■開催日時:平成21年12月3日(木) 13時00分~16時00分
■開催場所:梅田スカイビルスペース36L
■出席者:(敬称略)
<スピーカー>
何本 仁 | 印刷インキ工業連合会技術委員会 委員長 |
村越 茂富 | (社)電子情報技術産業協会 関西支部 環境対策委員会 (パナソニック電工(株)) |
中村 智 | 大阪府環境農林水産部 環境管理室 環境保全課 主査 |
<学識経験者>
原科 幸彦 | 東京工業大学大学院総合理工学研究科教授 |
<市民>
有田 芳子 | 主婦連合会 環境部長 |
大沢 年一 | 日本生活協同組合連合会組織推進本部 環境事業推進室長 |
後藤 敏彦 | 環境監査研究会代表幹事 サステナビリティ・コミュニケーションネットワーク代表幹事 |
社会的責任投資フォーラム代表、サステナビリティ日本フォーラム代表理事 |
中下 裕子 | ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議事務局長 |
何本 仁 | コスモス法律事務所 弁護士 |
村田 幸雄 | (財)世界自然保護基金ジャパン シニア・オフィサー |
<産業界>
岩本 公宏 | (社)日本化学工業協会 広報部部長 |
瀬田 重敏 | (社)日本化学工業協会・広報委員会顧問 東京農工大学客員教授(大学院MOT) |
越智 仁 | 三菱ケミカルホールディングス 取締役執行役員 経営戦略室長 |
チーフサスティナビリティオフィサー 兼 三菱化学 執行役員 経営企画室長 |
西山 直宏 | 日本石鹸洗剤工業会 環境・安全専門委員会委員 |
花王株式会社 安全性評価研究所 第一研究室長(中谷吉隆代理) |
川口 清二 | (社)日本電機工業会 (社)電子情報技術産業協会 一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会 |
(社)ビジネス機械・情報システム産業協会、2009年事業所関連化学物質対策専門委員会委員長 |
富士通(株)環境本部 環境技術統括部 グリーンファクトリエンジニアリング部 プロジェクト課長 |
岩崎 雅彦 | (社)日本自動車工業会 |
日産自動車(株)環境・安全技術渉外部 環境マネージメントグループ主担(大場昇代理) |
大野 郁宏 | 日本チェーンストア協会 環境委員会委員 |
(株)西友 企業コミュニケーション部 環境企画グループマネージャー |
<行政>
川口 芳行 | 愛知県環境部環境活動推進課主幹(山本佳史代理) |
山本 順二 | 厚生労働省医薬食品局審査管理課化学物質安全対策室長(岸田修一代理) |
小栗 邦夫 | 農林水産省大臣官房審議官 |
實國 慎一 | 経済産業省製造産業局化学物質管理課化学物質安全室長(後藤芳一代理) |
原 徳壽 | 環境省総合環境政策局環境保健部長 |
(事務局)
早水 輝好 | 環境省総合環境政策局環境保健部環境安全課長 |
(欠席者)
崎田 裕子 | ジャーナリスト 環境カウンセラー NPO法人持続可能な社会をつくる元気ネット理事長 |
NPO法人新宿環境活動ネット代表理事 |
角田季美枝 | バルディーズ研究会 運営委員 |
北野 大 | 明治大学理工学部応用化学科教授 |
安井 至 | (独)製品評価技術基盤機構(NITE)理事長 |
■資料
○事務局が配布した資料
資料1 | 印刷インキに関する自主規制(NL規制)(何本さん発表資料) |
何本さん参考資料 | 「印刷インキに関する自主規制」(NL規制)の概要 |
資料2 | 化学物質情報の伝達について~電機・電子業界から見たグローバル規制対応~(村越さん発表資料) |
村越さん参考資料1 | パナソニックグループ エコアイディアレポート2009(抜粋) |
村越さん参考資料2 | 環境・社会報告書2009 三洋電機(抜粋) |
資料3 | 明治大学理工学部応用化学科教授 |
○事務局が配布した資料
参考資料1 | 化学物質と円卓会議について |
○円卓会議メンバーが配布した参考資料
原科さん参考資料1 | PRTR制度における届出排出量・移動量の経年変化の概要について |
原科さん参考資料2 | PRTRデータの開示請求件数について |
原科さん参考資料3 | 随想 |
原科さん参考資料4 | ニュースレター(International Association for Impact Assessment) |
■議事録:
1.開会
(事務局)定刻となりましたので、只今より「化学物質と環境円卓会議」を開会いたします。
私は本日の事務局を務めます環境省総合環境政策局環境保健部環境安全課の早水と申します。よろしくお願いいたします。
この円卓会議ですが、今回で24回目を迎えます。なるべく様々な地域で幅広い方々に円卓会議に御参加いただく機会を作り、化学物質に関するリスクコミュニケーションをより推進していこうということで、これまで愛知県、福島県、埼玉県、福岡県といった東京以外の地域でも開催しております。今回もこの考え方に沿いまして大阪で開催する運びとなりました。御尽力を賜りました関係者の皆様方に、改めて心より御礼申し上げます。
本日は原科さんに司会をお願いしておりますので、今後の進行につきましては原科さん、よろしくお願いいたします。
(原科)こんにちは。本日の司会進行をいたします原科と申します。ハラシナサチヒコと呼びます。イニシャルはS.Hです、Y.Hではないです。S.Hというと最近はステークホルダーがS.Hと略すことが多いので、ときどき自分のイニシャルと間違えてドキッとしますが、ステークホルダーのS.Hと同じS.Hです。
第24回の「化学物質と環境円卓会議」です。環境と円卓会議の間は中黒があったほうが分かりやすいですが、化学物質と環境に関する円卓会議です。今回、初めての大阪開催ということですので、この円卓会議の趣旨等につきまして、改めて事務局から御説明いただいたほうがよろしいかと思いますので、よろしくお願いいたします。
(事務局)それでは、私から議事次第の次にあります参考資料「化学物質と環境円卓会議」をもとに簡単に御説明いたします。こちらの絵にもありますように、この会議は3つのコンポーネントからなっております。まずインターネットや地域フォーラムなどによりまして、各界から意見・要望などを集約します。次に、この本体ですけれども、集約した意見・要望を踏まえ、本会議における対話を通じて、環境リスク低減に関する情報の共有、相互理解を深めます。そして3つ目として、その議論そのもの、あるいは、もし得られるようであれば、それを通して得た共通認識を市民、産業界、行政に発信していく、という考え方でセットされたものです。
裏側にまいります。そもそもの背景ですが、平成13年7月に「21世紀『環の国』づくり会議」というものがございまして、この報告書の中で行政、産業、国民の代表による協議の場を設けて、化学物質による環境リスク低減のために、国民参加による取組を促進することが望まれて、化学物質の環境リスクに関する情報を市民、産業、行政、学識経験者の間で共有し、相互理解を深めるために、平成13年に設置されたものです。
メンバーでございますが、次のページにございます、市民、産業、学識経験者、行政の4者で構成されております。今回、人事異動によりまして、電機・電子4団体の代表者が谷口さんから川口さんに。社団法人日本自動車工業会の代表者が三枝さから大場さんにそれぞれ交代されております。なお、この会議ではルールとして○○さんというお名前の呼び方をするということで進めております。
また、4ページにこれまでの開催状況を示しております。多くは東京でやっておりますが、先ほど御説明したとおり他の地域でも開催しております。
最後のページに参考として、「化学物質に関するリスクコミュニケーションに係る環境省の取組について」を添付しております。当省の取組としては、「情報の整備」、それから「場の提供」と「対話の推進」の3本柱で進めておりますけれども、この円卓会議は「場の提供」に当たるということです。私からの説明は以上です。
(原科)どうもありがとうございました。今、大変手短にお願いしましたので、より詳しくはホームページ等で御覧いただきたいと思いますが、ざっと趣旨はお分かりいただけたと思います。化学物質の環境リスクに関する情報を市民、産業、行政、学識経験者の間で共有し、相互理解を深める場を作ったということです。今回で24回目となりますので、東京で開催する場合には、かなり常連のような方もいらっしゃいます。段々リスクコミュニケーションの場が広がってきたのだと思います。今日もこの円卓会議の趣旨に沿いまして、活発に議論をお願いしたいと思います。
前回の会議では、「身近な化学物質」をテーマに環境省及び産業界における化学物質によるリスク削減の取組等について議論を行いました。今回も「身近な化学物質」をテーマにしまして、印刷インキ、電機・電子製品等に含まれる化学物質の安全性や業界、行政の取組について御紹介いただき、意見交換を行うこととしています。本日は、3名のゲストスピーカーの方々から情報提供を行っていただきます。
まず、印刷インキ工業連合会技術委員会委員長の何本仁さん、次に、社団法人電子情報技術産業協会関西支部環境対策委員会の村越茂富さん、そして、大阪府環境農林水産部環境管理室環境保全課主査の中村智さんです。
それぞれの方に質疑応答を5分程度はとりたいと思います。トータルで25分の時間配分をしておりますが、情報提供は20分弱でお願いして、できるだけ質疑応答の時間を取れるようにしたいと思います。よろしく御協力をお願いします。その後、15分間の休憩を挟みまして、メンバー間で意見交換をこの円卓の中で行っていただきます。その後、フロアからも御参加いただき、質問を出していただいて、そちらにも対応したいと思います。
それでは、議事に入ります前に、事務局から本日のメンバーの出席状況と資料の確認等をお願いいたします。
(事務局)議事次第の裏側に出席者名簿をつけておりますので、まず本日の御出席の方々について御紹介をさせていただきます。
ゲストは今御紹介があったお三方でございます。それから、市民の立場から、主婦連合会の有田芳子さん、日本生活協同組合連合会の大沢年一さん、環境監査研究会その他のご所属の後藤敏彦さん、ダイオキシン環境ホルモン対策国民会議から中下裕子さん、世界自然保護基金ジャパンの村田幸雄さん。
次に、産業界から、社団法人日本化学工業協会から岩本公宏さん、同じく瀬田重敏さん、三菱ケミカルホールディングスの越智仁さん、日本石鹸洗剤工業会から中谷さんの代理で西山直宏さん、日本電機工業会・電子情報技術産業協会から川口清二さん、日本自動車工業会から大場さんの代理で岩崎雅彦さん、日本チェーンストア協会から大野郁宏さん。
行政からは、愛知県環境部から山本さんの代理で川口芳行さん、厚生労働省から岸田さんの代理で山本順二さん、農林水産省から小栗邦夫さん、経済産業省から後藤さんの代理で實國慎一さん、環境省から原徳壽です。
そして、学識経験者ということで原科幸彦さんです。
なお、崎田裕子さん、角田季美枝さん、北野大さん、安井至さん、この4名の方は御欠席です。
次に、配布資料の確認をいたします。
議事次第の表側に資料一覧を載せてあります。先ほど御説明しました参考資料「化学物質と環境円卓会議」の次ですが、資料1「印刷インキに関する自主規制」は、パワーポイントのもの、その後に何本さんからの参考資料「印刷インキに関する自主規制の概要」があります。資料2が「化学物質情報の伝達について」で、村越さんの発表資料のパワーポイントです。村越さんの参考資料で2つ、「パナソニックグループエコアイディアレポート」と三洋電機の「環境・社会報告書」を付けております。それから、資料3が「大阪府化学物質管理制度について」で、中村さんの発表資料のパワーポイントです。さらに円卓会議メンバーの配布する参考資料で、原科さんより参考資料1「PRTR制度による届出排出量・移動量の経年変化の概要について」、参考資料2「PRTRデータの開示請求件数について」、参考資料3「随想 意思形成過程の情報公開」、それから参考資料4がIAIAのニュースレターの最初のページの裏表のコピーです。
なお最後に、傍聴の皆様には本日の円卓会議に関する質問用紙と感想を御記入いただくアンケート用紙をお配りしておりますが、これにつきましては後ほどまた御説明をいたします。私からは以上でございます。
(原科)どうもありがとうございました。それでは、早速議論に移りたいと思います。
今回の議題は、「身近な化学物質」でございます。まず3名のゲストスピーカーの方々から印刷インキの安全性における自主規制、電機・電子製品の化学物質情報の伝達、そして大阪府の取組について御発表いただいて、議論を展開していきたいと思います。
この3方の御発表の後に休憩に入りますが、フロアの皆さんの中で発表や今回のテーマに関わる御質問や御意見等のある方は、休憩の間に、お配りしました質問用紙に御記入いただき、御提出いただきたいと思います。休憩は15分間と短時間ですので、10分ほどで御記入いただき、早めに回収できるようお願いしたいと思います。
休憩後は、メンバー間の意見交換後に、フロアからいただいた御質問への対応を含めまして、意見交換をしたいと思っております。
それでは、まず始めに、印刷インキ工業連合会技術委員会委員長の何本さん、どうぞよろしくお願いいたします。
(何本)皆さん、こんにちは。印刷インキ工業連合会の何本と申します。今回、初めての参加で、いささか緊張しておりますが、どうぞよろしくお願いいたします。
