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平成17年度(2005年度)「化学物質と環境」(詳細版)
第3章 平成16年度モニタリング調査結果(詳細版)

<< 調査地点及び実施方法 調査の概要 >>
 
 モニタリング調査としての継続性に関する考察
  1. モニタリング調査の継続性の検討
(1) 調査対象物質及び媒体の推移
(2) 調査地点の推移
(3) 定量(検出)下限値の推移
(4) 継続性検討についてのまとめ
2. まとめ

 

● モニタリング調査としての継続性に関する考察

 
1. モニタリング調査の継続性の検討
 化学物質環境実態調査(昭和49年度開始)において、平成13年度まで実施してきた継続的調査として、昭和53年度に開始した「生物モニタリング」を始め、「水質・底質モニタリング」、「指定化学物質等検討調査」、「非意図的生成化学物質汚染実態追跡調査」がある。また、年度別調査としては一般環境中に残留する化学物質の早期発見及びその濃度レベルの把握を目的とし、種々の調査対象物質を選定して実施した「化学物質環境調査」がある。これら調査の概要は次のとおりである。
 
調査名称(注1) 開始年度(注2) 媒体(注3) 調査対象物質(注3)
生物モニタリング 昭和53年度 生物(貝類, 魚類 , 鳥類) PCB類、HCB、ドリン類、DDT類、クロルデン類、HCH類
水質・底質モニタリング 昭和61年度 水質、底質 HCB、ディルドリン、DDT類、クロルデン類、HCH類
非意図的生成化学物質
汚染実態追跡調査
平成元年度 水質、底質、生物(魚類)、大気 PCB類
化学物質環境調査 昭和49年度 水質、底質、生物(魚類)、大気 PCB類、HCB、ドリン類、クロルデン類、ヘプタクロル、HCH類、ヘキサブロモベンゼン、有機スズ化合物
  (注1) 調査名称は平成13年度のものであり、開始当初とは異なる場合がある。ただし水質・底質モニタリングは平成10年度までの名称で、平成11~13年度は底質モニタリングである。
(注2) 開始年度は調査の開始年度であり、調査実施状況は媒体、調査対象物質ごとに異なる。
(注3) 調査対象物質は、平成16年度モニタリング調査の調査対象物質に含まれるもののみを掲げた。また、媒体も右欄の調査対象物質について調査を実施しているもののみ掲げた。
 
(1) 調査対象物質及び媒体の推移
 平成16年度モニタリング調査対象物質について、化学物質環境実態調査における年度別の調査状況は表3のとおりである。
 平成14年度から新規にモニタリングを開始したのは全媒体のヘプタクロルの他、水質・底質では、アルドリン、エンドリン、o,p’-DDT、o,p’-DDE、o,p’-DDD、大気ではHCB、アルドリン、エンドリン、ディルドリン、 p,p’-DDT、o,p’-DDT、p,p’-DDE、o,p’-DDE、p,p’-DDD、o,p’-DDD、trans-クロルデン、cis-クロルデン、trans-ノナクロル、cis-ノナクロル、オキシクロルデンである。平成15年度についてはtrans-ヘプタクロルエポキシド、cis-ヘプタクロルエポキシド、トキサフェン(3物質)、マイレックス、γ-HCH、δ-HCHについては全媒体の、DBT、DPT、MPT、テトラブロモビスフェノールAについては底質、生物の調査を実施した。平成16年度は、平成15年度に引き続き、PCB類、HCB、ドリン類、DDT類、クロルデン類、ヘプタクロル類、トキサフェン、マイレックス、HCH類については全媒体の調査を実施した。その他の対象物質として、HBBについては全媒体の調査、DOTについては水質、底質、生物の調査を実施した。
   ・表3 化学物質環境実態調査の年度別調査物質・媒体一覧
 
