平成11年(1999年)版 「化学物質と環境」
第1編第1部 平成10年度化学物質環境調査結果の概要
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〔参考2〕環境調査対象物質の分析法の概要

1.分解性スクリーニング試験(簡便法)
2.低濃度添加回収実験
 
 平成10年度の環境調査対象物質の分析法は主として平成9年度に開発検討が行われた。
 水質・底質については、分析法の開発に先だち環境分析法としての適否を確認するため次のような方法で分解性スクリーニング試験を行っている。
1.分解性スクリーニング試験 (簡便法)
 化学物質は各種環境条件下において分解するものがあり、分析法開発に当たっては、想定される環境条件を設定し、分解性のスクリーニングを行い、的確な分析技術開発を行う必要がある。
 環境中における分解では、水または光によるものが大きな要因と考えられることから、この両条件を同時に設定してスクリーニングを行う (光が関与する分解の観察では、pH条件は一条件についてのみ行う) 。
 また、揮発性の性状を有する物質については、分解したと見誤らないために、バイヤルびんの空間部について適宜濃度を把握する。
(1) 準  備
 あらかじめガラス製撹拌子 (マグネティック・スターラー用)を入れた130mlのバイヤルびんに、pHが5、7及び9に調製した蒸留水100mlを加えてシールする。ついでこのバイヤルびん中へアセトンなどの親水性溶媒に溶解した標準品 (%オーダー程度の濃度が望ましい)をマイクロシリンジにより100ppm 以下の濃度とするように加え、10分間マグネティック・スターラーで撹拌する。
(2) 実  験
(a) 調製1時間後にそれぞれのpH値の検液をバイヤルびんから取り出し、直ちに分析する (濃度A)。
(b) さらに暗所にて5日間放置後分析する(濃度B)。
(c) 光による分解の有無をみるため、pH7の検液については、太陽光が入ってくるような室内に5日間放置したものも分析する(濃度C)。
以上の実験は20±5℃の温度条件下で行う。
(3) 結  果
それぞれのpHについてB/A×100、C/A×100を算出し、分解性を検討する。
実験の組み合わせは以下のとおりである。
pH 初期濃度
(μg/ml)
1時間放置
後の残存率
  (%)
5日間放置後の残存率
暗所(%) 光照射(%)




















また、水質及び底質についての分析法の開発にあたっては、検出限界及び回収率を定めるため、次のような方法で回収実験を行っている。
 
2.低濃度添加回収実験
(1) 蒸留水
分析機器の感度を実用上さしつかえない範囲で高感度にセットし、検量線を作成する。直線回帰が成立する濃度範囲の最下限濃度を含む3種類の濃度に相当する量の対象化学物質の標準試料を溶解した試料を調製し、各濃度について4回の全分析を行い、測定値を求める。
また、この結果をもとに各濃度における測定値の標準偏差を求め、次式により検出力Dを求める。

               σR   dC
 D=t(n−1、0.05)── ・ ───
              √n   dR
 σR:標準偏差 C:濃度 R:応答値

3種類の濃度条件における検出力Dの平均値Dを求め、設定した分析法における検出力とする。
検出力の3倍(3×D)を検出限界値、10倍 (10×D)を定量限界値とする。

(2) 底  質
(1)の方法で求めた、検出限界値(3×D)に相当する底質での濃度を、仮に検出限界推定値とし、この検出限界推定値の2〜5倍に相当する濃度になるように対象化学物質での標準試料を共通底質に添加し、一夜4℃で密栓して保存したのち、まず2回、底質試料の全分析工程を実施し、対象化学物質が正しく検出されることを確かめる。検出が可能の場合は、同一濃度でさらに5回の添加回収実験を行い、計7回の分析値を用いて次式により共通底質における検出限界値を計算する。
   検出限界値(DL)=t(n−1、0.02)Sc
Scは標準偏差の推定値
(3) 河川水及び海水
河川水 (環境基準B類型の水域のもの)及び海水(環境基準B類型の水域のもの、ない場合はA海域の水または人工海水)に標準品を検出限界の10倍になるように添加し、直ちに分析する (各2回以上)。また、標準品を加えない同じ河川水及び海水についても分析する(各2回以上)。添加水の測定値から無添加水の測定値(各平均値)を差し引いた値により、回収率を算出する。
 

 実際の調査に際しては、分析に際して妨害となる物質も存在することから、抽出法、分離法、測定条件など種々の検討も並行して行う。
 ガスクロマトグラフにより検出された物質については、出来るだけ、マススペクトル法を用いて確認することとした。

 環境調査物質の分析方法のフローチャートはこちら





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