大臣談話・大臣記者会見要旨

山口環境大臣COP26期間中ぶら下がり会見録(令和3年11月13日(土)21:36~21:57(現地時間)於:COP26会場)

1.発言要旨

先ほど、一連の決定文書が採択され、COP26が終了しました。2年ぶりに開催された今回のCOPでは、非常に大きな成果が得られたと評価しています。第一に、我が国が重視するパリ協定6条(市場メカニズム)のルールや、各国の取組に関する共通の報告様式などについて、合意が得られました。第二に、最新の科学的知見に依拠しつつ、今世紀半ばの排出量実質ゼロ及びその経過点である2030年に向けて、野心的な緩和策、適応策を締約国に求める内容が盛り込まれました。これらの成果は、パリ協定を着実に実施し、世界全体で気候変動対策を推進する上で、極めて重要な進展であると思います。私自身、交渉の山場である最後の3日間に参加して、市場メカニズムに関する閣僚級会合に出席したほか、アメリカ、中国、インド、ブラジルなど10か国あるいは地域の閣僚とバイ会談を行い、COP26の成功に向けて意見交換させていただきました。特に、市場メカニズムの実施ルールについては、我が国が行った提案がベースとなり合意が成立するなど、大きく貢献できたと思います。長年の「宿題」が解決したことで、世界の脱炭素化に向けた官民の動きが更に加速することを期待しています。また、ジャパン・パビリオンにおける展示及びイベントの開催等を通して、国内そして世界の脱炭素化に向けた日本の取組をアピールすることができたと思います。その間に、日本のNGOあるいはユースの皆様とも意見交換をさせていただきました。気候変動対策を進めるためには一人一人の行動が不可欠であり、若者を含む多くの方々がこの問題に危機感を持ち、声を上げていることを力強く感じています。以上、今回の会合は大変意義深く、大きな成果が得られたと思います。この成果を踏まえて、「環境問題は国境なし」との心構えで、気候変動対策を始めとする環境対策を着実に推進してまいります。

2.質疑応答

(記者)共同通信の水内です。成果文書のところで、石炭火力と化石燃料のところですね、草案の練り直しのところで、やや表現が弱まってきたとはいえ、日本が依存する石炭、化石燃料について、そこから脱却する方向性を示されたものと思います。日本として、どのようにこの対策、その方向を進んでいくのか、お聞かせください。
(大臣)石炭の火力発電について、我々は、この再生可能エネルギーを主電源として徹底させる、そして、最大限それを取り入れるということを、まず第一にしています。それから、まず、イノベーションということで、アンモニアあるいは水素、将来的にCCUSと、そういうことを使うことによって、この脱炭素化を図っていく。そういう流れを頭に置いているわけですね。今回のこの文書の中で、石炭のことが言及されたわけですけれども、そのラインを、我々の考えているラインとそれほど違っていないというふうに思います。いろんな事情を抱えた国があるわけですから、そういう国々のコメントが合わさって今回の結果になったと思っています。

(記者)読売新聞の山下です。大臣が途中からですね、参加ということで、最後、山場で閣僚級交渉に臨まれたと思うんですけど、6条も大きな成果だとされているとは思うんですけど、石炭に関してはですね、いろんな国の事情とおっしゃっていましたけど、最後の局面で、やはりインドであったり、中国であったり、アメリカのケリーさんだったり、議長のシャルマさんの、その存在感なり、動き方というのが、かなりクローズアップされたかなと、外から見ていまして。改めて、日本が存在感を示せたかどうかということと、一部の国々がですね、リーダーシップを発揮していたんじゃないかなと思うところあるんですけど、それらの国々に何か印象があれば、ちょっと教えていただけないかなと思います。
(大臣)例えば、Article6というか、6条ですよね。この文言については、日本が大きな存在感を示したと思います。ジャパンズ・プロポーザルという言い方もされていたり、あるいは、オーソリゼーション・プロポーザル、要するに、日本の提案のことを指しているわけですけれども、それがずっと、アメリカあるいは他の国々との共同歩調の中で、いろんな国がだんだんそれに統合されていったと。これほど大きな存在感は、なかなか少ないんだと思うんです。いろんな分野がありますからね、その中で日本として、今回、この市場メカニズムが成立するに当たって、大きなイニシアティブ、あるいは大きな存在感だったと思います。

