平成12年(2000年)版 「化学物質と環境」
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化学物質環境安全性総点検調査の今後の在り方(最終報告)
 
昭和63年2月22日
化学物質調査検討会総合検討会
 
I.はじめに
II.第2次総点検調査の基本構想
 1.基本的考え方
 2.基本構想の骨子
III.基本構想の具体化
 1.プライオリティリストの改定 (Phase 0)
 2.環境残留性の予測 (Phase 1)
 3.環境調査 (Phase 2)
 4.評 価 (Phase 3)
 5.モニタリング及び生態影響調査 (Phase 4)
IV.おわりに
 1.環境調査の標準化
 2.データ管理のシステム化
 3.国際的動向、技術の進展に応じた調査の実施
 4. 地方自治体との協力


     
I.はじめに
 人間が作り出した化学物質は数百万点にも及ぶと言われており、さらに年々、生活の向上に寄与すべく様々な化学物質が新たに製造・使用されている。 化学物質は、現代社会にとって不可欠のものとして日常生活のあらゆるところに取り込まれていると言っても過言ではない。 一方、化学物質が広く利用されるに伴い、次第に環境汚染を通じたその潜在的な有害性も認められてきている。化学物質は、製造・流通・使用・廃棄等のそれぞれの段階で環境中に放出され、様々な経路を通じて人や環境に影響を及ぼすものであり、人及び環境を保護するための化学物質の規制は、国際的にも大きな関心事となっている。
 化学物質による環境汚染を防止するための有効な規制手段には種々の方法があるが、PCB問題を契機として昭和48年に制定された 「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(以下「化学物質審査規制法」 という。 ) もそのひとつである。 同法では新規化学物質について所要の審査が行われており、昭和61年5月には、化学物質の安全性確保の一層の充実が求められている状況等に鑑み、事前審査制度の充実及び事後管理制度の導入を内容とする改正が行われ、昭和62年4月から施行されている。 環境庁では、化学物質審査規制法に基づく審査の対象外とされた約2万点に及ぶ既存化学物質の安全性点検の重要性に鑑み、同法制定時の国会附帯決議に基づき、昭和49年度から環境調査に着手し、昭和54年度からは10ケ年計画で「化学物質環境安全性総点検調査」(以下 「総点検調査」 という。 ) を実施してきた。 その結果、化学物質の環境汚染実態に関する貴重なデータが集積されるとともに、化学物質に係る各種の調査手法の実用化が図られる等、着実な成果が得られてきた。
 しかしながら、一方において、これまでの総点検調査の実施の積み重ねを通じ、環境調査方法等に関する種々の課題も明らかになっている。 また、近年、廃棄物の焼却過程で非意図的に生成されるダイオキシンや半導体製造工場で使われる有害化学物質による環境汚染の可能性が指摘されるなど、化学物質審査規制法の改正によって一部対応がなされたものの新たなタイプの物質による問題が残されている。 また、国際的にも米国シリコンバレーにおける地下水汚染、タイムズビーチ等のダイオキシン汚染の拡大の問題 がクローズアップされるとともに、化学物質対策としてのクロスメディアアプローチの重要性が注目されるようになってきた。
 本総合検討会は、これまでの総点検調査の実施状況をレビューするとともに、化学物質問題への新たな対応を考察することにより、昭和64年度以降実施を予定している総点検調査(以下 「第2次総点検調査」という。) の在り方を、化学物質審査規制法の改正作業が進行中の流動的な状況の中で取りあえず昭和61年2月に、「化学物質環境安全性総点検調査の今後の在り方 (中間報告) 」(以下 「中間報告」という。) としてとりまとめた。
 本最終報告は、総合検討会の下に設置されている各分科会におけるプライオリティリストの改訂、環境安全性評価手法の確立等についてのその後の検討結果、化学物質審査規制法の改正及びその後の化学物質対策の状況並びにOECD等国際機関を始めとする国際的な化学物質対策の動向を踏まえて、具体的な第2次総点検調査の在り方についてとりまとめたものである。
II.第2次総点検調査の基本構想
1.基本的考え方
 第2次総点検の基本構想を策定するにあたっての基本的考え方を示せば、概ね以下のとおりである。
 化学物質問題への新たな対応として、一つには化学物質審査規制法に基づく新規化学物質に係る事前審査の充実が重要であり、そのため同法の改正により事前審査制度が整備・拡充されたところである。 しかし、同法で使用される分解性や濃縮性に関する室内実験では、実際の環境残留性を把握しがたいケースがこれまでの総点検調査の結果から認められており、こうしたことから考えても、事前審査のみにより問題物質を確認し、規制することには限界があると考えられる。 このため、事前審査により当面規制の必要なしとされた物質についても、生産量・用途等を把握するとともに、環境調査等の事後観察を行っていくことが重要であると考えられる。 また、化学物質審査規制法の改正により導入された事後管理制度の対象となる指定化学物質及び第二種特定化学物質については、さらに綿密な環境残留状況の把握及び追跡、監視が場合により必要となろう。
 一方、化学物質審査規制法に基づく審査の対象とされていない既存化学物質については、すでに実際に使用されている物質であることから、環境残留性の把握が重要であることは言うまでもなく、総点検調査を中心とした環境安全性の評価をこれまで以上に進めていかなければならない。 また、化学物質として意図的に生産されない非意図的生成化学物質についても、同様に環境汚染実態の把握が必要である。
 総点検調査については、これまで化学物質審査規制法で規定される既存化学物質の安全性点検の一環として位置付けられてきたが、化学物質の環境残留性を把握し、安全性を評価するための有効な手段であることから、審査済み新規化学物質、指定化学物質等の事後管理の一環としても位置付けるとともに、様々な化学物質による環境汚染の未然防止を図るための第一義的な手段として拡充する必要がある。
 このような考え方に基づき、第2次総点検調査では、必ずしもこれまでの総点検調査体系にとらわれず、これまでに得られた成果を取り込むとともに、明らかになった課題並びに最近における有害化学物質問題等への対応を含めつつ、「主として環境汚染実態調査結果を通じて、一般環境中に存在すると考えられる化学物質の環境安全性を評価することにより、化学物質による環境汚染の未然防止に資すること」を目的として、以下のとおり基本構想を策定した。
 第2次総点検調査の概念図 (環境調査をベースとした一般環境中の化学物質に関する環境安全性評価システム)を別添に示す。
 
