環境省保健・化学物質対策国際的動向と我が国の取組諸外国の新規化学物質審査規制制度の概要

諸外国の新規化学物質審査規制制度の概要

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スイス

【はじめに】
 この資料は、平成19(2007)年12月時点の情報を基に作成しました。分かりやすく説明するために、手続の一部を省略したり、条文に厳密に沿っていない場合がありますので、制度の詳細については原典等で御確認ください。環境省は利用者がこのサイトに掲載されている情報を用いて行う一切の行為について、何らの責任を負うものではありません。


  1. 制度の経緯、背景等
  2. 法規等
  3. 所管当局
  4. 既存化学物質リスト
  5. 届出者
  6. 届出を要する物質
  7. 届出の種類
  8. 届出時期
  9. 要求される情報
  10. 届出の提出方法
  11. 届出の審査及び製造・輸入の開始
  12. その他
0.  制度の経緯、背景等
スイスはEUに加盟しておらず、化学品規制も独自の「毒物法」、「環境保護法」の下に管理を行ってきた。しかし、EUの規制に調和化する法制化を行い、2000年12月に新しい「化学品法」を制定公布、2005年8月に全面的に発効し、基本的にEUの法規(REACH規則発効以前)と類似の規制になった。REACH規則への調和化については今後の課題である。
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1.  法規等:  危険な物質及び調剤からの保護に関する連邦法(化学品法、ChemG)、危険な物質及び調剤からの保護に関する政令(化学品政令、ChemV)
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2.  所管当局:  連邦保健局(BAG)、連邦環境局(BAFU)、国家経済政策センター(SECO)
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3.  既存化学物質リスト:  欧州既存商業化学物質インベントリー(EINECS)
(注)   EUの「もはやポリマーとはみなされない物質(NLP)のリスト」も既存化学物質とみなされると考えられる。なお、届出された物質は、製品登録簿に収載される。
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4.  届出者:  新規物質の製造事業者*1又は総代理人*2
*1  物質、調剤、成形品(article)を製造又は輸入するスイス内の自然人/法人
*2  外国の製造事業者に届出を全権委任され、輸入事業者を代表する自然人/法人
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5.  届出を要する物質:  既存化学物質以外の物質(既存化学物質リスト非収載の物質)
届出物質(製品登録簿収載の物質)を新たに別の者が上市(第三者への提供、譲渡及び輸入)しようとする場合、その製造/輸入事業者は届出が必要であり、届出に必要な動物実験を実施する前に、該当する物質に対して既に届出が存在するかどうか、届出当局に照会しなければならない。
5-1  既存物質リストへの収載の有無の調査方法
・ 公開情報調査:  オンライン、CD-ROM(NCI等)、インターネット(ECBweb)
5-2  届出が要求されないもの
(1) 政令の適用除外
1 物質及び調剤の、路上、軌道上、水上、空中及び配管施設での輸送
2 その際に加工又は処理が行われない限りでの、税関監視下の物質及び調剤の通過
3
最終消費者に向けられる次の最終製品の形態での物質及び調剤:
1   1992年10月9日付食品法に基づく食品
2   2000年12月15日付医薬品法に基づく医薬品及び医療製品
1999年5月26日付飼料政令の意味における飼料
4 1997年6月20日付武器法に基づく武器及び弾薬
5 環境保護法に基づく廃棄物である、物質、調剤及び成形品
(2) 届出義務の例外:届出不要
1 2%未満のEINECS非収載の物質を結合した形態で含有のポリマー(OECDの定義)
2 スイス内、欧州経済地域(EEA)内で年間10kg未満の量で上市される物質
3 専ら科学的研究開発の目的で、最高年間100kgの量で上市される物質
4 専らプロセス指向研究開発の目的で、最高で2年間上市される物質(通知が必要)
5 専ら出発物質、活性物質、添加物として食品、医薬品及び飼料に使用される物質
6 スイス内で受領される物質
7 中間体
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6.  届出の種類