(記者)NHKの岡本です。今回のCOPの1つ大きなテーマが、1.5度ということに各国がコミットできるかということが1つあったかと思います。カバー決定でも、そういった内容が含まれていて、中でもですね、NDCを今後、年限を区切ってですね、強化していく、各国が強化していくということが求められていると思うんですけれども、今後のNDCの強化を日本はどうしていくのか、お考えを聞かせてください。
(大臣)NDCの改定でもって、いろいろと目標を決めていくんだと思うんですね。だから、日本としても、その度にいろんな意味で改定していくんだと思うんですけれども、日本が5年でいくのか10年でいくのか、日本的にはいろんな技術が現れるのに時間かかるわけだから、5年というよりも10年というほうがあるんだと思うんです。他方、度々変えるということにも意味があるとは思うんだけれども、日本的にはやっぱり10年を主体に考えて、技術進歩が好例に入るようにしたいなというふうに思っています。
(記者)2030年の削減目標を、日本は今年春に、46%、50%の高みを目指すということを言ったわけですけれども、それを更に高めていくというようなことがカバー決定の中で求められていると思います。それについては、いかがでしょうか。
(大臣)46から50以上を求めるということは、私はあまり意識がなかったんだけれども。
(記者)今回の成果文書の中に、そういった内容が入っていると思うんですけども。
(大臣)日本としては、46%を目指す、更に50%を目指すというところに全力を注いでいくんだと思います。

(記者)テレビ朝日ロンドン支局の山上と申します。石炭火力について、どうしても意見を伺いたいんですけども、最後のプレナリー会合で、スイスなどがインドの国に対して「大きく失望した」というような発言もあり、それに対して会場から拍手が起こるというのもあり、国際世論が、脱炭素に向けての流れがかなり強まりつつあるなというのを、あの場面から感じたんですけれども、そういったその流れの中で、大臣としては、今後どのように日本の立場を国際社会に理解してもらうようにするのか、この辺りの大臣の考えを伺いたいんですが、いかがでしょうか。
(大臣)日本の立場とそれからスイスの立場と、私的にはそんなに違っていないと思います。だから、日本が、国の事情によって資源が少ない中で、ガスパイプラインもない、あるいは国際的なパワーグリッドもない中で、自分のエネルギー安全保障を考えていかなきゃいけないという中で、どういうふうに考えていくかですよね。だから、そんな中で、再生可能エネルギーを主電源化して徹底していく。そのことによって、2030年代までに低減化していくわけですよね、その石炭の火力の割合というものを。その中で、またこの技術進歩を、イノベーションを使っていく。それは、アンモニアであったり、あるいはLNGとの水素であったり、あるいはCCUSであったり。そういう中で、もうとにかくCO2の排出を徹底的に抑えていくということですから、それが世界の潮流の中できちんと説明されていくことが大事だと思っています。私は、CO2の排出の削減というものは、かなり技術によってカバーされる。今回のサイドイベントで、日本のパビリオンのほうも何度も行かせてもらったんですけど、そういう出展もかなり多かったんじゃないかと思うんです。それは、どれだけ世界のほうで共有されるかということもあるんじゃないかと思います。先ほどの1.5度なんですけど、「within reach」と言っていたから、そういう意味では、できるだけそこに目指していくという趣旨だと思うんですね。だから、日本としたら、46あるいは、場合によっては50、そのことによって更に、1.5度というものをとにかく念頭に置いてという、その精神に違いないとは思います。

