エコチル調査
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特別講演・パネルディスカッションの内容(第6回エコチル調査シンポジウム)

【特別講演(対談)】新米パパから見た子育てについて

出演
山根良顕(タレント アンガールズ)
大矢幸弘(エコチル調査メディカルサポートセンター特任教授)
ファシリテーター
武田真梨子(日本科学未来館 科学コミュニケーター)
シンポジウムの写真
子育ては夫婦で話し合って
武田
本日は、山根さんのインスタグラムから、お写真を数枚お借りしております。皆さまと一緒に見ながらお話を進めていきたいと思います。
まずはご家族をご紹介いただけますでしょうか。
山根
現在の家族構成は、僕と、奥さんと、娘一人となっています。娘は1歳9か月です。
武田
さて、山根さんは、子育ては奥様と一緒にされているということですが、奥様との考え方の違いや、役割分担などありましたら、お話しいただけますか。
シンポジウムの写真

山根良顕

山根
子育ては協力してやることができればいいのでしょうけど、そうはいっても奥さんのほうが長い時間子どもと一緒にいますので、僕のルールを押し付けるようなことはしません。基本的には奥さんと話をして、奥さんはこういったかたちで進めていきたいということを聞きながら、僕は、できることをやっていくようにしています。
武田
お二人でご協力されつつ、どちらかというと、奥様が舵をとられながら子育てをしているということですね。
山根
今後、受験とかになってくると意見が別れてくるのかもしれませんが、基本的には、どういうことが娘にとって幸せなのかを考えながら話し合う、ということになると思います。ただ、それが本当に合っているのかどうか。もっと意見をぶつけて、対立しながらも進めていったほうがよいのか。そういった悩みはありますね。
お父さんも子どもに積極的に話しかけて
武田
大矢先生におうかがいします。山根家のように、子育てを夫婦で協力されているご家庭というのは、お子さんの健康や成長にどういう影響があると考えられるでしょうか。
大矢
子育てへの父親の関わりは、当然、子どもの健康や成長にも影響してきます。エコチル調査でもそれは重要なテーマです。
父親の子育てへの関わり具合と環境化学物質の影響とでは、どちらが子どもの健康や成長に対し強い影響力を持っているか。エコチル調査を進めていくと、そういったことがだんだんわかって来ると思います。
シンポジウムの写真

