ダイオキシンリスク評価検討会の中間報告の概要(第3章)  
第3章 暴露評価

1 一般環境中のダイオキシン類の残留状況

2 我が国における一般的な生活環境からの暴露の状況

3 一般的な生活環境から偏りのある環境における暴露の状況


1 一般環境中のダイオキシン類の残留状況

 底質、生物については、「非意図的生成化学物質汚染実態調査(環境庁)」において、昭和60年度から全国の河川、湖沼、海域を対象として測定が行われているが、それによると河川の濃度レベルは、湖沼、海域に比べて少し低くなっている。
 また大気については「未規制大気汚染物質モニタリング調査(環境庁)」の測定項目の一つとして、昭和61年度から隔年で測定が行われているが、大気中濃度は、工業地域近傍の住宅地域及び大都市地域で高く、次いで中都市地域、バックグラウンド地域(山間地域等)の順に濃度が低くなる。

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2 我が国における一般的な生活環境からの暴露の状況

2-1 一般的な生活環境からの暴露の状況

 我が国における一般環境からのダイオキシン類の暴露の主な経路は、(1)食事、(2)大気、(3)水、(4)土壌と考えられており、各々の経路について、暴露量の推定を行うこととした。

2-1-(1) 食事からの摂取量

 国内での食物からのダイオキシン類摂取状況について、大阪府下において高山らはマーケットバスケット方式による推定を行っている。これによると、総ダイオキシン類の摂取量は163 pgTEQ/人/日である。
 また、環境庁が行った9都道府県での陰膳方式による摂取量調査の結果では、食事からのダイオキシン類の摂取量は平均1.25 pg/kg/day(最小値0.26〜最大値2.60 pg/kg/day)となった。
 これらの結果をまとめると、ダイオキシン類の摂取量の推定は表1のようになる。表1より、我が国における食事経由のダイオキシン類の摂取量は、0.26〜3.26 pg/kg/dayと推定される。

 表1 食物からのダイオキシン類の摂取量

摂取量
(pgTEQ/kg/day)
日本(1)3.26
日本(2) 1.25(0.26〜2.6)
ドイツ2.2
カナダ2.3
オランダ2.0
米国0.3〜3.2
イギリス2.1

 (注)日本人の体重は50kg、諸外国は60kgとして算出


2-1-(2) 大気からの摂取量

 環境庁の「未規制大気汚染物質モニタリング調査」の結果から、我が国の大気の代表濃度を以下のように仮定する。
  1. 工業地帯近傍の住宅地域及び大都市地域においては、中小都市地域及びバックグラウンド地域に比べて高い大気濃度が観測された。本暴露評価では、工業地帯近傍の住宅地域の平成2年度から平成6年度の平均濃度から、0.6pg/m3 を我が国の大都市地域の代表濃度として検討する。
  2. 中小都市地域の平成2年度から平成6年度の平均濃度から、0.5pg/m3 を我が国の中小都市地域の代表濃度として検討する。
  3. バックグラウンド地域での平成2年度から平成6年度の平均濃度から、0.06pg/m3 を我が国のバックグラウンド地域の代表濃度として検討する。
 以上の代表濃度に、1日の呼吸量(15m3/日)を乗じ体重を50kgとして、大気からのダイオキシン類の摂取量を求め、表2にまとめた。

表2 大気からのダイオキシン類の摂取量の推定

  代表濃度
pg/m3
摂取量
pg/kg/day
大都市地域0.6 0.18
中小都市地域0.5 0.15
バックグラウンド地域  0.060.02

 (注)1日呼吸量15m3/日、体重50kg


2-1-(3) 水からの摂取量

 水からの摂取量については、これまで、0.000036〜0.00048 pg/kg/day(Miyata)、0.0004〜0.0012 pg/kg/day(環境庁)といった調査結果がある。これらより、水からのダイオキシン類の摂取量は0.001 pg/kg/day程度と想定すれば十分と考えられる。


2-1-(4) 土壌からの摂取量

 土壌からの摂取量は、児童期及び生涯の経口摂取量と、皮膚接触による摂取量によって表3のとおり推定した。

表3 土壌からのダイオキシン類の摂取量

  経口摂取量 皮膚接触
からの
摂取量
(pg/kg/day)
土壌からの
摂取量
合 計
(pg/kg/day)
児童期

(pg/kg/day)
児童期以外

(pg/kg/day)