私どもの印刷インキ工業会では、皆様方にお使いいただく――「皆様方にお使いいただく」というのは印刷会社の方々にお使いいただく――印刷インキの安全性をより高めることと印刷会社さんが印刷されたものが、いろいろな業界もしくは二次加工のところで包装材料や、書籍、マガジン、新聞、雑誌、お菓子の袋や洗剤の箱等の印刷物に使われる際に、より安全に、安心してお使いいただけるようにするということを念頭に取組を進めています。印刷インキに使う化学品の自主規制を「印刷インキに関する自主規制」と呼び、印刷インキに使うことは用途から考えて好ましくないであろうという化学品のリストを“ネガティブリスト”規制と呼んでおります。以降、「NL規制」と呼ばせていただきます。
◎印刷インキ工業連合会(1952 年~)
少しだけ印刷インキ連合会について御紹介申し上げます。
連合会結成は1952年で、既に60年の歴史を持っております。特に、私が担当しております技術委員会における活動であります、印刷インキというのはあまり馴染みがないかと思います。印刷インキと申しましても、皆様が日常的に使われる筆記用のインキですとか、スタンプのインキはこの業界には含まれておりません。あくまでも印刷業界でお使いいただける製品が印刷インキ工業会の対象製品となっております。そういった印刷インキを産・販売する上にで、いろいろな法令に関する知識を持って、適正に化学品を取り扱わなければなりません。大きな活動としては、印刷インキに関する法令知識という、450ページになる本を、4年に1回、会員の方々に法令を周知していただくために私どもが技術委員会として作成し、販売させていただいております。
技術委員会の中には3つの専門委員会を持っております。
中でも食品衛生専門委員会が一番古く、工業連合会が制定された折に、印刷インキに使用される化学品の自主規制を始めようということをこの食品衛生専門委員会で行っております。
2つ目に、環境専門委員会がございます。印刷インキを生産、使用する過程、また廃棄する場合に、環境の負荷物質を低減させようという取組と同時に、業界における調査活動をしております。その報告は、ホームページで御覧いただけます。各年のトレンドなどがその中に載っております。
環境に関しては、最近は持続可能性という観点から、印刷インキの原材料もできるだけ環境にやさしい原材料ということで、今年の2月には「植物油インキ」マークという、植物油インキを利用したインキの認定制度を工業会で作り、これの運用に努めております。
3つ目は、製品安全専門委員会です。印刷インキは化学物質の塊ですので、使用していた方々への安全な取扱いの情報提供ではMSDSの作成・配付や、GHS(Globally Harmonized System of Classification and Labeling of Chemicals)ラベルの指導を専門委員会で会員会社の方々に教宣活動を行っております。
◎印刷インキに関する自主規制(NL規制) とは
印刷インキに関する自主規制、NL規制のかなり歴史は古く、1973年(昭和48年) に当時の厚生省の御指導を仰ぎながら、当時は食品包装材料用印刷インキに対して安全性を高めるために自主規制を制定いたしました。既に40年ほど前になります。当初規制していた化学物質の数は、重金属類を中心として約60種のものでしたが、毎年それを見直し、逐次、追加して、2005年の段階で約130種に増加しました。
ところが当時、いろいろな環境問題、化学品の規制問題に対していろいろな業界で規制が強くなりました。我々としてもより安全性を高めたインキを供給するという理念のもとに、今までは食品の包装材料だけに対象を絞っていたわけですが、私ども自身が印刷インキを作る工程で、作業者が浴びる労働環境、また印刷インキを使っていただく印刷会社の方が印刷インキから受けるであろう影響への配慮、それから印刷インキを実際に使われた製品がいろいろな業界でいろいろな用途に使われますが、それぞれの用途に適合するいろいろな環境問題や、安全衛生問題を幅広く捉えた自主規制に拡張しようという議論になりました。2006年、今から3年前ですが、新たなNL規制を制定いたしました。したがって、昭和48年来ずっと続いていた旧NL規制はその時点で廃止して、2006年に新たなNL規制を印刷インキに関する自主規制という名前で制定しました。規制の対象になった化学物質は現在530物質・類に拡張されております。これには、各会員会社さんにかなりの努力をいただきまして、私どもはその規制対象になる物質の使用状況等々を細かく会員会社さんに尋ね、それが代替可能かどうかの検討も踏まえてこの530物質・類に決めたわけです。残念ながら現在も使用している会社もあり、まだ完全に代替できている段階には至っておりませんが、その数は非常にわずかであろうと私どもは思っております。そういった会社では、今現在でも私どもが規制対象にした物質の使用削減に鋭意取り組んでいただいております。
◎2.新NL規制のポイント
ポイントは、食品包装材料用印刷インキだけでなく、印刷インキ全般への拡大です。また、NL規制対象物質のリストも充実を図ろうということで、130物質から500物質強にしました。また、会員会社さんにより正しく管理していただくために、リストの中にはCASナンバーを記載したり、いろいろな化学品は呼び名が違いますので別名の記載を行ったり、それがどういった関係省令や政令に関係しているのかといった事項も併記いたしまして、より理解を深めていただける冊子にしております。
こういう冊子を工業会で印刷いたしまして、印刷インキを生産する会員会社のみならず、印刷インキをお使いいただく企業様にも我々の活動を御理解いただくような活動をしております。
◎8.NL規制対象物質の選定基準(1.4 )
「どういう化学物質を選定しているのですか」、という質問があると思います。私どものNL規制は選定基準の3段階を構えております。
選定基準1は、日本の化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)、安衛法(労働安全衛生法)等の法令が規定する物質及び発がん性物質。これは選定基準とは書いてありますが、選定する余地はございません。ここに載ったら即NL規制の対象物質となります。
選定基準2は、海外の法令ですとか、安衛法等が規定する物質及び有害化学物質の中から規制物質を技術委員会として一定の選定基準を設けて討議し、また会員会社での使用状況の把握も行った後に、技術委員会では「これはNLに加えましょう」と技術委員会が選定している基準です。
選定基準3は、いろいろな法規制や業界規制には該当はしないのですが、印刷インキとして原料、材料として使用が好ましくないと工業連合会が判断した物質を私ども独自の活動として討議して決めております。
こういった3段階の選定をしております。
◎(7)発がん性物質
発がん性物質については、IARCという国際がん研究機関がグループ1、これはヒトに対して発がん性があるというカテゴリーになっているもの、また欧州連合(EU)がカテゴリー1としているもの、日本では日本産業衛生学会が第1群として認定しているもの、これは選定の余地なく、すべてNLに含まれると決めております。
それから、人に対する発がん性があるのではないかという疑いが高い物質は、グループ2Aですとか、カテゴリー2という、その次に来るカテゴリーになっておりますが、こういった物質も私どもとして選定基準に入れておりまして、2Aとか2とか2群Aについては、3機関のグループ分け、カテゴリーを見ながら、複数の機関にグループ2があるものについては1と同様にNL規制に含めております。
◎17.NL規制の改訂(1.6.5)
改訂ですが、技術委員会の中にあります食品衛生専門委員会の中で、毎年改訂、見直しを行っております。毎年、発行すれば良いのですが、経費的にもなかなか難しいので、毎年、変更になったものはホームページ上で変更になった部分だけ公開するようにしております。印刷インキ工業連合会のホームページを覗いていただきますと、それが載っておりますので、どうぞ参考にしてください。
最後に申し上げておきますが、印刷インキは、私ども、安全に安心して御使用いただける、また印刷物等が皆様のお手元に渡ったときに、それが有害ではないように配慮はいたしておりますが、食べ物ではございません。食品衛生法で、「印刷インキは食品に直接触れてはならない」という規定がございます。私どもはそれを印刷会社様とともに強く徹底を図るように努めております。例えば植物油インキのマークが付いていたら、これは食べても大丈夫ではないかという誤解をされることもあるようで、実際そのようなお問い合わせがございました。しかしながら、印刷インキというのは食べ物ではなくて、印刷インキの上に食べ物を乗せて食べるとか、それで直接食料を包装するとかということはできません。これはこの場で申させていただきます。
(原科)どうもありがとうございました。十分にいろいろ注意しておられるということですが、そもそも食品ではございませんので、取扱いには御注意いただきたいと思います。
早速でございますが、今の御発表に関しまして、メンバーの皆さんから何本さんに質問等ございましたら、お願いいたします。村田さん、どうぞ。
(村田)確認させていただきたいのですが、印刷インキ工業会さんが扱っている範囲に、衣類にアニメのキャラクターなどをプリントするようなインキは入っているのでしょうか。
(何本)おそらく入っております。というのは、会員会社の方々が細かく、どのような分類で全部の範疇を明らかにされているわけではございませんが、プリントされるようなものは、どのような形式のものか、今ちょっと頭に浮かびませんが、オフセット印刷されて、染料の捺染転写とか、そういった範疇は昔からやられておりますから、私どもの工業会の会員の皆様がお作りになられていると思います。
(村田)会員の方が作っているものは、これに準拠した対応をしていると考えてよろしいのですか。
(何本)はい。NLマークが、「準拠している」とラベルに明記しているものが対象になっています。会員会社外のインキメーカーの方もございます。私どもの統計では印刷インキ工業連合会がカバーしている印刷インキの量は、出荷ベースで申しまして日本国内で販売・生産されている印刷インキの95%くらいはカバーできています。ただ、その中でも特殊インキですとか、特に印刷と申しますとIT関連の製品にも印刷という工程で使われるものがございまして、一般的に印刷インキに関する自主規制では対応できない用途もあるようですので、すべてがこのNLマークが貼られているということではございません。
(村田)分かりました、ありがとうございます。
(原科)ほかに。では、大沢さん、どうぞ。
(大そこは各社の責任でうまく回っていれば良いのですが、それだけで大丈夫かと心配になるところがあるのですけれども、いかがでしょうか。
(何本)それは技術委員会でもよく論議はされるのですが、私どもとしてその検証がなかなかできにくく、多岐にわたる化学物質の530物質を分析することも技術論的には難しいです。従いまして、会員会社の良心に基づいた、誠意に基づいた管理を行っていただくことにさせていただいております。分析して、「このインキは該当のマークが付いているけれども、おかしい」ということはなかなか難しいです。
(原科)それでは、あとお二人、順番にいきます。中下さんと大野さん。
(中下)大変意欲的なお取組で感心いたしております。530物質がNL物質ということでしたが、全体で何物質くらいがこの印刷インキで使われているのでしょうか。分母といいますか。
(何本)私どもの言う原材料数で言うと数千ですが、ただ化学物質類となりますと、数万になると思います。技術委員がいろいろな法規制を毎週のようにモニタリングしているわけですが、非常に労力がかかりますので、今年、来年ごろには外部のデータベースを導入して、漏れないスキャンができないかと検討しているところです。
(中下)もう一つ、選定基準の中にPRTR法の対象物質が挙がっていなかったようですが、これは検討されておられないのですか。
(何本)これは使用してはならない物質には入れておりません。PRTRの各会員会社の状況を集計して、毎年、減少させていきましょうという取組は環境専門委員会でやっておりまして、NLの中には使ってはならない物質として入れておりません。
(中下)そうですか。もう一つ、シックスクール等、化学物質に過敏なお子さんたちがおられて、学校の教科書等の印刷物によって反応してしまうというお話をよく聞くのですが、そういうものに対する対策とか、過敏な方々に対して、このインキは大丈夫ですよ、というような対策のお取組はないのでしょうか。
(何本)例えば、シックハウスですとホルムアルデヒドとかですか。
(中下)ホルムアルデヒドだけではないですが。
(何本)例えば、芳香族系の溶剤ですとかスチレンですとか、化学物質が悪いであろうといわれるものは、いろいろな学術書等から把握しておりまして、そのものが用途によって使われないような取組は、私どもというよりも私どもの先の業界さんがより厳しく見ておられます。例えば、スチレンフリー、スチレンを完全にゼロというわけにはいかないのでしょうけれども、何ppm以下、何ppb以下という規制をその業界で求められますので、個別の企業がそれに合致するように自主的な取組をされておられます。
工業会としては、まだシックハウスですとか、教科書のいわゆるアレルギー、気持ちが悪くなるという、自主規制までには至っておりません。
(原科)予定を少しオーバーしましたが、簡単にお願いいたします。
(大野)先ほど出荷ベースで95%くらいカバーされているというお話だったのですが、私どもの業界、レジ袋の印刷や何かを結構海外でやったりするのですが、海外等も含めると日本国内で流通しているものの大体どのくらいに当たるのでしょうか。