2.基本構想の骨子
  (1) 対象物質
 
 これまでの総点検調査において対象としてきた既存化学物質のほかに、新たに審査済み新規化学物質及び非意図的生成化学物質を対象物質に加える。

 改正前の化学物質審査規制法において、従来、新規化学物質として届出された多くの物質が、濃縮性の観点からのみで安全確認され、その製造又は輸入が認められてきたことに鑑み、新たにこれまでの審査済み新規化学物質を対象物質に加える。 また、更に同法の改正によって、難分解性であり人の健康に被害を及ぼす疑いがあるとされた指定化学物質及び難分解性であり人の健康に被害を及ぼすおそれがあるとされた第二種特定化学物質についても充分配慮するものとする。
 また、最近の化学物質問題として、有害な不純物や副生物、廃棄等の過程で生成されるダイオキシン等の有害な二次生成物質による一般環境の汚染が懸念されていることから、これら非意図的生成化学物質を新たに調査対象に加える。
 具体的な調査対象物質については、これら3分野の化学物質を対象にプライオリティリストの改訂(1,145物質を収載)を行い、この中から順次調査対象物質を選定する。
 なお、医薬品や農薬等の特定の用途のみを有する化学物質については、薬事法や農薬取締法等により別途対応がなされているので、本基本構想においては対象物質として取り上げない。
 
  (2) 環境調査方式
 
調査の効率性及び分野相互の関連性を重視する観点から、調査対象物質は原則として有機塩素系化合物、多環芳香族炭化水素類、有機金属類、といったクラス毎に取り上げる。 また、調査を行う環境媒体及び地区を固定した一定方式によるこれまでの環境調査を、各物質の特性に応じて環境媒体及び地区を変えるメニュー方式の環境調査に改めるとともに、対象物質を広範囲に取り上げることよりも重点物質について精度の高い調査を実施することに主眼を置く。