大矢幸弘

武田
山根さんがお子さんと接するとき、心がけていることはなんでしょうか。
山根
積極的に話しかけるようにしていますね。子どもと一緒になにかを見たとき、「これはなんとかだね」と言うとか。僕がMCをやっているNHKの「すくすく子育て」という番組にお父さんの子育てを特集した回があって、子育てする時はしゃべったほうがいいと聞きました。お父さんが全然しゃべらずに子育てをやっていたりすると、子どもが慣れないらしいのです。
武田
大矢先生、積極的にお子さんに話しかけるというのは、お子様の発育にとってどのような影響が考えられますか。
大矢
母子相互作用という言葉があって、お母さんが積極的に子どもに話しかけることで、子どもの発育によい影響を与えることがわかっています。お父さんが子育てに積極的に関わると、母子相互作用のみならず、父子相互作用といったものも絡んできます。ですから、お父さんにはぜひとも子育てに関わっていただきたいのです。
子どもの歯磨きで気をつけることとは?
武田
山根さんのお家では、お子さんの歯磨きはいつもお父さんがされているのですね。
大矢
歯磨き粉はお使いになっていますか。使っているとしたら、大人用、子ども用、どちらの歯磨き粉を使っていますか。
山根
子ども用の歯磨き粉を使っていますね。
大矢
歯磨きをして口の中を清潔に保つのは、健康上大事なことです。ですが、子どもが大人用の歯磨き粉を使うと歯磨き自体を嫌いになってしまう事があるので、メーカーは子ども用歯磨き粉の味をおいしく作っている。子どもが歯磨き粉を食べないようにブラッシングのみとか、塩を使用した歯磨きとかをされている方もいらっしゃいます。ただ最初からそれをやると、子どもが歯磨きを嫌いになる可能性があるので(笑)、歯磨きに慣れたら、塩に変えてもいいかもしれないですね。
部屋の埃から卵アレルギーになる可能性?
大矢
このジュータンの上で寝そべっている写真のように、子どもは低いところで生活をするのが好きで、実はエコチル調査でも、こういった子どもの行動にはとても関心があるのです。
武田
どういうことでしょうか。
大矢
エコチル調査のパイロット研究(テスト的に行う調査研究)にご参加いただいている方のご自宅から埃を集めてその一部を分析したところ、全世帯から卵の抗原が検出されました。なかには、ダニの濃度よりも卵の濃度が高いご家庭がありました。日本では、食物アレルギーのうち、卵のアレルギーが一番多いのです。
最近わかってきたことですが、子どもの皮膚に湿疹があったりすると、そこからアレルゲンが取り込まれるのです。子どもたちは床に寝そべる生活をしているので、まったく卵を食べていなくても、湿疹があると、卵アレルギーになってしまう可能性が上がるということです。
山根
家で卵料理をしているときに、卵の成分が飛んでいるのですか。
大矢
料理をしたり、食べたりすると、当然飛び散ります。それが落下したりして、埃に付着するのです。
山根
防ぎようはないのでしょうか。
大矢
お肌が正常であれば皮膚からアレルゲンが取り込まれる可能性は低くなりますので、大丈夫です。乾燥肌のお子さんであれば、保湿剤を塗るのがよいでしょう。
武田
山根さんのお子様はアレルギーをお持ちですか。
山根
今のところアレルギーは出ていないです。とは言え、アレルゲンがたまっていくとアレルギーが発生するということでしたら、部屋をきれいにするよう気をつけたいと思います。ただ、皆さんもそうだと思うのですけど、気にしないといけないことと、どこまで気にしなければいけないのかについては、すごく悩みますよね。
寝具のダニを減らすには?
大矢
日本の室内環境の特徴はダニの濃度が高くなりやすいことです。対策として、新しいお布団にはダニがいないので、買ったときにすぐダニを通さないカバーをかけてしまえば、中のダニはほとんどいなくなります。しかし、カバーの外側ではダニが増えますので、掃除機で吸いとるとか、粘着ワイパーでとるとか、洗濯することにより減らすことが可能だと思います。
山根
布団用の掃除機を定期的にかけたほうがいいのですか。
大矢
はい。ですが、皆さん掃除機を買われたときはするのですが、重労働なので、1年ぐらいするとやめてしまう方が多いようです。
ペットを飼う? 飼わない?
武田
ペットを飼うことについて、大矢先生から気になることがあればお願いします。
大矢
ヨーロッパで行われたエコチル調査より少し規模の小さい研究の結果を紹介しますと、犬を飼っている家で生まれた子どもは、飼っていない家で生まれた子どもと比べ、アレルギーが少ないというデータがあるのです。ところが、アジアのほうで調べてみると、ヨーロッパとは逆の結果が出たりして、詳しいことがまだわかっていないというのが現状です。エコチル調査でもペットについて調べていますので、いずれ、10万人を対象に調査した結果が出ることになります。
武田
アレルギーに関して、ペットを飼う飼わないで違いがわかるかもしれないということですね。
食べさせ過ぎはよくない?
大矢
最近は、あまり食べないお子さんが増えているようですが、山根さんのお子さんはいかがですか。
山根
止めないとずっと食べています(笑)。
大矢
そういうお子さんのほうがしつけがしやすいのです(笑)。最近は食べないお子さんが多いので、親が無理やり食べさせようとする。そうするとよけい食べなくなってしまうため、成長に悪影響が出てくることがあります。
山根
肥満とかは大丈夫なのでしょうか。太りやすい体質になってしまうから、食べさせ過ぎはよくないということをよく聞きます。
大矢
子どもの頃に太ってしまうと脂肪細胞の数が増えてしまい、高度肥満になりやすいという話は確かにあります。しかし、それでも食べないことのほうが問題です。お子さんが食べないから、食べるものをなんでもあげようとする親御さんがいます。お砂糖がいっぱい入っているものとか、身体によくないものとかでも、食べてくれればよいという考えであげちゃうことが、逆に問題なのです。
山根
あまり栄養のバランスを考えて食べ物を与えているということはないのですが、ただパンばかりを食べていることがあり、それがよいのかどうかで悩んでいます。
大矢
人間はある程度自然にいろいろなものをバランスよく食べるようになっているので、極端な偏食にならない限り大丈夫だと思います。現在の食文化は、それぞれの国の中で、ある程度バランスが取れて成り立っており、食のバランスについてことさら細かく考えなければいけないといったことはないでしょう。
子どもは自分で選んで行動できず、親が選んであげる必要がある
武田
最後に山根さんから一言いただけますか。
山根
今のところ子どもに問題はありませんが、環境とかアレルギーとかが気になりますし、食べ物はなにがよいのか、どういうものがよくないのかということも知りたいです。飲み込んだ歯磨き粉が、健康に影響があるかどうかまだわかっていないというのも初めて聞くことで、本日は勉強になりました。これからも、エコチル調査のような調査をしているところの発表や調査結果を見たいと思いました。子どもは自分で選んで行動できず、親が選んであげる必要があります。また、子どもは遊ぶものでも口に入れたりするので、エコチル調査でそういうものの健康への影響を調査していただいて、助かるなと思います。

