大臣談話・大臣記者会見要旨

山口大臣閣議後記者会見録(令和4年2月18日(金)9:01~9:24於:環境省第1会議室)

1.発言要旨

私から今日は2点。日本鉄鋼連盟との懇談会と脱炭素都市国際フォーラムの開催についてお伝えします。日本鉄鋼連盟との懇談会については、カーボンニュートラル実現に向けた経済社会のグランドデザインを描くために、様々なセクターと対話を重ねていくことが重要だと考えています。1月から我々全国行脚を行って、既に100名以上の首長さんを始めとする地方の関係者の方々と意見交換をしているところですけれども、産業界の意見も幅広くお聞かせいただきたいというのがその趣旨です。この第1弾として、本日、日本鉄鋼連盟の橋本会長ほかにお越しいただいて、カーボンニュートラルへの移行に向けた鉄鋼業界の見通し、その中で生じている課題、カーボンプライシングを含む様々な政策に対する我々への要望などについて、意見交換を行わせていただく予定です。本日を皮切りに、これから各業界との意見交換を重ねていきます。カーボンニュートラルの実現という目標に向けて、忌憚のない議論が行えることを楽しみにしています。脱炭素都市国際フォーラムの開催については、インド太平洋諸国における脱炭素移行促進に向けた日米協力の一環として、3月9日・10日に、アメリカ政府と共催で、脱炭素都市国際フォーラムを開催することが決定しました。本フォーラムでは、国内外から多くの都市に声をかけて、脱炭素社会の実現に向けて鍵となる都市の脱炭素化について、日米を含めた各国の先進事例の共有を行わせていただく予定です。また、脱炭素ドミノを加速するための中央政府としての役割、あるいは都市間連携などの促進方策についても議論をする予定です。初日の9日に、私や、あるいはアメリカ側の高官から開会の挨拶を予定しています。本フォーラムを通じて、都市間のネットワーク構築とインド太平洋諸国における脱炭素化を加速していきたいと思います。それからあともう一つ、先日2月15日の閣議後の記者会見でのやり取りについて、クラリファイ、確認させていただきたいと思います。2月15日、先日の会見において、「甲状腺がんの原発事故による放射能の影響かどうかは断定できなくて、引き続き調査をするというふうに述べられたと思うんですけれども」という質問があったので、私のほうから、「引き続き」というのは、質問を引っ張っちゃったんだけど、「調査をするというふうに私は言ったことないと思います」と回答したところです。これは、「甲状腺がんが原発事故による放射能の影響かどうかは断定できないこと」に対し、「何か新たに調査をすると言ったのか」という趣旨の質問があったと理解して、そのような「新たな調査をすると私は言ったことはない」というふうにお答えをした次第です。国内外の公的な専門家会議により、現時点で放射能の影響とは考えにくいとの評価がなされており、専門家による新たな調査を立ち上げる必要はないという認識を示させていただいたものです。ただ、会見記録を読み返しますと、そのお答えする際に、「引き続き調査をするのか」という質問から引っ張ってしまって、「調査をするというふうに私は言ったことはない」とお答えしたんで、分かりにくかったんだと思います。「引き続き」というのは余計だったと思います。正確には、「新たな調査をすると言った覚えはない」との趣旨です。一方で、現在、継続的に行われている福島県の「県民健康調査」については、2月4日の会見、その前の会見ですね、において、「すぐポンと打ち切らずに、引き続き調査させていただくんだろうなというふうに考えています」と発言しているとおりで、引き続き、福島県民の気持ちに寄り添いながら、継続的に実施されていくことが重要であると考えております。その意味で、2月4日の発表からの修正はありません。以上です。