(2) 調査地点の推移
水質:  PCB類については、平成12年度に28地点で開始し、平成13年度の29地点、平成14、15年度は38地点に対し、平成16年度は40地点であった。
 PCB類以外については、昭和61年度に18地点で開始し、平成10年度の18地点に対し、平成14、15年度は38地点であり、平成14年度の調査地点で4年以上の継続地点は14地点で、新規調査地点が24地点であった。平成16年度は40地点で調査を実施した(平成11年度~13年度は調査未実施)。
底質:  PCB類については、平成12年度に36地点で開始し、平成13年度の39地点に対し、平成14年度は63地点、平成15年度は62地点、平成16年度は63地点であった。
 PCB類以外(有機スズ化合物を除く)については、昭和61年度に18地点で開始し、平成13年度の20地点に対し、平成14年度は63地点と大幅に増加し、平成15年度は62地点、平成16年度は63地点となっている。平成7年度以降、継続して調査を実施している地点は17地点であった。
生物:  生物モニタリングは昭和53年度に8地点で開始され、地点は年を経るごとに増加し、平成13年度の23地点に対し、平成14年度は23地点(うち1地点は2生物種を調査)であった。平成14年度において、北海道釧路沖のオオサガ、長崎県祝言島地先のスズキの調査が廃止され、川崎港のスズキ、横浜港のムラサキイガイ及び山口県見島のムラサキインコガイが新規追加された。また、北海道日本海沖のアイナメは、採取場所が留萌沖から寿都沖に変わった。平成15年度は三浦半島(ムラサキイガイ)、萩市見島(ムラサキインコガイ)の2地点が外れ21地点であった。平成16年度は高松港のムラサキイガイが新規追加され、洞海湾の採取生物がムラサキイガイからムラサキインコガイに変更された。
 これに加え、PCB類については同族体ごと及びコプラナーPCBの調査が平成8、9、12、13年度に貝類、魚類で実施され、平成14年度以降は貝類、魚類、鳥類で実施されている。
大気:  PCB類について、平成12年度及び平成13年度に調査されている。その他の物質について、モニタリング系調査は過去に行われていない。PCB類では平成12年度17地点、平成13年度の15地点に対し、平成14年度は34地点と大幅に増加した。平成15年度は小笠原父島が追加され、釧路市が函館市に変更された。平成16年度は、兵庫県及び鹿児島県が追加され、函館市が名寄市に変更されて、37地点で調査が実施されている。
 
(3) 定量(検出)下限値の推移
 平成13年度の検出下限値と平成14年度以降の検出下限値の比較一覧を表5-1、平成14年度以降の定量下限値の比較を表5-2に示す。平成13年度の検出下限値は後述する「統一検出限界値」であり、平成14年度以降の検出下限値は、初期環境調査及び暴露量調査と合わせ、測定検出下限値(MDL)である。ただし、有機スズ化合物を除く平成14年度の水質及び底質は、機器検出下限値(IDL)を検出下限値として扱っている。
 また、検出下限値の変化に対応した検出状況の変動については表6にまとめた。その際、地点の相違の影響を除外するため、継続調査地点を採用した。
   ・表5-1 平成13年度と平成14年度以降の調査における検出下限値の比較
 ・表5-2 平成14年度以降の調査における定量下限値の比較
 ・表6 平成13年度と平成14年度以降の調査の継続調査地点における検出状況の比較
 表5-1から、検出下限値については、平成14年度以降の値は平成13年度までの値と比べ大きく変化している。
 生物モニタリングは、開始当初はGC-ECDによる分析となっており、GC/MSが主流となっている現在ではかなり感度良く分析できる。しかしながら、平成13年度までは自治体調査機関による分析が主体であったため、分析機関間の測定機器の違い等を考慮してデータ処理を行う必要があり、開始当初から同一の検出下限値(「統一検出限界値」と称していた。)を設定し、データ処理をしてきた。用いていた統一検出限界値は現在の分析法では十分に定量可能な値であり、近年ではより感度高く分析を行った自治体からは「トレース値」として別報告を受ける状況が続いていた。
 平成14年度以降は分析機関が媒体ごとに一箇所になったことに加え、高感度のGC/HRMSを用いた分析に移行しており、検出下限値は統一検出限界値に比べて1/1,000程度に下がっている。
 水質・底質モニタリングは、開始当初からGC/MSによる分析であり、水質は0.01μg/L(= 10,000pg/L)、底質は1ng/g-dry(=1,000pg/g-dry)を目標検出下限値として実施してきた。平成14年度以降は高感度のGC/HRMSを用いて分析を行い、平成13年度に比べて、検出下限値は水質で1/10,000、底質で1/1,000程度に下がっている。
 非意図的生成化学物質汚染実態追跡調査におけるPCB類の総量は、平成8、9年度はGC/MSで測定されたが、平成12、13年度は高感度のHRGC/HRMSにより測定された。このため、平成12、13年度は平成8、9年度の1/10,000程度の検出下限値となっている。平成14年度以降は平成12、13年度と同等の検出下限値であった。なお、コプラナーPCBについては平成8年度以降 HRGC/HRMS分析が行われているため、同等の検出下限値である。
 モニタリング調査では観測値の推移が重要な要素となるため、平成14年度調査結果からは次のとおり定量下限値(検出下限値の3倍)を示すことで数値の信頼性を確保することとした。
検出下限値の3倍を定量下限値とする。
検出状況(検出数/検体数など)は検出下限値により判定する。
幾何平均値の算出では、検出下限値以上は測定値を用い、検出下限値未満は検出下限値の1/2を用いる。
幾何平均値、中央値等の表記では、その数値が検出下限値以上定量下限値未満の場合はトレース値とし、検出下限値未満であった場合は不検出とする。
 
