平成11年(1999年)版 「化学物質と環境」
第3編 化学物質対策の国際的動向
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4.化学物質の安全に関する政府間フォーラム(IFCS)
 
1) 会議の開催
2) 「化学物質の安全性に関する政府間フォーラム(IFCS)」の設立
3) 化学物質の環境上適正な管理のための行動
4) IFCSの活動


 
 アジェンダ21の採択を受けて、1994年(平成6年)4月にストックホルムにおいて、「化学物質の安全性に関する国際会議(ICCS)」が開催された。ここで、アジェンダ21第19章「有害かつ危険な製品の不法な国際取り引きの防止を含む有害化学物質の環境上適正な管理」の実施のための議論がされ、「化学物質の安全性に関する政府間フォーラム(IFCS)」の設立に至った。
1) 会議の開催
 1994年(平成6年)4月25~29日の5日間にわたり、スウェーデンのストックホルムで、我が国を含む 114ヶ国の代表、各種国連機関等の国際機関、民間団体(NGO)の参加により開催された。なお会議は、スウェーデン政府の招待の下で、国連環境計画(UNEP)、国際労働機関(ILO)、世界保健機関(WHO)の事務局長によって召集されたものである。
2) 「化学物質の安全性に関する政府間フォーラム(IFCS)」の設立
   1992年(平成4年)の「環境と開発のための国連会議(UNCED)」では、アジェンダ21第19章に定める、有害化学物質の環境上適正な管理に関する6つのプログラム分野での国際協力の重要性が強調されている。また、UNCEDの準備過程の一環で、化学物質のリスクアセスメント及び管理のための政府間機構の必要性を検討する専門家会合が1991年(平成3年)12月16~19日にロンドンで開催されており、化学物質の安全性に関する政府間フォーラムの創設を含めた一連の勧告がされたが、これらの勧告について、さらに考察し行動を起こすための政府間会合を開催するよう、UNCEDの場でUNEP、ILO及びWHOに要請がされていた。
 こういった状況を踏まえて開催された本会議では、「化学物質の安全性に関する政府間フォーラム(IFCS)」の設立の必要性等が議論され(「平成8年版化学物質と環境」325頁参照)、その設立が正式に決議された。
 なお、IFCSに委任される事項は、以下のとおりとされている。
 
  (1) 化学物質の安全性に対する共同行動の優先順位を明らかにし助言し、適切な範囲で、化学物質の労働環境の暴露を含む有害性の同定及びリスク評価、環境上適正な化学物質の管理のための協調した国際戦略を勧告する。これには、特に開発途上国での高い必要性を考慮したリスク削減計画、リスク伝達が含まれる。
  (2) 化学物質の安全性の分野で、活動的な国内、地域及び国際団体による協力の確保に助力し、この分野での努力が団体間で重複しないようにする。
  (3) 国内の調整メカニズムの強化とともに、特にインフラの整備、訓練、教育、研究及びモニタリング、情報提供に関連した化学物質管理の国内の能力の強化を促進する。
  (4) 化学物質の調和した分類及びラベル表示の国際的な合意及び遂行を促す。
  (5) 科学知識のギャップを明らかにすることに助力し、訓練や教育、技術移転を含む情報交換及び科学・技術協力を促進する。
  (6) 化学物質の安全性に関して勧告された国際戦略の実施について、現在行われている活動の効果を定期的に再検討し、さらに進んだ活動についての勧告を行い、必要な範囲で、フォローアップのメカニズムの強化又は創設を助言する。
  (7) 政府に対し、化学物質の安全性に関する作業について、特に法制面に言及して助言し、政府機関、政府間機関及び非政府機関の相互の協力を促進する。また、これらの機関とその他の国連内外の団体との間の仕事を、適正に、かつできるだけ明瞭で整合性のある方法で分担するよう奨励する。
  (8) 主要産業の事故を含む化学物質による事故の防止、対策、対応について、国際協力を促進する。
  (9) 化学物質による中毒の予防及び対応に関するプログラムの強化を促進する。
  (10) 参加国の政府の承認によって、フォーラムの意図及び目的に沿った上記以外の任務を遂行する。
3) 化学物質の環境上適正な管理のための行動
   さらに会議では、アジェンダ21第19章の実施に向けて、以下の6つのプログラムのそれぞれについて、優先的に取り組むべき行動が議論され(「平成8年版化学物資と環境」327頁参照)、その結果、優先 的に取り組むべき行動に関する決議がされた(「平成8年版化学物質と環境」336頁参照)。
 