 分析法の開発検討、環境調査対象物質の選定、調査結果の評価等を効率的に行うとともに、非意図的生成化学物質とそれ以外の化学物質との環境中の挙動における関連性などを重視する観点から、原則として有機塩素系化合物、多環芳香族炭化水素類、有機金属類、といったクラス別に環境調査を実施する。 また、各物質の特性に応じて、食物連鎖を介して人の健康に影響を及ぼすことが想定される場合は調査環境媒体に魚類を加えるとか、発ガン性が疑われる物質による環境汚染の場合は水道源水となっている水域を重点的に取り上げる等の弾力的な調査方法を導入するため、化学物質が内包する問題を類型化し、類型に応じて調査環境媒体及び調査地区をメニュー化しておく。調査地区のメニュー化については、予め調査地区を設定 (定点化された調査候補地区の設定) し、その中から調査実施地区 (ある年度に調査を実施する地区) を選定することとする。
 さらに、対象物質を広範囲に取り上げることよりも精度の高い調査を実施することに主眼を置いて、対象物質を選定し、この中でも特に環境残留性の面から重要と考えられるもの (注目物質) については、更に重点的な調査を行う必要がある。
 
  (3) 環境安全性評価
 
 予備的な評価と環境調査をベースとした評価の2段構成とする。

 予備的な評価においては、主として影響面を考慮してプライオリティリストの改訂を行い、構造等により化学物質をクラス分けし、この中から運命予測手法を用いて暴露面から環境調査を実施すべき代表的物質を原則として各クラス別に選定する。 環境調査をベースとした評価においては、環境調査結果に基づいて暴露面の評価を行うとともに、既知見に基づいて影響面の評価を行う。
 暴露面の評価を行うにあたり、環境残留性の把握がなお不十分と判断された場合には、a)再度、環境調査を行い残留状況を明らかにするか、又は、b)追加調査として生物モニタリング若しくはガスクロマトグラフ/質量分析計によるモニタリング(以下「GC/MSモニタリング」という。当面は水質・底質のモニタリングを行う。 平成2年度より「水質・底質モニタリング」) を行い残留傾向を明らかにする。 また、影響面の評価では、第一義的には人に与える影響を評価するが、環境に与える影響をあわせて評価する必要があると判断された場合には、追加調査として生態影響試験を実施する。
 なお、今後さらに、新たな有害化学物質問題が提起されたり、化学物質の毒性等について新たな知見が得られたりすることも予想されることから、調査のシステムに常に柔軟性を持たせておくことが肝要であると考えられる。
III.基本構想の具体化
 本検討会の中間報告を基に10の分科会において具体的な検討を行ったところであり、それらを踏まえて第2次総点検調査の基本構想の具体化について以下に述べる。
 