(記者)朝日新聞の川田です。6条のところで、日本の提案がベースになって話し合われたと。そこのところで、どんな提案をして、さらに、どういうふうに立ち回ったというか、調整を含めて、どういう動きをされたのか、その辺を教えてください。
(大臣)この国際的な交渉の場では、誰が案文を作るかというのが大事なポイントですよね。その案文を作る際には、相当きちっと関わって、積み重ねがある人がやっぱりやっていくんだと思うんです。そういう意味では、日本の中にそういう人材もいたし、それから、例えば、ある国がNDCの外と中で、例えば、NDCの中でCO2だけを考えて、外でメタンガスの話があって、それを区別しなきゃいけないかどうかっていう議論があったときに、もうその区別なしに、その国が認めれば、そのことがカウントされるんだというふうに発想したわけですよね。その発想というのが、それまでの積み重ねがなければできなくて、日本の中で、そういうスタッフがちゃんといたということが大きいなと思います。それから、Grace periodの話もありますけども、そういうのも全部乗り越える発想ができたというのは、これは素晴らしいことだなと思います。それは、実務的に相当蓄積がある人がこの日本のチームの中にちゃんといたという、それは非常に大変立派なことだと思っています。
(記者)関連で、日本の存在感を示したというのが6条とおっしゃっていたと思いますが、それ以外にですね、例えば資金とか、他国とのクレジットとかで、この期間にどんな存在感を、6条の交渉以外に示せたかということを教えていただけますか。
(大臣)多分、よく分かった上でお聞きになっているかと思いますけれども、岸田総理が来られたときに、100億ドルの追加的な支援を発表したわけですね。このことに対しての評価っていうのは非常に高かった。ものすごく高かった。アメリカのみならず、いろんな国が非常に大きな拍手までしたということも聞いていますし、今回、私自身も、その148億ドルっていう話でもって、いわゆるアダプテーション・適応、こういう中で、ダブルに持っていくんだということを何度も何度も、今日も言いましたしね、そのことに対して、やっぱり相当大きな好意的な、好意的って言うか、賛同の気持ちを受け取ったというところがあります。だから、そういう意味で、日本はただ単に言っているだけじゃないんだと、それをちゃんとデリバーするんだというところを、はっきり言ってますからね。現実に我々はやるんだし、そういう意味での存在感というのは大きかったと思います。