(何本)印刷物でございますか。
(大野)はい。
(何本)輸出入統計で印刷物のものが分かるのでしょうけれども、印刷物としての統計を持っておりません。先ほど言いました95%というのは、国内で販売製造されている印刷インキの生産出荷量ベースでのお話でして、輸入されるレジ袋等の印刷物の統計までには踏み込めておりません。
(大野)海外の工場、例えば日本の海外工場や何かは同じ姿勢で準拠してやっていらっしゃるという形ですか。
(何本)海外に工場を有する会員会社がおられますけれども、海外の工場といっても別法人ですので、会員登録をされない限り、NL準拠マークは使用いただけません。あくまでも日本で印刷インキ工業連合会に加入していただいている会員会社のみの活動です。
(原科)ありがとうございました。本日は、できたら自動車関係の方にもと考えておりましたが、今回はお願いできませんでした。、それでも時間が厳しい状況ですので、どうぞよろしく御協力願います。
一つだけ簡単な確認ですが、資料5枚目で10番、選定基準2とございますが、海外の法令で(2)で「上市と使用の制限」、この上市というのは何でしょうか。
(何本)オン・ザ・マーケットです。
(原科)オン・ザ・マーケットを上市と言うのですか。市場に出すという意味ですね。どうもありがとうございました。
それでは、次の御発表をお願いいたします。社団法人電子情報技術産業協会関西支部
環境対策委員会、村越さんにお願いいたします。
(村越)今紹介いただきました村越です。今回、関西にありますJEITAの環境対策委員会を通してお話をいただいておりますので、私の立場といたしましては関西にある電機・電子産業界での環境に対する法規制の取組を御紹介したいという趣旨です。
内容を大きく3つくらいに分けています。最初にお話ししたいのは背景についてです。ここでグローバルということがありますので、その辺をちょっとお話しさせていただいて、その後、その中で課題がどのようなものがあるかを、我々サイドで認識している中身を紹介させていただきたいと思います。その中で、ではそれに対してどのようなことをしているかということで、今日の多少メイン的な話になるのですが、JAMPという、アーティクルマネジメント推進協議会というものがあるのですが、こちらの紹介をさせていただこうと思います。最後に、まとめということで話を進めたいと思います。
◎グローバル規制と電機・ 電子業界
まずグローバルの規制と電機・電子業界ですが、従来、化学物質の情報管理は、いわゆる化学業界が主として把握されていて、どちらかというと作業安全を中心に捉えられてきました。そのことは、別の言い方をすれば、原材料以外のものは対象外だったということがあります。それから、安全性の評価は、一部例外もあるでしょうが、行政側の責任で最終的には判断されてきています。また、既存化学物質の再評価がそれほど進んでいなかったという背景がありました。
このような状況の中2007年に、ヨーロッパでREACHが始まりました。化学物質の規制ですが、これについては、我々は日本におりますが、我々の輸出先に当然欧州はありますので、こういう関係からいろいろな問題が取り上げられてきました。
3つほど下に書いてあるのですが、特に我々が大事な点だと思っておりますのは、原材料以外のアーティクルというもの、これに対する化学物質の規制が出てまいりました。アーティクルについてはまた後で触れます。
その他、上の内容については若干書いております。
◎物質情報伝達の課題
化学物質の情報伝達の課題で簡単な絵を切り貼りしておりますが、左側のほうが「川上」という位置付けになります。いわゆる業界の中で一番川上の方から全体を見ていった場合、川上、川中、川下ということで、3つくらいに分かれるのではないかと考えております。「川中」というのは、いわゆる部品等を作っておられるところです。そして、皆さんに身近な化学物質で直接皆さんの目に触れる、手に触れる、そういう意味でいいますと「川下」に当たるところ、ここが完成品の企業ということになります。
“アーティクル”という言葉は、ヨーロッパのREACH の規制の中で使われている言葉なのですが、「アーティクルってなんだ?」ということになりますと、ほとんどの最終製品に対して“アーティクル”という呼び方をしております。デジタルオーディオのものですとか、テレビとか、パソコンなど、最終の製品として皆さんの身近にあると思うのですが、これらに対して“アーティクル”という呼び方をしています。そして、これに対する規制が非常に問題視されるということになります。
「川中」と私どもが呼んでおりますところは、最終製品ではないのですが、いわゆる原材料のところから材料を持ってきて、それを加工して形を作って、例えばパソコン等の中に電子部品が載ったP板といわれるものがあると思うのですが、このようなものをイメージしています。それから、ICチップでありますとか、こういうもの。それから、当然、金属のネジを主に扱っていて、最終の業界のところに提供する立場のところ、ここを「川中」と呼んでいるのですが、この辺が、従来は最終のお客さん、皆さんのところに行く前のところで、労働安全の視点でとかく見てこられたということがあります。「川上」の企業から情報が適切に伝達される仕組みが、従来、この辺(川中)まではあったのですが、一度(アーティクルという)形になってしまった後の情報の伝達があまりされていなかったということがあります。
さらに問題なのは、川中で何が起こるかといいますと、いわゆる化学材料、薬品とかをイメージしてもらえばいいのですが、これが何らかの化学変化を起こしてここの段階で固まってしまう例が多いということです。ここから先は基本的には化学変化しないということで、どちらかというとここ(川中)が一番大事なのです。いわゆる集めてきたいろいろな材料を化学変化させて、危険なものも含めてどんな物質が入っているのかを管理しなければいけない重要なポジションにあるのですが、それを推進するには経験が足りないとか、いろいろな問題がございました。専門家の養成もこの辺が特に大事なところです。
◎アーティクルマネジメント推進協議会(JAMP)の設立
JAMPの話をしたいと思います。
JAMPでは、今の課題から出てくるものとして、情報伝達の仕組みをきちんとしなければいけないことを意識しておりまして、ここに書いたような活動をやっております。
簡単に言いますと、情報伝達の中身というのは、最終、パソコンでも良いのですが、最終品が皆さんの手元に行ったとき、何という有害物質がどこにどのくらい入っているのかをきっちり伝えたいということです。JAMPという組織では、ガイドラインの制定をしております。それから、伝達様式の制定。伝達様式では、情報をどういう基準に基づいて書きましょうということであり、その書き方がしっかりしていないと、どういう基準で書いたのか分からず、濃度の問題や定義の問題がずれてしまいます。そういう意味で、様式を決めております。
どんな物質が規制対象になっているかをはっきりしなければ、何を管理して良いか分からないということになりますので、法律で決まっているもの、プラスアルファですけれども、リストを作って業界の中で回していこうという活動をしております。
もう一つは、仕組みの普及で、ITインフラの問題、これは後でちょっと触れますが、これをやっていくこと、それから、外国で物を作ったり、特に部品関係を作ったりしているわけですが、そういうところにも回していけるのかという点で、意味があります。これにつきましては、今のところアジア優先で私ども、JAMPという中で推進しております。特に、中国、タイ、マレーシア等もやっているのですが、そういうところできちんと我々、日本のメーカーが考えているやり方で進むようなことをしたいということをしています。
◎JAMP紹介
JAMPの若干の紹介をしたいのですが、JAMPのウェブサイトはこんなところで皆さん御覧になれます。今、会員数が358ございますけれども、川上の企業が化学材料を作っているということです。それから、川中の企業ということで、先ほどの部品―デバイスという言い方もされると思いますが、こういうところ。それから最終の製品です。車も実はアーティクルなのです。たくさんのものが使われていますけれども、塊ではありますが、川下の企業として捉えています。
ここに書いておりますのは、一番左側はいわゆる化学物質といわれるものです。成形材、プラスチックの基になりますペレットというものがありますが、これと、中に色を付けるとか、安定させるために付けるものということで添加剤がございます。それから、塗装するためのペイント。先ほどの印刷インキだけではないのですが、ペイント材料です。次の絵はパソコンのキーボードのキーで、プラスチックを作るためには、成形工程を経てプラスチックになります。その上に文字があるものを白だとかで塗装する場合がございます。すべてがそうではないのですが、塗装する場合があり、それを組み立てて、最終完成品になります。このような流れの中で、産業界により広くJAMPの中に入っていただいて活動しようということでやっております。
◎業界横断活動の重要性
JAMPは、業界横断でやることが非常に大きな意味を持っております。従来、業界の事情で化学物質の情報を渡すという仕組みはあったのですが、いろいろな形でそれぞれ我が道を行くというか、悪く言えば勝手な方式で流していましたので、いろいろな問題がございました。要求の仕方もバラバラで、同じようなことを言っているのにA社の様式とB社の様式が違うとか、特に「川中」と言われるところで問題が起きておりました。そこで、JAMPの中でこういうことを標準化し、より効率化していくことが結局、日本の競争力維持等、いろいろなことに繋がっていくのだと考え、最終的には、有害化学物質のリスクを最小化したいということで、横断の活動を進めております。
◎川中への啓発と課題
特に川中のところに啓発活動をしていかなければいけません。化学メーカー、上流のメーカー、それから完成品のメーカーには、大手もございますし、事例的なものがたくさん得られるところなのですが、部品を作っているところは、わりと小規模なところが多いことや、商社を経由して、とにかくものを集めて組み立ててと、「その中に何が入っているのか」と聞かれた場合、非常に答えにくい状況があると思います。そういう点から、化学物質の管理はこの辺をテコ入れしていかなければいけないという意識がございますので、JAMPの中では中小企業支援ということも、当然、これは環境省さんや行政さんの協力を得ながらでございますが、やっていくということを考えております。
◎グローバルな展開の必要性
それから、グローバルの展開ということが必要と考えております。これは例ですが、特に私ども電機・電子業界では、いろいろな部品を海外で作っております。例えば、アジアでたくさんの部品が作られるということがあるのですが、アジアで作ったものを日本に持ってきて最終組み立てをし、あるいはそこで性能確認をした最終製品がヨーロッパに行ったり、あるいは北米のほうに行ったりするという状況が当然あるわけです。このときに情報がきちんと伝わっていれば、欧州でも、我々の送った情報を正しく理解していただいて、それをうまく活用してリサイクルということにも当然なります。ところが、その辺がきっちりしていないと、今問題になっている電子ゴミになるというケースも出てくると思います。
そういう意味では、情報伝達の仕組みそのものをグローバルに考えていかなければいけないと考えております。
◎製品ライフサイクルと化学物質リスクマネジメント
製品のライフサイクルと今回のテーマである化学物質の管理という点でリスクマネジメントを考えた場合、「労働安全」という視点は従来からありました。現場でいろいろなことが起こり得る、特に大きな事故等が起こり得るので、こういう点の注意、それから、一般の家庭であっても、塗料を使うということになれば化学物質を直接扱っているという場面がございます。
その次に、製品になってしまったものについても、やはりこの製品にどんな物質が使われているか、例えば最終製品の表に塗装ということもあるでしょうし、成形品の中に練り込んだような形で使われていることもあります。あるいは、そういうものが熱を使う器具であるとき、熱を加えている時に何かが出てくるのではないかということもあります。ですから、当然、製品に使われている物質、そして使い方によってどんな影響が出るかについて、ユーザーの方は知りたいと思うわけです。そういうことをきちんと伝えていかなければいけないというのが2番目の「使用時の安全」ということになるのではないかと思います。
それから、最終的なステージとしましては、「廃棄時の安全」もあると思います。ブルドーザーでゴミをかき集めていくときには、なかなか分別等されていない状況があると思うのです。これは、廃棄時に適切な処理ができないということになります。当然、リサイクルもきちんと思うようにはできないと思います。ですから、こういう段階で前もって分別ができていたり、リサイクルが効果的にできるためには、情報の伝達が非常に大事ではないかと考えているわけでございます。
◎JAMPを通じた取組の方向性まとめ
本日の私の伝えたいことというか、まとめなのですが、私どもは業界の中でこういうことをしています。日本の製造者がこれからも国際的な競争力をきちんと持っていく、というためにもお役立ちをしていかなければいけないわけです。それには3つほど大事な点があると思っております。
有害な物質の情報がサプライチェーンを適切かつグローバルに伝達されていくこと、これを目指していかなければいけない。そのための活動をしていこうということ。