1.プライオリティリストの改定 (Phase 0)
   中間報告で提案のあった対象物質を拡大するとの基本構想をうけて、プライオリティリスト分科会において、プライオリティリストの改定を行った。 このプライオリティリスト(以下「新プライオリティリスト」という。) の作成に当たっては化学物質の毒性、諸外国で環境調査等のために作成されているプライオリティリスト等に関する情報の収集、整理を行い、毒性情報を重視して、化学物質の構造等に応じてクラス分けし1,145物質を選定した。
 第2次総点検調査においては、原則としてこの新プライオリティリストに記載されている化学物質の中から調査対象物質を選定することとする。
2.環境残留性の予測 (Phase 1)
   新プライオリティリストに記載された化学物質の中から毎年100物質程度について環境残留性の予測を行い、調査対象物質の選定、調査環境媒体及び調査対象地区の選定等を行うこととする。 なお、調査対象物質の選定に当たっては特に影響面の情報を重視するとともに、環境調査の結果が排出規制等の汚染防止対策の検討にも資するよう関係部局と密接に連携するよう留意することとする。
  (1) 環境残留性予測対象物質の選定
 環境調査対象物質の選定及びその後の環境調査の実施 (分析法の開発検討、調査結果の評価等) を効率的に行うとともに、非意図的化学物質とそれ以外の化学物質との環境中の挙動における関連性等を重視する観点から、原則として新プライオリティリストにおいて分類したクラス別に環境調査を実施することとする。
  (2) 環境残留性の予測
 化学物質の環境残留性の予測を下記に示す化学物質の物理化学的性状及び反応性等から運命予測手法を用いて実施する。
 a)  化学物質の物理化学的性状及び反応性
 化学物質の物理化学的性状及び反応性は原則として文献調査により情報を入手する。 また、文献情報が得られない場合には実測または予測を行う。
 実測を行う場合には、物理化学的性状分科会において作成した測定手法マニュアル及びその評価指針並びに別に検討中の化学物質の水中微生物分解性及び光分解性試験法の活用を図ることとする。 なお、水中微生物分解性については水中微生物分解分科会において今後の活用法等について検討を行っているところである。
 また、予測についても物理化学的性状分科会において検討を行っているところであり、実測による検証を含め予測精度の向上を図るものとする。
 b)  運命予測の実施
 運命予測手法は、化学物質の物理化学性状、生産量等から環境中での挙動 (運命-Fate) を予測するものであり、化学物質の環境残留性の予測においては、有効な手段である。 運命予測手法は統計モデル、仮想環境モデル及び地域水系モデル等に大別される。これらの運命予測手法については、運命予測分科会において環境残留性の予測結果の検証、マニュアル化等を行っており、この検討結果を第二次総点検調査のための環境残留性の予測に利用することとする。
 なお、運命予測手法については、環境条件の単純化等の仮定のもとに予測を行うものであり、予測結果の信頼性については一定の限界があることに留意するとともに、モデルの改良等予測精度の向上に今後とも努める必要がある。
  (3) 環境調査を行う化学物質の選定
 環境残留性の予測結果等から、精度の高い調査を実施することに主眼をおいて調査対象物質を選定し、この中から環境残留性の面から特に重要と考えられる注目物質を選定する。
 なお、化学物質の選定に当たってはQSAR (定量的構造活性相関) による影響面予測についても今後検討していくこととする。
  (4) 調査対象物質の残留しやすい媒体 (環境調査媒体) の選定
 水質、底質、生物、大気の中から調査対象物質ごとに残留しやすい媒体を選定する。
  (5) 化学物質の発生源に応じた環境調査実施地区の選定
 環境調査地区は環境汚染源の特性に応じてあらかじめメニュー化して設定しておき、その中から化学物質の発生源に応じて調査実施地区を選定する。 環境調査実施地区の設定については、分析法分科会及び大気環境調査分科会で検討を行った。
 環境調査地区のメニュー方式の導入については、水質、底質及び生物についての環境調査の場合、個々の化学物質ごとに調査実施地区を予め設定するのではなく、化学物質を用途等から、また、調査地区を化学物質の生産、使用等の状況によってそれぞれ分類し、その分類別に両者の対応をとることが望ましい。 即ち、化学物質については、用途等により産業用化学物質(工業的に使用される化学物質)、一般用化学物質 (一般生活において使用される化学物質)及び環境への意図的使用化学物質 (防蟻剤等)、非意図的生成物等に分類することにより対応する環境放出地域を明らかにする。 一方、調査地区については、予め周辺の化学物質の生産、使用等の状況に関する情報等により、たとえば、生活型(生活系負荷が主となる型)、工業型 (工業系負荷が主となる型)、その他型に分類しておく。 環境調査の実施に当たっては、この化学物質の分類と環境調査地区の分類から適当な組合せを選択し、調査実施地区を決定することが望ましい。
 
 a)  調査地区の設定
 調査地区の設定は、下記の基本的考え方によることとする。
  ア.  化学物質の特性に応じた調査媒体及び予め周辺の化学物質の生産、使用等の状況を考慮のうえ設定した調査地区の中から調査実施地区を選定するメニュー方式を導入する。
  イ.  一般環境中に存在する化学物質の汚染レベルを早期に把握するため環境濃度が高いと予想される調査地区を設定する。
  ウ.  効率的な調査を実施するため過去の調査結果等から化学物質による汚染のパターンが異なる調査地区を設定する。
  エ. 全国的な観点で汚染レベルの把握できる調査地区を設定する。
  オ.  環境調査 (水質、底質、生物、大気)、生物モニタリング及び水質・底質のGC/MSモニタリング調査の各調査地区間の関係について配慮するとともに、環境調査の再調査の実施可能性についても考慮して調査地区を設定する。
 