2.質疑応答

(記者)産経新聞の日野です。本日、鉄連の橋本会長とお目にかかって意見交換という点についてなんですが、もう少し具体的に、どういったことを聞きたいのかというのを教えていただければと思うのが一つと、あと、今後、広く、幅広い業界からお話を聞きたいということでしたが、具体的に、聞きたい業界、二、三挙げていただければと思います。それと、政策要望を、意見交換を行うということでしたので、今日の話、また今後の意見交換で、政策にどのように反映していくのか、お考えを教えてください。
(大臣)いろいろな業界があるわけですね。それで、それぞれが頑張って温室効果ガスを削減してくと。そのことによってカーボンニュートラルを実現するというのが全体あるわけですけれども、それぞれの業界との意見交換を通じて、カーボンニュートラルへの移行に向けた、その業界の事情、あるいはカーボンプライシングを含む様々な政策に対する意見などを聞いていきたいと思っています。例えば鉄鋼業界であれば、よく言われることですけれども、コークスと一緒に燃やせばCO2H2で燃やせばH2O、大変なイノベーションですけれども、高炉を替えなければいけないと。高炉を替えるのに多分全部で何千億円で済まないんだろうということも言われています、兆円レベルであろうと。そういう話もお互いに意見交換して、官民一体ということは、我々もサポートするけれども、じゃあ、企業側あるいは民のほうでどういうことができるのか、内部にとどまっている資金についてもどういうふうにそこでできるのか、いろいろな観点があると思います。イノベーションというのはお金かかるわけですから、そういう意味で、今の地球温暖化対策税、2,000億円ちょっとと言われていますけれども、そこで賄える話でないことは誰が考えても分かる話で、じゃあ、どういうイノベーションの原資があり得るか、ここは新たな仕組みが求められているんじゃないかと思うんです。その中で、カーボンプライシングというものも一つの議論だろうと思います。カーボンプライシングは2つの要素があるわけですから、二酸化炭素を使うことに対するプライス、あるいはそのことによって得られる収入をイノベーションに使っていく、どちらの要素もあるわけですから、そういうことも含んで、じゃあ、そのカーボンプライシングというものが議論されるからには、やっぱりそういうグランドデザイン的に、こういうふうに良くなるんだと、こういうことをやることによって、日本の鉄鋼業界が世界に冠たる鉄鋼業界として、もう一回頑張るんだというところをお互いに見つけていきたいなというふうに思っています。ですから、この話は前向きの話として受け止めていってもらいたいなと。何度も私もここで言わせていただいていますけど、やっぱりこれはダーウィンの進化論みたいな話だと思うんですよね。自動車業界も同じようなところもあるかもしれませんけれども、恐竜が、大きくて強い恐竜、何でそこで滅びたのかと。じゃあ、その小さくてか弱い哺乳類が何で生き残ったのか。だから、大きいものが、強いものが生き残るわけじゃなくて、自分を変えられるものだけが生き残っていると。それは哺乳類だったと。そういう意味では、今、大変な状況が迫ってきているわけで、その状況をどういうふうにやっぱり生き延びていくか、あるいは、そこを契機として、頑張れる産業であり得るか。そういう趣旨で、今回の意見交換を始めていきたいなというふうに思っています。今、1月から全国行脚ということを、私のみならず2人の副大臣の方々、あるいは大臣政務官の方々とやらせていただいているわけですけれども、2月25日から開催する中環審炭素中立型経済社会変革小委員会で議論が始まります。あるいは、各業界との意見交換は今日皮切りですけれども、様々な声が上がってきたものを受け止めて、この経済社会変革に向けたグランドデザインに反映させていきたいなというふうに考えています。今決まっているところというのは、今日の後、3月2日に電事連、オンラインのようです。3月3日には石油連盟、3月15日には日本ガス協会。ここまでが決まっています。あとは調整中です。