(pg/kg/day)
都市域 0.0230.060 0.0830.013 0.084
バックグラウンド 0.0020.006 0.0080.0001 0.008


2-2 我が国における一般的な生活環境からのダイオキシン類暴露の状況のまとめ

 以上より、我が国におけるダイオキシン類の平均的な暴露の状況を表4のようにまとめることができる。平均的な暴露量は0.3〜3.5 pg/kg/day程度と考えられる。

表4 我が国における一般的な生活環境からの暴露の状況の推定
   大都市地域 

pg/kg/day
中小都市地域

pg/kg/day
バックグラウンド
地域
pg/kg/day
食物 0.26〜3.26 0.26〜3.260.26〜3.26
大気 0.18 0.150.02
0.001 0.0010.001
土壌 0.084 0.0840.008
0.52〜3.53 0.50〜3.500.29〜3.29

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3 一般的な生活環境から偏りのある環境における暴露の状況

 我が国におけるダイオキシン類に係る暴露の全体的な状況を把握するためには、一般的な生活環境における暴露レベルを推定するとともに、このような一般的な生活環境から偏りのある特定の環境を仮に想定してみた場合に、暴露レベルにおおよそどの位の幅が生じる可能性があるのかを推定する必要がある。
 ここでは、一般的な生活環境から偏りのある特定の環境として、事例的に、次の二つのケースを取りあげた。
  1. 我が国の食生活の特徴を踏まえて、魚からの摂取が大きいと想定した場合
  2. 我が国におけるダイオキシン類の主要な発生源のひとつと考えられるごみ焼却施設の周辺環境を想定した場合
 ただし、個人の実際のダイオキシン類の摂取量は、地域や食生活等の条件の違いにより相当の幅を持つものと考えられる。また、ここでの推定は一定の前提条件に基づくものであることに留意する必要がある。


3-1 魚からの摂取が大きい場合の暴露の推定

3-1-1 魚の摂取量

 国民栄養調査(1995)によると、日本人の魚介類・魚類加工品の摂取量は1日当たり平均95.2g、標準偏差52.0gである。摂取量が正規分布に従うと仮定すると、
 μ+1.64σ=95.2+1.64×52.0=180.5g
となるので、1日に約180g以上、すなわち平均的な量の2倍程度の魚を摂取をする人が全体の5%程度存在することが想定される。


3-1-2 魚のダイオキシン類濃度

 食用を想定した魚の濃度に関するこれまでの調査結果から、沿岸魚と市販魚(摂南大調査の分類)、また、近海魚と外国産魚(愛媛大調査の分類)などによって魚のダイオキシン類濃度にかなりの差が存在する可能性が高い。このことから、魚からの暴露評価において、魚種あるいは漁獲海域の区別を行う必要があると考えられる。


3-1-3 魚からのダイオキシン類摂取の状況

 以上から、魚のダイオキシン類濃度としては、内海内湾魚では、厚生省調査の平成4年度〜平成7年度平均値の0.90 pg/g(検出された魚種の平均値)、及び、愛媛大調査の近海魚の濃度0.89 pg/gからおよそ0.9 pg/g程度と考えられる。
 また、遠洋沖合魚の場合は、愛媛大調査の外国産魚の平均濃度0.08 pg/g、及び摂南大調査のキハダマグロの分析値(0.01 pg/g)を参照して、代表濃度として、およそ0.1 pg/gと設定する。


3-1-4 魚からの摂取量が多い場合におけるダイオキシン類の摂取量

 以上の考察に基づき、魚からの摂取量が大きいケースとして以下の2種類を想定して暴露量の推定を行った。ただし、このような条件での摂取が長期間にわたり継続するかどうかは個人で異なるものと考えられ、実際の個人の摂取量はこの試算より低い値となることもあり得ると考えられる。

(1)平均の2倍程度の量の魚を摂取する場合

 3-1-1 での考察によれば、平均の2倍程度の量の魚を摂取をする人が全体の5%程度存在することが想定されるが、このような場合には、動物性たんぱくとして肉、卵を摂取しないものと仮定して推定する。
  1. 高山らの測定値に基づいて計算した場合、魚からの摂取量は、2×105pg/day÷50kg = 4.2pg/kg/day(表1より、魚介類からの摂取量が105pg/kg/day)となる。