 b)  調査実施地区の選定
 上記の考え方を踏まえ、水質、底質及び生物についての環境調査の場合、設定された調査地区の中から調査実施地区を選定する。 選定に当たっては特に次の点に配慮する。
  ア.  化学物質の用途、使用状況等から環境濃度が高いと予想される調査実施地区を選定する。
  イ.  影響情報に応じて調査実施地区を選定する。
  (6) 注目物質にかかる重点調査の実施
 注目物質とされたものについては、更に重点調査を実施する。
3.環境調査 (Phase 2)
   環境残留性の予測の結果、環境調査を実施することとした化学物質は、予測結果に基づき残留しやすいと推定される調査媒体中の分析法の開発を行い、その後に実際に環境調査を2.で選定した調査媒体及び調査実施地区で実施することとする。
  (1) 分析法開発
 環境調査においては、一般環境中に存在する化学物質の濃度レベルの早期把握、すなわち、暴露情報の入手を目標とするべきであり、分析法開発に当たっては環境中濃度を測定できる程度の検出限界を定める必要がある。また、効率化を図るため、分析法開発対象物質は統一的な分析法が適用できると考えられる物質群とすること及び分析法の規格化を行い分析法開発の簡便化を図ることも重要である。
  (2) 環境調査
 2.で選定した調査媒体及び調査実施地区で環境調査を実施する。
 大気環境調査の場合には、調査地区数が少ないことも考慮して、都市域を中心に調査地区を設定するが、化学物質によっては山間部も配慮する必要がある。
 なお、環境調査に当たっては、国際的な動向等にかんがみ、調査地区間の検出限界を統一するとともに、標準試料の配布及び未知試料によるクロスチェックの導入を検討する等精度管理に努めることとする。
4.評 価 (Phase 3)
   環境調査結果に基づいて暴露面の評価を行うとともに、既知見に基づいて影響面の評価を行うこととする。
 暴露面の評価を行うにあたり、環境残留性の把握がなお不十分と判断された場合には、再度環境残留性の予測段階にもどり、調査媒体、調査地区及び検出限界等を再検討したうえで、調査実施地区数を拡大した環境調査又は特定地域を重点的に対象とした環境調査等を再実施することにより残留状況を明らかにすることとする。 また、経年的に汚染状況の推移を把握する必要があるとされた化学物質については、追加調査として生物モニタリング又はGC/MSモニタリング (当面は水質、底質のモニタリング) を行い残留傾向を明らかにすることとする。
 影響面の評価では、第一義的には人に与える影響を評価することとするが、環境に与える影響をあわせて評価する必要があると判断された場合には、追加調査として生態影響試験を実施することとする。
 なお、影響面の評価においては、近年リスクアセスメントの手法が開発、利用されてきており、総点検調査においてもリスクアセスメント分科会でリスクアセスメントガイドラインを設定したところであり、これの活用を図っていくこととする。
5.モニタリング及び生態影響調査 (Phase 4)
   評価の結果をうけて、生物モニタリング、水質・底質のGC/MSモニタリング等の環境中の化学物質モニタリングを実施することとする。 また、環境に与える影響について生態影響試験を実施する。
  (1) モニタリング
 a)  生物モニタリング
 生物モニタリングは、一定の生物種を用いて化学物質による環境汚染を監視することを目的として実施されている。 生物モニタリングの今後の方向については、生物モニタリング分科会において検討が行われ、長期的視点に立って継続していくことが何よりも重要であるとの認識のもとに下記のような指摘がなされたところであり、この指摘をふまえ、第2次総点検調査の生物モニタリングを実施していくこととする。
  ア.  調査対象生物
 モニタリングにおける各生物種の調査目的をはっきりさせるとともに、各目的毎に対象生物種をできる限り統一していくこと
  イ.  調査対象化学物質
 現行の調査対象物質に加え、環境調査の結果、監視が必要とされた化学物質を調査対象として加えること
  ウ.  調査地区
 全国レベルでの生物を指標とした環境汚染の監視という観点からは、現状の環境調査地区数及び配置で一応の目的が達せられるものと考えられるが、今後、他の環境調査地区との関連について検討すること等により調査を充実していくこと
  エ.  調査結果の評価解析等
 昭和62年度に作成した生物モニタリングマニュアルを活用するとともに、サンプリング方法の統一の推進等データの精度を高めるための措置及び多変量解析等汚染の構造を総合的に評価するための解析等について検討を進めること
 