それから、これからは単純に「この物質が危ない」と言うだけではなくて、リスクマネジメント、それがどの程度のばく露量を持って影響してくるのかといったことです。これは、一つはREACHが始まったときに特に言われるようになったことでありますが、リスクマネジメントという考え方で押さえていこうということ。
3つ目は、いろいろな利害関係者について。先ほど“ステークホルダー”という言葉が出ましたけれども、たくさんのところと関係してきますので、これらとのコミュニケーションをもっととっていかなければいけない。
それから、「ボトルネック」と書きましたのは、「川中というところに今は弱さがある」というところですから、情報が途中で途切れないようにするためには、弱いところをきちんと業界全体としてフォローされていくような活動を考えていかなければいけない。そのように進めていこうと思っております。私の説明は以上です。
(原科)村越さん、どうもありがとうございました。それでは、質問をお願いいたします。後藤さんからどうぞ。
(後藤)どうもありがとうございました。電子・電機業界の取組は前から大変敬意を表したい。すばらしい取組をしておられるのですが、この場合、常に問題になるのが、皆さん、一生懸命取り組んでおられるのですけれども、上流からの情報の信頼性をどうやって確保するのか。先ほどもありましたけれども、ここが一番厳しいと思うのですね。
例えば、食品といってもいろいろありますが、リンゴならリンゴの栽培から消費者に行くまで、農薬とか大体形が見えるので、ある程度分かる。でも、工業製品の場合には、原材料から皆様方に入ってくるまでに幾つかのプロセスを経てきておりますし、MSDSが信頼をおけるのかどうかはちょっと置いておきまして、そんな簡単なものではないわけですね。この辺をどう確保していくかというのが大きな課題と思うのですが、その辺についてどう考えておられるかを教えてください。
(村越)今のお話は、私どものJAMPの中で「情報をどうやって伝達するか」というグループがございますので、その中で話し合われたことを紹介しようと思います。情報を伝えるところが一番上流のところで大きな化学メーカーだとすると、おそらく問題ないだろうと。ところが、実際は鉱山から何か掘り起こした後、精製過程をやっている小さなメーカーが当然ある。そういうところについては、基本的に川下から支援するというのはおかしいのですが、できるだけ援助することによって、きちんとしたデータが出てくるようにしたい。これは口で言うのは簡単ですが、やっていこうということ。特に議論の中では、中国ですとか、あちらのほうで零細なところできっちり上流を追えないところについては、大手が中心になると思うのですけれども、啓発活動から始めるということをやっていく。
それから、今JAMPの中では、海外の行政、特に私どもが関わったのはマレーシア、タイですが、現地にそういう化学業界や電機業界の産業界があるので、そういうところと一緒になって、「日本でこういう良いところをやっているから、おたくの国でも零細なところから情報が出てくるようにしましょう」という活動をスタートしております。ただ、それがいつ実を結ぶかというのは難しいのです。今、我々が直接やっているのは、情報伝達を誰が書いても同じになるように様式をきちんとしよう、ということです。それを進めながら、草の根ではないですけれども、情報がきちんと出てくるような手当てを川下からしていこうと思っています。
(後藤)今、様式と言われたのは、昔、39物質か何か始められた、その様式ですか。
(村越)今、私が申し上げているのは、あの中で、MSDSの他にMSDSプラスというものを、様式を決めて、これについて皆が同じような基準で書けるようにしようということを進めています。
(原科)有田さん、どうぞ。
(有田)お話、ありがとうございました。今JAMPの会員数が358ですが、最終的にはどれくらいの数を目指していらっしゃるのですか。食品の関係よりも工業製品の方が、成分等がどういうものかがはっきりしていると思っていますので、私は信頼ができると思っています。そういう中でこの会員数が少ないような気がします。どれくらいの会員数を目指していらっしゃるのですか。
(村越)数については、私は何かを言う立場にないというか、その辺あまり詳しくないのですが、少ないということはおっしゃる通りです。私、個人的にもこの倍くらいにならなければいけないかと思っています。ただ、この辺はJAMPの組織としては、別の活動で、今、目論見書を作ったりして、取り組んでいると思います。
(原科)JAMPは、スタートはいつからですか。
(村越)2006年です。
(原科)始まってまだそんなに時間がたっていないので、これからどんどん増える可能性はあるわけですね。
(村越)はい。特に、中小の方にもっと入っていただかなければいけないというのが課題だと思っています。そういう意味では、JAMPの名前をもっと一般的に皆さんが認知していただくような活動も必要かと思っています。
(原科)瀬田さん、どうぞ。
(瀬田)このJAMPの活動の広がり、それから関わっている方々の問題意識が身近に伝わってくるようなプレゼンテーションで、どうもありがとうございます。
6ページですが、この絵は見れば見るほど、なかなか味のある絵だと思っているのですが、この中から3つほど質問をさせていただきます。
1つは、「バラバラの要求のしかたが混乱を招いた」とありますが、確かに会社によって様式が違うということはいろいろな業界であることで、我々自身ももとの仕事では大変それを悩んだこともございます。しかしながら、ものの評価の方法自身が会社の実力になりますし、時代を先取りするというのはそのときの会社の考え方があって、この2つはなかなか同化しにくいという点があると思うのです。そういうものを標準化していくときに、どうしても時代に一歩ずつ遅れてしまうことにならないか、これが一つ心配な点です。
それから、2つ目は、「要件」のところに「日本の競争力の確保」云々とございますが、これは対応の厳しさということで、今のJAMPの活動は世界の中でどういうポジションにあるのか。つまり、進んでいるのか、遅れているのか、あるいはこれからなのか。日本のJAMPをモデルにして世界をリードできるのか、そこを教えていただきたいと思っています。
3つ目が、最後の11ページである程度触れられたので半分は了解したわけですけれども、「化学物質によるリスクを最小化する」ということが最終目的になっており、それを伝えることが大きな課題であるということも、村越さんはおっしゃったと思うのです。その時に会員企業である業界に伝える、あるいはそれのサプライチェーンに伝え、それからそれのユーザー産業、川下のさらにまた川下、エンドユーザーに伝えるという方法があります。もう一つは、本当のエンドユーザーである、実際に製品を使用する一般市民に対して、それぞれ情報の伝達を行うこと、当然これはリスクコミュニケーションになるわけです。そのリスクコミュニケーションという認識をどこまでこのJAMPの活動の中に入れておられるか、この3つ、お聞きしたいと思います。
(村越)1つ目の私どもJAMPの中で各社がバラバラということについては、もう御存じかもしれませんけれども、RoHSという規制があった時に、各社バラバラにやっていました。その時に一番問題になったのは、バラバラにやっているから、発信する側が非常に工数をとられてしまって、実際には、回らない、つまり、情報が出てこなくなってしまうということでアドバイスしました。それに対して、JAMPが新しく活動を始める時には、「皆さん、バラバラなものを出すのはやめましょう。情報を出す時は基本的にJAMPの様式で出しましょう。細かい質問があって書き方とかが出ているときには、共通の書き物をベースにして、答え方も一緒にしましょう」、こういうような努力を一応したつもりです。ただ、これが完全にまだ徹底できているかというのは別ですが、そのような見方で進めました。これが1つ目です。
それから、2つ目の日本のポジショニングですが、情報伝達については、国際標準というか、こういうものの動きが当然ございます。一番近いところでは、IEC のTC111の動きがございまして、ここでJAMPは、JAMPの加盟企業の立場として参加させていただくのですが、そこで我々の考え方を標準化の中に取り込んでいただくように活動しようと、既に始めております。
国際規格というのはかなり時間のかかる問題です。実際、運用上はもっと他にないのかということで言えば、アジアの国は部品材料を供給するという立場で我々の仲間になっていただかなければいけないので、こちらにどんどんJAMPが入り込んでいます。これはヨーロッパの方から全然影響がないわけではないのですが、大きな動きとしては日本が最初に、アジアの国々に「やりましょう」ということで入って行っていることと理解しています。私が日系企業の集まりにしか出ていないので、多少ずれがあるかもしれませんが。
そのほかに標準化ということで言えば、ヨーロッパもアメリカも動きがありますが、私の知る限りで言えば、割りと産業界ベースでやっております。ただ、グローバル全体での取組はまだ弱いと思っております。ありがたいことに、私どものJAMPの活動は、経済産業省さんも積極的に知っていただいて、特にジェトロさん等の支援を含んだ形でアジアの国々、行政側にも動いていただいているので大変助かっていると理解しています。
最後のお話は、市民へのリスクコミュニケーションですが、今、REACHというヨーロッパの規制の中で我々が考えておりますのは、REACH の規制の中で一般のユーザーの方が、例えばテレビを買ったユーザーの方が「この中には有害だと言われているこの物質が入っているのか、入っていないのか」と聞かれたら45日以内で答えなければいけないというのがございますので、我々業界の中では、それに答えられるだけのデータを持っておこうという活動をしております。ですから、直接的には、日本でそれが起こるかどうか分かりませんが、ヨーロッパの場合には、もうしばらくして法律がエフェクティブになった状態で、45日以内にそれが答えられる、そのためには営業所のところに品番ごとに何が入っているとか、入っていないという情報を渡す、このようなことを一部進めております。ただ、実際問題は非常に難しく、100%できているわけではございません。できる範囲でという部分が若干ありますが、例えばそういうものが入っているテレビがあるのか、洗濯機があるのかとかいうレベルでは、全然答えられないということではないと思います。これはヨーロッパのメーカーと比べても、日系メーカーが欧州に出しているものに対して特に遅いということはないと思っています。以上でよろしいでしょうか。
(原科)どうもありがとうございました。質疑応答の時間をオーバーしましたので、この辺で切り上げさせていただきます。どうもありがとうございました。
それでは、3番目でございます。最後に大阪府環境農林水産部環境管理室環境保全課主査の中村さん、よろしくお願いいたします。
◎(現行管理制度の制定前) 大阪府における化学物質対策(1)
こういった国の法律体系とともに、大阪府でも以前から同様の取組がなされておりまして、平成6年11月には「大阪府生活環境の保全等に関する条例」ができまして、その中で規制的な措置をとっております。
大阪府で独自に化学物質を設定し、その毒性や発がん性を考慮した上で、規制的手法で対応しなければいけないと考えられる22物質につきましては、大気中への排出抑制を目的に工場、事業所に対して規制を行ってまいりました。
また、下に「炭化水素類」と書いていますが、大防法に先行した取組ということで、光化学オキシダントや浮遊粒子状物質の発生抑制をするために、炭化水素類、今で言うVOC(揮発性有機化合物)の規制も行ってまいりました。これが規制的措置です。
◎VOCの届出
また、府の管理制度の特徴でありますVOCの届出についてです。御存じのとおり、VOCは有害性だけでなく、光化学オキシダントや浮遊粒子状物質の原因物質という一面も持っていますので、VOC対策と併せて届出を課すということとしております。
なお、VOCにつきましては、他の物質と異なりまして、総量として年間の取扱量が1トン以上の場合に届出をお出しいただくことになっています。大阪府域では、特に多種のVOCを取り扱う金属製品製造業や出版印刷関連産業の中小の事業所がかなり多く、個々のVOCで見ると1トンには満たないのですけれども、トータルで見ると1トンを超えるところが多いことから、このような届出制度としております。
このことによって、VOCの自主的管理や削減状況を届出時から把握することが可能になり、VOC排出量等の「見える化」が可能になります。
◎化学物質管理計画書の届出
次に、管理計画書の届出についてですが、届出の対象規模は常時使用される従業員が50人以上の事業所を府内に持つ事業者ということにしておりまして、まずは、制度に即対応できるであろうと考えた一定規模以上の事業者に絞らせていただいております。
届出の内容は2部構成になっておりまして、1つは、化学物質の管理体制について、もう1つは緊急事態に対処するための計画となっております。この計画書というのはISO 14001等の環境マネジメントシステムの化学物質管理対応版と言えるようなものでして、事業者が化学物質の適正管理を自主的に行う上で必要と考えられる規定を事業者自らが作成していただくものになっております。
(原科)どうもありがとうございました。それでは、早速、メンバーの方から御質問をお願いいたします。有田さん、どうぞ。
(有田)届出事業者数は増えているのですか。排出量が下がっても、例えば景気が悪くてつぶれてしまったとか、そういうことは関係ないのですか?