  2. 表3の環境庁の測定値に基づいて計算した場合、魚からの摂取量は、2×1.25pg/kg/day×0.508 = 1.27pg/kg/day (表1の環境庁調査より、食事からの摂取量が平均1.25 pg/kg/day、魚からの摂取量は,調査における3地点平均で50.8%となることから推算)と推定される。

  3. 魚の濃度として高山らの測定値と環境庁の測定値の平均値を用いた場合、魚からの摂取量は、2×(2.1+0.64)/2=2.74(表1より、魚介類からの摂取量105pg/day÷50=2.1pg/kg/day、また表3より食事からの摂取量が1.25pg/kg/day、表2より魚からの摂取量が3地点平均で50.8%となることから推算)
(4)内海内湾魚を中心に平均的な摂取量程度の摂取を行う場合

 この場合、魚からの摂取量は、95.2×0.9/50=1.71 pg/kg/day
 これまでのところ、我が国での魚からの摂取量の推定を行ったデータが極めて少なく、魚からの摂取が大きい場合の推定は大きな幅を持っているが、総合すると、高山らの測定値と環境庁の測定値の平均値を用いると、2.74pg/kg/dayとなり、両方の測定値をそれぞれに用いると、1.28〜4.2pg/kg/day程度のダイオキシン類を魚から摂取する可能性が推定される。また、他の暴露経路からのものも含め全体として、大都市地域ではそれぞれ3.59 pg/kg/day、1.90〜5.28 pg/kg/day程度の摂取量が推定される。

表5 魚からの摂取量が大きい場合におけるダイオキシン類暴露の状況の推定

 大都市地域
pg/kg/day
中小都市
pg/kg/day
バックグラウンド
pg/kg/day
食物  3.32
(1.63〜5.01)
3.32
(1.63〜5.01)
3.32
(1.63〜5.01)
大気0.18 0.150.02
0.001 0.0010.001
土壌0.084 0.0840.01
3.59
(1.90〜5.28)
3.56
(1.87〜5.25)
3.35
(1.66〜5.04)


3-2 ごみ焼却施設周辺における暴露の状況

 ここでは、ごみ焼却施設周辺における暴露の状況を把握するため、ごみ焼却施設の煙突からの排ガスの拡散をモデル式により計算し、年平均ベースの最大着地濃度を予測する。


3-2-1 ごみ焼却施設の類型化と拡散濃度予測

 ごみ焼却施設を、炉形式・冷却方式・対策・排ガス処理形式・煙突高さなどで47種類の類型化を行った。これによって、一般的なごみ焼却施設の状況はほぼ網羅していると考えられる。
 これらの類型毎に、大気拡散モデルにより、煙突排ガスに由来するダイオキシンの年平均値ベースの最大着地濃度を推定した。さらに、平均的なダイオキシン類排出濃度の場合に加えて、既存のごみ処理施設の排出濃度分布(厚生省ごみ処理に係るダイオキシン削減対策検討会中間報告資料4)からみて、平均的ケースより2標準偏差程度高い濃度のダイオキシン類が排出された場合を想定して推定を行った。この場合の予測条件は、機械化バッチ式・独立煙突の施設の平均的な予測条件と仮定した。


3-2-2 拡散濃度予測の結果

 平均的な排出濃度の場合、排ガスのダイオキシン対策をとった場合のケースにおいて、年平均値で0.01〜0.8pg/m3、ダイオキシン対策をとらない場合のケースにおいて、0.2〜1.9 pg/m3の最大着地濃度が予測された。さらに平均的な排出濃度よりも高い排出濃度のケースにおいては、年平均値で約3pg/m3の最大着地濃度が予測された。また、拡散モデルより大気降下量の推定値を計算した。


3-2-3 ごみ焼却施設周辺の環境濃度の設定

 拡散濃度予測の結果と大都市地域における一般環境大気濃度から、ごみ焼却施設周辺の大気濃度を3〜4 pg/m3と設定した。大気降下量は最大着地濃度地点での降下量より設定した。土壌濃度は産業廃棄物焼却場周辺の実測値より設定した。


3-2-4 ごみ焼却施設周辺におけるダイオキシン類の総摂取量

 以上より、ごみ焼却施設周辺でのダイオキシン類の総摂取量を整理すると表6のように推定できる。

表6 ごみ焼却施設周辺におけるダイオキシン類暴露の状況

 摂取量
 pg/kg/day 
食物    0.26〜3.26
大気0.9〜1.2
0.001
土壌0.63
1.79〜5.09

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