 b)  GC/MSモニタリング
 GC/MSモニタリングは、昭和61年度から水質・底質について開始されている。
 これは、多種類の化学物質を同時に感度良く分析できるという特徴をもったGC/MSを用いて水質、底質中の化学物質の濃度の経年的な監視を行うこと目的としているが、高蓄積性でない化学物質も調査対象物質としており、生物モニタリングを補完する役割も有している。
 現在実施している水質・底質のGC/MSモニタリングの今後の進め方については、GC/MS分科会において検討が行われ、下記のような指摘がなされたところであり、この指摘を踏まえ、第2次総点検調査のGC/MSモニタリングを実施することとする。
 また、今後、大気、土壌等についても必要に応じGC/MSモニタリングの実施を検討することが望ましいと考えられる。
  ア.  調査対象化学物質
 現行の調査対象物質に加え、環境調査の結果、監視が必要であると評価された化学物質を調査対象とすること。
 なお、化学物質審査規制法上製造等が管理される化学物質 (第2種特定化学物質、指定化学物質)や生態影響が懸念される化学物質についても必要に応じ調査対象とすること。
  イ.  調査地区等
 調査地区は、全国的な汚染レベルを把握する観点から他の環境調査地区、特に生物モニタリングとの関係にも考慮したうえで設定すること。
 また、試料採取時期等の統一や精度管理に留意すること。
  ウ.  調査結果の評価解析等
 サンプリング方法の統一の推進等データの精度を高める措置及び媒体間の移動等を考慮した総合的な解析等について検討すること。
 なお、将来的にはサンプリング方法等を記載したマニュアルの作成を検討するとともに、高分離能のGC/MSのマニュアル化、GC/MSデータベースの整備等について検討した後に、GC/MSの特徴である未知物質の検索について、必要に応じ実施すること。


(2) 生態影響調査
   環境中に残留する化学物質の安全性を総合的に評価する観点からは、化学物質審査規制法が目的としているようなヒトの健康に被害を及ぼすおそれという観点に加えて、国際的にもOECDのMPDにいわゆる生態影響項目がとりあげられているように、生活環境の保全や環境中に生息する生物に対する影響 (生態影響)についても考慮する必要がある。
 このような考え方から現在、次の5つの生態影響試験を実施し、関連知見を蓄積している。
a) 藻類影響試験
b) ミジンコ急性遊泳阻害試験及び繁殖試験
c) 魚類急性毒性試験
d) ミミズ急性毒性試験
e) 陸生植物生長試験
 今後これらの生態影響試験データを評価するための判定基準を確立する必要があると考えられる。
IV.おわりに
 以上各分科会における検討を踏まえて、具体的な第2次総点検調査の在り方をとりまとめたが、今後、総点検調査を実施していくに際しては、特に以下の点に配慮する必要がある。 また、第2次総点検調査の結果が環境汚染対策に有効に活用されるよう努めることが重要である。
 
1.環境調査の標準化
   環境調査の実施に当たっては、調査マニュアルの整備、分析精度管理の導入等により調査の標準化を図り、調査の効率化、調査結果の精度の向上等を行うことが重要と考えられる。
 
2.データ管理のシステム化
   環境安全性評価システムで収集整理されたデータは非常に貴重であり、なおかつデータ量として膨大である。このため、これらのデータを管理し、類似化合物の環境残留性の予測等に利用していくためのデータ管理のシステム化が重要な課題となっている。 従って、データの存在利用形態等に対応して、データベース化、化学物質要覧等の文書化等による体系的なデータ管理について検討していく必要があると考えられる。
 
3.国際的動向、技術の進展に応じた調査の実施
   化学物質の安全性評価においては前述のようにOECD等国際的な活動が活発であり、これらの国際的動向を十分に把握して調査を実施するとともに、必要な情報を提供する等積極的に貢献していく必要がある。
 また、近年の分析技術の進展により検出感度の向上等が可能となってきており、新技術に関するマニュアルを作成して普及、啓蒙を図る等積極的に対応していく必要があると考えられる。
 なお、フロンのように難分解性で長期にわたり環境中に蓄積することにより地球的規模での影響を及ぼす恐れのあるような化学物質についても、将来的には環境調査対象物質として考慮する必要があろう。
 
4. 地方自治体との協力
   総点検調査は従来から関係各機関等の協力に支えられて推進されてきており、今後とも具体的な調査の実施にあたっては、関係機関と十分に調整していく必要があると考えられる。
 
  化学物質調査検討会
総合検討会メンバー
 
 
  池 田 正 之 (東北大学医学部教授)
  菅 原   淳 (国立公害研究所生物環境部長)
  戸 部 満寿夫 (国立衛生試験所安全性生物試験研究センター長)
  氷 見 康 二 (神奈川県公害センター所長)
(座長) 不 破 敬一郎 (国立公害研究所副所長)
  松 下 秀 鶴 (国立公衆衛生院地域環境衛生学部長)
(敬称略、 50音順)
注)本報告における調査名、検討員の所属等は全て昭和63年当時のもの。




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