  (1) 化学的リスクの国際的なアセスメントの拡大及び促進
  (2) 化学物質の分類と表示の調和
  (3) 有害化学物質及び化学的リスクに関する情報交換
  (4) リスク低減計画の策定
  (5) 化学物質の管理に関する国レベルでの対処能力の強化
  (6) 有害及び危険な製品の不法な国際取引の防止
 
   また、IFCSを実務的に支えてきた活動を進めるため、化学物質対策に関連する7つの国際機関、すなわち、OECD(経済協力開発機構)、UNEP(国連環境計画)、WHO(世界保健機関)、FAO(食糧農業機関)、ILO(国際労働機関)、UNIDO(国連工業開発機関)及びUNITAR(国連訓練調査研究所)の事務局が参加して、IOMC(健全な化学物質管理のための機関間プログラム)が設定され、各国機関の活動を調整しつつ、重要なプロジェクトの推進が図られている。
4) IFCSの活動
   IFCSは、本会議(Forum)と会期間会合(ISG)から構成されている。本会議は3年に1回開催されることとされており、第2回本会議(フォーラム II)は1997年2月カナダのオタワで開催された。第3回本会議(フォーラム III)は2000年10月にブラジルで開催される予定である。
 また、本会議の間に会期間会合が2回開催されることとされており、1回目は1995年3月にブリュッセルで開催され、2回目は1996年3月にキャンベラで開催された。3回目は1998年12月1日から4日まで横浜で開催された(参考参照)。4回目は2002年に開催されることが決定されている。
<参考>
  ○第3回会期間会合結果の概要(事務局公表文(厚生省仮訳)からの抜粋)
 
  (1) 約50カ国の政府及び約25の政府間機関と非政府機関(NGO)から150名を超える出席があった。
  (2) 会期間会合(ISG3)では、「国際的な化学物質のリスク評価(international assessment of chemical risks)」、「使用されなくなった化学物質や農薬の管理(management of obsolete stockpiles of chemicals and pesticides)」、「化学物質の管理に関する各国の能力強化(building partnerships to strengthen national capacities for chemicals management)」など特別な議題が話し合われた。
  (3) 当該会議は、高生産量化学物質(HPVC)に関する適切なリスク評価作業をさらに進めるという世界的なイニシアティブを歓迎した。これらのデータは、広く公開され、世界中の国々にとって人の健康と環境の保護の観点から大いに役立つであろう。当該会議では次回フォーラムIIIにおいて、国際的な評価をさらに進めるための2005年に向けた具体的な目標を決定することとされた。
  (4) 当該会議において、「使用されなくなった化学物質」の議題では、PCBの管理に対する国際行動計画が最も優先される事項であると合意した。
  (5) 有害性の分類(classification of hazard)は、化学物質から生じる危険性(リスク)を管理するための第1歩である。
 ISG3では、有害化学物質の分類と表示に対する世界的な調和を実行するために、国際経済社会理事会(ECETOC)の下部組織である国際危険物輸送専門家委員会(UNCETDG)を利用することで合意した。1999年6月の国際経済社会理事会では、そのことを決定することが求められるであろう。
  (6) ISGは、化学物質の安全性に関連した「コンピュータの2000年問題」を世界中に勧告することに合意した。
  (7) ISGでは、内分泌かく乱化学物質に関する科学的な評価や新しい試験法ガイドラインを開発するための最近の研究についての状況報告がなされた。IFCSは、この取組み及び現在進行中の作業を、2000年10月にブラジル政府主催で開催される次回のフォーラムIIIに向けて検討していくこととされた。
  (8) ISGは、次回のフォーラムIIIにおいて、PRTRに関するテーマ別セッション(thematic session)をアジェンダに盛り込むべきであるという提案を支持した。




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