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【パネルディスカッション】子育てを支える色々な立場から見た子育てと生活環境

コーディネーター
山縣然太朗(エコチル調査甲信ユニットセンター長)
パネリスト
山根良顕 (タレント アンガールズ)
新田裕史 (エコチル調査コアセンター長代行)
櫻井香澄 (エコチル調査宮城ユニットセンター)
藤谷宏子 (日本小児医会理事)
ファシリテーター
武田真梨子(日本科学未来館 科学コミュニケーター)
シンポジウムの写真
話題1 子育ての状況について
山縣
最初の話題としまして、家事や子育てを、夫婦がどのように協力して行っているのかについての集計結果をまずお見せいたします。
エコチル調査は10万組の親子にご協力いただいていますが、その中で、3歳半もしくは3歳のお子さんがいるご家庭に回答いただいたものです。
シンポジウムの写真

山縣然太朗

山縣
パートナーの育児や家事に「満足している」と答えたお母さんが24%、「ほぼ満足」が40%で計64%、つまり3人に1人が満足しているという結果です。内閣府が平成21年に行ったインターネット調査で未就学児のいるご家庭のお母さんに聞いた場合、やはり同じような結果が出ていました。
シンポジウムのスライド

(集計結果:パートナーの育児や家事への満足度)

山縣
次にお示ししたのは、お母さんの満足、不満足別にパートナーの分担状況を見たものです。「ゴミを出す」を見ると、パートナーの育児や家事に満足と答えたお母さんのパートナーの場合、半分の人がゴミ出しをしている。不満足の場合、ゴミを出す人が31%でした。お父さんが何らかの家事を分担することはお母さんの満足につながっているようです。「(子どもと)一緒に入浴する」ということも、満足しているというお母さんは56%で、不満足では16%となっています。「排泄の後始末をする」では、満足しているお母さんが22%で、不満足だと4%しかいないということになりました。
シンポジウムのスライド

(集計結果:お母さんの「満足」「不満足」別パートナーの分担状況)

山縣
次のスライドは、自分以外にお子さんの面倒を見てくれている人はいますかと聞いた結果です。98%が「いる」という回答であり、ほとんどのお母さんには自分以外にお子さんの面倒を見てくれる人がいるわけですが、回答者の2%、つまり6万人弱のうち1000人以上の人は、自分以外に面倒を見てくれる人がいない、ある意味孤立した状況にいるかもしれないということがわかります。面倒を見てくれる人の内訳としては、パートナーが一番多く、次が両親となっています。
シンポジウムのスライド

(集計結果:お子さんの面倒を見てくれる人)

山縣
次が、子育てについて相談できる人ということですが、これも99%の人が「はい」と回答しており、回答者の1%、約570人には相談できる人がいないということが課題でしょうか。相談できる人の内訳としては、83%がパートナー、両親が80%となっており、この結果からも、やはりパートナーの存在は非常に大きいということがわかります。我々が他で行っている同様の調査では、今どきのお母さん方らしく、相談相手について「インターネット」と答える人がたくさんいたりしますが(笑)、今回の調査は、パートナーの重要性がわかる結果となっています。
シンポジウムのスライド

(集計結果:子育てについて相談できる人)