(中村)PRTRの届出につきましては、大阪府域で2,000件くらいであり、ほぼ同じ件数で推移しています。ただ、条例の制度が始まって、取扱量を吟味してみますと、実際は取扱量が、1トン未満なのに届出されている事業者もあり、そういうところが若干減ってくるかもしれません。現状では、特に大きな変動はございません。
(原科)大沢さん、どうぞ。
(大沢)大阪府独自指定物質の23ですが、選定した目的は使用量が多いものという話がチラッとあったのですが、これは例えば大阪府特有の問題として、それへの対応として選定しているのか、それとも本来であれば、全国的に国レベルで規制したほうが良いけれども、されていないから対象にしているのか、どういう理由があるのですか。
(中村)大阪府では、平成5年度に化学物質関係の環境審議会部会を立ち上げまして、先生方のお話を聞いた上で123物質プラス22物質の物質をリストアップしました。それぞれが大阪府域でかなり使用量も多く、毒性も高いであろうということで、ハザードとばく露の観点で選び出したものがそれらの物質ですが、その後に施行された化管法の352物質と81物質(一種と二種)との重複をなくし、残った物質が大阪府の独自指定物質ということになっております。おっしゃるように、大阪府で特に多く使われている物質を選んでおります。
(原科)ありがとうございます。瀬田さん、どうぞ。
(瀬田)2つ、3つお聞きしたいと思います。1つは、目標が1,300のうちの680という数字だと思うのですが、これは罰則とか、どのようになっていくのでしょうか。つまり、目標というのは、基本的に管理目標は100%でしょうし、そうでないとすれば、何らかの罰則はあるのかないのかということが1つ。
2つ目は、44ページの2020年までにということなのですが、普通、目標というと何かの数値、レベルがあるはずです。そのレベルが年次だけ決めて具体的に目標数値が示されていないというのはいささか釈然としないのですが、この辺のところが2つ目。
3つ目は、VOCで、VOCは非常に積極的にやっておられるということはよくわかりましたが、この数値が随分減ったという表がありましたが、以前、子どもが倒れたという事故というか、発症例というのがありました。その変化はどうなっているのか。例えば、一時言われた中国辺りから海を越えてくるものに対してどのようにこれを解釈して、大阪府としてVOCを規制しようとしておられるのか。つまり、VOC をほとんどゼロにしても、海を越えているものがあるとすれば、それをどうやって規制しようとされているのか。
(原科)すみません、時間がないので、2つ目、3つ目は後の議論にしましょう。最初のだけお答えいただきたいと思います。
(中村)最初の御質問の目標を達成できなかった場合ということですけれども、特に罰則というところまでは考えておりません。あくまでも事業者の創意工夫について、我々行政は、一定の関与は持ちながらもあくまでも事業者側で自主的管理に努めていただくというのが主眼ですので、その辺のところは一定の距離を置いて見ていきたいと考えております。
(原科)時間が押してまいりましたので、議論になりそうなのは後半でやることにしまして、クイッククエスチョンでお願いします。
(川口(清))スライド36ページのところですけれども、VOCの光化学オキシダント等の経年変化で、我々の電機・電子の業界も自主行動計画で、30%削減と進めているのですが、最後の結論のところで「光化学オキシダントは増加傾向にある。ただし、これは窒素酸化物の減少よりもNMHCの減少が緩やかであるためとも言われている。さらなるVOCの削減」ということなのですが、実際の因果関係が本当にどの程度のものか。あと、我々、このVOCは温暖化と違って、なかなかコスト削減というところも難しいところがあって、企業としてどこまでやるべきなのかというところがいつも議論になるのですが、その辺はどういうふうにお考えになられていますか。
(中村)業界としてVOC排出量削減を3割ということで取り組まれていることは承知しております。ここに示しましたNOxとVOCとの兼ね合いですが、NOxについては自動車の排ガス規制がかなり進むことによって、その減り具合がVOCの削減割合よりも大きくなっております。NOxを分母、VOCを分子として比を考えた場合、その比は年々大きくなってきてまして、その結果、VOCが光化学反応の過程で、オゾンを消費しにくいよう作用していることが東京都の報告にあります。
ですから、具体的にVOC排出量を、どこまで下げればよいかというのは、よく分からないのですが、今後のNOxの削減計画と照らし合わせながら考えてみたいと思っています。
(原科)中下さんは簡単な質問ですか。
(中下)41枚目のPFOAについて教えていただきたいのですが、PFOAのモニタリングというのはいつごろからやっておられて、ここで高濃度検出とあるのですが、高濃度と判定された基準とか何かおありなのかどうかということと、結果として事業所からの排出であることについては、一応確認されて、その後、モニタリングを続けられておられるのか。以上です。
(中村)PFOAのモニタリングにつきましては、平成19年度から始めております。一部、新聞報道等もございまして、住民の不安・関心に対応するという必要もございますので、我々としてはモニタリングを続けております。
それと、PFOAについての環境基準や排水基準はございません。環境リスクについても今のところ、はっきりしておりません。国によるばく露評価等のために、モニタリングデータは国に提供させていただいております。
それと、流域内の事業所はその辺の認識はされております。なお、米国EPA との協定により、2012年までにPFOAを全廃するということで自主的な努力をされております。
(原科)どうもありがとうございました。ここで15分の休憩を挟みたいと思います。今、2時45分ですので、3時から再開ということになります。その間に、先ほど御説明いたしましたが、フロアの皆様に質問用紙を用意しておりますので、これに御記入いただきたいと思います。質問がおありの方はそれに書いていただきたいと思います。
(事務局)事務局から御説明いたします。フロアの皆様には質問用紙をお配りしておりますので、これまでの三人の方の御講演と今回のテーマに関する御質問・御意見ということで御記入いただければと思います。もしできれば、どなたにということを書いていただけますようお願いいたします。
御記入いただいた用紙につきましては、外に回収ボックスを置いておりますので、そこにお入れいただきたいと思います。いただいた意見は後半のディスカッションの中で一部紹介させていただきたいと思っておりますが、時間の関係ですべて取り上げられない可能性があるということは御容赦いただきたいと思います。
また、円卓会議全体に関するもう一枚のアンケート用紙につきましては、会議終了後に回収いたしますので、御記入お願いいたします。以上でございます。
では、3時再開ということでお願いいたします。
――休憩――
(原科)3時になりましたので再開いたします。
これまでの3人の方のお話で、企業が化学物質の安全性に関して、相当努力しておられるということがお分かりになったと思います。ただ、少し専門的な話もあって、少し分かりにくい点もあったかと思いますけれども、このようなことで印刷インキの問題では、できるだけ安全性を確保する、いろいろな情報をしっかり伝えようとしておられる随分長い努力があったとか、それから電機・電子業界から生産過程における問題ですね。最終製品がどうなのか、その前の段階で、よく川上、川下ということが言われておりますが、川中まで遡って、これまでの情報の欠落部分を何とか補おうとやってこられたというお話です。それから、最後に大阪府の独自の取組。大阪府の場合にも、国の制度よりもかなり早い段階でいろいろな試みをやっておられて、それから国の制度が整備されて、それに併せてさらに進めてこられたということでございます。最後に、時間がなくて少し急いで御説明いただきましたけれども、PRTR制度との関係でどうなっているかという現状についてお話しいただきました。
そこで、身近な化学物質の問題で、PRTR制度というのは環境省、経済産業省共同で管理してこの制度を進めてまいりましたけれども、これが当初期待した成果を、私は上げていると思います。大阪府の例を御紹介いただいたのを見ても、確かに化学物質の排出量は減っているわけです。ということで、PRTR全体でどうかということで資料を環境省の方に用意していただきました。一応、私が追加で説明するための資料です。参考資料1、2、3、4となっておりますが、これを少し御紹介して議論に入りたいと思います。
参考資料1でございます。これは、「PRTR制度による届出排出量・移動量の経年変化の概要について」でございます。大阪府の制度の場合には、これに加えましてさらに取扱量まで入っているようですから、さらに進んだ仕組みをやっておられるわけですが、全国的には届出排出量と移動量。移動量というのは、廃棄物として外へ出すということです。排出量というのは、放出する感じですが、大気中とか水とかに出ていく、環境中に出ていく量でございます。
これは、「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」という、随分長いタイトルで、これを短くしたのが「化学物質排出把握管理促進法」、これでもちょっと長いので、もっと短くして「化管法」などと言っていますけれども、PRTR法という言い方を前はしておりました。PRTRという言葉もそれほど一般的ではありませんが結構長く使われておりますので、PRTR制度という言い方もしております。
このPRTR制度は、環境政策、手段の中では、私は一つの非常に効果のある制度だと思います。私は環境計画とか政策の研究をやっておりますので、環境政策の分類をよくしていまして、いわゆる規制的な手段とそれから誘導的な手段とに大きく分けた場合、法的規制は規制的手段の代表です。誘導的手段はまた2つ分けることができまして、経済的な誘導手段と情報的な手段とあります。
経済的な手段というのは、これは大変効き目があるのですけれども、経済に関わる話なので、ルールを決めるのに時間がかかりますが、いったんやれば効き目はあります。例えば、今、炭素税など、これは本当に効き目があるのです。ただ、その導入が大変で、合意形成が大変なのです。ところが、情報的手段の方は、経済的手段より効き目は弱いかもしれませんけれども、逆にそれだけに導入もしやすいということがありまして、情報的手段も結構使われております。私の専門で、例えば環境アセスメントというのは情報的手段の一つなのです。これは情報公開をベースにして、自主的に環境配慮を進めていただくという方法です。同じようなことで、PRTRというのも情報公開することによって、自主的にその事業をする主体が化学物質の排出量や移動量を減らしていくことです。どうしてそうなるかと言いますと、経済的手段というのはお金が一つの役割を果たすのですが、情報的手段は情報ということで社会の目といいますか、皆さんの目にさらすということで、比較できるわけです。そうすると、自分のところが他よりも多いとなると、これは減らそうとなります。そういうメカニズムが働くわけであります。アメリカでは、この制度を1980年代に導入しまして、最初の10年間で4割以上減りました。年間4%くらい減ったのです。実は、日本も同じようなことが起こっていまして、お手元の資料をご覧のように、図がありますが、平成15年から19年の4年間の違い、20%減っている。4年間ですから、大体5%程度でしょうか。予期したとおり、減ってきているのです。これが排出量です。それから、移動量。これは廃棄物とちょっと様子が違いますけれども、これもそれほど大きくはないけれども、やはり減っております。5%ですから、年に1~2%減っているということでございます。ということで、確かにこの仕組み、情報的手段は効果があると思います。そういうメカニズムをうまく使っております。
裏側には、物質ごとにどうなったかということで、特に排出量が多いものから順番に示していただいていますが、トルエンとかキシレンは特に代表的で多いです。これは量も多いです。桁がこんなに多いので、こういったものが減るのは全体量にも大きく貢献しますし、ジクロロメタンも減っています。押し並べて減っておりますけれども、中ではエチルベンゼンはやや増えております。これはどうしてかということはまた分析していただきたいと環境省にもお願いしたいのですが、まず押し並べて減っておりまして、いろいろな努力が実ってきたと思います。
こういう排出量の減少が実際の環境の中でどうなっているか知りたかったのですが、このことは大阪府の方がしっかり示していただきまして、環境中の濃度も並行して減ってきたということが観測されたと、先ほど御報告いただきました。そういうことで、PRTR制度という情報的手段が、私はかなり有効であると思いますし、さらにこういった制度を促進していただきたいと思います。
情報公開制度ですから、数字は情報開示請求を受けて、結果を公表するわけですが、これだけ社会的・一般的になってまいりますと、情報公開をもっと積極的に進めようと、情報開示請求がなくても、進んで情報提供しましょうという考え方があります。アメリカの情報公開制度はそうなのです。いったん公表したものは、どんどん積極的に情報を提示しますということです。インターネット社会ですから、インターネットを使って簡単にできるわけです。
ということで、実は参考資料2がございますように、そういったことを日本でも取組が始まったという資料を環境省が用意してくれました。環境省及び経済産業省のホームページに、今年2月から個別事業所のPRTRデータの公表を開始しております。従来は、個別事業所のデータは情報開示請求があってそれに応えるという格好でしたけれども、今はホームページ上でいつでもアクセスできる、情報公開が大変高まったわけです。その結果、お手元の参考資料2の下のグラフのように、昨年度までは一定程度開示請求がございましたけれども、今年はガクッと減っています。これは、こういった問題に関心が減ってきたというよりも、ホームページでアクセスできるので、いちいち開示請求しなくても良い、こんなことだと思います。