(4) 継続性検討についてのまとめ
 (1)~(3)の検討結果より、調査結果の評価を行うに当たっては以下の点を考慮する必要がある。
 
・ PCB類
 平成13年度以前に実施してきたPCB類の継続的調査としては、水質、底質、大気媒体については非意図的生成化学物質汚染実態追跡調査、生物(魚類・貝類・鳥類)媒体については生物モニタリングが該当する。これらの調査におけるPCB類の調査実績は、水質及び大気媒体は平成12年度及び平成13年度の2年間、底質媒体は平成8年度、9年度、12年度、13年度の4年間、生物媒体は昭和53年度から平成13年度までの24年間である。従って、生物媒体については経年推移を評価するのに十分な期間に亘っての調査が実施されていると言えるが、水質、底質及び大気媒体については十分な期間に亘っての調査が実施されているとは言えない。
 PCB類の調査地点については、水質、底質、大気媒体の平成14年度以降の調査地点は平成13年度以前と比較し大幅に変わっている。このため、これらの媒体では平成14年度以降と平成13年度以前の残留状況の傾向を経年的に評価する場合には考慮を要する 。生物媒体では、平成14年度に2地点(釧路沖のオオサガ、長崎県祝言島地先のスズキ)減り3地点(川崎港のスズキ、横浜港のムラサキイガイ、山口県見島のムラサキインコガイ)追加され、平成15年度に2地点(三浦半島のムラサキイガイ、見島のムラサキインコガイ)減り、平成16年度に1地点(香川県高松港のムラサキイガイ)追加され1地点で生物種が変更(北九州市洞海湾のムラサキイガイ→ムラサキインコガイ)された。経年的に評価する場合、この点に留意する必要がある。
 PCB類の検出下限値については、水質、底質、大気媒体の平成14年度以降の値は平成13年度以前の値とほぼ同等であるため継続的に評価することが可能である。生物媒体では平成14年度以降の検出下限値は平成13年度以前に比べて1/1,000程度に下がっている。これに伴い検出数が大幅に増えており、検出頻度や幾何平均値(検出下限値未満の値は検出下限値の1/2として計算)により残留状況の傾向を評価する場合には考慮を要する。なお、生物媒体については平成13年度以前には検出下限値未満の検体が多く、中央値、70%値、80%値等で推移を見ることも困難である。
 