山縣
エコチル調査は化学物質と子どもの健康の関係を見ていくことを目的としていますが、子育て状況に関する調査も行っています。その理由として、子どもの健康には、家庭環境を含む社会的要因だとか、生活習慣だとか、遺伝的要因などが必ず関係しており、それらをきちんと調べたうえで、化学物質と子どもの健康との関係を見ていくことが必要なのです。また、化学物質などによるリスクがあったとしても、その他の社会的要因がうまく働いていると、子どもの健康への影響がなくなるということもわかるかもしれません。
夫婦仲をよくすることが、子どもの成長の環境をよくする
山縣
さきほどの特別対談で、山根さんは、奥さんと話し合って家事や育児をやっていると言われていましたが、そういう意味で、お互いに納得して家事や育児を分担されているということですね。
山根
基本的には奥さんが子育てをしていますので、家に帰ったときには、残っている家事ぐらいやらないといけないと思うようになりました。
家事や育児をやったほうが奥さんの機嫌もよくなりますし、結局のところ、夫婦仲をよくするということが、子どもの成長の環境をよくするのではないかと思います。
シンポジウムの写真

山根良顕

「ありがとう」「疲れているところごめんね」の一言を
櫻井
主人と11ヵ月の娘と3人で暮らしているので、家事をするのは私もしくは主人のどちらかです。育児休暇中はそれなりに家事ができていた部分もあったのですが、いざ仕事に戻ると、洗濯だったら、洗って干すまではできてもたためなかったりとか、食事だったら、作るまではできても片付けられなかったりとか、できないことがなにかと増えてしまいました。そうしたとき、主人はなにも言わないで黙って片づけてくれて、それがいつの間にか分担のようなかたちになっています。
ただ、なにも言わずにやってくれていることを当たり前だと思ってしまうといけないので、「ありがとう」とか、「疲れているところごめんね」とか、必ずお互いに言うように心がけています。
シンポジウムの写真

櫻井香澄

山縣
脳には「報酬系」という神経系があり、誰かに褒められるとか認められると、人のためになにかするということが、最近の脳科学でわかってきました。きっとご主人は、もっともっと家事をやってくれるようになると思います(笑)。
お互いを思いやる気持ち、そういうものの中で子どもを育てるということが大切
藤谷
お二人のお話をお伺いして素晴らしいと思いました。山根さんがおっしゃいましたように、ご夫婦が仲がよいということが一番子どもたちのためになると思います。少々家が散らかっていようが、まず気持ちの問題が大切ですので、夫婦が仲よくし、相談したことを協力して行っていく。そして、櫻井さんのようにパートナーに対して感謝の気持ちを持ち、その気持ちをお伝えする。そのような夫婦の姿を見て、子どもたちも優しく育っていくのだと思います。さきほど、できるだけお話しするようにしているといったお話もありましたが、そのような夫婦間の会話が、子どもたちの子育てにとてもいいものになるかと思います。お互いを思いやる気持ち、そういうものの中で子どもを育てるということが大切ではないかと思っています。
シンポジウムの写真

藤谷宏子

山縣
山根さんは、夫婦で意見が食い違うときにはどのようにしているのですか。
山根
基本的には奥さんの思考に僕の思考を寄せるようにはしています。それでも納得がいかなかったりとか、意見がぶつかったりするときには、僕が折れるようにはしています。ただ、その折れ方も、僕が折れていますよという雰囲気を出さないように、うまく折れるということを心がけるようになりました。
櫻井
「私も忙しいんだから・・・」と言ってしまうと、必ず「俺だって忙しいし、仕事もしているし」と始まってしまい、けんかにつながってしまうことにもなるので、できるだけそういうことは言わないようにしています。
山縣
今、お三方にお話いただいた仲がよいことの重要性は、脳科学の世界でもわかってきています。ヒトには、「愛情ホルモン」とも呼ばれる「オキシトシン」という物質があり、そのホルモンが分泌されると、非常に安寧な気持ちになり、ストレスも下がると言われています。愛情ホルモンは、良好な人間関係にあるとよく分泌され、また、赤ちゃんとスキンシップをとることでも分泌されるということです。良好な人間関係をきちんと築いたりすることで、脳も反応し、子どもの成長にも好影響を与えるということが少しずつわかってきたのです。
話題2 子育ての生活環境について
山縣
続いての話題は、子どもの生活環境についてです。さきほどの大矢先生のお話にもありましたが、エコチル調査では、アレルギーをはじめとするいろいろな病気と環境との関係を見ていくため、お子さんの生活環境を調べています。
山縣
「カーペット」や「布張りのソファー」といったものを多くの人が使っており、次いで、「布団」「10個以上のぬいぐるみ」となっています。これらのものがなかったご家庭は全体の3%のみで、ほとんどのお子さんが、こういったものの中で生活していることがわかります。
シンポジウムのスライド