そういうようなことで、こういう情報公開に基づく制度は、私は非常にうまくいっているのではないかと思いますし、そのときに提供する情報を、それに代わるところで企業が、皆さんがさっき御紹介になったようないろいろな努力をしておられるということなのですね。ですから、この大きな枠組みの中でお考えいただくと、今日のお話の意味もよく分かると思います。
あと、2つ付けておきました。これは私が書いたものですが、情報公開の意味について書いた「随想」というものです。これは『判例地方自治』という法律の専門誌でございますが、情報公開制度ができたころに依頼されまして書きまして、「意思形成過程の情報公開」で、情報公開で何が大事かということです。いろいろな情報公開がありますけれども、特に意思形成過程情報が大事だと思います。そのことを書きました。
その時いろいろな心配がありまして、そういう情報を早めに出すと無用な混乱を生じるとか、自由な意見表明が阻害される、会議を公開すると議論しにくいと。それから、特に立地問題、土地の買い占め問題も心配されましたけれども、この3点ともそうではないということを私は書いております。詳しくは読んでいただきたいのですが、例えば「無用な混乱」と言いますけれども、ある程度は混乱を生じるのですが、しかし、情報を公開しなくても混乱は生じますから、どちらが良いのかということです。考えてみれば、事業仕分けもそうでしょう。あれは情報公開を徹底したのですね。意思形成過程情報です、判断するのですから。でも、あれは、無用な混乱ということもあるかもしれませんが、公開することで国民は「なるほど」と分かるわけです。ですから、そういうことで、情報公開するのは大変大事なのです。本来は、意思形成過程情報を公開することが情報公開の本質だと思います。
その他、「自由な意見の表明が阻害されるか」。これは、むしろ専門家として依頼されて発言するわけですから、公開の場で意見をしっかり出せないと困ります。脅かされたりするということは無いとは言いませんが、そういうことは非公開の場合にもかえって起こるのです。ということで、公開することで、それが本当に危ないかは、私は分からないと思います。むしろ、そういう場合には身辺警護等で守るべきだと思います。例えば、国会議員などは皆公開で議論しているわけですから、そうすると、どうなのだ、となってしまうでしょう。
それから、土地の買い占めに関しては、明らかに誤解しています。土地の買い占めに関して、情報公開しないとインサイダー情報が生じまして、特定の人だけが情報を持つことによって、本当におかしなことが起こります。これはたくさんの事例が示されております。そういうような意思形成過程の情報公開ということはやったほうが良いし、こういった心配は実はそうではないということを書いてあります。
最後に、ニュースレター。これは英語で申しわけないのですが、環境アセスメント、国際学会の特に権威のある学会ですが、世界の中心的な学会のニュースレターです。私は、この学会の会長に日本人として初めて選ばれました。この5月まで会長をしておりまして、今も理事で前会長になりますけれども、そのニュースレターに、毎回、会長からメッセージを出しまて、裏側に「From the President」とありますが、これは私が会長として全世界に、これは特に大きな学会で120ほどの国からメンバーに入っていまして、各国の政府機関や世界銀行などが強力にサポートしているところなのですが、たくさんの専門家がいます。そこで、「Ethics as a professional」、専門家としての倫理の問題を書きました。専門家としてきちんとした正しい情報を伝えることが専門家の倫理です。科学技術者の倫理と言っても良いのですが、こういうことをきちんとアセスメントの学会ではやっています。だから、権威も高まるのだと思います。「IAIA code of Ethics」とありまして、倫理規範が出ています。特に、黒い点で9つありますが、5番をちょっと御紹介します。「To refuse to provide professional services whenever the professional is required to bias the analysis or omit or distort facts in order to arrive at a predetermined finding or result」。Predetermined finding or result というのは、あらかじめ決まった結果に導くように、バイアスをかけることを求められた場合には、これを拒みますと。よく言う御用学者みたいなものはだめだということです。そういうことはしない。これを明確にうたっています。でも、逆に言えば、明確にうたうということは、そうではないということは日本だけではなく世界中であるということです。これは人類共通だと思いますが、まさにそういうところに心をしっかり置いて、正しい情報を提供していただきたい。
実は、リスクコミュニケーションの問題はまさにそうなのです。正しい情報を専門家が伝えてくれれば、皆さんも安心できるのです。それがおかしなバイアスがかかっていると変なことになってしまう。そういう意味では、今日の皆さんの御発表は、いずれも「正しい」をいかに伝えるか、そのためには正しい情報をどうやって把握するか、そういうようなことの具体的な努力を御紹介いただいたわけでございます。
そこで、先ほど御質問がございまして、時間がないので後に回すと申し上げたのですが、VOCの話で瀬田さんから御質問があった、あの件をまずいきましょうか。もう一回御質問をかいつまんで簡単にお願いします。
(瀬田)質問の要点は、VOCに関しましては、劇的に減っているということは分かりましたが、子どもさんが倒れるとかした発症例の変化はこれによってどうなっているのかということが一つ。
もう一つは、いくら減らしてもどうも中国から来ているのではないかという新聞情報もありました。それに対して、どのように考えて、この問題を大阪条例として織り込まれたのかということをお聞きしたいのです。
(中村)発症例といいますと、例えば光化学スモックなどで被害を訴える方ですか。
(瀬田)そうです。
(中村)大阪府におきましては、昔より被害を訴える人の数は少なくなってきておりまして、最近ではかなり減ってきております。ただ、大阪府以外のところで、例えば今まであまり縁がなかったと思われる日本海側とか九州地区等で結構そういう被害に遭われている方がいらっしゃると聞いております。それはおっしゃられたとおり、有害化学物質の越境移動とでもいうのでしょうか。そのことについては、対策上、どうしても避けられない問題になってくるでしょうから、今後の課題として検討したいとは思っています。
(瀬田)実際に規制をもっと強化しなければいけないという話になったのは、過去に被害が多発してVOCを規制した、それで被害は収まったと思ったが、最近になってまた被害の発生が増えてきた、これはまずいからVOCをもっと減らせという話だったと思うのです。それで、大阪府ではそのように対応されて、今オキシダントはこれだけ劇的に下がったということなのですが、数値が下がったということがどういう効果を市民生活に与えているか、それが一つの説明材料になると思うので、そういう意味でお聞きしました。でも、大阪で被害が発生していないということになると、ちょっと困ってしまいますね。
(原科)これ以上頑張らなくても大丈夫と。
(瀬田)いや、そういうわけではないです。違う目的でやっておられるのではないか、ということです。
(中村)それと、オキシダントについてはVOCも関連しますけれども、大陸からの移流に関しては、NOxによるものが大きいという気がします。
(瀬田)そうであるならば、NOxを減らさなければいけないですね。
(中村)もちろんそうです。移流の話は別としまして、都市域における最近の傾向としましては、NOx濃度の下がり方に比べてVOC濃度も下がり方が小さいということで、NOがオゾンよりも余剰のVOCと反応しやすい状況になり、結果として、オゾンがたくさん残るという状況になると言われております。
ですから、いずれにしましても、NOxを減らすのと同じくらいの割合でVOCも下げていったらどうかということが提唱されているように聞いております。ただ、その効果がどうかということがよく分かっていないのも現状です。
(原科)よろしいですか。
(瀬田)良くはないですが、まあ、仕方ないです。
(原科)では、有田さん、どうぞ。
(有田)先ほどJAMPの会員数のことをお伺いしたのは、私は今年2月に玩具の関係でドイツの食と環境を中心に取り組んでいる消費者団体と交流してきました。そのときに、一つの団体が化学物質の取組で、例えばこの玩具にどういう成分が入っているかというのを企業に聞きましょうという運動を消費者向けにしていました。化学物質情報の伝達についてというところには家電メーカーは入っても、同じようにスチレンを使って玩具などもたくさん作られていますし、玩具は電子機器も使ったりしていますので、玩具メーカーはここの会員に入っていないのか、それで会員の中の構成ということをお伺いしたかったのです。
(村越)今のお話に対して、玩具メーカーがどのくらい入っているかというのは、正直、私、現在つかんでおりません。ただ、JAMPの趣旨を皆さんにお話しして、会員を集める段階では、どの業界だけ入ってくださいということは当然言っていませんので、玩具業界も入っていただけることを意図してアナウンスさせてもらっています。
ただ、今、JAMPの中に団体という形で入っていただいているのは当然ございます。個々の会社を見てみますと、確かに電機関係が、会社も多いですから多いのですが、自動車だったら自動車工業会とか団体で入っているのですが、残念ながら玩具の工業会は今入っていなかったと思います。玩具は最終製品ですね。最終製品以外で、玩具の部品というか、プラスチックの成形みたいなことをしている業界は中に入っているのではないかと思っています。正確には覚えていませんけれども、プラスチック関係の工業会とか、そういうのもございますので、もしかしたらそこを通して玩具を作っているメーカーさんも知っているということは十分考えられます。
ただ、今おっしゃったように、広く徹底させるためには、JAMPに、玩具の工業会なども、特に最終製品をやっていく必要があると、本日お話を伺って思いました。
(原科)どうもありがとうございます。先ほど瀬田さんから、目標設定の話がありましたので、その件を大阪府の方に。もう一回質問を言っていただけますか。
(瀬田)もう一回第3の質問の要点を申し上げます。44ページだと思いますが、目標のことが書いてございます。目標達成に向けての取組なのですが、普通、目標というと期限と達成すべきレベルが明示されると思うのですが、期限は2020年とその上に書いてございますから、残りは目標を何らかの数値化することが達成しやすい、目標として掲げやすいと思うのです。しかし一方で、こんなものは数値化することは非常に難しいこともよく分かっているわけで、したがって、そこをどのようにお考えになって、今回の条例をお作りになったかということをお聞きしたいと思います。
(中村)2020年というのは、WSSD2020年(World Summit on Sustainable Development)の国際的な動きに合わせた形です。大阪府の将来10年先の環境の状況がこうなっているようにと策定するのが新環境総合計画になりますが、それを目指すに当たって努力目標というか、こういうところまでいかないといけないというような数値目標を示すことは難しいが必要であるとは考えております。現在、他の関東地域等の先進的な自治体にも当たりまして、聞き取り等も行っているところです。
(原科)それでは、しばらくメンバー間の議論をしたいと思います。私はPRTR制度で考えまして、大阪府の将来の計画に対してつなげるというのは、PRTR本来の狙いとは少し違うところがあるのですね。PRTRは自主的にそれぞれの事業主体が減らすこと、そういう情報的手段なのですが、さらにこれを危機管理に使うことで、取扱量まで報告していただくということ、それが随分違うと思います。PRTR制度を作るときにも、確かに保有量はどうかということでだいぶ議論しました。ただ、目的はそこでないということになったので、外したわけです。大阪府では一歩進んだ計画的アプローチをやっておられます。そういう仕組みにされたということの意味合いは、今みたいな私の理解でよろしいですか。
(中村)はい。
(原科)後藤さん、どうぞ。
(後藤)今のことですけれども、昔の話で思い出しましたが、化管法を作ったときに、早水課長さんが早稲田でPRTR国際大会をやりました。あのとき、私は別に野党案を作ろうと思ったわけではないのですが、結果的に民主党案のたたき台を作ったのですが、使用量をちゃんと入れていたのです。PRTRの目的で使用量や貯蔵量まで入れるというのは、我々のほうの案ではちゃんとあったのです。目的は、私から見るとリスクマネジメントというむしろ邪道の目的が法律に書かれていましたが、私達は、化管法は本来情報公開法だと考えていました。だから、(住民監視で)リスクを減らすことが目的だったので入れていたのですが、結果的に使用量・貯蔵量は外されたのですが、私は10年たって、ようやく大阪府がやってくれたということで先ほどはむしろ感激していました。
(原科)なるほど、私も良い方向に行ったと思いますが、とりあえず今の法律はそういうことだということです。
PRTR制度に関しましては、御質問をフロアからもいただいておりますので、これも御紹介したいと思います。これは大阪府、中村さんへということでございますが、「PRTRでは中小の企業、従業員21人未満が対象事業所から外れており、化学物質リスクに対する意識が高くないであろう事業所が漏れていることに懸念を抱いているが、国と別途、大阪府という地域に根差した自治体でこそ、対象事業所に中小を含めた中小企業啓発を兼ねた取組をしないのか」ということです。これは今の議論とつながりますが、この辺はどうでしょうか。
(中村)大阪府の制度では、従業員数が21人未満につきましては届出の対象とはなっておりません。但し、取扱量等の把握や事故時の対応についての計画書作成等は従業員数に関係なく行っていただく、事業者の届出の義務ではなくて責務とい
うことで規定しております。規模要件未満の事業所に対し、届出の指導はしませんが、機会を作ってそういうお話をしていきたいとも考えております。
(原科)そういうことをやっておられると?