6-1  新規物質の届出
6-2  プロセス指向研究開発に関する新規物質の通知
5-2  (2)-4の理由で届出が要求されない新規物質を、それ自身として、又は調剤若しくは取扱いの際にそれからその物質が遊離されることがある成形品の構成物質として上市する前に、届出当局に通知が必要。
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7.  届出時期
・   新規物質の届出 :  60日前まで(EUで上市可能であることの証明の場合又はポリマー以外の新規物質で上市量が1トン以下の場合、30日前まで)
・   プロセス指向研究開発に関する新規物質の通知:30日前までに提出する。
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8.  要求される情報
8-1  新規物質の届出に必要なデータおよび書類
1 届出者の名称・宛先(その物質を輸入する場合、外国の製造事業者の名称・宛先)
2
届出者が総代理人である場合、追加として;
01.   外国の製造事業者の名称及び宛先
02.   その届出者を総代理人と定めたことが分かる、その外国の製造事業者の委任状
03.   代行される輸入事業者の名称及び宛先
04.   個々の輸入事業者によって年間に輸入される予想数量
3 製造場所の立地
4 製造事業者又は輸入の場合その外国の製造事業者によって、スイス内及びEEA内で年間に合わせて上市されるはずの予想数量
5 技術的記述*3
6 (存在する限り)その物質の評価及び分類に関係する、技術的記述を超える試験報告書
7 (届出者がその物質をEUに輸出する場合、又はその物質を既にEU内で届出している外国の製造事業者から受け取る場合)その物質がEU内で上市可能であるという当局の証明
8 その物質の分類及び表示に関する提案
9 危険な物質について、MSDSに関する提案
10 場合により、物質、調剤又は危険な物質を含有する成形品が、人の生命若しくは健康又は環境を害するかどうかの評価に関する報告
*3  技術的記述の内容は、EU指令67/548/EECの附属書VIIに基づく記述
物質の種類 1製造事業者当たりの上市量*4 EU指令67/548/EEC
附属書に基づく要件
年間 累積
新規物質(ポリマー以外) 1トン超 - 附属書VIIA
100kg~1トン - 附属書VIIB
10kg~100kg - 附属書VIIC
新規ポリマー 標準試験パッケージ(STP) 1トン以上 5トン以上 附属書VIID C1.1
1トン未満 5トン未満 附属書VIID C1.2
100kg未満 500kg未満 附属書VIID C1.3
軽減試験パッケージ(RTP) 1トン以上 5トン以上 附属書VIID C2.1
1トン未満 5トン未満 附属書VIID C2.2
*4  上市量は、スイス国内及びEEA内の合計量であり、輸入の場合は、外国の1製造事業者当たりの量。
(注)  上市量が一定量を超える場合に求められる追加の記述及び試験報告書
1製造事業者当たりの上市量*5 追加の記述及び試験報告書(EU指令67/548/EEC)
年間100 kg/合計500 kg超 附属書VIIB
年間1トン/合計5トン超 附属書VIIA
年間10トン/合計50トン超 附属書VIIIレベル1に基づく個別/すべての試験報告書
年間100トン/合計500トン超 附属書VIIIレベル1に基づくすべての試験報告書(ある特定の試験・調査が不適当である、又は代替の科学的試験・調査が好ましいことを証明する場合を除く)
年間1000トン/合計5000トン超 附属書VIIIレベル2に基づく個別/すべての試験報告書
*5  輸入の場合は、外国の1製造事業者当たりの量
8-2   プロセス指向研究開発に関する新規物質の通知に必要なデータ及び書類
1 製造事業者の名称及び宛先
2 製造事業者がその物質を輸入した場合、外国の製造事業者の名称及び宛先
3 その物質の同一性(identity)に関する重要な記述
4 使用目的
5 その製造事業者によってスイス内で年間に上市される物質の予想数量
6 予想される分類及び表示
7 研究計画及びその者にその物質を譲渡することになる者のリスト
8 危険な物質について、MSDSに対する提案
9 毒性、猛毒性、発がん性、変異原性又は生殖毒性物質については、1~8の記述に加えて、指令67/548/EECの附属書VIIAに基づく推奨及び緊急処置に関する記述
(注)  上市量が一定量を超える場合に求められる追加の記述及び試験報告書
1製造事業者当たりの上市量*6 追加の記述及び試験報告書(EU指令67/548/EEC)
年間100 kg/合計500 kg超 附属書VIIB
年間1トン/合計5トン超 附属書VIIA