・ PCB類以外の有機塩素系化合物
 平成13年度以前に実施してきた継続的調査としては、水質及び底質媒体については、水質・底質モニタリング(平成11年度~平成13年度は底質モニタリング)、生物媒体(貝類・魚類・鳥類)については生物モニタリングが該当する。大気媒体については、過去に継続的調査は実施していない。なお、大気媒体のHCH類は平成14年度の調査対象外である。また、ヘプタクロルについては、全媒体において過去に継続的調査を実施していない。
 PCB類以外の有機塩素系化合物における平成13年度以前の調査実績について、水質及び底質媒体は、HCB、ディルドリン、p,p’-DDT、p,p’-DDE、p,p’-DDD、trans-クロルデン、cis-クロルデン、trans-ノナクロル、cis-ノナクロル、α-HCH、β-HCHについては昭和61年度から平成10年度までの13年間(底質は昭和61年度から平成13年度までの16年間)、モニタリングを実施した。オキシクロルデンについては昭和61年度及び昭和62年度の2年間のみ実施し、その他の物質(アルドリン、エンドリン、o,p’-DDT、o,p’-DDE、o,p’-DDD、ヘプタクロル)については水質及び底質の継続的調査は実施していない。生物媒体は、アルドリン、エンドリンについては昭和53年度から平成5年度まで、その他の物質については昭和50年代から平成13年度までモニタリングを実施した(調査開始年度は物質により異なる。また平成9年度及び平成11年度には調査を実施していない物質がある。詳細は表3参照のこと)。以上より、過去にモニタリングを実施していない物質(ヘプタクロル等)及び媒体(大気等)については残留状況の傾向を判断できないほか、オキシクロルデンの水質及び底質媒体、アルドリン、エンドリンの生物媒体については、前回の調査実施から間隔が開いているため残留状況の傾向を評価する場合には考慮を要する。
 PCB類以外の有機塩素系化合物の調査地点については、水質、底質媒体の平成14年度以降の調査地点は平成13年度以前と比較し大幅に変わっている。このため、これらの媒体では平成14年度以降と平成13年度以前の残留状況の傾向を経年的に評価する場合には考慮を要する。生物媒体では、PCB類と同様、平成14年度に2地点(釧路沖のオオサガ、長崎県祝言島地先のスズキ)減り3地点(川崎港のスズキ、横浜港のムラサキイガイ、山口県見島のムラサキインコガイ)追加され、平成15年度に2地点(三浦半島のムラサキイガイ、見島のムラサキインコガイ)減り、平成16年度に1地点(香川県高松港のムラサキイガイ)追加され1地点で生物種が変更(北九州市洞海湾のムラサキイガイ→ムラサキインコガイ)された。経年的に評価する場合、この点に留意する必要がある。
 PCB類以外の有機塩素系化合物の検出下限値については、平成14年度以降の値は平成13年度以前の値と比較して、水質媒体では、1/10,000程度に、底質及び生物媒体では1/1,000程度に下がっている。これに伴い検出数が大幅に増えており、検出頻度や幾何平均値(検出下限値未満の値は検出下限値の1/2として計算)により残留状況の傾向を評価する場合には考慮を要する。なお、生物媒体については、平成13年度以前は検出下限値未満の検体が多く、中央値、70%値、80%値等での推移を見ることも困難である。
 
2. まとめ
 モニタリング調査は長期に亘り実施されてきており、その間に調査地点、分析法、生物種等の変更が行われている。
 そのため、調査開始当初と最近の調査結果をそのまま比較可能な値として扱うことは困難であるが、共通の調査地点、分析法の期間毎にみれば継続性をもって評価を行うことができると考えられる。
 なお、HCB、ディルドリン、p,p’-DDT、p,p’-DDE、p,p’-DDD、trans-クロルデン、cis-クロルデン、trans-ノナクロル、cis-ノナクロル、オキシクロルデン、α-HCH、β-HCHの水質については、平成13年度以前に調査実績はあるものの、検出下限値が高い(10,000pg/L)ため検出率が低いということに留意が必要である。このため、平成13年度以前のHCB、ディルドリン、p,p’-DDT、p,p’-DDE、p,p’-DDD、trans-クロルデン、cis-クロルデン、trans-ノナクロル、cis-ノナクロル、オキシクロルデン、α-HCH、β-HCHの水質については、経年変化図は省略することとした。
 
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