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第二次化学物質環境安全性総点検調査の実施について
昭和63年5月13日
中央公害対策審議会環境保健部会
化学物質専門委員会
1.本報告に至る経緯等
2.第2次総点検調査の実施
(1) 化学物質による環境汚染を防止するためには,先ず第1にこれら化学物質の環境中に於ける存在状況を把握することが不可欠であり,環境庁は,昭和48年の化学物質審査規制法の制定を契機として,その翌年から既存化学物質に対する環境安全性点検に着手した。 その後,昭和54年度には,それまでに実施されていた各種調査研究を統合し,現在の化学物質環境安全性総点検調査 (以下「総点検調査」 という) を開始した。
(2) 総点検調査は,当面,昭和54年度からの10カ年計画で実施され,64年度からは第2次総点検調査として新たなステージに移行すべき段階にある。
(3) 化学物質による環境汚染は,科学技術の進展等の人間活動の変化により,その問題の所在が絶えず変化する。 また,科学技術の進展により,一方でより優れた調査が可能となる。 このため,こうした調査のシステムの見直しは絶えず必要である。 このような観点から,環境庁においては,昭和60年度から化学物質調査検討会 (座長国立公害研究所副所長不破敬一郎) を設け,現在の総点検調査の見直しについて検討を行ってきた。 更に,同検討会の検討を踏まえつつ,中央公害対策審議会の化学物質専門委員会で審議することとなった。
(4) こうした検討が必要となった具体的背景は次の通りである。
(a)これまでの総点検調査の実施の積み重ねを通じ,生産活動,生活様式の変化に伴う調査優先物質の見直しの必要性や,科学技術の進歩に伴う効率的調査の推進等,現在の環境調査方法等に関する種々の課題が明らかになってきたこと,
(b)近年,ダイオキシン等の非意図的に生成される化学物質や先端産業で使用される有害化学物質による環境汚染の可能性等,新たなタイプの環境汚染の問題が指摘されてきたこと,
(c)総合的な化学物質対策として国際的にもクロスメディアアプローチの重要性が注目されるようになってきたこと等である。
(5) 化学物質調査検討会は,昭和61年2月に中間報告をまとめ,更に本年2月には,第2次総点検調査の在り方について最終報告を取りまとめた。 同報告の内容は幅広いものであるが,とりわけ,これまでの総点検調査の成果,新たな環境汚染の状況,環境問題に関する国際的動向を踏まえ,第2次総点検調査において特に重要と考えられる点として,①調査対象物質の拡大,②調査の効率化,重点化,③2段階の評価,の三つを挙げている。 同報告は,3月22日に本専門委員会に報告され,本専門委員会は,第2次総点検調査の在り方を示す適切なものと判断し,これを了承した。
(6) 本専門委員会は,上述の化学物質調査検討会の最終報告を踏まえ,更に,第2次総点検調査の実施に当たり留意すべき事項について検討を加え,本日以下に示す結論を得た。 本専門委員会としては,環境庁がこの結論を踏まえ,化学物質による環境汚染を未然に防止すべく適切な対応をするよう期待するものである。
本専門委員会としては, 化学物質調査検討会の最終報告に基づき,以下に示す事項に留意して昭和64年度から第二次総点検調査を実施すべきであると考える。
(1) 調査対象物質
(a)第2次総点検調査では,審査済み新規化学物質及びダイオキシン等の非意図的生成化学物質を新たに調査対象物質として追加することとしているが,更に,科学技術の進歩,環境汚染の形態の変化等,状況の変化に応じて新たに調査が必要となった化学物質についても調査の対象にできることが重要である。
(b)環境運命予測モデルの活用等により,より効果的な調査対象物質の選定が可能であるが,化学物質の検出割合,検出頻度等これ迄の総点検調査結果を考慮した場合,最小限,中間報告で提案されている年20物質程度は,要調査物質として調査する必要がある。
(c)これ迄の総点検調査で,年5物質程度は精密に環境調査を実施してきたことを考慮すると,新たな総点検調査においても,これと同じ程度の数の物質について,環境安全性の観点から特に重要な注目物質として重点的な調査を実施する必要がある。
(2) 調査地区
(a)日常生活に起因する汚染が主である地区 (生活型),工業生産活動による汚染が主である地区 (工業型) 等,化学物質の生産・使用状況を基に分類されたそれぞれの型に適する調査対象地区を予め設定し, その中から調査物質の特性に応じて調査を実施する地区を選定する。
調査は,原則として全都道府県において実施することが望ましい。
(b)なお,現行の調査地区については,調査の継続性,調査結果の相互比較の観点等から,引続き調査地区とすることが望ましいと考える。
(3) その他の留意事項
(a)総点検調査は,その実施面において,今後生ずる可能性のある新たなタイプの環境汚染にも即応できるような柔軟性のあるものとする必要がある。
(b)調査物質選定手法である環境運命予測手法等の先端的な手法については,急速な学問分野の進歩に応じて最適な手法を用いることができるよう,常に関連分野の最新の情報を把握して取り入れて行ける体制を整備することが重要である。
(c)環境汚染物質のヒトへの暴露量を評価するために,更に具体的な手法を開発する事が望まれる。
なお,化学物質対策を適切かつ有効に行っていくためには,今や一国のみならず国際的な協力が不可欠であることに鑑み,この総点検調査の成果をOECD等の国際機関に提供する等,その国際的な活用を積極的に図り,もってわが国も国際社会に貢献していく必要があると考える。
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