平成11年(1999年)版 「化学物質と環境」
第2編 最近の化学物質関連の調査・研究等の概要
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3.平成10年度環境ホルモン緊急全国一斉調査について(概要)

1 環境実態調査の概要
2 今後のリスク評価を進めるための分類
3 今後の取り組み
・ A物質となった4物質の検出状況等
・ 環境ホルモンと疑われる物質の環境実態調査結果の概況
・ 実態調査結果と文献情報による考察
 
1 環境実態調査の概要
 内分泌かく乱作用が疑われている67物質を中心に、大気、水等の環境媒体の濃度状況を全国2430地点(検体)(延べ)で調査したもので、おそらく世界に類をみない大規模調査であったと考えられる。
 ノニルフェノールなどが広い範囲で検出されたほか、野生生物のうち、食物連鎖で上位に位置するクジラ類や猛禽類において、PCBなどの蓄積がみられた。
2 今後のリスク評価を進めるための分類
   今回の調査結果や文献情報などから、今後リスク評価等に優先的に取り組む物質を選定するために、対象物質を以下のA〜Eに分類した。
  A物質(4物質):文献情報の専門的評価やリスク評価を優先的に実施
トリブチルスズ(船底塗料)、ノニルフェノール及び4-t-オクチルフェノール(界面活性剤の原料)、フタル酸ジ-n-ブチル(プラスチックの可塑剤)
  B物質(12物質):文献情報の専門的評価を優先的に実施
アトラジン(除草剤)、マラチオン(殺虫剤)等
  C物質(42物質):動物実験等を優先的に実施
PCB、スチレン2・3量体、ビスフェノールA(樹脂の原料)等
  D物質(6物質):文献情報の専門的評価を優先的に実施
エンドスルファン(殺虫剤)等
  E物質(9物質):環境モニタリングの継続
PBB(難燃剤)等
   なお、文献情報については専門家により評価を受けたものではないため、今後は専門家による詳細な評価が必要であり、また、スチレン等を原材料とした食品容器については、厚生省の検討会報告に鑑み、現時点では安全とみなされると考えられ、この点も、今後の取り組みにおいて踏まえる必要がある。
3 今後の取り組み
   今回の調査対象とした物質は、「内分泌攪乱作用を有すると疑われる物質」ではあるが、その有無や強弱、メカニズム等が必ずしも明らかになっていない物質である。このため、今回の調査結果を踏まえた分類を調査研究の方向を明確にしていく上で貴重な資料として活用しながら、当該作用の有無を明らかにする等の調査・研究を進めていくこととしている。


A物質となった4物質の検出状況等

○トリブチルスズ(TBT)
<用途>船底塗料、漁網の防腐剤
  <規制等>90年化審法指定
  第一種指定(製造・輸入・使用中止)
第二種指定(製造・輸入量の届出)
  <調査結果>
  調査した媒体のうち、土壌を除くすべての媒体で検出(大気は未調査)。
なお、水生生物では半数以上の地点で検出。
  環境庁が過去に調査した水質、底質、水生生物、野生生物では、すべて過去の調査結果の範囲内であった。
○ノニルフェノール及び4-t-オクチルフェノール
  <用途>界面活性剤の原料/分解生成物
  <規制等>海防法で有害液体物質に指定(海上への排出規制)
  <調査結果>
  調査した媒体のうち、土壌を除くすべての媒体で検出(大気は未調査)。
なお、水質では半数以上の地点で検出。
  環境庁が過去に調査した水質、底質では、いずれも過去の調査結果を上回っていた。その理由として、近年、使用量が増加していることや今回の調査地点数が多かったことなどが考えられる。
○フタル酸ジ-n-ブチル
  <用途>プラスチックの可塑剤
  <規制等>海防法で有害液体物質に指定(海上への排出規制)
  <調査結果>
  水生生物を除くすべての媒体で検出。
  環境庁が過去に調査した大気、水質、底質、水生生物、野生生物では、すべて過去の調査結果の範囲内であった。


環境ホルモンと疑われる物質の環境実態調査結果の概況
 
  測  定 検 出

物質数
本調査の最大値が環境庁の過去調査
最高値を超えていた物質数
( )内の分母は過去の調査データのある物質数
地 点 物 質
大気 198(地点) 10(物質) 9(物質) なし(0/4)
水質 1177(地点) 61(物質) 27(物質) 7(物質)(7/45)
底質 266(地点) 61(物質) 24(物質) 8(物質)(8/44)
土壌 101(地点) 61(物質) 26(物質)
水生生物 189(地点) 61(物質) 22(物質) 3(物質)(3/12)
野生生物
12種類
499(検体) 25(物質) 19(物質) 1(物質)(1/12)
大気、野生生物については、検出される可能性の高い物質を測定している。


実態調査結果と文献情報による考察
 
 (1)今回の環境実態調査の検出状況と(2)環境ホルモン作用を生じた濃度の文献データの双方を比較考慮し、今後のリスク評価等の調査研究を進める観点から次の5分類に整理することが妥当  


 
(1)今回の環境実態調査における検出状況 (2)環境ホルモン作用を生じた濃度の文献データ 今回の環境調査結果と文献データの比較
該 当 物 質
 

 
検出
   

   
(1)の値と(2)の値の乖離 小 トリブチルスズ、ノニルフェノール 等4物質

 
検出
   

   
(1)の値と(2)の値の乖離 大 PCP、アトラジン、DDT、
マラチオン 等12物質

 
検出
   

   

  
PCB、スチレン2・3量体、
ビスフェノールA等42物質

 
未検出
  

   

  
エンドスルファン、フェンバレレート 等6物質
未検出 PBB、アルドリン、ニトロフェン  等9物質
 




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