の強化
(6) 有害及び危険な製品の不法な国際取引の防止
 
 また、IFCS を実務的に支えてきた活動を進めるため、化学物質対策に関連する7つの国際機関、すなわち、OECD (経済協力開発機構)、UNEP (国連環境計画)、WHO(世界保健機関)、FAO (食糧農業機関)、ILO(国際労働機関)、UNIDO(国連工業開発機関)及びUNITAR(国連訓練調査研究所)の事務局が参加して、IOMC(健全な化学物質管理のための機関間プログラム)が設定され、各国機関の活動を調整しつつ、重要なプロジェクトの推進が図られている。
 
2) 最近の活動状況
2003年11月にタイのバンコクで開催された第4回本会議(フォーラムⅣ)の結果概要は以下のとおり。
 
(1)日程:2003年11月1~7日
(2)場所:バンコク(タイ)
(3)出席者:100カ国を超える政府、政府間機関、NGO等より約600人が参加。
(4)会議の概要
「途上国や子供等影響を受けやすい世界における化学物質の安全性」をテーマとして、主として以下の事項について議論され、決定文書が採択された。
・・ ハザード・データの生成と利用可能性
・・ 急性毒性を有する駆除剤-リスクの管理と削減
・・ キャパシティ・ビルディング
・・ キャパシティ・ビルディング援助
・・ 化学物質安全政策を行う国々の間に広がる較差の取扱
・・ 有害・危険な製品の違法な国際移動の防止
・・ 子供と化学物質安全
・・ 労働安全衛生
・・ 化学品の分類及び表示に関する世界調和システム(GHS)
次回、第5回フォーラムは、ブダペスト(ハンガリー)において、2006 年後半に開催されることとなった。
また、新議長には、タイのDr. Suwit 氏が選出されたほか、アジア太平洋地域副議長国はフィリピンが務めることとなった。(より詳細な情報についてはhttp://www.nihs.go.jp/mhlw/ocs/ifcs/0311ifcs-forum4gaiyou.pdf参照)
(5)その他(SAICM PrepComⅠ)
前記の議題の他、第1回国際化学物質管理のための戦略的行動計画準備会合(SAICM PrepComⅠ)における議論を加速化させるため、バイア宣言及び2000年以降の優先行動計画の実施に係る較差の同定や、戦略的アプローチに必要な今後の予定等に関して議論され、意見が集積された。
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