(集計結果:カーペット、布張りソファーなど)

山縣
約70%のご家庭では、家のどこかにカビが生えていて、内訳としては、「浴室」がやはり一番多いようです。また、「子どもの寝室」にカビが生えているご家庭も10%あるということです。
シンポジウムのスライド

(集計結果:家の中のカビ)

山縣
お子さんの寝室の床の種類として一番多いのが「床張り、フローリング、タイル」の46%となっており、「畳」は33%となっています。これも、ダニや、さきほどのお話にもあった卵のアレルゲンなどがどの程度存在しているのか、どういう環境でお子さんが暮らしているのかということを見ていくために調べています。
シンポジウムのスライド

(集計結果:お子さんの寝室の床の種類)

山縣
室内でペットを飼っている人が18%ほどいて、多い順に「犬」「猫」「魚」となっています。
シンポジウムのスライド

(集計結果:室内でのペットの飼育)

5千件の家庭を調査する意味とは
山縣
エコチル調査には、10万人のうち5千人を対象とした詳細調査という調査があって、現在、その詳細調査の中でご家庭のゴミを集めているところです。このような調査がエコチル調査においてどのような意味を持っているのかなどについて、あらためて新田先生からお話しいただけますか。
新田
エコチル調査はアレルギーだけの調査ではありませんが、子どもの病気の中でアレルギーはやはり重要なものです。今ご紹介いただいた集計結果は、基本的にアレルギー疾患との関係が疑われている生活環境要因を聞いたものです。例えば畳の上のジュータンにはダニが多いということが言われています。一方、そのような環境で育ったお子さんにアレルギー疾患が多いのかどうかについては、はっきりした調査結果は出ていないと思います。化学物質の影響を調べるとともに、どのような対処法がよいのかを探るということもあって、エコチル調査ではご家庭の生活環境を調べています。
シンポジウムの写真