(記者)読売新聞の山下です。今出てきた質問と関連なんですけれども、2点ありまして、1点目が6条の関係でですね、大臣の日程が、かなり6条関係で重要なプレーヤーが、ブラジルであったりシンガポールであったり、正直、外から見ていると、クレジットの移管とかでですね、かなり大きな溝が当初はあったと思うんですけど、バイ会談が合意に向けてどういう場になったのか、どううまく働いていたのか、お答えいただける範囲でお答えいただきたいのと、アメリカとの関係で、ケリーさんと今日、どっちの会議だったか分からないんですけど、議場で何か一言、ケリーさんから大臣に何か声かけがあったかなと、画面だけ見ていたら思ったんですけど、そういう、もしやり取りがあって、披露できるものがあれば教えていただきたい。
(大臣)確かに、着いた早々、中国の解振華さんと話したり、それからそのあと、ケリーさんと話したり、6条が大事な話だという認識は非常にありますしね、どういうふうにそれを実現するのかなというのは、私の中で非常に大きかったです。確かに中国は、最初は非常に慎重だったです。どうなるのか。ケリーさんと話したときに、そういう話もいろいろ出ましたけどね。あとは、ブラジルと話したときに、思ったより前向きだったから、これはいい感じなのかなという気もしましたしね。いろんな国と話すときに、6条についてどうなのかというのは、私の質問からもよく出たし、会談を重ねるにしたがって、大分いい進展があるんじゃないのかということも各国は言っていましたから、そういう意味では希望を持っていたんです。ただ、最後の最後まで分かりませんから、そういう意味では気を抜かずにやったんだけど、最後に決まったときには、みんな、「おー」という大きな歓声まで一回一回出て、それは、それだけ長年の苦労が報われたっていう、それぞれの交渉官の人が思ったんだと思うんです。そこは、私とかのみでなく、支えてくれる実務レベルのスタッフの人がいての話ですから、各国ともそうだと思うんです。そういう意味では、水面下で、見えないところで、大きな実務的な働きをしていただいた方がたくさんおられて、この結果に結びついたんだと思います。時間と労力はものすごいものをかけたと思うのでね、ここから本当の意味での動きが取れることになりますから、日本的にはJCMっていうやつですね、Joint Crediting Mechanism、こういうものも実態を持ってくるっていうことだと思うんです、更に。ケリーさんとは、6条の話あるいは全体的な成果が出るかっていう話。彼からは、「almost(ほぼそこまで来ているよ)」っていうことで、ある意味で、一言でコミュニケーションをとったんです。それは私もすぐに分かりましたから、ケリーさんもすごく頑張ってるし、そういうところまで来てるんだと。彼は控えめに言ったんだと思いますよ、almostっていうのは。むしろ、あともう1つっていうくらいのところまで来ていたっていう印象はあるんでしょうけど、最後まで、言葉が全部詰まるまでは油断できませんから、そういう言い方をしたんだと思いますけれども。ケリーさんも解振華さんも、もう何十年も環境問題をやってる仲間同士で、多分一言でパンと通じるんだと思うんです。今回、私的にはね、お初にお目にかかるっていうことではあるんだけど、一言でパンと通じるというところが非常にありがたかったかと思います。日本とアメリカが協力して、いろんな意味で大きなことを、これから世界の秩序作りの中でやっていく、「環境問題に国境なし」という中で、日本とアメリカが協力してやっていく中で、今回ケリーさんに出会わせてもらったこと、あるいは、考え方はいろいろ違うけれども、一緒に協力してやっていく中国の解振華さんと出会わせてもらったこと、あるいは、EUのティマーマンスさんとの出会いも大きかったと思うんですね。あと、フランス、ドイツ、シンガポール、それぞれにいろんな個性があって、今回、大きな意味で、その出会いを重ねさせてもらったなっていう実感があります。

(記者)NHKの岡本です。今まさにおっしゃっていただいたような、いろいろな方との出会いとかですね、あと、先ほど議場での拍手が起きたりという雰囲気というのは、なかなか国内では普段は感じられない雰囲気だと思います。そういった中での大臣の中で気候変動問題に対する意識みたいなものというのは、ここに来られる前と後で、何か意識が変わられたりした部分があれば教えてください。
(大臣)確かに、ネットで会議をやるのとは違って、その場の熱、熱気、あるいはその場の化学反応、これは如実に感じることができますからね。来た瞬間、同じ方向をみんな向いているなということをまず感じるわけですよね。その中で、たどり着く道っていうのは、確かにいろいろな道があり得ると思うんです。だけど、最終的には、我々は2050年、国によっては2060っていうところもあるんでしょうけども、でも、この世紀半ばには、2050年であろうが、そうでなかろうが、実質ゼロに持っていくっていうところで一致しているわけですから、あとは、重点の置き方はあっても、ある程度、みんなが譲り合いながら共通点を見つけていく。そういう雰囲気はすごく感じられた。今回、特に、けりをつけるっていう、ものすごく大きな気持ちが、目に見えないところであったことは、もうはっきり分かりましたからね、そういう意味では、最後は何とかなるんじゃないのかなっていう、cautious optimismみたいな、慎重な楽観主義の、そういうものを持って私もいろいろと感じていました。これは、みんな何度も何度も同じメンバーでやってきたことだろうと思うんですね。だから、そういう意味では、最後、6条の仲間とか、それぞれ集合写真を撮っていたように思うんですけれども、それだけ頑張ったなっていう実感をみんなが持っていたと思うんです。それは、日本にいれば、なかなかそこまで分からないから、現場に来て分かったことの1つです。そういう意味では、これからエジプトに引き継いでいくわけですけどね、COP27。エジプトも、そういうポジティブな化学反応でもって引き継げるっていうことだと思うんです。実際に、これから始まるわけですから、そういう中でのエジプトの会議になるんじゃないかと思います。

(以上)