(中村)今後の課題です。
(原科)岩本さん、どうぞ。
(岩本)PRTRに関係して一つ質問します。今、大阪府のほうで取扱量が議論になっていました。これは現実どう使われているのかと。化管法改正の議論のときに、取扱量を情報として追加してはとの議論があって、結局、外れたのは、私の理解では法の目的はあくまで事業者の削減の自主的取組を促すことであり、取扱量がそこでどういう位置を占めるのかについて、そこが曖昧ではないかということで、だったのではないかと理解しています。
となると、今、大阪府さんは、この取扱量をどう使われようとされているのか。実は、私、もう十数年前なのですが、ベンゼンの大気排出量を下げようという時に行政の委員になっていろいろ調べましたが、ベンゼンを作っているメーカーからの排出量はごく微量なのです。ベンゼンを取り扱っているところは多分、排出量を取扱量で割り算するとベンゼンを作っている工場に比べて一桁多いくらいの数字になる。これは扱い方のいろいろな違いがあって、当然出てくる違いではないか。うっかりとんでもないものを比較してしまうと、次の判断に誤解を招いてしまうということになるのだろうと思うのです。
例えば、私ども、あるところでベンゼンの濃度が高かったので一生懸命下げました。その結果、CO2が増えてしまうのです。そうするとどこでバランスをとるか。いろいろな取扱いに応じて、あるいは絶対量に応じて、対応はそれこそ専門家である企業が自主的に考えていってしかるべきではないか。その唯一判断になるのは、むしろ私は取扱量と排出量の比ではなくて、環境濃度だろうと思うのです。環境濃度が高いところは、少々お金をかけても一生懸命やらなければいけない。
という意味で、取扱量というのを、現実、大阪府さんはどのように扱われているのかということをお聞きしたい。
(原科)今の議論の取扱量の中には、取り扱いによって出る排出量も関連して出てきますね。ですから、取扱量はどういう定義になっておりますか。
(中村)取扱量につきましては、実際のところ、データを今年から集めているところなので、排出量や環境濃度等との関係についてどういうものかというのはまだ完全に把握はしていない状況です。大阪府としましては、排出量、移動量については公表しますが、取扱量の公表はしないということを条例で規定しております。
取扱量を届出いただく目的として、例えば、企業が努力されているのに、排出量が増えている場合に、取扱量を届出いただいておれば、取扱量の増加の割には排出量の増加は少ない等が分かるなど、自主的努力を判断できる情報になります。差し当たっては、行政内部での検討に用いていくよう考えております。また、おっしゃられたように、同じ物質であっても業種によっていろいろな使われ方があるので、これからデータを収集し、検討していきたいと考えております。
(岩本)まず集めてから考えるということですね。
(中村)はい。
(岩本)それと、あのとき議論があったのはその取扱量は、定義がバラバラではないかと。実際にものが流れている、受け入れて外に出すとか、タンクに溜めているというのもあります。何が取扱量なのだというところも、これは主たる問題点ではないと思うのですが、そこもはっきりされておいたほうが良いと思います。極端に言うと商社によってはものを流しているだけで取扱量ではないか、ということになってしまうわけです。
(中村)そうですね。PRTRの届出のときに、取扱量が1トン以上である場合に排出量と移動量を届けるということなので、事業所では取扱量を把握されているはずなのですが、取扱量を届出いただくことによって実際はそうではない場合があるということがよくわかってきました。おっしゃるとおり、取扱量の定義は明らかにする必要があると感じております。
(原科)どうもありがとうございました。他の点でメンバーの皆さんの間で何かございますでしょうか。後藤さん、どうぞ。
(後藤)電機・電子工業会さんが非常に良い取組をしておられると思っているのですが、スタートの情報の信頼性で、必ずしも全世界でなくても少なくともアジア全域にサプライヤーが広がっている中で、そこの情報の信頼性ですね。
先ほど来、中国の話が出ておりまして、おっしゃるとおり、そんなに簡単に情報がとれないのだろうと思うのですが、一方で、例えばVOCを中国がバンバン出して、日本に来ている、現時点ではそうなのだろうと思うのですが、今、中国が猛烈な勢いで環境に取り組んでおります。環境省は、去年、環境保護部と覚書を交わされて、5カ年計画で公害防止管理者制度、環境報告書制度、グリーン購入の制度等を支援しておられるわけで、私もその関係で環境報告書の専門家で中国に行ってアドバイスしたりしています。見ていると、中国政府の、少なくとも中央政府の環境保護部は猛烈にやる気があり、一方で地方政府との温度差があるわけです。去年、情報公開の法律ができて、特定業種は情報公開をしなければいけないという義務化がテストされていて、実はそのテストの義務化で報告していない日本企業がグリーンピースチャイナの英文のページに堂々と名指しで批判されています。中国がいい加減にやっているから情報がとれないと、そういうことばかりではないです。大阪の場合は、多くの関西企業は中国と縁が深いと思うのですが、ものすごい勢いで変わっているのですね。
その中では、今日は「身近な化学物質」ということです。特に電機・電子製品はパーツメーカーとしての立場もおありですけれども、最終製品の立場もおありで、かつサプライヤーが非常に広い。そういう状況の中で、中国がだめだということではもちろん考えておられないと思うのですが、動いていますので、やはりアジア全域でそういう情報が信頼できる制度になるように、ぜひ頑張っていただきたいと思っています。やっておられることに敬意を表するとともに、ぜひそこを期待したいと思っています。
(原科)はい。先ほどのお話もそのような方向だと私も感じましたので、ぜひそれを進めていただきたいと思います。
(村越)やはり日系企業が先頭を行っているところももちろんあるのですが、まだ不十分なところがあるという認識はもちろんあります。
(原科)岩本さんの御意見をいただいて、あとフロアから5名の方から6件の質問や御意見をいただいておりますので、後で御紹介して答えていただきたいと思います。
(岩本)JAMPというのは、私ども化学産業界も非常に大きなウエートを置いているわけですが、私どもは化学物質というある素材を扱っているものですから、どんどん情報が出せるわけです。それが、だんだん加工の手が加わって調剤になってくるとか、いろいろな過程が入ってきますと企業の技術の塊になってくると思うのです。これからそういった技術の保証といいますか、そこをどうしていくかというのが情報をやりとりする上で非常に大きな問題になってくるのだろうと思うのです。私ども化学産業界も、化学物質の安全な使用について末端まで面倒を見ようというプロダクトスチュワードシップという概念を掲げている以上、必要な情報についてはぜひお客さんから情報が欲しい、「こういう扱い方をするのだ、そして評価してほしい」というお願いをするのですが、なかなか下から上に情報が上がってこない。それは取扱い、あるいは何か鼻薬を入れるというのが最大の技術のノウハウになっているからだと思うのです。この辺がインキにしても大変だろうと思うのですが、部品から情報を集めるのは大変だと思うのですが、JAMPの中でその辺がどういう議論をされているのか、あるいは今後どうその辺のところをクリアしていこうとされているのか、お聞きしたい。
(村越)わかっている範囲で、ということなのですが、化学物質の登録が実際REACH の関係で行われています。登録するときに、安全性の評価をされるわけです。その評価の項目に、川下側でどんな扱いをしているか分からなければ当然できないわけなので、法律上の要求もあって、今、私どもも含めて、川下ではこんな使い方をしているので、例が良いかどうか分かりませんけれども、これは子ども用の玩具に使うので、子どもでの経口ばく露の問題、評価もちゃんと入れて下さいといった具合に情報を上げなければいけない。つまり、双方向の情報交換が必要だという認識は強く持っています。
(岩本)ぜひそれを進めていただきたいと思います。
(原科) どうもありがとうございます。
それでは、フロアからたくさん御質問をいただきましたので、これを御紹介して、それぞれ御回答いただきたいと思います。それぞれの御発表に対する御質問が多いのですが、全体的な観点からのものもございますので、分けて御紹介いたします。
まず、印刷インキに関して何本さんへの御質問です。「印刷インキに関する法令知識、NL規制対象の物質リスト、こういったものは一般に公開されないのか」ということで、川下企業にとっても重要な資料になり得るということで、こういう御質問です。如何でしょうか。
(何本)技術委員会としては非公開だとか隠そうだとか思っておりませんで、法令知識集は御希望がある方には販売いたしております。ただ、書店に持ち込んで販売するような組織が私どもないものですから、そういう意味での一般公開というのはなかなか難しいところがあります。
NLに載っている530 物質の公開ですが、私どもの川下に当たる業界さんには既に公開しておりまして、これを評価いただいて、その業界団体さんの中におけるグリーン調達基準の中に入れていただくといった取組までは行えているのですが、インターネットのホームページで全ての項目とその基準、有害性についてということになりますと、私どもも情報のコントロールをあまり得手としているわけではございませんので、まだできていないというのが実情かと思います。決して「公開しません」と言っているわけではございませんで、まだ、それだけの技術、能力がないというレベルだと思っております。
(原科)どうもありがとうございました。
それでは、2つ目、村越さんに対しての御質問ですが、「改正化審法でも川中、川下企業へ」、これはまた2つ項目がありまして、1 つは「情報伝達を求めると認識しているが、JAMPはそれに活用できるか」です。2つ目は「JAMPはアジアから国際化を図っている」ということでしたけれども、これは「発信源」と書いてありますが、EUあるいは米国に対する展開はどうなっているのか。アジア以外の展開はどのようになるのか、2つの御質問でございます。
(村越)1つ目の質問ですが、化審法について私は専門家ではないのですが、私の理解の範囲で言えば、化審法でも単に川上だけではなくて、川中、川下についても情報伝達の要求はしておられると思います。ただ、その形がヨーロッパのREACH で言っているアーティクルとはちょっと違うので、その辺は違いますが、従来のMSDSという書式とそれにMSDSplusという追加の書式を加えてやりとりをする、そういう意味で言うと十分御利用いただけるのではないかと認識しております。これが1つ目です。
2つ目は、アジアのほうを優先で今動いているという、これはとりあえず順番として先に動かなければいけないので動いているのですが、ヨーロッパやアメリカとの関係はどんなふうにしているかということですが、当然、いろいろなコンタクトは取っております。ただ、動き方としては、今直前にあるのは標準化とかいろいろな形の伝達のための様式は今一緒になってやりましょうということでしょうか。例えば、IECとかISOとかそういう場があります。
これ以外は、ヨーロッパでは、今、私が把握しているのはいわゆるロビー活動という形で言いますと、日本の業界のJBCEという在ヨーロッパ組織がありますけれども、そういうところを通じて、REACHで言いますと、また専門用語になるのですが、ECHAという当局があります。そことの交渉などをしながら、ヨーロッパとの協調といいますか、そういう活動はしています。
ただ、私ども、ヨーロッパの関係会社にいろいろな情報を流して、日本でやっているような情報の集め方を日本、アジアだけでなくヨーロッパも当然ありますから、お願いしますと言うと、なぜかヨーロッパのほうは「そんな動き、していない」という状況があるので、この辺については、私はまだ良く分からないというか、疑問を持っております。
アメリカは、ヨーロッパとは若干違うのですが、同様の規制は多分同じように行われていき、日本に近いやり方でされていくのではないかと思っています。その辺は具体的なケースとしてTSCAとか、そういう法律の動きもありますので、それに応じた業界の代表といいますか、そういう形の意見交換の中からJAMPの中で反映していこうと思っています。
JAMPの中の組織としては、国際化を担当する部署がありますので、そこで具体的な動きになっていくと認識しています。