(記者)テレビ朝日の川﨑です。今、冒頭にありました鉄鋼連盟との会談ということなんですけれども、かねてからずっと、産業界と意見交換したいというふうに大臣はおっしゃっていましたが、一方で、若者世代と対話をするということは、前の大臣から比べると、かなり機会が少ないというふうに感じています。そういったところ、新しい小委員会でもハチドリ電力の方が入っていますけれども、学生の方とかと意見交換するようなお考えはあるんでしょうか。
(大臣)若い方との意見交換も是非やらせていただきたいと思っています。グラスゴーで高校生の方と話をして、「また東京で続きをやりましょうね」というふうに言いましたから、そういう意味では、今、彼はどうしているのかなというふうに、いつも思っています。ちょっとばたばたしていて、今、まだ声をかけられていないですけれど、是非、来ていただけることが可能であれば、是非お話しさせていただきたいなと思っています。あと、このグランドデザインを描くに際しては、どうしてもそれぞれの産業界の方々との話が中心になると思うので、他方、川﨑さんおっしゃるように、若い方々がどういう、未来に対するビジョンを持っておられるのかなということも念頭に置きながら、全体の図柄を組み立てていきたいなと思っています。

(記者)エネルギージャーナル社の清水です。昨日、岸田首相と会われて、その後、経産省の幹部も会っているようですけれども、その案件といいますか、何か新しい資本主義の在り方みたいな会議と関係あるのかどうか、伺いたい。それが1点です。それから、冒頭おっしゃった原発の甲状腺影響のことで、ちょっと私よく、何といいますか、意見があるんですけれども、やっぱり専門家がやったことを受けて、環境省が影響ありと考えるのか、なしと考えるのか、そういうことを環境省がやるのが本来の役割じゃないか思うんですよね。これまでも、大気汚染や何かで疾病調査やなんかは、5年、10年やって、それで一つの見解なり、行政の展開をしてきたと思うんで、それはちょっと、環境省は逃げているんじゃないかという気がします。それが2点目です。それから、3点目は、先ほどの鉄鋼連盟のヒアリングですけども、これは、通常であれば経産省が業種所管ということでやるんだろうと思うんですけども、環境省がやる、何というか、オリジナリティーというのか、意味というのか、そこをもうちょっとクリアにお話しいただければと思います。
(大臣)一番最後の鉄鋼業界のオリジナリティー、環境省としてのオリジナリティー。まあ、よく言われることですけれども、縦割り行政では駄目だと。そういうことを言われているわけですから、環境省的には、このカーボンニュートラルというところが関わっている以上は、つまみ食い的に、一部分一部分でやれる話ではありません。エネルギーの問題も関われば、それは環境省プラス経産省の話だし、それからライフスタイル、これは環境省的な話ですけど、その中でZEHとかZEBとか、そういうものが関われば、これは今度、国土交通省の話も関わってきますし、今までの政治を国民の方々が見ておられて、何でそんな役所ごとの縦割り行政でやっているんだというところには、非常に強いフラストレーションを感じておられたと思います。そういう意味で、鉄鋼業界と我々が話すこと、その意味というのは、大きいんではないのかなというふうに思っています。特に、この中で、私はカーボンプライシングということも言わせていただきましたけれども、カーボンプライシングというのは、やっぱり環境省が主導していく話ではないかと思います。そのために、全国行脚をやっていると。全国全部回るんだということで、やらせていただいています。1か所行かせていただいて、その1か所だけで話をするわけではなくて、オンラインでかなり遠くの市長さん、町長さんとも話をしていますから、1回行くことによって、1020の市長さん、町長さん、知事さんと対話が成り立っています。私が埼玉に行ったときにも、埼玉から、あれは、浜松市長の鈴木康友さんとか、あるいは新潟の町長さんとか、いろいろとつながっていましたから、それを全国、もう既に12か所ぐらいかな、やっています。だから、それで合計いろいろ足していくと、100以上の首長さんとは既にコミュニケーションが始まっていると。さらに、1都1道2府43県、全部回らせていただきたいなというふうに思っています。今、オミクロン、まだもう少し収まりを見極めた上で、オンラインではなくて、実際に伺って、対話をさせていただきたいなと思っています。甲状腺の話については、我々、専門家の福島県の県民健康調査を受けたいろいろな話、あるいはUNSCEAR、その辺のことがやっぱり一番大事だと思います。それを受けて、環境省もそういうふうに考えているということで受け止めてください。岸田さんと昨日話ししたのは、やっぱり、今、岸田総理の頭の中で、気候変動対策、これがすごく大きなプライオリティーを占めているということは私もよく認識していますから、そういう意味で、1月18日にスタートした「クリーンエネルギー戦略」に関する有識者懇談会、この話の中で、萩生田経産大臣と協力して、私に対しても、はっきりとした役割というものを総理から仰せつかっているので、そこの気持ちは目いっぱい受け止めてやっていきたいなと思います。その意味で、昨日は環境全般について話をさせていただきました。