年間10トン/合計50トン超 附属書VIIIレベル1に基づく個別/すべての試験報告書
年間100トン/合計500トン超 附属書VIIIのレベル1に基づくすべての試験報告書(ある特定の試験・調査が不適当である、又は代わりの科学的試験・調査が好ましいことを証明する場合を除く)
年間1000トン/合計5000トン超 附属書VIIIレベル2に基づく個別/すべての試験報告書
*6  輸入の場合は、外国の1製造事業者当たりの量
8-3   以前の届出者のデータの利用及び脊椎動物試験の重複の回避
(1)   届出当局は、以下のいずれかの場合、届出者のデータを断念し、以前の届出者のデータを基礎にする:
(a)   新しい届出者が、当局が以前の届出者のデータを利用することに同意していることを、以前の届出者の利用証によって証明する場合
(b)   そのデータの保護期間(10年)が満了している場合
(2)   届出のために脊椎動物での試験を計画する者は、それらの動物試験に関して既にデータが存在するかどうか、当局に書面で照会しなければならない。当局が指定する、後続届出者が利用できるデータが存在する場合、初回届出者はそのデータの後続届出者による使用を許すことが必要。その場合、初回届出者はデータ使用の延引、補償の要求が可能。
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9.  届出の提出方法
届出及び通知の送り状は公用語の1つで書かれ、書面で提出されなければならない。届出又は通知のその他の文書は公用語の代わりに英語で書いてもよく、電子的データ媒体で提出することもできる。また、EUで使用される要約届出書(SNIF)を提出する。
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10.  届出の審査及び製造・輸入の開始
届出者等は、以下の日数が経過した場合に上市できる。
種類 日数
届出 下記以外 60 *7
以下の書類が提出された場合
(a)   その物質がEUで上市可能であることの証明
(b)   附属書VIIB又はVIIC(ポリマー以外の新規物質で上市量が1トン以下の場合)
30
通知 - 30 *7
*7  これらの日数が過ぎ、届出当局が意見を述べなかった場合に上市できる。ただし、当局がその届出又は通知の受理を指示した場合は、その時点で上市が可能。
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11.  その他
11-1  秘密保持
当局は、その秘密保持に保護に値する利益が存在するデータを、その公表に圧倒的な公共の利益が存在しない限り、秘密に取扱う。以下は、いかなる場合も秘密とみなされない。
1 商品名
2 届出義務者、通知義務者又は報告義務者の名称及び宛先
3 指令67/548/EECの附属書VIIA、VIIB、VIIC及びVIIDに基づく物理的-化学的性質
4 合法的な処分、可能な再利用及びその他の無害化のためのプロセス
5 毒性学的及び生態毒性学的な試験結果の要約
6 物質の純度及び分類に関係する不純物及び添加物の同一性
7 使用の際の予防措置及び事故の際の緊急措置に関する推奨
8 MSDSに含まれる情報
9 人へのばく露及び環境における存在を確認するのに適した分析法
11-2   届出当局への後続情報の提供
以下の場合、当局に遅滞なく文書での通報が必要。
1   8-1  1、2、3又は8-2  1~8に基づく記述が変化する場合。スイスの外の製造場所の変更は、同時に8-1(a)又は(b)に基づく記述の変更が報告される場合のみ。
2   スイス及びEEA内で合わせて上市される物質の量が閾値におそらく達した場合
3   スイス及びEEA内で合わせて上市される物質の量が、最後に報告された数量に対して倍増した、又は半減した場合
4   その製造事業者に、物質の人又は環境への影響に関する、新しい知見が存在する場合
5   製造事業者がその物質を新しい用途に上市する、又は物質が届出当局に知らせていない目的に使用されることが製造事業者に知れた場合
6   製造事業者が、指令67/548/EECの附属書VIIA、VIIB又はVIICの各No.1.3に基づく物質の組成を変更する場合
7   製造事業者が、その物質に関して、第19条に基づく技術的記述を超える試験報告書を作成する、又は作成させる場合
8   製造事業者が、第19条に基づく技術的記述を超える追加の試験報告書が入手できる場合
11-3  旧物質政令からの移行規定
旧物質政令に基づき既に届出されている新規物質は、2008年7月31日までに化学品政令第107条に基づき、軽減された要件で改めて届出されなければならない。
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