(原科)ありがとうございます。JAMPは、国際的展開をいろいろな方面にできそうで、少し楽しみなところがございます。ぜひ頑張ってください。EUやアメリカ、東アジア、それぞれが経済的にも大変活力がありますし、お互いにそういう活動を展開して、連携していくと、地球全体で良い方向に行くと思います。
今、企業のお二人に対する御質問を御紹介しましたが、行政に対してもたくさんいただいております。大阪府の御発表に対して、少し専門的になりますけれども、順に御紹介いたします,
1つは、独自指定物質でございますが、「エチレングリコールモノブチルエーテルにおいて、t-ブチルとn-ブチルの区別はしているのか」という御質問でございます。
(中村)この御質問ですけれども、府独自指定物質でエチレングリコールモノブチルエーテルというのがございますけれども、ターシャルかノルマルかという区別をしているかどうかということなのですが、CAS ナンバーが111-76-2の物質が対象物質になります。
(原科)御質問のあった方、今のようなことでよろしいですか。声がないということは、良いということですね。
それでは、2つ目でございます。VOCですが、「VOCを総量として計算する場合、個々の物質の裾切り値は想定しているか」ということでございます。
(中村)総量として計算するということですので、数百物質あるVOCをどのくらいの量まで足し合わすのか、という問い合わせは結構たくさんあります。最小量については、1リットル単位で把握して下さいということで事業者の方にはお話させてもらっています。
(原科)今の御質問をされた方、よろしいでしょうか。2つ、専門的な話になりましたけれども、今度はもう少し政策とか計画に係るような分野の話になります。「トータルVOC削減とCO2削減をリンクさせるような規制活動の計画はありませんか」という御質問です。
(中村)VOCにつきましては、削減の方法としまして簡単に言うと使わないというのと、使った後で処理をするという方法があると思いますが、例えば処理方法として燃焼処理を行った場合、どうしてもCO2が出てきます。どちらが環境にとって良いのか、そのバランスを考えた対策が必要かと思いますが、御質問にあった、その辺のところをリンクさせた対策についての行政としての計画や実績は、今のところございません。
また、水の関係でも、水をきれいにするということは有機物をCO2に変えて浄化するということなので、きれいにするほどCO2が放出されます。もちろん、水を有機物で汚染させないことが先決なのですが。また、VOCに汚染された地下水の浄化対策として、地下水をどんどん汲み出して曝気して、大気中に放出することを行いましたが、大気を汚染する結果となり、結局は、それをまた活性炭で吸着してゴミとして廃棄する必要があったケースもございました。環境にとってバランスの最もよい方法で対策を進めていくことが必要です。
ですから、御質問にあったような計画は今のところはございません。ただ、考えていかなければいけないものだとは思っております。
(原科)どうもありがとうございました。お三方の発表に対して以上な御質問をいただきました。
もう一つ、全般的なことで、少し長いので、要点を、私の理解を申し上げます。
トータルな御質問でございますが、いろいろな仕組み、化審法や化管法等があり、また、海外にもいろいろな取組があるので、見方によってはバラバラな印象を受ける。一般市民にとってはもう少し分かりやすくしてもらいたいということで、「化学物質全体を統括するような法を制定される予定はあるかどうか」という御質問でございます。これに対しましては環境省の担当の方に御回答いただければと思います。
(原)今の御質問、御意見といいますか、国会の中でもいろいろと御要望があります。いわゆる化学物質対策基本法を作ってはどうかということでございますけれども、これについて今作る、作らないというのを私が言える立場でもございません、というのは御承知置きいただきたいと思います。
(原科)これはそうでした。政策的なことは行政官が答えてはいけないので、感想を言ってください。すみませんでした。
(原)若干、最初に注意深く発言しないと怒られますので。
ただ、御指摘のような問題点が、要するに「漏れなく、すき間なく」という、いろいろなところで使われている言葉ですけれども、それが本当にできているのかということについては、ここにそれぞれ関係の省庁もおられますけれども、「連携をしながらやります」とか「それぞれの法体系があります」とかいう形でお答えをしてきております。ただ、実際問題としてどうかということ、さまざまな具体的な問題は、私個人としては認識しております。それに対してどういう形でやっていくのが良いのか、それぞれ個別の問題に対する個別の法律でいくとか、あるいはそれらをまとめてしまう何か法律があるのか等、そういうことについてはいろいろな手法もあるでしょうし、必要なものは定めていく必要があるだろうと思っています。
そういう中で、いずれにしてもどういう方向になるのか、漏れがあるなら、その漏れを埋めるような政策が必要になるだろう、これは一般論ですけれども、そういうようなことは考えているというところです。今のところ、答えられるのはそれくらいです。
(原科) ありがとうございます。そうですね、ちょっとお答えしにくいかと思います。そういなかで今お答えいただきました。これに関してはむしろ、中下さんのほうが答えやすいかもしれないですね。
(中下)私は、ずっと前からそのような共通の戦略を立てた上で管理をしていかないと、化学物質はそこら中にあるわけですから、流れていくわけですから。
(中下)省庁の壁を越えてしまうものですから、やはりそういう取組をしていただきたい。そのほうがたぶん製造業者や業界の皆さんにとっても「化審法の届け出はこう」「労安法の届け出はこう」「消防法の届け出はこう」と、フォーマットをせっかく統一されていても、役所のフォーマットが統一されていないと、業界にとっても御負担だろうと思います。表示の仕方一つ見ても、PRTR法の表示と化粧品の表示とが一致していません。そうするとせっかく消費者として減らそうと思っても、その化粧品に果たしてどれが含まれているのか、あるいはシャンプーの表示が同じでないということがあるので、やはり統一した制度をきちんと作っていただきたいと思います。
今日の関連でも少しだけ申し上げたいのですが、基本法を作っていただきたい。これは化審法の制定の時の参議院の附帯決議でも、基本法とは書いていませんが。
(原科)化審法? 化審法ですね。
(中下)化審法です。化審法の改正のときの参議院の附帯決議で、ですね。
(原科)改正の時ですね、制定ではなくて。
(中下)はい、参議院の附帯決議で書かれておりまして、この附帯決議はそれこそ化審法制定時の附帯決議がずっと生きていて、国が安全性を点検するのだということで長いことずっとやられてこられたくらいで、附帯決議をそのくらい尊重してこられているのですから、ぜひ今回の附帯決議も尊重していただきたい。
(原科)その化審法の制定時というのはいつになるのですか。
(中下) 最初に制定した時、既存化学物質の安全性点検は国がやる、と言ったので、業者の方は今まで全然やらなかったわけです。「それは国がやると附帯決議で決めたからだ」という理由で、ずっとそれを尊重して、長年そのようにやってこられたわけですけれども、今回、「基本法の検討を早急に始めること」という附帯決議がついたのです。
(原科)今度の改定でですね。
(中下)はい。それはぜひ尊重して、速やかにおやりいただきたいなと思います。
(原科)分かりました。そうすると、昔から言ってきたことを、今回、さらに具体的に附帯決議がついたので、それを実行してもらいたいということですね。
(中下)実行してもらいたい。
それから、今の身近な化学物質で言いましても、それも関連ですけれども、業界の中でJAMPのような取組があって、川上、川中、川下ができるだけ情報共有しようとしている。これはとても大事なことで、ぜひその取組が一般消費者にも利益が受けられるようにしていただきたいのですが、一般消費者が業界のような取組をできるわけではありませんから、一般消費者に対して情報を流すということになると、これは国で表示の制度をきちんと作っていただく、情報提供の制度を作っていただくしかないのです。我々の身近な化学物質でいいますと、家庭用品の中に、アーティクルの中に何が含まれているかということについては、家庭用品品質表示法が経産省の所管で、でもそこのリスク評価は厚労省の所管です。
このように分かれているため、なかなか表示も進まなければ、我々にとっては情報が得られなくなっているという状況だろうと思います。せっかく業界でこれだけ、例えば印刷インキにしても、前向きに取り組んでおられるそのことが、「業界としてやっているから結果として消費者に安全です」と言われればそれまでかもしれませんが、我々としては商品選択するときに、それはひとつ見ていきたいと思っても、マークは付けておられるかもしれませんが、それについて果たしてどこまでチェックをされているかという問題もやはりあるわけですし、成分についてのMSDSを一つひとつ要求するということもなかなか大変です。ということで、もう少し国の制度をきちんと整えていただきたい。
それも、今、縦割り所管で、表示は経産省、リスク評価は厚労省となっている。例えば、芳香剤は自主表示なんです。経産省に、法制度の家庭用品品質表示法に基づいて表示を義務付けてほしいという申し出権があるのです。それをしたのだけれども、「厚労省のリスク評価が決まっていないものは付けられない」と、いう話でなかなか進まない。
(原科)私は今みたいなことは、やはり国民が知れば変わると思います。だから、情報公開をもっと推進していただければ、今みたいな問題は明らかになります。そうしたら、行政もちゃんとやってくれます。やはり情報公開を推進するのは大変大事だと私は思います。
本日、企業の方々のいろいろな形の努力をお話しいただきましたし、大阪府での取組も随分進んできて成果も上がってきているということでした。その意味では、今日の御発表、そして議論の中で、このような方向で一段一段良い方に進んでいると思います。しかし、これをさらに推し進めるには、自主的なものだけではなく、何らかの行政的といいますか、法的な枠組みもあれば良いと思いますので、その辺は今のような御意見を参考にして、これは立法府の方に頑張っていただく。今度は国会議員に来てもらわないと困りますね。立法府の方に頑張っていただいて、そういう仕組みを作っていただきたいと思います。
それでは、本日はこの辺でまとめとしたいと思いますが、もう一つ、せっかくフロアにお詰めいただいて、質問用紙にいろいろ書いていただきましたけれども、さらに加えてもう一つ聞きたい、意見を一言言いたいということがございましたら、少し時間をとりますので、手を挙げてください。いかがでしょうか。よろしいですか。
それでは、この辺で終わらせていただきます。
まとめということもなかなかしにくいのですが、私としてはこういったことを是非今後も続けていただきたいと思います。大阪のこういう場でこういう議論をしましたら、これは皆さんを通じて社会に伝わっていきます。伝わっていくというのは大変大事なことなので、これは末永くやってもらいたいと思す。今回で24回目ですが、できたら来年もさらに続けていただきたい。ただ、メンバーは入れ替わったほうが良いかもしれないですけどね。どんどん次の世代に変わって展開していったら良いのではないかという感じを持っております。
それでは、事務局、お願いいたします。
(事務局)本日は長時間にわたりまして活発に御討論いただきまして大変ありがとうございました。
本日の議事録につきましては、出席者の皆様にまず御確認をいただいた後に公表させていただきます。本日の会議の配布資料につきましても、併せまして後日環境省のホームページで公開させていただく予定でございます。また、傍聴の皆様方にはアンケート用紙をお配りしておりますので、今日の円卓会議等についての御意見、御感想を御自由に御記入いただいて、受付にございます回収ボックスにお入れいただければと思います。よろしくお願いいたします。
またメンバーの方ですけれども、毎回ですが、次回の議題等を議論いただくために、この後、ビューロー会合を22階のパワーウエスト22Cという会議室で開催いたしますので、今日急いで帰られなければいけないという方はお引き止めしませんが、できましたらこの後30分か1 時間ほど、さらにビューロー会合のほうに御出席いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
では、本日の会議はこれで閉会いたします。どうもありがとうございました。