(記者)環境新聞の小峰です。昨日、自民党の党本部で環境・温対調査会が開かれ、その場で2つのプロジェクトチームの発足が決まりました。一つは、サーキュラーエコノミーPT、この座長は朝日健太郎参議院議員。そしてもう一つは、サステナブルファッションPT、この座長は山田美樹衆議院議員ですが、こうした動きを環境大臣はどのように受け止めていますでしょうか。
(大臣)サステナブルファッションPTの座長に山田美樹議員、サーキュラーエコノミーPTの座長に朝日健太郎議員。政府とそれから党、自民党ですね、自民党と間のコミュニケーションというのは非常に密にやっていかなければいけないと思います。やっぱり、議院内閣制ということもあるわけですから、そういう意味では、このPTがこうやって立ち上がっていただけるというのは、非常に時宜を得ているし、その意見というものをしっかり受け止めさせていただいて、反映できるものは全部反映させていただきたいなというふうに思います。サステナブルファッションというものも我々のライフスタイルに影響することですし、このサーキュラーエコノミーというものもそういうことですから、そういう意味では、産業界的なものとは少しまた色合いを異にするものかもしれません。いろいろな要素を含めて、これからの、我々の日本のグランドデザインを描きたいわけですから、よく議論を踏まえさせていただきたいと思います。

(記者)フリーランスライターの木野さんから事前にいただいている質問をそのまま代読させていただきます。先日から何度か出ている環境大臣名で出された、「福島県における放射線の健康影響について」についてお伺いします。文書の中で大臣は、「「多くの子供たちが甲状腺がんに苦しみ」という表現については、放射線の健康影響に関する差別や偏見につながるおそれがあることから、適切でないと考えて」いる、と述べています。一方で、先日、小児甲状腺がんを発症した患者やその家族らは、原発事故の影響だとして東電を提訴したように、甲状腺がんに苦しんでいる人たちが多数いるのは事実です。大臣の文書によれば、これらの原告が甲状腺がんに苦しんでいるのは、原発事故の影響ではないということになり、甲状腺がん発症の事実を否定することにならないか、御見解をお伺いできますでしょうか。また、現実に、甲状腺がんに苦しんでいる人たちがいることについて、大臣の御見解をお伺いできますでしょうか。
(大臣)甲状腺がんの方がおられるということを踏まえて、環境省では、福島県の子供たちの気持ちに寄り添うべく、放射線の健康影響に関する差別・偏見の払拭に取り組むとともに、甲状腺検査の対象者あるいは御家族の多様な不安に応えるため、例えば二次検査を受ける方へのこころのサポートの実施体制を強化する事業などを行っており、今後ともこうした取組を進めてまいります。それから、今、裁判のことをおっしゃったので、裁判に関することは、私はコメントすることは差し控えさせていただきます。甲状腺がん、これが、福島県の報告書あるいは国連の科学委員会のUNSCEAR、この報告書によっては、そういう因果関係というものが現時点で放射線の影響とは考えにくいという趣旨の評価がなされているということだと思います。

会見動画は以下にございます。

https://youtu.be/7opA324JsLo

(以上)