平成11年(1999年)版 「化学物質と環境」
第2編 最近の化学物質関連の調査・研究等の概要
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5.ダイオキシン類の人体、血液、野生生物及び食事中の蓄積状況等について
−平成10年度調査結果(概要)
 
平成11年12月27日
環 境 安 全 課
環境リスク評価室


 ダイオキシン問題は、人の健康等に関わる環境保全上の重要な課題である。そのため、現在、「ダイオキシン対策推進基本指針(本年3月策定)」及び「ダイオキシン類対策特別措置法(同7月成立・公布)」に基づき、政府一体となった取組を進めているところである。
 このような中で、環境庁では、平成10年度に全国一斉に大気、水質、土壌等の環境媒体中のダイオキシン類(*1)についての総合的なモニタリングを実施するとともに、併せて、人体、血液、野生生物及び食事中の蓄積状況等についての実態把握を実施したものである。このうち、大気、水質、土壌等の環境媒体中のダイオキシン類についての総合的なモニタリングは既に本年9月にとりまとめて公表したところであるが、このたび、とりまとめが終了したものについて公表することとしたものである。
 本調査の結果の概要は以下のとおり。
   
I  人体については、ダイオキシン類に関して、我が国における人の臓器の平均的な蓄積状況を調査した結果、脂肪重量あたりの毒性等量で脂肪組織、肝臓、精巣又は卵巣、血液は中央値(*2)で41〜51pg-TEQ/gfat、臍帯は12pg-TEQ/gfat、脳は2.0pg-TEQ/gfatであった。また、精巣重量及び精子形成状況を死亡年で比較した調査の結果では、精巣重量は1964年〜1980年前後にかけて上昇した後、1990年前半にかけてやや減少する傾向がみられたが、その後上昇しており、さらに、精子形成状況は横ばいであった。
II  血液については、全国6地域の一般環境地域(計234人)及び廃棄物焼却施設周辺地域1地域(19人)に居住する合計253人の住民について、血液中のおけるダイオキシン類の濃度を測定した結果、一般環境地域では、平均値で18pg-TEQ/gfat、中央値17pg-TEQ/gfat、範囲1.3〜53pg-TEQ/gfatであった。また、廃棄物焼却施設周辺地域で実施した調査では、平均値で17pg-TEQ/gfat、中央値14pg-TEQ/gfat、範囲5.9〜38pg-TEQ/gfatであり、一般環境地域と廃棄物焼却施設周辺地域の間では有意な差は認められなかった。なお、参考として、全体では、合計253人で平均値で18pg-TEQ/gfat、中央値17pg-TEQ/gfat、範囲1.3〜53pg-TEQ/gfatであった。
III  野生生物については、環境汚染の指標の一つとして野生生物(魚類、両生類、鳥類、海棲哺乳類、陸棲哺乳類)へのダイオキシン類の蓄積状況についての実態調査を行った結果、生態系の食物連鎖における高位捕食者では低位捕食者に比べて、高い蓄積量を示す傾向が認められた。また、陸棲生物では、相対的にPCDD+PCDFの蓄積量が高く、一方、海棲生物では、コプラナーPCBの蓄積量が高い傾向もみられた。
IV  食事については、平成9及び10年度に陰膳方式により採取した食事試料を活用して、計48試料について、試験的に臭素系ダイオキシンを測定するとともに、参考として、併せて塩素系のダイオキシン類(以下、「ダイオキシン類」という。)を測定した。その結果、臭素系ダイオキシンについては、分析した全てにおいて定量下限値未満であった。また、ダイオキシン類については、1日に摂取されたダイオキシン類の総量では、平成9年度については、平均値(*3)で0.81pgTEQ/kg体重、中央値で0.42pgTEQ/kg体重、範囲は0.015〜4.8pgTEQ/kg体重であり、平成10年度については、平均値で0.94pgTEQ/kg体重、中央値で0.78pgTEQ/kg体重、範囲は0.0070〜3.6pgTEQ/kg体重であった。また、平成9及び10年度の合計では、平均値で0.88pgTEQ/kg体重、中央値で0.65pgTEQ/kg体重、範囲は0.0070〜4.8pgTEQ/kg体重であった。


(*1) ここでは、ポリ塩化ジベンゾ−パラ−ジオキシン(PCDD)及びポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)にコプラナーポリ塩化ビフェニル(コプラナーPCB)を含めて「ダイオキシン類」という。
   
(*2) 中央値」とは、データを大きさの順に並べ換えたとき、ちょうど真中にくる値をいう。
   
(*3) ここでは、「平均値」とは「算術平均値」をいう。




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