新田裕史

ちょっとしたことの実践で、カビやダニ対策を
藤谷
カビやダニと言いますと、家が汚いという印象を持たれるかもしれませんが、まずどの家にもカビやダニはいるということでご理解いただきたいと思います。
カビにはいろいろな種類がありまして、エコチル調査の集計結果のように、浴室に多く発生します。浴室にある黒いカビはアルテルナリアというものが多いのですが、そういったカビが飛散し、人間が吸引してしまうと、ダニを吸ったときと同じようにぜん息や鼻炎になったりすることがあります。ですので、やはりカビがないのが望ましいのですが、日本の気候環境でカビがまったくない状況にするということには難しい面があります。
ただ、ちょっとしたことを実践することで状況は変わってきます。
まずは、お風呂を使用した後に、乾燥させるため窓を開けたり、換気扇を回したりすることでも、カビを防ぐことができます。また、床だけではなく、天井もあわせて掃除し、乾燥させるということも大切です。
次にダニについてですが、ダニはお布団などにたくさんいます。寝具はこまめなお手入れが大切で、私のクリニックでは、「干して、叩いて、吸って」を合言葉にしています。55℃でダニは死ぬと言われており、日光干しをすることが重要です。そして、日光干しをするときにお布団を叩き、叩いただけではダニの死骸が残りますので、掃除機で吸うことも大事です。「吸うときは、お布団一枚につき2分」と私のクリニックでは言っています。そのように丁寧にお掃除をしていただくと、状況が改善されていきます。
それから、ご家庭のリビングなどに観葉植物を多く置いている方もいらっしゃいますが、観葉植物にもカビがつきやすいというデータもございますので、むやみにたくさん置かないということも注意していただきたい点です。
また、ぬいぐるみを変えるだけでも夜間のぜん息発作が少し減ったという例もあります。さびしいからぬいぐるみと一緒に寝ているというお子さんが多いようですが、最近では、丸洗いができるぬいぐるみとか、健康に配慮したダニがつきにくいぬいぐるみとかもありますので、子どもの健康を考えると、そういったものを利用することが大切かと思います。
親が掃除や洗濯の家事で疲れ切らないことが大切
櫻井
我が家では、入浴が終わったら必ず水切りをし、さらに浴室乾燥をかけて、お風呂にだけはカビが生えないように気をつけています。ですが、マンションなので機密性が高いためか、窓枠のゴムパッキンにカビが付いており、掃除をしてもなかなかとれません。春に向けてどのような対策を取ればいいのか悩んでいるところです。
寝具に関しては、子どもをベビーベッドで寝かせていたときは、ダニ専用の掃除機をかけていました。子どもが大きくなって私たちが寝ている大人用のベッドに移動させたのですが、大人用ベッドだと掃除機をかけるのが億劫になって、だんだんやらなくなってきています。藤谷先生のお話を聞いて、ちゃんと掃除機をかけないといけないと反省したところです。
山根
TV番組で、我が家にカビがどれぐらいあるのか調査したことがありました。日頃からきちんと掃除をしているつもりだったのですが、お風呂場の天井に目に見えないぐらいのカビが残っていました。それ以来、数か月に1回、煙でカビを退治するものを使うようにしています。ダニ対策としては、子どもが小さかったころは、ベビーベッドに、健康影響のないダニ退治スプレーをかけていましたが、現在はシーツを代えるぐらいしかやらなくなっています。
藤谷
ぜん息などの症状がないお子さんのご家庭だったら、まず親御さんが掃除や洗濯の家事で疲れ切らないことが大切です。家事は毎日しなければいけないことですし、子育てはある意味一生続くものです。掃除で疲れて子どもと遊べなくなるといったことのほうが、逆に問題かもしれないと思っています。
一つ一つの要因がどのように子どもの健康や成長に関わっているかをお示しするのが、エコチル調査の役割
櫻井
今までは私なりに育児も家事もがんばっていました。藤谷先生のお話を聞いて、子育てを楽しむことができていれば、家事はそんなに無理しなくてもいいのかなと思えたので、とてもよかったと思います。
山根
子どもが産まれる前は、子育てというのは楽しいのだろうなと漠然と想像していましたが、実際やってみると大変なことが多かったり、自分の時間がとれなかったりして、ストレスがたまります。パートナーや、お祖父さんお祖母さん達と一緒に、積極的に育児に参加することができれば、自分の環境もよくなるでしょうし、最終的に子どもの幸せにつながっていくのだなと、いろいろなお話を聞いて思いました。
藤谷
子育てというのは24時間救急と似ています。いつなにが起こるかわからず、それに対応しなければならないということで、本当にストレスがたまるものです。外的な環境に加え、精神的な環境をよくすることも大切ですので、家事や育児で疲れ切らず、安心して、子育てを楽しんでいただきたいです。また、住環境だけではなく、心の環境がよくなるよう、行政を含め様々な方面より支援をいただきたいと考えております。
新田
エコチル調査は環境化学物質の影響をしっかりと調べていくものです。その重要性はもちろんですが、子どもの健康や成長を決める要因には様々なものがあり、一つの環境要素だけを気にして、他とのバランスが崩れるようなことは、かえってよくないだろうと思います。一つ一つの要因がどのように健康に関わっているかを調べ、それを皆さんにお示しするのがエコチル調査の役割であることをあらためて自覚し、責任を持ってこの調査を進めていきたいと思います。
山縣
大矢先生と山根さんの対談の中で、山根さんが「気にしないといけないと思うのだけど、どこまで気にしてよいのかわからない」とおっしゃっていました。多くの人が感じている気持ちを、山根さんに代弁していただいたと思います。寺田寅彦という物理学者が、「ものを怖がらなさ過ぎたり、怖がり過ぎたりするのはやさしいけど、正当に怖がることは難しい」ということを言っておられ、まさに環境と健康というのはそういうことなのではないでしょうか。そして、難しいことを少しでもやさしくできるというのが、このエコチル調査の成果ではないでしょうか。皆さんのご支援によって、このエコチル調査がよりよい子育て環境に寄与できればと思います。

(文中敬称略)

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